JP2013532893A - 放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップ - Google Patents

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Abstract

質量分析計における放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のためのシステム、方法、および装置が提供され、これらにおいて、イオントラップの中の放射方向に励起されたイオンの励起エネルギーの大きさを減少させて、RAATのためのイオンが質量分析計の長手軸に沿って加速されることにより、放射方向に励起されたイオンがイオントラップから流出することを可能にする。したがって、放射方向に励起されたイオンは、低減した放射エネルギーでイオントラップから流出することより、イオントラップからの放射方向に励起されたイオンの出口角を減少させる。さらに、イオンへの複合力により、励起されていないイオンがイオントラップの中にとどまっている間に、放射方向に励起されたイオンがイオントラップから流出する。

Description

(分野)
本明細書は、概して、質量分析計に関し、さらに具体的には、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップに関する。
(背景)
質量選択的軸方向放出(MSAE)は、イオンを選択し、放射方向励起を印加することによって軸に沿ってイオンを放出するために、質量分析計の線形イオンガイドにおいて使用される技法である。イオンは、RF(無線周波数)四重極電場によって放射方向に、およびイオンガイドの端部に印加される静的DC(直流)ポテンシャルによって軸方向に捕捉される。軸方向力は、放射方向励起の振幅に依存しているイオンガイドの外縁領域で軸方向に発展する擬似ポテンシャルにより発生する。振幅が高いときに、放射方向に励起されたイオンが放出される。
本明細書の第1の側面は、放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための質量分析計を提供し、質量分析計は、イオン源と、質量分析計の長手軸に沿って、イオン源からのイオンの少なくとも一部分を軸方向に加速するための第1の軸方向加速領域と、イオン源からイオンを受容するように配設される、少なくとも1つの線形イオントラップとを備え、少なくとも1つの線形イオントラップは、その中にイオンを受容するための入口領域と、少なくとも1つの線形イオントラップから外へ放射方向に励起されたイオンをトランスファさせるための出口領域と、励起されていないイオンが少なくとも1つの線形イオントラップから流出することを防止するように、DCポテンシャル障壁を印加するための少なくとも1つのDC(直流)電極と、少なくとも1つの線形イオントラップに捕捉され、それにより、放射方向に励起されたイオンを産生する、イオンの選択的放射方向励起のための入口領域と出口領域との間の放射方向励起領域と、放射方向に励起されない、励起されていないイオンが、少なくとも1つの線形イオントラップの中にとどまっている間に、第1の軸方向加速領域および第2の軸方向加速領域による、放射方向に励起されたイオンへの力の複合効果が、放射方向に励起されたイオンにDCポテンシャル障壁を克服させるように、RF電場強度の低減によって産生される擬似ポテンシャルにより、出口領域に向かって長手軸に沿って、放射方向に励起されたイオンをさらに加速するための第2の軸方向加速領域とを備える。質量分析計はさらに、少なくとも1つの線形イオントラップから流出する、放射方向に励起されたイオンの少なくとも一部分を受容し、分析するための検出デバイスを備える。
第1の軸方向加速領域は、イオン源と少なくとも1つの線形イオントラップとの間に位置することができ、第1の軸方向領域の中の加速は、長手方向DCポテンシャルをイオンの前記少なくとも一部分に提供することによって起こる。
第1の軸方向加速領域は、出口領域より前の少なくとも1つの線形イオントラップの中に位置し、第1の軸方向領域の中の加速は、放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をそこで生成するように、第1の軸方向加速領域の中でRF電場における差を提供するステップと、第1の軸方向加速において長手方向DCポテンシャルを提供するステップとのうちの少なくとも1つによって起こることができる。RF電場における差を提供するステップは、第1の加速領域の中でRF勾配を提供するステップを含むことができる。少なくとも1つのイオントラップは、RF電極を備え、RF電極の間の放射距離は、RF電場における差を提供するステップが、距離の変化により起こるように、第1の軸方向加速領域の中で増加する。RF電極の間の距離は、RF電極の形状の変化に起因し得る。RF電極は、第1の軸方向加速領域の中で直径が減少している、第1の軸方向加速領域の中でテーパ状である、および第1の軸方向加速領域の中で階段状であるのうちの少なくとも1つである。
第1の加速領域は、放射方向励起領域と出口領域との間にあり得て、少なくとも1つの線形イオントラップは、放射方向励起領域の中の第1組のRF電極と、第1の加速領域の中の第2組の電極とを備えることができ、第2組のRF電極は、RF電場における差が、放射方向励起領域と第1の加速領域との間のRF電場の変化によって引き起こされるように、変化を引き起こす回路を介して、第1組のRF電極に電気的に接続される。言い換えれば、放射方向に励起されたイオンの軸方向加速は、RF電場の変化に起因する擬似ポテンシャル力に起因している。
第2の軸方向加速領域は、出口領域に隣接することができ、少なくとも1つのDC電極は、出口領域に隣接して位置することができる。
第2の軸方向加速領域は、第1の加速と出口領域との間に位置することができ、少なくとも1つのDC電極は、第1の加速と出口領域との間に位置することができる。
放射方向励起領域は、放射方向に励起されたイオンを産生するための少なくとも1組のRF電極と、長手方向DCポテンシャルを提供するための少なくとも1組のDC電極とを備えることができる。第2の軸方向加速領域は、出口領域に隣接することができ、少なくとも1つのDC電極もまた、出口領域に隣接して位置することができる。少なくとも1組のDC電極の間の距離は、DC電極の入口端からDC電極の出口端まで増加し、それにより、長手方向DCポテンシャルを提供することができる。少なくとも1組のDC電極のうちのそれぞれは、長手方向DCポテンシャルを産生するための一連の対向DC電極を備えることができ、一連の対向DC電極は、一連の各連続電極におけるDCポテンシャルステップとして、長手方向DCポテンシャルをイオンに印加するように独立して制御される。
放射方向励起領域は、第1の軸方向加速領域を備えることができ、放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、放射方向励起領域の中の分割RF電極に起因し得て、分割RF電極は、各々、放射方向加速領域の入口端から放射方向加速領域の出口端まで減少するそれぞれのDC電圧が印加されている。
放射方向励起領域は、第1の軸方向加速領域を備えることができ、放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、放射方向励起領域の中のRF電極上の抵抗被覆に起因している。
第1の軸方向加速領域は、放射方向励起領域と端部トラップとの間にあり得て、第1の軸方向加速領域の中で長手方向DCポテンシャルの差を提供するステップは、選択的放射方向励起中に放射方向加速領域の中でイオンを捕捉するために、第1の軸方向加速領域の中で第1のDCポテンシャルを印加するステップであって、第1のDCポテンシャルは、放射方向励起領域の中のDCポテンシャルよりも大きい、ステップと、放射方向励起領域の中のイオンが、第1の軸方向加速領域を通して加速され、長手方向DCポテンシャルおよび擬似ポテンシャルによる、放射方向に励起されたイオンへの力の組み合わせが、放射方向に励起されたイオンにDCポテンシャル障壁を克服させるように、第1のDCポテンシャルよりも小さく、かつ放射方向励起領域の中のDCポテンシャルよりも小さい第2のDCポテンシャルを、第1の軸方向加速領域の中で印加するステップとを含む。放射方向励起領域は、放射方向に励起されたイオンを産生するための少なくとも1組のRF電極と、減少するDCポテンシャルを提供するための少なくとも1組のDC電極とを備えることができ、第2のDCポテンシャルを印加する前に、減少DCポテンシャルは、放射方向励起領域の中で印加され、したがって、放射方向に励起されたイオンに付加的な加速力を印加する。
少なくとも1つの線形イオントラップは、AC(交流)電場と、RF電圧を選択されたイオンの不安定閾値に近づけるステップと、励起の持続時間にわたって不安定閾値に、またはそれ以上にRF電圧を増加させ、次いで、RF電圧を下げるステップと、のうちの少なくとも1つを介して、放射方向に励起されたイオンを産生することが可能となり得る。
第2の軸方向加速領域は、出口領域に隣接する、および出口領域の前にある、のうちの少なくとも1つとなり得る。
本明細書の第2の側面は、質量分析計における放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための方法を提供し、方法は、イオン源の中でイオンを産生するステップと、第1の軸方向加速領域の中で、質量分析計の長手軸に沿ってイオンの少なくとも一部分を長手方向に加速するステップと、第2の軸方向加速領域の中の擬似ポテンシャルを、イオントラップの中の放射方向に励起されたイオンに印加するステップとを含み、放射方向に励起されない、励起されていないイオンが、少なくとも1つの線形イオントラップの中にとどまっている間に、第1の軸方向加速領域および第2の軸方向加速領域による、放射方向に励起されたイオンへの力の複合効果が、放射方向に励起されたイオンにDC(直流)ポテンシャル障壁を克服させるように、擬似ポテンシャルは、RF電場強度の低減によって産生され、線形イオントラップは、イオン源から前記イオンを受容するように配設され、少なくとも1つの線形イオントラップは、その中にイオンを受容するための入口領域と、少なくとも1つの線形イオントラップから外へ放射方向に励起されたイオンをトランスファさせるための出口領域と、励起されていないイオンが少なくとも1つの線形イオントラップから流出することを防止するように、DCポテンシャル障壁を印加するための少なくとも1つのDC電極と、少なくとも1つの線形イオントラップに捕捉され、それにより、放射方向に励起されたイオンを産生する、イオンの選択的放射方向励起のための入口領域と出口領域との間の放射方向励起領域とを備える。方法はさらに、検出デバイスにおいて放射方向に励起されたイオンの少なくとも一部分を分析するステップを含む。
少なくとも1つの線形イオントラップは、AC(交流)電場と、RF電圧を選択されたイオンの不安定閾値に近づけるステップと、励起の持続時間にわたってRF電圧を増加させ、次いで、RF電圧を下げるステップとのうちの少なくとも1つを介して、放射方向に励起されたイオンを産生することが可能となり得る。
本明細書の第3の側面は、質量分析計における放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための方法を提供し、方法は、イオン源からのイオンを、RAATに使用可能な線形イオントラップの中へ放出するステップと、線形イオントラップの中で放射方向に励起されたイオンを産生するように、イオンの少なくとも一部分を放射方向に励起するステップと、質量分析計の長手軸に沿って、イオンおよび放射方向に励起されたイオンのうちの少なくとも1つを加速するステップであって、加速するステップは、放射方向に励起するステップの前、および放射方向に励起するステップの後のうちの少なくとも1つで起こる、ステップと、放射方向に励起されないイオンが、線形イオントラップの中にとどまっている間に、加速するステップおよびさらに加速するステップによる、放射方向に励起されたイオンへの力の組み合わせが、放射方向に励起されたイオンにDCポテンシャル障壁を克服させ、線形イオントラップから流出させるように、RF電場強度の低減によって産生される擬似ポテンシャルにより、長手軸に沿って放射方向に励起されたイオンをさらに加速するステップとを含む。
加速するステップは、放射方向に励起するステップの前に起こることができる。加速するステップはさらに、イオン源と線形イオントラップとの間で起こることができる。
