JP2013246346A - 水晶波長板 - Google Patents

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Abstract

【課題】
市場には190〜1900nmや350〜2300nmなどの広帯域グラントムソンプリズムが既に知られているが、広帯域1/4波長板は数百nm帯域幅のものしか存在しない。また水晶の透明域は185〜5800nmとこれ等光学素子よりもはるかに広帯域である。本発明は帯域が紫外域から赤外域まで及ぶ336nm〜2086nm(帯域幅1750nm)、636nm〜3736nm(帯域幅3100nm)等の水晶1/4波長板を提供する。
【解決手段】
基準回転角度θ0b(度)または−θ0b(度)と初期値厚さ寸法D0(μm)で作製した6枚水晶波長板、およびこの水晶波長板に定めた範囲内で全厚さ寸法パラメータu、個別厚さ寸法パラメータd(μm)、個別回転角度パラメータΦ(度)を設定して、各水晶板の角度や厚さに変更を加えた水晶波長板を使用する。
【選択図】 図6

Description

本発明は6枚を基本とした水晶板を直列に並べて使用する波長板、特に1/4波長板としての機能を持つ水晶波長板に関するものである。
最初に本発明に使用する一般的用語の定義も含めた基礎的事項について説明する
水晶に直線偏光を入射させた時、入射する角度により屈折率が異なる。ここで“直線偏光”とは光波の電場ベクトルが、(ある方向を向いた)直線上を振動している偏光、という意味である。
3次元で各方向に対する屈折率を表したものは“屈折率楕円体”と呼ばれる。これは
と表すことができる。nα,nβ,nγは“主屈折率”と呼ばれる。この屈折率楕円体において、中心(α,β,γ軸の原点)を通る平面で切ると切り口が真円になる角度がある。この真円に垂直で、かつ原点を通る軸を“光学軸”という。水晶ではこの軸が1つであり、またnα=nβ<nγであり、“光学的正の一軸性結晶”と呼ばれる。水晶では光学軸はγ軸に一致する。nα(nβ)は“常光線屈折率”no、nγは“異常光線屈折率”neと呼ばれ、また位相が進むα軸(β軸)は“進相軸”、γ軸は“遅相軸”とも呼ばれる。
進行方向が光学軸(γ軸)に平行でない直線偏光が水晶に入射すると、光学軸に平行に振動する光“異常光線”と垂直に振動する光“常光線”に分かれ、2つの光には位相差があり、これらが合成され、楕円偏光(円偏光、直線偏光を含む)となって出射される。
出射した偏光が円偏光であれば、“1/4波長板”と呼ばれ、回転した直線偏光であれば“1/2波長板”と呼ばれる。
IT検索から、様々な波長板が市販されていることがわかる
エアギャップタイプの2枚型ゼロオーダー広帯域1/4波長板の特性として図1(a)に示したものが知られている。いずれも横軸を波長(nm)にとり、縦軸に位相差90度を中心とした、位相差−波長特性グラフである。1/4波長板としての特性を示す波長範囲は400〜700nm,600〜850nm,700〜1000nm,1000〜1600nmと様々である。オプティカルコンタクトをしていないため高出力レーザにも対応している。
広帯域1/4波長板の別の例を図1(b)に示す。1/4波長板としての特性を示す波長範囲は380〜830nmである。
広帯域の定義は明確には定められていないと思われる。上記2例における波長範囲は広帯域として紹介されている。また上記2例からもわかるように、特性を示す波長範囲の全てに渡って位相差が90度になることは難しく、誤差範囲(許容範囲)がある。例えば図1(b)では380〜830nmにおいて位相差の範囲は約80度〜95度となっている。
マルチオーダー波長板として以下の例が知られている。
1/4波長板の次数は整数mで定義され、m=0なら“ゼロオーダー”、m>0なら“マルチオーダー”1/4波長板となる。波長500nm(この波長での屈折率差ne−no=0.00925)の1/4波長板として厚さ0.5mmの水晶波長板はm=18の1/4波長板となる。
整数mは以下の式から算出できる。厚い程、次数は大きくなる。
マルチオーダー波長板は価格が安く、高い損傷しきい値を持つ。
一般にマルチオーダー波長板は例えばフェムト秒レーザのような波長可変や広帯域の光源には適さない。コンパクトで高い損傷しきい値を持つゼロオーダー波長板により帯域幅を大きく改善することができる。単一の水晶から作られるゼロオーダー1/2波長板では、厚みが数十μm、例えば45μmになることがある。製造や取り扱いの際には薄すぎる。
この解決法は2枚の厚い水晶板を用意し、厚みの差を45μmとし、一方の板の遅相軸に対して、他方の板の進相軸を合わせる。このゼロオーダー1/2波長板の最終的な位相差はπとなる。2枚の板はエアスペースを持つか、オプティカルコンタクトされる(1/4波長板も同様な解決法がなされる)。
波長板では無いが、グラントムソンプリズムはランダム偏光を1つの直線偏光に変換する。例えば190〜1900nmの広帯域グラントムソンプリズムが既に知られている。この特性を図2に示す。このプリズムは分光分析及び分光計測用の偏光子等に使用されている。また350〜2300nmのプリズム等も知られている。
上記内容は、これ等の例に限らず一般的に知られていることである。
特開2010−146605 特開2010−67310
Terahertz achromatic quarter-wave plate Jean-Baptiste Masson and Guilhem Gallot January 15, 2006 / Vol. 31, No. 2 / OPTICS LETTERS p.265 Handbook of Optical Constants of Solids (vol.1) p.719 EDW D.PALIK
特許文献1および特許文献2では3枚の波長板を直列に積層して、異なる3つの波長λ1、λ2、λ3(λ1<λ2<λ3)の直線偏光に対してλ1、λ2の光を円偏光、λ3の光を直線偏光として出射させる広帯域波長板について掲載されている。
特許文献1の段落番号(0066),(0067)には、405nm波長帯の光に対して楕円率が0.9以上となり、660nm波長帯の光は楕円率が0.8以上となる(段落番号や数式を参照するときは( )ではさんで表示することにする)。一方、785nm波長帯の光に対して楕円率が0.35以下となる、と記されている。
このような波長板は3波長(用)波長板、波長選択性3波長板等と称される。2波長用波長板や3波長用波長板は各社で紹介されている。このような波長板で、さらに多数の波長で使用可能な波長板は、全てが円偏光(および円偏光に近い偏光)として出射させる場合も含め、本発明では“多波長用波長板”と称すことにする。本願における独自の定義語、変数、関数等およびそれらの段落番号を記した表を図51に示す。
厚さと回転角度が異なる6枚の水晶板を直列に並べた、テラヘルツ領域で広帯域な1/4波長板は非特許文献1に記載されている。位相差がπ/2×(1±0.03)の範囲に入る周波数は,0.25〜1.75THzである。1THzは波長に換算すると約300μm(30万nm)に相当する。さらなる内容紹介や分析は以下で適宜説明していく。
水晶の透明域は185nm〜5800nmであるが、従来技術からもわかるように1/4波長板として機能する帯域はその一部であり、その波長帯域幅は、例えば1000〜1600nmのように数百nm程度であり、多波長用波長板としても使用可能な波長数は1ケタ程度と考えられる。一方、市場には190〜1900nmや350〜2300nmなどの広帯域グラントムソンプリズムが既に知られている。1/4波長板はこのような偏光フィルターとペアで用いられることの多い波長板である。さらなる広帯域のプリズムや波長板が開発され、さらなる広帯域の分光分析実験及び分光計測に用いることが期待されるが、これに見合うだけの広帯域の波長板や多波長用波長板は存在しないのが現状である。複数の波長板を用意しなければならない。
そこで本発明の目的は水晶の透明域で使用する6枚を基本とした水晶板を直列に並べて使用する波長板において、水晶板各々の、厚さや回転角度を様々に設定した、特に1/4波長板としての機能を持つ水晶波長板を提供し、従来技術よりもはるかに広帯域な波長板や広い合計波長帯域幅を持つ多波長用波長板を提供することにある。
開発が難しいのは、多数の波長で同時に1/4波長板としての特性を満たす必要があるから、と考えられる。各水晶板の厚さや回転角度を様々に変えて、少数の波長で特性を満たしたとしても、残りの波長では特性を満たさないためである。計算そのものは難しくないが、板枚数、各板厚さ、各板回転角度、波長をパラメータとした場合の数が広帯域になる程、急激に増大し計算時間が多大なものとなってしまう。水晶の全透明域185nm〜5800nmで特性を持つ水晶波長板があれば非常に素晴らしいことであるが、必要な水晶板の枚数や、このような波長板が存在するか否かという基本的問題も、理論的に解決されていないと思われる。
本発明は従来技術の課題との比較というよりも、むしろパイオニア的要素を含んだ発明に近いと考える。上記広い帯域幅や広い合計波長帯域幅だけでなく、例えば適宜選択した厚さや回転角度を持つ6枚を基本とした水晶1/4波長板は全体回転させるだけで、広帯域の1/2波長板に近い機能ももたらす。
前記課題を解決するために本発明の解析法を以下に示す。
αSiO2(水晶)の異常光線屈折率ne,常光線屈折率noおよび減衰係数kの詳細な値は波長ごとに非特許文献2に表として記載されている。水晶の透明域(k=0)は185.1〜5800nmであることがわかる。この波長範囲を“全波長域”と称すことにする。ne,noおよび屈折率差ne−noを波長の関数として表示したグラフをそれぞれ図3(a),図3(b)に示す。この文献において、neが表示されていない波長におけるno,ne値等は省略した。各データ間の間は線形近似した。
本発明に関する測定系(実験系)を図4(a),図4(b)に示す
図4(a)に示すように、観測台は4本の足と水平板からなり、水平板に平行にX軸とY軸、これに垂直にZ軸をとる。これら3軸からなる座標系(X,Y,Z)を“観測座標系”と称すことにする。各座標軸の矢印の方向を各座標軸の正の方向とする。観測者は観測座標系で偏光状態を観測するものとする。
“水晶座標系”を観測座標系と区別して添え字cを付けて“Xc軸”,“Yc軸”, “Zc軸”と称すことにする。水晶板の進相軸はXc軸,Yc軸で、遅相軸はZc軸で ある。
波長板として機能するためには、水晶板面内で方向によって屈折率に異方性が生じるように、例えば水晶板面内にZc軸と他2軸のうちの1つ、Xc軸またはYc軸をとる必要がある。本解析ではXc軸をとることにする(仮にYc軸をとっても解析法、解析結果は同じである)。Yc軸は水晶板の厚さ方向になる。
水晶板は6枚あり、それぞれを“水晶板1”,・・“水晶板6”と称すことにする。図4(a)には水晶板1のみが図示されている。水晶板1の水晶座標系は(0025)の水晶座標系に添え字1を付けて“Xc1軸”,“Yc1軸”,“Zc1軸”と称すことにする。水晶板2,・・水晶板6も同様である。各座標軸の矢印の方向を各座標軸の正の方向とする。
Yci軸(i=1,2・・6)をまとめて称す場合、i=1,2・・6を省略し、“Yci軸”と称すことにする。“Xci軸”,“Zci軸”も同様である。
水晶板1の厚さを“D1”と定義する。水晶板2,・・水晶板6の厚さも同様にそれぞれ、“D2”,・・“D6”と定義する。またDi(i=1,2・・6)をまとめて称す場合、i=1,2・・6を省略し、“Di”と称すことにする。
入射する直線偏光の電場ベクトルの振動方向は観測座標系のZ軸に平行であるとし、直線偏光の進行方向はY軸に平行で正の方向に向かい水晶板1に入射するものとする。観測座標系(X,Y,Z)の原点は水晶板1の入射面内にとる。
各水晶板において、“入射面”に平行な、もう1つの面は“裏面”と称すことにする。
始め、水晶板1のXc1軸,Yc1軸,Zc1軸は原点および方向(各座標軸の矢印の向き)も合わせて、観測座標系のX軸,Y軸,Z軸にそれぞれ完全に一致しているものとする。直線偏光の向きがZ方向であるため、波長板として機能するためにはZ方向以外の成分が水晶板1内に現れねばならない。このため水晶板1を回転させる必要がある。その方法の1つとして、ある角度“θ1”だけY軸(=Yc1軸)回りに回転させればよい。直線偏光の進行方向に対して時計回り(右回り)を回転の正の向きとする。右ねじが締まる回転の向きである。図4(a)に示した矢印の向きが回転の正の向きである。図4(a)では見やすくするため、X軸,Y軸,Z軸はXc1軸,Yc1軸,Zc1軸と重ならないように図示してある。
