JP2013520175A - 可溶形および結晶形の長時間作用型インスリン類似体製剤 - Google Patents

可溶形および結晶形の長時間作用型インスリン類似体製剤 Download PDF

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Abstract

【解決手段】 医薬製剤がインスリン類似体または生理学的に許容されるその塩を有し、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩はA4およびA8の1組のヒスチジン置換、および選択的にA21の置換を含むインスリンA鎖配列を含む。前記製剤はさらに、インスリン類似体分子6個につき少なくとも約4個亜鉛イオンを含む薬学的に許容される緩衝液を含む。前記製剤は、皮下注射により長時間作用型亜鉛依存性皮下デポー剤を形成する。無亜鉛製剤では、前記インスリン類似体単量体が、HisA4およびHisA8置換を含まないが、それ以外は同一のインスリンまたはインスリン類似体と比較し、インスリン様成長因子受容体に対する親和性が低く、同種のインスリン受容体に対する親和性が少なくとも20%であることを示す。
【選択図】 図1F

Description

関連出願書類の相互参照
この出願書類では、2010年2月22日に提出され、係属中の米国仮出願第61/306,722号の利益を請求する。
連邦政府の支援による研究開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所の約定番号NIH R01 DK40949、RO1DK069764、およびR01−DK74176によって授与された共同契約による政府支援によって行われた。米国政府は当該発明に対して一定の権利を有する。
1型糖尿病を治療するための強化インスリン療法では、インスリン製剤またはインスリン類似体製剤の皮下注射が必要である。投与法は、インスリンまたはインスリン類似体の数日間毎日注入、または持続皮下注射(「ポンプ療法」)から成る。血糖濃度の管理は食事中、食後、および食間、また睡眠・覚醒周期の間中求められる。持続注射が可能なポンプはごく少数の患者でしか使用されていないため、短時間作用型、中間型、および長時間作用型製剤を開発するためにかなりの努力が払われてきたが、これらの製剤は典型的にはヒトインスリン製剤、哺乳類インスリン製剤、またはインスリン類似体製剤と定義され、効果持続時間は約4、12、および18〜24時間であるが、それぞれ7、16、および30時間まで効果が持続する可能性がある。長時間作用型インスリン製剤、または長時間作用型インスリン類似体製剤に特に関心が集まったのは、夜間低血糖および/または早朝高血圧を回避する必要性からであった。本発明は、長時間作用型インスリン類似体製剤の新規クラスの調製法に関する。このクラスの製剤は、2型糖尿病の治療にも有用と考えられる。
インスリンの投与は、糖尿病の治療として長い歴史を持つ。インスリンは、脊椎動物の代謝で中心的役割を果たす小球状タンパク質である。インスリンには、21残基を含むA鎖と30残基を含むB鎖の2つの鎖が含まれる。ホルモンはZn2+−安定化六量体として膵臓β細胞に貯蔵されるが、血流中ではZn2+なしの単量体として機能する。
インスリンは単鎖前駆体であるプロインスリンの産物であり、プロインスリン内では、連結部位(35残基)がB鎖のC末端残基(残基B30)とA鎖のN末端残基を結合している(図1A)。人工単量体として核磁気共鳴法により最近決定されたプロインスリンの構造には、長年予想されていたとおり、インスリン様の中心部と不規則な連結ペプチドが含まれる(図1B)。3つの特異的ジスルフィド架橋(A6〜A11、A7〜B7、およびA20〜B19、図1B)の形成は、粗面小胞体(ER)におけるプロインスリンの酸化的折り畳みと共役していると考えられる。ERからゴルジ装置に輸送された直後、プロインスリンは会合して、可溶性のZn2+配位六量体を形成する。未成熟分泌顆粒では、細胞内タンパク質分解による消化およびインスリンへの変換が起こった後、形態的に縮合する。成熟貯蔵顆粒中の亜鉛−インスリン六量体の結晶が、電子顕微鏡(EM)を使用することで観察された。本発明では、新規亜鉛含有マルチ六量体集合体に配向し、皮下注射での活性インスリン類似体の作用時間を変更する、インスリン類似体製剤について報告する。
糖尿病治療に使用するインスリン類似体のデザインでは、単量体、二量体、および六量体としてインスリンの3次元構造を利用した。インスリン単量体には3つのαヘリックス、2つのβターン、および2つの伸長セグメントが含まれる。前記A鎖は、N末端のαへリックス(A1〜A8残基)、非標準的ターン(A9〜A12)、第2のαへリックス(A12〜A18)、およびC末端の伸長(A19〜A21)から成る。前記B鎖には、N末端腕(B1〜B6)、βターン(B7〜B10)、中心部のαへリックス(B9〜B19)、βターン(B20〜B23)、βストランド(B24〜B28)、および可動性のC末端残基B29−B30が含まれる。前記2つの鎖は一箇所に集まり、3つのジスルフィド架橋(システインA6〜A11、A7〜B7、およびA20〜B19)で安定化されたコンパクトな球状ドメインが形成する。様々な格子形式でZn2+配位インスリン六量体のX線結晶学的研究が広範に行われ、複数の結晶形から、T、T 、およびRと命名された3次元構造ファミリーが定義されている。各ケースにおいて、前記六量体の中心軸に沿って2つのZnイオンがあり(「軸上亜鉛イオン」)、それぞれに3つのヒスチジン側鎖が配位していることが分かり(HisB10)、さらに一部の結晶形では低親和性または部分的に占有された亜鉛結合部位が観察された。T状態のプロトマーは、溶液中のインスリン単量体構造に似ている。R状態のプロトマーはB鎖の二次構造が変化していることが示され、中央のαへリックスがB1(R状態)またはB3(不安定なR状態)に伸びている。3つの六量体ファミリーも、側鎖パッキングの細かい特徴が異なっている。
インスリン六量体の皮下分解は、注射したインスリン薬物動態の重要な伝達機構である可能性がある。したがって、インスリンの医薬製剤は亜鉛インスリン六量体の会合または分解を基にしていることが多い。例えば、即効性の類似体ではインスリン六量体の自己会合が限定されるか、六量体の分解が加速されると考えられる。他方、長時間作用型の類似体は、分解を遅延させるか、皮下デポー剤の沈殿および自己会合を促進することが多い。例えば、ヒューマログ(登録商標)およびノボログ(登録商標)のデザインおよび薬物動態に関して、構成インスリン類似体は六量体として注射するが、六量体は毛細血管に吸収されるために分解される必要がある。これらの類似体が置換されると、六量体の分解が促され、即効性のインスリン製剤が可能となる。対照的に、長時間作用型のランタス(登録商標)は主に単量体および二量体の溶液として注射され、この単量体および二量体は注射後、皮下組織および体液の緩衝作用により注入液のpHが上昇するにつれて沈殿し、アモルファスまたは微結晶デポーを形成する。これらの戦略は、一般的な原理、つまり、前記皮下デポー剤中の遊離インスリン単量体または二量体の利用効率と毛細血管への吸収率との関係に依存する。このように開発された様々なインスリン製剤は、一連の薬物動態学的特性を提供する。短時間作用型、中間型、および長時間作用型のインスリン製剤またはインスリン類似体製剤を組み合わせることにより、血糖濃度の変動を抑制し、したがって血糖管理を最適化する1日の投与デザインが可能となる。主な臨床製剤の種類は以下のとおりである。
標準的インスリン−即効性インスリン製剤は、中性pHにて、可溶性亜鉛インスリン六量体の透明な溶液として製剤化される。最初は抗菌性保存剤として導入されたフェノール、メタクレゾール、またはメチルパラベンも前記六量体に結合し、T→R構造転移を誘導する。前記R六量体が示す熱力学的および動力学的安定性は、古典的T六量体よりも高い。類似の亜鉛ベースの六量体インスリン類似体製剤は、即効性製剤のヒューマログ(登録商標)(Eli Lilly and Co.)およびノボログ(登録商標)(Novo−Nordisk)に利用されている。
NPHインスリン−中間型インスリン製剤(NPH;neutral protamine Hagedorn)は、フェノール(またはメタクレゾール)および半化学量論的濃度のプロタミンを含むR亜鉛インスリン六量体斜方晶の懸濁液、複数のアルギニン残基を含む小さな塩基性ペプチド混合物を基本としている。NPHインスリンのX線結晶学的研究では、前記結晶におけるこれらの塩基性ペプチドの位置が前記亜鉛インスリン六量体への結合様式を決定することを示唆している。混合投与を可能にするため、他にも即効性インスリン・リスプロ(ヒューマログ(登録商標)の有効成分)の類似NPH製剤が開発された。しかし、NPHインスリンは製剤化が難しく、高価である。プロタミンは精液、通常は肉用牛の精液に由来する塩基性ペプチドの一群であり、NPH結晶の形成は、均一な種晶の初期形成で構築される、厳格で複雑なプロセスである。さらに、NPHインスリンはフィブリル化する傾向がある。
レンテの原理−また、指定インスリン亜鉛懸濁液(IZS)のヒトインスリンまたは動物インスリンによる持続的作用は、Tインスリン六量体懸濁液に過剰の亜鉛イオン(通常は六量体1個につき20〜30個)を加えることで得られる。このように過剰に使用することで、低親和性部位にも結合し、亜鉛インスリン複合体のアモルファス状沈殿物(セミレンテ、つまりIZSアモルファス)または菱面体亜鉛Tインスリン微結晶懸濁液(ウルトラレンテ、つまりIZS結晶)が生成する。メチルパラベンは保存剤として利用されることが多く、前記T亜鉛インスリン六量体の1面に結合する。ウルトラレンテ製剤はセミレンテ製剤よりも作用時間が長く、アモルファス状および結晶状粒子(ランテまたはIZS、混合型)を混合することで中間型の作用時間が得られる。製造においては、以下の2つの工程が行われる。
(1)前駆型インスリン結晶−最初の工程では、保存剤非存在下、亜鉛イオンおよび高(超生理学的)濃度の塩化物イオン(1.2M NaCl)を利用し、pH5.5で微結晶シードの懸濁液を生成する。前駆型結晶は空間群R3に属し、T 亜鉛インスリン六量体を含み、1つの六量体につき合計4つの亜鉛イオン(電荷+8)と7つの塩化物イオン(電荷−7)が結合し、合わせて+1となり、前記六量体の形式電荷となる。通常製剤のR六量体とは異なり、前記前駆型六量体はT三量体内に軸上の亜鉛イオンが1つのみ含まれる。他の3つの亜鉛イオンはR 三量体内の軸外にある。HisB10はHisB5および2つの塩化物イオンと協力してその立体配座を反転させ、4面体の亜鉛イオン結合部位を形成する。これらの軸外部位は、古典的R六量体のフェノール結合ポケットの近くにある。ウルトラレンテ前駆型結晶の六量体内にある、軸外亜鉛イオン結合部位は、本発明の界面/六量体間亜鉛結合部位とは関係がない。
(2)ウルトラレンテインスリン結晶−ウルトラレンテ微結晶懸濁液を得るには、メチルパラベン、低濃度の塩化物イオン(120mM)、およびさらに高濃度の亜鉛イオンを含むpH7.4の緩衝液中、前記シード結晶を希釈する。前記結晶は空間群R3のTインスリン六量体から成る。前記製剤中の亜鉛イオン濃度が非常に高くなった結果(例えばインスリン分子1個あたり5個を超えるなど)、六量体に過剰な亜鉛イオンが観察される。通常の2つの軸上亜鉛イオンに加え、六量体中心部に位置する、相互排他的で非古典的な結合力の弱い結合部位2つのうち1つが部分的に占有されていることが観察される。その電子密度は、結合した塩化物イオンを解析するのに十分な質ではなかった。ウルトラレンテ成熟結晶の六量体内にある、軸外亜鉛イオン結合部位も、本発明の界面/六量体間亜鉛結合部位とは関係がない。
B鎖が伸長したインスリン類似体も知られており、1個の六量体に2個以上の亜鉛を持つ六量体を形成する。置換セットGlyA21−HisB31−HisB32、GlyA21−HisB31−HisB32−ArgB33、GlyA21−AlaB31−HisB32−HisB33、およびGlyA21−AlaB31−HisB32−HisB33−ArgB34を有するヒトインスリンは安定な複合体を形成し、六量体1個につきそれぞれ6.5、5.3、6.7、および5個の亜鉛を有する。これらの複合体(特にGlyA21−AlaB31−HisB32−HisB33−ArgB34)も、イヌにおいて広範な薬物動態を示した。ここでは、各六量体内で、前記過剰な亜鉛イオンがA鎖のα−アミノ基とB鎖C末端の新しいヒスチジンの間を結合する可能性がある。
その他−インスリン類似体(インスリングラルギン、ランタス(登録商標)の有効成分、Sanofi−Aventis)の透明な酸性溶液を皮下注射した後、持続的な作用が達成され、ヒトインスリンのポリペプチド配列を修飾することで等電点が7.0〜7.4にシフトした。皮下組織のpH(pH 7.4)で沈殿することにより、長時間作用型デポー剤が生成する。非極性部分によるインスリンの共有結合修飾によっても持続的な作用は達成され(インスリンデテミル、レベミル(登録商標)の有効成分、Novo−Nordisk)、皮下デポー剤の疎水性を増大させ、血清アルブミンへの結合を可能にし、血流からのクリアランスを遅延させる。溶解性の差を利用した動物インスリン混合物(ブタおよびウシなど)には歴史的関心が持たれている。
