本発明は、内燃機関の運転の間に生成されるクランクケースガスの浄化のためのデバイスに関し、前記デバイスは、遠心ローターがクランクケースガスの浄化のために配されている分離チャンバーの境界を定めているハウジングを備えている遠心分離機を備えており、遠心分離機は、クランクケースガスの流れをクランクケースから遠心分離機に案内するためのガス入口と、遠心分離機からのガスの流れを案内するためのガス出口に連結されている。モーターが、遠心ローターの回転のために配されており、モーターは、モーターの、それにより遠心ローターの回転速度を変化させるためのコントロール機器と共に配されている。デバイスはさらに、パラメーターの検出のためのセンサーを備えており、その大きさは、クランクケースの中のガス圧力に関連しており、センサーは、モーターのコントロール機器と通信するように配されている。
この方式のクランクケースガスの浄化に関する一つの問題は、クランクケースの中の希望のガス圧力を維持することである。この問題に対するある解決策は、EP1532353B1に開示されており、遠心ローターがその回転によってクランクケースガスをクランクケースから遠心分離機に吸引するように配されている最初に定められたデバイスを説明しており、コントロール機器は、燃焼機関の運転の間、クランクケースの中のガス圧力が所定値、または所定圧力区間に維持されるような方法で、パラメーターの感知された変化に応じて遠心ローターの回転速度を変化させるように配されている。したがって、既知のデバイスは、遠心ローターの回転速度を変化させることによってクランクケース内の希望のガス圧力を維持する。しかしながら、遠心ローターの回転速度を低減させることはまた、遠心ローターの分離効率を低減させる。
本発明の主の目的は、クランクケースの中の希望のガス圧力と遠心分離機の分離効率の両方を維持するためのデバイスおよび方法を提供することである。
この目的は、遠心分離機を通るガスの流れを調節するように配されているバルブにコントロール機器が操作的に連結され、前記コントロール機器が、燃焼機関の運転の間、クランクケースの中のガス圧力が所定値、または所定圧力区間に維持されるような方法で、前記パラメーターの検出された変化に応じて前記バルブの位置を変化させるように配されていることを特徴とする最初に定められたデバイスによって達成される。
したがって、クランクケースの中の希望のガス圧力は、バルブの位置によってコントロールされ、それによって、遠心ローターの回転速度、それにより遠心分離機の分離効率が維持され得る。感知されたパラメーターがクランクケースの中の増大したガス圧力を示す場合、コントロール機器は単に、バルブの位置をより多く開いた位置に変化させ、逆もまた同様である。ガスの流れは、デバイスのガス入口またはガス出口に配置されたバルブで調節されてもよい。ガス出口では、汚染物質のほとんどすべては、下流に配置されている遠心ローターによってガスから分離された。したがって、バルブがたとえば適切に働くために清潔な環境を必要とするならば、ガス出口が好ましくは選択される。
さらに、本発明は、クランクケースの中のガス圧力をコントロールするために遠心ローターの回転速度を変化させること、すなわち、バルブの位置と遠心ローターの回転速度の両方を変化させることによってクランクケースの中のガス圧力を維持する可能性を除外しない。実際、本発明の実施形態によれば、コントロール機器は、燃焼機関の運転の間、クランクケースの中のガス圧力が所定値、または所定圧力区間に維持されるような方法で、バルブの位置と遠心ローターの回転速度の両方を変化させるように配されている。したがって、これは、希望のガス圧力を維持する組み合わされた方法と分離効率を変化させる可能性の両方において、多能を提供する。
本発明のさらなる実施形態では、コントロール機器は、燃焼機関の運転の間、クランクケースの中のガス圧力を維持するために遠心ローターの回転速度を変化させる代わりにバルブ位置の変化を優先させるように配されている。遠心ローターの高い回転速度を維持することは有利であり、その結果、高い分離効率が達成される。したがって、クランクケースの中のガス圧力は主に、燃焼機関の「正常な」運転状態の間、バルブ位置だけを変化させることによって維持される。しかしながら、特定の運転状態では、ガス圧力を維持するために遠心ローター速度も変化させるであろう。たとえば、そのような特定の運転状態は、燃焼機関の例外的に高い負荷および/または速度の間に生じることがある。これは、次にガス圧力を著しく増大させる大量のブローバイまたはクランクケースガスを生み出す。これらの特定の状況では、ガス圧力をコントロールするためにバルブ位置を変化させるだけでは十分でないことがある。別の特定の運転状態は、たとえば、ガス圧力を維持するために遠心ローターの回転速度も適合され得るエンジン始動および/または停止の手続の間に生じる発生することがある。
