定義
「処置(Treatment)」は、本明細書で使用されるように、検出可能であれ、検出不能であれ、1つまたは複数の症状の緩和または改善、疾病の程度の減弱、疾病状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾病の蔓延の予防、疾病進行の遅延または緩徐化、疾病状態の改善または一時的緩和、および寛解(部分的であれ、完全であれ)を含む、病気を処置する、治す、または予防するという目的で生体系の機能を変更することによって疾病の経過を修正する可能性を有する任意の介入(たとえば、手術、薬物の投与など)を指す。
「転用性研究(Transposability study)」は、本明細書で使用されるように、処置効果および/または許容度の転用についての評価を指す。転用性は、処置効果および/または許容度の予測が、関心の第2の集団または個体と異なる第1の集団(複数可)または個体(複数可)において得られるデータから、第2の集団または個体にそれによって外挿されるオペレーションを指す。
用語「生物学的ターゲット(biological target)」は、本明細書で使用されるように、その変更が、関心の生物学的システムの機能を修正する可能性を有する生物学的成分を指す。生物学的ターゲットの非制限的な例は、DNA、RNA、たんぱく質、糖たんぱく質、リポたんぱく質、砂糖、脂肪酸、酵素などの分子;ホルモン、および化学反応性分子(たとえば、H+、過酸化物、ATP、およびクエン酸);イオン;糖たんぱく質;高分子および分子錯体;細胞および細胞内小器官などの細胞の部分(たとえば、ミトコンドリア、核、ゴルジ複合体、リソソーム、小胞体、およびリボゾーム);およびその組合せを含む。
用語「ターゲット評価(target evaluation)」は、本明細書で使用されるように、生物学的ターゲットの変更の生理病理学的モデル出力(複数可)に関する結果の評価を指す。
用語「変更(alteration)」は、生理病理学的モデルに関して本明細書で使用されるように、被検体の環境および/または治療の現実の変化を表すように設計された生物学的システムのモデルのパラメータまたはコンポーネントの修正を指す。例示的な変更は、細胞または生物学的成分(たとえば、生物学的ターゲット)の機能を調節する(たとえば、活性化または抑制する)既存のまたは仮定された薬物の存在、および、処置レジメン、単なる時間の経過(たとえば、加齢)、環境毒に対する暴露、運動の増加、および同様なものを含む。
本明細書で使用されるように、用語「患者(patient)」は、現実のまたはシミュレートされた個体、好ましくは人間を指す。用語「シミュレートされた個体(simulated individual)」は、本発明のシステム、コード、装置、および方法における現実の個体の表現を指す。
本明細書で使用されるように、用語「処置記述子(treatment descriptor)」は、処置のパラメータを記述するための有用な任意の情報を指す。例は、薬物の用量、薬物投与の頻度、薬物の処方、治療薬物の組合せ、治療用量の組合せ、薬物投与の頻度、薬物投与の継続期間、代謝物、薬物半減期、腎臓薬物代謝、代謝経路または酵素、被検者ダイエットレジメン、被検者運動レジメン、(たとえば、保健局による)使用される値と異なる場合の任意の推奨値などを含む。いくつかの処置記述子はまた、個体に依存する程度に対する患者記述子、たとえば薬物の半減期とすることができる。処置記述子は、あるいは、純粋な処置記述子、たとえば投与された薬物の用量でありうる。
本明細書で使用されるように、用語「患者記述子(patient descriptor)」は、患者の特性を記述するために有用な任意の情報を指す。例は、処置なしの場合のリスク(Rc)に統合される関心成果(事象)の発生に相関する変数(複数可)(Y)(「リスクファクタ(risk factor)」と呼ばれる)、および、Rcに統合されない利益の強度に相関する変数(複数可)(X)を含む。バイオマーカは、患者記述子の例である。用語「細胞成分(cellular constituent)」は、生物学的細胞または生物学的細胞の一部分を指す。細胞成分の非制限的な例は、DNA、RNA、たんぱく質、リポたんぱく質、砂糖、脂肪酸、酵素などの分子;ホルモン、および化学反応性分子(たとえば、H+、過酸化物、ATP、およびクエン酸);イオン;糖たんぱく質;高分子および分子錯体;細胞および細胞内小器官などの細胞の部分(たとえば、ミトコンドリア、核、ゴルジ複合体、リソソーム、小胞体、およびリボゾーム);およびその組合せを含む。
用語「生物学的成分(biological constituent)」は、生物学的システムの一部分を指す。生物学的システムは、たとえば個体の細胞、細胞培養などの、インビボまたはインビトロの細胞の集合、器官、組織、個々の人間の患者などの多細胞生物、多細胞生物の細胞のサブセット、または、人間の患者の群などの多細胞生物の集団、または、全体として一般的な人間の集団を含みうる。生物学的システムはまた、たとえば、神経系、免疫系、または心臓血管系などの多組織系を含みうる。生物学的システムの一部である生物学的成分は、たとえば、細胞外成分、細胞成分、細胞内成分、またはその組合せを含みうる。生物学的成分の例は、DNA、RNA、たんぱく質、リポたんぱく質、砂糖、脂肪酸、酵素;ホルモン、小さな有機細胞、高分子、および分子錯体、細胞;器官;組織;細胞、組織、または器官の部分;ミトコンドリア、核、ゴルジ複合体、リソソーム、小胞体、およびリボゾームなどの細胞内小器官;H+、過酸化物、ATP、およびクエン酸などの化学反応性分子;イオン;およびその組合せを含む。
生物学的成分に関して用語「機能(function)」は、生物学的成分と1つまたは複数のさらなる生物学的成分との相互作用を指す。生物学的システムの各生物学的成分は、ある生物学的メカニズムに従って、生物学的システムの1つまたは複数のさらなる生物学的成分と相互作用しうる。生物学的成分が互いに相互作用する生物学的メカニズムは、知られているかまたは知られていない可能性がある。生物学的メカニズムは、たとえば、生物学的システムの合成的、調節的、恒常的、または制御的ネットワークを含みうる。たとえば、1つの生物学的成分と別の生物学的成分との相互作用は、たとえば、1つの生物学的成分の別の生物学的成分への、たとえば合成または分解による形質転換、生物学的成分の直接物理的相互作用、中間生物学的事象か、何らかの他のメカニズムか、または任意の統合ネットワーク(遺伝的ネットワーク(複数可)、mRNAネットワーク(複数可)、遺伝子調節ネットワーク(複数可)、たんぱく質ネットワーク(複数可))を通して媒介される生物学的成分の間接的相互作用を含みうる。いくつかの例では、1つの生物学的成分と別の生物学的成分との相互作用は、たとえば、別の生物学的成分による1つの生物学的成分の、産生レート(production rate)、レベル、または活性の抑制または促進などの、別の生物学的成分による1つの生物学的成分の調節変調を含みうる。
用語「生物学的プロセス(biological process)」は、生物学的システムの生物学的成分間の相互作用または相互作用のセットを指す。いくつかの例では、生物学的プロセスは、生物学的成分間の相互作用のネットワークと共に、生物学的システムのある態様から引出される(draw)生物学的成分のセットを指しうる。生物学的プロセスは、たとえば、生化学経路または分子経路およびネットワーク化された生物学的コンポーネント(遺伝的ネットワーク(複数可)、mRNAネットワーク(複数可)、遺伝子調節ネットワーク(複数可)、たんぱく質ネットワーク(複数可))を含みうる。生物学的プロセスはまた、たとえば、細胞、器官、組織、または多細胞生物の環境内でまたはそれに接触して発生する経路を含みうる。生物学的プロセスの例は、細胞エネルギーを提供するために分子がそこで破壊される生化学経路、細胞構造またはエネルギー貯蔵部を提供するために分子がそこで構築される生化学経路、たんぱく質または核酸が、そこで、合成されるか、活性化されるか、または破壊される生化学経路、および、たんぱく質または核酸前駆体が、そこで、合成されるかまたは破壊される生化学経路を含む。こうした生化学経路の生物学的成分は、たとえば、酵素、合成中間体、基質前駆体、および中間種を含む。
用語「薬物(drug)」は、知られている生物学的メカニズムによろうとも、知られていない生物学的メカニズムによろうとも、また、治療的に使用されても、治療的に使用されなくても、生物学的状態に影響を及ぼしうる任意の程度の複雑さの化合物を指す。いくつかの例では、薬物は、薬物の治療ターゲットと呼ばれうる生物学的成分と相互作用することによって、その影響を及ぼす。治療ターゲットの機能を促進する薬物は、「活性化薬(activating drug)」または「作動薬(agonist)」と呼ばれ、一方、治療ターゲットの機能を抑制する薬物は、「抑制薬(inhibiting drug)」または「拮抗薬(antagonist)」と呼ばれうる。薬物の影響は、たとえば、RNAの1つまたは複数の種の転写または分解レートにおける薬物媒介の変化、1つまたは複数のポリペプチドの翻訳および後翻訳処理のレートまたは程度における薬物媒介の変化、1つまたは複数のたんぱく質の分解のレートまたは程度における薬物媒介の変化、1つまたは複数のたんぱく質の活動または活性の薬物媒介の抑制または促進などの結果でありうる。薬物の例は、研究的、治療的、または予防的関心の、典型的なたんぱく質ベース化学物質、核酸ベース化学物質、または合成化学物質(たとえば、小分子);内分泌、傍分泌、または自己分泌因子などの自然発生の因子あるいは任意のタイプの細胞受容体と相互作用する因子;細胞内シグナリング経路の要素などの細胞内因子;植物由来化学物質などの他の自然源から単離された因子を含む。薬物はまた、たとえば、DNAおよびRNAのような遺伝子治療で使用される作用物質を含みうる。同様に、抗体、ウィルス、細菌、ならびに細菌およびウィルスによって生成される生物活性作用物質が、薬物として考えられうる。いくつかの用途の場合、薬物は、薬物のセットを含む組成または薬物のセットと付形剤のセットを含む組成を含みうる。用語「医薬製品(medicinal product)」は、身体に作用する能力を有するか、または、薬物のように、生物学的状態に影響を及ぼしうる、任意のシステム、ツール、または組成物を指し;医薬製品は、化学的、生化学的、または物理的(たとえば、x線、ポジトロン)モードを含む、任意の動作モードを通して作用することができる。医薬製品は、薬物にように、処置である。
用語「生物学的状態(biological state)」は、生物学的システムに関連する条件を指す。いくつかの例では、生物学的状態は、生物学的システムの生物学的プロセスのセットの発生に関連する条件を指す。生物学的システムの各生物学的プロセスは、何らかの生物学的メカニズムに従って、生物学的システムの1つまたは複数のさらなる生物学的プロセスと相互作用しうる。生物学的プロセスが互いに対して変化するため、生物学的状態が、通常、同様に変化する。生物学的状態は、通常、生物学的プロセスが、それによって互いに相互作用する種々の生物学的メカニズムに依存する。生物学的状態は、たとえば、組織内、血漿、間質液、細胞内液、または脳脊髄液内の、物質の濃度、栄養物またはホルモン濃度の条件、たとえば、任意のバイオマーカを含みうる。たとえば、浮腫に関連する生物学的状態は、ニューロンに入る水の流量に関連する、かつ/または、水の見かけの拡散係数の比(バイオマーカrADCw)による。低血糖および低インスリン血症に関連する生物学的状態は、それぞれ、低血糖および低血中インスリン条件を特徴とする。これらの条件は、実験的に課されうる、または、特定の生物学的システム内に本質的に存在しうる。別の例として、ニューロンの生物学的状態は、たとえば、ニューロンが休止状態にある条件、ニューロンが活動電位を発生している条件、ニューロンが神経伝達物質を放出している条件、またはその組合せを含みうる。さらなる例として、血漿栄養物の集合体の生物学的状態は、人が夜通しずっと覚醒している条件、食事直後の条件、および食事間の条件を含みうる。別の例として、リューマチ関節の生物学的状態は、炎症細胞の著しい軟骨分解および増殖を含みうる。
生物学的状態は、生物学的システムに関連する異常または有害条件を「疾病状態(disease state)」を含みうる。疾病状態は、通常、生物学的システムにおける疾病の異常または有害な影響に関連する。いくつかの例では、疾病状態は、生物学的システムの生物学的プロセスのセットの発生に関連する条件を指し、生物学的プロセスのセットは、生物学的システムの疾病の異常または有害な影響において役割を果たす。疾病状態は、たとえば、細胞、器官、組織、多細胞生物、または多細胞生物の集合体において観測されうる。疾病状態の例は、喘息、糖尿病、肥満、感染症(たとえば、ウィルス、細菌感染)、がん、脳卒中、心臓血管疾患(たとえば、動脈硬化症、冠状動脈疾患、心臓弁疾患、不整脈、心不全、高血圧、起立性低血圧、ショック、心内膜炎、大動脈およびその分枝の疾病、末梢血管系の異常、および先天性心疾患)、および、炎症性または自己免疫性異常(たとえば、リューマチ性関節炎、多発性硬化症)に関連する条件を含む。
用語「バイオマーカ(biomarker)」は、任意の検出可能な特性(たとえば、物理特性)または分子、他の化学種(たとえば、イオン)、あるいは、疾病または特定の生物学的状態を有することに対する、生物学的(たとえば、疾病)状態または感受性のインジケータまたは予測子であるか、または、処置効果または安全性のインジケータまたは予測子である粒子を指す。例示的なバイオマーカは、たんぱく質(たとえば、抗原または抗体)、炭化水素、細胞、ウィルス、核酸(たとえば、多形性部位に存在するヌクレオチド)、および小有機分子、あるいは、より一般的に任意の生物学的または細胞成分を含む。バイオマーカは、バイオマーカ複合体とすることができる。例示的なバイオマーカは、検出または測定されうる患者記述子(たとえば、変数Xおよび/またはY)、または、インビボまたはインビトロで検出または測定されうる患者記述子から導出される信号を含む。例示的なバイオマーカはまた、インビボまたはインビトロで測定されうる任意の疾病パラメータ、または、インビボまたはインビトロで測定されうる任意の疾病パラメータから導出される信号を含み、こうしたバイオマーカは、通常、疾病状態または疾病進行を示す。
用語「反応者(responder)」は、所与の閾値(2つの閾値の間を含む)を超える処置による利益を受ける患者を指す。閾値は、任意の適した方法または基準に従って規定されることができる。
「影響モデル(Effect Model)」は、本明細書で使用されるように、ある個体の集団について、処置なしの場合のリスクの関数として、処置による利益を記述する数学的関数、および、個体の1つまたは複数の他の特性(たとえば、患者記述子)を指す。影響モデルは、たとえば、i)変数(Y)に依存する処置なしの場合のリスク(Rc)、および、ii)処置なしの場合のリスク(Rc)に含まれる特性以外の個体の特性のベクトルである変数(X)であって、前記変数(X)および(Y)は、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる、変数(X)の関数として、処置による利益(Rc−Rt)または処置下の成果の確率(Rt)を記述する関数の形態をとることができる。
「形式治療モデル(Formal Therapeutic Model)」は、本明細書で使用されるように、出力として関心事象を統合する生理病理学的モデルに動作可能にリンクした薬理学モデル、および任意選択で、出力として副作用および毒作用を統合する副作用(たとえば、毒物学)モデルを指す。
用語「機構的モデル(mechanistic model)」は、本明細書で使用されるように、計算処理モデル、たとえば、システム、たとえば生物学的モデルの特性または挙動を記述する、微分方程式のセットを有するモデルを指す。機構的モデルは、通常、2つ以上のより因果関係がある変数を数学的関係でリンクする因果関係モデルであり、その数学的関係は、これらの変数に影響を及ぼす、基礎になるメカニズム(複数可)、たとえば生物学的メカニズムを反映する。
用語「生理病理学的モデル(physiopathological model)」は、本明細書で使用されるように、健全なホメオスタシスのダイナミクスおよびホメオスタシスからの変更を表す、たとえば、疾病を表す、生物学的状態、疾病状態を表す、1つまたは複数のプロセス(たとえば、生物学的プロセス)を含むモデルを指す。
1.0 全体的概観−コンポーネントおよびステップ
本発明の例示的なシステムのコンポーネントおよびステップがこのセクションで述べられる。セクション2.0(機能概観)で示すように、本発明によるシステムまたは方法は、このセクション1.0に述べる全てのコンポーネントまたはステップを組込む必要はない。所望される特定の用途に応じて、異なるコンポーネントが、特定の目的を達成するシステムをもたらすために組立てられうる。コンポーネントのサブセットを利用する、異なるこうしたシステムの例は、セクション2.0に提供される。
図1は、ターゲットおよび/または薬物発見、開発の監視、転用性研究、バイオマーカ発見、および個別化医療を含む、本明細書で述べる全てのプロセスを実行できるシステムおよび方法の概観を提供する。コンポーネントは、コア多機能システムの輪郭を示す波線内に示され、システムは、生理病理学的モデル(ネットワーク、ブロック101)、薬理学的モデル(PK/PD、ブロック102)、シミュレートされた個体の集団(SPI、ブロック103)、影響モデル(EM、ブロック104)、個体(複数可)の集団に対する利益の計算処理(それぞれ、ブロック105〜108のNE、NEA、NEAt、およびBAtp)を備える。実行されるプロセスに応じて、全てのコンポーネントが必要であるわけではないことが認識されるであろう。コアシステム外には、オプションの要素、すなわち、データベース(知識データベース)(ブロック109)、開発データベース(ブロック110)、臨床データベース(ブロック111)、および患者記述子データベース(ブロック112)、下流プロセス(ターゲット選択)(ブロック113)、リガンド選択(ブロック114)、開発監視(ブロック115)、転用性研究(ブロック116)、および個別化医療(ブロック117)が示される。これらのオプションの要素は、コアシステム内に個々にまたは共に含まれることができるが、含まれる必要がないことが認識されるであろう。本発明の異なるプロセスの概観が図2に示される。
本発明の方法は、(a)影響モデルに関連する処置を提供すること、(b)個体または個体の集団について入力を提供すること、(c)処置による利益を計算処理すること、および、(d)処置による利益のインジケータを出力することを、最小限含むであろう。
一態様では、システムおよび方法は、
(a)それぞれが、影響モデル関数に関連する1つまたは複数の現実のまたはシミュレートされた処置(T)を、たとえば、入力として処置識別子と共に関数を受信することによって、または、処置に関する入力情報から関数を導出するステップにおいて、提供することであって、好ましくは、関数は、変数(Y)に依存する処置なしの場合のリスク(Rc)、および、処置なしの場合のリスク(Rc)に含まれる特性以外の個体の特性のベクトルである変数(X)であって、前記変数(X)および(Y)は、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる、変数(X)の関数として、処置による利益(Rc−Rt)または処置の成果のレート(Rt)を記述する、提供すること、
(b)それぞれが、リスク(Rc)および変数(X)に関連する1人または複数の個体(たとえば、現実の患者、シミュレートされた個体の集団)について、患者記述子を提供すること、
(c)前記処置(複数可)Tおよび前記個体(複数可)の1つまたは複数について、((Rc−Rt)の関数として)処置による利益を計算処理すること、および、
(d)前記個体(複数可)について、((Rc−Rt)の関数として)処置による利益のインジケータをユーザに出力すること、好ましくは表示することを含む。
したがって、こうしたシステムは、ある個別化医療用途の場合、本明細書で述べるようなさらなる要素なしで使用されうる。個別化医療用途では、患者情報が受信され、処置による利益が計算処理され、処置による利益のインジケータが出力される。あるバイオマーカ識別または評価方法では、患者記述子は、処置による利益に対して患者記述子の影響があるかについて評価され、処置による利益に影響を及ぼす記述子は、バイオマーカ(たとえば、処置効果のバイオマーカ)として識別される。システムおよび方法は、行われる使用に応じて、さらなる要素またはステップを含みうる。システムは、ターゲット評価プロセス(たとえば、薬物スクリーニング、生物学的ターゲットの評価)、開発監視、転用性研究、およびある個別化医療用途で使用されるとき、シミュレートされた個体の集団について入力を含むことになり、各個体が、リスク(Rc)および変数(X)に関連する。
システムは、ターゲット評価プロセス、開発監視、ならびにある転用性研究およびある個別化医療用途で使用されるとき、生理病理学的モデルを含むことになる。さらに、ターゲット評価プロセスの薬物スクリーニング用途、開発の監視、およびある転用性研究では、システムは、形式治療モデルを含むことになる。システムは、バイオマーカを識別または評価する方法において使用されるとき、生理病理学的モデル、任意選択で、全てのモデルパラメータまたは変数の分布によって構築された、シミュレートされたさらなる個体の集団を含むことができる。
一実施形態では、処置に関連する影響モデルは、(たとえば、影響モデルに関連する処置のデータベースにアクセスすることによって)方法およびシステムにおいて、入力される、生成または受信される、任意選択で記憶されることができる。別の実施形態では、処置に関連する影響モデルは、(i)処置Tについての情報を入力すること、生成または受信すること、および任意選択で記憶すること、ならびに、(ii)前記情報から、処置についての影響モデルを導出することを含むステップで、システムの方法によって導出される。
システムおよび方法の個々の要素が以下で述べられる。
1.1 処置入力および利益関数
処置(T)は、任意の適した処置でありうる。処置は、現実の処置またはシミュレートされた処置とすることができる。シミュレートされた処置の例は、1つまたは複数の生物学的成分の変更(たとえば、生物学的プロセスの変更、生物学的ターゲットの変更、たとえば抑制または刺激)または生物学的システムの変更である。現実の処置は、一般に、その臨床使用および/または非臨床使用からの情報が利用可能である処置(たとえば、処置方法、薬物)を含むことになる。
本発明の方法およびシステムでは、各処置は、ある集団について、処置なしの場合のリスクおよび患者特性(X)の関数として、処置による利益を記述する利益関数(用語「利益関数(benefit function)」は、本明細書で「影響モデル(Effect Model)」とも呼ばれる)に関連することになる。影響モデルは、図2のブロック104a〜104dに示される。適した影響モデルは、1つまたは複数の変数(複数可)(Y)に依存する処置なしの場合のリスク(Rc)、および、処置なしの場合のリスク(Rc)に含まれる特性以外の個体の特性のベクトルである変数(複数可)(X)であって、前記変数(X)および(Y)は、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる、変数(複数可)(X)の関数として、処置による利益(Rc−Rt)を記述する関数である。処置についての、本発明の方法およびシステムに対する入力は、処置および/または処置についての影響モデルに関する情報を含む処置記述子を含むことができる。影響モデルは、処置についての入力情報に基づいて本発明の方法およびシステムによって導出されうることが認識されるであろう。その結果、処置についての入力は、通常の処置識別子に加えて、関連する影響モデルなしの場合の処置(たとえば、臨床使用による結果など)に関する情報を含む場合があり、それにより、影響モデルは、その後、本発明の方法またはシステムによって生成され、処置に関連付けられる。異なるタイプの情報から影響モデルを導出する方法が、本明細書でさらに述べられる。別の実施形態では、処置についての入力は、処置に関する情報から以前に導出された影響モデルを含むことができ、この実施形態では、本発明の方法およびシステムは、処置について影響モデルをさらに導出する必要はない。