本発明では、本明細書で提供されるインスリン類似体製剤の作用持続時間を延長する、非軸上亜鉛イオンの新規利用法を構築する。当該分野で既知のこれまでの亜鉛イオン利用法は以下のとおりである。通常のインスリン製剤およびヒューマログ(登録商標)およびノボログ(登録商標)の対応する即効性製剤では、亜鉛イオンを利用し、インスリン六量体の会合を管理し、安定化する。前記六量体は、中心部にある3本の折り重なった対称軸で関連付けられた3つのインスリン二量体から成る。各インスリン六量体またはインスリン類似体六量体には2つの亜鉛イオンが含まれ、これは前記六量体の3本の折り重なった対称軸上に位置する。これらの「軸上亜鉛イオン」には、HisB10イミダゾール環が配位している。前記R六量体は、その配位構造が4面体と考えられるため、各亜鉛イオンは3つの対称性に関連するHisB10残基に結合し、第4の配位部位は塩化物イオンが占めている。前記2つの軸上亜鉛イオン(+4電荷)と2つの配位塩化物イオン(−2電荷)を合わせると、前記六量体の総形式電荷に+2が加わる。この構造には非軸上亜鉛イオンはない。野生型NPHインスリン微結晶の単結晶X線回折研究では、1つの六量体に2つの軸上亜鉛イオンが示され、それ以上の亜鉛イオンはない。空間格子は斜方晶、空間群はP2であり、本発明とは一致しない六量体−六量体パッキングパターンになっている(以下)。
現在、糖尿病治療に利用されているインスリン製剤の大部分にはインスリン類似体が含まれ、その配列は天然型ヒトインスリンとは異なる。インスリンのA鎖および/またはB鎖のアミノ酸置換については、皮下注射後のインスリン作用の薬物動態に及ぼすと考えられる好ましい効果が広く検討されてきた。当該分野で既知の例には、吸収の時間経過を加速または遅延させる置換が含まれる。前者の類似体は集合的に「摂食時」インスリン類似体と定義され、これは糖尿病患者がそのような即効性製剤を食事の時に注射することができるためであり、一方、吸収が遅延する野生型ヒトインスリンまたは動物インスリン(ブタインスリンまたはウシインスリンなど)では、これらの製剤を食事の30〜45分前に注射することが必要である。前記置換は、サブユニット界面の立体的または静電気的相補性を変化させることで前記亜鉛インスリン六量体を不安定化し、それによって皮下投与後の亜鉛インスリン六量体の急速な解離を促すようにデザインされている。「摂食時」インスリン類似体は、亜鉛−インスリン類似体六量体(ヒューマログ(登録商標)およびノボログ(登録商標))または平衡状態にある単量体、二量体、三量体、四量体、および六量体種を含む無亜鉛溶液(アビドラ(登録商標)、Sanofi−Aventis)として、pH7.4では透明な溶液として製剤化される。ヒューマログ(登録商標)およびノボログ(登録商標)は、ヒトインスリンおよび動物インスリンの通常製剤で長く利用されてきたものと同様、リン酸緩衝亜鉛溶液に製剤化されたが、当該分野で既知のこれまでの通常製剤とは異なり、亜鉛インスリン六量体として会合するため、フェノール、メタクレゾール、または他の特異的リガンドと結合し、前記変異インスリン六量体を安定化する必要がある。当該分野では、(システインを除く)様々なアミノ酸置換によるProB28の置換が、AspB28およびLysB28と同程度、亜鉛インスリン六量体を不安定化することが知られており、選択的にB29でのプロリンの置換を含む。
血糖濃度の基礎的管理の提供に12〜24時間かけてゆっくりと吸収されることを意図した長時間作用型インスリン類似体も、当該分野で知られている。これに限定されるものではないが、[GlyA21,ArgB31,ArgB32]−インスリン(インスリングラルギンまたはランタス(登録商標))で例示される、そのような類似体には、インスリン類似体の等電点をpH 7.0〜7.4にシフトするようにデザインされたアミノ酸置換および/またはA鎖またはB鎖の伸長が含まれる。前記類似体は、典型的にはpH5未満で可溶性インスリン単量体、二量体、およびより高次のオリゴマーを含む透明な溶液として製剤化され、この条件では亜鉛が介在した会合はHisB10のプロトン付加によって十分に機能しなくなる。pHが7.4にシフトするため、皮下組織にインスリン類似体が凝集および沈殿することで、長期的な吸収が達成される。ランタス(登録商標)として販売されているインスリン製剤には、不活性成分のメタクレゾール(2.7mg/mlまたは25mM)、グリセロール(17mg/mlまたは185mM)、ポリソルベート−20(20mg/ml)、および(30mg亜鉛イオン/mlまたは0.52mM)存在下、希釈HClまたはNaOHを一定量加えることでpH4とした溶液中、0.6mMとした活性類似体の[GlyA21,ArgB31,ArgB32]−インスリン(グラルギン)が含まれる。ランタス(登録商標)のU−100溶液には、0.60mM[GlyA21,ArgB31,ArgB32]−インスリンが含まれる。野生型インスリンのAsnA21は当該分野において、酸触媒化学変化を受けることが知られているため、GlyA21置換の目的は、酸性溶液中でのそのような化学的分解を回避することである。
別のタイプの長時間作用型インスリン類似体も当該分野で既知であり、残基ThrB30が除去され、C14脂肪酸鎖がLysB29の側鎖に接続しているインスリンデテミル(商標名レベミル(登録商標))により例示される(分子量5912.9ダルトン)。前記脂肪酸鎖は前記インスリン分子の疎水性を増大させ、前記皮下デポー剤の吸収遅延と関連している。前記脂肪酸鎖は前記インスリン類似体の血清アルブミンへの結合も媒介するため、循環血液中の寿命を長期化する。インスリンデテミルは、不活性添加物の塩化ナトリウム(1.17mg/ml)、メタクレゾール(2.06mg/ml)、フェノール(1.80mg/ml mM)、マンニトール(30mg/ml)、および亜鉛イオン(65.4mg/mlまたは1.1mM)存在下、リン酸ナトリウム(二ナトリウム二水和物0.89mg/ml)でpH7.4に緩衝化した透明溶液中、可溶性亜鉛インスリン六量体(インスリン単量体単位で14.2mg/mlまたは2.5mM、U−100溶液と定義)として製剤化される。亜鉛イオンの濃度は六量体1個につき亜鉛イオン約2.6個の比に対応する。インスリンデテミルのモル活性は、野生型ヒトインスリンと比較し、約4倍低下している。亜鉛イオンおよびフェノール存在下、des−ThrB30/C14−LysB29修飾インスリン類似体の結晶構造は、その製剤に認められる結晶構造と似ているが同一ではなく、結晶格子の六量体間に脂肪酸が詰め込まれた天然様R六量体を示している。皮下デポー剤で形成するようなインスリンデテミルの物理的状態または構造は、当該分野では知られていない。
したがって、亜鉛インスリン類似体の六量体表面および六量体間に新規亜鉛結合部位を形成するため、またそのようにすることで、長時間作用型の皮下タンパク質デポー剤を形成するために組み合わせることができる、いくつもの置換を有するインスリン類似体が必要である。
インスリンは脊椎動物インスリン関連タンパク質スーパーファミリーに属し、(インスリン自体に加え)インスリン関連成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、リラキシン、およびリラキシン関連因子などがある。これらのタンパク質は、相同的α−へリックスドメインおよびジスルフィド架橋を示す。タンパク質分解処理を行うインスリンおよびリラキシン関連因子には2つの鎖(AおよびBと命名)が含まれるため、IGFはAおよびBドメイン、介在連結(C)ドメイン、およびC末端Dドメインを含む短鎖ポリペプチドである。6個のモチーフ特異的システインおよび特定のコア残基は脊椎動物のインスリン関連スーパーファミリーで広く保存されているが、他の残基は特定のタンパク質に限定され、機能的特異性を生じる。インスリンおよびIGFsは受容体チロシンキナーゼ(インスリン受容体(IR)およびクラスI IGF受容体(IGF−1R))のリガンドとして機能するが、リラキシンおよび関連因子はGタンパク質共役受容体(GPCRs)に結合する。インスリンはIRに最も強く結合し、IGF−1Rには弱く結合し、GPCRに対する結合は検出されない。IGF−IはIGF−1Rに最も強く結合し、IRには弱く結合し、GPCRに対する結合は検出されない。インスリンとIGF−1Rとの交差結合は、癌細胞の増殖に関連するものを含め、細胞増殖シグナル伝達経路を誘発する可能性がある。糖尿病治療におけるインスリン補充療法の長期的安全性は、そのような交差結合を抑制するアミノ酸置換を含むインスリン類似体を使用することにより向上させることができる。そのようなアミノ酸置換があると、IGF−1Rに対してIRへのインスリン類似体の親和性比率が上昇する。したがって、それぞれの場合で野生型ヒトインスリンの特性と比較し、有効成分(インスリン類似体の単量体成分)がIGF−1Rに対する固有親和性を低下させ、IGF−1Rと比較したIRへのインスリン類似体の親和性比率を上昇させる、長時間作用型インスリン類似体製剤が必要である。
インスリングラルギンはヒトインスリンよりも、インスリン様成長因子I(IGF−I)の1型受容体に強く結合する。この受容体(IGF−1R)は細胞増殖シグナル伝達経路を介在し、アポトーシスを抑制することができる。IGF−1R結合およびシグナル伝達増大の程度は、利用するアッセイがin vitroであるのか、細胞を基本としているのかによって、1.4〜14の係数であると推定された。そのようなIGF−1R結合およびシグナル伝達の増大は、培養中のヒト癌細胞株の増殖増加と関連している。製剤状態の[GlyA21,ArgB31,ArgB32]−インスリン、または皮下デポー剤で形成するような[GlyA21,ArgB31,ArgB32]−インスリンの物理的状態または分子構造については、当該分野では知られていない。
IGF−1Rに対する相対的または絶対的親和性の上昇を示すインスリン類似体の安全性への懸念は、(ヒトインスリンに対して)ヒト癌細胞株の細胞培養研究でAspB10−インスリンの分裂促進性が上昇したことから、また(ヒトインスリンの投与と比較して)AspB10−インスリンを投与したSprague−Dawleyラットで乳癌の発生数が増加したことから、10年以上前に初めて持ち上がった。したがって、AspB10−インスリンは、ヒトで使用する臨床用インスリン類似体製剤としては追跡されなかった。最近、ランタス(登録商標)に類似の問題が持ち上がったが、ランタス(登録商標)もIGF−1Rに対する交差結合の増大、およびヒト細胞培養での分裂促進性の上昇を示す。ランタス(登録商標)を投与した欧州の糖尿病患者120,000例以上を対象とした最近の後向き症例研究では、乳癌、前立腺癌、大腸癌、および膵臓癌など、様々な癌の発生数が用量依存的に増加することが示唆された。癌リスクの程度は、IGF−1Rに対する交差結合レベルの増大だけでなく、IRに対するランタス(登録商標)の親和性低下によっても上昇する可能性がある。そのため、現在の臨床的使用状況では、[GlyA21,ArgB31,ArgB32]−インスリンの受容体結合の選択性(IR結合定数とIGF−1R結合定数の比)が、野生型インスリンまたは他のインスリン類似体と比較して異常に低下する。
ヒトインスリン自体はIGF−1Rに結合することができるが、界面活性剤で可溶化し、レクチン精製した受容体のin vitroでの親和性はIRへの結合親和性よりも333倍低かった。ヒューマログ(登録商標)およびノボログ(登録商標)などの摂食時インスリン類似体は、同レベルのIGF−1Rに対する交差結合を示す(IGF−1R(ヒューマログ(登録商標)の有効成分)に対するインスリン・リスプロの交差結合はわずかに増加することが報告された)。疫学研究からは、内因性高インスリン血症(代謝症候群および2型糖尿病初期段階におけるインスリン抵抗性への代償性反応)と癌、特に直腸結腸癌の有病率上昇との関連性が明らかとなった。高用量のヒトインスリンまたはインスリン類似体を用いたインスリン抵抗性がみられる患者の治療は、癌リスクの増大とも関連している可能性があり、癌リスクの増大はIGF−1Rへの交差結合のベースラインレベルを反映している可能性がある。そのような患者では、ヒトインスリンおよび摂食時インスリン類似体のベースラインでの受容体特異性ですら、累積的な癌リスクについて長期的治療の安全性を確保するために十分厳密ではない可能性がある。理論による制約を受けることは望まないが、糖尿病治療用にデザインされたインスリン類似体の受容体結合選択性は、野生型ヒトインスリンの受容体結合選択性と同等であるか、それよりも大きくすることが賢明と考えられる。
