近年、透過型、反射型ドットマトリクス液晶、DMD(Digital Micro−mirror Device)等を用いた表示装置(以下ライトバルブと称する)を用い、このライトバルブに表示される画像をスクリーンに拡大投射して大画面として見せる拡大投射方式が着目されている。
しかし大画面を投射するに当たり、ライトバルブ自体を大面積化するには、製作のうえで欠陥のない大型液晶表示装置を得ることは容易でなく、仮に得られたとしてもきわめて高価になる。
このようなことから、透過型(または反射型)液晶、DMDのライトバルブを用いてこれに表示される画像を拡大投射すれば、画面の大きさに制約を受けず、迫力のある大画面を得ることが可能なので、オフィスや、学校、家庭においても、より広く画像拡大投射装置(プロジェクター)が利用されている。
しかし、実際にプロジェクターを利用する場面を想定すると、プロジェクターの設置場所が問題になる。
たとえば、オフィスにて前方に画像を投影するフロント型プロジェクターを例に挙げると、少人数で比較的小さな会議室で利用する場合、投影画面サイズ、投射距離、PCとの接続、議論しやすい机のレイアウトなどから、プロジェクターの設置場所の制約が少なからず発生し、使い勝手が悪い問題点が発生していた。また、特にプロジェクターにプレゼンテーション資料を投影し説明をする場合に、説明者はプロジェクターとスクリーンの間に立たざるを得ない場合もでてくるが、そのときに説明者の影がスクリーンに映り込んでしまって聴講者には投影画面が一部分見えなくなる問題が生じてしまう。
最近は、ますます、大画面で、投射距離を縮める工夫が種々なされているが、たとえば、対角50〜60インチの画面サイズを得るためには、従来の技術ではフロント型で最低1m程度の投射距離が必要であり、この距離では、説明者の陰がスクリーン上に写り込み問題になる場合が多々生じていた。
また、プロジェクターをキャビネット内に納め、キャビネットの前面に設けたスクリーンに背面投射して、キャビネットの前面から拡大画像を見ることができるようにしたリア型の表示装置、リアプロジェクターが提供されるに至っているが、奥行き方向の省スペース化を実現するため薄型が求められている中、筐体のなかにおいて平面ミラー等で何度か折り曲げても、装置自体の小型化に限界があるため、光学系の投射距離を縮めることがますます求められている。
特開2002−40326号公報(特許文献1)においては、反射型結像光学系に関する従来技術が開示されており、結像光学系の大型化を抑え且つ広画角化を図ることのできる反射型の結像光学系を提供することを目的として、その実施例としては、第一から第四の四つの反射鏡を備えた反射型結像光学系であって、第一反射鏡:凹状曲面、 第二〜四反射鏡:凸状からなる、反射光学系を採用している。また、前記各反射鏡の内の少なくとも一つの反射鏡の反射面を、自由曲面形状に形成し、所望の投射性能を確保している。
特開2002−174853号公報(特許文献2)においては、背面投射型ディスプレイに関する従来技術が開示されており、スクリーンまでの投射距離を短くして、背面投射型ディスプレイに限定しているが、装置の奥行を薄くする方法として、一対の凹面鏡と発散作用を有する凸面鏡を、表示光学ユニットから背面反射ミラーへの光路上に、表示光学ユニット側から凹面鏡、凸面鏡の順で配置するなどして、投射距離をより短くする従来技術がある。
特公平6−91641号公報(特許文献3)においては、ビデオプロジエクタに関する従来技術が開示されており、テレビジョン受像機において、第1番目の鏡を凸面状に構成し、薄型化を図ったリアプロジェクション方式のビデオプロジェクタが記載されている。
以上従来技術の共通の問題点としては、自由曲面等、非球面を多用し、結像性能を保ちながら、広角化を実現しているが、面形状精度はもちろん、各面の間隔の精度を厳しくする必要があった。特許文献1の反射鏡で構成したタイプでは、反射面の精度誤差による影響度が大きくなる。これらの従来の投射光学系での公差設定より一段厳しくなる問題点があった。
また、反射鏡だけで構成した場合、色収差が原理的に発生しない特徴があるが、逆に、複数の色を合成しカラー画像を形成した作像系では、クロスプリズムや、フィリップスプリズムといった色合成ブリズム等を介在させる必要があり、色収差が発生するが、反射ミラーだけで投射光学系を構成すると、色収差補正ができなくなるといったデメリットが生じる。
よって、特開2004−61959号公報(特許文献4)に開示される投射光学系、投射型画像表示装置および画像表示システムでは、レンズ系と複数のパワーを持った反射面を用いた投射光学系なので、色合成プリズム等で発生する色収差をレンズ系で補正することが可能であるが、実施例によると、3〜5枚の非球面ミラーを使用しているためコストも高く、また前出の公知例と同じく反射面の面精度や位置精度を極めて高く設定する必要があり、光学系の組付け精度が厳しくなるという問題点がある。また、画像形成素子から射出する光束がテレセントリックではないため、像面での明るさが不均一になってしまったり、色合成プリズムの膜の角度特性をライトバルブからの射出光の発散角よりも広く取らなくてはいけないため分離特性が悪くなってしまう。
また、特開2004−258620号公報(特許文献5)に開示される投射光学系、拡大投射光学系、拡大投射装置及び画像投射装置では、レンズ系と複数のパワーを持った反射面を用いた投射光学系だが、回転非対称反射面1面を用いて拡大しているため特許文献4に比べコストが抑えられ組付け精度も全体としてゆるくなる。しかしながら実施例1〜5では、レンズ系が光軸に対し平行偏心、チルト偏心しているため、その調芯を行うのが非常に困難である。また、実施例6では偏心のないレンズ系を採用しているが、そのレンズ構成のため、スクリーン側に最も近いレンズの径が大きいものになってしまっており、またそのレンズに自由曲面を用いているためコストが高くなってしまっている。より具体的には、実施例6では、レンズ系は共軸系であるが、レンズ系と凹面ミラーの関係に関する記述が無く最終レンズが自由曲面レンズであったり、径が大きくなってしまったりしてコストアップの要因となっている。
また、特許第3727543号公報(特許文献6)に開示される画像表示装置では、レンズ部に反射部の像面湾曲を補償するレンズを備えることで全体系の像面湾曲を打ち消しているが、画像形成素子からスクリーンまで中間像を結ぶことなくひとつの系となっているため通常のレンズシステムと大差なくスクリーン上の像面湾曲をなくす手段としては当然のことであった。また、前絞りに言及しているため、画像形成素子にたとえばDMDしか対応できず、透過型、反射型液晶を用いた画像形成素子への対応は出来なかった。
(投射光学系及び画像投射装置)
本発明の実施形態は、投射光学系及び画像投射装置に関する。
