JP2013238406A - セシウム回収方法およびセシウム回収構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 既存の法面を活用(利用)して自然環境中に放出された放射性セシウムを回収することを目的としており、前記放射性セシウムを、大がかりな工事を必要とすることなく既存の部材を用いた簡易な構成でかつ安価に回収することができる新規なセシウム回収方法およびセシウム回収構造を提供すること。
【解決手段】 法尻位置Pから間隔Aをへだてて設置された堰止め材3と、この堰止め材3上方から法尻位置Pを経て法面1にかけ敷設された通水性シート4と、この通水性シート4の上面mに配置された通水性材料製の袋体5,5aと、この袋体5,5a内に収容されたセシウム吸着材6とよりなる。
【選択図】 図2
【解決手段】 法尻位置Pから間隔Aをへだてて設置された堰止め材3と、この堰止め材3上方から法尻位置Pを経て法面1にかけ敷設された通水性シート4と、この通水性シート4の上面mに配置された通水性材料製の袋体5,5aと、この袋体5,5a内に収容されたセシウム吸着材6とよりなる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、セシウム回収方法およびセシウム回収構造に関するものである。
平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所の放射性(放射能)物質漏洩事故により、環境中に多くの放射性物質が放出・拡散され、大きな社会問題となっており、その除染(回収)が急がれている。放出されている放射性物質には半減期が長い、例えば半減期が約2年のセシウム134 (Cs−134)や半減期が約30年のセシウム137 (Cs−137)等が含まれている。
従来、放射性セシウムを含む核分裂生成物で汚染された土地の土壌から核分裂生成物の回収を図るものとして、下記特許文献1に示すように、汚染サイト又は疑いのあるサイトから採取した土壌を処理サイトに輸送し、処理サイトで土壌を特定の液体媒体で洗浄するようにした土地改善法がある。
しかし、特許文献1に示す土地改善法では、汚染された土地の土壌の処理手段が核分裂生成物の回収も含め極めて大がかりである。
上述したように、東京電力福島第一原子力発電所から拡散した放射性物質の除染(回収)が急がれているが、本出願人は、地域社会への貢献という観点から、自然環境中に放出されている放射性物質のうち、半減期が長く問題となっている放射性セシウムの対策を検討した。そして、これら放射性セシウムは、(1)粘土などに強く吸着されているもの(土壌粒子に吸着した放射性セシウムや降雨と共に地面に落下した落ち葉等に沈着している放射性セシウム)、(2)遊離の状態のもの(遊離の状態の放射性セシウム)に大別されるが、これらの放射性セシウムの除染方法は未だ確立されていないので、法面を活用してこれら放射性セシウムを吸着するセシウム回収方法およびセシウム回収構造を提案するものである。
本発明は、既存の法面を活用(利用)して自然環境中に放出された放射性セシウムを回収することを目的としており、前記放射性セシウムを、大がかりな工事を必要とすることなく既存の部材を用いた簡易な構成でかつ安価に回収することができる新規なセシウム回収方法およびセシウム回収構造を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明のセシウム回収方法は、法尻位置から間隔をへだてて堰止め材を設置し、この堰止め材上方から法尻位置を経て法面にかけ通水性シートを敷設し、前記通水性シートの上面にセシウム吸着材を収容した通水性材料製の袋体を配置することを特徴としている(請求項1)。
また、本発明は別の観点から、法尻位置から間隔をへだてて設置された堰止め材と、この堰止め材上方から法尻位置を経て法面にかけ敷設された通水性シートと、この通水性シートの上面に配置された通水性材料製の袋体と、この袋体内に収容されたセシウム吸着材とよりなるセシウム回収構造を提供する(請求項2)。
本発明におけるセシウム吸着材として、放射性セシウムを電荷的・物理的に吸着する「ゼオライト」、または「紺青」を使用したり、あるいは、「ゼオライト」と「紺青」の両方を使用するのが好ましい。
本発明における法面とは、山地の傾斜面を含む。
本発明における袋体は通水性材料製であるが、通水性のみならず、耐水性、耐腐食性を有するものが好ましい。前記袋体の素材として、例えばポリエチレンのような非分解性の材料よりなる不織布を挙げることができる。また、前記袋体の形状としては、設置労力を低減させるために長尺状のものが好ましい。
