(本発明の一態様を得るに至った経緯)
上述のとおり、従来より、立体映像を視聴することができる映像表示装置において、モアレを低減するための提案がなされている(特許文献1〜3)。
特許文献1に開示された先行例は、バリアを大きく傾けて、観察位置で観察されるピクセル面積の変動を抑えることで、モアレをより目立たなくする手法である。しかし、実際にバリアの角度を傾けていくと、隣接する画素も1つのスリットから同時に視認されやすくなるため、結果としてクロストークが増えてしまい、映像ぼけが強調される。
また、特許文献2に開示された先行例は、バリアピッチの1/2サイズの歯形形状の縦ストライプパターンを用いる方法である。しかし、このようなパターンでは、平均開口率が大きくなるために、クロストークの増加による映像ぼけが強調される。
さらに、特許文献3に開示された先行例は、ジグザグまたは曲線パターンの開口部のエッジ形状を楕円弧とし、隣り合う視差画素の混ざり合いを発生させることで、ジャンプポイントの緩和を図る方法である。しかし、このような方法では、前述の2つの先行例と同様に、クロストークの増加による映像ぼけが強調される傾向がある。
以上のことから、従来の方法では、モアレを低減させる一方で、クロストークが増加してしまう。このように、モアレ(モアレ強度)とクロストーク(クロストーク量)とは、トレードオフの関係にあり、一方を改善すると、他方の課題が大きくなる。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、モアレの低減とクロストークの低減との両立を図ることができる映像表示装置を提供することを目的とする。特に、本発明は、上記のトレードオフの関係をシフトさせるためのマイクロノッチという細かな凹凸形状を開口部のエッジ形状として用いる場合において、設計通りの形状を再現することが困難であるという点に鑑みてなされたものである。
そこで、本発明に係る映像表示装置の一態様は、複数の異なる画像を含む合成画像を表示する映像表示手段と、前記映像表示手段から所定の距離を隔てて配置され、前記映像表示手段に表示された合成画像を前記複数の異なる画像毎に分離する映像分離手段と、を備え、前記映像分離手段は、光を透過させる開口部と光を遮断する遮光部とからなるバリアであり、前記開口部と前記遮光部との境界線は、凹凸形状であり、前記遮光部の材料は、カルド樹脂であることを特徴とする。
本態様によれば、バリアの遮光部の材料としてカルド樹脂を用いることにより、開口部と遮光部との境界線の細かな凹凸形状を設計どおりに忠実に再現することができる。これにより、開口部を通して見える画素のぼやけ量や範囲をコントロールすることが可能な微細な凹凸形状を開口部のエッジに付加することができるので、クロストークを増やすことなくモアレを減少させることができ、高画質の映像表示装置を実現することができる。
また、本発明に係る映像表示装置の一態様において、前記遮光部は、透明接着剤を介して2枚の透明基板に挟まれている、としてもよい。
バリアの遮光部をカルド樹脂によって作製する場合、既存のブラックマトリクスを製造するときの製造装置を使用することができるが、その際に用いる基板は厚み1mm前後の極めて薄い基板となる。この場合、その極薄基板からなるバリアを表示パネルに取り付ける際に、バリアが撓んだり歪んだりして、それがモアレやクロストークの原因となる。
本態様では、遮光部を透明接着剤によって2枚の透明基板の間に貼り合わせているので、一定の厚みを確保することができる。これにより、バリアを映像表示手段(表示パネル)に取り付ける際にバリアが撓んだり歪んだりすることを防止することができる。また、カルド樹脂は非常に柔らかく耐摩耗性や耐スクラッチ性に劣るという性質を有するが、本態様のように2枚の透明基板で挟み込むことにより、耐摩耗性や耐スクラッチ性など機械的耐久性を向上させることができる。
また、本発明に係る映像表示装置の一態様において、前記凹凸形状は、山と谷とが繰り返されるノッチ形状である、としてもよい。
本態様によれば、開口部と遮光部との境界線がノッチ形状となっているので、バリアを通して見える画素のぼやけ量や範囲を容易にコントロールすることができる。
また、本発明に係る映像表示装置の一態様において、前記映像表示手段は、行列状に配置された複数のサブ画素を有し、前記凹凸形状は、凹部と凸部とが周期的に変化する形状であり、前記凹部および前記凸部それぞれ1つ分の行方向および列方向における大きさは、前記サブ画素1つ分の行方向または列方向の大きさよりも小さい、としてもよい。
また、本発明に係る映像表示装置の一態様において、前記開口部を構成する一組の前記境界線は、凹部と凸部とが周期的に繰り返されており、前記一組の境界線のうちの一方は、周期、または、前記凹部もしくは前記凸部が他方と異なる、としてもよい。
以下、本発明の実施形態に係る映像表示装置について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
(第1実施形態)
図1から図4を用いて、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置について説明する。本実施形態では、周期的に開口幅を左右対称で変化させるように細かいノッチ構造をバリアパターンに持たせ、開口部のエッジに凹凸を付加してバリアを通して見える画素のぼやけ量や範囲をコントロールするカルド樹脂から構成されるバリアを備える映像表示装置について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置におけるバリアのパターンを示す図と当該バリアの開口部形状の構成を示す拡大平面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置と比較例に係る映像表示装置とにおけるバリアの作用効果の概要を示す図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置のバリア(カルド樹脂)と比較例の映像表示装置のバリア(エマルジョン樹脂)とを作製したときにおけるバリアの光学顕微鏡写真である。これらの図に従い、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る映像表示装置は、特殊なメガネを用いることなしに裸眼で立体映像を観察することができる立体映像表示装置であって、複数の異なる画像を含む合成画像を表示する映像表示手段100と、映像表示手段100から所定の距離を隔てて配置されるとともに映像表示手段100に表示された合成画像を複数の異なる画像毎に分離する映像分離手段101とを備える。映像表示手段100は、行列状に配置された複数のサブ画素からなる画素部を有し、画素部には2次元の視差画像が表示される。映像表示手段100は、例えば液晶表示パネルまたは有機ELパネルなどの表示パネルである。また、映像分離手段101は、例えば、映像表示手段100からの画像の光を通過または遮蔽することによって所定の位置(例えばユーザの観察位置)に視差画像を提示するための視差バリア(パララックスバリア)である。
また、本実施形態に係る映像表示装置は、さらに、映像表示手段100または映像分離手段101等の初期の調整を行う初期調整手段105と、映像表示手段100の表示を制御する表示回路107と、映像分離手段101と映像表示手段100との間の距離または映像分離手段101の位置等を調整するバリア調整回路106と、表示回路107を介して映像表示手段100に表示される視差合成画像を格納する記憶媒体108とを備える。
このように構成される映像表示装置において、まず、映像表示を開始する場合や居間等の部屋に初めて設置された時点で、初期調整手段105によって、映像表示手段100(表示パネル)および映像分離手段101(バリア)等の調整が実施される。この場合、例えば、映像分離手段101と映像表示手段100との間の距離あるいは映像分離手段101の傾きを所定の調整画像を用いて行う。
