JP2013503112A - ミスフォールドしたタンパク質の小胞体関連分解を減少させるためのホロ毒素の使用 - Google Patents

ミスフォールドしたタンパク質の小胞体関連分解を減少させるためのホロ毒素の使用 Download PDF

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Abstract

ミスフォールドしたまたは異常フォールドしたタンパク質の小胞体関連分解(ERAD)を減少させるためのホロ毒素の使用が提供される。したがって、ホロ毒素は、ERADに関連する疾患の処置方法において使用することができる。ERで分解されるミスフォールドしたタンパク質の例としては、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)ΔF508変異タンパク質、多剤耐性1(MDR1)のミスフォールドした変異体(G268V)、およびゴーシェ病細胞のグルコセレブロシダーゼ(GCC)酵素が挙げられる。適切なホロ毒素の例としては、リシン、志賀毒素、外毒素A、プラスミド上にコードされた毒素、コレラ毒素、およびベロ毒素1(VT1)が挙げられる。VT1は、ベロ毒素A、志賀様毒素1、志賀様毒素1、または志賀毒素1型としても知られる。Aサブユニット(subumt)活性部位の重要な残基が変異、例えば、Y77S変異およびE167Q変異を起こした非毒性不活性VT1も使用することができる。

Description

本発明は、ミスフォールドしたタンパク質のER関連分解を阻止する方法に関する。本発明は、更に、ミスフォールドしたタンパク質のERAD介在性分解を阻止するためのホロ毒素の使用に関する。
小胞体は、タンパク質翻訳および翻訳後修飾の品質管理において重要な役割を果たす。ER内の多くのシステムは、ミスフォールドしたタンパク質を検出するために存在する。ERから細胞質への逆輸送に続く、複合体形成の選択とタンパク質分解による除去は、このプロセス(ERAD−小胞体関連分解)の中心原理である。このプロセスは、次いで、フォールディングしていないタンパク質の応答および他のERストレス関連シグナル伝達経路を制御する。
多くの、おそらくは全ての遺伝性疾患には、所与のタンパク質の主要な機能には影響しないが、ER内でのタンパク質のフォールディングにわずかな変化を引き起こす変異が存在する。これにより、ミスフォールドしたタンパク質との認識がなされて、この品質管理メカニズムが始動し、その結果、このタンパク質は分解され、ゴルジ/TGN/分泌小胞を通って細胞表面へ向かう順行性輸送または分泌を介した成熟ができなくなる。
そのように機能的であるにもかかわらずミスフォールドおよび分解される変異タンパク質を救出して、ERADの回避、成熟、および病原性表現型の機能的回復のための正しい位置への輸送を可能にすることを試みる多くの巧妙な手段が報告されている。このような手段の中には、化学的シャペロン、シャペロン阻害剤、酵素基質または阻害剤の使用が含まれる。またそのようなアプローチが大いに研究されてきた疾患としては、関節炎、嚢胞性線維症、リソソーム蓄積症、脂質異常症(dislipidemia)の態様、高血圧、コレステロール生合成およびα1−アンチトリプシン(antitripsin)疾患が挙げられる。
疾患におけるERADの重要性を考慮すると、ミスフォールドしたタンパク質のERAD介在性分解を阻止する方法を開発することが望ましい。
本出願では、ホロ毒素が、ミスフォールドしたタンパク質のERAD介在性分解を阻止するのに有効であることが明らかになった。
したがって、一態様では、ミスフォールドしたタンパク質のERAD介在性分解を阻止するための、Aサブユニットが任意選択的に不活性化されていてもよいホロ毒素の使用が提供される。
本発明は、更に、ERトランスロコンを部分的に阻害し、これにより、ミスフォールドしたタンパク質のERAD介在性分解を阻止するための、Aサブユニットが任意選択的に不活性化されたホロ毒素の使用を提供する。
本発明は、更に、ERトランスロコンを占有する競合的阻害剤としての、Aサブユニットが任意選択的に不活性化されたホロ毒素の使用を提供する。
本発明は、更に、ミスフォールドした機能性タンパク質をER関連分解から救出するための、Aサブユニットが任意選択的に不活性化されたホロ毒素の使用を提供する。
本発明を、以下の図面を参照して、より詳細に説明する。
本発明の一実施形態に従った、不活性化Aサブユニット含有VT1を示すプラスミドを示す図である。 VTおよび不活性化VT1が、ΔF508CFTRをERADから保護することを示すウェスタンブロットの図である。 VTおよび不活性化VTが、ミスフォールドしたMDR1をERADから保護することを示すウェスタンブロットの図である。 コレラ毒素が、HeLa細胞およびBHK細胞の両方において、ΔF508CFTRをERADから保護することを示すウェスタンブロットの図である。
