[0001]この国際出願は、参照することによりその内容が本願に組み入れられる2009年11月6日に出願された米国一部継続出願第12/613,840号の優先権の利益を主張する。
[0045]本発明は、スノーボード用の引き込み可能な制動装置と、制動装置を備えるスノーボードとを提供する。制動装置は、ボード部材に取り付けられ、ボード部材を貫通して可逆的に回動するブレーキ部材を備える。ブレーキ部材の全ての表面は切れ目がない。制動装置が作動されないときには、ブレーキ部材の下面がボード部材の下面と面一な引き込み位置にある。本明細書中では、ブレーキ部材の下面とボード部材の下面とが平行または10°の範囲内で平行である場合に、ブレーキ部材の下面がボード部材の下面と「面一」である。制動装置を作動させて減速するために、スノーボードの乗り手が足を使用してブレーキ部材を押し下げ、それにより、ブレーキ部材の下面がボード部材の下面を越えて延びて展開位置に至る。これが雪に更なる抵抗をもたらし、それにより、スノーボードの降下速度が低下する。
[0046]また、スノーボードには自動的に展開可能な制動装置も設けられる。ボード部材に取り付けられる圧力パッドは、乗り手の存在または不存在に影響される。乗り手が圧力パッド上に立っていれば、制動装置が乗り手によって作動可能となる。乗り手が圧力パッド上に立っていない場合、例えば乗り手がスノーボードから落ちるときには、圧力パッドが、ブレーキ部材を自動的に展開させるブレーキ展開装置を起動させる。
[0047]本発明の利点は多数である。第1に、本発明により、初心者のスノーボーダーは、ターンを行なうことなく自分達の降下速度を制御できる。また、本発明の制動装置を備えるスノーボードの乗り手はターンを行なって減速するする必要がないため、(ターンを容易にする)ビンディングの必要性が排除される。したがって、本発明の他の利点は、厄介なビンディングおよび履き心地の悪いブーツを使用することなくスノーボーダーがスノーボードを行なえるという点である。また、スノーボーダーは、自分達が固定されているボードでは不可能なトリックや操縦を行なうことができる。また、スノーボーダーは、既存のスノーボードに要求される、時として厄介な横向き姿勢は勿論のこと、自分達が望む任意の位置に立つことができる。例えば、本発明の制動装置を備えるスノーボードの乗り手は、随意的に、両足をボードの前方へ向けた状態の更に快適な平行姿勢で立つことができ、そのため、乗り手の視界が向上し、乗り手が望む任意の他の方向も向くことができる。また、乗り手の足を所定位置に固定する必要がないため、平坦面に沿う移動のために乗り手がビンディングを外す必要がない。乗り手は、スケートボードに乗るスケートボーダーと同様の方法で雪を片足でけって滑り出すことができ、あるいは、単にボードを拾い上げて歩くことができる。
[0048]本発明の自動的に展開可能な制動装置は、乗り手が乗りながら足でブレーキ部材を調節できるようにするとともに、乗り手が降りる場合にボードが坂を滑り落ちないようにする。圧力パッド上に立っている乗り手がボードから落ちると、圧力パッドは、ブレーキ部材を展開位置でロックするブレーキ展開機構を起動させる。ブレーキ部材がこのように展開された状態では、乗り手がいない状態でスノーボードが坂を降下しない。
[0049]スノーボードのボード部材は、従来のスノーボードのボード部材と同一であってもよい。しかしながら、スノーボードのボード部材は、乗り手が減速するためにボードをターンさせて操縦できなければならないため有効サイズが制約される従来のスノーボードのボード部材よりもかなり短く、長く、狭く、あるいは、幅広くてもよい。本発明はスノーボード用の制動装置を提供するため、従来のスノーボードの有効サイズ制約とは無関係である。乗り手が鋭いターンを行なって減速するのが難しいサイズをボード部材が有する場合であっても、乗り手は代わりに制動装置を使用して減速できる。
[0050]ボード部材の側面は略平行であってもよいが、典型的な実施形態では、中央部分が前後より狭い。また、ボード部材は、可逆的に回動できるブレーキ部材を受け入れるために、ボード部材を貫通する穴も有する。ボード部材は、従来のスノーボード施工技術および材料を使用して製造される。ボード部材の上面は、乗り手に良好な静止摩擦を与えるために滑り止め材料または滑り止め性状を備えてもよい。
[0051]ブレーキ部材は、ボード部材の穴を通じて可逆的に回動できる。氷や雪が詰まるのを防止するため、ブレーキ部材の全ての外面に切れ目がない。ブレーキ部材の上面は、乗り手に良好な静止摩擦を与えるために滑り止め材料または滑り止め性状を備えてもよい。ブレーキ部材の下面、または、回動縁部と反対側のブレーキ部材の縁部は、ブレーキと雪との間により多くの摩擦をもたらすために鋸歯状または歯付きであってもよい。ブレーキ部材は、制動によって急速に摩減しない比較的軽い硬質な材料、例えばアルミニウム合金から形成される。ブレーキ部材は、複合材料から形成されてもよく、あるいは、ブラスチック、複合物、および、金属の組み合わせから形成されてもよい。ブレーキ部材およびボード部材が同じ材料から形成されてもよい。
