JP2013216903A - 炭化水素冷媒用冷凍機油及びそれを用いた冷凍機システム - Google Patents

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Abstract

【課題】低級炭化水素冷媒と炭化水素基油を主成分とする冷凍機油を用いた場合に、ワックス析出温度を低下させる。
【解決手段】プロパン及び/又はイソブタンを含む冷媒に用いられる冷凍機油であって、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有し、前記硫化油脂及び硫化オレフィンの硫黄分が5〜20質量%であることを特徴とする炭化水素冷媒用冷凍機油である。前記炭化水素基油は、窒素分が50ppm以下、%Cpが40以上、流動点が−27.5℃以下、硫黄分が3,000ppm以下の鉱油であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、オゾン層を破壊するおそれがなく、かつ、地球温暖化能もハロゲン含有炭化水素冷媒よりも遥かに低い炭化水素冷媒、特にはプロパン又はイソブタンを用いる冷凍機用の潤滑油、及びそれを用いた冷凍機システムに関する。
冷凍機システムは、一般に、圧縮機で冷媒を圧縮し、高圧・高温となった冷媒を凝縮器で熱を発散し、その後、膨張機構(例えば、膨張弁)で低圧とし、蒸発器において冷媒が蒸発する際に周囲から蒸発熱を奪うことで低温となり冷却を行うものである。この冷凍機システムは、冷蔵庫、冷凍庫、空調、ショーケース、清涼飲料やアイスクリームなどの自動販売機等に用いられている。なお、空調や自動販売機などでは凝縮の際に生じる熱を利用して暖房することや、飲料や食品を加熱保持することにも利用されている。
従来、前記冷媒としてはトリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)などの塩素を含有するフッ化炭化水素(CFC又はHCFC)が用いられてきた。しかし、これらのCFC及びHCFCはオゾン層を破壊する環境問題を引き起こすことから、国際的にその生産及び使用が規制され、現在では、塩素を含有しない、例えば、ジフルオロメタン(R32)、テトラフルオロエタン(R134又はR134a)、ジフルオロエタン(R152又はR152a)などの非塩素系フッ化炭化水素(HFC)、いわゆる代替フロンに変換されてきている。
しかし、これらの代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、地球温暖化能が高いために地球環境保護の長期的な観点からは好ましいものではない。一方、炭素数1〜5程度の低分子量の低級炭化水素やアンモニア等はオゾン層を破壊することなく、地球温暖化能も前記の塩素系あるいは非塩素系フッ化炭化水素に比べて非常に低いことから、環境にやさしい冷媒として注目されてきている(特許文献1、2)。
冷凍機システムでは、圧縮機での潤滑のために冷媒といわゆる冷凍機油を混合した作動流体が系内を循環している。このような作動流体に用いられる冷凍機油には、冷媒との相溶性や潤滑性能が求められ、例えば、低級炭化水素冷媒に適した冷凍機油として、本発明者は特定性状の鉱物油を用いることを提案している(特許文献3)。
特開2003−041278号公報 特開2005−162883号公報 国際公開第00/60031号パンフレット
しかしながら、作動流体として、低級炭化水素冷媒と炭化水素基油を主成分とする冷凍機油を用いた場合に、フロック点、すなわち、炭化水素基油からのワックス析出温度が比較的高くなることがある。このような、ワックス分の析出は、膨張弁のキャピラリーを詰まらせたり、圧縮機の弁に付着して開閉不良を引き起こすことなどが憂慮される。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、低級炭化水素冷媒と炭化水素基油を主成分とする冷凍機油を用いた場合に、ワックス析出温度を低下させることにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、炭化水素基油に特定の硫黄化合物を所定量含有させることで、ワックス析出温度(フロック点)を低下させられることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明による炭化水素冷媒用冷凍機油は、炭素数1〜5の炭化水素を含む冷媒に用いられる冷凍機油であって、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有することを特徴とする。また、本発明による冷凍機システムは、炭素数1〜5の炭化水素を含む冷媒と冷凍機油を含む作動流体を含む冷凍機システムであって、前記冷凍機油が、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有することを特徴とする。なお、本発明においては、前記炭化水素基油が、%Cpが40以上、流動点が−27.5℃以下、40℃での動粘度が3〜200mm2/sの鉱油であること、また、前記冷媒がプロパン及び/又はイソブタンであることが好ましい。