インスリン類似体による血糖濃度の制御では、ヒトインスリンのような正確なレベルでのIRへの結合は必要ない。IRに対する類似体の親和性低下は、in vivoにおいて、血流からのクリアランスの遅延によって相殺される可能性がある。このような相殺が起こるのは、インスリンのクリアランスがIRへの結合を介して行われるためである。それにもかかわらず、IRへの親和性が3倍低下したインスリン類似体は、in vivoにおいて、ヒトインスリンと同程度の作用強度を示す。親和性のさらなる低下は、注入される類似体の量が増加することで相殺される可能性がある。このように親和性が低下したインスリン類似体の例は、インスリングラルギン(ランタス(登録商標))およびインスリンデテミル(レベミル(登録商標))である。IRに対するインスリン類似体の親和性の変化は、通常、異常な比率の変化を反映しており、親和性の低下は、受容体における前記ホルモンの滞留時間短縮と関連しているが、親和性の上昇は、前記滞留時間の延長と関連している。滞留時間と代謝強度、または滞留時間と細胞増殖シグナル伝達との関連性は一般にどのようなものであるかは分かっていない。IR複合体におけるAspB10―インスリンの滞留時間延長が、少なくとも一部は分裂促進性増大の根底にあることが提案された。理論による制約を受けることは望まないが、過去の経験から、ヒトインスリンに対してIRへのin vitroの相対的親和性が20%〜200%であるインスリン類似体は、哺乳類の糖尿病治療に有効である可能性があることが分かった。
したがって、血糖濃度管理における類似体の生物学的活性を少なくとも一部維持しつつ、IGF−1Rに対する交差結合が抑制された、作用持続時間が長いインスリン類似体が必要である。特に、皮下デポー剤からの吸収遅延を示すが、血糖濃度管理における前記類似体の生物学的活性を少なくとも一部持続しつつ、一度血流に吸収されるとIGF−1R親和性の低下を示すインスリン類似体が必要である。さらに、血糖濃度管理における類似体の生物学的活性を少なくとも一部維持しているが、IGF−1R親和性が上昇せずに、等電点が中性に向かって増加を示すインスリン類似体が必要である。
インスリン類似体の生物学的、物理学的、および化学的性質は、A鎖および/またはB鎖にアミノ酸置換があるため、またはA鎖および/またはB鎖が伸長し、より大きな分子を形成する可能性があるため、ヒトインスリンとは変化させることができる。2若しくはそれ以上の修飾を含む類似体の性質は、対応する単一の修飾を含む一連の類似体の性質を基に確実に予測することはできないことが、インスリン類似体の研究から示された。前記分子中の1つの位置でアミノ酸が置換または鎖が伸長すると、前記タンパク質の立体配座、動態、または溶媒和の変化に伝達される可能性があるため、前記分子中の別の位置でのアミノ酸置換の効果は、最初の修飾がない同じ置換の効果とは異なる可能性がある。予期せぬ修飾効果の伝達の例は、ArgA0−インスリン結晶構造のゆがみによって提供され、これは受容体結合の抑制と関連していた。したがって、ArgA0を含めるようにA鎖のN−末端を伸長すると、残基A4、A8、および他の部位の構造環境が変化する。1つ若しくはそれ以上の塩基性残基(ArgまたはLys)を挿入するアミノ酸置換または鎖の伸長では、一般に等電点が中性にシフトし、このシフトの程度は、前記修飾と関連した構造、溶媒和、および伝達された立体配座の変化による影響を受けるため、観察されたpIsは単離したアミノ酸の性質では十分な予測ができないことが経験から分かる。理論による制約を受けることは望まないが、2若しくはそれ以上の修飾を合わせた効果は、単一の修飾を含む類似体の性質を基に予測することはできないことが、経験から分かる。したがって、新たな修飾の組み合わせが、同時に糖尿病治療におけるインスリン類似体の治療目的での使用に新規の利点を提供する性質を有する可能性がある。
本発明は、亜鉛インスリン類似体の六量体表面および六量体間に新規亜鉛結合部位を形成するため、またそのようにすることで、長時間作用型の皮下タンパク質デポー剤を形成するために組み合わせることができる複数のヒスチジン置換を含むインスリン類似体製剤に関する。より詳しくは、本発明はA21に置換がある場合とない場合でA4およびA8に1組のヒスチジン置換を含むインスリン類似体を提供し、その皮下投与製剤を提供することで作用持続時間の延長を可能とする。いかなる特定の理論の特許性も条件として設けることは望まないが、これらの部位の側鎖は、それぞれがインスリン六量体に会合する時にA鎖表面から溶媒に突出していると考えられるため、新しい亜鉛イオン結合部位の一部を提供し、この結合部位を隣接する六量体からの相補的な側鎖の突出と合わせると、隣接するインスリン六量体間で亜鉛イオンが架橋する相互作用が可能になる。図1Eに示すとおり、野生型T インスリン六量体は上の列(T三量体、角の丸い長方形)と下の列(R 三量体、角のとがった長方形)を有し、それぞれ軸上に亜鉛イオンを含む(灰色の丸)。図1Fは、本製剤のHisA4およびHisA8置換が起こると考えられる結晶格子における変異六量体の積み重ねを表した図を示している。架橋亜鉛イオン(黒丸)の層には、それぞれ各T状態プロトマー(図示せず)の残基HisA4およびHisA8と上記R状態プロトマーのHisA4’側鎖が配位している。いかなる特定の理論の特許性も条件として設けることは望まないが、この置換の組み合わせも前記インスリン類似体の受容体結合選択性を向上させ、IGF−1Rの絶対的親和性を低下させる。
本発明の別の観点では、pH約4の長時間作用型インスリン類似体製剤が提供され、そのpHが約6〜7.4にシフトすると、微結晶懸濁液が生成する。特定の一実施例では、前記製剤がインスリン類似体分子6個あたり亜鉛イオン少なくとも約4個の相対濃度で亜鉛イオンを含む。したがって、前記製剤は生理学的pHに曝露したために皮下デポーが形成するとすぐに、患者への皮下注射が可能である。前記製剤はさらに、同じ種の野生型インスリンと比較し、前記IGF受容体に対する親和性が低く、同種のインスリン受容体に対する野生型インスリンの親和性を少なくとも20%で維持すると考えられる。
インスリンの自然構造では、残基A1−A8がα−へリックスを有する。このセグメントは、インスリンおよびインスリン類似体のIRとIGF−1Rの両方への結合に寄与すると考えられる。理論の特許性を条件として設けることは望まないが、溶媒が曝露した残基GluA4およびThrA8の置換(IGF−Iでは保存されていない)は、インスリン類似体の前記IRへの結合に対して十分耐性があるが、まだホルモン−受容体界面に近いと考えられる。GlyによるAsnA21の置換は、当該分野において、酸性条件で製剤化した場合にインスリン類似体の化学的分解を遅らせることが知られている。
したがって、亜鉛依存性長時間作用型皮下タンパク質デポー剤を提供し、I型IGF受容体に対する交差結合が抑制され、インスリン受容体に対して高い親和性を保持しているインスリン類似体を提供することが望ましい。理論による制約を受けることは望まないが、インスリン類似体六量体の結合非軸上亜鉛イオンの2つの正電荷が、会合に依存した等電点のさらなるシフトに寄与する、インスリン類似体を提供することも望ましい。A4およびA8の位置にある1組のヒスチジン側鎖が、結晶格子中のインスリン類似体六量体間の界面亜鉛イオン結合部位に寄与できるインスリン類似体を提供することも望ましい。ここでも理論による制約を受けることは望まないが、このような界面亜鉛イオンは六量体間の高次接触による会合を遅らせ、インスリン類似体の作用持続時間を延長すると考えられる。
インスリンまたはインスリン類似体のA1−A8α−へリックスは、荷電部位、中性部位、α−へリックス双極子モーメント、および静電相互作用と組み合わさることで、その等電点(pI)に寄与する。ここでも理論による制約を受けることは望まないが、pH 6.5を超えないpIの上方シフトは、(HisのGluA4置換によって起こるような)酸性残基の除去で予想される。pIのわずかな変化は、前記置換ヒスチジンの局所pK(通常は6〜7)によって、A4またはA8の位置におけるヒスチジン残基の挿入と関連している可能性がある。ここでも理論による制約を受けることは望まないが、ヒトインスリンでは位置A4で酸性残基が観察される。Gly、Alaまたは他の中性側鎖によるAsnA21の置換は、pIに大きな変化を引き起こすと予想され、塩基性側鎖(ArgまたはLys)による置換はpIをさらに上方シフトさせると予想され、(酸性溶液で保存した場合に天然AsnA21側鎖の脱アミド化で起こるような)Aspの置換は、pIを下方シフトさせると予想される。インスリン類似体の六量体表面に結合、または亜鉛インスリン類似体六量体間の界面部位に結合した非軸上亜鉛イオンも、前記六量体またはマルチ六量体複合体の全荷電に寄与することができ、皮下デポー剤同様、pH7.4で溶解性に影響する可能性がある。
したがって、上記の受容体結合特性を示し、また等電点が上方シフトしているが、中性を超えておらず、インスリン類似体六量体表面または六量体間の非古典的亜鉛イオンの結合において、前記アミノ酸置換とさらなる結合亜鉛イオンを組み合わせた効果のため、前記複合体がpH7.4で皮下デポー剤として不溶性となるようなインスリン類似体を提供することも望ましい。
したがって、透明な溶液として酸性pHで前記インスリン類似体の可溶性製剤を提供し、取り扱いが簡便で、シリンジにより皮下注入の投与量を正確に調節することができ、ペンにより正確な定量送達を提供することが望ましい。また、中性pHでインスリン類似体の微結晶懸濁液を作る基礎として、結晶化の方法を提供することも望ましく、初回使用後の室温での有効期間および製剤の安定性が追加される。
一般に、患者を治療する方法は生理学的に有効な量のインスリン類似体または生理学的に許容されるその塩を患者に投与する工程を有し、前記類似体または生理学的に許容されるその塩は、A4およびA8の位置で1組のヒスチジン置換により修飾し、A21でさらに修飾が可能なインスリンA鎖配列を含む。1つの実施例では、前記A21側鎖が天然型Asn残基である。別の実施例では、前記A21側鎖がGlyである。別の例では、前記A21置換をAla、Thr、またはSerとすることができる。
インスリン類似体は、何らかの脊椎動物のインスリンの類似体または当該分野で既知の修飾B鎖を含むインスリン類似体とすることができ、皮下注入後の吸収が変化する。1つの実施例では、前記インスリン類似体が、ヒト、マウス、齧歯類、ウシ、馬、またはイヌインスリン類似体など、哺乳類のインスリン類似体である。1つの実施例では、前記インスリン類似体が、ヒツジ、クジラ、ラット、ゾウ、モルモット、またはチンチラのインスリン類似体である。
具体的なインスリン類似体には、配列ID番号4〜6または14のいずれか1つで示されるA鎖配列と配列ID番号7〜12のいずれか1つで示されるB鎖配列を含むものが含まれる。核酸は、これらの配列の1つを有するポリペプチドをコードする。そのような核酸は、宿主細胞の変換に利用される発現ベクターの一部と考えられる。
図1Aは、A鎖およびB鎖、および隣接する二塩基性切断部位(黒丸)とCペプチド(白丸)で示される連結部位を含むヒトプロインスリン配列の略図である。 図1Bは、プロインスリンの構造モデルを提供し、インスリン様の部分と不規則な連結ペプチド(点線)から成る。 図1Cは、部分的に単量体がアンフォールディングする、提案されたインスリンフィブリル化経路を示している。その天然型の状態は古典的な自己会合で保護されている(左端)。分解により、天然型単量体と部分的に折り畳まれた単量体の間で平衡に達する(それぞれ白三角形と台形)この部分的な折り畳みは、経路を外れた事象として完全にアンフォールディングされるか(白丸)、または途中で凝集して核を形成することによりプロトフィラメントになる(右端)。 図1Dは、ヒトインスリン配列の略図であり、前記A鎖の残基A8の位置、および皮下注射後の吸収を早める当該分野で既知の前記B鎖の置換部位を示している。 図1Eは、野生型T インスリン六量体の略図であり、上の列(T三量体、角の丸い長方形)と下の列(R 三量体、角のとがった長方形)を有し、それぞれ軸上に亜鉛イオンを含む(灰色の丸)。 図1Fは、結晶格子状に積み重なった変異型六量体を示した略図であり、3つの架橋となる亜鉛イオン(黒丸)の層には、それぞれT状態プロトマー(角の丸い長方形)のHisA4およびHisA8、またR状態プロトマー(角のとがった長方形)のHisA4f側鎖(垂直のセグメント)が配位している。 図2aは、野生型インスリンの配列および(上段の)インスリングラルギン(ランタス(登録商標)、Sanofi−Aventis)と(下段の)本発明の類似体の修飾部位を示している。野生型A鎖およびB鎖の配列は、黒色と灰色で示し、ジスルフィド架橋(A6−A11、A7−B7、およびA20−B19)は黒線で示している。インスリングラルギンは、B鎖に2つの残基の伸長(ArgB31およびArgB32)と置換AsnA21→Gly(上段で赤色)を含む。