以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図3は、流路部材本体の平面図であり、図4は、図3のA−A′線に準ずるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図であり、図5は、図3のB−B′線に準ずるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド10は、液体としてインク滴を吐出するヘッド本体20と、ヘッド本体20にインクを供給する流路部材30と、流路部材30に保持された回路基板50と、回路基板に接続された配線基板60と、を具備する。
ヘッド本体20は、一方面に液体としてインク滴を吐出するノズル開口(図示なし)が開口する液体噴射面21が設けられている。また、ヘッド本体20の図示しない内部にはノズル開口に連通する流路と、流路内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段等が設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって流路の容積を変化させて流路内のインクに圧力変化を生じさせてノズル開口からインク滴を吐出させるものや、流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口からインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
また、ヘッド本体20には、一端部が圧力発生手段に接続されたフレキシブル配線部材である駆動配線22を具備する。駆動配線22には、例えば、圧力発生手段を駆動するための駆動回路(駆動IC)等が設けられていてもよい。すなわち、駆動配線22は、駆動回路が実装されたCOF基板であってもよい。
このようなヘッド本体20のノズル開口が開口する液体噴射面21側には、ノズル開口を露出した状態で保護するカバーヘッド23が固定されている。
また、このようなヘッド本体20は、流路部材30の一方面に当該流路部材30に螺合される2つのねじ部材24によって固定されている。
流路部材30は、流路部材本体31と、流路部材本体31の両側面にそれぞれ設けられた第1の蓋部材32と第2の蓋部材33と、を具備する。
また、流路部材30には、液体としてインクが貯留された液体貯留手段(図示なし)からヘッド本体20にインクを供給すると共に、ヘッド本体20からのインクを液体貯留手段に回収する液体流路100が設けられている。具体的には、流路部材30には、一端が液体貯留手段に直接又はチューブ等を介して接続され、他端がヘッド本体20に接続された供給流路110及び回収流路120が設けられている。供給流路110は、本実施形態では、液体貯留手段からのインクをヘッド本体20に供給する往路であり、回収流路120は、排出口121を具備し、ヘッド本体20からのインクを液体貯留手段に回収する復路となっている。
供給流路110は、液体貯留手段に直接又はチューブ等を介して接続されたインク導入口111と、インク導入口111に連通する第1流路112と、第1流路112に接続されたフィルター室113と、フィルター室113とヘッド本体20とを接続する第2流路114と、を具備する。
図4に示すように、第1流路112及びフィルター室113は、流路部材本体31に側面(第1の蓋部材32側)に開口する溝状に設けられて、第1の蓋部材32で開口が封止されて画成されている。
また、第2流路114は、一端がフィルター室113に連通し、他端がヘッド本体20の流路に接続されるように形成されている。
さらに、フィルター室113には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するためのフィルター34が設けられている。
フィルター34は、液体であるインク中に含まれるゴミや気泡などの異物を除去するためのものであり、例えば、金属や樹脂等の繊維を細かく編むことで複数の微細孔が形成されたシート状のものや、金属や樹脂等の板状部材に複数の微細孔を貫通させたものなどを用いることができる。なお、フィルター34は、不織布等を用いてもよく、その材料は特に限定されるものではない。
また、流路部材本体31には、第1流路112及びフィルター室113が開口する第1の蓋部材32とは反対側の第2の蓋部材33側に開口する凹部35が設けられている。回路基板50は、この流路部材本体31の凹部35内に挿入される。そして、凹部35内に挿入された回路基板50は、流路部材本体31と凹部35の開口を塞ぐ第2の蓋部材33との間で保持される。
また、流路部材本体31には、液体流路100である供給流路110に連通すると共に回路基板50側に貫通した保持孔36が設けられている。本実施形態では、保持孔36は、フィルター34に相対向する領域に、フィルター室113の第2流路114が連通する側に連通して設けられている。すなわち、保持孔36は、フィルター室113の壁面にフィルター室113と凹部35とを貫通して設けられており、保持孔36の一方の開口は、フィルター34に相対向し、他方の開口は回路基板50に相対向して設けられている。
この流路部材本体31の保持孔36は保持孔封止部材37によって封止されている。本実施形態では、保持孔封止部材37は、板状部材からなり、保持孔36のフィルター室113側の開口面に固定されている。
このような保持孔封止部材37としては、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い材料を用いることができる。例えば、流路部材本体31を樹脂材料で形成した場合には、保持孔封止部材37として、金属材料を用いることができる。ちなみに、金属は、樹脂に比べて熱伝導率が二桁程度大きい。このように、熱伝導率が高い保持孔封止部材37を用いることで、保持孔封止部材37が保持孔36を封止した領域が、液体流路100である供給流路110の他の領域よりも熱抵抗が低い検出領域aとすることができる。すなわち、流路部材30には、液体流路100(供給流路110)を画成する隔壁の一部に他の領域(流路部材本体31で画成された隔壁)よりも熱抵抗が低い検出領域aが設けられていることになる。なお、ここで言う熱抵抗とは、物体の熱が流れるのを防ぐ力の大きさのことであり、厚み/(熱伝導率×面積)で表されるものである。
そして、保持孔36の保持孔封止部材37に封止された一方の開口とは反対側の開口は、回路基板50側に開口して、回路基板50に相対向して設けられているため、検出領域aが回路基板50に相対向して設けられていることになる。
