例えばユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーション・システム(UMTS)及びUMTSロング・ターム・エボリューション(LTE)などの次世代移動通信は、既存システムと比較して向上されたサービスをユーザに提供することを狙っている。これらのシステムは、例えば音声、ビデオ及び無線データなどの広範囲の情報の処理及び伝送のために、高データレートのサービスを提供することを目指している。
LTEは、高められたデータレートで高速データサービスをユーザに届ける技術である。UMTS及び旧世代の移動通信規格と比較して、LTEはまた、短縮された遅延、高められたセル端カバレージ、低減されたビット当たりのコスト、柔軟なスペクトラム使用、及びマルチ無線アクセス技術モビリティを提供しようとしている。
LTEは、ダウンリンク(DL)(基地局(BS)からユーザ装置(UE)への通信)で100Mbpsを上回るピークデータレートを与え、アップリンク(UL)(UEからBSへの通信)で50Mbpsを上回るピークデータレートを与えるように設計されてきた。現段階で標準化中のLTE−Advanced(LTE−A)は、LTEシステムを更に向上させて、最大、ダウンリンクで1Gbps、アップリンクで500Mbpsを可能にすることになるであろう。
OSIモデルは、コンピュータ間通信の複雑なタスクを一連の複数のレイヤ(階層)に分割する。OSIモデル内のレイヤ群は、最低レベルから最高レベルまで順序付けられる。これらのレイヤが一緒になってOSIスタックを構成する。LTEスタックは、最低から最高まで以下のレイヤを含んでいる:1.PHYレイヤ、2.レイヤ2(MAC、RLC、PDCPを含む)、及び3.レイヤ3(RRCを含む)。UMTS、LTE及びLTE−Aは全て、受信側の端末が正確に復号化されたパケットの再送信を要求するスキームである高次レイヤの自動再送要求(Automatic Repeat Request;ARQ)を使用することができる。さらに、低次レイヤのハイブリッドARQ(HARQ)スキームが使用される。これは、ARQと順方向誤り訂正(FEC)との同時組み合わせである。参照するHARQはレイヤ2の最低のサブレイヤであり、ARQはRLC(1つのサブレイヤだけ高い)内である。
ARQ及びHARQは何れも、受信パケットを処理し、且つそれらのパケットが誤りあり、あるいは誤りなしで受信されたかを決定することによって機能する。誤りを伴って受信されたパケットに対しては、NACK(Negative ACKnowledgment;否定応答)制御信号が送信側に送られて、この誤りが指し示される。受信側によって成功裏に復号化されたパケットに対しては、ACK(ACKnowledgment;肯定応答)制御信号が送信側に送られる。送信側は、受信した制御信号に応じて、データパケットを再送信するか、新たなデータパケットを送信するかの何れかを行うことになる。通常、送信側がACKを受信するとき、新たなデータパケットが送信バッファから送信され、NACKが受信されるとき、以前に送信したパケットの再送信が受信側に送信される。パケットの再送信が受信側によって受信されるとき、今回は成功裏にパケットを復号化するよう、新たな情報を以前に成功裏に復号化されなかったパケットと結合することが試みられ得る。元パケットと再送信パケットとを結合すること(又は、ソフトコンバイニング)は、そのパケットが成功裏に復号化される可能性を高めることになる。
典型的に、HARQは、HARQエンティティ(HARQが有効にされたエンティティ)における多重HARQプロセス(複数のstop-and-wait HARQチャネル、又は複数のデータパケットの送信機会としての役割を果たす複数のタイムスロット)によってDL及びULで実行される。すなわち、1つのデータパケットのHARQプロセスは、以前のデータパケットのHARQプロセスが完了する前に開始することができる。多重HARQプロセスの使用は、送信側が受信側からのACK又はNACKの送信を待っている間にもデータ送信を中止せずに連続的とすることを可能にする。故に、8チャネルの場合、データが送信され得る8つのタイムフレーム(1..8)が存在することになる。従って、受信側から送信側にACK/NACK信号が返送されるのを待つ必要なく、8つの連続したタイムスロットにて、新たなデータを送信することができる。
