以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.回路装置、電子機器の基本構成
図1に本実施形態の回路装置及びこれを含む電子機器の基本的な構成例を示す。本実施形態の回路装置90は、電源管理部20と制御部70を含む。また本実施形態の電子機器は、回路装置90と、システムデバイス100(処理装置)などの電源供給先デバイスを含む。また電子機器は、無接点電力伝送(狭義には電磁誘導。以下、無接点電力伝送を電磁誘導と記載する)により電力を受電する受電部10や表示部150(電気泳動表示部等)を含むことができる。更に電子機器は、2次コイルL2(受電コイル、2次インダクター)、キャパシターCB、キャパシターC(広義には電荷蓄積部)等を含むことができる。2次コイルL2とキャパシターCBにより受電側の共振回路が構成される。
なお、本実施形態の回路装置及び電子機器の構成は図1の構成には限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えばシステムデバイス100や受電部10を回路装置90の構成要素としてもよい。また本実施形態が適用される電子機器としては、ICカード、電子棚札、ICタグ等の種々の機器を想定できる。
受電部10は、送電装置200(端末装置、充電器、相手側機器)から送電される電力を電磁誘導(無接点電力伝送)により受電する。例えば、金属部分の接点がなくても電力伝送を可能にする無接点電力伝送(非接触電力伝送)により電力を受電する。具体的には、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル、1次インダクター)と、受電側に設けられた2次コイルL2を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することで、非接触での電力伝送(無接点電力伝送)が実現される。この受電部10は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流電圧に変換する。この変換は受電部10が有する整流回路などにより実現できる。
なお、1次コイルL1、2次コイルL2としては、例えば平面コイルなどを採用できるが、本実施形態はこれに限定されず、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて電力を伝送できるものであれば、その形状・構造等は問わない。
受電部10は、通信部16、ホストI/F(インターフェース)18を含む。通信部16は、相手側機器である送電装置200との間での通信処理(RF処理)を行う。具体的には、コイルL1、L2を用いた振幅変調処理(ASK変調)により、送電装置200との間で情報の送受信を行う。或いは周波数変調処理や負荷変調処理などにより情報の送受信を行ってもよい。なお、データ通信は、電磁誘導用の1次コイルL1、2次コイルL2を用いて実現する。但し通信用の別コイルを設けて実現する変形実施も可能である。
ホストI/F18は、ホストとなるシステムデバイス100とのホストインターフェース処理を行う。このホストインターフェース処理は、データ線、クロック線、制御線等により実現される。
回路装置90は、電荷蓄積部であるキャパシターC1、C2への電荷蓄積の制御処理などを行う。この回路装置90は例えばASICなどにより実現できる。
システムデバイス100は、電子機器のシステムとしての処理を実行するデバイスであり、例えばマイコン等の処理装置(プロセッサー)により実現できる。このシステムデバイス100は、ホストI/F110、処理部120、昇圧回路170を含む。
昇圧回路170は、昇圧動作により電源を生成する回路である。この昇圧回路170は、例えばチャージポンプ方式で電圧を昇圧して、昇圧電源電圧を生成する。表示部150は、昇圧回路170からの昇圧電源電圧に基づいて、表示動作を行う。具体的には、昇圧回路170により生成された昇圧電源電圧は、表示部150のドライバー回路に供給される。ドライバー回路は、この昇圧電源電圧に基づいて、表示パネルのデータ線(ソース線)や走査線(ゲート線)を駆動することになる。なお図1では、システムデバイス100が昇圧回路170を内蔵する構成になっているが、本実施形態はこれに限定されず、昇圧回路170はシステムデバイス100の外部に設けられる回路であってもよい。
表示部150は、種々の画像を表示するためのものである。処理部120(プロセッサー)は、この表示部150の表示制御処理を行う。表示部150としては、例えば電気泳動表示部(以下、適宜、EPDと呼ぶ)などを採用することができ、処理部120は、このEPDの表示制御処理を行う。また処理部120は、システムの動作に必要な種々の制御処理を行う。
表示部150の表示情報としては、通信による受信データの情報、センサー検出情報(圧力、温度、湿度等の情報)、ICカード内蔵のメモリーの固有情報・個人情報などが考えられる。
図2は、電子機器がICカード190である場合の適用例である。ICカード190には、EPD等で実現される表示部150が設けられており、各種情報が表示可能になっている。またICカード190には、受電部10、回路装置90(IC)、キャパシターC1、C2等がその内部に実装されている。
そしてユーザーが、端末装置202(送電装置)にICカード190をかざすと、ICカード190は端末装置202からの電力を電磁誘導により受電して動作し、端末装置202とデータ通信を行う。そして、通信結果に応じた数字、文字等の画像が表示部150に表示される。電子マネーやプリペイカードを例にとれば、使用金額や残高等が表示部150に表示される。また端末装置202の表示部210にも各種情報が表示される。
次に、回路装置90の詳細について説明する。回路装置90は、電源管理部20、制御部70を含む。
電源管理部20は、電源供給のための種々の管理処理(制御処理)を行う。例えば送電装置200から電磁誘導により電力を受電する受電部10からの電力を受けて、キャパシターC1、C2(広義には第1、第2の電荷蓄積部。以下、同様)に対して電荷を蓄積する制御を行う。そして電源管理部20は、キャパシターC1、C2に蓄積した電荷に基づく電源を、システムデバイス100や昇圧回路170等の電源供給先デバイスに対して供給する。
制御部70は、本実施形態の回路装置90の種々の制御を行ったり、通信制御処理などを行う。例えば制御部70は、電磁誘導により受電部10が受電した電力により動作し、種々の制御処理を行う。具体的には、制御部70は、電荷管理部20の制御処理を行う。この制御部70は、例えばゲートアレイ回路などのデジタル回路等により実現できる。
電源管理部20は、第1の蓄積制御部30と第2の蓄積部40と電源供給部50を含む。
第1の蓄積制御部30(第1の蓄積動作部)は、電磁誘導により電力を受電する受電部10からの電力を受けて、キャパシターC1(広義には第1の電荷蓄積部)に対して電荷を蓄積する制御(動作)を行う。第2の蓄積制御部40(第2の蓄積動作部)は、受電部10からの電力を受けて、キャパシターC2(広義には第2の電荷蓄積部)に対して電荷を蓄積する制御(動作)を行う。
具体的には、第1の蓄積制御部30は、受電部10からの電力の入力ノードNIと、第1の蓄積ノードNA1との間に設けられる。そして、蓄電用のメインのキャパシターC1を充電するための電流や電圧を制御して、キャパシターC1への充電制御を行う。
例えばシステムデバイス100が、画像を表示する電気泳動表示部(EPD)の表示制御処理を行う場合を想定する。この場合には、第1の蓄積制御部30は、電気泳動表示部(不揮発性表示素子)の少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、キャパシターC1に蓄積する制御を行う。このようにすることで、電磁誘電による受電後に、システムデバイス100の表示部を少なくとも1回だけ書き換えることが可能になる。これにより、例えばプリペイカードや電子マネーのICカードに適用した場合には、端末装置にICカードをかざした後に、使用金額や残高等をICカードの表示部に表示することが可能になる。
