JP2013220069A - 植物性多糖の分解活性が増強された糸状菌及び該糸状菌の使用 - Google Patents

植物性多糖の分解活性が増強された糸状菌及び該糸状菌の使用 Download PDF

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Abstract

【課題】植物性多糖の分解活性が増強された糸状菌、及び該糸状菌を用いた植物性多糖の分解酵素の製造法、植物性多糖を基質とした単糖の製造法、及び植物性多糖の糖化方法の提供。
【解決手段】エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株と比べて低下又は喪失した糸状菌。該糸状菌は、セルラーゼ及び/又はキシラナーゼ活性が親株より増強されている。該糸状菌を用いることにより効率よくセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生産させることができ、またセルロース及び/又はキシランを効率よく糖化して単糖を製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース又はキシランの分解活性が増強された糸状菌、該糸状菌を用いたセルラーゼ又はキシラナーゼの製造方法、セルロース又はキシランを基質とした単糖の製造方法、及びセルロース又はキシランの糖化方法に関する。
セルロース及びキシランは地球上に豊富に存在する、糖源に変換可能な植物材料であることから、セルロース等からエネルギー源を再生する技術は、リサイクル型社会の実現に大いに役立つと期待されている。
セルロースは、β-グルコースがグリコシド結合で連結した直鎖状の高分子であり、その分解に関与する酵素がセルラーゼである。セルラーゼは分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)、糖鎖の還元末端と非還元末端のいずれから分解し、セロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ、EC 3.2.1.91)、及びβ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)にわけられる。
キシランは、D-キシロースがβ1-4結合で連結した主鎖に対し、様々な側鎖が結合したヘテロ糖である。キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)は、キシランのβ1-4結合を加水分解し、キシロースを生成する酵素である。
セルロースをグルコースにまで効率的に分解するには、上記した各種セルラーゼが総合的に機能することが必要であり、またキシランはセルロースについで植物に多く含まれる多糖類であるため、多種のセルラーゼ及びキシラナーゼを生産するトリコデルマ(Trichoderma)等の糸状菌は植物性多糖の分解菌として注目されてきた。
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)のセルラーゼとしては、例えば、その遺伝子が単離されたエンドグルカナーゼVIII(EGVIII)(特許文献1)が挙げられるが、これは膜結合型のエンドグルカナーゼと予想され、他のエンドグルカナーゼと同様、セルラーゼの発現を正に制御していると考えられている(非特許文献1〜3)。
特開2005-512536号公報
FEMS Microb. Reviews, 29, 719-739 (2005) J. Biol. Chem., 278, 31988-31997 (2003) J. Bacteriol., 179, 5318-5320 (1997)
遺伝子組み換え技術等を用いて、上記糸状菌のセルロース及び/又はキシロース分解活性を向上させ、上記植物材料の、糖源への効率的な変換を達成することが期待される。しかしながら、糸状菌の各種セルラーゼ及びキシラナーゼは各々複雑な発現制御、活性制御を受けており、従来技術を用いてそれらの活性を上昇させ、上記分解活性の向上につなげることは困難であった。
本発明は、植物性多糖の分解活性が向上した糸状菌を構築し、該糸状菌を用いた植物性多糖の分解酵素の製造方法、植物性多糖を基質とした単糖の製造方法、及び植物性多糖の糖化方法を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、意外にも、本来セルロース分解に直接貢献するはずの糸状菌エンドグルカナーゼVIII遺伝子が破壊された菌株で、植物性多糖分解活性が飛躍的に高まることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1] エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌。
[2] エンドグルカナーゼVIIIの発現が喪失している、[1]記載の糸状菌。
[3] エンドグルカナーゼVIIIが、以下の(1)〜(3)より選ばれるタンパク質である、[1]記載の糸状菌:
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質、及び
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質。
[4] 糸状菌がトリコデルマ属に属する、[1]〜[3]のいずれかに記載の糸状菌。
