JP2013517329A - 自己免疫疾患を処置するための併用治療 - Google Patents

自己免疫疾患を処置するための併用治療 Download PDF

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Abstract

本発明は、B細胞特異的作用物質と、自己免疫疾患に関連する自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質との併用による自己免疫疾患の処置に関する。より具体的には、本発明は、抗体などのB細胞特異的作用物質と、自己免疫疾患に関連する自己抗原をコードするDNAプラスミドベクターなどのDNA抗原特異的治療物質との併用を提供する。該物質およびそれらの組み合わせを含む、薬学的組成物、およびキットなどの製造物もまた提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2010年1月20日に提出された米国特許出願第61/296,839号の恩典を主張する。
発明の分野
本発明は、免疫抑制剤または免疫調節剤、たとえばB細胞を(たとえば、それらの成長を停止させる、それらを破壊する、それらを欠失させる、またはそれらの分化を変化させることによって)標的とする作用物質と自己免疫疾患に関連する自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質との併用による自己免疫疾患の処置に関する。より具体的には、本発明は、たとえば抗体などの免疫抑制剤または免疫調節剤と、自己免疫疾患に関連する自己抗原をコードするDNAプラスミドベクターなどのDNA抗原特異的治療物質との併用を提供する。該物質およびそれらの組み合わせを含む、薬学的組成物、およびキットなどの製造物もまた提供される。
背景
自己免疫疾患は、体の健康な細胞および/または組織に誤って向けられるようになる適応免疫によって引き起こされる疾患である。自己免疫疾患は、米国の人口の3%に罹患し、おそらく先進諸国においても人口の類似の百分率に罹患する(Jacobson et al., Clin Immunol Immunopathol, 84:223-43 (1997))。自己免疫疾患は、自己タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、および/または他の自己分子を誤って標的とするTリンパ球およびBリンパ球を特徴として、体内の臓器、組織、または細胞タイプ(たとえば、膵臓、脳、甲状腺、または消化管)の損傷および/または機能不全を引き起こして、疾患の臨床症状を発現させる(Marrack et al., Nat Med, 7:899-905 (2001))。自己免疫疾患は、特異的組織に罹患する疾患のみならず多数の組織に罹患することができる疾患を含む。これは、いくつかの疾患に関して、部分的に、自己免疫応答が特定の組織に限定される抗原に向けられるのか、または体に広く分布する抗原に向けられるのかに依存しうる。組織特異的自己免疫の特徴的特色は、1つの組織または個々の細胞タイプを選択的に標的とすることである。それにもかかわらず、汎在する自己タンパク質を標的とするある自己免疫疾患はまた、特異的組織にも影響を及ぼすことができる。たとえば、多発筋炎において、自己免疫応答は、汎在するタンパク質であるヒスチジル-tRNAシンテターゼを標的とするが、主に関係する臨床症状発現は、自己免疫による筋の破壊である。
免疫系は、自己抗原に対する応答を同時に防止しながら、多様な異物病原体から哺乳動物を保護する応答を生成するように設計された非常に複雑な機序を用いる。応答するか否か(抗原特異性)を判定することに加えて、免疫系はまた、各病原体に対処するために適切なエフェクター機能を選択しなければならない(エフェクター特異性)。これらのエフェクター機能の媒介および調節において極めて重要な細胞は、CD4+ T細胞である。さらに、T細胞がその機能を媒介する主要な機序であると考えられるのは、CD4+ T細胞による特異的サイトカインの合成である。このように、CD4+ T細胞によって作られるサイトカインのタイプの特徴付けのみならず、その分泌がどのように制御されるかは、免疫応答がどのように調節されるかを理解する上で極めて重要である。
長期マウスCD4+ T細胞クローンからのサイトカイン産生の特徴付けは、10年以上前に初めて公表された(Mosmann et al., J. Immunol, 136:2348-2357 (1986))。これらの研究において、CD4+ T細胞が、2つの異なるパターンのサイトカイン産生を生じることが示され、これらの細胞はTヘルパー1(Th1)およびTヘルパー2(Th2)と呼ばれた。Th1細胞は、専らインターロイキン-2(IL-2)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、およびリンフォトキシン(LT)を産生することが見いだされたが、Th2細胞は、専らIL-4、IL-5、IL-6、およびIL-13を産生した(Cherwinski et al., J. Exp. Med., 169:1229-1244 (1987))。少し遅れて、さらなるサイトカインIL-9およびIL-10がTh2クローンから単離された(Van Snick et al., J. Exp. Med., 169:363-368 (1989); Fiorentino et al., J. Exp. Med., 170:2081-2095 (1989))。最後に、IL-3、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などのさらなるサイトカインが、Th1およびTh2細胞の両方によって分泌されることが見いだされた。
自己免疫疾患は、表1に概要される通り、体内の異なる多くの臓器および組織に罹患することができる広いスペクトルの疾患を包含する。たとえばPaul W.E. (ed. 2003) Fundamental Immunology (5th Ed.) Lippincott Williams & Wilkins; ISBN-10:0781735149, ISBN-13: 978-0781735148; Rose and Mackay (eds. 2006) The Autoimmune Diseases (4th ed.) Academic Press, ISBN-10: 0125959613, ISBN-13: 978-0125959612; Erkan, et al. (eds. 2004) The Neurologic Involvement in Systemic Autoimmune Diseases, Volume 3 (Handbook of Systemic Autoimmune Diseases) Elsevier Science, ISBN-10: 0444516514, ISBN-13: 978-0444516510; and Richter, et al. (eds. 2003) Treatment of Autoimmune Disorders, Springer, ISBN-10: 3211837728, ISBN-13:978-3211837726を参照されたい。
(表1)
Figure 2013517329
ヒトの自己免疫疾患の現行の治療には、グルココルチコイド、細胞障害剤、および最近開発された生物学的治療薬が挙げられる。一般的に、ヒトの全身性自己免疫疾患の管理は経験的であり、満足できるものではない。たいていの場合、コルチコステロイドなどの広義の免疫抑制剤が、広く多様な重度の自己免疫障害および炎症障害に用いられる。コルチコステロイドに加えて、他の免疫抑制剤が全身性自己免疫疾患の管理に用いられる。シクロホスファミドは、T-リンパ球およびB-リンパ球の両方の甚大な枯渇ならびに細胞性免疫の障害を引き起こすアルキル化剤である。シクロスポリン、タクロリムス、およびミコフェノール酸モフェチルは、T-リンパ球抑制という特異的特性を有する天然産物であり、それらはSLE、RA、ならびに限定的ではあるが脈管炎および筋炎を処置するために用いられている。メトトレキサートもまた、RAにおける「第二選択」剤として用いられ、その目標は疾患の進行を低減させることである。それはまた、多発筋炎および他の結合組織疾患にも用いられる。試みられている他のアプローチには、サイトカインの作用を遮断するまたはリンパ球を枯渇させることを意図したモノクローナル抗体が挙げられる(Fox, D. A., Am. J. Med., 99:82-88 (1995))。多発性硬化症(MS)の処置には、インターフェロン-βおよびコポリマー1が挙げられ、これらは再発率を20〜30%低減させて、疾患の進行に対してわずかな影響を及ぼすに過ぎない。MSはまた、メチルプレドニゾロン、他のステロイド、メトトレキサート、クラドリビン、およびシクロホスファミドを含む免疫抑制剤によっても処置される。現在用いられているこれらの免疫抑制剤は、MSの処置における効力はわずかである。RAの現行の治療は、メトトレキサート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、リューフロナミド(leuflonamide)、プレドニゾンなどの、免疫機能を非特異的に抑制または調整する作用物質、ならびに最近開発されたTNFαアンタゴニストであるエタネルセプトおよびインフリキシマブを用いている(Moreland et al., J Rheumatol, 28: 1431-52 (2001))。
臓器特異的自己免疫の場合、多数の異なる治療アプローチが試みられている。その抗原に対するその後の免疫応答を阻害するために、可溶性のタンパク質抗原が全身投与されている。そのような治療には、実験的自己免疫性脳脊髄炎を有する動物および多発性硬化症を有するヒトへのミエリン塩基性タンパク質、その優性ペプチド、またはミエリンタンパク質の混合物の送達(Brocke et al., Nature, 379:343-6 (1996); Critchfield et al., Science, 263: 1139-43 (1994); Weiner et al., Annu Rev Immunol, 12:809-37 (1994))、コラーゲン誘発関節炎を有する動物および関節リウマチを有するヒトへのII型コラーゲンまたはコラーゲンタンパク質の混合物の投与(Gumanovskaya et al., Immunology, 97:466-73 (1999); McKown et al., Arthritis Rheum, 42: 1204-8 (1999); Trentham et al., Science, 261: 1727-30 (1993))、自己免疫性糖尿病を有する動物およびヒトへのインスリンの送達(Pozzilli and Gisella Cavallo, Diabetes Metab Res Rev, 16:306-7 (2000))、ならびに自己免疫性ブドウ膜炎を有する動物およびヒトへのS-抗原の送達(Nussenblatt et al., Am J Ophthalmol, 123:583-92 (1997))が挙げられる。このアプローチに関連する問題は、抗原の全身注射によって誘導されるT細胞の不応答である。別のアプローチは、T細胞受容体とMHC分子に結合したペプチドとの間の特異的相互作用に基づくペプチド抗原の全身投与のための合理的治療戦略を設計する試みである。糖尿病の動物モデルにおいてペプチドアプローチを用いる1つの試験では、ペプチドに対する抗体産生の発生が起こった(Hurtenbach, U. et al., J Exp. Med, 177: 1499 (1993))。別のアプローチは、T細胞受容体(TCR)ペプチド免疫の投与である。たとえば、Vandenbark, A. A. et al., Nature, 341:541 (1989)を参照されたい。さらに別のアプローチは、ペプチドまたはタンパク質抗原の摂取による経口寛容の誘導である。たとえば、Weiner, H. L., Immmunol Today, 18:335 (1997)を参照されたい。
T1Dの場合、T1Dにおいて標的とされる抗原の1つまたは全てに対する長期の寛容を誘導することを目標として、様々な処置モダリティが調べられている。たとえば、M. von Herrath, S. Sanda, K. Herold, Nat Rev Immunol 7, 988 (Dec, 2007)およびT. Staeva-Vieira, M. Peakman, M. von Herrath, Clin Exp Immunol 148, 17 (Apr, 2007)を参照されたい。様々なモダリティを、2つのカテゴリー、すなわち抗原非特異的介入および抗原特異的介入に大まかに分類することができる。
抗原非特異的介入において、抗胸腺細胞グロブリン(ATGまたはALS)などのポリクローナル抗体、シクロスポリンおよび抗CD3などの全身性免疫調節物質は全て、多様な程度の成功を示している。ALSは、CD4+CD25+Foxp3+Tregを残しながら、またはその生成を誘導さえしながら、Teff細胞を選択的に枯渇させ、たとえばM. Lopez, M. R. Clarkson, M. Albin, M. H. Sayegh, N. Najafian, J Am Soc Nephrol 17, 2844 (Oct, 2006) and K. Minamimura, W. Gao, T. Maki, J Immunol 176, 4125 (Apr 1, 2006)を参照されたく、かつNODマウスにおける自然発生的T1Dを有効に逆転させる。たとえば、N. Ogawa, K. Minamimura, T. Kodaka, T. Maki, J Autoimmun 26, 225 (Jun, 2006) and G. Simon et al., Diabetes 57, 405 (Feb, 2008)を参照されたい。同様に、シクロスポリンによる免疫抑制は、β細胞破壊を停止させることができる。たとえば、J. L. Mahon, J. Dupre, C. R. Stiller, Ann N Y Acad Sci 696, 351 (Nov 30, 1993)を参照されたいが、保護は、薬物が存在する期間に限って持続し、β細胞抗原に対する長期の寛容は達成されない。ALSと同様に、抗CD3処置は、Tregを残しながら(M. Belghith et al., Nat Med 9, 1202 (Sep, 2003))、Teff細胞の活性化誘導細胞死とTH1細胞サブセットの選択的不活化の組み合わせ(J. A. Smith, Q. Tang, J. A. Bluestone, J Immunol 160, 4841 (May 15, 1998) and J. A. Smith, J. Y. Tso, M. R. Clark, M. S. Cole, J. A. Bluestone, J Exp Med 185, 1413 (Apr 21, 1997))を通して、マウス(Belghith, 2003 #221 ;von Herrath, 2002#92)およびヒト(B. Bisikirska, J. Colgan, J. Luban, J. A. Bluestone, K. C. Herold, J Clin Invest 115, 2904 (Oct, 2005) and K. C. Herold et al., J Clin Invest 111, 409 (Feb, 2003))においてTh1プロファイルからTh2プロファイルに向かうシフトを誘導する。最近発症したT1D患者における臨床試験は、抗CD3による処置が、治療後の有意な期間、T1D進行を停止させて、残っている内因性β細胞塊を保存する(K. C. Herold et al., Diabetes 54, 1763 (Jun, 2005))ことを示している。しかし、いくつかの例において、抗CD3 mAbは、潜在性EBV感染症の再活性化を誘導し(B. Keymeulen et al., N Engl J Med 352, 2598 (Jun 23, 2005))、薬物に対する抗体を発生させた例もあった(K. C. Herold et al., N Engl J Med 346, 1692 (May 30, 2002))。その上、抗CD3処置の効力は、長期間ではβ細胞抗原に対する寛容が失われることから非常に限定的である(L. Chatenoud, J. Primo, J. F. Bach, J Immunol 158, 2947 (Mar 15, 1997))。
抗原特異的介入において、DiaPep277(Hsp60に由来する)を用いることによって多様な効果が認められた。1つの試験において、2年間の間DiaPep277を投与すると、新たに発症したT1Dを有する患者においてインスリン分泌を維持した(I. Raz et al., Lancet 358, 1749 (Nov 24, 2001))が、この分泌の維持は全ての追跡調査では認められなかったものの、T細胞に対する効果は一貫した(Roep et al.)。同様に、マウスにインスリンまたはインスリンペプチドを投与すると、T1Dを防止することができる抗原特異的Treg細胞が生成される(N. R. Martinez et al., J Clin Invest 111, 1365 (May, 2003), D. Homann, T. Dyrberg, J. Petersen, M. B. Oldstone, M. G. von Herrath, J Immunol 163, 1833 (Aug 15, 1999), and M. G. von Herrath, T. Dyrberg, M. B. Oldstone, J Clin Invest 98, 1324 (Sep 15, 1996))。そのようなTregは、膵臓の排液リンパ節(PLN)において選択的に増殖して、自己攻撃性CD8応答を低下させることができるが(D. Homann, T. Dyrberg, J. Petersen, M. B. Oldstone, M. G. von Herrath, J Immunol 163, 1833 (Aug 15, 1999))、最近発症したT1Dを逆転させることはできない(M. Larche, D. C. Wraith, Nat Med 11, S69 (Apr, 2005))。しかし、おそらくTregのみの誘導ではヒトT1D(動物モデルの場合と同様に)を逆転させるためには不十分であることから、またはTregの誘導および維持を容易にすることができる全身性作用物質との併用治療を続行するための強固な根本的理由を提供する抗原の用量およびレジメンが間違っている可能性があることから、これまでのところ、ヒトにおけるインスリンの経口および鼻腔内投与試験は、肯定的な結果をもたらしていない(Nanto-Salonen, K. et al., Lancet 372(9651): 1746-55, 208; Skyler et al., Diabetes Care 28 (5): 1068-76, 2005)。
自己免疫におけるT細胞およびB細胞
胸腺における陽性選択および陰性選択にもかかわらず、個体は全て、末梢組織において自己抗原に対するT細胞サブセットをなおも隠し持っている(J. F. Bach, Rev Neurol (Paris) 158, 881 (Oct, 2002))。一例として、T1Dにおいて、そのような自己反応性のT細胞、およびいくつかの場合においてB細胞(H. Bour-Jordan, J. A. Bluestone, J Clin Invest 117, 3642 (Dec, 2007))は、膵臓に浸潤する(インスリン炎)。ヒトにおいて、T1Dは、島特異的自己抗体の早期出現を特徴とする(L. Yu et al., Proc Natl Acad Sci USA 97, 1701 (Feb 15, 2000))。T1DにおけるB細胞の役割は完全には解明されていないが、CD4+およびCD8+ T細胞は、島においてインスリン産生β細胞を選択的に破壊すると考えられている(M. von Herrath, D. Homann, Pediatr Diabetes 5 Suppl 2, 23 (2004))。β細胞のそのような喪失は非常にゆっくりであり、T1Dの発症は、不十分なインスリン産生を表している。T1Dにおける主要な自己抗原には、プロインスリンまたはインスリンそのもの、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、島チロシンホスファターゼ(IA-2)、および島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質が挙げられる(M. von Herrath, S. Sanda, K. Herold, Nat Rev Immunol 7, 988 (Dec, 2007))。現在の証拠は、インスリンが、マウス(M. Nakayama et al., Nature 435, 220 (May 12, 2005))およびおそらくヒト(S. Arif et al., J Clin Invest 113, 451 (Feb, 2004), P. F. Bougneres et al., Diabetes 39, 1264 (Oct, 1990), and S. C. Kent et al., Nature 435, 224 (May 12, 2005))において島細胞破壊に至る主要な抗原であることを示唆している。
従来、B細胞は、自己抗体を産生することによって、または抗原提示細胞(APC)として作用することによって自己免疫疾患を媒介する(F. S. Wong, L. Wen, Rev Diabet Stud 2, 121 (Fall, 2005))。しかし、T1Dにおいて、そのような自己抗体は、糖尿病の発症を促進または増強する可能性があるが、それらは疾患を誘導しない(F. S. Wong, L. Wen, Rev Diabet Stud 2, 121 (Fall, 2005))。最近の証拠により、B細胞がT細胞のための島APCとして機能して、細胞表面上に発現された自己抗体が、自己抗原の捕捉および提示を改善することが示唆されている(M. Falcone, J. Lee, G. Patstone, B. Yeung, N. Sarvetnick, J Immunol 161, 1163 (Aug 1, 1998), H. Noorchashm et al., J Immunol 163, 743 (Jul 15, 1999), and H. Bour-Jordan et al., J Immunol 179, 1004 (Jul 15, 2007))。
天然に存在するCD4+CD25+FoxP3+調節T細胞(Treg)は、胸腺およびリンパ節における全てのCD4+ T細胞の5〜10%を構成する。それらはGITR、OX40(CD134)、およびCTLA-4を構成的に発現する(E. M. Shevach, R. S. McHugh, C. A. Piccirillo, A. M. Thornton, Immunol Rev 182, 58 (Aug, 2001), J. Shimizu, S. Yamazaki, T. Takahashi, Y. Ishida, S. Sakaguchi, Nat Immunol 3, 135 (Feb, 2002))。CD127発現は、Foxp3と反比例し、かつ、他のマーカーと共に、末梢血中のFoxp3+細胞の95%超を特定する(W. Liu et al., J Exp Med 203, 1701 (Jul 10, 2006), N. Seddiki et al., J Exp Med 203, 1693 (Jul 10, 2006))。Tregは、IL-4、IL-10、またはTGF-bの誘導を通して末梢のT細胞寛容において中心的な役割を果たし(L. Chatenoud, B. Salomon, J. A. Bluestone, Immunol Rev 182, 149 (Aug, 2001))、感染の寛容を促進することができる(H. Waldmann, S. Cobbold, Annu Rev Immunol 16, 619 (1998), H. Waldmann, S. Cobbold, Immunity 14, 399 (Apr, 2001))。従って、Tregの欠損または機能障害によって自己免疫が起こる(E. Maggi et al., Autoimmun Rev 4, 579 (Nov, 2005), S. Sakaguchi, Nat Immunol 6, 345 (Apr, 2005))。加えて、それらは、T1Dの処置のために用いることができる(S. Sakaguchi, Nat Immunol 6, 345 (Apr, 2005), S. Sakaguchi, Nat Immunol 6, 345 (Apr, 2005))。
B細胞の役割は、自己免疫疾患に応じて変化しうる。T1Dの場合、主要なT1D抗原に対する自己抗体は、初期に出現して(L. Yu et al., Proc Natl Acad Sci U S A 97, 1701 (Feb 15, 2000))、ヒトにおける糖尿病の進行の予測マーカーである。このように、B細胞は糖尿病の発生にとって必須ではないが、T細胞に対するその抗原提示細胞(APC)機能により、糖尿病の進行に明らかに関係している。
B細胞膜受容体は、B細胞の寿命の間を通して進化および変化する。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B(TACI)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(BCMA)、B細胞活性化因子(BAFF-R)(Bリンパ球刺激因子(BLyS)とも呼ばれる)は、未成熟なB細胞と成熟B細胞の両方に存在する。前述の受容体の全てがBLySに対する抗体(ベリムマブ)によって阻害されうる。CD22は、シアル酸結合Ig様レクチン細胞表面受容体のメンバーであり、CD19と同様にB細胞上に見いだされる。
CD20抗原(ヒトB-リンパ球拘束分化抗原、Bp35またはB1とも呼ばれる)は、プレBリンパ球および成熟Bリンパ球上に存在する分子量およそ35 kDaの4回膜貫通グリコシル化内在性膜タンパク質である(Valentine et al., J. Biol. Chem., 264(19): 11282-11287 (1989) and Einfeld et al., EMBO J., 7(3):711-717 (1988))。抗原はまた、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%超において発現されるが(Anderson et al., Blood, 63(6): 1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常プラズマ細胞、または他の正常組織には見いだされない(Tedder et al. J. Immunol., 135(2):973-979 (1985))。CD20は、細胞周期の開始および分化に関する活性化プロセスの初期段階を調節し(Tedder et al、前記)、おそらくカルシウムイオンチャンネルとして機能する(Tedder et al., J. Cell. Biochem., 14D: 195 (1990))。CD20は、活性化B細胞においてリン酸化を受ける(Riley and Sliwkowski, Semin Oncol, 27(12): 17-24 (2000))。CD20は、プレB細胞段階でBリンパ球の表面に出現して、成熟およびメモリーB細胞上で見いだされるが、プラズマ細胞では見いだされない(Stashenko et al. J. Immunol, 125: 1678-1685 (1980); Clark and Ledbetter Adv. Cancer Res., 52:81-149 (1989))。CD20は、カルシウムチャンネル活性を有し、B細胞の発達において役割を有しうる。末梢CD20+ B細胞のインビトロでの溶解とインビボでのリツキシマブ活性との関係は不明である。リツキシマブは、インビトロで抗体依存性細胞障害性(ADCC)を示す(Reff et al. Blood, 83:435-445 (1994))。強力な補体依存性細胞障害(CDC)活性もまた、リンパ腫細胞および細胞株において(Reff et al、前記)ならびにあるマウス異種移植片モデルにおいて(Di Gaetano et al., J. Immunol, 171: 1581-1587 (2003))リツキシマブに関して観察されている。リツキシマブを含むいくつかの抗CD20抗体は、二次抗体または他の手段によってクロスリンクされると、インビトロでアポトーシスを誘導することが示されている(Ghetie et al. Proc Natl Acad Sci. USA, 94:7509-7514 (1997))。
B細胞上でCD20が発現されることを考慮すると、この抗原は、自己免疫疾患におけるB細胞の「標的化」のための候補物質としての役割を果たすことができる。本質的に、そのような標的化は、以下の通りに一般化することができる。B細胞のCD20表面抗原に対して特異的な抗体を患者に投与する。これらの抗CD20抗体は、(表面上)正常B細胞および自己免疫関連B細胞の両方のCD20抗原に特異的に結合し;CD20表面抗原に結合した抗体は、自己免疫関連B細胞を破壊および枯渇させうる。加えて、自己免疫関連B細胞の破壊能を有する化学物質または放射活性標識を、該物質が自己免疫関連B細胞に特異的に「送達」されるように、抗CD20抗体にコンジュゲートさせることができる。アプローチによらず、主たる目標は、自己免疫関連B細胞を破壊することであり;用いられる特定の抗CD20抗体によって、特異的アプローチを決定することができ、このように、CD20抗原の標的化にとって使用可能なアプローチは、かなり異なりうる。
リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))抗体は、CD20抗原に対する遺伝子操作されたキメラネズミ/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは、US 5736137(Anderson et al)において「C2B8」と呼ばれる抗体である。リツキシマブは、再発性または難治性の低悪性度または濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者の処置に必要とされている。インビトロの作用機序試験により、リツキシマブがヒト補体に結合して、CDCを通してリンパ系列B細胞株を溶解することが証明されている(Reff et al., Blood, 83(2): 435-445 (1994))。加えて、それは、ADCCに関するアッセイ法において有意な活性を有する。より最近、リツキシマブは、トリチウム化チミジン取込みアッセイ法において抗増殖効果を有すること、およびアポトーシスを直接誘導することが示されているが、他の抗CD19および抗CD20抗体はそれらの作用を有しない(Maloney et al. Blood, 88(10): 637a (1996))。リツキシマブならびに化学療法および毒素の間の相乗効果もまた実験によって観察されている。特に、リツキシマブは、薬物抵抗性ヒトB細胞リンパ腫細胞株を、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素、およびリシンの細胞障害効果に対して感作する(Demidem et al., Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals, 12(3): 177-186 (1997))。インビボ前臨床試験により、リツキシマブが、おそらく補体および細胞によって媒介されるプロセスを通して、カニクイザルの末梢血、リンパ節、および骨髄からB細胞を枯渇させることが示されている(Reff et al., Blood, 83:435-445 (1994))。
リツキシマブは、再発性または難治性の低悪性度または濾胞性CD20+ B細胞NHLを有する患者を処置するために、375 mg/m2の用量の週1回4回投与で米国において承認された。2001年4月、米国食品医薬品局(FDA)は、低悪性度NHLの処置に関する追加の要求、すなわち再処置(週1回4回投与)および追加の投与レジメン(週1回8回投与)を承認した。多くの患者が、単剤治療としてまたは免疫抑制剤もしくは化学療法剤と併用してリツキシマブに曝露されている。患者はまた、最長2年まで維持療法としてリツキシマブによって処置されている。Hainsworth et al., J. Clin. Oncol, 21: 1746-1751 (2003); Hainsworth et al., J. Clin. Oncol, 20:4261-4267 (2002)。同様に、リツキシマブは、悪性および非悪性プラズマ細胞障害の処置においても用いられている。Treon and Anderson, Semin. Oncol., 27: 79-85 (2000)。
リツキシマブはまた、少なくとも1つのTNFアンタゴニストに対して不適切な応答を有した中等度から重度の活動性RAを有する成人患者の徴候および症状を低減させるために、米国においてMTXとの併用が承認されている。多くの研究が、B細胞および自己抗体が疾患の病理生理学において役割を果たすと考えられるRAを含む多様な非悪性の自己免疫障害に、リツキシマブを用いることに取り組んでいる。Edwards et al., Biochem Soc. Trans., 30:824-828 (2002)。リツキシマブは、たとえばRA(Leandro et al., Ann. Rheum. Dis. 61 :883- 888 (2002); Edwards et al., Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9): S46 (2002); Stahl et al., Ann. Rheum. Dis., 62 (Suppl. 1): OP004 (2003); Emery et al., Arthritis Rheum., 48(9): S439 (2003))、狼瘡(Eisenberg, Arthritis. Res. Ther. 5: 157-159 (2003); Leandro et al. Arthritis Rheum. 46: 2673-2677 (2002); Gorman et al., Lupus, 13: 312-316 (2004))、免疫性血小板減少性紫斑病(D'Arena et al., Leuk. Lymphoma, 44:561-562 (2003); Stasi et al.,Blood, 98: 952-957 (2001); Saleh et al., Semin. Oncol, 27 (Supp 12):99-103 (2000); Zaja et al., Haematologica, 87: 189-195 (2002); Ratanatharathorn et al., Ann. Int. Med., 133:275-279 (2000))、赤芽球ろう(Auner et al., Br. J. Haematol, 116:725-728 (2002))、自己免疫性貧血(Zaja et al., supra(erratum appears in Haematologica 87:336 (2002))、寒冷凝集素病(Layios et al., Leukemia, 15: 187-8 (2001); Berentsen et al., Blood, 103: 2925-2928 (2004); Berentsen et al., Br. J. Haematol, 115:79-83 (2001); Bauduer, Br. J. Haematol, 112: 1083-1090 (2001); Zaja et al., Br. J. Haematol, 115:232-233 (2001))、B型重度インスリン抵抗性症候群(Coll et al., N. Engl. J. Med., 350:310-311 (2004))、混合型クリオグロブリン血症(DeVita et al., Arthritis Rheum. 46 Suppl. 9:S206/S469 (2002))、重症筋無力症(Zaja et al., Neurology, 55:1062-1063 (2000); Wylam et al., J. Pediatr., 143:674-677 (2003))、ヴェーゲナー肉芽腫症(Specks et al., Arthritis & Rheumatism 44:2836-2840 (2001))、難治性尋常性天疱瘡(Dupuy et al., Arch Dermatol, 140:91-96 (2004))、皮膚筋炎(Levine, Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9):S 1299 (2002))、シェーグレン症候群(Somer et al., Arthritis & Rheumatism, 49:394-398 (2003))、活動性II型混合型クリオグロブリン血症(Zaja et al., Blood, 101:3827-3834 (2003))、尋常性天疱瘡(Dupay et al., Arch. Dermatol, 140:91-95 (2004))、自己免疫性ニューロパシー(Pestronk et al., J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 74:485-489 (2003))、腫瘍随伴性眼球クローヌス-筋クローヌス症候群(Pranzatelli et al., Neurology 60(Suppl. 1 ) PO5.128:A395 (2003))、および再発寛解性多発性硬化症(RRMS)(Cross et al. (abstract) "Preliminary Results from a Phase II Trial of Rituximab in MS" Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis, 20-21 (2003))の徴候および症状をおそらく軽減すると報告されている。
