JP2013212053A - 化学品製造装置および連続発酵による化学品の製造方法 - Google Patents

化学品製造装置および連続発酵による化学品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な操作方法で、長時間にわたり安定して高生産性を維持する化学品製造装置および連続発酵法による化学品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の化学品製造装置100は、発酵原料から化学品を含有する発酵液への変換を行う発酵槽1と、発酵液から濾過液として化学品を回収する分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2に発酵液を供給するための発酵液供給ライン3と、分離膜モジュール2から排出される発酵液を発酵槽1に還流するための発酵液還流ライン4と、分離膜モジュール2内に気体を供給し、発酵液供給ラインに接続される気体供給装置5と、分離膜モジュール2から排出される発酵液から気体を分離し、発酵駅還流ラインに接続される気体分離装置6と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、化学品製造装置および連続発酵による化学品の製造方法に関するものである。
微生物や培養細胞の培養を伴う物質生産方法である発酵法は、大きく(1)回分発酵法(Batch発酵法)および流加発酵法(Fed-Batch or Semi-Batch発酵法)と(2)連続発酵法(Continuous発酵法)とに分類することができる。上記(1)の回分発酵法および流加発酵法は、設備的には簡素であり、短時間で培養が終了し、また、純菌培養による生産物発酵においては培養菌以外の雑菌による汚染が起きる可能性が低いというメリットがある。しかし、時間の経過とともに培養液中の生産物濃度が高くなり、生産物阻害や浸透圧の上昇などの影響により生産性および収率が低下する。このため、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持するのは困難である。
一方、連続発酵法は、発酵槽内における目的物質の蓄積を回避する事により、上述の回分および流加発酵法に比べ長時間にわたって高収率かつ高生産性を維持できる。従来の連続培養は、発酵槽へ新鮮培地を一定速度で供給し、これと同量の培養液を槽外へ排出することによって、発酵槽内の液量を常に一定に保つ培養法である。回分培養では初発基質濃度が消費されると培養が終了するが、連続培養では理論的には無限に培養を持続できる。連続培養に関して、最近では、中空糸膜などの有機高分子分離膜を用いた連続培養装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
しかし、このような分離膜は濾過運転を通じて濾過面にSS(Suspended Solid)や吸着物が付着することで濾過能力が低下し、必要な濾過液量が得られなくなることがある。微生物や培養細胞の目詰まりの抑制方法については、多孔性分離膜の洗浄や濾過条件の設定などに関する技術が、いくつか提案されている。
例えば、分離膜の洗浄方法としては、分離膜を温水で逆洗浄する方法(特許文献3)が提案されている。
国際公開第07/097260号 特開2008−212138号公報 特開2000−317273号公報
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、逆洗浄は発酵液を希釈するので、連続発酵法による生産性を高く維持することが難しい。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡便な操作方法で、長時間にわたり安定して高生産性を維持する化学品製造装置および連続発酵法による化学品の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、分離膜モジュールの下部、または発酵槽と分離膜モジュールとを連通する配管から、分離膜モジュール内に気体を供給するとともに、分離膜モジュールから発酵槽に還流する配管の途中に気体分離装置を設け、これによって気体を随伴する発酵液から気体を分離することで、膜の閉塞を低減して長期間安定した膜運転を行いながら、過剰な気体が発酵槽に還流することに起因する連続発酵の不安定化を抑制し、長期的な連続発酵、即ち、安定的に化学品が生産できることを見出した。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の化学品製造装置は、微生物の発酵により発酵原料から化学品を含有する発酵液への変換を行う発酵槽と、発酵液から濾過液として化学品を回収する分離膜モジュールと、前記発酵槽と前記分離膜モジュールの1次側に連通し、前記分離膜モジュールに発酵液を供給するための発酵液供給ラインと、前記分離膜モジュールの1次側と前記発酵槽に連通し、前記分離膜モジュールから排出される発酵液を前記発酵槽に還流するための発酵液還流ラインと、前記発酵液供給ラインに接続され、前記分離膜モジュール内に気体を供給する発酵液供給ラインに接続される気体供給装置と、前記発酵液還流ラインに接続され、前記分離膜モジュールから排出される発酵液から気体を分離する気体分離装置と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、発酵槽内の発酵液中で細胞を培養することにより、原料を発酵させて化学品を生成する生成工程と、前記生成工程で生成した化学品を含む発酵液を分離膜モジュールに供給する発酵液供給工程と、前記発酵液供給工程で供給された発酵液を濾過して、前記化学品を含んだ透過液を分離する濾過工程と、前記濾過工程で濾過されない非透過液を前記発酵槽内に還流する還流工程と、前記分離膜モジュールから排出される気体を随伴する非透過液から気体を分離する気体分離工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、前記気体供給工程において、前記分離膜モジュール内の気体線速度が300cm/s以下になるように気体を供給することを特徴とする。
図1は、本発明の実施の形態にかかる化学品製造装置の構成を示す概略図である。 図2は、本発明の実施の形態にかかる化学品製造装置で用いられる気体分離装置の一例を示す概略断面図である。 図3は、本発明の実施の形態の変形例にかかる化学品製造装置の構成を示す概略図である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
1.化学品製造装置
本発明の実施の形態にかかる化学品製造装置の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる化学品製造装置の概略図である。図1に示すように、化学品製造装置100は、原料を発酵させて化学品を生成する発酵槽1と、発酵液を濾過して化学品を含んだ透過液を分離する分離膜モジュール2と、を備える。発酵槽1と分離膜モジュール2とは、発酵液供給ライン3および発酵液還流ライン4によって接続され、循環系を形成している。また、化学品製造装置100は分離膜モジュール2に気体を供給する気体供給装置5と、分離膜モジュール2から排出される気体を随伴する非透過液から気体を分離する気体分離装置6とを有している。気体供給装置5は発酵液供給ライン3に接続されており、気体分離装置6は発酵液還流ライン4上に設けられている。発酵液還流ライン4は、分離膜モジュール2と気体分離装置6とを接続する配管4aと、気体分離装置6と発酵槽1とを接続する配管4bとからなる。本発明の実施の形態では、発酵液供給ライン3は分離膜モジュール2の下部に、発酵液還流ライン4は分離膜モジュール2の上部に接続されているので、分離膜モジュール2には下部から発酵液が供給、上部から発酵液が排出される。
気体供給装置5により分離膜モジュール2内に気体を導入することにより、気体が分離膜モジュール2内を通過する際に発生する液体及び気体の揺れによって、分離膜の表面に付着している物質を分離膜の表面からスクラビング洗浄することができる。気体供給装置5を発酵液供給ライン3に接続することにより、気体を随伴した発酵液が分離膜モジュール2の発酵液を供給する1次側に導入される。導入された気体を随伴した発酵液により分離膜モジュール2の分離膜表面が洗浄され、分離膜モジュール2の分離膜面閉塞が抑制される。また、気体を随伴する発酵液は、分離膜モジュール2から発酵液還流ライン4(配管4a)へ排出され、気体分離装置6において発酵液と気体に分離される。気体が分離された発酵液は、発酵液還流ライン4(配管4b)を介して発酵槽1へ還流される。気体分離装置6により気体を分離した発酵液を発酵槽1に還流させることが可能となるため、発酵槽1内での発酵が過剰な気体によって阻害され、発酵効率が低下するといったリスクが生じにくくなる。
発酵槽1は、その内部に発酵液が入れられるように構成されている。具体的には、発酵槽1は、耐圧性、耐熱性および耐汚れ性に優れる材質で作られる。発酵槽1には、円筒型、多角筒型、俵型など様々な形状が適用可能である。発酵槽1は、発酵原料、細胞、その他発酵に必要な固体、液体または気体を注入して撹拌することができ、必要に応じて滅菌でき、さらに密閉することが可能な形状を備えればよい。発酵液の撹拌効率の観点からは、発酵槽1は円筒型もしくは俵型であることが好ましい。発酵槽1内は、発酵槽の外部から発酵槽内部に雑菌が入り増殖することを防ぐため、加圧状態に維持されることが好ましい。発酵槽1内の気圧を管理するために、後述の発酵槽圧力計22等の装置が設けられる。
分離膜モジュール2は、容器内に多数の中空糸膜または平膜等の分離膜を備えるように構成されている。分離膜モジュール2の詳細については、後述する。
発酵槽1と分離膜モジュール2は、発酵液供給ライン3および発酵液還流ライン4によって接続されている。発酵槽1から、発酵液供給ライン3を介して発酵液を分離膜モジュール2に送液するため、発酵液供給ライン3の途中に循環ポンプ7が設けられている。
