JP2013523082A - Ect2ペプチドおよびそれを含むワクチン - Google Patents

Ect2ペプチドおよびそれを含むワクチン Download PDF

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Abstract

HLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し、それ故にがん免疫療法、より詳細にはがんワクチンとの関連において用いるのに適している、SEQ ID NO:42に由来する単離されたペプチドおよびその断片を本明細書で説明する。本発明のペプチドは、前述のアミノ酸配列、および1個、2個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、または付加されたその改変版の両方を範囲に含むが、ただしそのような改変版は元の配列の必要なHLA結合性および/またはCTL誘導能を保持することを条件とする。さらに、前述のペプチドのいずれかをコードする核酸、ならびに前述のペプチドまたは核酸のいずれかを含むかまたは組み入れている薬学的な剤、物質、および/または組成物も提供する。本発明のペプチド、核酸、薬学的な剤、物質、および組成物は、例えば、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCを含むがんおよび腫瘍の治療において特に有用性がある。

Description

本発明は、生物科学の分野、より具体的にはがん療法の分野に関する。特に本発明は、がんワクチンとして非常に有効な新規ペプチド、ならびに腫瘍を治療および予防するための薬物に関する。
優先権
本出願は、2010年4月2日に出願された米国仮出願第61/320,577号の恩典を主張し、それらの内容はその全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
CD8陽性CTLは、主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子上に見出される腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、その後、腫瘍細胞を殺傷することが実証されている。TAAの最初の例としてメラノーマ抗原(MAGE)ファミリーが発見されて以来、他の多くのTAAが、免疫学的アプローチによって発見されている(非特許文献1、Boon T, Int J Cancer 1993 May 8, 54(2): 177-80;非特許文献2、Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med 1996 Mar 1, 183(3): 725-9)。これらのTAAのうちのいくつかは、現在、免疫療法の標的として臨床開発の過程にある。
有望なTAAは、がん細胞の増殖および生存に不可欠なTAAである。そのようなTAAを免疫療法の標的として用いることにより、療法によって誘発される免疫選択の結果としてのTAAの欠失、変異、または下方制御に起因し得るがん細胞の免疫回避の詳述されているリスクが最小限に抑えられ得る。したがって、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導し得る新規TAAの同定により、様々な種類のがんに対するペプチドワクチン接種戦略のさらなる開発および臨床研究の前進が保証される(非特許文献3、Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20): 1442-55;非特許文献4、Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13): 3134-42;非特許文献5、Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21): 5554-9;非特許文献6、van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9): 3308-14;非特許文献7、Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20): 4465-8;非特許文献8、Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2): 169-72;非特許文献9、Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 459-66;非特許文献10、Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 387-94)。現在までに、これらの腫瘍関連抗原由来ペプチドを用いた臨床試験がいくつか報告されている。残念ながら、現在のがんワクチン治験の多くは低い客観的奏効率しか示していない(非特許文献11、Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20): 4169-80;非特許文献12、Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188: 33-42;非特許文献13、Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9): 909-15)。したがって、免疫療法の標的として新規TAAが依然として必要とされている。
上皮細胞トランスフォーミング配列2(ECT2)がん遺伝子(GenBankアクセッション番号AY376439;例えば、SEQ ID NO:41)が、がんにおいて上方制御されることが同定された転写物から発見されている。ECT2遺伝子は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸がん、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、および小細胞肺がん(SCLC)を含むがこれに限定されないさまざまながんの腫瘍細胞において特異的に上方制御され、それ故に本発明にとって特別なものである(特許文献1、WO2007/013671号;特許文献2、WO2008/102557号;特許文献3、WO2010/007791号)。特に、ECT2に由来する免疫原性ペプチドは、そのような抗原を発現する腫瘍細胞を選択的に死滅させるために有用である可能性がある。
WO2007/013671 WO2008/102557 WO2010/007791
Boon T, Int J Cancer 1993 May 8, 54(2): 177-80 Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med 1996 Mar 1, 183(3): 725-9 Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20): 1442-55 Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13): 3134-42 Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21): 5554-9 van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9): 3308-14 Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20): 4465-8 Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2): 169-72 Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 459-66 Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 387-94 Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20): 4169-80 Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188: 33-42 Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9): 909-15
本発明は、免疫療法の適した標的の発見に、少なくとも一部基づいている。TAAは一般に免疫系によって「自己」と認識され、そのため多くの場合は免疫原性を有しないことから、適切な標的の発見は極めて重要である。ECT2(GenBankアクセッション番号AY376439の遺伝子(例えば、SEQ ID NO:41)によってコードされるSEQ ID NO:42)が、例として膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCを含むがこれらに限定されないがんにおいて上方制御されるものとして同定されていることの認識に立ち、本発明は、がん/腫瘍免疫療法の標的の候補として、ECT2、より詳細には、適した免疫療法標的として役立つ可能性のある新規ECT2エピトープペプチドに着目する。
そのため、本発明は、ECT2に対して特異的なCTLを誘導する能力を有する、ECT2の遺伝子産物の中の特定のエピトープペプチドの同定を、少なくとも一つの目標とする。以下に詳細に考察するように、健常ドナーから得た末梢血単核細胞(PBMC)を、ECT2に由来するHLA−A*0201結合候補ペプチドを用いて刺激した。次いで、各候補ペプチドでパルス刺激したHLA−A2陽性標的細胞に対する特異的な細胞傷害性を有するCTL株を樹立した。本明細書における結果は、これらのペプチドが、ECT2を発現する細胞に対する強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA−A2拘束性エピトープペプチドであることを実証している。これらの結果はさらに、ECT2の免疫原性が強いこと、およびそのエピトープががん/腫瘍免疫療法の有効な標的であることを実証している。
したがって、ECT2(SEQ ID NO:42)およびその免疫学的活性断片を含む、HLA抗原と結合する単離されたペプチドを提供することは、本発明の1つの目的である。そのようなペプチドはCTL誘導能を有すると予想され、そのため、そのようなペプチドを用いて、エクスビボでCTLを誘導するか、または例として膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるがこれらに限定されないがんに対する免疫応答を誘導することを目的として対象に投与することができる。好ましいペプチドはノナペプチドおよびデカペプチドであり、より好ましくは、SEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するノナペプチドおよびデカペプチドである。SEQ ID NO:1、3および21の中から選択されるアミノ配列を有するペプチドは、強いCTL誘導能を示しており、そのため特に好ましい。
本発明はまた、1個、2個またはそれ以上のアミノ酸が置換、挿入、欠失または付加されたSEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有する改変ペプチドも、その改変ペプチドが元のペプチドの必要なCTL誘導能を保持する限り、想定している。
本発明はさらに、本発明のいずれかのペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを範囲に含む。これらのポリヌクレオチドは、CTL誘導能を有するAPCを誘導もしくは調製するために用いることができ、または本発明の上記のペプチドと同じように、がんに対する免疫応答を誘導するために対象に投与することができる。
対象に投与されると、本ペプチドは、各々のペプチドを標的とするCTLを誘導するように、APCの表面上に提示される。したがって、CTLを誘導するための本発明のいずれかのペプチドまたはポリヌクレオチドを含むかまたは組み入れている剤、組成物、および/または物質を提供することは、本発明の1つの目的である。そのような剤、組成物、および物質は、がん、特に膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCの治療および/または予防および/または術後再発のために用いることができる。したがって、本発明の1つまたは複数のペプチドまたはポリヌクレオチドを含むかまたは組み入れている、がんの治療および/または予防および/または術後再発の予防のための薬学的な剤、組成物、および/または物質を提供することは、本発明のさらに別の目的である。本ペプチドまたはポリヌクレオチドの代わりに、またはそれに加えて、本発明の薬学的な剤、組成物、および物質が、本ペプチドのいずれかを提示するAPCまたはエキソソームを有効成分として含んでもよい。
本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを用いて、例えば、対象由来のAPCを本ペプチドと接触させるかまたは本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入することによって、HLA抗原と本ペプチドとの複合体を表面上に提示するAPCを誘導することもできる。そのようなAPCは標的ペプチドに対する高いCTL誘導能を有し、がん免疫療法において有用である。したがって、本発明は、CTL誘導能を有するAPCを誘導するための方法、ならびにそのような方法によって得られるAPCを範囲に含む。
本発明の1つのさらなる目的は、CTLを誘導するための方法を提供することであり、そのような方法は、本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPCもしくはエキソソームとCD8陽性細胞を共培養する段階、または本ペプチドと結合するT細胞受容体(TCR)サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入する段階を含む。そのような方法によって得られるCTLは、例として膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるがこれらに限定されないがんの治療および/または予防に利用される。したがって、本方法によって得られるCTLを提供することは、本発明のさらに別の目的である。
本発明のさらに別の目的は、がんに対する免疫反応を、それを必要とする対象において誘導するための方法を提供することであり、そのような方法は、ECT2ポリペプチドまたはその免疫学的活性断片、ECT2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ECT2ポリペプチドを提示するエキソソームもしくはAPCを含む組成物または物質を投与する段階を含む。
本発明の適用範囲は、例として膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるがこれらに限定されないがんのような、ECT2過剰発現と関係があるかまたはそれに起因する数多くの疾患の任意のものにも拡張される。
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1] SEQ ID NO:42のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片からなる単離されたペプチドであって、HLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導する、単離されペプチド。
[2] HLA抗原がHLA−A2である、[1]記載の単離されたペプチド。
[3] SEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、[1]または[2]記載の単離されたペプチド。
[4](a)HLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し、かつSEQ ID NO:42のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片からなる、単離されたペプチド、
(b)HLA抗原がHLA−A2である、(a)の単離されたペプチド、
(c)SEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、(a)または(b)の単離されたペプチド、および
(d)改変ペプチドが元のペプチドのCTL誘導能を保持することを条件として、1個、2個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたSEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、(a)または(b)の単離されたペプチド
からなる群より選択される、単離されたペプチド。
[5] SEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、以下の特徴の一方または両方を有する、[4]記載の単離されたペプチド:
(a)N末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンからなる群より選択される;および
(b)C末端のアミノ酸がバリンまたはロイシンからなる群より選択される。
[6] ノナペプチドまたはデカペプチドである、[1]〜[5]のいずれか一項記載の単離されたペプチド。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[8] [1]〜[6]のいずれか一項記載の1つもしくは複数のペプチドまたは[7]記載の1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む、CTLを誘導するための組成物。
[9] [1]〜[6]のいずれか一項記載の1つもしくは複数のペプチドまたは[7]記載の1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む、がんの治療および/または予防および/または術後再発の予防のための薬学的組成物。
[10] HLA抗原がHLA−A2である対象への投与のために製剤化される、[9]記載の薬学的組成物。
[11] がんの治療のために製剤化される、[9]または[10]記載の薬学的組成物。
[12](a)インビトロ、エクスビボまたはインビボで、APCを[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドと接触させる段階、および
(b)[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階
からなる群より選択される段階を含む、CTL誘導能を有する抗原提示細胞(APC)を誘導するための方法。
[13](a)HLA抗原と[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドとの複合体を表面上に提示するAPCと、CD8陽性T細胞を共培養する段階;
(b)HLA抗原と[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドとの複合体を表面上に提示するエキソソームと、CD8陽性T細胞を共培養する段階;および
(c)[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドと結合したT細胞受容体(TCR)サブユニットのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を、T細胞に導入する段階
からなる群より選択される段階を含む方法によって、CTLを誘導するための方法。
[14] HLA抗原と[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチドとの複合体を表面上に提示する、単離されたAPC。
[15] [12]記載の方法によって導入される、[14]記載のAPC。
[16] [1]〜[6]記載のペプチドのいずれかを標的とする、単離されたCTL。
[17] [13]記載の方法によって誘導される、[16]記載のCTL。
[18] がんに対する免疫応答を、それを必要とする対象において誘導する方法であって、[1]〜[6]のいずれか一項記載のペプチド、その免疫学的活性断片、またはそのペプチドもしくは断片をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を該対象に投与する段階を含む、方法。
[19] [1]〜[6]記載のペプチドのいずれかに対する抗体またはその免疫学的活性断片。
[20] [1]〜[6]記載のペプチドのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含むベクター。
[21] [1]〜[6]記載のペプチド、[7]記載のヌクレオチド、または[19]記載の抗体のいずれかを含む、診断キット。
前述の発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも例示的な態様であり、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。
上記に加え、本発明のその他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことによって、より十分に明らかになるであろう。しかし、前述の発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも例示的な態様であり、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。特に、本発明をいくつかの特定の態様を参照して本明細書において説明するが、その説明は本発明を例証するものであり、本発明を限定するものとして構成されていないことが理解されよう。添付の特許請求の範囲によって記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は様々な変更および適用に想到することができる。同様に、本発明のその他の目的、特徴、利益、および利点は、本概要および以下に記載する特定の態様から明らかになり、当業者には容易に明白になるであろう。そのような目的、特徴、利益、および利点は、添付の実施例、データ、図面、およびそれらから引き出されるあらゆる妥当な推論と併せて上記から、単独で、または本明細書に組み入れられる参考文献を考慮して、明らかになるであろう。
本発明の様々な局面および適用は、図面の簡単な説明ならびに本発明の詳細な説明およびその好ましい態様を考慮することで、当業者に明白となるであろう。