処置に関する情報は、データおよび/または処置記述子を含むことができる。データなどの情報は、限定はしないが、生物学的成分または細胞成分あるいは生物学的システムの機能に対する処置の影響を含む、インビトロアッセイ(たとえば、機能アッセイ、マイクロアレイデータなど)またはインビボアッセイからの情報などの任意の実験結果、その治療ターゲット、薬理学的情報などを含むことができる。情報はまた、たとえば市場に出ている処置の場合にそうであるように、限定はしないが臨床試験または臨床実践での使用を含む臨床使用からの任意の情報を含むことができる。したがって、方法は、任意選択で任意の実施形態において、処置についての実験結果を取得し、任意選択で、前記結果を記憶するステップを含むことができる。実験データは、その後、本発明の方法およびシステムにおいて、入力として統合される。処置に関する情報は、多くの場合、サイエンス、ネイチャー、全米科学アカデミー会報誌などのような多数の科学雑誌または抄録についてのコンピュータ探索を可能にする、MedLine、Chemical Abstracts、Biosis Previewsなどのような探索ツール、ならびに、データを抽出するために出版物を「読取り(read)」、解析する任意の探索エンジンを使用することによることを含む、科学出版物から取得されうる。情報源はまた、任意の公共データベース、個体データベース、および、特定の試験所内で開発され、かつ、特性の試験所に限定される機密データなどの独占データを含む。処置についての情報は、別法としてまたは付加的に、生理病理学的モデルまたは形式治療モデルからの出力を含むことができる。したがって、方法は、任意選択で任意の実施形態において、生理病理学的モデルまたは形式治療モデルを使用して(すなわち、モデルを実行して)処置をモデル化し、任意選択で、前記結果を記憶するステップをさらに含むことができる。
臨床使用からの情報、生理病理学的モデルまたは形式治療モデルからの情報が含まれる場合、情報は、通常、個体(複数可)についての成果(たとえば、医療成果、関心事象の発生)と共に、ある処置によって処置された1人または複数の個体についての患者記述子を含むことになる。情報が臨床使用からのものである場合、患者は、好ましくは、現実の患者であることになる。情報が生理病理学的モデルまたは形式治療モデルからの出力である場合、患者は、好ましくは疾病モデルとしてシミュレートされることになる。
シミュレートされた処置は、一般に、利用可能な情報が、たとえば実験または臨床実験からのデータがない状態で、単にまたは主にシミュレーションからのものである処置を含むことになる。シミュレートされた処置は、生物学的な関心ターゲットの変更として表されることができ、変更は、シミュレートされた処置の治療ターゲットまたはシミュレートされた処置によってもたらされる間接的影響を表すことができる。生物学的ターゲットを変更するステップは、コンポーネント「生理病理学的モデル」の下で論じられる。生理病理学的モデルは、処置について影響モデルを導出するために使用されうる処置情報をもたらす。
患者記述子は、好ましくは、(a)処置なしの場合のリスク(Rc)に統合される、関心成果(事象)の発生に相関する変数(複数可)(Y)(「リスクファクタ(risk factor)」と呼ばれる)、および/または、(b)Rcに統合されない利益の強度に相関する変数(複数可)(X)を含むことになる。
利益の強度に相関する変数(複数可)(X)は、任意選択で、処置記述子(たとえば、薬物の分布容積を調節する体重)と相互作用することができる。利益の強度に相関する変数(複数可)(X)の例は、肥満度指数、酵素活性、血圧、対立遺伝子の一方またはセット、(たとえば、食事、薬物または他の調節物質の投与などによる)安静時および/または刺激後の生物学的成分の任意のレベル、あるいは、任意の挙動または環境コンポーネントを含む。成果の発生に相関する変数(複数可)(Y)の例は、血中コレステロール、血圧、年齢、性別、挙動または環境コンポーネント、たとえば、喫煙または過去の喫煙、身体的運動などを含む。
一実施形態では、患者記述子はバイオマーカである。こうした実施形態では、バイオマーカは、検出または測定されうる患者記述子(たとえば、変数Xおよび/またはY)、または、インビボまたはインビトロで検出または測定されうる患者記述子から導出される信号とすることができる。こうしたバイオマーカはまた、XおよびYから導出されるときの、処置によって与えられる利益のサイズの予測子、または、Yだけから導出されるときの、疾病の予測子(たとえば、疾病状態、進行、重篤度など)とすることができる。一例では、患者記述子は、セクション1.1.1(疾病の新しいバイオマーカの識別)の方法に従って識別されるバイオマーカである。
本発明の方法およびシステムが、任意の医薬製品、またより一般的には任意の処置をモデル化するために使用されうることが認識されるであろう。処置を具現化しうる薬物の例は、たとえば、5αレラクターゼ阻害剤、5アミノサリシレート、5HT3受容体拮抗薬、アダマンテイン抗ウィルス薬、副腎皮質ステロイド、副腎皮質ホルモン阻害剤、アドレナリ性気管支拡張剤、高血圧発作用作用薬、肺高血圧用作用薬、アルドステロン受容体拮抗薬、アルキル化剤、αアドレナリン受容体拮抗薬、αグルコシダーゼ阻害剤、代替医療、抗アメーバ薬、アミノグリコシド、アミノペニシリン、アミノサリチル酸、アミリン類似物、鎮痛薬配合剤、鎮痛剤、アンドロゲンおよびナボリックステロイド、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII阻害剤、肛門直腸製剤、食欲抑制薬、制酸剤、駆虫剤、抗血管新生眼科作用薬、モノクロナール抗体、抗感染薬、抗アドレナリン作用薬、中枢作用性抗アドレナリン作用薬、末梢作用性抗アドレナリン作用薬、抗狭心症薬、抗不整脈薬、抗喘息薬配合剤、抗生物質/抗悪性腫瘍薬、抗コリン性制吐薬、抗コリン性抗パーキンソン薬、抗コリン性気管支拡張薬、抗コリン性変時作用薬、抗コリン薬/鎮痙薬、抗凝結薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗糖尿病薬配合剤、下痢止め薬、抗利尿ホルモン、解毒剤、制吐薬/抗げんうん薬、抗真菌薬、抗性腺刺激ホルモン、抗通風薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高脂血症薬配合剤、抗高血圧症薬、抗マラリア薬、抗マラリア薬配合剤、抗マラリア薬キノリン、抗代謝剤、抗片頭痛薬、抗悪性腫瘍薬解毒剤、抗悪性腫瘍薬インターフェロン、抗悪性腫瘍薬モノクロナール抗体、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン薬、抗血小板薬、抗シュードモナスペニシリン、抗乾せん薬、抗精神病薬、抗リューマチ薬、防腐剤および殺菌剤、抗甲状腺薬、抗毒素および抗蛇毒素、抗結核薬、抗結核薬配合剤、鎮咳薬、抗ウィルス薬、抗ウィルス薬配合剤、抗ウィルスインターフェロン、抗不安薬、鎮静剤、および睡眠薬、アロマターゼ阻害剤、異型抗精神病薬、アゾール抗真菌薬、細菌性ワクチン、バルビツール酸系抗痙攣薬、バルビツール酸、BCR−ABLチロシンキナーゼ阻害剤、ベンゾジアゼピン系抗痙攣薬、ベンゾジアゼピン、βアドレナリン遮断薬、βラクタム系阻害剤、胆汁酸封鎖剤、生物学的製剤、ビスホスホネート、骨吸収抑制剤、気管支拡張薬配合剤、気管支拡張薬、カルシトニン、カルシウムチャネル遮断薬、カルバメート抗痙攣薬、カルバペネム、炭酸脱水酸素阻害剤抗痙攣薬、炭酸脱水酸素阻害剤、心臓応力付加薬、心選択性β遮断薬、心臓血管作用薬、カテコールアミン、CD20モノクロナール抗体、CD33モノクロナール抗体、CD52モノクロナール抗体、CTLA4抗体、中枢神経系作用薬、セファロスポリン、耳垢軟化剤、キレート剤、ケモカイン受容体拮抗薬、塩素チャネル遮断薬、コレステロール吸収阻害剤、コリン作用薬、コリン筋興奮薬、コリネステラーゼ阻害剤、CNS興奮薬、凝固修飾剤、コロニー刺激因子、避妊薬、コルチコトロピン、クマリンおよびインダンジオン、cox−2阻害剤、うっ血除去薬、外皮用剤、診断用放射性医薬品、ジベンザゼビン系抗痙攣薬、消化酵素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、利尿剤、ドーパミン作動性抗パーキンソン薬、アルコール依存で使用される薬物、エキノカンジン、EGFR阻害剤、エストロゲン受容体拮抗薬、エストロゲン、去痰薬、因子Xa阻害剤、脂肪酸誘導体抗痙攣薬、フィブリン酸誘導体、第1世代セファロスポリン、第4世代セファロスポリン、機能性腸疾患薬、胆石溶解剤、ガンマアミノ酪酸類似物、ガンマアミノ酪酸再取込み阻害剤、ガンマアミノ酪酸トランスアミナーゼ阻害剤、胃腸薬、全身麻酔薬、泌尿生殖器薬、GI興奮薬、グルココルチコイド、ブドウ糖増加剤、糖ペプチド系抗生物質、糖たんぱく質系血小板阻害剤、グリシルシリン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬、ゴナドトロピン、グループI,II,III,IV,またはV抗不整脈薬、成長ホルモン受容体遮断薬、成長ホルモン、ピロリ菌除菌薬、H2拮抗薬、造血幹細胞モビライザ、ヘパリン拮抗薬、ヘパリン、ホルモン/抗悪性腫瘍薬、ヒダントイン系抗痙攣薬、違法(ストリート)薬物、免疫グロブリン、免疫薬、免疫抑制薬、不能症薬、インビボ診断生物学的製剤、インクレチン擬態剤、吸入抗感染薬、吸入コルチコステロイド、変力作用薬、インスリン、インスリン様成長因子、インテグラーゼ鎖転移阻害剤、インターフェロン、静脈内栄養薬品、ヨウ素標識造影剤、イオン性ヨウ素造影剤、鉄薬品、ケトライド、緩下剤、抗らい菌薬、ロイコトリエン調節剤、リンコマイシン誘導体、リポ糖ペプチド、局所注入可能麻酔薬、ループ利尿薬、肺表面活性剤、リンパ管染色剤、リソソーム酵素、マクロライド誘導体、マクロライド、磁気共鳴撮像造影剤、肥満細胞安定化薬、医療ガス、メグリチニド、代謝作用薬、メチルキサンチン、鉱質コルチコイド、鉱物および電解質、種々の作用薬、種々の鎮痛剤、種々の抗体、種々の抗痙攣薬、種々の抗うつ薬、種々の抗糖尿病薬、種々の制吐薬、種々の抗真菌薬、種々の抗高脂血症薬、種々の抗マラリア薬、種々の抗高血圧症薬、種々の抗悪性腫瘍薬、種々の抗パーキンソン薬、種々の抗精神病薬、種々の抗結核薬、種々の抗ウィルス薬、種々の抗不安薬、鎮静薬および睡眠剤、種々の生物学的製剤、種々の骨吸収抑制剤、種々の心臓血管作用薬、種々の中枢神経系作用薬、種々の凝固調整剤、種々の利尿剤、種々の尿生殖路作用薬、種々のGI作用薬、種々のホルモン、種々の代謝作用薬、種々の眼科作用薬、種々の耳作用薬、種々の呼吸作用薬、種々の性ホルモン、種々の局所作用薬、種々の分類されない作用薬、種々の膣作用薬、分裂阻害剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、モノクロナール抗体、口および喉薬品、mTOR阻害剤、mTORキナーゼ阻害剤、粘液溶解薬、マルチキナーゼ阻害剤、筋弛緩薬、散瞳薬、麻酔性鎮痛薬配合剤、麻酔性鎮痛薬、鼻抗感染薬、鼻抗ヒスタミン薬およびうっ血除去薬、鼻潤滑剤および洗浄、鼻製剤、鼻ステロイド、天然ペニシリン、ノイラミダーゼ阻害剤、神経筋遮断薬、次世代セファロスポリン、ニコチン酸誘導体、硝酸塩、NNRTI、非心選択性β遮断薬、非ヨウ素標識造影剤、非イオン性ヨウ素造影剤、非スルホニル尿素薬、非ステロイド性抗炎症薬、ノルエピネフリン再取込み阻害剤、ノルエピネフリン−ドーパミン再取込み阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、栄養補助食品、栄養食品、眼科麻酔薬、眼科抗感染薬、眼科抗炎症薬、眼科抗ヒスタミン薬およびうっ血除去薬、眼科診断薬、眼科緑内障薬、眼科潤滑剤および洗浄、眼科製剤、眼科ステロイド、抗感染薬を有する眼科ステロイド、眼科外科作用薬、経口栄養補給剤、耳麻酔薬、耳抗感染薬、耳製剤、耳ステロイド、抗感染薬を有する耳ステロイド、オキサゾリジンジオン系抗痙攣薬、副甲状腺ホルモンおよび類似物、ペニシリナーゼ耐性ペニシリン、ペニシリン、末梢オピオド受容体拮抗薬、末梢血管拡張薬、末梢作用性抗肥満薬、フェノチアジン系制吐薬、フェノチアジン系抗精神病薬、フェニルピペラジン系抗うつ薬、血漿増量剤、血小板凝集阻害剤、血小板刺激薬、ポリエン、カリウム保持性利尿薬、生菌、プロゲステロン受容体調整薬、プロゲスチン、プロラクチン阻害剤、プロスタグランジンD2拮抗薬、プロテアーゼ阻害剤、プロトンポンプ阻害剤、プソラレン、精神治療薬、精神治療薬配合剤、プリンヌクレオシド、ピロリジン系抗痙攣薬、キノロン剤、放射線造影剤、放射線補助剤、放射線剤、放射線抱合作用薬(radiologic conjugating agent)、放射線医薬品、RANKリガンド阻害剤、遺伝子組換えヒトエリスロポエチン、レニン阻害剤、呼吸器作用薬、呼吸器吸入薬品、リファマイシン誘導体、サリチル酸塩、硬化薬、第2世代セファロスポリン、選択性エストロゲン受容体調整剤、選択性セロトニン再取込み阻害剤、セロトニン−ノルエピネフリン再取込み阻害剤、セロトニン作動性神経消化器官調整剤、性ホルモン配合剤、性ホルモン、骨格筋弛緩薬配合剤、骨格筋弛緩薬、禁煙薬、ソマトスタチンおよびソマトスタチン類似物、殺精子剤、スタチン、無菌洗浄溶液、ストレプトマイセス誘導体、スクシンイミド抗痙攣薬、スルフォンアミド、スルホニル尿素、合成排卵刺激剤、四環系抗うつ薬、テトラサイクリン、治療放射線医薬品、チアジド系利尿剤、チアゾリジンジオン、チオキサンテン、第3世代セファロスポリン、トロンビン阻害剤、血栓溶解薬、甲状腺剤、子宮収縮抑制薬、局所にきび薬剤、局所作用薬、局所麻酔薬、局所抗感染薬、局所抗生物質、局所抗真菌薬、局所抗ヒスタミン薬、局所抗乾癬薬、局所抗ウィルス薬、局所収斂薬、局所壊死組織切除薬(debriding agent)、局所脱色素沈着薬、局所皮膚軟化薬、局所角質溶解薬、局所ステロイド、抗感染薬を有する局所ステロイド、類毒素、トリアジン抗痙攣薬、三環系抗うつ薬、3機能モノクロナール抗体、阻害剤、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、超音波造影剤、上気道配合剤、尿素抗痙攣薬、泌尿器抗感染薬、泌尿器鎮痙薬、泌尿器pH調整剤、子宮収縮薬、ワクチン、ワクチン配合剤、膣抗感染薬、膣製剤、血管拡張薬、バソプレシン拮抗薬、昇圧薬、VEGF/VEGFR阻害剤、ウィルスワクチン、関節内補充薬、ビタミンおよび鉱物配合剤、ならびにビタミンを含む。
1.1.1 疾病の新しいバイオマーカ(X,Y)の識別
ある実施形態では、本明細書でさらに述べるシステムおよび方法で使用するためのバイオマーカを識別するオプションのステップが提供される。他の実施形態では、バイオマーカを識別する方法は、本明細書で述べるシステムおよび方法の任意のものと別個に使用されうる。バイオマーカは、X、Yから導出されると、疾病の予測子(たとえば、疾病状態、進行、重篤度など)とすることができる。多くのこうしたバイオマーカは、疾病、したがって、処置なしの場合のリスク(Rc)とのその相関と共に、当技術分野で知られている可能性があるが、関心の疾病状態と相関することがわかっていない新しいバイオマーカを識別することが有用である場合がある。
一態様では、本明細書には、本発明の方法において変数Xとして後で使用されうるこうしたバイオマーカを識別する方法が提供される。したがって、バイオマーカおよびその識別方法は、患者記述子(特に、記述子X)を利用する本発明の幅広い方法で使用するように特によく適合する。
方法は、生理病理学的モデルのコンポーネントと疾病状態との間の相関を評価するために、セクション1.2で述べる生理病理学的モデルを利用する。生理病理学的モデルは、コンポーネントおよび/またはコンポーネント間の相互関係を含み、そのコンポーネントまたは相互関係は、患者記述子(特に、記述子X、および同様に記述子Y)を表し、これらの記述子は、したがって、候補バイオマーカである。生理病理学的モデルは、リスクファクタについてのベクトル(Y)内の異なるコンポーネントと他の記述子Xの組合せについて、または、リスクファクタについてのベクトル(Y,X)内の複数のコンポーネントと他の疾病関連コンポーネントXの組合せについて実行(run)される。生理病理学的モデルを実行することは、コンポーネントの値の各組合せについて関心事象のリスク(発生の可能性)を計算処理し、こうした計算処理から出力情報のセットを生成することになる。関心事象は、疾病状態、進行、重篤度などのインジケータなどの任意の適したパラメータでありうる。結果は、その後、関心の疾病状態に相関するバイオマーカを識別する統計的方法を使用して評価されうる。バイオマーカは、この場合、生理病理学的モデルのコンポーネントであることになり、好ましくは、これらのバイオマーカは、さらに、インビボまたはインビトロで検出または測定されうる患者記述子に対応することになる。
そのため、一態様では、本発明は、(a)1つまたは複数のコンポーネントあるいは生理病理学的モデルのコンポーント間の相互関係を含む生理病理学的モデルを実行することであって、コンポーネントまたは相互関係は候補バイオマーカを表し、生理病理学的モデルは、各候補バイオマーカまたはバイオマーカの組合せについて関心事象の可能性(または各候補バイオマーカに関連する値)を生成する、実行すること、および、(b)関心事象の可能性の増加または減少に相関するバイオマーカまたはバイオマーカの組合せを識別することを含み、前記相関されたバイオマーカまたはバイオマーカの組合せは、疾病の(たとえば、疾病状態、進行、重篤度の)バイオマーカであると判定される。任意選択で、方法は、さらに、本発明の成果処理システムによって、処置の利益を計算することを含み、前記バイオマ−カは、処置なしの場合のリスク(Rc)に含まれる個体の特性のベクトル内に含まれる(変数Y)。
1.1.2 利益関数
処置についての情報(たとえば、データ、処置記述子)は、特定の処置用の影響モデルがあるかまたはない状態で入力されることができる。一実施形態では、入力は、影響モデルを含み、こうした場合、影響モデル以外の処置についての情報は、最小とすることができ、たとえば、処置についての識別子は、影響モデル以外に最低限必要とされる全てである。別の実施形態では、処置についての情報が入力され、影響モデルは、各処置についての情報から影響モデルを導出することによって得られる。後者の実施形態では、処置についての情報は、通常、臨床データ、生理病理学的モデルまたは形式治療モデルからの出力を含むことになる。処置についての情報は、任意の適した方法、たとえば入力デバイスによって入力することによって、または、データベースから入力を受信することによって提供されることができる。任意選択で、本発明のシステムは、1つまたは複数の処置および各処置についての情報を含むデータベースを備え、こうした情報は、影響モデル、および/または、処置の治療ターゲット、インビボ実験結果、インビトロ実験結果、または臨床使用による結果に関する情報を含む。好ましくは、情報は、変数(たとえば、X,Y)を含むことになり、たとえば、臨床使用による結果は、処置Tで処置される患者の場合、成果(たとえば、関心事象の発生)ならびに患者特性を記述する患者記述子(X)および(Y)を含むことになり、患者記述子(X)および(Y)は、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)である。
影響モデルは、関心事象の発生によって処置による利益を表現する。予想される処置の影響は、通常、たとえば疾病によって引起される可能性がある、悪いまたは好ましくない関心事象(複数可)のリスクまたは発生(たとえば、その事象の死亡率および/または罹患率、その罹患性、あるいは、それを示す任意のパラメータ)の減少である。狭心症の例では、人は、胸痛の発生の確率を減らしたいと思う場合がある。この例では、影響モデルが使用され、影響モデルにおいて、Rcは、個体が処置Tを受けていない場合、個体における臨床事象(胸痛)の頻度である。同じであるが処置済みの被検者では、頻度は、同じ期間にわたってRtになる。これらの2つの頻度間の関係は、処置、疾病、および処置対象、すなわち、効果のために選択された関心の「事象(event)」(通常、臨床基準)、たとえば、心臓血管疾患の場合、胸痛、突然死、心筋梗塞に依存する。
関心事象は、限定はしないが、任意の臨床的に観測可能な現象か、任意の検出可能な尺度(たとえば、バイオマーカ)か、または、臨床的に観測可能なプロセスをもたらす基礎になる生物学的メカニズムを含む、任意の所望の事象とすることができる。事象は、臨床事象(たとえば、脳卒中、死など)の発生または未発生あるいは任意の定量的または定性的閾値(たとえば、腫瘍の成長、進行、または縮小、腫瘍容積、新しい腫瘍の形成任意選択で組織内または循環内のバイオマーカのレベルまたは生物学的成分のレベル、rADCwのレベル、遺伝子発現、ホルモンのレベル、生活の質のスケールスコアなど)の発生と同程度に単純であるとすることができる。
RtとRcとの間の関係の形態は、方程式
Rt=f(Rc,T,x)
によって表される。ここで、Tは、処置依存性があることを示し、Xは、Rcに関連する個体以外のRtに相関する個体の特性のベクトルである。Xは、表現型または遺伝子型導出変数である。一部は、個体の環境によって変更されることができる。この関係から、Rc−Rt=g(Rc,T,x)が導出される。この関数は、絶対的利益、すなわち、患者(Rc,x)について予想されるTによる利得を与える。
処置Tについて、処置についての情報に基づいて影響モデルを導出するために使用される方法は、処置について提供される情報に依存することになる。一般に、影響モデルは、限定はしないが、一般化線形および非線形回帰、ロジスティックおよびポアソン回帰、教師あり機械学習アルゴリズム(たとえば、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン)、ならびに、他の方法(応答曲面モデリング、多変量適応的回帰スプライン)を含む1つまたは複数の回帰方法を、利用可能なデータに適用することによって導出されうる。
1.臨床データからの影響モデルの導出
ある転用性研究方法または個別化医療方法によって例証される一実施形態では、処置は、処置の臨床使用から生じる情報に関連する。この実施形態では、処置される個体に対する処置の(たとえば、関心事象の発生の観点での)影響は、未処置の個体と比較され、臨床試験からのデータ(たとえば、各個体についての患者記述子および医療成果)が提供され、回帰技法が、その処置の影響モデル、ある集団の各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数を推定するために適用される。
2.生理病理学的モデルからの影響モデルの導出
ターゲット評価方法によって例証される一実施形態では、処置の影響は、生理病理学的モデルの使用によってモデル化される。この場合、処置についての情報は、通常、関心事象の発生の可能性に関する情報を含む。例は、生理病理学的モデル内で生物学的ターゲットを変更することを含み、その変更は、こうした変更をもたらすことになる処置を表す。この実施形態では、生物学的ターゲットが評価される場合、第1の生物学的状態(たとえば、疾病状態)を表す未変更の生理病理学的モデルの(たとえば、関心事象の発生の観点での)影響は、好まししくは現実のまたは仮想の個体の集団のそれぞれの場合に、変数(複数可)を考慮して、変更を含む変更済み生理病理学的モデルの影響と比較されうる。回帰技法が、その後、処置なしの場合のリスク(Rc)および処置による利益(Rt)についての2次元のデータセットに適用されて、処置の影響モデル、ある集団の各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数が推定されうる。単純な場合、影響モデルは、生理病理学的モデルを記述する方程式のセットを数学的に解くことによって得られうる。それにより、結果として得られる利益は、生物学的ターゲットを変更することから予測される利益を記述することになり、生物学的ターゲットの生理病理学的役割および治療の可能性が評価されることを可能にする。
3.形式治療モデルからの影響モデルの導出
開発監視方法によって例証される別の実施形態では、情報は、薬理学的情報が、それについて入手可能であるまたはシミュレートされる処置について入力される。この実施形態では、薬理学的情報が入力され、処置は、薬理学的モデルおよび生理病理学的モデル含む形式治療モデルならびに変数(複数可)でモデル化される。処置がない状態の生理病理学的モデルの(たとえば、関心事象の発生の観点での)成果は、処置によって修正された生理病理学的モデルの影響と比較され、回帰技法が、その後、処置なしの場合のリスク(Rc)および処置による利益(Rt)についての2次元のデータセットに適用されて、処置の影響モデル、ある集団の各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数が推定されうる。
