JP2013217694A - 化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法 - Google Patents

化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率を迅速に測定する方法を提供する。
【解決手段】複数の砥粒粉末を接着剤で試料台に固定し、所定のバネ定数のカンチレバー及び探針を備える原子力間顕微鏡装置のスキャナに前記試料台をセットし、前記探針に関して複数の探針位置を設定し、設定された複数の探針位置に対応するように、探針をそれぞれの砥粒に対して接触・解放を繰り返し、前記探針の接触・解放により原子力間顕微鏡装置で測定されるフォースカーブを作成し、ヤング率計算ソフトを用いて、縦軸を力,横軸を変形深さに変換して、力と探針位置の関係をグラフ化し、及び力と探針位置との関係から砥粒のヤング率を求める化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
【選択図】図8

Description

本発明は、原子間力顕微鏡装置(AFM装置)を用いて、半導体等の平坦化用化学機械研磨液に用いられる化学機械研磨スラリー(CMPスラリー)の砥粒のヤング率を測定する方法に関する。本発明は化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率の測定方法に関するものであるが、砥粒のヤング率を迅速で簡便な方法で求めることができるので、砥粒の製造条件を適宜変更して最適な化学機械研磨スラリーの砥粒を製造するのに利用することができる。
素材表面を精密に研磨加工することが必要な用例として、光ディスク基板、磁気ディスク、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、時計板、カメラレンズ、光学部品用の各種レンズに用いられるガラス素材やフィルタ類等の結晶素材、半導体用のシリコンウエハ等の基板、半導体デバイス製造の各工程において形成された絶縁膜、金属層、バリア層等がある。
これらの素材表面は、高精度に研磨することが要求される。半導体デバイス製造における研磨加工の工程としては、例えば、酸化珪素膜等の層間絶縁膜の平坦化や、集積回路内の素子を分離するため基板上に埋め込んだ余分な酸化珪素膜を除くシャロー・トレンチ素子分離膜等がある。
これらの半導体デバイス製造等における精密研磨用研磨液として、化学機械研磨液(CMPスラリー:Chemical Mechanical Polish Slurry)が用いられ、スラリーにシリカ、アルミナ、セリア等の微細砥粒を分散して用いる。特に、シリカ微粒子を研磨粒子として用いたシリカ研磨液は、被研磨面の研磨傷発生等が少ないことから広く普及している。また、最近では、酸化セリウムを含む研磨液が開発され実用化されている。酸化セリウムは、セリウム塩に炭酸セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸セリウム等を用い、これを仮焼き、粉砕することにより、化学機械研磨スラリー用砥粒が製造されている。
これらの化学機械研磨スラリーを用いた化学機械研磨装置の特性評価方法、材料表面の面内均一性評価方法及びスラリー薬液の特性推定方法が特許文献1に開示されている。特許文献1においては、原子間力顕微鏡装置を用いた材料表面の特性評価技術に関するものであり、より具体的には、原子間力顕微鏡装置を用いた材料表面の面内均一性を評価する方法、スラリー状の研磨剤をパッド表面に供給してパッドと半導体ウエハ等の薄板状被研磨物とを相対運動させることで、該被研磨物の表面を化学機械的に研磨する化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polish)装置の薄板状被研磨物、研磨パッド、研磨剤の研磨粒子等の化学的及び機械的な研磨に関連する研磨関連物質表面の化学機械研磨特性評価方法、及び化学機械研磨処理中の研磨特性を事前に認識するための化学機械研磨装置の化学機械研磨特性評価方法が開示されている。