本発明における通水性シートとしては、法面の緑化工法に用いられる、公知の各種タイプのネット、または不織布を挙げることができ、少なくとも礫以上の大きさのものは通さないものが好ましい。また、前記通水性シートとして、通水性のみならず、耐水性、耐腐食性を有するものが好ましい。そして、前記ネットとしては、その上面に前記袋体を配置するため袋体収納部を編織してあるネットを挙げることができ、一重編みネットや二重編みネットなど、場合に応じて適宜の形状のものが敷設可能である。また、これらネットは場合に応じて適宜目合いの変更が可能である。また、本発明では、袋体収納部を持たない一重編みネットや二重編みネットも適用可能である。この場合、前記袋体を、糊付け等の固着材料や、アンカー、止め釘、杭などの固定具を用いてネットの上面に配置することができる。そして、袋体収納部を持たない不織布の場合も、同様の固着材料、固定具を用いて前記袋体を前記通水性シートの上面に配置することができる。また、本発明における堰止め材としては、間伐材など土砂のストッパーとして機能する部材であればよい。
本発明では、法尻位置から間隔をへだてて堰止め材を設置し、この堰止め材上方から法尻位置を経て法面にかけ通水性シートを敷設し、前記通水性シートの上面にセシウム吸着材を収容した通水性材料製の袋体を配置するよう構成することによって落ち葉や流出した土壌を法尻位置においてトラップできるようにしたので、法面を活用して自然環境中に放出された放射性セシウムが吸着した土壌粒子や自然環境中に放出された放射性セシウムが沈着した落ち葉による放射性物質の拡散を抑制することができる。さらに、既存の法面(山地の傾斜面を含む)は特に表面流下水が多いため、放射性セシウムを含んだ水が法面表面を流れ易いが、本発明では、前記通水性シートの上面にセシウム吸着材を収容した通水性材料製の袋体を配置しているので、法面流下水中の放射性セシウムの吸着をも可能となり、放射性セシウムが前記流下水とともに下流側に流れてしまうことを確実に防止することができる。
以下、この発明の一実施形態について説明する。図1〜図3において、法面を利用して自然環境中に放出された放射性セシウムを回収するための法面活用の回収構造は、法面1の法尻位置Pから適宜間隔Aをへだてて地面2に設置された堰止め材3と、この堰止め材3上方から法尻位置Pを経て法面1にかけ敷設された平面視矩形の通水性シート4と、法尻位置Pにおいて前記通水性シート4の上面mに配置された通水性材料製の袋体5と、この袋体5内に収容されたセシウム吸着材6とより主としてなる。さらに、この実施形態では、吸着材6として、「ゼオライト」と「紺青」の両方を使用するとともに土壌凝集剤(図示せず)も袋体5内に収容されている。細かい粒子の土壌は、前記土壌凝集剤により凝集し、水と共に流下することなく法尻位置P付近にて捕捉される。5aは、法面1において前記通水性シート4の上面mに配置された通水性材料製の袋体で、袋体5と同じものである。この袋体5aにも袋体5と同様にセシウム吸着材6と土壌凝集剤(図示せず)が収容されている。この場合でも、細かい粒子の土壌は、前記土壌凝集剤により凝集し、水と共に流下することなく法尻位置P付近にて捕捉される。すなわち、この実施形態では、袋体5を法尻位置Pに配置するだけではなく、袋体5aを法面1にも配置している。また、前記通水性シート4は、経糸と緯糸とからなる一重のネット7に、袋体5および袋体5aをそれぞれ収納する袋体収納部8および袋体収納部8aを編織してなるものである。袋体5の収納部8と袋体5aの収納部8aは、一重のネット7の表面部に、それの経糸方向に適宜の間隔を隔てて形成されている。なお、この発明における「通水性シートの上面にセシウム吸着材を収容した通水性材料製の袋体を配置する」という文言は、上記のように袋体収納部8および8aにそれぞれ袋体5および5aを収納する場合も含む。これら袋体5,5aは例えば円筒状であって、袋体5,5a内にセシウム吸着材6および土壌凝集剤を収容した後袋体5,5aの両サイドをホッチキス等の留具で封止したものである。
前記堰止め材3は土砂などを堰止めるストッパーとなるもので、この実施形態では円柱形状の間伐材を使用している。堰止め材3の径φは例えば約30cmである。そして、前記堰止め材3は図2に示すように、法面1の法尻位置Pから適宜間隔Aだけ離れた地面2上に、アンカー等の固定具9によって固定された状態で設置されている。この実施形態では、前記間隔Aは30cm〜60cmである。また、一枚の通水性シート4は幅Bおよび全長Cがそれぞれ例えば1m〜1.5mおよび例えば1.5m〜3mである。なお、袋体5,5aの長さdと収納部8,8aの長さBは略同一寸法である。また、一枚の通水性シート4が法面1を覆う範囲Dは、法尻位置Pから50cm〜200cmの部分である。10は、堰止め材3上方から法尻位置Pを経て法面1にかけ敷設された通水性シート4の一端aを堰止め材3に固定するために使用されるピン等の固定具であり、11は、通水性シート4の他端bを法面1に固定するために使用されるアンカー等の固定具である。なお、図1においては、固定具9,10,11を省略している。
