本明細書で開示されているある実施形態は、対象に対し、新規の界面動電的に生成された流体を含む治療組成物を患部と接触させるかまたは投与することによる炎症性神経変性疾患および/または多発性硬化症の症状の少なくとも1つを治療するための組成物および方法を提供することに関する。ある特定の実施形態では、界面動電的に生成された流体は、酸素富化水を含む界面動電的に生成されたガス富化流体を含む。
神経保護のための組成物および方法
本明細書のある実施形態は、神経毒または神経毒性剤曝露に関連した少なくとも1つの症状を予防または緩和することによる対象に対する治療組成物および治療方法に関する。
パーキンソン病および状態
本明細書のある実施形態は、パーキンソン病および/または関連状態もしくは疾患の症状の少なくとも1つを予防または緩和することによる対象に対する治療組成物ならびに治療方法に関する。
本明細書のさらなる実施形態は、パーキンソン病関連合併症および/または関連状態を予防または緩和することによる対象に対する治療組成物ならびに治療方法に関し、運動症状(例えば振戦、硬直、動作緩慢(運動遅延)および歩行障害)および非運動症状(例えば認知障害、うつ病、および睡眠障害等)の症状を緩和することを含む。
界面動電的に生成された流体:
本明細書で使用される「界面動電的に生成された流体」とは、本明細書の実施例の目的のために本明細書に詳述されている例示的な混合機器によって生成される出願者らの発明の界面動電的に生成された流体を指す(いずれも全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第200802190088号および国際公開特許第2008/052143号も参照されたい)。本明細書で開示され、提示されているデータによって実証される界面動電的流体は、先行技術の含酸素非界面動電的流体(例えば、圧力ポット含酸素流体等)に関するものを含めて、先行技術の非界面動電的流体に関する新規で、かつ根本的に異なる流体を表す。本明細書の様々な態様で開示されているように、界面動電的に生成された流体は、独自および新規の物理的および生物学的特性(以下のものを含むが、これに限定されない)を有する。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、約100ナノメートル未満の平均直径を実質的に有する帯電安定化した酸素含有のナノ構造および流体が生細胞に接触した際に、細胞膜電位と細胞膜伝導性の少なくとも1つの調節を提供するのに十分な量において、イオン水性流体中に安定的に構成された、イオン水溶液を含む。
特定の態様では、界面動電的に生成された流体は、本明細書に記載される機器特徴局所効果等の流体力学的に誘発される、局在(例えば、全流体容積において不均一な)界面動電効果(例えば、電圧/電流パルス)の存在下で生成される流体を指す。特定の態様では、該流体力学的に誘発される、局在界面動電効果は、本明細書で開示され、記載されている表面に関する二重層および/または流動電流効果と組み合わされる。
特定の態様では、投与される本発明の界面動電的に改変された流体は、細胞膜電位と細胞膜伝導性の少なくとも1つの調節を提供するのに十分な量において、帯電安定化した酸素含有のナノ構造を含む。ある実施形態では、界面動電的に改変された流体は、超酸素化されている(例えば、標準的食塩水中でそれぞれ、20ppm、40ppm、および60ppmの溶解酸素を含む、RNS20、RNS40、およびRNS60)。特定の実施形態では、界面動電的に改変された流体は、超酸素化されている(例えば、10ppm(例えば、標準的食塩水中の環境レベルの溶解酸素概算値)を含む、RNS10またはSolas)。ある態様では、本発明の界面動電的に改変された流体の塩分、中性、pH等は、流体の界面動電産生時に確定され、滅菌流体は、適切な経路により投与される。あるいは、流体の塩分、中性、pH等の少なくとも1つは、流体の投与前に、投与経路に生理学的に適合するように、(例えば、滅菌食塩水または適切な希釈剤を使用して)適切に調整される。流体の塩分、中性、pH等の少なくとも1つを調整するために使用される希釈剤および/または食塩溶液および/または緩衝組成物も界面動電流体であるか、そうでなければ相溶性であることが好ましい。
特定の態様では、本発明の界面動電的に改変された流体は、食塩(例えば、任意の適切なアニオン構成成分と共に、1つ以上の溶解塩、例えば、アルカリ金属塩(Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+等)、アルカリ土類塩(例えば、Mg++、Ca++)等、または遷移金属陽イオン(例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等))を、いずれの場合にも、任意の適切なアニオン構成成分(F−、Cl−、Br−、I−、P04 −、S04 −、および窒素ベースのアニオンが挙げられるが、これらに限定されない)と共に含む。特定の態様では、様々な組み合わせおよび濃度での混合塩界面動電流体(例えば、Na+、K+、Ca++、Mg++、遷移金属イオン等)、および任意選択的に対イオンの混合を含む。特定の態様では、本発明の界面動電的に改変された流体は、標準食塩水(例えば、約0.9%NaClまたは約0.15M NaCl)を含む。特定の態様では、本発明の界面動電的に改変された流体は、少なくとも0.0002M、少なくとも0.0003M、少なくとも0.001M、少なくとも0.005M、少なくとも0.01M、少なくとも0.015M、少なくとも0.1M、少なくとも0.15M、または少なくとも0.2Mの濃度で食塩を含む。特定の態様では、本発明の界面動電的に改変された流体の伝導性は、少なくとも10μS/cm、少なくとも40μS/cm、少なくとも80μS/cm、少なくとも100μS/cm、少なくとも150μS/cm、少なくとも200μS/cm、少なくとも300μS/cm、または少なくとも500μS/cm、少なくとも1mS/cm、少なくとも5mS/cm、10mS/cm、少なくとも40mS/cm、少なくとも80mS/cm、少なくとも100mS/cm、少なくとも150mS/cm、少なくとも200mS/cm、少なくとも300mS/cm、または少なくとも500mS/cmである。特定の態様では、本明細書に開示される、生物活性塩安定化ナノ構造(例えば、塩安定化した酸素含有のナノ構造)の形成を可能にするという条件で、本発明の界面動電的に改変された流体を調製するために、任意の塩を使用し得る。
特定の態様によれば、帯電安定化したガス含有ナノ構造を含む本発明の流体組成物の生物学的効果は、流体のイオン構成成分を改変することによって、および/または流体のガス構成成分を改変することによって、調整(例えば、増加、減少、同調等)することができる。
特定の態様によれば、帯電安定化したガス含有ナノ構造を含む本発明の流体組成物の生物学的効果は、流体のガス構成成分を改変することによって、調整(例えば、増加、減少、同調等)することができる。好ましい態様では、本発明の界面動電流体を調製するために、酸素が使用される。追加の態様では、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、ネオン、ヘリウム、クリプトン、水素、およびキセノンから選択される少なくとも1つの他のガスと共に、酸素の混合物が使用される。上記のように、イオンはまた、ガス構成(1つ以上)と共に変化もし得る。
本明細書に開示される教示およびアッセイ系において(例えば、細胞ベースのサイトカインアッセイ、パッチクランプアッセイ等)、当業者は、本明細書に開示される生体活性に達するその適切な塩および濃度を容易に選択することができるであろう。
本開示は、糖尿病または糖尿病関連障害の治療における有用な、ガス富化イオン水溶液、水性食塩溶液(例えば、標準的な水性食塩溶液、および本明細書で論じられかつ当該技術分野において認識される、任意の生理的互換性のある食塩溶液を含むその他の食塩溶液)、細胞培地(例えば、最小限培地、およびその他の培地)が挙げられるが、これらに限定されない新規のガス富化流体を記述する。培地(mediumまたはmedia)は、増殖に必須な栄養成分のみを含む場合、「最小限」と称する。原核生物の宿主細胞において、最小限培地は、一般に、炭素、窒素、リン、マグネシウム供給源、ならびに極微量の鉄およびカルシウムを含む(Gunsalus and Stanter, The Bacteria, V. 1, Ch. 1 Acad. Press Inc., N.Y. (I960))。ほとんどの最小限培地は炭素供給源としてグルコース、窒素供給源としてアンモニア、およびリン供給源として正リン酸塩(例えば、P04)を用いる。特定の原核生物または真核生物(1つ以上)増殖により、標的タンパク質産生を阻害せずに最適な増殖を促進するために培地成分を変更または補充できる(Thompson et al., Biotech, and Bioeng. 27: 818− 824 (1985))。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、その中に溶解されるレポーター溶質(例えば、トレハロース)の13C−NMR線幅を調節するのに適している。NMR線幅効果は、特定の実施例において、例えば、本明細書に記載される試験流体において溶質の「回転」を測定するための間接法である。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、−0.14V、−0.47V、−1.02V、および−1.36Vのうちのいずれか1つで矩形波ボルタンメトリーのピーク差;−0.9ボルトでポーラログラフピーク;ならびに−0.19および−0.3ボルトで、ポーラログラフピークの不在の少なくとも1つを特徴とし、これらは、特定の実施例において、本明細書に開示される界面動電的に生成された流体に特有である。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、細胞膜伝導性(例えば、本明細書に開示されるパッチクランプ試験において測定されるように、全細胞伝導性の電位依存性寄与)を改変するのに適している。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、酸素化され、ここにおいて流体中の酸素は、大気圧で、少なくとも15ppm、少なくとも25ppm、少なくとも30ppm、少なくとも40ppm、少なくとも50ppm、または少なくとも60ppmの溶解酸素の量で存在する。特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、大気圧で、またはほぼ環境レベルの酸素で、溶解酸素の15ppm未満、10ppm未満を有する。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、酸素化され、ここにおいて流体中の酸素は、約8ppm〜約15ppmの量存在し、この場合、時折、本明細書で「Solas」と称される。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、溶媒和電子(例えば、分子酸素により安定化した)、ならびに界面動電的に修飾された、および/または荷電された酸素種の少なくとも1つを含み、ある実施形態では、溶媒和電子、および/または界面動電的に修飾された、もしくは荷電された酸素種は、少なくとも0.01ppm、少なくとも0.1ppm、少なくとも0.5ppm、少なくとも1ppm、少なくとも3ppm、少なくとも5ppm、少なくとも7ppm、少なくとも10ppm、少なくとも15ppm、または少なくとも20ppmの量で存在する。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、細胞内シグナル変換の調節を提供するのに十分な細胞膜構造または機能を改変する(例えば、膜結合タンパク質の立体配座、リガンド結合活性、または触媒活性を改変する)のに適しており、特定の態様では、膜結合タンパク質は、受容体、膜貫通受容体(例えば、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、TSLP受容体、β2アドレナリン受容体、ブラジキニン受容体等)、イオンチャネルタンパク質、細胞内付着タンパク質、細胞接着タンパク質、およびインテグリンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。ある態様では、影響を受けたGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、Gタンパク質αサブユニット(例えば、Gαs、Gαi、Gαq、およびGα12)と相互作用する。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、カルシウム依存性の細胞伝達経路またはシステムの調節(例えば、ホスホリパーゼC活性の調節、またはアデニル酸シクラーゼ(AC)活性の調節)を含む、細胞内シグナル変換を調節するのに適している。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、実施例および本明細書の他の箇所で記載される、様々な生物学的活性(例えば、サイトカイン、受容体、酵素および他のタンパク質、ならびに細胞内シグナル経路の調節)を特徴とする。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、エリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および増殖因子(GDNF)の任意の1つとの相乗効果を示す。特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、本明細書の実施例に示されるように、気管支上皮細胞(BEC)におけるDEP誘発性TSLP受容体の発現を低下させる。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体は、本明細書の実施例に示されるように、気管支上皮細胞(BEC)のDEP誘発性細胞表面結合MMP9値を阻害する。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体の生物学的効果は、本明細書の実施例に示されるように、β遮断薬、GPCR遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬は、(例えば、制御性T細胞機能における)界面動電的に改変された水性流体の活性に影響を及ぼすことを示す、ジフテリア毒素により阻害される。
特定の態様では、界面動電的に改変された水性流体の物理的および生物学的効果(例えば、細胞内シグナル変換の調整を提供するのに十分な細胞膜構造または機能を改変する能力)は、密閉容器内(例えば、密閉された気密性容器内)において、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、またはそれより長い期間持続する。
したがって、更なる態様では、前記界面動電的に生成された溶液および界面動電的に改変された含酸素水性流体または溶液を生産する方法を提供し、本方法は、相対運動において、2つの離れた表面間で流体物質の流れを提供し、それらの間に混合容量を画定すること(混合容量内およびそれを通して流動する流体物質の単一パスの滞留時間は、0.06秒超、または0.1秒超である)と、少なくとも20ppm、少なくとも25ppm、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、もしくは少なくとも60ppmの酸素を該物質に溶解し、流体もしくは溶液を界面動電的に改変するのに適する条件下で、混合容量内で流動する流体物質に酸素(O2)を導入することとを含む。ある態様では、酸素は、100ミリ秒未満、200ミリ秒未満、300ミリ秒未満、または400ミリ秒未満において、該物質に注入される。特定の実施形態では、表面積の容量に対する比は、少なくとも12、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50である。
なお更なる態様では、界面動電的に改変された含酸素水性流体または溶液を生産する方法を提供し、本方法は、2つの離れた表面間で流体物質の流れを提供し、それらの間に混合容量を画定することと、100ミリ秒未満、200ミリ秒未満、300ミリ秒未満、または400ミリ秒未満において、該物質に、少なくとも20ppm、少なくとも25ppm、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、もしくは少なくとも60ppmの酸素を注入するのに適する条件下で、混合容量内で流動する流体に酸素を導入することとを含む。ある態様では、流動物質の混合容量内滞留時間は、0.06秒超、または0.1秒超である。特定の実施形態では、表面積の容量に対する比は、少なくとも12、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50である。
追加の実施形態は、界面動電的に改変された含酸素水性流体または溶液を生産する方法を提供し、本方法は、第1の物質と第2の物質を混合することにより産出混合物を作製するための混合機器の使用を含み、該機器は、第1の物質源から第1の物質を受容するように構成された第1のチャンバ;固定子;回転軸を有する回転子(該固定子内部に配設され、その中の回転軸の周囲を回転するように構成され、回転子と固定子の少なくとも1つは複数の貫通孔を有する);回転子と固定子の間に画定される混合チャンバ(第1のチャンバと連通する流体中にあり、そこから第1の物質を受容するように構成され、第2の物質は回転子と固定子のうちの1つに形成された複数の貫通孔から混合チャンバ内に提供される);混合チャンバと連通する流体中にあり、そこから産出物質を受容するように構成された第2のチャンバ;第1のチャンバ内部に格納された第1の内部ポンプ(第1のチャンバから混合チャンバに第1の物質を送出するように構成される)、を含む。ある態様では、第1の内部ポンプは、第1の物質が混合チャンバ内に流入する前に、第1の物質に周速度を与えるように構成される。
更なる実施形態は、界面動電的に改変された含酸素水性流体または溶液を生産する方法を提供し、本方法は、第1の物質と第2の物質を混合することにより産出混合物を作製するための混合機器の使用を含み、該機器は、固定子;回転軸を有する回転子(該固定子内部に配設され、その中の回転軸の周囲を回転するように構成される);回転子と固定子の間に画定される混合チャンバ(第1の物質を混合チャンバ内に通過させる第1の開口端と、産出物質を混合チャンバ外に通過させる第2の開口端を有し、第2の物質が回転子と固定子の少なくとも1つを通って混合チャンバ内に流入する);混合チャンバの第1の開口端の少なくとも大部分と連通する第1のチャンバ;混合チャンバの第2の開口端と連通する第2のチャンバ、を含む。
追加の態様では、上記の方法のいずれかに従って作製された、界面動電的に改変された含酸素水性流体または溶液を提供する。特定の態様では、投与される本発明の界面動電的に改変された流体は、細胞膜電位と細胞膜伝導性の少なくとも1つの調節を提供するのに十分な量において、帯電安定化した酸素含有のナノ構造を含む。ある実施形態では、界面動電的に改変された流体は、スーパーオキシド含有(例えば、標準的食塩水中でそれぞれ、20ppm、40ppm、および60ppmの溶解酸素を含む、RNS20、RNS40、およびRNS60)である。特定の実施形態では、界面動電的に改変された流体は、スーパーオキシド非含有(例えば、10ppm(例えば、標準的食塩水中の環境レベルの溶解酸素概算値)を含む、RNS10またはSolas)である。ある態様では、本発明の界面動電的に改変された流体の塩分、中性、pH等は、流体の界面動電産生時に確定され、滅菌流体は、適切な経路により投与される。あるいは、流体の塩分、中性、pH等の少なくとも1つは、流体の投与前に、投与経路に生理学的に適合するように、(例えば、滅菌食塩水または適切な希釈剤を使用して)適切に調整される。流体の塩分、中性、pH等の少なくとも1つを調整するために使用される希釈剤および/または食塩溶液および/または緩衝組成物も界面動電流体であるか、そうでなければ相溶性であることが好ましい。
本開示は、ガス富化イオン水溶液、水性食塩溶液(例えば、標準的な水性食塩溶液、および本明細書で論じられかつ当該技術分野において認識される、任意の生理的互換性のある食塩溶液を含むその他の食塩溶液)、細胞培地(例えば、最小限培地、およびその他の培地)が挙げられるが、これらに限定されない新規のガス富化流体を記述する。
神経毒:
「毒性薬剤」または「神経毒性剤」(神経毒)とは、神経系成分の活性を、化学作用損傷、障害、または阻害する物質を意味する。ニューロパシーを引き起こす神経毒性剤リストは非常に長い(下の表3に提示する神経毒性剤リストの例を参照されたい)。かかる神経毒性剤としては、腫瘍剤(ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチン、タキソール、またはジデオキシ化合物、例えば、ジデオキシイノシン);アルコール;金属;職業もしくは環境曝露に関与する産業的毒素;食物もしくは薬物中の汚染物質;または過剰量のビタミンもしくは治療薬、例えば、抗生剤(ペニシリンもしくはクロラムフェニコール等)、または大量ビタミンA、D、もしくはB6が挙げられるが、これらに限定されない。
神経毒性は、神経組織に損傷を引き起こす形で神経系の正常活性を改変し、ニューロンの中断または殺傷に至る可能性がある天然または人工毒性物質(神経毒)への曝露時に起こり得る。神経毒性は、化学療法、放射線治療、薬物療法、ある薬物乱用、および臓器移植に使用される物質の曝露、ならびに重金属、ある食物および食品添加物、殺虫剤、産業的および/もしくは洗浄溶媒、化粧品、および一部の天然物質への曝露によって引き起こされる可能性がある。症状は曝露の直後または遅れて発現し得る。症状としては、肢衰弱または無感覚、記憶喪失、視覚、および/もしくは知性制御不能強迫(obsessive)および/または強迫(compulsive)行動、妄想、頭痛、認知および行動障害ならびに性機能障害を挙げ得る。一部の障害者は、神経毒の影響を特に受けやすい場合がある。
特定の実施形態によれば、本明細書で開示する組成物は、本明細書で論じられる様々な薬剤への曝露に起因する神経毒性を予防または緩和するために使用される。
ある毒素は、末梢ニューロパシーを引き起こす可能性がある。鉛毒性は、運動性ニューロパシーに関連する。ヒ素および水銀は、感覚ニューロパシーを引き起こす。タリウムは、感覚ニューロパシーと自律性ニューロパシーを引き起こす可能性がある。いくつかの有機溶媒および殺虫剤は、ポリニューロパシーも引き起こす可能性がある。アルコールは神経に直接毒性を及ぼし、アルコール乱用はニューロパシーの主な原因である。ある実施形態では、対象の方法(subject method)は、広範囲な解毒プログラムの一部として使用できる。
更なる別の実施形態では、本発明の方法および組成物は、薬剤性ニューロパシーの治療のために使用できる。いくつかの薬剤はニューロパシーの原因として知られている。それら薬剤としては、特に、癌におけるビンクリスチンおよびシスプラチン、腎盂腎炎に使用されるニトロフラントイン、心不整脈におけるアミオダロン、アルコール依存症におけるジスルフィラム、AIDSにおけるddCおよびddI、ならびにハンセン病治療に使用されるダプソンが挙げられる。上記のように、ある実施形態では、広範囲な解毒プログラムの一部として、対象の方法を使用できる。
本発明の別の態様では、1つ以上の他の治療薬を対象の化合物と共に投与する併用療法を提供する。かかる併用治療は、各治療成分の同時、順次または分離投与によって行い得る。即ち、併用投与は、同一医薬調製剤の一部としての投与、別々の医薬調製剤の同時投与、ならびに別々の医薬調製剤の同日、近日の異なる時点での投与、もしくは単一治療レジメンの一部としての投与を含む。例えば、対象の方法は、他の神経保護薬と併用して行うことができる。本明細書に列挙した投与量は、治療組成物中のかかる追加成分を補正して調整する。患者の治療進行度は、従来の方法によりモニタリングできる。
更なる他の実施形態では、対象の方法は、増殖および/または栄養因子投与と併用して行うことができる。例えば、組み合わせ療法は、栄養因子(グリア細胞由来神経栄養因子等)、神経増殖因子、毛様体神経栄養因子、神経鞘腫由来増殖因子、グリア増殖因子、線条体由来ニューロン栄養因子、血小板由来増殖因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および散布因子(HGF−SF)を含むことができる。抗マイトジェン薬剤(例えば、シトシン、アラビノシド、5−フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、およびメトトレキサート)も使用できる。
投与される本発明の組成物の(例えば、適切に神経保護するための)治療有効量および/または予防的有効量は、当業者が既知の技術を使用して容易に決定することができる。投与量は、担当臨床医の判断する患者の必要性、治療する状態の重症度、更なるCNS変性リスク、および特定の神経毒によって変わり得る。治療的に有効な栄養量もしくは用量、ならびに/または予防的有効量もしくは用量の決定時、いくつかの要因(変性状態の具体的な原因ならびにその再発もしくは悪化の可能性;特定の神経毒性剤の薬力学特性;所望の治療時間経過;哺乳類の種;哺乳類のサイズ、年齢、および健康状態;各患者の反応;投与する特定の化合物;投与する調製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択されたレジメン用量;併用療法の種類;その他の関連状況が挙げられるが、これらに限定されない)が担当臨床医により考慮される。
治療は、最適用量より少ない低投与量で開始し得る。その後、この条件下で投与量を最適効果に達するまで漸増し得る。便宜上、総1日投与量は所望の場合、1日に分割投与し得る。治療的に有効な栄養量および神経保護予防的有効量の治療組成物は、上に論じられるように、例えば、投与経路およびその他の要因によって異なることが予想される。
動物(例えば、イヌ、齧歯類)におけるニューロン(例えば、ドーパミン作動系ニューロンおよび運動ニューロン等)の変性の予防または治療に有効な組成物は、ヒトの障害治療にも有用であり得る。ヒトにおけるかかる障害の治療専門家にとって、ヒトに対する化合物の投与量および投与経路を補正するために動物試験から得られるデータが指針となるであろう。概して、ヒトにおける投与量および投与経路の決定は、動物に対する投与決定に用いられるものに類似していることが予想される。
