JP2013234342A - 磁区細分化処理方法および方向性電磁鋼板 - Google Patents

磁区細分化処理方法および方向性電磁鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気特性の向上効果十分に享受し得る条件で高エネルギービームを照射しても、被膜破壊を抑制することができ、しかも、絶縁被膜を再コートする必要がない磁区細分化処理方法を提案するとともに、その方法で製造した方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】仕上焼鈍後、被膜張力が5MPa以上の絶縁被膜を形成してなる方向性電磁鋼板の表面に、高エネルギービームを圧延方向と交差する方向に走査して照射し、熱歪領域を導入して磁区細分化処理する方法において、上記鋼板を捩じり変形して湾曲させて被照射面に降伏応力の90%以下の圧縮応力を付与した状態で高エネルギービームを照射し、磁区細分化処理する。
【選択図】図1

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の表面に高エネルギービームを照射して磁区細分化処理を施す方法と、その方法で磁区細分化処理を施した方向性電磁鋼板に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主としてトランス等の鉄心材料として用いられるものであるため、磁気特性に優れること、特に鉄損特性に優れる(鉄損が低い)ことが強く求められている。磁気特性を向上するためには、結晶方位を制御し、二次再結晶粒を{110}<001>方位(ゴス方位)に高度に集積させてやることや、製品鋼板中の不純物を低減してやることが有効である。
しかし、結晶方位を制御したり、不純物を低減したりすることは、既にかなりのレベルにまで達しており、これ以上の向上は原理的にもまた製造コストとの兼ね合いからも限界がある。そこで、この限界を打破する技術として、鋼板表面に物理的な手段を用いて不均一性(歪)を導入し、磁区幅を細分化して鉄損を低減する、いわゆる「磁区細分化技術」が開発され、実用化されている。
例えば、特許文献1には、最終製品板にレーザビームを照射し、鋼板表層に線状の高転位密度領域(熱歪領域)を導入し、磁区幅を狭くすることによって、鉄損を低減する技術が提案されている。レーザ照射を用いる磁区細分化技術は、その後、さらに改良されて、鉄損特性がより良好な方向性電磁鋼板が得られるようになってきている(特許文献2〜特許文献4参照。)。
また、レーザ照射以外の手段で熱歪領域を導入する方法として、特許文献5には、鋼板表面にプラズマ炎を放射して線状の高転位密度領域を導入する方法が、特許文献6には、鋼板表面に電子ビームを照射して線状の高転位密度領域を導入する方法がそれぞれ提案されている。
しかし、レーザビームや電子ビームのような高いエネルギーを有するビームの照射は、鋼板表面に被成された絶縁被膜を溶融したり、破壊したりするため、絶縁被膜が薄くなったり、鋼板表面が露出したりするようになる。その結果、高エネルギービームの照射によって、磁区が細分化されて鉄損が低減されるものの、絶縁被膜の溶融や破壊によって、製品鋼板の絶縁性や防錆能が劣化してしまうという問題が発生する。
このような問題点を解決するため、絶縁被膜の破損部を補修する技術が提案されている。例えば、特許文献7には、磁区細分化により破壊された被膜の上に、絶縁被膜を再度コーティングする技術が、また、特許文献8には、再塗布する被膜中に固形物を添加して鋼板のすべり性を改善する技術が開示されている。
特公昭57− 2252号公報 特開2006−117964号公報 特開平10−204533号公報 特開平11−279645号公報 特開昭62− 96617号公報 特開平01−281708号公報 特開昭56−105421号公報 特開平04−165022号公報
しかし、上記特許文献7や特許文献8の技術のように、絶縁被膜を再コートする方法は、製造コストを上昇させる。そのため、磁気特性の改善には最適ではないが、高エネルギービームの照射エネルギーを制限し、被膜破壊を抑制可能な範囲として実施しているのが実情である。しかし、磁気特性を重視する場合には、敢えて被膜破壊が生ずる条件で高エネルギービームを照射しなければならない場合もある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気特性の向上効果を十分に享受し得る条件で高エネルギービームを照射しても、被膜破壊を抑制することができ、しかも、絶縁被膜を再コートする必要がない磁区細分化処理方法を提案するとともに、その方法で製造した方向性電磁鋼板を提供することにある。