水晶板2,・・水晶板6の回転角度もθ1と同様の方法で、それぞれ、“θ2”,・・“θ6”と定義する。またθi(i=1,2・・6)をまとめて称す場合、i=1,2・・6を省略し、“θi”と称すことにする。
回転角度は360度(2π)の整数倍は省略し、−180度(−π)から+180度(+π)の範囲で表すものとする。
図4(b)は6枚の水晶板1,・・水晶板6をこの順にY軸(=Yci軸)の正の方向へ密着させて配列した図である。Xci軸,Zci軸は各水晶板の入射面内にあり、各原点はY軸上に並び、Yci軸の正の方向は観測座標系のY軸の正の方向と一致している。図4(b)でも見やすくするため、X軸,Y軸,Z軸はXc1軸,Yc1軸,Zc1軸と重ならないように図示してある。
尚、密着させて配列しなくても、各隙間において、隙間の厚さが均一で、大気のように光学的に等方的物質であれば、その部分では位相差が生じず、解析結果は同じである。
次に、“ジョーンズ行列”について説明する
直線偏光が水晶板1に入射し、6枚の水晶板を通過して、水晶板6の裏面から出射したとき、どのような偏光となるかは、ジョーンズ行列を用いて解析できる。
本発明における角度の単位表示では、角度の数値の後ろに単位表示が無い場合は“rad”である。偏角,位相差および、ジョーンズ行列に現れる回転角度の単位は“rad”とする。これ以外の回転角度の単位は“度”である。
必要に応じてradまたは度の単位は適宜明記することにする。
まず水晶板1のみが存在するときを考える。図4(a)において、Z方向に振動する直線偏光が水晶板1の表面(Y=0)に入射する直前の電場ベクトルを“EI”とおけば
とおく。1行1列成分が電場のZ成分“EIz”、2行1列成分が電場のX成分“EIx”である。iは虚数単位。tは時間、kは波数で、大気中(もしくは真空中)の光波の波長をλとしてk=2π/λ、ωは角振動数で周波数fとω=2πfの関係がある。電場ベクトルの振幅は1とした。
EIが水晶板1に入射直後のZc1軸方向成分“Ezc1”とXc1軸方向成分“Exc1”は2×2座標変換行列を用いて
成分Ezc1,Exc1が厚さD1の水晶板1を通過する間に、それぞれ位相が“δzc1”,“δxc1”変化するものとすれば
水晶板1の裏面から出射する直前の水晶座標系での電場ベクトルは
水晶板1の裏面から出射した直後の観測座標系での電場ベクトルを“Eo”とおけば
この式のままでも解析できるが、以下のように“δ1”を使用した変形式もよく利用される。
とおく。
δzc1,δxc1をそれぞれδ1,Δ1で表すと

これらを(数8)に代入し、exp(iΔ1)は2×2行列の外に出し、共通因子exp(iωt)の中に入れてしまえば、単なる時間の原点の取り方の違いだけとなる。
(数8)の3個の2×2行列の積をジョーンズ行列と称し、“J1(θ1,δ1)”
と表すことにする。(数8),(数11),(数12)から
図4(b)に示したように水晶板1,水晶板2,・・水晶板6をこの順に配列させた場合のジョーンズ行列“J”は、積の順番に注意し
6枚の水晶板を通過した後の水晶板6の裏面から出射した直後の観測座標系での電場ベクトル“Eo”は
と表すことができる。
Jの4個の成分のうち、1行1列成分を“A”、1行2列成分を“B”とおけば
と表すことができる。ここで*は共役複素数を表す。1行1列成分の共役複素数が2行2列成分となっている。また1行2列成分の共役複素数をとり−1をかけたものが2行1列成分になっている。このような各成分間の対称性はJ1のそれと同じである。
次に、Eoが円偏光か否かを判定する方法について説明する
EoのZ成分を“Eoz”、X成分を“Eox”とし、A、Bで表すと
Eoが円偏光であるとはEoxとEozの振幅(>0)が等しく、偏角の差(位相差)がπ/2となることである。IT検索からも以下のように説明されている。偏光の表現として、観察する座標系を決め、その座標系のX座標の振幅とZ座標の振幅の比(振幅比)およびX座標とZ座標の位相差で表す。位相差だけでは円偏光を表すことができない位相差π/2が円偏光となるのは振幅比が1の時のみである。この他の振幅比の時は縦長(または横長)の楕円状態となる。
EoxとEozの位相(phase)の差(difference)をπで割った値を“PHD”、また振幅(amplitude)の比(ratio)を“AMR”と置く。
以下の2式を同時に満たせば円偏光となる。EozとEoxの時間因子は共通のため消える。

PHDはrad/πで無単位である。2個の複素数の偏角の差は2個の複素数の割算の偏角に等しい。偏角の差において2π(360度)の整数倍は省略し、−1≦PHD≦1の範囲とした。PHD=0.5の他、PHD=−0.5でもAMR=1であれば円偏光となるが、本解析では主として上式のみとした。PHD=−0.5の場合の例は(実施例10),(実施例14)に示した。
(PHD,AMR)の値を種々設定して描いた偏光状態の一例を図5に示す。(PHD,AMR)=(0.5,1)は円偏光を表す。他のグラフはPHD、AMRのいずれか、または両方の値が、円偏光の値から20%増加または減少した場合のグラフである。
実際に偏光のグラフを描くには(数17)の各成分の実数成分のみを選んで描くことになる。例えば円偏光のグラフは、sを媒介変数として
をプロットすればよい。位相差,振幅比が両方とも20%減少したグラフは
をプロットすればよい。sは(数17)の−ωtに相当する。
PHDが0.5でもAMRが1でない場合、長軸や短軸は、X,Z軸方向にあるが縦長または横長の楕円偏光となる。逆にAMRが1でもPHDが0.5でない場合は回転した楕円偏光になる。
次に、本解析におけるパラメータ設定法について説明する
この設定法は説明が詳細なため、重要な特性グラフや表であっても、説明の流れから離れる場合は、一部を除き、これ等グラフ,表は(実施例)で述べることにした。
(数17)において、A,Bはθi,Diおよび光波の波長λの、合計13個の関数である。ne,noは、波長依存性はあるが定数であり、A,Bはこれも含んでいる。水晶の透明域である全波長域(185.1〜5800nm)に対して12個の変数θi,Diをパラメータにとり上式を検討した。
本解析の計算は複素数の四則演算や2×2行列の積算であり、ベーシック,フォートラン、C言語等や市販の計算ソフトを使用してプログラムを組めばよく、計算は難しいものではない。しかしパラメータが13個もあるため、仮に各パラメーラを10通りとしても10の13乗(=10兆個)のデータ解析となる。このため通常の市販パソコンを用いた計算では、θi,Diを広範囲にそして細かくふることができない。2〜3枚波長板で試行錯誤を繰り返した後、非特許文献1にある値を参考にできないかどうか検討した。
非特許文献1における解析に関する箇所については、位相差のみを求める式として、tan((位相差)/2)の2乗を(数16)のAとBの関数で表している。振幅比は考慮していないように思われる。水晶の1THzでの吸収係数αのZc方向とXc(Yc)方向の差は0.02cm−1で、小さいとし、1THzにおけるno=2.108,ne=2.156(ne−no=0.048)としか記されていないが、解析には屈折率の周波数依存性を考慮したと記されている。解析値と実験値との照合も行っている。
位相差を求めるtanの式は、(正否含めて)難解のため本解析では、(0056)で説明した手法に基づき、(数18),(数19)を使用した。(数18),(数19)を使用し、no=2.108,ne=2.156(一定)を使用して0.2〜2.0THzの範囲でPHD,AMRを求め、PHD,AMRの誤差が共に±3%以内に入っている周波数範囲が約0.25〜1.57THzであることを確認した。非特許文献1に示されている範囲0.25〜1.75THzとは高周波側で相違があるが、屈折率の周波数依存性の有無や使用した式の相違等によるものと考えられる。
非特許文献1の波長範囲1テラヘルツ(30万nm)と本発明の全波長域185.1〜5800nmは52〜1620倍違い、また屈折率の波長依存性依存性も異なるが、さらなる試行錯誤の結果、以下(数22)〜(数68)のようにθi,Di等を設定して、検討を進めた。
(0029)および(0033)で定義した6個の水晶板の回転角度θiと厚さDiをまとめて1行6列で表し、それぞれ“θ”,“D”とし、以下のように定義する。θの各成分の単位は“度”、Dの各成分の単位は“μm”で表示する。
(度)
(μm)
θ,Dを与えればPHD,AMRの値が決まり、これ等の偏光特性が波長λごとに決まることになる。θ,Dが変数v,w,・・の関数であることを特に明記するときはθ(v,w,・・),D(v,w,・・)等と表記することにする。
θ,Dをまとめて1行12列の行列で表わす場合、“θD”として以下のように定義する。
以下のθ,Dの値を特に“初期値回転角度θ0”,“初期値厚さ寸法D0”と称すことにする。
(度)
(μm)
また
とおく。
θ0,D0は整数値とした。θ0,D0は、解析の初期値ともいうべきもので、初期値を整数に設定した理由はパソコン処理能力の都合上、全体的最終的に細かな値までふって解析できないこと、これ等初期値θ0,D0から、さらに各6成分の回転角度や厚さを変えた設定値でも解析していること、および初期値としてのわかりやすさ等が主な理由である。
様々な試行錯誤を繰り返した後、θ0においては非特許文献1のθ値(有効数字2〜4桁,0.1度まで)に近い値とし、D0においてはその比が非特許文献1のD値(有効数字3桁,10μmまで)に近い値とした。
θ0,D0の値、並びに図3(a),図3(b)の屈折率の波長依存性の値を(数18)および(数19)に代入し、PHDとAMRを全波長域(185.1〜5800nm)の関数として求めた場合のグラフを図6に示す。点線がPHDを表し、0〜1の範囲で示してある。太実線がAMRで0〜2の範囲で示してある。グラフにはPHD=0.5かつAMR=1となる横線のほかにPHD=0.5、AMR=1からの誤差が±10%の横線も実線で示した。特に断らない限り、3個の横線は0,誤差±10%を意味するものとする。グラフから336nm〜2086nm(帯域幅1750nm)の、可視領域を完全に含む、非常に広範囲に渡ってPHD、AMRの誤差が約±10%(正確には±11.3%)以内に入っていることがわかる。さらにPHDは336nm以下の短波長側を除き、0.5近辺で長波長側まで安定している。
本解析における全波長域(185.1〜5800nm)表示の場合のPHDおよびAMRのグラフのデータ点の波長は不連続である。詳細には、データ点の波長は整数値とし186nmから50nm間隔で5786nmまでの113個とした。λkの間隔を50nmとしたのは、計算の処理能力に主に関係する。k番目のデータ点の波長を“λk”(k=1,2・・・113)とおけば、λ1=186nm,λ113=5786nmであり
図6のような特性グラフになるかどうかは、(数18)および(数19)を計算した結果であって、非特許文献1とは波長範囲も屈折率依存性も全く異なるため、予測できるものではない。例えば仮に、全波長域でneの値のみ1.2倍としてPHD,AMRを計算すると図7のようなグラフとなってしまう。
尚、(以後の)PHDを波長の関数として求めたグラフにおいて、PHDは1を超え1+α(α>0)の場合α−1、例えば+184度なら−176度となるように調節されている。また−1より小さくなり−1−β(β>0)の場合1−β、例えば−184度なら+176度なるように調節されている。PHDは常に−1〜1の範囲に入るように調節されている。このため、みかけ上PHD=0を横切るように見える、傾きが急な線がいくつか表れることがあるが、これは本質的なものではない
図6において波長λが500,1500,2500,3500,4500,5500nmにおける偏光状態を図8に示す。図6からPHDは0.5の近辺に存在しており、AMRはλ=500,1500nmでは1を超えているが、2500nm以上では1より小さい。このため図8において、偏光の長軸、短軸の方向はほぼZ軸またはX軸の方向にある(PHD〜0.5のため)が、長波長になるにつれて、X軸方向に長い横長の偏光から、Z軸方向に長い縦長の偏光へ変化しているのがわかる。
非特許文献1に関する解析は(実施例1)〜(実施例2)に示した。
θ0,D0以外の様々なθ,DでPHD,AMDの全波長域(185.1〜5800nm)での特性を解析するにあたり、θ,Dの値は連続的であり、全ての値についての解析はできない。そこで3個のパラメータを導入する。厚さ寸法に関するパラメータ“u”(無次元),“d”(μm),および角度に関するパラメータ“φ”(度)である。
uを“全厚さ寸法パラメータ”、dを“個別厚さ寸法パラメータ”、φを“個別回転角度パラメータ”と称すことにする。