本発明の炭化水素冷媒用冷凍機油は、炭化水素基油に特定の硫黄化合物を所定量含有させることでワックス析出温度(フロック点)を低下させられるため、析出ワックスによるキャピラリーの詰まりや、弁の開閉不良の発生を効果的に防止できるという格別の効果を有する。また、本発明の冷凍機システムは、かかる冷凍機油が用いられており、ワックスの析出が抑制されているため、析出ワックスによるキャピラリーの詰まりや、弁の開閉不良の発生が効果的に防止されている。
〔冷凍機油〕
本発明の冷凍機油は、炭化水素基油100質量部に対して、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部配合してなり、必要に応じて他の添加剤が適宜配合されていてもよい。本発明の冷凍機油は、特定の硫黄化合物を所定量含有するため、ワックス析出温度(フロック点)が低く、析出ワックスによるキャピラリーの詰まりや、弁の開閉不良の発生を効果的に防止できる。ここで、本発明の冷凍機油のフロック点は、−30℃以下、特には−40℃以下、さらに好ましくは−50℃以下であり、これにより、圧縮機吐出部の汚れや、膨張機構の詰まりを防ぐことができる。
本発明の冷凍機油は、40℃における動粘度が3〜150mm2/s、特には、5〜100mm2/sのものが好ましく、さらに流動点が−25℃以下のものが好ましい。流動点が−25℃より高いと、圧縮機から冷媒とともに吐出された冷凍機油が膨張機構又は蒸発器などで流動性が低下し、冷凍設備の低温部位に滞留して伝熱効率の低下を招いたり、圧縮機内の冷凍機油不足による軸受の摩耗、焼付きなどを引き起こす恐れがあり、あまり好ましくない。また、さらに、粘度指数が10以上、特には50以上、さらには80以上のものが好ましく、通常、粘度指数は120以下である。冷凍サイクルにおいて、冷凍機油は圧縮機吐出部で高温になり、膨張機構の出口で低温に曝されて比較的広い温度範囲で使用される。したがって、温度による粘度変化が少ない粘度指数の高い潤滑剤、すなわち粘度指数の高い鉱物油が望まれる。一般に長鎖の鎖状炭化水素が多く含まれる潤滑剤は粘度指数が高く、潤滑性能も高くなる傾向にある。
〔炭化水素基油〕
本発明の冷凍機油に用いる炭化水素基油は、鉱油、ポリ−α−オレフィン(PAO)、アルキルベンゼンなどの炭化水素化合物を主成分とし、代表的には、炭化水素化合物を80質量%以上、特には90質量%以上含む。なお、本発明の冷凍機油に用いる炭化水素基油としては、鉱油が好ましい。
〔鉱油〕
前記鉱油としては、n-d-M環分析による%Cpが40以上、特には50以上で、流動点が−27.5℃以下で、40℃での動粘度が3〜200mm2/sの鉱油を用いることが好ましい。%Cpが40以上、特には50以上の鉱油は潤滑性が高く、潤滑性の乏しい炭化水素冷媒によって希釈されても充分な潤滑性を保持することができ、軸受の磨耗や焼付きなどが起こりにくくなる。また、流動点が−27.5℃以下の鉱油は、低温での流動性に優れ、膨張機構、蒸発器に冷凍機油が滞留することがないので、伝熱効率の低下を防ぎ、また、圧縮機内の冷凍機油量不足による軸受けの摩耗、焼付きを防ぐ。更に、40℃での動粘度が3mm2/s以上、特には5mm2/s以上、さらには8mm2/s以上の鉱油は、必要な潤滑性を保持することができ、かつシール性も良好であり、40℃での動粘度が200mm2/s以下、特には150mm2/s以下、さらには100mm2/s以下の鉱油は低温での粘度が高くなりすぎず、流動性の点で優れている。
また、上記炭化水素基油として用いる鉱油は、n-d-M環分析による%Caが15以下、窒素分が50ppm以下、硫黄分が3,000ppm以下であることも好ましい。%Caの値は粘度指数に大きく影響し、これが大きくなると粘度指数が低くなり、%Caが15を超える鉱油では冷凍機油としてあまり好ましくない。なお、%Cp及び%Caは、ASTM D3238に規定されるn-d-M環分析によって求められるものである。
また、鉱油に含まれる窒素分や硫黄分は冷凍機油の特性に悪い影響を及ぼすことがある。窒素分は50ppmを超えると安定性を悪くする傾向にあり、50ppm以下とすることが好ましい。また、硫黄分は腐食性を有するので、3,000ppm以下にすることが好ましい。なお、窒素分や硫黄分は、質量ppmで規定する。
このような鉱油は、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化脱ろう、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて得ることができる。
