JP2013216558A - 3b族元素及び7b族元素が固溶された酸化亜鉛単結晶 - Google Patents

3b族元素及び7b族元素が固溶された酸化亜鉛単結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性及び結晶性の高い酸化亜鉛単結晶を提供する。
【解決手段】3B族元素及び7B族元素を固溶状態で含む酸化亜鉛単結晶であって、該単結晶の(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が150arcsec以下である、酸化亜鉛単結晶。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化亜鉛単結晶に関するものであり、より詳しくは3B族元素及び7B族元素が固溶された酸化亜鉛単結晶に関する。
酸化亜鉛(ZnO)は、顔料、化粧品、圧電素子、バリスタ、ガスセンサ等の幅広い用途に使用されている材料であるが、近年、その広いバンドギャップや優れた光学特性から、発光ダイオード(LED)等の発光素子への応用が期待されている。
このような発光素子に用いられる酸化亜鉛単結晶基板には、導電性及び結晶性の両方が高いことが求められる。このため、導電性を向上させる異種元素(以下、ドーパントという)を酸化亜鉛単結晶にドーピングすることが一般的に行われる。例えば、特許文献1(特開2004−315361号公報)には、導電性向上のためにAlやFe等をドープした酸化亜鉛単結晶を水熱合成法により製造することが開示されている。また、特許文献2(国際公開2007/100146号パンフレット)には、液相成長法による酸化亜鉛単結晶の製造において各種のドーパントを添加可能であることが開示されている。しかしながら、ドーパントを添加して酸化亜鉛単結晶を育成しようとすると、酸化亜鉛種結晶との間の格子不整合(格子ミスマッチ)が生じやすく、十分に高い結晶性を得ることが出来ないという問題がある。
特開2004−315361号公報 国際公開2007/100146号パンフレット
本発明者らは、今般、ドーパントの添加による高い導電性を有しながらも、結晶性の高い酸化亜鉛単結晶を提供できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、導電性及び結晶性の高い酸化亜鉛単結晶を提供することにある。
本発明の一態様によれば、3B族元素及び7B族元素を固溶状態で含む酸化亜鉛単結晶であって、該単結晶の(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が150arcsec以下である、酸化亜鉛単結晶が提供される。
結晶製造装置20の構成を示す概略模式図である。 図1に示されるスリット37の走査方法を説明する図である。 結晶化処理を説明する図である。 結晶製造装置50の構成を示す概略模式図である。 結晶製造装置20Bの構成を示す概略模式図である。
酸化亜鉛単結晶
本発明による酸化亜鉛単結晶は、3B族元素及び7B族元素を固溶状態で含む酸化亜鉛単結晶である。酸化亜鉛単結晶は一般的に六方晶ウルツ鉱型構造を有するものであるが、本発明の酸化亜鉛単結晶は(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が150arcsec以下という、結晶性の極めて高いものである。すなわち、この半値幅はX線ロッキングカーブにおいて(002)面ピークの半分の高さとなる位置でのピーク幅と定義されるものであるが、その幅が狭いほど結晶性が高いことを意味する。
このように結晶性が高い酸化亜鉛単結晶の作製は、ドーパントの添加とは一般的に相容れないものである。すなわち、一種類の元素でドーピングを行った場合、置換元素であるドーパントと被置換元素である亜鉛(Zn)や酸素(O)とのイオン半径の差に起因して、結晶格子の膨張や収縮が発生する。このため、ドーパントが添加された酸化亜鉛単結晶をノンドープの酸化亜鉛単結晶を種結晶として育成する際、育成しようとする結晶格子の膨張や収縮に伴い、種結晶との間で格子不整合(格子ミスマッチ)が生じてしまう。その結果、新たに育成したドーパント添加酸化亜鉛単結晶には多くの欠陥が発生してしまい、十分に高い結晶性を得ることが出来なくなる。
これに対し、本発明による酸化亜鉛単結晶は3B族元素及び7B族元素という二種類の元素を固溶状態で含む。すなわち、ドーパントとして3B族元素(例えばAlやGa)のみならず7B族元素(例えばClやBr)を含有する酸化亜鉛粉末を原料とし、ノンドープの酸化亜鉛種結晶上に酸化亜鉛単結晶を育成することにより、導電性のみならず結晶性も高い酸化亜鉛単結晶を得ることが可能となる。例えば、AlやGaはZnと置換固溶することができるが、Al3+及びGa3+のイオン半径はZn2+と比較して小さいため、固溶量の増加に伴い結晶格子は収縮する。一方、ClやBrはOと置換固溶するが、Cl及びBrのイオン半径はO2−と比較して大きいため、固溶量の増加に伴い結晶格子は膨張する。したがって、これらの量を適切に調整することにより、結晶格子の膨張及び収縮が相殺され、種結晶として用いられるノンドープの酸化亜鉛単結晶と格子定数が近いドーパント添加酸化亜鉛粉末を得ることができる。このような粉末を用いることで、種結晶との間の格子不整合を抑制しながら、導電性のみならず結晶性の高い酸化亜鉛単結晶を育成することができる。しかも、3B族元素はZnと置換し、7B族元素はOと置換し、いずれもn型ドーパントとして機能することから、3B族元素及び7B族元素が固溶された酸化亜鉛単結晶は高い導電性を有することができる。