また、この調整と合わせて、最適視聴距離からのテスト画像を用いた立体映像視認評価を行い、見易さやぼけ/融像程度をもとに、表示回路107での階調特性のチューニング等も実施される。なお、状況に応じて、視差画像内の視差量制御(線形係数での強弱制御や水平方向シフト量調整)が実施される。
観察者が映像表示装置により立体映像を観察する場合、映像表示手段100で表示された視差合成画像は、映像分離手段101によって所定の位置で所定視差画像が観察できるように分離される。これにより、観察者は、その観察位置で異なる視差画像を左眼と右眼とで観察することができ、立体映像を観察することができる。
映像分離手段101は、光を透過させる開口部(開口領域)と光を遮断する遮光部(遮光領域)とによって構成されたバリアである。本実施形態における映像分離手段101は、図2の(a)に示すように、斜め方向に傾いた開口部が所定ピッチで配置されたスラントバリアである。なお、映像分離手段101としては、サブ画素サイズに合わせた矩形構造の開口部を有するステップバリアを用いてもよい。開口部のピッチについては、画素ピッチと最適視聴距離、パネルとバリア間の距離、および、視差数で幾何学的に決定されるものであり、通常は開口部の大きさ(水平方向の視差を考える場合は、幅)を調整することで、モアレパターンの低減化を図るとともに、隣り合う視差画像が混在することで発生するクロストークやぼけの低減化を図るが、前述のようにモアレの強度とクロストーク量との関係は、トレードオフの関係にあり、片方を改善すると、もう片方の課題が大きくなる。
そこで、本実施形態では、バリアの開口部のエッジに所定の細かさで決定される凹凸構造を付加することで、クロストークを増やすことなくモアレのコントラストを減少させている。図2の(b)に示すように、バリアにおける開口部と遮光部との境界線を、凹部と凸部とが周期的に変化する凹凸形状としている。具体的には、バリアの開口部を構成する一組の境界線(対向する境界線)を、凸部(山)と凹部(谷)とが周期的に繰り返されるノッチ形状としている。すなわち、バリアの開口部(遮光部)は、ノッチ形状を構成する単位構造としてノッチ構造を有する。以下、本実施形態におけるバリアのノッチ形状について説明する。
図2の(b)では、周期的に開口幅が最大開口幅hmaxから最小開口幅hminの間を線形的に変化するようにして、最小開口幅をもつスラントバリアの開口部に一定の三角形構造が付加されたバリアパターンの例を示している。左右における三角形(ノッチRとノッチL)はバリア中心軸にある点Cを中心とした点対称な形状である。このパターンは、バリア中心軸の垂直方向に対する傾き角度αと、ノッチ構造(三角形部分)の水平軸に対する傾き角度β、ノッチ構造の高さds、ノッチ構造の幅dwの4つにより定義されている。また、ノッチ構造の高さdsは、1画素ピッチpにおけるノッチ構造の分割数(ノッチ構造の周期)nを用いて、ds=p/nとあらわすことも可能である。ここで、1画素ピッチpがR、G、Bの3サブ画素で1つの画素が構成されている場合は、サブ画素サイズspを用いてp=3×spとあらわすことも可能である。また、ノッチ構造の幅dwは、例えば(式1)のようになる。なお、本実施形態において、左側のノッチLの幅dwLと右側のノッチRの幅dwLとはいずれも同じ幅dwとしている。
次に、本実施形態における映像分離手段(バリア)101の凹凸構造による作用効果について、図3を用いて説明する。なお、図3ではスラントバリア構造をもとに説明するが、通常の縦ストライプバリア構造でも同様に成り立つと考える。
バリアでは、開口部を通して観察される画素面積が大きい場合は明るく見える(明部)が、開口部を通して観察される画素面積が小さくなると、すなわち、ブラックマトリクス部の面積が大きくなると、暗く見える(暗部)。通常、バリアピッチは、所定の最適視聴距離で画像全体における所定視差方向の画素が集まるように、サブ画素サイズの視差数N倍よりも少し小さな値になっている。したがって、ある観察位置から見た場合に、バリアから見える画素位置と実際に見える画素位置との間にズレが生じる。
そのため、図3の(a)に示すように、従来のスラントバリアの構造では、明暗パターンが発生することとなり、この明暗パターンがモアレとして観察される。また、この明暗の強さがモアレ強度として認識される。
これに対して、図3の(b)に示すように、光を拡散する拡散板や拡散フィルムを用いて光の明暗をぼかすことによって、ブラックマトリックス部(リブ部とも言う)や補助電極の影響を少なくし、明暗の振れ幅を小さくすることでモアレを目立たなくすることもできる。しかし、拡散光は開口部中心に対して水平方向にガウス分布のように変化する特性を持っていることが多く、視差画像のぼけやクロストークが輪郭付近で発生することとなり、画質的に好ましいとは言えない。
一方、図3の(c)で示すように、本実施形態のようにバリアの開口部にノッチ構造を持たせることで、例えば、明るい部分にはノッチ構造により隠れる画素領域を増やし、暗い部分にはノッチ構造により見える画素領域を増やすように、開口部のエッジに凹凸構造を付加することで、画素のぼやけ量やぼやけの範囲をコントロールすることができる。つまり、本実施形態では、図3の(c)のサブ画素断面で示すように、図3の(a)のサブ画素断面の矩形分布の両端部分をカットして台形分布になるように調整することが可能となる。
この場合、図3に示す特性から、ノッチ構造の幅dwはある程度細かい方が上記効果が得られやすいと考えられる。つまり、ノッチ構造の周期(繰り返し)はある程度大きいがよいと考えられる。しかし、ノッチ構造の幅dwや周期の適性値は、画素構造(特に画素を垂直方向に分割するようなメタルの補助電極等)に依存しており、例えば、1画素がm分割される場合は、ノッチ構造の分割数nはmのk整数倍付近、つまりn=k×m付近でモアレ低減の効果が高くなる傾向にある。なお、ノッチ構造にすると開口幅は変化するため、クロストークの基準として使用される、サブピクセルサイズに対する開口幅の比率(開口率)rHも変動することとなるが、ここでは所定範囲内(たとえば、uピクセルサイズ分とか)での平均開口率Ave_rHで規定され、細かいノッチ構造の特性を考慮すれば、この平均開口率をもち、バリア中心軸の傾き角度αをもつスラントバリアと同じ程度のクロストーク特性をもつ。このことから、平均開口率を所定の値ThAve_rHに設定して、凹凸によるノッチ構造を用いた場合のぼやけ量を制御することで、クロストーク量の増加をできるだけ抑えながら、見える画素面積の平均化を行うことも可能となる。
なお、図2に示すように、本実施形態では、ノッチ構造として三角形を用いたが、台形であっても、曲線的に変化する楕円弧であっても、平行四辺形であってもよい。また、ノッチ構造は、図2に示すように水平方向に持たせるのではなく、バリア中心軸に垂直になる方向にノッチ構造を付加してもよい。
また、本実施形態では、スラントバリアを例に説明したが、本実施形態では、縦ストライプバリアやサブ画素の矩形形状を斜め方向に配置したステップバリアに関しても同様に適用することが可能である。
なお、ノッチ構造の幅がdw、1ピクセル画素サイズがpであるとき、1ピクセル内のノッチ構造の開口面積dSnと、最小開口幅hminをもつスラントバリアの1ピクセル内の開口面積dSoは、以下の(式2)および(式3)で表すことができる。
この式より、1ピクセル内の分割数が増えても開口面積S=dSo+dSnは変化しない。
このようなノッチ構造は、1ピクセル画素サイズが細かくなれば同時に細かくなる。例えば、画素サイズが数百ミクロンであれば、ノッチ構造もミクロンオーダーで形成する必要がある。
ここで、ノッチ構造を有しない従来のバリア構造では、一般に遮光部の材料としてエマルジョン樹脂が用いられる。このようなバリアは、エマルジョン樹脂にブラック顔料を分散させて遮光性を高めたものであるが、所望の遮光性を確保するには、数十ミクロンの膜厚が要求される。このくらいにまで膜厚が厚くなると数ミクロンオーダーのパターンを設計どおりに作製することが困難となる。
