JP2013220396A - 膜ろ過方法 - Google Patents

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佳彦 松井
Taku Matsushita
拓 松下
Nobutaka Shirasaki
伸隆 白崎
Junichi Furuta
純一 古田
Fumihiko Sato
文彦 佐藤
Yuji Kawase
優治 川瀬
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Abstract

【課題】残留アルミニウム濃度を効果的に低減できる膜ろ過方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る膜ろ過方法は、被処理水と、塩基度が85%超、95%以下のポリ塩化アルミニウム溶液とを混和し、次いで、ろ過膜によって前記被処理水をろ過する方法である。また、前記膜ろ過方法において、前記ポリ塩化アルミニウム溶液は、硫酸根を含まないこととしてもよい。また、前記ろ過膜が、セラミック製のろ過膜であることとしてもよい。この場合、前記セラミック製のろ過膜が、モノリス型セラミック膜であることとしてもよい。
【選択図】図6

Description

本発明は、膜ろ過方法に関し、特に、ポリ塩化アルミニウム溶液と混和した被処理水を膜ろ過した後に残留するアルミニウム濃度の低減に関する。
従来、上水処理、下水処理、工業用水処理、工業排水処理等の各種水処理分野において、被処理水をろ過して被処理水中の懸濁物質(SS:suspended solids)を除去し、清浄なろ過水を得る方法として、膜ろ過方法が用いられている。
膜ろ過方法では、一般に、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を用いて被処理水中の懸濁物質を凝集(フロック化)させた後に、微細孔が形成されたろ過膜を用いて被処理水をろ過している。
本願の出願人らは、そのような膜ろ過方法として、塩基度が65%以上、85%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を用いる方法を先に提案した(特許文献1)。この方法によれば、ろ過膜の閉塞の進行を抑制し、ろ過膜の薬品洗浄頻度及び交換頻度を低減することができる。
特願2010−234788
上記特許文献1記載の方法によれば、ろ過後の被処理水中のアルミニウム濃度(以下、「残留アルミニウム濃度」という。)を十分に低くすることが可能である。ただし、例えば、水道水の水質管理目標として、残留アルミニウム濃度を0.1mg/L以下に抑えるべきと設定されたこと等の事情に鑑みれば、残留アルミニウム濃度をより一層確実に低減する方法を開発することが望ましい。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、残留アルミニウム濃度を効果的に低減する膜ろ過方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る膜ろ過方法は、被処理水と、塩基度が85%超、95%以下のポリ塩化アルミニウム溶液とを混和し、次いで、ろ過膜によって前記被処理水をろ過することを特徴とする。本発明によれば、残留アルミニウム濃度を効果的に低減する膜ろ過方法を提供することができる。
また、前記膜ろ過方法において、前記ポリ塩化アルミニウム溶液は、硫酸根を含まないこととしてもよい。また、前記ろ過膜は、セラミック製のろ過膜であることとしてもよい。この場合、前記セラミック製のろ過膜は、モノリス型セラミック膜であることとしてもよい。
本発明によれば、残留アルミニウム濃度を効果的に低減する膜ろ過方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る膜ろ過方法において使用される膜ろ過装置の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る膜ろ過方法において使用されるモノリス型セラミック膜の一例を示す説明図である。 実施例1において、PAC溶液を用いてA湖の湖沼水を処理した後の残留アルミニウム濃度を測定した結果の一例を示す説明図である。 実施例1において、PAC溶液を用いてB川の表流水を処理した後の残留アルミニウム濃度を測定した結果の一例を示す説明図である。 実施例2に係る膜ろ過試験において、逆洗直後に膜差圧を測定した結果の一例を示す説明図である。 実施例2に係る膜ろ過試験において、ろ過水の残留アルミニウム濃度を測定した結果の一例を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係る膜ろ過方法(以下、「本方法」という。)は、被処理水と、塩基度が85%超、95%以下のポリ塩化アルミニウム溶液とを混和し、次いで、ろ過膜によって当該被処理水をろ過する方法である。
