JP2013531139A - 高アルファ溶解パルプの製造のための方法及びシステム - Google Patents

高アルファ溶解パルプの製造のための方法及びシステム Download PDF

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Abstract

前加水分解クラフトプロセス(PHKP)と関連して用いられる、パルプを加工する方法が、木材チップ又は類似の材料を反応槽に添加する工程と、前加水分解を行う工程と、第1の量の白液、続いて、任意に白液により強化された冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液等の異なる溶液によって混合物を中和する工程とを含む。中和液を熱黒液と、任意に白液により強化されたアルカリ性濾液とを含む蒸解液に置き換える。蒸解液は比較的高い有効アルカリ濃度を有することができる。蒸解パルプは、非常に少量の残留ヘミセルロース及び最適な範囲内のカッパー価を示すことができる。

Description

本発明の分野は包括的にはパルプの加工に関し、より具体的には、クラフト化学パルプ化プロセスと関連する冷苛性ソーダ抽出からの廃液を処理する改善された方法及びシステムに関する。
木材及び植物材料によるパルプは数多くの商業用途を有する。最も一般的な用途の一つは製紙における用途であるが、パルプはレーヨン及び他の合成材料、並びに、例えばフィルタートウ、布地、包装フィルム及び爆薬の製造に使用される酢酸セルロース及びセルロースエステルを含む多数の他の製品を製造するためにも使用することができる。
パルプ及び紙を製造するために木材及び植物材料を加工する多数の化学的方法及び機械的方法が存在する。基本的な加工工程は、原材料を準備すること(例えば剥皮及びチップ化)と、木質繊維のセルロースからリグニン及び抽出物を分離するために、木質繊維を機械的手段又は化学的手段(例えば粉砕、叩解又は蒸解)によって分離することと、漂白によって着色物質を除去することと、得られる加工パルプを紙又は他の製品に成形することとを含む。製紙工場は一般的には、パルプ及び紙の製造に加えて、またそれと関連して、化学物質を生産及び再生する設備、副産物を収集及び加工してエネルギーを生産する設備、並びに廃棄物を除去及び処理して環境影響を最小限に抑える設備も有する。
「パルプ化」とは一般に、繊維分離を達成するプロセスを指す。木材及び他の植物材料はセルロース、ヘミセルロース、リグニン及び他の微量成分を含む。リグニンは個々の繊維の間に散在する高分子のネットワークであり、個々の木質繊維を結び付ける細胞間接着分子として機能する。パルプ化プロセスの間にリグニン巨大分子は断片化し、それにより個々のセルロース系繊維が遊離し、紙又は他の最終製品の変色及びその後の崩壊を引き起こし得る不純物が溶解する。
クラフトプロセスは、一般的に用いられるパルプ化プロセスである。クラフトパルプ化プロセスにより製造された紙は、例えば包装産業において使用される漂白板紙及びライナーボードを作製するために使用することができる。従来のクラフトプロセスでは、「白液」として知られる水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの水性混合物を用いて木材を処理する。この処理によってリグニンとセルロースとの間の結合が破壊され、リグニンの大部分及びヘミセルロース巨大分子の一部分が、強塩基性溶液に可溶性の断片にまで分解される。リグニンを周囲のセルロースから遊離させるこのプロセスは、脱リグニンとして知られている。その後、可溶性部分をセルロースパルプから分離する。
図1は従来のクラフトプロセス100のフロー図を示す。プロセス100は、木材チップ(又は他の有機パルプ含有原材料)118及びアルカリ性溶液を、蒸解釜と呼ばれる高圧反応槽に供給して脱リグニンを行うことを伴い、これは「蒸解」段階121と称される。木材チップを、下流のプロセスにより生成することができるか又は別個の供給源から供給することができる白液111と合わせる。脱リグニンは数時間かかる場合があり、脱リグニンの程度は無単位の「Hファクター」で表され、これは100℃で1時間の蒸解が1のHファクターに等しいものとして一般に定義される。高温のために、反応槽は多くの場合、蒸気の導入によって加圧される。蒸解工程の終盤に、反応槽を大気圧まで減圧させることにより、蒸気及び揮発性物質が放出される。
蒸解に使用される白液は例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)及び硫化ナトリウム(NaS)を含有する苛性溶液であり得る。白液の特性は、有効アルカリ(EA)及び硫化度で表されることが多い。有効アルカリ濃度は、水酸化ナトリウムの重量に硫化ナトリウムの重量の2分の1を加えたものとして計算することができ、液体1リットル当たりの水酸化ナトリウムの当量に相当し、1リットル当たりのグラム数で表される。水酸化ナトリウムとしての有効アルカリ添加量は、木材の炉乾燥重量当たりの水酸化ナトリウムの当量に相当し、百分率で表される。硫化度は、水酸化ナトリウムの重量と硫化ナトリウムの重量の2分の1との総和に対する硫化ナトリウムの重量の2分の1の比率であり、百分率で表される。
蒸解後、「褐色紙料」としても知られる褐色の固体セルロース系パルプを、蒸解段階121で使用される蒸解釜から放出し、その後、洗浄及びスクリーニングプロセス122においてスクリーニング及び洗浄する。スクリーニングによって、パルプと、結束繊維(木質繊維の束)、ノット(未蒸解のチップ)、夾雑物及び他の残渣とが分離される。パルプから分離された物質を「リジェクト」、パルプを「アクセプト」と称する場合もある。アクセプト流中で高い純度を維持しながらリジェクト流中のセルロース系繊維の量を減少させるために、多段カスケード操作が利用されることが多い。更なる繊維の回収は、下流のリファイナを用いて、又は蒸解釜内の結束繊維及びノットの再処理によって達成することができる。
次いで、褐色紙料を幾つかの連続した洗浄段階に供し、使用済み蒸解液及び溶解物質をセルロース繊維から分離することができる。蒸解段階121に用いられた蒸解釜からの使用済み蒸解液112と、洗浄及びスクリーニングプロセス122から収集された液体113とは一般的に、その色合いのためにどちらも「黒液」と称される。黒液は一般にリグニン断片、断片化したヘミセルロースに由来する炭水化物、及び無機物を含有する。例えば図1において洗浄及びスクリーニングプロセス122で生じた黒液113を表す矢印によって示されるように、蒸解工程において白液に加えて黒液を使用し、蒸解段階121に移行することができる。適切なアルカリ濃度を達成する必要に応じて、又は他の類似の目的のために、アキュムレータータンク(図1には示さない)からの黒液135を、蒸解段階121の一環として蒸解釜に供給してもよい。
次いで、洗浄及びスクリーニングプロセス122により除塵した褐色紙料パルプ131を白液114とブレンドし、反応槽に供給して、ヘミセルロース等の溶解物質及び低分子量セルロースを、より長いセルロース系繊維から更に分離することができる。例示的な分離方法はいわゆる冷苛性ソーダ抽出(「CCE」)法であり、図1にはCCE反応段階123で表されている。抽出を行う温度は様々とすることができるが、典型的な範囲は60℃未満である。
次いで、CCE反応段階123で使用される反応装置からの精製パルプ132を、使用済み冷苛性溶液及び溶解したヘミセルロースから分離し、CCE洗浄段階124において第2の洗浄及び分離ユニット内で数回洗浄する。比較的高いアルファセルロース含量を有するが、依然としてリグニンを幾らか含有する、得られる精製褐色パルプ133を、更なる脱リグニンのために下流の漂白ユニットに進ませる。一部のパルプ製造プロセスでは、漂白はCCE反応段階123及びCCE洗浄段階124の前に行われる。
合成材料又は医薬品の製造等の多数の用途において、純度又は品質の非常に高いパルプを得ることが望ましい。パルプ品質は幾つかのパラメーターによって評価することができる。例えば、アルファセルロースの含有率は加工パルプの相対純度を表す。アルファセルロース含量は、パルプ溶解度(例えば、下記に記載のS10ファクター及びS18ファクター)に基づいて推定及び計算することができる。脱リグニン及びセルロース分解の程度は、それぞれカッパー価(「KN」)及びパルプ粘度によって測定される。より高いパルプ粘度は、より長いセルロース鎖長及びより少ない分解を示す。パルプ製紙業界技術協会(TAPPI)の規格236 om−99は、パルプのカッパー価を求める標準方法を規定している。カッパー価は、パルプのリグニン含量又は漂白性の指標である。18wt%の水酸化ナトリウム水溶液におけるパルプ溶解度(「S18」)から、残留ヘミセルロースの量が推定される。10wt%の水酸化ナトリウム水溶液におけるパルプ溶解度(「S10」)は、ヘミセルロースと分解したセルロースとの総和を含む、塩基性溶液中の可溶物の総量に関する指標を与える。最終的に、S10とS18との差から、アルカリ溶解性の断片化セルロースの量が示唆される。
従来の技法によって、アルファセルロース含量が92パーセント〜96パーセントの精製パルプを達成することができるが、特に高粘度(すなわち、パルプ化プロセスによるセルロース分解の制限)のような他の要求されるパルプの特性を維持しながら、その範囲の上限の純度に到達することは歴史的に極めて困難であった。
従来のプロセスでは、CCEアルカリ性濾液とも称される、CCE洗浄及び分離段階124からの濾液116は、洗浄及び分離段階124からの使用済み冷苛性溶液及び使用済み洗浄液の両方を含む。この濾液116は多くの場合、相当量の高分子ヘミセルロースを含有する。ヘミセルロース含量の高い濾液を、蒸解段階121の蒸解釜内で蒸解液の一部として使用するために再循環させると、ヘミセルロースが溶液から析出し、セルロース系繊維へと沈殿する可能性がある。これは高品質パルプの達成を妨げる場合がある。一方、或る特定の用途、例えば高品質糸又は合成織物、液晶ディスプレイ用の材料、アセテート誘導体から作られる製品、ビスコース製品(タイヤコード及び特殊繊維等)、タバコに使用されるフィルタートウ部分、並びに或る特定の食品用途及び製薬学的用途では、最小量の再沈殿ヘミセルロースしか含有せず、アルファセルロース含量の高いパルプが必要とされる。
図1に示すように、蒸解段階121におけるヘミセルロースの再沈殿を抑制するために、CCEアルカリ性濾液116の一部を回収領域134へと抜き取る必要がある。回収領域134に送られた、分流させたCCEアルカリ性濾液116を過剰の黒液と合わせ、濃縮し、回収ボイラー内で燃焼させて、有機物を消費し、無機塩を回収することができる。蒸解段階121において適当なアルカリバランスを維持するために、その後、新たなアルカリ供給源が、回収領域134に送られたCCE濾液及び黒液を補充するのに必要とされる場合がある。
従来のプロセスは、上記で特定したものを含む様々な工業的使用、製薬学的使用及び物的使用に必要とされ得る好適なアルファ含量のセルロースを達成する、効率的な又は費用効果の高い手段を提供するものではない。