内因性皮下プロテアーゼは、伸長したインスリングラルギンB鎖から1つまたは2つのArg残基をゆっくりと取り除き、一部は増大した分裂促進性を緩和することができる。本類似体には、1組(i、i+4)の置換GluA4→HisおよびThrA8→His(下段)を含む。長時間作用型類似体のインスリンデテミル(レベミル(登録商標)、Novo−Nordisk)は、アルブミン結合要素(図示せず)が連結することで作用する。 図2bは、A1−A8α−へリックスの外面にあるHisA4およびHisA8が形成した、想定される亜鉛イオン結合部位のインスリン単量体を表した部分のリボン状モデルを示している。A鎖とB鎖のリボンは、それぞれ黒色および灰色で示されている。 図2cは、野生型T インスリン六量体の構造を示している。前記六量体内の2つの軸上亜鉛イオンは中心部に並び、三量体が関連したHisB10側鎖が配位している(薄灰色)。A鎖は黒色、B鎖は灰色で示されている(R特異的B1−B8α−へリックス)。前記野生型構造は、Protein Databank(登録記号1TRZ)から入手した。 図2dは、変異型[HisA4、HisA8]T インスリン六量体の構造を示している。前記六量体内の2つの軸上亜鉛イオンは中心部に並び、三量体が関連したHisB10側鎖が配位している(灰色)。前記変異型六量体には、前記T三量体表面に3つの非古典的亜鉛イオンを含む(周辺の球)。灰色で示されているのは、隣接する六量体のHisA4、HisA8、および第3のHisA4の側鎖である。それぞれの場合において、A鎖は黒色、B鎖は灰色で示されている(R特異的B1−B8α−へリックス)。 図2eは、T状態プロトマーのHisA4およびHisA8によって形成した新しい亜鉛イオン結合部位を示した2F−F電子密度マップ(1sで輪郭を示した立体構造のペア)を示している。歪んだ4面体配位は残基A4’で完結し、隣接する六量体のR状態プロトマーに属している。 図3Aは野生型六量体−六量体パッキングを示している。(左)各六量体において、上の三量体はT構造、下の三量体はR 立体配座をとっている。軸上亜鉛イオン(大きな球)、およびA4およびA8残基近くの界面水分子(小さな球)が示されている。A鎖は灰色、B鎖は黒色で示されている。TおよびRプロトマーは、B1〜B9二次構造が伸長しているか(T)またはらせん形であるか(R)が異なり、残基B1およびB2は「不安定な」R状態で歪んでいる。(右)左の四角で囲んだ部分の拡大図。下に向かって見えるより大きな球は、下の六量体のT三量体の軸上亜鉛イオンである。矢印は、上のR 三量体のR状態残基GluA4’を示している。 図3Bは、[HisA4,HisA8]−インスリンの亜鉛を介した六量体−六量体パッキングを示し、上の三量体はT構造、下の三量体はR 立体配座をとっている。軸上亜鉛イオンおよびA4−A8−A4’が配位した亜鉛イオンが示されている。A鎖は灰色、B鎖は黒色で示されている。(右)四角で囲んだ部分の拡大図。六量体−六量体の界面に3つの新しい亜鉛イオンが観察される。矢印は、(上の六量体の下の三量体に由来する)R状態の側鎖HisA4’を示しており、これにより界面亜鉛結合部位が完結する。 図3Cは、[HisA4,HisA8]−インスリン六量体のTおよびR面を示したCPKモデルを示している(左および右)。図3bに対して90°回転させた図を示している。3つの非古典的亜鉛イオンは、HisA4およびHisA8の側鎖への結合が示される。白の十字は塩化物イオンの位置を示し、それ以外の配置は図3Bと同様である。 図3Dは、非古典的亜鉛イオン(大きな濃灰色の球)、塩化物イオン(重なっている薄灰色の球)、および3つの結合した水分子(小さな球)をRfプロトマーのHisA4’およびTプロトマーのHisA4−HisA8と関連させて示した立体構造のペアを示している。前記結合した水分子は、GluB4’の側鎖カルボキシレート、TyrB26’のパラ−OH、およびProB28’のカルボニル酸素(標識)が関与したR内の水素結合ネットワークに関与する。 図3Eは、インスリンまたはインスリン類似体のIRへの高親和性結合(左側の3つの曲線、実線)およびIGF−1Rへの低親和性交差結合(右側の3つの曲線、点線)を調査した競合的置換アッセイの結果を示している。各群について、野生型インスリン(x)、インスリングラルギン(■)、およびHisA4,HisA8−インスリン(▼)の結果が示されている。HisA4,HisA8−インスリンの受容体結合選択性が向上した結果、IR結合滴定が左方シフトし、IGF−1R結合滴定が右方シフトしている。相対的親和性および解離定数を表2および3に示している。アッセイは亜鉛イオン非存在下にて行った。 図3Fはin vivoアッセイの結果を示している。ストレプトゾトシン誘発糖尿病雄ラットに野生型インスリン(x)、インスリングラルギン(■)、HisA4,HisA8−インスリン(▼)、または対照緩衝液(Lilly希釈液、●)を皮下注射した。時間0の用量は、野生型インスリン3.44nmoles(注入量100μl中20mg)、インスリングラルギン12nmoles(ランタス(登録商標)2.0Uに相当)、[HisA4,HisA8]−インスリン13.7nmoles、および無タンパク緩衝液100μl(Lilly希釈液)であった。血糖濃度は、示した時間で尾部の先端から測定した。各類似体は5匹のラット(平均±SEM)で検討し、実験は2回繰り返し、同様の結果を得た。ラットの摂食時間は注射後6〜8時間とした。 図4は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病雄ラットに対照としてインスリン希釈液(丸)、インスリングラルギン(ランタス(登録商標)、四角)、リスプロインスリン(ヒューマログ(登録商標)、「X」)、またはA4およびA8の位置にHis置換を含むインスリン類似体とヒューマログのリプスロ置換体(A4A8−リプスロ+Zn、逆三角)を注射後の経時的血糖値(mg/dL)を示した図を示し、それ以外は図3fで上述したとおりである。 図5は、亜鉛を介したタンパク質の結合を可能とし、問題のタンパク質の長時間作用型デポー剤を形成するヒスチジン置換の利用を示した略図である。
本発明は、インスリン類似体製剤の作用持続時間を延長させる、インスリン六量体間の非軸上界面亜鉛イオンの新しい利用法に関する。本発明は、長時間作用型皮下デポー剤を作成する新しい系を提供する。本発明では、インスリン類似体六量体表面およびインスリン類似体六量体間で結合し、これらの類似体のデポー剤が単量体のインスリン類似体を血流に放出させるのにかかる時間を延長させる、新規非軸上亜鉛イオンを利用する。本発明では、1型IGF受容体に対するインスリン類似体の絶対的および相対的結合量を同時に減少させる方法についても提供する。この特徴を組み合わせることで、特に癌リスクについて、糖尿病治療の有効性および安全性が向上する。そのため、本発明は、pH4では透明な溶液として、または中性pH付近で微結晶の懸濁液として、亜鉛含有製剤とともに、A4およびA8の位置に1組のヒスチジンアミノ酸置換が含まれるインスリン類似体を提供する。前記1組のA4−A8置換はGly、Ala、Ser、またはThrなど、A21の置換と組み合わせることができる。
本発明のインスリン類似体には、他にも修飾が含まれてもよい。本明細書およびその請求項で使用されているとおり、インスリン類似体の様々な置換は、置換されるアミノ酸、続いて選択的に上付き文字で示す前記アミノ酸の位置を示す慣習により記すことができる。問題となる前記アミノ酸の位置には、置換が位置するインスリンA鎖またはB鎖を含む。例えば、本発明のインスリン類似体には、B鎖のアミノ酸28(B28)におけるアスパラギン酸(AspまたはD)またはリジン(LysまたはK)のプロリン(ProまたはP)との置換、またはB鎖のアミノ酸29(B29)におけるProのLysとの置換、またはその組み合わせを含む可能性がある。これらの置換は、それぞれAspB28、LysB28、およびProB29と示される。同様に、本発明のインスリンには、A鎖アミノ酸A0(つまり、GlyA1のN末端)におけるアルギニン(ArgまたはR)、ヒスチジン(HisまたはH)、またはリジン(LysまたはK)の付加も含むことができる。これらの付加は、それぞれArgA0、HisA0、またはLysA0と示すことができる。さらに、本置換は置換PheB1→Hisの導入と組み合わせることもできる。他の記載がない限り、または内容から明らかであれば、本明細書で示すアミノ酸はLアミノ酸とみなす。
本明細書で用いるとおり、「金属ステープル」または「金属ジッパー」は、2若しくはそれ以上の分子または分子複合体の2若しくはそれ以上のアミノ酸側鎖が問題の金属と結合している場合に形成される金属結合部位である。例えば、第1分子の1つの側鎖を第2分子の2つの側鎖と組み合わせ、亜鉛結合部位を形成することができる。したがって、インスリン三量体は軸上亜鉛イオンと一緒に「金属ステープル」となることは当該分野で周知である。しかし、亜鉛結合部位が導入されると、特定インスリン類似体の六量体によって六量体間に亜鉛ステープルが形成されるかもしれないことは、これまで知られていなかった。
本発明は、新規「亜鉛ステープル」を形成するインスリン六量体複合体を形成し、IGF−1Rへの親和性低下を示すが、IRに対する親和性の少なくとも一部を保持し、したがって生物活性を保持するインスリン類似体を提供する。本発明は、「亜鉛ステープル」六量体複合体を形成する、相対的亜鉛濃度が高いこれらの類似体製剤、および亜鉛濃度がさらに高い、これらの六量体複合体のランテ様結晶も提供する。いくつかの実施形態では、前記インスリン類似体が、前記インスリン類似体の六量体1個につき少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、または少なくとも8個の亜鉛イオンを含む。
患者を治療する方法は、前記患者にインスリン類似体を投与する工程を有する。1つの実施形態では、前記インスリン類似体が、同時に中性への等電点(pI)の上方シフトを引き起こし、すなわち亜鉛ステープルインスリン六量体を会合させる、前記A鎖の修飾を含むインスリン類似体である。別の実施形態では、前記修飾が前記無亜鉛単量体のIGF−1Rへの親和性も低下させる。別の実施形態ではまた、前記インスリン類似体がA21の位置に置換を含み、酸性条件で製剤化する際に前記インスリン類似体の化学的分解を防ぐ。前記インスリン類似体は、シリンジ、定量ペン、または他の適切な装置を用いて皮下注射により投与される。
また、酸性pHで十分な濃度の亜鉛イオンを用いて製剤化した類似体のA4およびA8の位置に1組のヒスチジン置換を導入することも可能であり、2つの同時メカニズム、つまり主にGluA4の負電荷がなくなったために等電点が高くシフトし(およそ6.5〜6.6)、古典的軸上亜鉛イオンに加えて非軸上亜鉛イオンが結合するため、亜鉛インスリン六量体の純等電点がさらにシフトするというメカニズムにより、pH 7.4で類似体に不溶性を与えると想定される。皮下デポー剤のインスリン類似体の溶解性を低下させる目的でA4およびA8に同じ置換を導入すると、インスリンおよびインスリン類似体と1型IGF受容体との交差結合との関連性が提案された、潜在的癌リスクが低下する。
また、上記類似体と1型IGF受容体との交差結合を減少させるという1若しくはそれ以上の目的のため、(これに限定されるものではないが、これらのタイプの混合物を含め、通常型、NPH、セミ−ランテ、およびランテなど)他のクラスのインスリン類似体製剤において、A21における置換の有無に関係なく、A4およびA8の位置に同時に置換を導入することも可能であると想定される。pH 7.4で通常の可溶性製剤とする目的では、1組のヒスチジン置換をA鎖またはB鎖の別の位置の置換と組み合わせる必要があり、この置換では1若しくはそれ以上の正電荷がなくなるか、または1若しくはそれ以上の負電荷が加わり、これによって、これに限定されるものではないが、塩化亜鉛、フェノール、メタクレゾール、グリセロール、リン酸ナトリウム緩衝液、および注射用水を含む当該分野で既知の添加物存在下、pH 7.4でヒトインスリン製剤などを可溶性とするため、前記pIを十分低下させる。A4およびA8における1組のヒスチジン置換と組み合わせた場合、pIを低下させる置換の例には、これに限定されるものではないが、GluA14、AspA21、GluA21、AspB9、GluB9、AspB10、GluB10、AlaB22、SerB22、AspB28、AspB28−ProB29、AspB28−AlaB29、AlaB29、およびProB29、またはその組み合わせを含む。
A4およびA8における1組のヒスチジン置換は、インスリン類似体と1型IGF受容体との交差結合を減少させ、前記インスリン類似体に対する固有の親和性を維持しながら、pIを中性に上方シフトさせる可能性があることが発見された。