第II相試験(WA 16291)がRA患者において行われ、リツキシマブの安全性および効力に関する48週間の追跡データを提供している(Emery et al., Arthritis Rheum., 48(9):S439 (2003); Szczepanski et al., Arthritis Rheum., 48(9):S121 (2003))。全体で患者161人を4つの処置アームに均等に無作為割付した:MTX、リツキシマブ単独、リツキシマブプラスMTX、およびリツキシマブプラスシクロホスファミド(CTX)。リツキシマブの処置レジメンは、1日目および15日目に1 グラムの静脈内投与であった。ほとんどのRA患者におけるリツキシマブの注入は、ほとんどの患者によって良好に認容され、患者の36%が初回注入時に少なくとも1つの有害事象を経験した(プラセボを与えた患者の30%と比較して)。全体的に、有害事象の大部分は、重症度が軽度から中等度であると見なされ、全ての処置群において良好にバランスがとれていた。48週間の間に4つのアームで全19例の重篤な有害事象が認められ、リツキシマブ/CTX群ではわずかに発生率が高かった。感染症の発生率は全ての群において良好にバランスがとれていた。このRA患者集団における重篤な感染症の平均発生率は、1年間に4.66回/患者100人であったが、これは、地域に基づく疫学的研究で報告されたRA患者において入院を必要とする感染症の発生率(1年間に9.57回/患者100人)より低い(Doran et al., Arthritis Rheum. 46:2287-2293 (2002))。
自己免疫性ニューロパシー(Pestronk et al、前記)、眼球クローヌス-筋クローヌス症候群(Pranzatelli et al、前記)およびRRMS(Cross et al、前記)を含む神経障害を有する少数の患者において報告されたリツキシマブの安全性プロファイルは、腫瘍学またはRAにおいて報告されたプロファイルと類似であった。RRMS患者におけるインターフェロン-β(IFN-β)または酢酸グラチラマーと併用したリツキシマブの研究者主導臨床試験(investigator-sponsored trial)(IST)において(Cross et al、前記)、処置患者10人中1人が、リツキシマブの初回注入後に中等度の発熱および硬直を経験したために終夜観察のために入院したが、他の患者9人は有害事象を報告することなく、4回の注入レジメンを終了した。
CD20抗体、CD20結合分子、および自己抗原ワクチンに関する特許および特許公報には、U.S. 5,776,456、同5,736,137、同5,843,439、同6,399,061、および同6,682,734、ならびにUS 2002/0197255、US 2003/0021781、US 2003/0082172、US 2003/0095963、US 2003/0147885、US 2005/0186205、および WO 1994/11026(Anderson et al);U.S. 6,455,043、US 2003/0026804、US 2003/0206903、および WO 2000/09160(Grillo-Lopez, A.);WO 2000/27428(Grillo-Lopez and White);US 2004/0213784 および WO 2000/27433(Grillo-Lopez and Leonard);WO 2000/44788(Braslawsky et al);WO 2001/10462(Rastetter, W.);WO 2001/10461(Rastetter and White);WO 2001/10460(White and Grillo-Lopez);US 2001/0018041、US 2003/0180292、US 2002/0028178、WO 2001/34194、および WO 2002/22212(Hanna and Hariharan);US 2002/0006404 および WO 2002/04021(Hanna and Hariharan);US 2002/0012665、US 2005/0180975、WO 2001/74388、および U.S. 6,896,885(Hanna, N.);US 2002/0058029(Hanna, N.);US 2003/0103971(Hariharan and Hanna);US 2005/0123540(Hanna et al);US 2002/0009444 および WO 2001/80884(Grillo-Lopez, A.);WO 2001/97858;US 2005/0112060、US 2002/0039557、および U.S. 6,846,476(White, C);US 2002/0128448 および WO 2002/34790(Reff, M.);WO 2002/060955(Braslawsky et al.);WO 2002/096948(Braslawsky et al.);WO 2002/079255(Reff and Davies);U.S. 6,171,586 および同6,991,790、および WO 1998/56418(Lam et al.);US 2004/0191256 および WO 1998/58964(Raju, S.);WO 1999/22764(Raju, S.);WO 1999/51642、U.S. 6,194,551、U.S. 6,242,195、同6,528,624 および同6,538,124(Idusogie et al.);U.S. 7,122,637、US 2005/0118174、US 2005/0233382、US 2006/0194291、US 2006/0194290、US 2006/0194957、および WO 2000/42072(Presta, L.);WO 2000/67796(Curd et al.);WO 2001/03734(Grillo-Lopez et al.);US 2002/0004587、US 2006/0025576、および WO 2001/77342(Miller and Presta);US 2002/0197256 および WO 2002/078766(Grewal, I.);US 2003/0157108 および WO 2003/035835(Presta, L.);U.S. 5,648,267、5,733,779、6,017,733、および 6,159,730、および WO 1994/11523(発現技術に関してReff et al.);U.S. 6,565,827、同6,090,365、同6,287,537、同6,015,542、同5,843,398、および同5,595,721(Kaminski et al.);U.S. 5,500,362、同5,677,180、同5,721,108、同6,120,767、同6,652,852、および同6,893,625、ならびにWO 1988/04936(Robinson et al.);U.S. 6,410,391(Zelsacher);U.S. 6,224,866 および WO 2000/20864(Barbera-Guillem, E.);WO 2001/13945(Barbera-Guillem, E.);WO 2000/67795(Goldenberg);U.S. 7,074,403(Goldenberg and Hansen);U.S. 7,151,164(Hansen et al);US 2003/0133930;WO 2000/74718 および US 2005/0191300A1(Goldenberg and Hansen);US 2003/0219433 および WO 2003/68821(Hansen et al);WO 2004/058298(Goldenberg and Hansen);WO 2000/76542(Golay et al);WO 2001/72333(Wolin and Rosenblatt);U.S. 6,368,596(Ghetie et al);U.S. 6,306,393 および US 2002/0041847(Goldenberg, D.);US 2003/0026801(Weiner and Hartmann);WO 2002/102312(Engleman, E.);US 2003/0068664(Albitar et al.);WO 2003/002607(Leung, S.);WO 2003/049694、US 2002/0009427、および US 2003/0185796(Wolin et al.);WO 2003/061694(Sing and Siegall);US 2003/0219818(Bohen et al.);US 2003/0219433 および WO 2003/068821(Hansen et al.);US 2003/0219818(Bohen et al.);US 2002/0136719(Shenoy et al.);WO 2004/032828 および US 2005/0180972(Wahl et al.);ならびに WO 2002/56910(Hayden-Ledbetter)が挙げられる。同様にU.S. 5,849,898 および EP 330,191(Seed et al.);EP332,865A2(Meyer and Weiss);U.S. 4,861,579(Meyer et al.);US 2001/0056066(Bugelski et al.);WO 1995/03770(Bhat et al.);US 2003/0219433 A1(Hansen et al.);WO 2004/035607 および US 2004/167319(Teeling et al.);WO 2005/103081(Teeling et al.);US 2006/0034835、US 2006/0024300、および WO 2004/056312(Lowman et al.);US 2004/0093621(Shitara et al.);WO 2004/103404(Watkins et al.);WO 2005/000901(Tedder et al.);US 2005/0025764(Watkins et al.);US 2006/0251652(Watkins et al.);WO 2005/016969(Carr et al.);US 2005/0069545(Carr et al.);WO 2005/014618(Chang et al.);US 2005/0079174(Barbera-Guillem and Nelson);US 2005/0106108(Leung and Hansen);US 2005/0123546(Umana et al.);US 2004/0072290(Umana et al.);US 2003/0175884(Umana et al.);および WO 2005/044859(Umana et al.);WO 2005/070963(Allan et al.);US 2005/0186216(Ledbetter and Hayden-Ledbetter);US 2005/0202534(Hayden-Ledbetter and Ledbetter);US 2005/136049(Ledbetter et al.);US 2003/118592(Ledbetter et al.);US 2003/133939(Ledbetter and Hayden-Ledbetter);US 2005/0202012(Ledbetter and Hayden-Ledbetter);US 2005/0175614(Ledbetter and Hayden-Ledbetter);US 2005/0180970(Ledbetter and Hayden-Ledbetter);US 2005/0202028(Hayden-Ledbetter and Ledbetter);US 2005/0202023(Hayden-Ledbetter and Ledbetter);WO 2005/017148(Ledbetter et al.);WO 2005/037989(Ledbetter et al.);U.S. 6,183,744(Goldenberg);U.S. 6,897,044(Braslawski et al.);WO 2006/005477(Krause et al.);US 2006/0029543(Krause et al.);US 2006/0018900(McCormick et al.);US 2006/0051349(Goldenberg and Hansen);WO 2006/042240(Iyer and Dunussi-Joannopoulos);US 2006/0121032(Dahiyat et al.);WO 2006/064121(Teillaud et al.);US 2006/0153838(Watkins)、CN 1718587(Chen et al.);WO 2006/084264(Adams et al.);US 2006/0188495(Barron et al.);US 2004/0202658 および WO 2004/091657(Benynes, K.);US 2005/0095243、US 2005/0163775、WO 2005/00351、および WO 2006/068867(Chan, A.);US 2006/0135430 および WO 2005/005462(Chan et al.);US 2005/0032130 および WO 2005/017529(Beresini et al.);US 2005/0053602 および WO 2005/023302(Brunetta, P.);US 2006/0179501 および WO 2004/060052(Chan et al.);WO 2004/060053(Chan et al.);US 2005/0186206 および WO 2005/060999(Brunetta, P.);US 2005/0191297 および WO 2005/061542(Brunetta, P.);US 2006/0002930 および WO 2005/115453(Brunetta et al.);US 2006/0099662 および WO 2005/108989(Chuntharapai et al.);CN 1420129A(Zhongxin Guojian Pharmaceutical);US 2005/0276803 および WO 2005/113003(Chan et al.);US 2005/0271658 および WO 2005/117972(Brunetta et al.);US 2005/0255527 および WO 2005/11428(Yang, J.);US 2006/0024295 および WO 2005/120437(Brunetta, P.);US 2006/0051345 および WO 2005/117978(Frohna, P.);US 2006/0062787 および WO 2006/012508(Hitraya, E.);US 2006/0067930 および WO 2006/31370(Lowman et al.);WO 2006/29224(Ashkenazi, A.);US 2006/0110387 および WO 2006/41680(Brunetta, P.);US 2006/0134111 および WO 2006/066086(Agarwal, S.);WO 2006/069403(Ernst and Yansura);US 2006/0188495 および WO 2006/076651(Dummer, W.);WO 2006/084264(Lowman, H.);WO 2006/093923(Quan and Sewell);WO 2006/106959(Numazaki et al.);WO 2006/126069(Morawala);WO 2006/130458(Gazit-Bornstein et al.);US 2006/0275284(Hanna, G.);US 2007/0014785(Golay et al.);US 2007/0014720(Gazit-Bornstein et al.);および US 2007/0020259(Hansen et al.);US 2007/0020265(Goldenberg and Hansen);US 2007/0014797(Hitraya);US 2007/0224189(Lazar et al.);WO 2007/014238(Bruge and Bruger);ならびにWO 2008/003319(Parren and Baadsgaard)を参照されたい。
リツキシマブによる処置に関する科学刊行物には、Perotta and Abuel, "Response of chronic relapsing ITP of 10 years duration to rituximab" Abstract # 3360 Blood, 10(1)(part 1-2):88B (1998); Perotta et al., "Rituxan in the treatment of chronic idiopathic thrombocytopaenic purpura (ITP)", Blood, 94:49 (abstract) (1999); Matthews, R., "Medical Heretics" New Scientist, 7 (April, 2001); Leandro et al., "Clinical outcome in 22 patients with rheumatoid arthritis treated with B lymphocyte depletion" Ann Rheum Dis., supra; Leandro et al., "Lymphocyte depletion in rheumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response" Arthritis and Rheumatism, 44(9):S370 (2001); 2週間の間に、各患者にリツキシマブ500 mgの注入を2回、CTX 750 mgの注入を2回、および高用量経口コルチコステロイドの投与を行い、ならびに処置した患者の2人がそれぞれ、7ヶ月および8ヶ月目に再発し、異なるプロトコールではあるが再処置されている、Leandro et al., "An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus" Arthritis and Rheumatism, 46:2673-2677 (2002);患者1人をリツキシマブ(375 mg/m2×4、1週間に1回の間隔で繰り返す)によって処置して、さらにリツキシマブの適用を5〜6ヶ月毎に行い、その後リツキシマブ375 mg/m2による維持療法を3ヶ月毎に行った、および難治性SLEを有する第二の患者はリツキシマブによる処置に成功し、3ヶ月毎に維持療法を受けているが、いずれの患者もリツキシマブ治療に良好に反応した、"Successful long-term treatment of systemic lupus erythematosus with rituximab maintenance therapy" Weide et al., Lupus, 12:779-782 (2003); Edwards and Cambridge, "Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes" Rheumatology, 40:205-211 (2001); Cambridge et al., "B lymphocyte depletion in patients with rheumatoid arthritis: serial studies of immunological parameters" Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9): S1350 (2002); Cambridge et al., "Serologic changes following B lymphocyte depletion therapy for rheumatoid arthritis" Arthritis Rheum., 48:2146-2154 (2003); Edwards et al., "B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders" Biochem Soc. 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さらに、Looney "B cells as a therapeutic target in autoimmune diseases other than rheumatoid arthritis" Rheumatology, 44 Suppl 2:ii13-ii17 (2005); Chambers and Isenberg, "Anti-B cell therapy (rituximab) in the treatment of autoimmune diseases" Lupus, 14(3):210-214 (2005); Looney et al., "B-cell depletion as a novel treatment for systemic lupus erythematosus: a phase I/II dose-escalating trial of rituximab" Arthritis Rheum., 50:2580-2589 (2004); Looney, "Treating human autoimmune disease by depleting B cells" Ann Rheum. Dis., 61:863-866 (2002); Edelbauer et al., "Rituximab in childhood systemic lupus erythematosus refractory to conventional immunosuppression Case report" Pediatr. Nephrol., 20(6): 811-813 (2005); D'Cruz and Hughes, "The treatment of lupus nephritis" BMJ, 330(7488):377-378 (2005); Looney, "B cell-targeted therapy in diseases other than rheumatoid arthritis" J. Rheumatol. Suppl, 73: 25-28- discussion 29-30 (2005); Rastetter et al., "Rituximab: expanding role in therapy for lymphomas and autoimmune diseases" Annu. Rev. Med., 55:477-503 (2004); Silverman, "Anti-CD20 therapy in systemic lupus erythematosus: a step closer to the clinic" Arthritis Rheum., 52(2):371-377 (2005), Erratum, Arthritis Rheum. 52(4): 1342 (2005); Ahn et al., "Long-term remission from life-threatening hypercoagulable state associated with lupus anticoagulant (LA) following rituximab therapy" Am. J. Hematol, 78(2): 127-129 (2005); Tahir et al., "Humanized anti-CD20 monoclonal antibody in the treatment of severe resistant systemic lupus erythematosus in a patient with antibodies against rituximab" Rheumatology, 44(4):561-562 (2005), Epub 2005 Jan 11 ; Looney et al , "Treatment of SLE with anti-CD20 monoclonal antibody" Curr. Dir. Autoimmun., 8: 193-205 (2005); Cragg et al., "The biology of CD20 and its potential as a target for mAb therapy" Curr. Dir. Autoimmun., 8: 140-174 (2005); Gottenberg et al., "Tolerance and short term efficacy of rituximab in 43 patients with systemic autoimmune diseases" Ann. Rheum. Dis., 64(6):913-920 (2005) Epub 2004 Nov 18を参照されたい。同様にLeandro et al., "B cell repopulation occurs mainly from naive B cells in patient with rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus" Arthritis Rheum., 48 (Suppl 9):S1160 (2003)を参照されたい。
Specks et al. "Response of Wegener's granulomatosis to anti-CD20 chimeric monoclonal antibody therapy" Arthritis & Rheumatism, 44(12):2836-2840 (2001)は、ヴェーゲナー肉芽腫症を処置するために、リツキシマブ375 mg/m2の4回注入および高用量グルココルチコイドを用いて成功したことを開示した。cANCAが再発した11ヶ月後に治療を繰り返したが、グルココルチコイドによる治療は行わなかった。リツキシマブの2回目のコースの8ヶ月後、患者の疾患は完全緩解のままであった。別の試験において、リツキシマブを、1 mg/kg/日の経口プレドニゾロンと共に、用量375 mg/m2の4回投与で用い、プレドニゾロンを4週目までに40 mg/日に低減して、続く16週間の間に完全に中止したところ、リツキシマブは、重度のANCA関連脈管炎に関する良好に認容される有効な寛解誘導剤であることが見いだされた。患者4人を、ANCA力価が再発/上昇したために、リツキシマブ単独によって再処置した。グルココルチコイド以外に、寛解の誘導および持続的な寛解(6ヶ月またはそれより長く)の維持のために追加の免疫抑制剤が必要であるようには考えられない。Keogh et al., Kidney Blood Press. Res., 26:293 (2003)は、難治性ANCA関連脈管炎を有する患者11人が、リツキシマブの用量375 mg/m2の週1回4回投与および高用量グルココルチコイドによる処置によって寛解したと報告した。
難治性ANCA関連脈管炎を有する患者に、静脈内CTX、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、またはレフルノミドなどの免疫抑制性の医薬と共にリツキシマブを投与したところ、明白な効力を有した。Eriksson, "Short-term outcome and safety in 5 patients with ANCA-positive vasculitis treated with rituximab" Kidney and Blood Pressure Research, 26:294 (2003)(リツキシマブ375 mg/m2によって週1回4週間処置したANCA関連脈管炎患者5人が処置に応答した);Jayne et al., "B-cell depletion with rituximab for refractory vasculitis" Kidney and Blood Pressure Research, 26:294-295 (2003)(バックグラウンドとしての免疫抑制およびプレドニゾロンの存在下でCTXとともにリツキシマブ375 mg/m2を週1回4回注入された難治性脈管炎患者6人は、脈管炎活性の大きい低下を経験した)。難治性全身性脈管炎患者に投与するために、静脈内CTXと共に用量あたりリツキシマブ375 mg/m2の4回投与を用いるさらなる報告は、Smith and Jayne, "A prospective, open label trial of B-cell depletion with rituximab in refractory systemic vasculitis" poster 998 (11th International Vasculitis and ANCA workshop), American Society of Nephrology, J. Am. Soc. Nephrol., 14:755A (2003)に提供される。同様に、リツキシマブの用量500 mgの週1回2回または4回投与による処置によって成功したANCA陽性脈管炎患者9人に関するEriksson, J. Internal Med., 257:540-548 (2005)、および難治性ANCA関連脈管炎患者11人において、リツキシマブの用量375 mg/m2の週1回4回投与による処置または再処置が、Bリンパ球枯渇により寛解を誘導した(2000年1月から2002年9月に行われた試験)ことを報告したKeogh et al., Arthritis and Rheumatism, 52:262-268 (2005)を参照されたい。
ヒト化抗CD20抗体の活性に関しては、たとえばVugmeyster et al., "Depletion of B cells by a humanized anti-CD20 antibody PRO70769 in Macaca fascicularis" J. Immunother., 28:212-219 (2005)を参照されたい。ヒトモノクローナル抗体に関する考察に関しては、Baker et al., "Generation and characterization of LymphoStat-B, a human monoclonal antibody that antagonizes the bioactivities of B lymphocyte stimulator," Arthritis Rheum., 48:3253-3265 (2003) を参照されたい。リツキシマブによるMINT試験は、より若い患者において中悪性度非ホジキンリンパ腫の処置に成功した(Pfreundschuh et al., Lancet Oncology, 7(5):379-391 (2006))。
DNA抗原特異的治療
DNA抗原特異的治療を用いて自己免疫プロセスを調整することができる。筋肉内注射後、プラスミドDNAは、たとえば筋細胞によって取り込まれ、コードされるポリペプチドを発現させる(Wolff et al., Hum Mol Genet..1(6): 363-9 (1992))。自己免疫疾患の場合、効果は、進行中の免疫応答が自己免疫による破壊を抑制するようにシフトすることであり、自己反応性リンパ球のTh1型応答からTh2型応答へのシフトを含むと考えられる。免疫応答の調整は全身性でなくてもよく、自己免疫の攻撃を受ける標的臓器でごく局所的に起こってもよい。
DNA抗原特異的治療を用いて、具体的には1つまたは複数の自己抗原をコードする核酸を投与することによって、自己免疫疾患を処置する方法は、たとえば国際特許出願番号WO 00/53019、WO 2003/045316、およびWO 2004/047734に記述されている。
発明の簡単な概要
本発明は、自己免疫疾患の処置において有用な方法および組成物を提供する。本発明はさらに、自己免疫疾患に関連する自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用した免疫抑制剤または免疫調節剤(たとえば、B細胞特異的作用物質)の投与を含む、自己免疫疾患の処置に関する。ある態様において、本発明は、自己免疫疾患に関連する自己抗原をコードするDNAプラスミドベクターなどのDNA抗原特異的治療物質と組み合わせた、抗体などのB細胞特異的作用物質の併用を提供する。ある態様において、B細胞特異的作用物質は、自己免疫疾患に関連する自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して投与されるB細胞上の受容体を標的とする抗体である。
このように、1つの局面において、自己免疫疾患を処置する方法は、自己免疫疾患に関連する自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用した、CD20、CD19、CD22、TACI、BCMA、またはBAFF-RなどのあるB細胞表面抗原に特異的に結合するB細胞特異的作用物質の投与を含む。例示的な抗体には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、およびベルツズマブが挙げられる。ある態様において、自己免疫疾患を処置する方法は、プロインスリンなどの、自己免疫疾患T1Dに関連する自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用した、CD20などのあるB細胞表面抗原に特異的に結合するB細胞特異的作用物質の投与を含む。ある態様において、B細胞特異的作用物質は抗体(たとえば、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体)である。ある態様において、DNA抗原特異的治療物質は、自己免疫疾患に関連する自己抗原をコードする。B細胞特異的作用物質とDNA抗原特異的治療物質とを含む薬学的組成物、ならびにB細胞特異的作用物質およびDNA抗原特異的治療物質を用いる方法も同様に提供される。
別の局面において、本発明は、自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して免疫抑制剤または免疫調節剤(たとえば、B細胞特異的作用物質)の治療的有効量を対象に投与することによって、多発性硬化症、インスリン依存型真性糖尿病、関節リウマチ、尋常性天疱瘡、または重症筋無力症などの自己免疫疾患を処置する方法を提供する。