〔硫化油脂及び硫化オレフィン〕
本発明の冷凍機油において、硫化油脂及び硫化オレフィンの総配合量は、上記炭化水素基油100質量部に対して0.001〜0.05質量部であり、0.002〜0.02質量部であることが好ましい。硫化油脂及び硫化オレフィンの総配合量が上記炭化水素基油100質量部に対して0.001質量部未満では、ワックス析出温度(フロック点)を低下させる効果が不十分である。また、硫化油脂及び硫化オレフィン中のポリスルフィドは鉱油中の硫黄分よりも反応性が高いため、その総配合量が0.05質量部を超えただけでも、冷凍機システムに通常使用されている銅配管を腐食してしまう。また、硫化油脂及び硫化オレフィンの総配合量が上記炭化水素基油100質量部に対して0.002質量部以上であれば、ワックス析出温度(フロック点)を低下させる効果が大きく、一方、0.02質量部以下であれば、冷凍機システムに通常使用されている銅配管の腐食を確実に防止できる。
上記硫化油脂及び硫化オレフィンは、炭素の不飽和結合を硫黄で架橋した化合物であり、硫黄分が5〜20質量%であることが好ましく、6〜16質量%であることが更に好ましい。硫黄分が5〜20質量%であれば、銅配管の腐食を防止しつつ、ワックス析出温度(フロック点)を低下させる効果が十分に得られ、硫黄分が6〜16質量%であれば、ワックス析出温度(フロック点)を低下させる効果が大きく、また、銅配管の腐食を確実に防止できる。
上記硫化油脂は、油脂の不飽和結合を硫黄で架橋してなる化合物であり、例えば、硫黄と、菜種油、ひまし油、大豆油等の植物油や、牛脂、豚脂、鯨油等の動物油とを反応させて得られ、市販品を利用することができる。また、上記硫化オレフィンは、オレフィンの不飽和結合を硫黄で架橋してなる化合物であり、市販品を利用することができる。これら硫化油脂及び硫化オレフィンは、一種単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記硫化油脂及び硫化オレフィンは、通常の油脂及びオレフィンよりも分子量が大きいため、ワックスと分子量が近く、ワックスとの親和性が高い。また、該硫化油脂及び硫化オレフィンは、炭素数1〜5の炭化水素を含む冷媒との親和性も高い。そのため、該硫化油脂及び硫化オレフィンは、生成したワックスに冷媒が入り込むことを可能とし、ワックス分の増殖を抑制して、析出ワックスによるキャピラリーの詰まりや、弁の開閉不良の発生を効果的に防止できる。
〔他の添加剤〕
本発明の冷凍機油には、必要に応じて他の添加剤を適宜配合してもよい。該添加剤としては、2,6−ジ−ターシャリーブチルフェノール、2,6−ジ−ターシャリーブチル−p−クレゾール、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジ−ターシャリーブチル−p−クレゾール)、p,p’−ジ−オクチル−ジ−フェニルアミンなどのフェノール系又はアミン系の酸化防止剤、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステルなどの安定剤、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどの極圧剤、グリセリンモノオレート、グリセリンモノオレイルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテルなどの油性剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性化剤、ポリジメチルシロキサン、ポリメタクリアクリレートなどの消泡剤又は制泡剤などが挙げられる。
その他、周知の清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤などの添加剤も必要に応じて配合することができる。これらの添加剤は、通常本発明の潤滑剤に10質量ppm〜10質量%程度含有されるように配合される。特に、フェノール系又はアミン系の酸化防止剤は、0.01〜0.5質量%程度添加することにより、潤滑剤の安定性、耐久性を大幅に改善する。また、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステルは極圧剤として有用であり、少量の添加(例えば、0.05〜2.0質量%)で焼付荷重、耐摩耗などの潤滑特性を効果的に向上する。
〔冷媒〕