このように、本発明による酸化亜鉛単結晶は3B族元素及び7B族元素を固溶状態で含む。酸化亜鉛単結晶における3B族元素の固溶量は0.01at%以上であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜1at%であり、さらに好ましくは0.05〜0.8at%であり、特に好ましくは0.1〜0.6at%である。酸化亜鉛単結晶における7B族元素の固溶量は0.005at%以上であるのが好ましく、より好ましくは0.005〜0.5at%であり、さらに好ましくは0.01〜0.4at%であり、特に好ましくは0.02〜0.2at%である。もっとも、3B族元素及び7B族元素の固溶量は、上述した結晶格子の膨張及び収縮が相殺されて、ノンドープの酸化亜鉛単結晶と格子定数が近い酸化亜鉛結晶が得られるようにバランスをとることが望ましい。例えば、3B族元素の固溶量が0.01〜1at%であり、かつ、7B族元素の固溶量が0.005〜0.5at%であるのが好ましい。3B族元素及び7B族元素は最終的に導電性及び結晶性の高い酸化亜鉛単結晶が得られるかぎり特に限定されるものではない。もっとも、本発明の好ましい態様によれば、3B族元素がAl及び/又はGaであり、かつ、7B族元素がCl及び/又はBrであるのが好ましく、本発明のより好ましい態様によれば、3B族元素がAlであり、かつ、7B族元素がBrである。
上述したように、本発明による酸化亜鉛単結晶は、ノンドープの酸化亜鉛単結晶と格子定数が近いものであるが、好ましくは、a軸の格子定数が3.246〜3.252Åであり、かつ、c軸の格子定数が5.204〜5.210Åであり、より好ましくはa軸の格子定数が3.248〜3.251Åであり、かつ、c軸の格子定数が5.205〜5.208Åである。なお、一般的な酸化亜鉛の格子定数は、ICDD36−1451によれば、a軸長が3.2498Å、c軸長が5.2066Åとされている。
本発明による酸化亜鉛単結晶の(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅は150arcsec以下であり、好ましくは130arcsec以下、より好ましくは100arcsec以下である。この半値幅は、例えば、薄膜材料測定用XRD測定装置(ブルカーAXS社製、「D8 DISCOVER」)を用いて測定された回折ピークに対し、解析ソフトウェア(ブルカーAXS社製、LEPTOS)により測定することができる。回折ピークの測定は、管電圧40kV及び管電流40mAのX線源の出力とし、コリメータを使用せずに、酸化亜鉛単結晶の(002)面に対し、ω軸、2θ軸、χ軸の順に軸立てをした後、(002)のピークの前後±3°をωスキャン測定することにより行うことができる。その際の測定条件は、ステップ幅を0.001°とし、走査速度を0.5秒/ステップとし、散乱スリットの角度は3°とすればよい。
本発明による酸化亜鉛単結晶の形状及び大きさは、意図される用途に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。例えば、発光ダイオード(LED)等の発光デバイスに用いられる酸化亜鉛単結晶基板等の電子デバイス用基板の用途においては、厚さ0.1〜1mm、好ましくは0.2〜0.8mmの板状とするのが好ましい。また、透明導電膜の用途においては、厚さ0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmの膜状に形成してもよい。
酸化亜鉛単結晶の製造方法
上述した本発明による酸化亜鉛単結晶は、3B族元素及び7B族元素が固溶された酸化亜鉛原料粉末を用い、ノンドープの酸化亜鉛種結晶上に酸化亜鉛単結晶を育成することにより製造することができる。これにより、種結晶との間の格子不整合を抑制して、導電性のみならず結晶性も高い酸化亜鉛単結晶を得ることが可能となる。酸化亜鉛単結晶の育成方法は特に限定されず、特許文献1に記載されるような水熱合成法や特許文献2に記載されるような液相エピタキシャル法(LPE法)等の従来公知の方法に基づいて行ってもよいが、以下に説明する原料粉末の噴射を用いた方法によって行われるのが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい態様による酸化亜鉛単結晶の製造方法は、原料成分が単結晶化する所定の単結晶化温度で該原料成分を含む原料粉末を噴射して単結晶を含む種基板上に該原料成分を含む膜を形成すると共に、前記形成した原料成分を含む膜を前記単結晶化温度のまま結晶化させる成膜結晶化工程、を含んでなる。この方法は、従来の酸化亜鉛単結晶製造方法である水熱合成法や液相エピタキシャル法(LPE法)に対して、以下に述べる利点を有するものである。すなわち、水熱合成法においては、原料溶液中におけるドーパントの溶解度とpHを同時に制御することが難しく、ドーパントを高濃度に含有した酸化亜鉛単結晶を製造することが困難であった。一方、LPE法においては高濃度のドーピングが可能であるものの、生産性が低い上、融剤として有害なPbOやBiを使用する必要があった。これに対し、本態様による単結晶製造方法によれば、予めドーパントを固溶した酸化亜鉛粉末を原料とし、固相成長を利用して単結晶を育成することにより、高濃度ドーピングが可能となるとともに、有害物質の使用を必要とすることなく、高い生産性で、酸化亜鉛単結晶を製造することが可能となる。