アルファセルロース含量の非常に高い溶解パルプをもたらす、パルプを加工する方法及びシステムが必要とされている。ヘミセルロースの再沈殿を防ぐことによって高アルファ溶解パルプを調製する効率的かつ費用効果の高い方法を提供する、パルプを加工する方法及びシステムが更に必要とされている。
一態様では、パルプ製造のための改善された方法及びシステムが特に、蒸解段階で使用される黒液及び冷苛性ソーダ抽出(CCE)アルカリ性濾液の1つ又は複数を白液により強化することを伴う。
1つ又は複数の実施の形態によると、クラフトプロセスと関連して用いられるパルプ製造のための方法及びシステムが、木材チップ又は他の有機パルプ含有材料を蒸解釜又は類似の反応槽に供給する工程と、一連の逐次プロセス:前加水分解、任意に白液により強化されたCCEアルカリ性濾液を加えた白液によるチップの中和、蒸解釜への熱黒液(hot black liquor:高温黒液)及び/又はCCEアルカリ性濾液(その一方又は両方が白液により強化される)の充填、並びに脱リグニンをもたらすのに効果的な時間にわたる蒸解を行う工程とを有する蒸解段階を含む。これらの工程に続いて、低温置換及びパルプ取り出しを行うことができる。
蒸解段階の後、更なる工程が、得られる褐色紙料を処理して半精製パルプを得ることと、半精製パルプを苛性溶液で抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得ることと、ヘミセルロース含有溶液と精製パルプとを分離することと、精製パルプを洗浄することと、それにより得られるアルカリ性濾液を収集することと、蒸解釜内のアルカリ性濾液(任意に蒸発又は他の手段によって濃縮される)の大部分を利用することとを含むことができる。プロセス全体が、ヘミセルロースの沈殿を防ぎ、高アルファ溶解パルプの純度を改善し、パルプ製造システム全体の効率を増大させるのに役立ち得る。
更なる実施形態、代替形態及び変形形態もまた本明細書中に記載されるか、又は添付の図面において示される。
当該技術分野で一般に知られる、パルプ製造と関連して用いられる従来の前加水分解クラフトパルプ化プロセスの一般的なプロセスフロー図である。 冷苛性ソーダ抽出プロセスと関連する、パルプを洗浄及び除塵する従来のシステム及び関連プロセスを示す図である。 前加水分解クラフトパルプ化プロセスに用いることができる、蒸解のための従来のシステム及び関連プロセスを示す図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、パルプ製造プロセスのためのシステム及び関連プロセスの一般的なプロセスフロー図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、パルプ製造プロセスと関連して用いられる蒸解段階のためのシステム及び関連プロセスを示す図である。 中和段階の従来のプロセスに使用される、特に、典型的な液体及び材料のレベルを示す蒸解釜の断面図である。 中和段階の従来のプロセスに使用される、特に、典型的な液体及び材料のレベルを示す蒸解釜の断面図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、特に、中和段階中の液体及び材料の混合物及びレベルを示す蒸解釜の断面図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、特に、中和段階中の液体及び材料の混合物及びレベルを示す蒸解釜の断面図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、特に、中和段階中の液体及び材料の混合物及びレベルを示す蒸解釜の断面図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、特に、熱黒液の充填及び最終液置換の際の液体及び材料の混合物及びレベルを示す蒸解釜の断面図である。 本明細書中に開示される一実施形態に従う、特に、熱黒液の充填及び最終液置換の際の液体及び材料の混合物及びレベルを特に示す蒸解釜の断面図である。 本明細書中に開示される1つ又は複数の実施形態に従う、冷苛性ソーダ抽出パルプ製造プロセスに用いることができる好ましい蒸解プロセスのプロセスフロー図である。 ベンチ(実験室)規模の蒸解釜に対して「入る」及び「出る」液の体積を計算及び記録するのに使用されるデータシート、並びに概して図10のプロセスフローに従うプロセス条件を示す図である。 図11のプロセスと関連した、様々なサンプルからの中和物のpH及び有効アルカリ濃度を表すグラフである。 プロセスの様々な例による様々なプロセス条件及び結果をまとめたグラフである。 プロセスの様々な例プロセスによる様々なプロセス条件及び結果をまとめたグラフである。 本明細書中に開示される一実施形態によるプロセスについてのカッパー価に対するS18のグラフである。
1つ又は複数の実施形態によると、クラフトプロセスと関連して用いられるパルプ加工のための方法及びシステムは、白液等の第1の苛性溶液を、原料パルプを含有する或る量の木材又は他の有機材料と、適切なタンク又は反応槽(すなわち蒸解釜)内で合わせ、例えば140℃〜180℃の好適な温度で蒸解して褐色紙料を得ることを伴う。褐色紙料の洗浄及びスクリーニングにより、半精製パルプと、蒸解釜に戻される派生物(黒液等)とが生じる。半精製パルプを別の苛性溶液(同様に白液であってもよい)によって、例えば50℃未満の好適な温度で抽出して精製パルプを得ることができる。更なる洗浄によって、ヘミセルロース含有溶液を精製パルプから分離することで、別個に収集及び貯蔵することのできる冷苛性ソーダ抽出(CCE)アルカリ性濾液の形態の別の苛性溶液を得ることができる。このCCEアルカリ性濾液を、例えば蒸発又は他の手段によって濃縮し、単独で又は蒸解釜内の第1の苛性溶液と合わせて用いて有機材料を処理して、サイクルを再開することができる。他の実施形態では、CCEアルカリ性濾液の大部分が蒸解釜に戻されるが、濃縮は行わない。
1つ又は複数の実施形態の一態様によると、木材チップ又は他のパルプ含有有機物を、蒸解段階の一環として反応槽内で苛性溶液と反応させる。蒸解段階は好ましくは、木材チップ又は他の有機パルプ含有材料を蒸解釜又は類似の反応槽に供給することと、前加水分解を行うことと、混合物を任意に白液により強化されたCCEアルカリ性濾液を加えた白液により中和することと、蒸解釜に熱黒液及びCCEアルカリ性濾液(その一方又は両方が好ましくは白液により強化される)を充填することと、脱リグニンをもたらすのに効果的な時間にわたって蒸解することとを伴う。これらの工程に続いて、低温置換及びパルプ取り出しを行うことができる。
取り出したパルプ混合物は概して、遊離セルロース系繊維を含有する。これらの繊維を、別の苛性溶液で更に抽出してヘミセルロースを溶解することができる。使用済み苛性溶液を溶解されたヘミセルロースとともに、抽出したパルプから分離し、パルプを更なる洗浄に供して、残留苛性溶液及びヘミセルロースを除去することができる。ヘミセルロースを含有する洗浄液及び使用済み苛性溶液を合わせ、任意に濃縮して濃縮CCE濾液を得る。場合によっては、次いで、濃縮された又は未濃縮のCCE濾液を単独で又は別の苛性溶液と合わせて用いて、反応槽内の木材を処理することができる。
このようにして、潜在的には洗浄及び除塵工程で生成するアルカリ性濾液の全量を、前加水分解クラフト(PHK)蒸解プロセスに戻してアルカリ供給源として使用し、それによりヘミセルロースの沈殿を防ぎ、高アルファ溶解パルプの純度を改善することができる。上記で概説した全ての工程は、従来の設備で行うことができる。
比較目的のために、図2及び図3に、図1に示される一般的なパルプ製造技法に従う既存のプロセスの或る特定の関連する態様を示す。パルプを洗浄及び除塵する既存のシステム及び関連プロセスを図2に示し、蒸解を行う既存のシステム及び関連プロセスを図3に示すが、いずれも前加水分解クラフトパルプ化プロセスにおいて使用することができる。初めに図2を参照すると、パルプを洗浄及び除塵するシステム200及び関連プロセスは、褐色紙料の洗浄及びスクリーニング(すなわち図1の段階122)による精製パルプ232を、1つ又は複数の混合タンク271、272に一時的に貯蔵され得る、冷却された白液215、CCEアルカリ性濾液226、又は場合によっては他の流体若しくは溶液の混合物とともに、好適な輸送手段によってCCE反応装置210(すなわち図1の段階123)へと移動させることを伴う。CCE反応装置210からは、パルプ混合物233を、パルプの洗浄及び除塵の一環として使用される一連の双ロールプレスユニット251〜254に供給することができる。双ロールプレスユニット251〜254を使用した処理の後、処理されたパルプ260を次いで更に処理するか、又は硫酸(HSO)261及び/若しくは他の液体と混合し、下流の漂白プロセスに送ることができる。洗浄プロセスに関連して、双ロールプレスユニット251〜254から抽出されたCCEアルカリ性濾液216は、様々な目的で収集して使用することができ、例えば、蒸解段階で使用するために上流に戻し、再循環させることができる。
前述のように、CCEアルカリ性濾液216の一部分、通常は半量よりはるかに少ない量を、典型的には回収領域から抜き取るか、又は別様に除去する。
図3は、CCEアルカリ性濾液が任意に使用され得る従来既知の蒸解を行うシステム300及び関連プロセスを示す。図3では、1つ又は複数の蒸解釜310a、310bが木材チップ又は他のセルロース含有有機材料を供給し、これらは蒸解プロセスに使用される基本的な反応槽である。システム300は白液タンク320、置換液タンク330、及び1つ又は複数の熱黒液アキュムレータータンク340a、340bも含む。外部供給源からの白液319は白液タンク320へと圧送されることができ、そこから引き出されて蒸解釜310a、310b内で中和液322として使用されることができる。置換液タンク330は、内向きの矢印325によって示されるように、例えば褐色紙料洗浄段階からの副産物として得ることのできる、希釈された黒液又は黒液を含む混合物を含み得る溶液を保持する。
白液319又はCCE濾液316は幾つかの熱交換器を通って、白液タンク320に関連付けられたポンプの吸込側へと圧送されることができる。別のポンプによって、白液又はCCE濾液が中和段階のために、置換液タンク330に関連付けられたポンプの吐出側に送られる。熱黒液充填時には、熱黒液アキュムレータータンク340aからの液が蒸解液パイプライン324を介し、熱交換器353を通って最終的に蒸解釜310a、310bへと圧送される。熱黒液充填の後、熱黒液充填と同じポンプ及び同じラインによる白液(又はCCE濾液)充填が行われる。蒸解が終了すると、置換液327a、327bが蒸解釜310a、310bに供給され、蒸解段階の終了時に使用される。置換液の最も高温の部分が、第1の熱黒液アキュムレータータンク340aに送られて次の蒸解に使用され、より低温の部分が第2の熱黒液アキュムレータータンク340bに送られる。第2の熱黒液アキュムレータータンク340bからは、液体が熱交換器及び液体フィルターを通って蒸発プラントに送られ、そこから、有機物を燃焼させて蒸気を生成するとともに無機物を回収する回収ボイラーに送られる。
概して、高純度パルプを製造しない場合、冷苛性ソーダ抽出段階は必要とされず、液体を蒸解釜310a、310bに直接供給することができる。冷苛性ソーダ抽出を用いる場合、CCE濾液は概して、圧送されて蒸解釜310a、310bへと戻される。