[0052]リトラクタは、乗り手によって作動されないときにブレーキ部材を完全引き込み位置へ戻す弾性力を与える。完全引き込み位置では、ブレーキ部材がボード部材の下面と面一に、あるいは該下面よりも僅かに上側に引き込まれる。リトラクタの一端がボード部材に取り付けられ、他端がブレーキ部材に取り付けられる。リトラクタにより与えられる力は、作動されるブレーキ部材の変位角にほぼ比例する。リトラクタは、一方のプレートがボード部材に取り付けられ、かつ他方のプレートがブレーキ部材に取り付けられるばね荷重ヒンジであってもよい。ヒンジは、任意の適した材料から形成されてもよいが、スチールなどの強力な金属から形成されるのが好ましい。ばねも任意の適した材料から形成されてもよいが、ばねは、比較的長い耐用年数を有する任意の金属から形成されるのが好ましい。また、リトラクタは、その両端がボード部材およびブレーキ部材に埋め込まれ、あるいは取り付けられるタングであってもよい。タングは、長い耐用年数を有する任意の材料から形成されるのが好ましい。
[0053]リトラクタがブレーキ部材を完全引き込み位置を越えて過回転させないように、ブレーキストッパが設けられてもよい。ブレーキストッパはボード部材またはブレーキ部材自体に装着されてもよい。あるいは、ヒンジは、それがブレーキの完全引き込み位置に対応する角度を越えて回転できないように設計されてもよい。ボード部材に装着されるブレーキストッパは、ブレーキ部材が完全引き込み位置に達するときにブレーキ部材と係合するフランジ(または、ブレーキ部材に取り付けられるフランジまたは突出部)を備える。ブレーキストッパとブレーキ部材との係合は、ブレーキ部材が引き込み位置を越えて回動するのを防止する。任意の数のブレーキストッパ部材が使用されてもよい。
[0054]以下、添付図面を参照して、本発明の典型的な実施形態を詳しく説明する。図面の全体にわたって、同様の要素には同様の符号が付されている。図面は、必ずしも一定の倍率で描かれておらず、また、本発明の様々な実施形態の全ての細部または構造を示しているとは限らず、むしろ、そのような実施形態を可能にする説明を行なうために典型的な実施形態および機械的特徴を示している。言うまでもなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるべきであり、本明細書中に記載される特定の実施形態によって規定されるべきではない。
[0055]引き込み可能な制動装置を有するスノーボードの第1の典型的な実施形態が図1に示されている。スノーボード100は、上面1および下面2を伴うボード部材50を有する。上面1は、前部1Aと、乗り部1Bと、後部1Cとを含む。乗り部1Bは、スノーボード100に乗るときに乗り手が立つ場所である。上面1、下面2、および、ボード部材50は、全てが同じ材料から形成されてもよく、あるいは、異なる材料から互いに一体に形成されてもよい。下面2はスノーボード100の滑走面である。乗り部1B内に全体が配置される穴3は、上面1および下面2の両方を貫いて、ボード部材50を完全に貫通する。穴3は、スノーボード100が滑走している雪と制動装置とが相互に作用できるようにする。
[0056]この典型的な実施形態では、ボード部材50の長さが4フィートであり、この長さは従来の成人用サイズのスノーボードよりもかなり短い。言うまでもなく、ボード部材50の長さはノーズの端部からテールの端部までの距離である。ボード部材50の幅は、長さに対して垂直に測定されてもよく、ボード部材50の長さに沿う任意のポイントで測定されてもよい。したがって、ボード部材50の幅がボード部材50の長さに沿って異なってもよいことは言うまでもない。ボード部材50の上面1は、ボード部材の最も狭い部分であるウエストで12インチ幅である。ボード部材50の上面1のノーズおよびテール(すなわち、前後のそれぞれ)はそれぞれ、それらの最も幅広いポイントで16インチ幅である。しかしながら、これらの寸法が単なる例示であることは言うまでもなく、様々な実施形態では、全てのサイズの乗り手に適応するべく、ボード部材が更に小さくてもよく、あるいは更に大きくてもよい。ウエストが狭く端部が幅広いこの構造はサイドカットとして知られており、それにより、スノーボード100が更に操作し易くなる。ボード部材50のサイドカットは、サイドカットを有する従来のスノーボードよりもかなり顕著である。すなわち、ボード部材のウエストがボード部材のノーズおよびテールよりも比例してかなり狭く、これは従来のスノーボードの場合よりも顕著である。ボード部材50のコアはガラス繊維またはエポキシ合板から形成されるが、当業者であれば分かるように、他の材料も適する。下面2は、深い引っかき傷を受けた場合に修理できる滑らかな滑走面を与えるために超高分子量ポリエチレン(一般に、p−taxとして知られる)から形成される。随意的に、更なる強度および剛性を構造体に与えるスチールエッジがボード部材50の周囲を取り囲んでいる。エッジは、乗り手がスノーボード100の方向を変えたい場合のターンにも役立つ。
[0057]図1に示される典型的な実施形態を更に参照すると、制動装置は、ボード部材50に回動可能に接続される略楔形状の制動部材4を含む。ブレーキ4は、完全に中実であるが、別の実施形態では切れ目のない外面を有する中空体である。楔の狭い端部4Aは、ブレーキ4の前端であり、穴3の前縁に隣接する乗り部1B内でボード部材50に回動可能に接続される。回動接続にはリトラクタが含まれ、該リトラクタは、この実施形態では、乗り部1B内でボード部材50に取り付け固定される前ヒンジプレート5Aと、ブレーキ4の前端4Aに埋め込み固定される後ヒンジプレート5Bとを有するばね荷重ヒンジ5である。ばね荷重ヒンジ5は、図2に示されるように、ブレーキ4を引き込み位置に弾性的に保持する。図3に示されるように、ばね荷重ヒンジ5により与えられる抵抗に打ち勝つべく乗り手がブレーキの上面4Cに対して十分な力を加えると、後ヒンジプレート5Bが時計回りに回転して、ブレーキ4が穴3を貫通して展開位置に回動する。