本方法は、例えば、上水処理、下水処理、工業用水処理、工業排水処理等の各種水処理に用いることができる。すなわち、本方法は、例えば、浄水場において河川水や湖沼水等の被処理水をろ過して水道水を製造する際に好ましく用いることができる。また、本方法は、例えば、膜分離活性汚泥法(MBR)を用いた下水の処理に用いることもできる。
本方法においては、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム溶液(以下「PAC溶液」という。)、特に、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いる。塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いることにより、ろ過後の被処理水における残留アルミニウム濃度を極めて効果的に且つ確実に低減することができる。なお、PAC溶液の塩基度が95%を超えると、当該PAC溶液の製造が困難となるだけでなく、当該PAC溶液の保存安定性が悪化する。
PAC溶液の塩基度は、好ましくは88%以上、92%以下である。この場合、残留アルミニウム濃度の低減効果が発揮されることに加えて、PAC溶液の製造の困難性が低く、当該PAC溶液の保存安定性が比較的良好である。なお、PAC溶液の塩基度は、日本水道協会(JWWA)の規格JWWA K 154に従って求められる。
本方法で用いるPAC溶液は、塩基度が85%超、95%以下のポリ塩化アルミニウム溶液であれば特に限られない。PAC溶液のアルミニウム含有量は、特に限られない。すなわち、例えば、PAC溶液のアルミニウム含有量が高くなると当該PAC溶液の保存安定性が低下するため、当該アルミニウム含有量は、保存安定性が得られるべき所望の期間に応じて適宜設定される。具体的に、PAC溶液のアルミニウム濃度は、例えば、Al濃度に換算して1〜5質量%であることとしてもよい。
PAC溶液は、保存安定性の観点から、塩素根以外の無機酸根を含まないことが好ましい。すなわち、PAC溶液は、例えば、硫酸根を含まないこととしてもよい。硫酸根を含まないPAC溶液を用いることにより、当該PAC溶液の保存安定性が向上することに加えて、残留アルミニウム濃度を特に効果的に低減することができる。
PAC溶液の製造方法は、塩基度が85%超、95%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を製造できれば特に限られず、例えば、特開昭54−125196号公報に記載の方法を用いることができる。
また、例えば、公知の方法により塩基度が83%付近のPAC溶液を製造し、さらに、苛性ソーダ、炭酸カルシウム、ソーダ灰等のアルカリ剤を用いて、当該PAC溶液の塩基度を85%超、95%以下の範囲に増加させることとしてもよい。
被処理水は、本方法により除去されるべき物質を含む水であれば特に限られない。すなわち、被処理水は、例えば、浄水場において上水(水道水)の製造に用いられる水(例えば、河川水や湖沼水)、又は下水処理場において処理の対象となる水(下水)であることとしてもよい。
そして、本方法においては、被処理水とPAC溶液とを混和する。被処理水とPAC溶液とを混和する方法は、特に限られず、例えば、当該PAC溶液の添加量及び/又は添加タイミング、ろ過に使用する膜ろ過装置の構成及び/又は運転方法等の諸条件に応じて、当該膜ろ過装置において当該PAC溶液による凝集効果が最も良く発揮されるように混和すればよい。
次いで、本方法においては、PAC溶液が添加された被処理水を、ろ過膜を用いてろ過する。ろ過膜は、被処理水とPAC溶液との混和により形成された凝集物を固液分離により除去できるものであれば特に限られない。すなわち、ろ過膜としては、精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いることができる。また、ろ過膜としては、無機材料製のろ過膜又は有機材料製のろ過膜を用いることができる。
無機材料製のろ過膜としては、例えば、セラミック製のろ過膜を好ましく用いることができる。セラミック製のろ過膜としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ムライト及びスピネルからなる群より選択される1種、又は当該群より選択される2種以上の混合物からなるセラミック膜を用いることができる。