典型的な蒸解プロセスでは、蒸解釜310a、310bに木材チップ又は類似の有機材料が充填された後、前加水分解プロセスが行われる。前加水分解の後、中和液322を蒸解釜310a、310bに供給し、次いで適切な蒸解液によって順に置換する。次いで、蒸解釜310a、310bの温度を蒸解温度まで上げ、脱リグニンを行うのに十分な期間その温度で維持する。蒸解が完了すると、蒸解釜310a、310bの各々の吹出弁を開き、次いで脱リグニンパルプを蒸解釜からブロータンク(図示せず)へと吐出する。蒸解サイクルの終盤に、置換液が導入されて熱黒液又は廃液を置換し、それらが蒸解釜310a、310bから放出される間、およそ蒸解に用いられる温度のままで蒸解釜を加圧し続ける。典型的なプロセスでは、置換液は褐色紙料パルプの洗浄により得られる濾液に相当する。置換された熱黒液は、その後の再使用のために1つ又は複数の高温アキュムレーター340a、340b内に収集される。置換プロセスの後、通常の蒸解温度よりも低温の置換液及び残りの使用済み黒液を、任意に低温アキュムレーター内に貯蔵し、回収領域に送ることもできる。蒸解釜310a、310bを、脱リグニンパルプを取り出すために最終的に排液する。
図4は、本明細書中に開示される一実施形態に従うパルプ製造プロセスのためのプロセス400の一般的なプロセスフロー図であり、この蒸解プロセスは従来の技法と比べて変更及び改善されている。図4のプロセス400は蒸解段階421から始まり、従来のクラフトプロセスと概ね同様に、木材チップ又は他のパルプ含有有機材料418が、高圧に耐えることが可能な蒸解釜に供給される。蒸解釜は任意の好適な容量、例えばおよそ360立方メートルであり得る。木材のタイプ又は他の植物材料若しくは有機材料の特定の選択は、所望の最終製品に応じて決まり得る。例えば、マツ、モミ及びトウヒ等のソフトウッドは一部の誘導体化プロセスに使用され、セルロースエーテル(例えば食品、塗料、油回収流体又は油回収泥、紙、化粧品、医薬品、接着剤、印刷製品、農業製品、陶磁器、織物、洗剤及び建材中に添加物として使用することができる)のような、高い粘度を有する製品を得ることができる。ユーカリ及びアカシア等のハードウッドは、非常に高い粘度を有するパルプを必要としない用途に好適であり得る。
一実施形態では、下記に更に詳細に記載されるように、蒸解釜を蒸解段階421の前加水分解部分の間、蒸気又は他の適切な手段を用いて第1の所定の温度まで加熱する。この所定の温度は、例えば110℃〜130℃、より具体的にはおよそ120℃とすることができる。この特定の例での加熱は15分間〜60分間(例えば30分間)の期間にわたって行われるが、設備の詳細及び加熱する有機材料の性質に応じて他の加熱時間を用いてもよい。
次いで、好ましくは蒸解釜を蒸気又は他の手段によって、前加水分解段階の第1の所定の温度を上回る第2の温度まで更に加熱する。この第2の前加水分解温度は好ましくは165℃前後であるが、この場合も正確な温度は設備及び有機材料を含む多数の変動要素に応じて決まり得る。前加水分解の加熱は30分間〜120分間(例えば60分間)にわたって行われるが、この場合も加熱時間は必要に応じて様々であり得る。前加水分解温度に到達した後、蒸解釜を好適な期間、例えば35分間〜45分間、又は前加水分解を完了するのに十分な任意の他の時間にわたってその温度に保持する。
好ましい実施形態では、蒸解段階421の一環として中和溶液を蒸解釜に添加する。中和溶液は白液411、アルカリ性濾液417又はそれらの混合物からなるものとすることができる。白液は、例えば水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合物の形態をとることができる。好ましい実施形態では、白液は、水酸化ナトリウム(NaOH)として1リットル当たり85グラム〜150グラムの有効アルカリ、より好ましくは1リットル当たり95グラム〜125グラムのNaOHという有効アルカリ、最も好ましくは1リットル当たり100グラム〜110グラムのNaOHという有効アルカリを有する。白液の硫化度は、10%〜40%、好ましくは15%〜35%、最も好ましくは20%〜30%の範囲を有し得る。
白液による強化の前の熱黒液充填に使用される黒液435中の有効NaOH濃度は、1リットル当たり15グラム〜35グラム、好ましくは1リットル当たり20グラム〜30グラムの範囲とすることができるか、又は白液による強化後のアルカリ性濾液417中では、1リットル当たり35グラム〜75グラムとすることができ、好ましくは1リットル当たり40グラム〜50グラムの範囲であるが、特定のプロセスに応じて様々であり得る。
中和溶液は蒸解釜に一度に添加してもよく、そうでなければ蒸解釜に数回に分けて添加してもよい。一実施形態では、白液及びアルカリ性濾液の両方を含む中和溶液を、2回に分けて添加し、それにより白液を初めに蒸解釜に白液パッド461として供給し、続いてCCEアルカリ性濾液417を添加する。一実施形態では、中和溶液を120℃〜160℃、より好ましくは140℃〜150℃の温度で添加する。白液は、中和工程における全有効アルカリ添加量の20%〜40%を構成し、より好ましくは中和における全有効アルカリ添加量の25%〜30%を構成し得る。
次いで、蒸解液で蒸解釜内の中和液を置換することができ、この蒸解液は蒸解釜内の木材の蒸解に使用する。蒸解液は蒸解釜に数回に分けて添加してもよい。一実施形態では、熱黒液及び白液又はCCEアルカリ性濾液の両方を含む蒸解溶液を2回に分けて添加する。黒液、白液及びCCE濾液溶液中の水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムの範囲及び好ましい範囲は、中和工程と同じであり得る。
1つ又は複数の実施形態では、蒸解溶液は以下の要素:(i)NaOHとして1リットル当たり15グラム〜35グラムの有効アルカリ濃度を有し、任意にNaOHとして1リットル当たり95グラム〜125グラムの有効アルカリ濃度を有する追加量の白液462により増強して、NaOHとして1リットル当たり40グラム〜50グラムの有効アルカリ濃度を達成したか、そうでなければ追加量の再循環CCE濾液417(任意に濃縮してアルカリ度を増大させるか、又は白液により強化した)で増強した黒液435;及び(ii)追加の白液463による強化又は増強後に、NaOHとして1リットル当たり55グラム〜75グラムの有効アルカリ濃度を有し、任意に蒸発又は他の類似の手段によって濃縮された、下流の冷苛性ソーダ抽出洗浄段階424に由来するCCEアルカリ性濾液417のうちの一方又は両方を含む。
蒸解釜は蒸気又は他の手段を用いて蒸解温度まで加熱することができる。蒸解温度は140℃〜180℃の範囲とすることができ、好ましくは145℃〜160℃の範囲である。加熱は10分間〜30分間又は他の好適な期間にわたるものとすることができる。次いで、蒸解釜を蒸解プロセスに好適な期間、例えば15分間〜120分間にわたって蒸解温度に保持する。温度範囲及び蒸解時間は、好ましくは130〜250の範囲である目標とするHファクターで選ばれる。
蒸解段階421の結果として、褐色紙料412が得られる。褐色紙料412を従来のクラフト手順と同様に、洗浄及びスクリーニングプロセス422に供給し、そこで褐色紙料412を種々のタイプの篩又はスクリーンを用いてスクリーニングし、遠心除塵する。次いで、褐色紙料412をスクリーニング及び洗浄プロセス422において洗浄機で洗浄する。洗浄機は市販の任意のタイプ、例えば水平ベルト洗浄機、回転式ドラム洗浄機、真空フィルター、洗浄プレス、圧縮バッフルフィルター、大気圧ディフューザー及び圧力ディフューザーであり得る。洗浄ユニットは、パルプが洗浄水と逆方向に移動するように段階間で向流を用いることができる。一実施形態では、加圧水を用いて褐色紙料412を洗浄する。別の実施形態では、希釈苛性溶液を使用して褐色紙料412を洗浄する。希釈苛性溶液は、例えば1リットル当たり5グラム未満のNaOH、より好ましくは1リットル当たり1グラム未満のNaOHという有効アルカリ濃度を有し得る。使用済み洗浄液を収集して、プロセス400の他の部分で黒液413として使用する。一実施形態では、黒液413は、蒸解段階421の終了時に蒸解釜に供給される置換液の一部として使用される。
次いで、洗浄及びスクリーニングプロセス422による半精製パルプを、この場合も従来の方法と同様に、冷苛性ソーダ抽出(「CCE」)段階423に用いられる反応装置にスラリーとして圧送し、そこで第2の苛性溶液414(第1の苛性溶液411と同じであっても、又は異なっていてもよい)と混合して、所望のセルロース系繊維からのヘミセルロースの更なる分離を行う。冷苛性ソーダ抽出は当該技術分野で既知のプロセスである。冷苛性ソーダ処理のプロセス及びシステムの例は、例えばAli et al.の米国特許出願公開第2004/0020854号、及びSvenson et al.の米国特許出願公開第2005/0203291号(どちらも本明細書中に完全に記載されているかのように、参照により本明細書中に援用される)により詳細に記載されている。
CCE抽出プロセス423のブレンド手順及び抽出手順に使用される苛性溶液414は、新たに調製した水酸化ナトリウム溶液、下流のプロセスからの回収物、又はパルプ工場若しくは製紙工場の操作における副産物、例えば濃縮CCE濾液、白液等を含み得る。水酸化アンモニウム及び水酸化カリウム等の他の塩基性溶液を用いてもよい。低温アルカリ抽出は、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム及び界面活性剤等の更なる化学物質を添加して行うことができる。
所望の滞留時間の後、パルプは次の洗浄プロセス424において使用済み冷苛性溶液から分離される。使用済み冷苛性溶液は抽出されたヘミセルロースを含有する。パルプはCCE洗浄ユニット内で洗浄される。例示的な洗浄機としては、水平ベルト洗浄機、回転式ドラム洗浄機、真空フィルター、洗浄プレス、圧縮バッフルフィルター、大気圧ディフューザー及び圧力ディフューザーが挙げられる。洗浄液は例えば純水、又は例えば1リットル当たり1グラム以下のNaOHという有効アルカリ濃度を有する希釈苛性溶液を含み得る。使用済み洗浄液を従来の方法で収集し、使用済み冷苛性溶液と合わせて別の苛性溶液416を得ることができ、この苛性溶液416は一態様では洗浄プロセス424から得られるアルカリ性濾液を含む。抽出及び洗浄されたパルプ433はその間、次の漂白段階へ移動する。