図1は、ECT2由来のペプチドによって誘導されたCTLに対するIFN−γ ELISPOTアッセイの結果を示している一連の写真(a)〜(c)で構成される。ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)により刺激したウェル番号#6(a)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)により刺激したウェル番号#5(b)、およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)により刺激したウェル番号#1(c)におけるCTLは、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示した。これらの画像のウェル上の四角印は、対応するウェル由来の細胞を、CTL株を樹立するために増殖させたことを示している。図面中で、「+」は適切なペプチドでパルス刺激した標的細胞に対するIFN−γ産生を示しており、「−」はいずれのペプチドでもパルス刺激していない標的細胞に対するIFN−γ産生を示している。 図2は、(a)ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)、(b)ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)、および(c)ECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)で刺激したCTL株のIFN−γ産生を示すIFN−γ ELISAアッセイの結果を示している、一連の折れ線グラフ(a)〜(c)で構成される。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株が、対照と比較して強いIFN−γ産生を示すことを実証している。図面中で、「+」は適切なペプチドでパルス刺激した標的細胞に対するIFN−γ産生を示しており、「−」はいずれのペプチドでもパルス刺激していない標的細胞に対するIFN−γ産生を示している。 図3は、(a)ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)および(b)ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)で刺激したCTL株から限界希釈によって樹立されたCTLクローンのIFN−γ産生を示している一対の折れ線グラフ(a)および(b)を示している。これらの結果は、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTLクローンが、対照と比較して強いIFN−γ産生を示したことを実証している。図面中で、「+」は適切なペプチドでパルス刺激した標的細胞に対するIFN−γ産生を示しており、「−」はいずれのペプチドでもパルス刺激していない標的細胞に対するIFN−γ産生を示している。 図4は、ECT2およびHLA−A*0201を外因性に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示している一対の折れ線グラフ(a)および(b)を示している。HLA−A*0201または完全長ECT2遺伝子がトランスフェクトされたCOS7細胞を、対照として調製した。ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)によって樹立されたCTLクローン(a)およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)によって樹立されたCTL株(b)は、ECT2およびHLA−A*0201の両方がトランスフェクトされたCOS7細胞に対する特異的CTL活性を示した(●)。一方、HLA−A*0201(△)またはECT2(○)のいずれかを発現する標的細胞に対する有意な特異的CTL活性は検出されなかった
態様の説明
本発明の態様を実施または試験するにあたって、本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは同等のいかなる方法および材料も用いることができるが、好ましい材料、方法、および装置をここに記載する。しかし、本発明の材料および方法について記載する前に、これらの記載が説明のためだけのものであり、限定することを意図していないことが理解されるべきである。同様に、本明細書に記載の特定の大きさ、形状、寸法、材料、方法論、プロトコール等は慣例的な実験法および/または最適化に応じて変更可能であるため、本発明がこれらに限定されないことが理解されるべきである。さらに、本記載に使用する専門用語は特定の型または態様のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図しない。
本明細書において言及される各出版物、特許、または特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。しかし、本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によりそのような開示に先行する権利を与えられないと承認するものとしては解釈されるべきではない。
別段の定めのない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている用語と同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および例は、単に例証するためのものであり、限定することは意図しない。
I.定義
本明細書で用いる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、特に別段の指定のない限り「少なくとも1つ」を意味する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1個または複数個のアミノ酸残基が、修飾された残基、すなわち対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体などの非天然残基であってよいアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーに適用される。
本明細書で時として用いる「オリゴペプチド」という用語は、長さが20残基またはそれ未満、典型的には15残基またはそれ未満の本発明のペプチド、および典型的には約8〜約11残基、しばしば9または10残基から構成される本発明のペプチドを指すのに用いられる。
本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。アミノ酸は、L−アミノ酸またはD−アミノ酸のいずれであってもよい。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および細胞内で翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素)を有するが、1つまたは複数の修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸とは異なる構造を有するが、同様の機能を有する化合物を指す。
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)の推奨する、一般に公知の3文字表記または1文字表記により参照されてもよい。
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、特に別段の指定のない限り、アミノ酸と同様に、一般に受け入れられている1文字コードにより参照される。
「剤」、「物質」、および「組成物」という用語は本明細書で互換的に用いられ、特定量の特定成分を含む生成物、ならびに特定量の特定成分の組み合わせから直接または間接的に生じる任意の生成物を指す。「薬学的」という修飾語句に関して用いる場合のそのような用語は(例えば「薬学的な剤」および「薬学的組成物」)、有効成分と担体を構成する任意の不活性成分とを含む生成物、ならびに任意の2つもしくはそれ以上の成分の組み合わせ、複合体形成、もしくは凝集から、1つもしくは複数の成分の解離から、または1つもしくは複数の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から直接または間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、本発明との関連において、「薬学的な剤」および「薬学的組成物」という用語は、本発明の分子または化合物と薬学的または生理学的に許容される担体とを混合することにより作製される任意の産物を指す。
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」という語句は、ポリファーマコフォアにスキャフォールドされた対象をある器官または身体の一部から別の器官または身体の一部へ運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料を含むがこれらに限定されない、薬学的または生理学的に許容される材料、組成物、物質、または媒体を意味する。
本発明の薬学的な剤または組成物は、特にワクチンとして使用される。本発明との関連において、「ワクチン」という語句(「免疫原性組成物」とも称される)は、動物に接種した際に抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。
本明細書における「有効成分」という用語は、生物学的活性または生理的活性のある、剤または組成物中の物質を指す。特に、薬学的な剤または組成物の文脈において、「有効成分」という用語は、目的の薬理学的効果を示す物質を指す。例えば、がんの治療または予防に用いるための薬学的な剤または組成物の場合、剤または組成物中の有効成分は、がん細胞および/または組織に対して直接的または間接的に、少なくとも1つの生物学的作用または生理的作用をもたらし得る。好ましくは、そのような作用には、がん細胞増殖の低下または阻害、がん細胞および/または組織の損傷または殺傷などが含まれ得る。典型的には、有効成分の間接的効果は、がん細胞を認識または殺傷するCTLの誘導である。製剤化される前には、「有効成分」は「バルク(bulk)」、「原薬(drug substance)」、または「原体 (technical product)」とも称される場合がある。
別段の定めのない限り、「がん」という用語は、ECT2遺伝子を過剰発現するがんを指し、その例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるが、これらに限定されない。
別段の定めのない限り、「細胞傷害性Tリンパ球」、「細胞傷害性T細胞」、および「CTL」という用語は本明細書において互換的に用いられ、特に別段の指定のない限り、非自己細胞(例えば、腫瘍/がん細胞、ウイルス感染細胞)を認識し、そのような細胞の死滅を誘導することができるTリンパ球のサブグループを指す。
別段の定めのない限り、本明細書で用いる「HLA−A2」という用語が代表的に指すサブタイプの例には、HLA−A*0201、HLA−A*0202、HLA−A*0203、HLA−A*0204、HLA−A*0205、HLA−A*0206、HLA−A*0207、HLA−A*0210、HLA−A*0211、HLA−A*0213、HLA−A*0216、HLA−A*0218、HLA−A*0219、HLA−A*0228、およびHLA−A*0250が含まれるがこれらに限定されない。
別段の定めのない限り、本明細書で用いる「キット」という用語は、試薬と他の物質との組み合わせに関して用いられる。本明細書では、キットはマイクロアレイ、チップ、マーカー等を含み得ることが企図される。「キット」という用語は、試薬および/または物質の特定の組み合わせに限定されないことが意図される。
対象または患者との関連において、本明細書で用いる「HLA−A2陽性」という語句は、その対象または患者がHLA−A2抗原遺伝子をホモ接合的またはヘテロ接合的に保有し、HLA−A2抗原が対象または患者の細胞においてHLA抗原として発現していることを指す。
本発明の方法および組成物ががんの「治療」との関連において有用である限り、治療が、ECT2遺伝子の発現の低下、または対象におけるがんの大きさ、広がり、もしくは転移能の減少などの臨床的利点をもたらす場合に、治療は「有効である」と見なされる。治療を予防的に適用する場合、「有効な」とは、治療によって、がんの形成が遅延されるもしくは妨げられるか、またはがんの臨床症状が妨げられるもしくは緩和されることを意味する。有効性は、特定の腫瘍の種類を診断または治療するための任意の公知の方法と関連して決定される。
本発明の方法および組成物ががんの「予防(preventionおよびprophylaxis)」との関連において有用である限り、そのような用語は本明細書において互換的に用いられ、疾患による死亡率または罹患率の負荷を軽減させる任意の働きを指す。予防(preventionおよびprophylaxis)は、「第一次、第二次、および第三次の予防レベル」で行われ得る。第一次の予防(preventionおよびprophylaxis)は疾患の発生を回避するのに対し、第二次および第三次レベルの予防(preventionおよびprophylaxis)は、疾患の進行および症状の出現を予防することに加え、機能を回復させ、かつ疾患関連の合併症を減少させることによって、既存の疾患の悪影響を低下させることを目的とした働きを包含する。あるいは、予防(preventionおよびprophylaxis)は、特定の障害の重症度を緩和すること、例えば腫瘍の増殖および転移を減少させることを目的とした広範囲の予防的療法を含み得る。
本発明との関連において、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または術後のその再発の予防は、がん細胞の外科的切除、がん性細胞の増殖の阻害、腫瘍の退行または退縮、寛解の誘導およびがんの発生の抑制、腫瘍退縮、ならびに転移の低減または阻害などの段階のいずれかを含む。がんの効果的な治療および/または予防は、死亡率を減少させ、がんを有する個体の予後を改善し、血中の腫瘍マーカーのレベルを低下させ、かつがんに伴う検出可能な症状を緩和する。例えば、症状の軽減または改善は効果的な治療および/または予防を構成し、10%、20%、30%、もしくはそれ以上の軽減もしくは安定した疾患を含む。
本発明との関連において、「抗体」という用語は、指定のタンパク質またはそのペプチドと特異的に反応する免疫グロブリンおよびその断片を指す。抗体には、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、他のタンパク質または放射標識と融合させた抗体、および抗体断片が含まれ得る。さらに、本明細書において抗体は広義で使用され、具体的には完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を包含し、また所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片を包含する。「抗体」は、すべてのクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)を示す。
別段の定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が共通に理解しているのと同じ意味を有する。
II.ペプチド
ECT2由来のペプチドがCTLによって認識される抗原として機能することを実証するために、ECT2(SEQ ID NO:42)由来のペプチドを解析して、それらが、通常見られるHLAアリルであるHLA−A2によって拘束される抗原エピトープであるかどうかを判定した(Date Y et al., Tissue Antigens 47: 93-101, 1996;Kondo A et al., J Immunol 155: 4307-12, 1995;Kubo RT et al., J Immunol 152: 3913-24, 1994)。
ECT2由来のHLA−A2結合ペプチドの候補を、HLA−A2に対するそれらの結合親和性に基づいて同定した。以下の候補ペプチドを同定した:
ECT2−A2−9−34(SEQ ID NO:1)、
ECT2−A2−9−619(SEQ ID NO:2)、
ECT2−A2−9−664(SEQ ID NO:3)、
ECT2−A2−9−662(SEQ ID NO:4)、
ECT2−A2−9−634(SEQ ID NO:5)、
ECT2−A2−9−145(SEQ ID NO:6)、
ECT2−A2−9−561(SEQ ID NO:7)、
ECT2−A2−9−98(SEQ ID NO:8)、
ECT2−A2−9−575(SEQ ID NO:9)、
ECT2−A2−9−240(SEQ ID NO:10)、
ECT2−A2−9−292(SEQ ID NO:11)、
ECT2−A2−9−823(SEQ ID NO:12)、
ECT2−A2−9−220(SEQ ID NO:13)、
ECT2−A2−9−755(SEQ ID NO:14)、
ECT2−A2−9−357(SEQ ID NO:15)、
ECT2−A2−9−438(SEQ ID NO:16)、
ECT2−A2−9−874(SEQ ID NO:17)、
ECT2−A2−9−568(SEQ ID NO:18)、
ECT2−A2−9−166(SEQ ID NO:19)、
ECT2−A2−9−443(SEQ ID NO:20)、
ECT2−A2−10−33(SEQ ID NO:21)、
ECT2−A2−10−633(SEQ ID NO:22)、
ECT2−A2−10−144(SEQ ID NO:23)、
ECT2−A2−10−701(SEQ ID NO:24)、
ECT2−A2−10−754(SEQ ID NO:25)、
ECT2−A2−10−557(SEQ ID NO:26)、
ECT2−A2−10−191(SEQ ID NO:27)、
ECT2−A2−10−774(SEQ ID NO:28)、
ECT2−A2−10−428(SEQ ID NO:29)、
ECT2−A2−10−618(SEQ ID NO:30)、
ECT2−A2−10−97(SEQ ID NO:31)、
ECT2−A2−10−20(SEQ ID NO:32)、
ECT2−A2−10−574(SEQ ID NO:33)
ECT2−A2−10−461(SEQ ID NO:34)、
ECT2−A2−10−664(SEQ ID NO:35)、
ECT2−A2−10−575(SEQ ID NO:36)、
ECT2−A2−10−430(SEQ ID NO:37)、
ECT2−A2−10−511(SEQ ID NO:38)、
ECT2−A2−10−471(SEQ ID NO:39)、および
ECT2−A2−10−87(SEQ ID NO:40)。
さらに、これらのペプチドをパルス(負荷)した樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロでの刺激後、以下の各ペプチドでDCを刺激することによりCTLの樹立に成功した:
ECT2−A2−9−34(SEQ ID NO:1)、
ECT2−A2−9−664(SEQ ID NO:3)、および
ECT2−A2−10−33(SEQ ID NO:21)。
樹立されたこれらのCTLは、各ペプチドをパルスした標的細胞に対して強力な特異的CTL活性を示した。これらの結果は、ECT2がCTLによって認識される抗原であること、および試験したそれらのペプチドがHLA−A2拘束性ECT2のエピトープペプチドであることを実証している。
ECT2遺伝子は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCなどのがん細胞では過剰発現されるが、ほとんどの正常臓器では発現されないため、これはがん免疫療法の優れた標的となる。したがって、本発明は、CTLにより認識されるECT2由来のエピトープのノナペプチド(9個のアミノ酸残基で構成されるペプチド)およびデカペプチド(10個のアミノ酸残基で構成されるペプチド)を提供する。あるいは、本発明は、HLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導する、単離されたペプチドを提供し、このペプチドは、SEQ ID NO:42のアミノ酸配列を有するかまたはその免疫学的活性断片である。より具体的には、いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
一般に、インターネット上で現在利用可能なソフトウェアプログラム、例えば、Parker KC et al., J Immunol 1994 Jan 1, 152(1): 163-75およびNielsen M et al., Protein Sci., 2003; 12: 1007-17に記載されたものなどを用いて、さまざまなペプチドとHLA抗原との間の結合親和性をインシリコで計算することができる。HLA抗原との結合親和性は、例えば、Parker KC et al., J Immunol 1994 Jan 1, 152(1): 163-75, Kuzushima K et al., Blood 2001, 98(6): 1872-81, Larsen MV et al. BMC Bioinformatics. 2007 Oct 31; 8: 424, Buus S et al. Tissue Antigens., 62:378-84, 2003, Nielsen M et al., Protein Sci 2003; 12: 1007-17、およびNielsen M et al. PLoS ONE 2007; 2: e796に記載されたようにして測定することができ、それらは例えば、Lafuente EM et al., Current Pharmaceutical Design, 2009, 15, 3209-3220に概括されている。結合親和性を決定するための方法は、例えば、Journal of Immunological Methods (1995, 185: 181-190)およびProtein Science (2000, 9: 1838-1846)に記載されている。このため、そのようなソフトウェアプログラムを用いて、HLA抗原との高い結合親和性を有するECT2由来の断片を選択することができる。したがって、本発明は、そのような公知のプログラムによって、HLA抗原と結合すると判定されるであろう、ECT2由来の任意の断片で構成されるペプチドを範囲に含む。さらに、そのようなペプチドには、完全長のECT2で構成されるペプチドを含んでもよい。
本発明のペプチド、特に本発明のノナペプチドおよびデカペプチドには、そのペプチドがそのCTL誘導能を保持する限り、付加的なアミノ酸残基が隣接してもよい。具体的な付加的アミノ酸残基は、それらが元のペプチドのCTL誘導能を損なわない限り、あらゆる種類のアミノ酸で構成され得る。したがって、本発明は、HLA抗原に対する結合親和性を有するペプチドを範囲に含み、これにはECT2由来のペプチドが含まれる。そのようなペプチドは、例えば約40アミノ酸未満であり、多くの場合は約20アミノ酸未満であり、通常は約15アミノ酸未満である。
一般に、ペプチドにおける1つまたは複数のアミノ酸の改変は、そのペプチドの機能に影響を及ぼさず、または場合によっては元のタンパク質の所望の機能を強化しさえすることが知られている。事実、改変ペプチド(すなわち、元の参照配列に対して1個、2個または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を行うことによって改変されたアミノ酸配列で構成されるペプチド)は、元のペプチドの生物活性を保持していることが知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 1984, 81: 5662-6; Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 1982, 10: 6487-500;Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79: 6409-13)。したがって、本発明の1つの態様によれば、本発明のCTL誘導能を有するペプチドは、1個、2個またはさらにはそれ以上のアミノ酸が付加、挿入、欠失および/または置換されたSEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドで構成されてよい。
