本発明は、いわゆるチャープパルス増幅技術を用いた強力なパルスレーザー生成用の増幅装置に関する。
この技術は、例えば約、数フェムト秒間、非常に強いピークパワーで極短時間継続するレーザーパルスを生成するために使用される。
パルスレーザーは極短の持続時間、すなわち数ピコ秒(10−12秒)または数フェムト秒(10−15秒)の近傍で、高い瞬時パワーを達成することを可能とする。これらのレーザーでは超短レーザーパルスが、増幅媒体で増幅される前に発振器で生成される。当初生成されるレーザーパルスは低エネルギーであるにもかかわらず、パルスのエネルギーは非常に短い時間の間で供給されるので、高い瞬時パワーを生成する。
非常に高い瞬時パワーを生ずる非線形効果を使わないで、レーザーパルスのエネルギーを増加することを可能にするために、増幅前にパルスを時間伸張し、増幅後にそのパルスを再圧縮することが考えられてきた。これにより、増幅媒体で使用される瞬時パワーを減少することができる。周波数ドリフト増幅と称される(しばしば「チャープパルス増幅」またはCPAと称される)この方法では、パルスの長さを約103〜105倍延ばし、次いでそのパルスを当初の持続時間に戻すように再圧縮することが可能である。
「増幅されたチャープ光パルスの圧縮」と題されたD.ストリックランドとG. Mourouによる論文(Opt. Commun. 56, 219−221 − 1985)に記載されているこのCPAの方法は、様々な波長に対しそれらを時間的にシフトさせるよう異なる長さの経路を課すことを可能とするパルスのスペクトル分解を用いる。
図1は概略的に、このチャープパルス増幅方法を用いたレーザーパルスの増幅の様子を示す。
発振器1は、入力パルスと呼ばれる、例えば10フェムト秒の非常に短い持続時間のΔTと、例えば数ナノジュールの比較的低いエネルギーEを有するレーザーパルス91を放射する。この入力パルス91は、ストレッチャー2を通過し、時系列的に、波長の関数である様々なスペクトル成分を分布させる。
ストレッチャー2を作るためにはいくつかの方法が使用可能である。
一般的に使われるストレッチャー2は、入射光線の波長に応じて異なる方向に反射する回折格子を実装する。そのようなストレッチャーの構造は、特にO.E.マルティネスの論文「正の群速度分散を用いた3000倍回折格子コンプレッサー:1.3〜1.6μm帯におけるファイバー補償への応用」(IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol. qe−23, p. 59, 1987)に記載されている。
入力パルス91を形成する異なるスペクトル成分はストレッチャー2において同一の経路を辿らない。そのストレッチャー2の構成に応じて、短い波長の成分は長い波長の成分よりも、長い経路を、または反対に短い経路を辿る。この光路長の違いによって、伸張パルスと呼ばれるパルス92において波長の関数としてスペクトル成分の時間的シフトが生じる。
この伸張パルス92は、結果的に、入力パルス91の持続時間ΔTより長い持続時間を有し、例えば約105ΔTである。この長い持続時間は入力パルス91の瞬時パワーに比べてパルス92の瞬時パワーを著しく減少させ、これによりパルス92はより良い条件の下で増幅が可能となる。
レーザーパルスを伸張するために使用される別の方法は、光ファイバーの長い距離に亘ってパルスを伝搬させることである。ファイバーのコア材料におけるパルスのスペクトル成分の群速度分散により、所望の時間伸張を得ることが可能となる。
さらに別の既知の伸張方法は、格子のピッチが厚さに対して一定ではない感光材料から作られたブラッグ回折格子で構成される。レーザーパルスの異なるスペクトル成分は異なる深さで反射され、この結果あるスペクトル成分が他のスペクトル成分に対し遅延を生じ、そのためパルスが伸張される。このような方法は、特に、Vadim Smirnov, Emilie Flecher, Leonid Glebov, Kai−Hsiu Liao 及び Almantas Galvanauskas による論文「超短パルスの伸張及び圧縮用PTRガラスにおけるチャープバルクブラッグ格子」(Proceedings of Solid State and Diode Lasers Technical Review. Los Angeles 2005, SS2−1.) に記載されている。
ストレッチャー2を出た伸張パルス92は、次いでそのパワーを増加する典型的な増幅媒体を用いて増幅される。図1には、例として3つの増幅媒体が示される。