[5] 糸状菌がトリコデルマ・リーセイである、[1]〜[3]のいずれかに記載の糸状菌。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させること、及び該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取することを特徴とするセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存せしめ、該媒体中に単糖を生成、蓄積させること、及び該媒体から単糖を単離することを特徴とする単糖の製造法。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存せしめ、該物質に含有されるセルロース又はキシランを糖化することを特徴とするセルロース又はキシランの糖化方法。
本発明によれば、効率よくセルロースを分解することができる糸状菌が提供され、該糸状菌を用いてセルロースを分解することにより、セルロースから単糖を効率よく製造することができる。
図1はアビセルでトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ発現を誘導したときのセルラーゼ活性を示す図である。黒四角がΔegl8、黒丸がPC-3-7株を示す。 図2は各種セロオリゴ糖及びソホロースでトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ発現を誘導したときのセルラーゼ活性を示す図である。黒四角がΔegl8、黒丸がPC-3-7株を示す。
1.本発明の糸状菌
本発明は、エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌を提供するものである。
「エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株に比べて低下又は喪失」とは、糸状菌が有する全エンドグルカナーゼのうち、エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株に比べて低下又は喪失していることを意味する。
エンドグルカナーゼVIIIは、公知のエンドグルカナーゼであり、各種のタンパク質データベースにおいてエンドグルカナーゼVIIIとアノテーションされているタンパク質が含まれる。本発明におけるエンドグルカナーゼVIIIは、具体的には、
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質;又は
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質である。
配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列とは、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは97%、98%又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列をいう。アミノ酸配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。本明細書におけるアミノ酸配列の同一性は、具体的には、NCBIのインターネットホームページ上に公開されている相同性計算アルゴリズムNCBI blastp/Blast 2 sequences(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(Short queries=off/Expect threshold=10/Matrix=BLOSUM62/Gap Costs=Existence:11 Extension:1/Compositional adjustments=Conditional compositional score matrix adjustment/filter=off/Mask=off)にて計算することができる。
配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列とは、例えば、1〜100個、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜30個、さらにより好ましくは1〜20個、最も好ましくは1〜10個、1〜5個、3個、2個又は1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列である。
本発明におけるエンドグルカナーゼ活性とは、セルロース等のグルカンを分子内部から切断する活性(EC 3.2.1.4)を指す。タンパク質のエンドグルカナーゼ活性は、当該分野で公知の方法に従って測定することが出来る。例えば、評価対象のタンパク質をカルボキシメチルセルロースと接触させ、加水分解で生じた還元末端を、ジニトロサリチル酸試薬、或いは、Somogyi-Nelson法(Bull. Chem. Soc. Jpn. 36:563-569(1963))などの還元糖の定量法で測定することにより、タンパク質のエンドグルカナーゼ活性を評価することが出来る。評価対象のタンパク質を添加しないブランクと比較して、還元末端量が有意に増加した場合には、該評価対象のタンパク質はエンドグルカナーゼ活性を有すると判断される。
本発明における親株としては、当業者に糸状菌であると認識されている限り限定されないが、真菌門(Eumycota)及び卵菌門(Oomycota)に属する糸状菌が挙げられる。具体的には、上記糸状菌としては、トリコデルマ属、アルペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、フサリウム(Fusarium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、フミコーラ(Humicola)属、エメリセラ(Emericella)属、及びハイポクレア(Hypocrea)属の糸状菌が挙げられるが、好ましくはトリコデルマ属の糸状菌である。