CCEアルカリ性濾液416を、全体的又は部分的に濃縮プロセスへ供給することができ、例えば濃縮のための蒸発システムに供給することができるが、他の実施形態では濃縮プロセスに供しない。典型的な蒸発システムは、連続して設置された幾つかのユニット又はエフェクトを有し得る。液体は各々のエフェクトを通って移動し、エフェクトの出口で更に濃縮される。真空を適用して、溶液の蒸発及び濃縮を促進してもよい。濃縮プロセスに関連して、薄い黒液を、例えば連続配置の1つ又は複数のエフェクトを用いて蒸発させることで薄い黒液の濃度をプロセス中漸増させることによって、濃い黒液へと濃縮することもできる。濃い黒液を蓄積タンク内に貯蔵し、蒸気を発生させるとともに発電を行う回収ボイラーにおいて使用し、それにより生じる副産物の再使用又は再循環の効率を増大させることができる。蒸解段階における再使用のためのCCEアルカリ性濾液を濃縮する技法の一つが、本発明の譲受人に譲渡され、本明細書中に完全に記載されているかのように、参照により本明細書中に援用される、同時出願された「アルカリ性濾液の再使用による低温苛性抽出を用いてパルプを加工する方法及びシステム(Method and System for Pulp Processing Using Cold Caustic Extraction with Alkaline Filtrate Reuse)」と題する同時係属中の米国特許出願公開第12/789,265号(代理人整理番号161551−0002)に記載されている。
濃縮アルカリ性濾液溶液417は、蒸解段階421において中和液の一部及び/又は蒸解液の一部として、全体的に又は部分的に再使用することができる。先に述べたように、CCEアルカリ性濾液416を、蒸解液の一部として使用するために白液463と合わせてもよい。或る特定の実施形態では、濃縮CCEアルカリ性濾液溶液417を、白液から強化することなく使用することができる。
蒸解段階421において再使用しない濃縮アルカリ性濾液溶液417は、他の目的に使用することができる。例えば、濃縮アルカリ性濾液溶液417を、任意に他の目的、例えば隣接する製造ラインで(白液として)使用するために分流させることができる。濃縮アルカリ性濾液溶液417は、蒸解段階421におけるより高い液体濃度の使用を可能にし、それにより繊維へのヘミセルロースの再沈殿を防ぐこともできる。
図5は、本明細書中に開示される一実施形態に従う、パルプ製造プロセスと関連して使用される蒸解段階のためのシステム500及び関連プロセスの図である。図5では、1つ又は複数の蒸解釜510(この例では8つの蒸解釜)が、従来のプロセスと同様に、木材チップ又は他のパルプ含有有機材料を供給し、蒸解プロセスに使用される基本的な反応槽として機能する。システム500は特にまた、白液/CCE濾液保持タンク520と、置換液タンク530と、1つ又は複数の熱黒液アキュムレータータンク540a、540bと、1つ又は複数のブロータンク560とを含む。好適な供給源からの白液519を、流体加熱器551、552で加熱し、白液/CCE濾液保持タンク520へと圧送し、そこで後の使用のために再循環及び貯蔵することができ、そこから引き出し、蒸解釜510内の中和液522として使用することができる。CCE濾液516も同様に加熱し、後の使用のために白液/CCE濾液保持タンク520へと圧送することができる。置換液タンク530は、例えば内向きの矢印525によって示されるように、洗浄段階424からの副産物であり得る、希釈黒液又は黒液を含む混合物を含み得る溶液を保持する。
蒸解プロセスの終了時に、置換液タンク530からの低温液(75℃〜85℃)が、蒸解反応を終わらせるために蒸解釜510に送られる。蒸解釜510から置換される液体の最初の部分は比較的高温であり(140℃〜160℃)、次の蒸解に使用するために第1の熱黒液アキュムレータータンク540aに送られる。蒸解釜510から次に置換される、より低温の液体は、より温度が低く(約120℃〜140℃)、第2の熱黒液アキュムレータータンク540bに送られる。第2の熱黒液アキュムレータータンク540bから、熱黒液536が熱交換器を通って液体フィルター570へと圧送される。黒液が冷却されると同時に、その熱が熱交換器551、552内を循環する白液又はCCE濾液を温めるために使用される。そこから、濾過された黒液が更なる加工のために蒸発プラントに送られる。
図5で説明される好ましい蒸解プロセスでは、蒸解釜510が木材チップ又は類似の有機材料で充填される。前加水分解が蒸気により行われた後、白液「パッド」の形態の中和白液517が蒸解釜510に供給され、続いてCCEアルカリ性濾液516が中和液522の一部として導入される。次いで、中和液は適切な蒸解液によって置換される。蒸解液は、(i)蒸解のために特別に調製された、白液/CCE濾液保持タンク520からのCCE濾液524、(ii)任意に追加量の白液(又はCCE濾液)562により強化され、この例では、温度制御のために流体加熱器553内を循環する、黒液アキュムレータータンク540aからの黒液535、及び/又は(iii)濃縮されているか、若しくは蒸発若しくは他の類似の手段によらずに、任意に白液により強化された濃縮CCEアルカリ性濾液を生成するために追加の白液519によって増強若しくは強化された、下流の冷苛性ソーダ抽出洗浄段階424(図4を参照されたい)に由来するCCEアルカリ性濾液516を含み得る。CCEアルカリ性濾液516は、中和工程において中和液522として、又は蒸解において蒸解CCE濾液524として使用するために熱交換器551、552を通って白液保持タンク520へと圧送される。様々な蒸解液の好ましい濃度は、本明細書の他の部分で記載されている。
蒸解液(複数の場合もある)を蒸解釜510に添加した後、蒸解釜510の温度を蒸解温度まで上げ、蒸解釜を、脱リグニンを行うのに十分な期間その温度で維持する。蒸解が完了すると、各々の蒸解釜510の吹出弁を開き、次いで、脱リグニンパルプを蒸解釜510からブロータンク560の1つへと吐出する。蒸解サイクルの終盤に、置換液タンク530からの置換液が導入されて熱黒液又は廃液を置換し、それらが蒸解釜510から放出される間、およそ蒸解に用いられる温度のままで蒸解釜を加圧し続ける。先述のように、置換液は概してパルプの洗浄、又は先のバッチのパルプ製造時の脱リグニン繊維の洗浄により得られる黒液又は類似の濾液を含む。置換された熱黒液は、その後の再使用のために1つ又は複数の高温アキュムレーター540内で収集される。
蒸解釜510を、脱リグニンパルプを取り出すために最終的に排液する。蒸解釜510から先に排液された熱黒液を再使用する(また、熱白液等の他の溶液又は濾液と混合する)ことができる。
全蒸解プロセスの様々な態様は、図6〜図9を更に参照することによって説明することができる。図6A及び図6Bは、特に、中和工程のための既存のプロセスにおいて使用される典型的な液体及び材料のレベルを示す、蒸解釜(例えば図5に示す蒸解釜510のいずれか)の断面図である。図7A〜図7C、図8及び図9も、本明細書中に開示される1つ又は複数の実施形態に従う、蒸解の前の中和時の液体及び材料の混合物を示す蒸解釜の断面図である。初めに、図6Aに示すように、既知の蒸解プロセスの中和工程における蒸解釜610を、前加水分解後に蒸解釜610の全体積のかなりの割合(例えば60%)に相当するかなりの量のCCE濾液(液体)616で充填することができる。例えば、360立方メートルの容量、並びに72トンの木材(乾燥重量)及び11トンの溶解固形物の充填量を有する蒸解釜については、約214立方メートルのCCE濾液616を中和工程の一環として使用することができる。この工程において、CCE濾液濃度は1リットル当たりおよそ51.3グラムのNaOHであり、木材に対する有効アルカリ(EA)添加量はNaOHとして13.2%であり得る。前加水分解の後、蒸解釜610は、およそ165℃であり、相対圧(すなわち局部大気圧に対する圧力)は7バールであり得る。この時点で、木材チップ又は他のパルプ含有有機材料はほとんど空気を含まず、チップ又は類似の有機材料の空隙内に蒸気が存在するものとする。ほぼ全てのチップの水分が液体形態である。
中和液が130℃という典型的な温度で蒸解釜610へと圧送される際に、チップ又は他の有機材料中の蒸気が凝縮し、凝縮によって発生する、より低い圧力に起因して、液体がチップ又は他の有機材料内に引き込まれる。このプロセス時に、或る特定の量の液体が蒸気から加えられ、同様に脱気によって失われる。例えば、上記に記載の量では、およそ11.9立方メートルの水が蒸気から加えられ、約1.6立方メートルの水が脱気625によって失われ得る。全体で、自由液体(中和液及び蒸気の水分)に換算して正味約224立方メートルの液体が、蒸解プロセスのこの部分で加えられ得る。前加水分解及び中和の後、蒸解釜610は通常、およそ203立方メートルの自由液体を含有し、1.31m/BDt(チップの絶乾メートルトン当たりの液体の立方メートル)又は3.15m/ADt(チップの風乾メートルトン当たりの液体の立方メートル)に相当する、およそ109立方メートルの液体が依然として前加水分解されたチップに結合することができる。このため、全含量312立方メートルの液体が自由液体として、又はチップに結合して存在し得る。この時点で、蒸解釜610は72メートルトンの木材、該木材内に吸着した36メートルトンの水、及び11メートルトンの種々の溶解固形物を保持し得る。この例における中和後の液体の密度は、約1.13t/m(すなわち立方メートル当たりのトン)となるであろう。
ここで図6Bに示すように、添加された中和液はチップ(チップの水分は無視する)の空隙内及びチップ周囲の空間を満たす。このため、本例を挙げると、214立方メートルの添加された中和液は、チップ内の空間においておよそ56.8立方メートル(蒸解釜610のコーン607において8.3立方メートル及び蒸解釜610の円筒部分608において48.5立方メートル)を満たし、チップ周囲の空間において157.2立方メートル(蒸解釜610のコーン607において22.8立方メートル及び蒸解釜610の円筒部分608において134.4立方メートル)を満たすものとして分散し得る。これはコーン607の体積が40立方メートルであり、かつ円筒部分608の高さが9.6メートルであることを前提とする。この場合、蒸解釜コーン607におけるチップの量は9.3BDt(絶乾メートルトン)であり、結合した液体の体積は12.3立方メートル、結合した水の体積は4立方メートル、チップ周囲の自由液体は22.8立方メートル、コーン607に入る全体積は31.1立方メートル(すなわち、22.8立方メートル+12.3立方メートル−4.0立方メートル)であると見積もることができる。高さがおよそ0.6〜0.7メートルという小幅の凝縮物613が、液体混合物の、蒸気と液体とが接する表面で収集されるか又は該表面に形成される。
木質繊維へのヘミセルロースの再沈殿を低減又は回避するために、白液「パッド」又は蒸解プロセスにおける強化工程を用いて、中和工程の初めに使用されるCCEアルカリ性濾液の一部を置き換えることができる。このため、中和工程の最初の部分としての前加水分解の後、或る量の白液を、好ましくは木材チップ又は他のパルプ含有有機材料内の空隙を満たすのに十分な量で添加し、続いてCCE濾液を注入する。好ましくは、木材チップ内の空隙を満たし、製造されるパルプの最終的なアルファ含量を改善するために、木材チップ1メートルトン毎に、およそ0.35立方メートル〜0.55立方メートル、より好ましくは0.40立方メートル〜0.44立方メートルの白液を前加水分解後に添加する。中和のために添加される流体の残りは、従来のプロセスのようにCCEアルカリ性濾液の形態をとるか、又は任意に濃縮CCEアルカリ性濾液を使用することを伴ってもよい。これらの工程は蒸解釜内のアルカリ度を上昇させるが、他のプロセスの特性、例えば粘度、カッパー価及び/又は有効アルカリ消費量を許容可能な範囲に維持したまま、ヘミセルロースの再沈殿が抑制され、より高いアルファ含量が達成可能であることが本発明者らによって見出されている。