本発明の実施形態の第一の目的は、像面湾曲が低減された投射光学系を提供することである。
本発明の実施形態の第二の目的は、像面湾曲が低減された投射光学系を含む画像投射装置を提供することである。
本発明の実施形態の第一の態様は、第一の画像と共役な第二の画像を形成する第一の光学系、及び、該第二の画像からの光を反射する反射光学素子を含むと共に該第二の画像と共役な第三の画像を被投射面に投射する第二の光学系を含む、投射光学系において、前記第一の光学系は、前記第二の光学系のペッツバール和の符号と反対の符号を備えたペッツバール和を有することを特徴とする投射光学系である。
本発明の実施形態の第二の態様は、共役面A上にある画像情報を表示する画像形成素子から射出した複数の光束を、共役面Bに斜めから入射させて共役面B上に前記画像形成素子によって形成された画像の拡大画像を形成可能な投射光学系において、少なくとも第1光学系と第2光学系とを有し、第1光学系と第2光学系の間に前記複数の光束が略収束化された画像形成素子の中間像を有し、第1光学系の屈折力を持った光学系は前記光束を透過するレンズ系のみで構成され、第1光学系の屈折力のみで前記中間像を形成し、第2光学系は前記中間像の直後に前記光束を反射させる正の屈折力を持った反射ミラーを含んだ反射光学系で、前記第1光学系は、前記第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成させていることを特徴とする投射光学系である。
本発明の実施形態の第三の態様は、共役面A上にある画像情報を表示する画像形成素子から射出した複数の光束を、共役面Bに斜めから入射させて共役面B上に前記画像形成素子によって形成された画像の拡大画像を形成可能な投射光学系において、少なくとも第1光学系と第2光学系とを有し、第1光学系と第2光学系の間に前記複数の光束が略収束化された画像形成素子の中間像を有し、第1光学系の屈折力を持った光学系は前記光束を透過するレンズ系と第1光学系の光軸に回転対称の負の屈折力を持った反射ミラーで構成され、第1光学系の屈折力のみで前記中間像を形成し、第2光学系は前記中間像の直後に前記光束を反射させる正の屈折力を持った反射ミラーを含んだ反射光学系で、前記第1光学系は、前記第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成させていることを特徴とする投射光学系である。
本発明の実施形態の第四の態様は、本発明の実施形態の第一、第二、及び第三の態様のいずれかである投射光学系を搭載したことを特徴とする画像投射装置である。
本発明の実施形態の第一、第二、又は第三の態様によれば、像面湾曲が低減された投射光学系を提供することができる。
本発明の実施形態の第四の態様によれば、像面湾曲が低減された投射光学系を含む画像投射装置を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態(実施形態)を図面と共に説明する。
本発明の第一の実施形態は、共役面A上にある画像情報を表示する画像形成素子から射出した複数の光束を、共役面Bに斜めから入射させて共役面B上に前記画像形成素子によって形成された画像の拡大画像を形成可能な投射光学系において、少なくとも第1光学系と第2光学系とを有し、第1光学系と第2光学系の間に前記複数の光束が略収束化された画像形成素子の中間像を有し、第1光学系の屈折力を持った光学系は前記光束を透過するレンズ系のみで構成され、第1光学系の屈折力のみで前記中間像を形成し、第2光学系は前記中間像の直後に前記光束を反射させる正の屈折力を持った反射ミラーを含んだ反射光学系で、前記第1光学系は、前記第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成させていることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第一の実施形態によれば、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーでのペッツバール和成分を第1光学系で補償することにより、像面であるスクリーン面での像面湾曲を小さく出来、解像性能を向上させることが出来る。
本発明の第二の実施形態は、共役面A上にある画像情報を表示する画像形成素子から射出した複数の光束を、共役面Bに斜めから入射させて共役面B上に前記画像形成素子によって形成された画像の拡大画像を形成可能な投射光学系において、少なくとも第1光学系と第2光学系とを有し、第1光学系と第2光学系の間に前記複数の光束が略収束化された画像形成素子の中間像を有し、第1光学系の屈折力を持った光学系は前記光束を透過するレンズ系と第1光学系の光軸に回転対称の負の屈折力を持った反射ミラーで構成され、第1光学系の屈折力のみで前記中間像を形成し、第2光学系は前記中間像の直後に前記光束を反射させる正の屈折力を持った反射ミラーを含んだ反射光学系で、前記第1光学系は、前記第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成させていることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第二の実施形態によれば、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーでのペッツバール和成分を第1光学系で補償することにより、像面であるスクリーン面での像面湾曲を小さく出来、解像性能を向上させることが出来る。
本発明の第三の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第2光学系の正の屈折力を持ったミラーは、第1光学系の光軸と交わる点から周辺に向かうにしたがって曲率がゆるくなるような曲面形状を持つことを特徴とする投射光学系である。
本発明の第三の実施形態によれば、スクリーン上の拡大像の歪曲収差、像面湾曲を補正することが出来、解像性能を向上させることが出来る。
本発明の第四の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第2光学系の正の屈折力を持ったミラーは、画像形成素子の短軸方向と長軸方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面形状であることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第四の実施形態によれば、設計自由度が多くなるため、収差補正能力がさらに高くなり、解像性能を向上させることが出来る。