D0の全ての値を共通の値uで割った“D(u)”を以下の式で定義する。
(μm)
D(1)はD0に等しい。
本解析ではuとして0.05,0.1,0.5,1,5,10の5個の値を用いて解析を進めた。uの設定値とd,φの設定値との関係は(0101)〜(0103)で説明する。
(θ0,D(u))(u=0.05,0.1,0.5,5,10)を用いたPHDとAMRの全波長域(185.1〜5800nm)の関数として求めた5種類のグラフは(実施形態3)〜(実施形態7)に示した。
θ0の各成分に角度φ(度)を加えるか、もしくは引いた角度を“θ(φ,n)”と定義する。“n”は1から4096(=64の2乗)までのいずれかの整数値である。
nを“配列番号”と称すことにする。
例えば、θ(φ,2825)は以下のように定義できる。
(度)
D(u)の各成分に厚さd(μm)を加えるか、もしくは引いた厚さを“D(u,d,n)”と定義する。
例えばD(u,d,2825)は以下のように定義できる。
この規則に従った6枚水晶板の各回転角度および各厚さの指定法は、(数24)の表記を使えば、1行12列の式“θD(u,φ,d,n)”と表される。
(数30),(数31)はまとめてθD(u,φ,d,2825)のように表わすことができる。例えば、この式の1行3列目の成分は120−φであり、1行10列目の成分は(28/u)+dである。
配列番号nの意味について説明する。θ0の6個の各成分に角度φを加えるか、もしくは引いた角度の場合の数は各成分について2通りで合計2の6乗=64通りある。厚さD(u)の各成分に厚さdを加えるか、もしくは引いた厚さの種類も64通りである。回転角度と厚さは独立に設定できるので、回転角度と厚さを合わせた場合の数は64の2乗=4096通り存在する。
4096通りの組み合わせを1番目から4096番目まで規則に従って並べる。n=2825は、この規則に従った回転角度と厚さを合わせた組み合わせ、合計4096通りの組み合わせのうちの1つであり、2825番目に相当する。
上記規則について説明する。図9(a)は0行0列から始まる4096行×12列の表の前半部分の一部である。0行目にはφ1〜φ6,d1〜d6が表示されている。また0列目には全部で1から4096までの配列番号が記入されているが、15までの配列番号を表示した。1行1列から4096行12列、合計4096×12=49152個の各マスの中には”1”または”−1”のどちらか1つが表示されているが、15行までを表示した。図9(b)には2825番目近辺を、図9(c)には表の後半部分を順に表示した。
1行から4096行の各行において、各行の1列から12列には、”1”または”−1”のどちらか1つが表示されているおり、この12個の列を“準2進表示”と称すことにする。例えば配列番号2825の準2進表示は図9(b)から、(−1,1,−1,−1,1,1,1,1,−1,1,1,1)である。
この0行0列から始まる4096行×12列の表を“準2進表示表”と称すことにする。
準2進表示表において
d6の列には1番目から4096番目まで、順に1、−1、1、−1のように、1と−1が交互に表示されている。
d5の列には1番目から4096番目まで、順に1、1、−1、−1のように、1と−1が2個(=2の1乗個)ずつ交互に表示されている。
d4の列には1番目から4096番目まで、順に1、1、1、1、−1、−1、−1、−1のように、1と−1が2の2乗個(=4個)ずつ交互に表示されている。
このようにして、
d1の列には1番目から4096番目まで、順に1と−1が2の5乗個(=32個)ずつ交互に表示されている。
φ6の列には1番目から4096番目まで、順に1と−1が2の6乗個(=64個)ずつ交互に表示されている。
φ5の列には1番目から4096番目まで、順に1と−1が2の7乗個(=128個)ずつ交互に表示されている。
このようにして、
φ1の列には1番目から4096番目まで、順に1と−1が2の11乗個(=2048個)ずつ交互に表示されている。
φ1の列の”1”はθ0の1列目の成分(=33度)に角度φを加えることを意味し、”−1”は角度φを引くことを意味する。φ2の列の”1”はθ0の2列目の成分(=12度)に角度φを加えることを意味し、”−1”は角度φを引くことを意味する。φ3〜φ6の列の”1”、”−1”も同様な意味である。
d1の列の”1”はD(u)の1列目の成分(=30/u)に長さdを加えることを意味し、”−1”は長さdを引くことを意味する。d2の列の”1”はD(u)の2列目の成分(=60/u)に長さdを加えることを意味し、”−1”は長さdを引くことを意味する。d3〜d6の列の”1”、”−1”も同様な意味である。
このようにして準2進表示表の1番目から4096番目の各配列番号nの準2進表示と、u,φ,dが与えられたθD(u,φ,d,n)との間に1対1の対応がついた。
準2進表示から配列番号を求める、または配列番号から準2進表示を求めるには、2進法の表記法を利用すればよい。配列番号2825および、その準2進表示を例にとると、”−1”を”1”、”1”を”0”と置き換えて、順序はそのままで、(−1,1,−1,−1,1,1,1,1,−1,1,1,1)の”,”をはずすし、101100001000という2進法表示と考え、これを10進表示に置き換えて2824。これに1を足して、(−1,1,−1,−1,1,1,1,1,−1,1,1,1)は2825番目ということになる。逆に2825番目から(−1,1,−1,−1,1,1,1,1,−1,1,1,1)を求めるには、逆の手順を実行すればよい。
uを定めて、それに応じて、φ、dを定めれば、4096通りのθDが定まる。この4096通りを配列番号nで区別する。定められたu,φ,Dに対して、配列番号n(=1,2・・4096)に応じた“PHD(u,φ,d,n,λk)”,“AMR(u,φ,d,n,λk)”の全波長域(λ=185.1〜5800nm)における特性グラフが求まる。
全厚さ寸法パラメータu,個別回転角度パラメータφ,個別厚さ寸法パラメータd,全波長域内の波長λは連続的に変えることができ、この全てに対してPHD,AMRを解析、表示することはできない。λに対しては(数28)で定めた113個の不連続値λkとした。またu,φ,dについては代表値である所定の値のみで解析することになる。u,φ,dの代表値においては、それぞれ1つの値ではなく、また最大値と最小値だけでもなく、幾つかの中間値も定めて解析した。これにより、最大値,最小値,中間値以外の値で連続的にu,φ,dを変えた場合の特性の傾向が予測できる。
本解析に主として使用したu,φ,dの値を図10に示す。
uとしてはu=1の他、u>1なる値としてu=5,10を、またu<1なる値として、u=0.05,0.1,0.5を、合計6個のuを選択した。
φとしては最大値を20度、最小値を0.5度とし,最大値と最小値の中間の値に対しては、φ=10度,5度,1度の合計5個のφを選択した。
dの値は6枚水晶板の厚さの全体を決める全厚さ寸法パラメータuに応じて定めた。uが大きければ各水晶板は薄く、uが小さければ各水晶板は厚くなる。
dの最小値としてはu=1または5であれば0.5μm、u=10であれば0.1μm、u=0.5または0.1または0.05であれば1μmとした。
dの最大値としては、u=1または5または10であればD(u)の6個の成分の最小値28/uから0.1μmを引いた値とし、u=0.5または0.1または0.05であればD(u)の6個の成分の最小値28/uから1μmを引いた値とした。
最大値と最小値の中間のdの値に対しては、u≦1なるuにおいては、最大値から約1/2、さらに約1/2・・なる値を主として選択した。
各uに対して選択したdの合計数は、u=0.05では7個で、それ以外のuでは6個である。
このようにして定めたu,φ,dおよび、(φ,dの加減の組み合わせ数である)4096通りのそれぞれの配列番号nに対して、PHD(u,φ,d,n,λ),AMR(u,φ,d,n,λ)の全波長域における特性グラフが求まる。その数は配列番号nの数だけ存在し、合計4096個である。
次に、u,φ,dを用いた特性評価法の1つである“歩留まり”について説明する
定めたu,φ,dに対して、どのような広帯域1/4波長板または多波長用1/4波長板になるのかどうかを、以下のように評価した。ここで配列番号nはφ,dを評価するための指針(1つの手段)であって、以下で説明する“歩留まり”に関係する。
(数28)における、ある波長λkにおいて円偏光(PHD=0.5かつAMR=1)からの誤差が±p%以内にある偏光のことを“λkで誤差±p%以内の偏光”と称し、下記の2式を同時に満たす偏光と定義する。
u,φ,d,nで定められた6枚水晶板のPHD(u,φ,d,n,λk),AMR(u,φ,d,n,λk)の値を113個のλkに対して求める。そして1つ以上のλkに対して、上式を同時に満たせば判定1とし、そうでなければ判定0とする。4096個の各nについて、この判定を行う。4096個の判定値を全て足し、4096で割り、%に変換したものを(u,φ,d)における“誤差±p%の歩留まり”と称し、歩留まりと言えば、これを指すものとする。
一例としてu=1,φ=20度とし、d(μm)として図10の5個の値として解析した誤差±p%の歩留まりの表を図11(a)に示す。pとしては±p=±5,±10,・・±50(%)の10通りを選択し解析した。
図11(a)は0行0列から始まる10行6列の表である。表の上部中央にはuの値が示してある。0行0列のマスには±φ=±20度と記入してある。φの値は正であるが、u,φ,dを定めた4096通りのθD(u,φ,d,n)において、θの6個の各要素はφの加算と減算をしており、加減は半々出現している。±はこれを意味している。強調表示以上のものではない。0行1列から0行6列までは±dの値が表示されている。±の意味は±φと同様である。1行0列から10行0列までは10個の誤差±p(%)が表示されている。
この表はu=1、φ=20度とし、6通りのd(μm)と10通りのp(%)について(u,φ,d)における誤差±p%の歩留まりを、小数点2位以下を切り捨て、小数点1位まで表示したものである。定義からわかるように4090通りの場合の数には、θ0の各成分全てに同一角度20(度)を加える場合の数(64通り)やθ0の各成分全てに同一角度20(度)を引いた場合の数(64通り)も含まれている。これらの場合は6枚水晶板が全体として正の方向または負の方向に回転していることを意味する。
歩留まり表の見方について説明する。例えば図11(a)の4行6列には歩留まり56.9(%)と表示されている。この意味は次の通りである。(u,±φ,±d)=(1,±20度,±27.9μm)と設定値を定める。すると4096通りの配列番号nの各々に対して、PHD(u,φ,d,n,λ),AMR(u,φ,d,n,λ)の全波長域(185.1〜5800nm)における特性グラフを求めることができる。ただしλは(数28)で定めたλkである。
4096通りの各々のnにおけるPHD,AMRのグラフが、同時に誤差±20%以内、即ち
かつ
となるような波長
(数28)
が、k=1,2・・113の中に1個以上存在するかどうかを判定する。
(0108)でも説明したように、1つ以上のλkに対して、上式を同時に満たせば判 定1とし、そうでなければ判定0とする。4096個の各nについて、この判定を行う。4096個の判定値を全て足すと2332となる。これを4096で割り、%に変換すると56.9%となる。(u,±φ,±d)=(1,±20度,±27.9μm)における誤差±20%の歩留まりは56.9%ということになる。
この例からもわかるように、4096個の配列番号nは(u,φ,d)なる設定値を評価するために導入した不連続の変数、と考えることができる。
図11(a)および、誤差±p%ごとに、この表の歩留まりをdの関数としてグラフにした図11(b)から以下の傾向が見て取れる。
u=1,±φ=±20度では、誤差±p%(p=5,10,・・50)のそれぞれのpに対して、歩留まりはdが大きい(|±d|≧5μm)時はdの大きさにあまり影響しない。dが小さい(d<5)時はdと共に減少する傾向がある。誤差±p=±5%での歩留まりは11%程度であるが、|±p|が大きくなるにつれて当然増加していき、誤差±p=±20%では歩留まりは50%を超え、誤差±p=±50%では歩留まりはほぼ90%以上である。
