JP2014002000A - 分光計測システム - Google Patents

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恵 伊藤
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Abstract

【課題】分光計測システムが置かれる計測室内の気温の影響を受けにくくしてサンプルの高精度な計測を可能とする環境を実現する。
【解決手段】分光計測システム2は、セル20を温度調整する温調セルホルダー30を収容し、計測室92から隔離する計測ボックス50を備える。計測ボックス50は、第2の温度調整部52により温度調整された液体媒体を循環させる温調パネル56を有する。第2の温度調整部52は、外気温センサー54及び内気温センサー55で計測された各気温と、セル20内のサンプル目標温度とに基づいて、恒温槽66で蓄える液体媒体の温度や当該液体媒体を送出するポンプ65の動作を制御して、計測ボックス50の内気温を調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、分光計測システムに関する。
サンプルの定量分析の手法として、単色光をサンプルに照射し、その透過光や反射光を光度計で測定し、サンプル中の目的成分の定性・定量を検査する分光吸光計測(単に「分光計測」とも呼ばれる)が知られるところである。目的成分によっては温度により検査光の吸収度合が変化するため、分光計測においては計測中のサンプルを目標温度に安定的に保つことが重要とされる。
例えば、特許文献1では、サンプルを入れるセル(「キュベット」と呼ばれることもある。以下「セル」と呼ぶ。)のキャップに、サンプルの温度を計測するための測温プローブと、ペルチェ素子で発熱さられた熱をセル内のサンプルへ伝熱する伝熱プローブとを設け、ペルチェ素子での発熱を制御することで、サンプルを目標温度に保つ技術が開示されている。
こうしたサンプルを目標温度に保つための仕組は、一般的には分光計測装置のメーカーからオプションとして提供される。例えば、セルを保持するホルダー構造と一体であればセルの温度を調整することのできるホルダーとして「温調セルホルダー」などと呼ばれている。
特開平11−218485号公報
温調セルホルダーにより、サンプルの温度管理が可能になったが、それでも計測室の気温変化の影響を受けて温度変化が安定し難いという問題がある。
例えば、図9に示すように、分光計測システム80は、セル81を温度調整しながら保持する温調セルホルダー82と、熱源として温度調整された液体を温調セルホルダー82に供給する温度調整部83と、特定波長特性を有する検査光を生成する光源装置84と、分光計85と、当該分光計85で計測された計測値を収集・記憶する計測コンピューター86とを有する。そして、分光計測システム80は、エアコン90で室温が調整された計測室92内に設置され計測員が計測作業する。光源装置84や、分光計85、計測コンピューター86は、冷却を要するため計測室92の気温は例えば20℃程度に設定される。
問題となるのは、サンプルの目標温度が例えば人体の体温である37℃前後を目標温度としている場合など、計測室92の室温とサンプルの目標温度との温度差が大きい場合である。温度差が大きいと、温調セルホルダー82がサンプルの温度を調整するといっても、温調セルホルダー82それ自体が計測室92の空気に曝されるため、いくら温調セルホルダー82を用いたとしても、サンプルに計測室92の気温変化の影響が生じる。
公知の製品によっては、セル81、温調セルホルダー82、光源装置84及び分光計85を、温調セルホルダー82へのアクセス用の扉を設けた一体の筐体ケース87に納め、一つの装置として販売されている場合もあるが、筐体ケース87の断熱効果は低く、計測室92の気温変化の影響を受けると言う点では同じである。
本発明は、こうした事情を鑑みてなされたものであり、分光計測システムが置かれる計測室内の気温の影響を受けにくくしてサンプルの高精度な計測を可能とする環境を実現することを目的とする。
以上の課題を解決するための第1の形態は、温調セルホルダーと、前記温調セルホルダーを外気から遮断して収容する計測ボックスと、前記温調セルホルダーの温度を調整する第1の温度調整部と、前記計測ボックス内の気温を調整する第2の温度調整部と、を備えた分光計測システムである。
第1の形態によれば、温調セルホルダーを計測ボックスに収容し、計測室の気温から隔離できるとともに、当該ボックス内の気温を調整することができる。よって、計測室内の気温が計測に及ぼす影響をより小さくし、従来よりも高精度な計測を可能にする環境を実現できる。