高利得増幅器と呼ばれる第1の増幅媒体3は、伸張されたパルス92に入射パルス91のエネルギーEの約106倍のエネルギー、例えば数ミリジュールのエネルギーを与えるまで、伸張パルス92のパワーを増加させる。第2の増幅媒体4及び第3の増幅媒体5はそれぞれ、増幅され伸張されたパルス93が、入力パルス91のエネルギーEの約1010倍のエネルギー、例えば25ジュールのエネルギーを持つように、レーザーパルスのパワーを増加させる。
パルスは比較的大きなエネルギーを持っているが、その持続時間が比較的長いため、そのピークパワーは増幅媒体3、4、5における非線形効果を回避できる程度に弱いものとなる。
使用される増幅媒体は、ほとんどの場合、誘導放出増幅媒体であり、例えばチタンをドープしたサファイア結晶である。一つの可能な代替案によれば、レーザーパルスの増幅は、一般的に「光パラメトリックチャープパルス増幅」と呼ばれる、パラメトリックレーザーパルス増幅とチャープパルス増幅技術を組み合わせた方法を用いて行ってもよい。この増幅方法は特に、A. Dubietis et al.による論文 “DBOクリスタルの中での、チャープ及び伸張パルスパラメトリック増幅による、強力なフェムト秒パルス生成” Opt. Commun. 88, 433 (1992))に記載されている。
誘導放出増幅またはパラメトリック増幅を用いる増幅器は、特許請求範囲において、区別することなく「増幅媒体」して記載される。
入力パルスの持続時間ΔTに近い、非常に短い持続時間のパルスに戻すには、入射光線を波長により異なる方向に反射する4つの回折格子61、62、63、64を含む、圧縮器6と呼ばれる光学デバイスを使用して行われる。
第1の回折格子61は、伸張パルス93をスペクトル分散させる。例として、パルス910の2つの最端波長と1つの中央波長とに対応する3本の光線911、912、913が図1に示される。
第2の回折格子62は、レーザーパルスを構成するスペクトル成分、特に911、912、913を平行に折り返し、これらのスペクトル成分は空間的に広がっていく。第3の回折格子63は、これらのいろいろなスペクトル成分を第4の回折格子64上の同じポイントに集めることを可能とし、第4の回折格子64はスペクトル成分の全て、特に911、912、913を同じ方向に折り返して新しいレーザーパルス94を形成する。
入力パルス91を形成する異なるスペクトル成分、特に911、912および913は圧縮器6において、同一の経路を辿らない。具体的には、圧縮器6は、ストレッチャー2で長い経路を有するスペクトル成分が圧縮器6で短い経路をもつように構築されている。このような光路長の違いにより、ストレッチャー2により生成されたシフトを帳消しにする、波長の関数であるスペクトル成分の時間的シフトを生ずる。
これにより、パルス92または93において遅れが出たスペクトル成分は、そのスペクトル成分のすべてが、その遅延を取り戻すように一時的に集められ、入力パルス91の持続時間ΔTに近い持続時間、例えば20フェムト秒と、非常に大きなピークパワー、例えば約1014 Wとを有する出力パルス94になる。
ゆえに、チャープパルス増幅技術は、非常に高い瞬時パワーを有するレーザパワーを生成することを可能とする。
通常チャープパルスレーザー増幅に使われる装置では、最終増幅パルスを所望の持続時間に調整するに当たり圧縮の特性を変更するため、圧縮器の部品を動かして行われる。より詳しく云えば、回折格子間の角度とそれらの相対的位置を変更する必要がある。
ハイパワーレーザーの場合は、圧縮器6はとても高いエネルギーレベルに耐えるため、構成する回折格子は大きく、真空室の中に配置されなければならない。パルス持続時間の調整またはそれにまつわる時間調整のためのハンドリングは、回折格子の方向とそれらを隔てる距離を変更する必要があり、極めて扱いにくい。
最終パルスの持続時間の正確な調整はとりわけ厄介である。実際、この調整は実験条件の関数として行われなければならず、一連の実験を通じて変更されることもある。真空室を開けることなくこの調整を行うために、あるチャープパルス増幅装置は、電動のムーブメントを持つ回折格子を備える。この技術的解決法は、それにもかかわらず、非常に高価である。
さらに、チャープパルス増幅装置は、レーザーパルスの中に時間収差、特に時間位相残差(residual)を生み出す。これらの収差は主に、(伸張前の30フェムト秒未満の持続時間を持つ)最短パルスの中に生じて、広いスペクトル幅を有しパルスを理論的に得られる最短持続時間へ圧縮するのを不可能にする。