加速するステップは、放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をその間で生成するように、出口領域より前の線形イオントラップの中でRF電場における差を提供するステップと、イオンおよび放射方向に励起されたイオンのうちの少なくとも1つに長手方向DCポテンシャルを提供するステップと、のうちの少なくとも1つによって起こることができる。RF電場における差を提供するステップは、線形イオントラップの中のRF電極の間の増加する放射距離と、RF電極の形状の変化と、線形イオントラップの少なくとも第1の部分の中のRF電極の直径の減少と、RF電極が線形イオントラップの少なくとも第2の部分の中でテーパ状であることと、RF電極が線形イオントラップの少なくとも第3の部分の中で階段状であることと、線形イオントラップが、第1組のRF電極と、出口領域に隣接する少なくとも第2組のRF電極とを備え、第2組のRF電極は、RF電場における差を引き起こす回路を介して、第1組のRF電極に電気的に接続されることと、のうちの少なくとも1つによって、RF勾配を提供するステップを含むことができる。
長手方向DCポテンシャルを提供するステップは、線形イオントラップの中で長手方向に延在する、少なくとも1組のDC電極の間の距離を増加させることによって起こることができる。
長手方向DCポテンシャルを提供するステップは、線形イオントラップの中で長手方向に延在する、一連の対向DC電極を提供することによって起こることができ、一連の対向DC電極は、長手方向DCポテンシャルを産生するためのものであり、一連の対向DC電極は、一連の中の各連続電極におけるDCポテンシャルステップとして、長手方向DCポテンシャルをイオンに印加するように独立して制御される。
放射方向励起領域は、第1の軸方向加速領域を備えることができ、放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、放射方向励起領域の中の分割RF電極に起因し得て、分割RF電極は、各々、放射方向加速領域の入口端から放射方向加速領域の出口端まで減少するそれぞれのDC電圧が印加されている。
放射方向励起領域は、前記第1の軸方向加速領域を備えることができ、放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、放射方向加速領域の中のRF電極上の抵抗被覆に起因する。
方法はさらに、選択的放射方向励起中に線形イオントラップの放射方向加速領域の中でイオンを捕捉するために、出口領域に隣接して第1のDCポテンシャルを印加するステップであって、第1のDCポテンシャルは、放射方向励起領域の中のDCポテンシャルよりも大きい、ステップと、放射方向励起領域の中のイオンが、出口領域へ加速され、長手方向DCポテンシャルおよび擬似ポテンシャルによる、放射方向に励起されたイオンへの力の組み合わせが、放射方向に励起されたイオンにDCポテンシャル障壁を克服させるように、出口領域に隣接して第2のDCポテンシャルを印加するステップであって、第2のDCポテンシャルは、第1のDCポテンシャルよりも小さく、かつ放射方向励起の中のDCポテンシャルよりも小さい、ステップとによって、線形イオントラップから放射方向に励起されたイオンを抽出するステップをさらに含むことができる。方法はさらに、第2のDCポテンシャルを印加する前に、放射方向励起領域の中のDCポテンシャルを減少させ、したがって、放射方向に励起されたイオンに付加的な加速力を印加するステップを含むことができる。
本明細書の第4の側面は、放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための質量分析計を提供し、質量分析計は、イオン源と、イオン源からイオンを受容するように配設される少なくとも1つの線形イオントラップとを備え、少なくとも1つの線形イオントラップは、その中にイオンを受容するための入口領域と、少なくとも1つの線形イオントラップから外へ放射方向に励起されたイオンをトランスファさせるための出口領域と、励起されていないイオンが少なくとも1つの線形イオントラップから流出することを防止するように、DCポテンシャル障壁を印加するための少なくとも1つのDC(直流)電極と、線形イオントラップに捕捉され、それにより、AC(交流)電場の印加を介して放射方向に励起されたイオンを産生する、イオンの選択的放射方向励起のための入口領域と出口領域との間の放射方向励起領域と、放射方向励起領域と少なくとも1つの線形イオントラップの出口との間の軸方向加速領域であって、放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をそこで生成するように、軸方向加速領域の中にRF電場における差を提供することによって、質量分析計の長手軸に沿ってイオン源からのイオンの少なくとも一部分を軸方向に加速するための軸方向加速領域とを備え、RF電場における差は、少なくとも1つの線形イオントラップの中のRF電極の間の増加する距離と、RF電極の形状の変化と、線形イオントラップの少なくとも第1の部分の中のRF電極の直径の減少と、RF電極が線形イオントラップの少なくとも第2の部分の中においてテーパ状であることと、RF電極が線形イオントラップの少なくとも第3の部分の中において階段状であることと、線形イオントラップが、第1組のRF電極と、出口領域に隣接する少なくとも第2組のRF電極とを備え、第2組のRF電極は、RF電場における差を引き起こす回路を介して、第1組のRF電極に電気的に接続されることと、のうちの少なくとも1つからのRF勾配によって提供される。少なくとも1つの線形イオントラップは、励起されていないイオンが前記出口に到達することを防止するようにDC(直流)ポテンシャル障壁を提供するための、放射方向励起領域と出口との間の少なくとも1つの電極をさらに備え、放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力は、放射方向に励起されたイオンがDCポテンシャル障壁を克服し、少なくとも1つのイオントラップから流出するように、DCポテンシャル障壁を克服するためのものである。質量分析計は、少なくとも1つのイオントラップから流出する、放射方向に励起されたイオンの少なくとも一部分を受容し、分析するための検出デバイスをさらに備える。
質量選択的軸方向放出(MSAE)は、質量分析計の線形イオンガイドの中でイオンを選択し、放出する方法である。一連の着目イオンは、線形イオンガイドに捕捉され、次いで、イオンガイドの出力端を通して質量選択的に放出される。着目イオンは、電圧がイオンガイドの出力端付近に位置するDC障壁電極に供給されている間に、最初に励起される。電圧は、励起されたイオンが開口を介して流出することを可能にしながら、励起されていないイオンが障壁を横断することを防止するように設定される。励起されたイオンは、イオンガイドの端部に存在するフリンジ電場によって及ぼされる付加的な軸方向力により、障壁を横断し、開口を通って流出することができる。軸方向力の大きさは、放射方向励起の振幅に依存している。
高い放射方向振幅(および高い放射エネルギー)を有するイオンが、流出するイオンの比較的大きい円錐角により、開口において失われ得るため、放出の効率が損なわれ得る。加えて、たとえイオンが開口をうまく通り抜けても、隣接イオンガイドが高い放射方向振幅を伴うイオンを含有できないことにより、または軸から遠く離れた高いフリンジ電場に暴露されたときに高い軸方向エネルギーを獲得するイオンの広範な断片化により、依然としてイオンが失われ得る。
実装は、以下の図を参照して説明される。
図1は、非限定的実装による、質量分析計のブロック図を図示する。 図2は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図3は、非限定的実装による、図2の線形イオントラップを含む、質量分析計において印加することができる、DCプロファイルを図示する。 図4は、非限定的実装による、図2の線形イオントラップのプロトタイプから流出するイオンのイオン強度を図示する。 図5Aは、非限定的実装による、線形イオントラップの長さに沿った座標(x)の関数として描画された、複合DCポテンシャルおよび擬似ポテンシャル分布の基本モデルのグラフを図示する。 図5Bは、非限定的実装による、線形イオントラップの長さに沿った座標(x)の関数として描画された、複合DCポテンシャルおよび擬似ポテンシャル分布の基本モデルのグラフを図示する。 図6は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図7は、非限定的実装による、図6の線形イオントラップを含む、質量分析計において印加することができる、DCプロファイルを図示する。 図8は、非限定的実装による、図6の線形イオントラップの断面図を図示する。 図9は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図10は、非限定的実装による、図9の線形イオントラップを含む、質量分析計において印加することができる、DCプロファイルを図示する。 図11は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図12は、非限定的実装による、図11の線形イオントラップを含む、質量分析計において印加することができる、DCプロファイルを図示する。 図13は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図14は、非限定的実装による、図13の線形イオントラップを含む、質量分析計において印加することができる、DCプロファイルを図示する。 図15〜17は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図15〜17は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図15〜17は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図18は、非限定的実装による、質量分析計のブロック図を図示する。 図19は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための方法のフローチャートを図示する。 図20は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図21は、非限定的実装による、一連のDC電極として使用される、PCB(プリント回路基板)の斜視図を図示する。 図22〜24は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図22〜24は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。 図22〜24は、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファのための線形イオントラップのブロック図を図示する。
図1は、質量分析計100を図示し、質量分析計100は、イオン源120と、イオンガイド130と、線形イオントラップ140と、衝突セル150(例えば、断片化モジュール)と、検出器160とを備え、質量分析計100は、イオン源120から検出器160を通してイオンビームを伝送することが可能である。いくつかの実装では、質量分析計100はさらに、イオン化可能物質をイオン化するようにイオン源120を制御すること、および質量分析計100のモジュール間のイオンのトランスファを制御することを含むが、それらに限定されない、質量分析計100の動作を制御するためのプロセッサ185を備えることができる。動作中、イオン化可能物質は、イオン源120に導入される。イオン源120は、概して、イオンガイド130(また、Q0として識別され、イオンガイド130が質量分析に関与しないことを示す)にトランスファさせられる、イオンビームの形式でイオン190を産生するように、イオン化可能物質をイオン化する。イオン190は、以下の図でさらに図示されるように、イオンガイド130から、質量フィルタとして、または線形イオントラップとして動作することができる四重極140(また、Q1として識別される)にトランスファさせられる。次いで、濾過されたか、または濾過されていないイオンが、以下で説明されるように、所望の順序でイオン191を放出するように制御することができる、q2としても識別される衝突セル150に進入する。いくつかの実装では、イオン191を衝突セル150の中で断片化されることができる。衝突セル150は、四重極、六重極、または八重極等の多重極を含むが、それに限定されない、任意の好適なRFイオンガイドを含むことができると認識される。次いで、イオン191は、質量スペクトルの産生のために検出器160にトランスファさせられる。そうする際に、イオン191は、その中に進入するイオン191の質量スペクトルを産生することが可能である検出器160に進入する。いくつかの実装では、衝突セル150は、四重極140と機械的に同様の四重極を備える。他の実施形式では、衝突セルは、イオンの断片化が、電子捕獲解離、電子トランスファ管理、光解離、表面誘起解離、準安定粒子との相互作用による解離、または同等物を含むが、それらに限定されない任意の好適な方法によって達成される、断片化セルに置換することができる。