任意選択で、形式治療モデルを含む方法またはシステムを使用するときの任意のステップにおいて、臨床データを提供し、形式治療モデルを修正するために前記データを使用するステップが実行されうることが認識されるであろう。こうしたステップは、形式治療モデルによる利益に関する結果を臨床データから得られる結果と比較することによって、形式治療モデルの精度を検証し、改善するという影響を及ぼすことになる。こうしたステップは、形式治療モデルから計算処理される影響モデルを、臨床データから導出される影響モデルと比較することを含みうる。その比較は、常套手段および含まれる変数を考慮する。任意の相違が調査される。形式治療モデルから計算処理される影響モデルは、通常、臨床データから計算処理される影響モデルに比べて、現実により近いと思われるであろう。比較は、臨床データから導出される影響モデルに含まれ、形式治療モデルから導出される影響モデルに含まれない、または、その逆の変数に的を絞る。これらの変数は、その後、後者に含まれ、また、個体又は集団の利益の精度が改善される場合、および/または、強い生物学的関連を持つ場合、形式治療モデルに統合または維持される。
1.2生理病理学的モデル
ターゲット評価、開発の監視、転用性研究、および個別化医療のためのいくつかの方法などのある実施形態では、生理病理学的モデルが使用される。
生理病理学的モデルは、好ましくは、疾病をもたらし、臨床的に観測可能な成果を出力として統合する生物学的メカニズムに関する入手可能な知識の全てまたは相応の(due)選択部分を反映することになる。生理病理学的モデルは、疾病状態の動的挙動を記述するために使用される論理形式を表す、種々の数学的、論理的、数値的、および/またはコンピュータ化機器を用いるかまたは用いない、論理形式のセットを含むモデルでありうる。生理病理学的モデルは、好ましくは疾病モデルである。生理病理学的モデルで表されるプロセスは、任意の臨床的に観測可能な現象、または、臨床的に観測可能なプロセスをもたらす基礎になる生物学的メカニズムを、生物学的メカニズム自体が臨床設定において容易に測定可能であってもなくても、含むことができる。プロセスの非制限的な例は、任意の生物学的プロセス、受容体に対する薬物の結合(たとえば、結合定数を含む)、特定の化学反応、たとえば酵素反応という触媒作用(たとえば、こうした反応速度を含む)、分子または分子複合体などの細胞成分の合成または分解(たとえば、こうした合成または分解速度を含む)、たんぱく質のリン酸化またはグリコシル化などの細胞成分の修飾(たとえば、こうしたリン酸化またはグリコシル化速度を含む)、細胞の増殖、活性化、移動または遊走、或いは死、任意の分子(たとえば、イオン、水、任意の化学反応性分子、たんぱく質など)の流れ、および同様なものを含む。
図2のブロック101a〜101dは、生物学的プロセス、組織、器官、および/または身体コンポーネントを記述する生物学的および細胞成分を接続する定量的および/または定性的相互作用のネットワークを含む、生物学的システムを表す生理病理学的モデルを表す。生理病理学的モデルは、個体のパラメータおよび/または変数並びにリスクファクタに関連する。リスクファクタ(Y)は、Rc、関心の成果(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)のリスクで要約される。さらにYに対して、個体のパラメータ/変数は、Xで表され、Xは、個体相互の変動性のベクトルである。したがって、Xは、Rcに含まれる個体以外の個体の特性を表し、Xは、Yのように、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる。
生理病理学的モデルは、通常、機構的モデルを含む。生理病理学的モデルは、別法としてまたは付加的に、経験的モデルおよび/または現象的モデルを含みうる。生理病理学的モデルの例は、生物学的プロセスを記述するモデル並びに基礎になる生物学的プロセスを記述することなく生物学的システム間の相互作用を記述する現象的モデルを含む。
生理病理学的モデルは、複数の器官を含む人間またはシステム全体を刺激する必要はないが、刺激することができるが、疾病プロセスに関わる1つまたはいくつかのステップなどの、少なくとも1つの生理的プロセスを刺激することができることが認識されるであろう。アプリケーションに応じて、生理病理学的モデルは、こうした刺激によって事象のリスクが予測される限り、たとえば、細胞の1つまたは複数の群、組織、1つまたは複数の器官などを刺激することができる。
生理病理学的モデルにおいて表される生物学的プロセスは、たとえばシグナリングおよび制御経路を含みうる。こうした経路の生物学的成分は、たとえば、1次または中間シグナル伝達分子、ならびに、これらの経路を、通常、特徴付けるシグナル伝達または制御カスケードに関与するたんぱく質を含む。シグナル伝達経路の場合、受容体に対しるシグナル伝達分子の結合は、中間シグナル伝達分子の量に直接影響を及ぼし、経路たんぱく質のリン酸化(または、他の修飾)の程度に間接的に影響を及ぼしうる。シグナル伝達分子の結合は、たとえば細胞の転写挙動に影響を与えることによって、細胞たんぱく質の活性に影響を及ぼしうる。これらの細胞たんぱく質は、信号によって始動される細胞事象の重要な作動因子であることが多い。細胞サイクルのタイミングおよび発生を制御するような制御経路は、信号伝達経路といくつかの類似性を共有する。ここで、複数の、また、しばしば進行中の細胞事象は、たとえば染色体分離による細胞分裂などの成果を達成するために、しばしばフィードバック制御によって、一時的に協調される。この一時的な協調は、制御経路の機能化の結果であり、その機能化は、修飾または活性化(たとえば、リン酸化)のそれぞれの他の程度の、たんぱく質の相互影響によって媒介されることが多い。他の制御経路は、環境の変化に直面して細胞代謝の最適レベルを維持しようとしうる経路を含みうる。
生理病理学的モデルは、数学的関係のセットを使用して生理的システムの生物学的プロセスのセットを表す数学的モデルとすることができる。たとえば、モデルは、第1の数学的関係を使用して第1の生物学的プロセスを、また、第2の数学的関係を使用して第2の生物学的プロセスを表しうる。数学的関係は、通常、その挙動(たとえば、時間発展)がモデルによってシミュレートされうる1つまたは複数の変数を含む。より詳細には、モデルの数学的関係は、変数間の相互作用を規定し、変数は、生理的システムの種々の生物学的成分のレベルまたは活性、ならびに、種々の生物学的成分の組合せまたは集約表現のレベルまたは活性を表しうる。モデルは、通常、モデルに含まれる変数の挙動に影響を及ぼすパラメータのセットを含む。たとえば、パラメータは、変数の初期値、変数の半減期、レート定数、変換比、およびベキ指数を表す。これらの変数は、通常、実験システムにおける変動性のために、ある範囲の値を許容する。既知の制約に整合する成分およびシステムの挙動を与えるために、特定の値が選択される。したがって、モデルの変数の挙動は、経時的に変化する。コンピュータモデルは、数学的関係内にパラメータのセットを含む。一実施態様では、パラメータは、生物学的システムについて内因性特性(たとえば、遺伝因子)ならびに外部特性(たとえば、環境因子)を表すために使用される。モデルで使用される数学的関係は、たとえば、通常の微分方程式、偏微分方程式、確率微分方程式、微分代数方程式、差分方程式、セルラーオートマタ、結合写像、ブールネットワーク方程式、ファジー論理ネットワーク、またはそれらの組合せを含みうる。
生理病理学的モデルを実行することは、関心事象のリスク(発生の可能性)を計算処理し、こうした計算処理から出力情報のセットを生成することになる。生理病理学的モデルは、好ましくは、リスクに関連することになり、変数(X)および(Y)は患者記述子であるモデルパラメータを記述する。任意選択で、変数の1つまたは複数は、生理病理学的モデルで使用されるバイオマーカであり、変数(X)および(Y)は、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)である。出力情報は、その後、たとえば生物学的ターゲットの所与の変更のための影響モデルを導出するために使用されうる。
生物学的ターゲット評価方法などのいくつかの実施形態では、関心の生物学的ターゲットを選択するステップは、図2のブロック101bの上に示すように、実行されうる。このステップは、考えられる処置Tとして表された生物学的ネットワークの1つまたは複数の変更(複数可)を、入力すること、たとえば、受信すること、入力デバイスによって入力すること、またはその他の方法で指定することを含むことができる。したがって、評価される変更は、生物学的ターゲットを変更することの治療的利益が、その後計算処理されるように指定される。
好ましい生理病理学的モデルは、次のようにさらに述べられる推論的モデルに基づく。
1.モデルの構築:推論的モデル
一態様では、推論的モデルが使用される。計算処理モデルを構築する前のステップであり、たとえば、微分方程式のセットを有するモデルである。こうしたモデルは、生物学的コンポーネントのレベルの生物学的プロセスおよび組織および/または器官レベルのプロセスを含む、種々の相互作用レベルを統合するのに適しているという利点を有する。組織および器官レベルのプロセスを統合することによって、生理病理学的モデルは、臨床の関心事象のリスクを予測するために使用されうる。したがって、推論的生理病理学的モデルは、疾病プロセスを考慮しうる。すなわち、そのモデルは、生理学を含む上位レベルを統合する。疾病は、遺伝子から集団までの、複雑な現象についてのいくつかの層状組織化レベルを包含する。時間スケールは、ナノ秒から数十年まで変わり、前者のスケールの場合、化学的相互作用を、後者のスケールの場合、展開から臨床事象までを有する。がんまたはアテローム性動脈硬化などの慢性疾患では、分子、細胞、組織、およびターゲット器官レベルにおける事象のシーケンスは、死または心筋梗塞を達成するのに何十年もかかる。科学情報が急速に出現するという観点から、モデルは、したがって、任意の新しい関連知識を統合するのに十分に柔軟性があると考えられることになる。
全体として、疾病のモデリングは、3つの軸、すなわち、現象またはサブシステム軸、時間軸、統合軸に沿って生じる。推論的生理病理学的モデルを構築するときの第1のステップは、モデル化すべきは何か、および対象(複数可)の精密な定式化にどのように到達するかを決定することであり、そのことは、次に、構築プロセス中に生じる選択を決定することを必要とする。さらなるステップは、全ての調査トピックスに応じて変わる。しかし一般的に、モデルを構築することは、表1に示す主要なステップを含むことになるが、そのステップは、示す順序で実行される必要はない。
一般に、i)生物学的プロセスのモデリングは、ピースワイズである可能性があり、各ピースまたはサブモデルについて、全体のモデルを検証するために使用されうる、明確に識別された入力および出力ならびにバイオマーカを有し、ii)各ピースは、他のピースと異なる複雑さのレベルで数値的に解かれる可能性があり、iii)モデリングプロセスの進行中に随時、サブモデルが、より詳細なサブモデルに置換される可能性がある(「プラグイン(plug−in)」原理)。
システムの生理病理学は、モデルについて関連する証拠およびデータを選択する前に、全ての入手可能な証拠およびデータを収集し解析することを必要とする。証拠およびデータの不確実性ならびに証拠の強さは重み付けされ、記録される。生理病理学のモデルを構築することは、十分に有効であると考えられると共に、モデルにおいて重要である証拠の要素を含む「知識の基礎(basis of knowledge)」による。モデルに組込まれる証拠のタイプは、構造生物学を含む、基礎生物学におけるインビトロ実験結果から、疫学、ランダム化臨床試験、ならびに臨床調査および撮像データまでの範囲にあるとすることができる。実験データは、実験条件ならびに細胞および種のタイプと共に、科学文献から収集され、データは、その後、比較され、誤ったデータが排除される。実験および観測設定の多様性のために、所与のパラメータの値は、ある範囲にわたって変動する場合があり、また、記録は、証拠の変動性および強さによって得点を付けられる。データは、通常、それらの証拠の強さを記述する得点付けと共に、定量的、定性的、および構造的情報を組込むデータベースに記録されることになる。
2.推論的モデルのサブモデルへの分割
推論的モデルは、通常、疾病の全てのコンポーネントおよびモデリングプロセスの目的にとって十分に重要であるそれらの相互作用をまとめるテキストおよび/またはチャートである。推論モデルは、表1の後のステップのための基礎である。コンポーネントおよびそれらの関係は、最後の数学的モデルにおいて暴露することになる。推論的モデルは、チャートおよび規則のいくつかのシリーズによって要約されたテキストとして提示される。推論的モデルは、種々の埋め込み形態で、すなわち、分子レベルで、細胞レベルでなどで現れる。
数学的モデリングステップでは、大量の異種の知識およびデータが、通常、統合される。解は、独立したサブシステムを識別することによって、推論的モデルを分割することにある。これらは、大域的なシステムダイナミクスを表しながら、サブモデルとして独立に調査され、モデル化されることができることを特徴とする。たとえば、急性脳卒中をモデル化するとき、アポプトーシスは、プロセス全体としてそれ自身によって記述される。サブシステムの独立性は、例示的な規則のセットを使用して記述されうる。規則のセットは、以下のようなものである。i)基礎になる生物学的現象は、認識された特定の機能状態を有する。ii)他のサブシステム(サブシステムの入力/出力)に接続する、特徴のはっきりした信号が存在する。iii)(シミュレーション結果の検証のために)少なくともインビトロまたはインビボで測定可能であるバイオマーカを包含する。たとえば、アポプトーシスは、比較的単純な入力/出力信号、たとえば、入力としてカルシウム濃度、エネルギー貯蔵量、および、出力としてエネルギー消費、最終的に細胞死を有するサブシステムと見なされうる。
3.年代学および組織化レベル
サブシステムは、2つの他の関心の特性、すなわち、年代学コンポーネントおよび組織化レベルを有する。分子レベルは下位レベルであり、一方、集団レベルは上位レベルである。推論的モデルの重要なピースとして、サブシステムは、2つの軸、すなわち時間軸と組織化軸に沿って組織化されうる。両方の軸は、事象のシーケンス、すなわち年代学および因果関係の記述子である。例として、がん成長または血管事象のマルチスケール数学的モデルが、最近提案された。Ribba, B.等,(2006)J Theor Biol. 243:53−541およびDrone, M.A.等(2007)Brain Res;1138:231−42、その開示は参照により本明細書に組込まれる。
急性脳卒中の例が本明細書で提供される(たとえば、図3および図4を参照)。このモデルでは、細胞は、エネルギー剥奪による異常なイオン交換から生じる、細胞浮腫によってもたらされる壊死によって最初に死ぬ。その後、梗塞周辺部エリアの細胞が、アポプトーシスプロセスの終了によって死ぬ場合がある。しかし、アポプトーシスは、後で起こり、数日続く可能性がある。これらの例は、サブシステムが因果関係によってリンクされ、異なる年代学を有しうることを示す。細胞および組織の機械的特性は、遺伝子転写から組織リモデリングまでの範囲の多くの生物学的プロセスの調節因子として益々認識されている。細胞弾性は、機械的シグナル伝達についてのキーパラメータであり、一方、細胞外マトリクス剛性は、細胞接着および移動を調節する。環境的機械因子は、細胞成長、増殖、たんぱく質合成、および遺伝子発現などの多くの細胞機能に影響を及ぼすことが知られている。そのため、組織レベルでの数学的モデリングは、好ましくは、たとえば細胞増殖、遺伝子発現、たんぱく質合成を反映する異なるサブシステムを異なる組織化レベルで統合することになる。モデリングは、いくつかの実施形態では、たとえば、分子または遺伝子レベルで調節される細胞増殖、ならびに、組織圧迫および変形の巨視的変化を統合することになる。
4.パラメータ評価
モデルは、通常、代数または論理関数およびパラメータを特徴とする方程式のセットおよび/または規則のセットである。関数の選択は、システムコンポーネントまたは実体間の関係または相互作用に依存する。パラメータ値は、モデルの空間的および時間的挙動を決定する。パラメータ選択および評価は、一般に、3つの異なる方法のいずれかまたはその組合せに従う。3つの方法とは、次のようなものである。i)パラメータ値は、文献から引出される、すなわち、パラメータ値がそこから導出される実験データはアクセス可能でなく、ii)パラメータは、データへのモデルの当てはめを可能にする統計的方法(たとえば、最尤法)を使用して実験データのセットに関して調整され、かつ/または、iii)パラメータ値は、モデルが、一般的な生化学的、生理学的、または生理化学的な規則あるいは予想される挙動を満たすことを可能にされる。
人は、モデルにおいて、全てのパラメータについてパラメータ値の実験セットで始め、「妥当な(reasonable)」セットに移ることができる。実験または観測セットは、文献から直接引出される。実験または観測セットは、モデルが埋め込まれるセットにできる限り近い、同様な実験設定で観測された値を含む。パラメータは、モデルが、刺激に対する生理的に重要な反応、正しい安静状態を示す場合でかつパラメータ値がもっともらしい範囲内に留まる場合、「妥当(reasonable)」と考えらえることができる。値は、「実数(real)」値である必要があるのではなく、むしろ、モデルの定性的ダイナミクスおよび安静特性に応じてもっともらしい範囲内に割当てられうる。これらの特性は、推論的モデル内に含まれ、かつ、知識の基礎から引出される予め指定した規則から生じる。したがって、知識の基礎は、実験データだけでなく、大域的挙動の定性的記述も含みことになる。
妥当なセットは、確率論的方法を使用して、または、決定論的方法を使用して評価されうる。確率論的方法は、パラメータのセットをランダムに選択し、そのセットが正しい巨視的挙動をもたらすかどうか、すなわち、そのセットが、定性的知識を表すルールのセットを満たすかどうかをチェックすることからなる。決定論的方法によって、本発明者等は、最初に、計算処理された結果と所望の結果との間の差を測定する「距離(distance)」を構築し、その後、距離を最小にしようとする。図3のインチャネルモデルの例に関して、規則の基礎は、i)安定した安静平衡電位が存在する、ii)短い(1ms)十分に強い印加電流が活動電位をもたらす、である。これらの2つの規則は、数学的記述に変換され、自動プロシージャによって容易に検証されうる。試験されるセットは、規則を満たす場合、記憶される。実行の終了時に、数千のパラメータのセットが試験され、数十の適したセットがもたらされ、そのセットは、その後、規則により厳しい基準を付加することによって、より詳細に調査されうる。規則は、たとえば、i)活動電位が、短い期間の外部刺激の間に生成され、それより短いと、活動電位が存在しないはずであり、長いと、細胞が脱分極する、ii)長く続く外部刺激の場合、複数の活動電位が生成されるかまたは反復発火が生じる、である。未知の値のパラメータは、同じように管理される。すなわち、それらの値は、関心の生物学的システムの挙動を記述する規則を、モデルが満たすようにさせる値である。
5.モデルタイプ
種々のモデルタイプが適するとすることができる。現象的モデルは、関心の現象のエンベロープの表現に低減される。たとえば、図3のモデルの急性脳卒中のアポプトーシスは、時間と共に最大まで増加し、次に、水平になり、最終的に、数日後にベースラインまで下がる任意の数学的方程式によってモデル化されうる。現象的モデルの主要な利点は、その単純さである。機構的モデルは、一方、できる限り多くのシステムの既知の詳細を組込むことを目標とする。本明細書で述べる生物学的ターゲットを評価することなどの実施形態では、機構的モデルが好ましい。2つの代替物間の選択は、通常、i)モデリングプロセスの対象、ii)システムに関する情報の可用性、iii)選択された方策に依存する。プラグイン原理は、サブシステムについて現象的モデルを使用することを可能にし、一方、他のサブシステムは機構的にモデル化される。サブシステムを詳述する必要性が後で生じる場合、現象サブモデルは、同じ入力と出力を有する機構的サブモデルに置換される。
1.3形式治療モデル
ターゲット評価、開発の監視、転用性研究、および個別化医療のためのある方法などの本発明のある実施形態では、形式治療モデルが使用される。
形式治療モデルは、生理病理学的モデルおよび薬理学的モデルを含む。形式治療モデルは、薬物動態学(PK)モデル、薬力学(PD)モデル、および生理病理学的モデルによって構築されうる。開発を監視する方法(図2のブロック106c)では、形式治療モデルへの入力として提供される関連するPKおよびPDデータは、その開発が監視される(図2のブロック111)処置を使用した実験から得られうる。
臨床結果の置き換えを評価する方法(図2のブロック106c)では、形式治療モデルへの入力として提供されるPKおよびPDデータは、例えば、処置を用いる前の研究から観察され、データベース(図2のブロック111)に格納されような、科学的または医療文献から得られうる。
図2のブロック102aおよび102bに示す薬理学的モデルは、生理病理学的システム(たとえば、生理病理学的モデル)に対する薬物の影響を記述し、また、薬理学および生理学の一般的な科学的知識に基づく1つまたは少数の方程式によって実行される、段階的計算処理を含む。薬力学モデルは、関連組織の薬物レベル(Ct)を計算処理する第1の薬物動態学サブモデル、および、入力としてCtを使用し、生理薬理学的モデルの1つまたは複数のコンポーネントに対する薬物の影響を記述する第2の薬物動態学サブモデルを含みうる。薬力学サブモデルは、任意選択で、疾病メカニズムおよび/または副作用に対する薬物の影響を変えることができるさらなる因子を考慮することができる。モデルは、任意選択で、薬物によって引起される生物学的システム(複数可)の変更を示す1つまたは複数のバイオマーカを考慮することができる。疾病メカニズムおよび/または副作用に対する薬物の影響を最後の関数(複数可)は、zと呼ばれる。形式治療モデルを実行することは、関心事象の可能性を計算処理し、こうした計算処理から出力情報のセットを生成することになる。出力情報は、その後、生物学的ターゲットの所与の変更のための影響モデルを導出するために、使用されうる。
図5に示す形式治療モデルの例示的なPKおよびPDサブモデルでは、身体内での薬物または任意の種類の処置の活性は、それぞれが別々にモデル化される4つのサブシステムに分割されうる。ユニークなシステムエントリ(入力)は、量/投与(dosing)、投与のタイミング、および累積量を有する薬物投与である。出力は、予想される臨床的影響および副作用(複数可)である。各サブシステム間に、身体内の薬物活性の1つまたは複数のマーカが、存在し、確定、すなわち、関連流体内の薬物レル(C(t))および中間マーカ(バイオマーカ)(図5のIO(t))にアクセス可能である。IOは、よりしばしば、臨床成果に相関するだけである。それでも、図5のプロセスのモデリングにおいて、IOが、疾病のメカニズムに対する薬物の影響を記述すること、すなわち、IOが、薬物の作用機序を調停するシグナルであることが仮定される。こうした場合、また、以下で示すように、IO(t)は、zと呼ばれる。各サブシステムは、現象的手法または機構的手法によってモデル化されうる。コンパートメントモデリングは、薬物動態学(PK)サブモデルについての前者の例である。
そのため、形式治療モデルは、所与の用量での「インシリコ」薬物投与を、最終生成物(臨床成果に対する影響)にリンクし、薬物の量、生物学的流体、主に血液内の薬物濃度、ならびに、薬物投与に続く薬理学的活性および臨床的影響のバイオマーカ(複数可)が、単一の大域的なモデルに統合され、計算処理されることを可能にする。