ここで、少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷とは、例えば受電後に1画面分の画像の表示書き換えを行う場合には、1画面分の画像データを書き換えるのに必要な電荷である。或いは、受電後に1画面の一部分の画像の表示書き換えを行う場合には、その一部分の画像データを書き換えるのに必要な電荷である。これらの電荷の量は、設計や実測により予め知ることができる。従って、例えば第1の蓄積制御部30は、その電荷量の設計値や実測値におけるワーストケースデータに対応する電荷を、キャパシターC1に蓄積する制御を行えばよい。
一方、第2の蓄積制御部40は、受電部10からの電力の入力ノードNIと、第2の蓄積ノードNA2との間に設けられる。そして、起動用のサブのキャパシターC2を充電するための電流や電圧を制御して、キャパシターC2への充電制御を行う。
電源供給部50は、電磁誘導の電力による電源をシステムデバイス100や昇圧回路170や制御部70などの電源供給先デバイスに対して供給する。例えば電源供給部50は、キャパシターC1、C2(第1、第2の電荷蓄積部)に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイス100や昇圧回路170や制御部70などの電源供給先デバイスに対して電源を供給する。具体的には、蓄積ノードNA1、NA2の電圧に基づく電源電圧を、システムデバイス100等への電源の出力ノードNQに対して出力する。
この場合に電源供給部50は、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)の蓄積電荷により得られる電源電圧が、システムデバイス100の動作下限電圧を超えた後に、システムデバイス100(昇圧回路170)に対して電源を供給することが望ましい。ここで、動作下限電圧は、システムデバイス100が正常な動作を行うことが保証されている電圧である。例えばシステムデバイス100がマイコン(表示コントローラー内蔵マイコン)である場合には、マイコンの仕様などにより動作下限電圧が規定される。例えば動作下限電圧よりも低い電源電圧がシステムデバイス100に供給されると、システムデバイス100を構成するトランジスターに貫通電流が流れるなどの不具合が発生するおそれがある。この点、電源供給部50が、動作下限電圧を超えるまでシステムデバイス100に対して電源を供給しないようにすることで、このような不具合の発生を防止できる。
そして本実施形態では、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)は、蓄電用のキャパシターC1(第1の電荷蓄積部)よりも電荷の蓄積容量(キャパシタンス)が小さいシステム起動用の電荷蓄積部となっている。一例としては、蓄電用のキャパシターC1の容量は、数十μF〜数百μF(例えば100μF程度)であり、起動用のキャパシターC2の容量は、1μF以下(例えば0.1μF程度)である。この蓄電素子となるキャパシターC1等としては、スーパーキャパシターなどのコンデンサーを使用できる。従って、蓄電素子を薄型に構成できるため、ICカード等にも容易に内蔵することが可能になる。
キャパシターC1の一端は、第1の蓄積制御部30の出力ノードである蓄積ノードNA1に接続され、他端は例えばGNDノードに接続される。またキャパシターC2の一端は、第2の蓄積制御部40の出力ノードである蓄積ノードNA2に接続され、他端は例えばGNDノードに接続される。なお、電力の入力ノードNIには、電位安定化用のキャパシターCCの一端が接続されている。
そして電源供給部50は、受電部10による受電開始後のシステム起動時には、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイス100等(電源供給先デバイス)に対して供給する。即ち、システム起動時には、システム起動用の小容量のキャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源(ノードNA2の電圧に基づく電源電圧)を、システムデバイス100等に対して供給する。
一方、電源供給部50は、受電部10による受電終了後の期間においては、キャパシターC1(第1の電荷蓄積部)の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイス100等に対して供給する。即ち、システムが起動してキャパシターが十分に充電された受電終了後の期間においては、蓄電用の大容量のキャパシターC1の蓄積電荷に基づく電源(ノードNA1の電圧に基づく電源電圧)を、システムデバイス100等に対して供給する。
なお、受電終了後の期間にシステムデバイス100等に供給される電源は、キャパシターC1、C2の両方の蓄積電荷に基づく電源であることが望ましい。また、キャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源は、受電期間のうちシステム起動時(受電期間の前半)にシステムデバイス100に供給されれば十分であり、例えば受電期間の後半において、キャパシターC1の蓄積電荷に基づく電源がシステムデバイス100等に供給されてもよい。
以上の構成の本実施形態の回路装置では、受電部10による受電開始後に、起動用の小容量のキャパシターC2は短時間で充電されるため、システムデバイス100等に対して迅速に電源電圧を供給してシステムを立ち上げることが可能になる。そして、その後に、キャパシターC2よりも大容量の蓄電用のキャパシターC1が充電され、受電期間終了後も、このキャパシターC1に充電された電荷に基づいて、システムデバイス100等に電源を供給して動作させることが可能になる。
例えば非接触のICカードに本実施形態の回路装置を適用する場合、短い時間で端末装置と通信を行い、蓄電する必要がある。ところが、蓄電されるキャパシターは大容量であり、その充電電圧の立ち上がりは遅く、システム(システムデバイス)のリセットが解除されずに、通信を開始できないという課題がある。
この点、本実施形態では図1に示すように、蓄電用の大容量のキャパシターC1に加えて、起動用の小容量のキャパシターC2が設けられている。これにより、受電開始の直後は、このキャパシターC2の充電電圧でシステムデバイス100を動作させて通信等を行うことが可能になる。従って、蓄電用のキャパシターC1の容量に依存せずに、システムを立ち上げることができ、通信システムを早期に立ち上げて、蓄電及び通信時間を短くすることが可能になる。
例えば、不揮発表示素子であるEPDは、表示情報を無電源状態で保持できるため、ICカード190の表示部150として好適な表示装置である。
ところが、EPDは、液晶表示装置に比べて、表示情報の書き換えに長時間(例えば1秒)を要するという問題点がある。このため、図2のように、端末装置202にICカード190をかざすというタッチ&ゴー(Touch&Go)の操作で、電力を受電して、EPDの表示書き換えを行うのは困難であるという課題がある。
例えば図3(A)の比較例の手法では、電磁誘導による受電期間TRの長さT1を長くし、A1に示すように受電期間TRの前半において、端末装置202(リーダー/ライター)からのデータ受信を行う。そして、A2に示すように受電期間TRの後半のシステムデバイス100の動作期間において、EPDの表示書き換えを行っている。この場合、システムデバイス100の動作期間の長さT2は、受電期間TRの長さT1よりも短くなる。
しかしながら、図3(A)の比較例の手法では、受電期間TRの長さT1が長くなってしまうため、タッチ&ゴーの操作(例えば0.1秒程度の長さの操作)を実現できなくなってしまう。
そこで本実施形態では、図3(B)に示すように、受電期間TRの長さT1を短くする。そしてA3に示すように受電期間TRの間に、端末装置202からのデータ受信を行い、A4に示すように、その後のシステムデバイス100の動作期間においてEPDの表示書き換えを行う。この場合に、受電期間TRの長さをT1とし、システムデバイス100の動作期間の長さをT2とした場合に、T2>T1の関係が成り立つようにする。
