以下、本発明を適用してなる超音波診断装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
図1は、本発明の超音波診断装置の一実施形態のブロック構成図である。図1に示すように被検体1に当接して用いられる超音波の探触子2は、図5(A)に示すように、被検体1との間で超音波を送信及び受信する複数の振動子が整列された超音波送受信面21を有して形成されている。探触子2は、送信回路3から供給される超音波パルスにより駆動され、機械式又は電子的にビーム走査を行うようになっている。送受信制御回路4は、探触子2の複数の振動子を駆動する超音波パルスの送信タイミングを制御して、被検体1内に設定される焦点に向けて超音波ビームを形成するようになっている。また、送受信制御回路4は、探触子2の振動子の配列方向に電子的に超音波ビームを走査するようになっている。
一方、探触子2は、被検体1内から発生する反射エコー信号を受信して受信回路5に出力する。受信回路5は、送受信制御回路4から入力されるタイミング信号に従って、反射エコー信号を取り込んで増幅などの受信処理を行う。受信回路5により受信処理された反射エコー信号は、整相加算回路6において複数の振動子により受信された反射エコー信号の位相を制御し、一点又は複数の収束点に対して超音波受波ビームを形成する。整相加算回路6において整相加算された反射エコー信号(以下、超音波断層データという。)は、信号処理部7に入力され、ゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理がなされる。なお、整相加算回路6において生成される超音波断層データの高周波(RF)信号は、複合復調したI、Q信号であっても良い。このようにして、探触子2で超音波ビームを被検体1の体内で一定方向に走査し、一枚の断層像に対応した超音波断層データを得るようになっている。
信号処理部7により処理された超音波断層データは白黒スキャンコンバータ8に導かれ、ここにおいてディジタル信号に変換されるとともに、超音波ビームの走査面に対応した2次元の断層像データに変換される。すなわち、白黒スキャンコンバータ8は、運動組織を含む被検体1内のRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、そのフレームデータを画像に変換して表示するために、テレビ同期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段となるもので、信号処理部7からの反射エコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどから構成されている。これらの信号処理部7と白黒スキャンコンバータ8によって断層像の画像再構成手段が構成される。白黒スキャンコンバータ8から出力される断層像データは、切替加算部9を介して画像表示器10に供給されて断層像が表示されるようになっている。
画像表示器10は、白黒スキャンコンバータ8によって得た時系列の断層像データを表示するもので、切替加算部9を介して入力される画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からのアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
一方、整相加算回路6から出力される超音波断層データは、RF信号フレームデータ選択部11に導かれる。RF信号フレームデータ選択部11は、超音波ビームの走査面(断層面)に対応するRF信号群を、フレームデータとして複数フレーム分を選択してメモリなどに格納する。変位演算部12は、RF信号フレームデータ選択部11に格納されている取得時刻が異なる複数対のフレームデータを順次取り込み、取り込んだ一対のフレームデータに基づいて断層面における複数の計測点の変位ベクトルを求め、変位フレームデータとして歪み/弾性率演算部13及び平滑化処理部14に出力するようになっている。
歪み/弾性率演算部13は、入力される変位フレームデータに基づいて断層面における複数の計測点の歪みを求め、歪みフレームデータとして平滑化処理部14に出力するようになっている。また、歪み/弾性率演算部13は、圧力計測部19から被検体に加えられた圧力計測データを取り込み、被検体各部の応力分布を求め、先に求めた歪みフレームデータと応力分布とから弾性率を求め、弾性フレームデータとして、平滑化処理部14に出力するようになっている。圧力計測部19は、図5(B)に示すように、超音波送受信面21に合わせて装着された圧迫板22上に備えられた圧力センサ23の出力信号を取り込み、被検体1の体表面に加えられた圧力を計測し、計測した圧カデータを歪み/弾性率演算部13及び平滑化処理部14に送出する。なお、圧力計測は、図5(C)に示すように、圧迫板22の前面に装着された参照変形体24を装着した探触子2を用い、参照変形体24の変位フレームデータに基づいて体表面に加えられた圧力を計測するようにすることもできる。これらの圧力計測法は、特開2005−13283号公報又は特開2005−66041号公報に記載されている。
そして、本実施例の特徴部である平滑化処理部14は、詳しくは後述するが、変位演算部12から入力される変位フレームデータ、歪み/弾性率演算部13から入力される歪みフレームデータ、弾性フレームデータのうちのいずれかと、圧力計測部19から入力される圧力計測データとに基づいて平滑化処理をおこない、弾性データ処理部15へ出力する。
弾性データ処理部15は、平滑化処理部14から入力される弾性フレームデータに座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理などの様々な画像処理を施して、カラースキャンコンバータ16に送出するようになっている。
カラースキャンコンバータ16は、弾性データ処理部15から出力される弾性フレームデータを変換してカラーの弾性画像を生成し、切替加算部9を介して画像表示器10に表示させるようになっている。つまり、カラースキャンコンバータ16は、予め設定された弾性(変位、歪み又は弾性率)の上限値及び下限値の範囲に基づいて、弾性画像に階調化(例えば、256階調)された赤、緑、青などの色相コードを付与する。例えば、弾性フレームデータの弾性率が大きく計測された硬い領域は青色コードに変換し、逆に弾性率が小さく計測された柔らかい領域は赤色コードに変換する。なお、カラースキャンコンバータ16に代えて、白黒スキャンコンバータを用いることができる。この場合は、弾性率が大きく計測された硬い領域は輝度を明るく、逆に弾性率が小さく計測された柔らかい領域は輝度を暗くするなどにより、弾性率の分布を表すことができる。
また、切替加算部9は、白黒スキャンコンバータ8から出力される白黒の断層像データと、カラースキャンコンバータ16から出力されるカラーの弾性画像データとを入力し、両画像を切り替えていずれか一方を表示させる機能と、両画像の一方を半透明にして加算合成して画像表示器10に重ねて表示させる機能と、両画像を並べて表示させる機能を有して形成されている。また、シネメモリ部18は、切替加算部9から出力される画像データをメモリに格納し、制御インターフェイス部17からの指令に従って、過去の画像データを呼び出して画像表示器10に表示するようになっている。さらに、選択された画像データをMOなどの記録メディアへ転送することが可能になっている。
次に、このように構成される本実施形態の基本的な動作について説明する。まず、探触子2により被検体1に加える圧力を変化させながら、被検体1に超音波ビームを走査するとともに、走査面からの反射エコー信号を連続的に受信する。そして、整相加算回路6から出力されるRF信号に基づいて、信号処理部7及び白黒スキャンコンバータ8により断層像が再構成され、切替加算部9を介して画像表示器10に表示される。