本発明の第五の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第2光学系の正の屈折力を持ったミラーは、回転対称な非球面形状であることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第五の実施形態によれば、ある軸に対し回転対称の形状であるため正の屈折力を持ったミラーの加工がしやすく形状誤差が小さくできるし、加工時間も短くできるためコストダウンとなる。
本発明の第六の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第1光学系のレンズは、少なくとも1面は非球面形状を有していることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第六の実施形態によれば、第1光学系に非球面を採用することにより、拡大像の解像性能が良くなる。
本発明の第七の実施形態は、本発明の第六の実施形態である投射光学系において、第1光学系の非球面は、少なくとも1箇所は第3群中に位置していることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第七の実施形態によれば、第1光学系第3群は全群の中で最も光束の画角が離れている群なので、そこに非球面を採用することにより、各画角の光束を独立に補正できるため、拡大像の解像性能がさらに良くなる。
本発明の第八の実施形態は、本発明の第七の実施形態である投射光学系において、第1光学系の第3群の非球面は、少なくとも1箇所は正の屈折力を持ったレンズ上に位置していることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第八の実施形態によれば、第3群の正のパワーを持ったレンズは、第3群中で良く光束の画角が離れているレンズのため、各画角の光束を独立に補正できるため、拡大像の解像性能がさらに良くなる。
本発明の第九の実施形態は、本発明の第六の実施形態である投射光学系において、第1光学系の非球面は、少なくとも1箇所は最も共役面Bに近いレンズ系の面であることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第九の実施形態によれば、第3群の最も共役面Bに近い面は、第3群中で最も光束の画角が離れているレンズのため、各画角の光束を独立に補正できるため、拡大像の解像性能がさらに良くなる。
本発明の第十の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、前記中間像は第1光学系の光軸に垂直な面に対して傾斜湾曲していることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第十の実施形態によれば、スクリーン上の拡大像の像面湾曲を、物体側(中間像)で逆補正することが出来、解像性能を向上させることが出来る。
本発明の第十一の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、前記画像形成素子から前記透過屈折光学系の第一面までが略テレセントリックであることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第十一の実施形態によれば、画像形成素子から射出する光束を全画角ほぼ同じ角度で第1光学系に取り込むため、スクリーン上の拡大像の明るさをほぼ均一化できる。また、画像形成素子と第1光学系の間に入射角特性を持った膜が配置されている場合、その取り込み角分のみを考慮すればよいので入射角を狭くすることが出来、コストダウンできる。
本発明の第十二の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第1光学系のレンズの間に、反射ミラーを配置したことを特徴とする投射光学系である。
本発明の第十二の実施形態によれば、第1光学系のレンズ内に折り返しミラーを配置することにより、画像形成素子からその折り返しミラーまでの光路を、スペースが空いている空間に折り返すことが出来るため、光学系の空間占有率が小さくなる。
本発明の第十三の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第1光学系のペッツバール和成分は負であることを特徴とする投射光学系である。
本発明の第十三の実施形態によれば、第1光学系のペッツバール和を負にすることで、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーで発生する像面湾曲を打ち消すことが出来るため、解像性能が向上する。
本発明の第十四の実施形態は、本発明の第十三の実施形態である投射光学系において、第1光学系のペッツバール和成分をPTZとした時に下記条件
PTZ < −0.0115
を満たすことを特徴とする投射光学系である。
本発明の第十四の実施形態によれば、第1光学系のペッツバール和を−0.0115以下とすることで、中間像にあらかじめ正の屈折力を持った反射ミラーでの拡大の際に発生する像面湾曲を大きく補正する形で発生させることが出来るため、その拡大倍率を大きくすることが出来、物体である中間像を小さくすることが出来る。しいてはその正の屈折力を持った反射ミラーをも小さくすることが出来る。また、解像性能も向上できる。
本発明の第十五の実施形態は、本発明の第一〜第十四の実施形態のいずれかである投射光学系を搭載したことを特徴とする画像投射装置である。
本発明の第十五の実施形態によれば、拡大倍率が高く解像性能が高くてもレンズサイズやミラーサイズが大きくならない投射光学系を採用した投影装置を実現したため、所望の拡大倍率が得られ、かつ至近距離投射が可能でコストを抑えた投影装置を実現できる。また、リアプロジェクションへ本発明の実施形態の投射光学系を採用することによって従来よりもコストを下げ、かつ薄型化も可能な装置を実現できる。
本発明の第十六の実施形態は、第一の画像と共役な第二の画像を形成する第一の光学系、及び、該第二の画像からの光を反射する反射光学素子を含むと共に該第二の画像と共役な第三の画像を被投射面に投射する第二の光学系を含む、投射光学系において、前記第一の光学系は、前記第二の光学系のペッツバール和の符号と反対の符号を備えたペッツバール和を有することを特徴とする投射光学系である。
本発明の第十六の実施形態によれば、像面湾曲が低減された投射光学系を提供することができる。
本発明の第十七の実施形態は、本発明の第十六の実施形態である投射光学系を搭載したことを特徴とする画像投射装置である。
本発明の第十七の実施形態によれば、像面湾曲が低減された投射光学系を含む画像投射装置を提供することができる。
図1に本発明の実施形態の実施例1を示す。
なお、本発明の実施形態の説明図における座標系は、共役面B上のスクリーンの長軸方向をX、短軸方向をY、スクリーンの法線方向をZとする。