当業者は、単一のアミノ酸もしくは低いパーセンテージのアミノ酸を変更するアミノ酸配列に対する個々の付加、欠失、挿入、および/または置換が、元のアミノ酸側鎖の特性の保存をもたらすことを認識しているであろう;これはそのため、「保存的置換」または「保存的改変」と称され、この場合にはタンパク質の変更によって類似の機能を有するタンパク質がもたらされる。機能的に類似したアミノ酸が得られる保存的置換の表は当技術分野で周知である。アミノ酸側鎖の特性の例には、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、ならびに以下の官能基または特徴を共通して有する側鎖がある:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基を含む側鎖(S、T、Y);イオウ原子を含む側鎖(C、M);カルボン酸およびアミドを含む側鎖(D、N、E、Q);塩基を含む側鎖(R、K、H);および芳香族を含む側鎖(H、F、Y、W)。加えて、以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的置換物であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照)。
そのような保存的に改変されたペプチドも、本発明のペプチドであると判断される。しかし、本発明のペプチドはそれらには限定されず、結果として生じる改変ペプチドが元のペプチドの必要なCTL誘導能を保持する限り、非保存的改変物も含んでよい。さらに、改変ペプチドから、ECT2の多型変異体、種間相同体、およびアレルのCTL誘導可能ペプチドを除外すべきではない。
より高い結合親和性を実現するために、アミノ酸残基を本発明のペプチドに挿入、置換、もしくは付加してもよく、または代替としてそこからアミノ酸残基を欠失させてもよい。必要なCTL誘導能を保持するためには、少数(例えば、1個、2個または数個)または低いパーセンテージのアミノ酸のみを改変する(挿入、欠失、付加、および/または置換する)ことが好ましい。本明細書において、「数個の」という用語は、5個またはそれ未満、例えば、4個または3個またはそれ未満のアミノ酸を意味する。改変するアミノ酸の割合は、例えば、20%またはそれ未満、好ましくは15%またはそれ未満、より好ましくは10%またはそれ未満、さらにより好ましくは1〜5%であってよい。
がん免疫療法との関連において用いる場合、本ペプチドを、HLA抗原との複合体として細胞またはエキソソームの表面上に提示させることができる。このため、CTLを誘導するだけでなく、HLA抗原に対する高い結合親和性をも有するペプチドを選択することが好ましい。この目的に向けて、アミノ酸残基の欠失、置換、挿入、および/または付加によってペプチドを改変して、改良された結合親和性を有する改変ペプチドを得ることができる。天然に提示されるペプチドに加えて、HLA抗原との結合によって提示されるペプチドの配列の規則性は既知であることから(J Immunol 1994, 152: 3913; Immunogenetics 1995, 41: 178; J Immunol 1994, 155: 4307)、そのような規則性に基づく改変を、本発明の免疫原性ペプチドに導入してもよい。
例えば、高いHLA−A2結合親和性を示すペプチドは、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンで置換されている傾向がある。同様に、C末端アミノ酸がバリンまたはロイシンで置換されているペプチドを用いることが有利なこともある。したがって本発明で想定されるのは、SEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドであって、ここで前記SEQ ID NOのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸はロイシンまたはメチオニンで置換されている、および/または前記SEQ ID NOのアミノ酸配列のC末端はバリンまたはロイシンで置換されている。
置換は、ペプチドの末端アミノ酸の箇所だけでなく、T細胞受容体(TCR)認識位置である可能性のある位置に導入してもよい。いくつかの研究は、例えばCAP1、p53(264−272)、Her−2/neu(369−377)またはgp100(209−217)など、アミノ酸置換を有するペプチドは、元のものと機能が同等であるかまたはより優れている場合があることを実証している(Zaremba et al. Cancer Res. 57, 4570-4577, 1997, T. K. Hoffmann et al. J Immunol. (2002) Feb 1;168(3):1338-47., S. O. Dionne et al. Cancer Immunol immunother. (2003) 52: 199-206およびS. O. Dionne et al. Cancer Immunology, Immunotherapy (2004) 53, 307-314)。
本発明はまた、本ペプチドのN末端および/またはC末端に対する1個、2個または数個のアミノ酸の付加も想定している。高いHLA抗原結合親和性を示し、かつCTL誘導能を保持する、そのような改変ペプチドも、本発明に含まれる。例えば、本発明は、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、長さが14、13、12、11、または10アミノ酸未満の単離されたペプチドを提供する:
(i)1個、2個または数個のアミノ酸が置換されているSEQ ID NO:1〜20からなる群より選択されるアミノ酸配列であって、そのペプチドがHLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球を誘導する、アミノ酸配列、ならびに
(ii)以下の特徴のうち一方または両方を有する、(i)のアミノ酸配列:
(a)前記SEQ ID NOのN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンからなる群より選択される;および
(b)前記SEQ ID NOのC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンからなる群より選択される。
さらに、本発明はまた、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、長さが15、14、13、12または11アミノ酸未満の単離されたペプチドも提供する:
(i)1個、2個または数個のアミノ酸が置換されているSEQ ID NO:21〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列であって、そのペプチドがHLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球を誘導する、アミノ酸配列、ならびに
(ii)以下の特徴のうち一方または両方を有する、(i)のアミノ酸配列:
(a)前記SEQ ID NOのN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンからなる群より選択される;および
(b)前記SEQ ID NOのC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンからなる群より選択される。
これらのペプチドがAPCと接触するかまたはその中に導入されると、これらのペプチドはAPCにおいてプロセシングを受けて(i)、(ii)、(i')および(ii')のペプチドがその表面に提示される。
しかし、ペプチド配列が、異なる機能を有する内因性または外因性タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、自己免疫障害または特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用が誘発される可能性がある。したがって、ペプチドの配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況を回避するために、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行うことができる。相同性検索から、対象ペプチドとは1個または2個のアミノ酸が異なるペプチドでさえも存在しないことが明らかになった場合には、そのような副作用の危険を全く伴うことなしに、HLA抗原とのその結合親和性を増大させるため、および/またはそのCTL誘導能を増大させるために、該対象ペプチドを改変してもよい。
上記のようにHLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドは、非常に効果的であると予測されるが、高い結合親和性の存在を指標として選択された候補ペプチドを、CTL誘導能の有無についてさらに調べる。本明細書において「CTL誘導能」という語句は、抗原提示細胞(APC)上に提示された場合に、CTLを誘導するペプチドの能力を示す。さらに、「CTL誘導能」は、CTL活性化を誘導する、CTL増殖を誘導する、CTLによる標的細胞の溶解を促進する、およびCTLのIFN−γ産生を増加させる、ペプチドの能力を含む。
CTL誘導能の確認は、ヒトMHC抗原を保有するAPC(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞(DC))、またはより具体的にはヒト末梢血単核白血球由来のDCを誘導し、ペプチドで刺激した後、CD8陽性細胞と混合し、その後、標的細胞に対してCTLによって産生および放出されたIFN−γを測定することにより達成される。反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, Krishnan R, Longmate J, Auge C, Low L, Primus J, Diamond DJ, Hum Immunol 2000 Aug, 61(8): 764-79, Related Articles, Books, Linkout Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependent on MHC (HLA) class II restricted T(H) responseに記載されているもの)を用いることができる。例えば、標的細胞を51Cr等で放射標識してもよく、標的細胞から放出された放射能から細胞傷害活性を算出してもよい。あるいは、固定化したペプチドを保有するAPCの存在下で、CTLによって産生および放出されたIFN−γを測定し、抗IFN−γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻止帯を可視化することによって、それを検討してもよい。
上記のペプチドのCTL誘導能を検討した結果、SEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドの中から選択されるノナペプチドおよびデカペプチドが、特に高いCTL誘導能、ならびにHLAに対する高い結合親和性を示すことが発見された。したがって、これらのペプチドが本発明の好ましい態様として例示される。
その上、相同性解析の結果により、そのようなペプチドが、他のいずれの公知のヒト遺伝子産物に由来するペプチドとも有意な相同性を有しないことが示された。このことから、免疫療法のために用いた場合に未知のまたは望ましくない免疫応答が生じる可能性は低くなる。したがって、この局面からもまた、これらのペプチドはがん患者においてECT2に対する免疫を誘発させるために有用である。したがって、本発明のペプチド、好ましくは、SEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、本発明によって想定される。
上記に考察したような本ペプチドの改変に加えて、結果として生じる連結したペプチドが元のペプチドの必要なCTL誘導能を保持し、かつ、より好ましくはその必要なHLA結合性をも保持する限り、本発明のペプチドを他のペプチドと連結させてもよい。例示的な「他の」ペプチドには、本発明のペプチド、または他のTAAに由来するCTL誘導性ペプチドが含まれる。ペプチド間のリンカーは当技術分野において周知であり、例えば、AAY(P. M. Daftarian et al., J Trans Med 2007, 5:26)、AAA、NKRK(R. P. M. Sutmuller et al., J Immunol. 2000, 165: 7308-7315)またはK(S. Ota et al., Can Res. 62, 1471-1476, K. S. Kawamura et al., J Immunol. 2002, 168: 5709-5715)である。
例えば、HLAクラスIおよび/またはクラスIIを介する免疫応答を増大させるために、ECT2以外の腫瘍関連抗原ペプチドを実質的に同時に用いることもできる。がん細胞が複数の腫瘍関連遺伝子を発現し得ることは十分に立証されている。したがって、特定の対象がさらなる腫瘍関連遺伝子を発現するか否かを判定して、続いて、そのような遺伝子の発現産物に由来するHLAクラスIおよび/またはHLAクラスII結合ペプチドを、本発明のECT2組成物またはワクチンの中に含めることは、当業者の慣例的な実験の範囲内にある。
HLAクラスIおよびHLAクラスII結合ペプチドの例は当業者に公知であり(例えば、Coulie, Stem Cells 13:393-403, 1995を参照)、本明細書に開示したものと同様の様式で本発明に関連して用いることができる。当業者は、1つもしくは複数のECT2ペプチドおよび1つもしくは複数の非ECT2ペプチドを含むポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードする核酸を、従来の分子生物学の手順を用いて調製することができる。
上記の連結ペプチドを、本明細書では「ポリトープ」と称し、これはすなわち、さまざまな配置(例えば、連鎖状、一部重複)で1つに結びつけることのできる、免疫原性または免疫応答刺激性を持つ可能性のある2つまたはそれ以上のペプチドの群のことである。ポリトープ(またはポリトープをコードする核酸)を標準的な免疫処置プロトコールに従って例えば動物に投与して、免疫応答を刺激、強化、および/または誘発させる上でのポリトープの有効性を試験することができる。
直接的にまたはポリトープを形成する隣接配列の使用を介して、このようなペプチドを1つに結びつけることができ、ポリトープのワクチンとしての使用は当技術分野において周知である(例えば、Thomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 92(13):5845-5849, 1995;Gilbert et al., Nature Biotechnol. 15(12):1280-1284, 1997;Thomson et al., J Immunol. 157(2):822-826, 1996;Tarn et al., J Exp. Med. 171(1):299-306, 1990を参照)。さまざまな数および組み合わせのエピトープを含むポリトープを調製して、CTLによる認識、および免疫応答を増大させる効力に関して試験することができる。
本発明のペプチドを、それらが必要なCTL誘導性を保持する限り、他の物質とさらに連結させてもよい。そのような「他の」物質の実例には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成性のポリマーなどが含まれるが、これに限定されない。ペプチドは、修飾によって本明細書に記載のペプチドの生物活性が損なわれない限り、グリコシル化、側鎖酸化またはリン酸化などの修飾を含んでもよい。これらの種類の修飾は、追加的な機能(例えば、ターゲティング機能および送達機能)を付与するため、またはポリペプチドを安定化するために行う場合がある。
例えば、ポリペプチドのインビボ安定性を高めるために、D−アミノ酸、アミノ酸模倣物、または非天然アミノ酸を導入することが当技術分野では公知である;この考え方を本ポリペプチドに取り入れてもよい。ポリペプチドの安定性は、さまざまな方法でアッセイしてもよい。例えば、ペプチダーゼ、ならびにヒト血漿および血清などのさまざまな生体媒質を用いて、安定性を試験することができる(例えば、Verhoef et al., Eur J Drug Metab Pharmacokin 1986, 11: 291-302を参照)。
その上、上述したように、1個、2個または数個のアミノ酸残基が置換、挿入、欠失、または付加された改変ペプチドの中から、元のペプチドと比較して同じまたはより高い活性を有するものをスクリーニングまたは選択することができる。本発明はしたがって、元のものと比較して同じまたはより高い活性を有する改変ペプチドをスクリーニングまたは選択する方法も提供する。例えば、本方法は以下の段階を含んでもよい:
a:本発明のペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入、欠失、または付加を行う段階;
b:前記ペプチドの活性を決定する段階;および
c:元のものと比較して同じまたはより高い活性を有するペプチドを選択する段階。
本明細書において、このような活性には、MHC結合活性、APCまたはCTLの誘導能、および細胞傷害活性が含まれ得る。
本明細書において、本発明のペプチドが「ECT2ペプチド」または「ECT2ポリペプチド」と記載される場合もある。
III.ECT2ペプチドの調製
本発明のペプチドは、周知の手法を用いて調製することができる。例えば、本ペプチドを、組換えDNA技術または化学合成によって合成的に調製してもよい。本発明のペプチドは、個別にまたは2つもしくはそれ以上のペプチドを含むより長いペプチドとして合成してもよい。本ペプチドを単離してもよく、すなわち、天然に存在する他の宿主細胞タンパク質およびそれらの断片も、いかなる他の化学物質も実質的に含まないように精製または単離してもよい。
本発明のペプチドは、修飾によって元のペプチドの生物活性が損なわれない限り、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含んでもよい。他の例示的な修飾には、例えば、ペプチドの血清中半減期を延長させるために用いることのできる、D−アミノ酸または他のアミノ酸模倣物の組み入れが含まれる。
選択したアミノ酸配列に基づく化学合成を通じて、本発明のペプチドを得ることもできる。例えば、この合成のために採用され得る従来のペプチド合成法には、以下のものが含まれる:
(i)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(ii)The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
(iii)「ペプチド合成」(日本語), 丸善., 1975;
(iv)「ペプチド合成の基礎と実験」(日本語), 丸善, 1985;
(v)医薬品の開発(第2版)(日本語), 丸善, 第14巻 (ペプチド合成), 広川書店, 1991;
(vi)WO99/67288号;および
(vii)Barany G. & Merrifield R.B., Peptides Vol. 2, 「Solid Phase Peptide Synthesis」, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
あるいは、ペプチドを生産するための任意の公知の遺伝子工学的方法を採用して、本ペプチドを得ることもできる(例えば、Morrison J, J Bacteriology 1977, 132: 349-51; Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology (eds. Wu et al.) 1983, 101: 347-62)。例えば、最初に、目的のペプチドを発現可能な形態で(例えば、プロモーター配列に対応する調節配列の下流に)コードするポリヌクレオチドの保有に適したベクターを調製し、適した宿主細胞への形質転換導入を行う。そのようなベクターおよび宿主細胞も本発明によって提供される。続いて宿主細胞を培養し、関心対象のペプチドを産生させる。インビトロ翻訳系を採用して、本ペプチドをインビトロで生成させてもよい。
IV.ポリヌクレオチド
本発明はまた、前述の本発明のペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドも提供する。これらには、天然のECT2遺伝子(GenBankアクセッション番号AY376439(例えば、SEQ ID NO:41))に由来するポリヌクレオチド、およびそれらの保存的に改変されたヌクレオチド配列を有するものが含まれる。本明細書において、「保存的に改変されたヌクレオチド配列」という語句は、同一または本質的に同一なアミノ酸配列をコードする配列のことを指す。遺伝暗号の縮重性のために、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。このため、あるコドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸の変異は、当技術分野において「サイレント変異」と称され、保存的に改変された変異の一種を表すものである。ペプチドをコードすると本明細書中に記載されたあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント変異についても述べている。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を作製し得ることを容易に理解するであろう。したがって、開示されたペプチドをコードする各ヌクレオチド配列は、それに付随するサイレント変異の非明示的な開示でもある。
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNAおよびそれらの誘導体で構成され得る。当技術分野において周知であるように、DNA分子は天然の塩基A、T、C、およびGなどの塩基で適切に構成され、RNAではTがUに置き換えられる。当業者は非天然塩基も同様にポリヌクレオチドの中に含まれることを認識しているであろう。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の複数のペプチドを、介在アミノ酸配列を伴うかまたは伴わずにコードすることができる。例えば、介在アミノ酸配列が、ポリヌクレオチドまたは翻訳されたペプチドの切断部位(例えば、酵素認識配列)を与えてもよい。その上、ポリヌクレオチドが、本発明のペプチドをコードするコード配列に対する任意の追加的な配列を含んでもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ペプチドの発現のために必要な調節配列を含む組換えポリヌクレオチドであってもよく、またはマーカー遺伝子などを有する発現ベクター(プラスミド)であってもよい。一般に、そのような組換えポリヌクレオチドは、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる、従来の組換え手法によってポリヌクレオチドを操作することによって調製してもよい。
本発明のポリヌクレオチドの作製には、組換え手法および化学合成手法の両方を用いてもよい。例えば、適切なベクター中への挿入によってポリヌクレオチドを作製することができ、それをコンピテント細胞にトランスフェクトして発現させてもよい。あるいは、PCR法または適した宿主における発現を用いてポリヌクレオチドを増幅させてもよい(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989を参照されたい)。あるいは、Beaucage SL & Iyer RP, Tetrahedron 1992, 48: 2223-311; Matthes et al., EMBO J 1984, 3: 801-5に記載されているような固相法を用いて、ポリヌクレオチドを合成してもよい。