回路基板50は、図示しない電子部品や配線等が設けられたプリント基板からなる。このような回路基板50には、ヘッド本体20の駆動配線が電気的に接続されると共に、図示しない配線基板60が電気的に接続されている。これにより、外部の制御回路等からの印刷信号は配線基板60、回路基板50及び駆動配線22を介して駆動信号として圧力発生手段に供給される。また、回路基板50からの信号(後述する温度情報)は、配線基板60を介して外部の制御回路等に送られる。このような回路基板50は、フレキシブル基板及びリジット基板の何れか、又はこれらが組み合わされた複合基板であってもよい。本実施形態では、回路基板50としてリジット基板を用いることで、詳しくは後述する回路基板50に設けられた温度検出部を固定し易くしている。
また、回路基板50には、保持孔36(検出領域a)に相対向する領域に温度検出部51が設けられている。温度検出部51としては、例えば、サーミスターやデジタル温度センサーなどを用いることができる。
なお、温度検出部51としてサーミスターを用いた場合、サーミスターは比較的小型で安価なことから保持孔36(検出領域a)の開口面積を小さくすることができると共に、コストを低減することができる。また、温度検出部51として、デジタル温度センサーを用いた場合には、サーミスターに比べて大型化してしまうものの、温度測定素子と回路がパッケージされているため、ノイズに強く、高精度な温度検出が可能となる。
このような回路基板50は、流路部材本体31の凹部35内に流路部材本体31と第2の蓋部材33との間に挟持される。また、第2の蓋部材33には、回路基板50の温度検出部51が設けられた面とは反対面側の温度検出部51が設けられた領域及びその周辺を保持孔36内(検出領域a)に向かって押圧する第1押圧手段38aが設けられている。本実施形態では、第1押圧手段38aは一端が第2の蓋部材33に固定されて他端が自由端となる板バネからなり、板バネの自由端が回路基板50の温度検出部51とは反対面の温度検出部51に対応する領域に接触するように設けられている。これにより、回路基板50は、流路部材本体31の保持孔封止部材37側、つまり検出領域aに向かって付勢された状態で流路部材30に保持されている。
一方、流路部材30に設けられた回収流路120は、ヘッド本体20に供給されたインクを液体貯留手段に回収させるためのものであり、流路部材30の供給流路110とは反対側の端部に設けられている。
この回収流路120は、図5に示すように、ヘッド本体20が固定された面と、これとは反対側の面とを貫通して設けられている。
また、流路部材本体31には、回収流路120に連通すると共に回路基板50側に貫通した貫通孔39が設けられている。すなわち、貫通孔39は、回収流路120の壁面に回収流路120と凹部35とを連通して設けられており、貫通孔39の凹部35側の開口は、回路基板50に相対向して設けられている。この貫通孔39によって、回収流路120はその一部が凹部35に開口する溝状に設けられている。
この貫通孔39は、貫通孔封止部材40によって封止されている。本実施形態では、貫通孔封止部材40は、板状部材からなり、貫通孔39の凹部35側の開口面に固定されている。
このような貫通孔封止部材40としては、上述した保持孔封止部材37と同じ材料、すなわち、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い材料を用いることができる。例えば、流路部材本体31を樹脂材料で形成した場合には、貫通孔封止部材40として、金属材料を用いることができる。ちなみに、金属は、樹脂に比べて熱伝導率が二桁程度大きい。このように、熱伝導率が高い貫通孔封止部材40を用いることで、貫通孔封止部材40が貫通孔39を封止した領域が、液体流路100である回収流路120の他の領域よりも熱抵抗が低い加熱領域bとすることができる。すなわち、流路部材30には、回収流路120を画成する隔壁の一部に他の領域(流路部材本体31で画成された隔壁)よりも熱抵抗が低い加熱領域bが設けられていることになる。
そして、貫通孔封止部材40の貫通孔39を封止する加熱領域bは、回路基板50に相対向して設けられている。このように、回路基板50の加熱領域bに相対向する領域を本実施形態では加熱部52と称する。なお、本実施形態では、回路基板50の加熱部52には、電子部品が配置されていない。したがって、本実施形態では、回路基板50の加熱部52と封止領域b(貫通孔封止部材40)とを接触して設けることができる。
ちなみに、回路基板50の加熱部52と加熱領域bとは直接接触していなくてもよく、例えば、加熱部52と加熱領域bとの間に空間が画成されていてもよく、また、流体や熱伝達部材等を介して接触していてもよい。
また、第2の蓋部材33には、回路基板50の加熱部52を加熱領域bに向かって押圧する第2押圧手段38bが設けられている。第2押圧手段38bは、第1押圧手段38aと同様に、一端が第2の蓋部材33に固定されて他端が自由端となる板バネからなり、板バネの自由端が回路基板50の加熱部52とは反対面に接触するように設けられている。この第2押圧手段38bによって回路基板50は流路部材本体31側に押圧されることで、回路基板50の加熱部52は加熱領域bと密着した状態で接触する。
このように、回路基板50の加熱部52が貫通孔封止部材40の加熱領域bに接触することで、回路基板50は回収流路120内のインクによって貫通孔封止部材40の加熱領域bを介して加熱される。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10では、図示しない液体貯留手段からのインクを流路部材30の供給流路110を介してヘッド本体20の内部の流路に取り込み、図示しないノズル開口に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路等からの記録信号に従い、圧力発生手段を駆動させることでノズル開口からインク滴が吐出される。また、ヘッド本体20の内部の流路に導入されたインクは、流路部材30の回収流路120を介して液体貯留手段に戻される。すなわち、液体貯留手段のインクは、供給流路110を介してヘッド本体20の内部に供給され、ヘッド本体20の内部から回収流路120を介して液体貯留手段に回収される、いわゆる循環が行われる。