共役面A上の画像形成素子で形成された画像を共役面B上のスクリーンに投射するための投射光学系であって、屈折力を持った光学系は光束を透過するレンズ系のみで構成された共軸系の第1光学系、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系で構成され、画像形成素子から第1光学系、第2光学系を配置し、第1光学系と第2光学系の間に、画像形成素子で形成された画像の中間像を一旦形成させて、全体で拡大投射させる。なお、折返しミラーは光路を折り返し、光学系をコンパクトにまとめるために配置されており、画像形成素子にて作られた画像をスクリーンに投射することに関しては寄与していない。
図4は図1の上方から、つまりXZ平面で系を見た図であり、折り返しミラーの光路折り曲げ方向を変更したものである。図1では折り返しミラーの光路折り曲げ方向は第1光学系以下をY方向に折り曲げているが、第1光学系を図4のようなX方向に折り曲げるような向きにするなど、光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。さらに、第2光学系は正のパワーを持った反射ミラーの後にスクリーンと平行な折り返しミラーを配置してもよく、図4のように一つの筐体内に本光学系を設置した場合、筐体の奥行き方向を薄くすることが出来る。このことは以下実施例すべてにおいて同様である。
なお、図では簡単のため画像形成素子を1枚のみ示したが、図12のように赤、緑、青等の複数枚の画像形成素子を用い、各素子により変調された光束を公知のダイクロイックプリズム等の色合成手段により色合成した後に投射光学系へ入射させることによりスクリーン上にカラー画像を投射することが出来ることは言うまでもない。
また、画像形成素子から第1光学系第1面までの光束が略テレセントリックであれば(本発明の第十一の実施形態)、スクリーンでの画像形成素子の拡大像の明るさを均一化できると共に、前述のような複数枚の素子を用いたカラー画像投射の場合に用いる色合成手段のダイクロイック膜の角度特性も画像形成素子からの射出光の発散角のみ考慮すればいいので狭く、膜自体が作りやすくなる。さらに偏光分離手段を用いる画像形成装置の場合、その偏光分離膜も角度特性が狭く出来るためよい(図12参照)。もちろんテレセントリックではない光学系でも本発明の実施形態は適用可能である。
図2は実施例1の第1光学系の拡大図である。
図2のように、第1光学系に非球面レンズを用いることにより設計の自由度が多くなり、スクリーン上での結像性能が上がる(本発明の第六の実施形態)。さらに第1光学系は、絞りの前後と、絞りよりも共役面B側にあるレンズ群の中で最もレンズ間隔の空いた箇所の前後で分けたときに、もっとも共役面B側にある第3群は各画角の光束が最も分離している群なので、その位置に非球面形状を用いることにより各画角を独立に収差補正することが出来(本発明の第七の実施形態)、その中でも図2のように負のレンズ後の正のレンズは良く各画角の光束が分離しているため非球面形状の収差補正能力が効果的である(本発明の第八の実施形態)。このことは以下の各実施例でも同様である。
次に、ペッツバール和の補償について説明する。
図3は実施例1の第1光学系、第2光学系の拡大図である。
第1光学系を射出した光束は折り返しミラーにより光路を曲げられ第2光学系に入射し、第2光学系の正のパワーを持った反射ミラーにより拡大投射される。第1光学系と第2光学系の間には、光束が略収束化され画像形成素子の中間像を形成する。
第2光学系の正のパワーにより共役面B上に拡大投影される画像形成素子の像の歪曲収差は一般に、入射する画角の3乗に比例して大きくなってしまう。同様に像面湾曲は、入射する画角の2乗に比例してしまう。つまり、画像形成素子上に等間隔に並んだ物点から射出する光線が投射光学系によって共役面B上に像を作るとき、出来た像は等間隔ではなく、光軸から離れた像点ほどズレ量は大きくなる。本光学系では第2光学系の曲面が球面であった場合、投射される像は画角が大きい光束、つまり光軸から離れれば離れるほど像点の間隔が広がり、かつ、物点側に湾曲してしまう。以上のような拡大投射系における歪曲収差、像面湾曲を補正するため、第2光学系の正のパワーを持つ反射ミラーは、光軸から離れれば離れるほど正のパワーがゆるくなるような曲面形状をしている(本発明の第三の実施形態)。また第2光学系の正のパワーを持つ反射ミラーがアナモフィックな多項式自由曲面形状であれば、設計自由度が高くなるので、上記歪曲収差を含めた収差補正性能がよくなる(本発明の第四の実施形態)。なお本説明では凹面状の反射面を採用しているが、フレネル反射鏡であったり、ホログラム反射鏡であったり、集光パワーを有する反射光学素子であればこの限りでない。
なお、上の説明における「アナモフィックな多項式自由曲面」は投射画像を基準として短軸方向をY方向、長軸方向をX方向、曲面のデプスをZ方向、「X2、Y2、X2Y、Y3、X2Y2など」を係数として
Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・(1)
で表される形状である。
さらに光軸から離れるほど正のパワーがゆるくなるということは光軸から離れるほど焦点距離が伸びるわけで、第2光学系の正のパワーを持った反射ミラーにより形成される拡大像に共役な前記中間像は、光軸から離れるにつれて焦点距離が伸びるため、第2光学系の正のパワーを持った反射ミラーとの光路長が光軸から離れた光線ほど伸びる方向に傾斜湾曲する(本発明の第十の実施形態)。
ここで、ペッツバール和について説明する。ペッツバール和PTZは、図33のように、あるS面での像側の屈折率をns、物体側の屈折率をns−1、曲率半径をrsとし、光学系がk面までの屈折面で構成されているとすると
と表される。
一般に、ペッツバール和は像面湾曲と関係があり、平面の物体に対して平面の像を得る、つまり像面湾曲の小さい像面を得るためにはペッツバール和を0に近づけることが求められる。
ここで本実施例にこのことを当てはめると、上記説明のように、スクリーン上で像面湾曲が小さくなるように、第2光学系の正のパワーを持つ反射ミラー(PTZは正の値となる)は光軸から離れるほど正のパワーがゆるくなるような曲面形状をし、中間像も光軸から離れた光線ほど第1光学系側に傾斜湾曲する。そのような傾斜湾曲する中間像を形成するためには、中間像の状態を作り出している第1光学系を、通常の平面物体を平面像に投射する光学系全体のPTZ値よりもマイナス側に大きなPTZ値にし、わざと像面を物体側に倒す必要がある(本発明の第十四の実施形態)。
以上のように、第1光学系のペッツバール和は、第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成されている(本発明の第一の実施形態、本発明の第二の実施形態)。
また、このことは以下他の実施例においても同様である。