あるチャープパルス増幅装置では、時間調整を実行したり、パルスの時間収差を修正するために、位相と振幅を変更するためのプログラマブルシステムをインストールすることもある。しかしながら、これらのシステムは比較的低いエネルギーパルスにしか耐えることができず、さらに、大量の修正のときには、より大幅なエネルギー損失が生じる。さらに、これらの位相と振幅のプログラマブル変更システムは非常に高価である。
本発明の目的は、前記先行技術の欠点を克服することにある。
特に、本発明は、最終パルスの持続時間を容易に調整することができる、レーザーパルス生成用チャープパルス増幅装置を提供することを目的としている。
本発明の別の目的は、極短時間継続する増幅最終パルスが得られるように、パルスの時間収差を簡単に補正することができるレーザーパルス生成用チャープパルス増幅装置を提供することにある。
本発明の一つの特定の目的は、装置に大幅な変更を生じさせることなく低コストでチャープパルス増幅装置にこのような改善を提供することである。
これらの目的は以下にさらに明らかになる他の目的とともに、パルス状レーザー生成用チャープパルス増幅装置によって達成され、その増幅装置は、
入射レーザーパルスを時間伸張できるストレッチャーと、レーザーパルスを増幅することができる少なくとも1つの増幅媒体と、
レーザーパルスを、増幅装置の出力パルスに対する所望の持続時間に圧縮できる主圧縮器とを備え、
本発明によれば、この増幅装置は、少なくとも一つの調整圧縮器がストレッチャーと主圧縮器の間に配置され、レーザーパルスが回折格子上で4つの回折を受け、伸張レーザーパルスが増幅装置の出力パルスに対する所望の時間以上の持続時間に圧縮される。
このような調整圧縮器は、主圧縮器よりもより容易に増幅装置の出力パルスの持続時間を調節できる。さらに、パルスの時間収差を補正することを可能にする。最後に、調整圧縮器は、先行技術の増幅装置を大幅に変更することなく、費用を削減して使用できる。
調整圧縮器の圧縮率は、主圧縮器の圧縮率の20%未満とするのが有利である。
好ましくは主圧縮器の圧縮率の10%未満であるこの低圧縮率は、増幅装置出力パルスの効果的な持続時間の調整を可能にし、伸張パルスを維持しつつ、低瞬時電力によって増幅媒体中の増幅が妨げられることはない。
調整圧縮器は、レーザーパルスからのエネルギーが300ミリジュール未満、好ましくは200ミリジュール未満の位置に配置される。
増幅連鎖の始まりのこの位置は、調整圧縮器を実装することを容易にする。実際にはこの圧縮器は主圧縮器が受ける程の過剰なエネルギーレベルまでに曝されない。ゆえに、外気中に配置される小さな回折格子で構成できる。
この調整圧縮器は、少なくとも2つの増幅媒体から形成される増幅連鎖の最初の増幅媒体の後ろへ配置するのが有利である。
最初の増幅媒体の後ろというこの位置は、生成と最初の増幅の間のパルスのエネルギーロスを制限するので、低エネルギーパルス上での調整圧縮の実現が可能である。
本発明の第一の実施形態によれば、調整圧縮器は、レーザーパルスが連続して回折される4つの回折格子を備える。
調整圧縮器の構成は主圧縮器の従来の構成と似ている。
本発明の実施可能な他の実施形態によれば、調整圧縮器は、2つの回折格子とそれぞれの回折格子上でレーザーパルスが2回回折することを果たす折り重ねた2面体からなる。
この折り重ねた2面体の使用は、知られるように、調整圧縮器のサイズを小さくすることが可能で調整を容易にする。この調整を実施するために動かされなければならない部品の数は少なくて済む。
本発明の有利な特徴の一つは、調整圧縮器は外気中に配置され、主圧縮器は真空室中に配置されることにある。
調整圧縮器を介するエネルギーレベルを低にできるこの配置は、調整圧縮器の調整を容易にする。
本発明の有利な特徴の一つは、調整圧縮器が透過回折格子を備える点にある。
調整圧縮器内で透過回折格子を低エネルギーレベルで使用できることは、より良いエネルギーパフォーマンスを有する。
本発明のもう一つの有利な実施形態によれば、調節圧縮器は反射回折格子を備える。
調整圧縮器は、主圧縮器で用いられるのと同じピッチと入射角をもつ回折格子を備えることが有利である。
主圧縮器と調整圧縮器で光学的に同一な回折格子を使用することは、パルス持続時間の調整を容易にする。