[0058]ヒンジ5とボード部材50との間の取り付け強度を高めるために、装着ねじ6が設けられる。装着ねじ6Aは、上面1を貫通してボード部材50に至り、前ヒンジプレート5Aを貫通するが、下面2を貫通しない。同様の装着ねじ6Bは、後ヒンジプレート5Bをブレーキ4の端部4Aに固定する。装着ねじ6Bは、後ヒンジプレート5Bの穴を貫通して、ブレーキ4に至るが、ブレーキ4の下面4Bを貫通しない。ヒンジプレートの取り付け強度を更に高めるために接着剤が随意的に使用される。
[0059]別の実施形態では、前ヒンジプレート5Aが上面1または下面2に取り付け固定される。また、もう1つの方法として、後ヒンジプレート5Bがブレーキ4の上面4Cまたは下面4Bに取り付け固定される。他の別の実施形態では、ヒンジ5のプレートがボード部材50およびブレーキ4に埋め込まれ、装着ねじが使用されてもよく、あるいは使用されなくてもよい。当業者であれば分かるように、本発明の範囲および思想から逸脱することなく他の締結具および取り付け手段が使用されてもよい。
[0060]ボード部材50の乗り部1Bおよびブレーキ4の上面4Cは、乗り手の安全性を高めるための滑り止め面を有してもよい。ブレーキが乗り手によって作動されるときに雪との良好なかみ合いを与えるために、ブレーキ4の下面4Bの後縁が鋸歯状であってもよい。これらの鋸歯の深さは、任意の場所で、ほんの僅か〜数インチであってもよく、別の実施形態では鋸歯が存在しなくてもよい。一般に、鋸歯が深ければ深いほど、ブレーキが作動されるときのブレーキと雪とのかみ合いが多くなる。随意的に、ブレーキ4の下面4B(下面4Bの後縁とは対照的に)自体が鋸歯を有してもよい。乗り手のサイズに応じて、ブレーキ4のサイズが異なる。しかしながら、平均サイズの人の場合、ブレーキ4は、約6インチ幅×8インチ長×4インチ高さである。別の実施形態において、ブレーキ4は、幅が1/2インチ程度しかなくてもよく、あるいは、ボード部材50のそのウエストでの幅の約80%程度であってもよい。
[0061]穴3およびブレーキ4は、乗り手がブレーキ4の場所を感触によって容易に突き止めることができる十分な大きさをブレーキ4が有するが、ボード部材50がその構造的完全性を保持するべくブレーキ4が十分小さくなるように寸法付けられる。穴3が幅広くなりすぎる場合には、ボードがかなり大きく曲がり、穴3の付近で破断する可能性がある。ブレーキ4は穴3よりも僅かに小さく、そのため、ブレーキは、エッジを擦り取ることなく穴3を通じて回動できる。しかしながら、雪および氷が穴3のエッジに蓄積しないようにするため、ブレーキ4を穴3よりもあまり小さくしすぎてはならない。例えば、この典型的な実施形態において、穴3は、ブレーキ4よりも約1/16インチだけ長くて幅広い。ボード部材50のエッジからの穴3のオフセット7は、構造的完全性を維持するために少なくとも2インチでなければならない。この実施形態では、オフセット7が穴3の両側で4インチである。
[0062]この典型的な実施形態では、ばね荷重ヒンジ5がスチールから形成される。意図される乗り手の体重に応じてばね荷重ヒンジ5のばね定数が異なる。例えば、子供のスノーボード用に設計された制動装置では、ばね定数が、制動装置が成人のスノーボード用に設計された場合よりもかなり小さい。ばね荷重ヒンジ5により与えられる弾力は、ブレーキ4が回転する角度にほぼ比例する。したがって、ブレーキ4を小さく偏位させる場合、乗り手は比較的小さな力を加えるだけで済み、一方、大きな偏位はそれに比例したより大きな力を必要とする。また、ブレーキ4が作動されて雪の表面に入り込み始めると、雪自体がブレーキ4の更なる偏位に対する抵抗を増大させる。
[0063]本発明の別の実施形態に係る制動装置が図6および図7に示されている。ばね荷重ヒンジ5の代わりに、リトラクタは可撓性のタング15を備える。タング15の前端15Aはボード部材50内に埋め込み固定され、一方、後端15Bはブレーキ4の薄い方の端部4Aに埋め込み固定される。タング15の埋め込み端部を良好に固定するために、だぼピンが使用される。ヒンジ5の取り付けと同様、タング15とボード部材50およびブレーキ4との間の取り付け強度を高めるために随意的に装着ねじ6が使用される。
[0064]図8に見られるように、自動的に展開可能な制動装置を有するスノーボード110が本発明の第2の典型的な実施形態で提供される。第1の典型的な実施形態と同様に、制動装置は中実の楔形状のブレーキ4を備え、ブレーキ4は、該ブレーキ4を引き込み位置に弾性的に保持する埋め込みばね荷重ヒンジ5を有する。しかしながら、この実施形態では、穴3およびブレーキ4がボード部材50の上面1の任意の部分にあってもよい。スノーボード110は、乗り部1Bに装着される圧力パッド8と、圧力パッドに作用的に接続されるブレーキ展開機構9とを更に備える。
[0065]ブレーキ展開機構9は、一端が圧力パッド8の底部に取り付け固定され、かつ他端がボード部材50に取り付け固定されるばね11を含む。ブレーキ展開機構9はハウジング10内に収容され、該ハウジングは、ブレーキ展開機構を雪や氷から保護するとともに、上面1の平面に対して略垂直な経路への圧力パッド8の動きを抑制する。ハウジング10は低摩擦コーティングを伴う強力な材料から形成される。この実施形態において、ハウジングは、ポリテトラフルオロエチレンがコーティングされたアルミニウムから形成される。