また、実施例1では図2のように第1光学系に第1群が6枚、第2群が2枚、第3群が3枚の計11枚のレンズを用いているが本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、レンズの間に反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。(本発明の第十三の実施形態)
実施例1の諸元を表1に示す。
表1においてシフトとあるのはシフト偏心量、チルトとあるのはチルト偏心量である。ここで分散はアッベ数として表し、屈折率と共にd線での値である。曲率半径、面間隔及びシフト偏心量の単位は「mm」、チルト偏心量の単位は「度」である。以下の各実施例においても同様である。
[表1]
14、22、23面に用いられている非球面は回転対称非球面であるが、非対称の非球面でも良い。
回転対称非球面は周知のとおり、Zを光軸方向のデプス、cを近軸曲率半径、rを光軸からの光軸直交方向の距離、kを円錐係数、A、B、C、・・・等を高次の非球面係数とすると、
Z=c・r2/[1+√{1−(1+k)c2r2}]+Ar4+Br6+Cr8・・・
という非球面式となり、k、A、B、C・・・の値を与えて形状を特定する。以下他の実施例においても同様である。
表2に実施例1の非球面の係数を与える。
[表2]
表3に実施例1の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している。
[表3]
実施例1の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図5に、解像性能を図6に示す。どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約85.7倍である。図5のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図6のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も79%以上と解像性能が非常に高いことが分かる。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは最もスクリーンに近いレンズで、その直径は80mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例2について説明する。
図7に本発明の実施形態の実施例2、図8に実施例2の第1光学系拡大図を示す。
本発明の第一の実施形態同様、共役面A上の画像形成素子で形成された画像を共役面B上のスクリーンに投射するための投射光学系であって、屈折光学系を少なくとも一つ含んだ共軸系の第1光学系、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系で構成され、画像形成素子から第1光学系、第2光学系を配置し、第1光学系と第2光学系の間に、画像形成素子で形成された画像を一旦中間像形成させて、全体で拡大投射させる光学系であるが、第1光学系と第2光学系の間に回転対象の負の屈折力を持った反射ミラーを配置することにより、第1光学系第3群の負の屈折力を軽減できかつ、折り返しミラーと兼ねることが出来るため空間占有率を小さくすることが出来る。またその方向は、図7では第1光学系を共役面Bの高さ方向、つまりY方向に折り曲げているが、第1光学系を図の奥行き方向、つまりX方向に折り曲げるような向きにするなど、光学系の空間占有率をより小さく出来ることは当然である。
実施例2の諸元を表4に示す。
[表4]
[表5]
表6に実施例2の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している。
[表6]
実施例2の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図9に、解像性能を図10に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約85.7倍である。図8のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図9のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も75%以上と解像性能が良いが、実施例1と比べて落ちている。これは、前述のとおり実施例2は実施例1に対しレンズ(非球面レンズ)を1枚抜いた構成になっているため、設計自由度が少なくなったからだと考えられる。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは最もスクリーンに近いレンズで、その直径は80mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例3について説明する。
図13に本発明の実施形態の実施例3、図14に実施例3の第1光学系拡大図を示す。
実施例2と同様に本発明の実施形態に即した光学系となっているが、第1光学系に第1群が6枚、第2群が2枚、第3群が3枚の計11枚のレンズを用いている。実施例1同様、本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。
また実施例1と同様に、図13では第2光学系の光路折り曲げ方向は第1光学系を共役面Bの高さ方向、つまりY方向に折り曲げているが、第1光学系を図の奥行き方向、つまりX方向に折り曲げるような向きにするなど、光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。このことはその他実施例でも同様である。
また本実施例では、第1光学系132のペッツバール和PTZを
PTZ < −0.0115 .......(2)
とすることにより、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラー134の大きさ(面積)を小さくすることが出来る。(本発明の第十四の実施形態)
これは、正の屈折力を持った反射ミラーは、その拡大倍率が大きくなるにつれて画角に起因する像面湾曲が大きくなるので、それを小さくするために、像の大きさを一定とすると、中間像(正の屈折力を持った反射ミラーにとっては物体)を大きくし正の屈折力を持った反射ミラーの持つ拡大倍率を小さくしなければならなかった。しかし、条件式(2)のように第1光学系のペッツバール和を大きなマイナスの値にすることにより、第1光学系が作る像、中間像の像面湾曲を大きく物体側に湾曲することができ、正の屈折力を持った反射ミラーで発生する像面湾曲を大きく打ち消すことが出来るため、正の屈折力を持った反射ミラーの拡大倍率を大きくすることが出来る。このことにより中間像を小さくすることが出来、それに伴い正の屈折力を持った反射ミラー自体も小さくすることができる。