そこで、本発明者は、膜厚が薄くても遮光性に優れた材料としてカルド樹脂に着目した。カルド樹脂とは、カルボキシル基含有多官能性単量体を用いることで、光学密度を高めるためにブラック顔料含量が多くなる場合であっても、現像性、接着性および現像マージンに優れたアルカリ現像型の感光性樹脂組成物である。カルボキシル含有多官能性単量体は、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレートおよびジペンタエリスリトールトリメタクリレートなどのモノヒドロキシオリゴアクリレートまたはモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸およびテレフタル酸などのジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物、およびプロパン−1,2,3−トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,5−トリカルボン酸などのトリカルボン酸類と、2−メタクリレートなどのモノヒドロキシモノアクリレートまたはモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物が例示される。
バリアの遮光部の材料として、このようなカルド樹脂を用いることで、数ミクロンの薄い膜厚であっても遮光性に優れたバリアを形成することができ、さらには、数ミクロンオーダーの微小なノッチ構造のパターンも設計どおりに再現することが可能となる。
なお、クロムなどの無機材料によっても薄膜で遮光性が高いバリアを作製できると考えられる。しかしながら、クロムを用いたバリアの場合、遮光性能、耐環境性および耐化学性に優れているものの、複雑な工程および高い設備費によって生産原価が上昇し、高い反射率によって全反射のための別途の処理工程が必要となる。そこで、本実施形態におけるバリアの材料としてはカルド樹脂を用いることにした。
図4に、実際にノッチ構造を有するバリアを作製したときの顕微鏡写真を示す。図4の(a)に示すように、遮光部をエマルジョン樹脂で形成した場合、ノッチ構造の三角形状が円形に丸みを帯びていることが分かる。一方、図4の(b)に示すように、遮光部をカルド樹脂で形成した場合、ノッチ構造の三角形状がそのまま鋭角を保ったまま再現できていることが確認できる。
以上、本発明の第1実施形態に係る映像表示装置によれば、バリアの遮光部の材料としてカルド樹脂を用いることにより、開口部と遮光部との境界線の細かな凹凸形状を設計どおりに忠実に再現することができる。これにより、開口部を通して見える画素のぼやけ量や範囲をコントロールすることが可能な微細なノッチ構造を開口部のエッジに付加することができる。したがって、クロストークを増やすことなくモアレを減少させることができるので、高画質の映像表示装置を実現することができる。
(第2実施形態)
次に、図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る映像表示装置について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る映像表示装置におけるバリアの断面図である。
図5に示すように、本実施形態における映像分離手段(バリア)101Aは、遮光部(遮光層)502がカルド樹脂から構成されるバリアであって、カルド樹脂を外部からの機械的な摩擦やスクラッチなどから保護するために、2枚の透明基板501、504の間に遮光層502を挟みこんで透明接着剤(透明接着層)503で固定したバリアである。なお、本実施形態において、バリア(映像分離手段)以外の構成は、第1実施形態と同様であるので、バリア以外の構成についての説明は省略する。
透明基板501は、例えば、厚みが1mm前後の薄いガラス基板である。この透明基板501の上に、カルド樹脂で形成された遮光部502が形成される。遮光部502は、フォトリソグラフィーを用いて形成することができる。例えば、透明基板501上に黒色顔料を分散させた光重合性組成物からなるカルド樹脂をコーティングし、形成しようとする形態のパターンをあらかじめ設計したマスクを用いて露光によって形成した後、非露光部位を溶媒で取り除いて熱硬化する一連の段階を繰り返すことで、所定形状にパターニングされた遮光部502を作製することができる。遮光部502のパターンとしては、開口部が図2に示すようなノッチ構造を有するような形状とすることができる。
このように形成されたカルド樹脂からなる遮光部502は、非常に柔らかく、耐摩耗性や、耐擦傷性など機械的耐久性に劣るという課題がある。そこで、本実施形態では、比較的厚い透明基板504を用いて、透明基板501と透明基板504とで遮光部502を挟み込むようにして、透明接着剤503を介して接着させる。透明基板504は、例えば、厚みが5mm前後の薄いガラス基板である。貼り合わせる透明基板504としては、少なくとも遮光部502が形成される透明基板501よりも厚いことが好ましく、膜厚が5mm以上の透明基板を用いることが好ましい。
以上、本発明の第2実施形態によれば、遮光部502を透明接着剤503によって2枚の透明基板501、504の間に貼り合わせているので、映像分離手段101Aに一定の厚みを持たせることができる。これにより、映像分離手段101Aを映像表示手段(表示パネル)100に取り付ける際に、映像分離手段101Aが撓んだり歪んだりすることを防止することができる。すなわち、1つの透明基板501だけで映像分離手段を構成すると、映像分離手段全体の厚さが薄くなるので、映像分離手段を映像表示手段に取り付ける際に、映像分離手段が撓んだり歪んだりする場合がある。この結果、モアレやクロストークが発生してしまう。これに対して、本実施形態では、支持体となる厚い透明基板504を備えているので、映像分離手段101Aの機械的耐久性を向上させることができ、モアレやクロストークの原因となる映像分離手段の撓みや歪みを防止することができる。
なお、本実施形態において、透明基板501、504は、ガラス基板を用いたが、ガラス基板以外の他の透明基板、例えば透明樹脂基板等を用いることもできる。
(第3実施形態)
次に、図1および図6〜図11を用いて、本発明の第3実施形態として、バリアパターンの開口を通して見える画素領域の割合が水平方向に並ぶ各バリア位置でできるだけ均一になるようにノッチ構造が付加されたバリアを備えることで、クロストークを増やすことなくモアレのコントラストを減少させることができる立体映像の表示を行う映像表示装置について説明する。
本実施形態における映像表示装置の構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同様である。また、本実施形態におけるバリアのノッチ構造は、凹部および凸部それぞれ1つ分(ノッチ構造)の行方向および列方向における大きさが、サブ画素1つ分の行方向または列方向の大きさよりも小さくなるように構成されている。なお、本実施形態でも、映像分離手段の遮光部にはカルド樹脂が用いられる。
本実施形態の特徴は、第1実施形態におけるノッチ構造をもつ斜めバリアパターンに関して、図6で示される考え方を適用することで説明することができる。図6は、傾き3:1(α=18.435度)をもつバリアパターンの場合で所定位置から観察した場合のモアレパターンが生じやすい理由を推定した図を示し、図7は、実際の視認でモアレパターンが非常に少ない傾きα=23度をもつバリアパターンの場合に対して所定位置から観察した場合のモアレが発生しにくい理由を模式的に説明した図である。そして、その理由をもとにモアレパターンが少なくなるように、図6のα=18.435度のバリアパターンに凹凸構造(ノッチ構造)を加えたパターン例を図8から図11に示す。なお、ノッチ構造については、図8から図11で示されるように、第1実施形態と比べて真ん中の開口部の左右で幅dwや高さdsが一致している必要はないが、各ノッチ構造は、第1実施形態と同様に、バリア中心軸の垂直方向に対する傾き角度αと、ノッチ構造(三角形)部分の水平軸に対する傾き角度β、ノッチ構造の高さds、ノッチ構造の幅dwの4つのパラメータにより定義されている。また、dsを1画素幅pにおけるノッチ構造の分割数nを用いれば、ds=p/nとあらわすことも可能である。