本発明は、細胞表面からERへの輸送を逆行させ、ERに位置するSec61トランスロコンを部分的に阻害して、部分的にミスフォールドしているが機能性を有する変異タンパク質をER関連分解(ERAD)から回避させ、欠陥のある細胞表現型を救出するための、Aサブユニットが任意選択的に不活性化されたホロ毒素の使用を提供する。
ERへの輸送の逆行を受け、ここでタンパク質分解性活性型AサブユニットがBサブユニットから分離し、細胞質にSec61トランスロコンを介して移行される、任意のホロ毒素が、部分的にミスフォールドしているが機能性を有する変異タンパク質を救出してER関連分解(ERAD)から回避させるための使用に利用し得る。本発明に従った使用に適するホロ毒素の例としては、リシン、志賀毒素または志賀様毒素(ベロ毒素−VT1など)、コレラ毒素、アブリン、モデシン、緑膿菌外毒素A、および腸管凝集性大腸菌のプラスミド上にコードされた毒素(Pet)が挙げられる。細胞表面結合コレラ毒素、ベロ毒素およびリシンは、全てERへの輸送の逆行を受け、ERにおいてタンパク質分解性活性型AサブユニットがBサブユニットから分離し、細胞質にSec61トランスロコンを介して移行される。これは、ER関連分解経路において、フォールディングされていないタンパク質のユビキチン化やプロテオソームによる細胞質消化のために除去することに利用されているトランスロコンと同一のものである。
選択されたホロ毒素のAサブユニットは、本発明に従った使用のために、不活性化され得る。ホロ毒素のAサブユニットを不活性化するための方法は、当該技術分野で十分確立されており、例えば、Aサブユニット内にあるサブユニットA活性に必要な残基を変異させることが挙げられる。本発明の一実施形態では、Aサブユニット活性部位の重要な残基が変異、例えば、Y77SおよびE167Qなどの変異を起こした非毒性ベロ毒素1が、好適に使用される。上記に参照した変異への改変、特に、上記で参照した変異で使用されるアミノ酸への改変、および図1に示されるものも、変異によりAサブユニットが不活性化されることを条件として作製され得る。
Aサブユニットは、細胞質に移行されるが、タンパク質合成を阻害することはできない。したがって、任意選択的に不活性化されたAサブユニットは、部分的にミスフォールドしているが機能性を有する変異タンパク質をERADから救出するために、トランスロコンを占有する競合的阻害剤として機能する。例えば、任意選択的に不活性化されたベロ毒素1のAサブユニットは、ΔF508CFTR変異体を救出するために有効である。
Aサブユニットは、当該技術分野で公知の手法によって更に改変されて、より効率的なトランスロコンの阻害剤およびERAD阻止の改善を提供し得る。適切な改変としては、構成(ペプチド配列など)をAサブユニットに付加して、Aサブユニットのトランスロコン阻害機能を更に向上させることが挙げられる。例えば、ジフテリア毒素チャネルを阻害することが示されているヘキサヒスチジン配列、または、移行した分泌/膜タンパク質由来(例えばグリコホリンまたはLDL受容体由来)の18〜25無極性ペプチド配列−輸送停止配列−を付加して、トランスロコン通過の阻止を試み得る。別のアプローチとしては、Sec61阻害剤(CAM741など)のAサブユニットへの結合、または小胞体(ER)関連タンパク質分解を阻止する阻害剤(化学的阻害剤、イイヤレスタチンI(EerI)など)の結合が挙げられる。
上述のように、一実施形態において、本発明は、ベロ毒素(志賀毒素および志賀様毒素とも参照される)、特にベロ毒素の非毒性変異Aサブユニットの、ERを標的として、遺伝子的にミスフォールドしているが機能的であるタンパク質をトランスロコンの阻害により機能的に救出する機構としての使用を提供する。本明細書で述べたプロセスを記述するために、「細胞内処置(intracellular surgery)」という用語を使用する場合がある。
代替実施形態においては、非毒性変異Aサブユニットを含むコレラ毒素が、本明細書に記載されるように使用される。代替実施形態においては、非毒性変異Aサブユニットを含むリシン毒素が、本明細書に記載されるように使用される。上記により、ベロ毒素の変異Aサブユニットを利用する本発明の実施形態は、変異Aサブユニットのみを含み得るが、コレラ毒素およびリシン毒素は、Bサブユニットおよび変異Aサブユニットを含むであろうことが理解されるだろう。
別の実施形態では、Fab抗体フラグメントまたはそのファージアナログが、細胞内区画内の結合タンパク質の選択的送達のために、ERを標的とし得る。