[0066]圧力パッド8が上昇位置にあるときに、機械的リンク機構がブレーキ4の自動的な展開を可能にする。機械的リンク機構の第1の部材14は、ボード部材50に回動可能に接続される第1の端部を有する。部材14の第2の端部は、圧力パッド8の底部にスライド自在に装着される第1のスライダ12に回動可能に接続される。また、第1のスライダ12には、機械的リンク機構の第2の部材16の第1の端部も回動可能に接続される。第2の部材16の第2の端部は、第2のスライダ20の延在部18に回動可能に接続される。延在部18は第2のスライダ20に取り付け固定される。また、第2のスライダ20にはアクチュエータ22も取り付け固定される。アクチュエータ22はブレーキ4の回動端を越えて延びる。ブレーキ4の側面にはカム24が取り付け固定される。リンク機構の部材、アクチュエータ、および、カムはスチールから形成される。
[0067]圧力パッド8が乗り手によって押し下げられると、第1の部材14が時計回りに回転させられ、それにより、第1のスライダ12がブレーキ4の方へスライドするように押し進められる。圧力パッド8が下方へ移動して第1のスライダ12がブレーキ4の方へ移動するにつれて、第2の部材16が同時に反時計回りに回転してブレーキ4の方へ並進させられる。第2の部材16のこの並進により、延在部18もブレーキ4の方へ並進する。延在部18が第2のスライダ20に取り付け固定されているため、第2のスライダ20もブレーキ4へ向けて並進する。第2のスライダ20の並進により、アクチュエータ22がカム24から離脱される。アクチュエータ22とカム24とが離脱されると、ばね荷重ヒンジ5によりブレーキ4が引き込み位置に達するまで反時計回りに回転する。
[0068]圧力パッド8が下降位置にあり、したがって、ブレーキ4が引き込み位置にあると、アクチュエータ22がブレーキ4またはばね荷重ヒンジ5に影響を及ぼさず、乗り手はブレーキ4を調節することができる。しかしながら、乗り手が圧力パッド8から足を外す(落ちる)と、ばね11が圧力パッド8を上面1から離間させ、それにより、アクチュエータ22がカム24と係合する。圧力パッド8が上昇するにつれて、アクチュエータ22は、ばね荷重ヒンジ5の抵抗に打ち勝つのに十分な力でカム24を引く。これにより、ブレーキ4が展開位置に時計回りに回転する。アクチュエータ22とカム24との係合はブレーキ4を展開位置でほぼロックする。これは、ばね11によって与えられる抵抗に打ち勝たなければブレーキ4が反時計回りに回転できないからである。
[0069]ばね11のばね定数はばね荷重ヒンジ5のばね定数よりもかなり大きい。これらのばね定数の比率は、圧力パッドを押し下げ位置に保持するために必要な臨界圧力を規定するのに役立つ。ばね荷重ヒンジ5のばね定数に対するばね11のばね定数の比率が高ければ高いほど、圧力パッドを押し下げたままにするのに必要な臨界圧力が大きくなる。平均サイズの乗り手のために設計される典型的な実施形態では、これらのばね定数の比率が少なくとも3:1である。
[0070]幾つかの実施形態において、自動的に展開可能で引き込み可能な制動装置は2つのブレーキ部材4を組み込んでもよく、この場合、1つが乗り手の後にあり、もう1つが乗り手の前にある。ブレーキ部材4とボード部材50との間の回動接続部は、ボード部材50の中央に最も近いブレーキ部材4の縁部にある。これらの実施形態では、ブレーキ展開機構9は、両方のブレーキ部材が同時に展開して引き込むように両方のブレーキ部材4に作用的に接続される。
[0071]前述した実施形態のいずれにおいても、リトラクタによってブレーキ4が完全引き込み位置を越えて引き込むのを防止するために、ブレーキストッパ30が設けられてもよい。図13および図14において最も良く見られるように、スノーボード120は、ボード部材50の上面1に取り付けられる2つのブレーキストッパ30を有する。ブレーキストッパ30は、この実施形態では、穴3の側面に隣接して上面1に取り付けられるスチールフランジである。図示の実施形態では、ブレーキストッパ30が後ヒンジプレート5Bと係合する。係合はブレーキ4が完全引き込み位置にあるときのみに起こり、それにより、ブレーキがそれ以上回動するのが防止される。あるいは、ヒンジ5、ブレーキ4、それに取り付けられるフランジ、あるいは、これらの任意の組み合わせと係合する任意の数のブレーキストッパ30が穴3に隣接して上面1の様々な位置に存在してもよい。また、もう1つの方法として、過回転を防止するために、ブレーキ4に取り付けられるフランジがボード部材と係合してもよい。また、別の方法として、ヒンジ5は、ブレーキ4の完全引き込み位置に対応する角度を越えて可動ヒンジプレート5Bが回転できないようにストッパヒンジであってもよい。