ニューロン(例えばドーパミン作動系ニューロンおよび/または運動ニューロン等)の変性によって特徴づけられる障害の予防処置を必要としている患者の同定は、十分に当業者の能力および知識範囲内である。リスク保因者であり、対象の方法により治療できる患者を同定する一部の方法は、医学分野の者によって理解される(具体的な疾患状態発現の家族歴および対象の患者における疾患状態発現関連リスク因子の存在等)。環境(例えば、化学的)曝露リスク。臨床医はかかる候補患者を、(例えば、臨床検査、身体的検査、病歴/家族歴、職業/業務等)を用いて容易に同定できる。
軍人をあらゆる種類の脅威から保護して軍人の戦闘能を保持することが軍隊の主な懸念事項となっている。神経ガス(例えば、サリン、ソマンまたはVX)は、かかる脅威の1つである。神経剤(神経ガスとしても知られている)の1クラスは、通常アセチルコリン(神経伝達物質)活性を弛緩させる酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害するリン含有有機化学物質(有機リン系)である。神経剤には、G剤(例えば、GA、タブンまたはN,N−ジメチルホスホルアミドシアニド酸エチル;GB、サリンまたはO−イソプロピルメチルホスホノフルオリダート;GD、ソマンまたはO−メチルホスホノフルオリダートピナコリル;GF、シクロサリンまたはシクロヘキシルメチルホスホノフルオリダート;GV、P−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチルホスホンアミド酸フルオリド))とV剤(VE、S−(ジエチルアミノ)エチルO−エチルエチルホスホノチオアート;VG、アミトンもしくはテトラムもしくは0,0−ジエチル−S−[2−(ジエチルアミノ)エチル]ホスホロチオアート;VM、メチルホスホノチオ酸、S−(2−(ジエチルアミノ)エチル)O−エチルエステル);VX、O−エチル−S−[2(ジイソプロピルアミノ)エチル]メチルホスホノチオラート)の2つの主要クラスがある。第三群の薬剤ノビコック剤は、酵素コリンエステラーゼを阻害する有機リン化合物であり、アセチルコリンの正常分解を妨げる。
有機リン系殺虫剤(ジクロルボス、マラチオンおよびパラチオン等)は、神経剤である。
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、化学療法誘発性神経毒性の予防または改良のために使用できる(例えば、米国特許出願第7,129,250号(第2004/0220202号として公開)を参照されたく、これらは、その全体、特に例示的な神経毒の教示が参照することにより本明細書に組み込まれる)。
例えば、特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、抗癌剤(抗癌剤、サイトカイン、および/または補助的増強剤(1つ以上)等)と使用できる。癌治療における混合物の使用は日常的である。この実施形態では、一般的なビヒクル投与(例えば、経口剤または注射液等)において本発明の組成物と抗癌剤の併用および/または補助的増強剤を含むことができる。したがって、本発明の組成物と他の化合物を含む混合物は、本発明の範囲内である。
抗腫瘍性化合物としては、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エチオダイズド油I131;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロキシウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホスホトリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金Au198;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−nl;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロイド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;塩酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;マイトジリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスパー;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウムSr89;スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシル・マスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネジピン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。
他の抗腫瘍化合物としては、20−pi−1,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管形成阻害薬;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背方化形態形成タンパク質−1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィディコリン;アポトーシス遺伝子調節因子;アポトーシス調節因子;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリンス;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ−アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害薬;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルフォキシミン;カルシポトリオール;カルフォスチンC;カンプトセシン誘導体;カナリア痘IL−2;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害薬;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害薬(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリンス;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクフォスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロダイデムニンB;デスロレリン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクォン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール、9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルビシン;ホルフェニメクス;ホルメスタン;ホストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害薬;ゲムシタビン;グルタチオン阻害薬;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビサセタミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活性ペプチド;インスリン様成長因子−1受容体阻害薬;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4−;イリノテカン;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトールスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球インターフェロンα;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;脂溶性二糖ペプチド;脂溶性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルロトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害薬;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害薬;イフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチを含む2本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞成長因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害薬;多発性腫瘍抑制因子1ベースの治療薬;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシドB;マイコバクテリウム細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;06−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導物質;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキザウノマイシン;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸;ホスファターゼ阻害薬;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーター阻害薬;白金錯体;白金化合物;白金−トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害薬;タンパク質Aベースの免疫調節因子;タンパク質キナーゼC阻害薬;タンパク質キナーゼC阻害薬(微細藻類);タンパク質チロシンホスファターゼ阻害薬;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害薬;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害薬;ras阻害薬;ras−GAP阻害薬;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣物;セムスチン;老化由来阻害薬1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害薬;シグナル伝達調節因子;1本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプタートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害薬;幹細胞分裂阻害薬;スチピアミド;ストロメライシン阻害薬;スルフィノシン;超活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラディスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオダイド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害薬;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;サリドマイド;チモトリナン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣物;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トポテカン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害薬;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害薬;チルホスチン;UBC阻害薬;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療薬;ベラレソール;ベラミン;ベルディンス;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;バイタクシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
抗癌補充性強化剤としては、三環系抗うつ薬(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、トリミプラミン、ドキセピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモキサピンおよびマプロチリン);非三環系抗うつ薬(例えば、サートラリン、トラゾドンおよびシタロプラム);Ca++アンタゴニスト(例えば、ベラパミル、ニフェジピン、ニトレンジピンおよびカロベリン);カルモジュリン阻害薬(例えば、プレニルアミン、トリフルオロペラジンおよびクロミプラミン);アンホテリシンB;トリパラノール類似体(例えば、タモキシフェン);抗不整脈薬(例えば、キニジン);抗高血圧薬(例えば、レセルピン);チオールデプレーター(例えば、ブチオニンおよびスルホキシミン)ならびに多剤耐性低下薬(クレマフォールEI等)が挙げられるが、これらに限定されない。
炎症
炎症は、(特に微生物起源からの)異物の対象への侵入に対する防衛反応として生じ得る。更に、物理的損傷、毒素、および新生組織形成は、炎症反応を誘発し得る。白血球の蓄積およびその後の活性化は、炎症のほとんどの形態の発症原因において中核的な事象である。炎症障害は、宿主を弱化させ、感染症または創傷を悪化させやすい状態にさせる可能性がある。過剰な炎症(長期的炎症反応等)は、炎症性疾患(糖尿病、動脈硬化症、白内障、慢性皮膚疾患、再灌流障害、および癌が挙げられるが、これらに限定されない)、感染後症候群(感染性髄膜炎、リウマチ熱等)、リウマチ性疾患(全身性エリテマトーデスおよび関節リウマチ等)を引き起こし得る。これらの疾患は、毎年世界数百万人に影響を及ぼし、死亡率および罹患率を上昇させる。これらの各種疾患過程における炎症反応の共通性のため、炎症反応の制御はヒト疾患の予防または治療における主要な要素である。
炎症性サイトカインの産生増加は、多くの炎症性および自己免疫疾患の発症原因に関与している。TNFαの分泌は、炎症カスケード開始の初期事象であり(Brennan F.M.,et.al.Lancet,1989,2:244−7、Haworth C,et.al.Eur.J.Immunol.1991,21:2575−2579)、これらの疾患の開始および持続の直接的な一因である。インターロイキン1β(IL−1β)、IL−6、IL−8、IL−12、一酸化窒素(NO)、IFN−γ、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、およびIL−10を含む他のサイトカインもまた役割を果たす。これらのサイトカインのうちの一部(例えば、IL−8)は、炎症反応を増加または悪化させ得るが、その他(例えば、IL−10)は、炎症反応を軽減または緩和させ得る。
免疫系細胞(具体的にはマクロファージ)は、活性化する刺激に反応してこれらのサイトカインの多くを分泌する。サイトカインの標的細胞は、いずれかの身体部分に局在する場合もあり、長距離機序を介して作用する場合もあり、隣接細胞において作用する場合もある。したがって、サイトカインは、炎症を局所的に制御する場合もあり、組織中でする場合もある。
メタロプロテイナーゼ
メタロプロテイナーゼは、例えば、N.M.Hooper FEBS Letters 354:1−6,1994に記載されるファミリーおよびサブファミリーに分類されるプロテイナーゼ(酵素)のスーパーファミリーである。メタロプロテイナーゼの例としては、コロゲナーゼ(MMP1、MMP8、MMP13)、ゼラチナーゼ(MMP2、MMP9)、ストロメライシン(MMP3、MMP10、MMPII)、マトリリシン(MMP7)、メタロエラスターゼ(MMP12)、エナメリシン(MMP19)、MT−MMP(MMP14、MMP15、MMP16、MMP17)等のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP);TNF変換酵素(ADAM10およびTACE)等のセクレターゼおよびシェダーゼを含むレプロリシンもしくはアダマライシンもしくはMDCファミリー;コラーゲン前駆体加工プロテイナーゼ(PCP)等の酵素を含むアスタシンファミリー;ならびにアグリカナーゼ等の他のメタロプロテイナーゼ、エンドセリン変換酵素ファミリー、およびアンジオテンシン変換酵素ファミリーが挙げられる。まとめると、メタロプロテイナーゼは広範囲のマトリックス基質(コラーゲン、プロテオグリカン、およびフィブロネクチン等)を開裂することが知られている。メタロプロテイナーゼは、腫瘍壊死因子(TNF)等の生物学的に重要な細胞メディエイターの処理もしくは分泌、ならびに親和性の低いIgE受容体CD23等の生物学的に重要な膜タンパク質の翻訳後タンパク質分解過程もしくは切断に関与している(例えば、N.M.Hooper et al.,Biochem.J.321:265−279,1997を参照されたい)。
したがって、当然のことながら、メタロプロテイナーゼは、組織の再構成(例えば、胎児の発育、骨形成、月経中の子宮の再構成等)に関与する多くの生理的疾患過程において重要であると考えられる。更に、1つ以上のメタロプロテイナーゼの活性の阻害は、これらの疾患もしくは状態、例えば:関節の炎症(特に関節リウマチ、骨関節炎、および痛風)、胃腸管の炎症(特に炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、および胃炎)、皮膚炎症(特に乾癬、湿疹、皮膚炎)のような様々な炎症性およびアレルギー性疾患;腫瘍の転移もしくは浸潤;骨関節炎のような細胞外マトリックスの無制御の分解と関連した疾患;骨の再吸収性疾患(骨粗鬆症、ページェット病);浸出性血管新生と関連した疾患;糖尿病、歯周病(歯肉炎等)と関連した、コラーゲンの再構成の亢進;角膜の潰瘍、皮膚の潰瘍、手術後の状態(結腸吻口等)、皮膚の創傷治癒;中枢および末梢神経系の脱髄疾患(多発性硬化症等);アルツハイマー病;再狭窄、アテローム性動脈硬化症等の心血管疾患において観察される、細胞外マトリックスの再構成;喘息;鼻炎;ならびに慢性閉塞性肺疾患(COPED)において、十分有益であり得る。
MMP12(マクロファージエラスターゼまたはメタロエラスターゼとしても知られている)は初めに、マウスにおいて、クローン化され(Shapiro et al.,Journal of Biological Chemistry 267: 4664,1992)、同グループにより1995年にヒトにおいてもクローン化されている。MMP12は、活性化されたマクロファージに優先的に発現し、喫煙者由来の肺胞マクロファージから(Shapiro et al,1993,Journal of Biological Chemistry,268: 23824)、ならびにアテローム性硬化症の病変部における泡沫細胞中で(Matsumoto et al,Am.J.Pathol.153:109,1998)、分泌されることが示されている。COPDマウスモデルは、マウスをタバコの煙で1日2本週6日6ヶ月間刺激することに基づいている。野生型マウスは、この処置後、肺気腫を発現した。MMP12ノックアウトマウスはこのモデルで試験した場合、肺気腫の有意な発現はなく、MMP12がCOPDの発症原因における鍵酵素であることが強く示される。COPD(肺気腫および気管支炎)におけるMMP(MMP12等)の役割は、Anderson and Shinagawa,1999,Current Opinion in Anti−inflammatory and Immunomodulatory Investigational Drugs 1(1):29−38において論じられている。近年では、ヒトの頚動脈プラークにおいて、喫煙がマクロファージの浸潤およびマクロファージに誘発されるMMP12発現を増大させることが見出された(Matetzky S,Fishbein M C et al.,Circulation 102:(18),36−39 Suppl.S,Oct.31,2000)。
MMP9(ゼラチナーゼB;92kDaタイプIVコラゲナーゼ;92kDaゼラチナーゼ)は、1989年、初めに単離され、次にクローン化されて配列決定された、分泌性タンパク質である(S.M.Wilhelm et al.,J.Biol.Chem.264(29):17213−17221,1989、J. Biol.Chem.265(36):22570,1990に訂正公開)(このプロテアーゼについての詳細な情報と参考文献の概説に関しては、T.H.Vu & Z.Werb(1998)(Matrix Metalloproteinases,1998,W.C.Parks & R.P.Mecham,pp.115−148,Academic Press.ISBN 0−12−545090−7)を参照されたい)。MMP9の発現は、一般的に、数少ない細胞タイプ(トロホブラスト、破骨細胞、好中球、およびマクロファージ等)に限定される(上記Vu & Werbを参照)。しかしながら、発現は、これらの同一細胞および他の細胞タイプにおいて、増殖因子またはサイトカイニンへの細胞曝露を含む、いくつかのメディエイターにより誘発される可能性がある。これらは、しばしば、炎症反応発現に関与するメディエイターと同じである。他の分泌されたMMPと同様に、MMP9は不活性酵素前駆体として放出され、その後、切断され、酵素的に活性な酵素を形成する。このインビボ活性化に必要とされるプロテアーゼは知られていない。活性化MMP9対不活性酵素のバランスは、天然タンパク質であるTIMP−1(メタロプロテイナーゼ−1の組織阻害薬)との相互作用により更にインビボで調節される。TIMP−1は、MMP9のC末端領域に結合し、MMP9の触媒ドメインの阻害を引き起こす。誘発されたMMP9前駆体発現のバランス、前駆体の活性化MMP9への切断、およびTIMP−1存在の組み合わせにより、局所部位に存在する触媒的に活性なMMP9量を決定する。タンパク質分解的に活性なMMP9は、ゼラチン、エラスチン、ならびに野生型IV型コラーゲンおよびV型コラーゲンを含む基質を攻撃し、野生型I型コラーゲン、プロテオグリカン、もしくはラミニンに対して活性を有さない。様々な生理学的および病理学的な過程において、MMP9の役割に関わるデータ本体は増大している。生理学的な役割としては、胚着床の初期段階における、子宮上皮を通じての胚のトロホブラストの浸潤;骨の成長と発達におけるいくつかの役割;および血管系から組織への炎症性細胞の移動が挙げられる。
酵素免疫アッセイを使用して測定されたMMP9放出は、未治療の喘息由来の流体およびAM上清において、別の集団由来のものと比べて有意に増大した(Am.J.Resp.Cell & Mol.Biol.,5:583−591,1997)。また、増大したMMP9発現は、特定の他の病的状態においても観察されており、したがって、MMP9は、急性の環状動脈状態(心筋梗塞等)を引き起こすアテローム性硬化症における疾患過程(COPD、関節炎、腫瘍の転移、アルツハイマー病、多発性硬化症、プラーク破裂等)にMMP9が関与していることが示唆される(また、参照することにより本明細書に組み込まれる国際公開特許第07087637A3号も参照されたい)。
近年では、MMP9値は、健常な対照対象と比較して、安定した喘息患者において有意に増大し、急性喘息患者においては更に高いことが示されている。MMP9は、気道炎症細胞の浸出および気道過敏性の誘発に重要な役割を果たし、MMP9が、喘息を誘発して持続させるのに重要な役割を果たし得ることが示されている(Vignola et al.,Sputum metalloproteinase−9/tissue inhibitor of metalloproteinase−1 ratio correlates with airflow obstruction in asthma and chronic bronchitis,Am J Respir Crit Care Med 158:1945−1950,1998、Hoshino et al.,Inhaled corticosteroids decrease subepithelial collagen deposition by modulation of the balance between matrix metalloproteinase−9 and tissue inhibitor of metalloproteinase−1 expression in asthma,J Allergy Clin Immunol 104:356−363,1999、Simpson et al.,Differential proteolytic enzyme activity in eosinophilic and neutrophilic asthma,Am J Respir Crit Care Med 172:559−565,2005、Lee et al.,A murine model of toluene diisocyanate−induced asthma can be treated with matrix metalloproteinase inhibitor,J Allergy Clin Immunol 108:1021−1026,2001、およびLee et al.,Matrix metalloproteinase inhibitor regulates inflammatory cell migration by reducing ICAM−1 and VCAM−1 expression in a murine model of toluene diisocyanate−induced asthma,J Allergy Clin Immunol 2003;111:1278−1284)。
MMP阻害薬:
いくつかのメタロプロテイナーゼ阻害薬が知られている(例えば、Beckett R.P.and Whittaker M.,1998,Exp.Opin.Ther.Patents,8(3):259−282、およびWhittaker M.et al,1999,Chemical Reviews 99(9):2735−2776によるMMP阻害薬の概説を参照されたい)。国際公開特許第02/074767号は、MMP阻害薬として、特に、強力なMMP12阻害薬として有用である製剤のヒダントイン誘導体を開示する。米国特許出願第11/721,590号(第20080032997号として公開)は、メタロプロテイナーゼ阻害薬であって、MMP(MMP12およびMMP9等)を阻害することが特に着目される、ヒダントイン誘導体の更なる群を開示する。MMP(MMP12およびMMP9等)を阻害するための新規のトリアゾロン誘導体は、米国特許出願第10/593543号(第20070219217号として公開)に開示されている。更なるMMP12およびMMP9阻害薬については、第11/509,490号(第20060287338号として公開)に開示されている(また、第10/831265号(第20040259896号として公開)も参照のこと)。
更に、4−(4−フェノキシフェニルスルホニル)ブタン−1,2−ジチオール(1)と5−(4−フェノキシフェニルスルホニル)ペンタン−1,2−ジチオール(2)の2つの化合物は、選択的に結合し、MMP2およびMMP9を強力に阻害することが示されている(Bernardo,et.al(2002)J.Biol.Chem.277:11201−11207)。これらの2つの化合物は、MMP2およびMMP9を阻害するために医院で効果的に使用されて炎症を軽減し得る。加えて、あるテトラサイクリン抗生物質(例えば、ミノサイクリンおよびドキシサイクリン)の使用は、塩基性抗生物質値でMMP活性を効果的に阻害することが示されている。本発明のある態様では、MMPを阻害するのに有用な塩基性抗生物質値と組み合わせた本発明の流体を用いることが含まれる。
治療方法
「治療(treating)」という用語は、疾患、障害、もしくは状態、またはそれらの1つ以上の症状を正常化、緩和、進行阻害、もしくは予防することを指し、かつこれらの意味を含意し、「治療(treatment)」および「治療的に(therapeutically)」とは、本明細書に定義される治療行為を指す。
「治療有効量」とは、疾患、障害、もしくは状態、またはそれらの1つ以上の症状を正常化、緩和、進行阻害、もしくは予防するために十分である、本明細書に提供される本発明を実践する経過に使用される任意の化合物の任意の量である。
本明細書のある実施形態は、神経毒曝露に関連した症状の少なくとも1つを予防または緩和することによる対象に対する治療組成物および治療方法に関する。例えば、本明細書に開示される治療組成物および/または方法は、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、アミロイドーシス(例えば、アルツハイマー病)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、プリオン病、およびHIV関連認知症からなる群から選択される1つ以上の状態または疾患を治療または予防するために有用であり得る。
炎症に関連した多くの状態または疾患は、ステロイド、メトトレキサート、免疫抑制剤(シクロホスファミド、シクロスポリン、アザチオプリン、およびレフルノミド等)、非ステロイド系抗炎症薬(アスピリン、アセトアミノフェンおよびCOX−2阻害薬等)、金剤、および抗マラリア治療薬を用いて治療されている。これらの薬剤は、様々な欠点を有し、副作用としては、注射部位反応、発疹、上気道感染、自己免疫疾患および感染症に対する感受性増加等が挙げられる。加えて、多くの抗炎症性調合薬は、便利で適合した経口経路または局所皮膚経路とは対照的な静注(IV)または皮下(SC)投与を必要とする。したがって、炎症に関連する状態および疾患に対する新規の薬剤および治療方法を開発する必要が依然としてある。
併用療法:
追加の態様は、本明細書に開示される本発明の方法を提供し、これは、追加治療薬の少なくとも1つを患者に投与する併用療法を更に含む。ある態様では、追加治療薬の少なくとも1つは、エリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/または増殖因子(GDNF)の任意の1つからなる群から選択される。
界面動電的に生成されたガス富化流体および溶液の抗炎症活性:
本発明のある態様によれば、本明細書に開示されるガス富化流体および/または溶液は、抗炎症特性および効果を有し、炎症性神経変性に関する疾患または障害に罹患した対象の治療のための抗炎症薬として使用できる。先行結果に示されるように、本発明の酸素富化流体(水)は、健常な献血者由来の刺激されたリンパ球のサイトカインプロファイルの特定のサイトカイン、特に、IL−6、IL−8、およびIL−1βの下方制御に影響を及ぼした。
炎症性サイトカインの産生増加は、多くの炎症性および自己免疫疾患の発症原因に関与している。TNFαの分泌は、炎症カスケード開始の初期事象であり(Brennan F.M.,et.al.Lancet,1989,2:244−7、Haworth C,et.al.Eur.J.Immunol.1991,21:2575−2579)、炎症性および自己免疫疾患の開始および持続の直接的な一因である。インターロイキン1β(IL−1β)、IL−6、IL−8、IL−12、一酸化窒素、IFN−γ、およびGM−CSFを含む、他の炎症性サイトカインもまた、ある役割を果たす一方で、抗炎症性サイトカイン(IL−10等)は、疾患を軽減させ得る。免疫系細胞(具体的にはマクロファージ)は、活性化する刺激に反応してこれらのサイトカインの多くを分泌する。
様々な細胞タイプが炎症過程に関与する。単球、マクロファージ、および他の免疫細胞によるTNFαの過剰産生は、数多くの疾患の発症原因における主要素である。具体的には、マクロファージおよびT細胞は、免疫応答の開始および維持において、中心的な役割を果たす。病理学的または免疫原性の刺激により活性化されると、マクロファージは、TNF−α、IL−1β、IL−8、IL−12、一酸化窒素(NO)、IL−6、GM−CSF、G−CSF、M−CSF等を含む、サイトカインの宿主を放出することにより応答する。T細胞は、IL−2、IL−4、INF−γ、および他の炎症性サイトカインを放出する。これらのサイトカインは、他の免疫細胞を活性化し、一部は、独立した細胞毒性剤としても作用する可能性がある。マクロファージおよびT細胞由来の炎症性メディエイターの過剰放出は、特に、正常細胞および周辺組織の損傷を引き起こす可能性がある。
炎症性サイトカインは、HIV−AIDS、および他のウイルス感染症(サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、およびヘルペス科ウイルス等)に関与している。TNFαは、ヒトサイトメガロウイルスの主要な前初期エンハンサー/プロモーターの基礎活性を増強し、前単球細胞において潜在性HCMV感染の再活性化において役割を果たし得る(Prosch S.,et.al.Virology 1995,208:197−206)。
更に、いくつかの炎症性サイトカインは、敗血症または内毒素性ショック患者の死因となる。例えば、TNFαおよびIL−1βは、敗血症、敗血症性ショック、および内毒素性ショックにおいて、既知の中心的な役割を有する。これらのサイトカインの上昇値は、ホスホリパーゼA2(Gronich J.,et.al.J.Clin.Invest.1994,93:1224−1233)および一酸化窒素合成酵素に対する遺伝子発現の誘発と共に、発熱、低血圧症、およびショックと関連する(Smith J.W.et.al.J.Clin.Oncol.1992,10:1141−1152、Chapman P.B.,et.al.J.Clin.Oncol.1987,5:1942−1951)。
平滑筋細胞からの一酸化窒素の誘発は、敗血症性ショック中、平均動脈圧および全身血管抵抗の減少を媒介することから、一酸化窒素に対する基本的役割が示唆される。したがって、IL−8、IL−1β、および一酸化窒素に対する下方制御作用を標的とする療法は、炎症性疾患または障害(敗血症、敗血症性ショック、および内毒素性ショック等)の治療に有益である可能性がある。
TNFαの過剰産生は、多くの自己免疫疾患(糖尿病および関節リウマチ等)の臨床的特徴の一因となる。全身性エリテマトーデス(SLE)はまた、IL−1βおよびTNFα値の増加によっても沈殿する。狼瘡患者の血清C反応性タンパク質、IL−1β、およびTNFα値は対照のそれらよりも高かったことから、炎症反応の増加が該疾患においてある役割を果たしていることが示唆される(Liou L.B.Clin.Exp.Rheumatol.2001,19:515−523)。SLEの一形態である神経精神的エリテマトーデス(NPLE)の患者の研究により、TNFαに対するmRNAを発現する末梢血単核細胞数、および一酸化窒素代謝物質の脳髄液濃度が、NPLE疾患の重症度と相関することが示された(Svenungsson E.,et al.Ann.Rheum.Dis.2001,60:372−9)。
IL−1およびTNFαは、動物モデルの様々な急性および慢性反応において、中心的な役割を果たす。更に、IL−11、IFNα、およびIFNβはまた、炎症反応の上方制御も行い得る。反対に、いくつかのサイトカインは、炎症反応の下方制御に関与し得る(即ち、特に、IL−4、IL−10、IL−13)。実施例1に記述されているように、本発明のガス富化流体と接触した細胞は、T3抗原を有する対照培地においてよりもT3抗原を有するIFN−γ値の増加を示し、一方、IL−8は、T3抗原を有する対照培地においてよりもT3抗原を有する本発明のガス富化培地において低かった。更に、IL−6、IL−8、およびTNF−α値は、PHAを有する対照培地においてよりも、PHAを有する本発明のガス富化培地において低く、一方、IL−1β値は、PHAを有する対照培地と比較した際、PHAを有する本発明のガス富化流体培地において低かった。本発明のガス富化培地単独では、IFN−γ値は、対照培地においてよりも高かった。これらの結果は、抗炎症微環境と一致している。
一酸化窒素は、炎症反応のメディエイターおよびレギュレータとして認識されている。病原体に対する細胞毒性作用を有するが、対象自身の組織に対する悪影響も有する可能性がある(Korhonen et al.,Curr Drug Targets Inflamm Allergy 4(4):471−9,2005)。一酸化窒素は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を形成するために可溶性グアニル酸シクラーゼと反応し、多くの一酸化窒素の効果を媒介する。一酸化窒素はまた、分子酸素およびスーパーオキシドアニオンと相互作用して、様々な細胞機能を修飾し得る活性酸素種を産生することもできる。一酸化窒素のこれらの間接的な効果は、炎症において重要な役割を有し、一酸化窒素は、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)により高量産生され、活性酸素種は、活性化された炎症細胞により合成される。
一酸化窒素は、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、内皮細胞、および恐らくその他のものにより産生され得る。一酸化窒素の血管作用の一部としては、血管拡張、血管内皮への血小板粘着の阻害、血管内皮への白血球粘着の阻害、およびスーパーオキシドの補足が挙げられる(Shah et al.,Env.Health Persp.v.106(5):1139−1143)。
更に、一酸化窒素合成酵素の阻害は、創傷収縮を遅延化し、コラーゲン組織を改変し、新表皮厚を改変することが示されている(Amadeu and Costa,J.Cutan.Pathol.33:465−473,2006)。創傷における肥満細胞移動および血管形成はまた、一酸化窒素の阻害によっても影響を受ける(同上)。いかなる特定の理論機序にも束縛されず、ある実施形態では、本発明のガス富化流体は、局在性および/もしくは細胞内一酸化窒素産生、または分解を調節し、本明細書に開示される実施例の項に例証される創傷治癒効果のスペクトルと一致し得る。可変の調節経路により、ある実施形態では、本発明のガス富化流体は、一酸化窒素産生を増加し得る、および/または一酸化窒素分解を遅延させ得る一方で、他のある実施形態では、本発明のガス富化流体は、一酸化窒素産生を減少させ得る、および/または一酸化窒素分解を加速し得る。
具体的には、本明細書の実施例9に記述されているように、酸素富化食塩溶液で処置した創傷は、4〜11日目で創傷治癒が増加し、3〜11日目で、酸素富化食塩溶液で処置した創傷の新表皮は、生理食塩水で処置した創傷表皮の2〜4倍の速度で移動したことを示した。本試験はまた、15〜22日で、酸素富化食塩溶液で処置した創傷は、より成熟した表皮層の早期形成により証されるように、より急速に分化したことも示した。すべての段階で、通常の治癒と関連する表皮に生じる肥厚は、酸素富化食塩溶液により処置した創傷内で生じなかった。
したがって、いかなる特定の理論にも束縛されることは意図していないが、この創傷治癒効果のスペクトルに従い、酸素富化食塩溶液は、創傷内で、一酸化窒素の局在および/または細胞内値を調節し得ると考えられる。一酸化窒素は、創傷治癒において、増殖因子、コラーゲン沈着、炎症、肥満細胞移動、表皮肥厚、および新血管形成を調節する。更に、一酸化窒素は、酸素により調節される誘導酵素により産生される。
肥満細胞移動の場合は、酸素富化溶液に対する初期と後期の移動差も生じる。これは、一酸化窒素合成阻害の分野において既知のものと一致する(Amadeu and Costa,J.Cutan Pathol 33:465−473,2006)。
炎症過程の最初の2相において、異物は、破壊されるか(例えば、異物が有機体である場合)、または周辺組織が弛緩する(例えば、異物が破片である場合)かのいずれかである。治癒相において、炎症が鎮静し始め、個体の血管および脈管パターンが再び正常化し、創傷の修復が開始する。修復過程における3つの主事象は、(1)線維芽細胞を増殖することによる新結合組織の形成、(2)上皮の再生、および(3)新規毛細血管の増生である。
炎症が鎮静化する前でさえ、線維芽細胞は、通常、休眠状態で存在する周囲の正常組織から損傷領域への移動を開始する。それらは、アメーバ様運動でフィブリン鎖に沿って移動し、自身を治癒領域全体に分布させる。損傷組織中の位置に固定されると、線維芽細胞はコラーゲンを合成し始め、このタンパク質を分泌し、これがそれ自身を線維として配列する。該線維は、長軸で応力が最も高い方向に自身を配向させる。コラーゲンの束が成長して堅固になるにつれ、線維芽細胞は、次第に変性し、この束に密着し、損傷領域は瘢痕組織に変形する。
瘢痕組織の形成と同時に、創傷端の無傷の上皮細胞が増殖し始め、1枚のシートとして損傷領域の中心に向かって動き始める。炎症が鎮静化するにつれて血液を直接供給する必要性が生じ、創傷部位に血管が形成される。
炎症は、複数の細胞タイプを含む複合過程である。例えば、肥満細胞は初期相の血管拡張の引き金となるメディエイターを放出し、内皮細胞の分離および内皮下層中のコラーゲン線維の露出を伴う。血管中に形成される細胞間空隙内の線維が血小板を捕捉し、これらの細胞からのメディエイター放出の引き金となる。
血小板の他に、露出したコラーゲン線維もまた、拡張した血管壁の孔を通って濾過される血漿タンパク質と相互作用し、血液凝固カスケード、血管拡張の増加、血管浸透性の増加および走化性の引き金となる要因を含む。
更に、補体カスケードは、損傷した血管、損傷細胞により放出されるタンパク質分解酵素、いずれかの関与する細菌の膜成分、および抗原−抗体複合体のうちのいくつかの刺激により活性化される可能性がある。活性化された補体成分のうちのいくつかは、走化因子として作用し、白血球が炎症領域へ浸出する原因となる一方、他の活性化された補体成分は食作用を促進して細胞溶解に関与する。
加えて、本発明のガス富化流体または溶液はまた、炎症の少なくとも1つの態様に関与する少なくとも1つのサイトカインも調節し得ると考えられ、該サイトカインとしては、MAF(マクロファージ活性化因子)、MMIF(マクロファージ遊走阻止因子)、MCF(マクロファージ走化因子)、LMIF(白血球遊走阻止因子)、HRF(ヒスタミン放出因子)、TF(伝達因子)、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15等)、TNF−α、TNF−β、インターフェロン(IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IFN−ζ、IFN−δ等)、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、GM−CSF(顆粒球マクロファージCSF)、M−CSF(マクロファージCSF)、多能性(multi−)CSF(IL−3)、線維芽細胞増殖因子(αFGF、βFGF)、EGF(上皮細胞増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)、形質転換増殖因子(TGF−α、TGF−β等)、NAP−2(好中球活性化タンパク質2)、PF−4(血小板因子4)、トロンボグロブリン、MCP−1(単球走化性タンパク質1)、MCP−3、MIP−1α、MIP−1β+(マクロファージ炎症性タンパク質)、RANTES(正常なT細胞が発現した活性化に応じて調整され、恐らくは分泌されるケモカイン)、HSP(熱ショックタンパク質)、GRP(グルコース調節タンパク質)、ユビキチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、ある実施形態では、ガス富化流体および/または治療組成物は、抗炎症性分子もしくはサイトカインの産生および/または分泌を増加させ得るか、あるいは抗炎症性分子もしくはサイトカインの分解を低下させ得、それにより、炎症および/または炎症性神経変性の症状の少なくとも1つを緩和または予防し得る。他の実施形態では、本発明のガス富化流体ならびに/または治療組成物は、抗炎症性分子もしくはサイトカインの産生および/または分泌を低下させるか、あるいは抗炎症性分子もしくはサイトカインの分解を増加させ、それにより、炎症および/または炎症性神経変性の症状の少なくとも1つを緩和または予防し得る。
先行試験は、関節リウマチのヒト自己免疫疾患の動物モデル系であるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)の悪化および脱髄の増加における抗MOG抗体の重要な役割を示した(Linington,et al.1992.J.Neuroimmunol.40:219−224)。更に、MOG抗体は、多発性硬化症の発症原因に関与している(Berger et al.N.Engl.J.Med.2003 Jul 10;349(2):139−45)。
先行実験に記述されるように、本発明の発明的ガス富化流体は、先にプライミングした動物の抗原に対するリンパ球反応を増幅した。先行実験に示されるように、MOG曝露に対する反応に対するリンパ球増殖は、本発明の溶媒和電子を含むガス富化流体で再構成された流体中で培養した場合、加圧した酸化流体(加圧ポット)または対照脱イオン流体中よりも大きかった。
関連する分子間相互作用の例:
従来、量子的特性は10−10メートル未満の素粒子に属すると考えられ、一方、日常生活の巨視的世界は、素粒子の動きがニュートンの運動の法則に従う点で古典的であると称される。
最近、分子は、希釈するとサイズが拡大するクラスターを形成することが記載されている。これらのクラスターは、直径数マイクロメートルと測定され、希釈すると非線形的にサイズが拡大することが報告されている。直径100ナノメートルと測定される量子のコヒーレントドメインが純水中に発生すると仮定されており、コヒーレントドメインにおける水分子の集団振動が最終的に電磁場変動に固定される相になり得、水中で安定振動を提供し、水の集合構造を変化させる水中の溶解物質に特異的に長く持続するコヒーレント振動の励起形態において「記憶」の一形態を提供し、次に、発現する特異的なコヒーレント振動を決定し得る。これらの振動が連結する磁場相により安定化する場合、水は希釈時に依然として「種(seed)」コヒーレント振動を運び得る。分子クラスターサイズが拡大すると、その電磁的な特徴が対応して増幅され、水に運ばれるコヒーレント振動が増強される。
溶解分子のクラスターサイズの変化、および水の複雑多岐な微視的構造にもかかわらず、コヒーレント振動の特異性は依然として存在し得る。水の特性の変化を考慮するための1つのモデルは、結晶化に関する考慮に基づいている。
ナノスケールケージを形成する、簡易プロトン化水クラスターは、出願者らの先行特許出願:国際公開特許第2009/055729号に示される。プロトン化水クラスターは、一般に、H+(H2O)n形態をとる。いくつかのプロトン化水クラスターは、電離層等に自然発生する。いかなる特定の理論にも束縛されず、特定の態様によれば、水クラスターまたは構造の他のタイプ(クラスター、ナノケージ等)が可能であり、これには、本発明の産出物質に与えられる、酸素および安定化した電子を含む構造が含まれる。酸素原子は、生成構造に取り込まれ得る。半結合ナノケージの化学反応は、酸素および/または安定化した電子を、長期間、溶解したままにすることが可能である。他の原子または分子(医薬化合物等)は、徐放目的のためにケージすることができる。溶液物質および溶解化合物の特異的化学反応は、これらの物質の相互作用により異なる。
混合機器により処理された流体については、クラスター構造内容物の流体の分析と一致する異なる構造特性を示すことが実験により既に示されている。例えば、国際公開特許第2009/055729号を参照されたい。
帯電安定化したナノ構造(例えば、帯電安定化した酸素含有のナノ構造):
出願者らの国際公開特許第2009/055729号「二重層効果」、「滞留時間」、「注入速度」、「気泡サイズ測定」に既に記載のように、界面動電的混合機器は、複合体と第1の物質および第2物質の独特な非線形流体動的相互作用、本明細書に記載される、新規の界面動電効果を提供する効果的に膨大な表面積(機器面積および100nm未満の例外的に狭い気泡面積を含む)と接触して混合する複合体を提供する、動的乱流をほんのミリ秒で作製する。更に、絶縁回転子および固定子を含む、特別に設計された混合機器を使用して、機能局在界面動電効果(電圧/電流)が示された。
当該技術分野において十分に認識されるように、電荷再分配および/または溶媒和電子は、水溶液中で極めて不安定であることが知られている。特定の態様によれば、出願者らの界面動電効果(例えば、特定の態様では溶媒和電子を含む、電荷再分配)は、産出物質(例えば、食塩溶液、イオン溶液)内で、驚くほど安定化する。実際には、本明細書に記載される本発明の界面動電流体(例えば、RNS60またはSolas)の特性および生物活性の安定性は、気密性容器内で数ヶ月間維持することができ、本発明の溶液の特性および活性の生成および/または維持および/または媒介に役立つ溶解ガス(例えば、酸素)の関与を示す。注目すべきことに、電荷再分配および/または溶媒和電子は、流体が生細胞(例えば、哺乳類細胞)と接触した際に、細胞膜電位と細胞膜伝導性の少なくとも1つの調節を提供するのに十分な量において、本発明の界面動電イオン水性流体中に安定的に構成される(例えば、本明細書に開示される国際公開特許第2009/055729号実施例23の細胞パッチクランプを参照されたい)。
本発明の界面動電流体(例えば、界面動電食塩溶液)の安定性および生物学的適合性を説明するために、本明細書「分子間相互作用」の項に記載されるように、出願者らは、水分子と水中に溶解した物質(例えば、酸素)の分子との間の相互作用が水の集合構造を変化させ、ナノスケールケージクラスター(本発明の産出物質に与えられる、酸素および/または安定化した電子を含むナノ構造が含まれる)を提供することを提案する。機序に束縛されず、特定の態様では、ナノ構造の立体構造は、それらが、溶解ガス(例えば、酸素)を(少なくとも、形成および/または安定性および/または生物活性のために)含む;細胞膜もしくはその関連した構成要素と接触する際に、界面動電流体(例えば、RNS60またはSolas食塩流体)が、電荷および/もしくは電荷効果を調節する(例えば、与えるまたは受容する)ことを可能にする;ならびに、特定の態様では、生物学的に関連した形態において、溶媒和電子の安定化(例えば、運搬、所有、捕獲)を提供する。
特定の態様によれば、本開示により支持されるように、イオンまたは食塩(例えば、標準食塩水、NaCl)溶液において、本発明のナノ構造は、帯電安定化した水和殻内に溶解ガス分子(例えば、酸素)を少なくとも1つ含み得る帯電安定化したナノ構造(例えば、平均直径100nm未満)を含む。追加の態様によれば、帯電安定化した水和殻は、溶解ガス分子(例えば、酸素)を少なくとも1つ有するケージまたは空隙を含み得る。更なる態様によれば、適した帯電安定化した水和殻の供給によって、帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、溶媒和電子(例えば、安定化した溶媒和電子)を更に含み得る。
機序または特定の理論に束縛されず、この優先日後、周囲(大気)ガスと平衡状態にある水性液体中のイオンにより安定化した帯電安定化超微粒気泡が、提案されている(Bunkin et al.,Journal of Experimental and Theoretical Physics,104:486−498,2007;参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)。本発明の特定の態様によれば、出願者らの新規の界面動電流体は、帯電安定化した酸素含有のナノ構造の新規の生物活性形態を含み、そして、かかる構造の新規の配列、クラスター、または会合を更に含み得る。
帯電安定化した超微粒気泡モデルによれば、水構造の短距離分子秩序はガス分子の存在により破壊され(例えば、非吸着イオンと初めに複合した溶解ガス分子は短距離秩序の欠陥を引き起こす)、イオン性溶滴を濃縮し、欠陥は水分子の第1および第2の配位圏に取り囲まれ、配位圏において、それぞれ6個および12個の空孔を占める吸着イオン(例えば、電気二重層を形成するためのNa+イオンの「スクリーニングシェル」の捕捉)および非吸着イオン(例えば、第2の配位圏を占めるCl−イオン)により代替的に充填される。不飽和イオン溶液(例えば、不飽和食塩溶液)において、この水和した「細胞核」は、第1および第2の配位圏が、それぞれ6個の吸着イオンおよび5個の非吸着イオンにより充填されるまで、安定状態を保ち、次いで、ガス分子を含有する内部空隙を生成するクーロン爆発を受け、吸着イオン(例えば、Na+イオン)は生成された空隙の表面に吸着され、一方、非吸着イオン(またはそれらの一部)は溶液中に拡散する(上記Bunkin et al.を参照)。このモデルにおいて、ナノ構造における空隙は、その表面に吸着されたイオン(例えば、Na+イオン)間でのクーロン爆発による崩壊を予防する。空隙含有のナノ構造の安定性は、空隙/気泡表面への同電荷との溶解イオンの選択的吸着、および溶解ガスと気泡内部のガスとの間の拡散平衡によるものであると仮定され、負の静電圧(生成電気二重層により与えられる外部からの静電圧)は、界面張力に対して安定補償を提供し、気泡内部のガス圧力は、周囲圧力と均衡を保つ。該モデルによれば、かかる超微粒気泡の形成はイオン成分を必要とし、ある態様では、粒子間の衝突媒介した会合は、より大きな秩序クラスター(配列)の形成を提供し得る(同上)。