化学品製造装置100は、制御装置50を備える。制御装置50は、各種の演算を行うことができる。また制御装置50は、各種センサーの検知結果、使用者の入力、および各種設定に基づいて、化学品製造装置100内の各部の動作を制御する。
化学品製造装置100はさらに温度制御装置8、攪拌装置9、pHセンサー・制御装置10、レベルセンサー・制御装置11、中和剤供給ポンプ12、培地供給ポンプ13、発酵槽気体供給装置20、発酵槽圧力調整バルブ21、発酵槽圧力計22を発酵工程に主に関与する装置として備える。
温度制御装置8は、温度センサーおよび温度調整部を備える。温度センサーは発酵槽1内の発酵液の温度を検知する。温度センサーによる検知結果が一定の範囲を示すように、制御装置による制御を受けて、温度調整部が動作する。こうして、発酵槽1内の温度が一定に維持されることで、発酵または細胞の増殖に適した温度環境が維持される。温度調整部は、加熱および冷却の一方又は両方の機能を有することができる。
撹拌装置9は、発酵槽1内の発酵液を撹拌することで、適切な発酵環境を維持する。
pHセンサー・制御装置10は、発酵槽1内の発酵液のpHを検知し、pHが所定の範囲を逸脱した際に、中和剤供給ポンプ12を動作させて発酵槽内に中和剤を供給し、pHが所定の範囲内になったら、中和剤供給ポンプ12を停止するように制御する。中和剤供給ポンプ12は中和剤槽と発酵槽1とを接続する配管上に設置されており、中和剤を発酵槽1内に添加する。なお、中和剤としては酸およびアルカリが用いられる。
レベルセンサー・制御装置11は、発酵槽1内の発酵液の液面の高さを検知し、液面の高さが所定の範囲の下限値を下回ったときに、培地供給ポンプ13を動作させて発酵槽1内に培地を供給し、液面の高さが所定の範囲内になったら、培地供給ポンプ13を停止するように制御する。培地供給ポンプ13は培地槽と発酵槽1とを接続する配管上に設置されており、培地を発酵槽1内に添加する。
発酵槽気体供給装置20は、発酵槽1内に気体を供給する。供給された気体は、回収され、再び発酵槽気体供給装置20により発酵槽1内に供給されてもよい。
発酵槽圧力調整バルブ21は、制御装置50の制御に基づいて、発酵槽圧力計22が検出した発酵槽1内の気圧が上限に達すると発酵槽1内の空気を外部に放出する。こうして、発酵槽1内の圧力が適切に保たれる。なお、雑菌混入を抑制するために、発酵槽1内の圧力は、外気圧よりも高く保たれることが好ましい。
化学品製造装置100はさらに、差圧センサー14、濾過ポンプ15、濾過バルブ16、逆洗ポンプ17、逆洗バルブ18を濾過工程に主に関与する装置として備える。
差圧センサー14は、分離膜モジュール2の1次側と2次側に接続され、膜間差圧を検知する。分離膜モジュール2において、発酵液が通液されるのが1次側であり、濾過液が通液されるのが2次側である。
分離膜モジュール2の2次側は、濾過液を収容する濾過液タンクと接続されており、分離膜モジュール2と濾過液タンクの間には濾過ポンプ15が、分離膜モジュール2と濾過ポンプ15の間には濾過バルブ16が設けられている。さらに、分離膜モジュール2の2次側には、分離膜モジュール2を洗浄するための洗浄液を収容する洗浄液タンクが接続されており、必要に応じて分離膜モジュール2の2次側から1次側に洗浄液を通液させる、逆圧洗浄(逆洗ともいう)が実施できるようになっている。分離膜モジュール2と洗浄液タンクの間には逆洗ポンプ17が、分離膜モジュール2と逆洗ポンプ17の間には逆洗バルブ18が設けられている。分離膜モジュール2の2次側には、圧力計、流量計、滅菌用装置、滅菌用フィルタなどが設置されていてもよい。
気体供給装置5は、分離膜モジュール2のスクラビングを可能とするために、発酵液供給ライン3上に接続されることが好ましい。発酵液供給ライン3上に循環ポンプ7が設けられている場合、気体供給装置5と発酵液供給ライン3が接続される箇所は、発酵槽1と循環ポンプ7の間、および循環ポンプ7と分離膜モジュール2の間のいずれであってもよい。
気体供給装置5には、気体流量を測定するための流量計(図示なし)が設けられていることが好ましい。流量計の値を元に、後述する気体線速度を算出することも可能である。
気体供給装置5には、気体供給装置バルブ19が設けられていることが好ましい。気体供給装置バルブ19は、制御装置50と連動させて開度を調整できるものであることが好ましい。
気体供給装置5から供給される気体は、その量が多いほどスクラビングの効果が高まるため、洗浄効率の観点では気体供給量が多いことが好ましい。しかし、気体を随伴した発酵液が発酵槽1に循環すると、発酵槽1内における発酵液の酸素移動容量係数(KLa)が変動し、その結果として発酵液中の微生物、培養細胞の活性が低下してしまう懸念がある。また、発酵槽1内に多量の気泡が生じることにより、発酵槽1内のセンサー類が正しく発酵液の性状を検知できず、連続発酵の制御が正しく行われない懸念もある。したがって、本実施の形態にかかる化学品製造装置100では、この懸念を解消するために、気体分離装置6を発酵液還流ライン4上に設けている。これにより、分離膜モジュール2から排出された気体随伴発酵液から気体を分離し、気体分離後の発酵液を発酵槽1に還流させる。分離された気体は、系外に排出されてもよく、また、気体分離装置6と気体供給装置5を配管で接続し、気体を再利用してもよい。
気体分離装置6は、気体随伴発酵液から気体を分離できるものであれば、不連続式、連続式のいずれであってもよく、装置の大きさや発酵液性状、発酵液に含まれる気体の量等を勘案して好適なものを選択して用いてよい。
非連続式とは、気体随伴発酵液を一定量溜めてから気体分離処理を行い、気体分離後の発酵液を発酵槽1に還流させるものを示す。不連続式装置の例としては、容器内に気体随伴発酵液を収め、容器内を減圧して脱泡するものや、容器を遠心分離機によって遠心分離するものが例示できる。これらは、脱泡効率に優れる反面、気体随伴発酵液を移液する際にコンタミネーションが生じる懸念がある。
一方、連続式とは、気体随伴発酵液を連続的に供給し、気体分離後の発酵液を連続的に発酵槽1へ還流させるものを示す。連続式装置の例としては、スクリューデカンタ、サイクロンなどの遠心力を用いる装置や、バッファタンクなどの比重差を用いる装置が例示できる。これらは、コンタミネーションのリスクが低い反面、気体分離能力が不連続式のものに劣ったり、装置内が複雑な構成をしているため滅菌処理が困難であるなどの懸念がある。
また、図2のように、非連続式の気体分離装置6を複数組み合わせて、気体分離処理後の発酵液の排出が連続的に行われるようにしてもよい。図2に記載の気体分離装置6は、3つの気体分離装置が、発酵液の貯留、脱泡、排出を時間差で順次行うようにした装置であり、気体分離装置6から排出される発酵液の液量が一定となるように制御可能となる。気体分離装置6の構成の詳細は、その動作と共に後述する。
供給する気体の気泡の大きさについては特に限定されないが、気泡が過剰に微細であると分離膜モジュール2内におけるスクラビングの効果が小さくなり、また、気体分離装置6における気体の分離効率も低下することから、気泡はある程度大きいほうがよい。気泡の大きさの調整は、気体供給装置5の気体供給口の形状を適宜変更することで可能となる。気体供給口は、塩化ビニル製またはステンレス製の配管に、空気吐出孔を設けることで形成されていてもよいし、多孔性のゴム、セラミック、メンブレンを用いた散気管なども使用することができる。気体供給口の大きさは、規定した量の気体が供給可能で、かつ、発酵液による詰まりが発生しない大きさであればよい。発酵系の中に雑菌が入らないように、気体供給口に滅菌用フィルタなどを設置することもできる。
2.分離膜モジュール
分離膜モジュール2は、分離膜と、分離膜を収容するケースとを備える。
分離膜モジュール2に用いられる分離膜は、有機膜、無機膜のいずれであってもよい。分離膜は、発酵液の濾過に使用でき、気体による洗浄に対して耐久性を持つ膜であればよい。例えば、分離膜として、ポリフッ化ビニリデン製、ポリスルホン製、ポリエーテルスルホン製、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、セラミックス製の膜が挙げられる。特に、発酵液による汚れが発生しにくく、かつ洗浄がしやすく、さらに気体による洗浄に対する耐久性に優れているポリフッ化ビニリデン製の分離膜が好ましい。
分離膜は、発酵液の中の細胞を効果的に分離するため、平均細孔径が0.001μm以上10μm未満の細孔を有する多孔性膜であることが好ましい。また、分離膜の形状は、平膜、中空糸膜などいずれの形状のものも採用することができるが、分離膜モジュールの単位体積あたりの膜面積が広い中空糸膜が好ましい。膜の平均孔径は、ASTM:F316−86記載の方法(別称:ハーフドライ法)にしたがって決定される。なお、このハーフドライ法によって決定されるのは、膜の最小孔径層の平均孔径である。
なお、ハーフドライ法による平均孔径の測定の標準測定条件は、以下のとおりである。
使用液体:エタノール
測定温度:25℃
昇圧速度:1kPa/秒
平均孔径[μm]は、下記式より求まる。
平均孔径[μm]=(2860×表面張力[mN/m])/ハーフドライ空気圧力[Pa]
エタノールの25℃における表面張力は21.97mN/mである(日本化学会編、化学便覧基礎編改訂3版、II-82頁、丸善(株)、1984年)ので、本発明における標準測定条件の場合は、
平均孔径[μm]=62834.2/(ハーフドライ空気圧力[Pa])
にて求めることができる。
分離膜が中空糸膜である場合、外圧式、内圧式のいずれの中空糸膜でも好適に用いることができる。外圧式中空糸膜は、膜の外表から中空部に向かって濾過される中空糸膜であり、内圧式中空糸膜は、膜の中空部から外表に向かって濾過される中空糸膜である。外圧式中空糸膜の外径は、0.5mm以上3.0mm以下であることが望ましい。外径が0.5mm以上であることで、中空糸膜中に流れる濾過液の抵抗を比較的小さく抑えられる。また、外径が3mm以下であることで、発酵液または気体による外圧により中空糸膜がつぶれることを抑制できる。
内圧式中空糸膜の内径は、0.5mm以上3.0mm以下が望ましい。内径が0.5mm以上であることで、中空糸膜中に流れる発酵液の抵抗を比較的小さく抑えることができる。また、内径が3mm以下であることで、膜表面積を確保することができるので、使用モジュール本数の増大を抑制することができる。