V.エキソソーム
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原との間で形成された複合体を自身の表面上に提示する、エキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば公表特許公報 特表平11−510507号およびWO99/03499号に詳述された方法を用いることによって調製してもよく、治療および/または予防の対象となる患者から得られたAPCを用いて調製してもよい。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、ワクチンとして接種することができる。
複合体に含まれるHLA抗原の型は、治療および/または予防を必要とする対象のものと一致しなければならない。例えば、日本人の場合は、HLA−A2、特にHLA−A*0201、HLA−A*0202、HLA−A*0203、HLA−A*0204、HLA−A*0205、HLA−A*0206、HLA−A*0207、HLA−A*0210、HLA−A*0211、HLA−A*0213、HLA−A*0216、HLA−A*0218、HLA−A*0219、HLA−A*0228、およびHLA−A*0250が適切であることが多い。日本人および白人で高発現されるA24型またはA2型を用いることが有効な結果を得るためには有利であり、HLA−A*0201、HLA−A*0202、HLA−A*0203、HLA−A*0204、HLA−A*0205、HLA−A*0206、HLA−A*0207、HLA−A*0210、HLA−A*0211、HLA−A*0213、HLA−A*0216、HLA−A*0218、HLA−A*0219、HLA−A*0228、およびHLA−A*0250などのサブタイプも使用される。典型的には、診療施設で、治療を必要とする患者のHLA抗原の型を前もって調べることにより、この抗原に対して高レベルの結合親和性を有するか、または抗原提示によるCTL誘導能を有するペプチドの適切な選択が可能になる。その上、高い結合親和性およびCTL誘導能を示すペプチドを得る目的で、天然のECT2部分ペプチドのアミノ酸配列を基に、1個、2個、または数個のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または付加を行うこともできる。
A2型のHLA抗原を本発明のエキソソーム用に用いる場合には、SEQ ID NO:1〜40のいずれか1つの配列を有するペプチドが特に有用である。
VI.抗原提示細胞(APC)
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとによって形成された複合体を自身の表面上に提示する、単離されたAPCも提供する。APCは、治療および/または予防の対象となる患者由来のものであってよく、単独で、または本発明のペプチド、エキソソームもしくはCTLを含む他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与してもよい。
これらのAPCは特定の種類の細胞には限定されず、これには、リンパ球によって認識されるように自身の細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られている、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞および活性化T細胞が含まれる。DCはAPCの中で最も強力なCTL誘導活性を有する代表的なAPCであるため、DCは本発明のAPCとして利用される。
例えば、末梢血単球からDCを誘導し、続いてそれらをインビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明のペプチドと接触させる(本発明のペプチドで刺激する)ことによって、本発明のAPCを得てもよい。本発明のペプチドを対象に投与すると、本発明のペプチドを提示するAPCがその対象の体内で誘導される。したがって、本発明のAPCは、本発明のペプチドを対象に投与した後に、対象からAPCを収集することによって得てもよい。あるいは、対象から収集したAPCを本発明のペプチドと接触させることによって、本発明のAPCを得てもよい。
本発明のAPCは、対象におけるがんに対する免疫応答を誘導するために、単独でまたは本発明のペプチド、エキソソームまたはCTLを含む他の薬物と組み合わせて、対象に投与してもよい。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含んでもよい:
a:第1の対象からAPCを収集する段階;
b:段階aのAPCを本ペプチドと接触させる段階;および
c:段階bのAPCを第2の対象に投与する段階。
第1の対象および第2の対象は同じ個体であってもよく、または異なる個体であってもよい。段階bによって得られたAPCは、がんを治療および/または予防するためのワクチンとして投与することができ、がんの例には膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるが、これに限定されない。
本発明はまた、APCを誘導するための薬学的組成物を製造するための方法または工程も提供し、本方法は、本発明のペプチドを薬学的に許容される担体とともに混合または製剤化する段階を含む。
本発明の1つの局面によれば、APCは高レベルのCTL誘導能を有する。「高レベルのCTL誘導能」という用語において、高レベルとは、ペプチドと接触させていないか、またはCTLを誘導しないと考えられるペプチドと接触させたAPCによるCTL誘導能のレベルと比べたものである。高レベルのCTL誘導能を有するそのようなAPCは、上述した方法のほかに、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビトロでAPCに移入する段階を含む方法によっても調製することができる。導入する遺伝子は、DNAの形態であってもRNAの形態であってもよい。導入のための方法の例には、特に限定されることなく、リポフェクション、エレクトロポレーション、またはリン酸カルシウム法といった、当分野において従来より実施されているさまざまな方法が含まれ、使用され得る。より具体的には、Cancer Res 1996, 56: 5672-7;J Immunol 1998, 161: 5607-13;J Exp Med 1996, 184: 465-72;公表特許公報第2000−509281号に記載された通りに、それを実施することができる。遺伝子をAPCに移入することによって、その遺伝子は細胞内で転写、翻訳などを受け、その後、得られたタンパク質がMHCクラスIまたはクラスIIによるプロセシングを受けて、提示経路を経て部分ペプチドが提示される。
VII.細胞傷害性Tリンパ球(CTL)
本発明のペプチドのいずれかに対して誘導されたCTLは、インビボでがん細胞を標的とする免疫応答を増強させ、それ故にペプチドと同様にワクチンとして用いることができる。したがって、本発明はまた、本ペプチドのいずれかによって特異的に誘導または活性化された、単離されたCTLも提供する。
そのようなCTLは、(1)本発明のペプチドを対象に投与すること、または(2)対象由来のAPC、およびCD8陽性細胞、もしくは末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させる(本発明のペプチドで刺激する)こと、または(3)CD8陽性細胞もしくは末梢血単核白血球を、HLA抗原と前記ペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するAPCもしくはエキソソームとインビトロで接触させること、または(4)本発明のペプチドと結合するT細胞受容体(TCR)サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入すること、によって得てもよい。そのようなAPCまたはエキソソームは上記の方法によって調製してもよく、(4)の方法の詳細は、以下の「VIII.T細胞受容体(TCR)」の項で説明する。
本発明のCTLは、治療および/または予防の対象となる患者由来のものであってよく、単独で投与してもよく、または作用を調節する目的で本発明のペプチドもしくはエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて投与してもよい。得られたCTLは、本発明のペプチド、例えば誘導のために用いたものと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、ECT2を内因性に発現する細胞、例えばがん細胞などであってもよく、またはECT2遺伝子がトランスフェクトされた細胞であってもよい;本発明のペプチドによる刺激が原因でそのペプチドを細胞表面上に提示する細胞も、活性化CTLの攻撃の標的として役立ち得る。
VIII.T細胞受容体(TCR)
本発明はまた、T細胞受容体(TCR)のサブユニットを形成し得るポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、およびそれを用いる方法も提供する。TCRサブユニットは、ECT2を提示する腫瘍細胞に対する特異性をT細胞に付与するTCRを形成する能力を有する。当技術分野における公知の方法を用いることによって、本発明の1つまたは複数のペプチドで誘導されたCTLのTCRサブユニットとしてα鎖およびβ鎖の核酸を同定することができる(WO2007/032255号、およびMorgan et al., J Immunol, 171, 3288 (2003))。例えば、TCRを分析するためにはPCR法が好ましい。分析のためのPCRプライマーは、例えば、5'側プライマーとして、5'−Rプライマー(5'−gtctaccaggcattcgcttcat−3')(SEQ ID NO:43)、および3'側プライマーとして、TCRα鎖C領域に対して特異的な3−TRa−Cプライマー(5'−tcagctggaccacagccgcagcgt−3')(SEQ ID NO:44)、TCRβ鎖C1領域に対して特異的な3−TRb−C1プライマー(5'−tcagaaatcctttctcttgac−3')(SEQ ID NO:45)、またはTCRβ鎖C2領域に対して特異的な3−TRβ−C2プライマー(5'−ctagcctctggaatcctttctctt−3')(SEQ ID NO:46)であってよいが、これらには限定されない。派生TCRは、ECT2ペプチドをディスプレイする標的細胞と高い結合力で結合することができ、かつ任意で、ECT2ペプチドを提示する標的細胞の効率的な死滅をインビボおよびインビトロで媒介することができる。
TCRサブユニットをコードする核酸を、適したベクター、例えばレトロウイルスベクターに組み込むことができる。これらのベクターは当技術分野において周知である。核酸またはそれらを有効な形で含むベクターを、T細胞、例えば患者由来のT細胞に移入することができる。有利には、本発明は、患者自身のT細胞(または別の哺乳動物のもの)の迅速な改変により、優れたがん細胞死滅特性を有する改変T細胞を迅速かつ容易に作製することを可能にする汎用的な組成物を提供する。
特異的TCRとは、そのTCRがT細胞の表面上に提示された場合に、本発明のペプチドとHLA分子との複合体を特異的に認識して、標的細胞に対する特異的活性をT細胞に付与することのできる受容体のことである。上記の複合体の特異的認識は任意の公知の方法によって確認することができ、好ましい方法には、例えば、HLA分子および本発明のペプチドを用いるHLAマルチマー染色分析、ならびにELISPOTアッセイが含まれる。ELISPOTアッセイを行うことにより、細胞表面上にTCRを発現するT細胞がそのTCRによって細胞を認識すること、およびそのシグナルが細胞内で伝達されることを確認することができる。上述した複合体がT細胞表面上に存在する場合に、その複合体がT細胞に細胞傷害活性を与えることができることを、公知の方法によって確認してもよい。好ましい方法には、例えば、HLA陽性標的細胞に対する細胞傷害活性の判定、例えばクロム放出アッセイなどが含まれる。
また、本発明は、HLA−A2との関連においてECT2ペプチド、例えばSEQ ID NO:1〜40などと結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸による形質導入によって調製されるCTLも提供する。
形質導入されたCTLは、インビボでがん細胞にホーミングすることができ、かつ周知の培養法によってインビトロで増殖させることができる(例えば、Kawakami et al., J Immunol., 142, 3452-3461 (1989))。本発明のCTLは、治療または防御を必要とする患者において、がんを治療または予防する上で有用な免疫原性組成物を形成するために用いてもよい(WO2006/031221号)。
IX.薬学的物質または組成物
ECT2の発現は、正常組織と比較して、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCなどのがんで特異的に増大しているため、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドは、がんの治療および/もしくは予防のため、ならびに/またはその術後再発の予防のために用いることができる。したがって、本発明は、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/またはその術後再発の予防のための薬学的物質または組成物を提供し、そのような剤、物質、または組成物は、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドの1つまたは複数を有効成分として含む。あるいは、薬学的物質または組成物として用いるために、前記のエキソソームまたはAPCなどの細胞のいずれかの表面上に、本ペプチドを発現させることもできる。加えて、本発明のペプチドのいずれかを標的とする前述のCTLを、本薬学的物質または組成物の有効成分として用いることもできる。
本発明の薬学的な剤、物質、または組成物はまた、ワクチンとして使用される。本発明において、「ワクチン」(免疫原性組成物とも称される)という語句は、動物に接種した際に抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。
本発明の薬学的な剤、物質、または組成物は、ヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ヒヒ、およびチンパンジー、特に商業的に重要な動物または家畜を含む任意の他の哺乳動物を含むがこれに限定されない対象または患者において、がんを治療および/もしくは予防するため、ならびに/または術後のその再発を予防するために用いることができる。
別の態様において、本発明はまた、がんまたは腫瘍の治療および/または予防のために製剤化された薬学的な剤、物質、または組成物の製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
あるいは、本発明はさらに、がんまたは腫瘍の治療または予防において用いるための、以下の中より選択される有効成分を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
あるいは、本発明はさらに、がんまたは腫瘍を治療または予防するための薬学的な剤、組成物、または物質を製造するための方法または工程を提供し、本方法または工程は、以下の中より選択される有効成分を薬学的にまたは生理学的に許容される担体とともに製剤化する段階を含む:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
別の態様において、本発明はまた、がんまたは腫瘍を治療または予防するための薬学的な剤、組成物、または物質を製造するための方法または工程を提供し、本方法または工程は、以下の中より選択される有効成分と薬学的にまたは生理学的に許容される担体とを混合する段階を含む:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
本発明によれば、SEQ ID NO:1〜40の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA−A2拘束性エピトープペプチドまたはその候補であることが見いだされている。このため、SEQ ID NO:1〜40のアミノ酸配列を有するこれらのペプチドのいずれかを含む本薬学的物質または組成物は、HLA抗原がHLA−A2である対象への投与のために特に適している。これらのペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)を含む薬学的物質または組成物に対しても同じことが成り立つ。
本発明の薬学的物質または組成物によって治療されるがんは限定的でなく、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCを含むがこれに限定されない、ECT2が関与する(例えば、過剰発現される)あらゆるがんが含まれる。
本薬学的物質または組成物は、前述の有効成分に加えて、がん性細胞に対するCTLを誘導する能力を有する他のペプチド、そのような他のペプチドをコードする他のポリヌクレオチド、そのような他のペプチドを提示する他の細胞なども含み得る。本明細書において、がん性細胞に対するCTLを誘導する能力を有する他のペプチドは、がん特異的抗原(例えば、同定されたTAA)によって例示されるが、それらには限定されない。
必要に応じて、本発明の薬学的物質または組成物は、任意で、他の治療的物質を、その物質が有効成分、例えば本ペプチドのいずれかの抗腫瘍効果を阻害しない限り、有効成分として含んでもよい。例えば、製剤は、抗炎症性物質または抗炎症性組成物、鎮痛剤、化学療法薬などを含んでもよい。医薬自体におけるその他の治療的物質に加えて、本発明の医薬を、1つまたは複数の他の薬理学的な物質または組成物と逐次的または同時に投与することもできる。医薬および薬理学的な物質または組成物の量は、例えば、用いる薬理学的な物質または組成物の種類、治療される疾患、ならびに投与のスケジュールおよび投与経路に依存する。
本明細書において特に言及した成分に加えて、本発明の薬学的物質または組成物は、当該の製剤の種類を考慮した上で、当技術分野において慣例的な他の物質または組成物も含み得ることが理解されるべきである。
本発明の1つの態様において、本薬学的物質または組成物を、治療しようとする疾患、例えばがんなどの病態を治療するために有用な材料を含む製品およびキットに含めることができる。本薬学的物質または組成物のいずれかの容器をラベルと共に、製品に含めてもよい。適した容器には、瓶、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどのさまざまな材料から形成され得る。容器上のラベルには、この物質または組成物が、疾患の1つまたは複数の状態の治療または予防のために用いられることが示されるべきである。また、ラベルが投与などに関する指示を示してもよい。
上記の容器に加えて、本発明の薬学的物質または組成物を含むキットは、任意で、薬学的に許容される希釈剤を収容する第2の容器をさらに含んでもよい。それはさらに、使用に関する指示書とともに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および添付文書を含む、商業上および使用者の立場から見て望ましい他の材料も含み得る。
薬学的組成物を、必要に応じて、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサー装置の中に提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する指示書を添付することができる。
(1)ペプチドを有効成分として含む薬学的物質または組成物
本発明のペプチドは、薬学的物質もしくは組成物として直接投与することができ、または必要であれば、従来の製剤化法によって製剤化してもよい。後者の場合には、本発明のペプチドに加えて、薬物用に通常用いられる担体、添加剤などを特に限定せずに適宜含めることができる。そのような担体の例には、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液などがある。その上、薬学的物質または組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存料、界面活性剤などを含み得る。本発明の薬学的物質または組成物は、抗がん目的に用いることができる。
本発明のペプチドは、インビボでCTLを誘導するために、本発明のペプチドの2種またはそれ以上を含む組み合わせとして調製することができる。ペプチドはカクテルの形態をとってもよく、または標準的な手法を用いて互いにコンジュゲートさせてもよい。例えば、ペプチドを化学的に連結させてもよく、または1個もしくは数個のアミノ酸をリンカー(例えば、リジンリンカー:K. S. Kawamura et al. J. Immunol. 2002, 168: 5709-5715)として有し得る単一の融合ポリペプチド配列として発現させることもできる。組み合わせにおけるペプチドは同じでも異なっていてもよい。本発明のペプチドを投与することにより、これらのペプチドがHLA抗原によってAPC上に高密度で提示され、続いて、提示されたペプチドとHLA抗原との間で形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、APC(例えば、DC)を対象から取り出し、続いて本発明のペプチドで刺激して、本発明のペプチドのいずれかを自身の細胞表面上に提示するAPCを得る。これらのAPCを対象に再び投与し、対象においてCTLを誘導させ、その結果として、腫瘍を伴う内皮に対する攻撃性を高めることもできる。
本発明のペプチドのいずれかを有効成分として含む、がんの治療および/または予防のための薬学的な剤、物質、または組成物は、細胞性免疫が効率的に成立するようにするアジュバントを含むこともできる。あるいは、薬学的な剤、物質、または組成物を他の有効成分とともに投与することもでき、またはそれらを顆粒に製剤化することによって投与することもできる。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と一緒に(または続けて)投与された時に、そのタンパク質に対する免疫応答を強化する任意の化合物、物質、または組成物のことを指す。適用できるアジュバントには、文献中に記載されたものが含まれる(Clin Microbiol Rev 1994, 7: 277-89)。例示的なアジュバントには、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン、コレラ毒素、サルモネラ毒素、不完全フロイントアジュバント(IFA)、完全フロイントアジュバント(CFA)、ISCOMatrix、GM−CSF、CpG、水中油型エマルションなどが含まれるが、これらには限定されない。
さらに、リポソーム製剤、直径数マイクロメートルのビーズにペプチドが結合している顆粒製剤、およびペプチドに脂質が結合している製剤を好都合に用いてもよい。
本発明の別の態様において、本発明のペプチドはまた、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。塩の好ましい例には、アルカリ金属との塩、金属との塩、有機塩基との塩、有機酸との塩、および無機酸との塩が含まれる。