pH 7.4で亜鉛を含まないようにすると、[HisA4、HisA8]−インスリンは非常に溶けやすいが、インスリン類似体分子6個につき4〜6個の亜鉛イオンを追加すると、亜鉛−タンパク質複合体が沈殿することも発見された。この複合体はpH 7.0〜8.4では不溶性であるか、やや溶けにくいが、pH約4では可溶性である。理論による制約を受けることは望まないが、このpH依存性の不溶性は、軸上および非軸上結合亜鉛イオンをいずれも含む亜鉛タンパク質複合体がin vitroで等電的に沈殿するためである。
[HisA4、HisA8]−インスリンは、pH 4.0で緩衝化されていない、モル比で6個のインスリン分子につき5.2個の亜鉛イオンを含む溶液に製剤化し、その後、ストレプトゾトシンにより糖尿病とした雄Lewisラットに皮下注射すると、ランタス(登録商標)の薬理作用と同等の期間および範囲に血糖濃度の管理が延長されることも発見された。理論による制約を受けることは望まないが、この長期的作用は、軸上および非軸上結合亜鉛イオンをいずれも含む亜鉛タンパク質が等電的に皮下沈殿するためである可能性が高い。
1個の六量体につき2個の軸上亜鉛イオンと3個の非軸上亜鉛イオンを含む亜鉛インスリン類似体六量体は、前記R3結晶格子の連続する六量体間で結合するため、[HisA4,HisA8]−インスリンの結晶は容易に成長することも発見された。後者の界面亜鉛イオンは、1個の六量体中のHisA4およびHisA8による4面体配位、隣接する六量体のHisA4’、および結合塩化物イオンを示す。前記3つの結合亜鉛および塩化物イオンは前記六量体にそれぞれ+6および−3の正式電荷を加え、正味の正式電荷は+3となる。これらの追加電荷は、HisによるGluA4の置換によって達成される正式電荷+6に追加される。理論による制約を受けることは望まないが、3つの非軸上亜鉛イオンがあるために上記のpH依存性の不溶性が得られ、亜鉛タンパク質複合体は推定上、皮下等電沈殿する可能性がある。
一般に、脊椎動物のインスリン類似体または生理的に許容されるその塩はインスリン類似体を有し、インスリンA鎖およびB鎖を含む。本発明のインスリン類似体は、残基B1および/またはB31のB鎖における伸長塩基性アミノ酸の置換など、他の修飾を含んでもよい。1つの例では、前記脊椎動物のインスリン類似体がヒト、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、またはウマインスリン類似体などの哺乳類インスリン類似体である。その開示がこの参照により本明細書に組み込まれる、同時係属の米国特許第12/419,169号明細書でより詳細に説明されるとおり、本発明のインスリン類似体には、B鎖C末端とA鎖N末端の間のつなぎなど、他の修飾も含むことができる。
薬学的組成は、上記インスリン類似体を有することもでき、作用時間を延長させるためには、亜鉛イオンまたはタンパク質集合体および六量体の界面ステープリングを導くことができる他の二価金属イオンを含んでいる必要がある。亜鉛イオンは、前記インスリン類似体の六量体1個につき4.0〜7.0のモル比または5.0〜6.0のモル比のレベルで、そのような組成に含まれることもある。さらに遅い吸収でも六量体複合体を形成するため、亜鉛イオンはより高いモル比で含まれる可能性もあり、そのような高いモル比では、亜鉛イオンが界面[HisA4,HisA8]関連亜鉛ステープル結合部位に加え、弱い亜鉛結合部位を占めることになる。そのような製剤では、前記インスリン類似体濃度は典型的には約0.1〜約3mMと考えられる。
添加物には、グリセロール、グリシン、他の緩衝剤および塩、およびフェノールおよびメタクレゾールなどの抗菌性保存剤を含むことができ、後者の保存剤は前記六量体の安定性を高めることが知られている。そのような薬学的組成を用い、前記組成の生理的有効量を糖尿病または他の病状を有する患者に投与することで、前記患者を治療することができる。
A鎖をコードする配列を含むインスリン類似体コード化ポリぺプチドをコードする配列を有する核酸は、A4およびA8にヒスチジン置換の組み合わせを有し、A21にさらに置換を有する場合と置換がない場合がある。特定の配列は、核酸配列が導入される種の好適なコドンの利用によって変化する可能性がある。前記核酸は、野生型インスリンの他の修飾もコードする。前記核酸配列は、前記ポリペプチドまたは修飾プロインスリン類似体の別の位置に関連のない置換または伸長を含む修飾A鎖またはB鎖配列をコードすることもある。前記核酸は発現ベクターの一部でもあり、このベクターは大腸菌細胞株などの原核宿主細胞、または出芽酵母(S.cereviciae)またはメタノール資化酵母(Pischia pastoris)菌株または細胞株などの真核細胞株のような宿主細胞に挿入される可能性がある。
本発明の類似体内では関連性のない置換または鎖の伸長が組み合わさり、B13の位置の置換、またはA0、A22、B0、またはB31の位置でのArgまたはLysによる鎖の伸長によってその等電点をさらに上方に、または負電荷を挿入するか、正電荷を除く置換により下方に変化させる可能性があると想定される。例えば、前記置換はAlaB31−HisB32−HisB33−ArgB34、HisB31−HisB32、HisB31−HisB32−ArgB33、またはAlaB31−HisB32−HisB33と組み合わさっているかもしれない。この後者の場合、さらなる六量体内亜鉛結合が本発明の六量体内亜鉛結合を補い、前記亜鉛を六量体比に引き上げ、前記六量体複合体をさらに安定化させる。
本発明の置換はB鎖の修飾と組み合わせることもでき、この好ましくない性質を軽減するIGF−1R交差結合を増加させるが、この例には、1若しくは2塩基性残基(ArgB31、LysB31、ArgB31−ArgB32、ArgB31−LysB32、LysB31−ArgB32、およびLysB31−LysB32など)によるB鎖の伸長またはAspまたはGluによるHisB10の置換が含まれる。例は、(これに限定されるものではないが)インスリングラルギン(ランタス(登録商標))によって提供され、インスリングラルギンはpH 4で製剤化されるが、皮下デポー剤では生理的pHで凝集する。
さらに、本発明の1組のヒスチジン置換は、既存のインスリン類似体または修飾インスリンに存在するいずれかの変化、または通常のインスリン、NPHインスリン、ランテインスリン、またはウルトラランテインスリンなど、様々な医薬製剤と組み合わせて利用することができると想定される。本発明のインスリン類似体は、ヒトインスリン類似体に存在する置換を含み、臨床的には利用されていないが、AspB10、LysB28、およびProB29の置換またはAspB9置換を含むDKP−インスリンなど、まだ実験的には有用である。ただし、本発明はヒトインスリンおよびその類似体に限定されない。また、これらの置換は、限定されない例により、ブタ、ウシ、ウマ、およびイヌインスリンなどの動物インスリンで行われると想定される。さらに、ヒトインスリンと動物インスリンとの類似性、および過去のヒト糖尿病患者における動物インスリンの利用を考慮し、インスリン配列中の他のわずかな修飾、特に「保存的」置換と考えられるこれらの置換が導入されるとも想定される。例えば、本発明から離れずに、同様の側鎖を持つアミノ酸グループ内でアミノ酸のさらなる置換が行われることもある。これには、アラニン(AlaまたはA)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、イソロイシン(IleまたはI)、プロリン(ProまたはP)、トリプトファン(TrpまたはW)、フェニルアラニン(PheまたはF)およびメチオニン(MetまたはM)などの中性疎水性アミノ酸が含まれる。同様に、中性極性アミノ酸はグリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、チロシン(TyrまたはY)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GluまたはQ)、およびアスパラギン(AsnまたはN)の群内で互いに置換される可能性がある。塩基性アミノ酸はリジン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)、およびヒスチジン(HisまたはH)を含むと考えられる。酸性アミノ酸はアスパラギン酸(AspまたはD)およびグルタミン酸(GluまたはE)である。
比較のため、配列ID番号1として、ヒトプロインスリンのアミノ酸配列を示す。配列ID番号2としてヒトインスリンA鎖のアミノ酸配列を示す。比較のため、配列ID番号3としてヒトインスリンB鎖のアミノ酸配列を示す。
配列ID番号1(プロインスリン)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Arg−Arg−Glu−Ala−Glu−Asp−Leu−Gln−Val−Gly−Gln−Val−Glu−Leu−Gly−Gly−Gly−Pro−Gly−Ala−Gly−Ser−Leu−Gln−Pro−Leu−Ala−Leu−Glu−Gly−Ser−Leu−Gln−Lys−Arg−Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
配列ID番号2(A鎖)
Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
配列ID番号3(B鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr
本発明のインスリン類似体は天然型インスリンと同様のインスリン受容体親和性を有するが、1型IGF受容体に対する親和性は低下していると想定される。インスリンまたはインスリン類似体の活性は、以下に本明細書でより詳細に説明するとおり、受容体結合アッセイにより決定することができる。相対活性は、競合的置換アッセイの曲線を当てはめることで得られるとおり、ホルモン−受容体解離定数(Kd)に関して、または放射活性物質で標識したヒトインスリン(125I標識インスリンなど)または放射活性物質で標識した高親和性インスリン類似体など、特異的に結合する標識ヒトインスリンの50パーセントを移動するために必要な非標識インスリンまたはインスリン類似体の濃度であるED50値に関して定義することができる。代わりに、活性は単純に通常のインスリンの割合として表すことができる。インスリン様成長因子受容体に対する親和性は、測定されるIGF−1Rとの置換と同じ方法で測定することもできる。特に、インスリン類似体は通常のインスリンの25、50、110、120、130、140、150、または200パーセント以上など、インスリンの20〜200パーセントの活性を有するが、IGF−1Rに対する親和性は、通常のインスリンの10、20、30、または50パーセントなど、通常のインスリンの50パーセント以下であることが望ましい。クリアランスが遅いため、in vitro受容体結合活性が20%の低さであるとしても、インスリン類似体はまだ糖尿病治療に有用である可能性がある。
インスリン類似体の合成。ジチオスレイトール(7mg)存在下、0.1Mグリシン緩衝液中(pH 10.6、10ml)で、A鎖(41mg)およびB鎖類似体(21mg)のSスルホン化誘導体の相互作用により鎖を組み合わせた。各組み合わせの混合物のCM−52セスロースクロマトグラフィーにより、遊離B鎖が混入したタンパク質の塩酸塩を一部単離することができる。最終的な精製は、逆相HPLCにより達成される。[HisA4,HisA8]−インスリンの予想される分子量は、MALDI質量分析により確認された。最終的な収率(6.1mg)は、野生型インスリンの制御合成で得られた収率と同等であった。[HisA4,HisA8]−DKP−インスリンの対応する収率は8.8mgであった。
等電点電気泳動。天然の状態でのインスリンおよびインスリン類似体のpI値は、pH 3〜10のプレキャストIEFゲルを用い、IEFゲル電気泳動により測定した(125×125mm、300μm、SERVALYT(登録商標)Precotes(登録商標)、SERVA Electrophoresis GmbH(ハイデルベルク)製、Crescent Chemical Co.(米国ニューヨーク州Hauppauge)より入手)。製造業者のプロトコールによれば、Precotes(登録商標)は水平型IEF装置であるMultiphor II(Pharmacia Biotech)に構成する。この装置は、予め循環型水浴(Brinkman)を用いて4℃に冷却してから、熱交換効率を上げるため、PRECOTE IEFゲルは軽油でコーティングした電気泳動ベッドに入れた。前記ゲルは、ろ紙の芯を用い、ゲルの両端をAnode Fluid pH3およびCathode Fluid pH 10(いずれもSERVA)で湿らせて電極に接続した。サンプルをローディングする前に、高電源供給(LKBモデル2197)を用いて30分間、200ボルトの初期電圧設定および500ボルトの最終設定で前記ゲルをプレフォーカスした。サンプルとIEFの標準品をローディングした後(5〜10μL、ローディングするタンパク質濃度は5〜10μg)、等電点電気泳動法は500〜2000ボルトで2時間、または最終電圧の2000ボルトに達するまで行い、この後さらに15分間電気泳動を続けた。IEFの後、SERVAマニュアルのプロトコールに従い、前記ゲルを20分間20%トリクロロ酢酸200mlで固定し、脱イオン水200mlで1分間洗い流し、Serva Violet 17溶液で染色し、86%リン酸で脱染した。使用したIEF標準タンパク質(SERVA製)は以下のとおりであり、それぞれのpI値を括弧に示す:ウマ心臓チトクロムC(10.7)、ウシ膵臓リボヌクレアーゼA(9.5)、レンズマメレクチン(8.3、8.0、7.8)、ウマ筋肉ミオグロビン(7.4、6.9)、ウシ赤血球炭酸脱水酵素(6.0)、牛乳β−ラクトグロビン(5.3、5.2)、大豆トリプシンインヒビター(4.5)、クロカビグルコースオキシダーゼ(4.2)、クロカビアミログルコシダーゼ(3.5)。前記タンパク質サンプルのpI値は、前記IEFの泳動距離とpH勾配の線形回帰プロットを比較することにより決定した。