誤差±p%が小さい程、円偏光に近くなる。ある波長帯域のPHDやAMRが、どの程度の誤差±p%以内に入っていればよいのかどうかは、用途によって異なると考えられる。例えば特許文献1の(0047)には波長λ1の光に対する楕円率κ1および波長λ2の光に対する楕円率κ2が0.65以上、波長λ3の光に対する楕円率κ3が0.4以下の条件を満たすものであればよい、というように記されている。また(0025)にはκ1,κ2は0.65以上であれば好ましく、0.75以上であればより好ましく、0.8以上であればさらに好ましいと記されている。0.65以下でも使用は可能ある、と言える。楕円率は楕円偏光の長軸と短軸の比と考えられ、本発明におけるPHDが0.5に近ければAMRに相当する。
次に、u,φ,dを用いた、もう1つの特性評価法の1つである“誤差内波長数”および“合計波長帯域”について説明する
(u,φ,d)およびpを定めると、それに応じた歩留まりがわかる。歩留まりは(数32),(数33)の2式を同時に満たすλkが1個以上存在する場合の配列番号nの総数を全体の場合の数4096で割った値である。例えば、仮に2式を同時に満たすλkが1個以上存在する場合の配列番号nが123、1255、3432だとすれば総数は3である。歩留まりはこれを4096で割ればよい。配列番号nの値そのものは歩留まりとは関係ない。
ではこのようなそれぞれの配列番号nにおいて、λkが1個以上存在するのであれば、正確には何個存在するであろうか。この数は(u,φ,d)を定めると誤差±p%と配列番号nで決まる。
この数を誤差±p%における配列番号nの“誤差内波長数”と称し、“Nλ”(個)と表すことにする。
図11(a)を例にとって説明する。(u,±φ,±d,±p)=(1,±20度,±27.9μm,±20%)における歩留まりは56.9%で、その数は2332個である。Nλの多い順に並べた表の上位10個(No.1〜No.10)を図12に示す。列が長いため、表は4つに分割表示してある。一番上の表において表の2列目にNλの多い順に並べたnを示し、3列目にNλを示した。4列目以降に誤差内波長λk(nm)の具体的な値を短波長側から長波長側へ向かって順に表示した。
一番上の表以外の残り3つの表ではNo.だけが記されnとNλの値は省略してある。
Nλが最大になるのはn=2825の時で、その数は42個である。表の最上行に1,2,・・42と示してある。誤差内波長λkの最小値は486nmである。また誤差内波長λkは2386nmからは50nm間隔で途切れることなく4386nmまで連続41個続いている。
Nλが2番目に最大になるのは2個あり、その内の1つはn=1101の時で、その数は33個である。誤差内波長λkの最小値は2686nmである。2686nmから50nm間隔で途切れることなく4286nmまで連続33個続いている。
n=2825の準2進表示は(0093)で説明しており、(−1,1,−1,−1,1,1,1,1,−1,1,1,1)である。θ,Dの具体値は以下の通りである。
(度)
(μm)
このθ,DにおけるPHD,AMRの全波長域での特性グラフを図13に示す。グラフの3つの横実線は±p=0,±20%を表す。
図13をθ0,D0のグラフである図6と比較してみる。前者±p=±20%、後者±p=±10%の横線は考慮しなくても、PHD,AMRの理想値(それぞれ0.5,1)からの誤差の小さい範囲が長波長側へシフトしていることがわかる。
図13において、PHD,AMRがp=±10%以内に入っている波長範囲は2586nm〜3736nm(帯域幅1150nm)である。
このような傾向は(実施例5),(実施例6)でも示すようにuを小さくする、すなわち各水晶板を厚くすることによっても得られる。uを小さくすることはマルチオーダー波長板になるため、高い厚さ寸法精度の必要性が出てくる。uを小さくすることなしに長波長側へのシフトが可能になることは1つのメリットである。
個別回転角度パラメータφ,個別厚さ寸法パラメータdを考慮した結果である。
図11(a)の6×10=60個全ての歩留まりにおいて、図12を全て表示させることは冗長になってしまう。このため、図12におけるNo.1の配列番号nと最大である誤差内波長数Nλの値を抜粋し、図11(a)における他歩留まりにおいても同様に抜粋し、表にまとめものを図14(a)に示す。各欄において、( )の外が最大の誤差内波長数Nλで、( )の中がそれに対応する配列番号nである。最大の誤差内波長数Nλの値が同じになる配列番号nが1個以上存在する場合もあるが、適宜選択し表示した。
図14(a)における各最大誤差内波長数Nλに50nmを掛けた値は、誤差内にある各波長の帯域幅の和に完全には等しくはないが、その誤差内にある“合計波長帯域”を評価する指針となる。これを“Tλ”と称すことにする。Tλはu,φ,d,およびpの関数である。図14(a)において、Nλに50nmを掛けてTλとし、Tλを誤差±p%ごとに、±d(μm)の関数として表示したグラフを図14(b)に示す。
Tλの最大値はλkの個数113個×50nm=5650nmである。図14(b)の上部にある横実線はこれを示している。
Tλの値は帯域幅の広い帯域(広帯域波長板)が少数あるのか、帯域幅は狭くてもこれが多数(多波長用波長板)存在しているのか等の区別できないが、u,±φ,±dの設定値の良否を判断する1つの目安とすることができる。
図14(b)において|±p|(%)を大きく設定すれば、合計波長帯域Tλは1000nm、2000nmと増加し、4000nmを超える場合も存在することがわかる。Tλの最大値は5650nmであるから、1000nmで17%,2000nmで35%,3000nmでは53%、4000nmでは71%の合計波長帯域Tλが誤差±p%の範囲内に入っていることになる。
図11(a)および図14(a)の表は、それぞれ、全厚さ寸法パラメータu=1,個別回転角度パラメータφ=20度とした場合の個別厚さ寸法パラメータd(μm)に応じた、歩留まり表および最大の誤差内波長数Nλ(配列番号n)の表であった。
図10に示した全てのu,φ,dにおける歩留まり表および最大の誤差内波長数Nλ(配列番号n)の表およびその説明は(実施例8),(実施例9)で示した。
次に、本発明に深く関係する“負の初期値回転角度”について説明する
これまで初期値回転角度θ0として(数25)を使用して本発明を説明した。θ0の6個の要素は全て正である。この6個の要素に全てマイナスを付けた角度を“−θ0”とおく。これを“負の初期値回転角度”と称すことにする。
−θ0を使用した解析でもθ0と同等の結果が得られる。これは(実施例10),(実施例15)に示した。
初期値回転角度がθ0または−θ0とした6枚水晶板を正または負の方向に、まとめてある角度、全体回転しても、回転前と同等の特性が得られる場合がある。またある角度全体回転することにより1/4波長板が広帯域で1/2波長板(PHD〜1またはPHD〜−1)になる場合がある。詳細は(実施例10)〜(実施例14)に示した。
次に、基準回転角度について説明する
6枚の全ての水晶板の回転角度から水晶板1の回転角度を引いた角度を“基準回転角度θb”と称し、以下の式で定義する。単位は度である。
(度)
θ0の基準回転角度を特に“θ0b”とおけば(数25)から
(度)
また、−θ0の基準回転角度を“−θ0b”とおけば
(度)
これまでθとしては(0032),(0033)で定義したように観測座標系のZ軸からの回転角度とした。しかし6枚水晶板を作製する工程においては、どれか1つの水晶板、例えば水晶板1を基準にして、水晶板2,・・・水晶板6をそれぞれ回転させて貼り合わせて作製する。
各水晶板において、Zci軸の方向がわかるような目印(オリフラ等)を各水晶板に設けておく。そして基準回転角度を基にして水晶板1に水晶板2を、水晶板2に水晶板3というようにして水晶板6までを順次貼り合わせていけばよい。測定系に6枚水晶板をセットするときは、Zc1軸を観測座標系のZ軸からθ1回転させてセットすればよい。
基準回転角度を定める理由は、(0139)以外に(0135)が深く関係する。
また個別回転角度パラメータφを使用した水晶板を作製する場合、φの範囲は−20度から+20度の任意の値である。θ0の6個の各要素に、設計に応じて、この範囲の値のふぁいを加える。6個の各要素に加えるφの値はそれぞれ異なっていてもよいし、いくつかの要素で同一であってもよい。設計に応じて加えるφの値は正の場合もあれば負の場合もある。こうしてθ0に変更を加えた角度を(数22)のθとする。基準回転角度は(数39)θbで与えられる。θbに基づいて6枚の水晶板を順次貼り合わせていけばよい。
基準回転角度−θ0bの6枚水晶板から作製する場合も全く同様である。−θ0の6個の各要素に、設計に応じて、−20度から+20度の任意の値を加える。こうして−θ0に変更を加えた角度を(数22)のθとする。基準回転角度は(数39)θbで与えられる。
次に、本発明のこれまでの主解析を補助する各種解析について説明する
詳細は(実施例16)〜(実施例19)で順次説明した。
図11(a)の歩留まり表の60個の各値、および図14(a)の最大の誤差内波長数Nλの表の60個の各値は、±φ=±20度とし、dは例えばd=±7μmといように、絶対値は等しく符号が異なる2種類の値とし4096通りの場合の数についての結果である。この場合の数の中には、自明ではあるが6枚水晶板全てのφが20度の場合(64通り)や6枚水晶板全てのdが−7μmの場合(64通り)、1枚のみφが20度の場合(384通り)や1枚のみdが−7μm(384通り)の場合等々も含んでいる。
2種類のφ、2種類のdの選択は無限通り存在するが、(実施例16)ではu=1とし2種類のφとして、20度と0度、−20度と0度、10度と0度、−10度と0度の場合を例にとり説明した。さらにdも変えた場合も一例を示した。φが20度と0度で、±dのうち+dはそのままで−dの代わりに0μmとした場合やφが−10度と0度で、±dのうち+dはそのままで−dの代わりに0μmとした場合である。
図10において、各uによって定まるdの最大値より、さらに大きいdを使用した場合の極限は、6枚水晶板のうち最小厚さの水晶板4の厚さがゼロとなる場合であり、一番薄い水晶板の厚さが0μmの6枚水晶板となり、この場合5枚水晶板となる。この解析の一例を(実施例17)に示した。
図10において、u=1の場合におけるdの最大値は27.9μmである。この場合、一番薄い水晶板4の厚さは(28/1)−27.9=0.1μmとなる。非常に薄い水晶板の場合は、この水晶板を(0009)のように厚みの差を0.1μmとした2枚の厚い水晶板に置き換えることが1つの手法である。これについては(実施例18)に示した。
本解析では図4からもわかるように、Yci軸の正の方向は観測座標系のY軸の正の方向と一致するとした。Yci軸がY軸と一致しない場合の解析の一例を(実施例19)で説明した。
本発明の効果は実施形態とも深く関係しているため、実施形態の内容も含めて以下に説明することにする。説明にあたり図,数式の番号や段落番号も適宜示した。
本発明は水晶の透明波長域185.1〜5800nm(全波長域)において使用する、6枚を基本とした水晶板を直列に並べて作製した、特に1/4波長板としての機能を持つ水晶波長板に関するものである。
基準回転角度θ0b(度)(数40)に基づいて、水晶板1から順に水晶板6までを並べて貼り合わせていく。次に6枚水晶板全体を観測座標系のZ軸の回りに回転させて、初期値回転角度θ0(度)(水晶板)となるようにセットする(図4b)。各水晶板の厚さは初期値厚さ寸法D0(μm)(数26)とする。
Z方向に電場成分が振動している直線偏光を水晶板1の面に入射させる。水晶板6の裏面から出射した偏光の位相差PHDおよび振幅比AMRが共に、336nm〜2086nmの非常に広範囲に渡って誤差が約±10%(正確には±11.3%)以内に入る、1/4波長板としての機能をもつ偏光が得られる(図6)。可視領域は完全に含み、紫外域から赤外域に及ぶ。帯域幅は1750nmであり、市販されている可視域を含む1/4波長板の帯域幅の3〜4倍程度に達する。
さらに、全厚さ寸法パラメータu、個別厚さ寸法パラメータd(μm)、個別回転角度パラメータφ(度)を導入する。uは0.05から10までの任意の実数値、φは−20度から+20度までのまでの任意の実数値とする。dの最小値は0μmとする。dの最大値はuで決まり、uを定めた時の、6枚の水晶板のうちで最も薄い水晶板4の厚さ寸法(μm)とする。dの最大値を選択した場合は、極限として5枚水晶板となる。