帯電安定化した超微粒気泡モデルは、粒子がガス超微粒気泡であることができることを示唆するが、周囲大気と平衡状態にあるイオン溶液中のかかる構造の自然形成のみを企図し、酸素がかかる構造を形成することができるかどうかに関しては特性化されておらず、未特定のままであり、同様に、溶媒和電子が、かかる構造により会合および/または安定化し得るかどうかに関しても特定されていない。
特定の態様によれば、帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造を含む本発明の界面動電流体は、新規であり、超微粒気泡モデルによれば仮定非界面動電、大気の帯電安定化超微粒気泡構造とは基本的には異なる。注目すべきは、対照食塩溶液は本明細書に開示される生物学的特性を有さないが、対して出願者らの帯電安定化したナノ構造は帯電安定化した酸素含有のナノ構造の新規の生物活性形態を提供するという必至の事実に少なくとも部分的に由来する。
本発明の特定の態様によれば、出願者らの新規の界面動電機器および方法は、大気と平衡状態にあるイオン流体、またはいずれの界面動電的に生成されていない流体中で自然発生し得るか、または発生し得ない任意の量を超えた、かなりの量の帯電安定化したナノ構造を含む、新規の界面動電的に改変された流体を提供する。特定の態様では、帯電安定化したナノ構造は帯電安定化した酸素含有のナノ構造を含む。追加の態様では、帯電安定化したナノ構造はすべてもしくは実質的にすべて帯電安定化した酸素含有のナノ構造であるか、または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は界面動電流体中で主要な帯電安定化したガス含有のナノ構造種である。
なお更なる態様によれば、帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、溶媒和電子を含むか所有し得、それによって、新規の安定化した溶媒和電子担体を提供する。特定の態様では、帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、新規タイプの電極(または逆電極)を提供し、単一の有機配位カチオンを有する従来の溶質電極と対照的に、むしろ空隙または酸素原子を含有する空隙周辺に安定的に配列された複数のカチオンを有し、配列されたナトリウムイオンは、有機分子によってではなく水の水和殻によって配位される。特定の態様によれば、溶媒和電子は水分子の水和殻により収容され得るか、または好ましくはすべてのカチオン全体に分布するナノ構造の空隙内に収容され得る。ある態様では、本発明のナノ構造は、複数の配列したナトリウムカチオン全体に溶媒和電子(一連のナトリウム原子および少なくとも1個の酸素原子全体に分布する溶媒和電子)の分布/安定化を提供するだけでなく、空隙中の閉じ込め酸素分子(1つ以上)と溶媒和電子の会合または部分会合を提供することにより、溶液中の新規の「スーパー電極」を提供する。したがって、特定の態様によれば、本発明の界面動電流体と関連して本明細書に開示される「溶媒和電子」は、水分子による直接水和を含む従来のモデルにおいて溶媒和され得ない。あるいは、乾燥電極塩を用いた限定された例では、本発明の界面動電流体中の溶媒和電子は、水溶液中の高度な秩序配列を安定化させるために、「格子接着」を提供するように複数の帯電安定化したナノ構造全体に分布され得る。
特定の態様では、本発明の帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、生物活性を媒介するために、細胞膜もしくはその構成要素、またはタンパク質等と相互作用することが可能である。特定の態様では、溶媒和電子を有する本発明の帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、生物活性を媒介するために、細胞膜もしくはその構成要素、またはタンパク質等と相互作用することが可能である。
特定の態様では、本発明の帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、生物活性を媒介するために、帯電および/もしくは帯電効果ドナー(送達)として、ならびに/または帯電および/もしくは帯電効果レシピエントとして、細胞膜もしくはその構成要素、またはタンパク質等と相互作用する。特定の態様では、溶媒和電子を有する本発明の帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、生物活性を媒介するために、帯電および/もしくは帯電効果ドナーとして、ならびに/または帯電および/もしくは帯電効果レシピエントとして、細胞膜と相互作用する。
特定の態様では、本発明の帯電安定化したナノ構造および/または帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、本発明の界面動電流体の観察された安定性および生物学的特性と一致し、これらを説明し、イオン水溶液(例えば、食塩溶液、NaCl等)中の安定化した溶媒和電子を提供する、新規の電極(または逆電極)を更に提供する。
特定の態様では、帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、帯電安定化した酸素含有ナノ気泡を実質的に含み、その形態をとるか、またはそれを発生させることができる。特定の態様では、帯電安定化した酸素含有クラスターは、帯電安定化した酸素含有のナノ構造の相対的に大きい配列、および/または帯電安定化した酸素含有ナノ気泡もしくはそれらの配列の形成を提供する。特定の態様では、帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、疎水性表面と接触する際、疎水性ナノ気泡の形成を提供することができる。
特定の態様では、帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、実質的に、少なくとも1個の酸素分子を含む。ある態様では、帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、実質的に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、またはそれより多い酸素分子を含む。特定の態様では、帯電安定化した酸素含有のナノ構造は、約20nm×1.5nmのナノ気泡(例えば、疎水性ナノ気泡)を含むかまたは発生し、約12個の酸素分子(例えば、酸素分子サイズ(約0.3nm×0.4nm)、理想ガス前提およびn=PV/RT(式中、P=1atm、R=0.082□057□l.atm/mol.K;T=295K;V=pr2h=4.7×10−22L、式中、r=10×10−9m、h=1.5×10−9m、およびn=1.95×10−22モル)の適用に基づく)を含む。
ある態様では、イオン水性流体中の帯電安定化構造を有するかかるナノ構造またはそれらの配列にある流体中に存在する酸素分子の割合は、0.1%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%超からなる群から選択される割合である。好ましくは、この割合は、約5%超、約10%超、約15%超、または約20%超である。さらなる態様では、イオン水性流体中の帯電安定化構造を有する、帯電安定化した酸素含有のナノ構造またはそれらの配列の実質的なサイズは、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、および1nm未満からなる群から選択されるサイズである。好ましくは、このサイズは、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満である。
ある態様では、本発明の界面動電流体は溶媒和電子を含む。更なる態様では、本発明の界面動電流体は、帯電安定化したナノ構造および/もしくは帯電安定化した酸素含有のナノ構造ならびに/またはそれらの配列を含み、これらは、溶媒和電子(1つ以上)および特異な電荷分布(極性、対称、非対称の電荷分布)の少なくとも1つを含む。ある態様では、帯電安定化したナノ構造および/もしくは帯電安定化した酸素含有のナノ構造ならびに/またはそれらの配列は常磁性である。
対照的に、本発明の界面動電流体に関連して、対照加圧ポット含酸素流体(非界面動電流体)等は、かかる界面動電的に生成された帯電安定化した生物活性ナノ構造および/もしくは生物活性帯電安定化した酸素含有のナノ構造ならびに/またはそれらの配列を含まず、細胞膜電位と細胞膜伝導性の少なくとも1つの調節が可能である。
ガス富化流体を生成するシステム
出願者らの国際公開特許第2009/055729号に既に開示されているシステムおよび方法は、受動的損失を最小限に抑える高濃度で、ガス(例えば、酸素)を安定的に富化させることが可能である。このシステムおよび方法は、多種多様の流体に、高い割合で多種多様のガスを富化するために効果的に使用することができる。例に過ぎないが、室温で、一般に、溶解酸素の約2〜3ppm(100万分の1)値を有する脱イオン水は、開示されたシステムおよび/または方法を使用して、少なくとも約5ppm、少なくとも約10ppm、少なくとも約15ppm、少なくとも約20ppm、少なくとも約25ppm、少なくとも約30ppm、少なくとも約35ppm、少なくとも約40ppm、少なくとも約45ppm、少なくとも約50ppm、少なくとも約55ppm、少なくとも約60ppm、少なくとも約65ppm、少なくとも約70ppm、少なくとも約75ppm、少なくとも約80ppm、少なくとも約85ppm、少なくとも約90ppm、少なくとも約95ppm、少なくとも約100ppm、またはそれより大きい任意の値もしくはそれら範囲内の溶解酸素値に達することができる。特定の例示的な実施形態によれば、酸素富化水は、溶解酸素の約30〜60ppm値で生成され得る。
表3は、酸素富化食塩溶液(表3)で処置された治癒創傷、および本発明のガス富化酸素富化食塩溶液のサンプルにおいて得られた、様々な分圧測定値を例証する。
投与経路および投与形態
特定の例示的な実施形態では、本発明のガス富化流体は、治療組成物が炎症症状の少なくとも1つを予防または緩和するように、単独でまたは別の治療薬と組み合わせて、治療組成物として機能し得る。本発明の治療組成物は、それを必要とする対象に投与することができる組成物を含む。ある実施形態では、治療組成物製剤はまた、担体、アジュバント、乳化剤、懸濁剤、甘味料、香味料、香料、および結合剤からなる群から選択される添加剤の少なくとも1つも含み得る。
本明細書で使用される「医薬上許容可能な担体」および「担体」は、概して、非毒性の、不活性固体、半固体、もしくは液体の充填剤、希釈剤、封入物質、またはあらゆる型の製剤補助物質を指す。医薬上許容可能な担体としての機能を果たし得る物質のいくつかの限定されない例としては、糖類(ラクトース、グルコース、およびスクロース等);デンプン(コーンスターチおよびポテトスターチ等);セルロース、およびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース等);トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(ココアバターおよび坐薬用ワックス等);油類(ピーナッツオイル、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油等);グリコール(プロピレングリコール等);エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等);アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性の相溶性潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等)があり、考案者の判断に従って、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存料および抗酸化剤もまた、組成物中に存在することができる。特定の態様では、かかる担体および賦形剤は、本発明のガス富化流体または溶液であり得る。
本明細書に記載の医薬上許容可能な担体(例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、または希釈剤)は、当業者には周知である。一般に、医薬上許容可能な担体は、治療薬に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用または毒性がない。医薬上許容可能な担体としては、ポリマーおよびポリマーマトリックス、ナノ粒子、超微粒気泡等を挙げることができる。
本発明の治療ガス富化流体に加えて、治療組成物は、追加の非ガス富化水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの組み合わせを更に含み得る。当業者に明らかであるように、特定の治療組成物の新規の改善された製剤、新規のガス富化治療流体、および新規のガス富化治療流体を送達する新規の方法は、同一の、類似の、または異なる組成物のガス富化流体を1つ以上の不活性希釈剤と差し替えることにより得られ得る。例えば、従来の水は、ガス富化流体を提供するために、水もしくは脱イオン水に酸素を混合することにより生成されたガス富化流体と差し替えるか、または補充され得る。
ある実施形態では、本発明のガス富化流体は、1つ以上の治療薬と組み合わせ得る、および/または単独で使用し得る。特定の実施形態では、ガス富化流体を抱合することは、脱イオン水、食塩溶液等の当該技術分野において既知の1つ以上の溶液を1つ以上のガス富化流体と差し替え、それによって対象に送達するための改善された治療組成物を提供することを含み得る。
ある実施形態は、本発明のガス富化流体、医薬組成物、もしくは他の治療薬、またはその医薬上許容可能な塩もしくは溶媒、ならびに医薬担体もしくは希釈剤の少なくとも1つを含む治療組成物を提供する。これらの医薬組成物は、前述の疾患もしくは状態の予防および治療、ならびに上記のように、治療において使用し得る。好ましくは、担体は、医薬上許容可能でなければならず、適合する、即ち、組成物中の他の成分において有害作用がないものでなければならない。担体は固体であっても液体であってもよく、単位用量の製剤(例えば、活性成分の0.05〜95重量%を含有し得る錠剤)として製剤化されるのが好ましい。
可能な投与経路としては、経口、舌下、口腔内、非経口(例えば、皮下、筋肉内、動脈内、腹腔内、嚢内、膀胱内、髄腔内、または静注)、直腸、局所(経皮、膣内、眼内、耳内、鼻腔内、吸入、ならびに移植可能な機器もしくは物質の注射もしくは挿入等)が挙げられる。
投与経路
特定の対象に対する投与の最適手段は、治療する疾患もしくは状態の性質および重症度、または使用する治療の性質、ならびに治療組成物もしくは追加治療薬の性質により異なる。ある実施形態では、経口または局所投与が好ましい。
経口投与に適した製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を粉末もしくは顆粒として、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤として含有する個別単位(錠剤、カプセル、カシェ剤、シロップ、エリキシル剤、チューインガム、「ロリポップ」製剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、トローチ剤、またはゲルコーティングされたアンプル等)として提供し得る。
経口投与に適した更なる製剤は、多種の定量加圧エアロゾル、噴霧器、ネブライザー、または吸入器を使用して発生し得る、微粒子粉末またはミスト剤を含むように提供され得る。特に、治療薬の粉末または他の化合物は、本発明のガス富化流体中に溶解または懸濁し得る。
経粘膜的方法(舌下または口腔内投与等)に適した製剤としては、活性化合物および一般に香味ベース(砂糖およびアカシアまたはトラガカント等)を含むトローチ剤、パッチ剤、錠剤等、ならびに不活性ベース中に活性化合物を含むパステル剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースアカシア等)が挙げられる。
非経口投与に適した製剤としては、一般に、所定濃度の活性ガス富化流体および可能な別の治療薬を含有する滅菌水溶液が挙げられ、該溶液は、意図するレシピエントの血液を有する等張液であることが好ましい。非経口投与に適した更なる製剤としては、界面活性剤およびシクロデキストリン等の生理的に適した共溶媒および/または錯化剤を含有する製剤が挙げられる。水中油型乳剤もまた、ガス富化流体の非経口投与用の製剤に適し得る。かかる溶液は、静注することが好ましいが、皮下または筋肉内注射によっても投与し得る。
尿道、直腸、または膣内投与に適した製剤としては、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳剤、吸収性固形物質、潅水等が挙げられる。製剤は、坐剤ベースを形成する1つ以上の固体担体(例えば、ココアバター)中に活性成分を含む、単位用量坐剤として提供するのが好ましい。あるいは、本発明のガス富化流体を用いた結腸洗浄剤は、結腸または直腸投与用に製剤化し得る。
局所、眼内、耳内または鼻内適応に適した製剤としては、軟膏、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤(ヒドロゲル等)、スプレー剤、分散性粉末および顆粒、乳剤、流動噴射剤を用いたスプレー剤もしくはエアロゾル(リポソームスプレー剤、点鼻剤、鼻腔用スプレー剤等)、ならびに油が挙げられる。かかる製剤に適した担体としては、ワセリン、ゼリー、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの併用が挙げられる。経鼻または鼻腔内送達としては、定量のこれらの製剤またはその他のいずれかを挙げ得る。同様に、鼻内または眼内送達としては、点滴剤、軟膏、刺激流体等を挙げ得る。
本発明の製剤は、任意の適した方法により、一般に、ガス富化流体を任意選択的に液体もしくは微粉化した固体担体、またはその両方を有する活性化合物と必要な比率で均一かつ緊密に任意に混合し、次いで、必要に応じて、生成混合物を所望の形状に成形することにより調製し得る。
例えば、錠剤は、活性成分の粉末もしくは顆粒、ならびに1つ以上の任意成分(結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤または界面活性分散剤等)を含む均質混合物を圧縮するか、または粉末活性成分および本発明のガス富化流体の均質混合物を成形することにより調製し得る。
吸入投与に適した製剤としては、様々なタイプの定量加圧エアロゾル、噴霧器、ネブライザー、または吸入器を使用して発生し得る微粒子粉末またはミスト剤が挙げられる。特に、治療薬の粉末または他の化合物は、本発明のガス富化流体中に溶解または懸濁し得る。
口からの肺投与に関しては、気管支樹への送達を確実にするために、粉末または溶滴の粒径は、一般に0.5〜10μMの範囲、好ましくは1〜5μMの範囲である。経鼻投与に関しては、鼻腔内滞留を確実にするために、10〜500μMの範囲の粒径が好ましい。
定量吸入器は、液化噴射剤中の治療薬の懸濁液または溶液製剤を一般に含む加圧エアロゾルディスペンサーである。ある実施形態では、本明細書に開示される本発明のガス富化流体は、標準液化噴射剤に追加して使用してもよいし、代替的に使用してもよい。使用中、これらの機器は、計測量、一般に10〜150μlを送達するように適合させた弁を経て製剤を放出して、治療薬およびガス富化流体を含有する微粒子噴霧を生じる。適した噴射剤としては、特定のクロロフルオロカーボン化合物、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびこれらの混合物が挙げられる。
該製剤としては、1つ以上の共溶媒、例えば、エタノール界面活性剤、例えば、オレイン酸もしくは三オレイン酸ソルビタン、酸化防止剤、ならびに適した風味剤を更に挙げ得る。ネブライザーは、狭いベンチュリ穴を通る圧縮ガス(一般に空気または酸素)の加速によるか、あるいは超音波撹拌のいずれかにより、活性成分の溶液または懸濁液を治療エアロゾルミストに変換する機器であり、市販されている。ネブライザーに用いるのに適した製剤は、ガス富化流体中の別の治療薬からなり、製剤の最大40%w/wまで、好ましくは20%w/w未満を含む。加えて、他の担体は、蒸留水、滅菌水、または希釈水性アルコール溶液等を利用し得、塩(塩化ナトリウム等)の添加により、体液と等張にすることが好ましい。任意の添加剤は、特に製剤が滅菌調製されていない場合、防腐剤が挙げられ、メチルヒドロキシ−ベンゾエート、酸化防止剤、香味剤、揮発油、緩衝剤、および界面活性剤を挙げ得る。
吸入投与に適した製剤としては、吸入器により送達されるか、または鼻からの吸入により鼻腔に取り入れられ得る微粉砕散剤が挙げられる。吸入器において、散剤を一般にゼラチンまたはプラスチック製のカプセルまたはカートリッジに入れ、それらを原位置で突き刺すかまたは開けるかのいずれかにより、散剤が、吸入時に機器から引き出される空気によるか、または手動ポンプにより送達される。吸入器において利用される散剤は、活性成分だけからなるか、または活性成分、適した粉末希釈剤(ラクトース等)、および任意選択的に界面活性剤を含む粉末ブレンドのいずれかからなる。活性成分は、一般に、製剤の0.1〜100w/wを含む。
具体的に上記した成分に加えて、本発明の製剤は、課題となる製剤タイプを考慮して、当業者には既知の他の薬剤を含み得る。例えば、経口投与に適した製剤は、香味料を含み得、経鼻投与に適した製剤は香料を含み得る。
本発明の治療組成物は、個々の治療薬として、あるいは治療薬と組み合わせて、調合薬と共に使用可能な任意の従来の方法により投与することができる。
当然のことながら、投与量は、既知の要因(特定の薬剤の薬力学的特性、ならびに投与形態および投与経路;レシピエントの年齢、健康状態、および体重;症状の性質および範囲;併用療法の種類;治療頻度;ならびに所望の効果等)により異なり得る。活性成分の1日投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001〜1000ミリグラム(mg)であることが予想でき、0.1〜約30mg/kgの用量が好ましい。ある態様によれば、活性成分の1日投与量は、0.001リットル〜10リットルであり得、約0.01リットル〜1リットルの用量が好ましい。
投与形態(投与に適した組成物)は、単位当たり約1mg〜約500mgの活性成分を含む。これらの医薬組成物では、活性成分は、通常、組成物の総重量に基づいて、約0.5〜95重量%の量で存在する。
軟膏、ペースト剤、発泡剤、閉塞剤、クリーム剤、およびゲル剤はまた、賦形剤(デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、シリコン、ベントナイト、シリカ酸、およびタルク、またはこれらの混合物等)も含むことができる。散剤およびスプレー剤もまた、賦形剤(ラクトース、タルク、シリカ酸、水酸化アルミニウム、およびケイ酸カルシウム、またはこれらの物質の混合物等)を含むことができる。ナノ結晶抗細菌性金属の溶液は、エアロゾル医薬品を製造するために日常的に使用される既知の手段のいずれかによりエアロゾルまたはスプレー剤に変換することができる。概して、かかる方法としては、通常、不活性担体ガスを用いて、溶液の容器を加圧すること、または加圧するための手段を提供すること、ならびに小さな穴から加圧したガスを通過させることが挙げられる。スプレー剤は、常用の噴射剤(窒素、二酸化炭素、および他の不活性ガス等)を更に含み得る。加えて、ミクロスフェアまたはナノ粒子は、対象に治療化合物を投与するために必要とされる任意の経路において、本発明のガス富化治療組成物または流体と共に利用し得る。
注射用製剤は、単位用量または複数用量で密閉容器(アンプルおよびバイアル等)内に存在することができ、使用直前に、滅菌液体賦形剤、またはガス富化流体の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。即時注射液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製できる。注射用組成物のために効果的な医薬担体の必要条件は、当業者には周知である。例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,Pa.,Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)およびASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照されたい。
局所投与に適した製剤としては、本発明のガス富化流体および任意に追加治療薬および香味料(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを含むトローチ剤);不活性ベース(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア等)中のガス富化流体および任意に追加治療薬を含むパステル剤;適した液体担体中のガス富化流体および任意に追加治療薬を含むうがい薬または含嗽液;ならびにクリーム剤、乳剤、ゲル剤等が挙げられる。
更に、直腸投与に適した製剤としては、様々なベース(乳化ベースまたは水溶性ベース等)と混合することにより坐剤として存在し得る。膣内投与に適した製剤としては、活性成分の他に、当該技術分野において適切であることが知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤、またはスプレー剤として存在し得る。
適した医薬担体は、当分野における標準的な参考文献テキスト「Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)」に記載されている。