さらに、セラミック製のろ過膜は、モノリス型セラミック膜であることが特に好ましい。モノリス型セラミック膜は、内部に複数の通水用貫通孔が形成された多孔質セラミックから構成されるろ過膜である。モノリス型セラミック膜としては、例えば、特開平11−169679号公報に記載のものを使用することができる。
モノリス型セラミック膜を用いることにより、残留アルミニウム濃度を効果的に低減できるだけでなく、被処理水を膜ろ過した際に当該ろ過膜に付着するファウリング原因物質の逆洗(後述)時の剥離性が特に良好であり、また、当該逆洗時に当該ろ過膜から剥離したファウリング原因物質の沈降性も良好となる。
有機材料製のろ過膜としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜、酢酸セルロース(CA)膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリアクリロニトリル(PAN)膜、ポリエチレン(PE)膜又はポリエーテルスルホン(PES)膜を用いることができる。
また、一般に、膜ろ過法で被処理水を連続的にろ過する場合、ろ過の継続に伴い、ろ過膜が閉塞(ファウリング)して膜差圧が上昇し、ろ過膜が所望のろ過性能を発揮できなくなることがある。
そこで、本方法においては、ろ過膜を所定の時間間隔で逆流洗浄(逆洗)することとしてもよい。逆洗を行うことにより、ろ過膜に付着した懸濁物質のフロック等のファウリング原因物質を除去することができる。逆洗においては、逆洗水を150kPa以上の圧力でろ過膜に流通させることが好ましい。
ここで、従来、逆洗を実施してもろ過膜からファウリング原因物質を完全に除去することはできないため、被処理水の膜ろ過を長時間実施すると、定期的に逆洗を実施していても、ろ過膜の閉塞が次第に激しくなり(即ち、ろ過膜の閉塞が進行し)、膜差圧が徐々に上昇してしまうという問題があった。そして、ろ過の継続が不可能なレベルまでろ過膜の閉塞が進んだ場合には、薬品を用いたろ過膜の洗浄(CIP:薬品洗浄)を実施する必要が生じていた。また、薬品洗浄を実施してもろ過膜の閉塞が解消しない場合には、ろ過膜自体を新たなろ過膜に交換する必要が生じていた。
そこで、従来、例えば、凝集剤添加後の被処理水のpHを被処理水の水質に応じた所定のpHに調整した後で被処理水をろ過する方法が提案されていた。しかし、この方法には、ろ過膜の薬品洗浄頻度や交換頻度を更に低減して被処理水のろ過に必要な運転コストを更に低減するという点において改善の余地があった。
この点、本方法によれば、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を凝集剤として用いて被処理水の膜ろ過を実施することで、ろ過後の残留アルミニウム濃度を効果的に低減できることに加えて、ろ過膜の閉塞の進行を抑制してろ過膜の薬品洗浄頻度及び交換頻度を低減することもできる。
なお、このようなろ過膜の閉塞の進行を抑制する効果は、上記特許文献1において既に提案したとおり、塩基度が65%以上、85%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を用いることによっても得られるが、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いる場合には、当該塩基度が65%以上、85%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を用いる場合に比べてろ過膜閉塞の進行抑制効果を損なうことなく、残留アルミニウム濃度を極めて効果的に且つ確実に低減することができる。
このように、本方法によれば、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いることによって、膜ろ過性能を損なうことなく、残留アルミニウム濃度を効果的に低減することができる。
すなわち、従来、PAC溶液の塩基度を過度に上げると、当該PAC溶液の凝集性能が低下すると認識されていた。これに対し、本発明の発明者らは、上述のとおり、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液と膜ろ過装置とを組み合わせることにより、塩基度が65%以上、85%以下のPAC溶液を使用した場合と同等の除濁性能を達成でき、且つろ過後の残留アルミニウム濃度を、当該塩基度が65%以上、85%以下のPAC溶液を用いた場合に比べてさらに効果的に低減できることを独自に見出した。
