JP2013541188A - 分子状フッ素を用いるリアクターボックスチャンバのクリーニング - Google Patents
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Abstract
クリーニング剤として分子状フッ素を用いる、リアクターボックスチャンバをクリーニングするための方法および装置。分子状フッ素は、チャンバのRF出力源を用いてチャンバの中で現場で解離される。リアクターボックスチャンバをクリーニングする典型的な方法は次の工程を含む:分子状フッ素をチャンバに導入すること;分子状フッ素を解離させ、それによりフッ素のラジカルを生成させること;フッ素のラジカルをチャンバの中の必要としない堆積物と反応させること;および、生じたガスをチャンバから取り出すこと。
【選択図】図2
【選択図】図2
Description
(001)本発明はリアクターボックスチャンバをクリーニングするための新規な方法、およびそのための装置に関する。
(002)「リアクターボックス」または「プラズマボックス」としても知られるプラズマ堆積チャンバは、主として、光起電力の用途および光起電力素子のための薄膜を堆積させるために用いられる。これらのリアクターボックスは、太陽電池板、TFTディスプレーパネルおよびプラズマディスプレーパネルのための薄膜を形成するのに特に有用である。例えば、リアクターボックスは米国特許4798739号(Schmitt)に記載されていて、リアクターボックスは気密チャンバの中に置かれた低圧タンクを有していて、気密チャンバはそのタンクの圧力よりも低い圧力を有している。このリアクターボックスは、タンクの中に実質的に平行に離して置かれた少なくとも二つの基板の上にプラズマ堆積を行うためのものである。タンク内でのガスの反応剤の分解を行わせるために、孔のあいた少なくとも一つの極性プラズマ発生電極が基板の間に置かれている。
(003)別のリアクターボックスの配置は米国特許5275709号(Anderle他)に示されていて、これは処理チャンバの積み重ねに関するもので、各々の処理チャンバは昇降チャンバに連結された開口を有し、それによりチャンバの間の基板の効率的な移動を可能にしている。単一の荷重ロックチャンバが、昇降チャンバとの連結部の反対側にある積層チャンバと連係している。この装置の一つの利点は、積み重なった処理チャンバの占める設置面積が小さいことである。
(004)米国特許7244086号(Ostermann他)は、Anderle他の装置を改良したものを提示している。特に、Ostermann他は、Anderle他によって記述された塔構造のスペース上の利点を維持していて、そして一つよりも多い荷重ロックを用いることのできる二重の塔配置を利用することによって、装置に適応性を付加している。この配置は、速いサイクル時間で加工処理するためのさらなる代替手段を提供している点で有利である。
(005)上記の装置の全てが、薄膜を堆積するためにプラズマ化学気相成長(PECVD)の方法を用いる。先駆物質の反応性ガスをリアクターチャンバの中に注入し、次いで、高周波(RF)出力によって生成したプラズマを用いてガスを活性化させることによって、ガス状態から固体状態にして薄膜を基板の表面に堆積させる。しかし、堆積工程によりリアクターチャンバの壁と内部機器(例えばRF出力源)の上にも堆積物が残り、これらを定期的に洗浄しなければならない。
(006)リアクターボックスチャンバをクリーニングするための公知の方法には、NF3、SF6、C2F6またはその他のフルオロカーボン分子のような、フッ素を含むクリーニングガスを現場(in-situ)活性化することが含まれる。クリーニングガスは酸素およびアルゴンとともにチャンバの中に導入され、そしてチャンバのRF出力源を用いてプラズマを強熱(ignite)することによってフッ素のイオンとラジカルを生成させ、これらがチャンバの側壁と部品の上にある堆積物と反応する。しかし、そのようなフッ素を含む分子を解離させるのに要するエネルギーは高く、従って、RF出力のようなチャンバ内のエネルギー源が必要となる。例えば、SF6のS−F結合は、平均して300kJ/モルを超える解離エネルギーを有する。チャンバのRF源から得られる利用可能なエネルギーは必要な量よりも少ないことがしばしばであり、またアーク放電の危険があるために制限しなければならない場合がある。これらの制限のために、クリーニングガス(例えばSF6またはNF3)の完全な解離は達成されず、そのためクリーニング効率は低くなる。