一例としてuのみ変えた場合、6枚水晶板の厚さはD0の1/uとなる。これをD(u)とおく(数29)。回転角度はθ0のままとする。D(5)またはD(10)とした厚さの6枚水晶板は全波長域において位相差PHDは約0.5となる(図17,図18)。D(0.5)とした厚さの6枚水晶板では636nm〜3736nm(帯域幅3100nm)の非常に広範囲に渡って、位相差PHDおよび振幅比AMR共に誤差が約±10%以内に入る、1/4波長板としての機能をもつ偏光が得られる(図19)。D(0.1)とした厚さの6枚水晶板は、2686nmから5786nm(帯域幅3100nm)の長波長側の非常に広範囲に渡って、位相差PHDおよび振幅比AMR共に誤差が約±10%以内に入る、1/4波長板としての機能をもつ偏光が得られる(図20)。D(0.05)とした厚さの6枚水晶板は広帯域な領域は減るものの多波長用波長板(0016)としての機能をもつ1/4波長板が得られる(図21)。
u以外にd、φを変えると6枚水晶板のそれぞれの厚さはD(u)の6個のそれぞれの成分に−dから+d(μm)の範囲の値が独立に加算された値となり、また基準回転角度はθ0bの6個の成分のそれぞれに−φから+φ(度)の範囲の値が独立に加算された値となる。観測座標系へのセット方法は(0140)を参照とする。
一例としてu=1,φ=20度、d=27.9μmとして、θ0,D0の6枚水晶板の各板の厚さと回転角度を配列番号2825の準2進表示(0093)に基づいて作製した6枚水晶板では、φ、dを考慮しない場合よりも位相差PHD,振幅比AMRが良好な特性が長波長側へシフトする(図13)。位相差PHDおよび振幅比AMR共に、誤差が±10%以内に入る波長範囲は2586nm〜3736nm(帯域幅1150nm)である。
このような傾向はuを小さくする、すなわち各水晶板を厚くすることによっても得られる。uを小さくすることはマルチオーダー波長板になるため、高い厚さ寸法精度の必要性が出てくる。uを小さくすることなしに長波長側へのシフトが可能になることは1つのメリットである。個別回転角度パラメータφ,個別厚さ寸法パラメータdを考慮した結果である。
全厚さ寸法パラメータu、個別厚さ寸法パラメータd(μm)、個別回転角度パラメータφ(度)の値を評価するため、歩留まり(%)(0105)および最大の誤差内波長数Nλ(個)、合計波長帯域Tλ(nm)なる概念を導入した(0118)。Tλ=50(nm)×Nλの関係がある。
(0150)で定めた範囲内の任意のu,d,φに対して歩留まり,最大の誤差内波長数Nλ(個)、合計波長帯域Tλ(nm)を表示することはできない。そこで定めた範囲内でuとして5個選択し、φとして5個選択し、uに応じて定まるdとして6個または7個選択した(図10)。誤差±p%として、5〜50(%)のうちの10通りのpを選択した。
解析した総数はuの選択数×φの選択数×dの選択数×pの選択数となり、1860個の歩留まり、1860個の最大の誤差内波長数Nλ(個)を計算した。Nλの表には配列番号nも表示し、常に位相差PHDおよび振幅比AMRの全波長域における特性グラフが再現できるようにした。歩留まりやTλのグラフも適宜示した。(図11,図12,図14,図22〜図35,図41〜図48)
歩留まりの共通の傾向として、|±φ|=20度では歩留まりは|±d|の大きさに敏感ではないが、|±φ|が小さくなるにつれて、歩留まりは|±d|の大きさに敏感なり、|±φ|,|±d|が小さい程歩留まりは高くなる傾向がある。当然ながら既に歩留まりが高い場合は、その傾向の顕著さは低い。
例えば、u=1,±p=±20%を見ると、±φ=±20度では歩留まりは50%台であるが、±dにもよるが、|±φ|が小さくなるにつれて|±d|の大きさに依存してきて、±φ=±10度では70%台の歩留まりも現れ、±φ=±5度では90%台の歩留まりも現れ、±φ=±1度では100%の歩留まりも現れ、±φ=±0.5度では100%の歩留まりも増えてくる。
最大の誤差内波長数Nλ(個)、合計波長帯域Tλ(nm)においては、例えば、u=1の場合、|±φ|を変えると各誤差±p%ごとにTλの大きさは差も見られるが、±dも考慮した全体的な傾向として、±p=±15%ならTλは1000nm程度から2000nmを超えるまでになり、±p=25%ならば1700nmから3000nm位まで増加し、±p=35%ならば2300nmから3700nm位まで増加し、±p=45%ならば3300nmから4300nmまで増加する。
uが大きいと振幅比AMRは波長に対して単調減少する傾向にあり、Nλ値およびTλ値は歩留まりよりもuに敏感となる。u=5,10の場合よりもu=1の方が広帯域である。またNλ値およびTλ値は歩留まり程、|±d|の大きさに敏感ではない。また歩留まりの傾向とは逆に|±d|が大きい程、Nλ値は増加する傾向にある。
uが小さいと位相差PHD,振幅比AMRは変動が大きくなる。AMRの変動は大きくても、AMRが1近辺に存在する割合が、uが大きい場合よりも大きいため、u=5,10の場合よりもu=0.1,0.05の場合の方がNλ値およびTλ値は大きい。
着目したいのは定めた全厚さ寸法パラメータu、個別厚さ寸法パラメータd(μm)、個別回転角度パラメータφ(度)を用いて、大きな歩留まりおよび、大きな最大の誤差内波長数Nλ(個)、大きな合計波長帯域Tλ(nm)が得られるということである。
こうした考察から定めた範囲内の任意のu,d,φに対しても、定めたu,d,φと同程度の大きさの歩留まりや最大の誤差内波長数Nλ(個)、合計波長帯域Tλ(nm)が得られると考えられる。定めたu,d,φを用いた歩留まりおよび、最大の誤差内波長数Nλ(個)、合計波長帯域Tλ(nm)においても当然相違は見られ、定性的ではあるが、これらの相違と比較して、(例えば歩留まりや最大のNλ値やTλの値が全体として30%とか10%位に減じてしまうなどのような)劇的な変化は、非常に少なく(もしくは無く)、似たような傾向が現れると考えられる。
基準回転角度として−θ0b(度)(数41)を用いた場合、θ0b(度)を用いた場合と比較して、位相差PHDがPHD→PHD−1となる。θ0b(度)を用いた場合PHD=0.5なら、−θ0b(度)を用いた場合PHD=−0.5となる。負の位相差となるだけであって、(0149)〜(0159)と同等の効果が得られる。
6枚の水晶板の観測座標系から見た回転角度を6行1列のベクトルでθと定義した
(数22)。また6枚水晶板の厚さも6行1列のベクトルでDと定義した(数23)。
θ,Dで作製した6枚水晶板の位相差PHDおよび振幅比AMRの全波長域における特性グラフは
θi→θi+180度
θi→θi−180度
θi→−θi+90度
θi→−θi−90度
の変換を行っても同一の特性が得られる。また
θi→−θi
θi→−θi+180度
θi→−θi−180度
θi→θi+90度
θi→θi−90度
の変換に対しては、AMRの全波長依存性は全く同じだが、位相差PHDがPHD→PHD−1となる。PHD=0.5は左回り(反時計周り)円偏光でPHD=−0.5は右回り(時計周り)偏光である。円偏光の回転の方向を上記角度の変換に対して変えることが可能であることを示している。
(0161)は一般的な特性と考えられるが、広帯域に位相差PHD〜0.5またはPHD〜−0.5の場合、角度変換により1/2波長板や1/1波長板に近い特性を持つものがある。これは一般的なことではなく、条件がうまくそろった場合に言えることである。一例を以下に示す。
θ0,D0で作製した広帯域1/4波長板(図6)は336nm〜2086nmの広範囲に渡って1/4波長板としての特性を示した。
θi→θi−45度およびθi→θi+135度の変換では、PHDが1に近い波長域が386〜1836nm領域に現れる。
θi→θi+45度およびθi→θi−135度の変換では、PHDが−1に近い波長域が386〜1836nmに現れる。
θi→−θi+45度,θi→−θi−45度,θi→−θi+135度,θi→−θi−135度,では386〜1836nmの可視域を含んだ広帯域において、PHDが0に近い波長域が現れる。
(0161),(0162)からθ0,D0で作製した6枚水晶板は正方向(時計回りに)に6枚水晶板を全体回転していくと、0度(1/4波長板:左回り円偏光)→45度(1/2波長板)→90度(1/4波長板:右回り円偏光)→135度(1/2波長板)→180度(1/4波長板:左回り円偏光)→225度(1/2波長板)→270度(1/4波長板:右回り円偏光)→315度(1/2波長板)、のように波長板としての機能が変化する。
−θ0,D0で作製した6枚水晶板は正方向(時計回りに)に6枚水晶板を全体回転していくと、0度(1/4波長板:右回り円偏光)→45度(1/1波長板)→90度(1/4波長板:左回り円偏光)→135度(1/1波長板)→180度(1/4波長板:右回り円偏光)→225度(1/1波長板)→270度(1/4波長板:左回り円偏光)→315度(1/1波長板)、のように波長板としての機能が変化する。
PHDが0近辺に存在するという意味で1/1波長板と呼んだが、AMRが長波長になるにつれて単調減少している。これは振動の向きがX軸方向に近い振動からZ軸方向に近い振動へ変化していることを意味している。1/2波長板は直線偏光の向きを変える働きをするもの、という広い意味での見地からは、1/1波長板も386〜1836nmの波長域では1/2波長板に近い効果をもたらす。
つまりθiで作製した6枚水晶板は全体回転をしていくと1/4波長板と1/2波長板が交互に現れる。また左回り円偏光と右回り円偏光が交互に現れる。
−θiで作製した6枚水晶板は全体回転をしていくと1/4波長板と1/1波長板(1/2波長板に近い効果)が交互に現れる。また右回り円偏光と左回り円偏光が交互に現れる。
これ等の例に限らず、全体回転前、広帯域にPHD〜0.5またはPHD〜−0.5が現れる6枚水晶板であれば、全体回転することにより波長板としての機能が(0163),(0164)のように変化する波長板が多数存在すると言える。
(a)1/4波長板の位相差特性例1 (b)1/4波長板の位相差特性例2 グラントムソンプリズム透過率波長特性例 (a)異常光線屈折率ne,常光線屈折率noの波長特性 (b)屈折率差ne−noの波長特性 (a)実験系(測定系)(水晶板1枚) (b)実験系(測定系)(水晶板6枚) PHDとAMRを種々変えた場合の偏光状態の例7種類 θ0,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ neのみ1.2倍としたPHDとAMRの全波長域特性グラフ θ0,D0使用、6種類の波長における偏光状態の例 (a)準2進表示表(一部抜粋)前半 (b)準2進表示表(一部抜粋)中間 (c)準2進表示表(一部抜粋)後半 本解析の詳細解析に使用したu,φ(度),d(μm)の値の一覧表 (a)u=1,±φ=±20度における誤差±p%,d(μm)ごとの 歩留まり表 (b)図11(a)の表を誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係として表 したグラフ 誤差内波長数Nλの多い順に並べた、配列番号nとNλ,帯域内波長の 表の一例 u=1,±φ=±20度,d=±27.9μmとしn=2825の場 におけるPHDとAMRの全波長域特性グラフ (a)u=1,±φ=±20度における誤差±p%,dごとの最大誤差内 波長数Nλ(配列番号n)の表 (b)図14(a)の表を誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλとdの関係 として表したグラフ θp,Dp使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ θq,Dq使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ (a)θ0,D(5)使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ (b)図17(a)の短波長側を拡大したグラフ (a)θ0,D(10)使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ (b)図18(a)の短波長側を拡大したグラフ θ0,D(0.5)使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ θ0,D(0.1)使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ θ0,D(0.05)使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ u=1の場合の5種の±φ(度)ごとの歩留まり表 (a)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,±φ=±5度) (b)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,±φ=±0.5度) u=5の場合の5種の±φ(度)ごとの歩留まり表 