本発明に使用される冷媒としては、炭素数1〜5(好ましくは2〜4)の低分子量の炭化水素化合物、具体的には、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンなどのアルカン化合物、及びシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンなどのシクロパラフィン化合物等、さらには、一部の炭素間結合が二重結合である前記化合物の誘導体(前記化合物に対応するオレフィン)も用いることができる。また、冷媒として、これらの化合物は単独で用いることも、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。これらの中でも、プロパン及びイソブタンが特に好ましい。
〔冷凍機システム〕
本発明の冷凍機システムは、炭素数1〜5の炭化水素を含む冷媒と冷凍機油を含む作動流体を含む冷凍機システムであって、前記冷凍機油が、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有することを特徴とする。本発明の冷凍機システムは、例えば、圧縮機、凝縮器、膨張機構(例えば、膨張弁)、蒸発器を含み、冷媒と冷凍機油を含む作動流体がこの系内を循環している。圧縮機は、それを駆動する電動モータと同じハウジングに収められており、作動流体により、電動モータが潤滑、冷却されている場合に好ましく用いられる。なお、作動流体は、冷媒と冷凍機油を10:90〜90:10、特には20:80〜80:20の質量割合で混合されていることが好ましい。なお、上記凝縮器及び蒸発器、特には、それらの熱交換器には、配管として通常銅配管が使用されている。そのため、炭化水素基油100質量部に対して硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.05質量部よりも多く含む冷凍機油を使用した場合、銅配管が腐食してしまう。
以下に、実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの具体的な例示に制限されるものではない。
基油として、表1に示した性状を有する基油1〜3(パラフィン系鉱油)および基油4(ナフテン系鉱油)を使用した。
Figure 2013216903
これらの基油に表2に示す添加剤を配合して実施例1〜9、比較例1〜10の供試油を調製した。これらの添加量を表3に示す。なお、添加剤を配合した実施例1〜9及び比較例5〜10の供試油は、40℃及び100℃での動粘度、粘度指数、硫黄分、窒素分、n-d-M環分析による%Ca、%Cn、%Cpが使用した基油と同一であることを確認した。
Figure 2013216903
Figure 2013216903
これらの供試油に対し、以下の方法でフロック点を測定し、更にオートクレーブテスト及びコンプレッサーテストを実施した。評価結果を表4に示す。
〔フロック点〕
20mL容量のガラス試験管に、供試油1ml、炭化水素冷媒(イソブタン、R600a)9mlを入れて密封したものを、ドライアイス−アセトン浴で冷却し、液中にワックス分の析出を認めた温度をフロック点として報告する。
〔オートクレーブテスト〕
300mL容量のステンレス製耐圧ボンベに、供試油100gと、冷媒としてR600aを20g、および触媒として鉄、銅、アルミの針金(1.6mmφ×30cm)を入れて密封し、175℃で14日間放置した。その後、冷媒を除去した冷凍機油の全酸価をJIS K2501に従って測定した。また、触媒を取り出し、新品の外観との比較を行った。鉄、アルミ触媒には変化が見られなかったので、銅触媒の変色状況を0から5までの6段階で判定した(0:変色なし、5:強い変色)。
〔コンプレッサーテスト〕
冷蔵庫用コンプレッサーに冷凍機油として供試油を220ml入れ、冷媒として炭化水素冷媒(イソブタン、R600a)30gを使用した。この冷蔵庫用コンプレッサーの吐出側に凝縮機、吸入側に蒸発機をそれぞれ接続し、凝縮機と蒸発機の間にキャピラリーを接続し、評価用の冷凍システムを構成した。冷蔵庫用コンプレッサーは、内部にレシプロ型コンプレッサーとそれを駆動する電動モータを備えており、電動モータの絶縁のためにポリエチレンテレフタレートが用いられている。冷凍機油と冷媒からなる作動流体は、冷却のために電動モータに直接接触している。この冷蔵庫用コンプレッサーを吐出圧力5〜6kg/cm2・G、吸入圧力0kg/cm2・Gの条件で、500時間連続運転を行った。その結果、バルブ汚れ及びキャピラリー詰りが発生したか否かを評価した。
Figure 2013216903
基油1を用いた実施例1〜4及び8〜9と比較例1との比較、基油2を用いた実施例5と比較例2との比較、基油3を用いた実施例6と比較例3との比較、並びに、基油4を用いた実施例7と比較例4との比較から明らかなように、基油に硫化油脂を配合することで、フロック点が大幅に低下することが分かる。
一方、比較例1と比較例6〜8との比較から明らかなように、基油に硫化していない通常の油脂を配合しても、フロック点を低下させる効果が得られないことが分かる。また、比較例1と比較例9〜10との比較から明らかなように、基油に硫化油脂及び硫化オレフィン以外の硫黄含有化合物を配合しても、フロック点を低下させる効果が得られないことが分かる。