そして、このようなインクジェット式記録ヘッド10では、供給流路110内のインクの温度を回路基板50に設けられた温度検出部51によって測定する。このとき、温度検出部51は、供給流路110を画成する隔壁の内、他の領域よりも熱抵抗が低い検出領域aに近接して設けられているため、供給流路110内のインクの実際の温度に近い温度を高精度に且つ高い応答性(インクの急な温度変化に応答する速度が早い)で測定することができる。したがって、ヘッド本体20から吐出される直前の液体流路100内のインクの実際の温度を高精度に、つまり小さな誤差で測定することができる。このため、温度検出部51が測定した温度情報に基づいて圧力発生手段を駆動する駆動信号を補正することで、実際のインクの温度(粘度)に最適な駆動を行わせて、インク滴の吐出特性を向上して印刷品質を向上することができる。特に、本実施形態では、検出領域aをフィルター室113の第2流路114が連通する側に設けるようにしたため、ヘッド本体20に供給される(ヘッド本体20から吐出される)直前のインクの温度を検出することができる。したがって、吐出されるインクの温度と温度検出部51が測定した温度との誤差を比較的小さくして、吐出されるインクに最適な駆動を圧力発生手段に行わせて、インク滴の吐出特性を向上して印刷品質を向上することができる。
ちなみに、流路部材30の検出領域a以外の領域に温度検出部51を近接して設けても、流路部材本体31の熱抵抗が高いため、供給流路110内のインクの実際の温度を検出することができず、ヘッド本体20から吐出される直前のインク温度と、温度検出部51が検出した温度とに比較的大きな誤差が生じ、温度検出部51が測定した温度情報に基づいて駆動信号を補正したとしても、吐出特性が低下してしまう。特に、インクの温度が短時間で急激に変化した場合には、実際のインクの温度に対して誤差の小さな温度を温度検出部51が測定できないと、実際のインクの温度に最適な駆動信号で圧力発生手段を駆動することができない。
本実施形態では、供給流路110を流れるインクの温度が短時間で急激に変化したとしても、熱伝導率の高い保持孔封止部材37によって検出領域aの熱抵抗を低くして、インクの温度を温度検出部51に高い応答性で伝えることができるため、実際のインクの温度の変化を短時間で高精度に、つまり小さな誤差で測定することができる。
また、本実施形態では、回路基板50を保持孔封止部材37側に向かって付勢した状態で流路部材30に固定した。これにより検出領域aと温度検出部51とが常に最も近接した状態を維持することができる。すなわち、回路基板50の移動等によって、温度検出部51の測定精度にばらつきが生じるのを抑制することができる。つまり、インクジェット式記録ヘッド10の移動時や衝撃などによって回路基板50の固定位置にずれが生じると、温度検出部51と保持孔封止部材37との距離が変動し、測定精度にばらつきが生じてしまうが、本実施形態では、回路基板50を保持孔封止部材37(検出領域a)に向かって付勢した状態で固定しているため、回路基板50の固定位置にずれが生じ難く、測定精度にばらつきが生じ難い。
ちなみに、ヘッド本体20の流路内に温度センサーを設ける構造も考えられるものの、ヘッド本体20の流路内に温度センサーを設けた場合、ヘッド本体20が大型化してしまう。特に、ヘッド本体20がノズル開口の並設方向と直交する方向に大型化してしまうと、複数のインクジェット式記録ヘッド10をノズル開口の並設方向と直交する方向に並設した際に、並設されたインクジェット式記録ヘッド10間で被記録媒体へのインク滴の着弾タイミングが大幅にずれてしまうという問題がある。そして、並設されたインクジェット式記録ヘッド10から吐出されるインク滴の着弾タイミングが大幅にずれてしまうと、同じインクを吐出させた場合には、インクの被記録媒体への染み込む量や乾燥するタイミングがずれて色調が変化してしまう。また、溶剤を含むインク(溶剤系インク)や、紫外線硬化型インクなどの機能性インクを用いた場合、乾燥するタイミングが大幅にずれることから色調や被覆率が違ってしまう。
本実施形態では、流路部材30に温度検出部51を設けると共に、液体流路100の内部ではなく、流路部材30に熱抵抗の低い検出領域aを設け、この検出領域aに近接して相対向する領域に温度検出部51を設けたため、ヘッド本体20が大型化するのを抑制することができる。したがって、複数のインクジェット式記録ヘッド10をノズル開口の並設方向と直交する方向に並設した際に、並設されたインクジェット式記録ヘッド10間で被記録媒体へのインク滴の着弾タイミングが大幅にずれるのを抑制して、同じインクを吐出させた場合には、インクの被記録媒体への染み込む量や乾燥するタイミングがずれて色調が変化するのを抑制することができる。また、溶剤を含むインク(溶剤系インク)や、紫外線硬化型インクなどの機能性インクを用いた場合、乾燥するタイミングが大幅にずれることから色調や被覆率が違ってしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態では、回収流路120を通過するインクによって回路基板50を加熱させることで、回路基板50の温度を供給流路110を流れるインクの温度に近くすることができる。これにより、温度検出部51によって測定する温度を供給流路110を流れるインクの実際の温度に近い温度、すなわち小さな誤差で高精度に測定することができる。
ここで、供給流路110内のインクと温度検出部51との間には保持孔封止部材37や間隙による熱抵抗R1が存在するため、温度検出部51で検出する温度T2は、供給流路110を流れるインクの実際の温度T1よりも低下してしまう。また、温度検出部51と回路基板50の温度T3との間には熱抵抗R2が存在するため、温度検出部51で検出される温度T2は、回路基板50の温度(T3)によって引き下げられてしまう。
つまり、供給流路110内のインクと温度検出部51までの熱抵抗R1と、温度検出部51から回路基板50までの熱抵抗R2とは不変であるため、回路基板50の温度T3がインクの温度T1に対して低ければ低いほど、温度検出部51で検出する温度T2は回路基板50の温度T3によって引き下げられてしまう。
ここで、熱抵抗Rによって低下する温度差Δtは、熱流束Qとすると、Δt=Q・Rという関係が成り立つ。このため、温度検出部51の温度(T2)は下記式(1)により求められる。
この式(1)からも明確なように、回路基板50の温度(T3)が低下すると、温度検出部51で検出される温度T2も低下してしまう。
すなわち、図6に示すように、回路基板50の温度がT3からT3′に低下した場合、熱抵抗R1、R2は同じであるため、温度検出部51で検出される温度T2′は、温度T2に比べてT3′側に引き下げられてしまう。
本実施形態では、回路基板50は回収流路120を通過するインクによって温められるため、供給流路110を流れるインクの温度T1と、回路基板50の温度T3との温度差を小さくすることができる。したがって、温度検出部51で検出される温度T2と供給流路110内のインクの温度T1との差を低減することができ、温度検出部51で実際のインクの温度に近い温度を高精度に検出することができる。
なお、本実施形態では、保持孔封止部材37を保持孔36のフィルター室113側の開口面に固定するようにしたため、例えば、液体貯留手段から供給流路110にインクを加圧することによって供給した際に、保持孔封止部材37は、固定面である開口面側に向かって押圧されるため、保持孔封止部材37の流路部材本体31からの剥離を抑制して、インクの回路基板50側への漏出を抑制することができる。