一方、RF信号フレームデータ選択部11は、被検体1に加えられる圧力が変化する過程で、RF信号を取り込んでフレームレートに同期させてフレームデータを繰り返し取得し、内蔵されたフレームメモリ内に時系列順に保存する。そして、取得時刻が異なる一対の反射エコー信号からなるフレームデータを単位として、連続的に複数対のフレームデータを選択して変位演算部12に出力する。変位演算部12は、選択された一対のフレームデータを1次元もしくは2次元相関処理し、走査面における各計測点の変位を計測して変位フレームデータを生成する。この変位ベクトルの検出法としては、例えば、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックに最も近似しているブロックを前フレームから探索し、これに基づいて計測点の変位を求める周知のブロックマッチング法を適用できる。また、一対のRF信号フレームデータの同一領域における自己相関を計算して変位を算出することができる。
変位演算部12で求められた変位フレームデータは、歪み/弾性率演算部13に入力され、各計測点の歪みや弾性率などの、予め設定された弾性情報を演算して、必要な弾性情報フレームデータを平滑化処理部14に出力する。歪みの演算は、周知のように変位を空間微分することによって計算される。
また、変位演算部12で求められた変位フレームデータも、平滑化処理部14に入力される。そして、平滑化処理部14は、後述する各実施例で説明するように、圧力計測部19から出力される圧力情報などの被検体1に対する圧縮情報と、被検体1の組織の弾性情報とを用いて、複数の弾性情報間で平滑化処理をおこなう。平滑化処理された弾性情報は、弾性データ処理部15を介してカラースキャンコンバータ16に入力されて弾性画像が生成され、画像表示器10に表示される。
以下に、本実施形態の超音波診断装置の特徴部である平滑化処理部14について、具体的な実施例に基づいて説明する。
図6は、探触子2により被検体1に加える圧力を変化させる過程で得られた弾性フレームデータを計測した時刻と、その時の圧縮状態との関係を黒丸印のプロットで示した一例である。
図6に示すようにして弾性フレームデータが取得された場合に、従来の平滑化技術では、例えば、過去の4フレームとの間で平滑化処理をすると、現時刻tにおいては、図の白抜き三角で示す過去の圧縮状態で計測された弾性フレームデータが、現時刻tで得られた弾性フレームデータと平滑化処理され、弾性画像が生成される。すると、現時刻での圧縮状態よりも強い圧縮状態で得られた弾性フレームデータの寄与を受けるため、この弾性画像に表れる組織の硬さ又は軟らかさを示す弾性情報と、現時刻での圧縮状態とは厳密には相関しないものとなる。
また、例えば時刻tと同様の圧縮状態である時刻(t−9)では、図の白抜き四角で示す過去の圧縮状態で計測された弾性フレームデータとの間で平滑化処理がなされ、弾性画像が生成される。すると、時刻(t−9)での弾性情報は、時刻tの場合と異なり、時刻(t―9)よりも弱い圧縮状態で得られた弾性フレームデータの寄与を受けることとなる。すなわち、任意の時刻に計測された弾性情報は、計測時刻に至るまでの圧縮状態の変化の経緯に依存して変化することになる。したがって、任意の時刻における絶対的な圧縮状態の情報と弾性情報の間の関係は高精度ではなく、確定的に診断を下せない場合が生じる。
これに対して本実施例は、絶対的な圧縮状態の情報と弾性情報の間の関係を高精度に求めることを試みるものであり、例えば、平滑化処理として過去4フレームの弾性フレームデータとの間で平滑化処理をおこなうと同時に、この平滑化の対象となった弾性フレームデータのそれぞれの取得時刻における圧縮情報も平滑化するものである。
つまり、本実施例の平滑化処理部14は、まず、現時刻tにおける弾性情報としての弾性フレームデータ及び圧縮情報としての圧力情報に加え、例えば過去4回分の弾性フレームデータ及び圧力情報を平滑化処理部14に備えられたメモリに確保する。メモリに確保された圧力情報及び弾性フレームデータのそれぞれは以下のように定義される。
圧力情報:P(t),P(t−1),P(t−2),P(t−3),P(t−4)
弾性フレームデータ:Ei,j(t),Ei,j(t−1),Ei,j(t−2),Ei,j(t−3),Ei,j(t−4) (i,jは計測点の座標)
次に、圧力情報及び弾性フレームデータのそれぞれについて平滑化処理として加算平均処理をおこなう。平滑化処理後の圧力情報をP´(t)、平滑化処理後の弾性情報をE´i,j(t)(i,jは計測点の座標)と定義すると、P´(t)及びE´i,j(t)は以下のように演算される。
(数式1)
P´(t)={P(t)+P(t−1)+P(t−2)+P(t−3)+P(t−4)}/5
(数式2)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei,j(t−1)+Ei,j(t−2)+Ei,j(t−3)+Ei,j(t−4)}/5
そして、平滑化処理後の圧力情報P´(t)及び平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)は弾性データ処理部15に入力され、上述したように座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理などの様々な画像処理が施される。さらにカラースキャンコンバータ16などで処理が施されて弾性画像が生成され、画像表示器10に表示される。
このとき、弾性画像上に関心領域(以下、ROIという)を設定すると、ROI内の計測点における平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)の値の平均値などの代表値 <E´i,j(t)>が演算される。そして、図7に示すように、弾性画像に加えて平滑化処理後の圧力情報P´(t)と平滑化処理後の弾性情報代表値<E´i,j(t)>の大きさの関係であるP´(t)−<E´i,j(t)>がグラフとしてプロットされるようになっている。
ここで、このグラフ上では、現時刻における圧力情報と弾性情報の状態が一見して把握可能になるように、例えば、現時刻のプロットの色相を変えたり、形を変えたりすることが可能である。
また、弾性画像に設定されたROI内の計測点を、圧縮状態の変化に応じて変位する被検体の組織に追従させて自動的に変更することも可能である。つまり、変位演算部12で演算されたROI内の計測点の変位の情報を利用することにより、鑑別対象となる組織の変位をトラッキングすることが可能である。これにより、図8に示すように弾性画像の座標系に対して、圧縮過程でROIの占める座標領域は移動することになるが、上記変位情報を利用すれば、図8下部に示すように、同一の組織領域の移動先の座標、つまり、P−4,P−3,P−2,P−1,Pをトラッキングして追従することが可能である。この方法を利用することにより、平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)は、以下のように求められる。
(数式3)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei−1,j−1(t−1)+Ei−2,j−2(t−2)+Ei−3,j−3(t−3)+Ei−4,j−4(t−4)}/5
すると、同一組織の弾性情報同士で平滑化処理を行うことができ、鑑別対象組織とその周囲組織の弾性情報が混合されることがなくなり、弾性画像の空間分解能の劣化を抑制することができる。