前記トリコデルマ属の糸状菌としては、トリコデルマ・リーセイ、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)トリコデルマ・ハリジアウム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)及びトリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)等が挙げられるが、好ましくはトリコデルマ・リーセイであり、より好ましくはトリコデルマ・リーセイPC-3-7(ATCC66589)株である。
親株である糸状菌は、野生型株であってもよく、該野生型株から人工的に育種された株でもよく、そのゲノム中の塩基配列が置換、付加、欠失又は修飾された変異型株(変異体)又は突然変異体であってもよい。
本発明における親株は、エンドグルカナーゼVIIIを発現し、エンドグルカナーゼVIII活性を有しており、且つセルラーゼ活性及び/又はキシラナーゼ活性を有している。
本発明の糸状菌は、親株と比較して、菌体内のエンドグルカナーゼVIIIの発現が、通常50%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは0%に低下しているため、その活性もまた同様に低下している。
エンドグルカナーゼVIIIの発現量の比較は、エンドグルカナーゼVIIIのタンパク質の発現量に基づき実施される。
エンドグルカナーゼVIIIの発現量は、ウェスタンブロッティングや免疫組織染色等の周知の免疫学的手法により測定することが出来る。
本発明の糸状菌としては、染色体DNA上のエンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子の塩基配列に、親株の該塩基配列と比較して、塩基の欠失、置換又は付加があるため、エンドグルカナーゼVIIIの発現が低下又は喪失した糸状菌を挙げることができる。
エンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子としては、ORFを含む転写領域及び該遺伝子のプロモーター等の転写調節領域からなるDNAを挙げることができる。
また、本発明の糸状菌としては、エンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子の転写調節領域等に、欠失、置換、付加等の変異があることにより、エンドグルカナーゼVIIIの発現が、親株と比較して低下又は喪失した糸状菌(ここで、エンドグルカナーゼVIIIのアミノ酸配列は、親株と同一であってもよいし、異なっていてもよい)等が挙げられる。
ここでエンドグルカナーゼVIIIの「発現」とは、当該タンパク質をコードする遺伝子(エンドグルカナーゼVIII遺伝子)から、翻訳産物(即ち、タンパク質)が産生され、且つ機能的な状態でその作用部位に局在することをいう。タンパク質の「発現が低下した」とは、結果として、遺伝子改変糸状菌の菌体内に存在する該タンパク質の量が、親株におけるそれに比べて有意に低下している状態を意味する。したがって、タンパク質の発現を低下させる遺伝子改変は、例えば、遺伝子レベル、転写レベル、転写後調節レベル、翻訳レベル、翻訳後修飾レベル等の任意に段階で行うことができる。
本発明の糸状菌は、例えば、親株の糸状菌の染色体DNA上のエンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子の塩基配列に、塩基の欠失、置換又は付加を導入する方法などにより取得することができる。
塩基の欠失、置換又は付加を導入する領域としては、エンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子であれば限定されないが、例えば、エンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子の転写領域、及び該遺伝子のプロモーターやエンハンサー(転写活性化領域)などの転写調節領域を挙げることができ、好ましくはエンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子の転写領域を挙げることができる。
エンドグルカナーゼVIII遺伝子の転写調節領域としては、例えば、染色体DNA上におけるエンドグルカナーゼVIII遺伝子の転写領域の5’末端より上流側30塩基までの領域を挙げることができる。エンドグルカナーゼVIII遺伝子の転写活性化領域としては、上流側-500塩基から-1000塩基に相当する領域を挙げることができる。
転写領域への塩基の欠失、置換又は付加の導入は、エンドグルカナーゼVIIIの発現を低下又は喪失させる塩基の欠失、置換又は付加であれば、塩基の種類及び数に制限はないが、塩基の欠失としては、好ましくは10塩基以上、より好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは100塩基以上、特に好ましくは200塩基以上の転写領域の一部、最も好ましくは転写領域全部の欠失を挙げることができる。塩基の置換としては、転写領域の5’末端から150番目以内の塩基、好ましくは100番目以内の塩基、より好ましくは50番目以内の塩基、特に好ましくは30番目以内の塩基、最も好ましくは20番目以内の塩基を置換してナンセンスコドンを導入する置換を挙げることができる。塩基の付加としては、転写領域の5’末端から150番目以内の塩基、好ましくは100番目以内の塩基、より好ましくは50番目以内の塩基、特に好ましくは30番目以内の塩基、最も好ましくは20番目以内の塩基の直後に、50塩基以上、好ましくは100塩基以上、より好ましくは200塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上、特に好ましくは1kb以上のDNA断片を付加することを挙げることができる。塩基の付加の好ましい態様としては、ハイグロマイシン耐性遺伝子、オーレオバシジン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、又は該糸状菌が有さないアセトアミダーゼ遺伝子等の栄養要求性遺伝子の導入を挙げることができる。