典型的に、受信側は、所与の1つのパケットに対し、最大送信数まで、複数回NACKを送信することができる。最大送信数は、典型的に、或るサービスに属するデータストリームからの最初のデータパケットが送信される前に予め定められる。
一般に、HARQスキームは、最初の送信と再送信との間のタイミング関係において、同期式又は非同期式の何れかとして分類され得る。同期式スキームにおいて、NACKされたデータパケットの再送信は、最初の送信に対して所定のタイミングで行われる。この所定のタイミングオフセットを使用することの利点は、HARQプロセス番号のような制御情報を受信側に信号伝達する必要がないことである。そのようなHARQプロセス番号は、受信したデータパケットのタイミングから得られる。非同期式スキームにおいては、再送信は、最初の送信に対して任意の時間に行われ得る。この場合、その再送信が何れのHARQプロセスに関するものであるかを特定するために、HARQプロセス番号が必要とされる。LTEにおいては、同期式HARQがUL及びDLで使用される。
図1は、LTEにおける同期式のDL及びUL HARQ処理でのタイミング関係を示している。DL(上側)部分10において、基地局eNBが制御/割当て情報を送信し、UEがTxtなる送信時間の後にそれを受信する。逆に、UL(下側)部分20においては、UEが送信し、eNBが送信時間Txt後に受信する。陰影を付した部分は、eNBからの特定の割当て情報の送信と、UEからの応答とを示している。ここに示した物理アップリンク共有チャネル(Physical Uplink Shared Channel;PUSCH)は、アップリンク共有チャネル(Uplink Shared Channel;UL−SCH)トランスポートチャネルからのデータを搬送し、DFT拡散(DFT-Spread)OFDM(DFT−S−OFDM)を使用する。この図において、UEは、DLにおいて、物理データ制御チャネル(Physical Data Control Channel;PDCCH)上で制御/割当て情報を受信する。これは、この図に示す最大UE処理時間までの如何なる時点においてもUL送信を可能にする。ULデータの受信後、eNBは所定の固定eNB処理時間(LTEでは3ms)を有する。このeNB処理時間内に、eNBは、PDCCH/PHICH(Physical HARQ Indicator Channel)制御チャネル上で、UEにACK/NACK情報を返送しなければならない。これは、再送信が必要であるのか、新規の送信が行われ得るのかをUEに指し示す。
LTEにおいて。同期式UL HARQは、UEによって2つの手法で制御される:UEは、ACK/NACKインジケーションを有するACK/NACK信号を、HICH(HARQ Indicator Channel)上で送信することができ、また、物理データ制御チャネル(PDCCH)上でのリソース割当てシグナリングを用いて、ULの送信又は再送信のためのリソースが指し示される。以下の表1は、ACK/NACKとリソース割当てとの組み合わせが現在どのように解釈されているかを示している。
LTE−Aは、特に、より高いデータレートでの送信及びセル端カバレージの改善に関して、既存のLTEシステムよりも性能を向上させるために、新たな技術を使用する。
高データレートでのカバレージ、セル端でのスループット、及び/又はシステムスループットを向上させるツールとして、多地点協調(Coordinated multi-point;CoMP)送/受信が使用され得る。CoMPは、LTE−Advanced(LTE−A)の技術仕様に含まれることになると考えられている。
ダウンリンク多地点協調送信は、地理的に離隔した複数の送信ポイントの間での動的な協調を含むものである。アップリンク多地点協調受信は、UEの無線インタフェースの物理レイヤに関するLTE無線アクセスネットワーク(RAN1)仕様に非常に限られた影響しか及ぼさないと期待される。スケジューリング決定は、干渉を制御するように複数のセル間で調整され、また、RAN1仕様に幾らかの影響を及ぼし得る。