本態様の結晶製造方法によれば、配向性及び緻密性がより良好な結晶を作製することができる。この理由は定かではないが、以下のように推察される。例えば、減圧下で行うエアロゾルデポジション法(AD法)や加圧下で行うパウダージェットデポジション法(PJD法)などでは、基板に衝突した粉末が衝撃力により塑性変形することで緻密に固着する現象を繰り返すことで成膜する。しかしながら、厚さが増すに従い空隙が残りやすくなることがある(特開2009−132944号公報参照)。これに対して、本態様の結晶製造方法では、単結晶化する熱処理条件化で成膜を行うことから、成膜された緻密な膜組織が順次単結晶化しながら厚さを増すため、空隙が発生しにくく、配向性及び緻密性がより良好な結晶を作製することができる。また、酸化亜鉛は融点が高く融液化できないものの、本態様の結晶製造方法ではドーパントの調整が容易となる。このように、本態様の結晶製造方法では、実用的な結晶(例えば単結晶)を作製することができるものと推察される。
次に、本態様を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本態様の結晶製造方法に用いる結晶製造装置20の構成の概略を示す構成図である。結晶製造装置20は、大気圧より低い気圧の雰囲気下で原料粉末を種基板上に噴射するエアロゾルデポジション法(AD法)に用いられる装置として構成されている。この結晶製造装置20は、原料成分を含む原料粉末のエアロゾルを生成するエアロゾル生成部22と、原料粉末を種基板21に噴射して原料成分を含む膜を形成すると共にこの膜を結晶化させる結晶生成部30とを備えている。エアロゾル生成部22は、原料粉末を収容し図示しないガスボンベからの搬送ガスの供給を受けてエアロゾルを生成するエアロゾル生成室23と、生成したエアロゾルを結晶生成部30へ供給する原料供給管24とを備えている。原料供給管24の結晶生成部30側には、エアロゾルを予備加熱する予備加熱ヒーター26が配設されており、予備加熱したエアロゾルが結晶生成部30へ供給されるようになっている。結晶生成部30は、種基板21にエアロゾルを噴射する真空チャンバー31と、真空チャンバー31内に設けられた部屋状の断熱材32と、断熱材32の内部に配設され種基板21を固定する基板ホルダ34と、基板ホルダ34をX軸−Y軸方向に移動するX−Yステージ33と、を備えている。また、結晶生成部30は、断熱材32の内部に配設され種基板21を加熱する加熱部35と、先端にスリット37が形成されエアロゾルを種基板21へ噴射する噴射ノズル36と、真空チャンバー31を減圧する真空ポンプ38と、を備えている。この結晶製造装置20では、真空チャンバー31内において、原料粉末が単結晶化する温度での加熱処理を行えるように、石英ガラスやセラミックスなどの部材を用いて各々が構成されている。この結晶製造装置20を利用する結晶製造方法について以下説明する。
成膜結晶化工程では、原料成分が単結晶化する所定の単結晶化温度で、この原料成分を含む原料粉末を噴射して単結晶からなる種基板上に原料成分を含む膜を形成する成膜処理を行うと共に、原料を含む膜を所定の単結晶化温度のまま結晶化させる結晶化処理を行う。
成膜処理において、原料成分を含む原料粉末としては、3B族元素及び7B族元素が固溶された酸化亜鉛原料粉末であれば特に限定されないが、好ましい酸化亜鉛粉末については後述する。原料粉末は、AD法においては、凝集のない1次粒子(粒子内に粒界を含まない粒子)が好ましく、粒径は、例えば、0.05μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がより好ましい。この粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて分散媒(有機溶剤や水など)に分散させて測定したメディアン径(D50)をいうものとする。なお、原料粉末は予めボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル等によるミル処理を行ってもよい。これにより粒子の表面性状や結晶性が変化し、AD法における成膜速度を向上することが可能となる。また、原料粉末に対し、熱処理を行ってもよい。これによりAD法により成膜された膜の緻密度を向上することが可能となる。成膜処理において、種基板は、原料成分と同じ成分からなるものとしてもよい。この種基板は、単結晶を含むものであればよく、例えば、単結晶基板でもよいし、表面に単結晶膜が形成された支持基板でもよい。このうち、単結晶基板であることがより好ましい。成膜処理の温度は、酸化亜鉛成膜体が単結晶化する所定の単結晶化温度で行えばよく、好ましくは900℃以上であり、より好ましくは1000〜1400℃である。この単結晶化温度は、原料粉末の融点もしくは分解温度よりも低い範囲とすることが好ましい。
成膜処理において、搬送ガス及び圧力調整ガスは、不活性ガスであることがより好ましい。噴射条件としては、室温にて噴射したときに膜が形成され、その膜組織として、結晶子径が100nm以下で、緻密度が95%以上となるように、搬送ガスおよび圧力調整ガス、真空チャンバーの圧力を調整することが好ましい。こうすることで、単結晶化温度が低くできる。結晶子径はTEM観察から、緻密度は断面SEM観察による画像解析から測定できる。噴射ノズルは、長辺及び短辺を有するスリットが形成されていることが好ましい。このスリットは、長辺が1mm以上10mm以下の範囲で形成してもよく、短辺が0.1mm以上1mm以下の範囲で形成してもよい。原料粉末を噴射して形成する膜の厚さは、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。この膜の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。この膜の厚さを5μm以下とすると、緻密性がより向上する。