したがって、燃焼機関の極端な運転状態の間、バルブの位置を変化させるだけによって希望のガス圧力を維持することは可能ではないことがある。本発明のある実施形態では、遠心ローターは、その回転によってクランクケースガスをクランクケースから遠心分離機に吸引するように配されている。感知されたパラメーターがガス圧力の猛烈な増大を示す場合、クランクケースの中の希望のガス圧力を維持するために、バルブ位置を完全に開いた位置に変化させ、さらに遠心ローターの回転速度を増大させることが必要であることがある。回転速度を増大させることは、クランクケースの中の増大した量のクランクケースガスを浄化する遠心分離機の分離効率または能力をさらに増大させる。
他の場合では、状況は、遠心分離機の分離効率に、より高いまたはより低い要求を置いてもよく、遠心ローターの回転速度は変化されてもよい。たとえば、車両に搭載される可能な電力は限定されており、車両の重大なサブユニットへの電力の分配は優先される。そのような場合、遠心分離機の電力消費は、遠心ローターの回転速度を減少させることによって低減されてよい。しかしながら、これはまた、遠心ローターの分離効率と吸い出し作用を低減し、クランクケースの中の希望のガス圧力を維持するためにバルブ位置を調節することを必要にする。
本発明のさらなる実施形態では、遠心ローターは複数の分離ディスクを備えている。ローターは、好ましくは、円錐台分離ディスクのスタックを有していてよい。現在、これは、最も効率的なクランクケースガス分離機、すなわちクランクケースガスを浄化するためのいわゆる円錐ディスクスタックを有している遠心ローターの一つを構成する。この遠心ローターは、著しい吸い出し効率を提供し得る。たとえば発電装置やディーゼル動力機関車や船の大型エンジンのために設計された遠心分離機は、バルブが完全に開いた状態にある場合、7100rpmの遠心ローター速度において約700m3/hのポップ効率を提供し得る。可能な限り高い分離効率を達成するために、この遠心ローターをそのような高い速度でいつも動かすことは望ましい。そのような(一定の)高い速度で回転する遠心ローターの分離ディスクと組み合わせたバルブ調整を使用することによって、バルブ位置を変化させることによってガス圧力が維持されながら、非常に効率的な分離を達成することが可能である。低減された量の発生されるクランクケースガスを補うとき、遠心ローター速度が維持され、バルブ位置が閉じた位置の方へ変化されるならば、分離効率は増大されもする。遠心ローターが同じ高い速度で回っていながら、クランクケースガスの低減された流れは遠心分離機を通って案内されるので、分離効率は増大される。
これに関して、遠心分離機は、いわゆる向流分離機または並流分離機として配されてよい。一般に、遠心ローターは、一種の遠心ポンプまたはファンとしても働く。向流分離では、クランクケースガスは、遠心ローターの中にローターの周囲外側からローターの中央部の方に案内される。この種の分離機では、クランクケースガスは、(外部加圧手段によって)ローターの吸い出し作用に逆らって分離機を通って強制されなければならない。ローターの回転速度を増大させることによって、ローターの吸い出し作用または対抗圧力が増大され、それによって、クランクケースの中の増大した圧力が達成され、逆もまた同様である。しかしながら、並流分離では、クランクケースガスは、ローターの中央部の中に、ローターの外側周囲の方に案内される。この種の分離機では、ローターは、遠心分離機を通してクランクケースガスを吸い出す。したがって、遠心ローターは、その回転によってクランクケースガスをクランクケースから遠心分離機に吸引するように配されている。ローターの回転速度を増大させることによって、ローターの吸い出し作用が増大し、それによって、クランクケースの中の圧力を減少させ、逆もまた同様である。
本発明の別の実施形態によれば、モーターは、バルブに操作的に連結されている組み込みレギュレーターを有している可変周波数ドライブまたはVFDの形をしているコントロール機器を備えた電気モーターである。これは、組み込みレギュレーター(たとえばローターの回転速度のコントロールのためのPIDレギュレーター)を備えたVFDを使用することによって圧力をコントロールし、またバルブの位置を変化させることによってガス圧力を調節する単純で有効な方法を提供する。
本発明のまた別の実施形態によれば、コントロール機器は、プログラマブルロジックコントローラーまたはPLCを有している。このPLCは、クランクケースの中の希望の圧力区間の下および上限、遠心ローターの回転速度の下および上限、コントロールのさまざまなモード(たとえばバルブ位置を変化させるだけによる、または遠心ローターの回転速度も変化させる組み合わせによるガス圧力コントロールのモード)などのデバイスの希望の運転パラメーターを設定するための入力装置と共に配されることが可能である。
本発明の目的はまた、請求項11〜18に記載のクランクケースガスを浄化するための対応する方法によって達成される。
本発明はまた、車両(トラックや船や機関車など)の内燃機関または発電装置の内燃機関からのクランクケースガスの浄化のためのデバイスの使用に関する。