いくつかの態様において、本発明の薬学的な物質または組成物は、CTLを刺激する(prime)成分を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを刺激し得る物質または組成物として同定されている。例えば、パルミチン酸残基をリジン残基のεアミノ基およびαアミノ基に付着させ、次に本発明のペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセルもしくは粒子の状態で直接投与するか、リポソーム中に取り込ませて投与するか、またはアジュバント中に乳化させて投与することができる。CTL応答の脂質による刺激の別の例として、適切なペプチドに共有結合している場合、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニル−セリル−セリン(P3CSS)などの大腸菌(E.coli)リポタンパク質を用いてCTLを刺激することができる(例えば、Deres et al., Nature 1989, 342: 561-4を参照されたい)。
投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等、および全身投与または標的部位の近傍への局所投与であってよい。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によってブーストすることもできる。本発明のペプチドの用量は、治療される疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に応じて適宜調整することができ、これは通常0.001mg〜1000mg、例えば0.01mg〜100mg、例えば0.1mg〜10mgであり、数日〜数ヶ月に1度投与することができる。当業者は、適切な用量を適宜選択することができる。
(2)有効成分としてポリヌクレオチドを含む薬学的な物質または組成物
本発明の薬学的な剤、物質、または組成物はまた、本明細書に開示するペプチドを発現可能な形態でコードする核酸を含み得る。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、ポリヌクレオチドが、細胞に導入された場合に、抗腫瘍免疫を誘導するポリペプチドとしてインビボで発現することを意味する。例示的な態様において、関心対象のポリヌクレオチドの核酸配列は、該ポリヌクレオチドの発現に必要な調節エレメントを含む。ポリヌクレオチドには、標的細胞のゲノムへの安定した挿入が達成されるように、必要なものを備えさせることができる(相同組換えカセットベクターの説明に関しては、例えばThomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照されたい。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8;米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;およびWO98/04720も参照されたい)。DNAに基づく送達技術の例には、「裸のDNA」、促進された(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
ウイルスベクターまたは細菌ベクターによって、本発明のペプチドを発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニアウイルスまたは鶏痘ウイルスなどの弱毒化ウイルス宿主が含まれる。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させるためのベクターとして、ワクシニアウイルスの使用を伴う。宿主に導入すると、組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。治療的な投与または免疫化に有用である多種多様な他のベクター、例えばアデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が明らかである。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71;Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806;Hipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
ポリヌクレオチドの患者内への送達は、直接的であってもよく、この場合にはポリヌクレオチドを保有するベクターに患者を直接曝露し、または間接的であってもよく、この場合にはまずインビトロで細胞を関心対象のポリヌクレオチドで形質転換し、次いで該細胞を患者内に移植する。これら2つのアプローチはそれぞれ、インビボおよびエクスビボの遺伝子治療として公知である。
遺伝子治療の方法の一般的な総説に関しては、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 1993, 12: 488-505;Wu and Wu, Biotherapy 1991, 3: 87-95;Tolstoshev, Ann Rev Pharmacol Toxicol 1993, 33: 573-96;Mulligan, Science 1993, 260: 926-32;Morgan & Anderson, Ann Rev Biochem 1993, 62: 191-217;Trends in Biotechnology 1993, 11(5): 155-215を参照されたい。本発明にも適用可能な組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、AusubelらによってCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY, 1993に、かつKriegerによってGene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY, 1990に記載されている。
投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等であってよく、全身投与または標的部位の近傍への局所投与が使用される。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によってブーストすることもできる。適切な担体中のポリヌクレオチドの用量、または本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換された細胞中のポリヌクレオチドの用量は、治療される疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に応じて適宜調整することができ、これは通常0.001mg〜1000mg、例えば0.01mg〜100mg、例えば0.1mg〜10mgであり、数日に1度〜数ヶ月に1度投与することができる。当業者は、適切な用量を適宜選択することができる。
X.ペプチド、エキソソーム、APC、およびCTLを用いる方法
本発明のペプチドおよびポリヌクレオチドを用いて、APCおよびCTLを調製または誘導することができる。本発明のエキソソームおよびAPCを用いて、CTLを誘導することもできる。ペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、およびAPCは、CTL誘導能を他の化合物が阻害しない限り、該化合物と組み合わせて用いることができる。したがって、前述の本発明の薬学的な物質または組成物のいずれかを用いてCTLを誘導することができる。それに加えて、前記ペプチドおよびポリヌクレオチドを含むものを用いて、以下に説明するように、APCを誘導することもできる。
(1)抗原提示細胞(APC)を誘導する方法
本発明は、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを用いて、高いCTL誘導能を有するAPCを誘導する方法を提供する。
本発明の方法は、APCを本発明のペプチドとインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる段階を含む。例えば、APCを該ペプチドとエクスビボで接触させる方法は、以下の段階を含み得る:
a:対象からAPCを回収する段階;および
b:段階aのAPCを該ペプチドと接触させる段階。
APCは特定の種類の細胞に限定されず、これには、リンパ球によって認識されるように自身の細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られている、DC、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞が含まれる。好ましくは、APCの中で最も強いCTL誘導能を有するため、DCを用いることができる。本発明の任意のペプチドは、単独でまたは本発明の他のペプチドと共に用いることができる。
一方、本発明のペプチドを対象に投与する場合には、APCがインビボでペプチドと接触し、その結果、高いCTL誘導能を有するAPCが対象の体内で誘導される。したがって、本発明は、本発明のペプチドを対象に投与することを含む。同様に、本発明のポリヌクレオチドを発現可能な形態で対象に投与する場合には、本発明のペプチドがインビボで発現されてAPCと接触し、その結果、高いCTL誘導能を有するAPCが対象の体内で誘導される。したがって、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを対象に投与することを含んでもよい。「発現可能な形態」という語句は、「IX.薬学的物質および組成物、(2)ポリヌクレオチドを有効成分として含む薬学的物質または組成物」の項に上述されている。
さらに、本発明は、CTL誘導能を有するAPCを誘導するために、本発明のポリヌクレオチドをAPCに導入することも含み得る。例えば、本方法は以下の段階を含むことができる:
a:対象からAPCを収集する段階:および
b:本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入する段階。
段階bは、「VI.抗原提示細胞」の項に上述した通りに行うことができる。
あるいは、本発明は、ECT2に対するCTL活性を特異的に誘導する抗原提示細胞(APC)を調製するための方法を提供し、本方法は、以下の段階の一方を含むことができる:
(a)インビトロ、エクスビボ、またはインビボで、APCを本発明のペプチドと接触させる段階;および
(b)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階。
(2)CTLの誘導方法
本発明はまた、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、またはAPCを用いて、CTLを誘導するための方法も提供する。
本発明はまた、本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識するT細胞受容体(TCR)サブユニットを形成し得るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いてCTLを誘導するための方法も提供する。好ましくは、CTLを誘導するための方法は、以下の中から選択される少なくとも1つの段階を含んでもよい:
(a)HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示する抗原提示細胞および/またはエキソソームと、CD8陽性T細胞を接触させる段階、ならびに
(b)本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識するTCRサブユニットを形成し得るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、CD8陽性細胞に導入する段階。
本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APCまたはエキソソームを対象に投与すると、対象の体内でCTLが誘導され、がん細胞を標的とする免疫応答の強度が強化される。したがって、本発明の方法は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、またはエキソソームを対象に投与する段階を含む。
あるいは、それらをエクスビボで用いてCTLを誘導することもでき、CTLを誘導した後に、活性化されたCTLを対象に戻すことができる。例えば、本方法は以下の段階を含むことができる:
a:対象からAPCを収集する段階;
b:段階aのAPCをペプチドと接触させる段階;および
c:段階bのAPCをCD8陽性細胞と共培養する段階。
上記の段階cにおいてCD8陽性細胞と共培養するAPCを、上記の「VI.抗原提示細胞」の項に記載されているように、本発明のポリヌクレオチドを含む遺伝子をAPCに移入することによって調製することもできるが、本発明はそれらには限定されず、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を表面上に有効に提示するあらゆるAPCを範囲に含む。
そのようなAPCの代わりに、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームを用いることもできる。すなわち、本発明は、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を自身の表面上に提示するエキソソームを共培養する段階を含んでもよい。そのようなエキソソームは、「V.エキソソーム」の章に上述した方法によって調製することができる。
その上、本発明のペプチドと結合するTCRサブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をCD8陽性細胞に導入することによって、CTLを誘導することもできる。そのような形質導入は、「VIII.T細胞受容体(TCR)」の章に上述したように行うことができる。
加えて、本発明は、CTLを誘導する薬学的物質または組成物を製造するための方法または工程を提供し、本方法は、本発明のペプチドを薬学的に許容される担体とともに混合または製剤化する段階を含む。
(3)免疫応答の誘導方法
さらに、本発明は、ECT2と関係のある疾患に対して免疫応答を誘導する方法を提供する。適した疾患にはがんが含まれてよく、その例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるが、これに限定されない。
本発明の方法は、本発明のペプチドまたはそれらをコードするポリヌクレオチドのいずれかを含む物質または組成物を投与する段階を含んでもよい。本発明の方法はまた、本発明のペプチドのいずれかを提示するエキソソームまたはAPCの投与も想定し得る。詳細については、「IX.薬学的物質または組成物」の項目、特に本発明の薬学的物質または組成物のワクチンとしての使用について記載している部分を参照されたい。加えて、免疫応答を誘導するために本発明の方法に用いることができるエキソソームおよびAPCは、前記の「V.エキソソーム」、「VI.抗原提示細胞(APC)」、ならびに「X.ペプチド、エキソソーム、APCおよびCTLを用いる方法」の(1)および(2)の項目にも詳述されている。
本発明はまた、免疫応答を誘導する薬学的物質または組成物を製造するための方法または工程も提供し、本方法は、本発明のペプチドを薬学的に許容される担体とともに混合または製剤化する段階を含み得る。
あるいは、本発明の方法は、以下のものを含む、本発明のワクチンまたは薬学的組成物を投与する段階を含んでもよい:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドを自身の表面上に提示するAPCもしくはエキソソーム;または
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
本発明との関連において、ECT2を過剰発現するがんをこれらの有効成分によって治療することができる。そのようながんの例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるが、これに限定されない。このため、有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物の投与の前に、治療しようとするこれらの細胞または組織におけるECT2の発現レベルが同じ臓器の正常細胞と比較して増強されているか否かを確かめることが好ましい。したがって、1つの態様において、本発明は、ECT2を(過剰)発現するがんを治療するための方法を提供し、本方法は、以下の段階を含み得る:
i)治療しようとするがんを有する対象から得られた細胞または組織におけるECT2の発現レベルを決定する段階;
ii)ECT2の発現レベルを正常対照と比較する段階;および
iii)上記の(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの構成成分を、正常対照と比較してECT2を過剰発現するがんを有する対象に投与する段階。
あるいは、本発明は、ECT2を過剰発現するがんを有する対象への投与に用いるための、上記の(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの構成成分を含むワクチンまたは薬学的組成物も提供する。言い換えれば、本発明はさらに、本発明のECT2ポリペプチドによって治療すべき対象を同定するための方法を提供し、そのような方法は、対象由来の細胞または組織におけるECT2の発現レベルを決定する段階を含み、そのレベルが遺伝子の正常対照レベルと比較して高いことにより、その対象が本発明のECT2ポリペプチドによって治療され得るがんを有する可能性があることが示される。本発明について、以下により詳細に説明する。
対象由来の任意の細胞または組織を、それが目的とするECT2の転写産物または翻訳産物を含む限り、ECT2発現の決定のために使用することができる。適した試料の例には、身体組織、ならびに血液、痰、および尿などの体液が含まれるが、これに限定されない。好ましくは、対象由来の細胞または組織の試料は、上皮細胞、より好ましくはがん性上皮細胞、またはがん性である疑いのある組織に由来する上皮細胞を含む細胞集団を含む。さらに、必要であれば、得られた身体組織および体液から細胞を精製し、続いてそれを対象由来試料として用いてもよい。
本方法によって治療される対象は、好ましくは哺乳動物である。例示的な哺乳動物は、例えばヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシを含むが、これに限定されない。
本発明によれば、対象から得られた細胞または組織におけるECT2の発現レベルを測定することができる。発現レベルは、当技術分野で公知の方法を用いて、転写(核酸)産物レベルで測定することができる。例えば、ECT2のmRNAを、ハイブリダイゼーション法(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション)によって、プローブを用いて定量することができる。検出は、チップ、アレイなどの上で行うことができる。アレイの使用は、ECT2の発現レベルを検出するのに好ましいと考えられる。当業者は、ECT2の配列情報を利用して、そのようなプローブを調製することができる。例えば、ECT2のcDNAをプローブとして用いることができる。必要であれば、プローブを、色素、蛍光物質および同位体といった適した標識で標識してもよく、遺伝子の発現レベルを、ハイブリダイズした標識の強度として検出してもよい。
さらに、増幅に基づく検出法(例えば、RT−PCR)により、プライマーを用いて、ECT2の転写産物(例えば、SEQ ID NO:42)を定量してもよい。そのようなプライマーは、遺伝子の入手可能な配列情報に基づいて調製することができる。
具体的には、本発明の方法に用いられるプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件下、中程度にストリンジェントな条件下、または低ストリンジェントな条件下で、ECT2のmRNAとハイブリダイズする。本明細書で使用する「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、プローブまたはプライマーがその標的配列とはハイブリダイズするが、その他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況下では異なる。より長い配列の特異的ハイブリダイゼーションは、短い配列よりも高い温度で観察される。一般に、ストリンジェントな条件の温度は、所定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の融解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択する。Tmとは、平衡状態で、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリダイズする(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度における)温度である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される。典型的には、ストリンジェントな条件とは、pH7.0〜8.3において塩濃度がナトリウムイオン約1.0M未満、典型的にはナトリウムイオン(または他の塩)約0.01〜1.0Mであり、かつ温度が、短いプローブまたはプライマー(例えば、10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃、およびより長いプローブまたはプライマーに関しては少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化物質の添加によって達成してもよい。
本発明のプローブまたはプライマーは、典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは典型的には、少なくとも約2000、1000、500、400、350、300、250、200、150、100、50もしくは25の連続した、ECT2配列を含む核酸のセンス鎖ヌクレオチド配列、またはECT2配列を含む核酸のアンチセンス鎖ヌクレオチド配列、またはこれらの配列の天然の変異体と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列の領域を含む。特に、例えば、1つの好ましい態様において、5〜50の長さを有するオリゴヌクレオチドを、検出しようとする遺伝子を増幅するためのプライマーとして用いることができる。より好ましくは、ECT2遺伝子のmRNAまたはcDNAを、特定のサイズ、一般に長さが15〜30bのオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いて検出することができる。
好ましい態様において、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーの長さは15〜25から選択することができる。そのようなオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いることによる遺伝子の検出のためのアッセイの手順、装置または試薬は周知である(例えば、オリゴヌクレオチドマイクロアレイまたはPCR)。これらのアッセイにおいて、プローブまたはプライマーはタグまたはリンカー配列を含んでもよい。さらに、プローブまたはプライマーを、捕捉しようとする検出可能な標識または親和性リガンドによって修飾することもできる。あるいは、ハイブリダイゼーションに基づく検出手順では、数百(例えば、約100〜200)塩基から数キロ(例えば、約1000〜2000)塩基までの長さを有するポリヌクレオチドを、プローブ用に用いることもできる(例えば、ノーザンブロットアッセイまたはcDNAマイクロアレイ分析)。