また表22に各実施例の第1光学系のペッツバール和と正の第2光学系の屈折力を持った反射ミラーサイズの表を示す。
[表22]
表22をみるとペッツバール和と反射ミラーサイズには図34のような相関関係があることが分かる。
ここで、正の屈折力を持った反射ミラーは、特にアナモフィックな多項式自由曲面を用いる場合、一般にミラーサイズが20000mm2を超えると、温度変化によるミラーのたわみが大きく発生し投射画像性能に大きく影響してしまう。また、製作も困難でコストアップとなってしまう。よってペッツバール和は図34から導き出される条件式(2)のように−0.0115以下が望ましい。また条件式(2)を満たすためには第1光学系の正のパワーを持ったレンズのd線における屈折率の平均値を凸AVE、負のパワーを持ったレンズのd線における屈折率の平均値を凹AVEとすると、光学系全体における各収差の発生と打ち消しのバランスの関係から凸AVE < 1.557、凹AVE > 1.749であることが望ましい(表22参照)。また、一般にレンズに使われる光学ガラスのd線における屈折率の最小値は1.457(HOYA社製FCD10)、最大値は1.923(HOYA社製E−FDS1)のため、先述の屈折率の条件は、1.457 < 凸AVE < 1.557、1.749 < 凹AVE < 1.923となるのは当然である。
実施例3の諸元を表7に示す。
[表7]
[表8]
表9に実施例3の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している。
[表9]
実施例3の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図15に、解像性能を図16に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約85.7倍である。図15のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図16のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も77%以上と解像性能も良い。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは最もスクリーンに近いレンズで、その直径は80mmとなっており、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーのサイズも短軸方向のもっとも長い長さと長軸方向の最も長い長さで130.8mm×120.8mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例4について説明する。
図17に本発明の実施形態の実施例4、図18に実施例4の第1光学系拡大図を示す。
実施例3と同様に本発明の実施形態に即した光学系となっているが、第1光学系172に第1群が5枚、第2群が2枚、第3群が3枚の計10枚のレンズを用いており、実施例3に比べてレンズが1枚少なくコストダウンした系となっている。ただ、実施例1同様、本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。
また本実施例も前述の条件式(2)を満たしているため正の屈折力を持った反射ミラーを小さくすることが出来ている。
実施例4の諸元を表10に示す。
[表10]
[表11]
表12に実施例4の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している
[表12]
実施例4の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図19に、解像性能を図20に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約85.7倍である。図19のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図20のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も80%以上と解像性能も良い。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは最もスクリーンに近いレンズで、その直径は80mmとなっており、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーのサイズも短軸方向のもっとも長い長さと長軸方向の最も長い長さで129.1mm×119.6mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例5について説明する。
図21に本発明の実施形態の実施例5、図22に実施例5の第1光学系拡大図を示す。
実施例4と同様に本発明の実施形態に即した光学系となっているが、第1光学系に第1群が5枚、第2群が2枚、第3群が2枚の計9枚のレンズを用いており、実施例4に比べてレンズが1枚少なくコストダウンした系となっている。ただ、実施例1同様、本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。
また本実施例も前述の条件式(2)を満たしているため正の屈折力を持った反射ミラーを小さくすることが出来ている。
また、本実施例では第1光学系の最終レンズ、つまり最も共役面Bに近い面に非球面を採用しているが、その位置は第1光学系の中で最も各画角の光線が分離しているので非球面により最も良く各画角の光線をコントロールできる(本発明の第九の実施形態)。そのため解像性能を上げることが出来る。本実施例では、第1光学系のレンズ枚数9枚ながら、実施例4(レンズ枚数10枚)に対しMTF解像性能が同等であることで示されている(図24参照)。このことは以下実施例6,7でも同様である。
実施例5の諸元を表13に示す。
[表13]
[表14]
表15に実施例5の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している。
[表15]
実施例5の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図23に、解像性能を図24に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約85.7倍である。図23のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図24のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も80%以上と解像性能も良い。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは第2群中のレンズで、その直径は80mmとなっており、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーのサイズも短軸方向のもっとも長い長さと長軸方向の最も長い長さで130.1mm×120.2mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例6について説明する。