受容体発現プラスミド。エピトープタグを付けたIRおよびIGF−1Rの発現については、前記哺乳類発現ベクターpcDNA3.1Zeo+をInVitrogenから入手し、BamHIとXbaI制限部位の間にあるFLAG M2エピトープ(Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)のインフレーム3回繰り返し配列をコードするインフレーム・オリゴヌクレオチドカセットをサブクローニングすることで、C末端エピトープのタグを修飾した。IGF−1RおよびIRのBイソ型をコードするそれぞれのcDNAについては、すでに報告されている(Whittaker, J. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol 84, pp. 5237−5241 (1987))。部位特異的突然変異誘発による停止コドンの直前にある3’末端のインフレームC末端Gly−SerリンカーをコードするBamHI部位の導入により、修飾発現ベクターにサブクローニングするため、修飾した。
受容体cDNAの発現。トランスフェクションDNAはすでに説明したとおりに調製した。前記受容体cDNAは、ポリエチレンイミンを用いて一時的にPEAK rapid細胞に発現させた。細胞はトランスフェクション後3日で採取し、この時受容体の発現が最大となった。溶解は、0.15M NaClおよび0.1M Tris−Cl(pH 8.0)から成り、1%(v/v)Triton X−100およびプロテアーゼ阻害薬カクテル(Roche)を含む緩衝液中で達成した。溶解物はアッセイで必要になるまで−80℃で保存した。
受容体結合アッセイ。IGF−1RおよびIR−B結合アッセイは、Whittakerらがすでに説明したマイクロタイタープレート抗体捕獲法の変法により行った。抗FLAG IgG(リン酸緩衝生理食塩水中40μg/ml溶液が100μl/ウェル)を用い、マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorb)を一晩4℃でインキュベートした。洗浄およびブロッキングはすでに説明したとおりに行った。IR−BまたはIGF−1Rの全長をコードし、C末端FLAGタグが付いたcDNAを用いて一時的にトランスフェクトした293 PEAK細胞の洗剤溶解物(detergent lysates)は、コムギ胚芽凝集素(WGA)クロマトグラフィーにより部分的に精製し、受容体前駆体の溶解物を枯渇させた。次に、抗体でコーティングしたプレートにおいて、コムギ胚芽溶出物を1時間室温でインキュベートし、受容体を固定化した。結合していないタンパク質を除去するため広範に洗浄した後、説明したとおり、標識インスリントレーサー(125I−[TyrA14]−インスリン)または標識IGF−Iトレーサー(125I−Tyr31−IGF−I)と非標識インスリン類似体を用いた競合的結合アッセイを行った。アッセイの同じセットでコントロールリガンドとしてインスリンまたはIGF−I受容体を用い、すべてのインスリン類似体をアッセイした。相同競合的アッセイの結合データは2部位連続モデルを用いた非線形回帰分析により分析し、インスリンおよびIGF−Iの解離定数を求めた。異種競合的実験の結合データはWangの方法により分析したが、この方法では、正確な数学的表現を用いて2つの異なるリガンドの受容体への競合的結合を説明する。
当該分野で周知のインスリン類似体に関する代表的な結合研究を表1にまとめている。IR(イソ型B)に対するインスリンの親和性はIGF−1Rに対するIGF−Iの親和性と同等であるため(それぞれの場合でKdは約0.04nM)、カラム4に示すとおり、IRとIGF−1Rそれぞれの%親和性(カラム2および3)の比から、前記インスリン類似体の絶対的特異性の推定が示される。ヒトインスリンの特異性(列1)に対して正規化すると、相対的特異性の推定が得られる。相対的特異性が1以上(1未満)であると、受容体結合の厳密性が上昇(低下)したことが示される。このアッセイでは、AspB10−インスリンのIGF−1Rに対する親和性が上昇したことが示されるが、IRに対する親和性はより顕著に上昇しているため、相対的特異性は1以上である。インスリングラルギン(ランタス(登録商標))にはAsnA21→Glyの置換とB鎖の2残基の伸長(ArgB31およびArgB32)が含まれ、これにより、IGF−1Rに対する絶対的親和性が上昇、IRに対する絶対的親和性が低下し、受容体結合の相対的厳密性が低下したことが示される。本発明のインスリン類似体は反対の性質を示し、IGF−1Rに対する絶対的親和性が低下し、受容体結合の相対的厳密性が上昇する。
Figure 2013520175
A鎖アミノ酸置換の新規組み合わせを含むインスリンのA鎖類似体は、変異型A鎖の化学的全合成によって作成した。野生型B鎖は酸化的亜硫酸分解によりヒトインスリンの市販製剤から入手し、DKP B鎖は同様に化学的全合成により作成した。各ケースのインスリン類似体はインスリン鎖を組み合わせて入手し、その後クロマトグラフィー精製を行った。各ケースの分子量予測値を質量分析により確認した。
A4およびA8の位置に1組のヒスチジン置換を含み、AsnA21のGlyによる置換があるインスリン類似体とAsnA21の置換がないインスリン類似体を合成し、野生型ヒトB鎖(配列ID番号3)との関連で配列ID番号4として示す。ヒトインスリンとこれらの類似体の特性を比較すると、A1、A8の置換がIGF−1Rに対する類似体の親和性を低下させ、IRとIGF−1Rに対する親和性の比を増加させる一般的効果が示される(表2)。
配列ID番号4(A4およびA8の1組のヒスチジン置換)
Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Xaa
Xaa=Asn,Gly,Ala,Ser,Thr
Figure 2013520175
配列ID番号5または6および20〜21のA鎖ポリペプチド配列を有するインスリン類似体は、野生型インスリンB鎖(配列ID番号3)またはインスリングラルギンなどのインスリン類似体と共に同様に調整した。亜鉛イオンの非存在下、(無亜鉛ヒトインスリンに認められるベースライン値の5.6から)等電点の値が6.6に上方シフトすることは、等電点ゲル電気泳動により確認した。この目的を達成するため、研究ではpH 3〜10のプレキャストIEFゲル(125×125mm、300μm、SERVALYT(登録商標)Precotes(登録商標)、SERVA Electrophoresis GmbH(ハイデルベルク)製、Crescent Chemical Co.(米国ニューヨーク州Hauppauge)より入手)を利用した。製造業者のプロトコールによれば、Precotes(登録商標)は水平型IEF装置であるMultiphor II(Pharmacia Biotech)に構成する。この装置は、予め循環型水浴(Brinkman)を用いて4℃に冷却してから、熱交換効率を上げるため、PRECOTE IEFゲルを軽油でコーティングした電気泳動ベッドに入れた。前記ゲルは、ろ紙の芯を用い、ゲルの両端をAnode Fluid pH 3およびCathode Fluid pH 10 (いずれもSERVA)で湿らせて電極に接続した。サンプルをローディングする前に、高電源供給(LKBモデル2197)を用いて30分間、200ボルトの初期電圧設定および500ボルトの最終設定で前記ゲルをプレフォーカスした。サンプルとIEFの標準品をローディングした後(5〜10μL、ローディングするタンパク質濃度は5〜10μg)、等電点電気泳動法は500〜2000ボルトで2時間、または最終電圧の2000ボルトに達するまで行い、この後さらに15分間電気泳動を続けた。IEFの後、SERVAマニュアルのプロトコールに従い、前記ゲルを20分間20%トリクロロ酢酸200mlで固定し、脱イオン水200mlで1分間洗い流し、Serva Violet 17溶液で染色し、86%リン酸で脱染した。使用したIEF標準タンパク質(SERVA製)は以下のとおりであり、それぞれのpI値を括弧に示す:ウマ心臓チトクロムC(10.7)、ウシ膵臓リボヌクレアーゼA(9.5)、レンズマメレクチン(8.3、8.0、7.8)、ウマ筋肉ミオグロビン(7.4、6.9)、ウシ赤血球炭酸脱水酵素(6.0)、牛乳β−ラクトグロビン(5.3、5.2)、大豆トリプシンインヒビター(4.5)、クロカビグルコースオキシダーゼ(4.2)、クロカビアミログルコシダーゼ(3.5)。ヒトインスリンまたは本発明のインスリン類似体のpI値は、前記IEF標準品の泳動距離とpH勾配の線形回帰プロットと比較することにより決定した。
配列ID番号5(HisA4,HisA8置換)
Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
配列ID番号6(HisA4,HisA8,GlyA21置換)
Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Gly
配列ID番号7(HisB1 B鎖)
His−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr
受容体結合アッセイ―相対活性は、野生型および変異型ホルモン―受容体複合体に関する解離定数の比として定義する。データは非特異的結合(1mMヒトインスリン存在下、関連する膜に残った放射能量)について補正した。すべてのアッセイについて、競合するリガンドがない状態で結合したトレーサーの割合は、リガンドを枯渇させた人工物を回避するため、15%未満とした。単離したインスリンハロ受容体(イソ型B)に対するインスリン類似体の相対的親和性は、当該分野で周知のマイクロタイタープレート抗体捕獲法により検討した。マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorb)は、AU5 IgG(リン酸緩衝生理食塩水中、40mg/mlを100μl/ウェル)を用いて4℃で一晩インキュベートした。結合データは2部位連続モデルにより分析した。IGF I型受容体を用いた対応するマイクロタイタープレート抗体アッセイを利用し、この相同的受容体への交差結合を評価した。
齧歯類のアッセイ―オスLewisラット(平均体重約300g)は、ストレプトゾトシンにより糖尿病にした。皮下注射後の血糖濃度に対するインスリン類似体の作用は、臨床用血糖測定器(Hypoguard Advance Micro−Drawメーター)を用い、野生型インスリンまたは緩衝液のみ(グリセリン16mg、メタクレゾール1.6mg、フェノール0.65mg、およびリン酸ナトリウム3.8mg(pH7.4);Lilly希釈剤)との関連で評価した。野生型インスリンおよび[HisA4,HisA8]−インスリンは、上述の緩衝液において無亜鉛で作られた。また、[HisA4,HisA8]−インスリンおよびインスリングラルギンは、5.2:1の比のZnCl:インスリン単量体、25mMメタクレゾール、および185mMグリセロールを含む希釈HC(pH4)に溶解した。ラットには、ラット1匹(野生型インスリンでは、これは2IU/kg体重に相当)につき3.44nmolesのインスリンまたはインスリン類似体(約12〜13.7nmoles)を用い、100μlの緩衝液中、時間t=0で皮下注射した。中性の無亜鉛製剤については、時間0および90分まで10分ごとにクリップを止めた尾の先端から採血した。酸性亜鉛製剤については、時間0、1、2、4、6、10.8、および24時間で採血した。
[HisA4,HisA8]−インスリンの結晶構造は以下に説明するとおり決定し、1六量体あたりの亜鉛イオン数を計測、視覚化し、A4およびA8の位置での1組のヒスチジン置換が結晶格子中で六量体間の界面亜鉛イオンを結合させるか否かを検討した。亜鉛イオンおよびフェノール存在下、結晶を増殖させ、T 六量体を生成した。前記構造は解像度1.9Åで分子置換により得られた(表3)。類似体の六量体会合様式(図2d)は、野生型インスリン(図2c)と同一である。TおよびRプロトマーのそれぞれの立体配座は、野生型インスリンと基本的に同一である。提案された受容体結合表面では、摂動の伝達は起こらない。