分離膜モジュール2のケースは、耐圧性に優れる材質で作られており、円筒型、多角筒型など、発酵液をモジュールの1次側へ供給することができる形状であれば良い。発酵液の流れやハンドリング性を考慮すると、ケースは円筒型であることが好ましい。
3.化学品の製造方法
本実施形態の製造方法は、連続発酵により化学品を製造する方法であって、以下の工程(a)〜(f)を備える:
(a)発酵槽内の発酵液中で細胞を培養することにより、原料を発酵させて化学品を生成する生成工程
(b)前記生成工程で生成した化学品を含む発酵液を分離膜モジュールに供給する発酵液供給工程
(c)前記発酵液供給工程で供給された発酵液を濾過して、前記化学品を含んだ透過液を分離する濾過工程
(d)前記濾過工程で濾過されない非透過液を前記発酵槽内に還流する還流工程
(e)前記分離膜モジュールに気体を供給する気体供給工程
(f)前記分離膜モジュールから排出される気体を随伴する非透過液から気体を分離する気体分離工程
各工程について、以下に説明する。なお、工程(a)〜(c)は細胞の連続培養工程または連続発酵工程と言い換えられてもよい。
3−1.化学品の生成工程(a)
[細胞]
本書において、「細胞」とは、微生物および培養細胞、ならびに真核細胞および原核細胞を包含する概念である。微生物としては、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母;大腸菌、乳酸菌、コリネ型細菌などの細菌;糸状菌;放線菌等が用いられる。培養細胞は、多細胞生物由来の細胞であり、例えば動物細胞および昆虫細胞などが挙げられる。化学品の製造に用いられる細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
真核細胞は、細胞内に細胞核(核)と呼ばれる構造を持ち、細胞核(以下、単に「核」と称する)を有さない原核生物とは明確に区別される。化学品の製造には、真核細胞のうちで酵母を好ましく用いることができる。化学品の製造に好適な酵母としては、例えば、サッカロミセス属(Genus Saccharomyces)に属する酵母と、サッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)に属する酵母が挙げられる。
原核細胞は、細胞内に細胞核(核)と呼ばれる構造をもたず、細胞核(核)を有する真核生物とは明確に区別される。細胞は、目的とする化学品、原料、培養条件等に応じて選択される。
L−アミノ酸を生産する細胞として、例えば、発酵工業においてよく使用される大腸菌やコリネ型細菌などの細菌が挙げられる。
具体的には、L−リジン生産菌としては、エシェリシア属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する細菌等が挙げられる。この中でも特に好ましい細菌は、エシェリシア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミカム、ブレビバクテリウム・フラバムおよびブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムである。
L−アミノ酸の生産能力を持つ微生物は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。一例として、特開平2−219582号公報に記載されているL−スレオニン生産性の向上したプロビデンシア・レトゲリ、および特表平3−500486号公報に記載されているL−アラニン生産性の向上したコリネバクテリウム・グルタミカム等が挙げられる。
発酵液中に含まれる化学品の分離および精製は、従来知られている濾過、濃縮、蒸留および晶析などの方法を組み合わせて行うことができる。以下では、発酵により得られる化学品の一例として、乳酸を製造する場合について述べる。
乳酸を製造する場合、真核細胞であれば酵母、原核細胞であれば乳酸菌を用いることが好ましい。このうち酵母は、乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を細胞に導入した酵母が好ましい。特に、50%以上の対糖収率を示す乳酸菌が好ましい。対糖収率とは、消費した全糖量に対する乳酸の生産量の比率である。
乳酸菌としては、例えば、野生型株では、乳酸を合成する能力を有するラクトバチラス属(Genus Lactobacillus)、バチラス属(Genus Bacillus)、ペディオコッカス属(Genus Pediococcus)、テトラゲノコッカス属(Genus Tetragenococcus)、カルノバクテリウム属(Genus Carnobacterium)、バゴコッカス属(Genus Vagococcus)、ロイコノストック属(Genus Leuconostoc)、オエノコッカス属(Genus Oenococcus)、アトポビウム属(Genus Atopobium)、ストレプトコッカス属(Genus Streptococcus)、エンテロコッカス属(Genus Enterococcus)、ラクトコッカス属(Genus Lactococcus)およびスポロラクトバチルス属(Genus Sporolactobacillus)に属する細菌が挙げられる。
また、乳酸の対糖収率が高い乳酸菌、または得られる乳酸の光学純度が高い乳酸菌を選択して用いることができる。例えば、D−乳酸を選択して生産する能力を有する乳酸菌としてはスポロラクトバチルス属に属するD−乳酸生産菌が挙げられ、好ましい具体例として、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス(Sporolactobacillus laevolacticus)またはスポロラクトバチルス・イヌリナス(Sporolactobacillus inulinus)が使用できる。さらに好ましくは、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス ATCC 23492、ATCC 23493、ATCC 23494、ATCC 23495、ATCC 23496、ATCC 223549、IAM 12326、IAM 12327、IAM 12328、IAM 12329、IAM 12330、IAM 12331、IAM 12379、DSM 2315、DSM 6477、DSM 6510、DSM 6511、DSM 6763、DSM 6764、DSM 6771などとスポロラクトバチルス・イヌリナスJCM 6014などが挙げられる。
また、L−乳酸の対糖収率が高い乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス・ヤマナシエンシス(Lactobacillus yamanashiensis)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・アジリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アビアリエス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・デルブレッキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバシラス・サリバリス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・シャーピイ(Lactobacillus sharpeae)、ラクトバシラス・デクストリニクス(Pediococcus dextrinicus)、およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などが挙げられ、これらを選択して、L−乳酸の生産に用いることが可能である。
また、D−乳酸を製造する場合、D−乳酸デヒドロゲナーゼ(以下、D−LDHともいうことがある)の酵素活性が増強された野生型株の細胞を用いることも好ましい。酵素活性を増強させる方法としては、従来知られている薬剤変異による方法も用いることができる。また、細胞に、D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を組み込むことによりD−乳酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を増強することもできる。つまり、化学品の生成には、組換え細胞も好適に用いられる。
組換え細胞を用いてD−乳酸を製造する場合、宿主細胞としては、原核細胞である大腸菌、乳酸菌、および真核細胞である酵母などが好ましく、酵母が特に好ましい。
D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子としては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、およびペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、およびバシラス・ラエボラクティカス(Bacillus laevolacticus)、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)、カブトガニ(Tachypleus tridentatus)、ミナミカブトガニ(Tachypleus gigas)、およびマルオカブトガニ(Tachypleus rotundicauda)由来の遺伝子が好ましく、バシラス・ラエボラクティカス(Bacillus laevolacticus)、およびアメリカカブトガニ由来の遺伝子がさらに好ましい。
また、L−乳酸を製造する場合、乳酸生産能力を人為的に付与された、あるいは乳酸生産能力を人為的に増強された細胞を用いることができる。例えば、細胞に、L−乳酸脱水素酵素遺伝子(以下、「L−LDH」と称することがある)を導入することで、L−乳酸生産能力を付与、あるいは増強することができる。L−乳酸生産能力を付与、あるいは増強する方法としては、従来知られている薬剤変異による方法を用いることができる。細胞にL−LDHを組み込むことによりL−乳酸生産能力を増強することもできる。つまり、組換え細胞も好適に用いられる。