別の局面において、本発明は、自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して免疫抑制剤または免疫調節剤(たとえば、B細胞特異的作用物質)の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、インスリン依存型真性糖尿病の処置を提供する。1つの態様において、B細胞特異的作用物質は、インスリン、プロインスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65、または島細胞抗原などの、インスリン依存型真性糖尿病に関連する自己抗原をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用したCD20特異的作用物質である。1つの態様において、CD20特異的作用物質は、リツキサンなどのモノクローナル抗体であり、かつDNA抗原特異的治療物質はプロインスリンをコードする。CD20特異的作用物質などのB細胞特異的作用物質と、インスリン依存型真性糖尿病に関連する自己抗原をコードするDNA抗原特異的治療物質とを含む薬学的組成物、ならびにCD20特異的作用物質などのB細胞特異的作用物質およびインスリン依存型真性糖尿病に関連する自己抗原をコードするDNA抗原特異的治療物質を用いる方法も同様に提供される。
別の局面において、本発明は、自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して免疫抑制剤または免疫調節剤(たとえば、B細胞特異的作用物質)の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、多発性硬化症の処置を提供する。1つの態様において、B細胞特異的作用物質は、ミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピドタンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、α-B-クリスタリン、またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質などの、多発性硬化症に関連する自己抗原をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用したCD20特異的作用物質である。1つの態様において、CD20特異的作用物質は、Rituxanなどのモノクローナル抗体であり、DNA抗原特異的治療物質は、ミエリン塩基性タンパク質をコードする。CD20特異的作用物質などのB細胞特異的作用物質と多発性硬化症に関連する自己抗原をコードするDNA抗原特異的治療物質とを含む薬学的組成物、ならびにCD20特異的作用物質などのB細胞特異的作用物質および多発性硬化症に関連する自己抗原をコードするDNA抗原特異的治療物質を用いる方法も同様に提供される。
別の局面において、本発明は、免疫抑制剤または免疫調節剤(たとえば、B細胞特異的作用物質)を対象に投与後にDNA抗原特異的治療物質の投与を含む、自己免疫疾患の処置を提供する。1つの態様において、DNA抗原特異的治療物質の投与は、免疫抑制剤または免疫調節剤の投与の1日から数日後である。別の態様において、DNA抗原特異的治療物質の投与は、B細胞特異的作用物質の投与の1週間後である。さらに別の態様において、免疫抑制剤または免疫調節剤の1回投与後に、DNA抗原特異的治療物質の毎週投与が行われる。
本発明は、本明細書において記述される処置の方法において有用である作用物質の様々な組み合わせを含む薬学的組成物を提供する。組成物は、(a)免疫抑制剤または免疫調節剤(たとえば、B細胞特異的作用物質)と;(b)DNA抗原特異的治療物質と;(c)薬学的に許容される担体とを、自己免疫疾患を処置するのに有効な量で含みうる。ある局面に従って、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と共に、CD20に結合する抗体と、自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質とを含む。
上記の局面または態様、ならびに本明細書において他所で記述される他の局面および/または態様の各々のある態様において、免疫抑制剤または免疫調節剤は抗体である。ある態様において、抗体は組換え型抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。ある態様において、抗体は単離されている。さらにさらなる態様において、抗体は実質的に純粋である。
上記の局面または態様、ならびに本明細書において他所で記述される他の局面および/または態様の各々のある態様において、DNA抗原特異的治療物質は、DNAプラスミドベクターである。ある態様において、DNAプラスミドベクターは単離されている。さらにさらなる態様において、DNAプラスミドベクターは実質的に純粋である。
本発明は、キットおよび製造物を含む。キットおよび製造物は、好ましくは、
(a)1つまたは複数の容器と;
(b)各容器上のラベルと;
(c)容器内に含有される活性物質を含む第一および第二の組成物と
を含み、
該組成物が、自己免疫疾患を処置するのに有効であり、該容器のラベルが、自己免疫疾患を処置するために該組成物を用いることができることを示してもよく、該第一の組成物中の活性物質が、免疫抑制剤または免疫調節剤を含み、該第二の組成物中の活性物質が、DNA抗原特異的治療物質を含む。
抗CD20の単独投与は、NODマウスにおいて糖尿病からの保護を誘導することができる。前糖尿病の7〜10週齢NODマウスに、抗CD20抗体(5D2)5、10、50、100、または250μgを1日目のみ(図1A)、または1、2、3および4日目(図1B)に注射した。血糖値を毎週測定することによりNODマウスの糖尿病への進行をモニターして、2回連続してBG値が>200 mg/dLであった場合にマウスは糖尿病であると見なされた。抗CD20の最高用量(250μg)の1回注射は、50%の保護を媒介すると考えられるが、抗CD20注射を4回受けたマウスは全て糖尿病の発症から保護されると考えられる。 抗CD20投与とプロインスリンをコードするDNA自己ベクターの投与との併用は、NODマウスを糖尿病から保護する。前糖尿病の7〜10週齢NODマウスに、抗CD20抗体(5D2) 10μg(図2A)、50μg(図2B)、または100μg(図2C)を単独で、またはプロインスリンを発現するプラスミドと併用して1回(1日目)または4回(1、8、15、22日目)注射した。1週間に1回、血糖値を測定した。抗CD20 10μgをプロインスリンプラスミドと併用投与しても保護を提供しなかったが、抗CD20抗体50μgおよび100μgをプロインスリンプラスミドの1回または4回注射と併用すると、これらのマウスを糖尿病の発症から用量依存的に保護した。 前糖尿病の7〜10週齢NODマウスに(A)抗CD20単独、または(B)プロインスリンプラスミド50μg/mlと併用したCD20を、表記の用量で注射した。無処置のNODマウスを、糖尿病発症をモニターするための対照として用いた。1週間に1回、血糖値を測定した。 前糖尿病の7〜10週齢NODマウスに、以下の通りに抗CD20(用量を図の説明文に示す)投与と併用してプラスミド25μgを各大腿(全体で50μg)に毎週の間隔で注射した:(A)抗CD20およびプロインスリンプラスミドの1回投与、または(B)抗CD20(1、2、3、4日目)の4回投与とプロインスリンプラスミドの1回投与、または(C)抗CD20の1回投与とプロインスリンプラスミドの4回投与。無処置NODマウスを、糖尿病発症をモニターするための対照として用いた。1週間に1回、血糖値を測定した。 rBHT-3034/Solu-メドロール併用治療を受けたラットは、PBS処置対照群ならびにrBHT-3034およびSolu-メドロール単剤治療群と比較して、疾患スコアの統計学的に有意な低減を示す。
発明の詳細な説明
自己免疫疾患
自己免疫疾患関連自己抗原のいくつかの例は、表2に示されており、特定の例は、以下でさらに詳細に記述されている。
(表2)例示的な自己免疫疾患および関連自己抗原
Figure 2013517329
1型糖尿病
1型糖尿病(T1D) (ヒトI型またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)といわれることもある)は、膵臓ランゲルハンス島におけるβ細胞の自己免疫性破壊により特徴付けられる。β細胞の枯渇は、結果として、血中のグルコースのレベルを制御する能力の喪失を生じる。顕性糖尿病は、血中のグルコースのレベルが特定レベル、通常には約250 mg/dlを超えて上昇する場合に起こる。ヒトにおいて、長い前駆症状期間が、糖尿病の発症に先行する。この期間中、膵臓のβ細胞機能の漸次消失がある。疾患の発生は、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、およびチロシンホスファターゼIA2(IA2)に対する自己抗体の存在により結びつけられる。
前駆症状期中に評価されうるマーカーは、膵臓における膵島炎の存在、島細胞抗体、島細胞表面抗体のレベルおよび頻度、膵臓β細胞上のクラスII MHCの異常発現、血中のグルコース濃度、ならびにインスリンの血漿濃度である。膵臓におけるTリンパ球、島細胞抗体、および血中グルコースの数の増加は、疾患を示し、インスリン濃度の減少も同様である。
非肥満性糖尿病(NOD)マウスは、ヒトT1Dと共通した、多くの臨床的、免疫学的および組織病理学的特徴をもつ動物モデルである。NODマウスは、島の炎症およびβ細胞の破壊を自然発症的に発生し、それが高血糖症および顕性糖尿病へ導く。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の両方は、糖尿病が発症するのに必要とされるが、それぞれの役割ははっきりしないままである。寛容化条件下でタンパク質としてインスリンまたはGADのNODマウスへの投与は疾患を予防し、他の自己抗原に対する応答を下方制御することが示されている。
血清におけるさまざまな特異性をもつ自己抗体の組み合わせの存在は、ヒトI型糖尿病に対して高い感度および特異性がある。例えば、GADおよび/またはIA-2に対する自己抗体の存在は、I型糖尿病を対照血清から同定することに対して約98%感度および99%特異性である。I型糖尿病患者の非糖尿病の一等親血縁者において、GAD、インスリン、およびIA-2を含む3つの自己抗原のうちの2つに特異的な自己抗原の存在は、5年以内のI型DMの発症について>90%の陽性適中率を告げている。
ヒトインスリン依存性糖尿病において標的とされる自己抗原には、例えば、チロシンホスファターゼIA-2; IA-2β; グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD) 65 kDaおよび67 kDaの両方の型; カルボキシペプチダーゼH; インスリン; プロインスリン(例えば、SEQ ID NO:1および2); 熱ショックタンパク質(HSP); グリマ38; 島細胞抗原69 KDa (ICA69); p52; 2つのガングリオシド抗原(GT3およびGM2-1); 島特異性グルコース-6-ホスファターゼ関連タンパク質(IGRP); および島細胞グルコース輸送体(GLUT 2)が挙げられうる。
ヒトT1Dは、血中グルコースレベルをモニターして、組換えインスリンの注射またはポンプに基づいた送達を指導することにより現在、処置されている。食事療法および運動療法は、適切な血中グルコース調節を達成することに貢献する。
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、CNSの最も一般的な脱髄障害であり、350,000人のアメリカ人および百万人の世界中の人々が罹患している。症状の発生は、典型的には、年齢が20歳から40歳の間で起こり、一側性視力障害、筋衰弱、知覚障害、運動失調、目眩、尿失禁、構音障害、もしくは精神障害(頻度が減少する順)の急性または亜急性の発作として現れる。そのような症状は、軸索伝導の遅延による負の伝導異常および異所性刺激発生による正の伝導異常(例えば、レルミット症候群)の両方を引き起こす脱髄の限局性病変に起因する。MSの診断は、時間的な隔たりがある、神経学的機能障害の客観的な臨床上の証拠を生じている、およびCNS白質の別々の領域に関係している、神経学的機能障害の少なくとも2つの別個の発作を含む病歴に基づいている。MSの診断を裏付ける追加の客観的証拠を提供する実験研究には、CNS白質の磁気共鳴映像法(MRI)、IgGの脳脊髄液(CSF)オリゴクローナルバンド形成、および異常誘発応答が挙げられる。たいていの患者は、徐々に進行する再発寛解型疾患経過を経験するが、MSの臨床経過は、個体間で大きく異なり、一生に渡って数回の軽度の発作に限られているものから劇症慢性進行性疾患までの範囲でありうる。IFN-γを分泌する能力をもつミエリン自己反応性T細胞における量的増加は、MSおよびEAEの病因と関連している。
多発性硬化症および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)などの自己免疫性脱髄疾患における自己免疫応答の自己抗原標的は、プロテオリピドタンパク質(PLP); ミエリン塩基性タンパク質(MBP); ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG); 環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPアーゼ); ミエリン関連糖タンパク質(MAG); およびミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MBOP); α-B-クリスタリン(熱ショックタンパク質); ウイルスおよび細菌の模倣ペプチド、例えば、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルスなど; OSP(オリゴデンドロサイト特異性タンパク質); シトルリン修飾MBP(6個のアルギニンがシトルリンへ脱イミン化(de-imminated)されているMBPのC8アイソフォーム)など由来のエピトープを含みうる。内在性膜タンパク質PLPは、ミエリンの優性自己抗原である。PLP抗原性の決定基は、いくつかのマウス系統において同定されており、残基139〜151位、103〜116位、215〜232位、43〜64位、および178〜191位を含む。少なくとも26個のMBPエピトープが報告されている(Meinl et al., J Clin Invest 92, 2633-43, 1993)。顕著なのは、残基1〜11位、59〜76位、および87〜99位である。いくつかのマウス系統において同定されている免疫優性MOGエピトープには、1〜22位、35〜55位、64〜96位が挙げられる。
ヒトMS患者において、以下のミエリンタンパク質およびエピトープは、自己免疫性T細胞およびB細胞応答の標的として同定された。MS脳プラークから溶出した抗体は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチド83〜97位を認識した(Wucherpfennig et al., J Clin Invest 100:1114-1122, 1997)。別の研究は、MS患者の約50%がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に対する末梢血リンパ球(PBL)T細胞反応性を有し(対照の6〜10%)、20%がMBPに対する反応性(対照の8〜12%)、8%がPLPに対する反応性(対照の0%)、0%がMAGに対する反応性(対照の0%)を有することを見出した。この研究において、10人のMOG反応性患者のうちの7人が、MOG 1〜22位、MOG 34〜56位、MOG 64〜96位を含む3つのペプチドエピトープのうちの1つに集中したT細胞増殖性応答を有した(Kerlero de Rosbo et al., Eur J Immunol 27, 3059-69, 1997)。T細胞およびB細胞(脳病変溶出性抗体)応答はMBP 87〜99位に集中した(Oksenberg et al., Nature 362, 68-70, 1993)。MBP 87〜99位において、アミノ酸モチーフHFFKは、T細胞およびB細胞応答の両方の優性標的である(Wucherpfennig et al., J Clin Invest 100, 1114-22, 1997)。別の研究は、残基MOBP 21〜39位およびMOBP 37〜60位を含むミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)に対するリンパ球反応性を観察した(Holz et al., J Immunol 164, 1103-9, 2000)。MSおよび対照の脳を染色するためにMOGおよびMBPペプチドの免疫金結合体を用いて、MBPならびにMOGペプチドの両方は、MSプラーク結合性抗体により認識された(Genain and Hauser, Methods 10, 420-34, 1996)。
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、世界人口の0.8%が罹患している慢性自己免疫性炎症性滑膜炎である。それは、びらん性関節破壊を引き起こす慢性炎症性滑膜炎によって特徴付けられる。RAは、T細胞、B細胞、およびマクロファージにより媒介される。
T細胞がRAにおいて重大な役割を果たすという証拠には、(1) 滑膜に浸潤するCD4+ T細胞の優勢、(2) シクロスポリンなどの薬物でのT細胞機能の抑制に関連した臨床的改善、および(3) RAの特定のHLA-DR対立遺伝子との関連が挙げられる。RAと関連したHLA-DR対立遺伝子は、ペプチド結合およびT細胞への提示に関与するβ鎖の第三の超可変領域における67〜74位におけるアミノ酸の類似した配列を含む。RAは、滑膜関節に存在する自己タンパク質または改変自己タンパク質を認識する自己反応性T細胞により媒介される。RAにおいて標的とされる自己抗原は、例えば、II型コラーゲン; hnRNP; A2/RA33; Sa; フィラグリン; ケラチン; シトルリン; gp39を含む軟骨タンパク質; コラーゲンI型、III型、IV型、V型、IX型、XI型; HSP-65/60; IgM(リウマトイド因子); RNAポリメラーゼ; hnRNP-B1; hnRNP-D; カルジオリピン; アルドラーゼA; シトルリン修飾フィラグリンおよびフィブリン由来のエピトープを含む。修飾アルギニン残基(脱イミン化されてシトルリンを形成した)を含むフィラグリンペプチドを認識する自己抗体が、高い割合のRA患者の血清において同定されている。自己反応性T細胞およびB細胞応答は、両方とも、何人かの患者において同じ免疫優性II型コラーゲン(CII)ペプチド257〜270位に対して向けられる。
自己免疫性ブドウ膜炎
自己免疫性ブドウ膜炎は、米国において、400,000人の人々が罹患し、1年あたり43,000の新規症例の発生があると推定される眼の自己免疫性疾患である。自己免疫性ブドウ膜炎は、ステロイド、メトトレキセートおよびシクロスポリンなどの免疫抑制剤、静注用免疫グロブリン、およびTNFαアンタゴニストで現在、処置されている。実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)は、眼における神経網膜、ブドウ膜、および関連組織を標的とするT細胞媒介性自己免疫性疾患である。EAUは、ヒト自己免疫性ブドウ膜炎と多くの臨床的および免疫学的特徴を共有し、完全フロイントアジュバント(CFA)に乳化されたブドウ膜炎誘発性ペプチドの末梢投与により誘導される。ヒト自己免疫性ブドウ膜炎における自己免疫応答により標的とされる自己抗原には、S抗原、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)、ロドプシン、およびリカバリンが挙げられうる。
原発性胆汁性肝硬変
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、主に、年齢が40〜60歳の間の女性が罹患している器官特異的自己免疫性疾患である。この群の中での報告された有病率は、1,000人あたりほぼ1人に等しい。PBCは、小さな肝内胆管を裏打ちする肝内胆管上皮細胞(IBEC)の進行性破壊により特徴付けられる。これは、胆汁分泌の妨害および干渉につながり、最終的な肝硬変を引き起こす。シェーグレン症候群、CREST症候群、自己免疫性甲状腺疾患、および関節リウマチを含め、上皮裏打ち/分泌系損傷により特徴付けられる他の自己免疫疾患との関連が報告されている。駆動抗原に関する注目は、50年以上に渡ってミトコンドリアに焦点を当て、抗ミトコンドリア抗体(AMA)の発見につながった(Gershwin et al., Immunol Rev 174:210-225, 2000); (Mackay et al., Immunol Rev 174:226-237, 2000)。臨床症状が現れるよりずっと前から90〜95%患者の血清に存在するAMAはまもなく、PBCの検査室診断についての土台になった。ミトコンドリアにおける自己抗原性反応性は、M1およびM2と名付けられた。M2反応性は、48〜74 kDaの構成要素のファミリーに対して向けられる。M2は、2-オキソ酸デヒドロゲナーゼ複合体(2-OADC)の酵素の複数の自己抗原性サブユニットを表し、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの別の例である。PBCの原因病理論においてピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)抗原の役割を同定する研究は、PDCが疾患の誘発に中心的な役割を果たすという概念を支持している(Gershwin et al., Immunol Rev 174:210-225, 2000); (Mackay et al., Immunol Rev 174:226-237, 2000)。PBCの症例の95%における最も頻度の高い反応性は、PDC-E2に属するE2 74 kDaサブユニットである。以下を含む、関連しているが別個の複合体が、存在する: 2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(OGDC)および分枝鎖(BC)2-OADC。3つの成分酵素(E1、2、3)は、NAD+のNADHへの還元と共に2-オキソ酸基質をアシル補酵素A(CoA)へ変換することができる触媒機能に寄与する。哺乳動物のPDCは、プロテインXまたはE-3結合タンパク質: (E3BP)と名付けられた、追加の構成要素を含む。PBC患者において、主要な抗原性応答は、PDC-E2およびE3BPに対して向けられる。E2ポリペプチドは、2つの縦列反復リポイルドメインを含み、一方、E3BPは単一のリポイルドメインを有する。リポイルドメインは、PBCのいくつかの自己抗原標的に見出され、本明細書において「PBCリポイルドメイン」といわれる。PBCは、グルココルチコイド、ならびにメトトレキセートおよびシクロスポリンAを含む免疫抑制剤で処置される。
実験的自己免疫性胆管炎(EAC)のマウスモデルは、非化膿性破壊性胆管炎(NSDC)およびAMAの産生を誘導する、雌SJL/Jマウスにおける哺乳動物PDCでの腹腔内(i.p.)感作を用いる(Jones, J Clin Pathol 53:813-21, 2000)。
他の自己免疫疾患および関連した自己抗原
重症筋無力症についての自己抗原は、アセチルコリン受容体内のエピトープを含みうる。尋常性天疱瘡において標的とされる自己抗原は、デスモグレイン3を含みうる。シェーグレン症候群抗原は、SSA(Ro); SSB(La); およびフォドリンを含みうる。尋常性天疱瘡についての優性自己抗原は、デスモグレイン3を含みうる。筋炎についてのパネルは、tRNAシンセターゼ(例えば、トレオニル、ヒスチジル、アラニル、イソロイシル、およびグリシル); Ku; Scl; SSA; U1 Snリボ核タンパク質; Mi-1; Mi-1; Jo-1; Ku; ならびにSRPを含みうる。強皮症についてのパネルは、Scl-70; セントロメア; U1リボ核タンパク質; およびフィブリラリンを含みうる。悪性貧血についてのパネルは、内因子; および胃H/K ATPアーゼの糖タンパク質βサブユニットを含みうる。全身性紅斑性狼瘡(SLE)についてのエピトープ抗原は、DNA: リン脂質; 核抗原; Ro; La; U1リボ核タンパク質; Ro60(SS-A); Ro52(SS-A); La(SS-B); カルレティキュリン; Grp78; Scl-70; ヒストン; Smタンパク質; およびクロマチンなどを含みうる。グレーブス病について、エピトープは、Na+/I-共輸送体;チロトロピン受容体;Tg;およびTPOを含みうる。
移植片対宿主病
ヒトにおける組織および器官移植の最大の制限の一つは、レシピエントの免疫系による組織移植の拒絶である。ドナーとレシピエントの間のMHCクラスIおよびII(HLA-A、HLA-B、およびHLA-DR)対立遺伝子の適合が高ければ高いほど、移植片生存は良くなる。移植片対宿主病(GVHD)は、同種異系造血細胞を含む移植片を受ける患者において重大な罹患率および死亡率を引き起こす。造血細胞は、骨髄移植片、幹細胞移植片、および他の移植片に存在する。HLA適合同胞由来の移植片を受ける患者の約50%が、中等度から重度のGVHDを発症し、発生率は、非HLA適合移植片においてよりずっと高い。中等度から重度のGVHDを発症する患者の3分の1は結果として死亡する。ドナー移植片におけるTリンパ球および他の免疫細胞は、ポリペプチドのアミノ酸配列における変異、特に、ヒトの第6染色体上の主要組織適合複合体(MHC)遺伝子複合体にコードされるタンパク質における変異を発現するレシピエントの細胞を攻撃する。同種異系造血細胞を含む移植におけるGVHDについて最も大きな影響を及ぼすタンパク質は、高度に多型性である(人々の間での広範なアミノ酸変異)クラスIタンパク質(HLA-A、-B、および-C)およびクラスIIタンパク質(DRB1、DQB1、およびDPB1)である(Appelbaum, Nature 411:385-389, 2001)。MHCクラスI対立遺伝子がドナーとレシピエントの間で血清学的に「適合している」場合でさえも、DNA配列決定により、症例の30%において対立遺伝子レベルのミスマッチがあることが明らかにされ、適合したドナー-レシピエントのペアにおいてさえもクラスI指向性GVHDについての基礎を提供する(Appelbaum, Nature 411:385-389, 2001)。マイナー組織適合性自己抗原GVHDは、しばしば、皮膚、腸管、肝臓、肺、および膵臓への損傷を引き起こす。GVHDは、グルココルチコイド、シクロスポリン、メトトレキセート、フルダラビン、およびOKT3で処置される。
組織移植拒絶
肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、ならびに他の器官および組織を含む組織移植片の免疫拒絶は、移植器官に対して向けられた移植レシピエントにおける免疫応答により媒介される。同種異系移植器官は、移植レシピエントのアミノ酸配列と比較した場合、アミノ酸配列に変異を有するタンパク質を含む。移植器官のアミノ酸配列は移植レシピエントのそれらと異なるため、それらは、しばしば、移植器官に対するレシピエントにおける免疫応答を誘発する。移植器官の拒絶は、主な合併症、および組織移植の制限であり、かつ、レシピエントにおいて移植器官の不全を引き起こしうる。拒絶に起因する慢性炎症は、しばしば、移植器官における機能障害へ導く。移植レシピエントは、現在、拒絶を予防し、抑制するさまざまな免疫抑制剤で処置される。これらの作用物質には、グルココルチコイド、シクロスポリンA、セルセプト(Cellcept)、FK-506、およびOKT3が挙げられる。
免疫抑制剤または免疫調節剤
本明細書において用いられる場合、「免疫抑制剤または免疫調節剤」は、哺乳動物の免疫応答を広くまたは特異的に抑制または調節する作用物質である。そのような作用物質は、例えば、小分子、または生物学的治療薬(例えば、可溶性受容体または抗体などの、阻害核酸またはタンパク質)でありうる。例示的な免疫抑制剤にはグルココルチコイド(例えば、メチルプレドニゾロン)、細胞毒性剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、シクロホスファミド、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキセート、クラドリビン、ミコフェノール酸モフェチルなどが挙げられる。免疫調節剤には、リンパ球(B細胞もしくはT細胞)またはサイトカイン、例えばTNFαの作用に影響を及ぼす抗体または他のタンパク質(例えば、エタネルセプトおよびインフリキシマブ)が挙げられる。以下で説明される通り、典型的な態様において、免疫調節剤はB細胞特異的作用物質である。
B細胞特異的作用物質
「B細胞」は骨髄内で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、記憶B細胞、またはエフェクターB細胞(形質細胞)を含む。本明細書におけるB細胞は正常または非悪性のB細胞である。
本明細書における「B細胞表面マーカー」または「B細胞表面抗原」は、B細胞の表面上に発現される抗原であり、それに結合するアンタゴニストの標的となることができる。例示的なB細胞表面マーカーとしては、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85およびCD86白血球表面マーカーが挙げられる(記述については、The Leukocyte Antigen Facts Book, 2nd Edition. 1997, ed. Barclay et al. Academic Press, Harcourt Brace & Co., New Yorkを参照されたい)。他のB細胞表面マーカーには、RP105、FcRH2、B細胞CR2、CCR6、P2X5、HLA-DOB、CXCR5、FCER2、BR3、BAFF、BLyS、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMA、および239287が含まれる。特に関心対象のB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織と比較してB細胞上に選択的に発現されており、前駆体B細胞にも成熟B細胞にもともに発現されてもよい。本明細書における好ましいB細胞表面マーカーはCD20、CD22、CD23、CD40、BR3、BLyS、およびBAFFである。
「CD20」抗原または「CD20」は、末梢血またはリンパ系器官に由来するB細胞の90%超の表面にみられる約35 kDaの非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は正常B細胞上に存在し、幹細胞上には発現されない。文献中でのCD20の他の名称には「Bリンパ球限定抗原(B-lymphocyte-restricted antigen)」および「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例えば、Clark et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 82:1766 (1985)に記述されている。
BL-CAMまたはLyb8としても公知の「CD22」抗原または「CD22」は、約130 kD (還元型)から140 kD (非還元型)の分子量を有する1型膜内在性糖タンパク質である。これはBリンパ球の細胞質にも細胞膜にもともに発現される。CD22抗原は、B細胞リンパ球分化の初期にCD19抗原とおよそ同じ段階で現れる。他のB細胞マーカーと異なり、CD22膜発現は成熟B細胞(CD22+)と形質細胞(CD22-)の間に含まれる後期分化段階に限定される。CD22抗原は、例えば、Wilson et al., J. Exp. Med., 173: 137 (1991)およびWilson et al., J. Immunol. 150:5013 (1993)に記述されている。
本明細書において用いられる場合、「B細胞特異的作用物質」および「B細胞を標的とする作用物質」という用語は、例えば、B細胞によって誘発される体液性反応を低減または防止することにより、B細胞の機能を修飾、改変、低減または阻害することでB細胞を特異的に標的とする免疫調節剤をいう。B細胞特異的作用物質は、好ましくは、それによって処置された哺乳動物におけるB細胞を枯渇させる(すなわち、循環血中B細胞レベルを低減する)ことができる。そのような枯渇は、ADCCおよび/もしくはCDC、B細胞増殖の阻害および/もしくはB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)またはB細胞分化の阻害もしくは妨害などのさまざまな機構を介して達成されうる。したがって、本発明の作用物質は「B細胞の成長を停止する作用物質」、「B細胞成長阻害剤」、「B細胞分化を停止する作用物質」または「B細胞分化阻害剤」と記述されることもある。使用される作用物質の性質は、本発明にとって重要ではなく、例えば、ポリペプチド(例えば、抗体もしくは抗体断片)、核酸(例えば、siRNAなどの阻害核酸)または小分子であってよい。いくつかの態様において、本発明により標的とされるB細胞は、CD20を発現しているB細胞である。B細胞特異的作用物質は、アポトーシスならびに枯渇、およびB細胞の増殖および成長の遅延もしくは停止またはB細胞の生存に向けた他の測定で当技術分野において公知のさまざまな方法によりスクリーニングすることができる。例示的な抗体としては、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、およびベルツズマブが挙げられ、これらの全てが先行技術において記述されている。
例えば、迅速かつ特異的な分解を目的にc-mycタンパク質を標的化することによりB細胞増殖の阻害について化合物がスクリーニングされたSundberg et al., Cancer Research 66, 1775-1782 (2006)に記述されている通りにスクリーニングする方法を用いることができる。同様に、BAFF、APRIL、とB細胞の生存およびスクリーニングの指導に関してはMackay et al., Annual Review of Immunology, 21:231-264 (2003)、ならびにB細胞増殖とAPRILに関してはThangarajh et al., Scandinavian J. Immunol., 65(1):92 (2007)を参照されたい。さらに、Sakurai et al., European J. Immunol, 37(1): 110 (2007)には、BAFF-RおよびCD40によって共刺激された抗体産生をTACIが減弱することが開示されている。さらに、Acosta-Rodriguez et al., European J. Immunol, 37(4):990 (2007)には、BAFFおよびLPSが協調してB細胞を誘導し、CD95/Fasを介した細胞死の影響を受けやすくなることが開示されている。さらなるスクリーニング方法は、Martin and Chan, 「B Cell Immunobiology in Disease: Evolving Concepts from the Clinic Annual Review of Immunology」, 24:467-496 (2006)、Pillai et al., 「Marginal Zone B Cells」 Annual Review of Immunology, 23: 161-196 (2005)、およびHardy and Hayakawa, 「B Cell Development Pathways」, Annual Review of Immunology, 19:595-621 (2001)のなかで見出すことができる。これらのおよび他の参考文献から、当業者は適切なアンタゴニストをスクリーニングすることができる。RNA干渉(RNAi) (Ngo et al., Nature, 441:106-110 (2006))のほか、この目的のためにはマイクロアレイを用いることができる(Hagmann, Science, 290:82-83 (2000))。