このように、受電期間TRの長さT1を短くすることで、タッチ&ゴーの操作で、ICカード190が電力を受電して動作することが可能になる。また、システムデバイス100の動作期間の長さT2が長いことで、表示部150としてEPDを利用した場合にも、表示情報の書き換えが可能になる。即ち、EPDは、液晶表示装置に比べて、表示情報の書き換えに長時間(1秒)を要するが、T2の期間は、データ受信期間と少なくとも1回分のEPDの表示書き換えに必要な時間とする。
この場合に、受電期間TRの長さT1が短いと、EPDの表示書き換えに必要な十分な電荷を蓄積できないおそれがある。
そこで図1では、蓄電用のキャパシターC1として大容量のキャパシターを設けている。例えばキャパシターC1として、スーパーキャパシターなどのコンデンサーを用いることで、EPDの表示書き換えに必要な十分な電荷を蓄積することが可能になる。
一方、このように蓄電用のキャパシターC1を大容量にすると、システムデバイス100に供給される電源電圧が、なかなか立ち上がらずに、早期にシステムを起動できなくなってしまうという課題がある。
そこで本実施形態では、蓄電用のキャパシターC1とは別に起動用のキャパシターC2を設けている。つまり、図3(A)の比較例では、蓄電用キャパシターのみで蓄電及びシステムの起動を行っている。これに対して本実施形態では、蓄電時間を短縮するために、比較例に比べて大容量の蓄電用キャパシターC1を用い、且つ起動を早くするために起動用キャパシターC2を更に別に設けている。
そして図4(A)のB1、B2に示すように、これらのキャパシターC1、C2は、受電部10からの出力電圧に基づいて、第1、第2の蓄積制御部30、40を介して充電される。そして図4(A)のB3に示すように、受電部10による受電開始後のシステム起動時には、起動用のキャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源が、システムデバイス100等に対して供給される。即ち、起動用のキャパシターC2の容量は小さいため、C2の電荷蓄積ノードNA2の電圧の立ち上がりは早く、この電圧がB3に示すように電源電圧としてシステムデバイス100等に供給される。
一方、図4(B)に示すように、受電部10による受電終了後の期間では、蓄電用のキャパシターC1の蓄積電荷に基づく電源が、システムデバイス100等に対して供給される。即ち、蓄電用のキャパシターC1の容量は大きいため、C1の電荷蓄積ノードNA1の電圧の立ち上がりは遅い。しかしながら、受電開始後、時間が経過すると、この電圧は、システムデバイス100の動作下限電圧を上回るようになり、B4に示すように電源電圧としてシステムデバイス100等に供給できるようになる。
こうすることで、図3(B)のA5に示すように早期にシステム電源をオンにしてシステムデバイス100等を動作させることが可能になる。これにより、A3に示すデータ受信処理を早期に完了させることが可能になり、タッチ&ゴーの操作を実現する短い受電期間にも対応できるようになる。
2.起動期間での電荷蓄積の制限又は停止
さて、図1の昇圧回路170は、電源管理部20から供給された電源電圧を昇圧することで、昇圧電源電圧を生成して、表示部150に供給する。この場合に、昇圧回路170は、後述するように例えばチャージポンプ方式で昇圧電源電圧を生成する。このため、昇圧回路170の起動期間においては、チャージポンプ用のキャパシターを、初期状態から充電する必要があり、昇圧回路170の昇圧動作の起動期間において、多くの電力を消費してしまう。
一方、図1の電子機器では、キャパシターC1、C2に電荷が蓄積され、この蓄積電荷に基づく電源により動作する。従って、キャパシターC1、C2に電荷蓄積による電荷が十分に蓄電されていない状態で、上述のように昇圧回路170の起動期間において多くの電力が消費されると、昇圧動作での電力消費が原因で、システムダウン等を引き起こすおそれがある。また、キャパシターC1、C2を蓄電する回路装置90の蓄電能力が低い場合には、昇圧回路190の起動に時間を要し、無駄な電力の消費等の問題を招く。
この場合に、キャパシターC1、C2に電力が十分に蓄電された後に、昇圧回路170を起動させる手法も考えられる。しかしながら、この手法によると、キャパシターC1、C2に十分に電力が蓄電されるまで、昇圧回路170の起動を待たせる必要がある。そして昇圧回路170の起動が遅れると、データ通信処理や表示書き換え処理などの電子機器の他の処理に悪影響を与えるおそれがある。
このような課題を解決するために、本実施形態では、昇圧回路170等の電源供給先デバイスの起動期間において、キャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止する手法を採用している。
具体的には前述した図1に示すように、電源管理部20は、受電部10からの電力を受けて、キャパシターC1(第1の電荷蓄積部)に対して電荷を蓄積する制御を行う第1の蓄積制御部30と、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)に対して電荷を蓄積する制御を行う第2の蓄積制御部40と、キャパシターC1、C2に蓄積された電荷に基づき、電源供給先デバイスであるシステムデバイス100、昇圧回路170等に対して電源を供給する電源供給部50を含む。
そして電源供給部50は、電源供給先デバイスの起動期間において、キャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源を、電源供給先デバイスに対して供給する。
例えば図5(A)、図5(B)は、電源供給先デバイスが、昇圧動作により昇圧電源電圧を生成する昇圧回路170である場合の例であり、起動期間は、この昇圧回路170の昇圧動作の起動期間である。この場合には、図5(A)に示すように、電源供給先デバイスである昇圧回路170の起動期間においては、B12、B13に示すようにキャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源が、昇圧回路170に供給される。これにより昇圧回路170の昇圧動作が起動して、チャージポンプ方式などによる昇圧動作が行われる。具体的には、昇圧回路170がチャージポンプ用のクロック信号を出力して、チャージポンプ用のキャパシターに対する充電を開始し、チャージポンプ方式による昇圧動作を開始する。
そして制御部70は、この電源供給先デバイスの起動期間において、第1の蓄積制御部30によるキャパシターC1(第1の電荷蓄積部)への電荷蓄積を制限又は停止する制御を行う。
具体的には、図5(A)のB11に示すように、電源供給先デバイスである昇圧回路170の昇圧動作の起動期間においては、第1の蓄積制御部30によるキャパシターC1への電荷蓄積が制限又は停止される。これにより、受電部10からの電力の大部分(又は全部)が、B12、B13の経路で、第2の蓄積制御部40からキャパシターC2、電源供給部50を介して、昇圧回路170に供給されるようになる。従って、昇圧回路170は、十分な電力で昇圧動作を起動できるようになる。
この場合、これらの電荷蓄積の制限又は停止は、制御部70が第1の蓄積制御部30に対して制御信号を出力し、この制御信号に基づいて、キャパシターC1への充電電流を制御することで実現できる。例えば電荷蓄積の制限は、充電電流を減少させることで実現できる。例えば、昇圧回路170の起動期間では、起動期間以外の期間に比べて、充電電流を減少させる。また電荷蓄積の停止は、充電電流をゼロにすることで実現できる。
そして制御部70は、電源供給先デバイスの起動期間が終了したと判断した場合に、キャパシターC1(第1の電荷蓄積部)への電荷蓄積の制限又は停止を解除する制御を行う。例えばキャパシターC1への充電電流を制限して絞っていた場合には、これを元に戻す。またキャパシターC1への充電電流をゼロにして充電を停止していた場合には、充電電流の供給を再開する。
具体的には図5(B)のB21に示すように、昇圧回路170の昇圧動作の起動期間が終了したと判断された場合には、電荷蓄積の制限又は停止を解除する制御を行う。例えばチャージポンプ用のキャパシターが初期状態から充電されて、チャージポンプ動作により安定した昇圧電源電圧が生成できるようになると、昇圧動作の起動期間が終了したと判断される。そしてキャパシターC1への電荷蓄積の制限又は停止が解除される。この場合、起動期間の長さは、予め回路設計等において決めておくものであってもよいし、起動期間が終了したか否かを検出回路の検出信号に基づき判断してもよい。