野生型および変異型六量体は、それぞれ2つの軸上Znイオンを含み、TおよびR 三量体に1つずつ含まれる(図2c、2dでは、中心の球が重なっている)。各部位の配位は、三量体が関連したHisB10側鎖と歪んだ四面体構造を介する(図2c、dの六量体の中心の薄灰色)。前記R 三量体では、第4リガンドが塩化物イオンであり、一方T三量体では、この部位は(R 三量体よりも露出している)、塩化物イオンまたは結合した水イオンが部分的に占有している。これらの特徴は野生型構造と一致している。同様の条件で成長した野生型結晶でも観察されるとおり、前記R 三量体は3つの結合フェノール分子を含む(図示せず)。したがって、前記A4およびA8の置換は、受容体結合に対するインスリン再編成の古典的モデルであるTR転位を阻害しない。
前記変異型T 六量体には、T状態の表面でさらに3つの三量体関連Znイオンが含まれる(図2bおよび2dにおける赤紫色の球)。これらの新規Znイオンには、界面部位のHisA4およびHisA8が部分的に配位している。末梢Zn結合部位の典型的な電子密度は、歪んだ4面体の位置を定義する(図2e)。配位は塩化物イオン、および隣接する六量体のRプロトマーに属する「ステープル」HisA4側鎖によって完了する(図2eの標識A4’および図3bの茶色矢印)。隣接する六量体の相対するTおよびR面の図は、図3cに示している(図3bに示した方向から90°回転)。前記塩化物イオンの結合は、Rプロモーターに結合した3つの水分子(図3dの立体ペアの小さな球)のネットワークによっても安定化し、RのHisA8は亜鉛結合部位から移動している。そのため、3つの非古典的Znイオンは格子中の隣接する六量体のTおよびRf3三量体を結合し(大きな球、図3bおよびd)、一部は野生型の界面で通常結合する水分子を移動する(図3aの小さな球)。N−Zn2+の結合距離および角度は、軸上金属イオン結合部位と同様である。HisA4およびHisA8の側鎖の立体配座はTプロトマーとRプロトマーでは異なる。
IRおよびIGF−1Rへのホルモンの結合研究は、相対的親和性および受容体結合の選択性を評価するために行われた(図3eおよび表2)。リガンドは無亜鉛単量体として特徴付けられた。ヒトインスリンのIRおよびIGF−IRへの結合と比較し(それぞれ、図3eの×印でデータポイントを記した実線と点線)、インスリングラルギン(四角印でデータポイントを記した実線と点線)は、IRへの親和性が2倍低下し、IGF−1Rへの親和性が3倍上昇していることが示される。一方、[HisA4,HisA8]−インスリンはIRに対して天然型同様の親和性を示したが(図3eの逆三角印の実線)、IGF−1Rへの親和性は6倍低下した(逆三角印の点線、右へシフトしている)。そのため、インスリングラルギンの受容体結合選択性は約6倍低下しているが、[HisA4,HisA8]−インスリンは7.5(±2.5)倍上昇している。これは、インスリングラルギンと比較し、少なくとも30倍改善したことを示している。
[HisA4,HisA8]−インスリンの力価および作用持続時間は、インスリングラルギンと比較し、ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットで検討した(図3f)。齧歯類における長時間作用型インスリン類似体による血糖管理(5〜10時間)はヒト(18〜24時間)よりも短く、これはおそらく皮下デポー剤のサイズが小さいためである。[HisA4,HisA8]−インスリンおよびインスリングラルギンは、(ランタス(登録商標)同様)希釈HCl(pH 4.0)に溶解し、Zn2+:インスリンのモル比は5.2:1であった。血糖管理の時間経過および範囲は2つの類似体を注射した場合で同様であった(図3fの点線および点線/波線)。速効性の管理は、Lilly希釈液の無亜鉛ヒトインスリンによって提供された(図3fでは、約3時間で線が終わっている)。ラットは夜間しか摂食しないため、昼間のインスリン注入の効果は昼間絶食であることの影響を受け、希釈液のみを注入して管理を行った(図3fの波線)。無亜鉛中性Lilly希釈液において[HisA4,HisA8]−インスリンの対照研究も行い、その時間経過は野生型インスリンの管理と同様であった(図示せず)。無亜鉛グラルギンはやや溶けにくいため、中性pHでは検討しなかった。
X線結晶学−1:1.7の比のZn2+とタンパク質単量体および3.5:1の比のフェノールとタンパク質単量体存在下、Tris−HCl緩衝液中で懸滴蒸気拡散により結晶を成長させた。液滴の構成は、1mlのタンパク質溶液(0.02M HCl中8mg/ml)と1mlの貯留液(0.38M Tris−HCl、0.1Mクエン酸ナトリウム、9%アセトン、4.83mMフェノール、および0.8mM酢酸亜鉛、pH 8.4)を混合したものであった。各液滴は1mlの貯留液に懸濁した。結晶は室温で2週間後に得られた。データはレーヨンループに取り付けた単一の結晶から収集し、100゜Kに急速冷凍した。バークレー国立研究所において、CCD検出装置を用い、シンクロトロン放射で32.05〜1.90Åの反射を測定した。データはDTREKプログラムで処理した。前記結晶は空間群R3に属し、単位格子のパラメータはa=b=78.09Å、c=36.40Å、α=β=90Å、γ=120Åである。前記構造は、CNSを利用した分子置換により決定した。したがって、天然型TR二量体を用いてモデルを得た(水分子、亜鉛および塩化物イオンをすべて除いた後のタンパク質データバンク(Protein Databank:PDB)の識別コード1RWE)。15.0〜4.0Åの解像度でデータを解析後、回転関数の最適な解の座標を用い、並進関数検索を行った。全体の異方性温度因子およびバルク溶媒の補正により、CNSを利用した剛体の微調整では、解像度19.2〜3.0ÅのデータでRおよびRfreeの値はそれぞれ0.325および0.344となった。微調整のサイクル間では、2F−FおよびF−Fマップは解像度3.0Åまでのデータを用いて計算し、亜鉛および塩化物イオンとフェノール分子をプログラムOにより前記構造に構築した(Jones et al., Acta Crystallogr. A., Vol. 4, pp. 110−119 (1991))。水分子はDDQプログラムにより計算および確認した(Focco Van Akker and Wim Hol, Acta Cryst. 1999, D55, 206−218)。その配置はPROCHECKにより連続的にモニターし(Laskowski et al., J. Appl. Crystallogr., Vol. 26, pp. 283−291 (1993))、微調整が進むと亜鉛イオンおよび水分子は異なるマップに構築された。(特に、各単量体のB鎖N末端の最初の8残基に関する)omit mapの計算、さらに微調整はCNSを利用して行い、最大尤度でのねじれ角の動態および共役勾配の微調整を行った。
Figure 2013520175
前記インスリン類似体のpH依存性の溶解性は、DiMarchiらの方法の変法により評価した(Kohn,W.D.,Micanovic,R.,Myers,S.L.,Vick,A.M.,Kahl,S.D.,Zhang,L.,Strifler,B.A.,Li,S.,Shang,J.,Beals,J.M.,Mayer,J.P.,and DiMarchi,R.D.Peptides 28,935−48(2007))。手短に言えば、野生型ヒトインスリン、インスリングラルギン、または[HisA4,HisA8]−インスリンはpH 4.0の希釈HClを含む緩衝化されていない溶液中、0.60mMで作成し、溶液の組成は医薬製剤のランタス(Sanofi−Aventis)に採用されているものと同様であり、0.52mM ZnCl、20mg/mlの85%vol/volグリセロール溶液(最終濃度185mM)、および抗菌性保存剤として2.7mg/mlメタクレゾール(25mM)を含んでいた。3つのタンパク質は、それぞれこのpH 4.0の溶液では0.60mMを超える溶解性を示す。同一の一定量(10ml)を取り除き、様々なpH値(5.0〜9.0の範囲)で緩衝液中に50倍希釈し、最終容積を500mlとした。それぞれのpH値を5.0、6.0、7.4、8.0、8.5、および9.0に再調整した。前記希釈液は10mM Tris−HClおよび140mM NaClで構成され、pH値は希釈HClまたはNaOHで調整した。次に、複数のサンプルを20回反転させて混合し、微小遠心分離で5分間、14,000rpmで遠心分離した。次に、上清200mlを各試験管から2回取り除き、分析用逆相HPLC(C4カラム、25cm×0.46cm)に注入し、0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの溶出勾配をつけた。各ケースにおいて、単一の溶出ピークが観察され、製造業者のソフトウェア(Waters,Inc.)を用い、積分によりその面積を定量化した。前記野生型インスリンのpH7.4〜9.0での値では、溶解性と関係のない消失をコントロールでき、回復率(%)は典型的には85〜90%の範囲であった。DiMarchiらの結果と一致し、pH7.4におけるインスリングラルギンの溶解性は1〜2mMであることが分かった。この限定的な溶解性は、亜鉛対類似体のモル比5.2:6(すなわち、六量体1個につき亜鉛5.2個)と2.2:6(六量体1個につき亜鉛2.2個)で同様であり、グラルギン六量体において亜鉛イオンが軸上にあることの役割と一致していた。pH 7.4における[HisA4,HisA8]−インスリンの溶解性は、六量体1個につき亜鉛イオン5.2個のモル比で1〜2mMであることも分かった。
本発明の製剤は中間型インスリン類似体を提供し、これにはリスプロインスリン(ヒューマログ(登録商標)のLysB2およびProB29も含まれ、亜鉛イオンおよびフェノールとともにpH 4で透明な溶液として容易に製剤化される。A4およびA8の位置にリスプロおよびヒスチジン置換を含むインスリン類似体(HisA4,A8 KP−ins)および野生型ヒトインスリン(HI)の代表的な結合研究は、ヒトインスリン受容体イソ型A(HIRA)、ヒトインスリン受容体イソ型B(HIRA)、およびインスリン様成長因子受容体(IGF−1R)との関連で、表4に示している。表4に示したとおり、HisA4,A8 KP−insはHIRAおよびHIRBに対する親和性がHIと同等であるが、HIと比較し、IGF−1Rに対する親和性は大きく低下している(4倍以上低下)。
Figure 2013520175
図4は、図3fに列挙した条件下での、糖尿病雄ラットの血糖値の時間経過を示している。[HisA4,HisA8]−KPインスリン、リスプロインスリン、およびインスリングラルギンは(ランタス(登録商標)同様)希釈HCl(pH 4.0)に溶解し、Zn2+:インスリンのモル比は5.2:1であった。[HisA4,HisA8]−KPインスリンの血糖管理の時間経過は、インスリングラルギンは(ランタス(登録商標))よりも短いが、リスプロインスリン(ヒューマログ(登録商標))よりも長く、この製剤が中間型インスリン類似体製剤となることを示している。さらに、HisA4,A8 KP−insの結晶は、上述の条件と同様の条件下で得られた。理論に縛られることは望まないが、リスプロ置換の六量体不安定化効果は[HisA4,HisA8]置換の六量体複合体安定化効果とは異なり、少なくとも部分的に相殺され、中間型類似体になると考えられる。
[HisA4,HisA8]インスリン類似体にはAspB28などの他の置換も含まれ、他の中間型インスリン類似体製剤が得られることも想定される。タンパク質構造の表面にヒスチジン側鎖など、1組の亜鉛配位アミノ酸側鎖を組み込む方法は、他のタンパク質でも利用され(図5)、インスリン同様、タンパク質六量体などの高次構造を安定化できることも、さらに想定される。より詳しくは、我々は、αへリックスを含むタンパク質における1組のヒスチジン置換によってできた側鎖は、他のポリマーの相補的側鎖と配位し、マルチポリマー複合体を形成することができると予想した。治療に有用なαへリックスを含むタンパク質の例は、エリスロポエチンおよび哺乳類の成長ホルモンである。
前述の開示に基づき、本明細書で提供されるとおりA鎖置換の組み合わせを含むインスリン類似体は、インスリン受容体のヒトインスリンに対する親和性を少なくとも20%保持しながら、亜鉛イオン存在下で製剤化するとインスリン作用の持続時間が長くなり、同時に、I型IGF受容体に対する絶対的および相対的親和性が低下を示すことは、今や明らかであろう。
配列