ちなみに、保持孔封止部材37の取り付け方法は、特にこれに限定されない。ここで、保持孔封止部材37の取り付け方法の他の例を図7に示す。図7に示すように、保持孔封止部材37は、保持孔36の回路基板50側の開口面に固定されている。このように保持孔封止部材37を保持孔36の回路基板50側の開口面に固定することで、液体貯留手段から供給流路110にインクを加圧すると保持孔封止部材37が流路部材本体31から剥離する方向に押圧されるが、回収流路120側から吸引して液体貯留手段から供給流路110にインクを供給する場合には、保持孔封止部材37は供給流路110側に向かって吸引されるため、保持孔封止部材37は流路部材本体31から剥離し難く、インクの回路基板50側への漏出を抑制することができる。
また、貫通孔39を封止する貫通孔封止部材40についても同様であり、本実施形態では、貫通孔封止部材40を貫通孔39の回路基板50側の開口面に固定することで、回収流路120のインクを液体貯留手段側から吸引して供給流路110にインクを供給した場合において貫通孔封止部材40の剥離を抑制することができる。もちろん、貫通孔封止部材40の取り付け方法は、特にこれに限定されない。ここで、貫通孔封止部材40の取り付け方法の他の例を図8に示す。図8に示すように、貫通孔封止部材40は、貫通孔39の回収流路120側の開口面に固定されている。また、貫通孔39は凹部35の側面を画成し、回路基板50は、貫通孔39内に貫通孔封止部材40に接触して設けられている。このように貫通孔封止部材40を貫通孔39の回収流路120側の開口面に固定することで、液体貯留手段側から供給流路110に向かって加圧してインクを供給した際の貫通孔封止部材40の剥離を抑制することができる。
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Aは、ヘッド本体20と、流路部材30Aと、回路基板50と、配線基板60(図示なし)と、を具備する。
流路部材30Aは、流路部材本体31と、第1の蓋部材32と、第2の蓋部材33と、を具備し、流路部材本体31と第2の蓋部材33との間に回路基板50を保持する。
流路部材30には、液体流路100として、供給流路110と回収流路120とが設けられている。供給流路110は、インク導入口111と、第1流路112と、フィルター34が設けられたフィルター室113と、第2流路114とを具備する。また、回収流路120は、排出口121を具備する。
また、流路部材本体31には、フィルター室113の第2流路114と連通する側と凹部35とを連通する保持孔36が設けられており、保持孔36は、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い保持孔封止部材37で封止されて熱抵抗の低い検出領域aとなっている。
そして、流路部材本体31の保持孔36内には、回路基板50の温度検出部51が挿入されて温度検出部51と保持孔封止部材37(検出領域a)とが相対向して配置されている。
また、本実施形態では、保持孔36内には、気体(空気)よりも熱伝導率が高い流体である充填剤70が充填され、保持孔封止部材37(検出領域a)と温度検出部51とが充填剤70を介して接続されている。
充填剤70は、検出領域aの熱を温度検出部51に伝え易くするためのものであるため、できるだけ熱伝導率が高い流体を用いるのが好ましい。また、充填剤70は、回路基板50の表面に付着しても、配線の短絡や電子部品の破壊を起こさない絶縁性の材料を用いる必要がある。さらに、充填剤70は、保持孔36よりも外、つまり凹部35内に漏出し難い比較的高い粘度であるのが好ましい。このような充填剤70としては、例えば、熱伝導性シリコーン樹脂等で形成されたグリースなどが挙げられる。
このように、高い熱伝導率を有する充填剤70を用いることで、検出領域aと温度検出部51との間の熱抵抗を低下させることができる。
なお、充填剤70は、保持孔封止部材37(検出領域a)と温度検出部51との両方に接触していれば、保持孔36内に完全に充填されていなくてもよいが、保持孔36内に充填剤70が完全に充填されていないと、充填剤70の変形や流れ出しなどで、保持孔封止部材37(検出領域a)と温度検出部51との接触状態が解除される虞がある。このため、充填剤70は、保持孔36内に完全に充填されているのが好ましい。
さらに、流路部材本体31には、回収流路120と凹部35とを連通する貫通孔39が設けられており、貫通孔39は、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い貫通孔封止部材40で封止されて熱抵抗の低い加熱領域bとなっている。
本実施形態では、貫通孔封止部材40は、貫通孔39の回収流路120側の開口面に固定されている。
そして、凹部35内に保持された回路基板50の加熱部52と加熱領域bとは相対向して配置されている。
また、本実施形態では、貫通孔39内には、気体(空気)よりも熱伝導率が高い流体である充填剤71が充填され、貫通孔封止部材40(加熱領域b)と回路基板50の加熱部52とが充填剤71を介して接続されている。
ここで、充填剤71は、保持孔36内に充填した充填剤70と同じ材料を用いることができる。
そして、本実施形態の回路基板50は、第2の蓋部材33に設けられた第1押圧手段38a及び第2押圧手段38bによって、保持孔封止部材37及び貫通孔封止部材40側に押圧された状態で固定されている。したがって、充填剤70及び71が充填された保持孔36及び貫通孔39の回路基板50側の開口は、回路基板50によって所定の圧力で押圧された状態で封止されているため、保持孔36及び貫通孔39内の充填剤70、71が外部、すなわち、凹部35内等に流れ出るのを抑制することができる。
このように保持孔36内に充填剤70を充填して、保持孔封止部材37(検出領域a)と温度検出部51とを充填剤70を介して接続させることで、供給流路110内のインクの熱が熱伝導率の高い保持孔封止部材37及び充填剤70を介して温度検出部51に伝わり易くなり、供給流路110を通過するインクの実際の温度を高精度に検出することができる。また、供給流路110内のインクの熱が熱伝導率の高い保持孔封止部材37及び充填剤70を介して温度検出部51に伝わるため、温度検出部51で高い応答性でインクの実際の温度を測定することができる。すなわち、供給流路110を通過するインクが短時間で急激に変化しても、急激な温度変化を温度検出部51で短時間で検出することができるため、インク温度に適したインク滴を吐出させる駆動を瞬時に圧電アクチュエーターに行わせることができ、インク吐出特性に優れたインクジェット式記録ヘッド10Aを実現できる。