さらに、図示されていないが、質量分析計100は、イオン源120、イオンガイド130、四重極質量フィルタ140、衝突セル150、および/または検出器160の中に好適な真空を提供するために、任意の好適な数の真空ポンプを備えることができる。いくつかの実装では、質量分析計100の特定の要素の間に真空差を生成することができ、例えば、イオン源120が大気圧にあり、イオンガイド130が真空下にあるように、真空差が、概して、イオン源120とイオンガイド130との間に印加されることが認識される。また、図示されていないが、質量分析計100は、任意の好適な数のコネクタ、電源、RF(無線周波数)電源、DC(直流)電源、(例えば、イオン源120および/または衝突セル150用の)ガス源、および質量分析計100の動作を可能にするための任意の他の好適な構成要素をさらに備えることができる。
ここで、衝突セル150および検出器160と一直線上にある、非限定的実装による、放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための線形イオントラップ200を図示する図2に注目する。したがって、図示した実装において、線形イオントラップ200は、図1の線形イオントラップ140を備える。しかしながら、さらなる実装では、線形イオントラップ200は、イオンガイド130を備えることができる。その上さらなる実装では、線形イオントラップ200は、衝突セル150を備えることができる。
線形イオントラップ200は、入口領域201と、放射方向励起領域203と、第1の軸方向加速領域205と、第2の軸方向加速領域207と、出口領域209とを備える。
図2でST1とも標識される入口領域201は、例えば、イオン源120からイオン190を受容するための領域、またはイオン源120と線形イオントラップ200との間の質量分析計100の任意の他の要素を備える。入口領域201は、概して、四重極、六重極、または八重極等の多重極を含むが、それに限定されない、イオンを線形イオントラップ200の中へ受容するための任意の好適な線形イオンガイド211を備える。
入口領域211と、207に対する出口領域との間に位置する放射方向励起領域203は、線形イオントラップ200に捕捉されたイオンの選択的放射方向励起のために使用可能にされ、それにより、任意の好適なAC(交流)電場を介して放射方向に励起されたイオンを産生する。代替として、線形イオントラップ200は、RF電圧を選択されたイオンの不安定閾値まで近づけること、または励起の持続時間にわたって不安定閾値付近までRF電圧を増加させ、次いで、RF電圧を下げることのうちの少なくとも1つによって、放射方向に励起されたイオンを産生することが可能となり得る。そのようなものとして、放射方向励起領域203は、概して、四重極、六重極、または八重極等の多重極を含むが、それに限定されない、その中にイオンを含有し、選択的放射方向励起を行うための任意の好適な線形イオンガイド213を備える。イオンの選択的放射方向励起は、参照することにより本明細書に組み込まれる、“Mass Selective Axial Ion Ejection from Linear Quadropole Ion Trap” by F.A.Londry and James W.Hager,J.Am.Soc.Mass Spectrom.2003,14,1130−1147で説明されている。線形イオンガイド213の入口は、図2においてIEと標識されている。
線形イオントラップ200はまた、線形イオンガイド215と、出口電極217とも呼ばれる少なくとも1つの出口電極217とを備える。線形イオンガイド215は、線形イオンガイド213と出口電極217との間に位置し、四重極、六重極、および八重極を含むことができるが、それらに限定されない。その中にイオンを含有するための放射方向RF電場を線形イオンガイド215に印加できることが認識される。線形イオンガイド215の出口はまた、図2においてOEと標識されている。
第1の軸方向加速領域205は、以下で説明されるように、長手方向DCポテンシャルによって提供される第1の長手方向加速力F1がイオンに印加される、線形イオンガイド213と線形イオンガイド215との間の遷移領域を備える。しかしながら、一般に、第1の軸方向加速領域205は、質量分析計100の長手軸に沿ってイオン源120からイオン190の少なくとも一部分を軸方向に加速するために使用可能であることが認識される。
出口領域207は、イオン190が線形イオントラップ200から流出することを防止するために、DC(直流)ポテンシャル障壁を印加するために使用可能である。例えば、DCポテンシャル障壁は、出口電極217に印加することができる。出口電極217は、それに印加されたDCポテンシャル障壁を克服するイオンが通過することができる開口を備える。
第2の軸方向加速領域207は、線形イオンガイド215の出口端および/または出口領域209に隣接する領域を備える。第2の軸方向加速領域207は、出口領域209に隣接するRF電場強度の低減によって産生される擬似ポテンシャルに起因して、出口領域209に向かって長手軸に沿って放射方向に励起されたイオン190をさらに加速するために使用可能であり、その結果、放射方向に励起されないイオン190が線形イオントラップ200の中にとどまっている間、第1の軸方向加速領域205および第2の軸方向加速領域207に起因する放射方向に励起されたイオン190への力の組み合わせが、放射方向に励起されたイオン190にDCポテンシャル障壁を克服させる。
第2の軸方向加速領域207では、線形イオンガイド215に印加されたRF電場の縁は、“Mass Selective Axial Ion Ejection from Linear Quadropole Ion Trap” by F.A.Londry and James W.Hager,J.Am.Soc.Mass Spectrom.2003,14,1130−1147で説明されるように、その中に含有される放射方向に励起されたイオンがフリンジ擬似ポテンシャルを受けるようにする。フリンジ擬似ポテンシャルは、放射方向に励起されたイオンが出口領域209に向かう長手方向力F2を受けるようにする。力F2は、放射方向に励起されたイオン310の励起の振幅にさらに依存していることが認識される。その上、F2は長手軸上で「0」であるが、長手軸からの放射距離とともに増加することがさらに認識される。
従来技術では、少なくとも1つの出口電極に印加されるDCポテンシャル障壁を克服するために、F2は、概して、イオンの励起の振幅を増加させることによって増加させられる。しかしながら、これは、放射方向に励起されたイオンの非常に大きい出口角につながり、次いで、イオンは、出口電極の開口において、または選択的放射方向励起が起こっている線形イオントラップと衝突セル等の次のモジュールとの間において、失われ得る。言い換えれば、出口角が非常に大きいので、流出するイオンが質量分析計を通る経路から逸脱する。
線形イオントラップ200におけるこの問題を克服するために、DCポテンシャルを、線形イオンガイド211、213、215、出口電極217、および衝突セル150の各々に独立して印加できることがさらに認識される。例えば、図3に注目すると、DCポテンシャルの第1のプロファイル300が図示されており、このプロファイルは、図2のような識別子ST1、IE、OE、ST2、IQ2およびQ2によって識別される線形イオンガイド211、213、215、出口電極217、および衝突セル150に印加されることができ、IEおよびOEは、それぞれ、線形イオンガイド213への入口および出口を示す。IQ2におけるプロファイル300の中のピークは、出口電極217に印加されたDCポテンシャル障壁を表す。DCポテンシャルST1およびST2が、IEとOEとの間のDCポテンシャルよりも高いので、プロファイル300の中の線形イオンガイド211、213、215に印加されるDCポテンシャルは、線形イオンガイド213の中にイオン190を含有するポテンシャル井戸を作成し、その結果、イオン190を領域203の中に捕捉することができることがさらに認識される。いったんイオン190が捕捉されると、イオン190は、着目イオンの放射方向運動の周波数と共鳴した補助AC電場の印加によって、選択的に放射方向に励起することができる。例えば、イオン190は、最初に、線形イオンガイド211を介して線形イオントラップ200の中へ放出することができ、次いで、イオン290は、プロファイル300の印加を介して、線形イオンガイド213の中で捕捉し、冷却することができ、次いで、線形イオンガイド213に捕捉されたイオン190は、放射方向に励起されたイオン310を産生するように、線形イオンガイド213の中で選択的に放射方向に励起することができる。例えば、放出過程は、1msにわたって起こることができ、捕捉および冷却過程は、100msにわたって起こることができ、励起過程は、1msにわたって起こることができる(共鳴状態にあるイオン190の放射方向運動を励起するように線形イオントラップ213のロッドに印加された60mVのAC電圧で)。さらに、線形イオントラップ213の中の圧力を上昇させることによって、捕捉および冷却過程のための時間を短縮することができる。いくつかの実装では、捕捉期間中にバッファガス流を開くパルス状弁(図示せず)を利用することによって、(例えば、IEとOEとの間の)捕捉領域の中の緩衝ガスの圧力を捕捉期間中に上昇させることができる。さらに、線形イオンガイド113に印加されるAC電場の少なくとも周波数を制御することによって、放射方向に励起されたイオン310を産生するように、イオン190の任意の好適な一部を励起のために選択できることが認識される。代替として、放射方向閉じ込めに使用されるRF電場の適切な振幅を選択することによって、着目イオンの放射方向振動周波数を、所定のAC周波数と一致するように調整することができる。さらに、選択の特異性は、概して、励起過程がより低い圧力で起こる時に、より高く、したがって、パルス状弁は、イオンの急速捕捉のために、および励起過程中に緩衝ガスの圧力を低減するために有益となり得ることが認識される。
しかしながら、いったん選択的放射方向励起が線形イオンガイド213の中で起こると、イオン190を線形イオンガイド215の中へ加速するように、第2のプロファイル303が質量分析計200において印加される。プロファイル303は、プロファイル300と実質的に同様であるが、ここでは線形イオンガイド215の中のDCポテンシャルは、IEとOEとの間の(すなわち、線形イオンガイド213の中の)DCポテンシャルよりも小さいことが認識される。したがって、放射方向に励起されたイオン310を含む、プロファイル300による、線形イオンガイド213に捕捉されたイオン190は、ここでは、ポテンシャルの降下により出口領域207に向かって加速される。ポテンシャルの降下は、長手方向力F1を、放射方向に励起されたイオン310を含むイオン310に印加させることが認識される。長手方向力F1はまた、以降でF1としても交換可能となる。
しかしながら、F1による、放射方向に励起されたイオン310を含むイオン190の加速は、イオン190がIQ2/出口領域207におけるDCポテンシャル障壁を克服するために十分ではないことが認識される。しかしながら、放射方向に励起されたイオン310は、出口領域207におけるRF電場強度の降下に起因するフリンジ擬似ポテンシャルにより、出口領域207において長手方向力F2(以降で交換可能に力F2と呼ばれる)を受ける。力F2はさらに、放射方向に励起されたイオン310の励起の振幅に依存しており、励起されていないイオンは、F2を受けないことが認識される。したがって、力F1による放射方向に励起されたイオン310が受ける加速、および力F2による放射方向に励起されたイオン310が受けるさらなる加速の組み合わせが、放射方向に励起されたイオンに、IQ2におけるDCポテンシャル障壁を克服させ、線形イオントラップ200から流出させる。励起されていないイオンが力F2を受けないため、励起されていないイオンは、F1に暴露されるにもかかわらず、線形イオントラップ200から流出しない。
図3では、Uaは、線形イオンガイド215の中の(すなわち、IEとOEとの間の)DCポテンシャルと、ST2におけるDCポテンシャルとの間の差であると認識される。さらに、Ubは、ST2におけるDCポテンシャルとIQ2におけるDCポテンシャル障壁との間の差であると認識される。Uaはまた、加速ポテンシャルUaと呼ぶこともでき、Ubはまた、障壁の高さUbと呼ぶこともできる。