このようにすれば、起動期間が終了して昇圧回路170での電力消費が低くなった後において、B21に示すようにキャパシターC1への電荷蓄積を再開して、表示書き換えに必要な電荷をキャパシターに蓄積できるようになる。この場合に、B22、B23に示すように、システムデバイス100や昇圧回路170等の電源供給先デバイスはキャパシターC2の蓄積電荷に基づき電源が供給されて動作することになる。
そして電源管理部20は、受電部10による受電終了後の期間に、少なくともキャパシターC1(C2)の蓄積電荷に基づく電源を、電源供給先デバイスに対して供給する。具体的には、電源供給先デバイスであるシステムデバイス100や表示部150や昇圧回路170に供給する。このようにすれば、受電期間が終了した後に、キャパシターC1の蓄積電荷を用いてシステムデバイス100や表示部150や昇圧回路170に対して電力を供給し、昇圧回路170による昇圧電源電圧の生成や、表示部150(EPD)の表示書き換え処理等を実現できるようになる。
なお、図4(A)のB2、B3に示すように、電源供給部50は、受電部10による受電開始後のシステム起動時には、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)の蓄積電荷に基づく電源を、電源供給先デバイスであるシステムデバイス100に対して供給する。
そしてシステムデバイス100は、キャパシターC2の蓄積電荷により得られる電源電圧が、動作下限電圧を超えた後に起動して、昇圧回路170の昇圧動作の起動を指示する。そして制御部70は、システムデバイス100からの指示により起動した昇圧回路170の昇圧動作の起動期間において、図5(A)のB11に示すように、第1の蓄積制御部30によるキャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止する制御を行う。
このようにすれば、起動用のキャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源で、システムデバイス100を起動して動作させて、起動したシステムデバイス100の起動指示により、昇圧回路170の昇圧動作が起動するようになる。そして、この昇圧回路170の起動期間においては、キャパシターC1への電荷蓄積が制限又は停止するため、昇圧回路170での電力消費が要因となって、システムダウン等が生じるのを効果的に抑制できる。
なお、昇圧回路170等の電源供給先デバイスの起動期間の長さをTACとし、キャパシターC1(第1の電荷蓄積部)に対する電荷蓄積の期間の長さをTC1とした場合に、TAC<TC1の関係が成り立つ。即ち、電源供給先デバイスの起動期間に比べて、電荷蓄積期間は十分に長い期間になる。
図6は本実施形態の手法を説明する動作フロー図である。まず、送電装置200が送電を開始すると(S61)、受電部10が受電して(S71)、受電した電力が回路装置90に供給される。そして回路装置90は、キャパシターC2等の蓄積電荷により得られる電源電圧が、システムデバイス100の動作下限電圧を超えたか否かを判断し(S81)、動作下限電圧を超えた場合には、キャパシターC2等の蓄積電荷に基づく電源をシステムデバイス100に供給する。これによりシステムデバイス100が起動してい、種々の処理を開始する(S91)。なお、電源電圧が動作下限電圧を超えたか否かの判断は、回路装置90に設けられた図示しない電圧検出回路により実現できる。この電圧検出回路は、電源電圧出力ノードの電圧と、動作下限電圧とを比較するコンパレーターなどにより構成できる。
そして、起動したシステムデバイス100が、昇圧回路170の昇圧動作の起動を指示すると(S92)、昇圧回路170の昇圧動作が起動する(S101)。また回路装置90は、キャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止する(S83)。具体的には、回路装置90の第1の蓄積制御部30が、キャパシターC1への充電電流を減少又は停止させる制御を行う。
そして、昇圧回路170の昇圧動作の起動期間が終了したと判断されると(S102)、システムデバイス100は、電荷蓄積の制限又は停止を解除する指示を行う(S93)。これにより、回路装置90は、キャパシターC1への電荷蓄積の制限又は停止を解除し(S84)、キャパシターC1への蓄電を再開する(S85)。即ち、S83で充電電流を減少又は停止していた場合には、これを元に戻して、表示書き換えに必要な電荷を蓄積するための充電電流の供給を再開する。
以上のように本実施形態によれば、昇圧回路170等の電源供給先デバイスの起動期間においては、キャパシターC1への電荷蓄積が制限又は停止される(S83)。従って、電源供給先デバイスがその起動期間において多くの電力を消費する場合に、その電力消費が原因となってシステムダウン等の不具合が発生する事態を効果的に抑制できる。
即ち、送電装置200から電磁誘導により受電部10が受電する電力には限りがある。従って、この受電部10からの電力の多くが、昇圧回路170等の電源供給先デバイスの起動により消費されてしまうと、受電した電力に基づく電源電圧が低下して、システムダウン等の不具合が発生するおそれがある。
この点、本実施形態によれば、電源供給先デバイスにより多くの電力が消費される可能性がある起動期間において、キャパシターC1への蓄電が制限又は停止される。従って、キャパシターC1の蓄電に消費される電力を減少又はゼロにできるため、受電部10の受電電力の大部分を、電源供給先デバイスの起動動作に必要な電力に割り当てることができる。従って、電源供給先デバイスの起動動作に多くの電力が必要である場合にも、この起動動作の電力消費により、システムダウン等の不具合が発生する事態を効果的に抑制できる。また、電源供給先デバイスに多くの電力を供給することで、電源供給先デバイスの起動動作が速くなり、起動期間の短縮等も期待できるようになる。
また本実施形態によれば、蓄電用のキャパシターC1に加えて、起動用の小容量のキャパシターC2が設けられ、受電部10が受電した電力に基づいて、第1、第2の蓄積制御部30、40により、キャパシターC1、C2に対する電荷蓄積が行われる。従って、電源供給先デバイスの起動期間において、キャパシターC1への電荷蓄積が制限又は停止されても、電源供給先デバイスは、キャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源が供給されて、動作することができる。従って電源供給先デバイスは、キャパシターC2の蓄積電荷による電源で動作して、その起動動作を実行できるようになる。
この場合に、キャパシターC2は起動用の小容量のキャパシターであるため、早期に電荷蓄積を行うことが可能であり、早期に電源電圧が立ち上がって、システムデバイス100や昇圧回路170を起動させることが可能になる。従って、システムデバイス100や昇圧回路170の起動が遅れることでデータ通信処理や表示書き換え処理などの電子機器の他の処理に悪影響を及ぼす事態を、効果的に抑制できる。
また本実施形態によれば、電源供給先デバイスの起動期間の終了後は、電荷蓄積の制限又は停止が解除される。従って、第1の蓄積制御部30によるキャパシターC1の電荷蓄積を再開させ、大容量のキャパシターC1に蓄電された電力により、例えば受電終了後の期間において、表示部150の表示書き換え処理を適正に実現できるようになる。
なお、電荷蓄積の制限又は停止の対象となる起動期間は、昇圧回路170の昇圧動作の起動期間には限定されない。例えば、マイコン等で実現されるシステムデバイス100の起動時に、多くの電力が消費され、システムダウン等の不具合が発生するおそれがある場合には、電源供給先デバイスであるシステムデバイス100の起動期間において、キャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止するようにしてもよい。こうすることで、受電部10が受電した電力が、キャパシターC1への蓄電により消費されるのが抑制され、受電が開始してからシステムデバイス100が早期に起動するようになる。従って、システムデバイス100の起動が遅れて、データ通信処理等の他の処理に悪影響が及ぶ事態を、効果的に抑制できるようになる。