また、本実施例では、弾性情報として弾性率の弾性フレームデータを平滑化処理する例を説明したが、弾性率以外に変位フレームデータ、歪みフレームデータを用いることも可能であり、さらに、公知の手段を用いて粘性率、応力、ポアソン比、関心組織間の歪みの比などの弾性に関する情報を用いることも可能である。以下の実施例においても、弾性率の弾性フレームデータを代表に用いて説明するが、それには限られない。
また、以上の処理は、任意の時刻tにおいてリアルタイムに処理可能であり、圧縮状態と弾性情報の関係のグラフや弾性画像を表示することにより、圧縮の操作に対する弾性の応答をリアルタイムに検査者に提供することができる。さらに、本発明は乳腺領域や、前立腺、甲状腺など、様々な生体組織に対して適用することが可能である。
本実施例によれば、弾性フレームデータ間で平滑化処理をおこなうと同時に、この平滑化の対象となった弾性フレームデータのそれぞれの取得時刻における圧縮情報も平滑化して過去の圧縮状態の寄与を反映させることにより、圧縮状態の情報と弾性情報の間の関係の確定度を向上させることができる。
また、鑑別対象組織の計測点をトラッキングして座標を変換した後に、弾性情報の加算平均をとるように処理することにより、鑑別対象組織とその周囲組織の弾性情報が混合されてしまうことによる弾性画像の空間分解能の劣化を回避することができる。
本実施例では、同等の圧縮状態で計測された弾性情報を用いて現時刻の弾性情報を高精度に計測することを試みるものである。実施例1と同様に図6に示すようにして弾性フレームデータが取得された場合に、平滑化処理部14は、まず、例えば過去73回分の圧力情報及び弾性フレームデータの計測結果をメモリに確保する。メモリ確保されたデータは、以下のように定義される。
圧力情報:P(t−1),P(t−2),P(t−3),・・・,P(t−73)
弾性フレームデータ:Ei,j(t−1),Ei,j(t−2),Ei,j(t−3),・・・,Ei,j(t−73)
次に、平滑化処理部14は、現時刻tにおける圧力情報P(t)と同等の圧縮状態を実現した過去の圧力情報を検索する。図6の場合は、時刻t−9,t−22,t−54,t−63がそれに該当するものとして選出される。
そして、当該時刻における弾性フレームデータを用いて、平滑化処理をおこなう。平滑化処理後の弾性情報:E´i,j(t)は、以下のように演算される。
(数式4)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei,j(t−9)+Ei,j(t−22)+Ei,j(t−54)+Ei,j(t−63)}/5 (i,jは計測点の座標)
次に、上述の圧力情報P(t)と平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)が弾性データ処理部15に入力されて、座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理などの様々な画像処理が施される。さらにカラースキャンコンバータ16などで処理が施されて弾性画像が生成され、画像表示器10に表示される。
このとき、実施例1と同様に、弾性画像に加えて、圧力情報P(t)と平滑化処理後の弾性情報代表値<E´i,j(t)>の大きさの関係:P(t)−<E´i,j(t)>がグラフとしてプロットされるようになっている。
以上の処理は、任意の時刻tにおいてリアルタイムに処理可能であり、圧縮状態と弾性情報の関係のグラフ、弾性画像を表示することにより、圧縮の操作に対する弾性の応答をリアルタイムに検査者に提供することができる。
本実施例では、圧縮情報として現時刻において取得された圧力情報P(t)をそのまま適用することを示したが、実施例1の方法に従い、平滑化処理後の圧力情報P´(t) を以下のようにして演算して適用してもよい。
(数式5)
P´(t)={P(t)+P(t−9)+P(t−22)+P(t−54)+P(t−63)}/5
また、本実施例では、同一の圧縮状態を過去の圧力情報から検索することを示したが、実際には、圧縮状態が完全に一致することはまれであり、圧縮状態が同等であると判定する所定の許容範囲(圧縮状態範囲)を設定することが必要になる。つまり、この範囲をΔPと表記するならば、現時刻における圧力状態P(t)に対して、P(t)±ΔPの範囲に入る過去の圧縮状態を検索し、その条件を満たす弾性フレームデータの間で平滑化処理を行うようになっている。
さらに、この幅を一定の値に設定するのではなく、例えば、現時刻のP(t)の値に対して10%以内、つまり、P(t)±0.1×P(t)を同一圧縮状態と判定する圧縮状態範囲に設定してもよい。
また、過去の圧力情報から、現時刻のP(t)の大きさに最も近い状態から例えば4つの圧縮状態を検索し、平滑処理のために適用するようになっていてもよい。
本実施例によれば、同一の圧縮状態で得られた弾性情報のみの間で平滑化処理を施すので、従来の方法のように、異なる圧縮状態の間で計測された弾性情報が混合されてしまい、現在の圧縮状態と弾性画像との相関関係の精度が低下することを防ぐことができる。
また、図9に示すように、同一の圧縮状態で得られた弾性情報で加算平均化処理を施すので、鑑別対象組織である関心部が占める座標領域が同等であり、関心部の境界部が滲み込まず弾性画像の空間分解能を劣化させることを防ぐことができる。
上記実施例1、2においては、複数のフレームの弾性情報を利用することにより高いS/Nを実現することを目的として、特に過去の弾性フレームデータから4フレーム分を検索して、平滑化処理を行う例を示したが、平滑化処理に加える過去のフレーム数は、4フレームに限らないことは言うまでもない。
上記実施例1、2では、平滑化処理として加算平均を演算することを例に示したが、本実施例のように、例えば、過去の弾性フレームデータと現在の弾性フレームデータの間で、中央値を求めて、現時刻の平滑化処理後の弾性フレームデータを求めるようになっていてもよい。つまり、例えば、実施例2の場合の平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)は、以下のように演算される。
(数式6)
E´i,j(t)=median{Ei,j(t)+Ei,j(t−9)+Ei,j(t−22)+Ei,j(t−54)+Ei,j(t−63)}
ここで、median{ }は、{ }内の数値の母集団の中央値を求める処理を表すものとする。
この方法によれば、瞬時的な手ぶれなどの不適当な圧縮が加えられた時刻の弾性フレームデータのノイズを効果的に除去することができる。
また、平滑化処理として、例えば、1フレーム過去の平滑化処理後の情報と現在の情報が所定の割合C(C<1.0)で合成される、いわゆるパーシスタンス処理を圧力情報、及び、弾性情報の両方に施しても良い。パーシスタンス処理後の圧力情報及び弾性情報は以下のように演算される。
(数式7)
P´(t)=(1−C)×P(t)+C×P´(t−1)
(数式8)
E´i,j(t)=(1−C)×Ei,j(t)+C×E´i,j(t−1)
その他、過去の複数の弾性情報と圧力情報の両者に、それぞれ同等の統計的な処理を施すことにより、高いS/Nを実現する方法を採用することができる。
実施例1〜3では、圧縮状態の指標として、探触子と生体表皮の接触面に加えられた圧力情報を用いることを説明したが、本実施例は、圧力情報以外の圧縮情報を用いて課題を解決する例を示すものである。
例えば、図10に示すように、ROIにおける応力σの情報を圧縮情報として適用し、弾性情報との関係を評価するようになっていてもよい。上記応力σの評価には様々な方法があるが、表面に加えられた圧力情報と、生体内部に生成された歪みの情報を基にして、生体内部に伝播する応力分布を推定する方法などが提案されており、このような公知の方法に従って応力の情報を取得すればよい。