糸状菌の染色体DNA上のエンドグルカナーゼVIII遺伝子に塩基の欠失、置換又は付加を導入する方法としては、相同組換えを利用した方法を挙げることができる。一般的な相同組換えを利用した方法としては、塩基の欠失、置換又は付加が導入された変異遺伝子を、エンドグルカナーゼVIII遺伝子の上流領域及び下流領域の間に挿入することにより、薬剤耐性遺伝子又は栄養要求性遺伝子を有したDNA断片を作成し、該DNA断片を利用して、塩基の欠失等を導入したい宿主細胞内のエンドグルカナーゼVIII遺伝子の遺伝子配座にて相同組換えを起こす方法を挙げることができる。
相同組換えを利用した具体的な方法としては、i)該相同組換え用DNA断片を常法により親株の糸状菌に導入した後、薬剤耐性又は栄養要求性を指標にして相同組換えによって染色体DNA上に該相同組換え用プラスミドが組込まれた形質転換株を選択し、ii)得られた形質転換株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行う。この際のプライマーは該遺伝子の塩基が欠失、及び付加された場所が増幅されるように設計されている。該遺伝子の本来の長さが増幅されず、塩基の欠失及び付加を反映した長さが増幅された株を選択し、iii)最終的にサザン解析にて染色体DNAの該遺伝子座にのみ変異型遺伝子が導入されており、それ以外の場所には導入されていない株を取得することができる。
親株の染色体DNA上のエンドグルカナーゼVIIIをコードする遺伝子に置換、欠失、又は付加を導入する方法としては、他にもバクテリオファージや接合を利用する方法をあげることができ、例えば、Bacterial and Bacteriophage Genetics, Springer-Verlag (1981-2000)に記載の方法をあげることができる。
本発明の糸状菌は、親株の糸状菌を突然変異処理法に付した後、エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株と比較して低下又は喪失した菌株を選択することによっても得ることが出来る。突然変異処理法としては、具体的には、N-メチル−N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)(微生物実験マニュアル、1986年、131頁、講談社サイエンティフィック社)、エチルニトロソウレア、ニトロソグアニジン、ベンゾピレン、アクリジン色素による処理、放射線の照射等が挙げられる。また、種々のアルキル化剤や発癌物質も変異原として用いることができる。変異原を細胞に作用させる方法としては、例えば、組織培養の技術 第三版(朝倉書店)日本組織培養学会編(1996)、ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genet.), 314 (2000)等に記載の方法が用いられ得る。
エンドグルカナーゼVIII遺伝子に変異を導入せずにエンドグルカナーゼVIIIの発現を低下させることもできる。このような方法としては、例えば、タンパク質をコードする遺伝子の転写産物を分解する活性を有する核酸、或いは該転写産物からタンパク質への翻訳を抑制する核酸の導入が挙げられる。このような核酸としては、該タンパク質をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列或いはその一部を含む核酸が挙げられる。
標的タンパク質をコードするmRNAの塩基配列と実質的に相補的な塩基配列とは、対象糸状菌体内の生理的条件下において、該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る程度の相補性を有する塩基配列を意味し、具体的には、例えば、該mRNAの塩基配列と完全相補的な塩基配列(すなわち、mRNAの相補鎖の塩基配列)と、オーバーラップする領域に関して、約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、最も好ましくは約97%以上の同一性を有する塩基配列である。本発明における「塩基配列の類似性」は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
より具体的には、例えばタンパク質がエンドグルカナーゼVIIIの場合、エンドグルカナーゼVIIIをコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列としては、(a)配列番号1に示される塩基配列又は(b)該塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、上述の(1)〜(3)のいずれかのタンパク質をコードする配列と、相補的又は実質的に相補的な塩基配列が挙げられる。ストリンジェント条件下とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
エンドグルカナーゼVIIIをコードするmRNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列を含むトリコデルマ・リーセイのエンドグルカナーゼVIIIをコードするmRNAを挙げることが出来る。
「標的タンパク質をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列の一部」とは、標的タンパク質のmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的又は実質的に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約20塩基以上含むものである。
具体的には、標的タンパク質をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含む核酸として、以下の(a)〜(c)のいずれかのものが好ましく例示される。
(a)標的タンパク質をコードするmRNAに対するアンチセンスRNA
(b)標的タンパク質をコードするmRNAに対するiRNA(interfering RNA)
(c)標的タンパク質をコードするmRNAに対するリボザイム
(a)標的タンパク質をコードするmRNAに対するアンチセンスRNA
本発明における「アンチセンスRNA」とは、標的mRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列或いはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的且つ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。アンチセンスRNAの標的領域は、該アンチセンスRNAがハイブリダイズすることにより、結果として標的mRNAからタンパク質タンパク質への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、該タンパク質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAの全配列が挙げられる。
さらに、本発明のアンチセンスRNAは、標的タンパク質をコードするmRNAとハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAである該タンパク質の遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
(b)標的タンパク質をコードするmRNAに対するiRNA
本明細書においては、標的タンパク質のmRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるiRNAもまた、標的タンパク質のmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物、菌類等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。iRNAは標的となるmRNAの塩基配列情報に基づいて、市販のソフトウェア(例:RNAi Designer; Invitrogen)を用いて適宜設計することができる。
(c)標的タンパク質をコードするmRNAに対するリボザイム
リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度でリボザイム活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。標的タンパク質のmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
上記方法により取得された糸状菌におけるエンドグルカナーゼVIIIの発現が親株に比べて低下又は喪失しているか否かは、ウェスタンブロッティングや免疫組織染色等の周知の免疫学的手法により測定することができる。
そして、親株と比較して、菌体内のエンドグルカナーゼVIIIの発現が、通常50%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは0%に低下している糸状菌を、本発明の糸状菌として選択することが出来る。
本発明の糸状菌は、菌体内のエンドグルカナーゼVIIIの発現が親株と比べて低下又は喪失していることに起因して、親株よりも高いセルラーゼ及び/又はキシラナーゼ活性を有する。
セルラーゼとは、セルロースを分解する酵素の総称であり、セルロースの分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4);セルロースの還元末端又は非還元末端から分解し、セロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ、EC 3.2.1.91)及びβ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)を包含する。
キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)とは、キシランのβ1-4結合を加水分解し、キシロースを生成する酵素である。
本明細書において「セルラーゼ活性」とは、カルボキシメチルセルロースを基質として用いたときにセルロースを分解して、還元糖を生じる活性を意味する。