本発明は更に、Aサブユニットの修飾の、トランスロコン内での貯留を改善して本明細書に記載のアプローチの効力を向上させるための使用を含む。また、本発明は、不活性化リシン毒素に移入されたこのようなAサブユニットのキメラの、任意の組織において部分的にミスフォールドしたタンパク質のERADを減少させる一層広範囲にわたる治療を提供するための使用を含む。加えて本発明は、本明細書に記載のように、更に修飾されて、タンパク質輸送、機能、選別、グリコシル化、および他の翻訳後修飾の欠陥を改良するために有用であり得る種々の分子、例えば、小胞体のルーメン内の変異タンパク質のフォールディングを補助するシャペロン(例えば、ゴーシェ病の変異グルコセレブロシダーゼを安定化するアンブロキソール)を輸送し得るAサブユニットを提供する。
また、ERADの結果として生ずる疾患または他の方法でERADに起因する疾患(例えばERAD関連疾患)の処置方法が提供される。この方法は、対象(哺乳動物または非哺乳動物など)への、Aサブユニットが任意選択的に不活性化されたホロ毒素の投与を含む。「哺乳動物」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、ネコ、イヌおよびウマ)を指す。
ERAD関連疾患は、ERAD自体が疾患の本質的な主体であることにより、機能的であるが部分的にミスフォールドした変異タンパク質を除去して疾患の症候を導く疾患である。幾つかの疾患においては、ERAD分解により、わずかにミスフォールドしているが他の点では機能的であるタンパク質が除去されることで、病理学的状態に至る。全てのそのような疾患が、本明細書に記載のトランスロコン阻止アプローチに基づく治療の候補となる。したがって、ERAD関連疾患としては、関節炎、嚢胞性線維症、スフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症、脂質異常症の態様、高血圧、コレステロール生合成、α1−アンチトリプシン疾患、ゴーシェ病およびHIV感染由来の疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示のアプローチに基づく治療の候補となる他のERAD関連疾患は、以下の表1に示されているが、これは先にHuman Molecular Genetics 2005 14(17):2559〜2569に示されたものである。表1に列挙される遺伝子は、強力なER貯留候補として同定された遺伝子である。それらには、変異の位置または実験データにより、フォールディングまたはトラフィッキングの欠陥が示唆される疾患が含まれている。本明細書で列挙される疾患には、ERAD分解と現在関連している公知の疾患の幾つかが含まれることが理解されるであろう。またERAD分解との関連が見出されている任意かつ全ての疾患が本発明の範囲内であると考えられることも理解されるだろう。
ホロ毒素は、単独で、または少なくとも1種の医薬的に許容され得るアジュバントと組み合わせて投与することができる。「医薬的に許容され得る」という表現は、医薬的および獣医学的分野における使用について許容され得ること、即ち、許容され得ない毒性がないことまたは他の点で不適切なものでないことを意味する。医薬的に許容され得るアジュバントの例には、希釈剤、賦形剤などが含まれる。一般的な薬物製剤の手引きについては、「Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy」、第21版、Lippincott Williams & Wilkins、2005が参照され得る。アジュバントの選択は、意図する組成物の投与様式に依存する。本発明の一実施形態において、化合物は、注入による投与用または皮下もしくは静脈内の注射による投与用に製剤化され、無菌で発熱物質を含まない形態で、任意選択的に緩衝化もしくは等張性にされた水溶液として適宜利用される。したがって、化合物は、蒸留水中で、またはより好ましくは食塩水、リン酸緩衝食塩水または5%デキストロース溶液中で投与することができる。錠剤、カプセル剤または懸濁液による経口投与のための組成物は、糖(ラクトース、グルコースおよびショ糖など)、澱粉(トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉など)、セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースを含む)、粉末化トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油(ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油およびコーン油など)、ポリオール(プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール(sorbital)、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど)、寒天、アルギン酸、水、等張食塩水、リン酸緩衝液などのアジュバントを使用して調製される。