また、圧力センサーレスの方法で応力を計測する公知の方法を採用してもよい。また、応力の情報は、必ずしも応力の次元(kPa)として得る必要はなく、応力に相関したインデックスとして絶対的な圧縮状態を評価するようになっていてもよい。
また、圧縮情報として、歪みや変位の情報を利用することも可能である。すなわち、断層像であるB−mode画像もしくは弾性画像など、装置上の画像を利用して、関心部にROIを設定し、圧縮ゼロの状態において、装置上で歪みをリセットする処理を装置インターフェイスから入力する。リセットした状態から圧縮を開始し、ROI内の微小歪み変化を積算する。つまり、微少歪み変化の積算値は、ε(t)=ΣΔε(t)で表され、演算された積算値を上述の実施例と同様に、弾性画像と、弾性情報と歪みの関係としてプロットして表示すればよい。また、関心領域を複数設定し、それらの特性曲線を同時にプロットして表示してもよい。
ここでは、歪みの積算値を求めてプロットする例を示したが、同様の処理を変位の情報を用いて行うことができる。つまり、図1における変位演算部12から出力される変位情報に対して、上述の歪みの場合と同様に、圧縮ゼロの状態から変位の積算を求めることにより、圧縮情報として利用することができる。
さらに、上記変位情報は、探触子に装着された磁気センサなどから取得するようになっていてもよく、例えば、RVS(リアルタイムバーチャルソノグラフィ)の方法により実際に実現されている。また、レーザー変位計などを用いて構成するようになっていてもよい。
本実施例のように、圧力情報以外の情報に基づいて絶対的な圧縮状態を評価することでも、上述の圧力情報を代表に説明した実施例と同様の方法に従って、本発明の課題を解決することができる。
最近では、動脈硬化の程度や血管内のプラークの硬さ、深部静脈血栓の硬さなど、血管周辺部の組織の弾性の評価も可能になってきており、特に拍動による対象組織の圧縮を利用して、上記組織の弾性情報を計測する試みが主流となってきている。しかし、例えば血管壁などは1mm前後の薄い組織であるため、弾性情報の評価を行う際に、弾性画像の空間分解能は非常に重要となるが、例えば、図11に示すような頚動脈の評価などでは、拍動により血管が拡張、収縮するために、弾性画像内において、血管壁の座標が大きく変化することになる。
したがって、従来の方法により過去の弾性情報と加算平均処理などの平滑化処理を行った場合、上記説明と同様、血管壁の弾性情報に、血流や筋の弾性情報などの異なる組織の弾性情報が混合してしまうために、弾性情報の評価精度が極度に劣化してしまう。
そこで本実施例は、上述の実施例における圧縮情報の代替になる情報として、ECGの情報を利用することを試みるものである。
図12は、代表的なECG波形を示す図である。血管壁の移動量と方向は、拍動に同期しており、ECG波形の同一位相では、血管は同一の位置にあると同時に、同一の圧縮状態にあると言える。そこで、本実施例は、ECG波形の同一の位相で得られた弾性情報の間で、平滑化処理を施すものである。
つまり、ECG波形のT波の立ち上がりにおいて、現時刻tの弾性情報Ei,j(t) が計測されたとする。このとき、過去の弾性フレームデータの中から、ECGの同一位相で計測された弾性情報を検索する。同図では、時刻ta,tbがECGの同一位相として認識され、その時刻において得られた弾性情報、Ei,j(ta),Ei,j(tb) が求められる。
次に、例えば、平滑化処理として過去2フレームとの間での加算平均化処理が設定されていれば、現時刻の平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)を以下のように演算する。
(数式9)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei,j(ta)+Ei,j(tb)}/3
そして、弾性情報E´i,j(t)が得られた後の処理は上述の実施例と同様に処理され、弾性画像などが画像表示器10に表示される。
本実施例では、ECGの同一位相で計測された弾性情報を検索して、この弾性情報間で平滑化処理をおこなう例を示したが、位相まで厳密に一致した弾性情報を選出するのではなく、ECGの振幅が一致した弾性情報の間で安定化処理を行うようになっていてもよい。また、ECG波形を利用する場合、ECGトリガーでデータ取得のタイミングにトリガーを掛けることが可能であり、これにより同一位相での弾性情報を積極的に取得するよう制御することができる。
また、圧縮情報の同定にECG波形を利用することに代えて、ドプラによる血流速度の経時変化の情報を利用することも可能である。
つまり、弾性の評価と同時にドプラ計測をおこない、図11に示すように、血管内部にドプラのROIを設定すれば、図13に示すような血流速度の時間変化を求めることができる。そして、この血流速度の時間変化の情報をECG波形の代わりに適用すれば、同様に同一の圧縮状態下で計測された弾性情報を選出することができる。
上述の実施例では、圧縮状態に対して条件を課すことなく、任意の時刻tにおいて平滑化処理を施すことを示したが、本実施例は、診断基準となる圧縮状態を予め設定しておいて、その条件下での弾性情報によって鑑別を行うものである。以下、この方法を詳細に説明する。
例えば、絶対的な圧縮状態に対して、図14に示すような基準圧縮状態を設定したとする。つまり、基準圧縮状態(AkPa〜BkPa)を設定する。このとき、上記基準圧縮状態を満たした時刻は、(t−72),(t−69),(t−65),・・・,(t−20)であり、これらの時刻において計測された弾性情報のみに基づいて弾性情報の平滑化処理が適用されるようになっている。上記基準圧縮状態を満たさなかった時刻に計測された弾性情報は、同一圧縮状態の検索処理に基づいた平滑化処理を施さないようになっている。
この場合において、図15のように、弾性画像を2画面で表示するようにし、例えば左の画面では上記基準圧縮状態を満たして構築された弾性画像を表示し、右の画面では、現時刻tにおいて得られた弾性画像をリアルタイム表示するようになっていてもよい。このようにしたとき、圧縮状態が基準圧縮状態を満たしたときのみ、左の弾性画像がアップデートされることになる。また、リアルタイム表示の右の画面で、計測断面を探したり、圧縮方向を調整したりするなどの計測条件の確認をすることができる。
また、超音波診断をフリーズさせた後、診断に適用する基準圧縮状態を満たして構築された最終画像が静止画として一枚だけ自動保存されるようになっていてもよく、フリーズ後に、基準圧縮状態を変更しても、その変更後の基準圧縮状態で同様の平滑化処理が遂行できるようにすることも可能である。また、この最終画像に例えば「診断用画像」などの表示を付すなどして、検査者が診断に適した画像を容易に認識できるようにすることも可能である。
また、本実施例における上記基準圧縮状態は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの種々の入力デバイスによって、グラフ上でカーソルを動かして任意に設定、変更することができる。
本実施例によれば、基準圧縮状態を満たしたときに計測された弾性フレームデータのみを確保しておけばよく、必要とするメモリ量を節約することができる。
また、実施例1〜6において、図14の特定部位30内の弾性情報のように圧縮状態があまり変化していない過程で計測された弾性情報を、平滑化処理の対象から除外することにより、平滑化処理後の弾性情報の精度をさらに向上させることも可能である。
以下、本発明を適用してなる超音波診断装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