したがって、0Vから約8.5Vに及ぶ障壁の高さUbについて、0V(曲線410)、−0.2V(曲線420)、−1V(曲線430)、−2V(曲線440)、および−4V(曲線450)の加速ポテンシャルUaに対する線形イオントラップ200の成功したプロトタイプから流出する、放射方向に励起されたイオンのイオン強度の測定の結果を図示する図4に注目する。図4はまた、−0.1V(曲線460)、−1V(曲線470)の加速ポテンシャルUaに対する線形イオントラップ200の成功したプロトタイプから流出する、励起されていないイオンのイオン強度の測定の結果も図示する。イオン強度は、正規化されており、恣意的な単位を有する。Ubのゼロ点(すなわち、Ub=0V)は、高いおよび低い放射方向振幅を有するイオン間の分離を伴わずに、励起のないイオンが衝突セル150/Q2の中に効果的にトランスファするポテンシャルに対応する。励起されたイオン(曲線410−450)と励起されていないイオン(曲線460、470)との間の分離は、より高い障壁電圧において起こる。Ua=0Vを有する励起されたイオンに対応する曲線410は、任意の障壁電圧において、最も低い励起イオン強度(最低トランスファ効率に対応する)を有する。より高い軸方向エネルギーは、IQ2におけるDCポテンシャル障壁を横断してトランスファするように放射方向に励起されたイオン310を支援することが認識される。さらに、従来技術と比較して、放射方向に励起されたイオン310の抽出の効率が向上させられるだけでなく、効率が高い、障壁の高さUbのポテンシャルの範囲も増加させられ、したがって、線形イオントラップ200は、従来技術と比較して、緩和電圧公差を有する。
RAATの単純化された理論は、より高い軸方向エネルギーとともに(すなわち、放射方向に励起されたイオン310への力F2に加えて印加される軸方向力F1とともに)、イオン抽出の効率が増加する理由を説明することができる。理論は、イオン運動が2つの力の影響を受けると仮定し、1つの力は、DCポテンシャル分布、すなわち、DC障壁力に由来し、もう1つの力は、振動電圧、すなわち、力F2の正味の効果に由来する。力F2は、擬似ポテンシャル力であると認識される。したがって、線形イオントラップ200の中のイオン運動は、DCポテンシャルおよび擬似ポテンシャルの複合作用によって管理されることが認識される。
ポテンシャルおよび擬似ポテンシャル分布の重要な特徴は、「範囲」と呼ぶことができる特性である。範囲は、ポテンシャル分布がわずかな値まで減少している、線形イオントラップ200の長手軸に沿った距離であり、すなわち、範囲は、線形イオントラップ200の内側で、どれだけ深くそのポテンシャル分布が浸透するかという尺度である。
一般に、IQ2におけるDC障壁ポテンシャル等のDCポテンシャルの範囲は、出口領域207の中のRF電場縁による擬似ポテンシャル等の擬似ポテンシャルの範囲よりも大きくなり得ることが認識される。該効果は、複合(ポテンシャルおよび擬似ポテンシャル)分布Uが、線形イオントラップ200の長さに沿った無次元座標(x)の関数として描画される、図5Aで図示されている。x=0は、出口領域の中の線形イオントラップ200の内側の位置を画定し、具体的には、x=0は、IQ2におけるDCポテンシャル障壁が、フリンジ電場を伴う領域(すなわち、出口領域207)付近で線形イオントラップ200の中のイオン190に影響を及ぼし始める、位置と一致するように選択される。xのより高い値は、フリンジ電場の効果が増加する、線形イオントラップ200の端部に向かった領域を表す。曲線501は、IQ2におけるDCポテンシャル障壁によるDCポテンシャル分布を示し、曲線501は、放射方向励起がないイオンがフリンジ電場領域(すなわち、出口領域207)から反射された時に受ける、ポテンシャルを表すことが認識される。曲線503は、フリンジRF電場による擬似ポテンシャル分布を表す。曲線501を曲線503と比較すると、擬似ポテンシャルは、DCポテンシャルの範囲の約半分しかない範囲を有することが認識される。曲線505は、所与の強度に対する複合擬似ポテンシャル分布およびDCポテンシャル分布を図示する。図5の曲線501、503、および505は、RF擬似ポテンシャルUおよびDC障壁ポテンシャルの単純化xモデルに基づき、線形イオントラップ200では、xは、概して、線形イオントラップ200の軸に沿った無次元座標を表し、x=0は、IQ2DC障壁の効果がごくわずかになる領域に対応する、領域である一方で、x=1は、ちょうどIQ2障壁における場所に対応することが認識される。x=0.5は、励起されたイオンに作用する擬似ポテンシャル場の大きさが増大し始める、x座標に沿った中間点を画定することが認識される(例えば、曲線503参照)。
さらに、単純化xモデルは、例示目的のためにすぎず、実際のポテンシャルは、より複雑な法則に従うことが認識される。
いずれにしても、曲線505は、放射方向励起の所与の大きさに対して、出口領域207中の線形イオントラップ200の中の放射方向に励起されたイオン310が受ける、擬似ポテンシャルおよびDCポテンシャルの合計を表す。これらの条件下で、このモデルによれば、放射方向に励起されたイオン310は、そのようなポテンシャル分布を通してトランスファさせられるために少なくとも0.3Vの軸方向エネルギーを必要とすることが、曲線505から認識される。しかしながら、0.3Vは、近似値にすぎず、過度に限定的と見なされるものではないことが認識される。いずれにしても、付加的な0.3Vの初期イオンエネルギーを、第1の軸方向加速領域205からの力F1から取得することができる。そのエネルギーがない場合、たとえ放射方向に励起されたイオン310が十分な量の放射方向励起を獲得していても、放射方向に励起されたイオン310は、IQ2におけるDC障壁から流出することができない。上記で説明される例示的なxモデルでは、少なくとも0.3Vの初期軸方向エネルギーを伴わない、放射方向に励起されたイオン310は、それらの放射方向励起(およびF2の大きさが)どれだけ高くても、障壁を横断することができない。しかしながら、線形イオントラップ200の成功したプロトタイプでは、放射方向に励起されたイオン310が線形イオントラップ200から流出するポテンシャルの範囲は、少し曖昧であり、十分高い励起において、放射方向に励起されたイオン310は、IQ2における障壁を依然として横断することができるが、過程の効率は、図4の曲線410によって図示されるように損なわれる。
曲線501、503、および505が適用可能である実装は、図2、ならびに以下で説明される図6、9、11、および13によって表される。
しかしながら、フリンジ擬似ポテンシャルに起因する力F2に加えて、DCポテンシャルの任意の好適な配設および実装、または放射方向に励起されたイオンを少なくとも1つの付加的な長手方向力に暴露するためのRF電場強度の変化が、本明細書の範囲内である。
ここで、複合(ポテンシャルおよび擬似ポテンシャル)分布Uが、図5Aと同様に、線形イオントラップ200の長さに沿った無次元座標(x)の関数として描画される、図5Bに注目する。しかしながら、図5Bは、擬似ポテンシャル(曲線510)の範囲がDC障壁ポテンシャル(曲線512)の範囲よりも大きく、曲線514が曲線510および512の合計を表す、実装のポテンシャル分布を図示する。この配設では、励起されたイオンが線形イオントラップ200から選択的にトランスファさせられるために、いずれの初期エネルギーも必要とされず、励起されていないイオンは、依然としてDC障壁によって反発される。これらの実装では、付加的な力F1は、トランスファ過程を加速し、それが実際の用途では重要であるため、有益である。力F1の別の利益は、ロッド上の種々の点における表面帯電による、長手方向DCポテンシャルの不完全性の克服にある。そのような実装は、以下で説明される図16、17、18、21、および23によって表される。
ここで、「2」ではなく、「6」が先行する類似番号を有する類似要素を有する線形イオントラップ200と同様の線形イオントラップ600を図示する図6に注目する。例えば、入口領域601は、出口領域201と同様である。さらに、イオンビーム190、衝突セル150、および検出器160も、図6のように図示されている。しかしながら、これらの実装では、線形イオンガイド613は、長手方向DCポテンシャルを提供するための少なくとも1組の対向DC電極620を含む。DC電極620は、その間の距離が、線形イオンガイド613への入口付近から線形イオンガイド613の出口付近まで増加するようにテーパ状である。したがって、DC電極(および線形イオントラップ613の主要ロッドセット)の間にDCポテンシャル差を印加することによって、減少するDCプロファイルを、線形イオンガイド613の中に貯蔵されたイオン190に印加することができ、長手方向DCポテンシャルをもたらし、したがって、軸方向力F1−Aが、線形イオンガイドの中に貯蔵されたイオン190に印加される。
代替として、DC電極620を除去し、線形イオンガイド613の主要ロッドセットを、抵抗被覆が塗布されているロッドセットと交換し、次に、任意のRFおよび/またはACポテンシャルに加えて、線形イオンガイド613の入口端に向かってDCポテンシャルを印加することによって、力F1−Aと同様の力をイオン190に印加することができる。したがって、イオン190は、線形イオンガイド613の入口端から線形イオンガイド613の出口端まで長手軸に沿って減少するDCポテンシャルを受け、したがって、長手方向加速力を受ける。
さらに、図7に注目し、図7は、線形イオントラップ600を備える質量分析計において印加することができるDCプロファイル700、701、703を図示する。DCプロファイル700および703は、それぞれ、図3のDCプロファイル300および303と同様である。したがって、イオン190を、線形イオンガイド613の中のIEとOEとの間に捕捉することができ、放射方向に励起されたイオン310と同様の放射方向に励起されたイオン710を産生するように、選択的なAC励起電場を印加することができる。次いで、DCポテンシャルがDC電極620に印加されるDCプロファイル701を印加することができ、IEとOEとの間に減少するDC電場を産生し、したがって、放射方向に励起されたイオン710を含む、線形イオンガイド613に捕捉されたイオン190に、力F1−Aを印加する。次いで、放射方向に励起されたイオン710を含むイオンに力F1を印加するために、図3のDCプロファイル303と同様のDCプロファイル703を印加することができる。傾斜DC電場に起因する力F1−A、線形イオンガイド613と線形イオンガイド615との間のポテンシャル差に起因する力F1、および出口領域606の中のフリンジ擬似ポテンシャルに起因する力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオン710が、IQ2におけるDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ600から流出することを可能にする。励起されていないイオンが力F2を受けないので、励起されていないイオンは線形イオントラップ600から流出しない。さらに、放射方向に励起されたイオン710が、力F1−A、F1、およびF2の組み合わせにより加速されるので、励起の振幅は、出口領域の中のDCポテンシャル障壁を克服するために擬似ポテンシャル力のみに依存する、線形イオントラップの中のイオンを用いるよりも小さくなり得る。
線形イオンガイド613が多重極を備える実装では、線形イオンガイド613は、線形イオンガイド613の中の各対のロッドに対する一対の対向DC電極620をさらに備えることができる。例えば、図8は、線形イオンガイド613と同様の線形イオンガイド813の断面図を図示し、線形イオンガイド613は、四重極を備え、従って、2対のロッド815(合計で4本のロッド815)を有する。線形イオンガイド813はさらに、2対の対向DC電極820を備え、各々は、各電極820が図7に図示されるように長手方向にテーパ状であるようにDC電極620と同様である。したがって、1つまたは複数の好適なAC電場を対向ロッド815に印加することによって、線形イオンガイド813に捕捉されたイオンを、選択的に放射方向に励起することができ、放射方向に励起されたイオンを含む、その中に捕捉されたイオンに力F1−Aを印加するために、DC電圧を対向DC電極820に印加することによって、線形イオンガイド813の入口から出口まで減少する傾斜DCポテンシャルを生成することができ、電極820に印加されるDC電圧は、電極815に印加されるDC電圧とは異なる。