湿潤剤、潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、安定剤、錠剤化剤、酸化防止剤、保存料、着色剤および香味剤も存在し得る。クリーム、ローション、および軟膏も、適切な基材(トリグリセリド基材など)を使用して局所投与のために調製し得る。そのようなクリーム、ローションおよび軟膏は表面活性剤も含有し得る。例えば、経鼻送達用のエアロゾル製剤も、適切な噴射剤アジュバントを使用して調製し得る。他のアジュバントも、投与の仕方にかかわらずに組成物に添加することができ、例えば、抗微生物剤は、長期の貯蔵期間にわたる微生物の増殖を防止するために組成物に添加することができる。
加えて、本発明は、変異または非変異Aサブユニットを含有する、使用されるホロ毒素の投与量の制御を提供する。ホロ毒素の投与量は、競合阻害が部分的となるように調整し得る。幾つかの適用においては、最大約10%のERAD回避により欠陥表現型を十分に修正することができ、当該修正を達成するために適切な投与量は、当業者が容易に決定し得る。当業者に理解されるように、投与量は、使用されるホロ毒素、処置される疾患もしくは状態、および処置される対象によって変動し得る。一実施形態においては、約1〜100ng/kgの範囲、例えば、10ng/kg、のホロ毒素投与量が用いられ得る。
本発明の一適用は、CF細胞における塩素輸送を増加させるためにΔF508CFTR変異を救出する実行可能な新たなアプローチを提供する。本発明は、嚢胞性線維症において最も一般的な変異に対する新たな治療アプローチを提供する。
本明細書に記載するAサブユニット含有ホロ毒素は、親毒素に対する解毒剤として使用することができるが、その理由は、野生型AサブユニットのER移行が、触媒的不活性化Aサブユニット含有ホロ毒素によるトランスロコンの部分的阻止のために抑制されるためである。本発明の一実施形態において、不活性化Aサブユニット含有ホロ毒素は、輸送停止配列を含む。輸送停止配列の種類の例としては、限定するものではないが、VFIVSVGSFITSVLFIVIまたは9〜18ロイシン残基を有する輸送停止配列が挙げられる。上記配列を様々な長さに改変したものも作製することができ、この伸長は2工程で付加し得る。
また本発明は、ポリロイシン輸送停止配列が付加されたVT1ホロ毒素Aサブユニットを提供する。輸送停止配列は、不活性化VT1のAサブユニットのN末端に付加することができる。輸送停止配列は、一般に、約9〜18個の疎水性アミノ酸残基を含む。この配列は、VT1のAサブユニットのN末端に付加することで、トランスロコン阻害の効率を増加させることができる。更に、2個の塩基性アミノ酸を輸送停止配列のC末端に付加することで、移行停止効率が増加する。したがって、2個のリジンをポリロイシン輸送停止付加のN末端に付加することもできる。対照的に、C末端への負のアミノ酸残基の付加は、移行停止効率を減少させることが示されている。したがって、VT1のAサブユニットへの輸送停止配列の付加は、改変されたホロ毒素の細菌合成を減少させる場合がある。ポリロイシン挿入物のC末端に負電荷を配置し、N末端に正電荷を配置させることは、Sec61トランスロコンを介する順行移行時よりむしろ逆行時の輸送停止機能に有利となり得る。即ち、輸送停止配列は、毒素の細菌合成の間は最小限の効果を示すべきであり、ERを標的とし、トランスロコンを介して細胞質へ逆移行されるときには最大限の効果を示すべきであるが、VT1のAサブユニットがトランスロコンに侵入するときの方向(即ち、N末端が最初か、またはC末端が最初か)はわかっていない。本発明は、ポリロイシン挿入物のC末端に塩基性ジリジンモチーフが含まれ、N末端に酸性アスパラギン酸ダイマーが組み込まれている構築物を含み、また逆の構築物も含む。ホロ毒素構築物は、Noakes KLら、1999、および、Boulanger J、Huesca M、Arab S、Lingwood CA.Universal method for the facile production of glycoplid/lipid matrices for the affinity purification of binding ligands.Anal Biochem.1994;217:1〜6に記載されているように、ベクター(puc19など)で発現させることができ、作製されたホロ毒素は、Bサブユニット媒介Gbアフィニティクロマトグラフィーによって精製することができる。