したがって、各形式治療モデルは、薬物の潜在的な活性を、中間のまたは最終の(たとえば、臨床の)検出可能な影響まで運ぶプロセスの各ステップに対処するサブモデルの縦続接続でありうる(図6)。ステップのシーケンスおよびその内容は、Veng−Pedersenスキーム(Veng−Pedersen P and Modi NB (1992) J Pharm Sci; 81; 925−34)に従いうる。次に、各ステップは、サブステップに分解(break down)される。各ステップiまたはサブステップijは、入力、出力、出力を入力にリンクする数学的サブモデル、スケールパラメータ(複数可)θi、およびXiで表現される単一多型性によって規定される。ステップがサブステップからなる場合、サブステップと同程度に多いXが存在し、それらは、X
ijとして記され、jはサブステップを表す。ステップi−1の出力は、ステップiの入力である。したがって、この単純な例証では、プロセスは、ステップドメイン内で(すなわち、ステップ間で)線形であるが、ステップ内で線形でない。任意選択で、全体のプロセスがもはや線形でないように、2つ以上の連続ステップ間にフィードバックプロセスを含む、より現実的なモデルが使用されうる。ステップがどのように構築されうるかの例として、薬物分配の事例(ステップi−2)が詳述される。前のステップ(吸収)からの入力は、体循環Aに達する薬物の量である。出力は、2回の投与間の血液中の平均薬物レベルC
avgである。対応する数値サブモデルは、古典的な薬物動態方程式
によって与えられる。ここで、Tは投与間隔であり、θ
21およびθ
22は2つのモデルパラメータであり、後者は最大クリアランスである。患者変数は、X
2、年齢である。最後のステップは、zの修正値を与える。
1.4シミュレートされた個体の集団
ターゲット評価、開発の監視、転用性研究、および個別化医療のためのある方法などの本発明のある実施形態では、シミュレートされた個体の集団が使用される。
図2のブロック103a〜103dに示す、シミュレートされた個体の集団は、仮想集団、たとえば、仮想個体の群または集合である。シミュレートされた個体の集団は、臨床的な関心の集団などの現実の被検者の集団の集団特性を表すことができる、または、表すことができない。そのため、シミュレートされた個体の集団は、関心の集団の現実的サンプルを表すように集団が構築される、仮想的な現実的集団と呼ばれうる。こうしたサンプルは、たとえば、保健医療費支払人によってカバーされる、特定の処置についての候補である、特定の年齢層内にいる、特定の疾病を持つかまたは罹り易い、および/または、指定された生理的および/または医療履歴を有する、特定の領域または国の人々の群を表すことができる。
そのため、仮想的な現実的集団は、通常、現実の被検者のサンプル集団の統計的特性または挙動を近似する統計的特性または挙動(たとえば、平均(mean)、メジアン、分散、動態など)を有することになる。集団内の各個体は、個体のパラメータ(複数可)および/または変数(複数可)(X)ならびに1つまたは複数のリスクファクタ(複数可)(Y)を含む患者記述子に関連し、後者は、Rc、事象または成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデント)で要約され、パラメータ(複数可)/変数(複数可)は、Rcに含まれる個体以外の個体の特性のベクトルであり、XおよびYは、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)である。変数は、たとえば、年齢、性別、人種、任意の測定可能または検出可能な変数(バイオマーカ(複数可))、医療履歴関連情報、症状、疾患の重篤度、以前のまたは同時の処置などを含みうる。心臓血管疾患における変数の例は、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)、総コレステロール(TC)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL−C)、糖尿病(DM)、喫煙状態、体重、身長、および血清クレアチニンなどの古典的なリスクファクタについての値を含む。仮想集団における患者記述子はまた、モデル変数およびパラメータに由来する可能性があり、間接的な生物学的関連または現実性だけを有することができる。仮想集団における全ての患者記述子は、潜在的なバイオマーカである。
仮想的な現実的集団は、心臓血管研究のために以下の集団を生成するために使用される以下の一般的な方法を使用した、代表的な観察研究からのデータおよび人口統計学的情報源からの統計量を使用して構築されうる。仮想被検者の数は、「国立統計経済研究所(Institut National de la Statistique et des Etudes Economiques)」(INSEE)から知られている、たとえば35と64との間のフランス人被検者の年齢および性の構造を再生するように固定された。仮想集団の各被検者は、その次元が、年齢、性別、および他の古典的な心臓血管のリスクファクタ(収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)、総コレステロール(TC)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL−C)、糖尿病(DM)、喫煙状態、体重、身長、および血清クレアチニン)などの個体の関連特徴である変数によって表された。シミュレーションについての入力は、各クラスの共分散行列と共に、性および年齢カテゴリによって分類された、平均、標準偏差、および分位数として要約されたデータであった。収集されたデータは、抗糖尿病薬、コレステロール低下処置、または高血圧を抑える処置を受けない個体のベースライン特性に関連する。これらの特性は独立ではなく、たとえば、血圧が、同じ年齢カテゴリ内で、糖尿病および総コレステロールに関連することがよく知られている。未処理変数の正規性を調査し、必要であるときに、数学的演算を適用して、未処理変数を正規分布に変換した後、多変量正規分布(MND)に従がうために、共変量がとられた。MNDに基づくアルゴリズムは、SBP、DBP、TC、HDL−C、血中グルコース、血漿クレアチニン、体重、および身長を生成するために使用された。所望の間隔で各仮想被検者にランダムな年齢を割当てるために、一様分布が使用された。
さらに、集団が表されるための観察研究から、変数が入手可能でない場合、こうした変数は、科学データ(たとえば、出版物)から推定されうる。たとえば、先の例では、リスク方程式の心臓血管リスクファクタとして有用な左心室肥大は、再分極の異常に関連するECG上の高いR波によって規定される。ターゲット集団(ここではフランス)の観察研究からの値をとる代わりに、INDANAデータベースからの情報がとられた。ECG−LVHを有する確率は、ロジスティック回帰を使用して、SBP、性、および年齢の関数として表現され、結果として得られた方程式は、シミュレートされた被検者の個体のLVH確率を推定するために使用された。糖尿病の被検者は、1.26g/l以上のランダム血中グルコースレベルを有する被検者である。喫煙状態は、年齢および性以外の共変量との有意の相関を呈しないため、二項分布を使用することによってシミュレートされた。二項分布では、喫煙者であるという確率は、同じクラスの元も被検者における喫煙状態有病率によって表された。これらの変数、LVH、糖尿病、および喫煙状態は、その後、2種に分けられた。共変量値が生物学的にもっともらしいために、現実の分布の限界を超えた極端な共変量値を有するシミュレートされた個体は排除された。
シミュレートされた個体の集団はまた、完全に偽の個体または部分的に偽の個体を含むように構築されうる。こうした場合、患者記述子XおよびYは、モデルの変数およびパラメータによって規定され、その分布および共分散は、モデル成分の変動性に関する利用可能な全ての知識を使用して構築される。完全に偽の個体では、仮想個体は、現実の個体において測定されていない、または、測定されることができない変数を特徴とする、または、特徴としない。部分的に偽の個体では、各個体は、偽の変数と測定された変数の混合物、変数の中でも、おそらくその分布が現実の個体から得られるバイオマーカを特徴とする。生理病理学的モデル内の変数およびパラメータのセットからの偽りの変数はまた、潜在的なバイオマーカでありうる。
仮想的な現実的集団が構築されると、シミュレートされた個体の一貫性が集団レベルで試験されうる。たとえば、先の例では、仮想的な現実的集団における予測される心臓血管死亡率は、フランス統計で公表された死亡率と比較された。致死性心臓血管疾患(CVD)の10年リスクは、シミュレートされた各個体から計算された。10年予測死亡率は、100000の人々による各年齢−性クラスにおける平均リスクとして計算された。生命表方法は、10年推定フランス人死亡率を得るために、国家統計から最新の入手可能な死亡率を外挿するために使用された。
1.5現実の個体についての患者記述子
本発明の個別化医療実施形態では、図2のブロック109に示す、現実の個体についての患者記述子(複数可)が入力される。患者記述子(複数可)は、個体のパラメータおよび/または個体を記述する変数を含みうる。個体のパラメータおよび/または変数は、通常、1つまたは複数のリスクファクタ(複数可)(Y)およびXで表されるパラメータ/変数を含むことになり、XおよびYは、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる。変数は、たとえば、年齢、性別、人種、任意の測定可能または検出可能な変数(たとえば、バイオマーカ(複数可))、医療履歴関連情報、症状、疾患の重篤度、以前のまたは同時の処置などを含みうる。心臓血管疾患における変数の例は、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)、総コレステロール(TC)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL−C)、糖尿病(DM)、喫煙状態、体重、身長、および血清クレアチニンなどの古典的なリスクファクタについての値を含む。
1.6オプションのデータ記憶コンポーネント
本発明のシステムは、任意選択で、任意の数のデータ記憶コンポーネントを備えうる。入力が、システムの外部のデータ記憶デバイスおよび/またはデータベースから受信されうる、またはそうでなければ、任意の他の適した供給源から通信デバイスの使用によって受信されうる、あるいは、入力デバイス上で入力されうるが、入力情報を含むデータ記憶デバイスおよび/またはデータベースはまた、本発明のシステムの一部を形成しうる。データ記憶デバイスおよび/またはデータベースは、たとえば、科学的実験または出版からの情報を含む知識データベース、薬物に関する科学的実験からの情報(たとえば、PKまたはPDデータ)を含む開発データベース、処置の臨床使用からのデータを含む臨床データベース、および/または、患者に関する情報(たとえば、変数(X,Y)、任意の他の常用)を含む患者記述子データベースを備えることができる。一実施形態では、システムは、複数の処置(T)を含むデータ記憶デバイスおよび/またはデータベースを含み、各処置(T)は影響モデルに関連する。
1.7処置による利益の計算処理
本発明の行われる使用に応じて、異なる方法が、上述した入力、個体または個体の集団についての入力、および影響モデルを使用して、処置による利益を計算処理するために使用されることになる。リスクおよび処置なしの場合のXの関数として処置による利益を計算処理することは、個体またはシミュレートされた個体の集団に影響モデルを適用することを含む。特定のアプリケーションに応じて、処置による利益を計算処理することは、事象の数を総計することを必要としないが、加算することを含むことができる。たとえば、処置による利益は、個体またはある集団内の各個体について関心事象の発生の存在または非存在の確率(Rt)を示すことによって出力されうる。別の例では、たとえば、個別化医療方法において、処置による利益がユーザに表示されるとき、ディスプレイは、1つの軸Rtおよび別の軸Rcを有するグラフなどのグラフィカル出力を含むことができる。別の実施形態では、処置によって回避される事象の数が、総計され、図として出力され、こうした図は、異なる生物学的ターゲットの変更の利益を比較するとき、薬物についての異なる処置レジメンの利益を比較するときなどの、比較のために有用でありうる。
1.BAtpの計算処理
個別化医療の実施形態では、方法は、入力された患者情報に影響モデルを適用することによって、図2のブロック105eに示す個々の患者について、処置によって待望される利益(BAtp)を計算処理するステップを含む。影響モデルから、処置Tによる個々の患者についての予想利益を与える関数Rc−Rtが導出され、Rc=f(Y)およびRt=g(Rc,X)であり、YおよびXは、2つのプロセスの一方または両方のプロセス上に、疾病および処置の効果の強さに関連する事象のリスクを保持する患者記述子である。したがって、Rc−Rt=h(Y,X)である。影響モデル関数は、臨床データ(図2のブロック110)から導出されるか、あるいは、図2のブロック104dの上の波線で示されるように、患者がそこから引出される集団またはその仮想的な現実的集団(PVR)に対する処置Tの形式治療モデルの適用から知られる。患者記述子YおよびXの値が、関数に入力され、その関数は、次に、BAtp=Rc−Rtを与える。
2.NEcの計算処理
未変更の生理病理学的モデルが使用される、ターゲット評価または処置の監視のためのある方法などの本発明のある実施形態では、方法は、事象制御の数(NEc)と呼ばれる、処置によって処置されないシミュレートされた個体の集団において観察される関心事象制御の数を計算処理するステップを含みうる。図2のブロック105aはNEcを示す。NEcを計算処理するステップは、未変更の生理病理学的モデルから使用される。事象の対応する数は、集団の各個体に生理病理学的モデルを適用することによって計算処理される事象の発生の確率を、仮想集団を通して総計することによって得られる。
NEcは、望ましくない健康事象の個々のリスク(Rc)を計算処理するために、シミュレートされた個体の集団の各個体に生理病理学的モデルを適用し、集団内で関心疾病によって引起される事象の数を得るために、集団の全ての個体を通して総計し、任意選択で、親集団に拡張することによって計算処理される。患者記述子分布を考慮して行われる別の仮想集団のサンプリングによって、NEcについての信頼間隔が得られる。モデル変動性およびパラメータ変動性を反映する任意の他の方法が、NEc信頼間隔を計算処理するために同様に使用されうる。
3.NEAの計算処理
ターゲット評価のためのある方法などの本発明のある実施形態では、方法は、生理病理学的モデルにおいて生物学的ターゲット(複数可)または他の関心コンポーネントの変更によって回避された事象の数(NEA)を計算処理するステップを含みうる。
NEAは、上述した生理病理学的モデルから導出されうる、1つのターゲットまたはターゲットの組合せの変更に関連する影響モデルを、適切なパターンを有する、シミュレートされた個体の集団または別のシミュレートされた個体の集団に適用し、生物学的ターゲット(複数可)の変更が与えられる場合に、回避される事象の予測数を得るために、集団の全ての個体を通して総計し、任意選択で、親集団に拡張することによって計算処理される。したがって、そのステップは、その集団における変更された関心の疾病プロセスによって引起される(生物学的ターゲットの変更によって引起される)回避される事象の数の計算処理を可能にする。患者記述子分布を考慮して行われる別の仮想集団のサンプリングによって、NEAについての信頼間隔が得られる。モデル変動性およびパラメータ変動性を反映する任意の他の方法が、NEA信頼間隔を計算処理するために同様に使用されうる。
4.NEAtの計算処理
開発の監視または転用性研究のためのある方法などの本発明のある実施形態では、方法は、関心の処置による、回避される事象の数(NEAt)を計算処理するステップを含みうる。図2のブロック105cおよび105dがNEAtを示す。
NEAtは、シミュレートされた個体の集団に処置(たとえば、開発中の薬物)に関連する影響モデルを適用し、処置によって予想される回避される事象の数を得るために、集団の全ての個体を通して総計することによって計算処理される。開発の監視または転用性研究のためのある方法などの実施形態では、影響モデルは、上述した形式治療モデルから導出される。臨床情報が処置について入手可能である転用性研究などの他の実施形態では、影響モデルは、上述したように、臨床データから導出または更新される。ある集団またはある個体についての、処置なしの場合のリスクの関数としての、処置による利益は、その後、限定はしないが、データ記憶デバイス、プロセッサ、またはディスプレイデバイスに出力または送信することを含む、任意の適した方法でまた任意の適した形態で出力されうる。患者記述子分布を考慮して行われる別の仮想集団のサンプリングによって、NEAtについての信頼間隔が得られる。モデル変動性およびパラメータ変動性を反映する任意の他の方法が、NEAt信頼間隔を計算処理するために同様に使用されうる。
1.8処置利益予測を使用するためのプロセス
先のセクションで計算処理された、処置なしの場合のリスクおよび変数(X)の関数としての処置による利益は、種々のオプションのさらなる方法で使用されうる。先のセクションで計算処理された処置による利益は、たとえば、さらなる方法を実行するためのさらなるシステムに、処置による利益を通信することによって、出力され、ユーザによってさらなる方法で使用されうる。他の実施形態では、さらなる方法の任意の方法は、システムの一部を形成し、本発明の方法のさらなるステップとして実行されうる。
1.ターゲット評価方法
図2のブロック106aは、ターゲット評価方法を示す。ターゲット評価方法は、その変更が利益をもたらす、1つの生物学的ターゲットまたはターゲットの組合せ(または生理病理学的モデルの他のコンポーネント)を選択することを含むことができ、一般に、変更のある事象の数は、変更なしより実質的に少ない。一例では、複数の生物学的ターゲットが評価され、こうした実施形態では、複数の生物学的ターゲットについて計算処理され、前記複数の生物学的ターゲットからの1つの生物学的ターゲットは、その変更が、前記複数の生物学的ターゲットの別の生物学的ターゲットの変更による利益より大きい利益をもたらす場合、選択される。
一実施形態では、ターゲット評価方法は、1つの生物学的ターゲットまたはターゲットの組合せ(または生理病理学的モデルの他のコンポーネント)の変更についての事象の数を、知られている(たとえば、市場に出ている)処置を使用した事象の数と比較することを含みうる。任意選択で、方法は、さらに、その変更が、知られている処置による利益より大きい利益をもたらす生物学的ターゲットを選択することを含む。
一実施形態では、方法は、任意選択で知られている処置または薬物ターゲットに比べて、回避される事象の数を最大にする、または、利益(回避されるさらなる事象)をその他の方法で提供する1つの生物学的ターゲットまたはターゲットの組合せまたは他のコンポーネントを選択することを含むことができる。
方法は、さらに、図2のブロック106bに示す薬物選択のステップを含みうる。このステップでは、たとえば、1つの生物学的ターゲットまたはターゲットの組合せ(または生理病理学的モデルの他のコンポーネント)の変更を、直接または間接に、模擬するまたは引起す薬物が評価される。こうした薬物は、科学的知識(たとえば、文献)で、実験から、あるいは、コンピュータ実装式薬物発見または薬物設計方法から知られることができる。任意選択で、薬物は、上述した生物学的ターゲット(複数可)のリガンドである。ステップは、1つの生物学的ターゲットまたはターゲットの組合せを変更する可能性を有する薬物を選択することを含む。方法は、さらに、選択された薬物についての病理学的情報を形式治療モデルに入力することを含むことができ、任意選択で、方法は、さらに、本発明の開発監視方法において薬物の開発を監視することを含む。
2.開発監視方法
図2のブロック106cは、開発監視方法を示す。開発の監視は、処置Tについての利益の予測が評価されうるように、形式治療モデルに、処置の開発から生じる結果を入力することによって、処置開発プロセスの任意のステップまたは各ステップで使用されることができる。有利には、本発明による利益の予測は、結果が生じ、モデルに統合されるにつれて繰り返され、こうして、利益の予測は更新される。方法は、処置Tに関する累積した証拠が与えられる場合、回避される事象の数を更新することによって、開発を続行するかどうかについての決定を最適化するときに有用である。別の態様では、方法を使用して得られる情報(たとえば、処置による利益に対する、患者記述子(たとえば、バイオマーカ)、疾病パラメータ、または処置記述子の影響)は、処置の影響を調査する新しい実験を設計し、それにより、回避される事象の数に関する信頼間隔によって与えられる不確実性を低減するために使用されうる。
3.転用性研究方法
図2のブロック106dは、転用性研究方法およびバイオマーカ評価方法を示す。たとえば処置Tを市場に出すまたは試験する前に、処置Tについて臨床試験結果の転用性を調査することは、影響モデルおよび/または回避される事象の数を変更できる記述子を確定および/または識別するために集団記述子(たとえば、患者の記述子、たとえば、変数YおよびX)を評価することを含む。評価は、通常、所与の1つの記述子または記述子の組合せによる、影響モデルおよび/または回避される事象の数の変更の量も考慮することになる。方法はまた、処置Tについての情報が入力として使用された第1の集団と、特性または数が異なる集団における処置Tによる利益を評価するために使用されうる。
4.バイオマーカ評価方法
図2のブロック106dはまた、バイオマーカ識別および評価方法を示す。処置Tについてバイオマーカを識別または評価することは、値またはRcを確定する記述子、および/または、処置Tについて、影響モデルおよび/または回避される事象の数を変更しうる記述子を確定するかつ/または識別するために、集団記述子(患者の記述子、たとえば、変数YおよびX)を評価することを含む。評価は、通常、所与の1つの記述子または記述子の組合せによる、影響モデルおよび/または回避される事象の数の変更の量も考慮することになる。したがって、方法はまた、処置Tについての情報が入力として使用された第1の集団と、特性または数が同じかまたは異なる集団における処置Tによる利益に影響を与えるバイオマーカの影響を評価するかまたはそのバイオマーカを識別するために使用されうる。方法はまた、疾病(たとえば、疾病状態、疾病進行など)を予測するバイオマーカの影響を評価するかまたはそのバイオマーカを識別するために使用されうる。
5.個別化医療方法
図2のブロック106eは、個体についてのBAtp、処置(T)による予測される利益の計算処理に基づく、個別化医療方法を示す。BAtpは、好ましくは、その信頼間隔と共に提供される。個別化医療は、処置記述子(たとえば、用量、投与間隔、ガレヌス製剤など)、および、患者の記述子、すなわち変数XおよびリスクファクタYに基づいて、1つまたは好ましくは複数の入手可能な処置による利益を予測することを含む。好ましくは、方法は、どの1つまたは複数の処置が患者にとって適するかを示すことになる。有利には、方法は、任意選択でさらに処置のコストおよび/または好ましくない重篤な影響のリスクの関数として、処置の予測される利益に従って処置をランク付けすることを含むことになり、利益は、任意選択で、患者のX値とリスクファクタ値を形式治療モデルに統合することによって計算処理され、関連利益についての閾値は、任意選択で、形式治療モデルおよび現実的な仮想集団から生成される影響モデルを使用して、集団総経費を制限することによって計算処理されうる。
一実施形態では、個別化医療方法は、患者記述子、すなわち変数XおよびリスクファクタYに基づいて、複数の入手可能な処置による利益を予測すること、および、コスト(たとえば、選択された許容可能なコストについての)および好ましくない重篤な影響の同様のリスクの関数としての予測される利益に従って患者にとって適しているとして処置を選択することを含む。利益は、患者のX値とリスクファクタ値を形式治療モデルに統合することによって計算処理され、関連利益についての閾値は、臨床試験データから計算処理されるかまたは形式治療モデルおよび現実的な仮想集団によって生成される影響モデルを使用して、集団総経費を制限することによって計算処理されうる。
一実施形態では、個別化医療方法は、患者記述子、すなわち変数XおよびリスクファクタYに基づいて、複数の入手可能な処置による利益を予測すること、および、任意選択で好ましくない重篤な影響のリスクを考慮して、予測される利益に従って患者にとって適しているとして処置を選択することを含み、利益は、患者のX値とリスクファクタ値を影響モデルに統合することによって計算処理される。