まず、図6および図7を用いて、ノッチ構造のない通常の斜めバリアパターンにおけるモアレパターンの発生しやすさに関して説明する。これらの図では、RGB画素の前に、所定の開口幅(開口率rhth=1.0)をもつ斜めストライプバリアによる開口部が数本示されている。なお、この例では、視差数N=4の場合を示しているが、他の場合でも同様に示すことが可能である。
図6に示すように、傾き角度α=18.435度の場合のスラントバリアにおいて、開口部300の開口部グループAと開口部301の開口部グループBとを比較すると、開口部グループAでは、各開口部中心とその背後にあるRGBのサブ画素領域の中心とが重なった関係をもつ場合が集結している。それに対して、開口部グループBでは、各開口部中心とその背後にあるRGBのサブ画素領域の間にあるブラックマトリックス領域中心が重なった関係をもつ場合が集結している。なお、開口部300、301は、隣り合う遮光部302の間に形成される。また、開口部グループAおよび開口部グループBのそれぞれの状態は、例えばバリアの位置調整を行うことによって発生する。
ここで、ストライプバリア中心間のピッチ距離は、視差数N×サブ画素サイズspに近い値を持つことが幾何学的計算で判明している。そのため、画面水平方向に対して対象とする開口部Ak(k=1、…、nA)の近傍では同じような開口部とサブ画素の関係が集結するが、そこから画面水平方向に対して大きく離れるにつれて対象とする開口部Akとはずれた開口部Bn(n=1、…、nB)が生じることとなる。
そして、開口部グループA内の開口部Akでは、各開口部中心とその背後にあるRGBのサブ画素領域の中心が重なった関係を多くもつため、所定の観察位置から見ると明るく感じることとなり、このグループ全体では明部パターンが観察されることとなる。それに対して、開口部グループB内の開口部Bkでは、各開口部中心と背後にあるRGBのサブ画素領域の間にあるブラックマトリックス領域中心が重なった関係を多くもつため、所定の観察位置から見ると大きく暗く感じることとなり、このグループ全体では暗部パターンが観察されることとなる。
このように、α=18.435度のバリアパターンを所定位置より観察した場合には、水平方向に対して明暗部を周期的に繰り返すモアレパターンが強く発生することになる。このように、各開口部を通して見た場合に、各開口部とその背後にあるRGBサブ画素領域の関係で同じような位置関係が集結することで、開口部ごとに(AkとBk)明るさの不均一が生じやすくなり、結果としてモアレパターンが生じやすくなる可能性があると推測される。
これに対して、図7に示すように、傾き角度α=23度の場合のスラントバリアにおいて、開口部310の開口部グループAと開口部311の開口部グループBとを比較すると、開口部グループA、Bともに、各開口部中心とその背後にあるRGBのサブ画素領域の中心が重なった関係をもつ場合が集結しておらず分散している。その結果、開口部グループA内の開口部Akでは、各開口部中心とその背後にあるRGBのサブ画素領域の中心が重なった関係が分散しているため、所定の観察位置から見ても大きく明るく感じことにはならない。同様に、開口部グループB内の開口部Bkでも、各開口部中心とその背後にあるRGBのサブ画素領域の中心が重なった関係が分散しているため、所定の観察位置から見ても大きく明るく感じことにはならない。つまり、開口部グループAと開口部グループBとの明暗パターン差が小さくなるので、モアレパターンが発生しにくくなる。なお、開口部310、311は、隣り合う遮光部312の間に形成される。
このように、各開口部を通して見た場合に、各開口部とその背後にあるRGBサブ画素領域の関係で同じような位置関係を集結せずに分散させることで、開口部ごとに(AkとBk)明るさの不均一が生じにくくなり、結果としてモアレパターンが生じにくくなったと推測される。
このことをもとに、図6のα=18.435度のバリアパターンに凹凸構造(ノッチ構造)を加えたパターン例を図8から図11に示す。図8〜図11において、開口部グループAを構成する開口部320および開口部グループBを構成する開口部321は、隣り合う遮光部302の間に形成される。なお、平均開口率Ave_rhはrhthと同じになるものとする。そのため、最小開口幅のサブ画素サイズに対する比率はrhthより小さくなり、rhmin=rhth×Rminとなる(図8から図11ではrhmin=1.0)。図8では、ノッチ構造322の分割数n=2、かつ左右のノッチ開口幅dwが同じであり、左右のノッチ開口部の位相が一致している場合を示す。
この場合、開口部グループBに含まれる1つの開口部ストライプBmの開口部Bm[s]を見た場合、その下の開口部Bm[s+1]と合わせると、その背後の画素(G画素)が見える割合が大きくなっており、この位置関係は開口部グループBに含まれる他の開口部ストライプBmで同じにように観察できる。つまり、開口部グループBでは、ノッチ構造の付加により、図8の開口部グループBよりもバリアを通して見える明るさが大きくなることを示している。
これに対して、開口部グループAでは、最小開口幅hminが図9の開口幅hthよりも小さくなっているが、ノッチ構造の付加により、図6の開口部グループAに近い程度まで明るく見えるようになっていると考える。このことから、図8では図6に対して、開口と画素との同じ位置関係が集結はしているが、グループA内の開口と画素との位置関係とグループB内の開口と画素との位置関係の差が縮まっており、結果として明暗差も小さくなったことでモアレパターンも減少することが予測される。
図9に示すノッチ構造323は、図8に示すノッチ構造に対して、幅dwが同じで、高さdsを小さく(ノッチ構造の分割数nが大きくn=6)した場合である。図9に示すように、開口部グループBに含まれる1つの開口部ストライプBmの開口部Bm[s]を見た場合、その下の開口部Bm[s+1]と合わせると、図8に対して、その背後の画素(例えばG画素)が見える割合がさらに大きくなっている。これは、開口部グループBでは、より周期の細かいノッチ構造を付加することで、図6、図8の開口部グループBよりもバリアを通して見える明るさが大きくなることを示している。つまり、図8よりもグループA内の開口と画素との位置関係とグループB内の開口と画素との位置関係の差がさらに縮まっており、明暗差もより小さくなったことでモアレパターンもより減少することができると予測される。
また、図10では、開口部320、321を構成する対向する境界線のうちの一方が、凸部もしくは凹部(ノッチ構造)が他方の境界線と異なるように構成されている。具体的には、右側のノッチ構造324の分割数nRを左側のノッチ構造324の分割数nLより小さくしたパターンを示している(nR=3、nL=n=6)。この場合、左右のノッチ構造に位相ずれが発生するが、1画素内の平均開口率Ave_rhは図8と変化しない。したがって、図8と同様に、開口部グループBに含まれる1つの開口部ストライプBmの開口部Bm[s]の割合が大きくなるとともに、その下の開口部Bm[s+1]の見える割合がさらに減少することになるが、その背後の画素(例えばG画素)が見える割合は、図8に比べて大きな差は生じにくくなる。