特許文献1に開示された技術においては、砥粒のヤング率を測定するにあたり、実際の化学機械研磨スラリーと被処理物とを接触してそれらの間に形成される反応層を評価しているので、砥粒のヤング率を直接測定しているわけではない。従って、或るヤング率の砥粒を製造したいと言う場合に、いったん砥粒を製造し、それを用いて化学機械研磨スラリーを製造し、その化学機械研磨スラリーを被研磨物と接触して反応層を形成し、その研磨特性から推測してその砥粒が所望のヤング率を持っているのかどうかを間接的に判定し、その結果に基づいて砥粒の製造条件(粉砕時間、温度、粉砕機械等の選定)を決定するという、大変煩雑な工程を必要とする。
特開2010−74119号公報
本発明は、上記に鑑みて、砥粒のヤング率を直接的に測定することができれば、所望のヤング率を持つ砥粒を製造する条件を迅速かつ容易に決定または選択することができるという課題を達成することができ、砥粒の効率的な製造が可能になるという、砥粒のヤング率の測定方法を提供するものである。
本発明は、以下の基本構成からなる、化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法に関するものである。
(1)複数の砥粒粉末を接着剤で試料台に固定する。
(2)所定のバネ定数のカンチレバー及び探針を備える原子力間顕微鏡装置(AFM装置:Atomic Force Microscope)に前記試料台をセットする。
(3)前記探針に関して複数の探針位置(h)を設定する。
(4)設定された複数の探針位置(h)に対応するように、探針をそれぞれの砥粒に対して接触・解放を繰り返す。
(5)前記探針の接触・解放によりAFM装置で測定されるフォースカーブを作成する。
(6)ヤング率計算ソフトを用いて、縦軸を力(F),横軸を変形深さ(S−S)に変換して、力(F)と探針位置(h)の関係をグラフ化する。
(7)力(F)と探針位置(h)との関係から砥粒のヤング率を求める。
本発明によれば、砥粒のヤング率を直接的に測定、評価することができるので、そのヤング率を持つ砥粒を再現するのが簡単且つ迅速に行うことができると言う効果がある。
本発明に用いられるAFM装置の概略図。 本発明で用いられるAFM装置の探針の接触・インデンテーション・解放の動作を示す図。 図2Aの探針の編位を示す例。 フォースカーブの例。 力F−距離(S−S)の関係に変換した結果を示す図。 フォースカーブの実測例。 図4Aのフォースカーブに基づいて得られた力F−距離(S−S)の変換カーブ。 AFM装置により測定した砥粒表面形状を示す。 最大荷重に対するヤング率の関係を示すグラフ。 ヤング率を算出した結果を示すグラフ。 本発明のヤング率測定方法を示すフロー図。
砥粒のヤング率の測定により、砥粒の結晶性を評価することができる。結晶性が高ければ、ヤング率は増加し、結晶性が低ければ、ヤング率は低下すると予想される。
ヤング率の測定方法は、従来、インデンテーション法が一般に実施されている。特に薄膜層の評価として、ナノインデンテーション法があり、数十nm以上の膜厚を有する表面層について実施されている。ナノインデンテーション法はダイヤモンド等の硬い微小な圧痕(インデンテーション)の幾何学的寸法と圧子の押し当て時と引き上げ時の応力−偏位曲線を用いて表面層の機械的特性を求める。従って、表面層には圧痕を形成させることが必須である。
ところが、砥粒は、粒子径が数十nm前後と極めて小さく、また、球形に近いことから平坦部が少ない。そのため、ナノインデンテーション法で用いられるダイヤモンドの圧痕(インデンテーション)よりも砥粒の方が小さく、この方法で砥粒のヤング率を評価することは困難である。そこで、本発明では砥粒のヤング率を、原子間力顕微鏡装置(AFM)を用いて直接的に評価する方法を検討した。
本発明者等は、本発明の砥粒のヤング率の評価方法に基づいて、一定の結晶性を有する酸化セリウム粉体等の砥粒を安定的に得るための焼成条件を調整することにより、異なる製造ロットにおいても、所定のヤング率を有する砥粒を安定的に効率よく得られることを見出した。
以下の説明において、砥粒として酸化セリウム(セリア)を対象として説明するが、本発明の対象はこれに限られるものではなく、シリカ、アルミナなど他の砥粒に対しても本発明は適用可能である。