2.0出力および表示
2.1例示的な出力手法
「処置による利益の計算処理(Computing the Benefit from Treatment)」という名称のセクションで計算処理された、処置なしの場合のリスクおよび変数Xの関数としての処置による利益は、その後、限定はしないが、さらなるコンピュータシステムまたはディスプレイデバイスに出力することを含む、任意の適した方法でまた任意の適した形態で出力されうる。
異なる形態の出力および表示は、異なる出力要件に対応しうる。たとえば、保健医療支払人は、異なる処置の利益を比較する出力であって、処置または疾病などの予算が与えられる場合、患者を処置するための閾値Sを示す、出力を要求することができる。保健医療支払人または医薬品開発者は、シミュレートされた関心の集団において処置の利益を含むかつ/または評価する、あるいは、関心の集団を比較する出力を要求することができる。薬物によってさらにターゲットを定めるために生物学的ターゲットを評価している研究者または医薬品開発者は、それぞれの変更あるいは生物学的または治療的ターゲットについてのNEAと共に、ランク付け済みのまたは未ランク付けの変更のリストを含む出力を要求することができる。
一例では、ランク付け済みのまたは未ランク付けの処置のリストは、個体の集団における各処置について回避される事象の数および任意選択でその信頼間隔と共に、返されうる。第2の手法では、ランク付け方法が使用されることができる。たとえば、処置は、NEAか、回避される1事象についてのコストか、またはターゲット集団のサイズ(すなわち、所与の予算について閾値を超える個体の数)に従ってランク付けされうる。ターゲットまたは薬物発見方法に適用されると、出力は、たとえばそのNEAに従う、ランク付け済みの生物学的ターゲットのリスクを含みうる。
医師、実験所要員、研究者、薬物開発者、または保健医療支払人などの出力の受取り人は、ランク付け方法を規定することができる。受取り人は、その後、シミュレートされた個体の集団内のどの個体が処置を受けるかまたは受けないかを判定する、リスト上の閾値点を確定する機会を有する。
出力は、任意の適したタイプとすることができる。通常、英数字出力は、たとえば、回避される事象の数、および/または、ユーザに提供される、回避される事象の数に基づくコスト図、あるいは、患者を処置するべきか否かに関する指示を可能にする。一例が、本明細書の表2に示され、現実のフランス人の集団において、高脂血症についての処置を比較し、いくつかのスタチン系薬物について、NSE、単価、相対的リスク、リスク閾値などを表示する。したがって、リスク閾値Sは、集団であって、集団において各処置を受けた、集団を規定する。
一実施形態では、入力として使用される患者記述子は、個体の年齢、性別、人種、バイオマーカ、薬物治療、および過去の履歴を使用して、複数の個体の各個体を記述する。各個体について、成果(たとえば、心筋梗塞の見込みの減少)、処置の結果としてのコスト差、処置のコスト(たとえば、薬物、試験、訪問)、および処置しないコスト(MI、脳卒中など)を計算処理するために使用される。ランク付けは、費やされる短時間単位について最も改善された成果を受取ることになる個体を処置するために使用されうる。一実施形態では、費やされるドルについて最も改善された成果を受取る個体が処置される。医療介入の例は、(たとえば、うっ血性心不全について)血圧、グルコース制御、喫煙、体重減少、血液試験、および医的症例管理であるが、それに限定されない。
他の手法の例は、変数X、たとえば、顕著なバイオマーカまたは患者記述子あるいは回避される事象の数に影響を及ぼす処置記述子を含む。
任意選択で、平均的(偽の)患者に対応するシミュレートされた個体は、集団の全ての個体が処置を受取った利益のサイズに関連する患者記述子を示すために、仮想的な現実的集団または関心の集団を通して患者記述子をなんとか平均することによって生成される。
任意選択で、ユーザは、複数の処置Tについて患者のためのシミュレーションを実行し、任意の薬物(または、参照処置)によって処置されない場合に患者が受取ることになる成果と比較された、前記複数の処置の各処置について患者が受取ることになる利益を、グラフィカル形態で表示しうる。こうした表示は、各処置について患者のために達成されることになる利益を示すことになる。
2.2例示的なグラフィカルディスプレイ
一実施形態では、ある関心の集団についての治療の利益は、グラフィカル出力として提示されうる。ユーザは、処置Tについてシミュレートされた個体の集団におけるシミュレーションを実行し、方法を適用することによって、この集団について達成されることになる利益を示しうる。任意選択で、1人または複数の個々の患者は、集団と比較したときに患者が受取ることになる利益を示すために、集団内で示され識別されうる。
一例では、集団におけるまたは個々の患者についての処置の利益は、イバブラジンを使用した処置による利益について図19に示すように、軸Rtおよび軸Rcを有するグラフ内の散布図として表示される。こうした結果のグラフィカル提示は、2つの軸が処置の定量的影響を示すため、特に効果的である。グラフィカル表示はまた、患者が集団内のどこにいるか、たとえば、患者が、処置によるより高い利益を有する群内にいるかどうか、または、患者が閾値S未満であるかどうかを示すために、医師および/患者のための個別化医療において有用である。
3.0機能概要
3.1転用性の調査1
本発明は、たとえば、個体の集団における処置Tを市場に出す前に、異なる患者集団に対する処置Tについての臨床結果(たとえば、標準的な臨床慣行からの臨床試験)の転用性を調査するために使用されうる。
図7は、本発明による、転用性を評価する方法を示す。この実施形態では、臨床結果の転用性は、ある個体の集団にわたって評価される。リスクRc(たとえば、健康インシデントの発生のリスク)および変数(X)の関数としての処置(T)を用いた処置による利益(Rc−Rt)を記述する影響モデルが生成される。シミュレートされた関心の個体の集団におけるリスクの関数としての処置の利益が、その後計算処理され、その集団について回避される事象の数(NEAt)がもたらされる。
シミュレートされた集団における処置の利益が、その後出力され、たとえば表示されうる。情報は、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(患者のパラメータおよび変数X)の寄与を評価するために使用されうる。たとえば、ユーザは、シミュレートされた集団の集団記述子を修正し、NEAtを再計算処理し、その修正がNEAtに影響を及ぼすかどうかを評価しうる。一実施形態では、システムは、最も適切なシミュレートされた個体の集団が、ユーザによって識別されるかまたはシステムによって計算処理され、表示されるように、複数のシミュレートされた個体の集団においてNEAtを計算処理するかつ/または表示するように構成されうる。
この構成はまた、処置による利益を関心集団(たとえば、国の保健医療システム内の集団、保健医療支払人によってカバーされる集団)に転用することによって、ユーザは、その集団のまたはより典型的にはその集団内の特定の健康状態の処置のために、または、特定の集団内の特定の処置のために入手可能な総合リソース(たとえば、財政、医薬製品の量)を考慮しうるという利点を有する。ユーザはまた、たとえば、重篤な副作用のリスクを考慮しうる。集団の間でリソースを分けることによって、ユーザは、処置がその増分的な利益を失う閾値を評価しうる。したがって、ユーザは、たとえば処置なしまたは代替の処置などの代替法と比較して、処置がもはや有益でなくなる利益の閾値レベル(個体のパラメータおよび変数Xならびにリスクファクタを使用して計算処理される)を設定しうる。
ブロック701は、シミュレートされた個体の集団を提供または生成するステップを示す。シミュレートされた個体の集団は、ブロック704で生成される関数に関連して使用されることになり、ブロック701がブロック704の前または後に置かれうることが認識されることになる。集団内の各個体は、個体記述子(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)に関連する。記述子(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)は、処置がその中で評価される集団を示すために、任意の方法で指定されうる。通常、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)は、関心の集団の特性に関する過去の研究702から(たとえば、データベースなどによって提供される可能性がある、科学および医療文献から)入手可能なデータから得られ、影響モデル704に含まれる。
ブロック704にて、臨床結果が、臨床結果のデータベース703から受信され記憶され、ある集団内の個体について、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を記述する関数(複数可)が生成される。関数は、703から受信された臨床結果を使用し、処置下にあったまたは処置下になかった個体を比較し、RcおよびXの関数として事象の発生の数を記述する関数を導出することによって生成される。結果として得られる関数、ある集団の各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数は、考えられる処置の影響モデルを推定する。
ブロック705にて、薬物で処置されたブロック701のシミュレートされた集団において回避された事象の発生数(NEAt)は、シミュレートされた個体の集団701に対して、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、薬物で個体が処置されるときの関心の成果のリスクを記述するブロック704で生成された関数を適用し、事象の数を総計することによって総計される。結果は、公式NEAt=Σ(Rci−Rti)を使用して計算された、シミュレートされた集団における事象の発生数(NEAt)として表される。
薬物を用いた処置による利益のインジケータが表示される。ユーザにインジケータを表示することは、NEAtを表示することを含みうる。表示フォーマットの例は表2に示される。
ブロック706は、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(患者のパラメータならびに変数XおよびY)の寄与を評価するための、オプションの情報のさらなる使用を示す。たとえば、ユーザは、シミュレートされた集団の集団記述子を修正し、NEAtを再計算処理し、修正がNEAtに影響を及ぼすかどうかを評価しうる。
一実施形態では、システムは、システムは、最も適切なシミュレートされた個体の集団が、ユーザによって識別されるかまたはシステムによって計算処理され、表示されるように、複数のシミュレートされた個体の集団においてNEAtを計算処理するかつ/または表示するように構成されうる。
フランスにおけるスタチンによって回避される発生(死)の数の予測
転用性研究の単純な例が、次のように実行された。死を予防するときの異なるスタチンの効果が、米国、アジア、英国、および他の国からの患者において得られた臨床データから導出された影響モデルを使用して、シミュレートされた個体の集団において予測された。研究の目的は、スタチン処置についてフランスにおけるターゲット集団をよりよく識別し、異なるスタチンの効率を比較することである。
異なるスタチンに関連する科学文献において識別された91の臨床試験のメタ解析が行われた。リスクRc(たとえば、死亡率のリスク)に集約されたリスクファクタYの関数として、薬物を用いた処置による利益(Rt)を記述する影響モデルベースの関数が、回帰によって各スタチンについて生成された。
シミュレートされた関心の個体の集団におけるリスクの関数として、薬物を用いた処置による利益は、その後、影響モデルを使用して計算処理された。シミュレートされた個体の集団は、フランス人の集団に対応するパラメータを使用して構築された。フランス人の仮想的な現実的集団は、フランス人についての知られている疾病疫学および変数間の相関を統合して、疫学的情報が進化するときの、フランス人の集団の現実的表現を提供する。集団について回避される事象の数(NEA)は、公式
を使用して計算処理された。ここで、f(Rc)は、フランス人の集団(この場合、フランス人の集団を表すシミュレートされた集団)におけるリスクの分布であり、sは、それを超えると、個体が処置されるためにリソース(全てのスタチン薬物についての保健医療予算)が十分である閾値である。
各スタチンのコストに基づいて、また、外部制約、この場合、心臓血管予防に起因するまたは起因しうる財政的リソースを適用することによって、種々のスタチンの効率が、各スタチンに対応する個体のターゲット集団を識別するためにランク付けされうる。
結果は、以下の表2に示される。研究のために考えられた期間は1年であった。スタチンのための保健医療予算は、一億ユーロ/年であった。RRは、スタチンについての影響モデルを要約する相対的リスクであり、この場合、線形乗法モデルであることがわかった。閾値sは、処置の総コストが保健医療予算に相当するように反復計算によって規定される。回避される事象(死)についてのコストもまた示される。その結果、スタチンの効果は、NEAおよび回避される事象について節約されるコストを考慮することによって評価されうる。
3.2バイオマーカの評価1
本発明は、バイオマーカ、たとえば疾病のバイオマーカ、たとえば疾病状態、疾病進行などを示すバイオマーカ、および/または、処置のバイオマーカ、たとえば処置(T)による利益を示すバイオマーカを識別するかつ/または評価するために使用されうる。
バイオマーカを評価または識別するシステムおよび方法は、一実施形態では、転用性を評価する方法の文脈で、本明細書で論じた図7に示す一般的な構成に従う。
一般に、バイオマーカは、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(患者のパラメータおよび変数)の寄与を評価することによって評価される。影響モデルおよび/または回避される事象の数を修正する変数は、疾病のバイオマーカまたは処置による利益のバイオマーカなどのバイオマーカとして指定されることができる。
たとえば、システムおよび方法は、一般に、
(a)たとえば、入力として処置識別子と共に影響モデル関数を受信することよって、または、処置に関する入力情報から影響モデル関数を導出するステップにおいて、1つまたは複数の現実のまたはシミュレートされた処置(T)であって、各処置(T)が影響モデル関数に関連する、1つまたは複数の現実のまたはシミュレートされた処置(T)を提供することであって、好ましくは、関数は、第1の変数(Y)に依存する処置なしの場合のリスク(Rc)、および、処置なしの場合のリスク(Rc)に含まれる特性以外の個体の特性のベクトルである変数(X)であって、前記変数(X)および(Y)は、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる、変数(X)の関数として処置による利益(Rc−Rt)を記述する、提供すること、
(b)1つまたは複数の個体(たとえば、シミュレートされた個体の集団)について患者記述子を提供することであって、各個体は、リスク(Rc)および変数(X)に関連する、提供すること、および、
(c)前記処置(複数可)Tおよび前記個体(複数可)について処置による利益(Rc−Rt)を計算処理することを含む。
システムは、その後、前記個体(複数可)について処置による利益(Rc−Rt)のインジケータを出力すること(たとえば、ユーザに表示すること)ができる。ユーザは、その後、1人または複数の個体について、処置による利益(Rc−Rt)に対する変数の影響があるか、変数を評価しうる。処置による利益のインジケータに関連する変数は、バイオマーカとして指定されうる。
コンピュータ実装式システムは、あるいは、バイオマーカを直接評価するように構成されうる。この構成では、システムは、1人または複数の個体について、処置による利益(Rc−Rt)に対する変数の影響があるか、変数を評価し、任意選択で、処置による利益に対する変数の影響のインジケータと共に、または、任意の好ましい基準(たとえば、最小の影響、処置による利益の閾値に対する影響)に従って、1つまたは複数の変数に対応する識別子を出力することができる。処置による利益のインジケータに関連する変数は、バイオマーカとして指定されうる。
好ましくは、処置による利益(Rc−Rt)に対する変数の影響があるか、変数を評価することは、記述子および/または記述子の値の実質的に全ての組合せが表される異なる患者記述子を有する個体の集団を生成すること、および、どのパラメータが、処置による利益の増加に関連するかを判定することを含むことになる。
一実施形態では、処置による利益に影響を及ぼす変数が第2の変数Xである場合、バイオマーカは、処置(T)に対する反応を示すバイオマーカであると判定される。
一実施形態では、処置による利益に影響を及ぼす変数が第1の変数Yである場合、バイオマーカは、処置(T)なしの場合の(または、処置(T)と無関係な)疾病を示すバイオマーカであると判定される。たとえば、バイオマーカは、疾病状態、進行、重篤度などを示すとすることができる。
任意選択で、方法は、さらに、患者、たとえば現実の人間からの生物学的サンプル内のバイオマーカを検出するためにアッセイを行うことを含む。こうした検出するステップは、バイオマーカについて観察される値に関するデータを取得するために使用され、また、患者記述子として本発明のシステムおよび方法に統合されうる。別の態様では、検出するステップは、処置(T)を受ける患者を評価することでありうる。たとえば、バイオマーカは、特定の細胞成分または生物学的成分が存在すると、または、そのレベルである(たとえば、遺伝子多型性または対立遺伝子が存在する、組織内のたんぱく質のレベルである)と判定されることができ、こうした生物学的成分を検出するように設計されたインビトロアッセイが、現実の患者から得られた生物学的サンプル内で行われる。
図7に示すように、影響モデルは、リスクRc(たとえば、健康インシデントの発生のリスク)および変数(X)の関数としての処置(T)を用いた処置による利益(Rc−Rt)を記述する影響モデルが生成される。シミュレートされた関心の個体の集団におけるリスクの関数としての処置の利益が、計算処理され、その集団について回避される事象の数(NEAt)がもたらされる。シミュレートされた集団における処置の利益が、その後出力され、たとえば表示されうる。情報は、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(患者のパラメータおよび変数X)の寄与を評価することによって変数を評価するために使用されうる。ユーザは、有利には、シミュレートされた(現実の)集団の集団記述子を修正し(または、特定の記述子を有するある集団または集団のメンバだけを選択し)、NEAtを再計算処理し、その修正がNEAtに影響を及ぼすかどうかを評価しうる。たとえば、その集団についてNEAtの増加をもたらす変数Xに含まれる集団記述子は、処置(T)に対するポジティブな反応に関連するバイオマーカとして識別されうる。NEAtに対する影響に相関する記述子は、バイオマーカとして指定されうる。バイオマーカは、変数Yに関連する場合、疾病(たとえば、疾病の状態、進行、重篤度など)を予測するバイオマーカとして指定されうる。バイオマーカは、変数Xに関連する場合、処置(T)に対する(たとえば、処置に続く疾病状態、処置下の進行、症状の重篤度または改善、あるいは処置下の任意の他の疾病パラメータなどを示す)反応を予測するバイオマーカとして指定されることができる。しかし、Rc−Rtおよび回避される事象の数NEAtがRcに相関するため、Yからのバイオマーカもまた、処置に対する反応者であることになる患者を予測する。
有利には、変数Xに関連するこうしたバイオマーカは、処置に対する反応者であることになる患者を予測するバイオマーカとして指定されることができる。任意選択で、方法は、処置による利益(Rc−Rt)の閾値を確定または提供すること、および、前記集団について、処置による利益(Rc−Rt)の閾値に対する変数の影響があるか、変数を評価することを含む。バイオマーカは、変数Xに関連するとき、処置(T)に対する反応を予測するバイオマーカとして指定されうる。バイオマーカは、変数Yに関連するとき、処置(T)に対する反応および疾病状態を予測するバイオマーカとして指定されることができる。
一実施形態では、システムは、処置の利益に対してかなりの影響がある記述子が、ユーザによって識別されるかまたはシステムによって計算処理され、表示されるように、シミュレートされた個体の集団において処置の利益またはNEAtを計算処理するかつ/または表示するように構成されうる。一実施形態では、こうした記述子(すなわち、バイオマーカ)は、識別子(たとえば、遺伝子またはたんぱく質などの名前)に関連し、識別子は、出力される、好ましくは表示される。
ブロック701は、シミュレートされた個体の集団を提供または生成するステップを示す。シミュレートされた個体の集団は、ブロック704で生成される関数に関連して使用されることになり、ブロック701がブロック704の前または後に置かれうることが認識されることになる。集団内の各個体は、個体記述子(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)に関連する。記述子(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)は、処置がその中で評価される集団を示すために、任意の方法で指定されうる。通常、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)は、関心の集団の特性に関する過去の研究702から(たとえば、データベースなどによって提供される可能性がある、科学および医療文献から)入手可能なデータから得られ、影響モデル704に含まれる。
ブロック704にて、臨床結果が、臨床結果のデータベース703から受信され記憶され、ある集団内の個体について、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を記述する関数(複数可)が生成される。関数は、703から受信された臨床結果を使用し、処置下にあったまたは処置下になかった個体を比較し、RcおよびXの関数として事象の発生の数を記述する関数を導出することによって生成される。結果として得られる関数、ある集団の各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数は、考えられる処置の影響モデルを推定する。
ブロック705にて、薬物で処置されたブロック701のシミュレートされた集団において回避された事象の発生数(NEAt)は、シミュレートされた個体の集団701に対して、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、薬物で個体が処置されるときの関心の成果のリスクを記述するブロック704で生成された関数を適用し、事象の数を総計することによって総計される。結果は、公式NEAt=Σ(Rci−Rti)を使用して計算された、シミュレートされた集団における事象の発生数(NEAt)として表される。
ブロック706は、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(患者のパラメータおよび変数X)の寄与を評価することを示す。たとえば、ユーザは、シミュレートされた集団の集団記述子を修正し、NEAtを再計算処理し、その修正がNEAtに影響を及ぼすかどうかを評価しうる。一実施形態では、本発明のシステムは、自動的に、集団記述子を修正し、処置による利益を再計算処理し、その修正が処置による利益に影響を及ぼす記述子についての識別子を出力し、好ましくは表示する。したがって、NEAtに影響を及ぼす患者記述子は、バイオマーカとして識別されうる。バイオマーカの測定は、たとえば臨床試験などにおいて、処置(T)によって処置されるターゲット集団を選択するときに有用でありうる。
3.3転用性の調査およびバイオマーカの評価における生理病理学的モデルの使用