3.データ通信期間での電荷蓄積の制限又は停止
さて、以上では、電源供給先デバイスの起動期間において、キャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止する手法について説明した。この場合に、送電装置200との間のデータ通信期間において、キャパシターC1の電荷蓄積を制限又は停止して、その結果として、電源供給先デバイスの起動期間においてキャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止するようにしてもよい。
まず、データ通信の詳細について説明する。図7(A)は、送電装置200と電子機器(受電部)との間のコイルL1、L2を用いたデータ通信(RF通信)についての説明図である。図7(A)では、このデータ通信(RF通信)を、振幅変調処理により実現している。具体的には、ASK変調(振幅偏移変調:Amplitude Shift Keying)処理により実現している。ASK変調では、搬送波の振幅を入力符号(「0」、「1」)に対応させて変化させる。具体的には図7(A)では、変調で電力が途切れることがないように、ASK10%方式を採用している。なお、コマンド・データやレスポンス・データの符号化方式としては、例えばマンチェスター方式などを採用できる。また、本実施形態の近接型の無線通信方式としては、ISO/IEC1443規格のTypeA方式やTypeB方式なども想定できる。
さて、送電装置200との間で図7(A)に示すようなデータ通信を行っている際に、例えば図1の第1の電荷蓄積部30がキャパシターC1への蓄電を行うと、この蓄電により、送電装置200から受電した電力が消費されてしまう。これにより、図7(B)に示すように、コイル端電圧信号(L1、L2)の振幅が小さくなってしまい、図7(A)のデータ通信において通信障害が生じるおそれがある。即ち、コイル端電圧信号の振幅が、図7(B)のようにキャパシターC1への蓄電が原因で小さくなると、送電装置200が図7(A)のような振幅変調を行ってデータを送信しても、受電部10がそのデータを検出できなくなってしまい、データの受信エラーが発生する。受電部10から送電装置200への送信データについても同様である。
そこで、これを解決するために、データ通信期間において、キャパシターC1へ電荷蓄積を制限又は停止する手法を採用する。この場合に本実施形態では、このデータ通信期間において、昇圧回路170の起動動作も行うようにする。具体的には、システムデバイス100が、送電装置200とのデータ通信期間において、昇圧回路170の昇圧動作の起動を指示する。そして、このデータ通信期間において、第1の蓄積制御部30によるキャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止する。
このようにすれば、結果的に、昇圧回路170の起動期間においても、キャパシターC1へ電荷蓄積が制限又は停止されるようになる。従って、キャパシターC1への蓄電による電力消費を原因として通信障害が発生する事態の抑制と、昇圧回路170の起動期間で多くの電力が消費されてシステムダウン等の不具合が発生する事態の抑制を、両立して実現できるようになる。
図8は、この場合の本実施形態の手法を説明する動作フロー図である。まず、送電装置200が送電を開始すると(S161)、受電部10が受電して(S171)、回路装置90が、受電した電力に基づく電源をシステムデバイス100に供給する(S181)。これによりシステムデバイス100が起動する(S191)。
次に回路装置90は、受電部10から受電した電力に基づいて、キャパシターに電荷を蓄積する蓄電動作を開始する(S182)。
一方、回路装置90からの電源供給により起動したシステムデバイス100は、送電装置200との受電部10を介したデータ通信を開始する(S192)。すると、回路装置90は、キャパシターC1への電荷蓄積を制限又は停止する(S183)。またシステムデバイス100は、昇圧動作の起動指示を昇圧回路170に対して行い(S193)、これにより昇圧回路170の昇圧動作が起動する(S201)。即ち、昇圧回路170が、昇圧用のクロック信号を出力して、チャージポンプ用キャパシターの充放電を開始する。そして、システムデバイス100は送電装置200との間のデータ通信を実行する(S194)。このデータ通信は、図1のシステムデバイス100のホストI/F110と受電部10のホストI/F18との間のデータ通信(S194、S172)と、図7(A)で説明した受電部10と送電装置200との間のRF通信(S172、S162)とにより実現される。RF通信は、電磁誘導による無線通信である。このデータ通信により、表示部150に画像を表示するための表示データが通信される。
そして、昇圧動作の起動期間が終了し(S202)、データ通信が終了すると(S195)、システムデバイス100は、電荷蓄積の制限又は停止の解除指示を行う(S196)。これにより回路装置90は、キャパシターC1への電荷蓄積の制限又は停止を解除し(S184)、キャパシターC1への蓄電を再開する(S185)。
そして回路装置90は、蓄電が終了すると、蓄電の終了をシステムデバイス100に対して通知する(S186)。すると、システムデバイス100は、蓄電終了の通知処理を行う(S197)。具体的には、蓄電が終了したことを、システムデバイス100と受電部10との間のホスト通信や受電部10と送電装置200との間のRF通信により、送電装置200に対して通知する(S173、S163)。この際に、システムデバイス100は、例えば、蓄電の終了のみならず、データ通信の終了についても、送電装置200に対して通知する。そして送電装置200は、このように蓄電やデータ通信が適正に終了した場合に、電磁誘導による送電を停止する(S164)。
一方、回路装置90は、蓄電の終了後、キャパシターC1(C2)の蓄積電力による給電をシステムデバイス100に対して行う(S187)。即ち、蓄積電荷に基づく電源をシステムデバイス100に対して供給する。これにより、送電装置200の送電停止(S164)の後においても、システムデバイス100は、キャパシターC1(C2)の蓄積電荷に基づく電源により動作できるようになる。そしてシステムデバイス100は、この蓄積電荷による電源に基づいて動作して、表示部150の表示書き換え処理を実行する(S198)。
以上のようにすれば、キャパシターへの蓄電により受電部10が受電した電力が消費されてしまい、データ通信に通信障害が発生してしまう事態を効果的に防止できる。即ち、図7(B)では、データ通信期間においても蓄電は継続して行われているため、この蓄電による電力消費が原因で、コイル端電圧信号の振幅が低下してしまい、図7(A)のデータ通信に通信障害が発生してしまう。
この点、本実施形態の手法によれば、図8のS183に示すように、データ通信期間においてキャパシターC1への蓄電が制限又は停止される。従って、データ通信期間においても、コイル端電圧信号の振幅が維持されるため、通信障害が防止され、図7(A)のようなRF通信によるデータ通信を適正に実行できるようになる。従って、例えばICカードに適用した場合には、表示データの通信障害が原因となって、表示部150に画像を表示できなくなったり、或いは、誤った画像が表示されてしまうなどの事態を効果的に抑制できる。
また図8では、このようなデータ通信期間における蓄電の制限又は停止を有効活用して、昇圧回路170の起動期間においても、キャパシターC1への蓄電が制限又は停止されるようにしている。具体的には、システムデバイス100は、送電装置200とのデータ通信期間において、昇圧回路170の昇圧動作の起動を指示する(S193)。そして、回路装置90の制御部70は、送電装置200とのデータ通信期間において、キャパシターC1への蓄電を制限又は停止する制御を行う。このようにすれば、昇圧回路170の起動期間が、データ通信期間内に含まれるようになる。従って、データ通信期間において蓄電を制限又は停止することで、昇圧回路170の起動期間においても、キャパシターC1への蓄電が制限又は停止されるようになる。従って、キャパシターC1への蓄電を要因とするデータ通信の通信障害の発生と、昇圧回路170の起動期間での電力消費によるシステムダウン等の不具合の発生の両方を、簡素な処理で効果的に抑制することが可能になる。