組換え細胞を用いてL−乳酸を製造する場合、宿主細胞としては、原核細胞である大腸菌および乳酸菌;および真核細胞である酵母などが好ましい。酵母は特に好ましく用いられる。また、酵母のうちサッカロマイセス属(Genus Saccharomyces)に属する酵母が好ましく、サッカロマイセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)がさらに好ましい。
L−LDHは、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)およびピルビン酸を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)およびL−乳酸に変換する活性を持つタンパク質をコードしていればよく、特定の配列には限定されない。例えば、L−LDHとして、対糖収率の高い乳酸菌由来、ほ乳類由来、またはカエル由来の遺伝子を用いることができる。ほ乳類由来の遺伝子としては、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)由来のL−LDHを好適に用いることができる。また、カエル由来の遺伝子としては、特にコモリガエル科(Pipidae)に属するカエル由来のL−LDHを用いることが好ましく、コモリガエル科に属するカエルの中でも、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)由来のL−LDHを好ましく用いることができる。
D−LDH、L−LDHには、遺伝的多型性の遺伝子、および変異誘発などによる変異型の遺伝子も含まれる。遺伝的多型性とは、遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものである。また、変異誘発とは、人工的に遺伝子に変異を導入することをいう。変異誘発は、例えば、部位特異的変異導入用キット(Mutan―K(タカラバイオ社製))を用いる方法、およびランダム変異導入用キット(BD Diversify PCR Random Mutagenesis(CLONTECH社製))を用いる方法などにより実行される。また、ヒトまたはカエル由来のL−LDHは、NADHとピルビン酸をNAD+とL−乳酸に変換する活性を持つタンパク質をコードしているならば、塩基配列の一部に欠失または挿入が存在していても構わない。
[培地]
発酵原料(以下、単に「原料」と称する。)とは、発酵によって目的の化学品を生じる物質である。原料は、細胞、培養条件、および目的とする化学品等に応じて、変更可能である。
培養に用いられる培地は、原料を含むと共に、細胞の生育を促し、目的とする発酵生産物である化学品を良好に生産させ得る成分を含む。本書では、特に限定しない限り、「培地」とは液体培地を指す。培地は、例えば、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸、およびビタミンなどの有機微量栄養素を含有する。
上記の炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースおよびラクトース等の糖類;これら糖類を含有する澱粉、澱粉加水分解物、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ケーンジュース;甜菜糖蜜またはケーンジュースからの抽出物もしくは濃縮液;甜菜糖蜜またはケーンジュースの濾過液;シラップ(ハイテストモラセス);甜菜糖蜜またはケーンジュースからの精製もしくは結晶化された原料糖;菜糖蜜またはケーンジュースからの精製もしくは結晶化された精製糖;酢酸やフマル酸等の有機酸;エタノールなどのアルコール類;並びにグリセリンなどが使用される。ここで糖類とは、多価アルコールの最初の酸化生成物であり、アルデヒド基またはケトン基をひとつ持ち、アルデヒド基を持つ糖をアルドース、ケトン基を持つ糖をケトースと分類される炭水化物のことを指す。
また、上記の窒素源としては、例えば、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源が使用され、例えば、油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。
また、上記の無機塩類としては、例えば、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等を適宜使用することができる。
[発酵液]
発酵液とは、培地およびその中で培養されている細胞を含み、培養の結果として生成された化学品を含み得る。
分離膜モジュール2により得られる濾液には、実質的に細胞は含まれないが、説明の便宜上、濾液も発酵液と称することがある。
[培養]
化学品製造装置100では、発酵槽1内へ原料を導入しつつ、発酵槽1内から発酵液を引き抜くことで、連続培養が行われる。
培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って、細胞濃度を高くした後に、連続培養を開始しても良い。この際、必要に応じて、細胞の引き抜きを行うこともできる。化学品の製造では、細胞濃度を高くした後に、高濃度の細胞を接種し、培養開始とともに連続培養を行っても良い。
原料の導入について説明する。図1では、培養実行中に培地供給ポンプ13が稼働することで、発酵槽1内に培地が導入され、その結果として原料が導入される。
培養実行中、原料の導入は停止されずに常に行われていてもよいし、状況に応じて原料の導入と停止とが切り替えられてもよい。例えば、上述したように、培地の導入の開始および停止が、レベルセンサー制御装置11の検出結果に基づいて行われてもよいし、図示しないタイマの計測結果に基づいて一定の時間毎に行われてもよい。なお、原料の導入が自動で行われる形態だけでなく、手動で行われる形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、発酵液の引き抜きについて説明する。発酵液中の細胞の濃度は、発酵液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、効率よい生産性を得るのに好ましい。
化学品製造装置100は、循環系によって発酵液を引き抜くことで、化学品の回収を行いつつ、細胞濃度を高く維持しながら、連続培養を行うことができる。循環系を用いた発酵液の引き抜きの詳細については、後述する。
発酵槽1には、発酵液供給ライン3、発酵液還流ライン4の他に、引き抜き用の流路が接続されていてもよく、発酵液の引き抜きが、この引き抜き用の流路を通じて行われてもよい。このとき、発酵液の液体部分だけでなく、細胞も引き抜かれてもよい。
培養中に、発酵槽1に新たな細胞が導入されてもよい。細胞の導入は、手動で行われてもよいし、自動的に行われてもよい。
発酵槽1においては、原料の供給と発酵液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料の供給および発酵液の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
連続培養操作は、管理上、通常、単一の発酵槽1で行うことが好ましい。しかしながら、細胞を増殖させつつ生産物を生成する連続発酵培養法であれば、発酵槽1の数は問わない。発酵槽1の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽1を用いることもあり得る。その場合、複数の発酵槽1を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても、高い生産性が得られる。
図1の化学品製造装置100においては、発酵槽1内の発酵液は、撹拌装置9によって撹拌され、さらに、温度制御装置8、pHセンサー制御・装置10、レベルセンサー・制御装置11、発酵槽気体供給装置20等によって、発酵に適した条件が維持される。
細胞の培養は、通常、pHが3以上10以下で、温度が15℃以上65℃以下の範囲で行うことができる。発酵液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、上記範囲内のあらかじめ定められた範囲内に調整される。化学品製造装置100においては、pHセンサー・制御装置10によってpHが自動制御され、温度制御装置8によって温度が自動制御される。
3−2.発酵液の供給(b)および濾過工程(c)
濾過工程により、発酵液から連続的に化学品を回収することができ、かつ培養を継続することができる。具体的には、図1においては、循環ポンプ7によって、発酵液が発酵槽1から引き抜かれ、発酵液供給ライン3を通って分離膜モジュール2に供給される。発酵液は、分離膜モジュール2によって、非透過液と透過液とに分離される。
循環ポンプ7によりクロスフローを発生させ、分離膜モジュール2ではクロスフロー濾過が行われる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、膜濾過方法として全量濾過が採用されてもよい。ただし、全量濾過を採用すると、分離膜モジュール2内に濁質が堆積しやすくなる。濁質が膜面に堆積すると、濾過工程においてこの濁質から水分が除去され、濁質が乾燥して表面に強固に付着してしまう。乾燥した濁質の洗浄は落ちにくいだけでなく、分離膜の表面も傷つけてしまう懸念がある。よって、分離膜モジュール2内に濁質を堆積させにくい、クロスフロー濾過を行うことが好ましい。分離膜モジュール2内にクロスフローを発生させることで、濁質を分離膜モジュール2外に排出できるだけでなく、発酵液の剪断力により、分離膜表面の濁質を剥がして除去することができるからである。クロスフローにさらにスクラビングを組み合わせることによって、より高い洗浄効率を実現することができる。
濾過の駆動力は、発酵槽1と分離膜モジュール2との液位差(水頭差)を利用するサイホンによって得られてもよいし、循環ポンプ7により発生する膜間差圧によって得られてもよい。また、濾過の駆動力として、分離膜モジュール2の2次側に吸引ポンプが設置されてもよい。図1の形態では、濾過ポンプ15が吸引ポンプに該当する。