本発明の範囲内に含まれるB細胞特異的作用物質には、抗体、合成または天然の配列のペプチド、イムノアドヘシン、および別の分子に任意で結合または融合されてもよい、B細胞表面マーカーまたはB細胞特異的な生存因子もしくは増殖因子に結合する小分子アンタゴニストが含まれる。好ましいB細胞特異的作用物質には抗体またはイムノアドヘシンが含まれる。それはイムノアドヘシンなどのBLySアンタゴニストを含み、好ましくは抗CD23抗体(例えば、ルミリキシマブ)、抗CD20抗体、抗CD22抗体もしくは抗BR3抗体、APRILアンタゴニスト、および/またはBLySイムノアドヘシンである。BLySイムノアドヘシンは、BR3の細胞外ドメインを含むBR3イムノアドヘシン、TACIの細胞外ドメインを含むTACIイムノアドヘシン、およびBCMAの細胞外ドメインを含むBCMAイムノアドヘシンからなる群より選択されることが好ましい。最も好ましいBR3イムノアドヘシンは、WO 2005/00351および米国特許第2005/0095243号のSEQ ID NO:2のhBR3-Fcである。同様に、米国特許第2005/0163775号およびWO 2006/068867を参照されたい。別の好ましいBLyS B細胞特異的作用物質は、残基番号162-275を含んだBLySの領域内でBLySを結合することがより好ましい、抗BLyS抗体であるか、またはヒトBR3の残基番号23-38を含んだ領域中でBR3を結合することがより好ましい、抗BR3抗体である。本明細書において特に好ましいイムノアドヘシンはTACI-Ig、またはアタシセプト、およびBR3-Igである。B細胞特異的作用物質の好ましいセットは、CD20、CD22、BAFF、またはAPRILに対するものである。B細胞特異的作用物質は、1つの局面において、抗体またはTACI-Igでありうる。
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性を示す限り抗体断片を特に網羅する。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から特定され、ならびに分離および/または回収されたものである。その自然環境の夾雑成分は、抗体の研究的、診断的または治療的使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様の溶質を含みうる。いくつかの態様において、抗体は、(1) 例えば、Lowry法で測定した場合に95重量%超の抗体まで、およびいくつかの態様において、99重量%超まで、(2) 例えば、スピニングカップ配列決定装置の使用によって少なくとも15残基のN末端もしくは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3) 例えば、クマシーブルーもしくは銀染色を用いた還元もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによる均質にまで、精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイチューの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製段階により調製される。
「天然抗体」および「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合され、一方でジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖によって変わる。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置かれた鎖間ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、いくつかの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)を、およびその他端に定常ドメインを有し; 軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
本明細書における「抗体B細胞特異的作用物質」または「抗体アンタゴニスト」は、B細胞上のB細胞表面マーカーに結合することによって、哺乳動物におけるB細胞を破壊もしくは枯渇させる、および/または、例えば、B細胞によって誘発される体液性反応を低減もしくは防止することにより、1つもしくは複数のB細胞機能を妨害する抗体である。抗体アンタゴニストは、好ましくは、それによって処置された哺乳動物におけるB細胞を枯渇させる(すなわち、循環血中B細胞レベルを低減する)ことができる。そのような枯渇は、ADCCおよび/もしくはCDC、B細胞増殖の阻害ならびに/またはB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)などのさまざまな機構を介して達成されうる。
「B細胞表面マーカーに結合する抗体」または「B細胞表面マーカーに対する抗体」は、B細胞表面マーカーに結合することによって、哺乳動物におけるB細胞を破壊もしくは枯渇させる、および/または、例えば、B細胞によって誘発される体液性反応を低減もしくは防止することにより、1つもしくは複数のB細胞機能を妨害する分子である。抗体は、好ましくは、それによって処置された哺乳動物におけるB細胞を枯渇させる(すなわち、循環血中B細胞レベルを低減する)ことができる。そのような枯渇は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)、B細胞増殖の阻害、ならびに/またはB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)などのさまざまな機構を介して達成されうる。B細胞表面マーカーに結合する抗体は、以下の通りに指定することができ: CD20またはCD22に結合する抗体は、それぞれ「抗CD20抗体」または「抗CD22抗体」である。1つの態様において、抗体は抗-CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、または抗BR3抗体である。典型的に用いられる別の態様は、抗CD20抗体、抗CD22抗体、または抗BR3抗体である抗体である。典型的に用いられる別の態様は抗CD20抗体または抗CD22抗体であり、より頻繁に用いられる態様は、抗CD20抗体である抗体である。
抗CD20抗体の例には以下が挙げられる: 現在では「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)/マブセラ(登録商標)」)と呼ばれる「C2B8」(米国特許第5,736,137号); Biogen Idec, Inc.から市販されている「Y2B8」または「イブリツモマブチウキセタン」(ゼバリン(登録商標))と名付けられたイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体(例えば、米国特許第5,736,137号; 1993年6月22日にアクセッション番号HB11388の下でATCCに寄託された2B8); 「131I-B1」またはCorixaから市販されている「ヨウ素I131トシツモマブ」抗体(ベキサール(商標))を作製するために131Iで標識されてもよい、「トシツモマブ」とも呼ばれるマウスIgG2a 「B1」(例えば、米国特許第5,595,721号も参照されたい); マウスモノクローナル抗体「1F5」(例えば、Press et al. Blood 69(2):584-591 (1987)および「フレームワークパッチ」またはヒト化1F5を含むその変種(例えば、WO 2003/002607, Leung, S.; ATCC寄託番号HB-96450); マウス2H7およびキメラ2H7抗体(例えば、米国特許第5,677,180号); 2H7抗体(例えばWO 2004/056312 (Lowman et al.)および以下に掲げるもの); B細胞の細胞膜のCD20分子を標的としたHUMAX-CD20(商標) (オファツムマブ)完全ヒト、高親和性抗体(Genmab, Denmark; 例えば、Glennie and van de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510 (2003)およびCragg et al., Blood 101: 1045-1052 (2003)を参照されたい); WO 2004/035607およびWO 2005/103081 (Teeling et al., GenMab/Medarex)に記載のヒトモノクローナル抗体; 米国特許第2004/0093621号(Shitara et al.)に記述されているFc領域に結合された複雑なN-グリコシド結合糖鎖を有する抗体; WO 2006/106959 (Numazaki et al,. Biomedics Inc.)に記述されているCD20抗原の細胞外エピトープに対して高い結合親和性を有するキメラ化またはヒト化モノクローナル抗体; HB20-3、HB20-4、HB20-25、およびMB20-11などのCD20に結合するモノクローナル抗体および抗原結合断片(例えば、WO 2005/000901, Tedder et al.); TRU-015を含むが、これに限定されない、CD20に結合する一本鎖タンパク質(例えば、米国特許第2005/0186216号(Ledbetter and Hayden-Ledbetter); 米国特許第2005/0202534号(Hayden-Ledbetter and Ledbetter); 米国特許第2005/0202028号(Hayden-Ledbetter and Ledbetter); 米国特許第2005/136049号(Ledbetter et al); 米国特許第2005/0202023号(Hayden-Ledbetter and Ledbetter) - Trubion Pharm Inc.); 例えば、WO 2004/103404; 米国特許第2005/0025764号; および米国特許第2006/0251652号(Watkins et al., Applied Molecular Evolution, Inc.)に記載のAME系列の抗体、例えば、AME-133(商標)抗体などのCD20結合分子、ならびに、例えば、WO 2005/070963 (Allan et al., Applied Molecular Evolution, Inc.)に記載のFc変異を有する抗CD20抗体; WO 2005/016969および米国特許第2005/0069545号(Carr et al.)に記述されているものなどのCD20結合分子; 例えば、WO 2005/014618 (Chang et al.)に記載の二重特異性抗体; 例えば、米国特許第7,151,164号(Hansen et al., Immunomedics; 米国特許第2005/0106108号(Leung and Hansen; Immunomedics)に記述のヒト化LL2モノクローナル抗体および他の抗CD20抗体; 例えば、WO 2006/130458; Gazit et al., Amgen/AstraZeneca)に記述のCD20に対する完全ヒト抗体; 例えば、WO 2006/126069 (Morawala, Avestha Gengraine Technologies Pvt Ltd.)に記述のCD20に対する抗体; 例えば、WO 2005/044859; 米国特許第2005/0123546号; 米国特許第2004/0072290号; および米国特許第2003/0175884号(Umana et al; GlycArt Biotechnology AG)に記述のCD20に対するキメラまたはヒト化B-Ly1抗体(例えば、GA-101); A20抗体またはその変種、例えばキメラまたはヒト化A20抗体(それぞれcA20、hA20)およびIMMUN-106 (例えば、米国特許第2003/0219433号, Immunomedics); ならびにInternational Leukocyte Typing Workshopから入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1またはNU-B2 (例えば、Valentine et al., Leukocyte Typing III (McMichael, Ed., p. 440, Oxford University Press (1987))。本明細書における好ましい抗CD20抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗CD20抗体、より好ましくはリツキシマブ、2H7抗体、キメラまたはヒト化A20抗体(Immunomedics)、およびHUMAX-CD20(商標)ヒト抗CD20抗体(Genmab)である。
抗CD22抗体の例には、EP 1,476,120 (Tedder and Tuscano)、EP 1,485,130 (Tedder)およびEP 1,504,035 (Popplewell et al.)に記述されているもの、ならびに米国特許第2004/0258682号(Leung et al.)、米国特許第5,484,892号(Dana-Farber)、米国特許第6,183,744号(Immunomedics, epratuzumab)および米国特許第7,074,403号(Goldenberg and Hansen)に記述されているものが挙げられる。
B細胞表面マーカーに対する抗体の好ましい具体例には、リツキシマブ、2H7抗体および本明細書において定義されるその変種、2F2 (HUMAX-CD20(商標)) (オファツムマブ)ヒト抗CD20抗体(リツキシマブとは異なるCD20エピトープに結合するIgG1κヒトMAb)、ヒト化A20抗体ベルツズマブ(IMMUN-106(商標)またはhA20)、マウス由来の相補性決定領域(CDR)を有するかつエプラツズマブ(ヒト化抗CD22 IgG1抗体)と同一のヒトフレームワーク領域の90%を有するヒト化遺伝子操作抗体; 低分子モジュラー免疫薬剤(small, modular immunopharmaceutical)(SMIP) (本明細書において免疫薬剤と呼ばれる)、ならびに抗CD22抗体、例えばエプラツズマブ、ABIOGEN(商標)抗CD22抗体およびIMPHERON(商標)抗B細胞抗体が挙げられる。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインをいう。重鎖の可変ドメインは「VH」ということができる。軽鎖の可変ドメインは「VL」ということができる。これらのドメインは一般に抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性および特異性に使用されているという事実をいう。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖および重鎖の可変ドメインの両方の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を連結するループ結合、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのCDRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FRによって近接して結合され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al., NIH Publ. No.91-3242, Vol. I, 647-669 [1991]を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関わっているものではないが、さまざまなエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害への抗体の関与を示す。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別されるタイプの1つに割り当てることができる。
免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依って、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主なクラス: IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのうちのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分類することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配位は周知である。
エフェクター機能に関して、例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増強するため、本発明の抗体を修飾することが望ましい場合がある。これは、抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸置換を導入することによって達成されうる。代替としてまたはさらに、システイン残基をFc領域に導入し、それによって、この領域での鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にすることができる。このようにして作製されたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能ならびに/または増大された補体媒介性細胞死滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を持ちうる。Caron et al., J. Exp Med. 176: 1191-1195 (1992)およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。また、増強された抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体を、Wolff et al. Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記述されている通りにヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製することができる。あるいは、抗体を遺伝子操作して二重のFc領域を持たせ、それによって補体による溶解およびADCC能を増強させてもよい。Stevenson et al. Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照されたい。
成長阻害抗体または分化阻害抗体などのCD20に対する本発明の関連の中の抗体を特定するために、CD20を発現するB細胞の分化を阻害する抗体をスクリーニングすることができる。
好ましい態様において、CD20を発現している細胞の成長を停止させる作用物質、CD20を発現している細胞を破壊する作用物質、またはCD20を発現している細胞の枯渇を引き起こす作用物質は、抗体である。本発明によって用いられる好ましい抗体の産生のための例示的な技法に関する記述が続けられる。
抗体の産生のために用いられるCD20抗原は、例えば、CD20の細胞外ドメインの可溶型または所望のエピトープを含有する、その一部分でありうる。あるいは、細胞表面にCD20を発現している細胞を用いて、抗体を作製してもよい。抗体を作製するのに有用な抗原の他の型は、当業者には明らかであろう。
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において産生される。免疫される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンまたは大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性物質または誘導体化物質、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはRおよびR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRにより結合させることが有用でありうる。
動物を、例えば、タンパク質または結合体100 μgまたは5 μg (それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性結合体、または誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、この動物に、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5〜1/10のペプチドまたは結合体を複数部位に皮下注射することによって追加免疫する。7〜14日後に動物から採血し、抗体価について血清をアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物に追加免疫する。好ましくは、同じ抗原の結合体であるが、異なるタンパク質におよび/または異なる架橋試薬によって結合された、結合体を動物に追加免疫する。結合体はまた、タンパク質融合体として組換え細胞培養において作製することもできる。また、アラムなどの凝集化剤が、免疫応答を増強するために適切に用いられる。
(ii) モノクローナル抗体
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体をいい、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して作製される。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して作製された異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して作製される。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによる夾雑がないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという抗体の特性を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を要すると解釈されるものではない。例えば、本発明によって用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法により作製することができ、または組換えDNA法により作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記述されている技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという抗体の特性を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を要すると解釈されるものではない。例えば、本発明によって用いられるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えばKohler and Milstein., Nature, 256:495-97 (1975); Hongo et al., Hybridoma, 14(3):253-260 (1995)、Harlow et al, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling et al., Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1992); Sidhu et al., J. Mol. Biol., 338(2):299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol., 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101 (34): 12467-12472 (2004); およびLee et al., J. Immunol. Methods, 284(1-2): 119-132(2004)を参照されたい)、ならびにヒト免疫グロブリン座位の一部もしくは全部、またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO 1998/24893; WO 1996/34096; WO 1996/33735; WO 1991/10741; Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362: 255-258 (1993); Bruggemann et al., Year in Immunol., 7:33 (1993); 米国特許第5,545,807号; 同第5,545,806号; 同第5,569,825号; 同第5,625,126号; 同第5,633,425号; および同第5,661,016号; Marks et al., Bio/Technology, 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature, 368:856-859 (1994); Morrison, Nature, 368:812-813 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnol, 14:845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnol., 14:826 (1996); ならびにLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13:65-93 (1995)を参照されたい)を含む、種々の技法によって作製することができる。
本明細書におけるモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、これにおいては、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において対応する配列と同一または相同であり、その一方で鎖の残部は、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、および、所望の生物学的活性を示す限り、このような抗体の断片において対応する配列と同一または相同である(米国特許第4,816,567号; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 [1984])。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法を用いて作製することができ、または組換えDNA法により作製することができる(米国特許第4,816,567号)。
ハイブリドーマ法においては、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを上記の通りに免疫し、免疫に用いられるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を導き出す。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球をポリエチレングリコールなどの、適切な融合剤を用い骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1種または複数種の物質を好ましくは含有する適した培地に蒔き、成長させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いているなら、ハイブリドーマのための培地には、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンが含まれよう(HAT培地)。
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの産生を支援し、HAT培地などの培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫細胞系はマウス骨髄腫系、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍、ならびにアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, Rockville, Maryland USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞に由来するものである。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の産生について記述されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); およびBrodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が成長している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降法により、またはインビトロ結合アッセイ法、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)法または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法により測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後に、このクローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的な方法によって成長させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。この目的に適した培地には、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで成長させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどの従来の抗体精製手順により、培地、腹水、または血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞はこのようなDNAの好ましい供給源となる。単離されたら、DNAを発現ベクター中に入れ、次いでこれを、トランスフェクトしなければ抗体タンパク質を産生しない大腸菌(E. coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞でのモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262 (1993)およびPluckthun, Immunol. Revs., 130: 151-188 (1992)が含まれる。
さらなる態様において、モノクローナル抗体または抗体断片は、McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990)に記述された技法を用いて作製される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol, 222:581-597 (1991)には、ファージライブラリーを用いた、それぞれ、マウスおよびヒト抗体の単離が記述されている。後続の刊行物には、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783 (1992))、ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染およびインビボ組換え((Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266 (1993))が記述されている。したがって、これらの技法はモノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、相同マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号; およびMorrison, et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984))、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部もしくは一部を共有結合させることにより修飾することができる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換されるか、または、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作製する。
(iii) ヒト化抗体
非ヒト(例えば、マウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2もしくは抗体の他の抗原結合部分配列など)である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、または移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の性能をさらに洗練かつ最大化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、この場合、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分も含む。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Reichmann et al., Nature, 332:323-329 (1988); およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)を参照されたい。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、マカクザルを関心対象の抗原で免疫することによって産生された抗体に由来するPRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において記述されている。好ましくは、ヒト化抗体は、ヒト以外のものである供給源由来の抗体に1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれることが多い。ヒト化は、超可変領域配列をヒト抗体の対応配列の代わりに用いることによって、Winterおよび共同研究者らの方法(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))にしたがって本質的には行うことができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくらかの超可変領域残基がおよび場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作製する際に用いられるヒトの軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯類のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993); Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987))。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から導出される特定のフレームワーク領域を用いる。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に用いることができる(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993))。
抗原に対する高親和性および他の好ましい生物学的特性は保持したままで抗体をヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法によれば、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いた親配列およびさまざまな概念的ヒト化産物の分析工程によってヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムを用いることができる。これらの表示の検証によって、候補免疫グロブリン配列の機能性における残基の役割の可能性の分析、すなわち、候補免疫グロブリンの、その抗原との結合能に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性の増大などの、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエントおよび移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼす際に関わる超可変領域残基である。
ヒト化されたまたは親和性成熟化された抗体のさまざまな型が企図される。例えば、ヒト化されたまたは親和性成熟化された抗体は、免疫結合体を作製するために1つまたは複数の細胞毒性剤と任意で結合されてもよい、Fabなどの、抗体断片でありうる。あるいは、ヒト化されたまたは親和性成熟化された抗体は、無傷のIgG1抗体などの、無傷の抗体でありうる。