この成膜処理において、原料粉末を長辺及び短辺を有するスリットから噴射する際には、このスリットを走査するものとしてもよい。スリットの走査は、特に限定されないが、成膜処理を同じ領域に対して数回行う、即ち重ね塗りとなるよう行うものとしてもよい。図2は、スリット37の走査方法の説明図である。図2に示すように、成膜する際は、原料粉末を長辺及び短辺を有するスリットから噴射すると共にこの長辺に対して垂直方向にスリットと種基板とを相対的に走査して種基板上に膜を形成する(第1成膜領域21a)。ここで、図1の結晶製造装置20では、X−Yステージ33により種基板21を移動させるものとするが、噴射ノズル36側を移動させるものとしてもよい。次に、長辺方向にスリットと種基板とを相対的に走査し、その後、種基板上に形成された膜に隣接した領域に対して長辺に対して垂直方向にスリットと種基板とを相対的に走査し前回形成された膜に隣接して今回の膜を形成する(第2成膜領域21b)。そして、これらの操作処理を繰り返し行うものとしてもよい。このような走査を複数回行うことにより、比較的大きな面積の単結晶を得ることができ、また、各回の成膜のインターバルが全面について同程度となり、均質な単結晶が得られる。さらには、生成する単結晶の厚さを制御することができる。ここでは、矩形を描くようにスリットを走査させるものとしたが、8の字を描くようにスリットを走査させてもよいし、ジグザグにスリットを走査させてもよいし、スリットを往復させてもよい。スリットの走査は、後述する結晶化処理によって、膜が結晶化する時間に応じた走査速度で行うことが好ましい。この走査速度は、原料の種別、単結晶化温度に応じて経験的に求めることができ、例えば、0.1mm/s以上10mm/s以下の範囲とすることが好ましい。なお、原料粉末を重ねて噴射する際には、先に噴射して形成された膜が結晶化済みとなった上に重ねて次の噴射を行ってもよいし、先に噴射して形成された膜が結晶化していない上に重ねて次の噴射を行ってもよい。この成膜処理において、例えば、単結晶化していない部分の厚さが2μm以下であれば、単結晶化していない部分が残っていてもよい。
結晶化処理では、上述した成膜処理の温度(単結晶化温度)のまま処理を行う。この結晶化処理では、成膜処理において基板上に形成された原料粒子からなる膜を、単結晶化温度中に置くことにより結晶化させる処理である。この単結晶化温度は、成膜処理で説明したものと同じであり、好ましくは900℃以上であり、より好ましくは1000〜1400℃である。この単結晶化温度は、原料粉末の融点よりも低い範囲とすることが好ましい。図3は、結晶化処理の説明図である。図3に示すように、成膜処理において、噴射された原料粒子が基板(種基板)に衝突して基板上で衝撃固化し成膜体39が生成する。この成膜処理を行っている雰囲気が単結晶化温度であることから、衝撃固化した原料粒子が順次、固相結晶成長し単結晶化する。あるいは配向性及び緻密性の高い結晶成長が起きる。このようにして、3次元的に配向した結晶を得ることができるのである。なお、得られる結晶体は、単結晶であることが好ましいが、単結晶ではない部分を含んでいてもよいし、多結晶であって且つ3次元的に配向したものであってもよい。
以上説明した実施形態の結晶製造方法によれば、配向性及び緻密性がより良好な結晶を作製することができる。また、空隙が極めて少なく且つ厚い結晶体(単結晶)を得ることができる。この理由は、例えば、本態様の結晶製造方法では、単結晶化する熱処理条件化で成膜を行うことから、成膜された緻密な膜組織が順次、単結晶化しながら厚さを増すため、空隙が発生しにくく、配向性及び緻密性がより良好な結晶を作製することができるものと推察される。また、単結晶化温度で原料粒子を噴射すればよいため、融点が非常に高い酸化亜鉛原料粉末を用いて容易に結晶成長させることができる。
なお、本態様は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本態様の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、大気圧より低い気圧中で原料粉末を種基板上に噴射するエアロゾルデポジション法に用いられる結晶製造装置20を利用するものとしたが、特にこれに限定されず、図4に示すように、大気圧の気圧中又は大気圧以上の気圧の雰囲気中で原料粉末を種基板上に噴射するパウダージェットデポジション法に用いられる結晶製造装置50を利用するものとしてもよい。図4は、本態様の結晶製造方法に用いる結晶製造装置50の構成の概略を示す構成図である。結晶製造装置50は、原料粉末及び搬送ガスを含む原料流体を生成するジェットパウダー生成部52と、原料粉末を種基板51に噴射して原料成分を含む膜を形成すると共にこの膜を結晶化させる結晶生成部60とを備えている。ジェットパウダー生成部52は、原料粉末を収容し図示しないガスボンベからの搬送ガスの供給を受ける圧力タンク53と、生成したエアロゾルを結晶生成部60へ供給する原料供給管54とを備えている。原料供給管54の結晶生成部60側には、原料流体を予備加熱する予備加熱ヒーター56が配設されており、予備加熱した原料流体が結晶生成部60へ供給されるようになっている。結晶生成部60は、常圧下で種基板51に原料流体を噴射するチャンバー61と、チャンバー61内に設けられた部屋状の断熱材62と、断熱材62の内部に配設され種基板51を固定する基板ホルダ64と、基板ホルダ64をX軸−Y軸方向に移動するX−Yステージ63と、を備えている。