循環ポンプ7を使用する場合には、吸引ポンプ(濾過ポンプ15)の圧力により膜間差圧を制御することができる。さらに、分離膜モジュール2の1次側に導入する気体または液体の圧力によっても膜間差圧を制御することができる。分離膜モジュール2の1次側の圧力と2次側の圧力との差を膜間差圧として検出し、この膜間差圧に基づいて、循環ポンプ7および濾過ポンプ15の制御等を行うことができる。
図1の構成では、循環ポンプ7によって、発酵槽1から分離膜モジュール2へ発酵液が供給される。また、差圧センサー14および制御装置50によって検知された膜間差圧に応じて、循環ポンプ7および濾過ポンプ15の動作が制御されることで、分離膜モジュール2に供給される発酵液の量が適切に調整される。
濾過は連続的に行うこともできるし、間欠的に行うこともできる。間欠的に濾過を行う場合、例えば濾過を5〜120分間継続して実行する毎に、所定の時間(例えば0.1〜10分間)濾過を停止することができる。より好ましくは、濾過を5〜10分間継続するごとに、0.25〜3分間濾過を停止する。後述するように、スクラビングは、濾過停止中に行っても良いし、濾過中に行っても良い。
3−3.発酵液の還流工程(d)
発酵液中の細胞は分離膜を透過しないので、分離膜モジュール2を通過した非透過液(透過しなかった液体)では、細胞濃度が高められている。非透過液が発酵槽還流ライン4を通って発酵槽1に戻されることで、発酵槽1内に細胞が保持される。分離膜モジュール2の分離膜を透過した濾液は装置外に排出される。
こうして、発酵槽1内の細胞濃度は高く保たれ、かつ化学品が連続的に培養系から分離される。
3−4.第1の気体供給工程(e)
第1の気体供給工程(e)は、図1の構成においてエアスクラビングとして実行される。上述したように、図1に示す構成では、気体供給装置5によって、スクラビング用の気体が供給される。気体の供給によって、分離膜モジュール2内の分離膜から、汚れが除去される。
スクラビング開始時には、気体供給装置バルブ19が、制御装置50の制御により、または手動により開かれる。スクラビング停止時には、同様に、制御装置50の制御または手動により、気体供給装置バルブ19が閉じられる。
スクラビング時には、同時に分離膜モジュール2への液体の供給も行われる。スクラビングによる洗浄効果と、分離膜モジュール2における液体の流れによる洗浄効果とが合わさることで、高い洗浄効果が得られる。
特に図1の構成では、スクラビング時に、分離膜モジュール2に発酵槽1から発酵液が供給される。具体的には、スクラビング用の気体が供給されているときに、循環ポンプ7が稼働する。このとき、発酵液の濾過が同時に行われていてもよいが、発酵液の濾過を同時に行わないほうが、濁質が膜表面に付着しようとする作用が弱くなり、洗浄効果がより高まる。よって、洗浄効果を高めたいときには濾過を行わないことが好ましい。発酵液を濾過しない場合、濾過バルブ16は開閉いずれの状態であってもよい。濾過バルブ16が開のときには、濾過ポンプ15が停止していればよい。
こうして、発酵液の流れによる剪断力とスクラビングによる洗浄効果とにより、高い洗浄効果が得られる。なお、気体供給時に分離膜モジュール2に供給される液体は、発酵液に限定されるものではない。発酵液以外には、例えば細胞の入っていない培地等、発酵を阻害しないような液体を用いることができる。
気体供給装置5に用いる気体供給源としては、ガスボンベ、ブロアー、コンプレッサー、あるいは配管によって供給される圧縮ガスなどが例示できる。一定の圧力で気体を供給することが可能な装置、または、圧縮された気体を収容しており、一定の圧力で気体を供給することが可能なタンクであれば前述のものには限定されない。
発酵槽1内で好気性発酵が行われる場合は、スクラビングによって供給される気体は、酸素を含有する気体であることが好ましく、純酸素であってもよい。また、酸素の濃度は、発酵に悪影響のない気体、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、メタン、または前記気体らの混合気体などを混合することで、調整可能である。酸素の供給速度を上げるときは、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、発酵液を加圧する、撹拌速度を上げる、あるいは通気速度を上げるなどの手段を用いることができる。
一方で、発酵槽1内で嫌気性発酵が行われる場合は、酸素の供給速度を下げる必要があれば、二酸化炭素、窒素、メタンおよびアルゴンなど、酸素を含まないガスを空気に混合して供給することも可能である。
分離膜モジュール2に供給される気体の線速度vは、分離膜の断面積あたりの気体の供給量であり、分離膜モジュール2が外圧式の場合は、下記の式(1)から求められる。
Figure 2013212053
ここで、Vは単位時間当たりの気体供給量、Sは分離膜モジュール容器の内部断面積、pは分離膜モジュールの充填率(%)である
分離膜モジュール2が内圧式中空糸膜により得られる場合は、気体線速度の式は(2)のようになる。
Figure 2013212053
ここで、Rは中空糸膜の外径、rは中空糸膜の内径を表している。
なお、充填率pについては、好ましい膜充填率の値は、濾過対象液の性状によって異なるが、一般的には20%以上であり、55%以下である。分離膜モジュール2内における膜充填率を下げると、分離膜モジュール2内の1次側において通液抵抗が小さくなるため好ましいが、単位体積あたりの膜面積が小さくなってしまう。膜充填率を上げると、分離膜モジュール2内の単位体積あたりの膜面積を大きくできるが、1次側の通液抵抗が増大してしまう。
図1の構成では、流量計(図示なし)で計測された気体供給量を、上記式(1)に当てはめることで、分離膜モジュール2に供給される気体の線速度を求めることができる。
制御装置50によって気体線速度の制御を行う場合は、線速度が後述する適正範囲になるように気体供給装置バルブ19の開閉を調整することができる。また、気体供給装置バルブ19の開度を手動で調整してもよい。
気体の線速度が高いほど、分離膜モジュール2内におけるスクラビングの効果が高くなるが、気体の線速度を高くしすぎると、分離膜の揺動性が過度に高まり、分離膜表面同士が擦れあい、擦過傷を生じる懸念がある。そのため、気体の線速度の好ましい範囲は300cm/s以下であり、より好ましくは200cm/s以下、さらに好ましくは150cm/s以下である。
また、気体線速度が低すぎると分離膜の揺動が不十分になるため、スクラビングの効果が十分に得られないことがある。そのため、気体線速度の好ましい範囲は30cm/s以上であり、より好ましくは50cm/s以上、さらに好ましくは70cm/s以上である。
スクラビングの実行条件、すなわちスクラビング実行のタイミング、頻度、1回のスクラビング当たりの時間等は、具体的に限定されるものではない。スクラビングの実行条件は、膜間差圧、膜間差圧の変化、発酵槽内の圧力、供給する気体の種類、培養される細胞の種類、製造される化学品の種類、および原料の種類等の様々な条件に応じて変更可能である。例えば、スクラビングは、連続して行っても良いし、前回のスクラビング終了から所定時間が経過する毎に行われてもよいし、分離膜モジュール2への発酵液の供給量、つまり濾過量または膜間差圧が所定の値に達する毎に行われてもよい。スクラビング開始時および終了時を決定するために、化学品製造装置100は、図示しないタイマ等の計測器が設けられていてもよい。
例えば、スクラビング洗浄頻度は、0.1回/時間以上360回/時間以下が好ましく、より好ましくは12回/時間以上120回/時間以下である。スクラビング洗浄頻度が360回/時間以下であることで、発酵液の発泡による不具合、濾過膜への損傷、および運転コストの上昇などの問題が発生しにくい。また、スクラビングの洗浄頻度が0.1回/時間以上であることで、洗浄効果を充分に得ることができ、発酵槽内の圧力を充分に高く維持できるので雑菌混入を抑制することができる。
1回のスクラビング洗浄時間は、スクラビング洗浄頻度、膜間差圧、膜間差圧の変化、発酵槽内の圧力、化学品の生産速度により決定される。
スクラビング洗浄を間欠的に行う場合の洗浄時間は、5秒以上1時間以下/回の範囲であり、より好ましくは10秒以上600秒以下/回である。スクラビング洗浄時間が1時間以内であることで、濾過膜の損傷および乾燥、並びに運転コストの上昇などの問題の発生が抑制される。また、スクラビング洗浄時間が5秒以上であることで、洗浄効果を充分に得ることができると共に、発酵槽内の圧力低下を抑制することができるので、雑菌の混入を抑制することができる。なお、スクラビング洗浄時間に応じて、気体の線速度を調整することが可能である。
3−5.気体分離工程(f)
分離膜モジュール2内には、気体供給装置5により、300cm/s以下の気体線速度となるように、多量の気体が供給されることで、高いスクラビング効果を得られることは前述の通りである。その一方で、多量の気体を随伴した発酵液は、分離膜モジュール2から排出され、発酵液還流ライン4を経て発酵槽1に還流されるが、発酵槽1内に多量の気体が還流すると、発酵液の発泡量が多くなるので、泡が発酵液を伴って排気口から溢れたり、レベルセンサー制御装置11の周囲に泡が多量に付着することにより、発酵槽1内の液面の位置が正しく検知されないといった問題が起きる懸念がある。
化学品製造装置100は、上述したように、発酵槽1の中から外に空気を逃がすための発酵槽圧力調整バルブ21および排気口を備えるが、この排気口から装置系外に排出可能な気体の量には限度があるため、気体随伴発酵液から、予め気体の大半を除去しておくことが好ましい。この気体の大半を除去する方法として、発酵液還流ライン4上に設けられた気体分離装置6を用いる。