(007)別のチャンバのクリーニング方法は、遠隔のプラズマ源を用いてフッ素含有クリーニングガスを活性化することである。この方法のために最も一般的に用いられるガスはNF3である。この方法においては、クリーニングガスを解離させるために、クリーニングガスは最初にリアクターチャンバの外にあるプラズマ源を通過する。次いで、ラジカルがチャンバに入ってクリーニングを行う。遠隔のプラズマ活性化は現場活性化よりも高い程度のガスの解離をもたらし、それによりクリーニング効率を改善することができる。しかし、遠隔のプラズマ源を用いることで追加の設備が必要となり、そのため、かなりの運転コストと複雑さが加わることとなる。さらに、遠隔のプラズマ源のパラメーターによってガスの流れがしばしば制限され、そのため洗浄時間と費用が増加する。遠隔プラズマ活性化方法の効率的な実施は困難であり、というのは、通常は遠隔のプラズマ源をリアクターチャンバから比較的離れた位置に設けなければならず、特に処理チャンバを単一の真空チャンバの中で積み重ねるか、あるいは塔として設ける場合に、そのようになる。このような配置において、遠隔のプラズマ源において形成されたラジカルは、チャンバの中に入る前に再結合する傾向が高く(例えば、内壁での再結合)、そのためにクリーニング効率が低下する。
(008)SF6やNF3のようなフッ素含有クリーニングガスは環境に損害を与える効果を有する可能性がある。特に、これらのガスは高い地球温暖化傾向を有する。これらのガスは十分には解離されないので、かなりの割合のガスが装置を通過し、そしてこれらのガスを忌避する努力にもかかわらず、約10%のガスが大気中に逃げることが資料で証明されている。さらに、フッ素含有ガスは、チャンバのクリーニングに寄与しない他の原子成分(例えば窒素や硫黄)も含んでいる。最後に、フッ素含有ガスを利用できる多重反応通路は、商業的に実行可能な圧力と活性化力を用いるものとして特に重要であるが、チャンバをクリーニングするためのこれらの化合物の利用に関しては非効率的である。従って、これらのガスを使用すると質量効率が低くなる。
(009)リアクターボックスチャンバをクリーニングするための装置と方法を改良する必要性が当分野において存在する。
(010)本発明は、リアクターボックスチャンバをクリーニングするための改良された方法と装置であって、先行技術の方法と装置の不利な点を解消するものを提供する。特に、本発明においてはチャンバをクリーニングするために分子状フッ素を利用する。
(013)本発明においては、リアクターボックスチャンバのクリーニングのために分子状フッ素を用いる。本発明においては、分子状フッ素の解離によって生成したフッ素のラジカルが極めて効率的なクリーニングガスであることが示される。分子状フッ素のために必要な解離エネルギーは比較的低く、リアクターボックスチャンバの中にすでに設置されているRF出力源(すなわち、堆積物の先駆物質の解離のために用いられるRF出力源)によって供給することができる。遠隔のプラズマ活性化は必要とされず、従って、追加の設備を必要としない。
(014)図1は分子状フッ素とSF6の両者についてのクリーニングガスの流量に基づくリアクターボックスチャンバの洗浄速度の影響を示すグラフである。特に図1は、真空チャンバの中に囲われた反応器(例えば、Oerlikonから入手できるもののような、リアクターボックスチャンバまたはプラズマボックスチャンバ)の概念に基づいて、分子状フッ素によってチャンバが効率的に洗浄されることを示す。これらのタイプのチャンバにおいて、外側の真空チャンバは、クリーニングプロセスに基づいて予め決められた背圧と、反応器の圧力と背圧との間の設定された圧力差を有する。図1は、SF6に比べて分子状フッ素を用いる場合、ずっと大きな処理の機会を利用することができ、従って、チャンバ内でより広い範囲のガスの流れと圧力を用いることが可能になることを示す。このことにより、クリーニングプロセスを最適化することが可能になり、それは、0.1mbar(ミリバール)と10mbarの間の範囲の背圧、好ましくは0.25mbarと2.5mbarの間、より好ましくは0.5mbarと2mbarの間の背圧を用いる様々なクリーニングの処方を定めることができるものである。背圧の10%と200%の間の反応器圧力が試験され、そして概ね許容できることが見いだされた。好ましくは、反応器の圧力は背圧の10%と90%の間に設定される。
(015)分子状フッ素の比較的低い解離エネルギーのために、完全な解離を現場で達成することができる。これによりガスの利用度が改善されるのみならず、より大きなクリーニング効率と短いクリーニングサイクル時間がもたらされる。前に言及したように、SF6やNF3のようなフッ素含有化合物の完全な解離を現場で達成することはできず、従って、付加的なエネルギーを遠隔のプラズマ源から供給することを要する。一般に、そのような遠隔のプラズマ源を用いてもなお、フッ素含有化合物の完全な解離は行われない。