さらに、図11に示すように、ノッチ構造325の左右の幅dwを変えることも考えられる。ここで、左側の幅をdwL=dw+Ddwとして、右側の幅をdwR=dw−Ddwとすれば、1画素内での平均開口率Ave_rhは図10と同じになる。この場合、開口部グループBに含まれる1つの開口部ストライプBmの開口部Bm[s]の割合が大きくなるとともに、その下の開口部Bm[s+1]の見える割合が減少するが、その背後の画素(例えばG画素)が見える割合は、図10に比べて大きな差は生じにくくなる。よって、図10と比べて明るさは問題がないとともに、開口部グループA内の開口部と画素との位置関係とグループB内の開口部と画素との位置関係がさらに近くなると考えられ、前述までの検討からモアレパターンが大きく減少することが予測される。
また、図10、図11のノッチ構造に対して、ピクセル単位で見た場合の最初のいくつかの左側のノッチ構造の幅dwLを他のものよりも大きくすることも可能である。この場合、対応する右側のノッチ構造の幅dwRは他よりも小さくなることとなる。このような場合でも、同様に、開口部グループBに含まれる1つの開口部ストライプBmの開口部Bm[s]の割合が大きくなるとともに、その下の開口部Bm[s+1]の見える割合がさらに減少するが、その背後の画素(例えばG画素)が見える割合は、図12に比べて大きな差は生じにくくなる。よって、図8と比べて明るさは問題がないとともに、開口部グループA内の開口部と画素との位置関係と開口部グループB内の開口部と画素との位置関係がさらに近くなると考えられ、前述までの検討からモアレパターンがさらに大きく減少することが予測される。
なお、図10、図11において、dwLとdwR、nLとnRとを反対に設定しても、開口部が右にずれる(開口部グループBに含まれる1つの開口部ストライプBmの開口部Bm[s]で大きく見える背後画素がG画素からB画素になる)だけであり同じように成立する。
よって、以下の(a)〜(d)を満たすようなノッチ構造をもつ斜めバリアパターンとすることが好ましい。
(a)ノッチ構造の分割数nを大きくとる。
(b)左右のノッチ構造の高さ、つまり周期をずらして位相を変える。
(c)左右のノッチ構造の高さを変える。つまり。左側の幅をdwL=dw+Ddw、右側の幅をdwR=dw−Ddwとして、両方の合計を2dwになるようにする。
(d)平均開口率Ave_rhを所定の開口率rhthに保持するために、最小開口幅hminは小さいほど、ノッチ構造の幅dwは大きくできるが、ノッチ構造の鋭角さが増すことで製造誤差の影響を受けやすくなる。よって、最小開口幅の比率rhminは0.6×hth≦rhmin<rhthが好ましい。
このようなノッチ構造を実現するには、微小なピッチや開口幅でバリアパターンを構成する必要がある。本実施形態では、このような微小なピッチや開口幅を忠実に再現するために、バリアの材料としてカルド樹脂を用いている。このように、カルド樹脂によってバリアを作製することによって、バリアの膜厚が薄くても遮光性を確保することができるとともに、微小なピッチや開口幅を忠実に再現することができる。
なお、図8〜図11では、サブ画素分割(とメタル補助電極)を考慮していないが、その場合も同じように考えられる。このサブ画素分割数nは画素構造に依存しており、1つのサブ画素分割数に関連すると思われる。よって、t分割されている場合、画素領域を広げたい側ではt(画素領域数)+1(ブラックマトリックス領域)+t−1(補助電極領域)の分割数以上が好ましいと考える。
また、本実施形態では、モアレの少ないパターン生成について示したが、ここで実施した分析方法をもとに、所定のノッチ構造をもつ斜めバリアパターンの評価をモアレ発生の可能性をもとに行うことも可能である。この場合、例えば、開口部グループA内で発生する位置関係の分布と開口部グループB内の位置関係の分布とを比較することでもよいし、開口部グループA内で発生する位置関係により生じる見える画素領域分布と開口部グループB内の位置関係により生じる見える画素領域分布とを比較することでもよいし、また、開口部グループA内で発生する位置関係により生じる明るさ分布と開口部グループB内の位置関係により生じる明るさ分布とを比較することでもよい。
なお、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、ノッチ構造の形状としては三角形を用いたが、台形、曲線的に変化する楕円弧、または、平行四辺形を用いてもよい。また、ノッチ構造は、図2のように水平方向に付加するのではなく、バリア中心軸に垂直な方向にノッチ構造を付加してもよい。
また、本実施形態では、スラントバリアを例にして説明したが、サブ画素の矩形形状を斜め方向に配置した斜めステップバリアに関しても同様に適用することが可能である。
(第4実施形態)
次に、図1、図6、図7および図12〜図16を用いて、本発明の第4実施形態として、バリアパターンに沿って、左右のノッチ構造による位相が一致している画素群とパターン位相が一致していない複数の画素群とによって構成されるユニット構造が繰り返されるバリアを備えることで、クロストークを増やすことなくモアレのコントラストを減少させることができる映像表示装置について説明する。
本実施形態における映像表示装置の構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同様である。また、本実施形態でも、映像分離手段の遮光部にはカルド樹脂が用いられる。
本実施形態の特徴は、第1実施形態におけるノッチ構造をもつ斜めバリアパターンに関して、図12および図13で示される考え方を適用することで説明することができる。
前述のように、α=18.435度の斜めバリアパターンを所定位置より観察した場合には、各開口部とその背後にあるRGBサブ画素領域との関係で同じような位置関係が集結する。これにより、開口部ごとに(AkとBk)明るさの不均一が生じやすくなり、結果としてモアレパターンが生じやすくなると推測される。
また、同様に、図7にしめすように、傾きα=23度の斜めバリアパターンを所定位置より観察した場合には、各開口部とその背後にあるRGBサブ画素領域との関係において同じような位置関係が集結せずに分散する。これにより、開口部ごとに(AkとBk)明るさの不均一が生じにくく、結果としてモアレパターンが生じにくくなったことが推測される。
図12の(a)は、α=18.435度の傾きをもつ1つのスラントバリアを抽出したものを示しており、図6に対して、次のように考えた。つまり、この傾きの場合(図6で開口部グループAに属するバリアの場合)、1つのスラントバリアを通して考えた場合において、開口部Am[s]と他の開口部Am[t](s≠t)とからは同じように画素中心が見えており、開口部Am[s]と他の開口部Am[t](s≠t)とから見える画素配列は同じようになる。つまり、この角度では、1つのスラントバリアに沿ったときに、画素中心が見える位置にバリアがある場合、常に画素中心とバリア中心とが一致するような規則性があることが分かる。同様に、図6における開口部グループBでは、この規則性が開口部中心とブラックマトリックス領域中心とが一致するような規則性が重なった位置関係を多くもつ状況が発生すると考えられる。
一方、α=23度の場合では、図7における分析に対して、図12の(b)のように考えることができる。図12の(b)は、α=23度の傾きをもつ1つのスラントバリアを抽出したものを示している。
図7では、開口部グループAに属する1つのスラントバリアに沿って考えた場合に、画素中心が見える開口部Am[s]と同じように見える他の開口部Am[u](s≠u)は、u=s+sunitが成り立つように繰り返されており、例えば、図12の(b)に示すように、sunit=11(垂直方向に7画素、水平方向に9サブ画素)となっている。このことは、傾き角度αが変わっても言えることであり、sunitは傾き角度αに依存する。例えば、α=18.435度ではsunit=1(垂直方向に1画素、水平方向に1サブ画素)となり、α=26.57度ではsunit=2(垂直方向に2画素、水平方向に3サブ画素)となる。