ここで、図9に注目し、図9は、「6」ではなく、「9」が先行する類似番号を有する類似要素を有する線形イオントラップ600と同様の線形イオントラップ900を図示する。例えば、入口領域901は、出口領域601と同様である。さらに、イオンビーム190、衝突セル150、および検出器160も、図9のように図示されている。しかしながら、これらの実装では、線形イオンガイド913は、例えば、図10に図示されるDCプロファイル1001の場合のように、異なるDCポテンシャルを印加することができる少なくとも2つの対向する一連のDC電極920を含む。したがって、DC電極920の間のDCポテンシャルは、線形イオンガイド913の中のIEとOEとの間においてDCポテンシャルの減少を提供するために階段状となり得て、全体的な長手方向DCポテンシャルをもたらし、したがって、軸方向力F1−Bが、線形イオンガイド913に貯蔵されたイオン190に印加される。線形イオンガイド913の断面図は、図8の線形イオンガイド813の断面図と同様となり得る。図21に図示されるようないくつかの非限定的実施例では、各DC電極920は、プリント回路基板(PCB)2100を備えることができ、各PCB2100は、縁の上に電極2110(明確にするために1つだけの電極2101が示されている)を有し、(例えば、電極2110はそれぞれのPCB2100の縁の上に配置される)、各PCB2110の縁は、線形イオントラップ913の各ロッドの間に存在する。電極2110は、線形イオントラップ913の長手軸に向かっているPCB2100の縁まで延在することが認識される。PCB2100上の電極2110は、各PCB2100の平坦面に沿った2つの側面、およびPCB2100の縁の上の1つの側面といった、3つの側面を有することがさらに認識される。さらに、各一連の対向DC電極920は、ここで説明されるように、一連の各連続電極920におけるDCポテンシャルステップとして、長手方向DCポテンシャルをイオン190に印加するように(例えば、それぞれのPCB2100上で)独立して制御される。
ここで、図23に注目し、図23は、「9」ではなく、「23」が先行する類似番号を有する類似要素を有する線形イオントラップ900と同様の線形イオントラップ2300を図示する。例えば、入口領域2301は、入口領域901と同様である。しかしながら、図23では、線形イオンガイド2313の主要ロッドセットを分割し、力F1−Bと同様の力F1−Eを印加するために異なるDC電圧を異なるセグメントに印加することによって、DC電極920への同様の効果が達成される。これらの実装では、DC電極920を除去することができる。代替として、線形イオンガイド2313の分割RF電極は、各々、それぞれのRF電圧で駆動され、それぞれのRF電圧は、放射方向加速領域2303の入口端から放射方向加速領域2303の出口端まで減少する。例えば、各セグメントは、以下で説明される図17の回路C1と同様の回路を介して接続することができ、および/または各セグメントは独立して駆動することができる。
ここで、図10に注目すると、図10は、線形イオントラップ900を備える質量分析計において印加することができるDCプロファイル1000、1001、1003を図示する。DCプロファイル1000および1003は、それぞれ、図7のDCプロファイル700および703と同様である。したがって、イオン190を、線形イオンガイド913の中のIEとOEとの間に捕捉することができ、放射方向に励起されたイオン610と同様の放射方向に励起されたイオン1010を産生するために、選択的なAC励起電場を印加することができる。次いで、一連のDCポテンシャル差がDC電極920に印加されるDCプロファイル1001を印加することができ、IEとOEとの間に減少するDC電場を産生し、したがって、イオンへの長手方向DCポテンシャルを産生し、放射方向に励起されたイオン1010を含む、線形イオンガイド913に捕捉されたイオン190に力F1−Bを印加することをもたらす。次いで、放射方向に励起されたイオン1010を含むイオンに力F1を印加するために、DCプロファイル1003を図3のように印加することができる。傾斜DC電場に起因する力F1−B、線形イオンガイド913と線形イオンガイド915との間のポテンシャル差に起因する力F1、および出口領域907の中のフリンジ擬似ポテンシャルに起因する力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオン1010が、IQ2におけるDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ900から流出することを可能にする。励起されていないイオンが力F2を受けないので、励起されていないイオンは線形イオントラップ900から流出しない。さらに、放射方向に励起されたイオン710が、力F1−B、F1、およびF2の組み合わせにより加速されるので、励起の振幅は、出口領域の中のDCポテンシャル障壁を克服するために、擬似ポテンシャル力のみに頼る、線形イオントラップの中のイオンを用いるよりも小さくなり得る。
ここで、図11に注目すると、図11は、「6」ではなく、「11」が先行する類似番号を有する類似要素を有する線形イオントラップ600と同様の線形イオントラップ1100を図示する。例えば、入口領域1101は、出口領域601と同様である。さらに、イオンビーム190、衝突セル150、および検出器160も、図9のように図示されている。しかしながら、これらの実装では、DCポテンシャルを印加することができる少なくとも1組の対向DC電極1120を含む線形イオンガイド1113の出口は、少なくとも1つの出口電極1117に隣接する。言い換えれば、線形イオンガイド615の同等物が、線形イオントラップ1100の中には存在しない。むしろ、DC電極1120に印加されたDCポテンシャルは、軸上で長手方向DCポテンシャルをもたらし、したがって、図12のDCプロファイル1201で図示されるように、軸方向力F1−Cが、線形イオンガイド1113に貯蔵されたイオン190に印加される。
したがって、図12を参照すると、DCプロファイル1200、1201を、線形イオントラップ1100を備える質量分析計に印加することができる。DCプロファイル1200および1201は、それぞれ、図7のDCプロファイル700および701と同様であるが、ST2がDCプロファイル1200、1201にはない。むしろ、ST1におけるDCポテンシャルDC障壁ポテンシャルIQ2によって、放射方向に励起されたイオン1210が線形イオンガイド1113の中に含有される。次いで、DCポテンシャルを電極1120に印加することによって、軸方向力F1−CがIEとOEとの間に印加され、IQ2におけるDCポテンシャル障壁に向かって加速される放射方向に励起されたイオン1210を含む、IEとOEとの間に捕捉されたイオンを、軸方向力F1−Cに加速させる。傾斜DC電場に起因する力F1−C、および出口領域1107の中のフリンジ擬似ポテンシャルに起因する力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオン1210が、IQ2におけるDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ1100から流出することを可能にする。励起されていないイオンが力F2を受けないため、励起されていないイオンは線形イオントラップ1100から流出しない。さらに、放射方向に励起されたイオン1110が、力F1−CとF2との組み合わせにより加速されるので、励起の振幅は、出口領域の中のDCポテンシャル障壁を克服するのに擬似ポテンシャル力のみに頼る、線形イオントラップの中のイオンを用いるよりも小さくなり得る。したがって、図6および7に図示されるような軸方向力F1は、線形イオンガイド1100の中に存在しないが、力F1−Cの大きさは、軸方向力F1の欠如を補ってIQ2におけるDCポテンシャル障壁を克服するように調整される。
いくつかの実装では、DCプロファイル1200が、最初に線形イオンガイド1113の中にイオン190を捕捉するために、線形イオントラップ1100に印加される。次いで、DCプロファイル1201が、力F1−Cをイオン190に印加するように、線形イオントラップ1100に印加される。しかしながら、力F1−Cは、放射方向に励起されたイオン1210が、IQ2におけるDC障壁(例えば、図5Aの場合のような0.3V)を克服することに十分なエネルギーおよび/または加速を得るために、所与の期間中にのみ印加される。実際に、イオン190および/または放射方向に励起されたイオン1210が、線形イオンガイド1113に沿って空間的に分布するので、線形イオンガイド1113の出口領域により近い励起されていないイオン190は、いったん力F1−Cが印加されるとIQ2におけるDCポテンシャル障壁から反射され、線形イオンガイド1113の出口領域に隣接する領域の中に捕捉され、印加されているDCおよび/またはRF電場に影響を及ぼし得る空間電荷の蓄積につながる可能性があることが認識される。さらに、IE(すなわち、線形イオンガイド1113の入口)により近い、励起されていないイオン190を含むイオン190は、より長期間にわたって力F1−Cを受け、IQ2におけるDCポテンシャルに遭遇する前に、より多くのエネルギーを得る。これは、着目イオンに対する軸方向エネルギーの広い広がりをもたらし、次に、励起されたイオンと励起されていないイオンとの間の分離の質を損なう。図4に示される曲線460および440のU軸に沿ったぼやけを画像化することによって、軸方向エネルギーの広がりの悪影響を可視化できることに留意されたい。励起されていないイオンに対するぼやけた曲線(460)が、励起されたイオンに対するぼやけた曲線(曲線440)と重複し始めるときに、励起されたイオンと励起されていないイオンとの間の分離が損なわれる。
したがって、いくつかの実装においてこの問題を克服するために、DCプロファイル1201は、イオン190がIEからOEへ進行するための時間よりも10〜100倍短い期間にわたって印加される。したがって、F1−Cの大きさは、それに従って選択することができ、放射方向に励起されたイオン1210が、IQ2におけるDCポテンシャル障壁を克服するのに十分な量のエネルギーを軸方向に得るように十分長いが、イオン190のごくわずかのみが、F1−Cの印加中にIQ2における反射を受けるように十分短く、力F1−Cを印加することができる。F1−Cの印加中にIQ2において反射されるイオンは、残りのイオン(すなわち、IQ2から反射されないイオン)と同じ量の軸方向エネルギーを得ないことが認識される。したがって、場合によっては、IQ2において反射されるイオンのごくわずかは、たとえ放射方向励起があったとしても、RAAT技法を使用してトランスファさせられない場合がある。そのイオンのごくわずかは、分析のために失われる。しかしながら、ごくわずか(例えば、イオンの10%)の損失は、用途の大部分にとって容認可能である。したがって、放射方向に励起されたイオン1210を捕捉し、励起させ、トランスファさせるためのサイクルは、DCプロファイル1200を使用してイオン190を捕捉し、放射方向に励起されたイオン1210を産生するように選択された一群のイオン190を励起させ、力F1−Cを使用してイオンを「蹴飛ばす」ように短期間にわたってDCプロファイル1201を印加し、DCプロファイル1200を再印加し、放射方向に励起されたイオン1210をトランスファさせることを含むことができる。線形イオントラップ600、900、1300、2300、2400ならびに同様の問題が発生する任意の他の実装の中で、同じ種類のイオンに対する軸方向エネルギーの広がりを生じることを回避するために、同様の原則をDCプロファイル701、1001の印加に適用できることが認識される。
ここで、「11」ではなく、「13」が先行する類似番号を有する類似要素を伴う、線形イオントラップ1100と同様の線形イオントラップ1300を図示する、図13に注目する。例えば、入口領域1301は、出口領域1101と同様である。しかしながら、線形イオントラップ1300では、DC電極1220は、図9のDC電極920と同様のDC電極1320に置換されている。したがって、長手方向DCポテンシャルをもたらす、図14のDCプロファイル1401の場合のように、階段状の減少するポテンシャルを、DC電極1320の間に印加することができる。DCプロファイル1400および1401は、図12のDCプロファイル1200および1201と同様であり、線形イオントラップ1100を備える質量分析計と同様に印加することができるが、DCプロファイル1401は、放射方向に励起されたイオン1410を含む、その間に捕捉されたイオンに印加される、階段状の減少するDCポテンシャルをIEとOEとの間に備え、長手方向DCポテンシャル、したがって、上記で説明されるように、軸方向力F2と組み合わせて、IQ2におけるDC障壁ポテンシャルを克服することを支援する、放射方向に励起されたイオン1410への軸方向力F1−Dをもたらす。加えて、DCプロファイル1401を印加するための時間の長さを決定するために、DCプロファイル1201と関連付けられるものに対する原則を使用することができる。
代替として、図23と同様に、線形イオンガイド1313の主要ロッドセットを分割し、異なるDC電圧を異なるセグメントに印加することによって、DC電極1320への同様の効果を達成することができる。これらの実装では、DC電極1320を除去することができる。