HARQ ACK/NACKシグナリングの送信及び受信は、データの送信パスと制御信号の送信パスとが有意に異なる可変の送信時間を有し得る場合のUL CoMPのケースで複雑になる。例えば、データがUL上で送信されるとき、それは、有意な輸送遅延を相互間に有する地理的に離隔した複数の位置で受信され得る。これは、分散された受信ポイントからのパケットのソフトコンバイニングの設計、及び関連するACK/NACKシグナリングの送信を複雑にする。
地理的に離隔した複数の地点でのULにおけるUEからのデータの受信は、異なるULデータストリームの最適な手法での結合(例えば、ジョイント処理(Joint Processing;JP)又は協調スケジューリング/ビームフォーミング)を可能にするように、ネットワークノードにおいてこれらのULデータストリームを結合することを必要とする。
データ受信のアクナリッジメントに使用される方法への有意な悪影響なく、CoMP又はその他の同様な機能を実現することが望ましい。
本発明は、ここで言及する独立請求項にて規定される。有利に発展させたものが独立請求項にて示される。
第1の方法の態様によれば、本発明の実施形態は、第1の装置が、第2の装置から直接経路を介してデータを受信し、それに応答してアクナリッジメント信号を送信する、前記第1の装置における通信方法を提供する。当該通信方法においては、同じデータが間接経路を介して伝送され且つ前記データが前記直接経路を介して適切に受信されない場合に、前記第1の装置は、前記アクナリッジメント信号を送信するのに間接経路遅延を導入して、前記間接経路を介した前記データの受信を可能にし、それ以外の場合には、間接経路遅延は導入されない。
故に、本発明の実施形態によれば、間接経路上でのデータ受信を可能にする遅延が、必要なときにのみ適用される。データが適切に受信される場合(すなわち、正確に受信され、その結果、例えば、データが復号化可能である、あるいは最小限の誤り発生率で復号化可能である)、そのような遅延は導入されない。
当業者に認識されるように、用語“直接経路”及び“間接経路”は対比的なものであり、直接経路は、(更に中継され得る)間接(非直接)経路よりなおも少ないリンクに及ぶのみである限り、何らかの中継の形態を含んでいてもよい。しかしながら、多くの実施形態において、用語“直接経路”は、例えばモバイルハンドセットから基地局へといった、単一のリンク又はホップを指し示す。
遅延は、如何なる好適手法で実現されてもよい。好ましくは、間接経路遅延を作り出すため、DTX信号(これは、送信が期待されるところでの送信の欠如として見える)が、期待されるアクナリッジメント信号を置き換える。
当然ながら、データが適切に受信されず且つ間接経路上での伝送が依然として待たれる場合であっても、間接経路遅延を導入することが適切でない状況が存在し得る。有利には、第1の装置は、同じデータが間接経路を介して伝送され、データが直接経路を介して適切に受信されず、且つ処理のサービス品質(QoS)要求がこのような遅延を許容する場合にのみ、間接経路遅延を導入する。
QoS要求は、グローバルで或る一定期間にわたって固定されるものであってもよいし、呼び出し/ユーザ特有のものであってもよい。一部の実施形態において、第1の装置の間接経路遅延機能は、データの伝送パラメータ(特性)を考慮に入れて、間接経路遅延が導入されるべきかどうか、及び/又は間接経路遅延の最大長さを決定するように構成される。故に、例えば、データが緊急あるいは重要度大としてフラグを立てられている場合には、間接経路遅延が全ての状況で解除され、それにより、直接経路上で受信されたデータが復号化可能でない場合に直ちに、すなわち、データが間接経路上で受信される前に、再送信が要求されてもよい。この設定は、送信に先立って、あるいは送信を用いて為され得る。一実装例において、間接経路遅延の導入及び/又は長さに関する決定は、データ送信前に、データパケットの特性に従って事前設定される。