本発明の文脈において、対象、特に動物、特にヒトへの投与量は、妥当な時間枠にわたり動物の治療反応に影響を及ぼすのに十分であるべきである。投与量は、様々な要因(動物の状態、動物の体重、ならびに治療される状態等)により異なり得ることを当業者は認識するであろう。適切な用量は、所望の反応に影響を及ぼすことが知られている、対象において治療組成物の濃度に至るものである。
用量サイズはまた、投与経路、投与時期および投与頻度、ならびに治療組成物の投与に伴い得る任意の副作用および所望の生理的効果の存在、性質、および範囲によっても決定される。
組み合わせの化合物は、(1)共製剤中の化合物の組み合わせにて同時に投与してもよいし、(2)別々の医薬製剤中の化合物を交互に、即ち、連続的に、順次に、並行して、または同時に送達して投与してもよいことが認識されるであろう。交互の治療において、第2の活性成分および任意選択的に第3の活性成分の投与遅延は、活性成分の組み合わせの相乗的な治療効果の利益を損失すべきではない。(1)または(2)のいずれかの投与方法によるある実施形態によれば、理想的には、該組み合わせは、最も有効な結果に達するように投与されるべきである。(1)または(2)のいずれかの投与方法によるある実施形態では、理想的には、該組み合わせは、各活性成分のピーク血漿濃度に達するように投与されるべきである。組み合わせ共製剤の1日1回1錠レジメンは、神経毒に曝露したと予想される一部の患者に投与可能であり得る。ある実施形態によれば、組み合わせの活性成分の効果的なピーク血漿濃度は、約0.001〜100μMの範囲であり得る。最適なピーク血漿濃度には、特定の患者に処方される製剤および投与レジメンにより達し得る。本発明の流体ならびにエリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つ、またはこれらのいずれかの生理学的に機能的な誘導体はまた、同時に存在する際も順次存在する際も、個々に複数回投与してもよいし、任意のこれらの組み合わせで投与してもよいことも理解されるであろう。概して、交互の治療(2)の間は有効投与量の各化合物が連続的に投与され、共製剤治療(1)の場合は有効投与量の2つ以上の化合物が共に投与される。
本発明の組み合わせは、単位用量形態において、医薬製剤として都合よく存在し得る。都合の良い単位用量製剤は、それぞれ、1mg〜1gの任意の量(例えば、10mg〜300mgであるが、これに限定されない)で活性成分を含む。エリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つと組み合わせた、本発明の流体の相乗効果は、広範囲の比、例えば、1:50〜50:1(本発明の流体:エリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF))にわたって実現され得る。1つの実施形態では、該比は、約1:10〜10:1の範囲であり得る。別の実施形態では、共製剤の組み合わせ投与形態(丸剤、錠剤、キャプレット、またはカプセル剤等)における、エリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つに対する本発明の流体の重量/重量比は約1、即ちほぼ等量の本発明の流体ならびにエリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つである。他の共製剤の例では、より多いか、またはより少ない本発明の流体ならびにエリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つが存在し得る。1つの実施形態では、各化合物は、単独で使用される場合に抗炎症活性を示す量で組み合わせて利用し得る。組み合わせの化合物の他の比および量は、本発明の範囲内で企図される。
単位用量形態は、本発明の流体ならびにエリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つ、またはこれらのいずれかの生理学的に機能的な誘導体、ならびに医薬上許容可能な担体を更に含み得る。
治療に使用するのに必要とされる本発明の組み合わせ中の活性成分量は、様々な要因(治療する状態の性質、ならびに患者の年齢および状態等)によって異なり、最終的には、主治医または健康管理者の自由裁量であることが、当業者によって理解されるであろう。考慮すべき要因としては、製剤の投与経路および性質、動物の体重、年齢および健康状態、ならびに治療する疾患の性質および重症度が挙げられる。
同時投与または順次投与のための単位用量形態にある任意の2つの活性成分と、第3の活性成分とを組み合わせることも可能である。3つの成分の組み合わせは、同時投与してもよいし、順次投与してもよい。順次投与する場合、この組み合わせは、2回または3回に分割投与し得る。ある実施形態によれば、本発明の流体の3つの成分の組み合わせならびにエリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および/もしくは増殖因子(GDNF)の任意の1つは、任意の順で投与し得る。
神経毒性剤:
神経毒性剤は、ニューロン、それらのシナプシス、またはその全体における神経系に特異的に作用する毒素である。それら毒素は、脳構造損傷を引き起こし、慢性疾患を続発する物質である。神経毒としては、アドレナリン作動系神経毒、コリン作動系神経毒、ドーパミン作動系神経毒、興奮性毒、等の神経毒が挙げられる。アドレナリン作動系神経毒の例としては、N−(2−クロロエチル)−N−エチル−2−ブロモベンジルアミン塩酸塩が挙げられる。コリン作動系神経毒の例としては、アセチルエチルコリンマスタード塩酸塩が挙げられる。ドーパミン作動系神経毒の例としては、6−ヒドロキシドーパミンHBr(6−OHDA)、1−メチル−4−(2−メチルフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン塩酸塩、1−メチル−4−フェニル−2,3−ジヒドロピリジニウム過塩素酸塩、N−メチル−4−フェニル−1,2,5,6テトラヒドロピリジンHCl(MPTP)、1−メチル−4−フェニルピリジニウムヨウ化物(MPP+)、パラコート、およびロテノンが挙げられる。興奮性毒の例としては、NMDAおよびカイニン酸が挙げられる。
MPTP、MPP+、パラコート、ロテノン、および6−OHDAは、動物モデルにおいてPD様症状を誘発することが示されている(K. Ossowska, et al., (2006). “Degeneration of dopaminergic mesocortical neurons and activation of compensatory processes induced by a long−term paraquat administration in rats: Implications for Parkinson’s disease”. Neuroscience 141 (4): 2155−2165;およびCaboni P, et al., (2004). “Rotenone, deguelin, their metabolites, and the rat model of Parkinson’s disease”. Chem Res Toxicol 17 (11): 1540−8; Simon et al., Exp Brain Res, 1974, 20: 375−384; Langston et al., Science, 1983, 219: 979−980; Tanner, Occup Med, 1992, 7: 503−513; Liou et al., Neurology, 1997, 48: 1583−1588を参照されたい)。
神経保護
神経系の神経保護は、アポトーシスまたは変性(例えば、脳損傷後または慢性神経変性疾患に起因する)からニューロンを保護する。「神経保護効果」は、中枢神経系(CNS)損傷に至り得る合併症を予防および治療することを目的とする。神経保護は、細胞生存もしくは細胞死遅延化、疾患進行の阻止もしくは遅延化、疾患発現および疾患死亡の遅延化の変数により推測することができる。
実施例は、本明細書に記載のように、界面動電的に改変された水性流体は神経保護的特性を有するということが示され、該界面動電的に改変された水性流体は、MPTP誘発性PD症状から神経細胞を保護することが示される。ある実施形態によれば、界面動電的に改変された水性流体は、神経毒曝露に関連する作用からの保護および/または低減において実質的な有用性を有する。
神経保護薬としては、エリスロポエチン、抗アポトーシス薬(TCH346、CEP−1347)、抗グルタミン酸剤、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、ミトコンドリア融合剤(補酵素Q10、クレアチン)、カルシウムチャネル遮断薬(イスラジピン)、α−シヌクレイン、および増殖因子(GDNF)が挙げられるが、これらに限定されない。
以下の実施例は、例示のためのみを意味し、決して限定することは意味しない。
実施例1
超微粒気泡サイズ
ガスの超微粒気泡サイズの限界値を決定するために本発明の拡散器を使用してガス富化流体にて実験を行った。超微粒気泡サイズの限界値は、ガス富化流体を、0.22ミクロンフィルタおよび0.1ミクロンフィルタを通過させることにより確定した。これらの試験を行う際、一定容量の流体が本発明の拡散器を通過し、ガス富化流体を生成した。この流体60ミリリットルを60mlの注射器に流出した。次いで、注射器内の流体の溶解酸素値をWinkler滴定により測定した。注射器内の流体を0.22ミクロンMillipore Millex GP50フィルタを通して、50mlビーカー内に注入した。次いで、50mlビーカー内の物質の溶解酸素率を測定した。実験を3回行って、下表4に示す結果を得た。
表に見ることができるように、注射器内で測定された溶解酸素値と50mlビーカー内で測定された溶解酸素値の間には、拡散物質を0.22ミクロンフィルタに通過させることによる有意差はなく、流体中の溶解ガスの超微粒気泡は、0.22ミクロン以下であることが推測される。
第2の試験を、濾過されていない状態で収集した食塩溶液バッチで富化した本発明の拡散器および産出溶液サンプル内で行った。濾過されていないサンプルの溶解酸素値は44.7ppmであった。0.1ミクロンフィルタを使用して本発明の拡散器から酸素富化溶液を濾過し、2つの追加サンプルを収集した。第1のサンプルの溶解酸素値は43.4ppmであった。第2のサンプルの溶解酸素値は41.4ppmであった。最終的に、フィルタを除去し、濾過されていない溶液から最終サンプルを得た。この場合、最終サンプルの溶解酸素値は45.4ppmであった。これらの結果は、Millipore0.22ミクロンフィルタ使用時の結果と一致した。したがって、食塩溶液中の大部分の気泡または超微粒気泡は約0.1ミクロン未満のサイズである。
実施例2
(本発明の界面動電的に生成された流体(RNS60およびSolas)で灌流されたCalu−3細胞において行われたパッチクランプ分析は、(i)RNS60およびSolasへの曝露は全細胞伝導性を増加させた、(ii)RNS60への細胞の曝露は15分間のインキュベーション時間で明らかに、非線形伝導性を増加させた、および(iii)RNS60への細胞の曝露が、カルシウム透過性チャネルに対するRNS60食塩水の効果を生じたことを示した)
要約。本実施例において、本発明の界面動電的に生成された食塩水流体(RNS60およびSolas)の有用性(本明細書に記載される全細胞電流を調節するための有用性を含む)を更に確認するためにパッチクランプ研究を行った。2セットの実験を行った。
第1セットの実験データの概要は、Solas食塩水を用いて得た全細胞伝導性(電流−電圧関係)は、両インキュベーション時間(15分間、2時間)、およびすべての電圧プロトコルに対して、高度に線形であることを示す。しかしながら、Solasを用いた、より長いインキュベーション(2時間)が、全細胞伝導性を増加させたことは明らかである。RNS60への細胞の曝露は、デルタ電流(Rev−Sol減算)に示されるように、非線形伝導性を増加させ、これは、15分間のインキュベーション時間でのみ明らかである。この非線形電流におけるRNS60の効果は消失し、代わりに2時間のインキュベーション時間で高度に線形性である。非線形全細胞伝導性の寄与は、全電圧プロトコルで存在するが、既に観察されたように電圧感受性であった。
第2セットの実験データの概要は、非線形電流に対してRNS60食塩水の効果があることを示し、これは、外液中の高カルシウムにおいて明らかであった。非線形全細胞伝導性の寄与は、電圧感受性ではあるが、両電圧プロトコルにて存在し、カルシウム透過性チャネルに対するRNS60食塩水の効果を示す。
第1セットの実験(伝導性増加および非線形電圧調整された伝導性の活性化)
材料および方法:
気管支上皮細胞株Calu−3をパッチクランプ試験に使用した。Calu−3気管支上皮細胞(ATCC #HTB−55)は、実験時まで、ガラス製カバースリップ上に10%FBSで補充した1:1のHam’s F12とDMEM培地の混合物において増殖させた。簡単に述べると、全細胞電圧クランプ機器を使用して、本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RNS60、60ppmの溶解酸素を含む界面動電的に処理された生理食塩水、場合によっては、本実施例において「薬剤」と称される)に曝露された、Calu−3細胞に対する効果を測定した。
パッチクランプ法を利用して、上皮細胞膜の極性およびイオンチャネル活性に対する試験材料(RNS60)の効果を評価した。具体的には、全細胞電圧クランプは、135mM NaCl、5mM KCl、1.2mM CaCl2、0.8mM MgCl2、および10mM HEPES(N−メチルD−グルカミンでpHを7.4に調整)からなる浸液中で、気管支上皮細胞株Calu−3上で行った。基礎電流は、RNS60が細胞に灌流後に測定した。
より具体的には、パッチピペットは、2段階のNarishige PB−7垂直プラーを用いてホウケイ酸ガラス(Garner Glass Co, Claremont, CA)から引き上げ、次いで、Narishige MF−9マイクロフォージ(Narishige International USA, East Meadow, NY)を用いて、6〜12メガオーム抵抗までファイヤーポリッシュした。ピペットは、135KCl、10NaCl、5EGTA、10Hepes(mM)を含む細胞内液で充填され、NMDG(N−メチル−D−グルカミン)を用いてpHを7.4に調整した。
培養されたCalu−3細胞は、以下の細胞外溶液(mM):135NaCl、5KCl、1.2CaCl2、0.5MgCl2、および10Hepes(遊離酸)を含むチャンバ内に入れ、NMDGを用いてpHを7.4に調整した。
細胞は、Olympus IX71顕微鏡(Olympus Inc.,Tokyo,Japan)の40X DIC対物レンズを使用して観察した。細胞接着型ギガシールを構築後、軽く吸引して全細胞の立体構造を調整して得た。調整直後、細胞を−120、−60、−40、および0mVで電圧クランプし、±100mV間の電圧工程(500ms/工程)で刺激した。対照条件下で全細胞電流を収集後、同一細胞を、上記の対照流体と同一の細胞外溶質およびpHを含む試験流体を用いた浸液により灌流し、異なる保持電位で全細胞電流を同一プロトコルを用いて記録した。
電気生理学的データは、Axon Patch 200B増幅器を用いて取得し、10kHzで低域フィルタリングして、1400A Digidata(Axon Instruments,Union City,CA)を用いてデジタル化した。pCLAMP10.0ソフトウェア(Axon Instruments)を使用してデータを取得し、分析した。電流(I)−電圧(V)関係(全細胞伝導性)は、該工程に、約400ミリ秒で実際の電流値を保持電位(V)に対してプロットして得た。I/V関係の傾きは、全細胞伝導性である。
薬剤および化学物質。指定時は必ず、細胞は、8−Br−cAMP(500mM)、IBMX(イソブチル−1−メチルキサンチン、200mM)、およびホルスコリン(10mM)を含むcAMP刺激カクテルで刺激した。H2O溶液中の25mMストックからcAMP類似体8−Br−cAMP(Sigma Chem.Co.)を使用した。10mMホルスコリンと200mM IBMX原液の両方を含むDMSO溶液からホルスコリン(Sigma)およびIBMX(Sigma)を使用した。得られたデータは、5〜9細胞あたりの平均±SEM全細胞電流として示す。
結果:
図1A〜Cは、2つの時点(15分間(左パネル)および2時間(右パネル))ならびに異なる電圧プロトコル(A.0mVからのステッピング、B.−60mVからのステッピング、C.−120mVからのステッピング)で、上皮細胞膜極性およびイオンチャネル活性に対する界面動電的に生成された流体(例えば、RNS60およびSolas)の効果を評価した、パッチクランプ実験の一連の結果を示す。結果は、RNS60(黒丸)は、Solas(白丸)よりも全細胞伝導性に対する効果が高いことを示す。実験において、同様の結果が、3つの電圧プロトコルならびに15分間および2時間のインキュベーション時点で見られた。
図2A〜Cは、3つの電圧プロトコル(「デルタ電流」))(A.0mVからのステッピング、B.−60mVからのステッピング、C.−120mVからのステッピング)および2つの時点(15分間(白丸)および2時間(黒丸))で、RNS60電流データからSolas電流データを減算して得たグラフを示す。これらのデータは、RNS60を用いた15分間の時点では、2時間の時点に存在しない非線形電位依存性成分があることを示した。
先行実験のように、「生理」食塩水を用いたデータにより、参照として用いた非常に一貫した非時間依存性の伝導性を得た。本結果はSolasまたはRNS60食塩水のいずれかと群を適合させることにより得られ、基礎条件(cAMPなし、または任意の他の刺激なし)下で、RNS60食塩水へのCalu−3細胞の曝露は、時間依存性効果(1つ以上)を作りだし、より短いインキュベーション時間(15分間)で、電圧調節された伝導性の活性化と一致することを示す。この現象は、2時間のインキュベーション時点では明らかではなかった。本明細書の他の箇所で記載される線形成分は、伝導性が、cAMP「カクテル」での刺激により増加する際、更に明らかである。それでもなお、2時間のインキュベーション時間は、RNS60およびSolas食塩水の両方に対してより高い線形伝導性を示し、この場合、RNS60食塩水は、Solas単独と比較して、全細胞伝導性が倍になった。この証拠は、全細胞伝導性への少なくとも2つの寄与、即ち、非線形電圧調整された伝導性および線形伝導性の活性化が、RNS60食塩水により影響を受け、これは、より長い時間のインキュベーション時間で、更に明らかである。
第2セットの実験(カルシウム透過性チャネルに対する効果)
第2セットの実験のための方法:
一般的なパッチクランプ法に関しては、上記を参照されたい。以下の第2セットの実験において、なお更なるパッチクランプ研究を行い、基礎条件下で、Calu−3細胞を使用して、0mVあるいは−120mVのいずれかの保持電位からステッピングするプロトコルを用いて、全細胞電流を調節するために、本発明の界面動電的に生成された食塩水流体(RNS60およびSolas)の有用性を更に確認した。
いずれの場合にも、全細胞伝導性は、いずれかの食塩水を使用して、15分間、インキュベートされた細胞から得た電流−電圧関係から得た。全細胞伝導性へのカルシウム透過性チャネルの寄与があるかどうか、および全細胞伝導性のこの部分が、RNS60食塩水を用いたインキュベーションにより影響を受けるかどうかを決定するために、細胞をインキュベーション時間後に生理食塩水中にパッチした(高NaCl外部溶液を伴うが、内部溶液は高KClを含有する)。次いで、外部食塩水は、NaClをCsClにより置換した溶液と置換し、主要な外部カチオンを置換することにより、伝導性が変化するかどうかを判定した。これらの条件下で、同一細胞を、次いで、カルシウム入力工程が更に明らかとなるようにカルシウム濃度を増加させるように曝露させた。
結果:
図3A〜Dは、異なる外部食塩水を使用して、異なる電圧プロトコル(パネルAおよびCは0mVからのステッピングを示し、パネルBおよびDは−120mVからのステッピングを示す)で、上皮細胞膜極性およびイオンチャネル活性における、界面動電的に生成された流体(例えば、Solas(パネルAおよびB)ならびにRNS60(パネルCおよびD))の効果を評価した、パッチクランプ実験の一連の結果を示す。これらの実験において、15分間の一時点を使用した。Solas(パネルAおよびB)に関して、結果は、1)外部溶液としてNaClの代わりにCsCl(四角印)を使用し、対照(菱形印)と比較した際、線形的に全細胞伝導性が増加したこと;ならびに2)20mM CaCl2(丸印)および40mM CaCl2(三角印)の両方で、CaCl2は、非線形的に全細胞伝導性が増加したことを示す。RNS60(パネルCおよびD)に関して、結果は、1)外部溶液としてNaClの代わりにCsCl(四角印)を使用し、対照(菱形印)と比較した際、全細胞伝導性に対する効果がほとんどなかったこと;ならびに2)40mMでのCaCl2(三角印)は、非線形的に全細胞伝導性を増加したことを示す。
図4A〜Dは、Solas(パネルAおよびB)ならびにRNS60(パネルCおよびD)に対する2つの電圧プロトコル(パネルAおよびC、0mVからのステッピング、BおよびD、−120mVからのステッピング)で、20mM CaCl2(菱形印)および40mM CaCl2(四角印)電流データからCsCl電流データ(図3に示す)を減算して得たグラフを示す。結果は、SolasとRNS60溶液は共に、カルシウム誘発性非線形全細胞伝導性を活性化したことを示す。RNS60(投与量反応性を示す)使用時の効果の方が大きく、RNS60使用時のみ高カルシウム濃度で増加した。更に、高カルシウム濃度では、非線形カルシウム依存性伝導性も電圧プロトコルにより増加した。
この第2セットの実験のデータは、Calu−3細胞中で得られた全細胞伝導性データに対するRNS60食塩水およびSolas食塩水の効果を更に示す。データは、いずれかの食塩水を用いた15分間のインキュベーションは、全細胞伝導性に対する明らかな効果を生じ、これは、RNS60使用時に最も明らかであり、外部カルシウムが増加する際、RNS60食塩水は、全細胞伝導性のカルシウム依存性非線形成分を増加することを更に示す。
蓄積された証拠は、基底細胞伝導性の異なる原因となる、イオンチャネルのRevalesio食塩水による活性化を示唆する。
出願者らの他のデータ(例えば、出願者らの他の実施例データ)を総合すれば、本発明の特定の態様では、膜構造、膜電位もしくは膜伝導性、膜タンパク質もしくは受容体、イオンチャネル、脂質成分、または細胞により置換可能な細胞内成分(例えば、カルシウム依存性の細胞シグナリングシステム等のシグナル経路)の少なくとも1つの調節を含む、細胞内シグナル変換を調節するための組成物および方法を提供し、これには、GPCRおよび/またはGタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない、膜構造(例えば、膜および/もしくは膜タンパク質、受容体、または他の膜成分)の電気化学および/または立体構造の変化を与えるための本発明の界面動電的に生成された溶液の使用を含む。追加の態様によれば、これらの効果は、遺伝子発現を調節し、持続し、例えば、個々の伝達成分等の半減期に依存し得る。
実施例3
(本発明の界面動電流体は、当該技術分野において認識されている多発性硬化症(MS)の急性実験的アレルギー性(自己免疫性)脳脊髄炎(EAE)ラットMBPモデルにおいて、実質的に用量依存的に効果的であることが示された)
要約:
本実施例において、本発明の界面動電流体RNS60を、当該技術分野において認識されているミエリン塩基性タンパク質MBP誘発性の急性実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)ラットモデルにおける、予防投与と治療投与レジメンの両方において2用量で検討した。本発明の界面動電流体RNS60は、実質的に用量依存的に効果的であることが示された。治療(MBP注射との併用から開始するRNS60の連日投与)と予防(MBP注射の7日前に開始するRNS60の連日投与)のRNS60の投与量レジメンは共に、臨床スコアの著しい低下、および発現の遅延(高用量群)を示した。したがって、本発明の特定の態様によれば、本発明の界面動電組成物は、当該技術分野において認識されているヒトMSのラットモデルにおける、EAE症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。したがって、本発明の更なる態様によれば、本発明の界面動電組成物は、罹患している哺乳類(ヒトが好ましい)におけるMS症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。なお更なる態様では、本発明の界面動電組成物は、血液脳関門(BBB)を横断し、このようにして中枢神経系の炎症性状態を治療するための新規の方法を提供した。
多発性硬化症(MS)。多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)の脱髄疾患であり、若者において最も一般的な身体神経障害の1つである。該疾患の主要な特徴は、脱髄および炎症の病巣領域である。疾患経過は予測不能であり、生涯にわたり男性よりも女性に一般的に発症する。疾患の病因は、遺伝的要因と環境要因に依存すると考えられる。抗原は、末端でMCH IIを介して抗原提示細胞(APC)と結合する。Th0細胞は抗原に結合し、活性化および分化させる。接着分子およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、Th1細胞が結合して血液脳関門(BBB)に浸透するのを促進する。CNSへのBBBを横断時、Th1細胞は、抗原−MHC複合体に会合し、炎症性サイトカインを生じ、CNS損傷を引き起こす。自己免疫系は、ミエリンタンパク質を異物として認識し、攻撃し始める。歴史的に、Th1細胞は、疾患の病変において主要な役割を果たすと考えられ、最近の証拠は、Th17細胞、IL−6、およびTGF−βの炎症性カスケードは、EAEおよびMSの発病において、重要な役割を果たすことを示す。