(016)図2は本発明に従って分子状フッ素を使用した場合の洗浄時間に及ぼすプラズマ出力の影響を示すグラフである。図2は、分子状フッ素を用いる場合は、RF出力を増大させてもチャンバのクリーニング時間は顕著には変化しなかったことを示す。このことは、低いRFエネルギーであっても、分子状フッ素は完全に解離されることを示している。
(017)クリーニングガスとして分子状フッ素を用いる本発明は、先行技術において用いられるフッ素含有化合物を上回る優れたクリーニング効率とクリーニング速度をもたらす。さらに、本発明は他の幾つかの利点を提供する。特に、分子状フッ素を用いるときは、ガスの流れとチャンバ圧力についての制限が少なく、そのためクリーニング処理が行われる機会をより広くすることができる。このことは、クリーニングガスがより良好に利用され、そしてより速いクリーニング処理のサイクル時間が得られることを意味する。さらに、分子状フッ素中には使用されない原子成分が存在しないので、本発明によれば、かなり大きな質量効率が得られる。分子状フッ素を用いると、NF3を用いる場合よりも質量効率が20%増大し、そしてSF6を用いる場合よりも質量効率が実質的に74%増大する(この場合、通常はSF4が生成した時点で分解が停止し、次いで、これがO2と反応することによってチャンバ内での硫黄の堆積が防止される)。
(018)分子状フッ素を用いることのさらなる利点は、それを現場で完全に解離することができ、そのため遠隔のプラズマ源を必要とせず、従って、操作上の複雑さとコストが低減することである。本発明によれば遠隔のプラズマ源を必要としないので、チャンバまたは装置の設計とチャンバから遠隔のプラズマ源までの距離についての制約がない。特に、本発明を用いれば、解離したクリーニングガスが再結合する危険性がない。さらに、本発明に従って分子状フッ素を用いると、フッ素を何らかのプラズマ促進ガス(例えば酸素またはアルゴン)と混合する必要がなく、フッ素をむしろ純粋な状態で用いることができる。
(019)さらに、分子状フッ素は容易に完全に解離し、また分子状フッ素は地球温暖化を引き起こす可能性が無いので、本発明は環境への影響が極めて低い。このことにより、本発明によれば、フッ素含有ガスを用いる場合に必要な、複雑で封じ込められて、そして抑制的な装置を解消することができる。
(020)本発明についての以上の説明においては、リアクターボックスチャンバのクリーニングのための分子状フッ素の使用に焦点を当てている。しかし、本発明は、シリコン(非晶質、微結晶質および結晶質)、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、炭窒化シリコンなどを含めた、シリコン含有薄膜のクリーニングのためにも有用であろう。
(021)当業者であれば、以上の説明から本発明の他の態様と変形を容易に知ることになると予想され、そのような態様と変形も同様に、添付する特許請求の範囲に示された本発明の範囲の中に含まれることが意図されている。
Claims (9)
- リアクターボックスチャンバをクリーニングする方法であって:
分子状フッ素をチャンバに導入すること;
分子状フッ素を解離させ、それによりフッ素のラジカルを生成させること;
フッ素のラジカルをチャンバの中の必要としない堆積物と反応させること;および
生じたガスをチャンバから取り出すこと;
を含む前記方法。 - 分子状フッ素を解離させることは、分子状フッ素をRF出力源に晒すことを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記チャンバは背圧を有する真空チャンバの中に囲われていて、そして前記方法は、この方法を0.1mbarと10mbarの間の背圧において実施することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 背圧は0.25mbarと2.5mbarの間である、請求項3に記載の方法。
- 背圧は0.5mbarと2mbarの間である、請求項3に記載の方法。
- チャンバの圧力は背圧の10%と200%の間である、請求項3に記載の方法。
- チャンバの圧力は背圧の10%と90%の間である、請求項6に記載の方法。
- リアクターボックスチャンバをクリーニングするための装置であって:
リアクターボックスチャンバ;および
前記リアクターボックスチャンバと連通している分子状フッ素の供給源;
を有する前記装置。 - リアクターボックスチャンバを囲っている真空チャンバをさらに有する、請求項8に記載の装置。
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