図1は、本発明の超音波診断装置の一実施形態のブロック構成図である。図1に示すように被検体1に当接して用いられる超音波の探触子2は、図5(A)に示すように、被検体1との間で超音波を送信及び受信する複数の振動子が整列された超音波送受信面21を有して形成されている。探触子2は、送信回路3から供給される超音波パルスにより駆動され、機械式又は電子的にビーム走査を行うようになっている。送受信制御回路4は、探触子2の複数の振動子を駆動する超音波パルスの送信タイミングを制御して、被検体1内に設定される焦点に向けて超音波ビームを形成するようになっている。また、送受信制御回路4は、探触子2の振動子の配列方向に電子的に超音波ビームを走査するようになっている。
一方、探触子2は、被検体1内から発生する反射エコー信号を受信して受信回路5に出力する。受信回路5は、送受信制御回路4から入力されるタイミング信号に従って、反射エコー信号を取り込んで増幅などの受信処理を行う。受信回路5により受信処理された反射エコー信号は、整相加算回路6において複数の振動子により受信された反射エコー信号の位相を制御し、一点又は複数の収束点に対して超音波受波ビームを形成する。整相加算回路6において整相加算された反射エコー信号(以下、超音波断層データという。)は、信号処理部7に入力され、ゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理がなされる。なお、整相加算回路6において生成される超音波断層データの高周波(RF)信号は、複合復調したI、Q信号であっても良い。このようにして、探触子2で超音波ビームを被検体1の体内で一定方向に走査し、一枚の断層像に対応した超音波断層データを得るようになっている。
信号処理部7により処理された超音波断層データは白黒スキャンコンバータ8に導かれ、ここにおいてディジタル信号に変換されるとともに、超音波ビームの走査面に対応した2次元の断層像データに変換される。すなわち、白黒スキャンコンバータ8は、運動組織を含む被検体1内のRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、そのフレームデータを画像に変換して表示するために、テレビ同期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段となるもので、信号処理部7からの反射エコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどから構成されている。これらの信号処理部7と白黒スキャンコンバータ8によって断層像の画像再構成手段が構成される。白黒スキャンコンバータ8から出力される断層像データは、切替加算部9を介して画像表示器10に供給されて断層像が表示されるようになっている。
画像表示器10は、白黒スキャンコンバータ8によって得た時系列の断層像データを表示するもので、切替加算部9を介して入力される画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からのアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
一方、整相加算回路6から出力される超音波断層データは、RF信号フレームデータ選択部11に導かれる。RF信号フレームデータ選択部11は、超音波ビームの走査面(断層面)に対応するRF信号群を、フレームデータとして複数フレーム分を選択してメモリなどに格納する。変位演算部12は、RF信号フレームデータ選択部11に格納されている取得時刻が異なる複数対のフレームデータを順次取り込み、取り込んだ一対のフレームデータに基づいて断層面における複数の計測点の変位ベクトルを求め、変位フレームデータとして歪み/弾性率演算部13及び平滑化処理部14に出力するようになっている。
歪み/弾性率演算部13は、入力される変位フレームデータに基づいて断層面における複数の計測点の歪みを求め、歪みフレームデータとして平滑化処理部14に出力するようになっている。また、歪み/弾性率演算部13は、圧力計測部19から被検体に加えられた圧力計測データを取り込み、被検体各部の応力分布を求め、先に求めた歪みフレームデータと応力分布とから弾性率を求め、弾性フレームデータとして、平滑化処理部14に出力するようになっている。圧力計測部19は、図5(B)に示すように、超音波送受信面21に合わせて装着された圧迫板22上に備えられた圧力センサ23の出力信号を取り込み、被検体1の体表面に加えられた圧力を計測し、計測した圧カデータを歪み/弾性率演算部13及び平滑化処理部14に送出する。なお、圧力計測は、図5(C)に示すように、圧迫板22の前面に装着された参照変形体24を装着した探触子2を用い、参照変形体24の変位フレームデータに基づいて体表面に加えられた圧力を計測するようにすることもできる。これらの圧力計測法は、特開2005−13283号公報又は特開2005−66041号公報に記載されている。
そして、本実施例の特徴部である平滑化処理部14は、詳しくは後述するが、変位演算部12から入力される変位フレームデータ、歪み/弾性率演算部13から入力される歪みフレームデータ、弾性フレームデータのうちのいずれかと、圧力計測部19から入力される圧力計測データとに基づいて平滑化処理をおこない、弾性データ処理部15へ出力する。
弾性データ処理部15は、平滑化処理部14から入力される弾性フレームデータに座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理などの様々な画像処理を施して、カラースキャンコンバータ16に送出するようになっている。
カラースキャンコンバータ16は、弾性データ処理部15から出力される弾性フレームデータを変換してカラーの弾性画像を生成し、切替加算部9を介して画像表示器10に表示させるようになっている。つまり、カラースキャンコンバータ16は、予め設定された弾性(変位、歪み又は弾性率)の上限値及び下限値の範囲に基づいて、弾性画像に階調化(例えば、256階調)された赤、緑、青などの色相コードを付与する。例えば、弾性フレームデータの弾性率が大きく計測された硬い領域は青色コードに変換し、逆に弾性率が小さく計測された柔らかい領域は赤色コードに変換する。なお、カラースキャンコンバータ16に代えて、白黒スキャンコンバータを用いることができる。この場合は、弾性率が大きく計測された硬い領域は輝度を明るく、逆に弾性率が小さく計測された柔らかい領域は輝度を暗くするなどにより、弾性率の分布を表すことができる。
また、切替加算部9は、白黒スキャンコンバータ8から出力される白黒の断層像データと、カラースキャンコンバータ16から出力されるカラーの弾性画像データとを入力し、両画像を切り替えていずれか一方を表示させる機能と、両画像の一方を半透明にして加算合成して画像表示器10に重ねて表示させる機能と、両画像を並べて表示させる機能を有して形成されている。また、シネメモリ部18は、切替加算部9から出力される画像データをメモリに格納し、制御インターフェイス部17からの指令に従って、過去の画像データを呼び出して画像表示器10に表示するようになっている。さらに、選択された画像データをMOなどの記録メディアへ転送することが可能になっている。
次に、このように構成される本実施形態の基本的な動作について説明する。まず、探触子2により被検体1に加える圧力を変化させながら、被検体1に超音波ビームを走査するとともに、走査面からの反射エコー信号を連続的に受信する。そして、整相加算回路6から出力されるRF信号に基づいて、信号処理部7及び白黒スキャンコンバータ8により断層像が再構成され、切替加算部9を介して画像表示器10に表示される。