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)。実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)(実験的アレルギー性脳脊髄炎とも称される)は、多発性硬化症(MS)の非ヒト動物モデルである。MSとは異なり、EAEの異なる形態および段階は、多数の方法において、MSの様々な形態および段階に非常に類似している。より具体的には、EAEは、急性または慢性再発性の後天的な炎症性、かつ脱髄自己免疫疾患である。神経細胞(ニューロン)を取り囲む絶縁被覆であるミエリンを生成する、様々なタンパク質(例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG))の全体または一部を動物に注射し、ヒトのMSに非常に類似する動物自身のミエリンに対して自己免疫応答を誘発する。EAEは、多くの異なる動物種(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、マカク、赤毛サル、およびマーモセット等)に誘発されている。様々な理由(免疫学的手段の数、動物のアベイラビリティ、寿命、および繁殖力、ならびにMSへの誘発した疾患の類似性等)から、マウスおよびラットが最も一般的に使用される種である。急性ラットEAEモデルは、強力な炎症性成分を有するため、MSにおける免疫事象を標的とする薬剤の治療可能性を調査するには、適切なモデルである。
MBP誘発性EAE。LewisラットにおけるMPBは1用量後、後足麻痺を主に特徴とする再発を引き起こし得る。0日目、LewisラットにMBPを注射する。疾患は12〜16日目に発症し、18〜21日目に完全な疾患の回復が起こる。モデルは自己限定的であり、脱髄を示さない。
材料および方法:
試験流体(RNS60)の生成および特性化。フィルタ滅菌したRNS60は、米国第2008/0219088号(2008年9月11日に公開)、米国第2008/0281001号(2008年11月11日に公開)、および国際公開特許第2008/052143号(2008年5月2日に公開)に記載される方法に従って、出願者らが調製し、これらのすべては、参照することによりその全体、特に、出願者らの発明の界面動電流体を調製するための装置および/または方法に関するすべての態様が本明細書に組み込まれる。使用したRNS60の溶解酸素(DO)含有量は、ウインクラー滴定法により59ppmと測定された(Y.C.Wong & C.T.Wong.New Way Chemistry for Hong Kong A−Level Volume 4,Page248または、Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater−20th Edition ISBN 0−87553−235−7)。RNS60流体には、試験アイテム(TI)番号、受理日、保存条件、および使用期限を示すラベルを付けた。RNS60の保存条件および取り扱いは、試験中、試験施設で安定性を確保するために出願者らの明細書に準じた。流体は、使用していない間は、2〜8℃で冷蔵保存した。流体を含むバイアルは使い捨て容器として使用した。
ビヒクル対照流体。ビヒクル対照流体は、Hospira製の注射用生理食塩水(0.9%)であった。
デキサメタゾン。デキサメタゾンは、Sigmaから購入した(Cat番号D1756、ロット番号096K1805)。投与用に、デキサメタゾン(白色粉末)は、1mg/mlの濃度に達するようにエタノール溶液で希釈し、次いで、0.1mg/mlの用量濃度に達するように蒸留水で再度希釈した。
EAE誘発アイテム:
MBP抗原剤。MBPは、モルモット由来のミエリン塩基性タンパク質(Des−Gly−77、Des−His−78)−MBP(68−84);Cat番号H−6875;MD Bioscienceにより供給)であった。MBPは2mg/mlの濃度で、生理学的食塩水に溶解させた。
CFA感作剤。完全フロインドアジュバント(CFA)は、MD Biosciences Division of Morwell Diagnostics GmbH製(Cat番号IMAD−4)であった。4mg/mlの濃度で、熱殺菌されたヒト型結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)H37 Raを含むCFA懸濁液を、供給されたように使用し、および
MBP/CFA乳剤(抗原/感作剤)。試験0日目に行った単一接種の前に、1容量のMBP溶液を、ルアーフィッティングにより接続された2本の注射器を利用することにより等容量のCFA 4mg/mlと混合し、100μl/動物の総用量と等量になるように、乳剤混合物を完全に混合した。用量は、足底内注射領域に、2×50μlの皮下(SC)両側注射として送達した。
試験動物、ラット。60匹の雌Lewisラット(試験開始時、6〜7週齢)を、Harlan Laboratories Israel, Ltdから得た。処置開始時の動物の体重偏差は、平均体重の20%以下とする。本試験に使用した動物の健康状態は、到着時に検査する。健康状態の良好な動物のみを、実験室条件に順化させ、本試験に使用した。試験開始前に、動物は、少なくとも5日間、順化させた。順化中および試験期間を通して、制限付きでアクセスできるげっ歯類施設内に動物を収容し、固体底部を取り付け、寝床材料として滅菌した木屑を敷床したポリプロピレンケージに、最高5匹のラットの群で飼育した。動物は、市販のげっ歯類用の食餌で不断給餌し、ステンレス製給水管でポリエチレンボトルを介して各ケージに供給した飲料水に自由にアクセスさせた。本試験で使用した食餌バッチのフィードロット分析を、試験データと共にアーカイブに収めた。水は定期的にモニタリングした。自動制御した環境条件は、20〜24℃の温度で、30〜70%の相対湿度(RH)で、12:12時間の明:暗サイクル、および試験室内の15〜30換気/時を維持するように設定した。温度およびRHは、連日モニタリングした。明サイクルは、制御時計によりモニタリングした。動物は、尾標識を使用して独自の動物識別を行った。この番号はまた、各ケージの前で見えるようにケージカードにも表示した。ケージカードはまた、試験および群番号、投与経路、性別、系統、および処置群におけるすべての他の関連する詳細も含まれた。
急性EAEマウスモデルの試験手順および原則。実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症(MS)の多くの臨床的および病理学的特徴を模倣する、中枢神経系(CNS)自己免疫脱髄疾患である。急性ラットモデルは感作期間からなり、試験0日目に完全フロインドアジュバント(CFA)で乳化したミエリン塩基性タンパク質(MBP)の単一皮下(SC)注射により誘発される。
EAE誘発および処置レジメンの概略図を図6)に示す。
EAE誘発:
MBP/CF A。図6)の概略図に示されるように、全動物は、試験0日目(試験開始)に、MBPとCFAのホモジネート乳剤混合物(MBP/CFA脳炎誘発性乳剤接種材料(100μgMBP/200μgCFA)を100μl/動物の総用量で注射し、足底内注射領域に、2×50μl皮下(SC)両側注射として送達した)からなる単一接種を行った。
処置:
処置レジメンおよび手順。すべての化合物を、動物採点者とは別の者が連日新しく調製した。動物採点者は、群番号のみ記されたバイアルを受容し、処置は知らされなかった。
投与経路:(i)RNS60(IV)、(ii)ビヒクル対照:(IV)、および(iii)陽性対照:(IP)。
用量値および投与容量:(i)RNS60:350gに対して低用量2ml、350gに対して高用量4ml、(ii)ビヒクル対照:0、および(iii)陽性対照(デキサメタゾン):1mg/kg。
支援ケア。試験経過中に判定されない場合、EAE実験的効果が予想および/または観察される(単一の脳炎誘発性接種から約8〜12日後)、または動物が、前回の判定から15%超の体重減少または初回体重測定から20%超減少を示す場合、状況に応じて適切な支援ケアを行った。
給餌および給水。飲料水に浸した細断ペレットまたは粉状のげっ歯類用食餌からなる追加の水源を、ケージの底で、腹這い/移動しない動物の前に置く。
脱水。動物には、体重が、初回判定の10%以内に回復するまで、少なくとも1日2回、最大2ml/動物/日まで、デキストロース5%溶液による皮下(SC)補充流体療法を行い得る。
排尿。排尿を促進するため、および動物が膀胱を空にすることができるかどうかを観察するために動物腹部の触診を行う。
他の特別なケア。必要に応じて、動物の肛門周囲領域および後足を湿潤ガーゼパッドで清潔にした。
観察および検査:
臨床的徴候。全21日間の試験を通して、EAE臨床スコア採点および評価(以下を参照)に加えて、精密な臨床検査を少なくとも1日1回行い、記録した。観察項目は、皮膚、毛、目、粘膜の変化、分泌および排泄の発生(例えば、下痢)、ならびに自律神経活動(例えば、流涙、唾液分泌、立毛、瞳孔サイズ、異常な呼吸パターン)、歩行、姿勢および処置への反応、ならびに異常行動の存在、振戦、痙攣、睡眠および昏睡等であった。
体重。体重減少は疾患発症時の最初の徴候である可能性があるが、突然の著しい体重増加は、EAE症状の回復に伴って起こる傾向がある。したがって、動物の個々の体重測定は、試験0日目(試験開始)におけるEAE誘発直前に行い、その後、全21日間の観察期間を通して連日行った。
EAE臨床スコア採点および評価。初めに、全動物は、EAE誘発前(試験0日目)の任意の神経学的な反応の徴候および症状について検討し、その後、全21日間の観察期間を通して、連日検討した。実験的バイアスを避けるために、EAE反応は、盲検的に、できる限り、適用した具体的な処置を知らされていない部員により判定する。EAE反応は、下の表6に示されるように、重症度の昇順に、古典的な、当該技術分野において認識されている従来の0〜5の等級に従って、採点し、記録した。
血液サンプル。試験終了日(21日目)、注射してから1時間後に全動物を採血した。サンプルは、試験0日目(予防群のみ)、7日目、14日目、21日目に収集した。血漿は、ヘパリン化されたバイアル中に採取し、−20℃で維持した。300μl容量を血球数分析用に保存し、100μlをLuminex Technologyを介した更なるサイトカイン分析用に保存して使用した。血球数は、0日目、7日目、14日目、および21日目に分析した。
組織収集。試験終了時、動物を4%PFAで灌流した。脳および脊髄を収集して4%PFA中に保持した。
安楽死。瀕死状態が認められる動物および/または激痛を示して重度の苦痛徴候が永続的である動物は、人道的に安楽死させた。
統計学的/データ評価:
評価は、主として、すべての処置群をビヒクル対照群と比較して得られた、絶対値、変化割合(%)、および平均群値として表される、神経学的症状および体重の両方の記録された相対的変化に基づいた。適切な統計学的方法によるデータ分析を適用して、処置効果の有意性を判定した。
動物ケアおよび使用記述:
本試験は、適切な実験動物のケアおよび使用における道義的行為のための委員会(Committee for Ethical Conduct in the Care and Use of Laboratory Animals)に、本試験が規則に準拠している旨の申請書を提出して承認された後に行った。
結果:
試験結果を、時間(MBP注射してからの日数)をX軸に、「臨床スコア」(上の「材料および方法」の項を参照されたい)をY軸に示した図5に示す。
図5は、本発明の界面動電流体(RHS60)は、多発性硬化症(MS)の当該技術分野において認識されている実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)ラットモデルにおいて、実質的に効果的であったことを示す(上の「材料および方法」の項を参照されたい)。
具体的には、17日間にわたるビヒクル対照群(黒菱形)と比較して、治療(MBP注射との併用から開始するRNS60の連日投与)と予防(MBP注射の7日前に開始するRNS60の連日投与)のRNS60の投与量レジメンは共に、臨床スコアの著しい低下、および発現の遅延(高用量群)を示した。
低用量(1日1回cc注射)RNS60治療群の臨床スコアは、ビヒクル対照群のスコアの約2分の1(1/2)であり、一方、高用量(1日2回cc注射)RNS60治療群の臨床スコアは、ビヒクル対照群のスコアの約5分の1(1/5)〜10分の1(1/10)であっただけでなく、発現の遅延も示した。
低用量(1日1回cc注射)RNS60予防群の臨床スコアは、ビヒクル対照群のスコアの約3分の1(1/3)であり、一方、高用量(1日2回cc注射)RNS60予防群の臨床スコアは、16日目まで0(臨床スコア検出不能)であり、それにより発現の実質的な遅発を示しただけでなく、17日目で観察可能な場合、同時点でのビヒクル対照群のスコアの10分の1(1/10)未満であった。
したがって、本発明の特定の態様によれば、本発明の界面動電組成物は、当該技術分野において認識されているヒトMSのラットモデルにおける、EAE症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。
実施例4
(本発明の界面動電流体は、当該技術分野において認識されている多発性硬化症(MS)の急性実験的アレルギー性(自己免疫性)脳脊髄炎(EAE)ラットMBPモデルにおいて、ラット体重を維持する上で効果的であることが示された)
要約:
本実施例において、実施例7に記載の実験を行ったラットの体重変化を開示する。体重減少は、疾患発症時の最初の徴候である可能性があるが、突然の体重増加は、EAE症状の回復を伴う傾向がある。したがって、動物の各体重を、試験0日目(試験開始)のEAE誘発直前、および21日間の観察期間を通して連日測定した。本発明の界面動電流体RNS60の体重に対する効果は、EAEラットモデルに供したラットの体重を維持する上で効果的であることが示された(図7)。
体重データ:
図7は、グラム(パネルA)および割合(パネルB)(100グラムに基づく)で示した体重を示す。本実施例において、処置した動物の平均体重がわずかに減少後、平均体重は増加し始め、試験終了時まで増加し続けた。試験終了時、ビヒクル処置動物(1F群)の平均体重は20%増加した。試験を通して、試験0日目に投与開始したデキサメタゾン処置群(2F群)の平均体重は試験中に10%減少した。試験終了時、デキサメタゾン処置動物の平均体重は2%減少した。低用量の予防処置群(3F群)は、試験1〜3日目で最大4%の平均体重減少を示してから、試験終了日まで平均体重は23%増加した。高用量の予防処置群(4F群)は、試験1〜3日目で最大5%の平均体重減少を示してから、試験終了日まで平均体重は28%増加した。低用量の治療処置群(5F群)は、試験1〜3日目で最大4%の平均体重減少を示してから、試験終了日まで平均体重は21%増加した。高用量の治療処置群(6F群)は、試験1〜3日目で最大4%の平均体重減少を示してから、試験終了日まで平均体重は19%増加した。
したがって、本発明の界面動電流体RNS60は、EAEラットモデルに供したラットの体重を維持する上で効果的であることが見出された。
したがって、本発明の特定の態様によれば、本発明の界面動電組成物は、当該技術分野において認識されているヒトMSのラットモデルにおける、EAE症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。
実施例5
(本発明の界面動電流体は、当該技術分野において認識されている多発性硬化症(MS)の急性実験的アレルギー性(自己免疫性)脳脊髄炎(EAE)ラットMBPモデルに供したラットから採取した血液サンプルの白血球、好中球、およびリンパ球値に対してほとんど効果がなかったことを示した)
要約:
本実施例は、実施例7に記載の実験中にラットから採取した血液サンプルの白血球、好中球、およびリンパ球値を開示する。出願者らは、サイトカイン値変化が白血球の全体的な変化に起因するかどうかを決定するために、EAE実験を行ったラットから実験を通して血液サンプルを採取した。
白血球、好中球、およびリンパ球値:
図8A〜Dは、EAE実験を通して収集した血液サンプルの白血球、好中球、およびリンパ球値を示す。
試験0日目(パネルA)、7日目(パネルB)、14日目(パネルC)および21日目(パネルD)に試験アイテムを投与してから1時間後の白血球(WBC)、好中球およびリンパ球を算出した。試験7日目、動物をビヒクルで処置してから1時間後の最大WBC数は、8.23±0.36点であった。デキサメタゾン処置により平均WBC数はビヒクルと比較して2.46±0.38点に有意に低減した(p<0.05)。試験アイテム低用量の治療処置群(5F群)の平均WBC数はビヒクルと比較して9.59±0.46点に有意に増大した(p<0.1)。試験アイテム高用量の治療処置群(6F群)の平均WBC数はビヒクルと比較して10.84±0.88点に有意に増大した(p<0.05)。
試験14日目、動物をビヒクルで処置してから1時間後の最大WBC数は、6.34±0.28点であった。デキサメタゾン処置により平均WBC数はビヒクルと比較して3.79±0.69点に有意に低減した(p<0.05)。試験アイテム高用量の予防処置群(4F群)の平均WBC数はビヒクルと比較して7.83±0.51点に有意に増大した(p<0.05)。試験アイテム低用量の治療処置群(5F群)の平均WBC数はビヒクルと比較して7.65±0.52点に有意に増大した(p<0.05)。試験アイテム高用量の治療処置群(6F群)の平均WBC数はビヒクルと比較して8.05±0.43点に有意に増大した(p<0.05)。試験21日目、動物をビヒクルで処置してから1時間後の最大WBC数は、9.09±0.75点であった。デキサメタゾン処置により平均WBC数はビヒクルと比較して5.12±0.57点に有意に低減した(p<0.05)。
試験7日目、動物をビヒクルで処置してから1時間後の最大好中球数は、26.20±1.62点であった。デキサメタゾン処置により平均好中球数はビヒクルと比較して65.38±4.62点に有意に増大した(p<0.05)。試験アイテム高用量の予防処置群(4F群)の平均好中球数はビヒクルと比較して31.90±0.96点に有意に増大した(p<0.05)。試験アイテム高用量の治療処置群(6F群)の平均好中球数はビヒクルと比較して33.90±2.79点に有意に増大した(p<0.05)。
試験14日目、動物をビヒクルで処置してから1時間後の最大好中球数は、33.00±2.58点であった。デキサメタゾン処置により平均好中球数はビヒクルと比較して73.10±3.15点に有意に増大した(p<0.05)。
試験21日目、動物をビヒクルで処置してから1時間後の最大好中球数は、41.40±2.32点であった。デキサメタゾン処置により平均好中球数はビヒクルと比較して89.33±1.97点に有意に増大した(p<0.05)。試験アイテム高用量の治療処置群(6F群)の平均好中球数はビヒクルと比較して34.60±3.08点に有意に低減した(p<0.1)。
試験7日目、ビヒクルで処置してから1時間後の最大リンパ球数は、73.20±1.95点であった。デキサメタゾン処置により平均リンパ球数はビヒクルと比較して30.63±1.31点に有意に低減した(p<0.05)。試験アイテム高用量の予防処置群(4F群)の平均リンパ球数はビヒクルと比較して68.30±1.42点に有意に低減した(p<0.1)。試験アイテム高用量の治療処置群(6F群)の平均リンパ球数はビヒクルと比較して64.80±3.00点に有意に低減した(p<0.05)。
試験14日目、ビヒクルで処置してから1時間後の最大リンパ球数は、66.10±2.53点であった。デキサメタゾン処置により平均リンパ球数はビヒクルと比較して26.80±3.23点に有意に低減した(p<0.05)。
試験21日目、ビヒクルで処置してから1時間後の最大リンパ球数は、57.50±2.09点であった。デキサメタゾン処置により平均リンパ球数はビヒクルと比較して10.11±2.08点に有意に低減した(p<0.05)。試験アイテム高用量の治療処置群(6F群)の平均リンパ球数はビヒクルと比較して66.20±2.74点に有意に増大した(p<0.05)。
したがって、試験7日目に、予防的および治療的に高用量投与した本発明の界面動電流体RNS60はビヒクルと比較して好中球数を有意に増大し、リンパ球数を有意に低減した。試験14日目に、予防的に高用量投与した、および治療的に両用量投与した本発明の界面動電流体RNS60は、ビヒクルと比較してWBC数を有意に増大した。試験21日目に、治療的に高用量投与した試験アイテムRNS60は、ビヒクルと比較して好中球数を有意に低減し、リンパ球数を増大した。したがって、本発明の界面動電流体RNS60は、WBC、好中球、およびリンパ球の全体的な値に対してほとんど影響を及ぼさないことが見出された。
実施例6
(本発明の界面動電流体は、当該技術分野において認識されている多発性硬化症(MS)の急性実験的アレルギー性(自己免疫性)脳脊髄炎(EAE)ラットMBPモデルに供したラットから採取した血液サンプルのあるサイトカイン値に対して影響を及ぼすことが示された)
要約:
本実施例は、実施例7に記載のように実験中にラットから採取した血液サンプルに見出されたサイトカイン値を開示する。実施例7に記載のように、本発明の界面動電流体RNS60を治療投与レジメンで評価した。本発明の界面動電流体RNS60は、EAEラットモデルに供したラットから採取した血液サンプルのあるサイトカイン値に影響を及ぼすことが示された。
あるサイトカインは、多発性硬化症において役割を有することが示されている。特にインターロイキン17(IL−17)(CTLA−8またはIL−17Aとしても知られている)値は、急性および慢性EAEの中枢神経系において上昇していることが示されている(Hofstetter, H. H., et al., Cellular Immunology (2005), 237: 123−130)。IL−17は、様々な非免疫細胞から他の広範囲のサイトカイン分泌を刺激する炎症性サイトカインである。IL−17はIL−6、IL−8、PGE2、MCP−1およびG−CSF分泌を接着細胞(線維芽細胞、ケラチン生成細胞、上皮細胞および内皮細胞等)により誘発でき、照射した線維芽細胞の存在下で共培養時にICAM−1表面発現、T細胞増殖、ならびにCD34+ヒト前駆体の増殖および好中球への分化も誘発可能である(Fossiez et al., 1998, Int.Rev.Immunol. 16, 541−551)。IL−17は、大部分が活性化記憶T細胞に産生され、遍在的に分布する細胞表面受容体(IL−17R)に結合することにより作用する(Yao et al., 1997, Cytokine, 9, 794−800)。IL−17のいくつかの相同物は、炎症反応調節において類似した役割を有するものと異なる役割を有するものの両方が同定されている。IL−17サイトカイン/受容体ファミリーの概説については、Dumont, 2003, Expert Opin. Ther. Patents, 13, 287−303を参照されたい。
IL−17は、異常免疫応答(関節リウマチおよび気道炎症等)、ならびに臓器移植拒絶反応および抗腫瘍免疫媒介性疾患の一部を引き起こし得る。IL−17活性阻害薬は当該技術分野において周知である(例えばIL−17R):Fc融合タンパク質がコラーゲン誘発性関節炎におけるIL−17の役割を示すために使用され(Lubberts et al., J. Immunol. 2001,167, 1004−1013)、中性ポリクローナル抗体が腹膜癒着形態を減らすために使用されている(Chung et al., 2002, J. Exp. Med., 195, 1471−1478)。中性モノクローナル抗体は市販されている(R&D Systems UK)。
したがって、MS発症原因において果たすIL−17の役割に基づき、本発明の界面動電流体RNS60は、EAE試験においてラットから採取した血液サンプルのIL−17値に対して有する効果を出願者らは評価した。
サイトカインデータ:
様々な血中サイトカイン値を試験中に分析した。簡単に述べると、全動物は、注射してから1時間後採血され、ヘパリン化されたバイアル中に血漿を収集した。同サンプルの複数サイトカインの同時測定を可能とするLuminex Technology(Panomics製ProcartaラットサイトカインアッセイキットPC4127を使用)を介して100μlサンプルの様々な炎症性サイトカインを分析した。非ガウス的分散データおよび予備結果値がアッセイ検出閾値未満であったため、打ち切りデータのノンパラメトリックコックス回帰モデルを適用して異なる流体を比較した。図9A〜Hに示すように、IL1a、IL1b、およびIL17値はRNS60の治療処置用量(高用量と低用量)の両用量により最も顕著に低下した。MBP誘発性EAEの臨床的症状は10日目頃に発症し、18日目頃にピークとなる。したがって、我々は、7日目(疾患症状の直前)および18日目(疾患ピーク前後)がサイトカイン分析に最も重要な時点とみなした。7日目および18日目の動物(1群10匹)由来の組織中IL1a値、IL1b値およびIL17値を図9A〜Hに示す。