(iv) ヒト抗体
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、および/または本明細書において開示されるヒト抗体を作製するための任意の技術を用いて作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除く。ヒト化のための別法として、ヒト抗体を作製することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを、免疫によって、産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在は可能である。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記述されている。このような生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えばJakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993); ならびに米国特許第5,591,669号、同第5,589,369号および同第5,545,807号を参照されたい。
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990))を、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体および抗体断片を産生するために用いることができる。この技法によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdなどの、繊維状バクテリオファージの主または副外被タンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的な抗体断片として提示される。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択によってまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。したがって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは種々の形式で行うことができ; その概説としては、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源をファージディスプレイに用いることができる。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)では、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小ランダムコンビナトリアルライブラリーから多種多様な抗オキサゾロン抗体が単離されている。非免疫ヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体をMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)、またはGriffith et al., EMBO J. 12:725-734 (1993)により記述されている技法に本質的にはしたがって単離することができる。また、米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号を参照されたい。
(v) 抗体断片
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部分、好ましくは無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片; ダイアボディ(diabody); 線形抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]); 一本鎖抗体分子; ならびに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
抗体断片の産生のためにさまざまな技法が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク質分解消化を介して導出された(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24: 107-117 (1992); およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在では組換え宿主細胞によって直接産生することができる。例えば、抗体断片は上記の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')2断片を形成させることができる(Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。別の取り組みによれば、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片の産生のための他の技法は当業者には明らかであろう。他の態様において、選択の抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。WO 93/16185; 米国特許第5,571,894号; および米国特許第5,587,458号を参照されたい。また、抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記述されているような「線形抗体」であってもよい。このような線形抗体断片は単一特異性または二重特異性でもよい。
抗体のパパイン消化により、それぞれが単一の抗原結合部位を有した、「Fab」断片と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片、および容易に結晶化する能力が名に反映されている、残りの「Fc」断片が生じる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有するが、それでも抗原を架橋結合する能力を有する、F(ab')2断片が得られる。
また、Fab断片も、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体のヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含めた、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数残基の付加によって、Fab断片と異なる。定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'の本明細書における命名は、Fab'-SHである。F(ab')2抗体断片は、最初、その間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として産生された。また、抗体断片の他の化学結合も公知である。
「Fv」は、完全な抗原認識部位および結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、1本の重鎖および1本の軽鎖の可変ドメインの、密な非共有結合の二量体からなる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を規定するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのCDRが抗体に抗原結合の特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)さえも、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識かつ結合する能力を有する。
「一本鎖Fv」または「sFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによってsFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。sFvの概説としては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片をいい、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。短すぎて同一鎖上での2つのドメイン間で対形成できないリンカーを用いることにより、ドメインを別の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、例えば、EP 404,097; WO 93/11161; およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに十分に記述されている。
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、CD40またはCD20の2つの異なるエピトープに結合することができる。他のそのような抗体では、CD20結合部位と、関心対象の自己免疫疾患に関連する自己抗原に結合する結合部位とを組み合わせることができる。あるいは、抗CD20アームまたは抗CD40アームは、細胞防御機構をCD20発現細胞に集中させるようにFcγRI (CD64)、FcγRII (CD32)およびFcγRIII (CD16)などの、IgGに対するFc受容体(FcγR)、またはT細胞受容体分子(例えばCD2またはCD3)などの白血球上のトリガリング分子に結合するアームと組み合わされてもよい。
二価超の結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)。
「結合親和性」は一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総体的な強度をいう。特に指定のない限り、本明細書において用いられる場合、「結合親和性」は、結合対の成員(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する内因の結合親和性をいう。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書において記述されるものを含め、当技術分野において公知の共通の方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に、抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は一般に、抗原にもっと早く結合してもっと長く結合したままとなる傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法が当技術分野において公知であり、それらのいずれかを本発明の目的に用いることができる。結合親和性を測定するための特定の例証的かつ例示的な態様を以下に記述する。
1つの態様において、本発明による「Kd」または「Kd値」は、以下のアッセイ法によって記述される通りに、関心対象の抗体のFab型とその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)法によって測定される。一連の力価の非標識抗原の存在下において最小濃度の(125I)標識抗原にてFabを平衡化し、次に抗Fab抗体でコーティングされたプレートと結合した抗原を捕捉することにより、抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol., 293:865-881 (1999)を参照されたい)。アッセイ法の条件を確立するために、マイクロタイタープレート(DYNEX Technologies, Inc.)を50 mM炭酸ナトリウム(pH 9.6)中5 μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で終夜コーティングし、その後、PBS中2% (w/v)のウシ血清アルブミンで室温(およそ23℃)にて2〜5時間ブロッキングする。非吸着プレート(Nunc #269620)において、100 pMまたは26 pMの[125I]抗原を関心対象のFabの連続希釈液と混合する(例えば、Presta et al., Cancer Res., 57:4593-4599 (1997)における、抗VEGF抗体Fab-12の評価にしたがう)。関心対象のFabを次いで終夜インキュベートするが; しかしながら、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまでにさらに長い時間(例えば、約65時間)続けられることもある。その後、室温で(例えば、1時間)のインキュベーションのために混合物を捕捉プレートに移し入れる。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のTWEEN-20(商標)の界面活性剤で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150 μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT-20(商標); Packard)を加え、プレートをTOPCOUNT(商標)計測器(Packard)にて10分間計測する。最大結合の20%未満または20%相当をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイ法で用いるために選択する。
別の態様によれば、およそ10反応単位(RU)の固定された抗原CM5チップとともに25℃でBIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000装置(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイ法の使用によりKdまたはKd値を測定する。手短に言えば、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、供給元の使用説明書にしたがってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10 mM酢酸ナトリウム, pH 4.8で5 μg/ml (およそ0.2 μM)に希釈した後に、結合タンパク質の反応単位(RU)がおよそ10となるように5 μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、未反応群をブロッキングするために1 Mのエタノールアミンを注入する。動力学的な測定のために、Fabの2倍連続希釈液(0.78 nM〜500 nM)を25℃にて、およそ25 μl/分の流速で0.05% TWEEN 20(商標)界面活性剤を含むPBS(PBST)中にて注入する。会合および解離のセンサグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)および解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol., 293:865-881 (1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイ法による結合速度が106 M-1s-1を上回るなら、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow-equipped spectrophotometer)( Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)にて測定される、漸増濃度の抗原の存在下、PBS, pH 7.2中20 nMの抗抗原抗体(Fab型)の25℃での蛍光放出強度(励起 = 295 nm; 放出 = 340 nm、16 nmの帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を用いることによって結合速度を測定することができる。
また、本発明による「結合速度」、「会合の速度」、「会合速度」または「kon」は、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000システム(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いて上記の通りに測定することができる。
本明細書において用いられる「実質的に類似の」または「実質的に同じの」という用語は、当業者によって二つの値の間の相違に、該値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特性との関連のなかでわずかにまたは全く生物学的および/または統計学的有意差がないものと考えられるような、二つの数値(例えば、一方が本発明の抗体に関連する数値、もう一方が参照/比較抗体に関連する数値)間の十分に高い類似度を意味する。前記の二つの値の間の相違は、例えば、参照/比較値に応じて約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、および/または約10%未満である。
本明細書において用いられる「実質的に低減された」または「実質的に異なる」という語句は、当業者によって二つの値の間の相違に、該値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特性との関連のなかで統計学的に有意であるものと考えられるような、二つの数値(一般に、一方が分子に関連する数値、もう一方が参照/比較分子に関連する数値)間の十分に高い相違度を意味する。前記の二つの値の間の相違は、例えば、参照/比較分子の値に応じて約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、および/または約50%超である。
(vii) 阻害核酸
いくつかの態様において、免疫抑制剤または免疫調節剤は、B細胞または他のリンパ球における標的遺伝子の発現を阻害する阻害核酸であり、例えば、低分子干渉RNA (siRNA; 例えば、二本鎖リボ核酸(dsRNA)または低分子ヘアピン型RNA (shRNA))および低分子干渉DNA/RNA (siD/R-NA; 例えば、DNAおよびRNAの二本鎖キメラ(dsD/R-NA)またはDNAおよびRNAの低分子ヘアピン型キメラ(shD/R-NA))を含む。
本明細書において用いられる場合、「siRNA」という用語は、標的B細胞mRNAの翻訳を妨止する二本鎖RNA分子をいう。DNAがRNA転写の鋳型であるものを含め、siRNAを細胞へ導入する標準的な技法が用いられる。siRNAは、標的遺伝子のセンス核酸配列(「センス鎖」ともいわれる)の一部、標的遺伝子のアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」ともいわれる)の一部またはその両方を含む。単一の転写産物が標的遺伝子のセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有する、例えば、ヘアピンなどのsiRNAを構築することができる。siRNAはdsRNAまたはshRNAのいずれかでよい。
本明細書において用いられる場合、「dsRNA」という用語は、互いに相補的な配列から構成され、かつ相補的配列を介してともにアニールし二本鎖RNA分子を形成した、2つのRNA分子の構築体をいう。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列より選択される「センス」RNAまたは「アンチセンス」RNAだけでなく、標的遺伝子の非コード領域より選択されるヌクレオチド配列を有するRNA分子も含んでよい。
「shRNA」という用語は、本明細書において用いられる場合、互いに相補的な第一の領域および第二の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成される、ステムループ構造を有するsiRNAをいう。これらの領域の相補性の程度および向きは、塩基対合がそれらの領域の間で生じるのに十分であり、第一の領域および第二の領域はループ領域によって連結され、このループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の間で塩基対合が無いことに起因する。shRNAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖の間に介在する一本鎖領域であり、「介在性一本鎖」といわれることもある。
(viii) 免疫抑制剤または免疫調節剤の投与
当業者は、免疫抑制剤または免疫調節剤(例えば、B細胞特異的作用物質)を、作用物質、処置されている特定の疾患、患者などに依って、種々の方法で投与できることを認識するであろう。本発明の作用物質または組成物を用いて、ヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ヒヒおよびチンパンジー、特に商業的に重要な動物または家畜を含むが、これらに限定されない、任意の他の哺乳動物を含む対象または患者において自己免疫疾患を処置および/または予防することができる。
免疫抑制剤または免疫調節剤は、他の治療用物質、特に、以下に記述されるDNA抗原特異的な治療物質を任意で含んでもよい薬学的組成物に好都合に製剤化される。この製剤は、抗炎症剤、鎮痛薬などのような他の剤を含んでもよい。
本発明の免疫抑制剤または免疫調節剤およびDNA抗原特異的な治療物質は、1つまたは複数の他の薬理学的な作用物質と連続的にまたは同時に投与することができる。医薬および薬理学的な作用物質の量は、例えば、どのような種類の薬理学的な作用物質が用いられるか、処置されている疾患、ならびに投与のスケジュールおよび経路に依る。
本明細書において特に言及される成分に加えて、本発明の薬学的な作用物質および組成物は、問題の製剤の種類を考慮して、当技術分野において慣例的な他の作用物質も含みうることが理解されるべきである。
いくつかの態様において、免疫抑制剤もしくは免疫調節剤および/またはDNA抗原特異的な治療物質は、自己免疫疾患を処置するのに有用な材料を含む製造物およびキットに含めることができる。該製造物は、ラベルを有する本薬学的組成物のいずれかの容器を含みうる。適した容器には、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。該容器は、ガラスまたはプラスチックなどの、種々の材料から形成されうる。容器上のラベルには、作用物質が、疾患の1つまたは複数の状態の処置または予防のために用いられることが示されるべきである。ラベルはまた、投与などに関する指示も示しうる。
本発明の免疫抑制剤または免疫調節剤は、薬学的組成物として直接的に、または必要なら、慣例的な製剤化の方法により製剤化して、投与することができる。したがって、本発明の薬学的組成物は、特定の制限なしに必要に応じて含めることができる薬物に通常用いられる薬学的に許容される担体、賦形剤などを含む。そのような担体の例は滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液などである。さらに、薬学的な作用物質または組成物は必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存料、界面活性剤などを含みうる。本発明の薬学的な作用物質または組成物は抗がんの目的に用いることができる。
「医薬」は、自己免疫疾患あるいは自己免疫疾患の兆候もしくは症候または副作用を処置するための活性な薬物である。
「薬学的製剤」という用語は、医薬の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつ製剤が投与される対象に対して許容されない毒性がある追加成分を含まない無菌調製物をいう。
「無菌」製剤は、無菌性であるか、または全ての生きている微生物およびそれらの胞子を含まない。
「添付文書」は、適応症、用途、投与量、投与、禁忌、包装された製品と併用される他の治療用製品、および/またはそのような治療用製品もしくは医薬の使用に関する警告などについての情報を含む、治療用製品または医薬の商業的包装に慣習的に含まれる指示書をいうように用いられる。
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば、自己免疫疾患の処置のための医薬、または本発明のバイオマーカー遺伝子もしくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む任意の製造品(例えば、包装または容器)である。製造品は、本発明の方法を行うための構成単位として、宣伝、流通または市販されることが好ましい。
「標的視聴者」は、とりわけ特定の使用、処置または適応症について、マーケティングまたは宣伝することにより、特定の医薬が販売促進されるかまたは販売促進されるよう意図される、人々の集団または施設であり、例えば、個々の患者、患者集団、新聞、医学文献および雑誌の読者、テレビまたはインターネットの視聴者、ラジオまたはインターネット聴視者、医師、製薬会社などである。
「試料」という用語は、個人から得られる任意の生体試料、生体液、体組織、細胞系、組織培養物、または他の供給源を広く意味するものとする。生体液は、例えば、リンパ液、血清、新鮮な全血、末梢血液単核細胞、凍結した全血、血漿(新鮮なものまたは凍結したものを含む)、尿、唾液、精液、滑液および髄液である。試料には、滑膜組織、皮膚、毛包、および骨髄も含まれる。哺乳動物から組織生検および生体液を得るための方法は、当技術分野において周知である。「試料」という用語が単独で用いられるなら、「試料」は「生体試料」であり、すなわち、これらの用語は互換的に用いられることを意味するものとする。
「血清試料」という用語は、個人から得られる任意の血清試料を広く意味するものとする。哺乳動物から血清を得るための方法は、当技術分野において周知である。
事前に投与された医薬の1つまたは複数に対する、対象または患者の反応に関して「〜に反応しない」という表現は、このような医薬の投与時に、対象または患者が、処置されている障害の処置に関して何らのもしくは十分な兆候を示さなかったこと、または医薬に対して臨床的に許容されない高度の毒性を示したこと、またはこのような医薬の最初の投与後に、処置の兆候が維持されなかったことを記述し、処置という言い回しはこの文脈において本明細書に定義されるように用いられる。「反応しない」という語句には、事前に投与された医薬に対して抵抗性および/または不応性である対象に関する記述が含まれ、付与されている医薬の服薬中に対象または患者が進行させた状況、および、もはや反応しない医薬に関わる投与計画の完了後12ヶ月以内(例えば、6ヶ月以内)に対象または患者が進行させた状況を含む。したがって、1つまたは複数の医薬に対する無反応性には、以前または現在の処置をもって、その後も活動性疾患を持ち続けている対象が含まれる。例えば、患者は、それらが反応しない医薬による治療の約1〜3ヶ月後も、活動性疾患の活動性を有している場合もある。そのような反応性は、問題の自己免疫疾患の処置に熟練している臨床医によって評価されうる。
医薬に対する無反応のために、1つまたは複数の医薬による以前または現在の処置から「臨床的に許容されない高い毒性レベル」を経験する対象は、例えば、重篤感染症、うっ血性心不全、脱髄(多発性硬化症に至る)、著しい過敏症、神経病理事象、高い度合いの自己免疫、子宮内膜がん、非ホジキンリンパ腫、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がんまたは黒色腫などのがん、結核(TB)などのような、経験豊かな臨床医によって重要であるものと考えられる、それらの処置と関連する1つまたは複数の負の副作用または有害事象を経験する。
「負の副作用の危険性を低減する」とは、以前に投与された医薬による同じ患者または別の患者の処置に起因して観察される危険性よりも低い程度にまで、本明細書におけるアンタゴニストによる処置に起因した副作用の危険性を低減することを意味する。このような副作用は、毒性に関して上に記載したものを含み、好ましくは感染症、がん、心不全、または脱髄である。
「相関する」または「相関すること」とは、任意の方法で、第一の分析またはプロトコルの成績および/または結果と、第二の分析またはプロトコルの成績および/または結果とを比較することを意味する。例えば、第一の分析またはプロトコルの結果を、第二のプロトコルの実行に用いてもよく、かつ/または第二の分析またはプロトコルを実施すべきかどうかを判定するために、第一の分析またはプロトコルの結果を用いてもよい。本明細書におけるさまざまな態様に関して、DNA抗原特異的な治療物質と組み合わせてB細胞特異的作用物質を用いる特定の治療投与計画を実施すべきかどうかを判定するために、分析アッセイ法の結果を用いてもよい。
DNA抗原特異的な治療物質と組み合わせて免疫抑制剤または免疫調節剤の治療的有効量を患者に投与する的確な方法が、担当医の裁量によることは、医療分野の当業者には理解されるであろう。投与量、他の自己免疫剤との組み合せ、投与のタイミングおよび頻度などを含めて、投与の方法は、このような併用治療に対して患者に起こりうる反応性の診断の程度、ならびに患者の状態および病歴の影響を受けうる。
併用治療を構成する各作用物質は、良好な医療行為と一致した様式で製剤化され、投薬され、かつ投与されるであろう。この文脈における考慮の因子には、処置される自己免疫疾患の特定の種類、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、自己免疫疾患の原因、作用物質の送達部位、起こりうる副作用、作用物質、すなわち免疫抑制剤もしくは免疫調節剤またはDNA抗原特異的な治療物質の種類、投与方法、投与スケジュール、および医者に公知の他の因子が含まれる。投与される作用物質の有効量は、このような考慮による影響を受けるであろう。
「治療的有効量」という用語は、成長停止効果、分化阻害効果を有するまたはB細胞の欠失を引き起こすB細胞特異的作用物質などの、活性な免疫抑制剤または免疫調節剤の量をいうように用いられる。特定の局面において、治療的有効量は、例えば、疾患進行の緩徐化において有効であることが示されている標的血清濃度をいう。有効性は、処置される状態に依り、慣例的な方法で測定することができる。当技術分野における通常の技術を有する医師は、特定の作用物質、すなわちB細胞特異的作用物質またはDNA抗原特異的治療物質、および安全性プロファイルのような因子に依り、必要とされる各作用物質の薬学的組成物の有効量を容易に判定かつ処方することができる。例えば、医師は、安全性を評価するため、望ましい治療効果を達成するのに必要とされるものよりも低いレベルで薬学的組成物において用いられる、抗CD20抗体もしくは抗CD22抗体またはイムノアドヘシンなどの、B細胞特異的作用物質の用量から始めて、望ましい効果(安全性を損なうことなく)が後続のDNA抗原特異的な治療物質の投与で達成されるまで投与量を徐々に増やすことができる。作用物質の所与の用量または処置計画の有効性は、例えば、特定の自己免疫疾患に対する効力の標準的手段を用いて患者での兆候および症候を評価することにより、判定することができる。
一般的な提案として、1用量あたり非経口的に投与されるB細胞特異的作用物質の有効量は、1回または複数回の投与量により、約20 mg〜約5000 mgの範囲内であろう。抗CD20抗体および抗CD22抗体、ならびにBAFFおよびAPRILアンタゴニストなどの無傷の抗体に対する例示的な投与量計画は、375 mg/m2毎週×4 (例えば、1日目、8日目、15日目および22日目); または500 mg×2 (例えば、1日目および15日目)、もしくは1000 mg×2 (例えば、1日目および15日目); または1グラム×3 (例えば、1日目、15日目および21日目); または200 mg×1〜4; または300 mg×1〜4、もしくは400 mg×1〜4; または500 mg×3〜4; または1グラム×4を含む。
好ましくは、B細胞特異的作用物質は約0.2〜4グラム、より好ましくは約0.2〜3.5グラム、より好ましくは約0.4〜2.5グラム、より好ましくは約0.5〜1.5グラム、およびさらにより好ましくは約0.7〜1.1グラムの用量で投与される。より好ましくは、そのような用量は、抗体またはイムノアドヘシンであるアンタゴニストに当てはまる。
あるいは、B細胞特異的作用物質は処置の開始時、1日目および15日目に約1000 mg×2の用量で静脈内投与される抗CD20抗体である。別の代替的な好ましい態様において、抗CD20抗体は単回の用量としてまたは2回の輸液として、各用量が約200 mg〜1.2 g、より好ましくは約200 mg〜1.1 g、およびさらにより好ましくは約200 mg〜900 mgで投与される。
別の好ましい態様において、B細胞特異的作用物質は、処置の開始時、1日目および15日目に約1000 mg×2の用量で静脈内投与される抗CD20抗体である。好ましくは、抗CD20抗体は、単回の用量としてまたは2回の輸液として、各用量が約200 mg〜600 mgで投与される。
好ましい局面において、B細胞特異的作用物質は、約1ヶ月の期間内に1〜4回の用量の頻度で投与される。アンタゴニストは好ましくは、2〜3回の用量で投与される。さらに、アンタゴニストは好ましくは、約2〜3週の期間内に投与される。
しかしながら、上記の通りに、提案したこれらのアンタゴニスト量および投薬の頻度はかなり多くの治療的裁量による。適切な用量およびスケジュールの選択における重要な因子は、上述の通りに、得られた結果である。例えば、比較的高い用量は、進行性および急性の自己免疫炎症の処置に当初必要とされる場合がある。最も効果的な結果を得るためには、併用治療が見込まれたら、併用治療計画は、最初の兆候、診断、外観、もしくは自己免疫炎症の発生のできるだけ近くで、または自己免疫疾患の寛解期に開始されるべきである。
「静脈内輸液」という用語は、およそ15分超の期間にわたる、一般的にはおよそ30〜90分の期間にわたる動物またはヒト患者の静脈への作用物質の導入をいう。
「静脈内ボーラス」または「静脈内プッシュ(intravenous push)」という用語は、身体がおよそ15分またはそれ以下、一般的には5分またはそれ以下で薬物を受け入れるような動物またはヒトの静脈内への薬物の投与をいう。
「皮下投与」という用語は、薬物容器から比較的ゆっくりとした、徐放により動物またはヒト患者の皮下、好ましくは皮膚と下層組織の間の窪みに作用物質の導入を行うことをいう。この窪みは、皮膚を上に摘むかまたは引っ張ることにより、下層組織から離すことで作ってもよい。
処置目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜および牧畜、ならびに動物園の動物、競技用の動物またはペット動物、例えば、ほんの数例を挙げればイヌ、ウマ、ネコおよびウシを含む、哺乳動物に分類される任意の動物をいう。
「添付文書」という用語は、適応症、用途、投与量、投与、禁忌および/または当該の治療用製品の使用に関する警告についての情報を含む、治療用製品の商業的包装に慣習的に含まれる指示書をいうように用いられる。
「皮下輸液」という用語は、30分もしくはそれ以下、または90分もしくはそれ以下を含むが、これらに限定されない期間にわたって薬物容器から比較的ゆっくりとした、徐放により動物またはヒト患者の皮下、好ましくは皮膚と下層組織の間の窪みに薬物の導入を行うことをいう。任意で、輸液は、動物またはヒト患者の皮下に埋め込まれる皮下埋め込み術により行われてもよく、この場合にはポンプによって所定量の薬物を所定の期間、例えば30分、90分、または処置計画の長さに及ぶ期間にわたり送達する。
「皮下ボーラス」という用語は、動物またはヒト患者の皮下への薬物の投与をいい、ここでボーラス薬物投与は、好ましくはおよそ15分未満、より好ましくは5分未満、および最も好ましくは60秒未満である。投与は、好ましくは、皮膚と、窪みのある下層組織の間の窪みになされる。
DNA抗原特異的な治療物質
「DNA抗原特異的な治療物質」という用語は、免疫応答を調節する目的で対象に投与されるポリヌクレオチドをいう。本発明の意図に関して、「DNA寛容化」、「DNAワクチン接種」、「DNA免疫化」または「ポリヌクレオチド治療」は、疾患に関連する1つまたは複数の自己抗原性エピトープを含む1つまたは複数の自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与をいう。「DNA寛容化」または「DNAワクチン接種」は、自己免疫疾患の処置または予防のために自己免疫破壊を抑制するように進行中の免疫応答を調節する目的を果たす。「DNAワクチン接種」に応じた免疫応答の調節は、自己反応性リンパ球をTh1型応答からTh2型応答へシフトすることを含みうる。免疫応答の調節は、全身性に、または自己免疫攻撃下の標的器官に局所的のみに、起こりうる。