[0072]前述した実施形態のいずれにおいても、図15に示されるように、1つ以上のフットストラップ60がボード部材50の上面1に取り付けられてもよい。本明細書中で使用される「フットストラップ」は少なくとも2つの端部を有するバンドであり、この場合、それぞれの端部はループを形成するようにボード部材50の上面に取り付けられ、ループ内に乗り手が自分の両足を挿入する。2つ以上のそのようなバンドがフットストラップ60を形成するように(例えばフック・アンド・ループによって、バックルによって、インターロッキングループによって)互いに結合されてもよいことは言うまでもない。フットストラップ60は上面1の乗り部1Bに取り付けられるのが好ましい。フットストラップ60は上面1に取り付け固定されてもよい。この場合、例えば、フットストラップ60の端部が上面1に埋め込まれ、あるいは上面1に接着される。しかしながら、フットストラップ60がストラップマウント62を使用して上面1に取り外し可能に取り付けられることが好ましい。本明細書中で使用される「ストラップマウント」は、フットストラップ60を上面1に解放可能に取り付けることができる任意の装置または機構を含む。ストラップマウント62は、フットストラップ60に直接に取り付けてもよく、あるいは、フットストラップ60の相補的な締結具に取り付ける解放可能に係合できる締結具であってもよい。ストラップマウント62は、制限なく、フック・アンド・ループ、雄雌バックル、スナップ、ボタン、インターロッキングバンド、および、リング等を含む。
[0073]1つの実施形態において、ストラップマウント62は、係合時に互いにスナップ留めする解放可能に係合できるプラスチックバックル70A、70Bである。図16Aに示されるように、一方のバックル70Aまたは70Bはストラップの各端部に取り付けられ、一方、相補的なバックル(それぞれ70Bまたは70A)は上面1に取り付けられる。乗り手は、バックル70Aをバックル70Bへ挿入することによりフットストラップ60を取り付け、それにより、バックル70が係合される。乗り手は、バックル70Aの側面71を押し下げてバックルを外すことによりフットストラップ60を解放する。言うまでもなく、多くの他のタイプのバックルが使用されてもよく、また、相補的なバックルのうちのいずれがフットストラップ60に取り付けられ、あるいは上面1に取り付けられても違いはない。バックル70は、バックルリング76を通り抜けて上面1に埋め込まれ、接着され、リベット留めされ、あるいは、(取り外し可能に、あるいは取り外し不能に)貼り付けられる織物ループ84を含む任意の適した手段によって上面1に取り付けられる。
[0074]図16Bに示される他の実施形態において、ストラップマウント62は、上面1に取り付けられるプラスチックまたは金属のリング82である。リング82は、リング82を通り抜けて上面1に埋め込まれ、接着され、リベット留めされ、あるいは、固定される織物ループ84を含む任意の適切な手段によって上面1に取り付けられる。フットストラップ60の端部は、それをリング82に通してリング82の周囲にループを形成することによりリングに取り付けられる。このループは、例えば、フットストラップ60の2つの部分を互いに結合してフットストラップ60がリング82から引き抜かれるのを防止する締結具によって固定される。そのような締結具は、制限なく、フック・アンド・ループであってもよい。フットストラップ60は、任意の適切な方法によってリング82の周囲に強固にループ留めされてもよい。
[0075]方向を調整できるフットストラップを有する実施形態では、図15に示されるように、複数のストラップマウント62が第1のフット位置80の近傍の様々な場所で上面1に取り付けられる。図15に示されるように、ストラップマウント62を第1の位置80の周りに略円形構造で配置することにより、フットストラップ60が様々な方向で取り付けられてもよい。この方向調整機能により、乗り手は、フットストラップ60を任意の方向に対向させつつ使用できる。ストラップマウント62の円形分布が図示されており好ましいが、任意の他の分布が使用されてもよいことは言うまでもない。
[0076]位置が調整可能なフットストラップを有する実施形態では、図15に示されるように、更なるストラップマウント62が第1のフット位置80から離間される第2のフット位置82の近傍で上面1に取り付けられる。ストラップマウント62を第1のフット位置80および第2のフット位置82の両方に配置することにより、フットストラップを第1の位置80から取り外して第2の位置82に取り付けることでフットストラップ60の位置が調整可能となる。あるいは、2つのフットストラップ60が取り付けられ、その場合、一方のフットストラップが第1の位置80に取り付けられ、他方のフットストラップが第2の位置82に取り付けられてもよい。上面1上の更なるフット位置にストラップマウント62を設けることにより、更なるフットストラップ60が同様の方法で加えられてもよい。
[0077]フットストラップ60が既知の方法にしたがってサイズを調整できることが好ましい。例えば、フットストラップ60は、調整可能な方法で、例えばストラップ長さ調整を行なうフック・アンド・ループファスナーまたはバックルによって互いに結合される2つのストラップを備えてもよい。フットストラップ60を調整可能にすることにより、乗り手は、フットストラップ60をきつくすることによってボード部材50に強固に取り付けられることを選択できる。あるいは、乗り手は、容易に自分の足をフットストラップ60から取り外すことができるようにフットストラップ60を緩めることを選択できる。
[0078]フットストラップの使用は、乗り手がボード部材50から離れ易くなるジャンプまたはトリックを行なう際に乗り手をボード部材50と接触させたままにするのに役立つ。例えば、フットストラップ60は、空中でボード部材50が依然として乗り手の足と接触した状態で乗り手が地面からジャンプする「オーリ」を行なうのに役立つ。また、フットストラップ60は、乗り手が丸太やレールなどの障害物に沿うスライドやグラインドなどのスケートボードスタイルのトリックを行なうのにも役立つ。