輸送停止効力は、アミノ酸配列の疎水性にほぼ対応するが、Saaf A.、Wallin E、von Heijne G. Eur J Biochem 1998;251:821〜829に記載されるように、変動および例外が存在する。輸送停止配列CFIVSVGSFITSVLFIVIは、VT1のAサブユニットに、この場合も両方の配置で、融合し得る。PCRプライマー伸長技術は、VT1のAサブユニット遺伝子の5’末端に配列を付加するために使用することができる。全体の配列は、2工程により作製することができ、それぞれ9アミノ酸が付加される。ホロ毒素は、上述のように、アフィニティクロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明は、以下の実施例において、更に説明されるが、これらは限定として解釈されるべきでない。
<ΔF508CFTRを分解から救出するためのVT1の使用>
ΔF508CFTR発現HeLa細胞を、野生型VT1または不活性VT1で、上記のように処理すると(Aサブユニットの触媒作用残基は脱プリン変異のために必要とされる)、ΔF508CFTRの分解からの明らかな救出が、早々に、毒素処理から2〜4時間以内に示された。
図2に示されるように、野生型CFTRまたはΔF508CFTRを発現するようにトランスフェクトされたHeLa細胞を、ベロ毒素1、または、不活性化Aサブユニットを含有するVT1で処理した。不活性化毒素調製物は、野生型VT1よりも純度が低く、そのため高濃度で使用した。CFTRの発現レベルは、細胞抽出物のウェスタンブロットにより測定した。野生型CFTR発現細胞においては、CFTRの(コアがグリコシル化された)未成熟種およびその上にラクトサミンがグリコシル化された成熟種が検出される。ΔF508CFTRにおいては、下のコアがグリコシル化された種のみが検出される。野生型CFTRをERADに供し、VT1で処理すると、ERADの阻止により野生型CFTRがわずかに増加する。ΔF508CFTRにおいては、不活性化VT1と野生型VT1との両方が、未処理の対照細胞と比較して最大10倍の発現レベルの増加を誘導し、ERADからの顕著な回避を示した。
<MDRI変異体を救出するためのVT1の使用>
ERADの阻害を更に確認するために、MDR1のミスフォールドした変異体(G268V)が発現されるようにトランスフェクトしたHeLa細胞へのVT1および不活性VT1変異体の効果、薬物排出ポンプ(Loo TW、Clarke DM、FASEB J 1999;13:1724〜1732に記載)。この場合も、図3に示されるように、VT1およびVT1変異体の両方が、処理されなければERADによって分解されるMDR1の蓄積を誘導した。HeLa細胞におけるG268V MDR1変異体の5〜20倍の発現レベルの増加が、野生型または不活性化VT1ホロ毒素を用いた処理の2時間後に観察された。
<ΔF508CFTRを救出するためのコレラ毒素の使用>
コレラ毒素の、ΔF508CFTR発現に対するBHK細胞における効果(BHK細胞は、VT1に対する感受性はないが、ほとんどの細胞のように、コレラ毒素に対する感受性は有する)を決定した。図4に示されるように、毒素が、ΔF508CFTRのERAD回避をこれらの細胞で誘導することが示された。ΔF508CFTRをトランスフェクトしたHeLa細胞、野生型またはΔF508CFTRをトランスフェクトしたBHK細胞を、コレラ毒素で2時間処理し、野生型またはΔF508CFTRのレベルをウェスタンブロットで監視した。10ng/mlのコレラ毒素により、最大5倍のΔF508CFTRの増加が誘導された。増加は、BHK細胞およびHeLa細胞の両方でみられたが、この理由は、コレラ毒素が、これらの細胞株の両方で発現するGM1ガングリオシドに結合するためである。
<ゴーシェ病細胞におけるGCCを救出するためのVT1の使用>
VT1は、ゴーシェ病細胞におけるGCC酵素(グルコセレブロシダーゼ)のERADを減少し、より多量の酵素を成熟させ、潜在的に疾患の原因であるグルコシルセラミドの蓄積を減少させる。
<輸送停止配列含有不活性化ベロ毒素の構築>
2つの異なる構築物を作製して、輸送停止アミノ酸を含有する不活性化ベロ毒素Aタンパク質を生成した。一方の構築物は、9ロイシン輸送停止アミノ酸を有し、他方の構築物は、18ランダムアミノ酸配列を有した。2セットのPCRプライマー(表2)を使用して、それぞれの輸送停止アミノ酸含有不活性化ベロ毒素Aタンパク質を生成した。第1のPCR増幅では、9ロイシンまたは18ランダムアミノ酸を、不活性化ベロ毒素Aタンパク質配列に、pSW09プラスミド(Vaccine 2006、24:1142)を使用して導入した。第2のPCRでは、2つの外部プライマーを使用し、輸送停止アミノ酸を含有する不活性化ベロ毒素Aタンパク質全体を増幅した。プラスミドpSW09は、VTA配列に2つの変異:Y77SおよびE167Qを有する。DNAフラグメントをBamHIおよびEcoRIで消化し、pSK+(Stratagene)に連結した。得られたプラスミドは、輸送停止配列含有ベロ毒素A変異体であった。