上記方法により取得された糸状菌が、親株よりセルラーゼ及び/又はキシラナーゼ活性が高いことは、結晶セルロース(アビセル等)共存下で該糸状菌を培地に培養し、得られた培養物の上清のセルラーゼ及び/又はキシラナーゼ活性を測定、比較することにより確認することができる。セルラーゼ活性は、カルボキシメチルセルロースを基質として、その分解活性を加水分解で生じた還元末端をジニトロサリチル酸試薬、又はSomogyi-Nelson法(Bull. Chem. Soc. Jpn. 36:563-569(1963))などの還元糖を定量することにより測定することができ、キシラナーゼ活性は、キシランを基質として、その分解活性を加水分解で生じた還元末端をジニトロサリチル酸試薬、又はSomogyi-Nelson法(Bull. Chem. Soc. Jpn. 36:563-569(1963))などの還元糖を定量することにより測定することができる。
なお、試料とCMC又はキシラン等の基質との反応をさせるときの温度条件は、セルラーゼ活性を評価する場合には、一般的なセルラーゼの至適温度(50℃程度)とし、キシラナーゼ活性を評価する場合には、一般的なキシラナーゼの至適温度40℃程度とする。
酵素反応の結果生じる還元糖量の具体的な定量法としては、糖による銅イオンの還元を利用するSomogyi-Nelson法を用いる(福井作蔵著「生物化学実験法1 還元糖の定量法 第2版」学会出版センター1990年)。Somogyi-Nelson法のプロトコールの一例は、まず酵素反応液を100℃で10分加熱処理して反応を停止させ、その反応液と等量のSomogyi銅液(和光純薬社製等)を加えて混合し、100℃で10分加熱処理してから急速に冷却し、冷却後、等量のNelson試薬(和光純薬社製等)を加えて還元銅沈殿を溶解して発色させ、30分静置し、660nmでの吸光度を測定し、その測定値から、グルコース又はキシロースを標準糖として還元糖量を算出する。
上記方法により調製できる本発明の糸状菌の好適な例としては、トリコデルマ・リーセイ PC-3-7(ATCC66589)のエンドグルカナーゼVIII遺伝子を相同的組換により破壊し、エンドグルカナーゼVIII活性を喪失させることにより得られる糸状菌が挙げられ、具体的には、後述する実施例に開示したトリコデルマ・リーセイΔegl8を挙げることができる。
2.セルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法
本発明は、上記1.の本発明の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させること、及び該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取することを特徴とするセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法を提供する。
セルラーゼ誘導物質としては、セルラーゼ生産性糸状菌のセルラーゼ生産を誘導する物質であれば制限はないが、例えばセルロース;ソホロース;並びにセロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース及びセロヘキサオース等のセロオリゴ糖から選ばれる化合物あげることができる。
セルロースには、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により重合した重合体及びその誘導体が包含される。グルコースの重合度は特に限定されない。また、誘導体としては、カルボキシメチル化、アルデヒド化、又はエステル化等の誘導体が挙げられる。さらに、セルロースは、配糖体であるβグルコシド、リグニン及び/又はヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロース、さらにペクチン等との複合体であってもよい。セルロースは、結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよい。
本発明の方法で用いられる培地は、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンなど、本発明の糸状菌の増殖並びにセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの生産に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。
炭素源としては、使用する糸状菌の資化できる炭素源であればいずれでもよい。炭素源としては、具体的には、上記したセルラーゼ誘導物質、グルコース、フラクトースのような糖質、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などを挙げることができる。これらは単独で、又は複数を組み合わせて使用することができる。好ましくは上記したセルラーゼ誘導物質を炭素源として用いる。
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アミン等の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物のような天然窒素源などをあげることができる。
無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カリウムなどをあげることができる。
ビタミンとしては、ビオチンやチアミンなどをあげることができる。さらに必要に応じて本発明の糸状菌が生育に要求する物質を添加することができる。
培地中に添加するセルラーゼ誘導物質の量は、本発明の糸状菌にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼ産生を誘導できる量であれば特に限定されないが、好ましくは、培地に対して、0.001重量%〜10重量%、より好ましくは0.005重量%〜2重量%、更により好ましくは0.01重量%〜1重量%である。