発明者らは、上記の課題を解決するべく、高エネルギービームの照射による熱歪導入方法について鋭意検討を重ねた。その結果、仕上焼鈍後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板の表面に、圧縮応力を付与した状態で高エネルギービームを照射することで、絶縁被膜を破壊することなく十分に磁区細分化を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記知見に基く本発明は、仕上焼鈍後、被膜張力が5MPa以上の絶縁被膜を形成してなる方向性電磁鋼板の表面に、高エネルギービームを圧延方向と交差する方向に走査して照射し、熱歪領域を導入して磁区細分化処理する方法において、前記鋼板の被照射面に圧縮応力を付与した状態で高エネルギービームを照射することを特徴とする磁区細分化処理方法である。
本発明の磁区細分化処理方法は、上記鋼板を板厚の10000倍以下の曲率半径で湾曲させることにより、被照射面に降伏応力の90%以下の圧縮応力を付与することを特徴とする。
また、本発明の磁区細分化処理方法は、鋼板を捩じり変形して湾曲させて被照射面に圧縮応力を付与することを特徴とする。
また、本発明の磁区細分化処理方法は、上記湾曲面の母線と鋼板の圧延方向とがなす角度が5°以上であることを特徴とする。
また、本発明の磁区細分化処理方法は、上記高エネルギービームの走査方向と鋼板の圧延方向とがなす角度が45°以上であることを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の方法で磁区細分化処理が施されてなり、かつ、前記磁区細分化処理後、絶縁被膜の再コートが施されていないことを特徴とする方向性電磁鋼板である。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の磁区細分化効果を十分に享受し得る高いエネルギービームを照射しても、絶縁被膜の破壊を抑制することができるので、絶縁被膜を再コートする必要のない低鉄損の方向性電磁鋼板を安価に製造することが可能となる。
捩じり変形して鋼板に湾曲部を形成する方法を説明する図である。 被膜張力の測定方法について説明する図である。
本発明は、コイル状に巻き取った方向性電磁鋼板の素材鋼板に仕上焼鈍を施し、張力絶縁被膜を被成した後、上記鋼板表面に圧縮応力を付与した状態で、電子ビームやレーザビームなどの高エネルギービームを照射して、点状もしくは線状の熱歪領域を導入することによって、上記絶縁被膜に損傷を与えることなく磁区細分化処理を施すところに特徴がある。
なお、上記張力絶縁被膜とは、鉄損低減のために鋼板に張力を付与する絶縁被膜のことを意味し、具体的には、下地のフォルステライトを主体とするガラス質の被膜と、仕上焼鈍後に被成した絶縁被膜との合計で5MPa以上の引張応力を付与するものであることが必要である。5MPa未満では、鉄損低減効果が十分に得られないからである。
ここで、本発明において重要なことは、高エネルギービームの照射は、仕上焼鈍と張力絶縁被膜の被成後に行う必要があることである。これは、方向性電磁鋼板の素材鋼板に二次再結晶粒を起こさせてゴス方位を優先成長させる仕上焼鈍工程、および、絶縁被膜に張力付与効果を発現させる被膜形成工程は、いずれも高温で熱処理を施す工程であるため、高エネルギービームの照射で熱歪を付与しても、それらの熱処理によって上記熱歪が減少または消滅し、磁区細分化の効果が消失してしまうからである。
次に、本発明において重要なことは、鋼板表面に圧縮応力を付与した状態で、高エネルギービームを照射する必要があることである。圧縮応力を付与することで、高エネルギービーム照射による絶縁被膜の破壊が抑制される理由は、現時点ではまだ十分に明確になっていないが、発明者らは次のように考えている。
鋼板表面に形成された張力絶縁被膜は、高エネルギービームの照射によって、加熱、冷却されるが、その際、被膜と地鉄との熱膨張差に起因した引張応力により破壊が発生する。そこで、絶縁被膜に予め圧縮応力を付与しておくことで、上記照射時の引張応力が緩和されて、破壊が抑制される。また、絶縁被膜が高エネルギービームの照射によって溶融する場合でも、引張応力が付与された状態で溶融すると、地鉄が露出し易くなるが、圧縮応力が予め付与されていることで、斯かる露出も軽減されるためと考えられる。したがって、圧縮応力付与による上記被膜損傷抑制効果は、被膜張力が大きいほど大きい。