まず、炭酸セリウムに対して、焼成及び粉砕工程を経て酸化セリウム粒子を得る製造方法では、酸化セリウム粉体の結晶性は昇温速度の影響を受ける。例えば、ロータリーキルンやトンネル炉等の連続運転式の焼成炉を用い急加熱して焼成温度まで昇温して焼成する場合、バッチ式炉で緩やかに加熱を行い焼成温度まで昇温し焼成した場合と比べ、得られる酸化セリウム粉体の結晶性が高まる傾向がある。
しかし、本発明においては、一定の結晶性を有する昇温速度に調整することにより、粉砕性のよい酸化セリウム粉体が得られ、それにより研磨傷低減を可能とした酸化セリウム粒子を安定的に効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明の構成について図8のフロー図を用いて説明を補足する。
(1)複数の砥粒粉末を接着剤で試料台に固定する(ステップ10)。
試料台に、接着剤を薄く(10nm以下)塗布し、その接着剤膜に測定すべき砥粒を散布する。この場合、顕微鏡を用いて、砥粒が重なったり、接着剤で被覆されたりしないように注意して砥粒を接着剤で試料台に固定する。複数の砥粒を試料台に固定する理由は、砥粒のヤング率測定のために、複数のカンチレバー及び探針を用いるので、それぞれの探針を対応する砥粒にアプローチ・リリースするためである。
(2)所定のバネ定数のカンチレバー及び探針を備える原子力間顕微鏡装置(AFM装置:Atomic Force Microscope)のスキャナ上に前記試料台をセットする(ステップ12)。AFM装置は、試料と探針の原子間に働く力を検出して画像を得るもので、原子間力はあらゆる物質の間に働くため容易に試料を観察することができる。AFM装置の空間分解能は探針の先端半径(nm程度)に依存し、現在では、原子レベルの分解能が実現されている。AFM装置はよく知られた技術であり、特許文献1においても詳細に説明されているので、AFM装置についての詳細な説明は省略する。
カンチレバーのバネ定数(K)を10〜20N/mに設定する、このカンチレバーをAFM装置にセットし、カンチレバーの感度(A)を求める(ステップ14)。
また、カンチレバーの感度(A)と力の変位(Y)から探針にかかる力の偏差(N/V)を(KxA/Y)により求める(ステップ18)。
(3)前記探針に関して,力の偏差がゼロの位置を基準として、複数の探針位置(h)を設定する(ステップ24)。
探針位置(h)を設定するに当たっては、AFM装置により、電圧変位変換器(PZT)の感度Bを求め(ステップ20)、電圧変位変換器で変換された電圧(X)より、探針の位置(h)を下式に従って求め(ステップ22)、この結果に基づいて、複数の探針位置(h)を下式によって求める。AFM装置による電圧電位変換器の感度測定は広く行われている方法である。
h=X/B
探針位置(h)とは、砥粒表面に対して探針を押しこむ操作によって、カンチレバーに取り付けられた探針が砥粒表面から反り返る距離(砥粒と探針先端の距離、即ち探針の高さ)である。
(4)設定された複数の探針位置(h)に対応するように、探針をそれぞれの砥粒に対して接触・解放を繰り返す(ステップ26)。アプローチ・リリースとは、図2Aの(a)〜(c)に示すように、探針の砥粒への接触・解放を意味する。
(5)前記探針の接触・解放によりAFM装置で測定されるフォースカーブ(図4A))を作成する(ステップ28)。
フォースカーブは、図2Bに示すように、図2A(a)〜(c)の動作毎のカンチレバーの力の編差(Y)と電圧変位変換器で変換された電圧(X)との関係を示すグラフである。実際の測定によるフォースカーブの例を図3Aに示した。
(6)ヤング率計算ソフトを用いて、縦軸を力(F),横軸を変形深さ(S−S)に変換して、力と探針位置(h)の関係をグラフ化する(ステップ32)。このステップで得られたグラフの例を図4Bに示した。これらのグラフ作成は全て上記ソフトが行う。