あるいは、翻訳産物を、本発明の診断のために検出することもできる。例えば、ECT2タンパク質(SEQ ID NO:42)またはその免疫学的断片の数量を決定することができる。翻訳産物としてのタンパク質の数量を決定するための方法には、そのタンパク質を特異的に認識する抗体を用いるイムノアッセイ法が含まれる。抗体はモノクローナルであってもよくまたはポリクローナルであってもよい。その上、抗体の任意の断片または改変物(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab')、Fvなど)も、その断片または改変抗体がECT2タンパク質に対する結合能を保持している限り、検出に用いてもよい。本発明のペプチドおよびそれらの断片に対するそのような抗体も、本発明によって提供される。タンパク質の検出のためにこれらの種類の抗体を調製するための方法は当技術分野において周知であり、任意の方法を本発明において使用して、そのような抗体およびそれらの等価物を調製することができる。
ECT2遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出する別の方法として、ECT2タンパク質に対する抗体を用いる免疫組織化学的分析を介して、染色の強度を測定することもできる。すなわち、この測定では、強力な染色により、タンパク質の存在/レベルの増大が示され、それと同時に、ECT2遺伝子の発現レベルが高いことが示される。
がん細胞における標的遺伝子、例えばECT2遺伝子の発現レベルは、そのレベルが、標的遺伝子の対照レベル(例えば、正常細胞におけるレベル)から、例えば10%、25%、もしくは50%増大しているか;または1.1倍を上回って、1.5倍を上回って、2.0倍を上回って、5.0倍を上回って、10.0倍を上回って、もしくはそれ以上に増大している場合に、増大していると判定することができる。
対照レベルは、疾患状態(がん性または非がん性)が判明している対象から予め採取し保存しておいた試料を用いて、がん細胞と同時に決定することができる。加えて、治療すべきがんを有する臓器の非がん性領域から得られた正常細胞を、正常対照として用いてもよい。あるいは、対照レベルは、疾患状態が判明している対象に由来する試料中のECT2遺伝子の予め決定された発現レベルを解析することによって得られた結果に基づいて、統計的方法により決定してもよい。さらに、対照レベルは、以前に試験された細胞に由来する発現パターンのデータベースに由来し得る。さらに、本発明の一局面によれば、生物学的試料中のECT2遺伝子の発現レベルを、複数の参照試料から決定された複数の対照レベルと比較することもできる。対象由来の生物学的試料の組織型と類似の組織型に由来する参照試料から決定された対照レベルを用いることが好ましい。さらに、疾患状態が判明している集団におけるECT2遺伝子の発現レベルの基準値を用いることが好ましい。基準値は、当技術分野において公知の任意の方法によって得ることができる。例えば、平均値 +/−2S.D.または平均値 +/−3S.D.の範囲を、基準値として用いることができる。
本発明との関連において、がん性でないと判明している生物学的試料から決定された対照レベルは、「正常対照レベル」と称される。一方、対照レベルががん性生物学的試料から決定される場合には、これは「がん性対照レベル」と称される。試料の発現レベルと対照レベルとの差を、その発現レベルが細胞のがん性状態または非がん性状態に応じて異ならないことが判明している対照核酸、例えばハウスキーピング遺伝子の発現レベルに対して正規化することができる。例示的な対照遺伝子には、β−アクチン、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素、およびリボソームタンパク質P1が含まれるが、これらに限定されない。
ECT2遺伝子の発現レベルが正常対照レベルと比較して上昇しているか、またはがん性対照レベルと類似している/同等である場合、該対象は治療すべきがんを有すると診断され得る。
本発明はまた、(i)対象が治療すべきがんを有する疑いがあるかどうかを診断する方法、および/または(ii)がん治療のための対象を選択する方法を提供し、該方法は以下の段階を含んでもよい:
(a)治療すべきがんを有する疑いのある対象から得られた細胞または組織中のECT2の発現レベルを決定する段階;
(b)ECT2の発現レベルを正常対照レベルと比較する段階;
(c)ECT2の発現レベルが正常対照レベルと比較して上昇している場合に、該対象を治療すべきがんを有すると診断する段階;および
(d)段階(c)において対象が治療すべきがんを有すると診断される場合に、がん治療のために該対象を選択する段階。
あるいは、そのような方法は以下の段階を含んでもよい:
(a)治療すべきがんを有する疑いのある対象から得られた細胞または組織中のECT2の発現レベルを決定する段階;
(b)ECT2の発現レベルをがん性対照レベルと比較する段階;
(c)ECT2の発現レベルががん性対照レベルと類似しているか、または同等である場合に、該対象を治療すべきがんを有すると診断する段階;および
(d)段階(c)において対象が治療すべきがんを有すると診断される場合に、がん治療のために該対象を選択する段階。
本発明はまた、本発明のECT2ポリペプチドによって治療し得るがんに罹患しているか、または罹患している疑いのある対象を診断または判定するための診断キットも提供し、それはがん免疫療法の有効性または適用可能性を評価および/またはモニターするのにも使用され得る。好ましくは、がんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるがこれに限定されない。より詳細には、キットは、好ましくは、対象由来細胞におけるECT2遺伝子の発現を検出するための少なくとも1つの試薬を含むことができ、そのような試薬は以下の群から選択され得る:
(a)ECT2遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)ECT2タンパク質またはその免疫学的断片を検出するための試薬;および
(c)ECT2タンパク質の生物活性を検出するための試薬。
ECT2遺伝子のmRNAを検出するのに適した試薬の例には、ECT2 mRNAの一部に対する相補的配列を有するオリゴヌクレオチドなど、ECT2 mRNAに特異的に結合するかまたはECT2 mRNAを同定する核酸が含まれ得る。このような種類のオリゴヌクレオチドは、ECT2 mRNAに特異的なプライマーおよびプローブによって例証される。このような種類のオリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法に基づいて調製することができる。必要に応じて、ECT2 mRNAを検出するための試薬を固体基質上に固定化することができる。さらに、ECT2 mRNAを検出するための2つ以上の試薬をキット中に含めることもできる。
一方、ECT2タンパク質またはその免疫学的断片を検出するのに適した試薬の例には、ECT2タンパク質またはその免疫学的断片に対する抗体が含まれ得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよい。さらに、断片または改変抗体がECT2タンパク質またはその免疫学的断片への結合能を保持する限り、抗体の任意の断片または改変物(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab')、Fv等)を試薬として用いることもできる。タンパク質を検出するためのこのような種類の抗体を調製する方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意の方法を使用して、そのような抗体およびそれらの等価物を調製することができる。さらに、直接連結技法または間接標識技法により、抗体をシグナル発生分子で標識することができる。標識と、抗体を標識しかつ標的に対するその抗体の結合を検出する方法は、当技術分野において周知であり、任意の標識および方法を本発明に使用することができる。さらに、ECT2タンパク質を検出するための2つ以上の試薬をキット中に含めることもできる。
キットは、前述の試薬のうちの2つ以上を含み得る。キットはさらに、ECT2遺伝子に対するプローブまたはECT2ペプチドに対する抗体を結合させるための固体基質および試薬、細胞を培養するための培地および容器、陽性および陰性対照試薬、ならびにECT2ペプチドに対する抗体を検出するための二次抗体を含み得る。例えば、がんを有さない対象またはがんに罹患している対象から得られた組織試料は、有用な対照試薬として役立ち得る。本発明のキットは、緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、シリンジ、および使用説明書を備えた包装封入物(例えば、文書、テープ、CD−ROM等)を含む、商業上の観点および使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに含み得る。これらの試薬等は、ラベルを貼った容器中に保持され得る。適切な容器には、ボトル、バイアル、および試験管が含まれてよい。該容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。
本発明の一態様において、試薬がECT2 mRNAに対するプローブである場合には、該試薬を多孔性ストリップなどの固体基質上に固定化して、少なくとも1つの検出部位を形成させることができる。多孔性ストリップの測定領域または検出領域は、それぞれが核酸(プローブ)を含む複数の部位を含み得る。検査ストリップはまた、陰性および/または陽性対照用の部位を含み得る。あるいは、対照部位は、検査ストリップとは別のストリップ上に位置し得る。任意で、異なる検出部位は異なる量の固定化核酸を含み得る、すなわち、第1検出部位ではより多い量の固定化核酸を、および以降の部位ではより少ない量の固定化核酸を含み得る。試験試料を添加すると、検出可能なシグナルを呈する部位の数により、試料中に存在するECT2 mRNAの量の定量的指標が提供される。検出部位は、適切に検出可能な任意の形状で構成することができ、典型的には、検査ストリップの幅全体にわたるバーまたはドットの形状である。
本発明のキットは、陽性対照試料またはECT2標準試料をさらに含み得る。本発明の陽性対照試料は、ECT2陽性試料を回収し、次にそれらのECT2レベルをアッセイすることによって調製することができる。あるいは、精製ECT2タンパク質またはポリヌクレオチドを、ECT2を発現しない細胞に添加して、陽性試料またはECT2標準試料を形成してもよい。本発明において、精製ECT2は組換えタンパク質であってよい。陽性対照試料のECT2レベルは、例えばカットオフ値よりも高い。
一態様において、本発明はさらに、本発明の抗体またはその断片を特異的に認識することができるタンパク質またはその部分タンパク質を含む診断キットを提供する。
本発明の部分ペプチドの例には、本発明のタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも8個、好ましくは15個、およびより好ましくは20個の連続したアミノ酸から構成されるポリペプチドが含まれる。本発明のタンパク質またはペプチド(ポリペプチド)を用いて試料(例えば、血液、組織)中の抗体を検出することにより、がんを診断することができる。本発明のタンパク質およびペプチドを調製するための方法は、上記の通りである。
抗ECT2抗体の量と、上記のような対応する対照試料中の抗ECT2抗体の量との差を測定することにより、本発明のがんを診断する方法を実施することができる。対象の細胞または組織が該遺伝子の発現産物(ECT2)に対する抗体を含み、この抗ECT2抗体の量が正常対照中の抗ECT2抗体の量と比較してカットオフ値のレベルよりも高いと判定される場合に、該対象ががんに罹患していることが疑われる。
別の態様において、本発明の診断キットは、本発明のペプチドおよびそれに結合しているHLA分子を含み得る。抗原性ペプチドおよびHLA分子を使用して抗原特異的CTLを検出するための方法は、既に確立されている(例えば、Altman JD et al., Science. 1996, 274(5284): 94-6)。したがって、腫瘍抗原特異的CTLを検出するための検出法に、本発明のペプチドとHLA分子との複合体を適用することができ、それによってがんの再発および/または転移のより早期の発見が可能になる。さらに、本発明のペプチドを有効成分として含む医薬を適用できる対象を選択するために、または医薬の治療効果を評価するために、これを使用することができる。
詳細には、公知の方法に従って(例えば、Altman JD et al., Science. 1996, 274(5284): 94-6を参照されたい)、放射標識HLA分子と本発明のペプチドとの四量体などのオリゴマー複合体を調製することができる。この複合体を用いて、例えば、がんに罹患している疑いのある対象に由来する末梢血リンパ球中の抗原ペプチド特異的CTLを定量することにより、診断を行うことができる。
本発明はさらに、本明細書に記載されるペプチドエピトープを用いて、対象の免疫学的応答を評価するための方法または診断用の剤を提供する。本発明の一態様において、本明細書に記載するようなHLA−A02拘束性ペプチドを、対象の免疫応答を評価または予測するための試薬として用いることができる。評価される免疫応答は、免疫原を免疫担当細胞とインビトロまたはインビボで接触させることにより誘導され得る。いくつかの態様においては、ペプチドエピトープを認識して結合する抗原特異的CTLの産生をもたらし得る任意の物質または組成物を、試薬として用いてもよい。ペプチド試薬を免疫原として使用しなくてもよい。そのような解析に用いられるアッセイ系には、四量体、細胞内リンホカイン染色、およびインターフェロン放出アッセイ、またはELISPOTアッセイなどの比較的最近の技術開発が含まれる。好ましい態様において、免疫学的応答を評価するための免疫担当細胞は、末梢血、末梢血リンパ球(PBL)、および末梢血単核細胞(PBMC)から選択し得る。そのような免疫担当細胞を回収または単離するための方法は当技術分野において周知である。代替の好ましい態様において、ペプチド試薬と接触させる免疫担当細胞は、樹状細胞などの抗原提示細胞を含む。
例えば、本発明のペプチドを四量体染色アッセイにおいて使用して、腫瘍細胞抗原または免疫原への曝露後の抗原特異的CTLの存在について末梢血単核細胞を評価することができる。HLA四量体複合体を使用して、抗原特異的CTLを直接可視化し(例えば、Ogg et al., Science 279: 2103-2106, 1998;およびAltman et al, Science 174: 94-96, 1996を参照されたい)、末梢血単核細胞の試料中の抗原特異的CTL集団の頻度を測定することができる。本発明のペプチドを使用する四量体試薬は、以下に記載するように作製することができる。
HLA分子に結合するペプチドは、対応するHLA重鎖およびβ2−ミクログロブリンの存在下で再び折り畳まれて、3分子複合体を生成する。この複合体において、該重鎖のカルボキシ末端の前もってタンパク質中に作製した部位をビオチン化する。次にストレプトアビジンを該複合体に添加して、3分子複合体およびストレプトアビジンから構成される四量体を形成する。蛍光標識ストレプトアビジンの手法によって、この四量体を使用して、抗原特異的細胞を染色することができる。次いで、この細胞を例えばフローサイトメトリーによって同定することができる。そのような解析を、診断または予後診断目的に使用することができる。この手順によって同定された細胞を治療目的に使用することもできる。
本発明はまた、本発明のペプチドを含む、免疫リコール応答を評価するための試薬を提供する(例えば、Bertoni et al, J. Clin. Invest. 100: 503-513, 1997、およびPenna et al., J Exp. Med. 174: 1565-1570, 1991を参照されたい)。例えば、治療すべきがんを有する個体からの患者PBMC試料を、特異的ペプチドを用いて抗原特異的CTLの有無について解析することができる。PBMCを培養し、該細胞を本発明のペプチドで刺激することによって、単核細胞を含む血液試料を評価することができる。適切な培養期間後、増殖した細胞集団を例えばCTL活性について解析することができる。
本発明のペプチドは、ワクチンの有効性を評価するための試薬として用いることもできる。免疫原をワクチン接種した患者から得られたPBMCを、例えば上記の方法のいずれかを用いて解析することができる。患者のHLA型を決定し、該患者に存在するアリル特異的分子を認識するペプチドエピトープ試薬を解析のために選択する。ワクチンの免疫原性は、PBMC試料中のエピトープ特異的CTLの存在によって示され得る。本発明のペプチドは、当技術分野で周知の技法を用いて抗体を作製するために使用することもでき(例えば、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, Wiley/Greene, NY;およびAntibodies A Laboratory Manual, Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい)、この抗体は、がんを診断、検出、またはモニターするための試薬として使用され得る。そのような抗体は、HLA分子との関連でペプチドを認識する抗体、すなわちペプチド−MHC複合体に結合する抗体を含み得る。
本発明のペプチドおよび組成物はさらなる用途をいくつか有し、そのうちの一部を本明細書に記載する。例えば、本発明は、ECT2免疫原性ポリペプチドの発現を特徴とする障害を診断または検出する方法を提供する。これらの方法は、生物学的試料中でのECT2 HLA結合ペプチド、またはECT2 HLA結合ペプチドとHLAクラスI分子との複合体の発現を測定する段階を含む。ペプチドまたはペプチドとHLAクラスI分子との複合体の発現は、該ペプチドまたは該複合体の結合パートナーを用いてアッセイすることによって、測定または検出することができる。好ましい態様において、ペプチドまたは複合体の結合パートナーは、該ペプチドを認識してこれに特異的に結合する抗体であってよい。腫瘍生検材料などの生物学的試料中のECT2の発現は、ECT2プライマーを用いる標準的なPCR増幅プロトコールによって試験することもできる。腫瘍発現の例は本明細書に提示してあり、ECT2増幅のための例示的な条件およびプライマーのさらなる開示は、WO2003/27322に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
好ましくは診断法は、対象から単離された生物学的試料をECT2 HLA結合ペプチドに特異的な物質と接触させて、該生物学的試料中のECT2 HLA結合ペプチドの存在を検出する段階を含む。本明細書で使用する「接触させる」とは、剤と生物学的試料中に存在するECT2 HLA結合ペプチドとの間の特異的相互作用が可能となるように、生物学的試料を、例えば濃度、温度、時間、イオン強度の適切な条件下で、剤に十分に近接させて配置することを意味する。一般に、剤と生物学的試料を接触させるための条件は、分子と生物学的試料中のその同族物(例えば、タンパク質とその受容体同族物、抗体とそのタンパク質抗原同族物、核酸とその相補的配列同族物)との間の特異的相互作用を促進するための、当業者に公知の条件である。分子とその同族物との間の特異的相互作用を促進するための例示的な条件は、Lowらに対して発行された米国特許第5,108,921号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の診断法は、インビボおよびインビトロの一方または両方で行うことができる。したがって、生物学的試料は、本発明においてインビボまたはインビトロに位置し得る。例えば、生物学的試料はインビボの組織であってよく、かつECT2免疫原性ポリペプチドに特異的な剤を用いて、組織中のそのような分子の存在を検出することができる。あるいは、生物学的試料をインビトロで採取または単離することができる(例えば、血液試料、腫瘍生検材料、組織抽出物)。特に好ましい態様において、生物学的試料は細胞を含む試料であってよく、より好ましくは、診断または治療する対象から採取された腫瘍細胞を含む試料であってよい。
あるいは、フルオレセイン標識HLA多量体複合体で染色することによって、抗原特異的T細胞の直接的な定量を可能にする方法により、診断を行うこともできる(例えば、Altman, J. D. et al., 1996, Science 274: 94;Altman, J. D. et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10330)。細胞内リンホカイン染色、およびインターフェロン−γ放出アッセイ、またはELISPOTアッセイもまた提供されている。多量体染色、細胞内リンホカイン染色、およびELISPOTアッセイはすべて、より慣例的なアッセイより少なくとも10倍感度が高いようである(Murali-Krishna, K. et al., 1998, Immunity 8: 177;Lalvani, A. et al., 1997, J. Exp. Med. 186: 859;Dunbar, P. R. et al., 1998, Curr. Biol. 8: 413)。五量体(例えば、US2004−209295A)、デキストラマー(dextramer)(例えば、WO02/072631)、およびストレプタマー(streptamer)(例えば、Nature medicine 6. 631-637 (2002))を使用することもできる。
したがって、いくつかの態様において、本発明は、本発明のECT2ペプチドの少なくとも1つを投与された対象の免疫学的応答を診断または評価するための方法を提供し、該方法は以下の段階を含む:
(a)免疫原を、該免疫原に対して特異的なCTLの誘導に適した条件下で免疫担当細胞と接触させる段階;
(b)段階(a)で誘導されたCTLの誘導レベルを検出または決定する段階;および
(c)対象の免疫学的応答をCTL誘導レベルと相関させる段階。
本発明との関連において、免疫原は、(a)SEQ ID NO:1〜40の中より選択されるECT2ペプチド、および(b)1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸置換によって改変されたそのようなアミノ酸配列を有するペプチド、のうち少なくとも1つである。一方、免疫原特異的CTLの誘導に適した条件は当技術分野において周知である。例えば、免疫担当細胞を、免疫原特異的CTLを誘導するために免疫原の存在下でインビトロで培養してもよい。免疫原特異的CTLを誘導する目的で、任意の刺激因子を細胞培養物に添加してもよい。例えば、IL−2は、CTL誘導のための好ましい刺激因子である。
いくつかの態様において、ペプチドがん療法によって治療される対象の免疫学的応答をモニターまたは評価する段階は、治療前、治療中、および/または治療後に行うことができる。一般に、がん療法プロトコール中、免疫原性ペプチドは、治療される対象に繰り返し投与される。例えば、免疫原性ペプチドを3〜10週間にわたって毎週投与してもよい。したがって、対象の免疫学的応答は、がん療法プロトコール中に評価またはモニターされ得る。あるいは、がん療法に対する免疫学的応答を評価またはモニターする段階が、療法プロトコールの完了時であってもよい。