[0079]前述した実施形態のいずれにおいても、ボード部材50は、図17および図18に示されるように、その長さに沿う任意のポイントまたは全てのポイントに、上面1が下面2の平坦部よりもかなり幅広くなるように内側に先細る側壁を有してもよい。例えば、ボード部材50の長さに沿う所定のポイントで、上面1が下面2よりも4インチ幅広くてもよい(すなわち、それぞれの側で2インチ幅広い)。幅のこの違いは、乗り手が自分の体重を移動させてターンする際にスノーボードが左右に揺れるのを容易にする。このボード部材の幾何学的形状は、ボード部材が足取り付けシステムを何ら有さない実施形態において特に有利である。そのようなスノーボードでは、この幾何学的形状により、乗り手は、足取り付けシステムを使用してボード部材の一方側を上方へ引くのを助けなくても、スノーボードを一方側へ揺り動かすのが容易になる。したがって、この独特な幾何学的形状は、足取り付けシステムを伴わずにスノーボードに乗るという課題を克服するのに役立つ。
[0080]図17は、平坦な下面2に滑らかに融合する内側に先細る凸状の湾曲側壁40を有するボード部材の断面形状図を示している。この断面形状は、ボード部材50の全長に沿って一定であってもよく、あるいは、ボード部材50の長さに沿う様々な位置において更に伝統的で略規則的な形状に融合してもよい。湾曲状の側壁40が下面2に滑らかに融合するため、側壁40と下面2との間に頂点(すなわち、角)が存在しない。従来のスノーボードでは、側壁と下面との間に頂点が存在し、この頂点に沿って一般に鋭いスチールエッジが存在する。これに対して、図17の実施形態では、頂点が全く存在せず、そのため、鋭いスチールエッジがない。
[0081]図18は、頂点44で下面2に合流する内側に先細る直線状の側壁42を有するボード部材の断面形状図を示している。そのため、この断面形状は台形の形状を有する。この断面形状は、ボード部材50の全長に沿って一定であってもよく、図17の断面形状に融合してもよく、および/または、ボード部材50の長さに沿う様々なポイントにおいて更に伝統的で略規則的な形状に融合してもよい。鋭いスチールエッジ46が随意的に頂点44に沿って組み入れられてもよく、また、これらのスチールエッジは、ボード部材50の全長にわたって延びてもよく、あるいは、長さの一部分のみにわたって延びてもよい。これらのスチールエッジ46は少なくとも3つの目的を果たす。第1に、これらのスチールエッジはボード部材50に更なる構造的剛性を与える。第2に、これらのスチールエッジは、側壁42と下面2との間の頂点が岩によって損傷され、あるいは削り取られないように保護するのに役立つ。第3に、これらのスチールエッジは、ボード部材50がターンを行ないつつ乗り手によって傾けられるときに雪とかみ合う。
[0082]図17および図18の実施形態における上面1と下面2との間の幅の違いは、ボード部材50が従来のスノーボードよりも厚い場合に更に顕著になる場合がある。図19に示されるように、厚さが更に厚くなると、ボード部材50が従来の厚さ(図19に破線で示される)を有する場合に想定し得るよりも更に内側に先細る側壁40または42が考慮に入れられる。図17および図18の断面形状によってもたらされるライディング形状により、乗り手がフットストラップ60を使用していると否とにかかわらず、ターンを更に容易に行なうことができる。この独特のライディング形状は、比較的厚いボード部材50を使用することによって誇張される。
[0083]他のタイプの引き込み可能な制動装置も考えられる。例えば、ブレーキは必ずしもボード部材の開口を貫通する必要はない。代わりに、例えば、制動部材は、それらがボード部材を貫通するのではなくボード部材の周囲で回動するようにボード部材の側縁を通り過ぎて延びてもよい。以下、ボード部材の開口を通じて回動するのではなくボード部材の周囲で回動する制動部材を有する制動装置を「ラップアラウンド」制動装置と称する。ラップアラウンド制動装置の1つの重要な利点は、幾つかの実施形態では、そのような制動装置を例えばスノーボードフットブレーキ変換キットの一部として既存の従来のスノーボードに据え付けることができるという点である。しかしながら、ラップアラウンド制動装置がそのような制動装置のために特別に設計された新たなスノーボードに組み込まれてもよいことは言うまでもない。
[0084]図20は、ラップアラウンド制動装置240を有するスノーボード200を示している。前述したように、スノーボード200は、ラップアラウンド制動装置240を据え付けられた従来のボード部材210から成ってもよく、あるいは、ラップアラウンド制動装置240を組み込むように特別に設計されもよい。スノーボード200は、ボード部材210の上面に装着される前ビンディング220を有してもよい。前ビンディング210は、当技術分野において知られる従来のスノーボードビンディングであってもよく、あるいは、前述した任意のタイプのフットストラップ(位置および方向が調整できるフットストラップを含む)であってもよい。ラップアラウンド制動装置240は、従来のスノーボードに乗りながら乗り手の後ろ足が配置される場所付近でボード部材210に装着される。