ヤング率計算ソフトとしては、イメージメトロロジー社製のSPIP(登録商標) (Scanning Probe Image Processor: 走査型プローブ・イメージ・プロセッサ)のフォースカーブ解析モジュール(バージョン 例えば4.7.0)を用いることができる。このソフトウエアは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)用に開発された正確かつ使いやすいナノスケール3D画像処理ソフトウエアである。
上記ヤング率計算ソフト上で、ポアソン比を定数(0.35)、探針の角度の1/2を定数(45°)に設定して、式1に入力し(ステップ30)、力と探針位置(h)の関係をグラフ化する。式1において、変形深さ(S−S)とは、砥粒表面に押し込まれた探針の深さであり、αは探針の砥粒表面の垂線に対する傾き(探針先端の半径)であり、Esurfaceは砥粒の表面のヤング率、Vsurfaceは砥粒の表面のポアソン比である。
Figure 2013217694
上記グラフ化に当たっては、ステップ18で求めた探針にかかる力の偏差(KxY/A)をSPIPソフトでの演算に組み込む。SPIP(version 4.7.0)で新設されたフォースボリューム解析機能では、フォースボリューム・イメージ内の全てのフォースカーブのパラメータを、新たなイメージ・マップとして表示することができる。
なお、SPIPソフトウエアの詳細は、
http://www.imagemet.com/WebHelp/spip.htm#force_menu.htm
から入手することができる。
SPIPソフトを使わないで、ヤング率の既知の剛体でフォースカーブを測定し、係数などを予め求めておく方法があり、この場合も、式1を使用する。
また、フォースカーブを利用して、砥粒のヤング率を定量的に評価する方法として、上式(式1)のSneddon cone-on-flat modelを使用する以外に、下式2(ヘルツの式)のHertz Sphere-on-flat modelを用いてヤング率を算出する方法がある。
式2において、Rtipは探針先端の半径である。
Figure 2013217694
(7)力と距離との関係を示すグラフ(図4B)から砥粒のヤング率を求める(ステップ34)。
本発明のいくつかの重要な形態を説明すると、以下の通りである。
砥粒を含む化学機械研磨スラリーにおいて、砥粒1個のヤング率として、最大荷重に対するヤング率の変化を求めることにより、特定の最大荷重におけるヤング率で規定することができる。すなわち、該ヤング率は最大荷重が130nN以上、200nN以下の領域で、1GPa以上100GPa以下の分布範囲、及び又は最大荷重が1nN以上、50nN以下の領域で、1GPa以上500GPa以下の分布範囲である。
砥粒を含む化学機械研磨スラリーにおいて、砥粒1個のヤング率として、最大荷重に対するヤング率の変化を求めることにより、特定の最大荷重におけるヤング率で規定するもので、該ヤング率はその測定点が8点以上100点以下の平均値で、かつ、最大荷重が 130nN以上200nN以下の領域で、10GPa以上50GPa以下、及び又は最大荷重が1nN以上、50nN以下の領域で、10GPa以上200GPa以下の範囲である。
また、砥粒1個のヤング率を求める方法として、砥粒の表面形状をAFM装置により計測し、粒子1個の表面のフォースカーブを測定して、探針を砥粒表面に押し付けたときの力−探針変位曲線を変形量曲線に変換し、Sneddon cone-on-flat modelを用いてヤング率を算出する。
砥粒1個のヤング率を求める方法として、砥粒の表面形状をAFM装置により計測し、粒子1個の表面のフォースカーブを測定して、探針を砥粒表面に押し付けたときの力−探針変位曲線を変形量曲線に変換し、ヘルツの式を用いてヤング率を算出する。
砥粒1個のヤング率を求める条件として、砥粒が乾燥状態であること、又、スラリー中に浸漬していた場合は、水洗、乾燥して表面にスラリー由来の反応層が無い状態であることが重要である。
以下、発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