ここで、「2」ではなく、「15」が先行する類似番号を有する類似要素を伴う、線形イオントラップ200と同様の線形イオントラップ1500を図示する、図15に注目する。例えば、入口領域1501は、入口領域201と同様である。しかしながら、線形イオントラップ1500では、線形イオンガイド213、215は、第1の軸方向加速領域1505とも呼ばれる領域1505を含む、単一の線形イオンガイド1513に置換されている。これらの実装では、第1の軸方向加速領域1505の中の放射方向に励起されたイオン190の加速は、放射方向に励起されたイオン190への擬似ポテンシャル長手軸方向力をその間で生成するように、第1の軸方向加速領域1505の中でRF電場における差を提供することによって起こる。例えば、RF電極(例えば、多重極を構成するロッド)の間の距離が、RF電極の形状の変化により、第1の軸方向加速領域1505の中で増加するように、RF電極が直径の変化を有するため、RF勾配が第1の軸方向加速領域1505の中で提供される。図15の図示した実装では、RF電極はテーパ状である。したがって、線形イオンガイド1513の中の多重極のロッドの間に印加されたRF電場における差が、領域1505をもたらし、軸方向擬似ポテンシャル長手方向力F2−Aを、領域1505の中の放射方向に励起されたイオンに印加させる。したがって、軸方向力F2−Aおよび軸方向力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオンが、IQ2において印加されたDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ1500から流出することを可能にする。さらに、励起されていないイオンが力F2−Aまたは力F2を受けないため、励起されていないイオンは線形イオントラップ1500から流出しない。
ここで、類似番号を有するが、「15」ではなく、「16」が先行する類似要素を伴う、線形イオントラップ1500と同様の線形イオントラップ1600を図示する、図16に注目する。例えば、入口領域1601は、入口領域1501と同様である。しかしながら、線形イオントラップ1600では、線形イオンガイド1613は線形イオンガイド1513と同様であるが、線形イオンガイド1613の中のRF電極(例えば、ロッド)は、急激または段階的な変化を領域1605の中で有し、上記で説明される軸方向力F2−Aと同様に、軸方向擬似ポテンシャル長手方向力F2−Bを、領域1605の中の放射方向に励起されたイオンに印加させる。したがって、軸方向力F2−Bおよび軸方向力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオンが、IQ2において印加されたDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ1600から流出することを可能にする。さらに、励起されていないイオンが力F2−Bまたは力F2を受けないため、励起されていないイオンは線形イオントラップ1600から流出しない。
ここで、図20に注目すると、図20は、類似番号を有するが、「15」ではなく、「20」が先行する類似要素を伴う、線形イオントラップ1500と同様の線形イオントラップ2000を図示する。例えば、入口領域2001は、入口領域1501と同様である。しかしながら、線形イオントラップ2000では、線形イオンガイド2013は線形イオンガイド1513と同様であるが、線形イオンガイド2013の中のRF電極(例えば、ロッド)の間の距離は、領域2005の中の直径の減少を介して増加し、上記で説明される軸方向力F2−Aと同様に、軸方向擬似ポテンシャル長手方向力F2−Dを、領域2005の中の放射方向に励起されたイオンに印加させる。したがって、軸方向力F2−Dおよび軸方向力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオンが、IQ2において印加されたDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ2000から流出することを可能にする。さらに、励起されていないイオンが力F2−Dまたは力F2を受けないため、励起されていないイオンは線形イオントラップ2000から流出しない。
ここで、図17に注目すると、図17は、類似番号を有するが、「2」ではなく、「17」が先行する類似要素を有する線形イオントラップ200と同様の線形イオントラップ1700を図示する。例えば、入口領域1701は、入口領域201と同様である。しかしながら、線形イオントラップ1700では、線形イオンガイド1713に印加されるRF電場が、同様のRF電場を線形イオンガイド1715に印加させるが、振幅および/または位相の差を伴うように、線形イオンガイド1713は、コンデンサC1を介して線形イオンガイド1715に電気的に接続される。領域1705の中のRF電場のそのような変化は、上記で説明される軸方向力F2−Aと同様に、軸方向擬似ポテンシャル長手方向力F2−Cを、領域1705の中の放射方向に励起されたイオンに印加させる。したがって、軸方向力F2−Cおよび軸方向力F2の組み合わせは、放射方向に励起されたイオンが、IQ2において印加されたDCポテンシャル障壁を克服し、線形イオントラップ1700から流出することを可能にする。さらに、励起されていないイオンが力F2−Cまたは力F2を受けないので、励起されていないイオンは線形イオントラップ1700から流出しない。
ここで、図22に注目すると、図22は、類似番号を有するが、「17」ではなく、「22」が先行する類似要素を伴う、線形イオントラップ1700と同様の線形イオントラップ2200を図示する。例えば、入口領域2201は、入口領域1701と同様である。しかしながら、線形イオントラップ2200では、IQ2におけるDC障壁は、線形イオンガイド2215のほぼ中央からほぼ端部まで線形イオンガイド2215のロッドの間に延在する補助電極2217によって産生される。これらの実装では、励起されたイオンが補助電極2217によって生成されるDC障壁を登った後に、F2が励起されたイオンに印加されるため、励起されたイオンに作用するF2は、IQ2におけるDC障壁が電極1717によって産生される時よりもはるかに小さくなり得る。したがって、これらの実装では、主に力F2−Cと同様の力F2−Eを受けることによって、線形イオントラップ220から流出することに関して、励起されたイオンは、励起されていないイオンと区別される。励起されたイオンおよび励起されていないイオンの両方は、線形イオントラップ2215のほぼ中央に到達し、励起されていないイオンは、補助電極2217によって印加されるDCポテンシャルの作用によって跳ね返される。励起されたイオンは、補助電極2217によるDC障壁を乗り越えるのに十分なエネルギーをF2−Eから獲得する。これらの実装での出口領域2209は、補助電極2217の出口端の近位にあることが認識される。
その上さらに、線形イオンガイド1500、1600、1700では、力F2と組み合わせて、それぞれ力F2−A、F2Bが、放射方向に励起されたイオンを線形イオンガイド1500、1600、1700から流出させるように、それぞれ、DC電極1517、1617、1717を、補助電極2217と同様の補助電極と置換できることが認識される。
ここで、図24に注目すると、図24は、類似番号を有するが、「22」ではなく、「24」が先行する類似要素を伴う、線形イオントラップ2200と同様の線形イオントラップ2400を図示する。例えば、入口領域2401は、入口領域2201と同様である。しかしながら、力F2がもはや存在しないように(F2は、RF電場の変化に起因する)、線形イオンガイド2415に印加されるRF電場の強度RF1は、衝突セル150に印加されるRF電場と同じ強度RF1である。これを克服するために、力F1−Bと同様の力F1−Eをイオン190に印加することができるように、線形イオンガイド2413は、DC電極920(および/またはDC電極1320)と同様のDC電極2420を備える。代替として、イオン190および/または放射方向に励起されるイオン190に長手軸方向力を印加することができるように、DC電極2420を、図6のDC電極620と同様のDC電極と置換することができる。図23の分割線形イオンガイド2313および/または線形イオントラップ2413のロッド上の抵抗被覆を含むが、それらに限定されない、領域2403の中で長手軸方向力を印加するための任意の他の好適な方法および/または装置は、本実装の範囲内であることがさらに認識される。
いずれにしても、これらの実装では、放射方向加速領域2403は、第1の加速領域2405を備え、第2の加速領域2407は、線形イオンガイド2413、2415の間の遷移領域であり、第2の加速領域2407は、出口領域2409からさらに遠く離れている。
ここで質量分析計1800を図示する図18を注目すると、質量分析計1800は、イオン源1820と、イオンガイド1830と、線形イオントラップ1840と、衝突セル1850(例えば、断片化モジュール)と、検出器1860とを備え、質量分析計1800は、イオン源1820から検出器1860までイオンビームを伝送することが可能である。一般に、質量分析計1800は、質量分析計100と同様である。線形イオントラップ1840は、RAATのために使用可能な任意の線形イオントラップを備え、したがって、出口電極217と同様の出口電極1870は、線形イオントラップ184の端部領域1872に位置することが認識される。したがって、イオン源1820からのイオン1890の一部分が、線形イオントラップ1840の中で放射方向に励起されるにつれて、力F2が、上記で説明される軸方向加速領域207と同様の第2の軸方向加速領域1877の中で、放射方向に励起されたイオン1890に印加される。
しかしながら、力F2が、放射方向に励起されたイオンが出口電極1870のDCポテンシャルを克服することを可能にするのに十分ではないように、線形イオントラップ1840の中のイオンの放射方向励起は、閾値以下に保たれる。むしろ、線形イオントラップ1840の中へ放出される前に、イオン1890は、イオン1890の少なくとも一部分に印加される長手方向DCポテンシャルによる長手軸方向力F18を第1の加速領域1875の中で受ける。図示した実装では、第1の加速領域1875は、イオンガイド1830の中、および/またはイオン源1820と線形イオントラップ1840との間の任意の他の好適な場所に位置する。力F18はまた、線形イオントラップ1840の中で放射方向に励起されないイオン1890が、出口電極1870におけるポテンシャル障壁を克服できないように、好適な閾値以下に保たれる。むしろ、力F18および力F2の両方を受ける、放射方向に励起されたイオン1890のみが、出口電極1870によるポテンシャル障壁を克服することができる。
第1の加速領域1875は、イオン源1820と線形イオントラップ1840との間の任意の好適な位置に位置することができる。さらに、軸方向力F18は、任意の好適な装置、例えば、図6のDC電極620、図8のDC電極820、図9のDC電極920、図11のDC電極1120、図13のDC電極1320、または同等物の任意の好適な組み合わせを使用して、産生することができる。
ここで、図19に注目すると、図19は、質量分析計における放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための方法1900を図示する。方法1900の説明を支援するために、方法1900は、質量分析計100、1800および/または線形イオントラップ200、600、800、900、1100、1300、1500、1600、1700、または1800のうちのいずれか1つを使用して行われるが、説明は、説明の所与の部分に適するような質量分析計100、1800および/または線形イオントラップ200、600、800、900、1100、1300、1500、1600、1700、または1800を参照することが仮定される。さらに、方法400の以下の論議は、質量分析計100、1800および/または線形イオントラップ200、600、800、900、1100、1300、1500、1600、1700、または1800、ならびにそれらの種々の構成要素のさらなる認識につながる。しかしながら、質量分析計100、1800および/または線形イオントラップ200、600、800、900、1100、1300、1500、1600、1700、または1800、および/または方法1900は、変化させることができ、相互と併せて本明細書で論議されるように正確に機能する必要はなく、そのような変化例は、本開示の範囲内であると認識されたい。
ステップ1903では、イオン190が、上記で説明されるように、イオン源120からRAATに使用可能な線形イオントラップ200の中へ放出される。いくつかの代替実装では、イオン源120からのイオン190は、(例えば、質量分析計1800および線形イオントラップ1820を参照して上記で説明されるように)ステップ1903で線形イオントラップ200の中へ放出される前に、質量分析計100の長手軸に沿って加速される。