第2の形態は、前記計測ボックスが、前記第2の温度調整部により温度調整された媒体を内通させる温調パネルを有する、第1の形態の分光計測システムである。
第2の形態によれば、第1の形態と同様の効果が得られるとともに、計測ボックス内の気温を調整するのに温度調整された媒体を使うことで、ボックス内の熱容量を確保することでより安定した温度管理を実現できる。
第3の形態は、前記計測ボックスが室内の熱を外気に放出する放熱フィンを有し、前記第2の温度調整部が目標温度を外気温以上とする加温制御を行う、第1又は第2の形態の分光計測システムである。
第3の形態によれば、第1または第2の形態と同様の効果が得られるとともに、サンプルを外気温以上の目標温度に設定する計測において、計測ボックス内の温度制御がより容易になる。
第4の形態は、前記第2の温度調整部が、前記第1の温度調整部の目標温度と、外気温との中間温度を目標温度として前記計測ボックス内の気温を調整する、第1〜第3の何れか一項に記載の分光計測システムである。
第4の形態によれば、第1〜第3の形態の何れかと同様の効果が得られるとともに、計測ボックスを外気からの熱影響の緩衝領域としつつも、サンプルの温度調整に係る温調セルホルダーからの放熱余地を計測ボックス内に残すことができる。よって、温調セルホルダーを主体とした温度管理でありながら、精度良い計測を可能とする環境を実現できる。
第5の形態は、前記第1の温度調整部が、摂氏35〜40度の範囲内に目標温度を設定し、前記第2の温度調整部が、前記第1の温度調整部の目標温度から摂氏2〜5度低い温度を目標温度として前記計測ボックス内の気温を調整する、第1〜第4の何れかの形態の分光計測システムである。
第5の形態によれば、第1〜第4の何れかの形態と同様の効果が得られるとともに、生体内(特に人体)環境におけるサンプル中の目的成分の計測をより高精度に実施することができる。
分光計測システムの構成例を示す図。 計測ボックスの構成例を示す縦断面図。 計測ボックスの構成例を示す水平断面図。 分光計測システムを用いたセルの温度変化の例を示すグラフ。 分光計測システムで温調パネルによる温度調整を無効にした場合のセルの温度変化の例を示すグラフ。 図4のグラフの縦軸スケールを拡大したグラフ。 図5グラフの縦軸スケールを拡大したグラフ。 計測ボックスの構成の変形例を示す縦断面図。 従来の分光計測システムの構成例と計測環境例を示す図。
〔第1実施形態〕
本発明を適用した第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における分光計測システムのシステム構成例を示す図である。
本実施形態の分光計測システム2は、エアコン90により室温が保たれる計測室92内に設置され、計測員は計測室92の中で計測作業を行う。システム全体の冷却と計測員の作業環境を考慮して、エアコン90は計測室92の気温を概ね20℃となるように自動的に調整する。
分光計測システム2は、
(1)計測光を生成する光源装置4と、
(2)分光計7と、
(3)システム全体の制御や計測結果の収集・記憶を行うコンピューター10と、
(4)目的成分が含まれるサンプルを入れるセル20と、
(5)セル20内のサンプルの温度を計測するサンプル温度センサー22と、
(6)セル20を所定の計測位置で固定・支持するとともに、サンプルの温度が目標温度を維持するようにセル20またはサンプルの温度を調整する温調セルホルダー30と、
(7)温調セルホルダー30に付属し温度調整された液体を提供することで温調セルホルダー30の温度を調整する第1の温度調整部32と、
(8)温調セルホルダー30を収容して外気から隔離するとともに内部気温を温度調整する計測ボックス50と、
(9)計測ボックス50に付属し温度調整された液体を提供することで計測ボックス50内の気温を調整する第2の温度調整部52と、
を含む。また、不用意な外部からの接触を避けるために計測ボックス50bを設け、この計測ボックス50b内に光源装置4と、分光計7と、計測ボックス50とを収納する構成としてもよい。その場合、計測ボックス50へのアクセスを可能とする扉を設けると好適である。また、外気温センサー54は筐体ケース50bに設けると好適である。
光源装置4は、分光計測で用いられる計測光を生成する装置である。生成された計測光は温調セルホルダー30の第1の所定位置に取り付けられた投光プローブ6に光ファイバー5などにより導かれる。計測光がサンプルを透過或いは反射した光は、温調セルホルダー30の第2の所定位置に取り付けられた受光プローブ9で捕集され、光ファイバー8などを介して分光計7へ出力される。分光計7は、受光プローブ9で捕集された光の光度を計測する公知の装置であって、計測信号或いは計測データをコンピューター10へ出力することができる。