以下、図2に例示した気体分離装置6を用いて、気体随伴発酵液から気体を分離する方法について述べる。気体分離装置6は、図2に示すように複数の分離槽を有するものでも、単一の分離槽を有するものであってもよい。気体分離装置6は、図2に示すように、3つの気体分離槽61、62、63を並列に接続したものである。気体分離槽61、62、63には、配管4aを介し、分離膜モジュール2の1次側から排出された気体随伴発酵液が供給されるとともに、配管4bを介し、気体分離槽61、62、63から排出された、気体分離後の発酵液を発酵槽1に還流する。気体分離槽61、62、63と配管4aとの間には、気体随伴発酵液を供給する分離槽を選択制御するコック64が配置され、気体分離槽61、62、63と配管4bとの間には、気体分離後の発酵液を排出する分離槽を選択制御するコック65が設置される。コック64、65を介して、気体分離槽61、62、63の何れか1つと、発酵槽還流ライン4とが接続されるようになっている。
また、気体分離槽61、62、63には、減圧ポンプ66が接続されており、気体分離槽61、62、63と減圧ポンプ66とを接続する配管には、コック67、68が設けられている。コック67、68はともに、減圧される気体分離槽61、62、63を選択制御するものである。
ここでは、気体分離槽61に注目して気体を分離する方法について述べる。まず、気体分離槽61に気体随伴発酵液が供給され、かつ槽外に気体随伴発酵液が排出されないようにコック64,65を操作する。その後、気体随伴発酵液が所定の量だけ貯留されたら、コック64を操作して、気体随伴発酵液を供給する分離槽を選択制御、例えば、気体分離槽62に供給し、気体分離槽61への供給を停止する。その後、コック67,68を操作して、減圧ポンプ66と気体分離槽61とを接続し、減圧脱泡を行う。減圧脱泡が完了したら、コック65を操作して、気体分離槽61から発酵液を排出する。3つの気体分離槽61、62、63について、発酵液の貯留、脱泡、排出が時間差で順次行われるように制御すると、気体を分離した発酵液の排出が連続的に行われるようになり好ましい。
また、気体分離装置6は、発酵液還流ライン4に直接接続されるほか、図3に示すように、発酵液還流ライン4のバイパス4c上に設けてもよい。気体供給装置5により分離膜モジュール2に間欠的に気体が供給される場合、気体供給装置5による気体供給に同期して、分離膜モジュール2から排出された発酵液を、バイパス4cを介して気体分離装置6に供給するように制御すれば、気体随伴発酵液のみを選択的に気体分離装置6で処理できるようになるため、装置の無駄な運転を抑制することが可能となる。
3−6.第2の気体供給工程
化学品の製造方法は、工程(e)とは別に、発酵槽1に気体を供給する工程をさらに備えてもよい。図1の構成では、発酵槽1へ気体を供給する工程は、発酵槽気体供給装置20および撹拌装置9によって実行可能である。
特に、気体供給装置5によるスクラビング洗浄が間欠的に行われる場合、スクラビングのための気体の供給を停止している間に、発酵槽1へ気体を供給することで、微生物の生育に必要な気体の供給量を維持することができる。このとき、気体の供給速度をどの程度大きくするかは、発酵の条件等に応じて適宜決定され、制御装置50等によって自動または手動で変更可能である。
3−7.逆洗工程
化学品の製造方法は、分離膜モジュール2の分離膜を逆洗する工程をさらに備えてもよい。図1の構成では、分離膜モジュール2の2次側から、逆洗ポンプ17を用いて分離膜モジュール2に洗浄液を投入することができる。
逆洗実行時には、濾液を溜める濾液槽に洗浄液が流入しないように、濾過が停止される。すなわち、濾過バルブ16が閉じ、かつ濾過ポンプ15が停止する。この状態で、逆洗バルブ18が開き、逆洗ポンプ17が稼働することで、逆洗が行われる。
逆洗を停止するときには、逆洗バルブ18が閉じ、逆洗ポンプ17が停止する。この状態で濾過バルブ16が開き、濾過ポンプ15が稼働することで、濾過が実行される。
これらの制御は、制御装置50により実行可能である。逆洗の開始時および終了時を決定するために、化学品製造装置100は、図示しないタイマ等の計測器を備えてもよい。
逆洗に使用される洗浄液としては、発酵に悪影響がなく、かつ、分離膜の洗浄ができる液体、例えば、水、濾過液、発酵培地または発酵培地に添加する成分の一部、または、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液またはそれらの混合液体などが挙げられる。
4.化学品
本書に述べる製造方法によって得られる化学品は、細胞が発酵液中に生産する物質である。化学品としては、例えば、アルコール、有機酸、ジアミン、アミノ酸および核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。また、上記製造方法は、酵素、抗生物質および組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。
例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロール等が挙げられる。
また、有機酸としては、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、アミノ酸およびクエン酸等を挙げることができる。また、ジアミンとしてはカダベリン、核酸であればイノシン、グアノシンおよびシチジン等を挙げることができる。
アミノ酸としては、L−スレオニン、L−リジン、L−グルタミン酸、L−トリプトファン、L−イソロイシン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−アラニン、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−アスパラギン酸、L−チロシン、L−メチオニン、L−セリン、L−バリンおよびL−ロイシン等が挙げられ、特に、L−スレオニン、L−リジンおよびL−グルタミン酸が好適である。
以下、実施例を示して本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例では、図1に示す化学品製造装置100または図1の化学品製造装置100において、気体分離装置6を配置しないものを使用した。
以下の実施例および比較例では、化学品として、D−乳酸(実施例1〜7および比較例1〜2)およびL−リジン(実施例8〜14および比較例3〜4)を連続発酵により製造した。
[A.D−乳酸濃度の測定方法]
培養液中に含まれるD−乳酸濃度の測定は、次の方法で行った。D−乳酸を含む培養液を100μL取り、下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
カラム:Shim−Pack SPR−H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃
検量線は、濃度既知のD−乳酸を標品として分析を行い、横軸にD−乳酸濃度、縦軸に検出ピーク面積をプロットして作成した。
[B.L−リジン濃度の測定方法]
培養液中に含まれるL−リジン濃度の測定は、次の方法で行った。測定するL−リジンを含む培養液を25μL取り、そこに400μLのNaHCO(75mM)および内標として25μLの1,4−ブタンジオール(2g/L)を加えた。上記の溶液に、150μlの0.2Mジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を添加後、37℃で1時間反応させた。
その溶液50μlをアセトニトリル1mLに溶解し、10,000rpmで5分間遠心した上清10μlを以下の条件でHPLCにより分析した。
・カラム:CAPCELLPAK C18 TYPE SG120(資生堂)
・移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=45:55(流速1mL/min)
・検出方法:UV(360nm)
・温度:23℃
検量線は、濃度既知のL−リジンを標品として分析を行い、横軸にL−リジン濃度、縦軸にL−リジン面積/1,4−ブタンジオール(内標)面積の面積比をプロットして作成した。
[C.グルコースの測定方法]
グルコース濃度の測定には、“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。
[D.膜濾過モジュールの製作]
東レ(株)製加圧式ポリフッ化ビニリデン中空糸膜モジュール“HFS1020”を解体して、中空糸膜のうち、接着固定されていない部分のみを切り出した。この中空糸膜は外圧式である。こうして切り出されたポリフッ化ビニリデン中空糸膜をケース内に収容し、接着固定することで、分離膜モジュールを作製した。ケースとしては、ポリカーボネート樹脂の成型品を用いた。作製されたた膜濾過モジュールの容量は0.02Lであり、有効濾過面積は200平方cmであった。
[E.連続発酵によるD−乳酸の製造に用いられる遺伝子組換え株の作製]
D−乳酸生産能力をもつ微生物として、PDC1遺伝子、SED1遺伝子、およびTDH3遺伝子座にアメリカカブトガニ由来のldh遺伝子が導入された酵母を作製した。具体的には、WO2010/140602に記載の方法により、遺伝子改変を行った。得られた菌株を、SU042株と称する。SU042株を用いて、後述するようにD−乳酸の連続発酵を行った。
[F.連続発酵によるL−リジンの製造に用いられる遺伝子組換え株の作製]
L−リジン生産能力をもつ微生物として、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032(以下、ATCC 13032株と略す。)のホモセリンデヒドロゲナーゼ(HOM)遺伝子破壊株の作製を行った。具体的には、特開2008−212138に記載の方法により、遺伝子改変を行った。得られた菌株を、コリネバクテリウム・グルタミカム delta−HOM株(以下、delta−HOM株と略す。)と称する。delta−HOM株を用いて、後述するようにL−リジンの連続発酵を行った。
[G.連続発酵によるD−乳酸の製造]
図1の化学品製造装置100(気体分離装置6あり、なし)を用いて、D−乳酸の連続発酵を実施した(実施例1〜7および比較例1〜2)。分離膜には、[D]で作製した中空糸膜を利用した。D−乳酸連続発酵における運転条件として共通の条件は下記のとおりである。
共通条件
・微生物:SU042株
・培地:乳酸発酵培地(表1)