一つの代替案の特徴によれば、調整圧縮器は主圧縮器に用いられる回折格子と異なるピッチ及び、又は、入射角を有する回折格子を備えることもできる。
異なる回折格子の使用は、パルスの時間収差を補正する調整パラメータをより多く持てる。
本発明の一つの特定の実施形態によると、増幅装置は少なくとも二つの調整圧縮器を含み、異なる調整圧縮器で使用される回折格子は異なるピッチ及び、又は入射角を持つ。
この複数の異なる調整圧縮器を使用することは、パルスの時間収差を補正する調整パラメータをより多く持てることを可能にする。
本発明のもう一つの特定の実施形態によると、増幅装置はまた、ストレッチャーと主圧縮器の間に配置される、位相と振幅のプログラマブル修正システムを備える。
他の既知の調整装置と関連する調整圧縮器の使用は、パルスの時間収差を補正する調整パラメータをより多くもつことを可能にする。
例示的でかつ非限定的な例として提供される本発明の好ましい実施形態の以下の記載を、添付の図面を参照しながら読むことにより、本発明についてより良い理解が得られよう。
先行技術による、レーザーパルス生成用チャープパルス増幅装置の概略図である。
本発明の第一の実施形態によるレーザーパルス生成用チャープパルス増幅装置の概略図である。
本発明の第二の実施形態によるレーザーパルス生成用チャープパルス増幅装置の概略図である。
本発明の第三の実施形態によるレーザーパルス生成用チャープパルス増幅装置の概略図である。
図2に、本発明の第一の実施形態によるチャープパルス増幅装置を示す。本増幅装置及び、図2、図4において、図1記載の先行技術による装置と構成要素が同一または類似している場合は、同一の参照符号が付されている。
先行技術と同様に、発振器1は、ストレッチャー2を通過する入力レーザーパルス91を放射する。ストレッチャー2を出た時間伸張されたパルス92は複数の増幅媒体3、4及び5を備える増幅連鎖を通過する。
圧縮器6は、先行技術の圧縮器のように、4つの回折格子、61,62,63,64を含み、それらの回折格子は、パルスの異なるスペクトル成分に異なるパス長を課し、それらの波長の関数となる時間的シフトを生じ、ストレッチャー2によって生成されたシフトを帳消しにする。
本発明によると、増幅装置によって作り出される最終パルス94の時間調整を可能にする調整装置7は増幅連鎖内のストレッチャー2と圧縮器6の間の前記増幅器間に挿入される。例示のように、調整装置7は、増幅連鎖の第一の増幅媒体3と第二の増幅媒体4の間に配置される。
増幅連鎖の中のこの位置において、調整装置7は比較的低いエネルギーレベル、約数十ミリジュールを受ける。さらに、最初の増幅媒体3の後ろというこの位置は、発振器1の中のレーザーパルスの生成とその最初の増幅の間におきるエネルギー損失を抑えてくれる。この損失を抑えることによってパルス収差の発生を制限することが可能である。
本発明によると、以下調整圧縮器7と呼ぶ調整装置7は回折格子を備え、以下主圧縮器と呼び、パルスの最終圧縮に使われる圧縮器6に類似する。
そのため、図2の第1の実施形態によると、調整圧縮器7は4つの回折格子71,72,73,74を備え、主圧縮器6の回折格子それぞれ61,62,63,64と同一の働きをする。
回折格子71は、伸張パルスをスペクトル分散させる。第2の格子72は、このように空間的に広がったレーザーパルスを構成するスペクトル成分を平行に戻す。第三の格子73はこれらの異なるスペクトル成分を第四の格子74の同一ポイントへ集め、全てのスペクトル成分が同じ方向に折り返して新しいレーザーパルスを形成する。
異なるスペクトル成分の光路長差が、それらの波長の関数としてスペクトル成分の時間シフトを引き起こし、ストレッチャー2によって生成されたスペクトルシフトを帳消しにする。調整圧縮器7における回折格子71、72、73及び74の間の距離はこれらの格子の特性と組み合わせて、主圧縮機6が行うものよりはるかに小さい圧縮(smaller compression)で済むように選択できる。
このため調整圧縮器7の圧縮率は、主圧縮器6の20%未満、好ましくは、約10%である。
その結果、調整圧縮器7はレーザーパルスの小さな圧縮を可能にし、その持続時間をわずかに減らす。図1のアセンブリにおいて、主圧縮器6によってのみ実施される圧縮機能は、図3の発明のアセンブリでは、調整圧縮器7と主圧縮器6との共同によって行われる。
調整圧縮器7の圧縮率は低く、伸張パルスの持続時間に大きな影響を及ぼさず、増幅媒体4,5におけるパルスの増幅を阻害する程の瞬時電力レベルを有しない。