[0085]従来のスノーボード用のフットブレーキ変換キットの典型的な実施形態では、ラップアラウンド制動装置240がベースプレート241を含む。図21に示されるように、ベースプレート241は、当初は後ビンディングが装着された場合に従来のボード部材に形成される装着穴と一致するパターンで配置される装着開口242を有する。したがって、ベースプレート241は、ボード部材210の既存の装着穴を使用して、既に除去された後ビンディングと同じ位置に装着される。これは、幾つかの実施形態では、ラップアラウンド制動装置240を従来の後ビンディングと交換でき、それにより、スノーボードを多目的に使えるという利点を有する。ベースプレート241は、強力な硬質材料、好ましくはアルミニウムやスチールなどの金属から形成されるが、前述したように従来のボード部材コアで使用されるような複合積層材料から形成されてもよい。
[0086]ベースプレート241は、ラップアラウンド制動装置240のための土台および取り付けポイントとしての役目を果たす。図20および図21に示されるように、ラップアラウンド制動装置240はフットブレーキ245を含む。フットブレーキ245は、様々な形状をとり得るが、この実施形態では本質的に回動ロッド243を介してベースプレート241の前端に隣接してベースプレート241に回動可能に取り付けられる平坦なプレート部材である。フットブレーキ245は、乗り手が押し下げるフットブレーキ245によって制動装置が作動されるときに雪と実際に相互に作用するラップアラウンド制動装置240の一部である一対の側部ブレーキパドル250に作用的に接続される。図21に最も良く見られるように、ブレーキパドル250は、フットブレーキ245がその動作領域の下限に達する前にブレーキパドル250が雪と接触するような角度でフットブレーキ245に作用的に接続される。
[0087]フットブレーキ245および作用的に接続されるブレーキパドル250は、フットブレーキリトラクタによって上昇された非展開位置に維持される。この実施形態では、フットブレーキリトラクタは、ベースプレート241とフットブレーキ245との間に装着される圧縮ばね255であり、それにより、フットブレーキ245が押し下げられると、圧縮ばね255が圧縮され、したがって、圧縮ばねは、フットブレーキ245の更なる押し下げに抵抗する抗力を与え、フットブレーキ245を上昇された非展開位置へ向けて付勢する。他のタイプのフットブレーキも考えられる。例えば、フットブレーキリトラクタは、回動ロッド243の周りに装着され、かつベースプレート241およびフットブレーキ245に取り付けられるトーションばねであってもよく、それにより、フットブレーキ245が押し下げられると、トーションばねがねじられ、その結果、トーションばねは、フットブレーキ245の更なる押し下げに抵抗し、フットブレーキ245を元の上昇された非展開位置に付勢する。
[0088]ブレーキパドル250およびフットブレーキ245は任意の数の方法で互いに作用的に接続されてもよい。例えば、一実施形態では、ブレーキパドル250がねじやボルト等の締結具を使用してフットブレーキ245に作用的に接続されてもよい。しかしながら、典型的な実施形態では、ブレーキパドル250およびフットブレーキ245が一体品として一体成形される。これは、ラップアラウンド制動装置240がフットブレーキ変換キットの一部である場合に特に有益である。なぜなら、一体構造が、設置を簡略化するとともに、ブレーキパドル250とフットブレーキ245との間の接続の構造的完全性を強化するからである。
[0089]ブレーキパドル250は、多種多様な形状をとってもよいが、一般的にはフットブレーキ245に取り付け固定する(あるいは一体的に取り付く)ように構成される細長い平面部材である。例えば、図20および図22に最も良く示されるように、各ブレーキパドル250は、比較的高いアスペクト比の三角形部材であってもよい。この場合、三角形の底辺がブレーキパドル250の後端252にあり、三角形の頂点がブレーキパドル250の前端254にある。したがって、上から見て、この実施形態のブレーキパドル250は、航空機の「デルタ翼」形状に似ており、ブレーキパドル250の後端252はフットブレーキ245の最後端を越えて延びている。
[0090]多くの異なる形状および構造のブレーキパドル250が考えられることは言うまでもない。例えば、ブレーキパドル250は、略三角形ではなく、単に、直線状の細長い高アスペクト比の長方形であってもよい。ブレーキパドル250の形状にかかわらず、ブレーキパドルは、プラスチック、金属、および、前述したスノーボードのボード部材を形成するために使用される同じ複合積層材料などの複合材料を含む多種多様な材料から形成されてもよい。
[0091]図22に示されるラップアラウンド制動装置240の別の形態では、ブレーキパドル250がフットブレーキ245と一体である。例えば、フットブレーキ245およびブレーキパドル250が成形フラップ状部材であってもよく、この場合、ブレーキパドル250は、フットブレーキ245の垂直側壁からフットブレーキ245の後縁を越えて側方に延びる。しかしながら、ラップアラウンド制動装置240が引き込み位置にあるときにブレーキパドル250をベースプレート241よりも上側に離間してフットブレーキ245に取り付け、あるいは形成しなければならないことに留意するのが重要である。この理由は、乗り手が(ボード部材をエッジで傾けることにより)ボード部材210を単にターンさせているだけで減速したくないときにブレーキパドル250と雪との間の偶発的な相互作用を防止するためである。ブレーキパドル250をフットブレーキ245の上部に配置することにより、また、ブレーキパドル250をフットブレーキ245の最後縁を越えて延びるように構成することにより、そのような意図しない制動が回避される。また、フットブレーキ245の下側に雪が蓄積するのを防止するために、ラップアラウンド制動装置240の外周に筐体が形成されてもよいことに留意すべきである。例えば、可撓性のゴムブーツがフットブレーキ245とベースプレート241との間に取り付けられてもよい。