AFM装置を用いてフォースカーブの測定を実施する。即ち、砥粒のヤング率評価を目的として、フォースカーブを測定し、更に測定に用いたAFM装置の探針のバネ定数、先端曲率半径についても測定しておく。その後、フォースカーブからフォースインデンテーション(カー変形量)カーブに変換する。次いで、Sneddon cone-on-flat model(後に詳述)を適用する。その結果に基づいてヤング率を算出する。
上記砥粒のヤング率測定に当っては、砥粒が乾燥状態にあるときに計測する。もし、スラリー中に分散された砥粒を計測する場合には、一旦、スラリーから取り出して、これを水洗、乾燥した後に行う。砥粒表面にスラリー由来の反応層などがあると砥粒そのものの正確な結晶性を評価することができないためである。
本発明によって測定された砥粒のヤング率に基づいて、砥粒を製造するときには、最適な焼成時間と、焼成温度を調整する。ヤング率が目標とする範囲よりも小さい場合には、焼成時間を延長するか、もしくは、焼成温度を上げることが好ましい。また、ヤング率が目標とする範囲よりも大きい場合には、焼成時間を短縮するか、もしくは、焼成温度を下げることが好ましい。
焼成温度が高い場合には、最大荷重が小さい領域でも大きい領域でもヤング率はほぼ同程度に大きい。一方、焼成温度が低い場合には、最大荷重が小さい領域よりも大きい領域でヤング率が小さい。本発明では、最大荷重が小さい領域は砥粒の表面側のヤング率を現し、最大荷重が大きい領域は砥粒のやや内部側のヤング率を表す。従って、焼成温度が低い場合には、表面側とそれより内部側でヤング率が異なることを表しており、特に内部側でヤング率が上昇しないことを意味している。
本発明では、砥粒の表面側と内部側とのヤング率を評価することもできるので、粉砕性と平坦性を改良することが可能である。粉砕性を良くするには、内部側のヤング率が高い方が良い。最大荷重が130nN以上、200nN以下の領域で、1GPa以上100GPa以下の分布範囲であることが望ましい。これよりも小さい領域に分布を持つ場合は、粉砕性に劣る傾向が認められている。
また、ヤング率の平均値で見ると、測定点が8点以上20点以下の平均値で、最大荷重が 130nN以上200nN以下の領域で、10GPa以上50GPa以下であることが好ましい。これよりも小さい領域に平均値を持つ場合は、粉砕性に劣る傾向が認められている。
最大荷重が大きい領域でヤング率が目標とする範囲よりも小さい場合には、焼成温度を上げることが効果的である。また、最大荷重が小さい領域でヤング率が目標とする範囲よりも大きい場合には、焼成時間を短縮することが効果的である。このように最適な焼成条件に調整することが可能である。
図1は一般的なAFM装置の外観概略構成を示す一例であり、図2Aは典型的なカンチレバー1の変位Yに対する電圧変位変換器(PZT)2で検出された電圧Xの関係を示す図で、図2Bはフォースカーブである。図示するように、AFM装置3は、電圧変位変換器(PZT)2、探針4を具備するカンチレバー1、半導体レーザ装置5、光センサ6を備えている。電圧変位変換器(PZT)2上に載置された砥粒7にカンチレバー1の探針4が半導体レーザ装置5から発するレーザ光Lは、カンチレバー1の表面で反射され、光センサ6に入射するようになっている。
カンチレバー1の変位は、カンチレバー1で反射されるレーザ光Lを光センサ6で検出することにより検出されるようになっている。カンチレバー1の探針4にかかる力の変位Y(nN)と該探針4の位置h(nm)の曲線を得るためには、カンチレバー1の変位Y(nN)及び電圧変位変換器(PZT)2で変換された電圧X(V)を力の変位(nN)と探針4の位置h(nm)に変換しなくてはならない。探針4にかかる力の変位(nN)はカンチレバー1の変位Y(nN)をカンチレバーの感度Aで割った値にバネ定数K(N/m)を掛けた値、即ち、力の偏差=K×Y/Aとなる。カンチレバーの感度Aは、V/nmで表される。また、該探針4の位置h(nm)は電圧X(V)を電圧変位変換器(PZT)2の感度B(V/nm)で割った値、即ちh=X/Bとなる。
砥粒7は電圧変位変換器(PZT)2の上の試料台8に接着剤を用いて固定させる。上記探針4にかかる力F(nN)は、探針4の位置h(nm)が大きいときは、電圧変位変換器(PZT)2の位置を変えて、砥粒7を探針4に近づけても、カンチレバー1の変位Yはゼロであり、砥粒7を探針4に近づけると探針4に力Fがかかりはじめる。カンチレバー1の変位Yはカンチレバー1のバネ定数K(N/m)による。砥粒を測定するのにふさわしいバネ定数は10〜20N/mのカンチレバー1である。