u=10の場合の5種の±φ(度)ごとの歩留まり表 u=0.5の場合の5種の±φ(度)ごとの歩留まり表 u=0.1の場合の5種の±φ(度)ごとの歩留まり表 u=0.05の場合の5種の±φ(度)ごとの歩留まり表 u=1の場合の5種の±φ(度)ごとの最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表 (a)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ(u=1,±φ=±5度) (b)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ(u=1,±φ=±0.5度) u=5の場合の5種の±φ(度)ごとの最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表 u=10の場合の5種の±φ(度)ごとの最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表 u=0.5の場合の5種の±φ(度)ごとの最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表 u=0.1の場合の5種の±φ(度)ごとの最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表 u=0.05の場合の5種の±φ(度)ごとの最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表 −θ0,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ θ0−45度,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ θ0+45度,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ −θ0−45度,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ θiおよび−θiの種々の全体回転とPHD,AMR特性との関係表 (a)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,φ=20度と0度) (b)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,φ=−20度と0度) (a)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,φ=10度と0度) (b)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,φ=−10度と0度) (a)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,φ=20度と0度,d=+dμmと0μm) (b)誤差±p%ごとの歩留まりとdの関係を表したグラフ (u=1,φ=−10度と0度,d=+dμmと0μm) (a)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ(u=1,φ=20度と0度) (b)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ(u=1,φ=−20度と0度) (a)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ(u=1,φ=10度と0度) (b)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ(u=1,φ=−10度と0度) (a)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ (u=1,φ=20度と0度,d=+dμmと0μm) (b)誤差±p%ごとの合計波長帯域Tλ(nm)とd(μm) の関係を表したグラフ (u=1,φ=−10度と0度,d=+dμmと0μm) (a)28/uをdとした場合の歩留まり表 (u6種類,±φ=±20度) (b)28/uから、uに応じて0.1μmもしくは1μm引いた値を dとした場合の歩留まり表(u6種類,±φ=±20度) (a)図47(a)の各歩留まりに対する最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表(u6種類,±φ=±20度) (b)図47(b)の各歩留まりに対する最大誤差内波長数Nλ (配列番号n)の表(u6種類,±φ=±20度) 屈折率楕円体のYZ断面のグラフ (a)θ0,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ (Yci軸が10度Z軸の正方向に傾いた場合) (b)θ0,D0使用、PHDとAMRの全波長域特性グラフ (Yci軸の傾き無し:図6と同一) 本願における独自の定義語および段落番号を記した表
以下本発明の水晶波長板の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施形態に制限されるものではない。
θ0、D0(=D(1))の各要素に異なった値を加減したりして作成した以下のθ、Dをそれぞれθp(度),Dp(μm)とおく。
θpは非特許文献1にある値となり、Dpは非特許文献1にある値を1/112倍し有効数字3ケタ(4ケタ以下切り捨て)で表示した値となる。
このPHD,AMRの全波長域の特性グラフを図15に示す。図6と比較してみると、PHDについては差は小さいが、AMRにおいては誤差±10%以内の領域が長波長側で減じるものの、誤差範囲はより狭まっている。
(実施例1)は図10にある設定値と設定値の間の値を用いてθi,Diを定めて解析した場合という見方もできる。u=1で、|φ|が0〜5度の範囲、|d|が0〜0.5μmの範囲の値の場合である。
非特許文献1におけるθ、Dをそれぞれθq(度),Dq(μm)とおく。
(度)
(μm)
このPHD,AMRの全波長域の特性グラフを図16に示す。
PHD,AMR共に見かけ上変動が大きいが、(0075)で説明したように本質的なものではなく、PHD,AMR共に誤差±10%以内に入る波長は2536,4886,4936,4986,5036nmの5点のみである。
(θ0,D(5))を使用してPHDとAMRを波長の関数として求めたグラフを図17(a),図17(b)に示す。図17(b)は図17(a)の短波長側を拡大したグラフである。
図6の(θ0,D(1))のグラフと比較してみると、誤差±10%範囲がAMRでは486nmまで縮小しているが、PHDの短波長側186〜336nmの急な変動は消える。PHD,AMRが共に誤差約±10%(正確には11.3%)以下の波長帯域は186〜486nmである。
図17(b)のグラフのように全波長範囲でなく、波長範囲を所定の範囲に限定したグラフでのデータ点の表示は186nmから5nm間隔で5796nm(186+5×(1123−1))までの一部とする。
(θ0,D(10))を使用してPHDとAMRを波長の関数として求めたグラフを図18(a)に示す。図18(b)は図18(a)の短波長側を拡大したグラフである。
(θ0,D(1))のグラフ図6と比較してみると、誤差±10%範囲がAMRでは276nmまで縮小しているが、PHDの短波長側336nm以下の急な変動は消える。
(θ0,D(5))のグラフと比較してみると、(θ0,D(5))のグラフは191〜206nmでAMRが10%を超えているが、(θ0,D(10))のグラフは10%以内におさまっている。
PHD,AMRが共に誤差約±10%以下の波長帯域は186〜276nmである。
uが1より小さい場合、(θ0,D(0.5))を使用してPHDとAMRを波長の関数として求めたグラフを図19に示す。
(θ0,D(1))のグラフ図6と比較してみると、636nm以下でPHD,AMRの変動は大きくなるが、それ以外ではPHDの変動は小さい。AMRの誤差±10%(正確には11.3%)以下の範囲が2086nmから3736nmまで長波長側に拡大している。帯域は636nm〜3736nm(帯域幅3100nm)である。
(θ0,D(0.1))を使用してPHDとAMRを波長の関数として求めたグラフを図20に示す。
(θ0,D(1))のグラフ図6と比較してみると、2686nm以下ではPHD,AMRの変動は大きいが、2686nm以上ではではPHDの変動も少なく、0.5近辺に存在している。AMRでは、誤差約±10%(正確には11.3%)以下の範囲が解析の最長波長である5786nmまで達している。帯域は2686nm〜5786nm(帯域幅3100nm)である。
(θ0,D(0.05))を使用してPHDとAMRを波長の関数として求めたグラフを図21に示す。
(θ0,D(1))のグラフ図6と比較してみると、4836nm以下でPHD,AMRの変動は大きいが、4836nm以上ではPHD,AMR共に変動は小さい。AMRでは誤差±10%範囲が最長波長である5800nmまで達している。(θ0,D (0.1))のグラフ図20と比較してみると、(θ0,D(0.1))のグラフは4436nm〜5136nmの範囲でAMRが誤差+10%を超えるが、(θ0,D(0.05))のグラフ図21は(4836nm以上で)AMRが誤差±10%以下におさまっている。D(0.05)とした厚さの6枚水晶板は広帯域な領域は減るものの多波長用波長板(0016)としての機能をもつ。
(θ0,D(u))(u=0.05,0.1,0.5,1,5,10)のPHDとAMRのグラフの全体的傾向を見てみると、PHDとAMRが共に誤差約±10%(正確には11.3%)以下である帯域は、uの値が減少するにつれて長波長側へシフトする。また帯域幅はu=0.5〜1の範囲か、その前後で最大になる傾向があると考えられる。uの値が5〜10では全波長域においてPHDは0.5の近辺に存在している。uの値が0.5から次第に小さくなっていくと、短波長側からPHD,AMR共に変動が大きくなっていく。最良形態は可視領域を完全に含む(θ0,D(1))のグラフ図6とした。
図11(a)ではu=1,±φ=±20度とし、6通りの±d(μm)に対して、誤差±p%(±p=±5,±10,・・±50)の歩留まりを示した。これは図10の設定値の一部の歩留まり表である。
設定値の組み合わせはuが6通り、φが5通り、u,φの各々に対してdが6通りまたは7通りある。合計186通りである。186通りの各々に対して10通りのp、即ち合計1860通りに対して歩留まりを計算した。
図22はu=1とした歩留まりの表である。太い実線で囲まれた0行0列から始まる6行10列の表が5個記されている。5個の各表の0行0列には±φの値が記されている。図10に示した5通りのφである。左上の表が±φ=±20度の場合で、図11(a)と同一である。6個の各表において6通りのd(μm)は全て同一で図10に示した値である。
図23(a)はu=1,±φ=±5度とした図11(b)(u=1,±φ=±20度)に対応するグラフである。また図23(b)はu=1,±φ=±0.5度とした図11(b)に対応するグラフである。
図22および図22の5個の表のうち代表として3個をグラフ化した図11(b),図23(a),図23(b)から
|±φ|が小さい程、歩留まりは|±d|の大きさに敏感なる。
|±φ|が変化しても、|±d|が大きいと歩留まりの変化は小さいが、|±d|が小さいと歩留まりの変化は大きくなる。この変化は誤差±p%が小さい程、顕著である。
|±d|が小さく|±p|が大きい程、歩留まりは大きい。5個の各表では左下程歩留まりは大きく、右上程歩留まりは小さい傾向が見られる。
|±φ|が小さい程、歩留まりは全体的に上昇する傾向が見られる。歩留まり100%に達成する割合も増えてくる。例えば、u=1,±p=±20%の行を見ると、±φ=±20度では歩留まりは50%台であるが、±dにもよるが、±φ=±10度では70%台の歩留まりも現れ、±φ=±5度では90%台の歩留まりも現れ、±φ=±1度では100%の歩留まりも現れ、±φ=±0.5度では100%の歩留まりも増えてくる。
図24はu=5とした歩留まりの表である。φはu=1の場合と同じく図10に示した5通りのφである。6通りのd(μm)は図10に示した値である。
同様にして、図25、図26、図27、図28はそれぞれu=10,0.5,0.1,0.05とした場合の歩留まりの表である。