なお本実施形態では、昇圧回路170等の電源供給先デバイスの起動期間の長さをTACとし、キャパシターC1(第1の電荷蓄積部)に対する電荷蓄積の期間の長さをTC1とした場合に、図8に示すように、TAC<TC1の関係が成り立っている。ここで起動期間の長さTACは、S201のように電源供給先デバイスの起動が開始してから、S202のように起動が終了するまでの期間の長さに対応する。また、電荷蓄積期間の長さTC1は、S182に示すように蓄電が開始してから、S186に示すように蓄電が終了するまでの期間の長さに対応する。このTC1の期間は、蓄電が制限又は停止している期間を含んでいる。
このように、起動期間(データ通信期間)の長さTACは、電荷蓄積期間の長さTC1に比べて十分に短い。従って、本実施形態の手法のように、起動期間中(データ通信期間中)にキャパシターC1への蓄電を制限又は停止しても、電荷蓄積期間を十分に確保でき、蓄積電荷に基づいて、蓄電終了後に表示部150の表示書き換えを十分に実行することが可能になる。
図9に昇圧回路170の構成例を示す。なお昇圧回路170は図9の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また、昇圧回路170としてチャージポンプ方式以外の方式の昇圧回路を用いることも可能である。
図9の昇圧回路170は、レギュレーター172、ダブラー174、ブースター176、レギュレーター178を含む。レギュレーター172は、回路装置90の電源供給部50から供給された電源電圧VDDのレギュレート(降圧)を行って、レギュレート電圧VE1を出力する。
ダブラー174は、レギュレーター172からのレギュレート電圧VE1を受けて、チャージポンプ用キャパシターCDを用いて2倍昇圧のチャージポンプ動作を行って、昇圧電圧VE2を出力する。
ブースター176は、ダブラー174からの昇圧電圧VE2を受けて、チャージポンプ用キャパシターCB1、CB2を用いて6倍昇圧のチャージポンプ動作を行って、昇圧電圧VE5を出力する。なお、
レギュレーター178は、ブースター176からの昇圧電圧VE5のレギュレート(降圧)を行って、昇圧電源電圧VEPDを出力する。この昇圧電源電圧VEPDは、表示用の電源電圧であり、表示部150に供給される。後述する表示部150のドライバー回路は、この昇圧電源電圧VEPDを用いて、表示パネルのデータ線や走査線の駆動電圧を生成することになる。なおCE1〜CE5は電圧VE1〜VE5の電位安定化用のキャパシターである。
図9の昇圧回路170では、その起動期間において、チャージポンプ用キャパシターCD、CB1、CB2や電位安定化用キャパシターCE1〜CE5を、安定した電圧まで充電するのに、多くの電力を消費する。
この点。本実施形態によれば、このような昇圧回路170の起動期間において、図5(A)のB11に示すようにキャパシターC1への蓄電が制限又は停止される。従って、昇圧回路170は、図5(A)のB12、B13の経路で電力が供給されて動作して、昇圧動作を起動することが可能になる。この場合に、キャパシターC1の蓄電が制限又は停止されることで、受電部10からの受電電力の大部分が、図5(A)のB12、B13の経路で供給されるようになる。従って、昇圧回路170は、高い蓄電能力でキャパシターCD、CB1、CB2を充電して、昇圧動作を起動できるようになるため、起動期間を短い時間で終了させることが可能になる。
4.電流制御
図10に、本実施形態の回路装置の第2の構成例を示す。なお図1と同様の部分については、同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図10の第2の構成例では、電源管理部20が電流制御部32を含む。具体的には、電源管理部20の第1の蓄積制御部30が電流制御部32を含む。この電流制御部32は、制御部70の制御に基づいて、キャパシターC1への充電電流を制御する。例えば電流制御部32は、電磁誘導により電力を受電する受電部10からの電力を受けて、キャパシターC1に充電電流を流す制御を行う。即ち、電流値が可変の充電電流をキャパシターC1に流す制御を行って、キャパシターC1を充電する。
制御部70は、電流制御部32を制御して、充電電流を制御する。例えば制御部70は、充電電流の制御信号を電流制御部32に対して出力することで、充電電流の大きさ(電流値)を制御する。例えば制御部70は、電荷蓄積ノードNA1の充電電圧を測定し、測定結果に基づいて、nビットの制御信号の各ビットの信号レベルを設定することで、電流制御部32が流す充電電流の大きさを制御する。
そして制御部70は、キャパシターC1(電荷蓄積部)の充電電圧が高くなるほど充電電流を小さくする制御を、電流制御部32に対して行う。例えば制御部70は、充電開始時には大きな第1の電流値の充電電流でキャパシターC1を充電するように、電流制御部32を制御する。そして、充電電圧が第1の電圧値を超えた場合には、第1の電流値よりも小さな第2の電流値の充電電流でキャパシターC1を充電するように、電流制御部32を制御する。更に、充電電圧が、第1の電圧値よりも大きな第2の電圧値を超えた場合には、第2の電流値よりも小さな第3の電流値の充電電流でキャパシターC1を充電するように、電流制御部32を制御する。このように制御部70は、キャパシターC1の充電電圧(ノードNA1の電圧)が高くなるにつれて、充電電流を例えば段階的に小さくする制御を行う。
この場合に、制御部70は、昇圧回路170等の電源供給先デバイスの起動期間や、送電装置200とのデータ通信の期間においては、キャパシターC1(電荷蓄積部)への充電電流を制限又は停止する制御を、電流制御部32に対して行う。これにより、図6のS83や図8のS183で説明した、蓄電を制限又は停止する制御を実現できる。即ち、この第1の構成例では、充電電流を制御する電流制御部32の機能を有効活用して、蓄電を制限又は停止する制御を実現している。
なお制御部70は、キャパシターC1の充電電圧を特定する電圧情報を測定し、測定された電圧情報に基づいて充電電流の制御を行う。
例えば図10に示すように制御部70は、A/D変換部72、タイマー74、演算処理部76を含む。A/D変換部72(電圧情報取得部)は、キャパシターC1の充電電圧をA/D変換することで、充電電圧の電圧情報を測定(取得)する。演算処理部76は、測定された電圧情報と、タイマー74により設定される時間情報に基づいて、充電電流の値を決める演算処理を行って、充電電流の制御信号を電流制御部32に出力する。
更に具体的には、制御部70(演算処理部76)は、測定された電圧情報に基づいて、キャパシターC1(電荷蓄積部)の蓄積電荷量を求める。そして、求められた蓄積電荷量と、電源供給先デバイス(システムデバイス100等)を動作させるのに必要なトータル電荷量とに基づいて、ターゲット電荷量を求める。そして、キャパシターC1の蓄積電荷量が、少なくともターゲット電荷量に達するまで、キャパシターC1に充電電流を流す制御を行う。
次に、図10の第2の構成例による充電手法について詳細に説明する。図11(A)は、無接点電力伝送における電圧と電流の関係を示す図である。図11(A)のVIは、受電部10の出力電圧であり、IIは出力電流である。この電圧VIは、二次コイルL2のコイル端電圧を、例えば受電部10が有する整流回路により整流することで得られる電圧(DC電圧)である。
図11(A)に示すように、電磁誘導で受電するシステムにおいては、電流IIが小さければ高い電圧VIを確保できるが、大きな電流IIを取り出そうとすると、電圧VIが低下してしまうという特性がある。
一方、電源供給先デバイスの1つであるシステムデバイス100には、動作下限電圧が規定されている。このため、キャパシター(C1)に蓄積された電荷に基づく電源をシステムデバイス100に供給する場合には、供給される電源電圧が動作下限電圧を下回らないようにする必要がある。