当該通信方法は更に、データの送信及び再送信を制御するために、第2の装置に送信されるアクナリッジメント信号と組み合わせて解釈されるリソース割当て信号の送信を含み得る。例えば、物理データ制御チャネルがリソース割当てを提供し得る。
多くの実施形態において、アクナリッジメント信号は、データが適切に受信された場合の肯定応答、又はデータが適切に受信されなかった場合の否定応答を有する。例えば、アクナリッジメント信号は、ARQ又はHARQにおけるACK/NACK信号とし得る。故に、好ましくは、否定応答は、指定あるいは所定の時間にデータを再送信することの要求として作用する。
好ましくは、間接経路遅延は、否定応答が送信された場合に第1の装置に前記データを再送信するための所定のタイムスロットが、新たなデータの送信のために使用されることを可能にする。この有利な効果は、同期式アクナリッジメント技術に適している。
本発明の実施形態に従った間接経路遅延は、間接経路からのデータと直接経路からのデータとの適宜のソフトコンバイニングをもたらし得る。好ましくは、間接経路遅延が導入される場合に、前記データは第1の装置に保管され、その後、多地点結合データを形成するよう、間接経路を介して受信された同じデータと結合される。多地点結合データなる用語は、多地点への送信から照合されたデータを意味するように使用される。
好ましくは、第1の装置は、多地点結合データを評価し、多地点結合データが復号化可能である場合に、肯定応答のアクナリッジメント信号を送信し、多地点結合データが復号化可能でない場合に、否定応答のアクナリッジメント信号を送信する。
本発明の実施形態は、特に、データが、アップリンク上で、例えばUMTS、LTE又はLTE−Aシステムといった無線通信システムのデータパケットとして送信される用途に適している。
これら及びその他の場合において、直接経路及び間接経路を介した送信は、多地点協調技術の一部をなし得る。ここでは単一の間接経路を参照したが、代替的に、2つ以上の間接経路を設けることができ、例えば、直接経路と複数の間接経路とが、多地点協調伝送のポイントセットを反映してもよい。
第1の方法の対応する装置の一態様によれば、本発明の実施形態は、直接経路及び間接経路を介して第2の装置からデータを受信するよう動作可能な受信器と、直接的に受信したデータが復号化可能であるかを決定するプロセッサと、応答してアクナリッジメント信号を送信する送信器と、同じデータが前記間接経路を介して伝送され且つ前記直接経路を介して受信されたデータが復号化可能でない場合に、前記アクナリッジメント信号を送信するのに間接経路遅延を導入して、前記間接経路を介した前記データの受信を可能にし、それ以外の場合には、そのような間接経路遅延を導入しない、コントローラと、を有する第1の装置を提供する。
更なる一態様によれば、本発明の実施形態は、第1の装置と第2の装置とを有する通信システムを提供する。前記第2の装置は、前記第1の装置にデータを送信する送信器を有する。前記第1の装置は、直接経路及び間接経路を介して前記第2の装置からの前記データを受信するよう動作可能な受信器と、応答してアクナリッジメント信号を送信する送信器とを有し、前記第1の装置は更に、同じデータが前記直接経路及び前記間接経路を介して伝送され且つ前記データが前記直接経路を介して適切に受信されない場合に、前記アクナリッジメント信号を送信するのに間接経路遅延を導入して、前記間接経路を介した前記データの受信を可能にし、それ以外の場合には、そのような間接経路遅延を導入しない、コントローラ、を有する。
好ましくは、第1の装置は基地局(例えば、LTEシステムのeノード基地局など)であり、第2の装置はユーザ装置(例えば、移動電話ハンドセット又はその他の移動式あるいは固定式のエンドユーザ装置)である。
上述のように、DTXすなわち非伝送信号を遅延として送ることができ、その場合、第2の装置(又はUE)がアクナリッジメント信号の代わりにDTX信号を受信すると、第2の装置内のバッファが、前記データを再送信のために保管するよう動作する。
好ましくは、第2の装置は、前記データの再送信に許容される最大の間接経路遅延を管理するよう動作するタイマーを含む。