本方法において、何故このような効果が得られるかについては定かではないが、次のような理由が推察される。即ち、膜ろ過性能が損なわれないことについては、例えば、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液と被処理水との混和によって形成されるフロックの大きさは、従来の急速ろ過法に適用するには小さい傾向があるが、ろ過膜(特に、モノリス型セラミック膜)には十分に捕捉される大きさであることが考えられる。
また、残留アルミニウムが効果的に低減されることについては、例えば、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液中においてはアルミニウムの高分子化が進んでいるために、遊離のアルミニウムイオンの存在が少ないことが考えられる。
また、本方法においては、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いて被処理水中の懸濁物質を凝集させるため、当該被処理水が河川水等のpH6〜8.5程度の水である場合には、当該被処理水のpHを調整することなく懸濁物質を十分に凝集させることができる。
このため、pH調整に必要な薬品コストを効果的に低減できるとともに、PAC溶液からのアルミニウムの溶出を効果的に抑制できる。また、本方法においては、被処理水中の懸濁物質と共に有機物もフロック中に取り込まれて除去されるため、有機物濃度の低い清浄なろ過水を得ることもできる。
また、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いて被処理水中の懸濁物質を凝集させることにより、ろ過膜からの剥離性が良好なフロックが形成される。このため、本方法においては、フロックがろ過膜に付着してファウリング原因物質が形成されても、逆洗により当該ろ過膜から当該ファウリング原因物質を容易に剥離除去することができる。
したがって、所定の時間間隔での逆洗を行うによりファウリング原因物質の蓄積によるろ過膜の閉塞の進行を効果的に抑制し、ろ過膜の薬品洗浄頻度及びろ過膜の交換頻度を効果的に低減することができる。
なお、何故剥離性が良好なフロックが形成されるのかは、明らかではないが、例えば、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液を用いて形成されたフロックは荷電の中和が進んでいるためと推察される。
また、塩基度が85%超、95%以下のPAC溶液は固体状態のアルミニウムを多く含み、当該PAC溶液中のアルミニウムの大半が分画分子量3kDa以上で溶液中のアルミニウムの結晶化が進んでおり、さらに、当該PAC溶液が高い荷電中和力を持つためであるとも推察される。
次に、膜ろ過装置を用いた本方法の具体例について説明する。図1には、本方法において用いられる膜ろ過装置10の一例を示す。図2には、本方法において用いられるモノリス型セラミック膜7の一例を示す。なお、図2においては、ろ過膜7の一部を切り欠いて示している。
図1に示す膜ろ過装置10は、被処理水とPAC溶液とを混和する凝集混和槽1と、当該凝集混和槽1からポンプ4を介して供給された被処理水を、図2に示すろ過膜7でろ過してろ過水を得る膜ろ過ユニット5と、当該膜ろ過ユニット5の当該ろ過膜7の逆流洗浄(逆洗)に用いる逆洗水を貯留する逆洗水槽6とを備えている。凝集混和槽1は、被処理水とPAC溶液とを急速撹拌条件下で混合する急速撹拌槽2と、当該急速撹拌槽2で得られた混合物を緩速撹拌条件下で混合する緩速撹拌槽3とからなる。
この膜ろ過装置10においては、PAC溶液と混和された被処理水を、膜ろ過ユニット5のろ過膜7によってろ過する。ここで、図2に示すモノリス型セラミック膜7は、被処理水が流入する蓮根状の通水用貫通孔71を有している。膜ろ過ユニット5は、このモノリス型のセラミック膜7を内部に収納する容器を有している。そして、膜ろ過ユニット5において、セラミック膜7の孔71に流入した被処理水は、各孔71の表面に位置する分離層(緻密な膜面)でろ過されて外表面72から流出する。
膜ろ過装置10において膜ろ過ユニット5のろ過膜7を逆洗する際には、逆洗水槽6へ加圧空気を供給して当該逆洗水槽6内の逆洗水を押し出すことで、高圧の逆洗水が当該逆洗水槽6から当該膜ろ過ユニット5の当該ろ過膜7に供給される。