本発明は、たとえば、1つの個体の集団(図8)またはいくつかの集団(図8bis)における処置Tを市場に出す前に、異なる患者集団に対する処置Tについての臨床結果(たとえば、標準的な臨床慣行からの臨床試験)の転用性を調査するために使用されうる。方法は、たとえば処置なしまたは代替の処置と比較して、処置が有益であるかどうかを判定するため、処置が費用効果的であるかどうかを判定するためなどで、ターゲット集団における処置Tの利益を予測するために有用である。方法はまた、パート(b)で詳述されるように、バイオマーカとして使用されうる患者変数(記述子)を識別するために使用されうる。
(a)試験の転用性およびシミュレーション
図8は、本発明による、転用性を評価する第1の方法を示す。個体の集団にわたって臨床試験結果の転用性を評価するこの実施形態では、試験の結果は、関心の処置についての前臨床および臨床開発中に実行され、また、終点に対する薬物の影響(たとえば、事象の発生の数)を記述する関数に到達するために、生理病理学的モデルが、薬物のインビボ病理学および生理病理学的モデル(形式治療モデル)に対する薬物の影響のシミュレーションにおける入力として使用される。ある実施形態では、臨床試験結果または生理病理学的モデルは、別々に唯一の入力源として使用されうる、または、共に入力源として役立つことができることが認識されるであろう。関数は、リスクRc(たとえば健康インシデントの発生のリスク)および変数(X)の関数として、薬物を用いた処置による利益を記述する。仮想集団における患者記述子の関数としての、薬物を用いた処置の利益は、その後、シミュレートされた関心の個体の集団について計算処理され、その集団について回避された事象の数(NEAt)がもたらされる。シミュレーションからの出力は、NEAtを調節する処置および患者記述子を与える。
処置の利益が、その後表示されうる。情報は、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(患者のパラメータおよび変数X)の寄与を評価するために使用されうる。たとえば、ユーザは、シミュレートされた集団の集団記述子を修正し、NEAtを再計算処理し、その修正がNEAtに影響を及ぼすかどうかを評価しうる。
一実施形態では、システムは、最も適切なシミュレートされた個体の集団が、ユーザによって識別されるかまたはシステムによって計算処理され、表示されるように、複数のシミュレートされた個体の集団においてNEAtを計算処理するかつ/または表示するように構成されうる(図8bis参照)。
動物モデルおよび人間における薬物暴露802、たとえば、薬物候補、臨床試験で試験された薬物、市場に出された処置による実験結果を含む、薬物に関する入手可能な証拠からの入力が、受信され、記憶され、薬理学モデル801に提供される。入力は、通常、投与当たりの量、投与のタイミング、および累積量を有する薬物投与を記述する情報ならびに臨床使用で観察される薬物についての薬物動態学および薬力学情報を含むことになる。
薬理学モデル801は、図5に示すように、生理病理学的システム(たとえば、生理病理学的モデル)に対する薬物の影響を記述する段階的計算処理を含む。疾病メカニズムおよび/または副作用に対する薬物の影響を記述する最終的な関数(複数可)は、zと呼ばれ、ブロック803に入力される。
ブロック803は、科学情報源からデータをそれ自体受信し、データベース(ブロック804)に記憶された科学出版物などからの実験結果を使用して通常生成された生理病理学的モデルを提供または生成するステップを示す。薬理学モデルからの出力は、生理病理学的モデル内で処理され、形式治療モデルをもたらす。生理病理学的モデルは、通常、疾病メカニズムを記述する。生理病理学的モデルは、個体パラメータおよび/または変数ならびにリスクファクタに関連し、したがって、個体パラメータおよび/または変数ならびにリスクファクタを提供する。リスクファクタは、Rc、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)において要約される。個体のパラメータ/変数は、YおよびXで表され、YおよびXは、個体相互の変動性のベクトルである。したがって、Xは、Rcに含まれる個体以外の個体の特性を表し、Xは、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができ、一方、Yは、Rcに含まれる個体の特性を表し、Yは、同様に、環境、表現型、または遺伝子型導出変数(複数可)とすることができる。形式治療モデルは、シミュレートされた個体が薬物で処置される場合、異なる因子RcおよびXを有する個体(複数可)において関心事象が起こることになる可能性を計算処理することになる。
ブロック805は、シミュレートされた個体の集団を提供または生成するステップを示す。シミュレートされた個体の集団は、ブロック806で生成される関数に関連して使用されることになり、その結果、ブロック805がブロック806の前または後に置かれることができることが認識されることになる。集団内の各個体は、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)に関連する。パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)は、生理病理学的モデル803から得られる。
ブロック806は、ある集団の個体について個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、関心の成果(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)のリスクを記述する関数(複数可)を生成するステップを示す。関数は、生理病理学的モデル803の出力を使用し、考えられる処置の影響モデル、ある集団の各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数を推定するために、薬物が投与されないときの生理病理学的モデルの影響を、薬物が投与されるときの変更された生理病理学的モデルの影響と比較することによって生成される。
ブロック807にて、薬物で処置されるブロック805のシミュレートされた集団において回避される事象の発生の数は、シミュレートされた個体の集団に対して、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、薬物で個体が処置されるときの関心の成果のリスクを記述するブロック806で生成された関数を適用し、事象の数を総計することによって得られる。結果は、シミュレートされた集団における事象の発生の数(NEAt)として表される。NEAtは、公式NEAt=Σ(Rci−Rti)を使用して計算されうる。ブロック808にて、薬物を用いた処置による利益のインジケータは、たとえばNEAtを表示しながら、出力または表示される。
情報は、影響モデルおよび/または回避される事象の数に対する集団記述子(変数Xを含む患者パラメータ)の寄与を評価することによって変数を評価するために使用されうる。たとえば、ユーザは、シミュレートされた集団の集団記述子を修正し、NEAtを再計算処理し、その修正がNEAtに影響を及ぼすかどうかを評価しうる。したがって、NEAtに影響を及ぼす患者記述子は、その測定がターゲット集団を選択するのに役立つことになるバイオマーカとして識別されうる。
(b)バイオマーカ
図8はまた、バイオマーカを識別し評価する方法で使用されうる一般的なプロセスを提供する。パート(a)の場合と同様に、試験の結果は、関心の処置についての前臨床および臨床開発中に実行され、また、終点に対する薬物の影響を記述する関数に到達するために、生理病理学的モデルが、薬物のインビボ病理学および生理病理学的モデル(形式治療モデル)に対する薬物の影響のシミュレーションにおける入力として使用される。関数は、リスクRc(たとえば健康インシデントの発生のリスク)および変数(X)の関数として、薬物を用いた処置による利益を記述する。生理病理学的モデルは、コンポーネントおよび/またはコンポーネント間の相互関係を含み、そのコンポーネントまたは相互関係は、患者記述子(特に、変数XおよびYとして使用される記述子)を表し、これらの記述子は、したがって、候補バイオマーカである。生理病理学的モデルがこうした記述子を提供するため、シミュレートされた個体の集団は、生理病理学的モデルから生成される。集団内の個体は、異なる患者記述子を有し、(たとえば、特定の記述子について異なる値を有する)記述子の実質的に全ての組合せが表される。仮想集団における患者記述子の関数としての、薬物を用いた処置の利益は、その後、シミュレートされた関心の個体の集団について計算処理され、各個体についての処置による利益および/またはその集団について回避された事象の数(NEAt)がもたらされる。システムまたはユーザは、その後、個体または(部分集団を含む)集団についての処置による増加した利益に関連するパラメータを識別しうる。
方法は、実質的にパート(a)で述べたブロック801〜804に示すように実行されうる。ブロック805にて、シミュレートされた個体の集団が、生理病理学的モデルから提供または生成される。生理病理学的モデル(ブロック803)は、シミュレートされた個体の集団に適用され、生理病理学的モデルのパラメータは、変数XおよびYとして指定される。集団内の個体は、異なる患者記述子を有し、(たとえば、特定の記述子について異なる値を有する)記述子の実質的に全ての組合せが表される。
ブロック807にて、値Rcは、シミュレートされた個体の集団805に対して、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、薬物で個体が処置されるときの関心の成果のリスクを記述するブロック806で生成された関数を適用することによって得られる、ブロック805のシミュレートされた集団内の各個体について成果を提供する。Rcに影響を及ぼす患者記述子は、ランク付けされ、バイオマーカとして識別されうる。バイオマーカは、その後、任意の方法で使用される可能性があり、バイオマーカは、研究、医薬製品発見、開発において、たとえばターゲット集団を選択するのに役立つことになるバイオマーカの測定において、またはより一般的には予測医学において有用である。
3.4ターゲット評価方法
図9は、本発明による、生物学的ターゲットを評価する方法を示す。この方法はまた、1つのターゲットまたはターゲットの任意の組合せの各変更が薬物として考えられうる点で仮想薬物スクリーニングに適合し、各薬物について、方法は、任意選択でさらに、PKおよびPDパラメータならびにモデルを組込みうる。この実施形態では、本発明は、生理病理学的モデルからの入力を利用する。薬物スクリーニング方法は、2つの主要なシミュレーションを実行することを含む。第1のステップでは、生理病理学的モデルは、シミュレートされた生物学的システム(たとえば、シミュレートされた個体、組織など)におけるリスクRc(たとえば、健康インシデントの発生のリスク)およびRcを調節する変数(Y)に関する情報を提供し、事象の数(たとえば、健康インシデントの発生の数)が、その後、シミュレートされた個体の集団において確定される。第2のステップでは、生理病理学的モデルは、疾病モデルの生物学的ターゲット(たとえば、生物学的成分)または現象コンポーネントがシミュレートされた生物学的システムにおいて調節されるときに、リスクおよび変数(X)の関数として利益を提供する。仮想集団におけるリスクおよび変数(X)の関数としての利益が、その後、生物学的ターゲットの変更について計算処理され、その集団について事象の数がもたらされる。生物学的ターゲットを変更することの利益の計算処理は、生理病理学的モデルにおける任意の数の生物学的ターゲットについて繰り返されうる。利益は、たとえば、生物学的ターゲットが調節されるときに回避される健康事象の数として表され、それにより、事象の数を減らすターゲットの能力についてターゲットが比較され、したがって、考えられる最大の医療利益を有するターゲットが識別されうる。
ブロック901にて、入力は、生理病理学的モデル、この場合、データベース(ブロック902)に記憶された科学出版物などからの実験結果を使用して、それ自体、受信または生成されたシミュレートされた生物学的システムから提供される。シミュレートされた生物学的システムは、患者記述子(Y)、関心の成果(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)のリスクを記述するリスクファクタ、およびおそらく、一部のまたは全ての記述子(X)に関連する。
生理病理学的モデルは、第1のステップにおいて、評価される生理病理学的ネットワークにおいて生物学的ターゲットの変更がない状態で、シミュレートされた集団におけるベースリスクを確立するために使用されることになる。その結果、生理病理学的モデルは、通常、処置される真の集団を表すことになる設定について入力を提供するように構成されることになる。たとえば、入力は、どんな治療も受けていない個体を表すことができる。別の実施形態では、入力は、評価される生物学的ターゲットを調節する仮定の処置がそれに付加されることになる標準的な治療を受けている個体を表すことができる。
ブロック903にて、入力が、シミュレートされた個体の集団から提供される。入力は、シミュレートされた個体の集団を提供し、集団内の各個体は、個体のパラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)に関連する。
ブロック904にて、関心の健康成果の発生の数(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)が、その後、ブロック903のシミュレートされた個体の集団について計算処理される。発生の数は、仮定の処置下での発生の数に対して比較するために使用されることになる制御値を示すことになる。発生の数の計算処理は、集団について個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)を入力すること、および、関心の成果のリスクを記述する生理病理学的モデルによって提供される関数を適用すること、および、事象の数と呼ばれる発生の総計を計算することを含む。事象制御の数(NEc)と呼ばれる事象の数は、公式NEc=ΣRciを使用して計算処理されうる。
任意選択で、計算処理の精度を評価するために、NEcは、現実の個体で生成されたデータと比較されうる。評価は、一般に、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)がそれについて知られている個体の検証集団において行われることになる。検証集団およびシミュレートされた集団は、一般に、シミュレートされた集団に一致する検証集団からデータを選択することによって、または、検証集団に似るシミュレートされた集団を生成することによって、できる限り特性が近くなることになる。任意選択で、生理病理学的モデルのパラメータまたは構造を調整するステップは、予測される健康発生におけるモデルの精度が改善されるように実行される。
1つまたは複数の生物学的ターゲット(複数可)を変更することによる利益の評価は、生理病理学的モデルにおいて1つまたは複数のターゲットの変更をシミュレートすることによって始動される。ブロック905にて、入力は、生物学的ネットワークの1つまたは複数の変更(複数可)を表す生理病理学的モデルから提供され、変更(複数可)は考えられる処置Tとして表される。変更すべきターゲットまたはターゲットの変更の組合せが存在するのと同程度の多くの処置Tが存在しうる。
生理病理学的モデルは、全てのターゲットの変更の利益が計算処理されるように、または、ユーザが、その後、評価されるターゲットを選択できるように、生理病理学的モデルにおいて表される生物学的ターゲットの全てまたはサブセットについて入力を提供することができる。あるいは、ユーザは、この段階で、入力デバイスを介して、入力、評価がそれについて行われる生理病理学的モデルにおける1つまたは複数のターゲットの選択を提供する。
各ターゲットについて、生理病理学的モデルは、ターゲットが変更されるときに、集団におけるリスクおよび変数(X)の関数としての利益を計算処理するために使用されうる情報を提供する。一般に、ターゲットの各変更について、生理病理学的モデルは、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を記述する、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)を関連付ける。
ブロック906にて、入力は、シミュレートされた個体の集団から提供される。入力は、シミュレートされた個体の集団を含み、集団内の各個体は、個体のパラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)Rcに関連する。
ブロック907にて、各ターゲットを変更することによる利益は、影響モデルを使用してシミュレートされた個体の集団について計算処理される。このステップでは、Rcに含まれる個体以外の個体の特性(変数X)のベクトルと共に、リスクファクタ(複数可)(Y)の関数として、ターゲットを変更することの利益を記述する、各ターゲットに関連する関数は、各ターゲットについて、ブロック906のシミュレートされた個体の集団における関心の成果の発生の数(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を計算処理するために使用される。シミュレートされた集団についての個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)は、各ターゲットについて提供される関数に入力される。出力は、各ターゲットを変更することに関連するリスクである。事象の数と呼ばれる発生の総計は、公式NEtarget=ΣRtargetを使用して計算される。
1つのターゲットまたはターゲットの組合せの変更に関連する健康インシデントの発生の数は、評価され、ターゲットが変更されないときの発生の数、ここではNEcと比較され、それにより、ターゲットを調節した処置の開発についての値をターゲットが有するかどうかについての情報を提供する。評価は、一般に、ターゲットの評価を提供する計算処理を行うことによって、または、シミュレートされた集団における処置による利益(NEA)をユーザに出力または表示することによって実行されることになる。関数は、ターゲットの変更に関連する影響モデルである。
任意の適切な段階において、リスクおよび変数(X)の関数としての利益が出力されうる。こうした出力は、健康インシデントの発生の数に基づいてユーザがターゲットを評価できるように、ターゲットが変更されるときに健康インシデントの発生の数を出力すること(たとえば、表示デバイス上に出力し表示すること)を含むことができる。一例では、NEtargetが出力され、一例では、NEAtargetおよびNEcが出力され、一例では、生物学的ターゲットの変更について回避される事象の数(NEA)が出力される。NEAは、公式NEAtarget=Σ(Rc−Rtarget)に従って、NEcと比較して、ターゲットが変更されるときに回避される事象の数を提供する。
ある疾病における有害な健康事象の改善のための治療ターゲットとしてのターゲットの可能性の重要性を評価するとき、NEcより低い、健康インシデントの発生の数に関連するターゲットの変更は、ターゲットの変更を健康にとって有益とすることができること、および、ターゲットが、治療介入のためのターゲットとしての値を有することを示すことになる。一実施形態では、回避される事象の数(NEA)が、ターゲットについて表示されうる。
任意選択で、ターゲットは、1つまたは複数の基準、たとえば、ターゲットが変更されるときに回避される健康インシデントの発生の数に基づいて選択またはランク付けされうる。一例では、方法は、さらに、回避される事象の数を最大にする、1つのターゲットおよび/またはターゲットの組合せを計算処理すること、表示すること、および/または選択することを含みうる。
任意選択で、ターゲットを変更することの利益は、同じまたは異なるターゲットを調節する既存の処置による利益と比較されうる。一例では、NEAtargetは、知られている市場に出ている処置によって回避される事象の数と比較される。知られているおよび/または市場に出ている処置によって回避される事象の数は、たとえば臨床データに基づいて影響モデルを生成し、シミュレートされた個体の集団に影響モデルを適用し、回避される事象の数を計算処理することによって、本明細書で述べるように得られうる。
脳卒中におけるターゲット評価
ターゲット評価研究の簡単な例は、次のように実行される。急性脳血管発作の動物モデルにおいて活性を有する300を超える薬物は、人間の臨床試験において、活性を欠く、あるいはさらに、ネガティブな効果または毒性効果を持つことが、後でわかった。モデルは、異なる生物学的ターゲットを評価して、ターゲットの調節が脳卒中のリスクを低減するのに有益であるかどうかを予測し、げっ歯動物および人間において予測される影響を比較するために使用されうる。
現象的モデルと機構的モデルの両方ならびに一般的な科学知識を使用した現象的モデルを統合する、急性脳血管発作の主要な早期生理病理学的メカニズムの生理病理学的モデルが構築された。このモデルは、2スケールモデルであり、通常の微分方程式のセットに頼る。本発明者等は、その白質およびグリア細胞の割合が異なる、このモデルの(人間およびげっ歯動物の脳用の)2つのバージョンを構築した。生理病理学的モデルに対する入力は、血流(虚血の程度)およびラットと人間を区別する脳特性を含む。モデルの出力は、水の見かけの拡散係数の比(ratio of Apparent diffusion coefficient of water)(rADCw)死細胞、梗塞周辺部細胞、または生細胞(ニューロンおよび星状細胞)の割合、ATPのイオン濃度であった。モデルは、エネルギーの保存などの物理法則、電流、ならびに、脳虚血のメカニズムおよび結果に関する科学文献の幅広い検討を使用して構築された。基本的な方法は、サブモデルおよびサブモデルに依存する統合の可変レベル、即座の目的によって決定される統合のレベルを生成することであり、したがって、プロセス中に変化を受けた。
脳卒中は、生理病理学的状態が、経時的にオーバラップする段階で起こる動的プロセスであり、各段階は、ミリ秒〜数週間の範囲のそれ自身の時間スケールを有する。時刻0にて、血流の遮断が起こり、脳細胞への酸素供給および栄養を断たれ、虚血の開始が規定される。全体的な脳卒中モデルは、脳卒中における主要なメカニズムを考慮するために構築された。以下で得られる結果は、急性フェーズ(最初の3〜6時間)に関連する。この期間中に、イオン現象が優勢であり、細胞は、細胞内への水の流入を伴うイオン交換の停止または緩慢化によって引起される浮腫による壊死によって本質的に死ぬ。全体的なモデルは、図3に示される。このモデルには、図4に示すイオン現象のサブモデルが統合される。これらの早期プロセスは、人間の脳撮像において観察される解剖学的損傷の特に強い部分ならびに急性および亜急性死亡率を決定する。細胞死および組織損傷をもたらす共通経路は、MRIによって観測されうるバイオマーカrADCwすなわち水の見かけの拡散係数の比によって検出されうる浮腫である。したがって、イオン現象サブモデルは、種々のイオンチャネルを含み、細胞内のイオン交換を記述し、rADCwで表される浮腫を出力として与える。
イオンサブモデルを計算処理するための例示的な数学的公式は、次の通りである。
あるコンパートメント(たとえば、細胞(複数可)または細胞下構造(複数可))内のイオンの量の変動は、このコンパートメントの膜の前後のイオン流の総計にコンパートメントのサブユニット間におけるイオンの拡散を足したものに等しい。
(N
s,i:コンパートメントi内のイオンsの数;n
i:各サブユニット内の細胞iの数;J
s,i,k:コンパートメントiの膜の前後のイオンsの流れ;α
s,i:サブユニット間のコンパートメントi内のイオンsの拡散係数;C
s,j:コンパートメントi内のイオンsの濃度)
拡散は、ラプラスの方程式によって計算される。
である。ただし、
である。(s
i:コンパートメントiの膜の表面;I
s,i,k:表面ユニットによるトランスポータkによる細胞iの膜の前後のイオンsの電流;z
s:イオンsの原子価;F:ファラディ定数)
細胞外空間内のイオンの数の変動は、神経単位膜およびグリア膜にわたるイオンの流れを総計することによって得られる。方程式は、各イオン種について質量保存の法則から得られる。
遅延整流カリウムチャネル(KDR):
および
および
ただし
および
である。