IL−1は主な炎症性サイトカインの1つであり、先天性免疫応答の上流メディエイターである。IL−1は陽性フィードバック・ループを用いるのと同様に、様々な増殖および栄養因子、炎症性メディエイター、接着分子ならびに他のサイトカインの産生を直接および間接的に誘発する(A. Basu et al.)。1型インターロイキン−1受容体は、脳損傷に対する反応においてミクログリアの効果的な活性化および複数の炎症性メディエイター誘発に必須である(J. Neurosci. 22 (2002), pp. 6071−6082; P.N. Moynagh, The interleukin− 1 signaling pathway in astrocytes: a key contributor to inflammation in the brain, J. Anat. 207 (2005), pp. 265−269)。これらは重要な調節因子(NGF、ICAM1、IL6、TNFα、CSF等)を含む。MS進行は、末梢中の自己抗原反応T細胞の活性化、その後のCNS内浸出に関与する。IL−1は、ミエリン特異的T細胞活性化に関与するだけではなく、末梢中マクロファージ活性化の主要メディエイターも表すため、MS発症において重要である[R. Furlan et ah, HSV−1 −mediated IL−1 receptor antagonist gene therapy ameliorates MOG(35−55)−induced experimental autoimmune encephalomyelitis in C57BL/6 mice, Gene Ther. 14 (2007), pp. 93−98))。MSのEAEモデルにおいて、IL−1αとIL−1βは共に炎症過程のメディエイターであることが示されている。EAEにおけるCNS浸潤マクロファージおよび常在ミクログリア細胞内の末梢IL−1β値は臨床経過と相関し、IL−1β反応性が示されている((C.A. Jacobs et ah, Experimental autoimmune encephalomyelitis is exacerbated by IL−1 alpha and suppressed by soluble IL−1 receptor, J. Immunol. 146 (1991), pp. 2983−2989))。したがって、IL−1は、EAEおよびMSにおける適切な治療標的である。IL−1の非選択的阻害機序は、既存のMS治療薬(インターフェロンβ、抗炎症性グルココルチコイド、免疫抑制剤、アトルバスタチンおよびω3多価不飽和脂肪酸)中に示されている[F.L. Sciacca et ah, Induction of IL−1 receptor antagonist by interferon beta: implication for the treatment of multiple sclerosis, J. Neurovirol. 6 (Suppl. 2) (2000), pp. S33−S37. ; R. Pannu et ah, Attenuation of acute inflammatory response by atorvastatin after spinal cord injury in rats, J. Neurosci. Res. 79 (2005), pp. 340−350; A.P. Simopoulos, Omega−3 fatty acids in inflammation and autoimmune diseases, J. Am. Coll. Nutr. 21 (2002), pp. 495−505))。図9C〜Fに示すように、RNS60のIV投与は、組織中のIL1α値とIL1β値の両方を効果的に低減する。IL1αについて、RNS60処置は血中値をビヒクル処置群と比較して有意に低下させ、この時点でデキサメタゾンと同等に効果的であった。しかしながら18日目の時点で、本処置は組織中IL1α値に対して有意な効果がなかった。組織中IL1β値もまた、RNS60のIV処置から7日後にデキサメタゾン処置群値と同等値まで有意に低減し、いずれの毒性副作用徴候もなかった。18日目の時点で同様の傾向が認められたが、対照群との間に統計学的有意差はなかった。IL−17はまた、強力な炎症効果を有する重要なエフェクターサイトカインでもある。IL−17は他の炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子−αおよびケモカイン)発現を誘発し、好中球性白血球を引き付け、樹状細胞成熟を促進する(Kolls JK, Linden A.Interleukin−17 family members and inflammation.Immunity. 2004 Oct;21(4):467−76)。IL−17産生細胞は、自己免疫性疾患(コラーゲン誘発性関節炎、大腸炎、乾癬、およびEAE等)に必須の炎症性メディエイターであると考えられる。EAEにおけるTヘルパー17細胞はCD4+細胞であり、それらはEAEにおける免疫末梢中と炎症性中枢神経系の両方に存在する。更に、IL−17中性化は臨床的疾患を緩和し、本所見はIL−17欠損動物におけるEAE重症度低下のと並行する((Gold and Liihder, Interleukin−17− Extended Features of a Key Player in Multiple Sclerosis Am J Pathol. 2008 January; 172(1): 8−10.)。RNS60による7日間のIV治療は血中IL17値を有意に低減し、再びデキサメタゾン処置動物と同等値に戻った。処置18日後でも同様の事象が生じたが、結果に統計学的有意差は認められなかった。RNS60は、EAEにおいて、IL1値のみならず、2つの重要サイトカインであるIL1とIL17の組み合わせの低下においても効果的であり、IV注射21日後でも著しい毒性副作用は認められなかった点に留意することが重要である。
IL1とIL17の他に、神経系の炎症において重要な役割を果たす他のいくつかの分子もまた、RIS60により調節される。これらの分子としては、Rantes、KC、NGFおよびICAMが挙げられる(データは示さず)。
したがって、本発明の界面動電流体RNS60は、EAE試験においてラットから採取した血液サンプルのIL−17値に対して有意な効果を有した。加えて、IL−17はIL−6、IL−8、PGE2、MCP−1およびG−CSF分泌を刺激するため、本発明の界面動電流体RNS60は、これらの血中サイトカイン値に対して有意な効果を有すると思われる。したがって、本発明の特定の態様によれば、本発明の界面動電組成物は、当該技術分野において認識されているヒトMSのラットモデルにおける、EAE症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。
実施例7
(本発明の界面動電流体(例えば、RNS60)は、iNOSとIL−1βの両発現をミクログリア細胞内で用量依存的に阻害することを示した)
要約:
本明細書に記載される特定の態様によれば、本発明の界面動電流体は、パーキンソン病(PD)の治療のために実質的な有用性を有する。
パーキンソン病(PD)は、ヒトにおいて最も破壊的な神経変性障害の1つである。PDは任意の年齢で生じ得るが、30歳未満の者には一般的ではない。臨床的に、PDは振戦、動作緩慢、硬直および不安定な姿勢を特徴とする。病理学的に、PDは、黒質緻密部(SNpc)中の細胞質内封入体(レヴィー小体)の存在と関連するドーパミン作動系ニューロンのグリオーシスおよび進行的変性を示す。検視したPD脳でのニューロン死は、アポトーシスの形態的な特徴(細胞収縮、クロマチン凝縮物、およびDNA分裂等)を示すことが報告されている。したがって、疾患進行を中断させる効果的な神経保護治療アプローチの開発が最も重要である。MPTPマウスモデルは検査のために実質的な有用性を有し、PDに対して立証された治療アプローチである。
ミクログリア活性化は、パーキンソン病(PD)ならびに他の神経変性障害の発症原因において重要な役割を果たす。特定のPD特徴は、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)中毒動物においてモデル化される。MPTPの神経中毒作用は、MPP+への変換によって異なる。グリア細胞において、モノアミンオキシダーゼB(MAO−B)はMPTPをMPP+に変換し、MPP+は次いでグリア細胞を活性化する。最近では、MPP+はミクログリアにおいて炎症性分子の発現を誘発することが示されている。加えて、MPP+はドーパミン作動系ニューロンのアポトーシスを引き起こす。
本実施例では、MPP+刺激したミクログリア細胞内の炎症性分子発現を調節するRNS60の能力を確認した。
材料および方法:
簡単に述べると、マウスBV−2ミクログリア細胞を各種濃度のRNS60および生理食塩水(NS)で1時間インキュベートし、その後、血清を含まない条件下で2μΜ MPP+で刺激した。6時間後、総RNAを単離して、iNOSおよびIL−1βのmRNAを半定量RT−PCRにより測定した。データは、3つの独立した実験を表す。
結果:
図10の半定量RT−PCR分析に証されるように、MPP+単独はマウスBV−2ミクログリア細胞内で誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)およびインターロイキン−1β(IL−1β)mRNA発現を誘発した。注目すべきことに、RNS60は、ミクログリア細胞内でiNOSとIL−1βの両発現を用量依存的に阻害した(図10)。一方、類似実験条件下にて、対照の生理食塩水(NS)はこれら2つの炎症性遺伝子発現に対して効果がなく(図10)、効果の特異性が示された。
具体的には、図10は、本発明の界面動電流体(RNS60)は、対照生理食塩水(NS)とは異なり、マウスミクログリア細胞内における誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)およびインターロイキン−1β(IL−1β)のMPP+誘発性発現を軽減することを示す。BV−2ミクログリア細胞を血清を含まない培地内で各種濃度のRNS60および生理食塩水(NS)で1時間プレインキュベートし、MPP+(パーキンソン毒素)で刺激した。刺激してから6時間後、総RNAを単離して、iNOSおよびIL−1βのmRNA発現を半定量RT−PCR分析した。結果は、3つの独立した実験を表す。
したがって、MPP+はパーキンソン毒素であるため、特定の態様によれば、これらの結果は、RNS60は当該技術分野において認識されている、MPTP誘発性パーキンソン病マウスモデルにおいて保護効果を有することを示す。
特定の態様によれば、本発明の界面動電流体は、パーキンソン病(PD)の治療のために実質的な有用性を有する。
実施例8
(本発明の界面動電流体(例えば、RNS60)は、神経細胞およびヒト一次ニューロンをアミロイドβ毒性から保護することを示した)
要約:
本明細書に記載される特定の態様によれば、本発明の界面動電流体は、アルツハイマー病(AD)の治療のために実質的な有用性を有する。
アルツハイマー病(AD)は、進行性ニューロン死および記憶喪失に至る神経変性障害である。検視したAD脳におけるTUNEL染色増加は、AD患者の脳内のニューロンがアポトーシスにより死すことを示す。原線維アミロイドβペプチドはADの病態生理学に関与する。神経病的に、該疾患は、アミロイドβ(Αβ)タンパク質凝集、アミロイド前駆体タンパク質由来の40〜43アミノ酸タンパク質分解断片、およびリン酸化タウからなる神経原線維のもつれおよび神経突起プラークを特徴とする。トランスジェニックマウスにおける細胞内のΑβペプチド過剰発現は、クロマチンセグメント、凝縮物、およびTUNEL染色増加を引き起こすことが見出されている。また、細胞培養試験により、Αβペプチドはニューロン細胞に対してアポトーシスおよび細胞毒性であることも示されており、Αβ原線維l−42ペプチドはニューロン細胞のアポトーシスを誘発できることが示されている。
更に、炎症とAD間の関連性の特性化を目的とする試験が増えつつあり、広範囲のグリア活性化がプラークおよびもつれ周辺に見出されている。
本実施例では、ヒトSHSY5Y神経細胞およびヒト一次ニューロンのΑβ(l−42)誘発性アポトーシスを阻害するRNS60の効果を確認した。
材料および方法:
CalBiochemから市販されているキット(TdT FragEL(商標登録))を用いて、SHS5Yヒトニューロン細胞のDNA断片を、Αβ原線維l−42反応において生成されたDNA断片3’−OH端に対する末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)媒介結合により原位置で検出した。簡単に述べると、カバースリップを20μg/mlプロテイナーゼKで15分間室温で処置し、TdT染色前に洗浄した。既に記載のようにニューロンを単離して、培養した(1、2)。
結果:
図11AおよびBに示したように、Αβ原線維l−42ペプチドは、ニューロン細胞のアポトーシス体形成を著明に誘発した。我々はまた、Αβl−42処置後にニューロン過程損失も観察した(2列目;図11A)。対して、逆ペプチドΑβ42−1はニューロンアポトーシスおよび過程損失を誘発し損ねた(3列目;図11A)。注目すべきことに、試験した各種用量のRNS60は、Αβ(l−42)誘発性アポトーシスを著明に阻害し、ニューロン細胞過程を保持した(4列目、5列目および6列目;図11AおよびB)。一方、対照の生理食塩水流体(NS)はΑβ(l−42)誘発性アポトーシスおよび過程損失に対して効果がなかった(7列目および8列目;図11A)。
具体的には、図11Aは、RNS60が対照の生理食塩水(NS)とは異なり、ヒトSHSY5Yニューロン細胞のΑβ原線維(l−42)媒介性アポトーシスを抑制することを示す。分化後、SHSY5Y細胞を各種濃度のRNS60またはNSのいずれかで1時間インキュベートし、その後1μΜのΑβ原線維(l−42)ペプチドで損傷させた。処置から18時間後、TUNEL(Calbiochem)により、アポトーシスをモニタリングした。Αβ(42−1)ペプチドも対照としてインキュベートした。結果は、3つの独立した実験を表す。
加えて、図11Bの2列目および3列目は、RNS60がヒト一次ニューロンのΑβ原線維(l−42)媒介性アポトーシスを抑制することを示す。ニューロンをRNS60で1時間インキュベートし、その後1μΜのΑβ原線維(l−42)ペプチドで損傷させた。処置から18時間後、TUNEL(Calbiochem)により、アポトーシスをモニタリングした。Αβ(42−1)ペプチドも対照としてインキュベートした。結果は、3つの独立した実験を表す。
これらの結果は、ADの病因的試薬(Αβ原線維l−42)がRNS60感受性経路を介してニューロンのアポトーシスを誘発し、RNS60が培養ニューロンと一次ニューロンの両方にて原線維誘発性アポトーシスを強く阻害できることを示す。
特定の態様によれば、本発明の界面動電流体は、アルツハイマー病(AD)の治療のため、および好ましい態様では、AD進行の予防または遅発化のために実質的な有用性を有する。
実施例9
(本発明の界面動電流体は、当該技術分野において認識されている多発性硬化症(MS)のマウスMOGモデルの臨床スコアの低下において実質的に用量依存的に効果的であることが示された)
要約:
本実施例において、本発明の界面動電流体RNS60を、当該技術分野において認識されている多発性硬化症(MS)の実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)マウスMOGモデルにおいて、治療投与レジメンの2用量で評価した。
材料および方法:
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症(MS)の多くの臨床的および病理学的特徴を模倣する、中枢神経系(CNS)自己免疫脱髄疾患である。マウスMOGモデルは、感作期間からなり、試験0日目に完全フロインドアジュバント(CFA)において乳化されたMOGの単一皮下(SC)注射により誘発される(200μg MOG/300μg CFAを総容量200μl/動物注射し、側腰領域全体に2×100μl皮下両側注射として送達した);その後、試験0日目のEAE誘発時に1回、および48時間後の試験2日目、百日咳毒素(PT)20μg/kg(約400ng/マウス)を腹腔内(IP)注射する腹腔内(IP)補助的免疫刺激を行った(Gilgun−Sherki Y. et al., Neurosciences Research 47:201−207, 2003)。次いで動物を図12に示されるようにRNS60IV注入処置した。使用した動物は、Harlan Laboratories Israel, Ltdから得た雌C57BL/6Jマウス(動物1群10匹);若い成体;8〜9週齢(試験開始時)であった。
全動物は、EAE誘発前(試験0日目)の神経学的な反応の徴候および症状について評価し、その後、35日間の観察期間を通して、連日評価した。EAE反応は、重症度の昇順に、当該技術分野において認識されている0〜15の等級に従って、採点し、記録した。臨床スコアは、各項目スコアを加算して決定した(例えば、Weaver et al., FASEB 2005; The FASEB Journal express article 10.1096/fj.04−2030fje.(2005年8月4日にオンライン公開)を参照されたい)。
結果:
図12は、RNS60がビヒクル対照(ビヒクル)とは異なり、当該技術分野において認識されている、多発性硬化症(MS)のマウスMOGモデルにおいて臨床スコア抑制に実質的に用量依存的に効果的であることを示す。RNS60高用量および低用量の両用量の治療的連日投与、ならびにRNS60高用量の3日ごとの投与を行い(RNS60投与は、最初の臨床的徴候の発現時に開始)、臨床スコアの著明な低下を示した(白菱形=ビヒクル対照;白四角=デキサメタゾン陽性対照;明色「×」=低用量(0.09ml RNS60)臨床的徴候の発現時から連日投与;暗色「×」=高用量(0.2ml RNS60)臨床的徴候の発現時から3日ごとに投与、ならびに白三角=高用量(0.2ml RNS60)臨床的徴候の発現時から連日投与)。
本明細書の上記のMBPモデルの実施例と比較して、このマウスMOGモデルは、当該技術分野において、MBPモデルでは示されないMSの軸索損傷特性を模倣できることが知られており、観察される治療効果がより長い期間(MBPモデルの21日間と比較して28〜30日間)に延長される。更なる態様によれば、RNS60は、ビヒクル対照(ビヒクル)とは異なり、このマウスMOGモデルにおける軸索損傷低減において実質的に効果的である。
本発明の特定の態様によれば、本発明の界面動電組成物は、当該技術分野において認識されているヒトMSのマウスモデルにおける、症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。本発明の更なる態様によれば、本発明の界面動電組成物は、罹患した哺乳類(好ましくはヒト)における、MS症状の治療(緩和および予防を含む)のために実質的な有用性を有する。
なお更なる態様では、本発明の界面動電組成物は、血液脳関門(BBB)を横断し、したがって中枢神経系の炎症性状態を治療するための新規の方法を提供する。
実施例10
(RNS60は、生理食塩水(NS)とは異なり、MBPでプライミングしたT細胞中のNFκΒ活性化を軽減した)
要約。NFκΒキナーゼは、当該技術分野において広く認識されている炎症媒介性状態および疾患における炎症反応を媒介するキナーゼである。
本実施例は、RNS60が生理食塩水(NS)とは異なり、MBPでプライミングしたT細胞中のNFκΒの活性化を軽減したことを示す。したがって、特定の態様によれば、本発明の界面動電的に生成された流体は、糖尿病および関連代謝障害、インスリン耐性、神経変性疾患(例えば、MS、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、喘息、嚢胞性線維症、血管/冠状動脈性心臓病、網膜および/または黄斑変性、消化障害(例えば、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病等)が挙げられるが、これらに限定されない炎症および炎症媒介性の状態および疾患の治療のために実質的な有用性を有する。
方法。図13Aおよび13Bに示す実験において、MBP免疫化マウスから単離されたT細胞をMBPで再プライミングし、24時間後、細胞を各種濃度のRNS60およびNSで処置した。処置から2時間後、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)による核抽出物内でNFκΒのDNA結合活性をモニタリングした。
図13Cに示す実験において、MBP免疫化マウスから単離されたT細胞をPBIIX−Luc、NFκΒ依存性レポーター構築物でトランスフェクトし、その後MBPで再プライミングした。MBPプライミングから24時間後、細胞を各種濃度のRNS60およびNSで2時間処置し、その後、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega)による総細胞抽出物内のルシフェラーゼ活性のアッセイを行った。他の場合、MBPでプライミングしたT細胞はまた、30nM PMAでも1時間刺激した。この場合、RNS60およびNSで前処置してから1時間後にPMAを添加した。結果は、3つの異なる実験の平均+SDである。
結果。図13A〜Cは、RNS60が生理食塩水(NS)とは異なり、MBPでプライミングしたT細胞中のNFκΒの活性化を軽減したことを示す。具体的には、図13Aおよび13Bは、RNS60(図13Aおよび124Bの中央3レーン参照)は、NS(図13Aおよび13Bの右端レーン参照)とは異なり、MBPでプライミングしたT細胞中のNFκΒの活性化を用量依存的に軽減したことを示す。
同様に、図13Cの棒グラフは、RNS60(図13Aおよび13Bの第2、第三および第四棒グラフ参照)は、NS(図13Aおよび13Bの第五棒グラフ参照)とは異なり、MBPでプライミングしたT細胞中のNFκΒの活性化を軽減し、したがってまた、総細胞抽出物内のトランスフェクトしたNFκΒ依存性レポーター構築物(PBIIX−Luc)からルシフェラーゼ活性も用量依存的に軽減したことを示す。
したがって、特定の態様によれば、本開示の界面動電的に生成された流体は、糖尿病および関連代謝障害、インスリン耐性、神経変性疾患(例えば、MS、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、喘息、嚢胞性線維症、血管/冠状動脈性心臓病、網膜および/または黄斑変性、消化障害(例えば、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病等)が挙げられるが、これらに限定されない炎症および炎症媒介性の状態および疾患の治療のために実質的な有用性を有する。
実施例11
(RNS60は、生理食塩水(NS)とは異なり、マウスにおけるMPTP誘発性パーキンソン病病的徴候を軽減した)
要約:
マウスにおいて1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)処置により、パーキンソン病(PD)の病的徴候(例えば、運動時間短縮、運動距離縮小、回転ロッド上の平衡能低下、振戦、および線条体制御行動パターン常同症および立ち上がり(上下運動)障害)を示すように誘発することができる。MPTPの神経中毒作用は、MPP+への変換によって異なる。グリア細胞において、モノアミンオキシダーゼB(MAO−B)はMPTPをMPP+に変換し、MPP+は次いでグリア細胞を活性化する。最近では、MPP+はミクログリアにおいて炎症性分子の発現を誘発することが示されている。加えて、MPP+はドーパミン作動系ニューロンのアポトーシスを引き起こすことが示されている。
本実施例では、MPTP処置マウスにおけるRNS60のPD病的症状の抑制(例えば、協調運動の改善、線条体依存性行動障害の予防、ドーパミン作動系ニューロンの救助)能力を確認した。
材料および方法:
簡単に述べると、C57BL/6マウスにMPTP−HCl(遊離塩基18mg/kg)の食塩水を2時間間隔で4回腹腔内注射した。対照動物に同容積の食塩水を投与した。RNS60または生理食塩水(NS)による処置はMPTP中毒前日に開始した。MPTP注射7日後、コンピュータベースのDigiscan赤外線活動モニタを用いて移動運動活性を測定した(図14および15)。データは平均±SEMとして示し、P値はANOVAにより算出した;*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001、ns=有意差なし。
MPTPで中毒化したマウスにおいてRNS60処置がドーパミン作動系ニューロンを救助することを検証する実験において、線条体をMPTP中毒から7日後に切開した(図16)。チロシン水酸化酵素抗体を用いた免疫染色、ドーパミン合成に関与する速度制限酵素により、黒質緻密部中のドーパミン作動系ニューロンの存在を検出した。パネルAは、対照マウス=MPTPで中毒化しない健常対照マウス由来の線条体を示し、パネルBは、MPTP=MPTP曝露マウス由来の線条体を示し、パネルCは、MPTP+RNS60=RNS60で処置したMPTP曝露マウス由来の線条体を示す。
結果:
図14および15における移動運動分析に証されるように、MPP+単独は対象において、運動時間短縮(図14A)、運動距離縮小(図14B)、マウスの回転ロッド上の平衡維持能低下(図14C)、線条体制御行動パターン常同症(身づくろい)(図15A)、および立ち上がり(上下運動)障害(図15B)を含むPD様症状を誘発した。注目すべきことに、RNS60はこれらの症状を実質的に軽減し、一部の協調運動実験においてマウス行動は対照マウスと同等であった。一方、類似の実験条件下にて、対照の生理食塩水(NS)で前処置してからMPP+で誘発したマウスでは、MPP+処置単独群と同等の症状を呈した(図14および15)。したがって、これらのデータは、RNS60がMPP+中毒化マウスに特異的な保護効果を有することを示す。
したがって、図14および15では、本発明の界面動電流体(RNS60)は、対照生理食塩水(NS)とは異なり、PDマウスモデルにおけるマウスの協調運動を改善し、線条体依存性行動障害を予防することを示す。
更に、大部分がPDに罹患した脳の一部である黒質緻密部の免疫染色により、RNS60で処置したマウスにおいてドーパミン作動系ニューロンの著明な救助が示され(図16)、該処置の神経保護活性を確認した。図16に見ることができるように、MPP+中毒はチロシン水酸化酵素(TH)陽性ニューロン喪失に至り、RNS60前処置は黒質緻密部(SNpc)中のTH陽性ニューロンを保護した。
加えて、マウス全群(n=6/群)の線条体TH免疫染色定量を既に記載のように実施する(1、2)。光学密度測定はデジタル画像解析(Scion)により得られる。線条体TH光学密度は基本的にドーパミン作動系線維の神経分布を反映する。
したがって、MPP+は神経毒であるため、特定の態様によれば、これらの結果は、RNS60が神経毒からの保護効果を有することを示す。更なる特定の態様によれば、MPP+はドーパミン作動系神経毒であるため、これらの結果はRNS60がドーパミン作動系神経毒からの保護効果を有することを示す。
特定の態様によれば、本発明の界面動電流体は、神経毒曝露に起因する神経毒性症状の予防において実質的な有用性を有する。
上記項目に引用した参考文献:
1. Ghosh, A., Roy, A., Liu, X., Kordower, J.H., Mufson, E.J., Mosely, R.L., Ghosh, S., Gendelman, H.E. & Pahan, K. 2007. Selective inhibition of NFκΒ activation prevents dopaminergic neuronal loss in a mouse model of Parkinson’s disease. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104: 18754−18759.