先の例に戻ると、図7Aに示すように、例えば体積30立方メートルの白液を、前加水分解後に、72トンの木材チップを含有する蒸解釜610に添加することができる。図7Aに示すように、白液パッド715は、木材チップ又は類似の有機材料の下方部分とともに、蒸解釜610のコーン607をほとんど満たす。次いで、体積82.9立方メートルのCCE濾液(強化又は濃縮されたCCEアルカリ性濾液)を蒸解釜610に添加して、白液パッドを置換し、その結果、実質的に全ての白液が木材チップ内の空隙を満たすために消費されることとなる。その後、130.6立方メートルという更なる体積のCCE濾液(好ましくは濃縮CCEアルカリ性濾液)を蒸解釜610に導入して中和プロセスを完了する。図7Bは、30立方メートルの白液パッド及び82.9立方メートルのCCE濾液716の導入後の蒸解釜610の内容を示す。図示のように、白液パッドと最初のCCE濾液との組合せが、図7Bにおいて蒸解釜610内の木材チップの下方部分718によって反映されるように、蒸解釜610内の木材塊の約41%(およそ33.9絶乾メートルトン)を覆う。蒸解釜610内のチップの上方部分719によって反映されるように、木材チップの残りの部分は、図7Cに示すようにチップ内及びチップ周囲の空隙を満たす130.6立方メートルの更なるCCE濾液717で覆われることになる。先と同様に、高さがおよそ0.6メートル〜0.7メートルという小幅の凝縮物713が液体混合物の表面に形成される。
蒸解釜610に添加された白液パッドは、1リットル当たり95グラム〜125グラムのNaOHという有効アルカリ(EA)濃度、より好ましくは1リットル当たり105グラム〜115グラムのNaOH、最も好ましくは1リットル当たりおよそ110グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有し得る。このような場合の木材に対する等価アルカリ添加量はおよそ4%であり得る。30立方メートルの白液パッド及び82.9立方メートルのCCE濾液716の添加の後、残りのCCE濾液717の添加の前では、蒸解釜610のコーン607における結合した液体はおよそ8.3立方メートルであり、コーンにおける自由液体はおよそ23立方メートルである。蒸解釜610の円筒部分608における結合した液体は約21.7立方メートルである。
白液パッドは、好ましくは中和工程に適用される全有効アルカリ添加量の少なくとも10%を占め、より好ましくは中和工程に適用される全有効アルカリ添加量の13%〜25%を占め、最も好ましくは中和工程に適用される全有効アルカリ添加量の20%〜25%を占める。上記の例では、白液パッドによってもたらされる木材に対する有効アルカリ添加量は4%であり、残りの中和液については、木材に対する有効アルカリ添加量はCCE濾液からの13.2%であり、総計で17.2%の有効アルカリ添加量である。このため、この例では、白液パッドは木材に対する全有効アルカリ添加量の23%を占める。
一態様では、本明細書中に記載の白液パッドの使用は、ヘミセルロースに富んだCCE濾液液体が、図7B及び図7Cに示されるプロセスにおいて木材チップ又は他の類似の材料と接する際に、チップ又は他の材料が白液によって既に中和されているため、中和段階時のpHショックを回避又は低減することができる。白液パッド715は概して、チップ空隙に吸着される際に、木材チップ又は他の類似の有機材料の−pHを増大させる。CCE濾液を添加すると、吸着されていない残りの白液が置換され、この白液は蒸解釜610内で上昇する際に、更なる木材チップ及び有機物を、CCE濾液がこれらのチップ又は有機物に到達することができるまで中和し続ける。CCE濾液の導入は白液パッド715の後に行われるため、ヘミセルロースにより強化されたCCE濾液液体は初めに、既に中和されたこれらのチップ又は有機材料と接し、これによりpHショックが回避されるか又は最小限に抑えられるが、ただし、場合によっては蒸解釜610の最上部近くの少量のチップ又は有機物は除く。CCE濾液からのヘミセルロースは、木材チップ又は有機材料に再吸着又は沈殿せずに溶液中に留まる。これによりパルプ褐色紙料の純度が増大し、最終的により高純度の最終製品が得られることになる。
図8及び図9は、本明細書中に開示される一実施形態に従う、熱黒液の充填及び最終液置換の後続工程中の液体及び材料の混合物及びレベルを示す。蒸解液の導入及び既存の液体の置換を示す図8に示されるように、中和工程の完了後に体積210立方メートルの熱黒液815を蒸解釜610に添加することができる。次いで、体積144立方メートルのCCE濾液(強化されたCCE濾液又は濃縮されたCCEアルカリ性濾液)817、続いて体積20立方メートルの更なる熱黒液821を蒸解釜610に添加することによって、中和液(この時点で残留物及び不純物が侵入し、したがって黒液840の形態をとる)が置換される。この例では、351立方メートルの黒液840が蒸解釜610から置換され、黒液アキュムレータータンク(「AC2」)、例えば図5のアキュムレータータンク540bに送られる。
図8に示すプロセスにおいて蒸解釜610内のCCE濾液によって添加されるアルカリ添加量は、乾燥木材に対する有効アルカリとして表すと7%〜12%、より好ましくは、乾燥木材に対するNaOHに換算して表すと8.9%前後である。蒸解に必要とされる全アルカリ添加量は、強化された熱黒液とともに添加されるアルカリによって補完される。黒液815、821とCCE濾液716とを合わせて添加した後、蒸解釜610内の全液体体積はおよそ312立方メートルであり、蒸解釜610内の全液体質量は約353トンであり、蒸解釜610内の液体の密度はおよそ1.13である。
図9は、使用済み蒸解液の置換をもたらす蒸解プロセスの終了時の置換液の導入を示す。図9に示すように、体積475立方メートルの置換液930を、蒸解の終了時に蒸解釜610に添加することができる。この時点でパルプ残留物及び不純物が侵入した蒸解液を、220立方メートルの第1の容量の比較的濃い熱黒液942として取り出して、このタイプの黒液を保持する第1の黒液アキュムレータータンク(「AC1」、例えば図5のタンク540a)内に貯蔵し、また255立方メートルの第2の容量の比較的薄い黒液941として取り出して、より薄いタイプの黒液を保持する第2の黒液アキュムレータータンク(「AC2」、例えば図5のタンク540b)に貯蔵することができる。幾らかの量の蒸解液が蒸解木材チップ、又は他のパルプを含む有機材料に結合したままである。このプロセスによっておよそ31.1絶乾トンの蒸解パルプが得られ、およそ41.1トンの固形物が蒸解プロセス及び関連プロセスにおいて溶解する。
図10は、本明細書中に開示される1つ又は複数の実施形態に従う、冷苛性ソーダ抽出パルプ製造プロセスにおいて使用することができる蒸解プロセス1000のプロセスフロー図である。図10のプロセス1000は、木材チップ又は他のパルプ含有有機材料を蒸気とともに、高圧に耐えることが可能な蒸解釜に供給する木材チップ供給工程1005から始まる。前述のように、木材のタイプ又は他の植物材料若しくは有機材料の特定の選択は、所望の最終製品に応じて決まり得る。蒸気は、蒸解釜内のチップの充填が改善されるように導入される。次いで、蒸解釜を1つ又は複数の工程で加熱することができる。この例では、蒸解釜を最初の加熱工程1018において蒸気によって又は別様に所定の温度(例えば110℃〜130℃、より具体的にはおよそ120℃とすることができる)まで加熱し、続いて後続工程1020において前加水分解温度まで(例えば165℃前後まで)加熱することができるが、これら2つの工程は、一部の実施形態では組み合わせられる可能性がある。加熱時間は設備の詳細、蒸解釜の容積、木材チップの体積及び加熱される有機材料の性質によって或る程度左右され得る。
前加水分解温度に達すると、蒸解釜は好適な期間、例えば35分間〜45分間、又は前加水分解段階1025を完了するのに十分な任意の他の時間にわたってその温度に保持される。次に、中和工程1030が行われる。好ましい実施形態では、白液1015を含む中和溶液を初めに蒸解釜に添加し、続いてCCE濾液液体1016を導入する。白液1015は例えば、本明細書の他の部分で記載される実施形態のいずれかに従う有効アルカリ含量を有する、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合物の形態をとることができる。例えば、白液1015は水酸化ナトリウム(NaOH)として1リットル当たり80グラム〜150グラムの有効アルカリ、好ましくは水酸化ナトリウムとして1リットル当たり100グラム〜110グラムの有効アルカリを有し得る。白液1015の硫化度は、好ましくは20%〜30%であるが、一部の実施形態では様々とすることができる。CCE濾液1016は、下流のCCE洗浄プロセスにより得られるとともに任意に蒸発又は他の手段によって濃縮された再循環CCEアルカリ性濾液を含み得る。CCE濾液1016中の有効NaOHの濃度は、例えば1リットル当たり50グラム〜75グラムとすることができるが、特定のプロセスに応じて様々とすることができる。
好ましくは、図7A〜図7Cについて記載されるプロセスに従い、白液1015を初めに「パッド」として導入し、続いてCCE濾液液体1016を導入する。次いで、工程1035において、図8と関連して記載されるように、熱黒液1017の第2の部分を蒸解釜に導入する。
次の工程1040では、第2の白液1019を蒸解目的で蒸解釜に添加する。代替形態として、白液1019を、下流のCCE洗浄プロセスから得るとともに任意に蒸発又は他の手段によって濃縮された再循環CCEアルカリ性濾液に置き換えることができる。工程1045によって示されるこの工程において、蒸解釜の内容物が蒸気又は他の手段によって適切な蒸解温度まで加熱される。この温度は、蒸解工程1050において蒸解釜内の木材パルプの脱リグニンを達成するのに好適な期間にわたって維持される。蒸解温度は140℃〜180℃の範囲とすることができ、好ましくは150℃〜160℃の範囲であるが、任意の好適な温度であるものとすることができる。加熱は10分間〜30分間又は他の好適な期間にわたるものとすることができる。蒸解釜は蒸解プロセスに好適な期間、例えば15分間〜120分間にわたって蒸解温度に保持される。温度範囲及び蒸解時間は一般に、先に記載のように目標とするHファクターで選択される。
蒸解の後、工程1055によって示されるように、一般に褐色紙料洗浄工程からの希釈黒液1034を蒸解釜に導入し、パルプ内容物を下流の加工のために取り出す。次いで、工程1060によって示されるように、蒸解釜を取り出し、洗浄及び除塵することができ、工程1070によって示されるように、木材チップの次のバッチを同様に加工することができる。
本発明の実施形態のプロセスを以下の実施例において実証する。実施例に記載の分析結果は、概して図10のプロセスフロー1000に従って行われる一連の工程を挙げる図11に示す一般的なプロセスを用いて得られ、工業的プロセスをシミュレートする、容積がおよそ20リットルのベンチスケールの蒸解釜を参照して記載する。図11に示す手順と具体例との相違点を、下記により詳細に説明する。