高コンダクタンス電圧およびカルシウム依存カリウムチャネル(BK):
および
である。
持続的ナトリウムチャネル(NaP):
ただし
および
である。
高閾値カルシウム活性化チャネル(CaHVA):
ただし
ただし
および
ただし
および
である。
遅延入力電流カルシウムチャネル(Kir):
および
である。
図4のサブモデルに対する入力は、ATPであり、5つの電流がシミュレートされ、それにより、イオンチャネル、ポンプ、またはカルシウム交換器の機能を表す。出力は、モデルの種々の変数が一度に一回観察されることを可能にする。1つまたは複数の生物学的ターゲット(すなわち、イオンチャネル、ポンプ、またはカルシウム交換器)は、それらの活性を減少させることによって変更されうる。
図11は、ナトリウムチャネル(NaP)がモデルにおいて遮断される例を示し、図は、分単位での経時的な(rADCw値、通常、浮腫による脳細胞死のバイオマーカとして表される)浮腫に対する影響を示す。ナトリウムチャネルを遮断することは、浮腫、したがって細胞死に対して適度の影響があるだけであることが見てわかる。図12は、人間およびげっ歯動物のナトリウムチャネルを遮断することの影響であって、人間でなく、げっ歯動物において効果的である薬物についての考えられる説明を提供する、影響を示し、図は、げっ歯動物(左パネル)および人間(右パネル)において、NaP遮断薬の投与に続く40分期間の間の、それぞれ健康な細胞(実線)、梗塞周辺部細胞(波線)、および梗塞または死細胞(点線)で構成された3つのゾーンを示す。げっ歯動物および人間の脳は、星状細胞および白質の割合を含む種々の特性が異なり、げっ歯動物では、梗塞周辺部回復は約95%であるが、人間では、20%に過ぎない。
このサブモデルは、相補的なサブモデル(図3)および死細胞または他の成果を含むか、または、浮腫が関心事象として使用される場合にだけ使用されうる、より広範な生理病理学的モデルに統合されうる。モデルは、イオンチャネルの1つまたは複数の変更、たとえば、チャネルの不活性化、関心事象の選択と共に、変数について異なるパラメータ(たとえば、ここでは、血流(虚血の程度)およびラットと人間を区別する脳特性)を使用して実行され、影響モデル関数は、その後、関心事象(たとえば、浮腫、細胞死)の発生を予測するために、これらのデータから生成される。シミュレートされた個体の集団は、種々の血流および脳特性についての異なるパラメータを持って、すなわち、人間とラットの両方を含む集団を生成するために生成され、NEcは、シミュレートされた個体の集団に関してモデルを実行し、(たとえば、rADCw閾値あるいは梗塞エリアまたは容積閾値か、ある梗塞エリアか、または、死または残る身体障害などの臨床事象を満たす)関心事象の発生を総計することによって確定される。ラットは、単に比較のために示される。各イオンチャネルターゲットまたはその組合せを変更することによる利益は、その後、影響モデルを使用してシミュレートされた個体の集団について計算処理され、関心事象の発生の総計は、NEAcalculated(NEA)である。NEcとNEAは、イオンチャネルのそれぞれの変更について比較され(すなわち、NEAを計算処理する)、NEAが、人間の脳特性を有する個体にわたってNEcより著しく小さい場合、1つまたは複数のイオンチャネルを遮断する薬剤が、人間の処置において利益を有する可能性があることが予測される。
3.5開発の監視
開発の監視は、薬理学的情報が、関心の処置(たとえば、薬物)について受信され、ユーザが、こうした処置による利益を予測したいと思う任意のプロセスを含みうる。
図13は、本発明による、薬物開発を監視する第1の方法を示す。この実施形態では、本発明は、生理病理学的モデルからの入力、および、薬物の開発、たとえば薬物候補からの実験結果、臨床試験で試験された薬物、市場に出た処置からの入力(すなわち、処置に関して入手可能な全てのデータによって更新される形式治療モデル)を利用する。方法は、第1のステップにおいて、終点に対する薬物の影響(たとえば、事象の発生の数)を記述する関数に到達するために、薬物のインビボ薬理学および生理病理学的モデルに対する薬物の影響のシミュレーションを実行することを含む。シミュレーションは、リスクRc(たとえば、健康インシデントの発生のリスク)および変数(X)の関数として、薬物を用いた処置による利益(Rc−Rt)を記述する関数をもたらす。仮想集団におけるリスクRc(たとえば、変数(Y))および変数Xの関数として、薬物を用いた処置による利益(Rc−Rt)は、その後計算処理され、その集団について事象の数をもたらす。事象の数は、薬物を使用した処置なしの場合にシミュレートされた集団において観測されることになる事象の数(NEc)と比較され、薬物を用いた処置によって回避される事象の数(NEAt)が計算処理される。生物学的ターゲットを調節することの利益は、任意の適した方法で表示される、たとえば、英数字形態またはグラフィカル形態でNEAtが表示される。ユーザはまた、実験を設計するためにさらなる情報を得ることができ、したがって、方法は、NEAに不確実性または変動性をもたらす変数(X)または(Y)を識別またはランク付けするステップを含むことができる。形式治療モデル内の全てのパラメータの不確実性の範囲を、シミュレーションによって与えられるNEAtの不確実性の対応する範囲と並べる表またはグラフィカル表示は、その不確実性がNEATt予測において不確実性の最も高い割合をもたらす、1つのパラメータまたはパラメータのセットの識別を可能にする。別の表示は、単なる範囲の代わりに、形式治療モデルの過去の分布およびNEEtの対応する過去の分布を示す。これらの過去の分布は、実際には、薬物開発の過去のステップの終りに実施された実験に続く事後分布である。現在のステップにて、来るべき実験は、NEAt予測における不確実性の減少を最適にするように設計されうる。
入力は、薬物の開発(ブロック1302)、たとえば薬物候補からの実験結果、臨床試験で試験された薬物、市場に出た処置から薬理学的モデル(ブロック1301)に提供される。入力は、通常、1投与当たりに量、投与のタイミング、および累積量などの処置記述子を含むことになる。任意選択で、入手可能な任意の薬理学的または薬物動態学的情報が、さらに入力されうる。
薬理学的モデル(1301)は、図5に示すように、生理病理学的システム(たとえば、生理病理学的モデル)に対する薬物の影響を記述する段階的な計算処理を含む。疾病メカニズムおよび/または副作用に対する薬物の影響を記述する最終的な関数(複数可)は、zと呼ばれ、ブロック1303、データベースに記憶された科学出版物などからの実験結果(1304)を使用して、それ自体受信するかまたは生成された生理病理学的モデルに入力される。薬理学的モデルからの入力は、生理病理学的モデルにおいて処理され、それにより、パラメータ(X)およびリスクファクタ(Y)の関数として事象が起こる確率を(たとえば、事象が起こっても、起こらなくても)出力する信号をもたらす。
ブロック1305にて、入力が、シミュレートされた個体の集団から提供される。入力は、シミュレートされた個体の集団を含み、集団内の各個体は、個体のパラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)(Y)に関連する。パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)は、生理病理学的モデル(1303)から得られる、または、既知の情報からユーザによって指定されることができる。ブロック1306にて、影響モデルは、ブロック1303のモデルの出力から生成される。
ブロック1307にて、ブロック1303の生理病理学的モデルからの出力は、シミュレートされた集団における事象の発生の数(NEc)として表される、薬物がない状態でのシミュレートされた集団におけるベースリスクを計算処理するために使用される。その結果、生理病理学的モデルは、通常、処置される真の集団を表すことになる設定について入力を提供するように構成されることになる。たとえば、入力は、どんな治療も受けていない個体を表すことができる。別の実施形態では、入力は、処置Tがそれに付加されることになる標準的な治療を受けている個体を表すことができる。
ブロック1308にて、ブロック1306で生成される関数は、シミュレートされた集団の各個体についてRtを計算処理するために使用され、シミュレートされた集団における事象の発生の数(NEc)として表されるRtが総計される。処置によって回避される事象の数NEAtは、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を記述するブロック1306からの関数(複数可)を使用して、事象の発生の数を総計するために影響モデルを適用することによって、または、(NEAt)を(NEc)と比較することによって計算処理される。
ブロック1309にて、薬物を用いた処置による利益のインジケータが表示される。インジケータをユーザに表示することは、表示デバイス上でNEAtを表示することを含みうる。
表示される情報は、その後、たとえば、薬物を用いた処置下の事象の発生の数に関する不確実性を減らすために使用されうる実験を行うことによって情報を集めるために、または、実験を計画するためにユーザによって使用されうる。
狭心症における薬物効果の予測
方法
開発の監視の研究の簡単な例は、次のように実行された。狭心症発作を予防するときに心拍数を低減する仮定の強心剤の効果は、狭心症の生理病理学的モデルを使用してシミュレートされた個体の集団において予測された。狭心症は、一般に冠状動脈の閉塞または痙攣によって引起される、心筋の虚血による胸痛である。例の目的は、この病理学において薬物の用量効果関係を予測するため、また、狭心症発作の発生のリスクの関数として薬物の影響モデルを提供するために、薬物の一日に1回投与と一日に2回投与との間で薬物開発者が選択することを助けることであった。
PK−PDモデルは、24時間の期間にわたる時刻tにおける狭心症発作の発生を出力パラメータとして提供するために、現象的モデルと組合された。簡潔に言えば、薬物についてのPK−PDモデルは、モデル薬物についての一般的な科学的および医学的知識、たとえば、その生物学的ターゲット、ここではカリウムチャネルを含む、科学出版物を使用して構築された。PKおよびPDモデルは、2つのコンパートメントならびに親薬物およびその主要な代謝物質についてのコンパートメント影響を有する、モデル薬物について、人間からの臨床データからのデータを使用して較正された。入力は、いずれの場合も、薬物動態的に平衡状態にある、薬物の1回のまたは数回の用量であった。薬物が徐脈誘起作用を有するため、PK−PDモデルの出力パラメータは、心拍数(RR間隔)であるように選択された。心拍数は、その後、現象的モデルについての入力パラメータとして役立った。
現象的モデルは、以下の表3に示すカッペルおよびピアのモデルとして知られる心臓血行動態の公表されたモデルから始まる、関数方程式のシリーズを使用して、モデル化された推論的モデルに基づいた。冠予備能(CR)は、各時刻tで計算され、それぞれの場合に、狭心症生成閾値と比較された。出力は、24時間の期間にわたる時刻tにおける狭心症発作の発生であった。
シミュレートされた個体の集団は、通常の日の24時間にわたる連続した心拍数測定値(RR間隔)および心房圧測定値が、それについてデータベースで利用可能であった1706人の被検者に関する情報を使用して構築された。したがって、心拍数は、24時間周期のリズム、身体活動などに従って変動した。現実の被検者は、薬物動態的、薬力学的、および生理病理学的特性を示す新しい変数を含むベクトルを各個体に関連付けることによってシミュレートされた個体に変換された。たとえば、変数は、2つの分布容積、冠動脈狭窄(d)、および血管新生閾値(AT)を含んだ。科学文献のデータからの再構成された分布から得られた値は、1706のシミュレートされた個体にランダムに起因した。
薬物についての影響モデルは、狭心症発作生理病理学的モデルをモデル薬物についての薬理学的モデルと統合する形式治療モデルによって生成された。形式治療モデルは、シミュレートされた集団の各個体に適用された。影響モデルは、その後、調査される各用量について何百もの臨床試験をシミュレートすることによって得られた臨床試験データに対して回帰技法を適用することによって計算処理された。各試験について、1つの群の患者は、薬物の1つの用量で処置され、他の群は、プラセボによって処置された。シミュレートされた患者がそこからランダムに引出される集団は、現実の被検者からのデータに基づいた。
任意の患者記述子としてコンプライアンスが変えられうるが、コンプライサンスは、最大であると仮定された。シミュレートされた臨床試験から出力される結果は、記憶され、標準的な統計的方法を使用して解析された。
結果
24時間における狭心症発作の数に関する用量効果関係。結果は図14に示される。2つのスキーム(1日当たり1回または2回の投与)に従う薬物の異なる用量を用いて、シミュレートされた個体の集団において臨床試験をシミュレートするときに、用量影響関係(DER)が、(信頼間隔を有する)ラインで示されるように予測され、一方、臨床データが仮定の薬物についてそこから取得された、公表されたフェーズII臨床試験からの結果が、バーで示された。
シリコにおいて試験された3つの用量の影響モデル。表示される結果は図15に示される。各用量は、24時間期間に少なくとも1回の狭心症発作を有する被検者について頻度の群によって(順序付けられた)試験の平均を示す影響モデルをもたらした。上記のように、信頼間隔は、シミュレーションの数に依存する。試験される3つの用量は、異なる影響モデルを有する。狭心症になりやすい個体についての利益は、(24時間期間において発作を有する60%の可能性を有する群の患者について)最大の利益を達成し、その後、重篤な(発作の可能性が高い)患者について発作が本質的に存在しなくなるまで減少することを結果が示す。
3.6個別化医療1
本発明はまた、個別化医療で使用されうる。本発明は、処置が、患者に利益を与えるかどうかを予測するかつ/または出力する方法を提供する。表示は、好ましくは、(たとえば、関数Rc−Rt=f(Rc,X)によって提供される)個体の集団における処置による利益を示し、また、その集団内で、患者が自分の因子RcおよびXに基づいてどこに存在するかを示す影響モデルによって生成されるグラフィックフォーマットである。こうした表示は、患者が、処置から受けることが予想される利益の大きさに関する情報を、ユーザ、たとえば保健医療プロバイダまたは支払人または患者に伝えるために有利には使用されうるフォーマットである。
図16は、患者について処置の利益を予測する方法を示す。
ブロック1601にて、関心の処置についての臨床結果が受信され、臨床結果のデータベース(1602)に記憶され、処置済みの個体および未処置の個体において、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(Y)の関数として、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を記述する関数(複数可)が、臨床結果から生成される。関数は、処置の影響モデルを推定し、各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数として表されうる。
ブロック1603にて、患者情報1604は、たとえば患者データベースまたは入力デバイスから受信され、記憶される。患者情報は、患者の個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)を含むであろう。XおよびYの中に、処置効果を予測するバイオマーカが存在する。
患者についての処置による利益のインジケータは、たとえば患者が処置から利益を受けるかどうか、および/または、どの程度利益を受けるかを、ユーザが視覚化できるように、出力される、好ましくは表示デバイス上に表示される。一例では、表示は、ユーザが意思決定するのに役立つ他の情報と共に利益が示されるグラフィカル表示を含む。患者は、処置される個体の集団の中のある点として位置付けされ識別されうる。
一実施形態では、プロセスは、複数の処置について実行される。方法は、さらに、患者について予測される最高利益を有する処置を選択することおよび/または表示すること、あるいは、患者について予測される利益に従って処置をランク付けすること、および/または、処置のランク付けを表示することを含みうる。
予測される利益はまた、コストおよび好ましくない深刻な影響の同様なリスクを統合しうる。利益は、患者のX値およびリスクファクタ値を影響モデルに統合することによって計算処理される。予測利益が閾値を超える(または、2つの閾値間にある)患者は、処置に対する反応者と言われる。
3.7個人化医療2
別の個人化医療構成では、本発明は、患者、好ましくは現実の個体について処置による利益を予測しかつ/またはユーザに表示する方法を提供し、処置は、関心の仮想的な現実的集団、たとえば患者が属する集団に転用され、関心の患者についての利益が、計算処理され、こうした利益のインジケータが表示される。患者についての処置による利益は、患者のX値およびリスクファクタ値を影響モデルに統合することによって計算処理される。任意選択で、関連利益についての閾値は、総合集団費用を制限し、どの個体について処置の費用と処置による利益との間の最大の差が存在するかを判定することによって計算処理され、処置による利益は、臨床試験データに基づき、かつ、シミュレートされた個体の集団に転用された影響モデルを使用して計算処理される。任意選択で、方法は、患者が閾値より大きいか、小さいかを判定しかつ/または表示する、あるいは、患者がそこから引出される集団の他のメンバについて予測した利益内で定量化するかまたはその利益と比較するステップを含む。
この構成は、患者が属する集団と異なる、たとえば、異なる民族起源を有する、普通なら遺伝的に異なる、異なる地理的領域または国からの、あるいは、Rc、リスクファクタY、および/またはXのある値についての情報が入手可能でないような数が小さい集団において、処置について入手可能な臨床結果が生成された場合に、利益が患者について予測されることを可能にするという利点を有する。
この構成はまた、処置による利益を関心の集団(たとえば、国の保健医療システム内の集団、保健医療支払人によってカバーされる集団)に転用することによって、ユーザは、その集団のまたはより典型的にはその集団内の特定の健康状態の処置のために、または、特定の集団内の特定の処置のために入手可能な総合リソース(たとえば、財政)を考慮しうるという利点を有する。ユーザはまた、たとえば、重篤な副作用のリスクを考慮しうる。集団の間でリソースを分けることによって、ユーザは、処置がその増分的な利益を失う閾値を評価しうる。したがって、ユーザは、たとえば処置なしまたは代替の処置などの代替法と比較して、処置がもはや有益でなくなる利益の閾値レベル(個体のパラメータおよび変数Xならびにリスクファクタを使用して計算処理される)を設定しうる。個別化医療構成は、関心の患者についての情報が入力されることを可能にし、関心の患者について利益を計算処理し、利益が閾値より大きい場合、その患者は、特定の処置による処置に適することが示されることになる。
表示は、任意選択で、個体の集団における処置による利益を示し、また、団内で、患者が自分の因子RcおよびXに基づいてどこに存在するかを示す影響モデルによって生成されるグラフィックフォーマットである。こうした表示は、患者が、処置から受けることが予想される利益の大きさに関する情報を、ユーザ、たとえば保健医療プロバイダまたは支払人または患者に伝えるために有利には使用されうるフォーマットである。患者を個体の集団内に位置付けない状態で患者に的を絞る他の表示が提供される。
図17は、患者の処置の利益を予測する方法を示す。ブロック1701は、シミュレートされた個体の集団を提供または生成するステップを示す。シミュレートされた個体の集団は、ブロック1703で生成される関数に関連して使用されることになり、その結果、ブロック1701は、ブロック1703の後に置かれうることが認識されるであろう。集団内の各個体は、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)Rcに関連する。集団についてのパラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)Rcは、任意の適した供給源から、たとえば、データベースに記憶されることができるか、あるいは、外部供給源から受信されるかまたは入力デバイスを使用して入力される、関心の集団に関する知られている情報1702から受信され得られうる。XおよびYの中に、処置効果を予測するバイオマーカが存在する。健康プランにおいて疾病に割当てられる入手可能なリソースの量などの外部制約は、関心の集団における個体の利益についての閾値を計算処理することを可能にする。
ブロック1703にて、関心の処置についての臨床結果が、臨床結果のデータベース703から受信され記憶され、処置される個体において、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として、関心の成果のリスク(たとえば、望ましくない健康インシデントの頻度)を記述する影響モデルが、臨床結果から生成される。関数は、処置の影響モデルを推定し、各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数として表されうる。
ブロック1705にて、個体のパラメータ(X)および/または変数ならびにリスクファクタ(Y)を含む患者記述子が受信され、ブロック1706にて、処置によって待望される利益(BAtp)が、ブロック1702で生成された関数を、患者の個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)に適用することによって計算処理される。処置による利益のインジケータが、その後、出力または表示されうる。
患者についての処置による利益のインジケータは、たとえば患者が処置から利益を受けるかどうか、および/または、どの程度利益を受けるかを、ユーザが評価できるように、出力される、好ましくは表示デバイス上に表示される。一例では、表示は、グラフィカル表示(たとえば、RcおよびRtを含む散布図)を含み、患者は、処置される個体の集団の中の点として位置付けられ識別される。閾値は、この個体についての利益およびRcのサイズと共に表示されうる。
一実施形態では、プロセスは、複数の処置について実行される。ブロック1707にて、ブロック1706で計算処理された処置による利益が、個別化医療で使用されうる。方法は、さらに、患者について予測される最高利益を有する処置を選択するステップおよび/または表示するステップ、あるいは、患者について予測される利益に従って処置をランク付けするステップ、および/または、処置のランク付けを表示するステップを含みうる。
一実施形態では、個別化医療は、たとえば利益の閾値より大きい、処置による利益を患者が有すると予測される場合、患者に適するとして処置を選択すること、または、ブロック1706にて、予測される最良の利益を持って、利益がそれについて計算処理される複数の処置の間で選択することを含む。さらに、処置のコストおよび好ましくない重篤な影響のリスクなどの因子が組込まれる場合、選択は、処置のコストおよび好ましくない重篤な影響のリスクを組込むことによって生成される閾値に基づいて行われうる。予測利益が閾値を超える(または、2つの閾値間にある)患者は、処置に対する反応者と言われる。
3.8個別化医療3
別の個別化医療構成では、本発明は、患者について処置による利益を予測しかつ/またはその利益をユーザに表示する方法を提供し、その処置について、臨床結果および薬理学的情報が入手可能である。
この実施形態では、方法は、終点に対する修正された処置の影響(たとえば、事象の発生の数)を記述する関数に到達するために、処置のインビボ薬理学および生理病理学的モデルに対する処置の影響の(すなわち、形式治療モデルにおける)シミュレーションを実行することを含む。形式治療モデル(FTM)は、この患者についての影響モデルの点推定、すなわち予測利益をもたらす。任意選択で、影響モデルは、処置を用いた臨床試験からのデータによって更新されうる。FTMを実行することは、リスクRc(すなわち、健康インシデントの発生のリスク)、変数(X)、および処置記述子の関数として、処置による利益(Rc−Rt)を記述する関数をもたらすことになる。第2のステップでは、参照された処置による臨床結果が、受信され、終点に対する参照された処置の影響を記述する関数が生成される。その処置についての関数は、リスクRc、変数(X)、および処置記述子の関数として利益を確定するために、シミュレートされた個体の集団に適用される。患者情報が、その後、受信され、生理病理学的モデルに統合され、各処置の患者についての利益が確定され、任意選択で、利益のインジケータが表示される。