本発明において、高エネルギービームの照射面に圧縮応力を付与する方法については、特に限定されないが、例えば、例えば、図1に示したように、鋼板を円柱等に巻き付けてヘリカルターンさせるときのようにして捩じり変形して、鋼板に湾曲部を形成することによって、その湾曲部の内面に圧縮応力を生じさせる方法がある。この方法は、鋼板の通板経路(パスライン)を屈曲させるだけで鋼板を容易に湾曲させることが可能であり、また、鋼板を湾曲させるのに要する長さも短くできるなどのメリットがある。
鋼板を湾曲させて圧縮応力を付与する場合、湾曲部の曲率半径は板厚の10000倍以下とするのが好ましい。板厚の10000倍を超える曲率半径では、湾曲部の内面に生じる圧縮応力が小さくなり、本発明の損傷低減効果が得られ難い。一方、曲率半径を小さくし過ぎて、湾曲部の内面に生じる圧縮応力が鋼板の降伏応力の90%を超えると、鋼板が塑性変形を起こして磁気特性の劣化が生じる易くなる。よって、鋼板を湾曲させるときの曲率半径は、板厚の10000倍以下とし、かつ、鋼板に付与される圧縮応力が降伏応力の90%以下となるように下限値を設定することが好ましい。
ここで、湾曲させた鋼板表面に付与される圧縮応力は、下記(1)式で求めることができる。

σ=E・ε=E・(t/2R) ・・・(1)
ここで、E:鋼板の<100>方向(圧延方向)のヤング率E(=1.4×10MPa)
ε:鋼板表面の歪量(板厚中心でε=0)
R:曲率半径(mm)
t:板厚(mm)
また、捩じり変形で鋼板を湾曲させる場合には、鋼板の圧延方向(進行方向)と湾曲面の母線とがなす角度を5°以上とするのが好ましい。5°未満では、鋼板を捩じり変形して湾曲させるのに必要な長さが長くなるため設備が長大化する。なお、上限は、45°を超えると捩じり変形による鋼板のパスラインの角度変化が直角(90°)を超えるため、設備配列上好ましくはない場合が生じたり、高エネルギービームの走査方向が、圧延方向に近づいたりするため、好ましくない。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の成分組成について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板は、従来公知の成分組成を有する方向性電磁鋼板であればよく、例えば、下記の成分組成を有するものであることが好ましい。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な元素であり、含有量が2.0mass%に満たないと、十分な鉄損低減効果が得られない。一方、8.0mass%を超えると、加工性が著しく低下するだけでなく、磁束密度も低下するようになる。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは2.5〜6.0mass%の範囲である。
C:0.0050mass%以下
Cは、磁気時効を起こして磁気特性を劣化させる元素であるため、製品板中に含まれるC量は0.0050mass%以下であることが好ましい。
なお、鋼素材(スラブ)中に含まれるC量は、低くても二次再結晶が可能であるので下限を設ける必要はない。また、熱延板組織を改善する効果があるため、0.0050mass%を超えて含有していてもよい。しかし、0.15mass%を超えて含有させると、製造工程の脱炭焼鈍で磁気時効の起こらない0.0050mass%以下まで低減することが難しくなるので、上限は0.15mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.0050〜0.10mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を向上させるために必要な元素であるが、0.005mass%未満では上記添加効果に乏しく、一方、1.0mass%を超えると、磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.01〜0.3mass%の範囲である。
上記Si,CおよびMn以外の成分は、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合と、しない場合とで分けられる。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合で、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、Al:0.01〜0.065mass%、N:0.005〜0.012mass%の範囲で含有させるのが好ましい。また、MnS・MnSe系インヒビターを利用するときには、前述した量のMnと、Seおよび/またはSを、S:0.005〜0.03mass%、Se:0.005〜0.03mass%の範囲で含有させるのが好ましい。なお、AlN系とMnS・MnSe系インヒビターを併用してもよい。