図24〜図28のそれぞれの表に共通の傾向として、|±φ|=20度では歩留まりは|±d|の大きさに敏感ではないが、|±φ|が小さくなるにつれて、歩留まりは|±d|の大きさに敏感なり、|±φ|,|±d|が小さい程歩留まりは高くなる傾向がある。当然ながら既に歩留まりが高い場合は、その傾向の顕著さは低い。
図24〜図28のそれぞれの表において、(0183)と同様の傾向を示すわけではないし、同様の傾向を示すことが重要なわけではない。
u=0.1の表、図27において,±φ=±1度または±0.5度,±d=35μm,±p=±5%の場合の歩留まりのように値が小さく、傾向からそれる場合もある。
(0117)でも述べたように、誤差±p%が小さい程、円偏光に近くなるが、誤差±p%の許容範囲は用途により様々である。例えば±35%以内であれば好ましく、±25%以内であればより好ましく、±20%以内であればさらに好ましいというように許容範囲は正確に決まっているわけではない。
着目したいところは、本解析において全厚さ寸法パラメータu,個別回転角度パラメータφ,個別厚さ寸法パラメータdを定義し、図10で定めた値を使用すれば図22、図24〜図28で示した大きさの歩留まりが得られる、ということである。
図10で設定したu,φ,d以外の値でも同程度の歩留まりが得られる一例は(実施形態16)に示した。
図14(a)では図11(a)の各歩留まりにおいて、(0120)で定義した誤差内波長数Nλの最大値とそれに対応する配列番号nを記した。この表はu=1,±φ=±20度の場合のみであった。u=1の場合である図22の各歩留まりに対応する配列番号nと最大の誤差内波長数Nλを記した表をそれぞれ図29に記す。( )内が配列番号である。
図14(b)は図14(a)における各最大誤差内波長数Nλに50nmを掛けた値である合計波長帯域Tλを誤差±p%ごとにグラフ化したものでu=1,±φ=±20度の場合であった。u=1,±φ=±5度,±0.5度の場合における、図14(b)に相当するグラフを、それぞれ図30(a),図30(b)に示す。
Tλの最大値はλkの個数113×50nm=5650nmであり、グラフ上部に横実線で示してある。
図29および図29の5個の表のうち代表として3個をグラフ化した図14(b),図30(a),図30(b)から
|±φ|が変化しても|±d|が5μm以上ではTλの変化は比較的小さいが|±d|が5μmよりも小さいとTλの変化は大きくなる。この変化は誤差±p%の大小とは関係が無い。
|±p|(%)を大きく設定すれば、当然ながら合計波長帯域Tλは増加していく。
|±φ|を変えると各誤差±p%ごとにTλの大きさは差も見られるが、±dも考慮した全体的な傾向として、±p=±15%ならTλは〜1000nmから2000nmを超えるまでになり、±p=25%ならば1700nmから3000nm位まで増加し、±p=35%ならば2300nmから3700nm位まで増加し、±p=45%ならば3300nmから4300nmまで増加する。
着目したいのは各±φや±dごとのTλの比較値や相対値ではなく、歩留まりの評価と同様に、誤差±p%におけるTλの大きさの程度である。
図24,図25,図26,図27,図28はそれぞれu=5,10,0.5,0.1,0.05とした場合の歩留まりの表であった。これに対応する最大の誤差内波長数Nλとそれに対応する配列番号nを記した表を、それぞれ図31,図32,図33,図34,図35に記す。各Nλ値に50nmを掛ければTλ値の表となる。
配列番号nが示されているため、PHDおよびAMRの全波長域における特性グラフは常に容易に再現できる。
図6のθ0,D(1)のグラフ、および図19のθ0,D(0.5)のグラフに比べ、図17のθ0,D(5)のグラフ、および図18のθ0,D(10)のグラフは、PHDは全波長域において0.5近辺で安定しているが、AMRのグラフは短波長側から長波長側へ向って傾きが急で単調減少している。このためu=5のNλ値(図31)およびu=10のNλ値(図32)はu=1のNλ値(図29)およびu=0.5のNλ値(図33)に比べ低くなっている。しかし歩留まり表の比較ではこれ程低下しているわけではない。このことは広帯域領域が減じていることを示している。
また歩留まりの表程、|±d|の大きさに敏感ではなく、歩留まりの傾向とは逆に|±d|が大きい程、Nλ値は増加する傾向にある。
図20のθ0,D(0.1)のグラフ、および図21のθ0,D(0.05)のグラフは、図6のθ0,D(1)のグラフ、および図19のθ0,D(0.5)のグラフに比べPHDおよびAMRの変動が大きい。AMRの変動は大きくても、AMRが1近辺に存在する割合が、図17のθ0,D(5)のグラフ、および図18のθ0,D(10)のグラフよりも大きいため、u=0.1のNλ値(図34)およびu=0.05のNλ値(図35)はu=5のNλ値(図31)およびu=10のNλ値(図32)に比べ大きい。u=0.1のNλ値(図34)およびu=0.05のNλ値(図35)は±φ=±20度の場合は|±d|が大きい程、Nλ値は増加する傾向にあるが、それ以外の角度では|±d|が小さい程、Nλ値は増加する傾向にある。
θの6個の各要素に同じ値を加える等してもPHD、AMRの全波長依存性が全く同じになる場合がある。(数39)で定義した基準回転角度を定める理由の一つでもある。
(数14),(数16)において
のようにJを2つの積に分けて考える。θiの単位はradである。
とおく。
(数47)の各要素も(0051)で説明したJと同じ対称性をもつ。
(数48)も同様である。
(数47)のJの1行1列成分A321において
とおけば、実数部分Re(A321)と虚数部分Im(A321)は

同様に
とおけば
となる。A654、B654はこれ等の式において3→6,2→5,1→4と
置き換えればよい。
これ等の式を用いて
から


を計算してPHD,AMRの具体的な式を求めることができる。
Re(A321),Im(A321),Re(B321),Im(B321)の回転角度θ1、θ2、θ3に関係する関数は以下の性質を持つことがわかる。
sinまたはcosの形である。
全てが2倍されている。
θ1、θ2、θ3は同等に表れており、δ1、δ2、δ3とは分離されている。
θ1、θ2、θ3の和や差のみで、これ等の積や商は表れていない。
θ1、θ2、θ3には波長依存性はない。
こうした性質、特に全てが2倍されている、という性質から、u=1、θ0、D0(=D(1))を用いたPHDおよびAMRのグラフ図6を例にとれば、i=1,2・・6として、以下の変換に対してPHD、AMRの全波長依存性のグラフは変わらず、図6と同一のグラフとなる。θiの単位は度である。
θi→θi+180度
θi→θi−180度
θi→−θi+90度
θi→−θi−90度
例えば、θi→−θi−90度の意味は以下の通りある。
θiを(数25)のθ0とする。−θiは(数38)の−θ0となる。この6個の全ての要素に90度を引いた角度が−θi−90度である。この角度を使用したPHD、AMRの全波長依存性のグラフは図6と同一となる。
θの6個の各要素に同じ値を加える等しても、AMRの全波長依存性は全く同じだが、PHDのみ正負逆転する場合が存在する。
θi→−θiの変換では図36に示すようにAMRの全波長依存性は変わらない。一方、PHDの全波長依存性はPHD→PHD−1へと変わる。図36は−θ0,D0を使用してPHDとAMRの全波長域特性を表したグラフである。図36においてPHDの目盛は−1〜0である。以下の4つの変換でも図36と同一のグラフとなる。
θi→−θi+180度
θi→−θi−180度
θi→θi+90度
θi→θi−90度
PHD=0.5は左回り(反時計周り)円偏光でPHD=−0.5は右回り(時計周り)偏光である。円偏光の回転の方向を上記角度の変換に対して変えることが可能であることを示している。
θi→θi−45度およびθi→θi+135度の変換では、AMRは長波長になるにつれて単調減少しているが、PHDが1に近い波長域が386〜1836nm領域に現れる。これを図37に示す。図37はθ0−45度,D0を使用してPHDとAMRの全波長域特性を表したグラフである。
また、θi→θi+45度およびθi→θi−135度の変換では、AMRは長波長になるにつれて単調減少し、それは(実施例11)と同形であるが、PHDが−1に近い波長域が386〜1836nmに現れる。これを図38に示す。図38はθ0+45度,D0を使用してPHDとAMRの全波長域特性を表したグラフである。
1/2波長板は直線偏光の向きを変える働きをするもの、という広い意味での見地からは、(実施例11),(実施例12)における386〜1836nmの波長域では1/2波長板に近い効果をもたらす。(数20),(数21)の類推からわかるように、PHDが1または−1では直線偏光の振動の向きはXZ面内のXZ<0の領域(第2象限,第4象限)にあり、AMRが長波長になるにつれて単調減少しているのは、振動の向きがX軸方向に近い振動からZ軸方向に近い振動へ変化していることを意味している。
θi→−θi+45度,θi→−θi−45度,θi→−θi+135度,θi→−θi−135度,では386〜1836nmの可視域を含んだ広帯域において、PHDが0に近い波長域が現れる。これを図39に示す。図39は−θ0−45度,D0を使用してPHDとAMRの全波長域特性を表したグラフである。PHDが0では直線偏光の振動の向きはXZ面内のXZ>0の領域(第1象限,第3象限)にあり、AMRが長波長になるにつれて単調減少しているのは、振動の向きがX軸方向に近い振動からZ軸方向に近い振動へ変化していることを意味している。1/2波長板は直線偏光の向きを変える働きをするもの、という広い意味での見地からは、1/1波長板も386〜1836nmの波長域では1/2波長板に近い効果をもたらす。
(0206),(0207)の変換では、sin,cosの正負の符号を変えたり、±90度,±180度を加算する等の変換である。正負の符号を変えたり、±180度を加算しても、cosがsinになる、sinがcosになることはない。また(0205)の、全てが2倍されている、という性質により、±90度を加算しても同様なことが成り立つ。そのため(0206),(0207)の特性が現れると言うことができる。
一方、(実施例11)〜(実施例13)の変換ではcosとsinが逆転し(数50),(数51),(数53),(数54)の形が変わってしまう。図37,図38,図39において、全波長域の内、この部分のみにPHDがそれぞれ1、−1、0に近い領域が現れ、またAMRのグラフは変換前と全く異なるのも、これが要因と考えられ、(数46)〜(数57)から予測できるものではない。
(実施例10)〜(実施例13)の結果をまとめた表を図40に示す。
この表の1列目にはθiまたは−θiに定数値を加えた、または減じた12個(合計12行)のパターンが記されている。この内、θiに数値を加減したパターンが7個(合計7行)で、また−θiに数値を加減したパターンが5個(合計5行)ある。
この表の2列目には、PHDの特性が示されている。1列目の12個のパターンにおいて、PHD特性が共通のものは、まとめて1つとして表示した。
この表の3列目には、AMRの特性が示されている。1列目の12個のパターンにおいてAMR特性が共通のものは、まとめて1つとして表示した。1列目の6個のパターンのAMRをまとめてAMR(θi)としてあるのは、この6個の変換のどれをとっても、AMRの全波長域特性グラフがθiを用いたグラフと同じになるという意味である。AMR(θi−45度)についても同様の意味である。
θiに数値を加減した7個の行のみをピックアップして見ていくと以下のことがわかる。θiから正方向(時計回りに)に6枚水晶板を全体回転していくと
0度(1/4波長板:左回り円偏光)→45度(1/2波長板)→90度(1/4波長板:右回り円偏光)→135度(1/2波長板)→180度(1/4波長板:左回り円偏光)→225度(1/2波長板)→270度(1/4波長板:右回り円偏光)→315度(1/2波長板)
のように、波長板としての機能が変化する。
また−θiに数値を加減した5個の行のみをピックアップして見ていくと以下のことがわかる。−θiから正方向(時計回りに)に6枚水晶板を全体回転していくと
0度(1/4波長板:右回り円偏光)→45度(1/1波長板)→90度(1/4波長板:左回り円偏光)→135度(1/1波長板)→180度(1/4波長板:右回り円偏光)→225度(1/1波長板)→270度(1/4波長板:左回り円偏光)→315度(1/1波長板)
のように、波長板としての機能が変化する。
つまりθiで作製した6枚水晶板は全体回転をしていくと1/4波長板と1/2波長板が交互に現れる。また左回り円偏光と右回り円偏光が交互に現れる。