そこで、図13に示すように、左側のノッチ構造の分割数nLと右側のノッチ構造の分割数nRとが一致するバリア(各ノッチ構造の高さは1ピクセルに相当)があり、その間において、左側のノッチ構造の分割数nLと右側のノッチ構造の分割数nRとが一致していないバリア(高さがピクセルに相当)がsunit−1だけ続くように構成すれば、図12に似た状況を作ることができると考えた。つまり、左側のノッチ構造の分割数nLと右側のノッチ構造の分割数nRとが一致するバリアでは、左右のノッチ構造の位相が一致するために画素中心とバリア中心とが一致する一方で、sunit−1(個)のバリアでは、左右のノッチ構造の位相が一致しないため画素中心とバリア中心とが一致しない(一致するバリアとは開口中心と画素中心との位置関係が異なる)こととなる。ここで、左側のノッチ構造の分割数nLと右側のノッチ構造の分割数nRが一致していないためには、以下の(式4)の関係を満たすようにすればよい。
(式4)において、kksは整数とする。このようなsunitを単位とする構成ユニットを繰り返すことで、図7のような位置関係(例えばα=23°の傾きをもつバリア)と同じような関係を作り出すことができ、これを本実施形態の特徴としている。特に、以下の(a)〜(c)のように考えられる。
(a)kksが大きいほど、右側のノッチ構造に対して左側のノッチ構造は細分化され、左右のノッチ構造におけるパターンの位相ずれが大きくなりやすいと考える。
(b)sunitが大きくなるほど、傾きが大きくなったスラントバリアに近くなる。
(c)できるだけブラックマトリックス領域や補助電極において同じ位置関係にならないことが好ましい。
なお、(式4)において、kks<0としてもよいが、nLは所定の大きさ以上の分割数が必要であり、その値を下回らないことが条件となる。図14、図15および図16は、その例を示している。なお、図14、図15および図16は、上述のバリアパターンの例を反対面から見た図を表している。
図14に示すスラントバリア330では、nL=6+5、nR=6の場合を示しており、β=34度、sunit=11となる。つまり、α=23度に近づけたパターンに相当する。また、図15に示すスラントバリア331は、図14において、左右のノッチ構造のパターンの大きさdwLとdwRとが2つのパターン(dw1、dw2)を持っており、それが交互に現れる(ただし、左右での交互に現れる順番は一致している)ことを示している。図16に示すスラントバリア332は、図15に対して左と右の幅が繰り返される順番が逆になっている例を示している。図15、図16ともに、左右の幅を変化させることで、sunit−1(個)のバリアでの位相ずれをより大きくする目的がある。さらに、図16は、図15の位相ずれを進める効果に加え、左側を大きな幅のノッチ構造から開始させるのに対して右側を小さな幅のノッチ構造から開始させることで、より傾かせた方向に近づけることをねらったものである。なお、ここでは、L=sunit×p(pはピクセルサイズ)での平均開口率がAve_rh=rhthになるように生成されているが、dw1=dw+ddw、dw2=dw−ddwのように設定された場合、第3実施形態の場合と同じようにL内でのノッチ構造により付加された開口部面積はdwLとdwRとが交互に変わることやkksの変化に関係なくAve_rhは保持されたままになる。
なお、この所定分割数nRは画素構造に依存しており、1つのサブ画素分割数に関連すると考えられる。よって、t分割されている場合、画素領域を広げたい側ではt(画素領域数)+1(ブラックマトリックス領域)+t−1(補助電極領域)の分割数以上が好ましいと考える。
このようなノッチ構造を実現するには、微小なピッチや開口幅でバリアパターンを構成する必要がある。本実施形態では、このような微小なピッチや開口幅を忠実に再現するために、バリアの材料としてカルド樹脂を用いている。このようにカルド樹脂によってバリアを作製することによって、バリアの膜厚が薄くても遮光性を確保することができるとともに、微小なピッチや開口幅を忠実に再現することができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、ノッチ構造の形状としては三角形を用いたが、台形、曲線的に変化する楕円弧、または、平行四辺形を用いてもよい。また、ノッチ構造は、図2のように水平方向に付加するのではなく、バリア中心軸に垂直な方向にノッチ構造を付加してもよい。
また、本実施形態では、スラントバリアを例にして説明したが、サブ画素の矩形形状を斜め方向に配置した斜めステップバリアに関しても同様に適用することが可能である。
(第5実施形態)
次に、図1および図17〜図26を用いて、本発明の第5実施形態について説明する。
バリアの開口部、画素領域およびブラックマトリックスの位置関係がブラック部や画素内電極により欠落することでバリアごとにその混在関係にアンバランスが生じ、それがモアレパターンの原因になるとも考えられる。そこで、本実施形態では、欠如した位置関係を回復して、混在する位置関係のアンバランスを改善するようにノッチ構造を付加したバリアを備えることで、クロストークを増やすことなくモアレのコントラストを減少させることができる映像表示装置を提供するものである。
本実施形態における映像表示装置の構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同様である。また、本実施形態でも、映像分離手段の遮光部にはカルド樹脂が用いられる。
本実施形態の特徴は、第1実施形態におけるノッチ構造をもつ斜めバリアパターンに関して、図17および図18で示される考え方を適用することで説明することができる。図17および図18は、傾き3:1(α=18.435度)をもつバリアパターンの場合で所定位置から観察した場合のモアレパターンが生じる理由を説明するための図を示している。なお、図18は、図17に対して、画素分割をした際のメタル補助電極がある場合に、さらにモアレが発生しやすい理由を説明するための図である。また、図19〜図26は、図17および図18の理由をもとに、モアレパターンが少なくなるように、図18のα=18.435度のバリアパターンに凹凸構造(ノッチ構造)を加えたパターン例を示したものである。なお、ノッチ構造は、図19〜図26で示されるように、第1実施形態と比べて、真ん中の開口部の左右で幅dwや高さdsが一致している必要はないが、各ノッチ構造は、第1実施形態と同様に、バリア中心軸の垂直方向に対する傾き角度αと、ノッチ構造(三角形)部分の水平軸に対する傾き角度β、ノッチ構造の高さds、ノッチ構造の幅dwの4つのパラメータにより定義されている。また、dsを1画素幅pにおけるノッチ構造の分割数nを用いれば、ds=p/nとあらわすことも可能である。
まず、図17および図18を用いて、ノッチ構造のない通常の斜めバリアパターンにおけるモアレパターンの発生しやすさに関して説明する。これらの図では、RGB画素の前に、所定の開口幅(開口率rhth=1.4)をもつ斜めストライプバリアによる開口部が数本示されている。なお、この例では、視差数N=4の場合を示しているが、他の場合でも同様に示すことが可能である。
傾き角度α=18.435度の場合、図17にあるように模式的に表現できる。図17において、開口部Aは、開口中心が画素中心を通過するストライプバリアの例を示し、開口部Cは、開口中心が画素間を通過するストライプバリアの例を示す。また、開口部Bは、開口部Aと開口部Cとの中間に位置するストライプバリアの例を示す。図17において、水平線は、各々、対応する開口部の上から順番に番号付けられた(k=1、2、3、4、5、6)ものである。これらの水平線は、各々、対応する開口部における水平位置での開口部、画素およびブラックマトリックスの位置関係を示すものとする。図17を見ると、次の[1]〜[6]の組み合わせが開口部、画素およびブラックマトリックスの位置関係について同じ位置関係を持つことが分かる。ここで、位置関係Ak、Bk、Ckは、それぞれ開口部A、開口部B、開口部Cに対する番号kの位置関係を示す水平線を表すものとする。また、図17、図18で同じ位置関係になるものは同じ線種で表現されているが、リブや水平補助電極で欠落したものは、点線表示となっている。