また、結晶生成部60は、断熱材62の内部に配設され種基板51を加熱する加熱部65と、先端にスリット67が形成され原料流体を種基板51へ噴射する噴射ノズル66と、を備えている。この結晶製造装置50では、チャンバー61内において、原料粉末が単結晶化する温度で加熱処理を行えるように、石英ガラスやセラミックスなどの部材により各々が構成されている。そして、この結晶製造装置50を用い、原料成分が単結晶化する所定の単結晶化温度で、この原料成分を含む原料粉末を噴射して単結晶からなる種基板上に原料成分を含む膜を形成する成膜処理を行うと共に、原料を含む膜を所定の単結晶化温度のまま結晶化させる結晶化処理を行う成膜結晶化工程を実行する。このとき、噴射条件として、室温にて噴射したときに膜が形成され、その膜組織として、結晶子径が100nm以下で、緻密度が95%以上となるように、搬送ガス、チャンバーの圧力を調整するものとしてもよい。その他の条件は、上述したAD法の条件に準じて行うことができる。こうしても、配向性及び緻密性がより良好な結晶を作製することができる。
上述した実施形態では、結晶製造装置20において、断熱材32の内部に配設された加熱部35により種基板21を含む成膜室(断熱材32の内側)全体を加熱するものとしたが、特にこれに限定されない。成膜室(断熱材32の内側)の温度制御は成膜室内部の加熱部35(ヒーター)に加え、基板部分のみを別の加熱源により加熱してもよい。例えば、図5に示すように、加熱部35に加えて、真空チャンバー31の外部から種基板21を加熱する加熱装置70を用いるものとしてもよい。図5は、結晶製造装置20Bの構成の概略を示す構成図である。この結晶製造装置20Bは、結晶製造装置20(図1参照)に加えてレーザーを照射する加熱装置70が配設されている。ここでは、結晶製造装置20Bにおいて、結晶製造装置20と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。結晶製造装置20Bは、加熱装置70と基板ホルダ34との間において、真空チャンバー31に透過窓71が配設され、断熱材32に透過窓72が配設されており、加熱装置70からのレーザーを基板ホルダ34上に照射可能となっている。加熱装置70は、基板ホルダ34上へのレーザーの照射範囲を調整可能な光学系73と、加熱用のレーザーを発生させるレーザー発生装置74とを備えている。この結晶製造装置20Bでは、レーザー発生装置74で発生したレーザーを、光学系73及び透過窓71,72を介して基板ホルダ34上の種基板21へ照射することにより種基板21の全体または一部を加熱可能に構成されている。基板部分の加熱源は特に限定されるものではなく、例えばCOレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザーといった各種レーザーに加え、赤外線ランプなどを適用可能である。赤外線ランプはチャンバー内の種基板付近に設置し、基板部分を加熱してもよいし、チャンバー外に設置し、赤外線導入ロッドを用いて赤外光を導入してもよい。上記加熱源によれば、加熱部35の出力を抑えられ、単結晶作製時のエネルギー使用量を低減することができる。また、直接的に種基板21を加熱可能であり、結晶生成部30に求められる耐熱性が低減するため、結晶製造装置20を構成する部材の選択性及び耐久性をより向上することができる。なお、基板部分のみを加熱する加熱源のみにより種基板21を加熱すると、種基板21とエアロゾルのガス流との温度差により基板表面からガス流が押し返されるという現象を含む熱泳動効果の影響により、成膜が困難となることがある。このため、成膜室全体を加熱する加熱部35と基板部分のみを加熱する加熱源(加熱装置70)とを併用し、成膜室と種基板21の温度差を所定範囲内にすることが好ましい。成膜室と種基板21の温度差は700℃以下とすることが好ましい。
上述した実施形態では、噴射ノズルにはスリットが設けられているものとしたが、原料粉末を噴射することができれば、特にこれに限定されず、円形や楕円形、多角形の孔としてもよい。
上述した実施形態では、結晶製造装置20,20Bや結晶製造装置50を用いるものとしたが、特にこれに限定されず、成膜結晶化工程を実行可能であれば、結晶製造装置20,20Bや結晶製造装置50以外の装置を用いるものとしてもよい。
原料粉末の製造方法
上述した酸化亜鉛単結晶の製造方法に用いる3B族元素及び7B族元素が固溶又は添加された酸化亜鉛原料粉末は、いかなる方法によって製造されたものでもよいが、好ましくは、液相法である水熱合成により、比較的低温で、再熱処理を経ることなく直接合成することにより製造することができる。より好ましくは、酸化亜鉛原料粉末は、3B族元素のイオンと、7B族元素のイオンと、亜鉛イオンと、カルボン酸及び/又はカルボン酸イオンとを含有する原料水溶液を130℃以上の温度で水熱合成に付することにより製造することができる。この方法によって製造された酸化亜鉛原料粉末は、個々の粒子が3B族元素及び7B族元素を内部に固溶状態で含む。すなわち、原料水溶液は、3B族元素のイオンと、7B族元素のイオンと、亜鉛イオンと、カルボン酸及び/又はカルボン酸イオンとを含有するものである。このような原料水溶液の代表例としては酢酸亜鉛水溶液が挙げられる。原料水溶液は有機溶媒を伴わないため、環境負荷が小さい。この原料水溶液を130℃以上の温度で水熱合成に付すると、予想外にも、再熱処理を必要とすることなく、3B族元素及び7B族元素が固溶された酸化亜鉛原料粉末を直接生成させることができる。特に、再熱処理を経ないで本発明の方法により得られる酸化亜鉛微細粒子は、典型的にはナノオーダーの極めて微細な粒子であり、凝集が少なく、分散性が高いという特徴を有する。