配列ID番号1(プロインスリン)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Arg−Arg−Glu−Ala−Glu−Asp−Leu−Gln−Val−Gly−Gln−Val−Glu−Leu−Gly−Gly−Gly−Pro−Gly−Ala−Gly−Ser−Leu−Gln−Pro−Leu−Ala−Leu−Glu−Gly−Ser−Leu−Gln−Lys−Arg−Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
配列ID番号2(A鎖)
Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
配列ID番号3(B鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr
配列ID番号4(A4およびA8に1組のヒスチジン置換)
Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Xaa
Xaa= Asn,Gly,Ala,Ser,Thr
配列ID番号5(HisA4,HisA8置換)
Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
配列ID番号6(HisA4,HisA8,GlyA21置換)
Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Gly
配列ID番号7(HisB1 B鎖)
His−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr
配列ID番号8(リスプロ−B鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Lys−Pro−Thr
配列ID番号9(アスパルト−B鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Asp−Lys−Thr
配列ID番号10(AspB10−B鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−Asp−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr
配列ID番号11(DKP B鎖配列)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−Asp−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Lys−Pro−Thr
配列ID番号12(グラルギンB鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Arg−Arg
配列ID番号13(グラルギンA鎖)
Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Gly
配列ID番号14(ArgA0,HisA4,HisA8,GlyA21置換)
Arg−Gly−Ile−Val−His−Gln−Cys−Cys−His−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Gly

Claims (30)

  1. 患者を治療する方法であって、生理学的に有効な量のインスリン類似体または生理学的に許容できるその塩を含む医薬製剤を患者に投与する工程を有し、前記インスリン類似体または生理学的に許容できるその塩は、A4およびA8に1組のヒスチジン置換と、選択的にグリシン、アラニン、セリン、およびトレオニンから成る群から選択されるA21の置換とを有し、さらに6個のインスリン類似体分子につき少なくとも約4個の亜鉛イオンの相対濃度で亜鉛イオンを有するものである、方法。
  2. 請求項1記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容できるその塩は、pH6.5〜7.5において微結晶インスリン懸濁液である、方法。
  3. 請求項1記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容できるその塩は、pH3.5〜5において透明な緩衝化されていない溶液として製剤化され、インスリン類似体分子6個につき4〜6個の亜鉛イオンの相対濃度で亜鉛イオンと、フェノールおよびメタクレゾールから選択される保存剤と、添加物とを含むものである、方法。
  4. 請求項1記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、インスリン類似体分子6個につき4〜6個の亜鉛イオンを含むように修飾された微結晶インスリン懸濁液として製剤化されるものである、方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A21の位置でグリシン置換による修飾を受けているものである、方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A21の位置でアラニン、セリン、またはトレオニン置換による修飾を受けているものである、方法。
  7. 請求項6記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、B鎖伸長による修飾を受け、1または2つのC末端塩基性残基を含むものである、方法。
  8. 請求項6記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、B鎖伸長による修飾を受け、少なくとも1つのN末端塩基性残基を含むものである、方法。
  9. 請求項6記載の方法において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A鎖伸長による修飾を受け、少なくとも1つのN末端塩基性残基を含むものである、方法。
  10. インスリンA鎖ポリペプチドをコードする核酸であって、前記A鎖ポリペプチドは配列ID番号4を有するものである、核酸。
  11. 請求項10記載の核酸配列を有する発現ベクター。
  12. 請求項10記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞。
  13. 医薬製剤であって、インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩を有し、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、インスリン類似体分子6個につき少なくとも約4個の亜鉛イオンを含む薬学的に許容される緩衝液中に、A4およびA8の1組のヒスチジン置換と、選択的にグリシン、アラニン、セリン、およびトレオニンから成る群から選択されるA21の置換とを含むインスリンA鎖配列を含み、前記製剤の形態が長時間作用型亜鉛依存性皮下デポー剤である、医薬製剤。
  14. 請求項13記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、pH6.5〜7.5において微結晶インスリン懸濁液として製剤化されるものである、医薬製剤。
  15. 請求項13記載の医薬製剤であって、この医薬製剤は、pH3.5〜5において透明な緩衝化されていない溶液として製剤化され、さらにフェノールおよびメタクレゾールから選択される保存剤と、添加物とを有するものである、医薬製剤。
  16. 請求項13記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、インスリン類似体分子6個につき4〜6個の亜鉛イオンを含むように修飾された微結晶性インスリン懸濁液として製剤化されるものである、医薬製剤。
  17. 請求項14記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A21の位置でGly置換による修飾を受けているものである、医薬製剤。
  18. 請求項15記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A21の位置でGly置換による修飾を受けているものである、医薬製剤。
  19. 請求項16記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A21の位置でGly置換による修飾を受けているものである、医薬製剤。
  20. 請求項14、15、または16のいずれか1つに記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A21の位置でAla、Ser、またはThr置換による修飾を受けているものである、医薬製剤。
  21. 請求項13、17、または20のいずれか1つに記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、B鎖伸長による修飾を受け、1または2つのC末端塩基性残基を含むものである、医薬製剤。
  22. 請求項13、17、または20のいずれか1つに記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、B鎖伸長による修飾を受け、1または2つのN末端塩基性残基を含むものである、医薬製剤。
  23. 請求項13、17、または20のいずれか1つに記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、A鎖伸長による修飾を受け、1または2つのN末端塩基性残基を含むものである、医薬製剤。
  24. インスリン類似体の結晶製剤であって、前記インスリン類似体は、インスリン類似体分子6個につき少なくとも約4個の亜鉛イオンを含む薬学的に許容される緩衝液中に、A4およびA8に1組のヒスチジン置換と、選択的にA21の置換とを含むインスリンA鎖配列を含み、前記製剤は長時間作用型亜鉛依存性皮下デポー剤を形成し、前記インスリン類似体はpH約6〜7.4で結晶性懸濁液を形成するものである、結晶製剤。
  25. 請求項1記載の方法において、前記インスリン類似体は皮下注射により長時間作用型亜鉛依存性皮下デポー剤を形成するものである、方法。
  26. 請求項13、17、または20のいずれか1つに記載の医薬製剤において、前記製剤は皮下注射により長時間作用型亜鉛依存性皮下デポー剤を形成するものである、医薬製剤。
  27. 請求項13、17、または20のいずれか1つに記載の医薬製剤において、前記インスリン類似体またはその生理学的に許容されるその塩は、無亜鉛製剤において、同種の野生型インスリンと比較してI型インスリン様成長因子受容体に対する親和性が低く、且つ同種のインスリン受容体に対する野生型インスリンの少なくとも20%の親和性を示すものである、医薬製剤。
  28. 医薬製剤であって、インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩を有し、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、インスリン類似体分子6個につき少なくとも約4個亜鉛イオンを含む薬学的に許容される緩衝液中に、A4およびA8の1組のヒスチジン置換と、B28のリジンまたはアスパラギン酸置換と、選択的にB29のプロリン置換と、選択的にグリシン、アラニン、セリン、およびトレオニンから成る群から選択されるA21の置換とを含むインスリンA鎖配列を含み、前記製剤の形態が長時間作用型亜鉛依存性皮下デポー剤である、医薬製剤。
  29. 医薬製剤であって、インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩を有し、前記インスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、インスリン類似体分子6個につき少なくとも約4個亜鉛イオンを含む薬学的に許容される緩衝液中に、A4およびA8の1組のヒスチジン置換と、B28のシステイン、リジン、またはアスパラギン酸以外のアミノ酸置換と、選択的にB29のプロリン置換と、選択的にグリシン、アラニン、セリン、およびトレオニンから成る群から選択されるA21の置換とを含むインスリンA鎖配列を含み、前記製剤の形態が中間型亜鉛依存性皮下デポー剤である、医薬製剤。
  30. 医薬製剤であって、2若しくはそれ以上のインスリン類似体または生理学的に許容されるその塩を有し、少なくとも1つのインスリン類似体または生理学的に許容されるその塩は、インスリン類似体分子6個につき少なくとも約4個亜鉛イオンを含む薬学的に許容される緩衝液中に、A4およびA8の1組のヒスチジン置換を含むインスリンA鎖配列を含み、前記製剤が長時間作用型、中間型、および/または短時間作用型の混合型亜鉛依存性皮下デポー剤を提供するものである、医薬製剤。
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