ステップ1905では、イオン190の少なくとも一部分が、放射方向に励起されたイオンを産生するように線形イオントラップ200の中において放射方向に励起される。
ステップ1907では、イオン190および放射方向に励起されたイオンのうちの少なくとも1つが、質量分析計の長手軸に沿って加速される。いくつかの実装では、ステップ1901およびステップ1907のうちの1つが起こるが、他の実装では、ステップ1901および1907の両方が起こる。
ステップ1909では、放射方向に励起されないイオン190が、線形イオントラップ200の中にとどまっている間に、加速するステップ1907(および/または加速するステップ1901)およびさらに加速するステップ1909による、放射方向に励起されたイオンへの力の組み合わせが、放射方向に励起されたイオンに出口領域209におけるDCポテンシャル障壁を克服させるように、放射方向に励起されたイオンが、RF電場強度の低減によって産生される擬似ポテンシャルにより、長手軸に沿ってさらに加速され、それにより、ステップ1911において放射方向に励起されたイオンを抽出する。
ステップ1901が起こるときに、加速するステップは、放射方向に励起するステップ1905の前に起こり、加速するステップ1901は、イオン源120と線形イオントラップ200との間で起こる。
加速するステップ1907は、線形イオントラップ1500、1600、および1700の場合のように、放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をその間に生成するように、出口領域207より前の線形イオントラップ200の中でRF電場における差を提供することによって起こり得る。加速するステップ1907(および/または加速するステップ1901)は、代替として、イオン190および放射方向に励起されたイオンのうちの少なくとも1つへの長手方向DCポテンシャルを提供することによって起こり得る。
加速するステップ1907がRF電場における差を提供することによって起こる場合に、
線形イオントラップ1500、1600の中のRF電極の間の増加する放射距離と、
線形イオントラップ1500、1600の場合のように、RF電極の形状の変化と、
線形イオントラップ1500の少なくとも一部分の場合のように、RF電極がテーパ状であることと、
線形イオントラップ1600の少なくとも一部分の場合のように、RF電極が階段状であることと、
第1組のRF電極1713および出口領域1709に隣接する第2組の電極1715が、RF電場における差を生じさせる回路を介している、線形イオントラップ1700を提供することと、のうちの少なくとも1つによって、RF勾配を提供することができる。
加速するステップ1907(および/または加速するステップ1901)が長手方向DCポテンシャルを提供することによって起こる場合に、線形イオントラップ600および1100の場合のように、長手方向に延在する少なくとも1組のDC電極620または1120の間の距離を増加させることによって、長手方向DCポテンシャルを提供することができる。代替として、長手方向DCポテンシャルは、線形イオントラップ900および1300の場合のように、長手方向に延在する一連の対向DC電極920または1320、長手方向DCポテンシャルを産生するための一連の対向DC電極620、1120を使用して提供することができ、一連の対向DC電極620、1120は、一連の各連続電極におけるDCポテンシャルステップとして、長手方向DCポテンシャルをイオン190に印加するように独立して制御される。代替実装では、図23に図示されるように、主要ロッドセットを分割し、異なるDC電圧を異なるセグメントに印加することによって、長手方向DCポテンシャルを線形イオントラップ200の中のイオンに印加することができる。その上さらなる代替実装では、抵抗被覆とともに電極を利用することによって、長手方向DCポテンシャルを線形イオントラップ200の中のイオンに印加することができる。長手方向力はまた、進行波を備えることもできる。実際に、長手方向力を印加するための任意の好適な方法および/または装置は、本実装の範囲内であることが認識される。
いくつかの実装では、ステップ1911において線形イオントラップから放射方向に励起されたイオンを抽出することが、選択的な放射方向励起中に線形イオントラップ200の放射方向加速領域203の中にイオン190を捕捉するために、出口領域209に隣接して第1のDCポテンシャルを印加するステップをさらに含むことができ、第1のDCポテンシャルは、図3のように、放射方向励起領域203の中のDCポテンシャルよりも大きい。次いで、再び図3のように、放射方向励起領域203の中のイオン190が、出口領域209へ加速され、長手方向DCポテンシャルおよび擬似ポテンシャルによる、放射方向に励起されたイオンへの力の組み合わせが、放射方向に励起されたイオンに電極217によるDCポテンシャル障壁を克服させるために、出口領域209に隣接する第2のDCポテンシャルが印加され、第2のDCポテンシャルは、第1のDCポテンシャルよりも小さく、放射方向励起203の中のDCポテンシャルよりも小さい。いくつかの実装では、第2のDCポテンシャルを印加する前に、図7のように、減少するDCポテンシャルが放射方向励起領域203の中に印加され、したがって、付加的な加速力を放射方向に励起されたイオンに印加する。
したがって、RAAT使用可能線形イオントラップの中に発生する長手軸方向力(または複数の力)および擬似ポテンシャルの組み合わせを使用することによって、RAAT使用可能線形イオントラップの中のイオンを選択的に抽出するための放射方向励起の程度を低減することができ、それにより、RAAT使用可能線形イオントラップの抽出の角度を減少させ、抽出効率を増加させる。
当業者であれば、実装例を実装するために可能なさらに多くの実装例および修正があり、上記の実装例および実施例は、1つ以上の実装例の例示にすぎないことを認識するであろう。したがって、範囲は、本明細書に添付される請求項のみによって限定されるものである。

Claims (32)

  1. 放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための質量分析計であって、
    該質量分析計は、
    イオン源と、
    第1の軸方向加速領域であって、該第1の軸方向加速領域は、該質量分析計の長手軸に沿って、該イオン源からのイオンの少なくとも一部分を軸方向に加速する、第1の軸方向加速領域と、
    該イオン源から該イオンを受容するように配設される少なくとも1つの線形イオントラップであって、該少なくとも1つの線形イオントラップは、
    該イオンを中に受容する入口領域と、
    該少なくとも1つの線形イオントラップから外へ放射方向に励起されたイオンをトランスファさせる出口領域と、
    少なくとも1つのDC(直流)電極であって、該少なくとも1つのDC電極は、DCポテンシャル障壁を印加して、励起されていないイオンが該少なくとも1つの線形イオントラップから流出することを防止する、少なくとも1つのDC電極と、
    該入口領域と該出口領域との間の放射方向励起領域であって、該放射方向励起領域は、該少なくとも1つの線形イオントラップに捕捉された該イオンを選択的に放射方向に励起して、該放射方向に励起されたイオンを産生する、放射方向励起領域と、
    第2の軸方向加速領域であって、該第2の軸方向加速領域は、RF電場強度の低減によって産生される擬似ポテンシャルに起因して該放射方向に励起されたイオンを該出口領域に向かって該長手軸に沿ってさらに加速することにより、放射方向に励起されない該励起されていないイオンが該少なくとも1つの線形イオントラップの中にとどまっている間に、該第1の軸方向加速領域および該第2の軸方向加速領域に起因する、該放射方向に励起されたイオンへの力の複合効果は、該放射方向に励起されたイオンが該DCポテンシャル障壁を克服するようにさせる、第2の軸方向加速領域と
    を含む、少なくとも1つの線形イオントラップと、
    検出デバイスであって、該検出デバイスは、該少なくとも1つの線形イオントラップから流出する該放射方向に励起されたイオンの少なくとも一部分を受容し、分析する、検出デバイスと
    を含む、質量分析計。
  2. 前記第1の軸方向加速領域は、前記イオン源と前記少なくとも1つの線形イオントラップとの間に位置し、該第1の軸方向領域の中における加速は、長手方向DCポテンシャルを前記イオンの前記少なくとも一部分に提供することによって起こる、請求項1に記載の質量分析計。
  3. 前記第1の軸方向加速領域は、前記出口領域より前の、前記少なくとも1つの線形イオントラップの中に位置し、該第1の軸方向領域の中における加速は、
    該第1の軸方向加速領域の中に前記RF電場における差を提供することであって、該提供することにより、前記放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をそこで生成する、ことと、
    該第1の軸方向加速において長手方向DCポテンシャルを提供することと
    のうちの少なくとも1つによって起こる、請求項1に記載の質量分析計。
  4. 前記RF電場における前記差を前記提供することは、前記第1の加速領域の中にRF勾配を提供することを含む、請求項3に記載の質量分析計。
  5. 前記少なくとも1つのイオントラップは、RF電極を含み、該RF電極の間の放射方向距離が、前記第1の軸方向加速領域の中において増加することにより、前記RF電場における前記差を前記提供することは、該距離の変化に起因して起こる、請求項4に記載の質量分析計。
  6. 前記RF電極の間の前記距離は、該RF電極の形状の変化に起因する、請求項5に記載の質量分析計。
  7. 前記RF電極は、
    前記第1の軸方向加速領域の中で直径が減少することと、
    該第1の軸方向加速領域の中でテーパ状であることと、
    該第1の軸方向加速領域の中で階段状であることと
    のうちの少なくとも1つに該当する、請求項5に記載の質量分析計。
  8. 前記第1の加速領域は、前記放射方向励起領域と前記出口領域との間にあり、前記少なくとも1つの線形イオントラップは、該放射方向励起領域の中の第1組のRF電極と、該第1の加速領域の中の第2組の電極とを含み、該第2組のRF電極は、該放射方向励起領域と該第1の加速領域との間の前記RF電場の変化を引き起こす回路を介して該第1組のRF電極に電気的に接続されることにより、該RF電場における前記差が、該RF電場の変化によって引き起こされる、請求項3に記載の質量分析計。
  9. 前記第2の軸方向加速領域は、前記出口領域に隣接し、前記少なくとも1つのDC電極は、該出口領域に隣接して位置する、請求項4に記載の質量分析計。
  10. 前記第2の軸方向加速領域は、前記第1の加速領域と前記出口領域との間に位置し、前記少なくとも1つのDC電極は、該第1の加速領域と該出口領域との間に位置する、請求項4に記載の質量分析計。
  11. 前記放射方向励起領域は、前記放射方向に励起されたイオンを産生する少なくとも1組のRF電極と、前記長手方向DCポテンシャルを提供する少なくとも1組のDC電極とを含み、前記第2の軸方向加速領域は、前記出口領域に隣接し、該少なくとも1つのDC電極は、該出口領域に隣接して位置する、請求項3に記載の質量分析計。
  12. 前記少なくとも1組のDC電極の間の距離は、該DC電極の入口端から該DC電極の出口端まで増加し、それにより、前記長手方向DCポテンシャルを提供する、請求項11に記載の質量分析計。
  13. 前記少なくとも1組のDC電極の各々は、前記長手方向DCポテンシャルを産生する一連の対向DC電極を含み、該一連の対向DC電極は、該一連の各連続した電極におけるDCポテンシャルステップとして、該長手方向DCポテンシャルを前記イオンに印加するように独立して制御される、請求項11に記載の質量分析計。
  14. 前記放射方向励起領域は、前記第1の軸方向加速領域を含み、前記放射方向に励起されるイオンへの長手軸方向力は、該放射方向励起領域の中の分割RF電極に起因し、該分割RF電極は各々、それぞれのDC電圧が印加されており、該DC電圧は、該放射方向加速領域の入口端から該放射方向加速領域の出口端まで減少する、請求項1に記載の質量分析計。
  15. 前記放射方向励起領域は、前記第1の軸方向加速領域を含み、前記放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、該放射方向励起領域の中のRF電極上の抵抗被覆に起因する、請求項1に記載の質量分析計。
  16. 前記第1の軸方向加速領域は、前記放射方向励起領域と前記端部トラップとの間にあり、該第1の軸方向加速領域の中において前記長手方向DCポテンシャルの差を前記提供することは、
    選択的な放射方向励起中に該放射方向加速領域の中において前記イオンを捕捉するために、該第1の軸方向加速領域の中において第1のDCポテンシャルを印加することであって、該第1のDCポテンシャルは、該放射方向励起領域の中におけるDCポテンシャルよりも大きい、ことと、