上記のような方法で酸化亜鉛原料粉末が直接得られる反応メカニズムは必ずしも明らかでないが、水熱合成時に、カルボン酸又はカルボン酸イオンが熱分解してケテン類を生成すると同時に、亜鉛イオンに酸素を供給してZnOを生成させるためではないかと考えられる。なお、本発明者らの理解によれば、水熱合成ではない(すなわちオートクレーブ等の高温高圧容器中ではない)常圧下での単なる加熱においては、水溶液中に存在するカルボン酸やカルボン酸イオンが分解してケテン類を生成することはなく、上記の反応メカニズムは水熱合成特有のものと考えられる。
本発明に用いる原料水溶液は、3B族元素のイオン(好ましくはAl3+及び/又はGa3+)、7B族元素のイオン(好ましくはCl及び/又はBr)、亜鉛イオン(Zn2+)と、カルボン酸(−COOH)及び/又はカルボン酸イオン(−COO)とを含有する。3B族元素イオンの供給源は、水に溶解して3B族元素のイオンを生成可能な物質であれば特に限定されないが、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸ガリウム、塩化ガリウム等の水溶性の塩が好ましい。7B族元素イオンの供給源は、水に溶解して7B族元素のイオンを生成可能な物質であれば特に限定されないが、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、塩化リチウム、塩化カリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化リチウム、臭化カリウム等が好ましく例示され、特に好ましくは界面活性剤として酸化亜鉛粒子内への取り込みを促進する点で塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)及び臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)であり、最も好ましくは臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である。亜鉛イオンの供給源は、亜鉛イオンを供給可能な塩であれば特に限定されないが、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等が好ましく例示され、特に好ましくはカルボン酸イオンの供給源としても同時に機能する点で酢酸亜鉛が挙げられる。この点、酢酸亜鉛を使用しない場合は、他の物質によりカルボン酸又はカルボン酸イオンを反応系内に供給する必要がある。カルボン酸の例としては、蟻酸、シュウ酸、酢酸等が挙げられる。カルボン酸を用いた場合には、アンモニア等の塩基を用いて原料水溶液のpHを3〜8に調整することが好ましい。カルボン酸イオンの供給源としては、種々のカルボン酸塩が使用可能であるが、上述した酢酸亜鉛の他、蟻酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、蟻酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等が好ましく例示される。特に好ましいカルボン酸及び/又はカルボン酸イオンは酢酸及び/又は酢酸イオンである。原料水溶液の濃度は特に限定されないが、3B族元素のイオンを0.0001〜0.02Mの濃度で含み、亜鉛イオンを0.01〜2Mの濃度で含み、かつ、カルボン酸及び/又はカルボン酸イオンを0.02〜4Mの濃度で含むのが好ましい。
原料水溶液の液性は特に限定されないが、概ね中性〜酸性の液性域、例えばpH8.0以下が好ましく、より好ましくはpH7.0未満である。このような範囲内の液性であると、耐塩基性の反応装置を使う必要がなくなり、プロセスが大幅に簡素化され、製造コストの低減が可能となる。
水熱合成は130℃以上の温度で行われるのが好ましく、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは160〜250℃である。水熱合成の時間は所望の微細粒子が形成されるかぎり特に限定されないが、上記温度域で1時間以上、好ましくは3〜10時間行われるのが好ましい。例えば、水熱合成は140℃以上の温度で1時間以上行われるのが好ましく、より好ましくは160〜250℃の温度で3〜10時間行われる。水熱合成は、高温の水、特に高温高圧の水の存在の下に行われる物質の合成及び結晶成長法として一般的に定義されるものであり、オートクレーブ中で行われるのが典型的であり好ましいが、それ以外の高温高圧容器を使用してもよい。
本発明に用いる原料水溶液は、界面活性剤を0.01M以上の濃度で含んでなるのが好ましく、より好ましくは0.01〜2Mである。界面活性剤の存在下であると、3B族元素や7B族元素等のドーパントを酸化亜鉛粒子の内部に上手く固溶させることができる。界面活性剤の例としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、エチレングリコール、PVP(ポリビニルピロリドン)等が挙げられる。好ましい界面活性剤は7B族元素供給源としても機能する点で塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)及び臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)であり、酸化亜鉛粒子の内部に7B族元素を取り込み易くなるだけでなく、3B族元素も同時に結晶内に取り込みやすくなる。特に好ましくは臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である。このように、3B族元素及び/又は7B族元素は、界面活性剤の存在下において、酸化亜鉛粒子の内部に上手く固溶させることができる。これらの元素が上手く固溶する理由は必ずしも明らかでないが、界面活性剤が形成したミセル内に3B族元素や7B族元素のイオンが存在し、水熱反応中の酸化亜鉛生成過程で効果的に取り込まれるためではないかと考えられる。