本発明を、例証的実施形態および実施例を参照して説明しているが、当該記述は限定の意味で解釈されることを意図していない。斯くして、例証的実施形態の様々な改変ならびに本発明の他の実施形態が、この記述を参照することで当業者に明らかとなるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、任意のそのような改変または実施形態を包含することが企図される。更に、特許請求の範囲の全てが、参照によって好ましい実施形態の記述に組み込まれる。
本明細書で参照されたいずれの刊行物、特許および特許出願も、各刊行物、特許または特許出願が全体として参照によって組み込まれるように具体的にかつ別個に示されるのと同じ程度に、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする。

Claims (23)

  1. ミスフォールドしたタンパク質のERAD介在性分解を阻止するためのホロ毒素の使用。
  2. 前記ホロ毒素が、不活性化Aサブユニットを含む、請求項1に記載の使用。
  3. ホロ毒素が、ERトランスロコンを阻害する、請求項1に記載の使用。
  4. 前記ホロ毒素が、ERトランスロコンを占有する競合的阻害剤である、請求項1に記載の使用。
  5. 前記ホロ毒素が、ミスフォールドした機能性タンパク質をER関連分解から救出する、請求項1に記載の使用。
  6. 前記ホロ毒素が、リシン、志賀毒素、コレラ毒素、外毒素Aおよびプラスミド上にコードされた毒素(Pet)からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
  7. 前記ホロ毒素が、ベロ毒素である、請求項5に記載の使用。
  8. 前記不活性化Aサブユニットが、変異したアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の使用。
  9. 前記ホロ毒素が、変異した残基を77位および167位の少なくとも1つに含むベロ毒素である、請求項2に記載の使用。
  10. 前記変異した残基が、Y77SおよびE167Qの少なくとも1つである、請求項9に記載の使用。
  11. 哺乳動物にホロ毒素を投与する工程を含む、ERAD関連疾患の治療方法。
  12. 前記ホロ毒素が、不活性化Aサブユニットを含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記ホロ毒素が、リシン、志賀毒素、コレラ毒素、外毒素Aおよびプラスミド上にコードされた毒素(Pet)からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  14. 前記ERAD関連疾患が、ミスフォールドした機能性タンパク質のERADの結果として生じる病理学的状態である、請求項11に記載の方法。
  15. 前記ERAD関連疾患が、関節炎、嚢胞性線維症、スフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症、脂質異常症の態様、高血圧、コレステロール生合成、α1−アンチトリプシン疾患、ゴーシェ病およびHIV感染由来の疾患からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
  16. 前記ホロ毒素が、輸送停止配列を含むように改変されている、請求項11に記載の方法。
  17. 前記ホロ毒素が、小胞体阻害剤を組み込んでいる、請求項11に記載の方法。
  18. 前記阻害剤が、Sec61阻害剤である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記阻害剤が、CAM741またはイイヤレスタチンI(EerI)である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記MDR1変異体、CFTR変異体またはグルコセレブロシダーゼの1つを救出するための、請求項1に記載の使用。
  21. ホロ毒素と医薬的に許容され得るアジュバントとを含む組成物。
  22. 前記ホロ毒素が、不活性化Aサブユニットを含む、請求項21に記載の組成物。
  23. 前記ホロ毒素が、ERADの阻害を向上させる実体を組み込むように改変されている、請求項21に記載の組成物。
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