[0092]同様に図22に示されるラップアラウンド制動装置240の他の別の構造では、フットブレーキ245がブレーキパドル250と一体に形成されるが、フットブレーキ245が1つではなく2つの重なり合う伸縮部品を成して形成される。この重なり合いが継ぎ目248で見られる。例えば、フットブレーキの右半分245Aは、左半分245Bよりも僅かに厚くてもよく、左半分245を受けるための内部スロットを有してもよい。したがって、左半分245Bを右半分245Aへ向けて滑り込ませて、フットブレーキ245の有効幅を減らすことができる。逆に、2つの半体を離間させるようにスライドさせて(すなわち、外側に伸長させて)、フットブレーキ245の有効幅を増大させることができる。これは、ラップアラウンド制動装置240の幅を調整できるようにし、それにより、様々な幅の従来のスノーボードにラップアラウンド制動装置を最適に据え付けることができるという利点を有する。
[0093]ラップアラウンド制動装置240を有するスノーボード200を使用するため、乗り手は、自分の前足を前ビンディング220(前述のような、従来のビンディングまたはフットストラップであってもよい)に置き、かつ後足をラップアラウンド制動装置240の真ん前、好ましくは滑り止め面230上に立たせた状態でボード部材210上に立つ。滑り止め面230は接着摩擦パッドであることが好ましく、この接着摩擦パッドは、裏当て紙を取り除いてパッドをボード部材210のデッキに付着させることによりボード部材210に容易に貼り付けることができる。しかしながら、滑り止め面230は、ボード部材210の一部、例えばボード部材210に埋め込まれる隆起部と一体に形成されてもよい。
[0094]坂を下るため、乗り手は前述したように立つ。乗り手は、トリック、操縦、ターンを自由に行なうことができ、その後、ラップアラウンド制動装置240を使用して減速できる。乗り手は、自分の後ろ足を滑り止め面230からフットブレーキ245に移動させてフットブレーキ245に下向きの圧力を及ぼす。これにより、フットブレーキ245が回動ロッド243を中心に下方へ回動する。ブレーキパドル250がフットブレーキ245に作用的に接続されてそれに対して装着固定されているため、ブレーキパドル250も回動ロッド243を中心に下方へ回動する。ブレーキパドル250は、そのように回動されると、ボード部材210の真下の雪と係合し始める。より具体的には、ブレーキパドル250の後端252は、それらが下方へ回動して雪の中へ最も深く入り込むときに最も大きな力で雪と係合する。ブレーキパドル250とボード部材210の下側の雪との間の相互作用によりもたらされる抵抗は、スノーボード200の速度を低下させる。この速度低下は、乗り手によってフットブレーキ245に及ぼされる力の大きさにほぼ比例する。すなわち、乗り手が及ぼす力が大きければ大きいほど、スノーボード200がより迅速に減速する。
[0095]したがって、フットブレーキ245が上昇された非展開位置にあるときには、両方のブレーキパドル250がボード部材210の下面よりも完全に上側にあり、そのため、これらのブレーキパドルは、雪と相互に作用せず、抵抗をもたらさない。フットブレーキ245が下げられた展開位置にあると、ブレーキパドル250の一部がボード部材210の下面よりも下側にあり、そのため、ブレーキペダル250の後端252が雪と相互に作用して係合する。より具体的には、ブレーキパドル250が回動ロッド243の周囲で回動しているため、フットブレーキ245が下げられた展開位置にあるときにブレーキパドル250の後端252はボード部材210の下面よりも完全に下側にあるが、フットブレーキ245が展開位置にあるときに後端252より前方のブレーキパドル250の部分が必ずしもボード部材210の下面よりも完全に下側にあるとは限らない。
[0096]前述したように、ラップアラウンド制動装置240は、従来のスノーボードを改良するためにフットブレーキ変換キットの一部であってもよく、あるいは、フットブレーキを組み込むように特別に設計されたスノーボードの一部であってもよい。スノーボードがラップアラウンド制動装置240を組み込むように特別に設計される場合に、フットブレーキ変換キットの全ての特徴が必ずしも存在しなければならないわけではないことは言うまでもない。例えば、幾つかの実施形態では、ベースプレート241を排除でき、それにより、フットブレーキ245がボード部材210の上面に直接に装着される。そのような実施形態では、回動ロッド243が、該回動ロッドを中心にフットブレーキ245およびブレーキパドル250が回動できる状態で、ボード部材210の上面に直接に装着されてもよい。
[0097]本発明の様々な改良および変形は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の思想および範囲から逸脱することなく当業者に明らかになる。特許請求の範囲は、これらの原理を考慮して解釈されなければならない。本明細書中で言及される全ての特許、公報、文献は、参照することによりあたかも逐語的に記載されているかのように本願に組み入れられる。