培養は、好ましくは振とう培養や通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は10〜50℃、好ましくは20〜42℃、より好ましくは25〜35℃である。培養時のpHは3〜9、好ましくは4〜5である。培養時間は、10時間〜10日間、好ましくは2〜7日間である。
培養物中に蓄積したセルラーゼ及び/又はキシラナーゼは、周知のタンパク質精製方法によって回収することができる。例えば、セルラーゼ及び/又はキシラナーゼが培養工程で分泌生産される場合には、菌体を含まない培養上清を培養産物として回収し、セルラーゼ及びキシラナーゼが菌体内タンパク質として生産される場合には菌体を培養産物として回収することができる。菌体を培養産物として回収する場合には、超音波や加圧等による菌体破砕処理を行う。こうした培養産物を、例えば、ろ過や遠心分離等によって固液分離した後、限外ろ過、塩析、透析、クロマトグラフィー等を適宜組み合わせることによりセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを回収できる。なお、分離精製の程度は特に限定されない。培養上清やその粗分離精製物自体をセルラーゼ及びキシラナーゼとして利用することもできる。
3.単糖の製造方法/セルロース又はキシランの糖化方法
本発明は、上記1.の本発明の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存せしめ、該媒体中に単糖を生成、蓄積させること、及び該媒体から単糖を単離することを特徴とする単糖の製造法を提供する。
また、本発明は、上記1.の本発明の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存せしめ、該物質に含有されるセルロース又はキシランを糖化することを特徴とするセルロース又はキシランの糖化方法を提供する。
上記方法において、セルロースを含有する物質を用いる場合には、単糖として、グルコースを、キシランを含有する物質を用いる場合には、単糖としてキシロースを、それぞれ製造することが出来る。
糖化とは、多糖類のグリコシド結合を加水分解することを意味する。
本発明の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して培養物を得る手法は、上記2.の方法に準じて行うことが出来る。当該培養物には、セルラーゼ及び/又はキシラナーゼが含有される。
セルロース又はキシランを含有する物質としては、単離又は精製されたセルロース又はキシランの他、木質及び草木などをあげることができる。木質としては、製材屑であるおが屑、樹皮及び端材など、森林中の木材、枝、葉、梢、根及び間伐材など、廃棄物であるパルプ黒液及び建築廃材など、草木としては雑草、笹及び農産物などをあげることができる。ただし、農産物は食糧として用い難い部位(たとえば稲藁など)が好ましい。
水性媒体としては、本発明の糸状菌が生産するセルラーゼ又はキシラナーゼの活性を妨げない限り、特に限定されないが、例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などをあげることができる。緩衝液のpHは、生産されるセルラーゼ又はキシラナーゼが活性を有する限り限定されないが、好ましくは3〜8、より好ましくは4〜6である。
単糖の生成反応及びセルロース又はキシランの糖化反応は、40〜70℃、好ましくは45〜60℃で、8時間〜3日間、好ましくは12時間〜2日間行う。
本発明の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存させると、該培養物中のセルラーゼ及び/又はキシラナーゼが、セルロース及び/又はキシランを糖化し、該媒体中に単糖が蓄積される。
水性媒体中に生成した単糖の採取、精製は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、反応溶液を濾過及び/又は遠心分離して残渣を除去し、上清をケイソウ土やシリカと接触させることによって、酵素、種々の不純物、未反応物を濾別して取り除き、単糖を含有する濾液を得る。次に、該濾液を活性炭等によって脱色する。次いで、脱色した濾液をイオン交換樹脂と接触させて余分な金属イオン、塩類等をイオン交換によって除去した後に、この濾液を濃縮、乾燥することにより精製された単糖を得ることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
EGVIIIの活性が喪失した糸状菌の造成
EGVIIIをコードする遺伝子である配列番号1で表される塩基配列からなるegl8遺伝子と該遺伝子の上流1kbp及び下流領域1kbpを含む約3.4 kbpのDNA断片をトリコデルマ・リーセイPC-3-7(ATCC 66589)の染色体DNAを鋳型としてPCR法にて取得した。その後該DNA断片のegl8遺伝子の開始コドンから約0.6 kbp下流に存在する制限酵素BglIIサイトを平滑化してトリコデルマ・リーセイにアセトアミド資化性を与えるアセトアミダーゼ遺伝子であるamdS遺伝子を挿入し、egl8遺伝子破壊用のDNA断片とした。該DNA断片をプロトプラスト‐PEG法にてトリコデルマ・リーセイに導入し、アセトアミドを唯一の窒素源として含む最少培地上で培養することによりスクリーニングした。その結果得られた形質転換体候補株から染色体DNAを抽出し、それを鋳型としてegl8遺伝子破壊用DNA断片の全長を増幅できるように設計したプライマーを用いてPCRを行った。候補株の中から、egl8遺伝子破壊用DNA断片の全長約6.5 kbpの増幅産物を示す株をサザンブロット解析に供した。egl8遺伝子破壊用DNA断片がegl8遺伝子配座で相同的に組換わっており、その他の場所には挿入されていないことが確認された株を、egl8遺伝子破壊株として得、Δegl8株と命名した。このΔegl8株のmRNAを抽出し、逆転写反応を行った後に定量的リアルタイムPCRを行った。その結果、egl8遺伝子がほぼ転写されていないことを確認したため、該株をEGVIIIの活性が喪失した糸状菌とした。