方法の更なる一態様によれば、本発明の実施形態は、第1の装置と第2の装置とを有する通信システムにおける方法を提供する。当該方法は、第2の装置が第1の装置にデータを送信することと、第1の装置が直接経路を介して前記データを受信し、同じデータが間接経路を介して伝送され且つ前記データが直接経路を介して適切に受信されない場合に、アクナリッジメント信号を送信するのに間接経路遅延を導入して、間接経路を介した前記データの受信を可能にし、それ以外の場合には、そのような間接経路遅延を導入しないこととを有する。
更なる一態様によれば、本発明の実施形態はコンピュータプログラムを提供する。当該コンピュータプログラムは、装置にダウンロードされたときに該装置を以上にて詳述した第1の装置にさせ、あるいは、遠隔通信装置のコンピューティング装置上で実行されるときに、以上にて詳述した何れかの方法を実行する。
異なる複数の態様の何れかに関して以上にて詳述した特徴は、同じ発明に言及するものであるので、その他の態様の特徴の何れか又は全てと組み合わされ得る。特に、以上にて詳述した方法のステップ群を反映する手段が、装置の態様に設けられ得る。
図2は、本発明の概略的な一実施形態を示している。ステップ31にて、(例えば、アップリンク上で基地局によって)データが受信される。ステップ32にて、該データが復号可能であるかが決定され、そうであれば、この方法は、ステップ33にて、肯定応答を送信して終了する。そして、この方法は、その後のデータパケットのための別個の処理を再び始める。逆に、該データが復号可能でない場合、この方法は、ステップ34にて、該データが、直接でない、より長いパス(経路)上でも受信されるかを検査する。そうでなければ、この方法は、ステップ36にて、否定応答(恐らくは、再送信要求を伴う)で終了する。より長いパス上でもデータが予期される場合、この第2の経路上のデータが復号化を可能にして再送信を不要にするかもしれないので、ステップ35にて、その受信を可能にするよう、遅延が導入される。
LTEは本発明の実装に適している。典型的なLTEネットワークを図3に示す。この図において、ユーザ装置(UE)40は、無線インタフェース(Uu)によってエンハンスト・ノード基地局(eNB)41に接続されている。このUEに関するユーザプレーン(UP)データは、LTEの基幹ネットワークアーキテクチャであるSAE(システム・アーキテクチャ・エボリューション)へと、サービングゲートウェイ(SGW)42へ経路付けられる。典型的に、サービングゲートウェイは、X2インタフェースによって相互接続され得る複数のeNB(ここでは、2つのeNB41及び43として表す)のために使用される。X2インタフェースは、複数のeNB間の現実の物理接続であってもよいし、その他のネットワークノードを介した論理接続として実装されてもよい。S1−Uインタフェースが、eNBをサービングゲートウェイに接続する。
図4に示すように、CoMPが使用されるとき、DLにおいて、アンカー(又はサービング)eNB(aeNB)41が送信リソースを割当て、そして、ULにおいて、パケットがUE40によって、aeNBと、少なくとも、CoMP送信ポイントセットに規定されるその他のeNB43とに送信される。データは、アンカーeNB(aeNB)での結合(コンバイニング)のために、CoMP送信ポイントセット内のeNBから転送される。このデータ転送は、図4に示すように、eNB間のX2インタフェースを使用する。eNBにおける処理時間とX2遅延とにより、総遅延が、現在想定されるHARQラウンドトリップ時間(round trip time;RTT)より長くなることが起こり得る。この遅延は、HARQプロセスのデータストール及び/又はその他の問題を生じさせ得る。
LTE ULの現行動作においては、パケットAが正しく受信されない場合に、再送信の必要性を指し示すNACKがUEに送信される。
図1は、LTE LDD ULに関して、eNBがUL送信を復号化するための3msという所定の時間が存在することを示している。上述のように、UL CoMPスキームでは、他のeNBから情報を受信する際の遅延(処理及びX2バックホール)が、この3msより長くなりやすい。