図11に示されるように、プロセスは通常、木材チップ(この場合はユーカリ)を蒸解釜に添加することに加えて、蒸解釜内の初期温度及び湿度を達成する30分間の蒸解釜の予備蒸気処理から始まるが、実験室の場合、蒸気充填は必要とされないこともある。次いで、蒸解釜に蒸気を供給することによって、およそ60分間にわたって蒸解釜を更に加熱し、温度を165℃にする。次いで、前加水分解工程を、例えばおよそ40分間165℃の温度で行う。次いで、一部の例においては、CCEアルカリ性濾液又は第1の白液パッドを中和プロセスの一環として添加する。このプロセスはおよそ15分間かかり、およそ150℃の温度で行われる。次に、第1の熱黒液を添加して、蒸解釜の残りの部分を満たす。第1の熱黒液の導入はおよそ15分間かかり、140℃の温度で行われる。次に、置換工程において第2の熱黒液を蒸解釜に添加し、これはおよそ146℃の温度で23分間行われる。これら2つの熱黒液工程は合わせて、工業的操作において行われるような熱液充填に相当する。次に、白液又はCCEアルカリ性濾液を添加して、置換プロセスを終了させ、蒸解を開始する。必要であれば、幾らかの熱黒液を蒸解釜に供給することができる。白液(又はCCEアルカリ性濾液)と熱黒液とのこの混合は、例えばおよそ152℃の温度及び10.0バールの圧力で12分間行うことができる。蒸解工程のために、液体を1分間におよそ3リットルの速度で3分間、9.1バールのわずかに低下した圧力で蒸解釜内を循環させる。次いで、蒸解釜の内容物を、例えば14分間にわたって再び加熱しておよそ160℃にした後、例えば約23分間の好適な蒸解期間にわたってその温度に維持する。次に、希釈液を置換液として導入し、蒸解釜の内容物を下流の加工のために取り出す。希釈液体を1分間当たり1リットルの速度で導入し続け、蒸解釜内で十分な期間循環させる。次いで、蒸解釜を取り出し、洗浄及び除塵して、新たなバッチの準備をすることができる。
図13A及び図13Bは、下記に記載の実施例2〜実施例9による様々なプロセス条件及び結果をまとめた表である。特に、図13Aは様々な異なる例のプロセス条件及びパラメーターを示し、図13Bは対応する結果を表形式で示す。
実施例1
中和工程及び蒸解工程において白液と熱黒液との組合せを用いたクラフトプロセス
第1の実施例によると、20リットル容のベンチスケール蒸解釜を、30分間にわたって蒸気で120℃に予熱する。ユーカリ又は他の木材チップ等の炉乾燥したパルプ含有有機材料4700グラムを蒸解釜に添加する。一連の実験室操作は図11の通りである。蒸解釜を60分間にわたって165℃に加熱し、165℃で更に40分間保持して、前加水分解段階を完了させる。1リットル当たり124.7gのNaOHという有効アルカリを有する4.51リットルの第1の白液(「WL1」)を、150℃の温度で15分かけて蒸解釜に添加する。Hファクターの計算はこの時点から開始する。次いで、1リットル当たり25.3gのNaOHという有効アルカリを有する10.8リットルの第1の熱黒液(「HBL1」)を、140℃の温度で15分かけて添加して、中和工程を完了させる。次いで、1リットル当たり25.3gのNaOHという有効アルカリを有する10.0リットルの第2の熱黒液(「HBL2」)を蒸解釜に添加して、146℃の温度で23分間にわたって使用済みのHLB1及びWL1を置換し、続いて10バール及び152℃で12分間にわたって添加される、1リットルのHBL2と、1リットル当たり124.7gのNaOHという有効アルカリ濃度を有する4.16リットルの第2の白液(「WL2」)との混合物からなる蒸解液を添加する。この一連の操作における重要なプロセスパラメーターの1つは、添加した全ての液体の全体積及びそれらのそれぞれの濃度を考慮して計算される、木材チップの重量(乾燥量基準)に対するアルカリの割合に換算して一般に表される、全有効アルカリ添加量である。本実施例にでは、木材に対する全等価有効アルカリ添加量は、中和工程についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして11%のEAである。中和工程後に置換されたWL1及びHBL1のサンプル(「中和物」)を収集して、通常は置換操作の開始からその操作の終了までpH挙動を測定及び追跡する。置換された液体を後の回収のために収集する。
HBL2及びWL2を含む蒸解液を、1分間当たり3リットルの速度で3分間、9.1バールの圧力下で循環させる。次いで、蒸解釜を14分間にわたって160℃に加熱し、160℃で更に23分間保持する。反応混合物のアリコートを取り、反応の終了時のNaOHの濃度(「EoC」)を測定する。EoCは1リットル当たりおよそ23.3gのNaOHである。
次いで、蒸解釜を冷却し、反応混合物を希釈苛性溶液で2回洗浄する。各洗浄に、希釈液体溶液(「DL」)1リットル当たりおよそ0.2gのNaOHを含有する15リットルの水溶液を使用する。最初の洗浄後の廃液は1リットル当たりおよそ21.9gのNaOHを含有し、熱黒液の次のバッチを調製するために使用することができる。2回目の洗浄後の廃液は1リットル当たりおよそ13.0gのNaOHを含有し、中和物と合わせる。合わせた液体は1リットル当たり6.4gのNaOH(3.88%のNaOHに等しい)というEAを有する。工場内では、この混合物を蒸発させて、回収ボイラー燃焼のためにより濃縮された苛性溶液を得ることができる。
実験室ベンチ蒸解釜を、最初にDL(希釈液)を1分間当たり1リットルで10分間、蒸解釜内を循環させることによって除塵した後、初めに33リットルの純水、続いて45リットルの純水で2回洗浄する。最初の洗浄からの使用済み洗浄液は1リットル当たりおよそ0.9gのNaOHを含有し、DLの次のバッチを調製するために使用することができる。
得られる褐色紙料は、11.9のカッパー価、1117ml/gの粘度、3.54%のS10溶解度及び2.7%のS18溶解度を示す。反応は39.8%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.4%の棄却率を有し、39.4%のスクリーニング収率をもたらす。反応のHファクターは333である。
図12は、様々なサンプルからの中和物のpH及び有効アルカリ濃度を表すグラフであり、蒸解段階の全体的な完了を示唆するアルカリ含量の横ばい状態を示す。
実施例2
中和工程及び蒸解工程において白液を用いたクラフトプロセス
第2の実施例によれば、実施例1に記載されているのと同じパルプ化プロセスを、中和工程及び蒸解の両方に白液を用いて繰り返す。中和物は10.2のpHを有し、最終蒸解液は1リットル当たり26.7gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは310であり、蒸解反応のHファクターは394である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和工程についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして11%のEAである。
得られる褐色紙料は、10.3のカッパー価、988ml/gの粘度、3.6%のS10溶解度及び2.7%のS18溶解度を示す。反応は39.3%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.13%の棄却率を有し、39.1%のスクリーニング収率をもたらす。
実施例3
中和工程においてCCE54、蒸解工程において白液をそれぞれ用いたクラフトプロセス
第3の実施例によれば、中和用の白液を1リットル当たり54gのNaOHというEAを有する、CCE工程からの濾液(「CCE54」)に置き換える以外は、実施例1に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。中和物は8.6のpHを有し、蒸解混合物は1リットル当たり23.5gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは300であり、蒸解反応のHファクターは364である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和工程についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして11%のEAである。
得られる褐色紙料は、11.0のカッパー価、1059ml/gの粘度、4.0%のS10溶解度及び3.1%のS18溶解度を示す。反応は40.3%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.16%の棄却率を有し、40.2%のスクリーニング収率をもたらす。
実施例4
中和工程及び蒸解工程においてCCE54を用いたクラフト加工
第4の実施例によれば、CCE54によって中和工程及び蒸解工程の両方の白液を置き換える以外は、実施例1に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。中和物は11.0のpHを有し、蒸解混合物は1リットル当たり18.5gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは297であり、蒸解反応のHファクターは419である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和工程についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして11%のEAである。
得られる褐色紙料は、10.8のカッパー価、1118ml/gの粘度、4.5%のS10溶解度及び3.6%のS18溶解度を示す。反応は40.4%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.09%の棄却率を有し、40.3%のスクリーニング収率をもたらす。
実施例5
中和工程及び蒸解工程において「薄い」白液を用いたクラフト加工
第5の実施例により、1リットル当たり54gのNaOHというEAを有する白液(「WL54」)を中和工程及び蒸解工程の両方に使用する以外は、実施例1に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。中和物は11.3のpHを有し、蒸解混合物は1リットル当たり18.8gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは300であり、蒸解反応のHファクターは429である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和工程についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして11%のEAである。
得られる褐色紙料は、11.2のカッパー価、1158ml/gの粘度、3.7%のS10溶解度及び3.1%のS18溶解度を示す。反応は40.2%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.12%の棄却率を有し、40.0%のスクリーニング収率をもたらす。