−θiで作製した6枚水晶板は全体回転をしていくと1/4波長板と1/1波長板(1/2波長板に近い効果)が交互に現れる。また右回り円偏光と左回り円偏光が交互に現れる。
全体回転前、広帯域にPHD〜0.5またはPHD〜−0.5が現れる6枚水晶板は
θ0、D0(=D(1))で作製した6枚水晶板や−θ0、D0(=D(1))で作製した6枚水晶板以外にも多数存在することは、(実施例3)〜(実施例9)の考察等からわかる。(実施例10)〜(実施例13)の例に限らず、全体回転前、広帯域にPHD〜0.5またはPHD〜−0.5が現れる6枚水晶板であれば、全体回転することにより波長板としての機能が(0214),(0215)のように変化する波長板であるものは他多数存在すると言える。
(実施例8)および(実施例9)に関連したことであるが、初期値回転角度θ0の場合と同じように、負の初期値回転角度−θ0を使用して、図10で設定した、u,φ,dを用いて図22,図24〜図28に相当する歩留まり表および図29,図31〜図35に相当する最大の誤差内波長数Nλの表を作成しても、これ等の表と同一の値が得られる。ただし各Nλ値に対応する配列番号nは異なる。−θ0を用いた解析ではPHD=マイナス0.5を中心とした解析となる点が、θ0を用いた解析と異なる。
図11,図14,図22〜図35の歩留まり表,歩留まりグラフ,最大の誤差内波長数Nλの表,合計波長帯域Tλのグラフ等では、個別回転角度パラメータφとして、±φを選択して解析した。定性的には、振れ幅の大きい±φでの解析値で良好な結果となれば、これよりも振れ幅が小さい解析では値はさらに良好な結果になると考えたからである。
2種類のφの選択は、正負2種類に限らず無限通り存在する。正負2種類のφ以外の選択例として20度と0度、−20度と0度、10度と0度、−10度と0度の場合を例にとり解析した。さらに正負2種類の個別厚さ寸法パラメータdμmも変えた場合の一例として、φが20度と0度で、±dのうち+dはそのままで−dの代わりに0μmとした場合と、φが−10度と0度で、±dのうち+dはそのままで−dの代わりに0μmとした場合を解析した。これらの解析において全厚さ寸法パラメータu=1とした。
この結果を図41〜図46に示す。
図41(a)はφ=20度、0度とした歩留まりグラフ
図41(b)はφ=−20度、0度とした歩留まりグラフ
図42(a)はφ=10度、0度とした歩留まりグラフ
図42(b)はφ=−10度、0度とした歩留まりグラフ
図43(a)はφ=20度、0度でd=+dμm,0μmとした歩留まりグラフ
図43(b)はφ=−10度、0度でd=+dμm,0μmとした歩留まりグラフ
である。また
図44(a)はφ=20度、0度としたTλのグラフ
図44(b)はφ=−20度、0度としたTλのグラフ
図45(a)はφ=10度、0度としたTλのグラフ
図45(b)はφ=−10度、0度としたTλのグラフ
図46(a)はφ=20度、0度でd=+dμm,0μmとしたTλのグラフ
図46(b)はφ=−10度、0度でd=+dμm,0μmとしたTλのグラフ
である。
この結果を±φの歩留まりグラフである図11(b)、図23(a)、図23(b)
および±φの合計波長帯域Tλのグラフである図14(b)、図30(a)、図30(b)のグラフと比較してみる。これら6個のグラフでも当然相違は見られ、定性的ではあるが、これらの相違と比較して、(例えば歩留まりやTλの値が全体として30%とか10%位に減じてしまうなど)劇的に図41〜図46が変化しているわけではないことがわかる。
(0103)で説明したようにdの最大値としては、u=1または5または10であればD(u)の6個の成分の最小値28/uから0.1μmを引いた値とし、u=0.5または0.1または0.05であればD(u)の6個の成分の最小値28/uから1μmを引いた値とした。それではdの最大値として、D(u)の6個の成分の最小値28/uとした場合はどうであろうか。一番薄い水晶板の厚さが0μmの6枚水晶板となり、この場合、5枚水晶板となる。
一例として±φ=±20度における、6種類のuのそれぞれに対する、D(u)の6個の成分の最小値28/uをdとした場合の歩留まり表を図47(a)に示す。図47(b)は(0103)で説明したdの最大値に対する歩留まり表である。図22,図24〜図28の±φ=±20度の表において|±d|(μm)の最大値の歩留まりのみを
取り出して、uごとに配列させた表である。
図48(a)は図47(a)の各歩留まりに対応する最大の誤差内波長数Nλおよび配列番号の表である。図48(b)は図47(b)の各歩留まりに対応する最大の誤差内波長数Nλおよび配列番号の表である。
図47(a)の10行6列の60個の各値と図47(b)のこれに対応する値は近い、もしくは同一の場合もある。図48(a)の10行6列の60個の各Nλ値と図48(b)のこれに対応するNλ値も近い、もしくは同一の場合もあることがわかる。特別な不連続性は見られない。±φ=±20度以外の図10における角度である±φ=±10度,±5度,±1度,±0.5度においても、同様の表を作成し比較すれば、この例のように特別な不連続性は見られないと考えられる。
(実施例16)および(実施例17)から、uを図10に示した値の最小値である0.05から最大値である10の連続的範囲内で任意に選択し、φにおいては−20度から+20度の範囲内における任意の2種類の組み合わせのうちの1つとし、dにおいてはuで定まる6枚水晶板の最小値、即ち水晶板4の厚さ28/uμmから定まる−28/uμmから+28/uμmの範囲内における任意の2種類のdの組み合わせのうちの1つで解析した歩留まり表および合計波長帯域Tλの表においても、図22、図24〜図28の歩留まり表および図29、図31〜図35の合計波長帯域Tλの表から劇的に変化する場合は少なく、似たような傾向が現れると考えられる。
(0226)は初期値回転角度θ0を基にしている。(実施例15)から負の初期値回転角度−θ0を使用しても、(0226)と同様の傾向が現れると言える。
(0144)で述べた薄い水晶板の場合に2枚の厚い水晶板で代用作製する方法について説明する。
図4(a)の水晶板1(回転角度θ1(rad),厚さD1)が薄いため、2枚の厚い水晶板11,水晶板12で作製するものとする。それぞれの回転角度をθ11,θ12とし、厚さはD11,D12とする。図4(a)において水晶板11は水晶板12より手前にあり、直線偏光は水晶板11に入射後、水晶板12に入射するものとする。
水晶板11の回転角度は水晶板の回転角度に等しく(θ11=θ1)、水晶板12の回転角度はさらに90度回転した値とする(θ12=θ1+π/2)。水晶板11の厚さをLとし(D11=L)、水晶板12の厚さは水晶板11の厚さより水晶板1の厚さ分だけ薄い(D12=L−D1)ものとする。
(数5),(数6),(数9)から導かれる水晶板1の位相差δ1と同様に、水晶板11,水晶板12の位相差もそれぞれδ11,δ12とおく。
水晶板1のジョーンズ行列は(数13)のJ1(θ1,δ1)であり、水晶板11,水晶板12のジョーンズ行列も同様にそれぞれJ11(θ11,δ11),J12(θ12,δ12)とおく。
となることを以下に説明する。θ11,θ12の単位はradである。
J11(θ11,δ11)を展開前後の行列で表示すると
J12(θ12,δ12)も同様に展開前後の行列で表示し
を展開式の方に代入して計算する。マイナス符号が出るが、このマイナスをδ12の方につけてしまい、−δ12のようにすることができて
となる。δ12の符号が正から負に変わった式と見なせ、展開前の式から
これから
θ11=θ1,δ11−δ12=δ1であるから(数61)が成立する。
(0032)の定義で、Yci軸の正の方向は観測座標系のY軸の正の方向と一致するとした。ではYci軸がY軸と一致しない場合はどうであろうか。一例として、切断誤差等により各水晶板i(i=1,2・・6)の入射面(またはこれと平行な裏面)に対してYci軸がこの時点で既に垂直でない場合である。このYci軸がY軸からずれると、直線偏光の感じる屈折率が変わることになる。
今水晶板1のみとし回転する前の状態(θ1=0)を考える。入射直線偏光の振動方向は観測座標系のZ方向である。Yc1軸がXY面内で向きが変わっていても、屈折率楕円体はXY面内では等方的であり、偏光特性に変化は無い。Yc1軸がYZ面で向きが変わっている場合を考えればよい。
Yc1軸がYZ面内でZ軸の正の方向(Y軸の正の方向からZ軸の正の方向へ回転する方向)にχ(rad)回転していたとすると、直線偏光の感じる屈折率において、noは変化せず、neがχの関数となりne(χ)となる。この様子を図49に示す。(数1)から
これをnについて解いて
極端な場合としてχ=10π/180(=10度)として、ne(χ)を波長の関数として求め、Yc2軸,・・Yc6軸もYc1軸と同じ角度回転しているとして、PHD,AMRの全波長域における特性グラフを(θ0,D(1))の場合に求めたグラフを図50(a)に示す。一方、傾斜の無い場合のグラフは図50(b)で図6と同一である。図50(a)と図50(b)のグラフを比較してみると、500nm以下の短波長側でPHD,AMRに多少の相違が見られる以外は、殆ど変化しないことがわかる。
この結果は6枚水晶板の各Yci軸はY軸方向を向いており、その代わりに入射直線偏光の向きが−10度傾いた場合にも相当しており、図50(a)と同一のグラフとなる。
(実施例19)ではYci軸の方向は全て一致しているが、全体的にY軸からずれている場合の例で説明した。ずれ角度が小さければ(例えば1度以内)、Yci軸の各方向がランダムにY軸からずれていてもPHD,AMRの特性に殆ど影響を及ぼさないと考えられる。
基準回転角度θ0b(度)または−θ0b(度)と初期値厚さ寸法D0(μm)で作製した6枚水晶波長板、およびこれ等の角度や厚さに、定めた範囲内(0226)で全厚さ寸法パラメータu、個別厚さ寸法パラメータd(μm)、個別回転角度パラメータφ(度)で変更を加えた水晶波長板は、水晶の透明波長域185.1〜5800nmにおいて広帯域1/4波長板または多波長用波長板としての機能を果たす。
例えば既に市販されている可視域を含む1/4波長板と比較して、紫外域から赤外域まで及ぶ、帯域幅が3〜4倍程度に達する336nm〜2086nm(帯域幅1750nm)なる1/4波長板、また帯域が636nm〜3736nm(帯域幅3100nm)、2686nm〜5786nm(帯域幅3100nm)等の1/4波長板も本発明の中にある。また広帯域1/4波長板の中には全体回転させていくだけで、広帯域1/2波長板に近い特性が現れるものも存在する。
このような1/4波長板は様々な応用分野に広がっていく可能性がある。
ランダム偏光を1つの直線偏光に変換するグラントムソンプリズムにおいては、例えば190〜1900nmや350〜2300nmの広帯域グラントムソンプリズムが既に知られている。こうしたプリズムと併用して本発明の波長板を使用することにより、広帯域の分光分析装置または分光計測装置に適用でき、極少数または1つの波長板で実現可能となる。
1 観測台
2 足
3 水平板
4 直線偏光
5 水晶板1
6 水晶板2
7 水晶板6

Claims (3)

  1. 全厚さ寸法パラメータuを0.05≦u≦10の範囲とし、個別厚さ寸法パラメータd(μm)を−28/u≦d≦28/uの範囲とし、個別回転角度パラメータφ(度)を−20≦φ≦20の範囲とし、基準回転角度θ0b(度)である(0,−21,87,−8,−27,37)の6個の各要素のそれぞれに、異なる、または同一のφを加算した回転角度を有し、初期値厚さ寸法D0(μm)である(30,60,58,28,30,75)の6個の各要素を同一のuで割った6個の各要素のそれぞれに、異なる、または同一のdを加算した厚さである6枚水晶板。
  2. 全厚さ寸法パラメータuを0.05≦u≦10の範囲とし、個別厚さ寸法パラメータd(μm)を−28/u≦d≦28/uの範囲とし、個別回転角度パラメータφ(度)を−20≦φ≦20の範囲とし、基準回転角度−θ0b(度)である(0,21,−87,8,27,−37)の6個の各要素のそれぞれに、異なる、または同一のφを加算した回転角度を有し、初期値厚さ寸法D0(μm)である(30,60,58,28,30,75)の6個の各要素を同一のuで割った6個の各要素のそれぞれに、異なる、または同一のdを加算した厚さである6枚水晶板。
  3. 請求項1または請求項2記載の6枚水晶板を備えた光学装置。
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