本発明によれば、免疫原特異的CTLの誘導が対照と比較して強化されていることにより、評価または診断される対象が、投与された免疫原に対して免疫学的に応答したことが示される。免疫学的応答を評価するのに適した対照には、例えば、免疫担当細胞をペプチドと接触させていない場合の、またはいかなるECT2ペプチドとも異なるアミノ酸配列(例えば、ランダムなアミノ酸配列)を有する対照ペプチドと接触させている場合の、CTL誘導レベルが含まれる。1つの好ましい態様においては、対象に投与された各免疫原間で免疫学的応答を比較することにより、対象の免疫学的応答を配列特異的な様式で評価する。特に、いくつかの種類のECT2ペプチドについての混合物を対象に投与する場合であっても、免疫学的応答はペプチドに依存して異なる可能性がある。その場合には、各ペプチド間で免疫学的応答を比較することにより、対象がより強い応答を示すペプチドを同定することができる。
XI.抗体
本発明はさらに、本発明のペプチドに結合する抗体を提供する。好ましい抗体は本発明のペプチドに特異的に結合し、本発明のペプチドではないものには結合しない(または弱く結合する)。あるいは、抗体は本発明のペプチドおよびその相同体に結合する。本発明のペプチドに対する抗体は、がんの診断および予後診断のアッセイ、ならびに画像化方法論において使用され得る。同様に、そのような抗体は、ECT2ががん患者において同じく発現または過剰発現する限り、他のがんの治療、診断、および/または予後診断において使用され得る。さらに、細胞内で発現する抗体(例えば、一本鎖抗体)は、ECT2の発現が関与するがんの治療において治療上の使用を見出すことができ、そのようながんの例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるが、これらに限定されない。
本発明はまた、ECT2タンパク質(SEQ ID NO:42)、またはSEQ ID NO:1〜40の中より選択されるアミノ酸を有するポリペプチドを含むその断片を検出および/または定量するための様々な免疫学的アッセイを提供する。そのようなアッセイは、必要に応じて、ECT2タンパク質またはその断片を認識してそれと結合し得る1種または複数種の抗ECT2抗体を含み得る。本発明において、ECT2ポリペプチドに結合する抗ECT2抗体は、好ましくは、SEQ ID NO:1〜40の中より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する。抗体の結合特異性は、阻害試験で確認することができる。すなわち、解析される抗体と全長ECT2ポリペプチドとの間の結合が、SEQ ID NO:1〜40の中より選択されるアミノ酸配列を有する任意の断片ポリペプチドの存在下で阻害される場合、この抗体が該断片に特異的に結合する。本発明との関連において、そのような免疫学的アッセイは、様々な種類の放射免疫測定法、免疫クロマトグラフ技法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光測定法(ELIFA)等を含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の様々な免疫学的アッセイ形式の範囲内で行われる。
本発明の免疫学的であるが非抗体性の関連アッセイには、T細胞免疫原性アッセイ(阻害性または刺激性)およびMHC結合アッセイもまた含まれ得る。加えて、ECT2を発現するがんを検出し得る免疫学的画像化法も、本発明によって提供され、これには、本発明の標識抗体を使用する放射性シンチグラフィー画像化法が含まれるが、これに限定されない。そのようなアッセイは、ECT2を発現するがんの検出、モニタリング、および予後診断において臨床上の使用を見出すことができ、そのようながんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCが含まれるが、これらに限定されない。
本発明はまた、本発明のペプチドに結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などの任意の形態で用いることができ、これには、ウサギなどの動物を本発明のペプチドで免疫することにより得られる抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ヒト抗体、ならびに遺伝子組換えにより作製されたヒト化抗体が含まれる。
抗体を得るための抗原として用いられる本発明のペプチドは、任意の動物種に由来し得るが、好ましくはヒト、マウス、またはラットなどの哺乳動物、より好ましくはヒトに由来する。ヒト由来のペプチドは、本明細書に開示するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列から得ることができる。
本発明によれば、免疫抗原として用いられるペプチドは、完全なタンパク質または該タンパク質の部分ペプチドであってよい。部分ペプチドは、例えば、本発明のペプチドのアミノ(N)末端断片またはカルボキシ(C)末端断片を含み得る。
本明細書では、抗体を、ECT2ペプチドの全長または断片のいずれかと反応するタンパク質と定義する。好ましい態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:1〜40の中より選択されるアミノ酸配列を有するECT2の断片ペプチドを認識し得る。オリゴペプチドを合成する方法は、当技術分野において周知である。合成後、免疫原として使用する前にペプチドを任意に精製してもよい。本発明において、免疫原性を高めるために、オリゴペプチド(例えば、9merまたは10mer)を担体と結合または連結させてもよい。担体として、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が周知である。KLHとペプチドを結合する方法もまた、当技術分野において周知である。
あるいは、本発明のペプチドまたはその断片をコードする遺伝子を公知の発現ベクターに挿入することができ、次にこれを用いて本明細書に記載のように宿主細胞を形質転換する。所望のペプチドまたはその断片を、任意の標準的な方法により宿主細胞の外部または内部から回収することができ、後にこれを抗原として用いることができる。あるいは、ペプチドを発現する細胞全体もしくはそれらの溶解物、または化学合成したペプチドを抗原として用いてもよい。
任意の哺乳動物を抗原で免疫することができるが、細胞融合に用いられる親細胞との適合性を考慮に入れることが好ましい。一般に、齧歯目(Rodentia)、ウサギ目(Lagomorpha)、または霊長目(Primate)科の動物を使用することができる。齧歯目科の動物には、例えばマウス、ラット、およびハムスターが含まれる。ウサギ目科の動物には、例えばウサギが含まれる。霊長目科の動物には、例えばカニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、マントヒヒ、およびチンパンジーなどの狭鼻下目(Catarrhini)(旧世界ザル)のサルが含まれる。
動物を抗原で免疫する方法は、当技術分野で公知である。抗原の腹腔内注射または皮下注射は、哺乳動物を免疫するための標準的な方法である。より具体的には、抗原を適量のリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理食塩水等で希釈し、懸濁させる。必要に応じて、抗原懸濁液を、フロイント完全アジュバントなどの適量の標準的アジュバントと混合し、乳化した後、哺乳動物に投与することができる。その後、適量のフロイント不完全アジュバントと混合した抗原を、4〜21日ごとに数回投与することが好ましい。免疫化には、適切な担体を用いてもよい。上記のように免疫した後、血清を、所望の抗体の量の増加に関して標準的方法で調べることができる。
本発明のペプチドに対するポリクローナル抗体は、血清中の所望の抗体の増加に関して調べた免疫後の哺乳動物から血液を回収し、任意の従来法により血液から血清を分離することによって、調製することができる。ポリクローナル抗体はポリクローナル抗体を含む血清を含んでもよく、同様にポリクローナル抗体を含む画分を該血清から単離してもよい。免疫グロブリンGまたはMは、本発明のペプチドのみを認識する画分から、例えば、本発明のペプチドを結合させたアフィニティーカラムを用いた上で、この画分をプロテインAまたはプロテインGカラムを用いてさらに精製して、調製することができる。
モノクローナル抗体を調製するには、抗原で免疫した哺乳動物から免疫細胞を回収し、上記のように血清中の所望の抗体のレベル上昇について確かめた上で、細胞融合に供する。細胞融合に用いる免疫細胞は、好ましくは脾臓から得ることができる。上記の免疫細胞と融合させる別の好ましい親細胞には、例えば、哺乳動物の骨髄腫細胞、およびより好ましくは薬物による融合細胞の選択のための特性を獲得した骨髄腫細胞が含まれる。
公知の方法、例えば、Milstein et al.(Galfre and Milstein, Methods Enzymol 73: 3-46 (1981))の方法に従って、上記の免疫細胞と骨髄腫細胞とを融合させることができる。
細胞融合によって結果として得られたハイブリドーマは、それらをHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む培地)などの標準的な選択培地中で培養することによって選択することができる。細胞培養は典型的に、HAT培地中で、所望のハイブリドーマを除く他のすべての細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な期間である数日間から数週間にわたって継続する。その後、標準的な限界希釈を行い、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングおよびクローニングすることができる。
ハイブリドーマを調製するために非ヒト動物を抗原で免疫する上記の方法に加えて、EBウイルスに感染したリンパ球などのヒトリンパ球を、ペプチド、ペプチドを発現している細胞、またはそれらの溶解物でインビトロにおいて免疫することもできる。次いで、免疫後のリンパ球を、U266などの無限に分裂可能なヒト由来骨髄腫細胞と融合させて、該ペプチドに結合し得る所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる(特開昭63−17688号)。
続いて、得られたハイブリドーマをマウスの腹腔内に移植し、腹水を抽出する。得られたモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAもしくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、または本発明のペプチドを結合させたアフィニティーカラムにより精製することができる。本発明の抗体は、本発明のペプチドの精製および検出のためだけでなく、本発明のペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストの候補としても使用することができる。
あるいは、免疫したリンパ球など、抗体を産生する免疫細胞を、がん遺伝子によって不死化し、モノクローナル抗体の調製に用いることもできる。
このようにして得られるモノクローナル抗体は、遺伝子操作技法を用いて組換えにより調製することもできる(例えば、MacMillan Publishers LTD (1990)により英国で刊行された、Borrebaeck and Larrick, Therapeutic Monoclonal Antibodiesを参照されたい)。例えば、抗体をコードするDNAを、抗体を産生するハイブリドーマまたは免疫化リンパ球などの免疫細胞からクローニングし、適切なベクターに挿入した上で、宿主細胞に導入して、組換え抗体を調製することができる。本発明はまた、上記のようにして調製された組換え抗体を提供する。
さらに、本発明の抗体は、本発明のペプチドの1種または複数種に結合する限り、抗体の断片または修飾抗体であってもよい。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')、Fv、またはH鎖およびL鎖由来のFv断片が適切なリンカーによって連結されている一本鎖Fv(scFv)であってよい(Huston et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 5879-83 (1988))。より具体的には、抗体断片は、抗体をパパインまたはペプシンなどの酵素で処理することにより作製することができる。あるいは、抗体断片をコードする遺伝子を構築し、発現ベクターに挿入し、適切な宿主細胞内で発現させることができる(例えば、Co et al., J Immunol 152: 2968-76 (1994);Better and Horwitz, Methods Enzymol 178: 476-96 (1989);Pluckthun and Skerra, Methods Enzymol 178: 497-515 (1989);Lamoyi, Methods Enzymol 121: 652-63 (1986);Rousseaux et al., Methods Enzymol 121: 663-9 (1986);Bird and Walker, Trends Biotechnol 9: 132-7 (1991)を参照されたい)。
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの様々な分子との結合によって修飾することができる。本発明は、そのような修飾抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。これらの修飾法は、当技術分野で慣例的である。
あるいは、本発明の抗体は、非ヒト抗体に由来する可変領域とヒト抗体に由来する定常領域との間のキメラ抗体として、または非ヒト抗体に由来する相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域(FR)および定常領域とを含むヒト化抗体として得ることもできる。そのような抗体は、公知の技術に従って調製することができる。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行うことができる(例えば、Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)を参照されたい)。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的に完全には満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である。
ヒトのフレームワーク領域および定常領域に加えて、ヒト可変領域をも含む完全なヒト抗体を用いることもできる。そのような抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を用いて作製することができる。例えば、インビトロの方法には、バクテリオファージ上に提示されたヒト抗体断片の組換えライブラリーの使用が含まれる(例えば、Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227: 381 (1991))。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物、例えばマウスに導入することによって、ヒト抗体を作製することもできる。このアプローチは、例えば米国特許第6,150,584号、第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号に記載されている。
上記のようにして得られた抗体は、均質になるまで精製してもよい。例えば、一般的なタンパク質に対して用いられる分離法および精製法に従って、抗体の分離および精製を行うことができる。例えば、これらに限定されないが、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および等電点電気泳動の使用を適切に選択しかつ組み合わせることにより、抗体を分離および単離することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988))。プロテインAカラムおよびプロテインGカラムをアフィニティーカラムとして使用することができる。用いられるべき例示的なプロテインAカラムには、例えば、Hyper D、POROS、およびSepharose F.F.(Pharmacia)が含まれる。
例示的なクロマトグラフィーには、アフィニティークロマトグラフィー以外に、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が含まれる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。クロマトグラフィー手順は、HPLCおよびFPLCなどの液相クロマトグラフィーによって行うことができる。
例えば、吸光度の測定、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、および/または免疫蛍光法を用いて、本発明の抗体の抗原結合活性を測定することができる。ELISAの場合、本発明の抗体をプレート上に固定化し、本発明のペプチドを該プレートに添加し、次に抗体産生細胞の培養上清または精製抗体といった所望の抗体を含む試料を添加する。次いで、一次抗体を認識する二次抗体をアルカリホスファターゼなどの酵素で標識して添加し、プレートをインキュベートする。続いて洗浄後に、p−ニトロフェニルリン酸などの酵素基質を該プレートに添加し、吸光度を測定して、試料の抗原結合活性を評価する。抗体の結合活性を評価するために、C末端またはN末端断片などのペプチド断片を抗原として用いてもよい。本発明の抗体の活性を評価するために、BIAcore(Pharmacia)を用いてもよい。
本発明の抗体を本発明のペプチドを含むと考えられる試料に対して曝露し、該抗体と該ペプチドとによって形成される免疫複合体を検出または測定することにより、上記の方法によって本発明のペプチドの検出または測定が可能になる。
本発明によるペプチドを検出または測定する方法はペプチドを特異的に検出または測定することができるため、この方法は、該ペプチドを使用する種々の実験において使用され得る。
XII.ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明のペプチドをコードするヌクレオチドが導入されたベクターおよび宿主細胞を提供する。本発明のベクターは、宿主細胞中に本発明のヌクレオチド、特にDNAを保持するため、本発明のペプチドを発現させるため、または遺伝子治療用に本発明のヌクレオチドを投与するために使用することができる。
大腸菌が宿主細胞であり、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、またはXL1Blue)内で増幅して大量に生成する場合、ベクターは、大腸菌内で増幅するための「複製起点(ori)」と、形質転換された大腸菌を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール等の薬物によって選択される薬物耐性遺伝子)とを有する必要がある。例えば、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR−Script等を用いることができる。加えて、pGEM−T、pDIRECT、およびpT7もまた上記のベクターと同様に、cDNAのサブクローニングおよび抽出に用いることができる。ベクターを本発明のタンパク質の産生に用いる場合には、発現ベクターが使用され得る。例えば、大腸菌内で発現させる発現ベクターは、大腸菌内で増幅するために上記の特徴を有する必要がある。JM109、DH5α、HB101、またはXL1 Blueなどの大腸菌を宿主細胞として用いる場合、ベクターは、大腸菌内で所望の遺伝子を効率的に発現し得るプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Ward et al., Nature 341: 544-6 (1989);FASEB J 6: 2422-7 (1992))、araBプロモーター(Better et al., Science 240: 1041-3 (1988))、T7プロモーター等を有する必要がある。この点に関して、例えば、pGEX−5X−1(Pharmacia)、「QIAexpressシステム」(Qiagen)、pEGFP、およびpET(この場合、宿主は好ましくはT7 RNAポリメラーゼを発現するBL21である)を上記のベクターの代わりに用いることができる。さらにベクターは、ペプチド分泌のためのシグナル配列を含んでもよい。ペプチドを大腸菌のペリプラズムに分泌させる例示的なシグナル配列は、pelBシグナル配列(Lei et al., J Bacteriol 169: 4379 (1987))である。ベクターを標的宿主細胞に導入する手段には、例えば塩化カルシウム法およびエレクトロポレーション法が含まれる。
大腸菌に加えて、例えば、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(Invitrogen)、およびpEGF−BOS(Nucleic Acids Res 18(17): 5322 (1990))、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば、「Bac−to−BACバキュロウイルス発現系」(GIBCO BRL)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えば、pMH1、pMH2)、動物ウイルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウイルス由来の発現ベクター(例えば、pZIpneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia発現キット」(Invitrogen)、pNV11、SP−Q01)、および枯草菌(Bacillus subtilis)由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)を、本発明のポリペプチドの産生に使用することができる。
ベクターをCHO、COS、またはNIH3T3細胞などの動物細胞内で発現させるためには、ベクターはこのような細胞における発現に必要なプロモーター、例えば、SV40プロモーター(Mulligan et al., Nature 277: 108 (1979))、MMLV−LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushima et al., Nucleic Acids Res 18: 5322 (1990))、CMVプロモーター等、および好ましくは形質転換体を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、薬物(例えば、ネオマイシン、G418)によって選択される薬物耐性遺伝子)を保有する必要がある。これらの特徴を有する公知のベクターの例には、例えばpMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、およびpOP13が含まれる。
以下の実施例は、本発明を説明するため、ならびに本発明の作製および使用において当業者を支援するために提示される。本実施例は、本発明の範囲を別に限定することを決して意図するものではない。
材料および方法
細胞株
ヒトBリンパ芽球様細胞株であるT2(HLA−A2)およびアフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7は、ATCCから購入した。