一方、RF信号フレームデータ選択部11は、被検体1に加えられる圧力が変化する過程で、RF信号を取り込んでフレームレートに同期させてフレームデータを繰り返し取得し、内蔵されたフレームメモリ内に時系列順に保存する。そして、取得時刻が異なる一対の反射エコー信号からなるフレームデータを単位として、連続的に複数対のフレームデータを選択して変位演算部12に出力する。変位演算部12は、選択された一対のフレームデータを1次元もしくは2次元相関処理し、走査面における各計測点の変位を計測して変位フレームデータを生成する。この変位ベクトルの検出法としては、例えば、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックに最も近似しているブロックを前フレームから探索し、これに基づいて計測点の変位を求める周知のブロックマッチング法を適用できる。また、一対のRF信号フレームデータの同一領域における自己相関を計算して変位を算出することができる。
変位演算部12で求められた変位フレームデータは、歪み/弾性率演算部13に入力され、各計測点の歪みや弾性率などの、予め設定された弾性情報を演算して、必要な弾性情報フレームデータを平滑化処理部14に出力する。歪みの演算は、周知のように変位を空間微分することによって計算される。
また、変位演算部12で求められた変位フレームデータも、平滑化処理部14に入力される。そして、平滑化処理部14は、後述する各実施例で説明するように、圧力計測部19から出力される圧力情報などの被検体1に対する圧縮情報と、被検体1の組織の弾性情報とを用いて、複数の弾性情報間で平滑化処理をおこなう。平滑化処理された弾性情報は、弾性データ処理部15を介してカラースキャンコンバータ16に入力されて弾性画像が生成され、画像表示器10に表示される。
以下に、本実施形態の超音波診断装置の特徴部である平滑化処理部14について、具体的な実施例に基づいて説明する。
図6は、探触子2により被検体1に加える圧力を変化させる過程で得られた弾性フレームデータを計測した時刻と、その時の圧縮状態との関係を黒丸印のプロットで示した一例である。
図6に示すようにして弾性フレームデータが取得された場合に、従来の平滑化技術では、例えば、過去の4フレームとの間で平滑化処理をすると、現時刻tにおいては、図の白抜き三角で示す過去の圧縮状態で計測された弾性フレームデータが、現時刻tで得られた弾性フレームデータと平滑化処理され、弾性画像が生成される。すると、現時刻での圧縮状態よりも強い圧縮状態で得られた弾性フレームデータの寄与を受けるため、この弾性画像に表れる組織の硬さ又は軟らかさを示す弾性情報と、現時刻での圧縮状態とは厳密には相関しないものとなる。
また、例えば時刻tと同様の圧縮状態である時刻(t−9)では、図の白抜き四角で示す過去の圧縮状態で計測された弾性フレームデータとの間で平滑化処理がなされ、弾性画像が生成される。すると、時刻(t−9)での弾性情報は、時刻tの場合と異なり、時刻(t―9)よりも弱い圧縮状態で得られた弾性フレームデータの寄与を受けることとなる。すなわち、任意の時刻に計測された弾性情報は、計測時刻に至るまでの圧縮状態の変化の経緯に依存して変化することになる。したがって、任意の時刻における絶対的な圧縮状態の情報と弾性情報の間の関係は高精度ではなく、確定的に診断を下せない場合が生じる。
これに対して本実施例は、絶対的な圧縮状態の情報と弾性情報の間の関係を高精度に求めることを試みるものであり、例えば、平滑化処理として過去4フレームの弾性フレームデータとの間で平滑化処理をおこなうと同時に、この平滑化の対象となった弾性フレームデータのそれぞれの取得時刻における圧縮情報も平滑化するものである。
つまり、本実施例の平滑化処理部14は、まず、現時刻tにおける弾性情報としての弾性フレームデータ及び圧縮情報としての圧力情報に加え、例えば過去4回分の弾性フレームデータ及び圧力情報を平滑化処理部14に備えられたメモリに確保する。メモリに確保された圧力情報及び弾性フレームデータのそれぞれは以下のように定義される。
圧力情報:P(t),P(t−1),P(t−2),P(t−3),P(t−4)
弾性フレームデータ:Ei,j(t),Ei,j(t−1),Ei,j(t−2),Ei,j(t−3),Ei,j(t−4) (i,jは計測点の座標)
次に、圧力情報及び弾性フレームデータのそれぞれについて平滑化処理として加算平均処理をおこなう。平滑化処理後の圧力情報をP´(t)、平滑化処理後の弾性情報をE´i,j(t)(i,jは計測点の座標)と定義すると、P´(t)及びE´i,j(t)は以下のように演算される。
(数式1)
P´(t)={P(t)+P(t−1)+P(t−2)+P(t−3)+P(t−4)}/5
(数式2)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei,j(t−1)+Ei,j(t−2)+Ei,j(t−3)+Ei,j(t−4)}/5
そして、平滑化処理後の圧力情報P´(t)及び平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)は弾性データ処理部15に入力され、上述したように座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理などの様々な画像処理が施される。さらにカラースキャンコンバータ16などで処理が施されて弾性画像が生成され、画像表示器10に表示される。
このとき、弾性画像上に関心領域(以下、ROIという)を設定すると、ROI内の計測点における平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)の値の平均値などの代表値 <E´i,j(t)>が演算される。そして、図7に示すように、弾性画像に加えて平滑化処理後の圧力情報P´(t)と平滑化処理後の弾性情報代表値<E´i,j(t)>の大きさの関係であるP´(t)−<E´i,j(t)>がグラフとしてプロットされるようになっている。
ここで、このグラフ上では、現時刻における圧力情報と弾性情報の状態が一見して把握可能になるように、例えば、現時刻のプロットの色相を変えたり、形を変えたりすることが可能である。
また、弾性画像に設定されたROI内の計測点を、圧縮状態の変化に応じて変位する被検体の組織に追従させて自動的に変更することも可能である。つまり、変位演算部12で演算されたROI内の計測点の変位の情報を利用することにより、鑑別対象となる組織の変位をトラッキングすることが可能である。これにより、図8に示すように弾性画像の座標系に対して、圧縮過程でROIの占める座標領域は移動することになるが、上記変位情報を利用すれば、図8下部に示すように、同一の組織領域の移動先の座標、つまり、P−4,P−3,P−2,P−1,Pをトラッキングして追従することが可能である。この方法を利用することにより、平滑化処理後の弾性情報
E´i,j(t)は、以下のように求められる。
(数式3)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei−1,j−1(t−1)+Ei−2,j−2(t−2)+Ei−3,j−3(t−3)+Ei−4,j−4(t−4)}/5
とすると、同一組織の弾性情報同士で平滑化処理を行うことができ、鑑別対象組織とその周囲組織の弾性情報が混合されることがなくなり、弾性画像の空間分解能の劣化を抑制することができる。