図25に本発明の実施形態の実施例6、図26に実施例6の第1光学系拡大図を示す。
実施例4と同様に本発明の実施形態に即した光学系となっているが、第1光学系に第1群が5枚、第2群が2枚、第3群が2枚の計9枚のレンズを用いており、実施例4に比べてレンズが1枚少なくコストダウンした系となっている。ただ、実施例1同様、本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。
また本実施例も前述の条件式(2)を満たしているため正の屈折力を持った反射ミラーを小さくすることが出来ている。
また本実施例では、拡大倍率を約77.1倍とし実施例1〜5に比べ小さくしているためMTF解像性能が評価周波数0.5c/mmに対し84%以上と良くなっている(図28参照)。
実施例6の諸元を表16に示す。
[表16]
[表17]
表18に実施例6の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している。
[表18]
実施例6の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図27に、解像性能を図28に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約77.1倍である。図27のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図28のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も84%以上と解像性能も良い。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは第2群中のレンズで、その直径は80mmとなっており、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーのサイズも短軸方向のもっとも長い長さと長軸方向の最も長い長さで130.4mm×119.2mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例7について説明する。
図29に本発明の実施形態の実施例7、図30に実施例7の第1光学系拡大図を示す。
実施例4と同様に本発明の実施形態に即した光学系となっているが、第1光学系に第1群が5枚、第2群が2枚、第3群が2枚の計9枚のレンズを用いており、実施例4に比べてレンズが1枚少なくコストダウンした系となっている。ただ、実施例1同様、本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。
また本実施例も前述の条件式(2)を満たしているため正の屈折力を持った反射ミラーを小さくすることが出来ている。
また本実施例では、拡大倍率を約68.6倍とし実施例1〜5に比べ小さくしているためMTF解像性能が評価周波数0.5c/mmに対し88%以上と良くなっている(図32参照)。
実施例7の諸元を表19に示す。
[表19]
[表20]
表21に実施例7の多項式自由曲面の係数を与える。多項式自由曲面の係数は前述の式(1)に対応している。
[表21]
実施例7の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図31に、解像性能を図32に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.7インチ、縦横比が3:4のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約68.6倍である。図31のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図32のように評価周波数0.5c/mmに対するMTF値も88%以上と解像性能も良い。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.8で、奥行き方向の厚みは300mmとなっている。また第1光学系の最大の径を持ったレンズは第2群中のレンズで、その直径は80mmとなっており、第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーのサイズも短軸方向のもっとも長い長さと長軸方向の最も長い長さで131.2mm×118.4mmとなっている。
次に本発明の別の実施形態の実施例8について説明する。
図35に本発明の実施形態の実施例8、図36に実施例8の第1光学系拡大図を示す。
実施例4と同様に本発明の実施形態に即した光学系となっているが、第2光学系の正の屈折力を持ったミラーは回転対称の非球面である。多項式自由曲面形状のミラーに比べて加工がしやすいため加工誤差が少なく、加工時間も少ないため、コストダウンできるモデルとなっている。(本発明の第五の実施形態)ただ、実施例1同様、本発明の実施形態はそのレンズ枚数によらないし、反射ミラーを配置し光路を折り曲げることによって光学系の空間占有率を小さく出来ることは当然である。
また本実施例も前述の条件式(2)を満たしているため正の屈折力を持った反射ミラーを小さくすることが出来ている。
実施例8の諸元を表23に示す。
[表23]
[表24]
実施例8の最終的な共役面B上での拡大像の歪の状況を図37に、解像性能を図38に示す。
どちらも画像形成素子として対角0.6インチ、縦横比が9:16のパネルを想定した結果となっている。拡大率は約100倍である。図37のようにグリッドの像を略等間隔に形成でき、歪が良好に補正されていることが分かる。また、図38のように評価周波数0.73c/mmに対するMTF値も60%以上と解像性能も良い。なお、画像形成素子からの射出光のFナンバーはF2.45で、奥行き方向の厚みは387mmとなっている。また第2光学系の正の屈折力を持った反射ミラーのサイズも短軸方向のもっとも長い長さと長軸方向の最も長い長さで178.4mm×101.2mmとなっている。
本発明の実施形態の投射光学系を投射装置に採用して画像投射装置とすることも出来る(本発明の第十五の実施形態)。