次に、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量を極力低減し、Al:0.01mass%以下、N:0.0050mass%以下、S:0.0050mass%以下およびSe:0.0050mass%以下に制限するのが好ましい。
上記の基本成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
ただし、磁気特性の改善を目的として、Ni:0.03〜1.50mass%、Sn:0.01〜1.50mass%、Sb:0.005〜1.50mass%、Cu:0.03〜3.0mass%、P:0.03〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%およびCr:0.03〜1.50mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を添加してもよい。
上記Niは、熱延板の組織を改善して磁気特性を向上させるのに有用な元素であるが、0.03mass%未満では、上記磁気特性の向上効果が小さく、一方、1.5mass%を超えると、二次再結晶が不安定になり、磁気特性が劣化するため、0.03〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
また、Sn,Sb,Cu,P,MoおよびCrは、いずれも磁気特性の向上に有用な元素であるが、上記した下限値に満たない添加量では磁気特性の向上効果が小さく、一方、上記した上限値を超える添加は、二次再結晶粒の発達を阻害するようになる。よって、上記元素は、それぞれ、上記の範囲で含有させることが好ましい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上述した成分組成に調整した鋼を溶製し、鋼素材(スラブ)とした後、熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍または脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、その後、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍を兼ねた仕上焼鈍を施した後、鋼板表面に張力絶縁被膜を被成する従来公知の方法で製造した方向性電磁鋼板に対して磁区細分化処理を施す一連の工程からなる。以下、具体的に説明する。
上記製造方法において、鋼素材(スラブ)を製造する方法は、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法のいずれの方法を用いてもよく、また、薄スラブ鋳造法を用いてもよい。
また、インヒビター形成成分を含有しない鋼素材を熱間圧延する場合には、加熱炉で再加熱することなく、連続鋳造後、直ちに熱間圧延に供してもよい。また、鋼素材が薄スラブである場合には、熱間圧延を省略してもよい。
次いで、上記鋼素材を常法で熱間圧延して熱延板とした後、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の焼鈍温度は、800〜1200℃の範囲とするのが好ましい。焼鈍温度が800℃未満では、熱間圧延でのバンド組織が残留し、一次再結晶組織を整粒化するのが難しくなり、二次再結晶粒の成長が阻害されて、製品板のゴス組織を高度に発達させることができなくなる。一方、焼鈍温度が1200℃を超えると、結晶粒が粗大化し過ぎ、却って一次再結晶組織を整粒化することが困難となるからである。
次いで、上記熱延板は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とした後、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施してから、例えば、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、二次再結晶させるとともに、フォルステライト被膜の形成および純化を図ること目的とした仕上焼鈍を施す。なお、上記一次再結晶焼鈍中あるいは一次再結晶焼鈍後から二次再結晶開始までの間に、インヒビターを強化する目的で、鋼板に窒化処理を施してもよい。