すなわち、弾性画像に関心領域を設定する手段を有し、設定された関心領域内の計測点を、圧力の変化に応じて変位する被検体の組織に追従させる。つまり、被検体の組織は加えられる圧力の変化に応じて変位するので、関心部である鑑別対象の組織に関心領域を設定した場合に、例えば、圧縮状態の変化によって関心領域内に鑑別対象とは異なる周囲組織が遷移してきて、鑑別対象組織と周囲組織の弾性情報を混合して平滑化処理した結果、弾性画像の空間分解能の劣化を招く恐れがある。しかし、関心領域内の計測点を被検体の組織の変化に追従させれば、常に同一の鑑別対象組織の弾性情報を計測し、この弾性情報同士で平滑化処理をおこなうので、弾性画像の空間分解能の劣化を抑制することができる。
また、本実施例では、弾性情報として弾性率の弾性フレームデータを平滑化処理する例を説明したが、弾性率以外に変位フレームデータ、歪みフレームデータを用いることも可能であり、さらに、公知の手段を用いて粘性率、応力、ポアソン比、関心組織間の歪みの比などの弾性に関する情報を用いることも可能である。以下の実施例においても、弾性率の弾性フレームデータを代表に用いて説明するが、それには限られない。
また、以上の処理は、任意の時刻tにおいてリアルタイムに処理可能であり、圧縮状態と弾性情報の関係のグラフや弾性画像を表示することにより、圧縮の操作に対する弾性の応答をリアルタイムに検査者に提供することができる。さらに、本発明は乳腺領域や、前立腺、甲状腺など、様々な生体組織に対して適用することが可能である。
本実施例によれば、弾性フレームデータ間で平滑化処理をおこなうと同時に、この平滑化の対象となった弾性フレームデータのそれぞれの取得時刻における圧縮情報も平滑化して過去の圧縮状態の寄与を反映させることにより、圧縮状態の情報と弾性情報の間の関係の確定度を向上させることができる。
また、鑑別対象組織の計測点をトラッキングして座標を変換した後に、弾性情報の加算平均をとるように処理することにより、鑑別対象組織とその周囲組織の弾性情報が混合されてしまうことによる弾性画像の空間分解能の劣化を回避することができる。
本実施例では、同等の圧縮状態で計測された弾性情報を用いて現時刻の弾性情報を高精度に計測することを試みるものである。実施例1と同様に図6に示すようにして弾性フレームデータが取得された場合に、平滑化処理部14は、まず、例えば過去73回分の圧力情報及び弾性フレームデータの計測結果をメモリに確保する。メモリ確保されたデータは、以下のように定義される。
圧力情報:P(t−1),P(t−2),P(t−3),・・・,P(t−73)
弾性フレームデータ:Ei,j(t−1),Ei,j(t−2),Ei,j(t−3),・・・,Ei,j(t−73)
次に、平滑化処理部14は、現時刻tにおける圧力情報P(t)と同等の圧縮状態を実現した過去の圧力情報を検索する。図6の場合は、時刻t−9,t−22,t−54,t−63がそれに該当するものとして選出される。
そして、当該時刻における弾性フレームデータを用いて、平滑化処理をおこなう。平滑化処理後の弾性情報:E´i,j(t)は、以下のように演算される。
(数式4)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei,j(t−9)+Ei,j(t−22)+Ei,j(t−54)+Ei,j(t−63)}/5 (i,jは計測点の座標)
次に、上述の圧力情報P(t)と平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)が弾性データ処理部15に入力されて、座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理などの様々な画像処理が施される。さらにカラースキャンコンバータ16などで処理が施されて弾性画像が生成され、画像表示器10に表示される。
このとき、実施例1と同様に、弾性画像に加えて、圧力情報
P(t)と平滑化処理後の弾性情報代表値<E´i,j(t)>の大きさの関係:P(t)−<E´i,j(t)>がグラフとしてプロットされるようになっている。
以上の処理は、任意の時刻tにおいてリアルタイムに処理可能であり、圧縮状態と弾性情報の関係のグラフ、弾性画像を表示することにより、圧縮の操作に対する弾性の応答をリアルタイムに検査者に提供することができる。
本実施例では、圧縮情報として現時刻において取得された圧力情報P(t)をそのまま適用することを示したが、実施例1の方法に従い、平滑化処理後の圧力情報P´(t) を以下のようにして演算して適用してもよい。
(数式5)
P´(t)={P(t)+P(t−9)+P(t−22)+P(t−54)+P(t−63)}/5
また、本実施例では、同一の圧縮状態を過去の圧力情報から検索することを示したが、実際には、圧縮状態が完全に一致することはまれであり、圧縮状態が同等であると判定する所定の許容範囲(圧縮状態範囲)を設定することが必要になる。つまり、この範囲をΔPと表記するならば、現時刻における圧力状態P(t)に対して、P(t)±ΔPの範囲に入る過去の圧縮状態を検索し、その条件を満たす弾性フレームデータの間で平滑化処理を行うようになっている。
さらに、この幅を一定の値に設定するのではなく、例えば、現時刻のP(t)の値に対して10%以内、つまり、P(t)±0.1×P(t)を同一圧縮状態と判定する圧縮状態範囲に設定してもよい。
また、過去の圧力情報から、現時刻のP(t)の大きさに最も近い状態から例えば4つの圧縮状態を検索し、平滑処理のために適用するようになっていてもよい。
本実施例によれば、同一の圧縮状態で得られた弾性情報のみの間で平滑化処理を施すので、従来の方法のように、異なる圧縮状態の間で計測された弾性情報が混合されてしまい、現在の圧縮状態と弾性画像との相関関係の精度が低下することを防ぐことができる。
また、図9に示すように、同一の圧縮状態で得られた弾性情報で加算平均化処理を施すので、鑑別対象組織である関心部が占める座標領域が同等であり、関心部の境界部が滲み込まず弾性画像の空間分解能を劣化させることを防ぐことができる。
上記実施例1、2においては、複数のフレームの弾性情報を利用することにより高いS/Nを実現することを目的として、特に過去の弾性フレームデータから4フレーム分を検索して、平滑化処理を行う例を示したが、平滑化処理に加える過去のフレーム数は、4フレームに限らないことは言うまでもない。
上記実施例1、2では、平滑化処理として加算平均を演算することを例に示したが、本実施例のように、例えば、過去の弾性フレームデータと現在の弾性フレームデータの間で、中央値を求めて、現時刻の平滑化処理後の弾性フレームデータを求めるようになっていてもよい。つまり、例えば、実施例2の場合の平滑化処理後の弾性情報
E´i,j(t)は、以下のように演算される。
(数式6)
E´i,j(t)=median{Ei,j(t)+Ei,j(t−9)+Ei,j(t−22)+Ei,j(t−54)+Ei,j(t−63)}
ここで、median{ }は、{ }内の数値の母集団の中央値を求める処理を表すものとする。
この方法によれば、瞬時的な手ぶれなどの不適当な圧縮が加えられた時刻の弾性フレームデータのノイズを効果的に除去することができる。
また、平滑化処理として、例えば、1フレーム過去の平滑化処理後の情報と現在の情報が所定の割合C(C<1.0)で合成される、いわゆるパーシスタンス処理を圧力情報、及び、弾性情報の両方に施しても良い。パーシスタンス処理後の圧力情報及び弾性情報は以下のように演算される。
(数式7)
P´(t)=(1−C)×P(t)+C×P´(t−1)
(数式8)
E´i,j(t)=(1−C)×Ei,j(t)+C×E´i,j(t−1)
その他、過去の複数の弾性情報と圧力情報の両者に、それぞれ同等の統計的な処理を施すことにより、高いS/Nを実現する方法を採用することができる。
実施例1〜3では、圧縮状態の指標として、探触子と生体表皮の接触面に加えられた圧力情報を用いることを説明したが、本実施例は、圧力情報以外の圧縮情報を用いて課題を解決する例を示すものである。