・発酵液容量:3.0(L)
・中空糸膜MD容量:0.02(L)
・温度:32(℃)
・発酵槽撹拌速度:400(rpm)
・滅菌:中空糸膜モジュールを含む発酵槽1、および使用培地は総て121℃、20minのオートクレーブにより高圧(2気圧)蒸気滅菌した。
・pH調整:5N水酸化カルシウム水溶液によりpH4.5に調整
・循環ポンプ流量:3L/min
・濾過速度:400mL/h(一定)
・発酵槽気体供給装置20による気体供給量:125mL/min
Figure 2013212053
[H.気体分離装置] 気体分離装置6は、図2に記載の気体分離装置6を用いた。気体分離装置6の装置概要は以下の通りである。
気体分離槽61、62、63形状:円筒状
気体分離槽61、62、63容積:1800mL(有効容積1500mL)
減圧ポンプ66運転条件:気体分離槽61、62、63の内圧が0.1気圧になるように調整した。
また、コック64、65、67、68の切り替えは、1つの気体分離槽に有効容積分の発酵液が貯留されるタイミングに合わせて実施した。
(比較例1)
変更条件
・気体分離装置6なし
・スクラビング気体供給量:0mL/min
・気体線速度:0cm/s
まず、5mLの乳酸発酵培地を投入した試験管に、SU042株を植菌した。これを温度30℃、で24時間振とう培養した(前々培養)。培地が入った発酵装置の発酵槽1に、得られた前々培養液を入れて植菌し、発酵槽1を付属の攪拌装置9によって攪拌し、発酵槽1の温度調整、pH調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、前培養時の運転条件に加え、乳酸発酵培地の連続供給を行い、発酵槽1内の培養液量が一定となるように供給量を制御しながら、乳酸発酵培地を連続供給することで、連続培養を行った。
適宜、濾過液中の生産されたD−乳酸濃度および残存グルコース濃度は[A]および[C]に示す方法により測定した。
比較例1の発酵成績を、表2に記載する。気体供給装置5による気体供給および気体分離装置6による気体分離を行わない比較例1では400時間の連続発酵が可能であった。
(比較例2)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。
・スクラビング気体供給量:2100mL/min
・気体線速度:72.9cm/s
気体分離装置6による気体分離を行わない比較例2では、多量の気体を随伴したまま発酵液が発酵槽1に還流することによって、発酵槽1の中に多量の気泡が発生した。そのため、レベルセンサー制御装置11が正常に作動せず、培地の供給がとまってしまい、連続発酵が実施できなかった。
(実施例1)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:950mL/min
・気体線速度:33.0cm/s
実施例1の発酵成績を、表2に記載する。実施例1では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度も比較例1より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例1では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2と比べて発酵槽1内の発泡が少なくなり、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例2)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:1500mL/min
・気体線速度:52.1cm/s
実施例2の発酵成績を、表2に記載する。実施例2では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度も比較例1より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例2では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2と比べて発酵槽1内の発泡が少なくなり、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例3)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:2100mL/min
・気体線速度:72.9cm/s
実施例3の発酵成績を、表2に記載する。実施例3では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度も比較例1より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例3では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2と比べて発酵槽1内の発泡が少なくなり、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例4)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:4300mL/min
・気体線速度:149.3cm/s
実施例4の発酵成績を、表2に記載する。実施例4では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度も比較例1より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例4では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2と比べて発酵槽内の発泡が少なくなり、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例5)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:5700mL/min
・気体線速度:197.9cm/s
実施例5の発酵成績を、表2に記載する。実施例5では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度も比較例1より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例5では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2よりも多量の気体を供給しているが、発酵槽内の発泡は比較例2よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例6)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:8500mL/min
・気体線速度:295.1cm/s
実施例6の発酵成績を、表2に記載する。実施例6では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度は比較例1より非常に緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例6では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2よりも多量の気体を供給しているが、発酵槽1内の発泡は比較例2よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例7)
以下の条件以外は比較例1と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6としては[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:9500mL/min
・気体線速度:329.9cm/s
実施例7の発酵成績を、表2に記載する。実施例7では400時間の連続発酵が可能であった。
また、比較例1と比べて、D−乳酸の生産速度がやや向上し、膜間差圧の上昇速度は比較例1より非常に緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例7では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。ただし、実施例6と膜間差圧の上昇速度が同等であることから、スクラビング気体の供給量を増やすことによる膜面洗浄効果の向上は頭打ちになったと考えられる。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例2よりも多量の気体を供給しているが、発酵槽1内の発泡は比較例2よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
Figure 2013212053
[G.連続発酵によるL−リジンの製造]
図1に記載の化学品製造装置100(気体分離装置6あり、なし)を用いて、L−リジンの連続発酵を実施した(実施例8〜14および比較例3〜4)。分離膜モジュール2には、[D]で作製した中空糸膜モジュールを利用した。L−リジン連続発酵における運転条件として以下の実施例および比較例に共通の条件は下記のとおりである。
共通条件
・微生物:コリネバクテリウム・グルタミカム delta−HOM株
・培地:L−リジン発酵培地(表2)
・発酵液容量:3.0(L)
・中空糸膜MD容量:0.02(L)
・温度:30(℃)
・発酵槽撹拌速度:350(rpm)
・滅菌:中空糸膜モジュールを含む発酵槽1、および使用培地は総て121℃、20minのオートクレーブにより高圧(2気圧)蒸気滅菌した。
・pH調整:28%アンモニア水溶液によりpH7.3に調整
・循環ポンプ流量:3L/min
・濾過速度:170mL/h(一定)
・発酵槽気体供給装置20による気体供給量:75mL/min
Figure 2013212053
(比較例3)
変更条件
・気体分離装置6なし
・スクラビング気体供給量:0mL/min
・気体線速度:0cm/s