そして、この膜ろ過装置10では、所定の時間間隔で膜ろ過ユニット5のろ過膜7の逆洗を実施しながら、被処理水のろ過が行われる。すなわち、例えば、一定のろ過時間が経過した際、又は被処理水中に含まれているフロック等のファウリング原因物質のろ過膜7への付着等により膜ろ過ユニット5の膜差圧が所定の圧力まで上昇した際には、当該ろ過膜7を逆流洗浄する。
なお、ろ過膜7の逆洗を行う時間間隔は、特に限られず、例えば、予め定められた一定の間隔としてもよいし、ろ過膜7の膜差圧の大きさに応じて決定される間隔としてもよいし、ろ過水の水質に応じて決定される間隔としてもよい。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例においては、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
予備試験として、塩基度が50%、60%、70%、85%又は90%のPAC溶液を用いて、ジャーテスト試験における残留アルミニウム濃度の測定を行った。
[塩基度50%のPAC溶液]
市販の塩基性塩化アルミニウム(タキバイン#1500、多木化学株式会社製;Al:23.5%、Cl:8.1%、塩基度83.5%)500gに240gの35%HClを5分かけて添加し、その後、さらに水435gを添加した。得られた溶液を加熱し、90℃で60分間熟成した。次いで、加熱後の溶液をろ過し、アルミニウム濃度がAlとして10%である塩基度50%のPAC溶液を製造した。なお、このPAC溶液の製造は、撹拌下において行った。
[塩基度60%のPAC溶液]
168gの35%HCl及び507gの水を使用した以外は上記塩基度50%のPAC溶液と同様にして、アルミニウム濃度がAlとして10%である塩基度60%のPAC溶液を製造した。
[塩基度70%のPAC溶液]
95gの35%HCl及び580gの水を使用した以外は上記塩基度50%のPAC溶液と同様にして、アルミニウム濃度がAlとして10%である塩基度70%のPAC溶液を製造した。
[塩基度85%のPAC溶液]
市販の塩基性塩化アルミニウム(タキバイン#1500)100gに水2245gを添加し、その後、得られた溶液を90℃に加熱した。次に、この溶液の温度を90℃に維持しながら、5.5gの20%NaCOを30分かけて添加し、その後、得られた溶液を90℃で60分間熟成した。次いで、加熱後の溶液をろ過し、アルミニウム濃度がAlとして1%である塩基度85%のPAC溶液を製造した。なお、このPAC溶液の製造は、撹拌下において行った。
[塩基度90%のPAC溶液]
2225gの水及び25gの20%NaCOを使用し、当該20%NaCOを60分かけて添加し、熟成時間を120分とした以外は上記塩基度85%のPAC溶液と同様にして、アルミニウム濃度がAlとして1%である塩基度90%のPAC溶液を製造した。
[被処理水]
被処理水として、A湖の湖沼水及びB川の表流水を用いた。表1には、各被処理水の性状を示す。
[ジャーテスト試験]
A湖の湖沼水を被処理水とした場合は、PAC溶液添加後のアルミニウム濃度がAlとして2.86mg/Lとなるように、PAC溶液を当該被処理水に注入した。また、B川の表流水を被処理水とした場合は、PAC溶液添加後のアルミニウム濃度がAlとして1.89mg/Lとなるように、PAC溶液を当該被処理水に注入した。
PAC溶液の注入後、被処理水の急速撹拌(G値200S−1×1分)、次いで緩速撹拌(G値20S−1×10分)を行い、その後、当該被処理水を60分静置した。次いで、被処理水の上澄水を採取し、当該上澄水を孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルター(JVWP04700、ミリポア社製)でろ過し、得られたろ液中のアルミニウム濃度(残留アルミニウム濃度)を測定した。なお、凝集pHは7.5又は8.0とし、ろ液のpHが7.5又は8.0になるように被処理水に予めNaOHを加えておいた。
図3及び図4に試験結果を示す。図3及び図4において、横軸は用いたPAC溶液の塩基度(%)を示し、縦軸は処理後に得られたろ液中の残留アルミニウム濃度(mg/L)を示し、丸印は凝集pHが7.5であった場合の結果を示し、三角印は凝集pHが8.0であった場合の結果を示す。
図3及び図4に示すように、塩基度が90%のPAC溶液を用いることにより、塩基度が85%以下のPAC溶液を用いた場合に比べて、残留アルミニウム濃度が著しく低下したことが確認された。
凝集剤として塩基度72%又は90%のPAC溶液を用いて、膜ろ過試験を行った。
[塩基度90%のPAC溶液(PACl-90)]