上記のようにして、本発明の方法によれば、再熱処理を必要とすることなく、水熱合成により酸化亜鉛粒子を直接合成することができる。酸化亜鉛単結晶を前述したような噴射により製造する場合、上記のようにして得られた酸化亜鉛粒子を400〜1100℃で2時間以上仮焼して、体積基準D50平均粒径0.05〜10μmに粒成長させておくのが好ましい。より好ましい仮焼条件は500〜800℃で4〜8時間であり、より好ましい体積基準D50平均粒径は0.2〜4μmである。
なお、酸化亜鉛原料粉末は、上述したような液相法に限らず、固相法を用いても製造することができる。例えば、ノンドープの酸化亜鉛ナノ粒子と、3B族元素酸化物のナノ粒子と、7B族元素化合物とを混合し、熱処理をしてもよい。この場合、7B族元素の揮発を防止し、ZnOに固溶させるため、密閉容器内において7B族元素の蒸気圧が大気圧以上となるようにしながら熱処理することが好ましい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1
(1)酸化亜鉛粉末の作製
酢酸亜鉛二水和物(キシダ化学株式会社製)と硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化学株式会社製)を、ZnとAlの総物質量の濃度が0.2Mとなるよう、Milli−Q水(超純水)に溶解した。このとき、ZnとAlの物質量比Zn:Alを99.7:0.3とした。こうして得られた溶液に、濃度が0.1MとなるようにCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)(キシダ化学株式会社製)を添加した。この混合溶液をオートクレーブ中において180℃で6時間加熱して、粉末を生成させた。生成した粉末を大気中600℃で12時間仮焼して、体積基準D50平均粒径2μmに粒成長させた。得られた粉末に対し、X線回折法(XRD)を用いて結晶相を同定した結果、ZnO単相であった。
粉末の格子定数を、X線回折法を用いて、X線:CuKα線、管電圧:45kV、管電流:40mA、測定モード:ステップ走査、ステップ幅:0.01°、計数時間:1s/degree、走査範囲:27.5−40(2θ)の条件で測定した。その際、内部標準として格子定数が既知のSiを用い、ピークトップ法により求めた酸化亜鉛の(100)及び(002)ピーク位置と、CuKα1線の波長λ=1.5418Åとを用いて、酸化亜鉛粉末の格子定数のa軸長及びc軸長をそれぞれ決定した。その結果、a軸長が3.2483Å、c軸長が5.2062Åという、両軸共に、一般的な酸化亜鉛の格子定数(ICDD36−1451によれば、a軸長が3.2498Å、c軸長が5.2066Å)に近い値が得られた。
(2)酸化亜鉛単結晶の育成
原料粉末として上記で得られた酸化亜鉛粉末を、種基板として酸化亜鉛単結晶基板(10mm×10mm角、c板)を用いて、図1に示される結晶製造装置により酸化亜鉛単結晶を製造した。この装置は、チャンバー内温度が1200℃に対応する、エアロゾルデポジション(AD)法により結晶を製造する装置である。この装置において、エアロゾルの噴射は、搬送ガス及び圧力調整ガスとしてHeを用い、長辺5mm×短辺0.4mmのスリットが形成されたセラミックス製のノズルを用いて行った。その際、ノズルは0.5mm/sのスキャン速度でスキャンさせた。このスキャンは、図2に示されるように、スリットの長辺に対して垂直且つ進む方向に10mm移動させ、スリットの長辺方向に5mm移動させ、スリットの長辺に対して垂直且つ戻る方向に10mm移動させ、スリットの長辺方向且つ初期位置方向に5mm移動させるサイクルを200サイクル繰り返すことにより行った。室温での1サイクルの製膜において、搬送ガスの設定圧力を0.06MPa、流量を6L/min、圧力調整ガスの流量を0L/min、チャンバー内圧力を100Pa以下に調整した。このとき、膜組織として結晶子径100nm以下、緻密度95%以上となった。この噴射条件において、結晶成長条件として、単結晶が成長する温度であるチャンバー成膜室の温度を1150℃とした。得られた単結晶試料の厚さは0.5mmであった。
(3)結晶性の測定
単結晶試料の結晶性を、薄膜材料測定用XRD測定装置(ブルカーAXS社製、「D8 DISCOVER」)を用いて測定した。その際、X線源の出力はそれぞれ管電圧40kV、管電流40mAとし、回折強度を上げるためにコリメータは使用しなかった。ZnO試料の(002)面に対し、ω軸、2θ軸、χ軸の順に軸立てをした後、(002)のピークの前後±3°をωスキャン測定した。測定条件は、ステップ幅0.001°とし、走査速度は0.5秒/ステップ、散乱スリットの角度は3°とした。こうして得られた回折ピークに対し、解析ソフトウェア(ブルカーAXS社製、LEPTOS)により半値幅を求めた。その結果、XRC半値幅は、130arcsecと小さい値であり、結晶性の良い単結晶が得られた。
(4)元素分析