実施例2及び実施例5におけるS18溶解度の比較から、より高いアルカリ濃度が蒸解工程におけるヘミセルロースの再沈殿を抑制するのに役立つことが示唆される。実施例3、実施例4及び実施例5における結果の比較から、CCE濾液の使用が最終製品中のヘミセルロース含量に対して悪影響を与えることが示唆される。CCE濾液の利用を最大限にしつつヘミセルロース含量を更に減少させるために、以下の実験を行う。
実施例6
中和工程及び蒸解工程においてCCE60を用いたクラフトプロセス
第6の実施例によれば、1リットル当たり60gのNaOHというEAを有するCCE濾液(「CCE60」)によって中和工程及び蒸解工程の両方の白液を置き換える以外は、実施例1に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。蒸解における、より高いアルカリ添加量に起因して、蒸解温度を160℃から155℃に下げるが、それに応じて蒸解時間を増大させる。中和物は11.2のpHを有し、蒸解混合物は1リットル当たり24.5gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは272であり、蒸解反応のHファクターは389である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和工程についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして12.5%のEAである。
得られる褐色紙料は、11.4のカッパー価、1155ml/gの粘度、4.6%のS10溶解度及び3.6%のS18溶解度を示す。反応は40.7%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.07%の棄却率を有し、40.6%のスクリーニング収率をもたらす。CCE54を使用する場合と比較して、CCE60によって蒸解温度は5℃低下する一方で、蒸解時間及び蒸解のためのアルカリ添加量は増大し、褐色紙料中のヘミセルロース含量は減少しない。
実施例7
中和工程においてCCE60、蒸解工程においてCCE60とHBL40との組合せをそれぞれ用いたクラフトプロセス
第7の実施例によれば、1リットル当たり40.0gのEAを有する、より高度に濃縮された熱黒液(「HBL40」)を、蒸解工程において使用する以外は、実施例6に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。本実施例では、蒸解工程における全アルカリ添加量は、蒸解液の一部分としてより高度に濃縮された黒液(HBL40)を使用することにより13.0%に増大する。
加えて、蒸解温度は実施例6と同様に155℃であるのに対し、蒸解時間はより短く、蒸解を160℃で行う実施例2〜実施例5における蒸解時間と同程度である。結果として、蒸解反応のHファクターは377とより低くなる。中和物は1リットル当たり3.1gのNaOHというEAを有し、蒸解混合物は1リットル当たり29.5gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは301である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和についてはNaOHとして12%のEA、蒸解についてはNaOHとして13%のEAである。
得られる褐色紙料は、10.3のカッパー価、1107ml/gの粘度、4.1%のS10溶解度及び3.1%のS18溶解度を示す。反応は40.1%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.09%の棄却率を有し、40.0%のスクリーニング収率をもたらす。実施例6と比較して、S18溶解度から明らかなように、より低いヘミセルロース含量が観察される。このように、より高いアルカリ濃度及び蒸解工程におけるアルカリ性の流体の組合せの使用は、ヘミセルロース含量の低下をもたらすようである。
実施例8
中和工程及び蒸解工程においてCCE70を用いたクラフトプロセス
第8の実施例によれば、1リットル当たり70gのNaOHというEAを有するCCE濾液(「CCE70」)を中和工程において使用し、CCE70とHBL40との組合せを蒸解工程において使用する以外は、実施例7に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。加えて、蒸解における有効アルカリ添加量は15%である。
中和物は11.6のpHを有し、蒸解混合物は1リットル当たり36.1gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは304であり、蒸解反応のHファクターは301である。
得られる褐色紙料は、11.0のカッパー価、1119ml/gの粘度、4.0%のS10溶解度及び2.9%のS18溶解度を示す。反応は40.0%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.13%の棄却率を有し、39.9%のスクリーニング収率をもたらす。実施例6及び実施例7と比較して、S18溶解度から明らかなように、より低いヘミセルロース含量が同様に観察される。このことは、より高いアルカリ濃度と、蒸解工程におけるアルカリ性の流体の組合せとを使用することがヘミセルロース含量の低下をもたらすようであるという認識を強める。
実施例9
白液パッドを用いたクラフトプロセス
第9の実施例によれば、中和工程について、CCE60を初めに、1リットル当たり約125gのNaOHというEAを有する、先に記載のように白液パッドの形態の或る体積の白液、続いて、CCE濾液(CCE60)で置き換える以外は、実施例7に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。中和工程における有効アルカリ添加量は12%から16%に(白液パッドによる4%)増大する。結果として、蒸解における有効アルカリ添加量は13%から11%に低下する。
中和物は1リットル当たり4.5gのNaOHというEAを有し、蒸解混合物は1リットル当たり31.7gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは303であり、蒸解反応のHファクターは367である。
得られる褐色紙料は、9.7のカッパー価、1103ml/gの粘度、4.0%のS10溶解度及び3.0%のS18溶解度を示す。反応は39.9%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.03%の棄却率を有し、39.9%のスクリーニング収率をもたらす。S18溶解度から明らかなように、より低いヘミセルロース含量が同様に観察される。カッパー価(KN)として測定される脱リグニン度は、同じレベルの粘度(約1100ml/g)に対して低く、これは粘度とカッパー価との比率によって反映されるように、より良好なプロセス選択性を示唆する。
実施例2〜実施例9の結果(図13A及び図13Bに示す表にまとめられている)の比較から、ヘミセルロースの再沈殿を中和工程における白液パッドの使用、及び蒸解工程におけるCCE濾液とより高度に濃縮された黒液との組合せの使用によって低下させることができることが示唆される。加えて、より高度に濃縮された熱黒液の使用によって、より高い有効アルカリ添加量がもたらされ、これは多くの場合、より良好な脱リグニン選択性(同じ粘度レベルに対して低いカッパー価)につながることから望ましい。白液パッド及びCCE濾液とより濃縮された熱黒液との組合せの使用はまた、蒸解時間又はパルプ品質に対して悪影響を与えずに蒸解温度の低下をもたらし得る。工業規模についての更なる実験を本発明の利益を確認するために行う。
実施例10
白液パッドを用いた及び用いない工業規模のクラフトプロセス
クラフト蒸解プロセスを、概して図4及び図5に関して記載されるように行う。従来の中和工程を図6A及び図6Bに示すように行い、白液パッドを用いる改善されたプロセスを図7A〜図7Cに示すように行う。改善されたプロセスでは、1リットル当たり110gのNaOHという有効アルカリ(EA)度を有する40立方メートルの白液(「WL110」)を初めに、中和工程の開始時に180m/時間という速度で蒸解釜に圧送し(13分間の充填期間)、続いて、1リットル当たりおよそ60グラムのNaOHという有効アルカリ(EA)度を有する72.9立方メートルのCCE濾液を圧送する。CCE洗浄プロセス(例えば図4のプロセス424)によるCCE濾液の濃度は、この場合、白液による強化と呼ぶことができるプロセスである、濃縮白液の添加によって、1リットル当たり53グラム〜55グラムのNaOHから1リットル当たり60グラムのNaOHに調節した。中和工程の後、図10を参照して説明される工業的な蒸解釜操作順序に従い、最初に1リットル当たりおよそ45グラムのNaOHという有効アルカリ(EA)度を有する或る体積の熱黒液(「HBL45」)、続いて1リットル当たり60グラムのNaOHという有効アルカリ(EA)度を有する或る体積のCCEアルカリ性濾液を添加して、使用済み中和液を置換する。次いで、木材チップをおよそ150℃〜153℃の温度で蒸解し、目標とするHファクターを達成する。蒸解条件の少しの調整を行い、目標とする粘度を達成した。
様々な実験条件及び得られるパルプ品質を下記表1にまとめる。
Figure 2013531139
上記の結果によって示されるように、中和工程におけるCCE濾液の添加前の白液パッドの使用は、得られるパルプにおける、より低いS18溶解度から明らかなように、(表1のエントリー1及びエントリー2とエントリー3〜エントリー10との比較による)繊維へのヘミセルロースの再沈殿の低下をもたらす。白液パッドを用いない場合、S18溶解度は3.6%以上のままである。中和及び蒸解において、任意にCCE濾液及び黒液とともに白液パッドを使用すること、並びに白液強化を用いることは、およそ3.0%以下のS18溶解度と、およそ10〜11のカッパー価とを同時に達成することを可能にし(ただし、より広範囲には、カッパー価の値はプロセスパラメーターに応じて約8〜12の範囲であり得る)、概して従来の技法と比べてより高品質なパルプ製品をもたらす。
図14は、工業的実行に使用される量(図6〜図9と関連して説明される蒸解プロセスに関して記載される量と同様)に基づく、本明細書中に開示される一実施形態によるプロセスについてのカッパー価に対するS18のグラフである。図14に示されるように、従来の蒸解プロセスについてのS18の値(パーセント)及びカッパー価はライン1405によって示され、本明細書中に詳述される白液パッドを用いたプロセスについてのS18及びカッパー価の値はライン1410によって示される。白液パッドを用いた場合の値の方が優れている。特に、本明細書中に開示される実施形態に基づくプロセスは、3.0の範囲のS18の値をもたらすことができ、低い残留ヘミセルロース含量を示す。
上記に示すカッパー価の値及び溶解度の値は、下流の冷苛性ソーダ抽出及び漂白の前、蒸解後の褐色紙料の特性を表す。従来の冷苛性ソーダ抽出が行われた後、カッパー価は概して、およそ7〜9にまで低下し、S18溶解度は1.7%を下回り、1.5%の範囲に達し得る。これらの値は、高品質パルプの加工を行う従来の方法よりも効率的な、より低コストの方法で達成される、有益な粘度特性を有する、漂白前の、アルファセルロース含量がおよそ97.5%である高度に精製されたパルプを表す。