本発明は、添付図面に関連する下記のさまざまな実施形態の説明によってさらに説明される。
図1は、本発明の第一の実施形態によるデバイスの略図を示している。
図2は、本発明の第二の実施形態によるデバイスの略図を示している。
図3は、本発明の第三の実施形態によるデバイスの略図を示している。
図1は、内燃機関3の運転の間にクランクケース2の中に生成されるクランクケースガスの浄化のためのデバイス1の第一の実施形態を開示している。燃焼機関3は、たとえば、機関車やトラックに搭載されたディーゼル機関エンジンである。デバイス1は、遠心ローター6bがクランクケースガスの浄化のために配され、その回転によってクランクケースガスをクランクケース2から遠心分離機4に吸引するように配されている分離チャンバー6aの境界を定めているハウジング5を備えた遠心分離機4を有している。クランクケースガスをクランクケースから吸引するか吸い出すように配されているような遠心分離機は、たとえばEP1532353B1および/またはWO2010/008342A1により詳しく説明されている。遠心分離機4のハウジング5は、遠心分離機4とクランクケース2の間に配された導管の形をしているガス入口7を経由してクランクケース2に連結されている。このガス入口7は、遠心ローター6の中央に形成された中央入口チャンバー(図示せず)にクランクケースガスを案内するように構成されている。ローター6は、クランクケースガスに回転をもたらすように配された円錐台分離ディスク8のスタックを備えており、それによって、遠心力が、クランクケースガスから汚染物質を分離する。ハウジング5は、遠心分離機4からの浄化ガスを案内するための導管の形をしているガス出口9を備えている。ガス出口9は遠心ローター6bを囲む分離チャンバー6aと通信するように配されている。このガス出口9は、内燃機関3の空気入口(図示せず)に連結され、それによって浄化ガスがエンジン3に戻し循環される、いわゆる閉じたクランクケースベンチレーション(CCV)とすることが可能である。あるいは、ガス出口9は、開いた出口として配され、それによってガス出口が浄化ガスを周辺環境に放出する、いわゆる開いたクランクケースベンチレーション(OCV)とすることが可能である。
電気モーター10が、遠心ローター6bの回転のために配されている。モーター10は、ハウジング5の外側に装着されており、遠心ローター6bは、モーター10に駆動的に連結されているローター軸11を備えている。電気モーター10は、電気モーター10の、それにより遠心ローター6aの回転速度を変化させるための可変周波数ドライブVFDの形をしているコントロール機器12を有している。図1では、モーター10とコントロール機器12またはVFDは別部品として示されているが、それらはもちろん単一ユニットに統合され、コントロール機器12またはVFDが電気モーター10と統合されることもできる。示された実施形態では、VFDは、燃焼機関3の運転の間、遠心ローター6aの回転速度を変化させるように配されていない。したがって、図1は、モーター10とコントロール機器12またはVFDの間の連絡なしに描かれている。モーターのコントロール機器12は、燃焼機関3の運転の間、ローター回転数を積極的に変化させるように使用されないけれども、分離効率、電力消費、ローター吸引力などの希望のレベルに依存して、たとえばオペレーターによって、一定の希望の回転速度が設定される。
圧力センサー13が、クランクケースの中のガス圧力を検出するために配されており、センサーは、コントロール機器12またはVFDと通信するように配されている。この圧力センサー13は、クランクケースガスの発生量の直接的な測定を提供し、すなわち、ガス圧力とクランクケースの中に単位時間あたりに生成されるクランクケースガスの量との間に直接的な関係がある。しかしながら、前記パラメーターは、エンジンスピードセンサー、車両速度センサー、エンジントルクセンサー、スロットル位置センサーまたはこれらのセンサーの任意の組み合わせなどの他のセンサーを使用することによって間接的に計算または測定されることもできる。現代の車両においては、通常、車両のさまざまな部品に配置されたさまざまなセンサーに連結されているコンピューターネットワークがある。コントロール機器12またはVFDがそのようなコンピューターネットワークに連結されるならば、クランクケースの中のガス圧力またはクランクケースの中に単位時間あたりに生成されるクランクケースガスの量を計算または間接的に測定するために車両上のさまざまなセンサーから来る信号を取り扱うことは特に複雑化される必要がない。