そこで本実施形態では、受電部10の受電終了後、キャパシターの蓄積電荷に基づく電源でシステムデバイス100等を動作させる場合に、キャパシターの充電電圧が動作下限電圧を下回らないような量の電荷を、キャパシターに充電する手法を採用している。
ところが、このような手法を採用した場合に、蓄電用のキャパシターの容量が大きいと、無駄な蓄電が行われる事態が生じてしまうことが判明した。
例えば図11(B)において、キャパシターの容量が大きい場合には、動作下限電圧の充電電圧を確保するために、電荷量QA1が必要になる。そして、受電後の電源供給先デバイスの動作に必要な電荷量QA2を、キャパシターに蓄電すれば、電源供給先デバイスの動作期間において、キャパシターの充電電圧を動作下限電圧以上に確保することができる。これにより、受電終了後の動作期間の間、キャパシターの蓄積電荷に基づいて電源供給先デバイスを無事に動作させることが可能になる。
そして、図11(B)において、キャパシターの容量が小さい場合には、動作下限電圧の充電電圧を確保するために、電荷量QB1が必要になる。そして、受電後の電源供給先デバイスの動作に必要な電荷量QB2を、キャパシターに蓄電すれば、受電終了後の動作期間の間、キャパシターの蓄積電荷に基づいて電源供給先デバイスを無事に動作させることが可能になる。
ここで、図11(B)に示すように、動作下限電圧を確保するための電荷量については、QA1>QB1の関係が成り立つ。受電後の動作に必要な電荷量については、QA2=QB2の関係が成り立つ。そして、動作下限電圧の確保に必要な電荷量QA1、QB1は、動作時には使用されない余剰な電力になるため、この電荷量が多いと蓄電電力の無駄になる。従って、このような無駄を軽減し、蓄電の効率化を図るためには、キャパシターの容量はなるべく小さい方が望ましい。
一方、図11(B)から明らかなように、キャパシターの容量を小さくすると、受電後の動作に必要な電荷量QB2を蓄電するために、充電電圧を高くする必要がある。即ち、無駄な蓄電電力を軽減して、蓄電の効率化を図るためには、キャパシターの容量を小さくして、充電電圧を高くする手法が望ましい。
ところが、電磁誘導で受電するシステムにおいては、電圧VIと電流IIの間に図11(A)の関係が成り立つ。従って、キャパシターの容量を小さくした場合に、キャパシターの充電電圧を高くできなくなり、受電後の動作に必要な電荷量QB2をキャパシターに蓄電することが難しくなるという課題がある。
このような課題を解決するために、図10の第2の構成例では、図12(A)に示すように、キャパシターの充電電圧が高くなるほど、充電電流を小さくする充電手法を採用している。
このようにすれば図12(B)に示すように、受電部側(コイル側)の電圧−電流特性(VI−II特性)と、キャパシター側の充電電圧−充電電流特性(VCH−ICH特性)をマッチングさせることが可能になる。従って、図11(B)に示すように、キャパシターの容量を小さくして、蓄電の効率化と動作下限電圧の確保を両立できるようになる。また、キャパシターの容量を小さくすることで、ICカード190のキャパシターの実装スペースを小さくすることが可能になり、装置の小型化にも貢献できるようになる。
次に、本実施形態の回路装置の更に詳細な構成例について、図13等を用いて説明する。図13では、図10の第1の蓄積制御部30は、電流制御部32により実現され、第2の蓄積制御部40は、起動用レギュレーター42により実現される。
電流制御部32は、受電部10を構成する整流回路12からの電圧VINを受けて、逆流防止用のダイオードDI3を介して、充電電流を、蓄積ノードNA1に出力する。
起動用のレギュレーター42は、整流回路12からの電圧VINを受けて、電圧調整後の電圧VA2を、蓄積ノードNA2に出力する。例えば電圧調整により定電圧VA2を出力する。具体的には、例えば最大で15V程度の電圧が、レギュレーター42により例えば4.0V程度の定電圧VA2に降圧されて、起動用のキャパシターC2への電荷蓄積が行われる。
図13では、電源供給部50は、第1、第2のダイオードDI1、DI2を含む。ここでDI1は、電流制御部32の蓄積ノードNA1と接続ノードNCとの間に設けられ、蓄積ノードNA1から接続ノードNCへと向かう方向を順方向とするダイオードである。また、DI2は、起動用レギュレーター42(第2の電荷蓄積部40)の蓄積ノードNA2と接続ノードNCとの間に設けられ、蓄積ノードNA2から接続ノードNCへと向かう方向を順方向とするダイオードである。そして電源供給部50は、接続ノードNCの電圧に基づいてシステムデバイス100に対して電源を供給することになる。
このようなダイオードDI1、DI2により電源供給部50を構成することで、接続ノードNCから蓄積ノードNA1、NA2への電流の逆流を防止できると共に、蓄積ノードNA1、NA2の電圧VA1、VA2を、電源電圧VCとして接続ノードNCに出力できるようになる。
図14(A)は、図13の回路装置の動作を説明するための電圧波形図である。
受電が開始され、受電部10からの電圧VINが供給されると、起動用のキャパシターC2の容量は小さいため、D1に示すように、キャパシターC2の蓄積ノードNA2の電圧VA2は早期に立ち上がる。そして、D2に示すようにシステムデバイス100の動作下限電圧に対応するしきい値電圧VTHを超えると、電圧VA2に対応する電圧が、電源電圧VCとしてシステムデバイス100に供給される。具体的には、ダイオードDI1の順方向電圧の分だけVA2から降下した電圧がVCとして供給される。
一方、蓄電用のキャパシターC1の容量は大きいため、D3に示すように、キャパシターC1の蓄積ノードNA1の電圧VA1が徐々に立ち上がる。そして電圧VA1が立ち上がると、電圧VA1に対応する電圧が、電源電圧VCとしてシステムデバイス100に供給される。具体的には、ダイオードDI1の順方向電圧の分だけVA1から降下した電圧がVCとして供給される。
受電開始後、受電期間が終了すると、キャパシターC1、C2の電荷が放電されるため、D4に示すように電源電圧VCは徐々に低下する。この場合に本実施形態では、キャパシターC1の容量は十分に大きいため、長い時間(例えば1秒)の表示書き換え期間を確保することが可能になる。
なお図14(B)は、蓄積電流と放電電流の関係を示す図である。例えば受電期間においては、E1に示すようにキャパシターに電荷が蓄積される。またE2に示すように、システム起動等のためにキャパシターから電荷が放電される。そして表示書き換え期間では、E3に示すようにキャパシターから電荷が放電され、この放電された電荷に基づいて、システムデバイス100によるEPDの表示書き換え処理が行われることになる。
図15に、電流制御部32の詳細な構成例を示す。この電流制御部32は、演算増幅器OP1、OP2、トランジスターTB1〜TB5、抵抗RB1〜RB7、RCHを含む。
トランジスターTB1、TB2、TB3は、制御部70からの制御信号ICTによりオン・オフ制御される。そして、抵抗RB1、RB2、RB3の各々の一端は、トランジスターTB1、TB2、TB3の各々に対して接続される。そして抵抗RB1、RB2、RB3の他端は、ノードNB1に共通接続される。
演算増幅器OP1の反転入力端子には、基準電圧VRが入力され、非反転入力端子にはノードNB1が接続される。そして、演算増幅器OP1の出力は、ノードNB2とNB1の間に設けられるトランジスターTB4のゲートに接続される。これにより、ノードNB1の電圧VB1が、基準電圧VRに設定されるように、演算増幅器OP1が動作することになる。そして、このようにノードNB1が、定電圧である基準電圧VR(例えば1.25V)に設定されれば、制御部70の制御によりトランジスターTB1、TB2、TB3をオン・オフ制御することで、抵抗RB4、RB5に流れる電流IBを可変に制御できるようになる。
また図15では、演算増幅器OP2の非反転入力端子はノードNB2に接続され、反転入力端子はノードNB3に設定される。そして、演算増幅器OP2の出力は、ノードNIとNB4の間に設けられたトランジスターTB5のゲートに接続される。これにより、ノードNB2の電圧VB2とノードNB3の電圧VB3が等しくなるように、演算増幅器OP2が動作することになる。即ち、VB2=VB3になるように演算増幅器OP2が動作する。