    該第1のDCポテンシャルよりも小さく、かつ該放射方向励起領域の中の該DCポテンシャルよりも小さい第2のDCポテンシャルを、該第1の軸方向加速領域の中に印加することであって、該印加することにより、該放射方向励起領域の中のイオンが、該第1の軸方向加速領域を通して加速され、該長手方向DCポテンシャルおよび前記擬似ポテンシャルに起因する、前記放射方向に励起されるイオンへの力の組み合わせが、該放射方向に励起されたイオンが前記DCポテンシャル障壁を克服するようにさせることと
    を含む、請求項2に記載の質量分析計。
  17. 前記放射方向励起領域は、前記放射方向に励起されたイオンを産生する少なくとも1組のRF電極と、減少するDCポテンシャルを提供する少なくとも1組のDC電極とを含み、前記第2のDCポテンシャルを印加する前に、該減少するDCポテンシャルは、該放射方向励起領域の中に印加され、したがって、該放射方向に励起されたイオンに付加的な加速力を印加する、請求項16に記載の質量分析計。
  18. 前記少なくとも1つの線形イオントラップは、
    AC(交流)電場と、
    RF電圧を選択されたイオンに対する不安定閾値に近づけることと、
    該RF電圧を励起の持続時間にわたって該不安定閾値に、またはそれ以上に増加させ、次いで、該RF電圧を下げることと、
    のうちの少なくとも1つを介して前記放射方向に励起されたイオンを産生することに使用可能にされる、請求項1に記載の質量分析計。
  19. 前記第2の軸方向加速領域は、前記出口領域に隣接することと、該出口領域の前にあることとのうちの少なくとも1つに該当する、請求項1に記載の質量分析計。
  20. 質量分析計における放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための方法であって、
    該方法は、
    イオン源の中においてイオンを産生することと、
    第1の軸方向加速領域の中において、該質量分析計の長手軸に沿って該イオンの少なくとも一部分を軸方向に加速することと、
    第2の軸方向加速領域の中において擬似ポテンシャルを、イオントラップの中の放射方向に励起されたイオンに印加することであって、該擬似ポテンシャルが、RF電場強度の低減によって産生され、それにより、放射方向に励起されない励起されていないイオンが、少なくとも1つの線形イオントラップの中にとどまっている間に、該第1の軸方向加速領域および該第2の軸方向加速領域に起因する、該放射方向に励起されたイオンへの力の複合効果が、該放射方向に励起されたイオンがDC(直流)ポテンシャル障壁を克服するようにさせ、該線形イオントラップは、該イオン源から該イオンを受容するように配設され、該少なくとも1つの線形イオントラップは、該イオンを中に受容する入口領域と、放射方向に励起されたイオンを該少なくとも1つの線形イオントラップから外にトランスファさせる出口領域と、該DCポテンシャル障壁を印加して、該励起されていないイオンが該少なくとも1つの線形イオントラップから流出することを防止する少なくとも1つのDC電極と、該少なくとも1つの線形イオントラップの中に捕捉された該イオンを選択的に放射方向に励起することにより、該放射方向に励起されたイオンを産生する、該入口領域と該出口領域との間の放射方向励起領域とを含む、ことと、
    検出デバイスにおいて該放射方向に励起されたイオンの少なくとも一部分を分析することと
    を含む、方法。
  21. 前記少なくとも1つの線形イオントラップは、
    AC(交流)電場と、
    RF電圧を選択されたイオンの不安定閾値に近づけることと、
    該RF電圧を励起の持続時間にわたって増加させ、次いで、該RF電圧を下げることと
    のうちの少なくとも1つを介して前記放射方向に励起されたイオンを産生することに使用可能にされる、請求項20に記載の方法。
  22. 質量分析計における放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための方法であって、
    該方法は、
    イオンをイオン源からRAATに使用可能な線形イオントラップの中に放出することと、
    該イオンの少なくとも一部分を放射方向に励起して、該線形イオントラップの中において放射方向に励起されたイオンを産生することと、
    該質量分析計の長手軸に沿って、該イオンおよび該放射方向に励起されたイオンのうちの少なくとも1つを加速することであって、該加速することは、該放射方向に励起することの前、および該放射方向に励起することの後のうちの少なくとも1つにおいて起こる、ことと、
    RF電場強度の低減によって産生される擬似ポテンシャルに起因して、該放射方向に励起されたイオンを該長手軸に沿ってさらに加速することであって、該加速することにより、放射方向に励起されない該イオンが、該線形イオントラップの中にとどまっている間に、該加速することおよびさらに加速すること起因する、該放射方向に励起されたイオンへの力の組み合わせは、該放射方向に励起されたイオンがDCポテンシャル障壁を克服し、該線形イオントラップから流出するようにさせることと
    を含む、方法。
  23. 前記加速することは、前記放射方向に励起することの前に起こり、該加速することは、前記イオン源と前記線形イオントラップとの間においてさらに起こる、請求項22に記載の方法。
  24. 前記加速することは、
    前記出口領域より前の前記線形イオントラップの中にRF電場における差を提供することであって、該提供することにより、前記放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をその間に生成する、ことと、
    前記イオンおよび該放射方向に励起されたイオンのうちの少なくとも1つに長手方向DCポテンシャルを提供することと
    のうちの少なくとも1つによって起こる、請求項22に記載の方法。
  25. 前記RF電場における前記差を前記提供することは、
    前記線形イオントラップの中のRF電極の間の増加する放射方向距離と、
    該RF電極の形状の変化と、
    該線形イオントラップの少なくとも第1の部分の中の該RF電極の直径の減少と、
    該RF電極が該線形イオントラップの少なくとも第2の部分においてテーパ状であることと、
    該RF電極が該線形イオントラップの少なくとも第3の部分において階段状であることと、
    該線形イオントラップが、第1組のRF電極と、前記出口領域に隣接する少なくとも第2組のRF電極とを含むことであって、該第2組のRF電極は、該RF電場における該差を引き起こす回路を介して、該第1組のRF電極に電気的に接続される、ことと
    のうちの少なくとも1つによってRF勾配を提供することを含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記長手方向DCポテンシャルを前記提供することは、少なくとも1組のDC電極の間の距離を増加させることによって起こり、該少なくとも1組のDC電極は、前記線形イオントラップの中において長手方向に延在する、請求項22に記載の方法。
  27. 前記長手方向DCポテンシャルを前記提供することは、前記線形イオントラップの中において長手方向に延在する一連の対向DC電極を提供することによって起こり、該一連の対向DC電極は、該長手方向DCポテンシャルを産生し、該一連の対向DC電極は、該長手方向DCポテンシャルを該一連の各連続した電極におけるDCポテンシャルステップとして前記イオンに印加するよう独立して制御される、請求項22に記載の方法。
  28. 前記放射方向励起領域は、前記第1の軸方向加速領域を含み、前記放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、該放射方向励起領域の中の分割RF電極に起因し、該分割RF電極は各々、それぞれのDC電圧が印加されており、該DC電圧は、該放射方向加速領域の入口端から該放射方向加速領域の出口端まで減少する、請求項22に記載の方法。
  29. 前記放射方向励起領域は、前記第1の軸方向加速領域を含み、前記放射方向に励起されたイオンへの長手軸方向力は、該放射方向励起領域の中のRF電極上の抵抗被覆に起因する、請求項22に記載の方法。
  30. 前記線形イオントラップから前記放射方向に励起されたイオンを抽出することをさらに含み、該抽出することは、
    前記出口領域に隣接して第1のDCポテンシャルを印加することであって、該第1のDCポテンシャルを印加することにより、選択的な放射方向励起中に該線形イオントラップの放射方向加速領域の中に該イオンを捕捉し、該第1のDCポテンシャルは、該放射方向励起領域の中のDCポテンシャルよりも大きい、ことと、
    該出口領域に隣接して第2のDCポテンシャルを印加することであって、該第2のDCポテンシャルは、該第1のDCポテンシャルよりも小さく、かつ該放射方向励起領域の中の該DCポテンシャルよりも小さく、その結果、該放射方向励起領域の中のイオンが、該出口領域へと加速され、前記長手方向DCポテンシャルおよび前記擬似ポテンシャルに起因する、該放射方向に励起されたイオンへの前記力の組み合わせは、該放射方向に励起されたイオンが前記DCポテンシャル障壁を克服するようにさせる、ことと
    による、請求項22に記載の方法。
  31. 前記第2のDCポテンシャルを印加する前に、前記放射方向励起領域の中に減少するDCポテンシャルを印加し、したがって、前記放射方向に励起されたイオンに付加的な加速力を印加することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  32. 放射方向振幅支援トランスファ(RAAT)のための質量分析計であって、
    該質量分析計は、
    イオン源と、
    イオンを該イオン源から受容するように配設される少なくとも1つの線形イオントラップであって、該少なくとも1つの線形イオントラップは、
    該イオンを中に受容する入口領域と、
    放射方向に励起されたイオンを該少なくとも1つの線形イオントラップから外へトランスファさせる出口領域と、
    少なくとも1つのDC(直流)電極であって、該少なくとも1つのDC電極は、DCポテンシャル障壁を印加して、該励起されていないイオンが該少なくとも1つの線形イオントラップから流出することを防止する、少なくとも1つのDC電極と、
    該入口領域と該出口領域との間の放射方向励起領域であって、該放射方向励起領域は、該線形イオントラップに捕捉された該イオンを選択的に放射方向に励起することにより、AC(交流)電場の印加を介して放射方向に励起されたイオンを産生する、放射方向励起領域と
    を含む、少なくとも1つの線形イオントラップと、
    該放射方向励起領域と該少なくとも1つの線形イオントラップの出口との間の軸方向加速領域であって、該軸方向加速領域は、該軸方向加速領域の中にRF電場における差を提供することによって、該イオン源からの該イオンの少なくとも一部分を該質量分析計の長手軸に沿って軸方向に加速して、該放射方向に励起されたイオンへの擬似ポテンシャル長手軸方向力をそこで生成し、該RF電場における該差は、
    該少なくとも1つの線形イオントラップの中のRF電極の間の増加する距離と、
    該RF電極の形状の変化と、
    該線形イオントラップの少なくとも第1の部分の中の該RF電極の直径の減少と、
    該RF電極が該線形イオントラップの少なくとも第2の部分においてテーパ状であることと、
    該RF電極が該線形イオントラップの少なくとも第3の部分において階段状であることと、
    該線形イオントラップが、第1組のRF電極と、該出口領域に隣接する少なくとも第2組のRF電極とを含むことであって、該第2組のRF電極は、該RF電場における該差を引き起こす回路を介して、該第1組のRF電極に電気的に接続される、ことと
    のうちの少なくとも1つからのRF勾配によって提供される、軸方向加速領域と、
    該放射方向励起領域と該出口との間の少なくとも1つの電極であって、該少なくとも1つの電極は、該励起されていないイオンが該出口に到達することを防止するDC(直流)ポテンシャル障壁を提供し、該放射方向に励起されたイオンへの該擬似ポテンシャル長手軸方向力は、該DCポテンシャル障壁を克服することにより、該放射方向に励起されたイオンが該DCポテンシャル障壁を克服し、該少なくとも1つのイオントラップから流出する、少なくとも1つの電極と
    検出デバイスであって、該検出デバイスは、該少なくとも1つのイオントラップから流出する該放射方向に励起されたイオンの少なくとも一部分を受容し、分析する、検出デバイスと
    を含む、質量分析計。
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