UL CoMPが使用されるとき、UL−SCH上でUEによって送信されるデータは、CoMP送信ポイントセットの部分として規定された複数のeNBによって受信されることが想定される。図5は、UEとaeNBと別のeNBとの間でのシグナリングを示す模式的なタイミング図である。縦軸は時間を表している。先ず、UEがパケット(Packet)Aを送信する。パケットAはaeNBによって受信され、且つその後に別のeNBによって受信される。別のeNBは、時間ProcにてパケットAを処理した後、X2遅延の時間にて、それをaeNBに送信する。aeNBは、直接経路からのパケットAと、別のeNBを介した間接(非直接)経路からのパケットAとを結合して復号化を試み(時間Procにて)、そして、復号化の試みに基づいてACK/NACKをUEに送信する。その後、UEは、NACKに応答してパケットAを再送信するか、あるいはACKに応答して新たなパケットBを送信するかする。図5は、アンカーeNBと単一の更なるeNBとを有するときについて、X2遅延と処理遅延との組み合わせを考慮に入れることの予想効果を例証している。ここで、これらの遅延はHARQ RTT(ラウンドトリップ時間)を延長することに寄与し、故に、aeNBは、パケットAを別のNBを介して受信するのに十分な時間が存在することになるまで、ACK/NACKの送信を遅らせる。このような解法は、3GPP TSG RAN WG2 #65bis “Impact of UL CoMP to HARQ operations”に短く記載されている。この参考文献も、aeNBのみによって受信され、別のeNBを介して受信されるデータを考慮に入れた新たな信号に続かれる信号に対応するACK/NACK信号を送信することを提案している。第3の、この参考文献における好適なオプションは、eNBでの正確な信号受信に関係なく、最初の肯定応答をUEに送信するものである。ACKがPDCCHを用いずに送られる場合、データはUE内に保持されることになる。アンカーeNBは、別のeNBからのデータを含む結合データが正しく受信されたかを検査し、対応するACK/NACK信号及びPDCCHを送信する。
上述の第2の2つのオプション双方に従ったCoMPを可能にするように、より長い遅延を導入すること、又は追加の送信を含めることによってHARQ RTTを延長することは、UL CoMPとともに使用されるときにHARQを動作させることの問題を潜在的に解決するものの、こうすることの欠点は、CoMPを用いて動作するUEが、CoMPを用いずに動作するUEと比較して、常に異なるHARQ RTT又は追加のシグナリングを有することである。これは、LTEシステム全体の設計を複雑にし、eNBに一層難しいスケジューリングをもたらし得る。また、HARQ RTTの延長、又は恒久的な追加シグナリングは、LTEシステムにおけるデータパケットの遅延を増大させることになる。
図6は図5と基本的に同様であり、その詳細な説明は簡潔さのために省略する。このタイミング図は、パケットAが別のeNBからの追加情報を用いることなく成功裏に復号化されることが可能な場合に、その段階で、aeNBからACKを送信し、且つパケットBを送信することができることを示している。ここでは、第2のeNBから送信される追加情報は必要とされない。
本発明の発明者は、実際には大抵のパケットにとっての通常動作に相当するものである、この特定のケースでは、追加のデータパケット遅延は必要なく、あたかもCoMPを使用せずに動作するようにシステムが動作し得るとしたら有利であることを認識した。これまでは、直接経路及び間接経路の双方からのデータが必要とされ、確かに、時折、例えば特定の物理的位置(例えば、UEがセル端に位置する)では、受信された直接経路だけでは決して十分でない、という知見が存在していた。しかしながら、本発明の実施形態は、可能な場合には、直接経路を介して受信されたデータのみに基づいて単一のACKが送信されることを可能にする。この場合、更なるシグナリングが必要である。