見られ得るように、コントロール機器12またはVFDは、遠心分離機4のガス入口7の中のガスの流れを調節またはコントロールするための配されているバルブ15のアクチュエーター14に操作的に連結されている。この実施形態では、バルブ15は、ガス入口7の導管の中に配されたバタフライバルブである。コントロール機器12またはVFDは、電気モーター10の速度のコントロールを提供するように配されたレギュレーターたとえばPIDレギュレーターと共に配されている。しかしながら、この実施形態では、レギュレーターは、クランクケースガス圧力の検出された変化に応じてバタフライバルブ15の位置を変化させるために利用される。バルブ位置は、燃焼機関3の運転の間、クランクケース2の中のガス圧力が所定値、または所定圧力区間に維持されるような方法で変化される。たとえば、圧力センサー13がクランクケースのガス圧力の低下を検出したならば、コントロール機器12またはより明確にはVFDのレギュレーターは、コントロール信号をアクチュエーター14に送って、バルブ15の位置をより閉じた位置の方に変化させ、それによって、クランクケース2の中のガス圧力が増大され、いやむしろ希望のガス圧力または希望のガス圧力区間に維持される。
図2は、デバイス1の第二の実施形態を開示している。異なる実施形態の対応する部分には、対応する参照符号が与えられていることが特筆される。この第二の実施形態では、コントロール機器12は、燃焼機関3の運転の間、クランクケース2の中のガス圧力が所定値、または所定圧力区間に維持されるような方法で、バルブ15の位置と遠心ローター6bの回転速度の両方を変化させるように配されている。したがって、この実施形態と第一の実施形態の間の相違は、クランクケースの中のガス圧力をコントロールするために遠心ローターの回転速度も利用されることである。この実施形態では、コントロール機器12は、コントロールのさまざまなモードでプログラムされてよい。この場合、コントロール機器12は、燃焼機関3の運転の間、クランクケース2の中のガス圧力を維持するために遠心ローター6bの回転速度を変化させる代わりにバルブ位置の変化を優先させるようにプログラムされる。遠心ローター6bの(一定の)高い速度回転を維持することによって、高い分離効率が達成される。これによって、クランクケース2の中のガス圧力は、燃焼機関3の「正常な」運転状態の間は単にバルブ位置を変化させることによって維持され得る。しかしながら、特定の運転状態では、コントロール機器12はまた遠心ローター速度を変化させる。これによって、コントロール機器12は、たとえば燃焼機関の例外的に高い負荷および/または速度の間に生じるこれらの特定の運転状態も扱うようにプログラムされる。これによって、次にガス圧力を著しく増大させる異常な量のブローバイまたはクランクケースガスが発生されてもよい。これらの特定の状況では、ガス圧力をコントロールするためにバルブ位置を変化させるだけでは十分でないことがある。コントロール機器12はさらに、ガス圧力を維持するために遠心ローターの回転速度がエンジン速度に適合されるエンジン始動および/または停止の手続の間に生じる他の特定の運転状態を扱うようにプログラムされる。
この目的のために、コントロール機器12はまた、プログラマブルロジックコントローラーまたはPLCを有していてよい。たとえば、コントロールの第一のモードは、バルブ位置を変化させるだけによるコントロールであってよく、コントロールの第二のモードは、バルブ位置とローターの回転速度を変化させることの組み合わせであってよく、コントロールの第三のモードは、エンジンの特定の運転状態に依存したバルブ位置またはローター回転数の変化であってよい。前記PLCはまた、クランクケース2の中の希望のガス圧力区間の上および下限、遠心ローター6bの回転速度の上および下限、コントロールの前記さまざまなモードなど、デバイス1の希望の運転パラメーターの手動の設定または選択のために入力装置と共に配されてもよい。
図3は、デバイス1の第三の実施形態を開示している。見られ得るように、バルブ15’は、デバイス1のガス出口9の中に配されている。したがって、クランクケースの中のガス圧力はまた、遠心ローター6bの下流に配置されたバルブ15’の位置を変化させることによってコントロールされ得る。コントロール機器12またはVFDは、遠心分離機4のガス出口9の中のガスの流れを調節またはコントロールするために配されているバルブ15’のアクチュエーター14’に操作的に連結されている。さらに、第一の実施形態のように、バルブ15はバタフライバルブである。しかしながら、この実施形態の利点は、バルブ15’は、ガス出口9に配置されているので、燃焼機関の運転の間に汚染されないということである。前の第二の実施形態はこの実施形態で修正されることができ、すなわち、第二の実施形態は、バルブ15がガス入口7の中の代わりにガス出口9の中に配置されることが可能である。
本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、下記の請求項の範囲内において変更および修正されてよい。示されたモーターは、電気モーターであるが、たとえば、モーターの回転速度を変化させるためのコントロール機器をもつ水力または空気圧モーターとすることもできる。示されたバタフライバルブはもちろん、分離機を通るガス流れの可変減速を提供するように適合された任意のタイプのバルブによって置き換えられることが可能である。
EP1532353B1
WO2010/008342A1