上記最終仕上焼鈍を施した冷延板は、その後、形状矯正を目的とした平坦化焼鈍の前または後に、鋼板表面に被膜処理液を塗布し、焼き付けて張力絶縁被膜を被成する。なお、張力被膜の焼き付けは、平坦化焼鈍と兼ねて、同時に行ってもよい。
上記張力絶縁被膜は、前述したように、下地のフォルステライト質の被膜と合わせた被膜張力が5MPa以上の絶縁被膜であることが必要である。被膜の種類としては、従来公知のシリカおよびリン酸塩を主成分とするものや、ホウ酸塩とアルミナゾルを用いたコーティング、複合水酸化物を用いたものでもよいが、リン酸アルミニウムまたはリン酸マグネシウム等のリン酸塩とシリカを主成分とするガラス質の張力絶縁被膜を用いるのが好ましい。
なお、絶縁被膜により付与される張力は、本発明では、以下の方法で測定する。
まず、張力を測定する鋼板の片表面(測定面)に保護テープを貼り付けてシールした後、アルカリ水溶液に浸漬して非測定面の絶縁被膜を剥離する。すると、鋼板は、測定面側に残存した絶縁被膜による引張応力の大きさに応じて、図2に示したような反りを発生する。ここで、上記鋼板の反りが円弧であると仮定すると、図2中に示した鋼板の反りの大きさを表すLおよびXは、下記(2)式および(3)式で表される。

L=2Rsin(θ/2) ・・・(2)
X=R{1−cos(θ/2)} ・・・(3)
また、曲率半径Rは、上記(2)式および(3)式から、下記(4)で表される。

R=(L+4X)/8X ・・・(4)
そこで、上記図2に示したLとXを測定し、その値を(4)式に代入することで、曲率半径Rを求めることができる。
一方、曲率半径Rと鋼板表面の応力σとは、前述したように、(1)式に示した関係があるから、上記のようにして求めたRを(1)式に代入することで、絶縁被膜によって鋼板表面に付与される応力σを求めることができる。
上記のようにして張力絶縁被膜を被成した方向性電磁鋼板は、その後、本発明の磁区細分化処理を施して製品とする。
ここで、本発明において熱歪導入のために照射する高エネルギービームとしては、通常公知の電子ビームやレーザビームなどを用いることができるが、中でも電子ビームは、レーザビームと比べて、照射による被膜温度の上昇が小さく、被膜の溶融が生じ難いため、好ましく用いることができる。なお、レーザビームを用いる場合には、YAGレーザ、COレーザ、ファイバーレーザ等のパルス発振や連続発振等、公知のものを用いることができる。
また、高エネルギービームは、鋼板の圧延方向と交差する向き、好ましくは鋼板の圧延方向に対して45°以上、最も好ましくは直交する90°の向きに走査して照射し、鋼板表面に直線状または点線状に熱歪を導入する。鋼板の圧延方向と交差する向きに走査する高エネルギービームの照射間隔は、磁区細分化による鉄損低減効果を効果的に発現させる観点から、2〜20mmの範囲とし、鋼板に導入する熱歪の深さは5〜30μm程度とするのが好ましい。
また、鋼板を捩じり変形して湾曲させる場合、圧縮応力を与えることが可能であれば少なからず効果は得られるが、高エネルギービームの走査方向は、圧縮応力の方向、すなわち、曲率半径がもっとも小さくなる湾曲面の母線と垂直な方向とするのが好ましい。
なお、磁区細分化処理の効果は、方向性電磁鋼板の二次再結晶のゴス方位への集積度が高いほど大きいことが知られている。方向性電磁鋼板における方位集積度の目安としては、一般に磁束密度B(800A/mで磁化した際の磁束密度)がよく用いられるが、本発明を適用する方向性電磁鋼板としては、Bが1.88T以上であることが好ましく、1.92T以上であることがより好ましい。また、磁区細分化による鉄損低減効果は、被膜直下の地鉄の表面粗さが小さいほど大きいことが知られており、算術平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましい。
C:0.05mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.06mass%、Al:0.0250mass%、N:0.0080mass%、S:0.0015mass%およびSe:0.02mass%を含有する板厚が0.23mmの最終冷延板に、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布した後、二次再結晶焼鈍と純化処理を兼ねた仕上焼鈍を施し、その後、50mass%のコロイダルシリカとリン酸マグネシウムからなる絶縁コーティング液を塗布し、形状矯正を兼ねた800℃の平坦化焼鈍を施して焼き付けて方向性電磁鋼板とした。斯くして得た方向性電磁鋼板の磁気特性について、JIS C2556に適合する単板磁気測定装置(SST)で測定したところ、励磁条件1.7Tおよび50Hzにおける鉄損W17/50が0.89W/kg、磁化力800A/mにおける磁束密度Bが1.93Tであった。なお、絶縁被膜の張力を、前述した図2に示した方法で測定したところ15MPaであった。また、この方向性電磁鋼板の降伏応力は348MPaであった。