成功裏でないデータ受信に話を移すに、図7は、単一フレーム又はその他の時間単位内で4つの別個のHARQプロセス(又は、時間ウィンドウ)が利用可能なときの、同期式HARQ処理の一例を示している。この例において、パケットはUEからeNBに送信される。パケットは、UEバッファにバッファリングされ、パケットA、パケットB、パケットC、等々の順に送信される。各パケットは送信(及び、必要な場合に再送信;その場合、後の時間期間においてHARQプロセスが使用される)のためにHARQプロセス番号に割り当てられる。この例において、eNBはパケットAを成功裏に復号しない。NACK信号がUEに送られ、その結果、パケットAの再送信のためにHARQ1プロセスが使用され得る。故に、パケットEはその後にHARQプロセス2で送信される。
図8は、図7にて詳述したものと基本的に同じ例を用いた本発明の一実施形態を示しているが、この場合には、NACKがeNBからUEに返送されることに代えて、DTX(又は、何もなし(ナッシング))がUEに返送されている。このDTX(又は、ナッシング)信号を送信する目的は、eNBが、パケットAの元々の送信を受信した1つ以上のその他のeNBからの追加情報(例えば、ソフトビット)を受信する場合に、パケットAを復号化するための一層良好な試みを為し得ることをeNBに予期させることである。
この場合、UEは、DTXを受信するとき、後の可能性ある再送信のために、パケットAを送信バッファ内あるいは更なるUE再送信バッファ内にバッファリングする。そして、UEは、通常はパケットAの再送信のために使用していたHARQプロセス1でパケットEを送信する。aeNBは、隣接eNBからの追加情報を用いてパケットAを復号化しようと試みるとき、典型的に、この活動のためのタイマーをスタートさせる。所定の時間間隔の後、パケットAは、成功裏に復号化され、あるいはUEの再送信バッファから再送信され得る。パケットAの再送信の制御は、再送信の制御に使用される既存のシグナリング(PDCCH/PHICHチャネルを用いる)の組み合わせによって、あるいは代替的に、新たな制御シグナリングによって行われることができる。
LTEのULでは、PHICH上でのACK/NACKシグナリングに、リソースが新規の送信用であるか、あるいは再送信用であるかのインジケーション(又は、インジケーションなし)と結合されるPDCCH上のリソース割当てが付随する。このPDCCHシグナリングはUEに、リダンダンシ・バージョン(Redundancy Version;RV)の使用によって、新規の送信又は再送信が必要とされるかを指し示す。
余談として、リダンダンシ・バージョン(RV)は、ビットの読み出しを開始するための、循環バッファ内の開始点を指定する。HARQ動作を可能にするよう、異なる開始点を定めることによって異なるRVが指定される。通常、系統的なビットを可能な限り多く送信するため、RV=0が最初の送信のために選択される。スケジューラは、IR(インクリメンタル・リダンダンシ)HARQ及びチェイス合成(Chase combining)HARQの双方をサポートするように、同一パケットの送信に異なるRVを選択することができる。
HARQ1にてPHICH上で送信されるNACKの、インジケーションなしのリソース割当てとの組み合わせは、UEによって、表1においてのように、先にバッファリングされたパケットAの非適応(同じ変調・符号化スキーム)再送信が要求されていることを意味するように解釈されることができる。UL CoMPが使用されるときに当てはまるように、特定のパケットの遅延された再送信が要求される場合のために、シグナリングの再解釈が事前設定され得る。以下の表2は、シグナリングがどのように再設定されるかの一例を提示している。
この例では、ACK及びNACKのシグナリングに関する表1の値はそのままにされており、DTX信号に、PDCCHチャネル上の“新規の送信”シグナリングが付随し、この組み合わせが、UEに、データはHARQバッファ内に保管されるべきであり且つ新規の送信が要求されることを指し示す。
遅延再送信のシグナリングフローを図9にも示す。図9は、aeNBがパケットAを成功裏に復号化できず、且つNACKを送信することに代えてナッシング(DTX)が送信される場合に起こり得ることへの1つの取り組みを示している。DTXが送信されるとき、これは典型的に、UEはACK信号又はNACK信号の何れかを受信することを期待しているが、何も検出されないということを意味する。このACK/NACKシグナリングの欠如は、以下の図では、aeNBからUEへのDTXの送信として描かれている。