図18、患者について処置の利益を予測する方法を示す。
入力は、薬物の開発(1802)、たとえば薬物候補からの実験結果、臨床試験で試験された薬物、市場に出た処置から薬理学的モデル(1801)に提供される。入力は、通常、1投与当たりに量、投与のタイミング、および累積量を有する薬物投与を記述する情報を含むことになる。任意選択で、入手可能な任意の薬理学的または薬物動態学的情報が、さらに入力されうる。
薬理学的モデル(1801)は、図5に示すように、生理病理学的システムに対する薬物の影響を記述する段階的な計算処理を含む。疾病メカニズムおよび/または副作用に対する薬物の影響を記述する最終的な関数(複数可)は、zと呼ばれ、ブロック1803、データベースに記憶された科学出版物などからの科学的知識(1804)を使用して、それ自体受信するかまたは生成された生理病理学的モデルに入力される。薬理学的モデルからの入力は、生理病理学的モデルにおいて処理され、パラメータ(X)および/または変数ならびにリスクファクタ(Y)の関数として事象が起こるか否かの可能性を出力する。
ブロック1805は、シミュレートされた個体の集団を提供または生成するステップを示す。シミュレートされた個体の集団は、ブロック1806で生成される関数に関連して使用されることになり、その結果、ブロック1805がブロック1806の前または後に置かれうることが認識されることになる。集団内の各個体は、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)Rcに関連する。パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)Rcは、処置がその中で評価される集団を示すために、任意の方法で指定されうる。通常、個体パラメータ(X)およびリスクファクタ(複数可)Rcは、関心の集団の特性に関する科学的知識1804から(たとえば、データベース、実験などによって提供される可能性がある、科学および医療文献から)入手可能なデータから得られる。XおよびYの中に、処置効果を予測するバイオマーカが存在する。
ブロック1806にて、臨床結果が、たとえば臨床結果のデータベース(1807)から受信され、ある集団内の個体について、個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクパラメータ(Y)の関数として関心の成果のリスクを記述する関数(複数可)が生成される。(すなわち、処置による)生理病理学的モデルの影響と形式治療モデルの影響を比較することによって、各個体について利益Rc−Rt=f(Rc,X)を与える関数がそこから推定される影響モデルが生成される。任意選択で、この関数は、臨床試験および処置の他の臨床使用から導出される影響モデルによって必要であると見なされる場合、変更されることができる。その場合、経験的影響モデルに従って調整された最終的な関数は、患者利益を予測するために使用される。
ブロック1809にて、個体のパラメータ(X)および/または変数ならびにリスクファクタ(Y)ならびに処置記述子を含む患者情報(1808)が受信される。患者について処置から待望される利益(BAtp)は、ブロック1806にて生成される関数を、患者の個体のパラメータ(X)および変数ならびにリスクファクタ(Y)に適用することによって計算処理される。処置による利益のインジケータは、その後、出力または表示されうる。用量、摂取間の間隔などの処置記述子は、利益を最大にし、好ましくない影響のリスクを最小にする処置記述子のセットを見出すために変更されうる。
患者についての処置による利益のインジケータは、たとえば患者が処置から利益を受けるかどうか、および/または、どの程度利益を受けるかを、ユーザが視覚化できるように、出力される、好ましくは表示デバイス上に表示される。一例では、表示は、BAtが示されるグラフィカル表示を含み、患者は、種々の処置および処置記述子について、処置される個体の集団の中のある点として位置付けされ識別される。処置は、種々の医療の組合せでありうる。
ブロック1810にて、ブロック1809にて計算処理された処置による利益は、個別化医療で使用されうる。一実施形態では、医療を個別化することは、たとえば利益の閾値より大きい、処置による利益を患者が有すると予測される場合、患者に適するとして処置を選択すること、または、ブロック1809にて、予測される最良の利益を持って、利益がそれについて計算処理される複数の処置の間で選択することを含む。さらに、処置のコストおよび好ましくない重篤な影響のリスクなどの因子が組込まれる場合、選択は、処置のコストおよび好ましくない重篤な影響のリスクを組込むことによって生成される閾値に基づいて行われうる。予測利益が閾値を超える(または、2つの閾値間にある)患者は、処置に対する反応者と言われる。
4.0実装メカニクス−ハードウェア概要
本発明の態様は、コンピュータによって実行されるプログラムモジュールなどのコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で述べられることができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するかまたは特定のアブストラクトデータタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造を含む。こうしたプログラムモジュールは、ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネント、またはその組合せで実装されうる。さらに、本発明は、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースまたはプログラマブルコンシューマエレクトロニクス、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、および同様なものを含む種々のコンピュータシステム構成で実施されうることを当業者は認識するであろう。限定はしないが、スマートフォンまたは他の手持ち型デバイスを含む任意の数のコンピュータシステムおよびコンピュータネットワークが、本発明と共に使用するのに許容可能である。
特定のハードウェアデバイス、プログラミング言語、コンポーネント、プロセス、プロトコル、ならびに、動作環境および同様なものを含む多数の詳細は、本発明の完全な理解を提供するために述べられる。他の例では、本発明を曖昧にすることを回避するために、構造、デバイス、およびプロセスは、詳細にではなく、ブロック図の形態で示される。しかし、本発明は、これらの特定の詳細なしで実施されうることを当業者は理解するであろう。コンピュータシステム、サーバ、ワークステーション、および他の機械は、たとえば1つまたは複数のネットワークを含む通信媒体にわたって互いに接続されうる。
当業者が認識するように、本発明の実施形態は、とりわけ、方法、システム、またはコンピュータプログラム製品として具現化されうる。したがって、実施形態は、ハードウェア実施形態、ソフトウェア実施形態、またはソフトウェアとハードウェアを組合せる実施形態の形態をとりうる。ある実施形態では、本発明は、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体上で具現化されるコンピュータ使用可能命令を含むコンピュータプログラム製品の形態をとる。方法、データ構造、インタフェース、および上述した本発明の他の態様は、こうしたコンピュータプログラム製品で具現化されうる。
コンピュータ可読媒体は、揮発性と不揮発性の両方の媒体、取外し可能と取外し不能の両方の媒体を含み、データベースによって可読な媒体、スイッチ、および種々の他のネットワークデバイスを想定する。制限ではなく例として、コンピュータ可読媒体は、情報を記憶するための任意の方法または技術で実装された媒体を備える。記憶される情報の例は、コンピュータ使用可能命令、データ構造、プログラムモジュール、および他のデータ表現を含む。媒体の例は、情報送出媒体、RAM、ROM、EEPROM、フッシュメモリまたは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ホログラフィック媒体または他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、および他の磁気記憶デバイスを含むが、それに限定されない。これらの技術は、データを、瞬間的に、一時的に、または永久的に記憶しうる。ある実施形態では、固定媒体が使用される。
本発明は、通信ネットワークまたは他の通信媒体を通してリンクされるリモート処理デバイスによってタスクが実施される分散コンピューティング環境で実施されうる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶デバイスを含むローカルとリモートの両方のコンピュータ記憶媒体内に位置しうる。コンピュータ使用可能命令は、コンピュータが入力源に応じて反応することを可能にするインタフェースを形成する。命令は、受信されるデータの供給源と連携して、受信されるデータに応答して種々のタスクを始動するために、他のコードセグメントと協働する。
本発明は、通信ネットワークなどのネットワーク環境で実施されうる。こうしたネットワークは、ルータ、サーバ、ゲートウェイなどのような種々のタイプのネットワーク要素を接続するために広く使用される。さらに、本発明は、種々の接続された公衆および/または個人ネットワークを有するマルチネットワーク環境で実施されうる。
ネットワーク要素間の通信は、無線またはワイヤライン(有線)でありうる。当業者によって認識されるように、通信ネットワークは、いくつかの異なる形態をとり、いくつかの異なる通信プロトコルを使用しうる。
本発明の実施形態は、成果処理システムで具現化されうる。成果処理システムのコンポーネントは、当技術分野で知られているように、単一コンピュータ上に収容されうるかまたはネットワークにわたって分散されうる。たとえば、生理病理学的モデルまたは形式治療モデルを使用するシステムでは、こうしたモデルは、たとえば、独立に実行されうる、および/または、処置による利益を計算処理するコンピュータと異なるコンピュータ上に収容されうる、別個の関連したサブシステムまたはモジュールとして構成されうる。同様に、シミュレートされた個体の集団の生成は、別個の関連したサブシステムとして構成されうる。ある実施形態では、成果処理システムのコンポーネントは、コンピュータ可読媒体上で分散される。
ある実施形態では、ユーザは、クライアントデバイスを介して成果処理システムにアクセスしうる。ある実施形態では、関数のいくつかまたは成果処理システムは、こうしたデバイス上に記憶されうる、かつ/または、その上で実行されうる。こうしたデバイスは、種々の形態のうちの任意の形態をとりうる。例として、クライアントデバイスは、デスクトップまたはラップトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、MP3プレーヤ、電話、ページャ、emailリーダ、またはテキストメッセージングデバイスなどの通信デバイス、あるいは、これらのまたは他のデバイスの任意の組合せとすることができる。
ある実施形態では、クライアントデバイスは、ネットワークを介して成果処理システムに接続しうる。先に論じたように、クライアントデバイスは、種々のアクセス技術、無線とワイヤラインの両方を使用してネットワークと通信することができる。さらに、クライアントデバイスは、処理システムに対するユーザアクセスをサポートする、1つまたは複数の入力および出力インタフェースを含むことができる。こうしたユーザインタフェースは、さらに、ユーザによる情報の入力またはユーザに対する情報の提示を容易にする種々の入力および出力デバイスを含みうる。こうした入力および出力デバイスは、デバイスの中でもとりわけ、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン、または他の指示デバイス、キーボード、カメラ、モニタ、マイクロフォン、スピーカ、プリンタ、スキャナを含みうるが、それに限定されない。先にさらに論じたように、クライアントデバイスは、種々のスタイルおよびタイプのクライアントアプリケーションをサポートしうる。
たとえば、個別化医療方法に適合するシステムでは、クライアントデバイスは、ユーザが患者記述子を入力することを可能にする入力インタフェースを備えることができる。中央プロセッサは、こうした患者記述子を受信し、患者について処置による利益を計算処理しうる。クライアントデバイスは、任意選択でさらに、ユーザが、成果処理システムによって計算処理された処置による利益を受信し、任意選択で視覚化することを可能にする出力インタフェース(たとえば、ディスプレイ)を備えることができる。
転用性研究方法に適合するシステムでは、クライアントデバイスは、ユーザが、個体の集団について患者記述子を入力すること、関心の個体の集団を選択すること、疾病を指定すること、処置または処置のタイプを指定する、かつ/または、任意のさらなる制限または他の特性(たとえば、処置に割当てられる財政的リソース)を入力することを可能にする入力インタフェースを備えることができる。中央プロセッサは、こうした入力を受信し、ユーザ、たとえばクライアントデバイスに返される出力を生成しうる。中央プロセッサは、たとえば、個体の集団についての処置による利益を返すために、データを記憶するためのメモリにアクセスすることができる。または、個体の集団についての処置による利益を計算処理することができる。クライアントデバイスは、任意選択でさらに、ユーザが、入力情報(たとえば、選択された疾病についての処置、個体の集団についての利益など)に応答する1つの処置および/または複数の処置による利益を受信し、任意選択で視覚化することを可能にする出力デバイス(たとえば、ディスプレイ)を備えることができる。
ターゲット評価方法に適合するシステムでは、クライアントデバイスは、ユーザが、その変更が処置(T)を規定する、生理病理学的モデルの1つまたは複数のコンポーネントあるいはコンポーネント間の相互関係を指定する情報を入力することを可能にする入力インタフェースを備えることができる。中央プロセッサは、こうした入力を受信し、ユーザ、たとえばクライアントデバイスに返される出力を生成しうる。中央プロセッサは、シミュレートされた個体の集団について処置(T)による利益を計算処理しうる。クライアントデバイスは、任意選択でさらに、ユーザが、たとえば、有意の利益を提供する処置または複数の処置(T)のランク付けを視覚化するために、処置(T)による利益を受信し、任意選択で視覚化することを可能にする出力デバイス(たとえば、ディスプレイ)を備えることができる。
開発を監視する方法に適合するシステムでは、クライアントデバイスは、ユーザが、処置記述子および/または処置(T)のための(たとえば、臨床的、実験的)使用からのデータを入力することを可能にする入力インタフェースを備えることができる。中央プロセッサは、こうした入力を受信し、ユーザ、たとえばクライアントデバイスに返される出力を生成しうる。中央プロセッサは、シミュレートされた個体の集団について処置(T)による利益を計算処理しうる。クライアントデバイスは、任意選択でさらに、ユーザが、処置(T)による利益を受信し、任意選択で視覚化することを可能にする出力デバイス(たとえば、ディスプレイ)を備えることができる。
図20は、本発明の実施形態が、その上で単一構成で実装されることができる単一コンピュータシステム2000を示すブロック図である。コンピュータシステム2000は、情報を通信するためのバス2002または他の通信メカニズム、ならびに、情報を処理するための、バス2002に結合したプロセッサ2004を含む。コンピュータシステム2000はまた、プロセッサ2004によって実行される情報および命令を記憶するための、バス2002に結合した、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスなどの主メモリ2006を含む。主メモリ2006はまた、プロセッサ2004によって実行される命令の実行中に、一時的な変数または他の中間情報を記憶するために使用されることができる。コンピュータシステム2000はさらに、プロセッサ2004用の静的情報および命令を記憶するための、バス2002に結合した、リードオンリメモリ(ROM)2008または静的記憶デバイスを含む。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶デバイス2010が、設けられ、情報および命令を記憶するためにバス2002に結合される。
コンピュータシステム2000は、コンピュータユーザに情報を表示するために、陰極線管(CRT)、フラットプラズマディスプレイ(プラズマディスプレイパネル;PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)、デジタル光処理(DLP)ベースディスプレイまたは有機発光ダイオード(OLED)ベースディスプレイなどのディスプレイ2012に、バス2002を介して結合されることができる。英数字および他のキーを含む入力デバイス2014は、プロセッサ2004に情報およびコマンド選択を通信するためにバス2002に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、プロセッサ2004に方向情報およびコマンド選択を通信し、ディスプレイ2012上でのカーソル移動を制御するための、マウス、タッチ表面(たとえば、マルチタッチ表面)、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソルコントロール2016である。この入力デバイスは、通常、デバイスが、平面内の位置を指定することを可能にする2軸、第1の軸(たとえば、x)および第2の軸(たとえば、y)において2自由度を有する。
本発明は、本明細書で述べる技法を実装するためのコンピュータシステム2000の使用に関連する。本発明の実施形態によれば、これらの技法は、主メモリ2006に含まれる1つまたは複数の命令をプロセッサ2004が実行することに応答して、コンピュータシステム2000によって実施される。こうした命令は、記憶デバイス2010などの別の機械可読媒体から主メモリ2006に読込まれることができる。主メモリ2006に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ2004に、本明細書で述べるプロセスステップを実行させる。代替の実施形態では、ハードワイヤード回路要素(circuitry)は、本発明を実装するソフトウェア命令に代わってまたはそれと組合せて使用されることができる。したがって、本発明の実施形態は、ハードウェア回路要素およびソフトウェアの任意の特定の組合せに限定されない。
コンピュータシステム2000を使用して実装される実施形態では、種々のコンピュータ可読媒体、たとえば、記憶デバイス2010などの光または磁気ディスクあるいは主メモリ2006などの動的メモリが、実行用の命令をプロセッサ2004に提供するときに含まれる。伝送媒体は、バス2002を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅ワイヤ、および光ファイバを含む。伝送媒体はまた、無線波および赤外線データ通信中に生成されるような、音響波または光波の形態をとりうる。こうした全ての媒体は、媒体によって運ばれる命令が、機械に命令を読込む物理的メカニズムによって検出されることを可能にするために有形でなければならない。
種々の形態のコンピュータ可読媒体が、実行用の1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスをプロセッサ2004まで運ぶときに含まれることができる。たとえば、命令は、リモートコンピュータの磁気ディスク上で最初に保持されることができる。リモートコンピュータは、命令をその動的メモリにロードし、モデムを使用した電話回線を通じて命令を送出しうる。コンピュータシステム2000にローカルなモデムは、電話回線上でデータを受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換しうる。赤外線検出器は、赤外線信号で運ばれるデータを受信し、適切な回路要素が、そのデータをバス2002上に載せうる。バス2002は、データを主メモリ2006まで運び、主メモリ2006から、プロセッサ2004が命令を取出し、実行する。主メモリ2006によって受信された命令は、任意選択で、プロセッサ2004が実行する前か後で、記憶デバイス2010上に記憶されることができる。
任意選択で、コンピュータシステム2000はまた、バス2002に結合した通信インタフェース2015を含む。通信インタフェース2015は、ローカルネットワーク2022に接続されるネットワークリンク2020に結合する2方向データ通信を提供する。たとえば、通信インタフェース2015は、統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)カードまたはデータ通信接続を対応するタイプの電話回線に提供するモデムとすることができる。別の例として、通信インタフェース2015は、データ通信接続を互換性があるLANに提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードとすることができる。無線リンクもまた実装されることができる。任意のこうした実装形態では、通信インタフェース2015は、種々のタイプの情報を表すデジタルデータストリームを運ぶ、電気、電磁、または光信号を送受信する。ネットワークリンク2020は、通常、1つまたは複数のネットワークを通して他のデータデバイスに対するデータ通信を提供する。たとえば、ネットワークリンク2020は、ローカルネットワーク2022を通して、ホストコンピュータ2024またはインターネットサービスプロバイダ(ISP)2026によって運用されるデータ機器に接続を提供することができる。ISP2026は、次に、現在は一般に「インターネット」2028と呼ばれるワールドワイドパケットデータ通信ネットワークを通してデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク2022およびインターネット2028は共に、デジタルデータストリームを運ぶ、電気、電磁、または光信号を使用する。種々のネットワークを通る信号ならびにネットワークリンク2020上で、かつ、デジタルデータをコンピュータシステム2000へ/から運ぶ通信インタフェース2015を通る信号は、情報を搬送する例示的な形態の搬送波である。コンピュータシステム2000は、ネットワーク(複数可)、ネットワークリンク2020、および通信インタフェース2015を通して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信しうる。インターネットの例では、サーバ530は、インターネット2028、ISP2026、ローカルネットワーク2022、および通信インタフェース2015を通して、アプリケーションプログラム用の要求コードを送信することができる。受信されるコードは、受信されるとプロセッサ2004によって実行されることができる、かつ/または、後で実行するために記憶デバイス2010または他の不揮発性記憶装置に記憶されることができる。こうして、コンピュータシステム2000は、搬送波の形態でアプリケーションコードを得ることができる。
本仕様書で引用される全ての出版物および特許出願は、まるでそれぞれの個々の出版物または特許出願が、参照により組込まれることを具体的にかつ個々に指示されたかのように、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
先の発明は、理解を明確にするために、例証および例示によってある程度詳細に述べられたが、添付特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明に対してある変更および修正が行われることができることが本発明の教示を考慮して当業者に容易に明らかになるであろう。