次いで、上記方向性電磁鋼板から、圧延方向をL、板幅方向をC方向としたとき、L:500mm×C:300mmおよびL:500mm×C:150mmの2種類の試験片を切り出した後、所定の曲率半径を付与することができるステンレス製治具を用いて試験片を種々の曲率半径で湾曲させ、その湾曲した試験片の内面側に、高エネルギービームを、圧延方向と湾曲面の母線とがなす角度と、ビームの走査方向と鋼板の圧延方向とがなす角度、およびビームの走査方向と湾曲部の母線とがなす角度を表1のように変化させて照射し、磁区細分化処理を施した。なお、L:500mm×C:300mmの試験片は、曲率半径が100mm以上の場合に、また、L:500mm×C:150mmの試験片は、曲率半径が100mm未満に場合に使用した。
また、一部の試験片は、比較例として、平板のまま(曲率=0)の状態で高エネルギービームを、ビームの走査方向をC方向とし、走査線の間隔を5mmとして照射した。
なお、上記試験では、高エネルギービームとして、電子ビーム、パルスレーザおよび連続レーザの3種類を用い、電子ビームは、加速電圧:150kV、ビーム径:0.1mmφ、走査速度:10m/secの条件で、パルスレーザは、QスイッチYAGレーザを用いてビーム径:0.3mmφ、照射点間隔:0.4mmの条件で、また、連続レーザは、ファイバーレーザを用いて、ビーム径:0.2mmφの条件で照射した。参考として、各ビームの出力値を、鋼板表面1cm当たりの熱量に換算して表1に示した。
上記のようにして磁区細分化処理を施した各試験片について、下記の試験に供した。
<鉄損W17/50の測定>
磁区細分化処理を施した各試験片の長さ方向および幅方向中央部から、L:300mm×C:100mmの磁気測定用試験片を採取し、単板磁気測定装置SSTで鉄損W17/50を測定した。
<層間抵抗の測定>
磁区細分化処理を施した各試験片の全幅から、L:400mm×C:150mmの試料を採取し、JIS C2550に記載のA法に準拠して層間抵抗を測定した。
<耐錆性>
磁区細分化処理を施した各試験片の全幅から、L:100mm×C:50mmの試料を採取し、温度:50℃、露点:50℃で大気中に50時間保持した後、試料表面に発生した錆の発生率を目視で測定した。
上記測定結果を表1に併記した。この結果から、本発明に従い、湾曲させて磁区細分化処理を施した鋼板は、従来のように平坦の状態で磁区細分化処理をした鋼板と比較して、鉄損特性に優れるだけでなく、絶縁性や耐錆性にも優れていることがわかる。
Figure 2013234342
本発明の技術は、方向性電磁鋼板のみならず、冷延鋼板や表面処理鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム板等への電子ビーム、レーザビーム等の照射にも適用することができる。

Claims (6)

  1. 仕上焼鈍後、被膜張力が5MPa以上の絶縁被膜を形成してなる方向性電磁鋼板の表面に、高エネルギービームを圧延方向と交差する方向に走査して照射し、熱歪領域を導入して磁区細分化処理する方法において、
    前記鋼板の被照射面に圧縮応力を付与した状態で高エネルギービームを照射することを特徴とする磁区細分化処理方法。
  2. 前記鋼板を板厚の10000倍以下の曲率半径で湾曲させることにより、被照射面に降伏応力の90%以下の圧縮応力を付与することを特徴とする請求項1に記載の磁区細分化処理方法。
  3. 鋼板を捩じり変形して湾曲させて被照射面に圧縮応力を付与することを特徴とする請求項1または2に記載の磁区細分化処理方法。
  4. 前記湾曲面の母線と鋼板の圧延方向とがなす角度が5°以上であることを特徴とする請求項3に記載の磁区細分化処理方法。
  5. 前記高エネルギービームの走査方向と鋼板の圧延方向とがなす角度が45°以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁区細分化処理方法。
  6. 前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で磁区細分化処理が施されてなり、かつ、前記磁区細分化処理後、絶縁被膜の再コートが施されていないことを特徴とする方向性電磁鋼板。
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