例えば、図10に示すように、ROIにおける応力σの情報を圧縮情報として適用し、弾性情報との関係を評価するようになっていてもよい。上記応力σの評価には様々な方法があるが、表面に加えられた圧力情報と、生体内部に生成された歪みの情報を基にして、生体内部に伝播する応力分布を推定する方法などが提案されており、このような公知の方法に従って応力の情報を取得すればよい。
また、圧力センサーレスの方法で応力を計測する公知の方法を採用してもよい。また、応力の情報は、必ずしも応力の次元(kPa)として得る必要はなく、応力に相関したインデックスとして絶対的な圧縮状態を評価するようになっていてもよい。
また、圧縮情報として、歪みや変位の情報を利用することも可能である。すなわち、断層像であるB−mode画像もしくは弾性画像など、装置上の画像を利用して、関心部にROIを設定し、圧縮ゼロの状態において、装置上で歪みをリセットする処理を装置インターフェイスから入力する。リセットした状態から圧縮を開始し、ROI内の微小歪み変化を積算する。つまり、微少歪み変化の積算値は、ε(t)=ΣΔε(t)で表され、演算された積算値を上述の実施例と同様に、弾性画像と、弾性情報と歪みの関係としてプロットして表示すればよい。また、関心領域を複数設定し、それらの特性曲線を同時にプロットして表示してもよい。
ここでは、歪みの積算値を求めてプロットする例を示したが、同様の処理を変位の情報を用いて行うことができる。つまり、図1における変位演算部12から出力される変位情報に対して、上述の歪みの場合と同様に、圧縮ゼロの状態から変位の積算を求めることにより、圧縮情報として利用することができる。
さらに、上記変位情報は、探触子に装着された磁気センサなどから取得するようになっていてもよく、例えば、RVS(リアルタイムバーチャルソノグラフィ)の方法により実際に実現されている。また、レーザー変位計などを用いて構成するようになっていてもよい。
本実施例のように、圧力情報以外の情報に基づいて絶対的な圧縮状態を評価することでも、上述の圧力情報を代表に説明した実施例と同様の方法に従って、本発明の課題を解決することができる。
最近では、動脈硬化の程度や血管内のプラークの硬さ、深部静脈血栓の硬さなど、血管周辺部の組織の弾性の評価も可能になってきており、特に拍動による対象組織の圧縮を利用して、上記組織の弾性情報を計測する試みが主流となってきている。しかし、例えば血管壁などは1mm前後の薄い組織であるため、弾性情報の評価を行う際に、弾性画像の空間分解能は非常に重要となるが、例えば、図11に示すような頚動脈の評価などでは、拍動により血管が拡張、収縮するために、弾性画像内において、血管壁の座標が大きく変化することになる。
したがって、従来の方法により過去の弾性情報と加算平均処理などの平滑化処理を行った場合、上記説明と同様、血管壁の弾性情報に、血流や筋の弾性情報などの異なる組織の弾性情報が混合してしまうために、弾性情報の評価精度が極度に劣化してしまう。
そこで本実施例は、上述の実施例における圧縮情報の代替になる情報として、ECGの情報を利用することを試みるものである。
図12は、代表的なECG波形を示す図である。血管壁の移動量と方向は、拍動に同期しており、ECG波形の同一位相では、血管は同一の位置にあると同時に、同一の圧縮状態にあると言える。そこで、本実施例は、ECG波形の同一の位相で得られた弾性情報の間で、平滑化処理を施すものである。
つまり、ECG波形のT波の立ち上がりにおいて、現時刻
t の弾性情報Ei,j(t) が計測されたとする。このとき、過去の弾性フレームデータの中から、ECGの同一位相で計測された弾性情報を検索する。同図では、時刻
ta,tbがECGの同一位相として認識され、その時刻において得られた弾性情報、Ei,j(ta),Ei,j(tb) が求められる。
次に、例えば、平滑化処理として過去2フレームとの間での加算平均化処理が設定されていれば、現時刻の平滑化処理後の弾性情報E´i,j(t)を以下のように演算する。
(数式9)
E´i,j(t)={Ei,j(t)+Ei,j(ta)+Ei,j(tb)}/3
そして、弾性情報E´i,j(t)が得られた後の処理は上述の実施例と同様に処理され、弾性画像などが画像表示器10に表示される。
本実施例では、ECGの同一位相で計測された弾性情報を検索して、この弾性情報間で平滑化処理をおこなう例を示したが、位相まで厳密に一致した弾性情報を選出するのではなく、ECGの振幅が一致した弾性情報の間で安定化処理を行うようになっていてもよい。また、ECG波形を利用する場合、ECGトリガーでデータ取得のタイミングにトリガーを掛けることが可能であり、これにより同一位相での弾性情報を積極的に取得するよう制御することができる。
また、圧縮情報の同定にECG波形を利用することに代えて、ドプラによる血流速度の経時変化の情報を利用することも可能である。
つまり、弾性の評価と同時にドプラ計測をおこない、図11に示すように、血管内部にドプラのROIを設定すれば、図13に示すような血流速度の時間変化を求めることができる。そして、この血流速度の時間変化の情報をECG波形の代わりに適用すれば、同様に同一の圧縮状態下で計測された弾性情報を選出することができる。
上述の実施例では、圧縮状態に対して条件を課すことなく、任意の時刻tにおいて平滑化処理を施すことを示したが、本実施例は、診断基準となる圧縮状態を予め設定しておいて、その条件下での弾性情報によって鑑別を行うものである。以下、この方法を詳細に説明する。
例えば、絶対的な圧縮状態に対して、図14に示すような基準圧縮状態を設定したとする。つまり、基準圧縮状態(AkPa〜BkPa)を設定する。このとき、上記基準圧縮状態を満たした時刻は、(t−72),(t−69),(t−65),・・・,(t−20)であり、これらの時刻において計測された弾性情報のみに基づいて弾性情報の平滑化処理が適用されるようになっている。上記基準圧縮状態を満たさなかった時刻に計測された弾性情報は、同一圧縮状態の検索処理に基づいた平滑化処理を施さないようになっている。
この場合において、図15のように、弾性画像を2画面で表示するようにし、例えば左の画面では上記基準圧縮状態を満たして構築された弾性画像を表示し、右の画面では、現時刻tにおいて得られた弾性画像をリアルタイム表示するようになっていてもよい。このようにしたとき、圧縮状態が基準圧縮状態を満たしたときのみ、左の弾性画像がアップデートされることになる。また、リアルタイム表示の右の画面で、計測断面を探したり、圧縮方向を調整したりするなどの計測条件の確認をすることができる。
また、超音波診断をフリーズさせた後、診断に適用する基準圧縮状態を満たして構築された最終画像が静止画として一枚だけ自動保存されるようになっていてもよく、フリーズ後に、基準圧縮状態を変更しても、その変更後の基準圧縮状態で同様の平滑化処理が遂行できるようにすることも可能である。また、この最終画像に例えば「診断用画像」などの表示を付すなどして、検査者が診断に適した画像を容易に認識できるようにすることも可能である。
また、本実施例における上記基準圧縮状態は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの種々の入力デバイスによって、グラフ上でカーソルを動かして任意に設定、変更することができる。
本実施例によれば、基準圧縮状態を満たしたときに計測された弾性フレームデータのみを確保しておけばよく、必要とするメモリ量を節約することができる。
また、実施例1〜6において、図14の特定部位30内の弾性情報のように圧縮状態があまり変化していない過程で計測された弾性情報を、平滑化処理の対象から除外することにより、平滑化処理後の弾性情報の精度をさらに向上させることも可能である。