ECT2由来ペプチドの候補選択
HLA−A0201分子と結合するECT2由来の9merおよび10merペプチドを、結合予測ソフトウエア「BIMAS」(www−bimas.citdcrt.nih.gov/cgi−bin/molbio/hla_bindken_parker_comboform)(Parker et al.(J Immunol 1994, 152(1): 163-75)、Kuzushima et al.(Blood 2001, 98(6): 1872-81)を用いて予測した。これらのペプチドを、BioSynthesis(Lewisville, Texas)により、標準的な固相合成法によって合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。該ペプチドの純度(>90%)および同一性を、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって決定した。ペプチドをジメチルスルホキシドに20mg/mlで溶解し、−80℃で保存した。
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞として用いて、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCをインビトロで作製した(Nakahara S et al., Cancer Res 2003 Jul 15, 63(14): 4112-8)。具体的には、Ficoll−Plaque(Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA−A0201陽性)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)へ付着させることによって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%の加熱非動化した自己血清(AS)を含むAIM−V培地(Invitrogen)中、1000U/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(R&D System)および1000U/mlのインターロイキン(IL)−4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮された集団を培養した。7日間の培養後、サイトカインで誘導したDCに、AIM−V培地中で37℃で3時間、3μg/mlのβ2−ミクログロブリンの存在下で20μg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製された細胞は、自身の細胞表面上に、CD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをX線照射(20Gy)により不活化し、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+T細胞と、1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に準備し、各ウェルは、0.5mlのAIM−V/2%AS培地中に、1.5×10個のペプチドパルスしたDC、3×10個のCD8+T細胞、および10ng/mlのIL−7(R&D System)を含んだ。3日後、これらの培養物に、IL−2(CHIRON)を最終濃度20IU/mlまで添加した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。
DCは上記と同じ方法によって毎回調製した。21日目に、3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたT2細胞に対してCTLを試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
CTL増殖手順
Riddellら(Walter EA et al., N Engl J Med 1995 Oct 19, 333(16): 1038-44;Riddell SR et al., Nat Med 1996 Feb, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を用いて、CTLを培養下で増殖させた。40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、マイトマイシンCによって不活化した2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株と共に、合計5×10個のCTLを25mlのAIM−V/5%AS培地中に懸濁した。培養開始1日後に、120IU/mlのIL−2を該培養物に添加した。5、8、および11日目に、30IU/mlのIL−2を含む新たなAIM−V/5%AS培地を、該培養物に供給した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)においてCTL0.3個、1個、および3個/ウェルとなるように、希釈を行った。CTLを、1×10個細胞/ウェルの2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30ng/mlの抗CD3抗体、および125U/mlのIL−2と共に、合計150μl/ウェルの5%AS含有AIM−V培地中で培養した。10日後、50μl/ウェルのIL−2を、IL−2の最終濃度が125U/mlに到達するように該培地に添加した。14日目にCTL活性を試験し、上記と同じ方法を用いてCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、インターフェロン(IFN)−γ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイおよびIFN−γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を行った。具体的には、ペプチドパルスしたT2(1×10個/ウェル)を刺激細胞として調製した。48ウェル中の培養細胞を応答細胞として使用した。IFN−γ ELISPOTアッセイおよびIFN−γ ELISAアッセイは、製造業者の手順に従って行った。
標的遺伝子およびHLA−A02のいずれか一方または両方を強制的に発現する細胞の樹立
標的遺伝子またはHLA−A0201のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCR増幅産物をベクターにクローニングした。製造業者の推奨する手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、標的遺伝子およびHLA−A0201ヌル細胞株であるCOS7に該プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクトした細胞をベルセン(Invitrogen)を用いて回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5×10個細胞/ウェル)として使用した。
結果
がんにおけるECT2発現の増強
cDNA−マイクロアレイを用いてさまざまながんから得られた包括的な遺伝子発現プロファイルデータにより、ECT2(GenBankアクセッション番号AY376439;例えば、SEQ ID NO:41)の発現が増大していることが明らかになった。ECT2発現は、膀胱がん19例中17例、乳がん12例中5例、子宮頸がん14例中14例、胆管細胞がん13例中13例、CML 5例中5例、結腸直腸がん8例中7例、食道がん16例中12例、NSCLC 16例中6例、リンパ腫10例中8例、膵がん1例中1例、前立腺がん13例中10例、腎がん6例中3例、およびSCLCがん13例中12例において、対応する正常組織と比較して、確かに増大していた(表1)。
(表1)対応する正常組織と比較して、がん性組織においてECT2の上方制御が観察された症例の割合
Figure 2013523082
ECT2に由来するHLA−A02結合性ペプチドの予測
表2aおよび2bは、ECT2のHLA−A02結合性9merおよび10merペプチドを、結合親和性の高い順に示している。エピトープペプチドを判定するために、HLA−A02結合能を有する可能性のある合計40種のペプチドを選択して検討した。
(表2a)ECT2に由来するHLA−A02結合性9merペプチド
Figure 2013523082
開始位置はECT2のN末端からのアミノ酸残基の数を示している。
結合スコアは「BIMAS」に由来する。
(表2b)ECT2に由来するHLA−A02結合性10merペプチド
Figure 2013523082
開始位置はECT2のN末端からのアミノ酸残基の数を示している。
結合スコアは「BIMAS」に由来する。
HLA−A*0201で拘束されるECT2由来の予測されたペプチドによるCTL誘導
ECT2に由来するペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載されたプロトコールに従って作製した。ペプチド特異的CTL活性をIFN−γ ELISPOTアッセイによって決定した(図1a〜c)。ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)で刺激したウェル番号#6(a)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)で刺激したウェル#5(b)、およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)で刺激したウェル#1(c)は、対照ウェルと比較して強いIFN−γ産生を明らかに示した。その結果として、ECT2に由来するECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)(a)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)(b)、およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)(c)が、強力なCTLを誘導する可能性のあるペプチドとしてスクリーニングされたことが示された。
ECT2由来ペプチドに対するCTL株およびクローンの樹立
ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)で刺激したウェル番号#6(a)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)で刺激したウェル番号#5(b)、およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)で刺激した#1(c)においてIFN−γ ELISPOTアッセイによって検出されたペプチド特異的CTL活性を示した細胞を、上記の「材料および方法」の項に記載された通りに増殖させ、限界希釈によってCTL株を樹立した。これらのCTL株のCTL活性をIFN−γ ELISAアッセイによって決定した(図2a〜c)。これらのCTL株は、ペプチドパルス刺激を受けていない標的細胞と比較して、対応するペプチドでパルス刺激された標的細胞に対する強いIFN−γ産生を明らかに示した。さらに、「材料および方法」の項に記載された通りに、CTL株から限界希釈によってCTLクローンを樹立し、ペプチドでパルス刺激された標的細胞に対するCTLクローンからのIFN−γ産生をIFN−γ ELISAアッセイによって決定した。図3では、ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)(a)およびECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)(b)で刺激されたCTLクローンから強いIFN−γ産生が明らかにされた。
ECT2およびHLA−A*0201を外因性に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
これらのペプチドに対して生じた、樹立されたCTL株およびクローンを、ECT2およびHLA−A*0201分子を外因性に発現する標的細胞を認識する能力に関して調べた。完全長のECT2およびHLA−A*0201分子の遺伝子の両方がトランスフェクトされたCOS7細胞(ECT2およびHLA−A*0201遺伝子を外因性に発現する標的細胞の具体的モデルの1つ)に対する特異的CTL活性を、対応するペプチドによって生じたCTL株およびクローンをエフェクター細胞として用いて検査した。完全長のECT2またはHLA−A* 0201のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を、対照として調製した。図4において、ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)で刺激されたCTLクローン(a)およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)で刺激されたCTL株(b)は、ECT2およびHLA− A* 0201の両方を発現するCOS7細胞に対して強力なCTL活性を示した。一方、対照に対する有意な特異的CTL活性は検出されなかった。したがって、これらのデータにより、ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)(a)、ECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)(b)が、標的細胞上にHLA−A*0201分子とともに自然下で発現され、CTLによって認識されたことが明らかに実証された。これらの結果は、ECT2に由来するECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)(a)およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)(b)が、ECT2を発現する腫瘍を有する患者を治療するためのがんワクチンとして適している可能性を示している。
抗原ペプチドの相同性解析
ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)で刺激されたCTLは、有意かつ特異的なCTL活性を示した。この結果は、ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)、およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)の配列が、ヒト免疫系を感作させることが知られている他の分子に由来するペプチドと相同的であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を否定するために、これらのペプチド配列に関する相同性解析を、それをクエリーとしてBLASTアルゴリズム(www.ncbi.nlm.nih.gov /blast/blast.cgi)を用いて行ったところ、有意な相同性を有する配列は認められなかった。この相同性解析の結果は、ECT2−A02−9−34(SEQ ID NO:1)、ECT2−A02−9−664(SEQ ID NO:3)、およびECT2−A02−10−33(SEQ ID NO:21)の配列が固有のものであること、およびしたがって、本発明者らの知る限りでは、これらの分子が何らかの非関連分子に対して意図しない免疫学的応答を引き起こす可能性はほとんどないことを示している。
結論として、ECT2に由来する新規HLA−A2エピトープペプチドが同定された。さらに、本明細書における結果は、ECT2のエピトープペプチドががん免疫療法に用いるのに適している可能性を実証している。
産業上の利用可能性
本発明は、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導することができ、かつ幅広いがんの種類に対する適用可能性を有し得る、新たなTAA、特にECT2に由来するものを提供する。そのようなTAAは、ECT2と関連のある疾患、例えばがん、より詳細には膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞がん、CML、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、リンパ腫、膵がん、前立腺がん、腎がん、およびSCLCに対するペプチドワクチンとして使用することができる。
本発明を、その具体的な態様を参照しながら、本明細書において詳細に説明してきたが、前述の説明は例示的かつ説明的な性質のものであって、本発明およびその好ましい態様を実例で説明することを意図していることが理解されるべきである。慣例的な実験を通じて、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および改変をそれに加えてもよいことを容易に認識すると考えられ、本発明の範囲および境界は添付の特許請求の範囲によって定められる。

Claims (22)

  1. SEQ ID NO:42のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片からなる単離されたペプチドであって、HLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導する、ペプチド。
  2. HLA抗原がHLA−A2である、請求項1記載の単離されたペプチド。
  3. SEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2記載の単離されたペプチド。
  4. (a)HLA抗原と結合して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し、かつSEQ ID NO:42のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片からなる、単離されたペプチド、
    (b)HLA抗原がHLA−A2である、(a)の単離されたペプチド、
    (c)SEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、(a)または(b)の単離されたペプチド、および
    (d)改変ペプチドが元のペプチドのCTL誘導能を保持することを条件として、1個、2個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたSEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、(a)または(b)の単離されたペプチド
    からなる群より選択される、単離されたペプチド。
  5. SEQ ID NO:1〜40からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、以下の特徴の一方または両方を有する、請求項4記載の単離されたペプチド:
    (a)N末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンからなる群より選択される;および
    (b)C末端のアミノ酸がバリンまたはロイシンからなる群より選択される。
  6. ノナペプチドまたはデカペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項記載の単離されたペプチド。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項記載の1つもしくは複数のペプチドまたは請求項7記載の1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む、CTLを誘導するための組成物。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項記載の1つもしくは複数のペプチドまたは請求項7記載の1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む、がんの治療および/または予防および/または術後再発の予防のための薬学的組成物。
  10. HLA抗原がHLA−A2である対象への投与のために製剤化される、請求項9記載の薬学的組成物。
  11. がんの治療のために製剤化される、請求項9または10記載の薬学的組成物。
  12. (a)インビトロ、エクスビボ、またはインビボで、APCを請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドと接触させる段階、および
    (b)請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階
    からなる群より選択される段階を含む、CTL誘導能を有する抗原提示細胞(APC)を誘導するための方法。
  13. (a)HLA抗原と請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドとの複合体を表面上に提示するAPCと、CD8陽性T細胞を共培養する段階;
    (b)HLA抗原と請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドとの複合体を表面上に提示するエキソソームと、CD8陽性T細胞を共培養する段階;および
    (c)請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドと結合したT細胞受容体(TCR)サブユニットのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を、T細胞に導入する段階
    からなる群より選択される段階を含む方法によって、CTLを誘導するための方法。
  14. HLA抗原と請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチドとの複合体を表面上に提示する、単離されたAPC。
  15. 請求項12記載の方法によって導入される、請求項14記載のAPC。
  16. 請求項1〜6記載のペプチドのいずれかを標的とする、単離されたCTL。
  17. 請求項13記載の方法によって誘導される、請求項16記載のCTL。
  18. がんに対する免疫応答を、それを必要とする対象において誘導する方法であって、請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチド、その免疫学的活性断片、または該ペプチドもしくは断片をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を該対象に投与する段階を含む、方法。
  19. 請求項1〜6記載のペプチドのいずれかに対する抗体またはその免疫学的活性断片。
  20. 請求項1〜6記載のペプチドのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含むベクター。
  21. 請求項1〜6記載のペプチド、請求項7記載のヌクレオチド、または請求項19記載の抗体のいずれかを含む、診断キット。
  22. SEQ ID NO:1、3、および21からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項1〜6のいずれか一項記載の単離されたペプチドまたは請求項7記載のポリヌクレオチドによってコードされるペプチド。
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