セル20には、セルやキュベットを用いることができる。本実施形態では、キャップ21にはサンプル温度センサー22が装着される。サンプル温度センサー22は、サンプルの温度を計測するプローブタイプのセンサーであって、計測信号或いは計測データをコンピューター10や第1の温度調整部32に出力する。
温調セルホルダー30は、公知の温調セルホルダーを用いることができる。
本実施形態では、例えば、セル20を収容することのできるケース内に、セル20を嵌めることで密着して加熱や冷却をすることができる熱交換ブロック34を備える。熱交換ブロック34には、付属する第1の温度調整部32から断熱チューブ36を介して温度調整された媒体(例えば、水や油といった液体)が供給されている。第1の温度調整部32は、制御基板32aにより制御され、恒温槽32bにて温度調整された媒体を蓄えるとともに、ポンプ32cで恒温槽32bに蓄えられている媒体を断熱チューブ36へ送り出すことができる。制御基板32aは、サンプル温度センサー22で計測されたサンプルの現在温度と予め入力されたサンプルの目標温度とに基づいてポンプ32cの流量を制御することができる。セル20や温調セルホルダー30はそれ自体が放熱するので、ポンプ32cの流量が制御されことによりセル20は適当に加熱または冷却される。尚、温調セルホルダー30は、こうした温度調整された液体媒体の循環による手法に限らず、公知の温調セルホルダーのようにペルチェ素子を用いて発熱・吸熱を行う構成であってもよい。また、本実施形態の温調セルホルダー30では、セル20を計測ボックス50の内気に暴露する開放型のデザインとしているが、計測ボックス50の内気に触れさせない密閉型のホルダーであってもよい。
図2は、本実施形態における計測ボックス50の構成例を示す縦断面図(図3のB−B断面)である。図3は、同水平断面(図2のA−A断面)である。
計測ボックス50は、計測室92の内気から隔離するように温調セルホルダー30を収容することのできるケースである。例えば、概ね一辺が30cm四方の立方体の外形を有する。ケース本体51は上向きに開口する内部空間を形成し、開口端には開閉自在或いは着脱自在な上蓋53が設けられている。ケース本体51と上蓋53は、本実施形態ではともに適当な放熱性を有する材料で形成されているものとする。
計測ボックス50の底には、温調セルホルダー30が固定されている。投光プローブ6に接続される光ファイバー5や受光プローブ9に接続される光ファイバー8は、適宜ケース本体51に設けられた挿通孔を通される。また、サンプル温度センサー22に接続される信号ケーブル23等もまた同様にしてケース外に導かれる。
また、計測ボックス50には、ボックス自体の外気すなわち計測室92の気温を測定する外気温センサー54と、ボックス内の気温を測定する内気温センサー55とを有する。外気温センサー54及び内気温センサー55は、計測信号または計測データを第2の温度調整部52へ出力する。また、コンピューター10への出力も可能としても良い。
そして、計測ボックス50のケース本体51の内面には、温調パネル56が設置されている。温調パネル56は、ボックス内の気温を調整するための熱交換部である。本実施形態の温調パネル56は、それぞれ伝熱性に優れる板材に媒体の流路が構成されている。この流路には断熱チューブ58が接続されており、第2の温度調整部52から温度調整された液体媒体が供給・循環される。
尚、図2及び図3では、構成の理解を容易にするために断熱チューブ58を略して図示しているが、実際には各温調パネル56に対応して往路用と復路用とにそれぞれ別々のチューブを設ける。また、本実施形態では、計測ボックス50の上面・底面・4つの側面の全てに温調パネル56を設ける構成であるが適宜設置数と設置面を選ぶことができる。例えば、4つの側面と底面に温調パネル56を設け、上面の設置を省略することも可能である。
図1に示すように、第2の温度調整部52には、外気温センサー54と内気温センサー55から計測信号または計測データが入力される。そして、第2の温度調整部52は、予め設定されているサンプルの目標温度と、ボックスの外気温と、ボックスの内気温とに基づいて温調パネル56に送り出す液体の流量をコントロールすることができる。
具体的には、制御基板60に搭載されているICメモリ62には、予め入力パネル64から入力されたサンプルの目標温度が記憶される。制御基板60は、内気温センサー55で計測された気温(ボックスの内気温)が、外気温センサー54で計測された気温(ボックスの外気温)とサンプルの目標温度との中間温度となるように、温調パネル56に送り出す媒体の流量等をコントロールする。より具体的には、サンプルの目標温度が35〜40℃の場合、当該目標温度から2〜5℃低い中間温度を目標としてポンプ65の駆動量、恒温槽66で蓄える媒体の温度などを制御する。制御方法は、公知のフィードバック制御技術を適宜利用し、電子電気回路によるシーケンシャル制御で実現するとしても良いし、CPU61による演算を用いたプログラム制御で実現するとしても良い。