また、貫通孔39内に充填剤71を充填して、貫通孔封止部材40(加熱領域b)と加熱部52とを充填剤71を介して接続させることで、回収流路120内のインクの熱が熱伝導率の高い貫通孔封止部材40及び充填剤71を介して回路基板50に伝わり易くなり、回収流路120を通過するインクで回路基板50が加熱されて、温度検出部51によって実際のインクの温度に近い温度を高精度に検出することができる。
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図及び拡大図であり、図3のA−A′線に準ずる要部断面図である。また、図11は、図3のB−B′線に準ずるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図及び拡大図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Bは、ヘッド本体20と、流路部材30Bと、回路基板50と、配線基板60(図示なし)と、を具備する。
流路部材30Bは、流路部材本体31と、第1の蓋部材32と、第2の蓋部材33と、を具備し、流路部材本体31と第2の蓋部材33との間に回路基板50を保持する。
流路部材30Bには、液体流路100として、供給流路110と回収流路120(図11参照)とが設けられている。供給流路110は、インク導入口111と、第1流路112と、フィルター34が設けられたフィルター室113と、第2流路114とを具備する。
また、流路部材本体31には、フィルター室113の第2流路114と連通する側と凹部35とを連通する保持孔36が設けられており、保持孔36は、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い保持孔封止部材37Aで封止されて熱抵抗の低い検出領域aとなっている。
そして、流路部材本体31の保持孔36内には、回路基板50の温度検出部51が挿入されて温度検出部51と保持孔封止部材37A(検出領域a)とが相対向して配置されている。
保持孔封止部材37Aは、板状部材からなり、保持孔36の供給流路110(フィルター室113)側の開口面に固定されている。
また、保持孔封止部材37Aと温度検出部51とは、温度検出部51を保持孔封止部材37Aとは反対側に向かって付勢する保持孔用付勢部材72を介して接続されている。
本実施形態では、保持孔用付勢部材72として、板バネを用いた。板バネからなる保持孔用付勢部材72は、保持孔封止部材37Aに一端が固定され、他端が自由端となっている。そして、自由端となった他端が温度検出部51の保持孔封止部材37Aに相対向する面に接触して、温度検出部51を保持孔封止部材37Aとは反対側に付勢している。
なお、保持孔用付勢部材72としては、金属等の導電性の材料や絶縁性の材料を用いることができる。ただし、保持孔用付勢部材72として金属等の導電性の材料を用いて、温度検出部51にサーミスターを用いた場合、保持孔用付勢部材72は、温度検出部51であるサーミスターの一方の電極に接触すればよい。ちなみに、一般的にサーミスターは、2つの電極が表面に露出しているため、両方の電極に同時に接触するように導電性の保持孔用付勢部材72を接触させると、2つの電極が短絡して正確に温度を検出することができなくなってしまう。このため、導電性の保持孔用付勢部材72を用いた場合には、温度検出部51であるサーミスターの一方の電極に接触するようにすれば、サーミスターの電極の短絡を抑制して、正常な温度測定を行わせることができる。もちろん、保持孔用付勢部材72として絶縁性の材料を用いた場合には、保持孔用付勢部材72はサーミスターの両方の端子に接触しても特に問題はない。また、温度検出部51として表面が樹脂等の絶縁体で覆われた温度センサー、例えば、デジタル温度センサー等を用いた場合には、保持孔用付勢部材72として導電性の材料のものを用いたとしても、温度検出部51の保持孔封止部材37Aに相対向する面の何れに接触しても問題はない。なお、温度検出部51として温度センサーを用いた場合、温度センサーの端子が露出している場合には、保持孔用付勢部材72を温度センサーの端子に接触させずに、温度センサーの本体の保持孔封止部材37Aに相対向する面等の樹脂により覆われた面に接触させればよい。
そして、保持孔封止部材37A(検出領域a)と温度検出部51との間に保持孔用付勢部材72を設けることで、回路基板50は保持孔封止部材37Aとは反対側に付勢される。なお、回路基板50は第2の蓋部材33に設けた第1押圧手段38aによって保持孔封止部材37A側に押圧(付勢)されているため、保持孔用付勢部材72の回路基板50を第2の蓋部材33側に押圧する押圧力(付勢力)は、第1押圧手段38aの押圧力(付勢力)よりも弱いことが好ましい。これにより、回路基板50を、流路部材本体31の凹部35内の保持孔封止部材37A(検出領域a)に最も近い位置に固定することができ、温度検出部51による検出領域aの温度測定を高精度に行うことができる。
このように、保持孔封止部材37Aと温度検出部51との間で両者を接触させる保持孔用付勢部材72は、空気などの気体やグリース等の流体に比べて熱伝導率が高い材料を用いることができる。したがって、熱伝導率の高い保持孔用付勢部材72を用いることで、保持孔封止部材37Aと温度検出部51とを気体や流体で接触させる場合に比べて、検出領域aと温度検出部51との間の熱抵抗を低下させて、保持孔封止部材37A(検出領域a)の熱を温度検出部51に伝わらせ易くして、インクの実際の温度を高精度に且つ高い応答性(インクの急な温度変化に応答する速度が早い)で測定することができる。
また、保持孔封止部材37Aと温度検出部51との間に保持孔用付勢部材72を設けることで、回路基板50の固定位置がずれた場合や、温度検出部51の実装高さにばらつきが生じた場合であっても保持孔封止部材37Aと温度検出部51とを保持孔用付勢部材72で確実に接触させることができる。ちなみに、保持孔用付勢部材72に準ずる接触部材が温度検出部51には接触するが、接触部材が温度検出部51を保持孔封止部材37Aとは反対側に付勢しない場合、回路基板50の固定位置が保持孔封止部材37Aから少しでも離れると、保持孔封止部材37Aと温度検出部51とが接触部材を介して接触しなくなってしまう。同様に、接触部材は、回路基板50に実装された温度検出部51の実装高さにばらつきが生じると、保持孔封止部材37Aと温度検出部51とが接触部材を介して接触しなくなってしまう場合がある。本実施形態では、保持孔封止部材37Aと温度検出部51とを接触させると共に、温度検出部51を保持孔封止部材37Aとは反対側に付勢する保持孔用付勢部材72を用いることで、回路基板50の固定位置がずれた場合や、温度検出部51の実装高さにばらつきが生じた場合であっても保持孔封止部材37Aと温度検出部51とを保持孔用付勢部材72で確実に接触させることができ、検出領域aの温度測定を確実に且つ高精度に行うことができる。