而して、法面1の法尻位置Pから適宜間隔Aだけ離れた地面2上に、法尻に沿いながら法尻の幅に相当する数の堰止め材3を隣接させた状態で設置し、各堰止め材3をアンカー9により固定する。図1における両矢印Eは、堰止め材3の軸線方向に沿う方向を示している。続いて、各堰止め材3の上方から法尻位置Pを経て法面1にかけ、例えば収納部8,8aにセシウム吸着材6および土壌凝集剤入りの袋体5,5aを収容した状態で通水性シート4を敷設する。この場合、通水性シート4の一端aは固定具10を用いて堰止め材3の上部位置に固定される一方、通水性シート4の他端bは固定具(例えばアンカー)11を用いて法面1に固定される。また、別途のアンカー(図示せず)を法面1や地面2に打ち込んで通水性シート4を強固に張設してもよい。そして、法面1の法肩方面から通水性シート4上を放射性セシウムを含む水や放射性セシウムを吸着した土砂、落ち葉等が流下すると、水中の放射性セシウムは袋体5,5aに収容されているセシウム吸着材6に吸着される。そして、前記土砂や落ち葉は法尻位置Pやその近傍においてトラップできる。そのため、放射性セシウムを含んでいる水、放射性セシウムが吸着した土壌粒子や落ち葉による放射性物質の拡散を抑制することができる。そして、通水性シート4の交換時には、堰止め材3から固定具10を取り外して通水性シート4の一端aを開放する一方、法面1から固定具11を取り外して通水性シート4の他端bを開放する等の作業を行った後、通水性シート4を丸め込む作業を行うことによって通水性シート4に堆積した前記土砂や落ち葉、そして袋体5,5aを通水性シート4に包み込むことができ、丸め込んだ通水性シート4ごと別途処理場に搬送して処理が施される。このように、放射性セシウムが吸着した前記土砂や落ち葉、また、水中に遊離の状態で存在している放射性セシウムを通水性シート4において一挙に回収することができるので、通水性シート4上の前記土砂や落ち葉等をかき集める作業を行う必要はなくなり、放射性セシウムを含んでいる水そして土砂や落ち葉の回収作業の省力化が可能となる。また、袋体5,5aには、吸着材6として「紺青」が収容されているので、水により袋体5,5aが青く染まることが目視でき、その染色度合いによってどれだけの流下水を処理したのかが一目で分かり、回収時期の判断根拠とすることができる。
なお、本発明では、通水性シート4として、経糸と緯糸とを編織してなるフロントネットと同じく経糸と緯糸とを編織してなるバックネットとで二重構造とされ、これらフロントネットおよびバックネットを互いに重合させ、この重合部位を適当間隔置きに編み込み、または融着させることにより、両ネットの編み込まれない部分または融着されない部分を袋体収納部とする構成の二重編みネットを採用することもできる。
1 法面
2 地面
3 堰止め材
4 通水性シート
5 袋体
6 セシウム吸着材
P 法尻位置
m 上面
2 地面
3 堰止め材
4 通水性シート
5 袋体
6 セシウム吸着材
P 法尻位置
m 上面
Claims (2)
- 法尻位置から間隔をへだてて堰止め材を設置し、この堰止め材上方から法尻位置を経て法面にかけ通水性シートを敷設し、前記通水性シートの上面にセシウム吸着材を収容した通水性材料製の袋体を配置することを特徴とするセシウム回収方法。
- 法尻位置から間隔をへだてて設置された堰止め材と、この堰止め材上方から法尻位置を経て法面にかけ敷設された通水性シートと、この通水性シートの上面に配置された通水性材料製の袋体と、この袋体内に収容されたセシウム吸着材とよりなるセシウム回収構造。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2012109459A JP2013238406A (ja) | 2012-05-11 | 2012-05-11 | セシウム回収方法およびセシウム回収構造 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014182006A (ja) * | 2013-03-19 | 2014-09-29 | Toyobo Co Ltd | 再汚染抑制工法 |
JP2017111063A (ja) * | 2015-12-18 | 2017-06-22 | 国立大学法人茨城大学 | 放射性物質の除染方法及びその除染システム |
CN109671695A (zh) * | 2017-10-17 | 2019-04-23 | 大口电材株式会社 | 引线框架及其制造方法 |
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2012
- 2012-05-11 JP JP2012109459A patent/JP2013238406A/ja active Pending
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