2. Ghosh, A., Roy, A., Matras, J., Brahmachari, S., Gendelman, H.E., & Pahan, K. 2009. Simvastatin inhibits the activation of p21ms and prevents the loss of dopaminergic neurons in a mouse model of Parkinson’s disease. J. Neurosci. 29: 13543 − 13556.
実施例12
(RNS60は、生理食塩水(NS)とは異なり、MPTP誘発性の黒質緻密部(SNpc)中のミクログリアiNOSインビボ発現を抑制する)
要約:
本明細書に記載される特定の態様によれば、本発明の界面動電流体は、神経毒からの神経細胞保護において実質的な有用性を有する。
マウスにおいて1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)処置により、パーキンソン病(PD)の病的徴候を示すように誘発することができる。MPTPの神経中毒作用は、MPP+への変換によって異なる。グリア細胞において、モノアミンオキシダーゼB(MAO−B)はMPTPをMPP+に変換し、MPP+は次いでグリア細胞を活性化する。最近では、MPP+はミクログリアにおいて炎症性分子の発現を誘発することが示されている。加えて、MPP+はドーパミン作動系ニューロンのアポトーシスを引き起こすことが示されている。
実施例7および11において、PDのMPTPマウスモデルにおける、ミクログリア細胞中の誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)およびIL−1βのMPP+誘発性発現を阻害して線条体ドーパミン作動系ニューロンを保護し、移動運動活性を改善するRNS60の能力が示された。追加の実験を、a)MPTP中毒化マウスの黒質緻密部(SNpc)中のミクログリアiNOSインビボに対するRIS60の効果を評価するために行う。
材料および方法:
MPTP中毒化の前日にRIS60またはIS(300μl/日/マウス、腹腔内注射)を投与した雄C57BL/6マウス(各群n=3)に、MPTPを2時間間隔で4回注射する。RIS60/IS処置を継続し、MPTP中毒化の翌日、マウスを屠殺し、既に記載のように脳を固定化し、組込み、iNOS免疫染色に供した(1、2)。簡単に述べると、記載のように、マウス全群の腹側中脳切片(食塩水、MPTP、MPTP−RIS60 300μl、MPTP−IS 300μl)を、iNOSおよびCDllb(ミクログリア)に対する抗体を用いて浮遊性二重免疫標識化した(1〜3)。
CDllb陽性、iNOS陽性、およびCDllb陽性かつiNOS陽性の細胞数を「Microsuite Biological Suite」ソフトウェア、Olympus IX81顕微鏡を用いて測定し、RIS60処置したMPTP中毒化マウスのSNpcにおいて、ミクログリア活性化およびiNOS発現が対照MPTPマウスおよびIS(ビヒクル)処置MPTPマウスと比較して低減するかどうかを決定する。動物3匹のそれぞれから単離した各脳の6つの黒質切片を用いて、MPTP処置マウスのSNpcにおけるCDllbおよびiNOSのタンパク質値に対するRIS60効果を決定する。
結果:
ある実施形態によれば、RNS60は、生理食塩水とは異なり、MPTP誘発性の黒質緻密部(SNpc)中のミクログリアiNOSインビボ発現を抑制する。したがって、これらのインビボ実験は、実施例7に見られる結果を確認し、半定量PCRにより、RNS60は、生理食塩水とは異なり、マウスミクログリア細胞内でMPTP誘発性iNOS発現を抑制することが示された。
上記項目に引用した参考文献:
1. Ghosh, A., Roy, A., Liu, X., Kordower, J.H., Mufson, E.J., Mosely, R.L., Ghosh, S., Gendelman, H.E. & Pahan, K. 2007. Selective inhibition of NFκΒ activation prevents dopaminergic neuronal loss in a mouse model of Parkinson’s disease. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104: 18754−18759.
2. Ghosh, A., Roy, A., Matras, J., Brahmachari, S., Gendelman, H.E., & Pahan, K. 2009. Simvastatin inhibits the activation of p21ms and prevents the loss of dopaminergic neurons in a mouse model of Parkinson’s disease. J. Neurosci. 29: 13543 − 13556.
3. Roy, A. & Pahan, K. 2010. Prospects of statins in Parkinson’s disease. Neuroscientist 16: 000−000.
実施例13
(RNS60は、生理食塩水(NS)とは異なり、一次ニューロンおよび星状細胞内におけるAktリン酸化反応の活性化を誘発した)
要約。Aktは、複数の細胞過程(グルコース代謝、細胞増殖、アポトーシス、転写および細胞移動等)において重要な役割を果たすセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。Aktは細胞生存を調節することが知られている。特に、リン酸化AktはBAD(プロアポトーシスタンパク質)の不活性化によりアポトーシスを阻害することが示されている(Song G, et al., (2005). “The activation of Akt/PKB signaling pathway and cell survival”. J. Cell. Mol. Med. 9 (1): 59−71.を参照されたい)。当該技術分野において認識されているように、Aktのリン酸化反応は、細胞(神経細胞等)の毒性およびプロアポトーシス刺激からの保護において重要な役割を果たす。
本実施例では、一次神経細胞および星状細胞内においてAktリン酸化反応を誘発するRNS60の能力を確認した。更に、RNS60のアポトーシス阻害能におけるAktの役割を示した。
材料および方法:
既に記載のようにニューロンを単離して、培養した(1、2)。既に記載のように星状細胞を単離して、培養した。ニューロンまたは星状細胞を、10%RIS60またはIS(対照として使用)で0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、および180分間処置し、リン酸化Aktおよび正常Akt(細胞シグナル伝達)抗体を用いた細胞抽出物のウエスタンブロット法によりAkt活性化をモニタリングした。総Aktを正常Akt抗体により検出した。ニューロンまたは星状細胞を、各種用量のRIS60(2%、5%、10%、および20%)で処置した。各種用量のISを対照として使用した。Akt活性化を上記のようにモニタリングした。
図17Aは、一次ニューロンのAktリン酸化反応の誘発に対するRNS60の効果を生理食塩水(NS)対照と比較検討した実験の結果を示す。βチューブリンおよびリン酸化Akt抗体を用いた二重標識免疫蛍光検査法により、Aktリン酸化反応をモニタリングした。βチューブリンをニューロン標識として使用して、DAPI染色を用いて細胞核を視覚化した。パネルBおよびCは、Aktリン酸化反応は10%RNS60により誘発され、対して対照生理食塩水(「NS」)は効果がなかったことを示す。
図17Bは、RNS60の存在または不在下における一次ニューロンのAkt阻害効果を評価した実験の結果を示す。既に記載のようにΑβ原線維l−42(Bachem Biosciences)を原線維形態に変化させた(1、3)。ニューロンのリン酸化Akt機能は、AktI(特異的なAkt阻害薬、CalBiochem製)により阻害された。各種濃度のAktIで30分間プレインキュベートしたニューロンをRNS60処置した。1時間インキュベーション後、細胞をΑβ原線維l−42に曝露させた。12時間後、ニューロンアポトーシスをTUNELによりモニタリングし、24時間後、既に記載のようにMTTおよびLDH放出によって細胞死を評価した(1、2)。結果(図17B)により、Akt阻害薬であるAktIは、Αβ原線維に曝露したニューロンに対するRNS60の保護効果を無効化することが示された。
したがって、本結果は、RNS60がAβ毒性からニューロンを保護するためにはAktが必要であることを確認した。図18は、一次ニューロンのAktリン酸化反応の誘発に対するRNS60の効果を生理食塩水(NS)対照と比較して経時的(0分、15分、60分、および120分)に評価した実験の結果を示す。グラフは、RNS60または生理食塩水のいずれかで処置時の星状細胞に存在するAkt総量とリン酸化Akt量との比率を示す。図18に見ることができるように、RNS60は、生理食塩水(NS)効果の4倍増大した星状細胞内Aktリン酸化反応を誘発する。したがって、RNS60は、Aktリン酸化反応を特異的に誘発する。
本明細書に記載される特定の態様によれば、いかなる特定の機序にも束縛されず、本発明の界面動電流体は、毒素への曝露により誘発されたアポトーシスの予防による神経細胞の神経毒からの保護において実質的な有用性を有する。
上記項目に引用した参考文献:
1. Jana, A. & Pahan, K. 2004. Fibrillar amyloid−β peptides kill human primary neurons via NADPH oxidase−mediated activation of neutral sphingomyelinase: Implications for Alzheimer’s disease. J. Biol. Chem. 279: 51451−51459.
2. Jana, A. & Pahan, K. 2004. HIV−1 gpl20 induces apoptosis in human primary neurons through redox−regulated activation of neutral sphingomyelinase. J. Neurosci. 24: 9531−9540.
実施例14
(RNS60は、生理食塩水(NS)とは異なり、一次ニューロンのΑβ原線維l−42ペプチド誘発タウリン酸化反応を軽減した)
要約。タウの高リン酸化反応は、脳およびニューロン組織におけるもつれ特質であり、タウパチーとして知られているグループ分けされたいくつかの疾患の1つに至る可能性がある。タウパチーとしては、アルツハイマー病、嗜銀顆粒性疾患、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症(ピック病)、およびパンチドランカー(DP)(別名ボクサー認知症、慢性ボクサー病)が挙げられるが、これらに限定されない。
図19A〜Bは、一次ニューロンのΑβ原線維(l−42)媒介性タウリン酸化反応に対するRNS60の効果を生理食塩水(NS)対照と比較検討した実験の結果を示す。βチューブリンおよびリン酸化タウ抗体を用いた二重標識免疫蛍光検査法により、タウリン酸化反応をモニタリングした。βチューブリンをニューロン標識として使用して、DAPI染色を用いて細胞核を視覚化した。「(p)−タウ」標識カラムの上から第三および第四パネルは、タウリン酸化反応がRNS60により用量依存的に阻害され、対して対照生理食塩水(「NS」)は10%高用量でも効果がなかったことを示す(「(p)−タウ」標識カラムの下パネルを参照されたい)。
実施例15
(神経毒の存在下におけるRNS60の保護効果は、Akt阻害薬により阻害された)
要約。Aktは、複数の細胞過程(グルコース代謝、細胞増殖、アポトーシス、転写および細胞移動等)において重要な役割を果たすセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。特に、Aktは細胞生存を調節することが知られている。特に、リン酸化AktはBAD(プロアポトーシスタンパク質)の不活性化によりアポトーシスを阻害することが示されている(Song G, et al., (2005). “The activation of Akt/PKB signaling pathway and cell survival”. J. Cell. Mol. Med. 9 (1): 59−71.を参照されたい)。当該技術分野において認識されているように、Aktのリン酸化反応は、細胞(神経細胞等)の毒性およびプロアポトーシス刺激からの保護において重要な役割を果たす。
実施例13および14は、a)一次ニューロンのAktをRNS60の存在下でリン酸化した、およびb)RNS60は、一次ニューロンのΑβ原線維l−42ペプチド誘発性タウリン酸化反応を軽減したことを示した。本実施例に開示の実験により、神経毒の存在下におけるRNS60の保護効果は、Akt阻害薬により阻害される可能性があることを確認した。したがって、本実施例は、RNS60がAβ毒性からニューロンを保護するためにはAktが必要であることを確認した。
既に記載のようにニューロンまたは星状細胞を単離して、培養した(1、2)。ニューロンまたは星状細胞を、10%RIS60またはIS(対照として使用)で0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、および180分間処置し、リン酸化Aktおよび正常Akt(細胞シグナル伝達)抗体を用いた細胞抽出物のウエスタンブロット法によりAkt活性化をモニタリングした。総Aktを正常Akt抗体により検出した。ニューロンまたは星状細胞を、増量RNS60(2%、5%、10%、および20%)で処置した。各種用量のNSを対照として使用した。Akt活性化を上記のようにモニタリングした。
既に記載のようにΑβ原線維l−42(Bachem Biosciences)を原線維形態に変化させた(1、3)。ニューロンのリン酸化Akt機能は、AktI(特異的なAkt阻害薬、CalBiochem製)により阻害された。
各種濃度のAktIで30分間プレインキュベートしたニューロンをRNS60処置した。1時間インキュベーション後、細胞をΑβ原線維l−42に曝露させた。12時間後、ニューロンアポトーシスをTUNELによりモニタリングし、24時間後、既に記載のようにMTTおよびLDH放出によって細胞死を評価した(1、2)。
結果は、Akt阻害薬であるAktIは、Αβ原線維に曝露したニューロンに対するRNS60の保護効果を無効化することが示された。したがって、本結果は、RNS60がAβ毒性からニューロンを保護するためにはAktが必要であることを確認した。
上記項目に引用した参考文献:
1. Jana, A. & Pahan, K. 2004. Fibrillar amyloid−β peptides kill human primary neurons via NADPH oxidase−mediated activation of neutral sphingomyelinase: Implications for Alzheimer’s disease. J. Biol Chem. 279: 51451−51459.
2. Jana, A. & Pahan, K. 2004. HIV−1 gpl20 induces apoptosis in human primary neurons through redox−regulated activation of neutral sphingomyelinase. J. Neurosci. 24: 9531−9540.
3. Jana, M. & Pahan, K. 2008. Fibrillar amyloid−β peptides activate microglia via toll−like receptor 2: Implications for Alzheimer’s disease. J. Immunol. 181: 7254−7262.
実施例16
(神経毒の存在下におけるRNS60の保護効果は、PI3キナーゼ阻害薬により阻害された)
要約。PI3キナーゼは、複数の細胞過程(細胞増殖、増殖、分化、遊走、生存および細胞内トラフィッキング等)において重要な役割を果たす。加えて、PI3キナーゼは、インスリンシグナル伝達経路の重要な成分でもある。特に、PI3キナーゼは、リン酸化されていることが知られており、したがって、Aktを活性化させ、これは、細胞(神経細胞等)の毒性およびプロアポトーシス刺激からの保護において重要な役割を果たす。
本明細書の上記の実施例13および15は、a)一次ニューロンのAktはRNS60の存在下でリン酸化された、およびb)RNS60媒介性の神経毒からの保護は、Akt阻害薬により阻害される可能性があることを示した。本実施例は更に、RNS60媒介性のアポトーシスを誘発する神経毒からの保護にはPI3キナーゼ経路が必要であることも示す。
図20は、PI3キナーゼ阻害薬で処置したヒト一次ニューロンに対するRNS60の効果を評価した実験の結果を示す。既に記載のようにヒト一次ニューロンを単離して、培養した(1、2)。既に記載のようにΑβ原線維l−42(Bachem Biosciences)を原線維形態に変化させた(1、3)。ニューロン中のPI3キナーゼ機能はLY294002(PI3キナーゼに特異的な阻害薬、Enogene製)により阻害された。
2μm LY294002でプレインキュベートしたニューロンをRNS60処置した。1時間インキュベーション後、細胞をΑβ原線維l−42に曝露させた。12時間後、ニューロンアポトーシスをTUNELによりモニタリングし、24時間後、既に記載のようにMTTおよびLDH放出によって細胞死を評価した(1、2)。
結果は、PI3キナーゼ阻害薬であるLY294002は、Αβ原線維に曝露したニューロンに対するRNS60の保護効果を無効化することが示された。したがって、本結果は、RNS60がAβ毒性からニューロンを保護するためにはPI3キナーゼが必要であることを示す。
したがって、ある実施形態によれば、図21に図解するように、ニューロン中、RNS60は膜効果を介して(例えば、1つ以上のイオンチャネルの調節を介して)PI3キナーゼを活性化させ、続いてAktをリン酸化および活性化させる。リン酸化Aktは次いでニューロン細胞の神経毒媒介性アポトーシスを阻害する。
参照による組み込み。本明細書において言及される、および/または出願データ用紙に列挙される、上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物のすべては、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書の図面および詳細な説明は、限定的な形ではなく例示的なものであるとみなされ、開示される特定の形態および例に本発明を限定することを意図しない。逆に、本発明には、以下の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者には明らかな任意の更なる修正、変更、再配置、置換、代替、設計選択、および実施形態が含まれる。したがって、以下の特許請求の範囲は、すべてのかかる更なる修正、変更、再配置、置換、代替、設計選択、および実施形態を包含すると解釈されるべきであることを意図する。
前述の実施形態は、異なる他の成分内に含有された、または接続された、異なる成分を示す。かかる示された構築物は、例示に過ぎず、かつ同一の機能性を達成する多くの他の構築物を実施することができるという事実が理解されるべきである。概念的な意味において、同一の機能性を達成するための成分の任意の配置は、所望の機能性を達成するように、効果的に「会合」される。したがって、特定の機能性を達成するために組み合わせた本明細書の2つの成分は、構築物または媒介の成分と無関係で、所望の機能性を達成するように互いに「会合する」とみなすことができる。同様に、このように会合された2つの成分はまた、所望の機能性を達成するように、互いに、「操作可能に接続される」または「操作可能に連結される」ものとして見ることもできる。
本発明の特定の実施形態が示され、記載されているが、本明細書の教示に基づいて、本発明およびその広範な態様から逸脱することなく、変更および修正し得ることが当業者には明らかであるため、かかる変更および修正を範囲内にすべて包含する添付の特許請求の範囲は、本発明の真意および範囲内である。更に、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることが理解されるべきである。概して、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の主要部)に使用される用語は、一般的に、「開放的な」用語として意図されるものであること(例えば、「含む(including)」という用語は、「〜が含まれるが、これらに限定されない(including but not limited to)」として解釈されるものとし、「有する(having)」という用語は、「少なくとも〜を有する(having at least)」として解釈されるものとし、「含む(includes)」という用語は、「〜が含まれるが、これらに限定されない(includes but is not limited to)」として解釈されるものとする等)が、当業者によって理解されるであろう。特定数の導入される特許請求の範囲の詳述が意図される場合、かかる意図は、特許請求の範囲中に明確に引用され、かかる詳述がない場合、かかる意図は存在しないことが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲の詳述を導入するために、前置きの語句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つ以上(one or more)」の使用を含有し得る。しかしながら、かかる語句の使用は、同一請求項が前置きの語句「1つ以上」もしくは「少なくとも1つの」、ならびに「a」もしくは「an」等の不定冠詞を含むときでさえも、不定冠詞「a」もしくは「an」による特許請求の範囲の詳述の導入が、唯一のかかる詳述を含む発明のかかる導入された特許請求の範囲の詳述を含むいかなる特定の特許請求の範囲も限定することを意味すると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、一般的に「少なくとも1つの(at least one)」または「1つ以上(one or more)」を意味すると解釈されるべきである);同じことが特許請求の範囲の詳述の導入に使用される定冠詞の使用にも当てはまる。加えて、特定の数の導入される特許請求の範囲の詳述が明確に引用される場合であっても、かかる詳述は、少なくとも引用される数(例えば、他の修飾語句なしの「2つの詳述」の単なる詳述は、一般に少なくとも2つの詳述、または2つ以上の詳述を意味する)を意味すると一般に解釈すべきことが、当業者によって更に理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。