また、保持孔用付勢部材72に代わって、検出領域aと温度検出部51とを接続するフレキシブルな配線等の熱伝達部材を用いる方法も考えられるものの、熱伝達部材を保持孔封止部材37A及び温度検出部51に接続する作業が煩雑であるという問題がある。本実施形態では、保持孔用付勢部材72は、保持孔封止部材37Aに一端が固定されているだけであるため、保持孔封止部材37Aを流路部材本体31に固定するだけで、保持孔用付勢部材72を設置することができ、組立作業を簡略化することができる。
また、図11に示すように、流路部材本体31には、回収流路120と凹部35とを連通する貫通孔39が設けられており、貫通孔39は、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い貫通孔封止部材40Aで封止されて熱抵抗の低い加熱領域bとなっている。
貫通孔封止部材40Aは、板状部材からなり、貫通孔39の供給流路120側の開口面に固定されている。
また、回路基板50の加熱部52と加熱領域bとは、加熱部52を貫通孔封止部材40Aとは反対側に向かって付勢する貫通孔用付勢部材73を介して接続されている。
本実施形態では、貫通孔用付勢部材73として、保持孔用付勢部材72と同様に板バネを用いた。板バネからなる貫通孔用付勢部材73は、貫通孔封止部材40Aに一端が固定され、他端が自由端となっている。そして、自由端となった他端が加熱領域bの貫通孔封止部材40Aに相対向する面に接触して、回路基板50の加熱部52を貫通孔封止部材40Aとは反対側に付勢している。
なお、貫通孔用付勢部材73としては、金属等の導電性の材料や絶縁性の材料を用いることができる。ただし、回路基板50の加熱部52に配線や電子部品等が設けられており、貫通孔用付勢部材73が回路基板50の配線や電子部品等に接触する場合には、保持孔用付勢部材72として絶縁性の材料を用いるのが好ましい。
このように、貫通孔封止部材40Aと加熱部52との間で両者を接触させる貫通孔用付勢部材73は、空気などの気体やグリース等の流体に比べて熱伝導率が高い材料を用いることができる。したがって、熱伝導率の高い貫通孔用付勢部材73を用いることで、貫通孔封止部材40Aと加熱部52とを気体や流体で接触させる場合に比べて、加熱領域bと加熱部52との間の熱抵抗を低下させて、貫通孔封止部材40A(加熱領域b)の熱を加熱部52に伝わらせ易くして、回路基板50の温度を回収流路120のインクの温度に近い温度に加熱することができ、温度検出部51によってインクの実際の温度を高精度に且つ高い応答性(インクの急な温度変化に応答する速度が早い)で測定することができる。
また、貫通孔封止部材40Aと加熱部52との間に貫通孔用付勢部材73を設けることで、回路基板50の固定位置がずれた場合であっても貫通孔封止部材40Aと加熱部52とを貫通孔用付勢部材73で確実に接触させることができる。ちなみに、貫通孔用付勢部材73に準ずる接触部材が加熱部52には接触するが、接触部材が加熱部52を貫通孔封止部材40Aとは反対側に付勢しない場合、回路基板50の固定位置が貫通孔封止部材40Aから少しでも離れると、貫通孔封止部材40Aと加熱部52とが接触部材を介して接触しなくなってしまう。本実施形態では、貫通孔封止部材40Aと加熱部52とを接触させると共に、加熱部52を貫通孔封止部材40Aとは反対側に付勢する貫通孔用付勢部材73を用いることで、回路基板50の固定位置がずれた場合であっても貫通孔封止部材40Aと加熱部52とを貫通孔用付勢部材73で確実に接触させることができ、回路基板50を回収流路120内のインクの温度に近い温度に加熱して、温度検出部51での測定を高精度に行うことができる。
なお、保持孔用付勢部材72及び貫通孔用付勢部材73は、板バネに限定されるものではない。ここで、付勢部材の他の例を図12に示す。なお、図12は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す要部断面図である。
図12(a)に示すように、保持孔用付勢部材72Aは、圧縮コイルばねからなる。そして、圧縮コイルばねの一端は保持孔封止部材37Bに固定され、他端が温度検出部51に接触することで、保持孔用付勢部材72Aは、温度検出部51を保持孔封止部材37Bとは反対側に付勢している。
このような圧縮コイルばねからなる保持孔用付勢部材72Aは、例えば、導電性の材料であっても、絶縁性の材料であってもよいが、導電性の材料を用いて、温度検出部51としてサーミスターを用いた場合には、上述した板バネからなる保持孔用付勢部材72と同様に、保持孔用付勢部材72Aをサーミスターの一方の端子に接触させればよい。
また、図12(b)に示すように、貫通孔用付勢部材73Aは、圧縮コイルばねからなる。そして、圧縮コイルばねの一端は貫通孔封止部材40Bに固定され、他端が回路基板50の加熱部52に接触することで、貫通孔用付勢部材73Aは、加熱部52を貫通孔封止部材40Bとは反対側に付勢している。
(実施形態4)
図13は、実施形態4に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図及び拡大図であり、図3のA−A′線に準ずる要部断面図である。また、図14は、図3のB−B′線に準ずるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図及び拡大図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図13に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Cは、ヘッド本体20と、流路部材30Cと、回路基板50と、配線基板60と、を具備する。
流路部材30Cは、流路部材本体31と、第1の蓋部材32と、第2の蓋部材33と、を具備し、流路部材本体31と第2の蓋部材33との間に回路基板50を保持する。
流路部材30Cには、液体流路100として、供給流路110と回収流路120(図14参照)とが設けられている。供給流路110は、インク導入口111と、第1流路112と、フィルター34が設けられたフィルター室113と、第2流路114とを具備する。
また、流路部材本体31には、フィルター室113の第2流路114と連通する側と凹部35とを連通する保持孔36が設けられており、保持孔36は、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い保持孔封止部材37Cで封止されて検出領域aとなっている。