[1]位置関係A1と位置関係B3、そして位置関係C4
[2]位置関係A2と位置関係B4、そして位置関係C5
[3]位置関係A3と位置関係B5、そして位置関係C6
[4]位置関係A4と位置関係B6、そして位置関係C1
[5]位置関係A5と位置関係B1、そして位置関係C2
[6]位置関係A6と位置関係B2、そして位置関係C3
同じ位置関係上で見える画素は同じになると考える。そして、これらの多くの位置関係が1つのストライプ内で集結・混在化されることで、開口部A、開口部Bおよび開口部Cで見える画素が混在化・平均化されることでモアレが薄くなると考えられる。
それに対して、位置関係A6、位置関係B6および位置関係C6はブラックマトリックス領域にあり欠落してしまう位置関係である。この欠落してしまった位置関係は図17に示すように異なるため、開口部Aと開口部B、そして開口部Cに含まれる位置関係分布が一致せず、各開口部での混在化の状況に変化が生じ、その変化が明暗パターン(モアレ)として発生する。
さらに、図18は、図17に画素分割をした際のメタル補助電極(水平方向に走る破線で示す帯状部分)がある場合を示すが、この補助電極により、位置関係A2、位置関係A4、位置関係A6、位置関係B2、位置関係B4、位置関係B6、位置関係C2、位置関係C4、位置関係C6に欠落される位置関係が発生するため、よりモアレが濃くなる可能性がある。
そこで、最小開口幅hminをもつノッチ構造をスラントバリアに付加させることで、この欠落した位置関係を別の個所で現れるようにする。そうすることで、開口部A、開口部Bおよび開口部Cに含まれる位置関係分布を一致させ、各開口部での混在化の状況をできるだけ合わせることでモアレを低減させることができると考えられる。本実施形態では、この考えをもとに検討して開発したノッチ構造を付加したスラントバリアの例について、図19〜図26を参照してその概要を説明する。
(A)図19に示すように、左右のノッチ構造の位相が一致した場合、開口部Aで欠落した位置関係は、A2d、A4d、A6dのようになり現れるものもあるが、不十分と考える。ここで、A2dは、開口部Aで欠落した位置関係A2に対して、ノッチ構造で発生すると思われる位置関係を示している。それに対して、図20に示すように、図19に対して、位相をずらす(ノッチ構造の高さds×len(0<len<1.0))ことで、位置関係A2、A4、A6が位置関係A2e、A4e、A6eのように現れる。
(B)ノッチ構造の分割数n(1垂直画素サイズあたりのノッチ構造の個数)は、分割された画素領域+補助電極数+ブラックマトリックス部より多くすることが好ましい。図19ではn=6であるが、n=3の場合、さらにうまく欠損した位置関係が現れない。
(C)図21に示すように、図20においてノッチ幅を変化させて、最大開口幅が異なるものを組み合わせることで、欠落した位置関係が現れる可能性が高くなる(A2、A4、A6がA2f、A4f、A6fのように現れる)。
(D)図22に示すように、左右のノッチ構造の位相を1/2ずらす(ノッチ構造の高さds×0.5だけずらす)ことでも欠損位置関係A2、A4、A6がA2g、A4g、A6gのように生じやすくなる。なお、図22では、図21において右側のノッチ構造の位相を1/2をずらしている。
(E)左右のノッチ構造の分割数を変えることでも位相ずれが生じることとなる。図23は、右側のノッチ構造の分割数nRを小さくすることで左右のノッチ構造の位相をずらした例を示しており、左分割数nL=6、右分割数nR=3の例を示す。左右のノッチ構造の位相ずれを生じさせやすいように、左側のノッチ構造の分割数nLと右側のノッチ構造の分割数nRの関係が整数倍にならないほど、効果はあがると考えられる。
(F)左右の分割数を変えた図23の構成にさらに、ノッチ幅を変化させて最大開口幅が異なるものを組み合わせることで、欠落した位置関係が現れる可能性が高くなる。図24はその例を示すものである。見方を変えると、左右の位相が異なるノッチ構造では、1画素の領域に同じ位置関係が複数回現れる。これにより、1画素より狭い領域内で異なる位置関係が混在し、平均化が促進される。そのため、欠落する領域があっても平均化された状態が維持されやすい。
図25および図26は、以上の考えをもとに実際に開発したノッチ構造をもつスラントバリアの例を示す図である。なお、図25および図26では、スラント方向がこれまでと反対になっているが、観察者とは反対側から見た場合の図になっている。したがって、これまでの表記とは、ノッチ構造が左右反対になる。
図25に示すスラントバリア340の構造は、最小開口幅のサブ画素ピッチに対する割合(最小開口率)rhminをrhmin=0.6とし、右側の1垂直画素ピッチに対するノッチ構造の分割数nRをnR=6とし、左側の1垂直画素ピッチに対するノッチ構造の分割数nLをnL=11とし、ノッチ構造の傾き角度β=34°のときのノッチ幅dwをもとに大きいノッチ1の幅dw1をdw1=dw×(1+krate)とし、小さい方のノッチ2の幅dw2をdw2=dw×(1−krate)とし、krate=0.5とした場合である。なお、dwは、これまでと同様に(式1)をもとに左右に同じ幅で同じ高さをもつノッチ構造(周期6)から得られる幅の値であり、dw1+dw2=dw×2となるように変化させた場合において、平均開口率Ave_rhは左右同じノッチ構造を付加した場合の1画素ピッチ内の平均開口率と一致するように求めることができる。
さらに、図26に示すスラントバリア341のように、最大開口幅1hmax1と最大開口幅2hmax2とを垂直方向における画素番号xに応じて変化させたノッチ構造としてもよい。例えば、hmax1L[0]<hmax1R[0]、hmax2L[0]<hmax2R[0]から始まり、xが大きくなるにつれて、hmax1L[x]>hmax1R[x]、hmax2L[x]>hmax2R[x]としてもよい。ただし、hmax1L[x]+hmax1R[x]=dw×2、hmax2L[x]+hmax2R[x]=dw×2を満足させる。
なお、ここではモアレの少ないパターンについて示したが、ここで実施した分析方法をもとに、所定のノッチ構造をもつ斜めバリアパターンの評価をモアレ発生の可能性をもとに行うことも可能である。この場合、例えば、開口部A内で発生する位置関係の分布と、開口部B、開口部C内の位置関係の分布とを比較することでもよいし、開口部A内で発生する位置関係により生じる見える画素領域分布と、開口部B、開口部C内の位置関係により生じる見える画素領域分布とを比較することでもよいし、開口部A内で発生する位置関係により生じる明るさ分布と、開口部B、開口部C内の位置関係により生じる明るさ分布とを比較することでもよい。
このようなノッチ構造を実現するには、微小なピッチや開口幅でバリアパターンを構成する必要がある。本実施形態では、このような微小なピッチや開口幅を忠実に再現するために、バリアの材料としてカルド樹脂を用いている。このように、カルド樹脂によってバリアを作製することによって、バリアの膜厚が薄くても遮光性を確保することができるとともに、微小なピッチや開口幅を忠実に再現することができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、ノッチ構造の形状としては三角形を用いたが、台形、曲線的に変化する楕円弧、または、平行四辺形を用いてもよい。また、ノッチ構造は、図2のように水平方向に付加するのではなく、バリア中心軸に垂直な方向にノッチ構造を付加してもよい。
また、本実施形態では、スラントバリアを例にして説明したが、サブ画素の矩形形状を斜め方向に配置した斜めステップバリアに関しても同様に適用することが可能である。
(第6実施形態)