加えて、本明細書中に記載の白液パッドの使用は、ヘミセルロースに富んだCCE濾液液体がチップに接する際に白液によって既に中和されているため、中和段階におけるpHショックを回避又は低減することができる。白液パッドは概して、チップ空隙に吸着される際に、木材チップ又は他の類似の有機材料の−pHを増大させる。白液パッドは、前加水分解段階の後、ヘミセルロースにより強化されたCCE濾液液体が初めにチップに接する前にチップ又は他の類似の材料のpHを上昇させる。この作用によって、pHショックが回避されるか、又は最小限に抑えられ、再循環CCE濾液からのヘミセルロースは、パルプに再吸着又は沈殿せずに溶液中に留まる。これによりパルプ褐色紙料の純度が増大し、最終的により高純度の最終製品が得られることとなる。
本発明の好ましい実施形態を本明細書中に記載したが、依然として本発明の概念及び範囲に含まれる多くの変形形態が可能である。かかる変形形態は、本明細書及び図面を検討した後で当業者に明らかとなろう。したがって、本発明はいずれもの添付の請求項の精神及び範囲を除き、限定されるものではない。

Claims (42)

  1. 反応槽内で前加水分解を受けたパルプ含有有機材料を加工する方法であって、
    第1の量の白液を前記反応槽に中和液として添加する工程と、
    前記第1の量の白液の添加後に、前記中和液を完成させるために異なるアルカリ性溶液を前記反応槽に添加する工程と、
    前記中和液を蒸解液で置換する工程と、
    前記パルプ含有有機材料を前記反応槽内で蒸解する工程と、
    蒸解した前記パルプを前記反応槽から取り出す工程と、
    を含む、反応槽内で前加水分解を受けたパルプ含有有機材料を加工する方法。
  2. 前記白液が、1リットル当たり100グラム〜130グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記異なるアルカリ性溶液が、冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり50グラム〜75グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり60グラム〜68グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を白液により強化して、該冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液の有効アルカリ濃度を増大させる、請求項4に記載の方法。
  7. 前記蒸解液が、白液の代わりに冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり50グラム〜75グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり60グラム〜68グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項7に記載の方法。
  10. 前記冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を白液により強化する、請求項7に記載の方法。
  11. 前記蒸解において、熱黒液を冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液と併用する、請求項1に記載の方法。
  12. 前記熱黒液が、1リットル当たり38グラム〜50グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記熱黒液が、1リットル当たり40グラム〜45グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項11に記載の方法。
  14. 前記熱黒液を白液により強化して、該熱黒液の有効アルカリ濃度を増大させる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記蒸解パルプを冷苛性ソーダ抽出(CCE)段階に供して、98%を超えるアルファ含量を有する精製パルプを得る、請求項1に記載の方法。
  16. 前記精製パルプが7〜9のカッパー価を有する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記第1の量の白液が、中和において適用される全有効アルカリ添加量の少なくとも10%を占める、請求項1に記載の方法。
  18. 前記第1の量の白液が、中和において適用される全有効アルカリ添加量の13%〜25%を占める、請求項1に記載の方法。
  19. パルプを加工する方法であって、
    パルプ含有有機材料を蒸解釜に添加する工程と、
    前加水分解を行う工程と、
    第1の量の白液を前記蒸解釜に中和液として添加する工程と、
    前記第1の量の白液の添加後、第1の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を含む溶液を前記蒸解釜に添加して、前記中和液を完成させる、添加工程と、
    前記中和液を、更なる量の白液により強化された、少なくとも熱黒液を含む蒸解液、続いて第2の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液で置換する工程と、
    前記パルプ含有有機材料を前記蒸解釜内で蒸解する工程と、
    蒸解した前記パルプを前記蒸解釜から取り出す工程と、
    を含む、パルプを加工する方法。
  20. 前記白液が、1リットル当たり100グラム〜130グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項19に記載の方法。
  21. 前記第1の量の白液が、中和において適用される全有効アルカリ添加量の少なくとも10%を占める、請求項20に記載の方法。
  22. 前記第1の量の白液が、前記中和相において適用される前記全有効アルカリ添加量の13%〜25%を占める、請求項21に記載の方法。
  23. 前記第1の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり50グラム〜75グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項20に記載の方法。
  24. 前記第1の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり60グラム〜68グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項20に記載の方法。
  25. 前記第1の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を白液により強化する、請求項24に記載の方法。
  26. 前記第2の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり50グラム〜75グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項19に記載の方法。
  27. 前記第2の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液が、1リットル当たり60グラム〜68グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項26に記載の方法。
  28. 前記第2の量の冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液を白液により強化する、請求項27に記載の方法。
  29. 前記熱黒液が蒸解液の総量の少なくとも半分を含む、請求項19に記載の方法。
  30. 前記熱黒液が、1リットル当たり38グラム〜50グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項19に記載の方法。
  31. 前記熱黒液が、1リットル当たり40グラム〜45グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する、請求項19に記載の方法。
  32. 前記熱黒液を、白液又は冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液により強化する、請求項31に記載の方法。
  33. 前記蒸解パルプを冷苛性ソーダ抽出(CCE)段階に供して、97%を超えるアルファ含量を有する精製パルプを得る、請求項19に記載の方法。
  34. 前記蒸解パルプが8〜12のカッパー価を有する、請求項35に記載の方法。
  35. 植物に由来する半精製パルプであって、蒸解後、冷苛性ソーダ抽出前に、S18溶解度で測定した場合の残留ヘミセルロース含量が3.0パーセント未満であり、カッパー価が8を超える、植物に由来する半精製パルプ。
  36. 前記植物がハードウッドである、請求項35に記載の半精製パルプ。
  37. 冷苛性ソーダ抽出後、漂白前に、S18溶解度で測定した場合の前記残留ヘミセルロース含量が1.7パーセントを超えず、前記カッパー価が9を下回らない、請求項35に記載の半精製パルプ。
  38. パルプを蒸解する方法であって、
    リグノセルロース材料を反応槽に入れるとともに、前加水分解を行う工程と、
    前記反応槽に、1リットル当たり100グラム〜130グラムのNaOHという有効アルカリ度を有するパッドとして、第1の量の白液を含む中和液、続いて1リットル当たり60グラム〜68グラムのNaOHという有効アルカリ度を有するアルカリ性濾液を含む、第1の量の異なる溶液を添加する工程であって、前記第1の量の白液が中和における全有効アルカリ添加量の10%〜30%を構成する、添加工程と、
    前記反応槽内の前記中和液を、1リットル当たり30グラム〜50グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する熱黒液と、1リットル当たり50グラム〜75グラムのNaOHという有効アルカリ度を有する冷苛性ソーダ抽出アルカリ性濾液とを含む蒸解液で置換する工程と、
    前記パルプ含有有機材料を前記反応槽内で蒸解する工程と、
    S18溶解度で測定した場合の残留ヘミセルロース含量が3.1%以下である蒸解パルプを前記反応槽から取り出す工程と、
    を含む、パルプを蒸解する方法。
  39. 前記リグノセルロース材料がハードウッドを含む、請求項38に記載の方法。
  40. 蒸解時の前記反応槽の温度が摂氏150度〜153度である、請求項38に記載の方法。
  41. 前記蒸解パルプが8.0を超えるカッパー価を有する、請求項38に記載の方法。
  42. 前記蒸解液を白液により強化する、請求項38に記載の方法。
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