単結晶試料に固着していた種結晶部分を機械研磨により除去した後、アセトンを用いて単結晶試料を十分に洗浄した。この単結晶試料に対してICP−AESによりAl含有量(すなわちAl固溶量)を測定したところ0.28at%であり、イオンクロマトグラフィーによりBr含有量(すなわちBr固溶量)を測定したところ0.11at%であった。
(5)格子定数の測定
単結晶試料の格子定数を、薄膜材料測定用XRD測定装置(ブルカーAXS社製、「D8 DISCOVER」)を用いて測定した。その際、X線源の出力はそれぞれ管電圧40kV、管電流40mAとし、回折強度を上げるためにコリメータは使用しなかった。(100)面及び(002)面のχ軸とω軸を軸立てした後、2θ−θスキャンを実施し、解析ソフトウェアLEPTOSによりピーク位置を決定した。(001)面のピーク位置よりa軸長、(002)面のピーク位置よりc軸長を求めた。その結果、単結晶の格子定数は、a軸長が3.2482Å、c軸長が5.2060Åであった。
例2
例1において、ZnとAlの物質量比Zn:Alを99.9:0.1とし、CTABの濃度を0.03Mとしたこと以外は例2と同様にして、酸化亜鉛単結晶試料の作製及び評価を行った。原料酸化亜鉛粉末の格子定数は、a軸長が3.2492Å、c軸長が5.2060Åであった。得られた酸化亜鉛単結晶のXRC半値幅は100arcsecと高い結晶性を示した。Al含有量(すなわちAl固溶量)は0.09at%、Br含有量(すなわちBr固溶量)は0.04at%であった。単結晶試料の格子定数を測定した結果、a軸長が3.2491Å、c軸長が5.2067Åであった。
例3(比較)
体積基準D50平均粒径0.5μmの酸化亜鉛粉末(高純度化学製、純度4N)と高純度γ−Al粉末(住友化学製AKP−GO15)とを、ZnとAlの物質量比Zn:Alを99.7:0.3とし、水を溶媒としてアルミナ製ボールを用いてポットミルで24時間混合した。混合物を乾燥した後、1400℃で5時間熱処理した。得られた粉末を乳鉢で粗解砕した後、アルミナ製ボールを用いてボールミルにより体積基準D50平均粒径2μmまで粉砕した。得られた粉末に対し、例1と同様にしてX線回折法により結晶相を同定した結果、ZnO単相であった。格子定数測定の結果、a軸長は3.2462Å、c軸長は5.2025Åと通常のZnOと比較していずれも小さい値であった。このZnO粉末を原料として、例1と同様の方法で酸化亜鉛単結晶の作製及び評価を行った。得られた酸化亜鉛単結晶のXRC半値幅は450arcsecと低い結晶性を示した。Al含有量(すなわちAl固溶量)は0.30at%、Br含有量(=固溶量)は検出限界以下であった。単結晶の格子定数を測定した結果、a軸長が3.2463Å、c軸長が5.2027Åであった。

Claims (12)

  1. 3B族元素及び7B族元素を固溶状態で含む酸化亜鉛単結晶であって、該単結晶の(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が150arcsec以下である、酸化亜鉛単結晶。
  2. 3B族元素の固溶量が0.01at%以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛単結晶。
  3. 3B族元素の固溶量が0.01〜1at%である、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛単結晶。
  4. 7B族元素の固溶量が0.005at%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  5. 7B族元素の固溶量が0.005〜0.5at%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  6. 3B族元素の固溶量が0.01〜1at%であり、かつ、7B族元素の固溶量が0.005〜0.5at%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  7. a軸の格子定数が3.246〜3.252Åであり、かつ、c軸の格子定数が5.204〜5.210Åである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  8. a軸の格子定数が3.248〜3.251Åであり、かつ、c軸の格子定数が5.205〜5.208Åである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  9. 前記3B族元素がAl及び/又はGaであり、かつ、前記7B族元素がCl及び/又はBrである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  10. 前記3B族元素がAlであり、かつ、前記7B族元素がBrである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  11. (002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が130arcsec以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
  12. (002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が100arcsec以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化亜鉛単結晶。
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