「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、ホスホジエステル結合を介して連結された多数のヌクレオチド単位(リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、または関連した構造変種)で構成される重合体をいう。ポリヌクレオチドまたは核酸は、実質的には任意の長さであり、典型的には約六(6)ヌクレオチド〜約109ヌクレオチド〜約4000ヌクレオチドまたはそれ以上でありうる。ポリヌクレオチドおよび核酸は、RNA、DNA、合成型、および混合重合体、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方、二本鎖または一本鎖を含み、また、当業者により容易に認識されている通り、化学的にもしくは生化学的に改変されうるか、または非天然ヌクレオチド塩基もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含みうる。そのような改変には、例えば、標識、メチル化、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドの類似体との置換、非荷電性結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)、荷電性結合(例えば、ホスホロチオネート、ホスホロジチオネートなど)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレーター、アルキレーター、および修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)のようなヌクレオチド間改変が挙げられる。水素結合および他の化学的相互作用を介して指定された配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する、合成分子もまた挙げられる。そのような分子は当技術分野において公知であり、例えば、分子の骨格においてペプチド結合がリン酸結合と置き換わっているものを含む。
「プロモーター」という用語は、RNA合成、すなわち「転写」の開始のためにRNAポリメラーゼにより認識されるポリヌクレオチド領域をいう。プロモーターは、転写の効率、およびそれに従って、自己ベクターによりコードされる自己ポリペプチドのタンパク質発現のレベルを制御する自己ベクターの機能的要素の1つである。プロモーターは、「構成的」であってもよく、関連した遺伝子の継続的な転写を可能にするか、または「誘導性」であってもよく、したがって、環境における異なる物質の存在もしくは非存在により制御されうる。加えて、プロモーターはまた、広範囲の異なる細胞型における発現として一般的でありうるか、または細胞型特異的で、およびそれに従って、筋肉細胞などの特定の細胞型においてのみ活性もしくは誘導性でありうるかのいずれかである。ベクターからの転写を制御するプロモーターは、さまざまな供給源、例えば、ポリオーマ、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および好ましくは、サイトメガロウイルスなどのウイルスのゲノムから、または異種性哺乳動物プロモーター、例えば、b-アクチンプロモーターから得られうる。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは都合よく得られ、ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターも同様である。
「エンハンサー」は、プロモーターへ作用して、そのプロモーターからの転写を増強する約10〜300塩基対のシス作用性ポリヌクレオチド領域をいう。エンハンサーは、比較的、配向非依存性および位置非依存性であり、転写単位の5'側もしくは3'側に、イントロン内に、またはコード配列自体の内部に配置されうる。
本明細書において用いられる「イントロン」または「イントロン配列」という用語は、RNAプロセッシング中に保持されかつポリペプチドをコードすることが最も多いポリヌクレオチド配列である、「エキソン」の上流に、または該「エキソン」の間に位置している、自己ベクターに存在する遺伝子または遺伝子の部分の中の介在ポリヌクレオチド配列をいう。イントロンは、タンパク質合成のためのコードディングにおいて機能せず、ポリペプチドへ翻訳される前にRNAから外へスプライスされる。
「スプライシング」は、単一の機能的RNA分子が、一次転写産物またはプレRNAのプロセッシング中にイントロンの除去およびエキソンの並置により生成される機構をいう。コンセンサス配列は、イントロンの5'末端または供与部位および3'末端または受容部位を画定するイントロン-エキソン接合部に、ならびにイントロン配列内の受容部位の約20〜50塩基対上流に位置する分岐部位に存在する。たいていのイントロンは、配列GUから始まり、配列AGで終わり(5'から3'方向で)、CU(A/G)A(C/U)に近似する分岐部位を有し、Aは全ての遺伝子において保存されている。これらの配列は、イントロンの外へのループ形成およびそれの引き続いて起こる除去の合図をする。
本明細書において用いられる場合、「ターミネーター配列」とは、DNA転写の終わりをRNAポリメラーゼに合図するポリヌクレオチド配列を意味する。ターミネーター配列により生じたRNAの3'末端は、しばしば、その後、ポリアデニル化によってかなり上流でプロセッシングされる。「ポリアデニル化」は、転写された伝令RNAの3'末端への約50〜約200ヌクレオチド鎖のポリアデニル酸(ポリA)の非鋳型性付加をいうように用いられる。「ポリアデニル化シグナル」(AAUAAA)は、mRNAの3'非翻訳領域(UTR)内に見出され、転写産物の切断およびポリA尾部の付加についての部位を特定する。転写終結およびポリアデニル化は、機能的に関連しており、効率的な切断/ポリアデニル化に必要とされる配列もまた、終結配列の重要な要素を構成する(Connelly and Manley, 1988)。
「自己ベクター」、「自己ベクター特異的な作用物質」は、まとめると、1つまたは複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチドをコードするDNAまたはRNAのいずれかのポリヌクレオチドを含む1つまたは複数のベクターを意味する(本明細書ではそれぞれ「DNA寛容化ベクター」、「DNA寛容化プラスミド」、「DNA自己ベクター」または「RNA自己ベクター」といわれる)。DNA寛容化ベクターまたはDNA寛容化プラスミドは、特定の自己免疫疾患の文脈において用いられる場合、その記述のなかに特定の自己抗原を含むことができ、例えば、T1Dの場合、DNA寛容化プラスミドは、プロインスリンが自己ベクターによってコードされる自己抗原である場合には「プロインスリン寛容化プラスミド(PTP)」ということができる。多発性硬化症の場合、DNA寛容化プラスミドは、ミエリン塩基性タンパク質が自己ベクターによってコードされる自己抗原である場合には「ミエリン塩基性タンパク質寛容化プラスミド(MTP)」ということができる。ポリヌクレオチドは、本明細書において用いられる場合、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードする、DNAを含むデオキシリボ核酸またはRNAを含むリボ核酸のいずれかの系列、およびそれらの誘導体である。自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードする配列は、適切なプラスミド発現自己カセットへ挿入される。自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドが発現自己カセットへ挿入されたら、ベクターはその後、「自己ベクター」といわれる。複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドが投与される場合、単一の自己ベクターが複数の別個の自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードすることができる。1つの態様において、いくつかの自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードするDNAは、内部リボソーム再侵入配列(IRES)または単一のDNA分子から複数のタンパク質を発現するための他の方法を用いて単一の自己プラスミドに連続的にコードされる。自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードするDNA発現自己ベクターは、Qiagen Corporationから市販されているものなどのプラスミドDNAの単離のための市販の技法を用いて調製され単離される。DNAは、治療物質としてのヒトへの送達のために細菌内毒素を含まないように精製される。あるいは、各自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドは別個のDNA発現ベクター上にコードされる。
「高発現自己ベクター」または「HESV」は、本明細書において、コードされる自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの発現を、同じ自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする非改変自己ベクターと比較して増加させるように変化している改変自己ベクターをいう。HESVは、自己免疫疾患に関連する自己ポリペプチドをコードしかつ発現する能力があるポリヌクレオチドと、改変されていない同じ自己ベクターと比較して自己ポリペプチドの発現の増加を生じるための改変とを含む。HESVはさらに、以下を機能的に組み合わせて含む: プロモーター; 自己免疫疾患に関連する少なくとも1つの自己抗原性エピトープを含む自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド; 転写ターミネーター; ならびに、プロモーター、ポリヌクレオチド、および転写ターミネーターを含む非改変自己ベクターと比較して、宿主細胞における自己ポリペプチドの発現の増加を生じるための少なくとも1つの改変。自己ポリペプチドの発現の増加を有するHESVを作製するための自己ベクターの改変は、以下を増加させる変化から選択される: 転写開始、転写終結、mRNA安定性、翻訳効率、およびタンパク質安定性。より具体的には、自己ポリペプチドの発現を増加させるための自己ベクターの改変は、以下からなる群より選択される: より強いプロモーター領域の使用、エンハンサー領域の付加、より効率的な転写ターミネーター配列の使用、ポリアデニル化シグナルの付加、より理想的なコンセンサスコザック配列の使用、コドン使用頻度の最適化、イントロンの包含、または前記の改変の組み合わせ。単一または複数の改変が、HESVを作製するために自己ベクターへ組み入れられうる。1つの好ましい態様において、改変は、プロモーター領域の下流かつ1つまたは複数の自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの開始コドンの下流のイントロンの包含である。より具体的には、好ましいイントロンは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)のイントロンAまたはβ-グロビン/Igキメライントロンであり、かつ最も好ましくは、好ましいイントロンはβ-グロビン/Igキメライントロンである。インスリン依存性糖尿病(T1D)、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、または関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする非改変自己ベクターと比較して、同じ自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの増加した量を発現するHESVが作製される。T1Dの場合、非改変自己ベクターと比較して自己ポリペプチドであるプレプロインスリンの増加した量を発現するHESVが作製される。自己免疫疾患の多発性硬化症(MS)に関連する自己ポリペプチドをコードする非改変自己ベクターと比較して、同じ自己ポリペプチドの増加した量を発現するHESVが作製される。より具体的には、非改変自己ベクターと比較して自己ポリペプチドであるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の増加した量を発現するHESVが作製される。好ましい態様において、HESVは、自己ポリペプチドであるMBPの開始コドンの5'側にβ-グロビン/Igキメライントロンを含む。
「非分泌性自己ベクター」または「N-SSV」または「非分泌性自己ベクター特異的な作用物質」は本明細書において、自己免疫疾患に関連する細胞外もしくは分泌性の自己抗原(例えば、膜貫通タンパク質または分泌性可溶性因子)の細胞内または非分泌性の自己ポリペプチド型をコードするポリヌクレオチドを含む改変自己ベクターをいう。N-SSVは、自己免疫疾患に関連する分泌性自己ポリペプチドをコードしかつ発現する能力があるポリヌクレオチドと、非分泌性または非膜結合性の自己ポリペプチドを宿主細胞から発現するための改変とを含む。N-SSVはさらに、以下を機能的に組み合わせて含む: プロモーター; 自己免疫疾患に関連する少なくとも1つの自己抗原性エピトープを含む細胞外または分泌性の自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド; 転写ターミネーター; ならびに、プロモーター、ポリヌクレオチド、および転写ターミネーターを含む非改変自己ベクターと比較して、宿主細胞からの自己ポリペプチドの分泌を防止するための少なくとも1つの改変。分泌性または膜結合性の自己ポリペプチドの非分泌性型または非膜結合性型をコードしかつ発現するN-SSVを作製するための自己ベクターへの改変には、限定されるわけではないが、シグナル配列を除去すること、シグナル配列を突然変異させること、ならびに代替のタンパク質局在化(ER保持、原形質膜付着など)シグナルおよびタンパク質分解シグナルを付加することまたは自己ポリペプチドの膜貫通ドメインもしくは疎水性領域を改変もしくは欠失させることが挙げられる。
「非分泌性高発現自己ベクター」または「N-SHESV」または「非分泌性高発現自己ベクター特異的な作用物質」は、細胞外もしくは分泌性の自己ポリペプチドのコードされた細胞内型もしくは非分泌性型、または膜結合性自己ポリペプチドの非膜結合性型の発現を増加させるように変化している改変自己ベクターをいい、発現および分泌は、非改変自己ベクターと比較した場合である。N-SHESV特異的な作用物質は、自己免疫疾患に関連する分泌性または膜結合性の自己ポリペプチドをコードしかつ発現する能力があるポリヌクレオチドと、非改変自己ベクターと比較して非分泌性型または非膜結合型での自己ポリペプチドの発現の増加を生じるための改変とを含む。N-SHESVはさらに、以下を機能的に組み合わせて含む: プロモーター; 自己免疫疾患に関連する少なくとも1つの自己抗原性エピトープを含む細胞外または分泌性の自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド; 転写ターミネーター;ならびに、両改変が、プロモーター、ポリヌクレオチド、および転写ターミネーターを含む非改変自己ベクターと比較した場合である、自己ポリペプチドの発現の増加を生じるための少なくとも1つの改変、および宿主細胞からの非分泌性または非膜結合性の自己ポリペプチドを発現させるための少なくとも1つの改変。
「分泌性自己ベクター」または「SSV」または「分泌性自己ベクター特異的な作用物質」は本明細書において、自己免疫疾患に関連する膜結合性または細胞内の自己抗原についての分泌性自己ポリペプチド型をコードするポリヌクレオチドを含む改変自己ベクターをいう。SSVは、自己免疫疾患に関連する膜結合性または細胞内の自己ポリペプチドをコードしかつ発現する能力があるポリヌクレオチドと、自己ポリペプチドの宿主細胞からの分泌を可能にするための改変とを含む。SSVは、自己免疫疾患に関連する膜結合性または細胞内の自己ポリペプチドをコードしかつ発現する能力があるポリヌクレオチドと、自己ポリペプチドの宿主細胞からの分泌を可能にするための改変とを含む。SSVはさらに、以下を機能的に組み合わせて含む: プロモーター; 自己免疫疾患に関連する少なくとも1つの自己抗原性エピトープを含む膜結合性または細胞内の自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド; 転写ターミネーター; ならびに、プロモーター、ポリヌクレオチド、および転写ターミネーターを含む非改変自己ベクターと比較して、宿主細胞からの自己ポリペプチドの分泌を可能にするための少なくとも1つの改変。細胞内自己ポリペプチドの分泌性型をコードしかつ発現するSSVを作製するための自己ベクターへの改変には、限定されるわけではないが、シグナル配列の付加が挙げられる。加えて、改変はさらに、細胞内エピトープが細胞外へ提示されるように、例えば、膜貫通ドメインまたはGPIアンカーを含む膜結合についてのシグナルを含みうる。膜結合性自己ポリペプチドの分泌性型をコードしかつ発現するSSVを作製するための自己ベクターへの改変には、限定されるわけではないが、以下が挙げられる: 膜貫通ドメインの除去; GPI連結の除去、シグナル配列の細胞内ドメインへの付加と共に細胞外および膜貫通ドメインの除去; ならびに、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの除去。
本明細書において用いられる「分泌性高発現自己ベクター」または「SHESV」または「分泌性高発現自己ベクター特異的な作用物質」は、膜結合性または細胞内の自己ポリペプチドの、コードされた分泌性型の発現を増加させるように変化している改変自己ベクターをいい、発現および分泌は、非改変自己ベクターと比較した場合である。SHESVは、自己免疫疾患に関連する膜結合性または細胞内自己のポリペプチドをコードしかつ発現する能力があるポリヌクレオチドと、改変されていない同じ自己ベクターと比較して分泌性型または細胞外膜結合型での自己ポリペプチドの発現の増加を生じるための改変とを含む。SHESVはさらに、以下を機能的に組み合わせて含む: プロモーター; 自己免疫疾患に関連する少なくとも1つの自己抗原性エピトープを含む膜結合性または細胞内の自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド; 転写ターミネーター; ならびに、両改変が、プロモーター、ポリヌクレオチド、および転写ターミネーターを含む非改変自己ベクターと比較した場合である、自己ポリペプチドの発現の増加を生じるための少なくとも1つの改変、および宿主細胞からの自己ポリペプチドの分泌を可能にするための少なくとも1つの改変。
「ベクター骨格」という用語は、自己抗原、自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードする配列以外のプラスミドベクターの部分をいう。
「免疫抑制性ベクター骨格」は、(i) 親ベクター骨格と比べて免疫応答の低減を引き起こすか、または(ii) 免疫応答を防止もしくは阻害するかのいずれかのベクター骨格をいう。免疫応答は、当技術分野において公知のインビトロまたはインビボのアッセイ法を用いて測定することができる。例えば、免疫応答は、ベクター骨格に曝露されたリンパ球の増殖を測定することにより、または免疫刺激を示す(細胞培地中、血清中などの)サイトカイン(例えば、IL-2、IFN-γ、IL-6)の産生を測定することにより判定することができる。いくつかの態様において、免疫抑制性ベクター骨格は親ベクター骨格と比べて、より少ない免疫刺激性配列(例えば、CpG配列)を含む。いくつかの態様において、免疫抑制性ベクター骨格は、例えば、本明細書において記述のおよび当技術分野において公知の、1つまたは複数の免疫阻害性配列(IIS)を含む。いくつかの態様において、免疫抑制性ベクター骨格は、Th2免疫応答を促進し、かつTh1免疫応答を阻害する。
ある種の変形において、自己免疫疾患を処置するための方法はさらに、阻害性免疫調節配列または免疫阻害性配列(IIS)を含んだポリヌクレオチドの投与を含む。本発明によって有用なIISは、以下のコア六量体を含む。
5'-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'
または
5'-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'。
式中、XおよびYは、XおよびYがシトシン-グアニンとはなりえないことを除いて、任意の天然に存在するヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドである。
IMSのコア六量体には、任意の組成もしくは数のヌクレオチドまたはヌクレオシドが5'側および/または3'側に隣接しうる。好ましくは、IMSは、長さが6塩基対から100塩基対の間、および最も好ましくは、長さが16〜50塩基対の範囲である。IMSはまた、100塩基対から100,000塩基対までの範囲である、より大きなDNA断片の一部として送達されうる。IMSは、DNAプラスミド、ウイルスベクター、およびゲノムDNAに組み入れられても、またはすでにそれらの中に存在していてもよい。最も好ましいIMSはまた、サイズが6塩基対(隣接配列無し)から10,000塩基対まで、またはそれ以上の範囲でありうる。六量体コアに隣接し存在する配列は、任意の公知の免疫阻害性配列(IIS)に存在する隣接配列に実質的にマッチするように構築されうる。例えば、隣接配列
Figure 2013517329
は、
Figure 2013517329
が隣接配列である。別の好ましい隣接配列は、2回またはそれ以上反復される個々のピリミジンとしてか、または長さが2個もしくはそれ以上の異なるピリミジンの混合物としてかのいずれかでのひと続きのピリミジン(C、T、およびU)を組み入れる。異なる隣接配列が、阻害性調節配列の試験において用いられている。阻害性オリゴヌクレオチドについての隣接配列のさらなる例は、以下の参照文献に含まれる: 米国特許第6,225,292号および同第6,339,068号; ならびにZeuner et al., Arthritis and Rheumatism, 46:2219-24 (2002)。
IISは、配列AAGGTTを有するコア六量体領域を含む。その配列は本明細書において免疫調節配列またはIMSといわれる。IMS内に含まれる類似のモチーフを有する他の関連したIISは以下である。
1. GGジヌクレオチドのコア:
Figure 2013517329
などを含む、5'-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'のIMS。
2. GCジヌクレオチドのコア:
Figure 2013517329
などを含む、5'-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'のIMS。
3. アデニンからグアニンおよびイノシンへの置換、ならびに/またはシトシンもしくはチミンからウリジンへの置換は、上記の指針に基づき記載の通りに行うことができる。
本発明のある種の態様において、IMSのコア六量体領域は、ポリG領域に、5'末端かもしくは3'末端のいずれかで、または5'末端および3'末端の両方で、隣接している。本明細書において用いられる場合、「ポリG領域」または「ポリGモチーフ」とは、少なくとも二(2)個の連続したグアニン残基、典型的には2個から30個まで、または2個から20個までの連続したグアニンからなる核酸領域を意味する。いくつかの態様において、ポリG領域は、2個から10個まで、4個から10個まで、または4個から8個までの連続したグアニン残基を有する。ある種の好ましい態様において、隣接ポリG領域はコア六量体に隣接している。さらに他の態様において、ポリG領域は、非ポリG領域(非ポリGリンカー)によってコア六量体に連結されており; 典型的には、非ポリGリンカー領域は、わずか6ヌクレオチド、より典型的にはわずか4ヌクレオチド、および最も典型的にはわずか2ヌクレオチドを有する。
免疫調節核酸はIMSを、単独で、または、例えば、組換え発現ベクターによって送達可能な任意の自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードしうる組換え自己ベクター(プラスミド、コスミド、ウイルスまたはレトロウイルス)になど他の核酸領域とシスでもしくはトランスで組み入れて、含むことができる。ある種の態様において、IMSは、例えば、当業者に公知の従来の技法を用いて達成されうる、例えば、発現ベクターなどの、ベクターに組み入れられる(例えば、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology、前記を参照されたい)。
例えば、組換え発現ベクターの構築では、標準的なライゲーション技法を用いる。構築されたベクターにおける正しい配列を確認する分析のため、ライゲーション混合物を用いて宿主細胞を形質転換することができ、成功している形質転換体を必要に応じて抗生物質耐性により選択することができる。形質転換体由来のベクターを調製し、制限消化(restriction)によって分析し、および/または例えば、Messing, et al., Nucleic Acids Res., 9:309, 1981の方法、Maxam, et al., Methods in Enzymology, 65:499, 1980の方法、もしくは当業者に公知である他の適した方法によって配列決定する。例えば、Maniatis, et al., Molecular Cloning, pp. 133-134, 1982によって記述されている通りに従来のゲル電気泳動を用いて、切断された断片のサイズ分離を行う。
宿主細胞を本発明の発現ベクターで形質転換することができ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または遺伝子の増幅に適切であるように改変された従来の栄養培地中で培養することができる。温度、pHなどのような、培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前に用いられたものであり、当業者には明らかであろう。
組換えベクターが本発明のIMS-ONのための担体として用いられるなら、プラスミドおよびコスミドはその病原性の欠如のため特に好ましい。しかしながら、プラスミドおよびコスミドはウイルスよりも素早くインビボでの分解を受け、それゆえ、炎症性疾患または自己免疫疾患を予防または処置するのに十分なIMS-ONの投与量を送達することができない。
関連する局面において、非CpGジヌクレオチドが式5'-プリン-ピリミジン-C-G-ピリミジン-ピリミジン-3'または5'-プリン-プリン-C-G-ピリミジン-ピリミジン-3'の1つまたは複数のCpGジヌクレオチドの代わりに用いられ、それによりIISに関連する免疫刺激活性が低減されているベクターを生ずる、核酸ベクターが提供される。そのようなベクターは、例えば、免疫調節核酸を投与するための、および/または1つもしくは複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドもしくは自己ペプチドをコードする自己ベクターを投与するための方法において有用である。例えば、CpGジヌクレオチドのシトシンがグアニンで置換され、それにより、式5'-プリン-ピリミジン-G-G-ピリミジン-ピリミジン-3'または5'-プリン-プリン-G-G-ピリミジン-ピリミジン-3'のGpGモチーフを有するIMS領域を生じうる。シトシンはまた、任意の他の非シトシンのヌクレオチドで置換されうる。置換は、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて、達成されうる。典型的には、置換されたCpGモチーフは、ベクターの重要な調節領域(例えば、プロモーター領域)に位置していないCpGである。加えて、CpGが発現ベクターのコード領域内に位置している場合、非シトシン置換は、典型的には、サイレント突然変異、またはコードされたアミノ酸の保存的置換に対応するコドンを生じるように選択される。
例えば、ある種の態様において、式5'-プリン-ピリミジン-C-G-ピリミジン-ピリミジン-3'の1つまたは複数のCpGジヌクレオチドが、CpGジヌクレオチドのシトシンを非シトシンのヌクレオチドで置換することにより突然変異している、改変pVAX1ベクターが提供される。pVAX1ベクターは、当技術分野において公知であり、Invitrogen (Carlsbad, CA)から市販されている。1つの例示的な態様において、改変pVAX1ベクターは、CpGモチーフ内において以下のシトシンの非シトシンへの置換を有する。
ヌクレオチド784位、1161位、1218位、および1966位におけるシトシンからグアニンへの置換;
ヌクレオチド1264位、1337位、1829位、1874位、1940位、および1997位におけるシトシンからアデニンへの置換; ならびに
ヌクレオチド1158位および1987位におけるシトシンからチミンへの置換。
ヌクレオチド1831位、1876位、1942位、および1999位における追加のシトシンからグアニンへの突然変異を含む。(上記で示されているようなヌクレオチド数表示はInvitrogenにより提供されるpVAX1についての番号付け方式による。)このように構築されたベクターは、pBHT1と名付けられた。
自己ベクターに用いるのに選択されたヌクレオチド配列は、例えば、標準技法を用いて所望の遺伝子またはヌクレオチド配列を含む細胞から核酸を単離することにより、公知の供給源から得ることができる。同様に、ヌクレオチド配列は、当技術分野において周知であるポリヌクレオチド合成の標準様式を用いて合成的に作製されうる。例えば、Edge et al., Nature 292:756, 1981; Nambair et al., Science 223:1299, 1984; Jay et al., J. Biol. Chem. 259:6311, 1984を参照されたい。一般的に、合成オリゴヌクレオチドは、Edge et al. (前記)およびDuckworth et al. Nucleic Acids Res. 9:1691, 1981により記述されているようなホスホトリエステル方法; またはBeaucage et al. Tet. Letts. 22:1859, 1981およびMatteucci et al., J. Am. Chem. Soc. 103:3185, 1981により記述されているようなホスホロアミダイト方法のいずれかにより調製されうる。合成オリゴヌクレオチドはまた、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成機を用いて調製されうる。ヌクレオチド配列は、このように、特定のアミノ酸配列についての適切なコドンを用いて設計されうる。一般的に、意図された宿主における発現にとって好ましいコドンを選択する。完全な配列は、標準方法により調製された重複オリゴヌクレオチドから構築し、集合させて完全なコード配列を構築する。例えば、Edge et al. (前記); Nambair et al. (前記)およびJay et al. (前記)を参照されたい。
本発明に用いる核酸配列を得るための別の方法は、組換え手段による。したがって、所望のヌクレオチド配列は、標準制限酵素および手順を用いて核酸を有するプラスミドから切り出されうる。部位特異的DNA切断は、適した制限酵素および手順で処理することにより行われる。部位特異的DNA切断は、当技術分野において一般的に理解されている条件下で、および市販されている制限酵素の製造元により特定されているそれらの事項のもとで行われる。必要に応じて、切断された断片のサイズ分離が、標準技法を用いるポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲルにより行われうる。
特定の核酸分子を単離するためのさらに別の都合のよい方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Mullins et al., Methods Enzymol. 155:335-350, 1987)または逆転写PCR(RT-PCR)による。特定の核酸配列は、RT-PCRによりRNAから単離されうる。RNAは、当業者に公知の技術により、例えば、細胞、組織、または生物全体から単離される。相補DNA(cDNA)は、その後、ポリdTまたはランダム六量体プライマー、デオキシヌクレオチド、および適した逆転写酵素を用いて生成される。所望のポリヌクレオチドは、その後、PCRより生成されたcDNAから増幅されうる。または、対象となるポリヌクレオチドは、適切なcDNAライブラリーから直接的に増幅されうる。対象となるポリヌクレオチド配列の5'末端および3'末端の両方とハイブリダイズするプライマーが合成され、PCRに用いられる。プライマーはまた、容易な消化、および同様に制限消化されたプラスミドベクターへの増幅配列のライゲーションのために、5'末端に特定の制限酵素部位を含みうる。
改変自己ベクターの発現カセットは、宿主細胞において機能しうるプロモーターを用いる。一般的に、宿主細胞と適合性の種由来であるプロモーターおよび調節配列を含むベクターが特定の宿主細胞と共に用いられる。原核生物宿主と共に用いるのに適したプロモーターは、例証として、β-ラクマターゼおよびラクトースプロモーターシステム、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターを含む。しかしながら、他の機能的な細菌プロモーターが適している。原核生物に加えて、酵母培養物などの真核微生物もまた用いられうる。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパン酵母は、最も一般的に用いられる真核微生物であるが、いくつかの他の菌株もまた一般的に用いることができる。哺乳動物宿主細胞においてベクターからの転写を調節するプロモーターは、さまざまな供給源、例えば、ポリオーマ、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および好ましくは、サイトメガロウイルス(CMV)などのウイルスのゲノムから、または異種性哺乳動物プロモーター、例えば、β-アクチンプロモーターから得られうる。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含むSV40制限断片として都合よく得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII制限断片として都合よく得られる。もちろん、宿主細胞または関連種由来のプロモーターもまた本発明において有用である。
1つの態様において、2つまたはそれ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNAは、単一のDNA分子から複数のタンパク質の発現のために内部リボソーム再侵入配列(IRES)または他の要素を用いる単一の自己ベクターにおいて連続的にコードされる。
本発明において用いられるベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含みうる。選択遺伝子は、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする。哺乳動物細胞に適した選択マーカーの例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)、オルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子、多剤耐性遺伝子(mdr)、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、およびグルタミンシンターゼ遺伝子が挙げられる。そのような選択マーカーが哺乳動物宿主細胞へうまく移入された場合、形質転換された哺乳動物宿主細胞は、選択圧下に置かれたとしても生存できる。選択方式についての2つの広く用いられる別個のカテゴリーがある。第一のカテゴリーは、細胞の代謝、および補充された培地と無関係に成長する能力を欠く突然変異体細胞系の使用に基づいている。第二のカテゴリーは、任意の細胞型に用いられる選択スキームを指しかつ突然変異体細胞系の使用を必要としない、優性選択と呼ばれる。これらのスキームは典型的には、宿主細胞の成長を停止させるために薬物を用いる。新規の遺伝子を有するそれらの細胞は、薬物抵抗性を伝えるタンパク質を発現し、選択から生き残る。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン(Southern and Berg (1982) J. Molec. Appl. Genet. 1, 327)、ミコフェノール酸(Mulligan and Berg (1980) Science 209, 1422)、またはハイグロマイシン(Sugden et al. (1985) Mol. Cell. Bio. 5, 410-413)を用いる。上記で示された3つの例は、それぞれ、適切な薬物であるネオマイシン(G418またはゲンチシン)、xgpt(ミコフェノール酸)、またはハイグロマイシンに対する抵抗性を伝えるために真核生物制御下で細菌遺伝子を用いる。