図11のように、この投射光学系を投射装置に適用する場合は、画像形成素子への照明光源が用いられる。照明光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、LEDなどが用いられる。高効率な照明効率を得られるように通常は照明光学系を搭載する。照明光学系の具体例としては、光源近傍に配置されたリフレクター(光源と一体となっている)や、このリフレクターにより反射されて指向性を持った光束をインテグレータ光学系といわれる照度均一化手段で画像形成素子面上へと均一に照明分布を得られるようにした光学系を搭載してもよいし、カラーホイールを用いて照明光をカラー化してそれと同期して画像形成素子の画像をコントロールすることによりカラー画像を投射できるようにしてもよい。反射型タイプの液晶画像形成素子を用いる場合は、PBSと組み合わせた照明光路と投射光路の偏光分離手段を用いるなどでより効率よい照明が可能となる。また、DMDパネルを搭載する場合は、全反射プリズムを使った光路分離などが採用される。このように、ライトバルブの種類に応じて適切な光学系を採用すればよい。
なお、図12のように画像形成素子を、赤、緑、青等の複数枚用いて、照明光を色分離手段により分離された各色の照明光を当てて、色合成手段により合成された光を投射光学系に入射させることによりスクリーン上にカラー画像を投射することが出来ることは言うまでもない。
その際、画像形成素子から投射光学系の第1光学系第一面までの距離は、照明光路と投射光路の偏光分離手段とカラー化するための色合成手段により、長い距離をとらなければならないが、実施例では空気換算長で68.7mm以上あるため、前述のカラー手段によりカラー画像を投射することが出来る。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
[付記]
付記(1):第一の画像と共役な第二の画像を形成する第一の光学系、及び、該第二の画像からの光を反射する反射光学素子を含むと共に該第二の画像と共役な第三の画像を被投射面に投射する第二の光学系を含む、投射光学系において、前記第一の光学系は、前記第二の光学系のペッツバール和の符号と反対の符号を備えたペッツバール和を有することを特徴とする投射光学系。
なお、"前記第一の光学系は、前記第二の光学系のペッツバール和の符号と反対の符号を備えたペッツバール和を有すること"は、例えば、本発明の第一の実施形態における"前記第1光学系は、前記第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成させていること"、及び、本発明の第二の実施形態における"前記第1光学系は、前記第2光学系で発生するペッツバール和成分を補償するように構成させていること"、を含む。
付記(2):前記反射光学素子は、正の屈折力を備えたミラーを含み、且つ、前記第一の光学系は、光軸を有する共軸光学系であることを特徴とする付記(1)に記載の投射光学系。
付記(3):前記第一の光学系は、レンズのみで構成される、屈折力を備えた少なくとも一つの光学素子を含むことを特徴とする付記(2)に記載の投射光学系。
付記(4):前記第一の光学系は、前記光軸まわりに回転対称な且つ負の屈折力を備えたミラーを含むことを特徴とする付記(2)に記載の投射光学系。
付記(5):前記正の屈折力を備えたミラーのミラー面は、該ミラー面と該光軸との交点から該ミラー面の周辺に向かって減少する曲率を備えた面であることを特徴とする付記(2)、(3)又は(4)に記載の投射光学系。
付記(6):前記正の屈折力を備えたミラーのミラー面は、第一の方向における第一の屈折力と該第一の方向と直交する第二の方向における該第一の屈折力と異なる第二の屈折力を備えたアナモフィックな多項式自由曲面であることを特徴とする付記(2)乃至(5)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(7):前記正の屈折力を備えたミラーのミラー面は、回転対称な非球面であることを特徴とする付記(2)乃至(5)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(8):前記第一の光学系は、非球面を有する光学素子を含むことを特徴とする付記(1)乃至(7)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(9):前記第一の光学系は、絞り、並びに、該絞りと前記第二の画像との間に設けられる、正の屈折力を備えた少なくとも一つの光学素子及び負の屈折力を備えた少なくとも一つの光学素子を含み、該正の屈折力を備えた少なくとも一つの光学素子における最も強い正の屈折力を備えた光学素子は、該絞りと該負の屈折力を備えた少なくとも一つの光学素子における最も強い負の屈折力を備えた光学素子との間に設けられ、前記非球面を有する光学素子は、前記正の屈折力を備えた少なくとも一つの光学素子における最も強い正の屈折力を備えた光学素子と前記第二の画像との間に設けられることを特徴とする付記(8)に記載の投射光学系。
付記(10):前記非球面を有する光学素子は、正の屈折力を備えたレンズを含むことを特徴とする付記(8)又は(9)に記載の投射光学系。
付記(11):前記非球面を有する光学素子は、前記第二の画像に最も近い前記第一の光学系における光学素子を含むことを特徴とする付記(8)乃至(10)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(12):前記第二の画像は、前記光軸に対して傾斜した且つ湾曲した画像であることを特徴とする付記(2)乃至(11)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(13):前記第一の光学系は、前記第一の画像に対して略テレセントリックな光学系であることを特徴とする付記(1)乃至(12)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(14):前記第一の光学系は、第一のレンズ及び第二のレンズ並びに該第一のレンズと該第二のレンズとの間に設けられたミラーを含む付記(1)乃至(13)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(15):前記第一の光学系のペッツバール和は、負であることを特徴とする付記(1)乃至(14)のいずれかに記載の投射光学系。
付記(16):前記第一の光学系のペッツバール和は、−0.0115よりも小さいことを特徴とする付記(15)に記載の投射光学系。
付記(17):画像を被投射面に投射する画像投射装置において、付記(1)乃至(16)のいずれかに記載の投射光学系を含むことを特徴とする画像投射装置。
本発明の実施形態は、投影装置などの画像投射装置の投射光学系に適用することができる。本発明の実施形態は、とくに、フロントプロジェクタにおける投射光学系、リアプロジェクションにおける薄型化を達成させる投射光学系に適用することができる。