そして、流路部材本体31の保持孔36内には、回路基板50の温度検出部51が挿入されて温度検出部51と保持孔封止部材37C(検出領域a)とが相対向して配置されている。
保持孔封止部材37Cは、板状部材からなり、保持孔36の供給流路110(フィルター室113)側の開口面に固定されている。
さらに、保持孔封止部材37Cと温度検出部51とは、保持孔用熱伝達部材74を介して接続されている。保持孔用熱伝達部材74としては、例えば、導電性の可撓性を有する配線などを用いることができる。
なお、保持孔用熱伝達部材74として、導電性の材料を用いて、温度検出部51にサーミスターを用いた場合、保持孔用熱伝達部材74は、温度検出部51であるサーミスターの一方の電極に固定されていればよい。ちなみに、一般的にサーミスターは、2つの電極が表面に露出しているため、両方の電極に同時に接触するように導電性の保持孔用熱伝達部材74を接触させると、2つの電極が短絡して正確に温度を検出することができなくなってしまう。このため、導電性の保持孔用熱伝達部材74を用いた場合には、温度検出部51であるサーミスターの一方の電極に固定するようにすれば、サーミスターの電極の短絡を抑制することができる。もちろん、保持孔用熱伝達部材74として絶縁性の材料を用いた場合には、保持孔用熱伝達部材74はサーミスターの両方の端子に固定しても特に問題はない。また、温度検出部51として表面が樹脂等の絶縁体で覆われた温度センサー、例えば、デジタル温度センサー等を用いた場合には、保持孔用熱伝達部材74として導電性の材料のものを用いたとしても、温度検出部51の露出された端子以外の何れの面に接触しても問題はない。
また、保持孔用熱伝達部材74は、保持孔封止部材37Cと温度検出部51との間の距離よりも長いものを用いるのが好適である。これによれば、保持孔用熱伝達部材74を保持孔封止部材37C及び温度検出部51の両方に固定し易く、組み立て易くすることができる。
このように、保持孔封止部材37Cと温度検出部51とを接続する保持孔用熱伝達部材74は、空気などの気体などに比べて熱伝導率の高い材料が用いられ、グリース等の流体よりも熱伝導率の高い材料を用いるのが好適である。したがって、熱伝導率が高い保持孔用熱伝達部材74を用いることで、保持孔封止部材37Cと温度検出部51とを流体で接触させる場合に比べて、保持孔封止部材37C(検出領域a)と温度検出部51との間の熱抵抗を低下させて、保持孔封止部材37Cの熱を温度検出部51に伝導し易くして、インクの実際の温度を高精度に且つ高い応答性(インクの急な温度変化に応答する速度が早い)で測定することができる。また、保持孔用熱伝達部材74を用いることで、グリース等の流体を用いた場合に比べて、保持孔用熱伝達部材74を保持孔封止部材37C及び温度検出部51に接続する作業が煩雑であるが、保持孔用熱伝達部材74を用いることで、グリース等の流体に比べて回路基板50側への流出による接触不良が発生するのを抑制することができる。
また、保持孔用熱伝達部材74の長さを保持孔封止部材37Cと温度検出部51との間の距離よりも長くすることで、組み立て易くすることができると共に、回路基板50の固定位置がずれた場合や、温度検出部51の実装高さにばらつきが生じた場合であっても保持孔封止部材37Cと温度検出部51とを確実に接触させることができる。
また、図14に示すように、流路部材本体31には、回収流路120と凹部35とを連通する貫通孔39が設けられており、貫通孔39は、流路部材本体31よりも熱伝導率が高い貫通孔封止部材40Cで封止されて熱抵抗の低い加熱領域bとなっている。
貫通孔封止部材40Cは、板状部材からなり、貫通孔39の供給流路120側の開口面に固定されている。
また、貫通孔封止部材40Cと回路基板50の加熱部52とは、貫通孔用熱伝達部材75を介して接続されている。貫通孔用熱伝達部材75としては、例えば、導電性の可撓性を有する配線などを用いることができる。
また、貫通孔用熱伝達部材75は、貫通孔封止部材40Cと加熱部52との間の距離よりも長いものを用いるのが好適である。これによれば、貫通孔用熱伝達部材75を貫通孔封止部材40C及び加熱部52の両方に固定し易く、組み立て易くすることができる。
このように、貫通孔封止部材40Cと加熱部52とを接続する貫通孔用熱伝達部材75は、保持孔用熱伝達部材74と同様に、空気などの気体などに比べて熱伝導率の高い材料が用いられ、グリース等の流体よりも熱伝導率の高い材料を用いるのが好適である。したがって、熱伝導率が高い貫通孔用熱伝達部材75を用いることで、貫通孔封止部材40Cと加熱部52とを流体で接触させる場合に比べて、貫通孔封止部材40C(加熱領域b)と加熱部52との間の熱抵抗を低下させて、貫通孔封止部材40Cの熱を加熱部52に伝導し易くして、回路基板50の温度を回収流路120のインクの温度に近い温度に加熱することができ、温度検出部51によってインクの実際の温度を高精度に且つ高い応答性(インクの急な温度変化に応答する速度が早い)で測定することができる。また、貫通孔用熱伝達部材75を用いることで、グリース等の流体を用いた場合に比べて、貫通孔用熱伝達部材75を貫通孔封止部材40C及び加熱部52に接続する作業が煩雑であるが、貫通孔用熱伝達部材75を用いることで、グリース等の流体に比べて回路基板50側への流出による接触不良が発生するのを抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、回路基板50の温度検出部51は供給流路110のインクの温度を検出し、加熱部52は回収流路120のインクによって加熱されるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、温度検出部51が回収流路120のインクの温度を検出し、加熱部52が供給流路110のインクによって加熱されるようにしてもよい。ちなみに、検出領域aを回収流路120に設けた場合には、吐出される前のインクの温度を測定することはできないが、インクジェット式記録ヘッド10〜10Cのインクは循環しているため、特に問題はないが、上述した各実施形態のように温度検出部51によって吐出される前のインク温度を検出した方が、実際に吐出されるインク温度に近い温度で駆動手段等を補正して駆動することができるため、高精度な制御が可能となる。