[実施例2]
EGVIIIの活性が喪失した糸状菌によるセルラーゼの生産
炭素源としてグルコースを含む培地にΔegl8株の分生子1×106個を植菌し、28℃、220 rpmで48時間前培養を行った。得られた菌糸を微量の無機塩を含むクエン酸緩衝液(以下誘導液とする)で洗浄し、休止菌体とした。この休止菌体を微結晶性セルロースであるアビセルを終濃度1%で含む誘導液に懸濁し、28℃、220 rpmで任意の時間インキュベートした。その後、誘導液の上清を粗酵素標品として回収した。50 mM酢酸緩衝液(pH5.0)中で粗酵素標品をカルボキシメチルセルロースと混合し50℃でインキュベートした。該標品中に含まれるセルラーゼによって単位時間あたりに遊離された還元糖の量をSomogyi-Nelson法にて定量し、セルラーゼ活性とした。図1に示すように、Δegl8株ではコントロールの非破壊株であるトリコデルマ・リーセイPC-3-7(ATCC 66589)に比べ、有意にセルラーゼ活性が上昇していた。
[実施例3]
各種セルラーゼ誘導物質によるセルラーゼ生産
炭素源としてグルコースを含む培地にΔegl8株の分生子1×106個を植菌し、28℃、220 rpmで48時間前培養を行った。得られた菌糸を誘導液で洗浄し、休止菌体とした。この休止菌体を、誘導物質としてセロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオース、又はソホロースをそれぞれ0.05%又は0.01%の濃度で含む誘導液に懸濁し、28℃、220 rpmで任意の時間インキュベートした。その後、誘導液の上清を粗酵素標品として回収し、実施例2と同様の方法によりセルラーゼ活性を測定した。図2に示すように、アビセル以外のセルラーゼ発現誘導物質を用いた場合でも、アビセルと同様、Δegl8株はコントロールの非破壊株であるトリコデルマ・リーセイPC-3-7(ATCC 66589)に比べ、有意にセルラーゼ活性が上昇していた。
[実施例4]
EGVIIIの活性が喪失した糸状菌によるセルロース又はキシランの糖化方法
実施例2でΔegl8株の培養物から得た粗酵素標品を凍結乾燥法にて酵素粉末とする。50mM酢酸緩衝液(pH5.0)中で、微粉砕スギ、等のセルロース及びキシランの混合物であるセルロース系バイオマスと酵素粉末を混合し、50℃、200 spmで任意の時間インキュベートし、生成される糖を周知のクロマト法により分離する。Δegl8株とコントロールの非破壊株であるトリコデルマ・リーセイPC-3-7(ATCC 66589)のセルロース又はキシランの糖化度を、緩衝液中のグルコース又はキシロース量を測定することにより算出することができる。
本発明のセルラーゼ又はキシラナーゼ高生産性糸状菌を用いることにより、効率よくセルラーゼ又はキシラナーゼを製造することができ、さらに該糸状菌を用いることによりセルロース又はキシランを糖化してグルコース又はキシロースを製造することができる。

Claims (8)

  1. エンドグルカナーゼVIIIの発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌。
  2. エンドグルカナーゼVIIIの発現が喪失している、請求項1記載の糸状菌。
  3. エンドグルカナーゼVIIIが、以下の(1)〜(3)より選ばれるタンパク質である、請求項1記載の糸状菌:
    (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質、及び
    (3)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質。
  4. 糸状菌がトリコデルマ属に属する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の糸状菌。
  5. 糸状菌がトリコデルマ・リーセイである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の糸状菌。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させること、及び該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取することを特徴とするセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存せしめ、該媒体中に単糖を生成、蓄積させること、及び該媒体から単糖を単離することを特徴とする単糖の製造法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物と、セルロース又はキシランを含有する物質とを水性媒体中に共存せしめ、該物質に含有されるセルロース又はキシランを糖化することを特徴とするセルロース又はキシランの糖化方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112243458A (zh) * 2018-05-31 2021-01-19 东丽株式会社 木霉属丝状菌突变株和蛋白质的制造方法

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