本発明の砥粒の具体的なフォースカーブの例を図3(a)に示す。横軸は試料台(電圧変位変換器(PZT)2)又はAFM装置3の探針の位置h(nm)を、縦軸はAFM装置3のカンチレバー1の探針4にかかる力の偏差(nN)を示す。測定は、AFM装置3の探針4と砥粒7との間に相互作用が働かない十分に離れた位置から始め、AFM装置3の探針4と砥粒7とを近づける。図3(a)では横軸hの右端が始めの位置で、左に行くに従い探針4と砥粒7の位置は接近している。最初はAFM装置3の探針4にかかる力がゼロであり、探針4と砥粒7が近づいて接触し、更に探針4が砥粒7に押し付けられると、探針4に加わる力が増大する。接触する前に探針4が砥粒7に引き付けられる場合がある。このとき、探針4に加わる力はマイナス側に変化している。この部分は、ヤング率の評価に際しては考慮しなくてよい。
次に、このフォースカーブを利用して、砥粒7のヤング率を定量的に評価する手法について説明する。これは前述の式1(Sneddon cone-on-flat model)を使用する。
AFM装置3の探針4に作用する力Fは、砥粒7のポアソン比vとヤング率E、探針4の1/2の角度α、探針とカンチレバーの変形距離(S0-S)で表される。砥粒7のポアソン比はここでは一律0.35とする。ここで変形深さ(S0-S)を求めることが必要になる。フォースカーブ測定で得られる図3Aのデータは、力の偏差−位置(h)の関係を示す図である。これを力F−距離(S0-S)の関係をグラフに変換する。その方法を以下に示す。既存の解析ソフトウエアSPIPを使うもので、力F−距離(S0-S)の関係に変換した結果を図3Bに示している。この変換は、フォースカーブの直線部分から、AFM装置3による測定時の感度と探針4の無変形時の位置を求めている。図3Bに示す直線的に力Fが増加している範囲でSneddon cone-on-flat modelによりヤング率Eを求める。この演算は全て前記ヤング率計算ソフトにより自動的に行われ、ヤング率が求められる(ステップ34)。図4A,4Bは、実際に測定した一例で、図4Aはフォースカーブ、図4Bは力F−距離値(S0-S)との関係を示す変換カーブである。
砥粒と研磨液は、基板に形成されている被研磨膜と、研磨布との間に研磨液を供給しながら、被研磨膜が研磨布に接するよう基板を研磨布に押し当て加圧し、被研磨膜と研磨布を相対的に動かして被研磨膜の平坦化研磨に使用される。
被研磨膜が形成されている基板としては、例えば、半導体装置の形成工程に関する基板、具体的には回路素子が形成された段階の半導体基板上に無機絶縁層が形成された基板、シャロー・トレンチ素子分離形成工程において基板上に無機絶縁層が埋込まれた基板等が挙げられる。そして、被研磨膜である前記無機絶縁層としては、少なくとも酸化珪素膜からなる絶縁層などが挙げられる。
以下、本発明の実施例及びその比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。以下の実施例においては、砥粒のヤング率の測定に加えて、砥粒の前製造、砥粒の粉砕性、砥粒の粉砕性評価の結果を踏まえて修正した砥粒製造法、その砥粒を用いた化学機械研磨スラリーの特性を示した。
(実施例1)
<砥粒の前製造>
実施例1−7
(酸化セリウム粉砕粉の作成)
炭酸セリウム水和物40gをアルミナ性容器に入れ、735℃で2時間、空気中で焼成することにより、黄白色の粉末を20g得た。この粉末を、X線開設法で相同定を行ったところ、酸化セリウムであることを確認した。焼成粉末粒子径は20−100μmであった。
<砥粒のヤング率算出>
AFM装置3を用いてフォースカーブの測定を図8に示すフローに従って実施した。前製造した酸化セリウム粉体を試料台にエポキシ樹脂系接着剤を用いて固定した。この際に、砥粒がエポキシ樹脂系接着剤の中に埋もれないように顕微鏡で観察しながら作業した。試料台に酸化セリウム粉体をしっかり固定した後、AFM装置3にセットして、砥粒表面の形状を測定した。図5にAFM装置によって観測した砥粒の表面形状を示す。これより、砥粒1個の粒子の直上に探針4を位置合わせした。さらに、探針4が砥粒表面にアプローチする位置を概ね(h)がゼロになるように光軸を調整した。この後、フォースカーブを測定した。測定条件は以下の通りである。