また、上述した各実施形態では、検出領域aをフィルター室113の第2流路114に連通する側の隔壁に設けたが、検出領域aを設ける位置は特にこれに限定されるものではない。例えば、検出領域aをフィルター室113のフィルター34よりも上流側、すなわち、フィルター室113の第1流路112と連通する側の隔壁に設けるようにしてもよい。この場合、検出領域aが測定するインクは、上述した各実施形態に比べてヘッド本体20から離れてしまうため、実際に吐出されるインクの温度と、測定した温度との誤差が上述した各実施形態よりも大きくなってしまう虞があるが、例えば、保持孔封止部材37〜37Cを固定する接着剤等の異物がインク内に混入したとしても、フィルター34によって捕獲することができるため、ノズル開口の目詰まりによるインク吐出不良が発生するのを抑制することができるという効果を奏する。もちろん、検出領域aは、第1流路112や第2流路114を画成する隔壁に設けてもよいが、保持孔36等を形成するためのスペースが必要であるため、インク溜まりが必要となり、インクジェット式記録ヘッド10〜10Cが大型化してしまう。上述した各実施形態では、フィルター34の有効面積を確保するために、フィルター室113は予め広い幅で形成されているため、フィルター室113を画成する隔壁に検出領域aを設けることで、検出領域aを設けるためのスペースを別途設ける必要がなく、インクジェット式記録ヘッド10〜10Cの小型化を図ることができる。
また、上述した各実施形態では、検出領域aを保持孔36と保持孔36を封止する保持孔封止部材37〜37Cとで形成し、加熱領域bを貫通孔39と貫通孔39を封止する貫通孔封止部材40〜40Cとで形成するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、流路部材本体31の液体流路100を画成する隔壁の一部の領域の厚さを薄くして、薄くした領域を検出領域a及び加熱領域bとしてもよい。すなわち、本発明の検出領域a及び加熱領域bは、他の領域よりも熱抵抗が低い領域であれば、流路部材30〜30Cと一体的に設けられていても別体で設けられていてもよい。つまり、熱抵抗は、厚み/(熱伝導率×面積)で規定されるものであるため、同一材料でも厚みを薄くすることでも熱抵抗を下げることができると共に、熱伝導率が高い別材料を用いることで熱抵抗を下げることができるものである。
ちなみに、このように、流路部材本体31の液体流路100の隔壁の一部を薄くして検出領域a及び加熱領域bを設ける場合、流路部材本体31の材料として金属等の熱伝導率の高い材料を用いれば、さらに温度検出部51において実際のインクの温度を高精度に且つ高い応答性で測定することができる。
また、上述した各実施形態では、加熱領域bと回路基板50(加熱部52)とは、直接又は間に気体(空気)やグリース、貫通孔用付勢部材73、73Aや貫通孔用熱伝達部材75等を介して接触した構造を例示したが、回路基板50が直接、液体流路100内のインクに接触してもよい。例えば、回路基板50が、液体流路100の隔壁を画成してもよく、また、液体流路100内に回路基板50が突出して設けられていてもよい。ちなみに、回路基板50がインクに直接接触する領域には、温度検出部51等が設けられていないため、配線や電子部品を設けないようにすれば短絡や電子部品の破壊を抑制することができる。
また、上述した各実施形態では、検出領域aと温度検出部51とは、気体(空気)やグリース等の流体を介して又は保持孔用付勢部材72、72Aや保持孔用熱伝達部材74を介して接触した構造を例示したが、特にこれに限定されず、検出領域aと温度検出部51とが直接接触していてもよい。ただし、検出領域aを形成する部材、例えば、保持孔封止部材37〜37Cや、流路部材本体31等が導電性を有する場合は、温度検出部51としてサーミスターではなく、絶縁性の材料で覆われた温度センサー等を用いればよい。なお、温度検出部51の実装高さにばらつきが生じること、流路部材本体31を比較的安価な成形で製造した際の寸法誤差などを考慮すると、温度検出部51と検出領域aとを直接接触させるように常に製造するのは困難であるが、上述した実施形態のように検出領域aと温度検出部51とをグリース等の流体を介して又は保持孔用付勢部材72、72Aや保持孔用熱伝達部材74を介して接触させることで、温度検出部51の実装高さのばらつきや成形部品の寸法誤差などが生じても、検出領域aと温度検出部51とを確実に接触させることができる。
また、上述した各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。ここで、本実施形態のインクジェット式記録装置について説明する。なお、図15は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
図15に示すように、インクジェット式記録装置Iは、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ3を具備する。キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の被記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また、インクジェット式記録装置Iには、装置本体4に固定されて内部にインクが貯留されたインクタンク等の液体貯留手段2が設けられている。この液体貯留手段2には、インクジェット式記録ヘッド10にインクを供給する供給管2aと、インクジェット式記録ヘッド10からのインクを回収する回収管2bとが接続されている。
供給管2a及び回収管2bは、フレキシブルチューブ等の管状部材からなり、内部にそれぞれインクを供給する供給路と、インクを回収する回収路とが設けられている。そして、供給管2a(供給路)の一端がインクジェット式記録ヘッド10の供給流路110のインク導入口111に接続され、回収管2b(回収路)の一端が回収流路120の排出口121に接続されることで、液体貯留手段2のインクをインクジェット式記録ヘッド10に供給すると共に、インクジェット式記録ヘッド10からのインクを液体貯留手段2に回収する。
なお、特に図示していないが、供給管2aの途中又は回収管2bの途中には、加圧ポンプ又は吸引ポンプ等の圧送手段が設けられており、圧送手段の圧送によってインクは液体貯留手段2とインクジェット式記録ヘッド10との間を循環する。
さらに、インクジェット式記録装置Iには、当該インクジェット式記録装置Iの動作を制御する制御装置9が設けられており、制御装置9とインクジェット式記録ヘッド10とは、配線基板60を介して接続されている。
なお、図15に示す例では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した例では、液体貯留手段2からインクジェット式記録ヘッド10にインクを供給すると共に、液体貯留手段2にインクを回収するインクジェット式記録ヘッド10〜10Cを例示したが、特にこれに限定されず、液体貯留手段2からインクジェット式記録ヘッド10にインクを供給するだけのインクジェット式記録ヘッドにも本発明を適用することができる。
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。