図4は、本実施形態の分光計測システム2を用いたセル20の温度変化の例を示すグラフである。計測室92の室温を20℃、サンプル目標温度を概ね37℃、としてシステムを室温以下から起動させた場合の計測結果である。図5は、同じ分光計測システム2で、同じ計測条件であるが、温調パネル56による温度調整を無効にした場合の計測結果である。図6は、図4のグラフの縦軸スケールを拡大したグラフである。図7は、図5グラフの縦軸スケールを拡大したグラフである。
先ず、サンプルの計測温度が目標温度に達するまでの時間に着目すると、図4に示すように、計測ボックス50を有し且つボックス内の気温の温度調整を有効とした場合、サンプルの温度は起動から約45分で安定状態に達している。一方、ボックス内の気温の温度調整を無効とした場合には、図5に示すように、サンプルの温度が安定状態に達するまでに起動から約140分要している。前者では、セル20及び温調セルボックス30は、計測ボックス50によりサンプル目標温度よりもかなり低温な計測室92の空気から隔離され、且つボックス内の気温が調整される。そのため、後者よりも計測室92の室温の影響を受け難い分だけ短時間でサンプルを目標温度にすることが可能となったと考えられる。
そして、温度変化の幅に着目する。図6に示すように、計測ボックス50を有し、且つボックス内の気温の温度調整を有効とした本実施形態の分光計測システム2の構成では、安定状態の温度36.98℃を中心にしてプラスマイナス0.01℃の範囲でサンプル温度を維持し続けることができている。一方、図7に示すように、計測ボックス50は有るが温度調整が無効の場合には、安定状態に達してからもプラスマイナス0.01℃の幅を大きく逸脱する温度変化が生じている。本実施形態では計測ボックス50により計測室92の室温の影響を受け難くなるので高精度な温度管理が可能となった。
〔変形例〕
以上、本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明の適用形態はこれに限定されるものではなく、適宜構成様相の追加・省略・変更を施すことができる。
例えば、上記実施形態では、サンプルの目標温度が計測室92の気温より低い条件における計測の例を挙げたが、分光計測システム2は、サンプルの目標温度を計測室92の気温以上とする場合にも用いることができる。その場合、例えば図8に示すように、ケース本体51に放熱フィン59を設けるとより好適である。
また、上記実施形態では、透過率計測系の構成例を示したが、反射計測系の構成にも同様に適用することができる。
2…分光計測システム、4…光源装置、5…光ファイバー、6…投光プローブ、7…分光計、8…光ファイバー、9…受光プローブ、10…コンピューター、20…セル、21…キャップ、22…サンプル温度センサー、23…信号ケーブル、30…温調セルホルダー、32…第1の温度調整部、34…熱交換ブロック、36…断熱チューブ、50…計測ボックス、51…ケース本体、52…第2の温度調整部、53…上蓋、54…外気温センサー、55…内気温センサー、56…温調パネル、59…放熱フィン、60…制御基板

Claims (5)

  1. 温調セルホルダーと、
    前記温調セルホルダーを外気から遮断して収容する計測ボックスと、
    前記温調セルホルダーの温度を調整する第1の温度調整部と、
    前記計測ボックス内の気温を調整する第2の温度調整部と、
    を備えた分光計測システム。
  2. 前記計測ボックスは、前記第2の温度調整部により温度調整された媒体を内通させる温調パネルを有する、
    請求項1に記載の分光計測システム。
  3. 前記計測ボックスは、室内の熱を外気に放出する放熱フィンを有し、
    前記第2の温度調整部は、目標温度を外気温以上とする加温制御を行う、
    請求項1又は2に記載の分光計測システム。
  4. 前記第2の温度調整部は、前記第1の温度調整部の目標温度と、外気温との中間温度を目標温度として前記計測ボックス内の気温を調整する、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の分光計測システム。
  5. 前記第1の温度調整部は、摂氏35〜40度の範囲内に目標温度を設定し、
    前記第2の温度調整部は、前記第1の温度調整部の目標温度から摂氏2〜5度低い温度を目標温度として前記計測ボックス内の気温を調整する、
    請求項1〜4の何れか一項に記載の分光計測システム。
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