UEは、ACK又はNACKの何れも受信しないとき、可能性ある再送信のためにパケットAをバッファ内に保持すべきである。この動作モードの利点は、パケットAの再送信に使用されるものであった同期式HARQタイムスロットが、UEデータバッファからの新たなデータ(この例ではパケットE)の送信のために解放されることである。
この時点で、パケットAの遅延再送信が可能な最大時間量を制御するため、aeNB内のタイマーがスタートされる。この時間は、データパケットによって使用されているデータサービスのQoS要求に関係し得る。例えば、遅延の影響を受けやすいサービスにおいては、過剰に長く遅延されたパケットは、それらのパケットの送信及び受信を行うアプリケーションにとって無用なものになる。この例では、第2のeNBからaeNBに送信されるパケットAの追加受信により、パケットAを成功裏に復号化することが可能にされる。本発明の実施形態に係るこの動作モードの主な利点は、UEが、パケットAの潜在的な再送信に割り当てられるULリソースを無駄にする必要がなく、そのULリソースを、パケットEの送信のために柔軟に代替使用することができることである。図10は、追加情報が第2のeNBから受信された後にもaeNBが依然としてパケットAを復号化することができない場合に起こることを示している。aeNBからUEに、同じHARQプロセス上でUEバッファからパケットAの遅延再送信を実行することをUEに命令するNACKが送信される。
要約すると、本発明の実施形態は、CoMPが使用されるときのUL HARQ処理の場合において、パケットが正確に受信されない場合にaeNBがDTXを送信することを提案する。UEは、aeNB内のパケットバッファ遅延タイマーの満了まで、(DTXに応答して)パケットを保管し且つそれらパケットを再送信することが可能にされ得る。
本発明の実施形態の第2の特徴は、制御信号(又は、既存の複数の制御信号の組み合わせ)を使用して、遅延された再送信のタイミングを制御可能なことである。いつ遅延再送信を要求するかの、この選択は、送信をスケジュールされたデータパケットに関するQoS又はその他の要求に基づき得る。
また、再送信を制御するためにUEが制御信号を異なるように解釈しなければならないことを指し示す方法は、データ送信前に最初の設定期間中に、あるいは、データ送信とともに送信される制御信号によって、の何れかで信号伝達されることができる。
本発明の数多くの実施形態の第1の利点は、送信及び再送信の双方の場合で、データパケット遅延が短縮されることである。第2の利点は、同じHARQ RTTを用いて、非CoMP UEの使用と同時にCoMP UEの動作を可能にすることである。さらに、本発明の実施形態は、遅延されたACK/NACK信号フィードバックを待機する必要のために押さえられていたリソースの再利用を可能にすることができる。
一例としてLTEに関して説明してきたが、本発明は必ずしもそのような用途に結び付けられない。
本発明の適用分野は、HARQプロトコル又はその他の再送信プロトコルがCoMP及び/又は中継技術と組み合わせて使用される全ての有線及び無線の通信システムを含む。
上述の態様の何れにおいても、その様々な機能は、ハードウェアにて実装されてもよいし、1つ以上のプロセッサ上で動作するソフトウェアモジュールとして実装されてもよい。1つの態様の特徴が、その他の態様の何れかに適用されてもよい。
本発明はまた、ここで説明した方法の何れかを実行するためのコンピュータプログラム若しくはコンピュータプログラム製品、及び、ここで説明した方法の何れかを実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。本発明を具現化するコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能媒体に格納されることができ、あるいは、例えばインターネットウェブサイトから提供されるダウンロード可能データ信号などの信号の形態、又は何らかのその他の形態であってもよい。