次に、図1、図27および図28を用いて、本発明の第6実施形態として、所定の傾きをもつバリアを通して見える画素の面積と同じ程度になる三角形を複数パターン用意して、その複数パターンを基準角度の斜めストライプバリアに付加すること構成されたノッチ構造を有するバリアを備えることで、クロストークを増やすことなくモアレのコントラストを減少させることができる映像表示装置について説明する。
本実施形態における映像表示装置の構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同様である。また、本実施形態でも、映像分離手段の遮光部にはカルド樹脂が用いられる。
本実施形態の特徴は、第1実施形態におけるノッチ構造をもつ斜めバリアパターンに関して、所定の傾きをもつバリアを通して見える画素面積と同じ程度になる三角形を複数パターン用意して、その複数パターンを基準角度の斜めストライプバリアに付加することで構成されたノッチ構造をバリアパターンに持たせることにある。
図27は、所定の基準とするモアレの少ない傾き角度αをもつスラントバリアから、本実施形態の手法により傾き18.435°のスラントバリアにノッチ構造を付加する概要を模式的に示す図である。なお、図27では、モアレが非常に少ないα=23度を基準例としているが、18.435度以外の角度をもつものでもよい。また、図27では、傾き角度がα=18.435°の場合において、各1画素内で実際に占める開口サイズ(理想値)を求めると、所定の開口率rhthをもつスラントバリアが、所定の周期LLで繰り返されることを示している。例えば、図28に示すスラントバリア350のように、LL=11個の開口率パターンを繰り返す場合、この11個のパターンからの開口率rh_k(k=1、…、LL)をもつ開口領域OA_kに対して、最小開口率rhminをもつスラントバリア(α=18.435度)が1画素内で占める領域を除いた分を、ノッチ構造で見える開口領域dn_k×2として求め、LL(11)個のノッチ構造の開口幅dw_kを求める。なお、各LL個の画素における1画素内のノッチ構造の分割数n1は固定とし、ノッチの高さdsはds=p/n1となる。ここで、pは1ピクセルサイズを示す。図27の「5.」で記載されているように、1ピクセル内にn1個のdw_kの幅をもつノッチ構造(三角形)がLL個のピクセル内に分布されていることとなる。そして、LL個のdw_kを幅にもつノッチ構造をLL個並べた単位を繰り返すようにスラントバリアにノッチ構造を配置したとしても、LL個のピクセル内での平均開口率Ave_thは所定のrhthに保持されることとなる。そこで、開口幅dw_kをもつノッチ構造そのLL個を所定の順番で配置する構成をするのが本実施形態の特徴である。
なお、LL個の開口幅をもつノッチ構造を用意したときに、そのLL個を1ピクセル内に配置する順番については、ブラックマトリックスや補助電極の位置にあわせて最適に並べることが可能である。その際の方法としては、第2実施形態のような1つの配置例に対して周波数分析による評価値を求めて最適な配置を決める方法を用いてもよい。また、第2実施形態のように多くの配置例を示すベクトルvpを初期に用意して多変数解析をしてもよいし、LL個の順番をそのまま用いても良い。また、LL個のノッチ構造は1ピクセル内で複数選択されても良い。LLピクセル内でLLのノッチ構造nn[k]の出現数が同じになることを満足すればよい。なお、図28では、図27の方法で、傾き角度がα=23°のスラントバリア(開口率×1.0)が画素内で占める開口率LL=11個より得られたノッチ構造を順番に1つずつ配置した例を示している。このような方式でノッチ構造をもつスラントバリアを用意することで、視差画像分離のよい傾き3:1(α=18.435°)のrhminの開口率をもつスラントバリアに、α=23°に傾いた所定の開口率rhthをもつスラントバリアと同じような開口領域を実質的に持たせることができ、基準とした傾きのスラントバリアのモアレ特性に近づけることができると考える。
このようなノッチ構造を実現するには、微小なピッチや開口幅でバリアパターンを構成する必要がある。本実施形態では、このような微小なピッチや開口幅を忠実に再現するために、バリアの材料としてカルド樹脂を用いている。このように、カルド樹脂によってバリアを作製することによって、バリアの膜厚が薄くても遮光性を確保することができるとともに、微小なピッチや開口幅を忠実に再現することができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、ノッチ構造の形状としては三角形を用いたが、台形、曲線的に変化する楕円弧、または、平行四辺形を用いてもよい。また、ノッチ構造は、図2のように水平方向に持たせるのではなく、バリア中心軸に垂直ななる方向にノッチ構造を付加してもよい。
また、本実施形態では、スラントバリアを例にして説明したが、サブ画素の矩形形状を斜め方向に配置した斜めステップバリアに関しても同様に適用することが可能である。
(その他)
以上、本発明に係る映像表示装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態に係る映像表示装置において、視差画像を表示する映像表示手段100としては、バックライト光源を用いる液晶パネルでも、自発光するPDPや有機ELパネルでもよく、その他、視差画像の画素列を表示できる表示手段であれば適用可能である。
また、上記実施形態に係る映像表示装置において、カメラ画像1枚や2つ以上の複数カメラ画像を用いて観察者の頭部位置を検出する頭部位置検出手段を組合せることも可能である。このような頭部位置検出手段としては、ヘッドトラッキングやアイトラッキングを用いることができる。このように頭部位置検出手段と組合せることで、バリア間ピッチやパネルとバリア間距離等の調整をダイナミックに行うことが可能となる。また、画像を用いる以外に、LED光源のような照明光を対象物体に照射して戻ってくるまでの時間TOF(Time Of Flight)を計測することで距離を測定するTOF法や、電磁力等を用いて3次元位置測定を行う有線接続された手法等を用いたトラッキングをすることも可能である。
また、所定のテストパターンを常に、視聴者撮影内に含めて表示してそのテストパターン部分の大きさや画素値のモアレ変化等をもとに幾何学測量をしてトラッキングする手法を用いることも可能である。
また、観察者の位置検出する際、人物頭部の位置を検出することを前提としたが、人物全体像を検出することで観察者の位置を検出してもよく、あるいは、瞳孔や眼領域抽出を行い、その結果を用いること観察者の位置を検出してもよい。
また、頭部位置に応じて複数視差画像の画素列配置を制御する際に、CPUやGPU等を用いてリアルタイム算出制御することも可能であるし、また予め用意されたLUTテーブルより選択して制御することも可能である。
また、本実施形態において、ノッチ構造の分割数nが整数である必要はなく、小数部を含んでいてもよい。つまり、ノッチの高さと画素ピッチとの間に関連性がなくてもよい。より正確には、画素ピッチ、右側のノッチ構造の高さ、および、左側のノッチ構造の高さの間には、互いに関連性がなくてもよい。図29では、第5実施形態の例5において、左側ノッチ構造の分割数nLが6.5の場合のバリアの開口部を示している。なお、このことは、第3実施形態または第4実施形態など、第5実施形態以外の実施形態にも同様に成立する。
また、本実施形態において、開口部の両方のエッジがノッチ構造となっている必要はなく、少なくとも片側のエッジがノッチ構造となっていればよい。図30では、第5実施形態において、開口部の片側のみがノッチ構造となっている例を示している。なお、このことは、第3実施形態または第4実施形態など、第5実施形態以外の実施形態にも同様に成立する。
なお、その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。