あるいは、本発明において用いられるベクターは、リプレッサーの力価測定に基づいた抗生物質を含まない選択を用いて、宿主細胞において増殖させる(Cranenburgh et al., 2001)。ベクターは、lacプロモーターの一部としてか、またはpUCシリーズのプラスミドベクターに見出される最適な間隔をもつlacO1およびlacO3オペレーターと共にかのいずれかで、lacオペロンを含むように改変される。あるいは、lacO1オペレーターまたはlacOのパリンドローム型が、単一または複数のコピーとしての単離に用いられうる(Cranenburgh et al., 2004)。lacオペロン配列は、ベクターの他の機能的構成要素に干渉しないようにベクター内のどこかの単一または複数の部位に組み入れられうる。好ましい態様において、合成大腸菌(Escherichia coli)lacオペロン二量体オペレーター(Genbankアクセッション番号K02913)が用いられる。lacオペロンは、選択を提供するのに適した切な選択マーカーを欠くベクターに付加されうるか、別の選択マーカーに加えて付加されうるか、またはベクターを治療的適用により適切にさせるために、選択マーカー、特に抗生物質抵抗性マーカーを置換するために用いられうる。lacオペロンを含むベクターは、lacプロモーター(lacOP)の制御下にdapDを含む必須遺伝子を有する遺伝子改変の大腸菌において選択され、それに従って、lacOPからlac抑圧を力価測定し、dapDの発現を可能にすることにより、改変された宿主細胞が生存することを可能にする。適した大腸菌株には、DH1lacdapDおよびDH1lacP2dapDが挙げられる(Cranenburgh et al., 2001)。
本発明の自己ベクター特異的な作用物質は、薬剤として用いるポリヌクレオチド塩として製剤化されうる。ポリヌクレオチド塩は、無毒性無機または有機塩基を用いて調製されうる。無機塩基塩には、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、マグネシウムなどが挙げられる。有機無毒性塩基には、1級、2級および3級アミンなどの塩が挙げられる。そのような自己DNAポリヌクレオチド塩は、滅菌水または食塩水などの送達前の再構成のための凍結乾燥された形態に、製剤化されうる。または、自己DNAポリヌクレオチド塩は、送達のための水性または油性の媒体を含む溶液、懸濁液、または乳濁液に製剤化されうる。1つの好ましい態様において、DNAは、生理学的レベルのカルシウム(0.9 mM)を含むリン酸緩衝食塩水において凍結乾燥され、その後、投与前に滅菌水で再構成される。または、DNAは、1 mMから2 Mの間のより高い量のCa++を含む溶液中において製剤化される。DNAはまた、特定のイオン種の非存在下で製剤化されうる。
DNA抗原特異的な治療物質の投与
本明細書において定義される通り、ポリヌクレオチドを対象に送達するための多種多様の方法が存在する。例えば、自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、陽イオン性リポソームを含む陽イオン性ポリマーと共に製剤化されうる。他のリポソームもまた、自己ポリヌクレオチドを製剤化し、かつ送達するのに効果的な手段を示す。あるいは、自己DNAは、薬理学的送達のためのウイルスベクター、ウイルス粒子、または細菌へ組み入れられうる。ウイルスベクターは、感染能力があっても、弱毒化されていても(疾患を誘発する能力を低減する突然変異によって)、または複製欠損であってもよい。病原性自己タンパク質の沈着、蓄積、または活性を防止するために自己DNAを用いる方法は、コードされる自己タンパク質に対する体液性応答を増加させるウイルスベクターまたは他の送達システムの使用により強化されうる。他の態様において、DNAは、注入されても、吸入されても、または微粒子銃で送達されてもよい(弾道的送達)金粒子、多糖ベースの支持体、または他の粒子もしくはビーズを含む固体支持体に結合されうる。核酸調製物を送達するための方法は当技術分野において公知である。例えば、以下を参照されたい: 米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、および同第5,589,466号。いくつかのウイルスに基づいたシステムが、哺乳動物細胞への移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスシステムが記述されている(米国特許第5,219,740号; Miller et al., Biotechniques 7:980-990, 1989; Miller, Human Gene Therapy 1:5-14, 1990; Scarpa et al., Virology 180:849-852, 1991; Burns et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037, 1993; およびBoris-Lawrie and Temin, Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109, 1993)。いくつかのアデノウイルスベクターもまた記述されており、例えば、(Haj-Ahmad et al., J. Virol. 57:267-274, 1986; Bett et al., J. Virol. 67:5911-5921, 1993; Mittereder et al., Human Gene Therapy 5:717-729, 1994; Seth et al., J. Virol. 68:933-940, 1994; Barr et al., Gene Therapy 1:51-58, 1994; Berkner, BioTechniques 6:616-629, 1988; およびRich et al., Human Gene Therapy 4:461-476, 1993)を参照されたい。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターシステムもまた、核酸送達のために開発されている。AAVベクターは、当技術分野において周知の技術を用いて容易に構築されうる。例えば、米国特許第5,173,414号および同第5,139,941号; 国際公開番号WO 92/01070およびWO 93/03769; Lebkowski et al., Molec. Cell. Biol. 8:3988-3996, 1988; Vincent et al., Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press) 1990; Carter, Current Opinion in Biotechnology 3:533-539, 1992; Muzyczka, Current Topics in Microbiol. And Immunol. 158:97-129, 1992; Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801, 1994; Shelling et al., Gene Therapy 1:165-169, 1994; およびZhou et al., J. Exp. Med. 179:1867-1875, 1994)を参照されたい。
本発明のポリヌクレオチドはまた、ウイルスベクター無しで送達されうる。例えば、分子は、対象への送達の前にリポソームにパッケージングされうる。脂質カプセル化は、一般的に、核酸を安定に結合または捕捉し、かつ保持することができるリポソームを用いて達成される。核酸の送達のための担体としてのリポソームの使用の概説として、例えば、Hug et al., Biochim. Biophys. Acta. 1097:1-17, 1991; Straubinger et al., Methods of Enzymology, Vol. 101, pp. 512-527, 1983を参照されたい。
自己ベクターの治療的有効量は、約0.001 mg〜約1 gの範囲である。自己ベクターの好ましい治療的量は、約10 ng〜約10 mgの範囲である。自己ベクターの最も好ましい治療的量は、約0.025 mg〜6 mgの範囲である。ある種の態様において、自己ベクターは、6〜12ヶ月間は毎月、およびその後、維持用量として3〜12ヶ月ごとに、投与される。代替の処置計画が開発されてもよく、疾患の重症度、患者の年齢、投与される自己ポリペプチド、および通常の処置を行う医師により考慮されるような他の因子に依存して、毎日の投与から、毎週、隔月、毎年、1回限りの投与までの範囲でありうる。
1つの態様において、ポリヌクレオチドは、筋肉内注射により送達される。他の変形において、ポリヌクレオチドは、鼻腔内に、経口で、皮下に、皮内に、静脈内に、粘膜に、皮膚を通して圧入され(impress)、または真皮までもしくは真皮を通って送達される金粒子に付着させて、送達される(例えば、WO 97/46253を参照されたい)。あるいは、核酸は、リポソームまたは荷電脂質の有無にかかわらず、局所的投与により皮膚細胞へ送達されうる(例えば、米国特許第6,087,341号を参照されたい)。さらに別の代替法は、核酸を吸入物質として送達することである。ポリヌクレオチドは生理学的レベルのカルシウム(0.9 mM)を含むリン酸緩衝食塩水中において製剤化される。あるいは、ポリヌクレオチドは、1 mMから2 Mの間のCa++のより高い量を含む溶液中において製剤化される。ポリヌクレオチドは、亜鉛、アルミニウムなどのような他の陽イオンと共に製剤化されうる。代替として、または加えて、ポリヌクレオチドは、陽イオン性ポリマー、陽イオン性リポソーム形成化合物と共に、または非陽イオン性リポソーム中においてのいずれかで製剤化されうる。DNA送達のための陽イオン性リポソームの例には、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)および他のそのような分子を用いて作製されるリポソームが挙げられる。
ポリヌクレオチドの送達の前に、送達部位は、ブピビカン(bupivicane)、心臓毒、またはその後のポリヌクレオチドの送達を増強しうる別の作用物質での処置によりあらかじめ調整されうる。そのようなプレコンディショニング(preconditioning)療法は、一般的に、治療用ポリヌクレオチドの送達の12〜96時間前に; より頻繁には、治療用ポリヌクレオチドの送達の24〜48時間前に送達される。あるいは、ポリヌクレオチド治療の前に、プレコンディショニング処置は与えられない。
本明細書に用いられる「抗原」は、B細胞もしくはT細胞、または両方によるものである免疫系により認識されうる任意の分子をいう。
本明細書において用いられる「自己抗原」は、病原性免疫応答を誘発する内因性分子、典型的にはタンパク質またはその断片をいう。自己抗原またはそのエピトープを「自己免疫疾患と関連している」と言及する場合、自己抗原またはエピトープは、病態生理を引き起こす(すなわち、疾患の原因と関連している)、病態生理学的過程を媒介もしくは促進することによる; および/または病態生理学的過程の標的であることによるのいずれかで疾患の病態生理に関与することを意味することは理解されている。例えば、自己免疫疾患において、免疫系は、異常なことに、自己抗原を標的とし、自己抗原が発現しているおよび/または存在する細胞および組織の損傷ならびに機能障害を引き起こす。正常な生理学的状態下において、自己抗原は、「免疫寛容」と名付けられた過程を通して、自己抗原を認識する能力をもつ免疫細胞の排除、不活性化、または活性化の欠如によって宿主免疫系に無視される。
本明細書において用いられる場合、「エピトープ」という用語は、動物の免疫系のB細胞かまたはT細胞かのいずれかにより認識される特定の形または構造を有するポリペプチドの部分を意味すると理解される。「自己抗原性エピトープ」または「病原性エピトープ」は、病原性免疫応答を誘発する自己抗原のエピトープをいう。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体をいうように本明細書において互換的に用いられる。それらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣体であるアミノ酸重合体に、ならびに天然に存在するアミノ酸重合体および非天然のアミノ酸重合体に適用される。
「自己タンパク質」、「自己ポリペプチド」、または「自己ペプチド」は、本明細書において互換的に用いられ、かつ、動物のゲノム内にコードされる; 動物において産生または生成される; 動物の生涯の間のいつかに翻訳後、修飾されうる; および動物において非生理学的に存在する、任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、またはその断片もしくは誘導体をいう。本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドを記述するために用いられる場合の「非生理学的」または「非生理学的に」という用語は、その自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドについての動物における正常な役割または過程からの離脱または逸脱を意味する。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドを「疾患に関連している」または「疾患に関与している」と言及する場合、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが、形態または構造において改変され、それに従って、その生理学的役割または過程を行うことができない可能性があることを意味すること、または、病態生理を誘導することによる; 病態生理学的過程を媒介もしくは促進することによる; および/または病態生理学的過程の標的であることによるのいずれかで状態または疾患の病態生理に関与している可能性があることを意味することは理解されている。例えば、自己免疫疾患において、免疫系は、異常なことに、自己タンパク質を攻撃して、その自己タンパク質が発現しているおよび/または存在する細胞および組織の損傷ならびに機能障害を引き起こす。あるいは、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、それ自体、非生理学的レベルで発現しうる、かつ/または非生理学的に機能しうる。例えば、神経変性疾患において、自己タンパク質は、異常に発現し、脳における病変に凝集し、それにより、神経機能障害を引き起こす。他の場合では、自己タンパク質が望ましくない状態または過程を悪化させる。例えば、変形性関節症において、コラゲナーゼおよびマトリックスメタロプロテイナーゼを含む自己タンパク質が異常に、関節部の関節面を覆う軟骨を分解する。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの翻訳後修飾の例は、グリコシル化、脂質基の付加、可逆性リン酸化、ジメチルアルギニン残基の付加、シトルリン化、およびタンパク質分解、ならびにより具体的には、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるフィラグリンおよびフィブリンのシトルリン化、αβ-クリスタリンのリン酸化、MBPのシトルリン化、ならびにカスパーゼおよびグランザイムによるSLE自己抗原タンパク質分解である。免疫学的には、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、すべて、宿主自己抗原とみなされ、正常な生理学的状態下では、「免疫寛容」と名付けられた過程を通して、自己抗原を認識する能力をもつ免疫細胞の排除、不活性化、または活性化の欠如によって宿主免疫系に無視される。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、免疫機能を制御する目的で独占的に免疫系の細胞によってのみ生理学的に発現する分子である免疫タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含まない。免疫系は、動物界に生息する無数の潜在的病原性の微生物に対して迅速で、高度に特異的な保護性応答を生じるための手段を提供する防御機構である。免疫タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの例は、T細胞受容体、免疫グロブリン、I型インターロイキン、およびインターフェロンおよびIL-10を含むII型サイトカイン、TNF、リンフォトキシン、およびマクロファージ炎症性タンパク質-1αおよびβ、単球走化性タンパク質、およびRANTESなどのケモカインを含むサイトカイン、ならびにFas-リガンドなどの免疫機能に直接的に関与した他の分子を含むタンパク質である。本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに含まれる特定の免疫タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドがあり、それらは以下である: クラスI MHC膜糖タンパク質、クラスII MHC糖タンパク質、およびオステオポンチン。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、代謝性または機能性の障害を引き起こす遺伝的または後天的欠損により完全にかまたは実質的にかのいずれかで対象に欠如しており、かつ該タンパク質、該ポリペプチド、もしくは該ペプチドの投与によるかまたは該タンパク質、該ポリペプチド、もしくは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与によるかのいずれかで取って代わられる(遺伝子治療)、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを含まない。そのような障害の例には、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、およびホモシスチン尿症が挙げられる。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、以下を含みそれらをそれらの正常な対応物と区別する特徴を有する細胞により、特異的かつ独占的に発現されるタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを含まない: (1) 悪性細胞のクローンを形成しうる遺伝子変化を有する単一細胞の増殖を表すクローン性、(2) 成長が正しく制御されていないことを示す自律性、および(3) 退生、または正常な協調された細胞分化の欠如。前記の3つの基準のうちの1つまたは複数を有する細胞は、新生物細胞、がん細胞、または悪性細胞のいずれかで呼ばれる。
本明細書において用いられる「免疫応答の調節」、「免疫応答を調節すること」、または「免疫応答を変化させること」は、自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与の結果として起こる、例えば、核酸、脂質、リン脂質、糖、自己ポリペプチド、タンパク質複合体、またはリボ核タンパク質複合体を含む自己分子に対する既存のまたは潜在的な免疫応答の任意の変化をいう。そのような調節は、免疫応答に関与するもしくは関与する能力がある任意の免疫細胞の存在、能力、または機能における任意の変化を含む。免疫細胞には、B細胞、T細胞、NK細胞、NK T細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、非プロフェッショナル抗原提示細胞、炎症細胞、または免疫応答に関与する能力もしくは影響を及ぼす能力がある任意の他の細胞が挙げられる。「調節」は、既存の免疫応答、発達中の免疫応答、潜在的な免疫応答に与えられる、または免疫応答を誘導する能力に、免疫応答を制御する能力に、免疫応答に影響を及ぼす能力に、もしくは免疫応答に応答する能力に与えられる、任意の変化を含む。調節は、免疫応答の一部としての免疫細胞における遺伝子、タンパク質、および/もしくは他の分子の発現ならびに/または機能の任意の変化を含む。
「免疫応答の調節」は、例えば、以下が挙げられる: 免疫細胞の排除、消失、または隔離; 自己反応性リンパ球、抗原提示細胞(APC)、または炎症細胞などの他の細胞の機能的能力を調節できる免疫細胞の誘導または生成; 免疫細胞における非応答性状態の誘導(すなわち、アネルギー); 限定されるわけではないが、免疫細胞により発現したタンパク質のパターンを変化させることを含む、免疫細胞の活性もしくは機能、またはそのように行う能力を増加、減少、または変化させること。例には、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、転写因子、キナーゼ、副刺激分子、または他の細胞表面受容体などの分子の特定のクラスの産生および/または分泌の変化; またはこれらの調節事象の任意の組み合わせが挙げられる。
本発明の文脈において用いられる場合、疾患または障害の「予防すること」、「予防」、または「防止」は、疾患もしくは障害の出現もしくは発生、または疾患もしくは障害の症候の一部もしくは全部を予防するための、または疾患もしくは障害の発生の見込みを減少させるための、自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドの単独かまたは本明細書において記述されているような別の化合物と組み合わせてかのいずれかでの投与をいう。
本発明の文脈の範囲内で用いられる用語「処置すること」、「処置」および「治療」などは、1つまたは複数の症候の軽減、退縮、疾患または障害の進行の緩徐化または停止を含むが、これらに限定されない、いずれかの臨床的に望ましいまたは有益な効果をもたらす、疾患または障害に対する治療的処置だけでなく、予防的処置、または抑制的処置を含むよう意図される。したがって、例えば、処置という用語は、自己免疫の疾患または障害の症候の発症の前または後に本発明の一方または両方の作用物質を投与し、それによって自己免疫の疾患または障害の全ての徴候を予防または除去することを含む。別の例として、この用語は、自己免疫疾患の症候に抵抗しようとする、疾患の臨床的徴候後の一方または両方の作用物質の投与を含む。さらに、自己免疫の疾患または障害の臨床的パラメータ、例えば組織傷害の程度、処置が自己免疫疾患の改善をもたらすか否かなどに投与が影響を与える場合の、発症後および臨床症状の発現後の本発明の一方または両方の作用物質の投与は、本発明の文脈の範囲内で「処置」または「治療」を含む。
1つまたは複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの「治療的有効量」は、本発明の教示にしたがって投与され、例えば、疾患の症候および/または原因を改善または排除することによってなど、疾患を処置または予防するのに十分であろう。例えば、治療的有効量は、広い範囲の中にあり、臨床試験を通して決定され、特定の患者については、疾患の重症度、患者の体重、年齢および他の因子を含む当業者に公知の因子に基づいて決定される。自己ベクターの治療的有効量は、約0.001マイクログラム〜約1グラムの範囲である。自己ベクターの好ましい治療的量は、約10マイクログラム〜約5ミリグラムの範囲である。自己ベクターの最も好ましい治療的量は、約0.025 mg〜5 mgの範囲である。ポリヌクレオチド治療は、6〜12ヶ月間は毎月、およびその後、維持用量として3〜12ヶ月ごとに、遂行される。代替の処置計画が開発されてもよく、疾患の重症度、患者の年齢、投与される自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチド、および通常の処置を行う医師により考慮されるような他の因子に依存して、毎日の投与から、毎週、隔月、毎年、1回限りの投与までの範囲でありうる。
例えば、自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA抗原特異的な治療物質と組み合わせてB細胞特異的作用物質を含む特異的作用物質の組み合わせを投与することにより自己免疫疾患を処置する方法は、望ましくない免疫応答を媒介するもしくは媒介する能力がある免疫細胞を排除、隔離、または不活性化すること; 保護性免疫応答を媒介するもしくは媒介する能力がある免疫細胞を誘導する、産生する、または作動させること; 免疫細胞の物理的または機能的な性質を変化させること; またはこれらの効果の組み合わせにより免疫応答を調節できる。免疫応答の調節の測定の例には、限定されるわけではないが、免疫細胞集団の存在または非存在の試験(フローサイトメトリー、免疫組織化学法、組織学法、電子顕微鏡法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる); シグナルに応答して増殖もしくは分裂する能力または抵抗性を含む免疫細胞の機能的能力の測定(T細胞増殖アッセイ法、および抗CD3抗体、抗T細胞受容体抗体、抗CD28抗体、カルシウムイオノフォア、PMA、ペプチドまたはタンパク質を負荷された抗原提示細胞での刺激後の3H-チミジン取り込みに基づいたpepscan分析; B細胞増殖アッセイ法を用いるなど); 他の細胞を殺傷するまたは溶解する能力の測定(細胞傷害性T細胞アッセイ法など); サイトカイン、ケモカイン、細胞表面分子、抗体、および細胞の他の産物の測定(例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ法、ウエスタンブロット分析、タンパク質マイクロアレイ分析、免疫沈降分析による); 免疫細胞の活性化の生化学的マーカーまたは免疫細胞内のシグナル伝達経路の測定(例えば、チロシン、セリン、またはトレオニンリン酸化、ポリペプチド切断、およびタンパク質複合体の形成または解離のウエスタンブロットならびに免疫沈降分析; タンパク質アレイ分析; DNAアレイまたはサブトラクティブハイブリダイゼーションを用いるDNA転写、プロファイリング); アポトーシス、壊死、または他の機構による細胞死の測定(例えば、アネキシンV染色、TUNELアッセイ法、DNAラダーを測定するためのゲル電気泳動、組織学法; 蛍光発生的カスパーゼアッセイ法、カスパーゼ基質のウエスタンブロット分析); 免疫細胞により産生された遺伝子、タンパク質、および他の分子の測定(例えば、ノザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、2次元ゲル電気泳動法、ウエスタンブロット分析、酵素結合免疫吸着アッセイ法、フローサイトメトリー); ならびに、例えば、多発性硬化症の症例において再発率もしくは疾患重症度を測定する(当業者に公知の臨床スコアを用いる)、I型糖尿病の症例において血中グルコースを測定する、または関節リウマチの症例において関節の炎症を測定することによる、自己タンパク質または自己ポリペプチドに関連する自己免疫疾患、神経変性疾患、および他の疾患の改善などの臨床症状または転帰の測定(臨床スコア、追加の治療の使用についての必要条件、機能的状態、イメージング研究)が挙げられる。
実施例1
NODマウスにおけるT1DのB細胞特異的作用物質処置
これらの試験を行うために、前糖尿病の8〜10週齢の雌性非肥満糖尿病マウス(NODマウス)および最近発症した1型糖尿病(T1D)雌性NODマウスを1群あたり20匹用いた。ONE TOUCH ULTRA(登録商標)グルコースモニター(Lifespan Inc)を用いて1週間に2回血糖値を測定した。血糖>250 mg/dLを超える読みが2回連続して得られた場合、マウスは糖尿病であると見なされた。ネズミCD20に結合する5D2と呼ばれるネズミモノクローナル抗体(Genentech)の半減期を測定するために、抗体200 μgを前糖尿病NODマウスに静脈内(i.v.)投与した。血液50μLを毎日採取して、血清中の抗CD20の量を、既に記述された通りに(P. J. Adamson, H. Zola, I. C. Nicholson, G. Pilkington, A. Hohmann, Leuk Res 25, 1047 (Dec, 2001))、140番目のアミノ酸でビオチンに融合した140番目から184番目のアミノ酸のその細胞外配列を含有する合成CD20ペプチドを用いてELISAによって定量した。マウスにB細胞特異的作用物質、すなわち抗CD20 mAbの異なる用量(5、10、25、50、または100μg)を、1日目のみ(1回)または1、4、7および10日目(4回)に静脈内投与した。または、抗体による処置を行わないマウス、またはアイソタイプをマッチさせた対照抗体によって処置したマウスを対照として用いた。抗CD20 mAb処置によって提供される保護を判定するために、処置および無処置のマウスにおいて1週間に2回、10週間の間血糖をモニターした。血糖値が<200μg/dLであればマウスは保護されたと見なされた。処置後5週間目での膵臓におけるインスリンの発現を、記述される通りに(D. Bresson et al., J Clin Invest 116, 1371 (May, 2006), U. Christen et al., Clin Invest 114, 1290 (Nov, 2004))、モルモット抗ブタインスリン(1:300)抗体による6μMの凍結膵臓切片の免疫組織化学(IHC)染色によって判定した。インスリン炎を測定するために、凍結膵臓切片を、抗CD4 RM4.5および抗CD8a IHC(BD Biosciences)[1:50倍希釈](D. Bresson et al., J Clin Invest 116, 1371 (May, 2006), U. Christen et al., J Clin Invest 114, 1290 (Nov, 2004))によって染色した。観察された保護の機序を決定するために、末梢血中の様々な細胞タイプの頻度および総数を、抗CD4、抗CD8、および抗IgM/IgD(BD pharmingen)による染色およびFACSによる分析によって、処置後1、3、8、および15日目に測定した。さらに脾細胞またはPLN細胞を、抗CD4、抗CD8、抗CD25、抗CD127、抗CTLA4(1:20倍希釈、BD Biosciences)によって表面染色後に、抗Foxp3(ebioscience)または抗GITR(R&D systems)(D. Bresson et al., J Clin Invest 116, 1371 (May, 2006))による細胞内染色を行った。nTreg細胞の頻度を、CD4+CD127lowCD25+またはCD4+CD25-細胞における、および対照としてのCD8+細胞におけるFoxp3、CTLA4、またはGITRの発現を分析することによって測定した。さらにサイトカインの産生を、ELISA、ELISPOT、またはICSによって評価した。脾細胞またはPLN細胞を、抗CD3/CD28またはアイソタイプマッチ対照抗体(各1μg/mL)を用いてインビトロで3日間刺激した。培養上清を回収して、IFN-γ、TNF-α、IL-10、IL-4(BD pharmingen)、TGF-β1(Quantikineキット、R&D systems)ELISAキットを用いて、または多重サイトカインアッセイ法(Beadlyte Mouse Multi-Cytokine Detection System; Upstate USA Inc)を用いて、製造元の説明書に従ってサイトカインを定量した。細胞内サイトカイン染色および分析を記述した通りに行った(D. Bresson et al., J Clin Invest 116, 1371 (May, 2006))。適応性のインスリン特異的Tregを計数するために、インスリン9-23およびプロインスリンペプチド(IAg7拘束)による刺激後にサイトカインアッセイ法(上記)を行った。加えて、自己攻撃性CD8+ T細胞の効果を判定するために、末梢血中の抗原特異的T細胞の頻度をFACS分析によって判定したか、またはその存在を凍結膵臓切片においてNRP-V7四量体(Pere Santamaria, University of Calgary, Canadaから得た)を用いるIHCによって検出した(D. Bresson et al., J Clin Invest 116, 1371 (May, 2006))。これらの抗原特異的T細胞の機能的状態は、それらをインビトロで抗CD3/抗CD28(各1μg/mL)によって刺激して、ELISAおよびICSによってIFN-γおよびTNF-αの産生を測定することによって判定した。かつ最後に、最近発症したT1Dの部分的寛解を誘導する抗CD20抗体の最小有効量を判定するために、最近発症したT1Dマウスにおける様々な処置(抗体10、50、および100μgのi.v.による1d/4d処置)後の長期保護を判定した。血糖値を先に記述した通りに判定して、血糖値<200μg/dLを有するマウスは治癒したと見なされた。部分寛解(最近発症したT1D NODマウスにおける糖尿病の10〜20%減少)を誘導する抗体の用量をこれらの分析から計算した。
結果
抗CD20の1回投与は、より高濃度の抗体を用いた場合に限って保護的であった(図1A)。抗CD20の5または10μgの投与は、保護的ではなかったが、抗CD20の50および250μgはそれぞれ、糖尿病の発生率を40%および50%低減させた。抗CD20の用量をさらに増加させても保護は認められなかった。次に、抗CD20を1、2、3および4日目に4回投与した。対照マウスの少なくとも70%が糖尿病になる20週目に、抗CD20処置マウスのほとんどが糖尿病に罹っていないままであった(図1B)。調べた各用量、すなわち抗CD20の5、10、50、および100μgにおいて、糖尿病の発生率は75%低減される。このように、抗CD20抗体の4回処置レジメンは、抗CD20のみを用いて観察される最善の保護を提供した。
実施例2
NODマウスにおけるT1Dを処置するためにDNA抗原特異的治療物質と併用したB細胞特異的作用物質