[フォースカーブ測定条件]
測定開始位置h:400nm
最大押し込み位置h:−10nm〜−150nmまで細かく振って測定
押し込み荷重:6〜200nNまで細かく振って測定
走査速度:10秒
測定した砥粒の個数:6個
前述の通り、図8のフロー図に従って、力F−距離(S−S)の関係に変換した結果から、直線的に力Fが増加している範囲でSneddon cone-on-flat modelによりヤング率Eを求めた。このときの最大荷重に対するヤング率の関係を図6に示す。図6は、酸化セリウム水和物を、アルミナ製容器中を用い空気中で700℃で2時間焼成した粉末粒子のヤング率である。最大荷重が130nN以上、200nN以下の領域では、1GPa以下の砥粒が存在している。また、ヤング率の平均値は7.7GPaで10GPa以下である。さらに、最大荷重が1nN以上、50nN以下の領域では、1GPa以下の砥粒が存在している。但し、ヤング率の平均値は43GPaで10GPa以上200GPa以下の分布範囲に入っていることが分かった。
<砥粒の製造>
(酸化セリウム粉砕粉の作成)
炭酸セリウム水和物40gをアルミナ性容器に入れ、735℃で2時間、空気中で焼成することにより、黄白色の粉末を20g得た。この粉末を、X線開設法で相同定を行ったところ、酸化セリウムであることを確認した。焼成粉末粒子径は20−100μmであった。
先ほどと同様にヤング率を算出した結果を図7に示す。図7は、酸化セリウム水和物を、アルミナ製容器中を用い空気中で735℃で2時間焼成した粉末粒子のヤング率である。最大荷重が130nN以上、200nN以下の領域で、1GPa以上、100GPa以下の分布範囲であり、最大荷重が1nN以上、50nN以下の領域で、1GPa以上、500GPa以下の分布範囲であり、ヤング率の平均値は、最大荷重が130nN以上、200nN以下の領域で、10GPa以上、50GPa以下であり、最大荷重が1nN以上、50nN以下の領域で、10GPa以上、200GPa以下の範囲であることを確認した。
<粉砕性の確認>
粉砕性を確認するため、酸化セリウムスラリを以下のように製造した。上記作製した酸化セリウム粉体27gとポリアクリル酸アンモニウム塩水溶液(40質量%)6.8gと脱イオン水152gとを混合した後、湿式粉砕機(Microfluidics社製、製品名:マイクロフルイダイザーM−110EH、粉砕チャンバー型式:H10Z−1、オリフィス径:0.1mm)を、粉砕圧力100MPa、液温5〜20℃にて15回通過させ湿式粉砕処理を行った。
湿式粉砕処理後のスラリー中の酸化セリウム粉砕物の粒子径をレーザ回折式粒度分布計(株式会社堀場製作所社製、商品名:LA−920)を用い、屈折率1.93、透過度85%の条件で測定したところ、酸化セリウム粉砕物のD99は0.78μmであった。一方、前製造にて得た酸化セリウムに粉砕物のD99は1.05μmと粉砕性に優れていることを確認した。
得られた分散液を室温(25℃)で100時間静置、沈降させ、上澄みを採取した。この上澄み液を孔径0.7μmのフィルタでろ過した後、再び0.7μmのフィルタでろ過し、脱イオン水を加えて固形分濃度を5質量%に調整して、半導体平坦化用研磨液を作製した。
得られた半導体平坦化用研磨液中の酸化セリウム粒子の粒子径を、レーザ回折式粒度分布計(株式会社堀場製作所社製、商品名:LA−920)を用い、屈折率1.93、透過度74%の条件で測定した結果、粒子径の中央値(D50)は0.16μm、D99は0.52μmであり、粉砕性に優れていることを確認した。
一方、前製造にて得た酸化セリウム粒子は粒子径の中央値(D50)は0.21μm、D99は0.71μmであり、粉砕性に劣ることが分かった。
<研磨液の評価>