公知の文献(Colloids and Surfaces A:Physicochem. Eng. Aspects 292(2007)110-118)に記載された製法を参考に、塩基度90%のPAC溶液を製造した。すなわち、アルミニウム濃度がAlとして1.0mol/LのAlCl水溶液80mlを85〜90℃の範囲の温度で加熱し、その後、当該AlCl水溶液に、急速撹拌下において、2.7%のNaOH水溶液320gをペリスタティックポンプを用いて添加した。次に、得られた溶液に、最終体積が880mlとなるように水を添加して、アルミニウム濃度がAlとして2.454g/Lである塩基度90%のPAC溶液を製造した。なお、膜ろ過試験には、上記塩基度90%のPAC溶液を水で希釈して、アルミニウム濃度がAlとして136.5mg/LであるPAC溶液を調製して用いた。
[塩基度72%のPAC(PACl-72s)]
特開2009−203125号公報の実施例1に従い、塩基度が72%のPAC溶液(Al:10.2%、SO:2.8%)を製造した。なお、膜ろ過試験には、上記塩基度72%のPAC溶液を水で希釈して、アルミニウム濃度がAlとして136.0mg/LであるPAC溶液を調製して用いた。
[被処理水]
被処理水として、後述の表2に示すようなB川の表流水を用いた。
[膜ろ過装置]
膜ろ過装置として図1に示したものを用いた。ろ過膜は図2に示すようなメタウォーター株式会社製の内圧式モノリス型セラミック製ろ過膜(孔径0.1μm、外径:φ30mm、長さ:100mm)を用いた。但し、凝集混和槽1、膜ろ過ユニット5及びろ過水弁52は並列で2系列設置し、一方をPACl-90用、他方をPACl-72s用とした。
[膜ろ過試験]
PAC溶液添加後のアルミニウム濃度がAlとして1.0mg/LとなるようにPAC溶液をB川の表流水に注入した。そして、上記膜ろ過装置を用いて、被処理水の膜ろ過を行った。急速撹拌槽での撹拌速度は60rpm(滞留時間:7.3分間)、緩速撹拌槽での撹拌速度は20rpm(滞留時間:12.5分間)とした。なお、凝集pHはNaOHを用いて7.5に調整した。また、膜ろ過ユニットへの被処理水の通水量は、3.0m/m・日とし、1時間毎に圧力500kPaの逆洗水で逆洗(加圧工程:60秒間、ブロー工程:3秒間)した。試験期間は約1ヶ月間であった。
図5には、逆洗直後に測定した膜差圧を示す。図5において、横軸は試験開始からの経過日数(日)を示し、縦軸は膜差圧(kPa)を示し、PACl-72sを用いた場合の結果と、PACl-90を用いた場合の結果とを示す。
図6には、ろ過水中の残留アルミニウム濃度を測定した結果を示す。図6において、横軸は試験開始からの経過日数(日)を示し、縦軸はろ過水中の残留アルミニウム濃度(mg/L)を示し、四角印はPACl-72sを用いた場合の結果を示し、三角印はPACl-90を用いた場合の結果を示す。
表2には、ろ過水のpH、可溶性有機物の指標となるDOC及びE260の試験期間平均値を示す。また、表2に示す被処理水の濁度は、試験時に毎回測定した。
図5及び図6に示すように、PACl-90を用いて膜ろ過した場合は、PACl-72sを用いた場合と比較し、膜差圧においてほとんど差がなく、しかもろ過水中の残留アルミニウム濃度を著しく低減することができた。また、表2に示すDOC及びE260の値より、PACl-90を用いて膜ろ過した場合の可溶性有機物の除去は、PACl-72sを用いた場合に比べて良好であることも確認された。
1 凝集混和槽、2 急速撹拌槽、3 緩速撹拌槽、4 凝集処理水ポンプ、5 膜ろ過ユニット、6 逆洗水槽、7 ろ過膜(モノリス型セラミック膜)、10 膜ろ過装置、21 撹拌機、22 PACポンプ、31 撹拌機、51 凝集処理水弁、52 ろ過水弁、61 逆洗弁、62 逆洗排水弁、71 通水用貫通孔、72 外表面。

Claims (4)

  1. 被処理水と、塩基度が85%超、95%以下のポリ塩化アルミニウム溶液とを混和し、次いで、ろ過膜によって前記被処理水をろ過する
    ことを特徴とする膜ろ過方法。
  2. 前記ポリ塩化アルミニウム溶液は、硫酸根を含まない
    ことを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過方法。
  3. 前記ろ過膜は、セラミック製のろ過膜である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の膜ろ過方法。
  4. 前記セラミック製のろ過膜は、モノリス型セラミック膜である
    ことを特徴とする請求項3に記載の膜ろ過方法。
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