これらの試験を行うために、最近発症した1型糖尿病(T1D)雌性NODマウス20〜40匹、または前糖尿病(1群20匹)の8〜10週齢雌性NODマウスの群を用いた。ONE TOUCH ULTRA(登録商標)グルコースモニター(Lifespan Inc)を用いて、血糖値を1週間に2回測定した。2回連続した読みが血糖値>250 mg/dLであれば、マウスは糖尿病であると見なされた。マウスに、B細胞特異的作用物質、すなわちネズミ抗CD20抗体5D2の10、50、および100μg用量を1回投与した。プロインスリン(SEQ ID NO:20)をコードするDNAプラスミドベクターを調製して(WO 2007/044394を参照されたい)、>95%の純度で用いた。抗CD20の投与後、マウスに、プロインスリンをコードするDNAプラスミドベクターを1、8、15、および22日目に投与した。抗CD20単独、インスリン単独によって処置した最近発症したT1D NODマウス、または無処置マウスを対照として含めた。併用治療後、これらのマウスにおける糖尿病の発生率を、血糖値を測定することによってモニターして、血糖値が<200μg/dLであれば、マウスは保護されたと見なされた。抗CD20またはインスリンペプチド投与と比較した併用治療後の効力の増加を、([併用治療による%保護−ペプチド単独による%保護]/[ペプチド単独による%保護])×100として決定して、データを、糖尿病になったマウスの週齢ならびにマウスの試験登録時の血糖値に関して評価した(BG>400 mg/dlを有するマウスは、残っているβ細胞塊が少なすぎることから、最近発症した糖尿病からほとんど復帰できないことが観察されている)。保護の効力が増加したマウスにおいて、膵臓のインスリン発現、インスリン炎、および抗原特異的CD8+ T細胞に及ぼす効果を判定した。寛容誘導の原因となる細胞を同定するために、脾細胞または末梢リンパ節(PLN)細胞またはCD4+またはCD8+またはB220+細胞(Miltenyi Biotec, USAのそれぞれの自動MACS精製キットによって精製)を上記の通りに用いた。FACSによる様々な細胞タイプの計数およびこれらの細胞のELISAまたはICSによるサイトカイン分泌プロファイルを上記の通りに行った。共培養試験において、CFSE標識BDC2.5CD8+T細胞を応答細胞として用いて、DNAプラスミドまたは対照によって6時間パルスしたDCを、応答細胞を刺激するための抗原提示細胞(APC)として用いた。応答細胞CD8+ T細胞(1×105個)を同数のまたは連続希釈した精製CD4+またはCD8+またはB220+細胞と混合した。2日間共培養した後、上清中の調節性サイトカインの産生をELISAによって定量化して、抗原特異的T細胞の増殖阻害を、FACSによってCFSE希釈率を測定することによって判定した。nTregおよび適応性Tregを計数して、上記の通りにサイトカイン分泌に関して試験した。これらの調節細胞集団が、レシピエントに優性寛容を移入することができるか否かを判定するために、全脾細胞、またはPLN細胞、または精製CD4+またはCD8+またはB220+細胞のいずれかを、ポリクローナル刺激(T細胞に関して1μg/mL抗CD3/CD28、またはB細胞に関して1μg/mL抗B220/CD40などの)、またはDNAプラスミド(1μg/mL)を用いてインビトロで3日間拡張させた。そのように拡張させた細胞(細胞5×106個)を最近発症したT1Dまたは前糖尿病NODマウスに養子移入して、血糖値をモニターする。同時に、そのように拡張させた細胞そのものをCFSEによって標識して、レシピエントマウスに養子移入した。移入後2日目に、脾臓またはPLNからプールした細胞を抗CD4、抗CD8、または抗B220(BD pharmingen)によって染色して、CFSE希釈率を測定することによって、これらの位置での移入細胞の拡張を判定した。より厳格な最近発症したT1Dモデルにおける寛容の移入を判定するために、インビトロで拡張させた調節細胞集団(細胞5×106個)を、記述される通りに、LCMV-armstrong株感染による糖尿病の発症後5日目にRIP-LCMV-NPマウスに養子移入した。移入した細胞によって与えられた糖尿病からの保護を、血糖値を測定することによって、インスリン炎を決定することによって、または記述される通りに(D. Bresson et al., J Clin Invest 116, 1371 (May, 2006))NP 118四量体を用いるIHCによって、膵臓のAg-特異的CD8+ T細胞浸潤の程度を判定することによって判定した。
結果
抗CD20によるT1D処置の効力を改善するために、本発明者らは、抗CD20の投与を、プロインスリンをコードするDNAプラスミドの投与と併用した。抗CD20の1回(1日目)静脈内投与を、プロインスリンをコードするDNAプラスミドの1回(1日目)または4回(1、8、15、21日目)筋肉内注射のいずれかと併用して与えた。これらの試験に用いた抗CD20の最低用量である10μgは、単独でもプロインスリンプラスミドとの併用でもいかなる保護も提供しなかった(図2A)。抗CD20の高用量、すなわち50(図2B)および100μg(図2C)はいずれも、単独でT1Dに対して何らかの保護を提供した。プロインスリンをコードするDNA自己ベクターを抗CD20と同時投与すると、保護の効力を増加させた。50μgの抗CD20単独は、T1Dの発生率を40%低減させたが、プロインスリンをコードするDNAプラスミドを4回同時投与すると、発生率をさらに75%低減させた。抗CD20の1回投与とプロインスリンペプチドの1回投与との併用は、抗CD20単独より良好な応答を達成しなかった。興味深いことに、抗CD20 100μgを、プロインスリンプラスミドをコードするDNAプラスミドと併用して用いると、プロインスリンをコードするDNAプラスミドの1回投与およびDNA自己ベクターの4回投与は共に、糖尿病の発生率を75%低減させることができ、単剤投与と比較して相乗効果を示した。このように、抗CD20と、プロインスリンプラスミドをコードするDNA自己ベクターとの併用治療は、これらの試薬単独のいずれかを用いる場合より有効である。
抗CD20によるT1D予防の効力を改善するためにさらなる実験を行った。この組の実験に関して、プロインスリンプラスミドの濃度は常に同じで、50μg/動物/注射であった。投与頻度は、プロインスリンプラスミドの持続的投与と併用せずに(図3A)または併用した(図3B)、抗CD20の1回(1日目)、または4回(1、2、3および4日目)静脈内注射であった。前糖尿病NODマウスに抗CD20のみを与えると、調べた最高用量で最善の保護が認められ、抗CD20 100μgを与えるとマウスの25%が保護された。意外なことに、抗CD20単独を1回のみまたは4回投与しても、これらのマウスにおいて類似の保護を達成した(図3A、右のパネル)。調べた低用量は、T1Dの発症に対して有意な保護を提供しなかった。本発明者らのNODコロニーにおいて、T1Dの発生率は、30週齢までに90%またはそれ以上に達する。
興味深いことに、プロインスリンプラスミドを抗CD20と同時投与すると、保護の効力を増加させた。調べた低用量である抗CD20の10および50μgと、プロインスリンとを同時投与すると、抗CD20単独より多くのマウスにおいてT1Dの発症を予防するために役立つことができた(図3B、左および中央のパネル)。抗CD20 50μgを単独で投与しても、保護は観察されなかった(図3A、中央のパネル)。しかし、プロインスリンプラスミドと同時投与すると、マウスの約50%を糖尿病の発症から保護した(図3B、中央のパネル)。抗CD20の用量をさらに増加させても、保護のいかなる増加も起こらなかった(図3B、右のパネル)。
抗CD20の頻回投与は併用治療に好都合ではない。
この組の実験において、最高の相乗効果を達成するための抗CD20およびプロインスリンの最適な用量を発見するために、本発明者らは、抗CD20およびプロインスリンプラスミドの双方の投与回数を変化させた。抗CD20投与を、1回限り(1日目、図4A、C)または4回(図4B)行った。同様に、プロインスリンプラスミドを1回限り(図4A、B)または4回(図4C)投与した。抗CD20の頻回投与をプロインスリンの1回投与と併用しても、この投与回数ではT1D発症に対していかなる保護も示さなかったことから有益ではなかった(図4B)。意外なことに、抗CD20の1回投与をプロインスリンプラスミドの1回(図4A)または4回(図4C)投与のいずれかと併用すると、T1Dの発症に対するNODマウスの保護において相乗効果を示した。さらに、プロインスリンプラスミドの4回投与は、プロインスリンプラスミドの1回投与より大きい相乗効果を示した。
抗CD20 100μgの1回投与をプロインスリンプラスミドの1回投与と併用すると相乗効果を示すことができるという観察は、有意な知見である。このため、抗CD20とプロインスリンプラスミドの併用治療は、これらの試薬単独のいずれかを用いるよりも有効である。
実施例3
尋常性天疱瘡(PV)を処置するためのDNA抗原特異的治療物質と併用したB細胞特異的作用物質
尋常性天疱瘡(PV)は、自己タンパク質であるデスモグレインIII(DMGIII)に対する標的とされる自己抗体免疫応答によって引き起こされる皮膚水疱形成疾患である(Perez and Patton. Drugs Aging.. 26:833-46, 2009)。現在の第一選択治療は、高用量全身性コルチコステロイド(たとえば、プレドニゾン1 mg/kg/日)を含む。アザチオプリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなどのステロイドを用いない免疫抑制剤も同様に広く用いられている。リツキシマブ(抗CD20)は、従来の治療に対して不応性である尋常性天疱瘡を処置するために用いられている(Fernando and Broadfoot. G. Ital. Dermatol. Venereol. 144:363-77, 2009)。静脈内免疫グロブリン(IVIG)は、ステロイドに応答しない患者またはリツキシマブが禁忌である患者において単剤治療として有用でありうる。
ヒトデスモグレインIII(DMGIII)は、分子量107.53のタンパク質であり、そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に記載される。免疫したDMGIIIノックアウトマウスから得られた抗DMGIII抗体を用いて、PVを処置するための可能性がある治療薬をスクリーニングするために用いられるPVの動物モデルが開発されている(Koch et al. J Cell Biol. 137: 1091-1102, 1997; Amagai et al. J Clin. Invest.. 105:625-631, 2000)。抗DMGIII抗体を野生型マウスに養子移入すると、マウスは、PV患者における病変と病理生理学的に類似の皮膚病変をその後発症する。
DNA抗原特異的治療物質と併用した抗CD20などの抗B細胞特異的作用物質の連続治療または同時治療の効力を証明する実験に関して、適切な制御および調節要素(たとえばWO 2007/044394を参照されたい)を含む、自己抗原ペプチドであるデスモグレインIII(SEQ ID NO:1)をコードするpDNA自己ベクターを構築する。非分泌性DMGIII(SEQ ID NO:2)をコードする第二のpDNA自己ベクターを構築して、同様に以下の通りに試験する。DMGIIIに対する抗体が誘導されてELISAによって検出可能となった後に、DMGIIIノックアウト動物において処置を開始する。この疾患モデルにおいて抗CD20の応答の動態および疾患改変の程度を明確にする、抗CD20単独の5〜250μg/マウスの用量範囲を試験する。抗CD20の最適以下のおよび最適な用量レベルを、DMGIIIをコードするpDNA自己ベクターと併用して試験する。効力を維持しながら抗CD20 mAbの安全性プロファイルを改善するために、DMGIIIをコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して投与するための抗CD20 mAbのより低用量を同定するために、抗CD20 mAbの最適以下の用量を評価する。抗CD20 mAb(いずれも最適以下のおよび最適な用量レベル)およびDMGIIIをコードするpDNA自己ベクターを、抗体レベルに基づいて7つの処置群に無作為割付したDMGIIIノックアウトマウスに投与する。処置レジメンを表3に示す。
(表3)
Figure 2013517329
1群は無処置のままである。本発明の併用治療を行う2つの群を含む3つの群を最適以下の抗CD20 mAbによって処置し、本発明の併用治療を行う2つの群を含む3つの群を最適な抗CD20 mAb用量によって処置する。抗CD20 mAb単独の効果は2群および5群に認められる。自己抗原をコードするpDNA自己ベクターと抗CD20 mAbとを併用することによる併用治療の効果は、3、4、6および7群に認められる。効力に及ぼす投与タイミング(同時治療対連続治療)の効果は、3群を4群とおよび6群を7群と比較することによって証明される。pDNA自己ベクターを、IM注射(50μg/マウス、25μg/大腿方形筋)によって毎週投与する。4群および7群に関して、抗CD20 mAbを投与後2、4または6週目にpDNA治療を開始する。開始後、養子移入のための血清を採取するまでpDNA治療を毎週継続する。
抗DMGIII抗体レベルに及ぼす効果を、DMGIIIノックアウト動物から採取した血清において評価する。DMGIIIに対する自己抗体レベルを、抗原としてDMGIIIタンパク質またはペプチドを用いるELISAによってモニターする。処置したマウスから採取した血清の野生型マウスへの養子移入を行う。体重および皮膚病変の組織病理学的スコアリングをモニターすることにより、効力をレシピエントマウスにおいて証明する(Takae et al. Exp. Dermat.. 18:252-60, 2009)。
実施例4
多発性硬化症(MS)を処置するためにDNA抗原特異的治療物質と併用したB細胞特異的作用物質
実験的に誘導された自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスモデルを用いて、多発性硬化症を処置するための化合物を評価する。アジュバントと共にミエリンタンパク質またはペプチドによってマウスを免疫した後に、異なるバックグラウンドの動物においてEAEを誘導する。疾患は、免疫後2週間以内に起こる。脚の麻痺の程度を測定するスコアリング尺度は確立されており、組織学的評価により、EAEを有するマウスの脳にリンパ球が浸潤することが証明されている。EAEマウスは、Copaxone(Webb et al. Immunochemistry.,13(4):333-7, 1976)およびTysabri(Yednock et al. Nature.,356:63-6, 1992)などのあるMS薬物を検証および開発するために前臨床試験において用いられており、薬物の開発におけるこのモデルの有用性を確認する。
抗原特異的治療は、EAEの症状を減少させることが既に証明されている。EAEにおける自己免疫応答の際に標的とされるミエリンタンパク質の1つは、タンパク質、プロテオリピドタンパク質、またはPLPである。pDNA自己ベクターアプローチを用いて、PLPをコードするpDNA自己ベクターは、マウスにおける前臨床EAE試験において再発率を低下させる能力があることを証明しているが(Garren et al. Immunity., 15(1): 15-22, 2001)、動物は疾患の症状を有し続けることから、B細胞特異的作用物質などの別の免疫調節化合物と併用したDNA抗原特異的治療物質の併用治療により恩典を得ることができるであろう。
ネズミPLPは、分子量30.08のポリペプチドである。pDNA抗原特異的治療物質と併用した抗B細胞抗体などのB細胞特異的作用物質を用いる併用治療の効力を証明する実験に関して、CFA中で乳化したPLPペプチドを用いてSJLマウスモデルにおいてEAEを誘導する。適切な制御および調節要素(WO 2007/044394を参照されたい)を含む、自己抗原ポリペプチド、プロテオリピドタンパク質、PLP(SEQ ID NO:5)をコードするDNA自己ベクターを構築する。抗CD20モノクローナル抗体を、このモデルにおける抗CD20の応答の動態および疾患改変の程度を明確にする抗CD20単独の5〜250μg/マウスの用量範囲で試験する。抗CD20 mAbの最適以下のおよび最適な用量レベルを、単独でおよびPLPをコードするpDNA自己ベクターと併用して試験する。効力を維持しながら抗CD20 mAbの安全性プロファイルを改善するために、PLPをコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して投与するための抗CD20 mAbのより低用量を同定するために、抗CD20 mAbの最適以下の用量を評価する。抗CD20(最適以下のおよび最適な用量レベルの双方)およびPLPをコードするpDNA自己ベクターを、疾患の重症度に基づいて7つの処置群に無作為割付したEAEマウスに投与する。処置レジメンを上記の表3に示す。
1群は無処置のままである。3つの群を最適以下の抗CD20 mAbによって処置し、2つの群を最適な抗CD20 mAn用量によって処置する。抗CD20 mAb単独の効果は2群および5群に認められる。自己抗原をコードするpDNA自己ベクターと抗CD20 mAbとを併用することによる併用治療の効果は、3、4、6および7群に認められる。効力に及ぼす投与タイミング(同時治療対連続治療)の効果は、3群を4群とおよび6群を7群と比較することによって証明される。開始後、pDNA抗原特異的治療を試験期間の間毎週継続する。pDNA自己ベクターを、用量50μg/マウス(25μg/大腿方形筋)のIM注射によって毎週投与する。4群および7群に関して、抗CD20を投与後2、4または6週目にpDNA抗原特異的治療を開始する。開始後、試験期間の間pDNA治療を毎週継続する。
抗CD20抗体のみを投与したマウスからの疾患スコアおよび脳組織学を、抗CD20 mAbとPLPをコードするpDNA自己ベクターとの併用治療を受けた動物と比較することにより、併用アプローチの有効性を判定する。
実施例5
関節リウマチ(RA)を処置するためにDNA抗原特異的治療物質と併用したB細胞特異的作用物質
シトルリン化フィブリノーゲンを特異的に標的とする実験的に誘導されたマウス関節炎モデル(FIA)が最近確立されている(Ho et al. J. Immunol. 184:379-90, 2010)。シトルリン化タンパク質に対する抗体は、関節リウマチ炎患者において容易に検出可能であり、このマウスモデルの開発は、この消耗性の疾患に関する抗原特異的寛容化アプローチの開発に役立つであろう。FIAを発症するように誘導されたマウスは、前炎症性サイトカインを産生するフィブリノーゲン反応性T細胞を保有するが、血漿のみによって疾患をナイーブ動物に養子移入できることから、疾患は抗体媒介性であると考えられる。
フィブリノーゲンは、分子量69.76のポリペプチドである。FIAマウスにおける抗CD20と自己抗原をコードするpDNA自己ベクターとの同時併用治療または連続的併用治療の効力を証明する実験に関する。適切な制御および調節要素(WO 2007/044394を参照されたい)を含む、自己抗原ポリペプチドであるフィブリノーゲン(SEQ ID NO:6)をコードするDNA自己ベクターを構築する。抗CD20モノクローナル抗体を、このモデルにおける抗CD20の応答の動態および疾患改変の程度を明確にする抗CD20単独の5〜250μg/マウスの用量範囲で試験する。抗CD20 mAbの最適以下のおよび最適な用量レベルを、単独およびフィブリノーゲンをコードするpDNA自己ベクターとの併用で試験する。効力を維持しながら抗CD20 mAbの安全性プロファイルを改善するために、フィブリノーゲンをコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して投与するための抗CD20 mAbのより低用量を同定するために、抗CD20 mAbの最適以下の用量を評価する。抗CD20(最適以下のおよび最適な用量レベル)およびフィブリノーゲンをコードするpDNA自己ベクターを、疾患の重症度に基づいて7つの処置群に無作為割付したEAEマウスに投与する。処置レジメンを上記の表3に示す。
1群は、無処置のままである。3つの群を最適以下の抗CD20 mAbによって処置し、2つの群を最適な抗CD20 mAb用量によって処置する。抗CD20 mAb単独の効果は2群および5群に認められる。自己抗原をコードするpDNA自己ベクターと抗CD20 mAbとを併用することによる併用治療の効果は、3、4、6および7群に認められる。効力に及ぼす投与タイミング(同時治療対連続治療)の効果は、3群を4群とおよび6群を7群と比較することによって証明される。開始後、pDNA抗原特異的治療を、試験期間の間毎週継続する。pDNA自己ベクターを、用量50μg/マウス(25μg/大腿方形筋)のIM注射によって毎週投与する。4群および7群に関して、抗CD20の投与後2、4または6週目に、pDNA抗原特異的治療を開始する。開始後、試験期間の間pDNA治療を毎週継続する。
抗CD20抗体のみを投与したマウスからの疾患スコアおよび関節の組織学を、抗CD20 mAbとフィブリノーゲンをコードするpDNA自己ベクターとの併用治療を受けた動物と比較することによって、併用アプローチの有効性を判定する。
実施例6
特発性肺線維症(IPF)に対するDNA抗原特異的治療物質と併用したB細胞特異的作用物質
特発性肺線維症(IPF)は、原因不明の最終的に致死性の肺疾患である慢性の進行性自己免疫疾患である。その予後は不良であり、その転帰は多くの悪性疾患の中でもさらに悪い。IPFのブレオマイシンマウスモデル(bIPF)は、臨床試験において評価するための治療薬を評価するためのモデルシステムとして、何十年もの間用いられている(Moeller et al., Int. J. Biochem Cell Biol. 2008. 40(3):362-382)。肺に投与すると、ブレオマイシンは、短期間の間に炎症性の線維症性の反応を引き起こす。前炎症性サイトカインが上昇した後、約14日をピークとする前線維症マーカーの発現の増加が起こる。炎症と線維症の間のスイッチは約9日目で起こる。誘導される炎症の一部は、損傷に曝露後の肺組織のリモデリングの際に露出するV型コラーゲンに対する自己免疫応答の結果であると考えられる(Wilkes, DS., Arch. Immunol. Ther. Exp. 2003. 51 :227-30)。
V型コラーゲンは、分子量183.56のポリペプチドである。ブレオマイシン誘導IPFマウス(bIPF)における、抗CD20と自己抗原をコードするpDNA自己ベクターとの同時併用治療または連続的併用治療の効力を証明する実験に関して、適切な制御および調節要素(WO 2007/044394を参照されたい)を含む、自己抗原ポリペプチドであるV型コラーゲン(SEQ ID NO:10)をコードするDNA自己ベクターを構築する。非分泌性V型コラーゲンをコードする第二のpDNA自己ベクターを構築して、同様に以下の通りに試験する。抗CD20モノクローナル抗体を、このモデルにおける抗CD20の応答の動態および疾患改変の程度を明確にする抗CD20単独の5〜250μg/マウスの用量範囲で試験する。抗CD20 mAbの最適以下のおよび最適な用量レベルを、単独およびV型コラーゲンをコードするpDNA自己ベクターとの併用で試験する。効力を維持しながら抗CD20 mAbの安全性プロファイルを改善するために、V型コラーゲンをコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して投与するための抗CD20 mAbのより低用量を同定するために、抗CD20 mAbの最適以下の用量を評価する。抗CD20(最適以下のおよび最適な用量レベル)およびコラーゲンをコードするpDNA自己ベクターを、疾患の重症度に基づいて7つの処置群に無作為割付したEAEマウスに投与する。処置レジメンを上記の表3に示す。
1群は、無処置のままである。3つの群を最適以下の抗CD20 mAbによって処置し、2つの群を最適な抗CD20 mAb用量によって処置する。抗CD20 mAb単独の効果は2群および5群に認められる。自己抗原をコードするpDNA自己ベクターと抗CD20 mAbとを併用することによる併用治療の効果は、3、4、6および7群に認められる。効力に及ぼす投与タイミング(同時治療対連続治療)の効果は、3群を4群とおよび6群を7群と比較することによって証明される。開始後、pDNA抗原特異的治療を、試験期間の間毎週継続する。pDNA自己ベクターを、用量50μg/マウス(25μg/大腿方形筋)のIM注射によって毎週投与する。4群および7群に関して、抗CD20の投与後2、4または6週目に、pDNA抗原特異的治療を開始する。開始後、試験期間の間pDNA治療を毎週継続する。
抗CD20抗体のみを投与されたマウスの疾患スコアおよび肺組織の組織病理学的評価を、抗CD20 mAbとV型コラーゲンをコードするpDNA自己ベクターとの併用治療を受けた動物と比較することによって、併用アプローチの有効性を判定する。
実施例7
アセチルコリン受容体(AChR)に対するDNA抗原特異的治療物質と併用したB細胞特異的作用物質
重症筋無力症(MG)は、変動する筋衰弱および疲労性に至るニコチン作動性アセチルコリン受容体(AChR)のα鎖に対する自己抗体応答を特徴とする慢性の進行性自己免疫疾患である(Grob et al. Muscle Nerve. 2008. 37: 141-49)。
疾患は、神経伝達物質であるアセチルコリンの刺激効果を阻害するシナプス後神経筋接合部でアセチルコリン受容体を遮断する血液中の自己抗体によって媒介される。筋無力症は、内科的にはコリンエステラーゼ阻害剤または免疫抑制剤によって処置されるが、選択された症例では、胸腺切除によって処置される。最近、抗CD20が何人かのMG患者において用いられている(Chan et al. J. Neurol. 2007. 254: 1604-06)。
重症筋無力症の治療薬の開発は、ラットにおいて実験的に誘導された自己免疫性重症筋無力症(EAMG)と呼ばれる誘導MGモデルの確立によって促進されている。EAMGは、CFA中で乳化した精製アセチルコリン受容体(通常、シビレエイから精製される)によってラットを免疫することによって誘導される。動物は、運動後の筋疲労性の徴候を示し、疾患の重症度をモニターするために臨床疾患スコアリングシステムが確立されている。
AChRは、分子量51.84のポリペプチドである。抗CD20 mAbおよび自己抗原をコードするpDNA自己ベクターの同時併用治療または連続併用治療の効力を証明する実験に関して、適切な制御および調節要素(WO 2007/044394を参照されたい)を含む、自己抗原ポリペプチドであるアセチルコリン受容体(SEQ ID NO:14)をコードするDNA自己ベクターを構築する。抗CD20モノクローナル抗体を、EAMGモデルにおける抗CD20 mAbの応答の動態および疾患改変の程度を明確にする抗CD20単独の5〜250μg/ラットの用量範囲で試験する。抗CD20 mAbの最適以下のおよび最適な用量レベルを、単独でおよびAChRをコードするpDNA自己ベクターと併用して試験する。効力を維持しながら抗CD20 mAbの安全性プロファイルを改善するために、AChRをコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して投与するための抗CD20 mAbのより低用量を同定するために、抗CD20 mAbの最適以下の用量を評価する。抗CD20(最適以下のおよび最適な用量レベルの双方)およびAChRをコードするpDNA自己ベクターを、疾患の重症度に基づいて7つの処置群に無作為割付したEAMGラットに投与する。処置レジメンを上記の表3に示す。
1群は、無処置のままである。3つの群を最適以下の抗CD20 mAbによって処置し、2つの群を最適な抗CD20 mAb用量によって処置する。抗CD20 mAb単独の効果は2群および5群に認められる。自己抗原をコードするpDNA自己ベクターと抗CD20 mAbとを併用することによる併用治療の効果は、3、4、6および7群に認められる。効力に及ぼす投与タイミング(同時治療対連続治療)の効果は、3群を4群とおよび6群を7群と比較することによって証明される。開始後、pDNA抗原特異的治療を、試験期間の間毎週継続する。pDNA自己ベクターを、用量50μg/ラット(25μg/大腿方形筋)のIM注射によって毎週投与する。4群および7群に関して、抗CD20の投与後2、4または6週目に、pDNA抗原特異的治療を開始する。開始後、試験期間の間pDNA治療を毎週継続する。
抗CD20抗体のみを投与されたラットの疾患スコア、筋疲労性、および筋組織の組織病理学的評価を、抗CD20 mAbとAChRをコードするpDNA自己ベクターとの併用治療を投与された動物と比較することによって、併用アプローチの有効性を判定する。
実施例8
アセチルコリン受容体(AChR)に対するDNA抗原特異的治療物質と併用した免疫抑制剤
本実施例は、DNAワクチン(rBHT-3034)およびコルチコステロイド(Solu-メドロール)の併用治療が、ラットEAMGモデルにおける疾患スコアの抑制に関していずれかの単剤治療より有効であることを示すデータを提供する。
これまでの試験から、ラットアセチルコリン受容体サブユニットαタンパク質の非分泌性型をコードするDNAワクチンの毎週投与が、ラット実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)モデルにおける疾患スコアの低減において有効であることが証明されている。同様に、公表された試験から、ラットEAMGにおけるコルチコステロイド治療の用量依存的恩典が示されている。本研究において、本発明者らは、ラットEAMGモデルにおけるDNAワクチン/コルチコステロイド併用治療の効力を評価した。図5に示される通り、rBHT-3034/Solu-メドロール併用治療を与えたラットは、PBS処置対照群ならびにrBHT-3034およびSolu-メドロール単剤治療群と比較して疾患スコアの統計学的に有意な低減を示す。
EAMGを、既に記述されている通りにLewisラットにおいて誘導した。疾患の発症前、動物を処置群に無作為割付して、Solu-メドロールの投与を免疫後7日目に開始した。rBHT-3034の毎週のIM注射を28日目に開始した。疾患に関するスコアを動物から毎週得て、疾患スコアをプロットして、その上に±SEMを示す。クラスカル-ウォリス検定を用いて、Solu-メドロール+rBHT-3034をPBS対照群と比較したところ、76日目から105日までのP値<0.05を得た。
本明細書において記述された実施例および態様は、説明目的に限られること、ならびに本発明に照らして様々な改変または変化が当業者に示唆されるであろうが、それらも本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれると理解される。本明細書において引用された刊行物、特許、および特許出願は全て、その全内容が全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる。
(配列表)
SEQ ID NO:1 マウスデスモグレイン3のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:2 マウス非分泌性デスモグレイン3のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:3 ヒトデスモグレイン3のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:4 ヒト非分泌性デスモグレイン3のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:5 マウスPLPのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:6 マウス非分泌性フィブリノーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:7 マウスフィブリノーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:8 ヒトフィブリノーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:9 マウスV型コラーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
Figure 2013517329
Figure 2013517329
SEQ ID NO:10 マウス非分泌性V型コラーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
Figure 2013517329
Figure 2013517329
SEQ ID NO:11 ヒトV型コラーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
Figure 2013517329
Figure 2013517329
SEQ ID NO:12 ヒト非分泌性V型コラーゲンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
Figure 2013517329
SEQ ID NO:13 マウスアセチルコリン受容体のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:14 マウス非分泌性アセチルコリン受容体のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:15 ヒトアセチルコリン受容体のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:16 ヒト非分泌性アセチルコリン受容体のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:17 ヒトプレプロインスリンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:18 ヒトプレプロインスリン(非分泌性)のヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:19 マウスプレプロインスリンのヌクレオチド配列
Figure 2013517329
SEQ ID NO:20 マウスプレプロインスリン(非分泌性)のヌクレオチド配列
Figure 2013517329

Claims (23)

  1. 自己タンパク質をコードするDNA抗原特異的治療物質と併用して免疫抑制剤または免疫調節剤の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、該哺乳動物における自己免疫疾患を処置するための方法。
  2. 前記自己免疫疾患が1型糖尿病である、請求項1記載の方法。
  3. 前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項1記載の方法。
  4. 前記自己免疫疾患が関節リウマチである、請求項1記載の方法。
  5. 前記自己免疫疾患が尋常性天疱瘡である、請求項1記載の方法。
  6. 前記自己免疫疾患が重症筋無力症である、請求項1記載の方法。
  7. 前記免疫抑制剤または前記免疫調節剤と前記DNA抗原特異的治療物質との投与が同時である、請求項1記載の方法。
  8. 前記免疫抑制剤または前記免疫調節剤と前記DNA抗原特異的治療物質との投与が連続的である、請求項1記載の方法。
  9. 前記自己タンパク質が前記自己免疫疾患に関連する、請求項1記載の方法。
  10. 前記免疫調節剤がB細胞特異的作用物質である、請求項1記載の方法。
  11. 前記B細胞特異的作用物質がCD20抗体である、請求項10記載の方法。
  12. 前記CD20抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、およびベルツズマブからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
  13. 前記DNA抗原特異的治療物質によってコードされる前記自己タンパク質が、インスリン、プロインスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65または島細胞抗原からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
  14. 前記DNA抗原特異的治療物質によってコードされる前記自己タンパク質がプロインスリンである、請求項13記載の方法。
  15. 前記DNA抗原特異的治療物質によってコードされる前記自己タンパク質が、ミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピドタンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、α-B-クリスタリン、またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
  16. プロインスリンをコードするDNAプラスミドと併用してCD20抗体の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、該哺乳動物における1型糖尿病(T1D)を処置するための方法。
  17. 前記CD20抗体がリツキシマブであり、かつプロインスリンをコードする前記DNAプラスミドがプロインスリン寛容化プラスミド(PTP)である、請求項16記載の方法。
  18. 前記CD20抗体とプロインスリンをコードする前記DNAプラスミドとの投与が同時または連続的である、請求項16記載の方法。
  19. 前記併用投与が、いずれかの作用物質の単独投与と比較して相乗効果的である、請求項16記載の方法。
  20. 前記併用投与により、前記CD20抗体の単独投与と比較した場合に該CD20抗体の投与回数が低減している、請求項16記載の方法。
  21. 前記哺乳動物がヒトである、請求項16記載の方法。
  22. (a)CD20特異的作用物質と、(b)DNA抗原特異的治療物質と、(c)薬学的に許容される担体とを自己免疫疾患を処置するのに有効な量で含む、薬学的組成物。
  23. (a)CD20特異的作用物質と、(b)DNA抗原特異的治療物質と、(c)薬学的に許容される担体とを含む、キット。
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