調整圧縮器7の存在は、圧縮パルスの時間調整を大幅に容易にする。
実際に、パルスの総圧縮レベルは調整圧縮器7および主圧縮器6の圧縮率の積に等しく、調整圧縮器7の特性を変更することによって、総圧縮率を調整することを可能にする。
そのため、非常に高いエネルギーレベルを負担する、大きくて真空室内に配置する必要がある主圧縮器6の構成要素の位置を変更して調整する必要はない。
反対に、低エネルギーレベルのパルスを受けるだけの調整圧縮器7は、外気中に位置する小型の回折格子で構成してもよく、回折格子の方向及びそれらを分離する距離の調整を極めて容易に行うことができる。
本発明の特定の一実施形態によれば、主圧縮器6に典型的に使用される反射回折格子の代わりに、透過回折格子を調整圧縮器7に実装することも可能である。調整装置を通過するパルスのエネルギーレベルが低であることにより、透過回折格子を使用できることは、調整圧縮器のエネルギー効率を向上させる。
有利には、30フェムト秒よりも長い初期持続時間を有するパルスを増幅するために、調整圧縮器7は、主圧縮器6を構成する格子と同じ特性(ライン数に対応する入射角とピッチ)を有する回折格子で実装することができる。この実施形態は、最終パルスの持続時間調整用パラメータの決定を容易にする。実際にこの条件下では、調節圧縮器を構成する回折格子の動きは、同じ幅を有する主圧縮器6の回折格子の動きと同じく、最終パルス94に対して同一の光学的効果を有する。
最短パルスに対して、これとは反対に、調整圧縮器7内で、主圧縮器6のものとは異なる光学特性を有する回折格子を実装することが有利である。この構成によりレーザーパルスの収差を補正するためのパラメータをより多く作用させることができる。
図3に、調整圧縮器70が折り畳み形状を有する本発明の別の可能な実施形態を示す。
図1の調整圧縮器7に示す、一方は回折格子71と72、他方は回折格子73と74によって形成されるサブアセンブリは、折り返し面鏡77を用いた図3に示す調節圧縮器70で折り畳むことが出来、レーザーパルスは回折格子75及び76から構成されるただ一つのサブアセンブリ内で2度走行させられる。
調整圧縮器70を介して走行するパルスの低エネルギーレベルによって可能となる本実施形態は、実装が簡単であり、製造コストを抑える。調整圧縮器の大きさは縮小され、その調整が容易になる。実際には、この調整を行うために動かす部品数が少なくなる。この調整圧縮器70の光学特性は、調整圧縮器7と同様である。
調整圧縮器70を出て増幅媒体4および5に向けてパルスを返すことのできるミラーセットは、図3では省略されている。
図4に、概略的に、主圧縮器8が増幅媒体85を備える、本発明の特定の一実施形態を示す。主圧縮器8のこの特定の実施形態では、調整圧縮器7の作用モードまたはそれがもたらす利点は変わらない。
本発明の他の代替案は、容易に当業者によって実装することができる。
例えば、パルスの位相および振幅のプログラマブル修正システムなどのように、本発明の調整圧縮器を、ほかの公知の調整装置を一緒に使うと、パルスの時間調整と時間収差の減衰をより簡単に効果的に行うことが出来る。これら二つのシステムはその効果が有利に結合されるように、増幅連鎖内に前後して配置することができる。
この構造の第一の増幅媒体の前に調整圧縮器を配置することも可能である。しかしながら、このような実施形態は、第一の増幅の前のパルスエネルギーを著しく低減させ、パルスに収差を作り出すという欠点を有する。
調整圧縮器を増幅連鎖内の他のどの位置にも置くことが可能である。しかしながら、約200ミリジュールに相当する約2センチより幅が太い、非常に強いエネルギーを持つビームにとって調整圧縮器の実装は難しくなるため、このような実施形態への興味は低い。そのため、調整圧縮器は好ましくは、増幅連鎖内のパルスのエネルギーが300ミリジュール未満、好ましくは200ミリジュール未満の位置に配置される。
本発明の特定の一実施形態によれば、複数の調整圧縮器を増幅連鎖に提供することが可能である。この実施形態は特に、異なる回折格子で異なる特性を有する回折格子を使用して、チャープパルス増幅装置の出力パルスの調整パラメータをより多くを有することが可能になる。
一つの特定の実施形態によると、1つの回折格子を備える調節圧縮器と、レーザーパルスがその回折格子上で4つの回折を受けることを可能にするミラーセットを実装することもまた可能である。このような調整圧縮器は、図2〜4に示される調整圧縮器と光学的に同様である。