また、比較例5のオートクレーブテストの結果から、基油100質量部に対する硫化油脂の配合量が0.05質量部を超えると、銅を変色してしまうことが分かる。更に、コンプレッサーテストにおいて、比較例1及び7の供試油はバルブ汚れ及びキャピラリー詰りが発生したが、実施例2及び3の供試油ではバルブ汚れ及びキャピラリー詰りは発生しなかった。
本発明の炭化水素冷媒用冷凍機油は、炭化水素基油に特定の硫黄化合物を所定量含有させることでワックス析出温度(フロック点)を低下させられるため、析出ワックスによるキャピラリーの詰まりや、弁の開閉不良の発生を効果的に防止でき、冷凍システムの長期間の安定な運転に非常に有用である。
即ち、本発明による炭化水素冷媒用冷凍機油は、プロパン及び/又はイソブタンを含む冷媒に用いられる冷凍機油であって、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有し、前記硫化油脂及び硫化オレフィンの硫黄分が5〜20質量%であることを特徴とする。また、本発明による冷凍機システムは、プロパン及び/又はイソブタンを含む冷媒と冷凍機油を含む作動流体を含む冷凍機システムであって、前記冷凍機油が、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有し、前記硫化油脂及び硫化オレフィンの硫黄分が5〜20質量%であることを特徴とする。なお、本発明においては、前記炭化水素基油は、窒素分が50ppm以下、%Cpが40以上、流動点が−27.5℃以下、硫黄分が3,000ppm以下の鉱油であること好ましい。
上記硫化油脂及び硫化オレフィンは、炭素の不飽和結合を硫黄で架橋した化合物であり、硫黄分が5〜20質量%であり、6〜16質量%であること好ましい。硫黄分が5〜20質量%であれば、銅配管の腐食を防止しつつ、ワックス析出温度(フロック点)を低下させる効果が十分に得られ、硫黄分が6〜16質量%であれば、ワックス析出温度(フロック点)を低下させる効果が大きく、また、銅配管の腐食を確実に防止できる。
〔冷媒〕
本発明に使用される冷媒は、プロパン及び/又はイソブタンを含む
〔冷凍機システム〕
本発明の冷凍機システムは、プロパン及び/又はイソブタンを含む冷媒と冷凍機油を含む作動流体を含む冷凍機システムであって、前記冷凍機油が、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有し、前記硫化油脂及び硫化オレフィンの硫黄分が5〜20質量%であることを特徴とする。本発明の冷凍機システムは、例えば、圧縮機、凝縮器、膨張機構(例えば、膨張弁)、蒸発器を含み、冷媒と冷凍機油を含む作動流体がこの系内を循環している。圧縮機は、それを駆動する電動モータと同じハウジングに収められており、作動流体により、電動モータが潤滑、冷却されている場合に好ましく用いられる。なお、作動流体は、冷媒と冷凍機油を10:90〜90:10、特には20:80〜80:20の質量割合で混合されていることが好ましい。なお、上記凝縮器及び蒸発器、特には、それらの熱交換器には、配管として通常銅配管が使用されている。そのため、炭化水素基油100質量部に対して硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.05質量部よりも多く含む冷凍機油を使用した場合、銅配管が腐食してしまう。

Claims (4)

  1. プロパン及び/又はイソブタンを含む冷媒に用いられる冷凍機油であって、
    炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有し、
    前記硫化油脂及び硫化オレフィンの硫黄分が5〜20質量%であることを特徴とする炭化水素冷媒用冷凍機油。
  2. 前記炭化水素基油は、窒素分が50ppm以下、%Cpが40以上、流動点が−27.5℃以下、硫黄分が3,000ppm以下の鉱油である請求項1に記載の炭化水素冷媒用冷凍機油。
  3. プロパン及び/又はイソブタンを含む冷媒と冷凍機油を含む作動流体を含む冷凍機システムであって、
    前記冷凍機油が、炭化水素基油100質量部と、硫化油脂及び硫化オレフィンの少なくとも一種を合計で0.001〜0.05質量部含有し、
    前記硫化油脂及び硫化オレフィンの硫黄分が5〜20質量%であることを特徴とする冷凍機システム。
  4. 前記炭化水素基油は、窒素分が50ppm以下、%Cpが40以上、流動点が−27.5℃以下、硫黄分が3,000ppm以下の鉱油である請求項3に記載の冷凍機システム。
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