まず、5mlのBY培地(0.5%イーストエキストラクト(yeast extract)、0.7%ミートエキストラクト(meat extract)、1%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム)を投入した試験管に、寒天培地から掻き取ったdelta−HOM株を植菌した。これを温度30℃、で24時間振とう培養した(前々培養)。得られた前々培養液を、表2に示した培地を50mL投入した500mLの三角フラスコに全量植菌し、30℃で前培養を行った。得られた前培養液を、3LのL−リジン発酵培地が投入された化学品製造装置100に植菌し、24時間培養を行った。その後、発酵槽1内の培養液量が一定となるように供給量を制御しながら、L−リジン発酵培地を連続供給することで、連続培養を行った。
適宜、濾過液中の生産されたL−リジン濃度および残存グルコース濃度は[B]および[C]に示す方法により測定した。
比較例3の発酵成績を、表4に記載する。気体供給装置5による気体供給および気体分離装置6による気体分離を行わない比較例3では200時間の連続発酵が可能であった。
(比較例4)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。
・スクラビング気体供給量:8500mL/min
・気体線速度:295.1cm/s
気体分離装置6による気体分離を行わない比較例4では、多量の気体を随伴したまま発酵液が発酵槽1に還流することによって、発酵槽1の中に多量の気泡が発生した。そのため、レベルセンサー制御装置11が正常に作動せず、培地の供給がとまってしまい、連続発酵が実施できなかった。
(実施例8)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:950mL/min
・気体線速度:33.0cm/s
実施例8の発酵成績を、表4に記載する。実施例8では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例8では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、発酵槽1内の発泡は比較例4よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例9)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:1500mL/min
・気体線速度:52.1cm/s
実施例9の発酵成績を、表4に記載する。実施例9では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例9では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、発酵槽1内の発泡は比較例4よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例10)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:2100mL/min
・気体線速度:72.9cm/s
実施例10の発酵成績を、表4に記載する。実施例10では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例10では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、発酵槽1内の発泡は比較例4よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例11)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:4300mL/min
・気体線速度:149.3cm/s
実施例11の発酵成績を、表4に記載する。実施例11では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例11では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、発酵槽1内の発泡は比較例4よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例12)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:5700mL/min
・気体線速度:197.9cm/s
実施例12の発酵成績を、表4に記載する。実施例12では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例12では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、発酵槽1内の発泡は比較例4よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例13)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:8500mL/min
・気体線速度:295.1cm/s
実施例13の発酵成績を、表4に記載する。実施例13では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例13では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。なお、気体分離装置6を設けたことにより、発酵槽1内の発泡は比較例4よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
(実施例14)
以下の条件以外は比較例3と同様の条件下で、連続発酵を行った。気体分離装置6は[H]に記載の装置を用いた。
・気体分離装置6有り
・スクラビング気体供給量:11000mL/min
・気体線速度:381.9cm/s
実施例14の発酵成績を、表4に記載する。実施例14では200時間の連続発酵が可能であった。
比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が高くなり、膜間差圧の上昇速度も比較例3より緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例13では、連続発酵による化学品生産効率の向上と、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。また、比較例3と比べて、L−リジンの生産速度が若干低くなったが、膜間差圧の上昇速度は比較例3より非常に緩やかになることがわかった。すなわち、上記条件での気体供給および気体分離を行う実施例14では、スクラビングによる膜面洗浄効果が現れていることが確認できた。ただし、実施例13と膜間差圧の上昇速度が同等であることから、スクラビング気体の供給量を増やすことによる膜面洗浄効果の向上は頭打ちになったと考えられる。なお、気体分離装置6を設けたことにより、比較例4よりも多量の気体を供給しているが、発酵槽1内の発泡は比較例2よりも少なくなっており、液面制御が正常に行われ、長期間運転が可能であることが確認できた。
Figure 2013212053
本発明は、気体を分離膜モジュールに供給して分離膜をスクラビングするとともに、分離膜モジュールから排出された発酵液から気体を分離するという簡便な方法により、培養に必要とした微生物以外の雑菌による汚染が起きる可能性を抑制しつつ、分離膜モジュール運転の長期安定性と発酵成績を向上させることができるため、広く発酵工業において利用され、発酵生産物である化学品を低コストで安定に生産することが可能となる。
1 発酵槽
2 分離膜モジュール
3 発酵液供給ライン
4 発酵液還流ライン
5 気体供給装置
6 気体分離装置
7 循環ポンプ
8 温度制御装置
9 攪拌装置
10 pHセンサー・制御装置
11 レベルセンサー・制御装置
12 中和剤供給ポンプ
13 培地供給ポンプ
14 差圧センサー
15 濾過ポンプ
16 濾過バルブ
17 逆洗ポンプ
18 逆洗バルブ
19 気体供給装置バルブ
20 発酵槽気体供給装置
21 発酵槽圧力調整バルブ
22 発酵槽圧力計
61、62、63 気体分離槽
64、65、67、68 コック
66 減圧ポンプ
100、100A 化学品製造装置

Claims (3)

  1. 微生物の発酵により発酵原料から化学品を含有する発酵液への変換を行う発酵槽と、
    発酵液から濾過液として化学品を回収する分離膜モジュールと、
    前記発酵槽と前記分離膜モジュールの1次側に連通し、前記分離膜モジュールに発酵液を供給するための発酵液供給ラインと、
    前記分離膜モジュールの1次側と前記発酵槽に連通し、前記分離膜モジュールから排出される発酵液を前記発酵槽に還流するための発酵液還流ラインと、
    前記発酵液供給ラインに接続され、前記分離膜モジュール内に気体を供給する気体供給装置と、
    前記発酵液還流ラインに接続され、前記分離膜モジュールから排出される発酵液から気体を分離する気体分離装置と、
    を備えることを特徴とする化学品製造装置。
  2. 発酵槽内の発酵液中で細胞を培養することにより、原料を発酵させて化学品を生成する生成工程と、
    前記生成工程で生成した化学品を含む発酵液を分離膜モジュールに供給する発酵液供給工程と、
    前記発酵液供給工程で供給された発酵液を濾過して、前記化学品を含んだ透過液を分離する濾過工程と、
    前記濾過工程で濾過されない非透過液を前記発酵槽内に還流する還流工程と、
    前記分離膜モジュールに気体を供給する気体供給工程と、
    前記分離膜モジュールから排出される気体を随伴する非透過液から気体を分離する気体分離工程と、
    を含むことを特徴とする連続発酵による化学品の製造方法。
  3. 前記気体供給工程において、前記分離膜モジュール内の気体線速度が300cm/s以下になるように気体を供給すること
    を特徴とする請求項2に記載の連続発酵による化学品の製造方法。
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