また、上記半導体平坦化用研磨液を脱イオン水で5倍に希釈し、以下の方法で研磨を行った。研磨速度は320nm/min、光学顕微鏡でウエハ表面を観察したところ、200mmウエハ全面に研磨傷は5個と極めて少ないことを確認した。前製造にて得た研磨剤で、研磨速度340nm/minで研磨し、光学顕微鏡でウエハ表面を観察したところ、200mmウエハ全面に研磨傷が18個と粉砕性と研磨傷特性に差が有ることが分かった。
[研磨試験方法]
研磨荷重:30kPa
研磨パッド:ロデール社製発泡ポリウレタン樹脂(IC−1000)
回転数:定盤75rpm、パッド75rpm
研磨液供給速度:200mL/min
研磨対象物:P−TEOS成膜Siウエハ(直径200mm)(P−TEOS膜は、TEOS(テトラエトキシシラン)を原材料としてプラズマCVD法により作製したシリカ膜である。).
本発明の砥粒及び研磨液は、配線形成工程における半導体表面を高速で研磨でき、且つ平坦性良好で研磨傷を低減することが可能なものであることがわかった。
本発明は化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率を簡便な方法で求めることができる方法であるので、最適な化学機械研磨スラリーの砥粒を製造するのに利用することができる。
1…カンチレバー、2…電圧変位変換器、3…原子力間顕微鏡装置、4…探針、5…半導体レーザ装置、6…光センサ、7…砥粒、8…試料台、L…レーザ光

Claims (7)

  1. 複数の砥粒粉末を接着剤で試料台に固定するステップ、
    所定のバネ定数のカンチレバー及び探針を備える原子力間顕微鏡装置(AFM:Atomic Force Microscope)に前記試料台をセットするステップ、
    前記探針に関して複数の探針位置(h)を設定するステップ、
    設定された複数の探針位置(h)に対応するように、探針をそれぞれの砥粒に対して接触・解放を繰り返すステップ、
    前記探針の接触・解放により前記原子力間顕微鏡装置で測定されるフォースカーブを作成するステップ、
    ヤング率計算ソフトを用いて、縦軸を力(F)、横軸を変形深さ(S−S)に変換して、力と探針位置(h)の関係をグラフ化するステップ、及び
    力と探針位置との関係から砥粒のヤング率を求めるステップ、
    を含むことを特徴とする化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
  2. 前記カンチレバーのバネ定数は10〜20N/mの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
  3. 前記原子力間顕微鏡装置にセットされた前記カンチレバーの感度を求め、前記カンチレバーの力の変位(Y)より探針にかかる力の偏差(N/V)を(KxY/A)により求め、前記力と探針位置(h)の関係をグラフ化するステップにおいて用いることを特徴とする請求項1に記載の化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
  4. 前記原子力間顕微鏡装置により電圧変位変換器の感度(B)を求め、該電圧変位変換器で変換された電圧(X)より探針位置(h)を求め、前記探針位置(h)を決定することを特徴とする請求項1に記載の化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
  5. 前記ヤング率を計算するにあたり、式1(Sneddon cone-on-flat model)を適用することを特徴とする請求項1に記載の化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
  6. 前記ヤング率を計算するにあたり、式2(Hertz Sphere-on-flat model)を適用することを特徴とする請求項1に記載の化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
  7. 前記砥粒は酸化セリウムであることを特徴とする請求項1に記載の化学機械研磨スラリーの砥粒のヤング率測定方法。
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