そして、RB6、RB7はダミーの抵抗であり、ノードNB5からNB3に対して電流は流れない。このため、抵抗RB6、RB7の両端の電圧は等しくなり、VB5=VB3=VB2になる。
また、抵抗RB4、RB5の抵抗値を、同じ記号であるRB4、RB5で表せば、VB4=VB2+IB×(RB4+RB5)になる。
従って、抵抗RCHの両端に対しては、VB4−VB5=VB2+IB×(RB4+RB5)−VB5=VB2+IB×(RB4+RB5)−VB2=IB×(RB4+RB5)の電圧差が印加されることになる。従って、抵抗RCHに流れる電流ICHは、ICH=IB×{(RB4+RB5)/RCH}となり、この電流ICHが、充電電流としてキャパシターC1に流れて、充電動作が行われるようになる。
そして、上述のように電流IBは、制御部70からの制御信号ICT(ICT1〜ICT3)により可変に制御される。従って、充電電流ICH=IB×{(RB4+RB5)/RCH}も、制御信号ICTにより可変に制御されるようになる。
例えば図15において、抵抗RB1、RB2、RB3は、各々、例えば5KΩ、10KΩ、20KΩというように異なった抵抗値になっている。そして、例えばトランジスターTB1、TB3がオフで、トランジスターTB2がオンになるような制御信号ICTを、制御部70が出力したとする。すると、ノードNB1の電圧はVB1=VR=1.25Vになるため、IB=125μAになる。そして、RCH=RB4+RB5とすると、ICH=125μAの充電電流が、キャパシターCに流れるようになる。
このように図15の構成の電流制御部32によれば、制御部70からの制御信号ICTによりトランジスターTB1〜TB3のオン・オフを制御することで、充電電流ICHを可変に制御できるようになる。これにより、図12(A)、図12(B)で説明したような本実施形態の充電手法の実現が可能になる。そして図15の構成によれば、抵抗RCHの両端の電圧差を小さな電圧差に設定できるため、少ない電圧降下で充電電流ICHを可変に制御できるようになり、充電効率の向上等を図れる。
そして本実施形態では、図6のS83、図8のS183に示すキャパシターの蓄電の制限又は停止についても、図15のトランジスターTB1〜TB3のオン・オフ制御により実現できる。例えば蓄電を停止する場合には、制御部70からの制御信号ICTによりトランジスターTB1〜TB3の全てをオフにすればよい。また、蓄電を制限する場合には、例えば、低い抵抗値の抵抗RB1、RB2に接続されるトランジスターTB1、TB2をオフにして、高い抵抗値の抵抗RB3に接続されるトランジスターTB3をオンにするというような制御を行えばよい。
このように図15の構成の電流制御部32によれば、充電電流の制御のために用いられるトランジスターTB1〜TB3を有効活用して、図6のS83、図8のS183に示すキャパシターの蓄電の制限又は停止も実現できるという利点がある。
5.システムデバイス
図16にシステムデバイス100の詳細な構成例を示す。システムデバイス100は、ホストI/F110、処理部120、レジスター部130、波形情報メモリー140、画像メモリー142、ワークメモリー144を含む。
ホストI/F110は、ホストとなる相手側機器(送電装置、端末装置、充電器)との間で情報の送受信を行うためのインターフェースである。このホストI/F110は、制御部70を介して受電部10側のホストI/F18と接続される。これにより、送電装置200(相手側機器)との間での情報の送受信が可能になる。
処理部120は、表示部150の表示制御処理や、システムの各種の制御処理を行う。この処理部120は、例えばプロセッサーやゲートアレイ回路等により実現できる。
処理部120により表示制御される表示部150は、表示パネル152(電気光学パネル)と、表示パネル152を駆動する回路であるドライバー回路154を有する。ドライバー回路154は、表示パネル152のデータ線(セグメント電極)や走査線(コモン電極)を駆動する。表示パネル152は、例えば電気泳動素子等の表示素子により実現される。
レジスター部130は、制御レジスターやステータスレジスターなどの各種のレジスターを有する。波形情報メモリー140は、EPDを駆動するためのウェーブフォーム情報やインストラクションコード情報などを記憶する。この波形情報メモリー140は、例えばデータの書き換え・消去が可能な不揮発性メモリー(例えばフラッシュメモリー)などにより実現できる。画像メモリー142(VRAM)は、表示パネル152に表示される例えば1画面分の画像データを記憶する。ワークメモリー144は処理部120等のワーク領域となるメモリーである。これらの画像メモリー142、ワークメモリー144は、SRAMなどのRAMにより実現できる。
図17(A)に表示パネル152の構成例を示す。この表示パネル152は、素子基板300と、対向基板310と、素子基板300と対向基板310との間に設けられた電気泳動層320を含む。この電気泳動層320(電気泳動シート)は、電気泳動物質を有する多数のマイクロカプセル322により構成される。このマイクロカプセル322は、例えば正に帯電した黒色の正帯電粒子(電気泳動物質)と、負に帯電した白色の負帯電粒子(電気泳動物質)を分散液中に分散させ、この分散液を微少なカプセルに封入することで実現される。
素子基板300はガラスや透明樹脂により形成される。この素子基板300には、複数のデータ線(セグメント電極)や、複数の走査線(共通電極)や、各画素電極が各データ線と各走査線の交差位置に設けられる複数の画素電極が形成される。またTFT(薄膜トランジスター)等により形成される各スイッチ素子が各画素電極に接続される複数のスイッチ素子が設けられる。またデータ線を駆動するデータドライバーや、走査線を駆動する走査ドライバーが設けられる。
対向基板310には、共通電極(透明電極)が形成され、この共通電極にはコモン電圧VCOM(対向電圧)が供給される。なお透明樹脂層に透明な導電材料で共通電極を形成し、この上に接着剤等を塗布して電気泳動層を接着することで、電気泳動シートを形成してもよい。
図17(A)の表示パネル152では、画素電極と共通電極の間に電界が印加されると、マイクロカプセル322に封入された正帯電粒子(黒色)及び負帯電粒子(白色)には、その帯電の正負に応じた方向に静電気力が作用する。例えば画素電極の方が共通電極よりも高電位である画素電極上では、共通電極側に正帯電粒子(黒色)が移動するため、その画素は黒表示になる。
次に、図16の波形情報メモリー140に記憶されるウェーブフォーム情報について説明する。ここではEPD(電気泳動表示部)のウェーブフォーム情報を例にとり説明する。
例えば液晶表示装置においては、図17(B)のF1に示すように、画素の階調を第1の階調から第2の階調に変化させる場合には、データ線(ソース線)のデータ電圧も、第1の階調に対応するデータ電圧VG1から第2の階調に対応するデータ電圧VG2へと、1フレームの期間で変化する。
一方、EPDにおいては、図17(C)のF2に示すように、画素の階調を第1の階調から第2の階調に変化させる場合に、データ線のデータ電圧は、複数フレームに亘って変化する。例えば白に近い第1の階調から黒に近い第2の階調に変化させる場合に、複数フレームに亘って白、黒の表示を繰り返して、画素の階調を最終的な第2の階調に変化させる。例えば図17(C)のウェーブフォームでは、初めの3フレームではデータ電圧はVAに設定され、次の3フレームでは−VAに設定されるというように、データ電圧が複数フレームに亘って変化する。なお、ウェーブフォームは、現在の表示状態での画素の階調と、次の表示状態での画素の階調との組み合わせに依っても異なった形になる。
波形情報メモリー140は、図17(C)のF2に示すようなウェーブフォーム情報を記憶する。処理部120は、画像メモリー142に記憶される画像データ(各画素の階調データ)と、波形情報メモリー140に記憶されるウェーブフォーム情報に基づいて、各フレームでのEPDの駆動電圧を決定して、EPDの表示制御処理を行う。
そして図17(B)のF1と図17(C)のF2を比較すれば明らかなように、EPDでは、液晶表示装置等に比べて表示情報の書き換えに長い時間を要する。
この点、本実施形態では前述したように、蓄電用の大容量のキャパシターC1を設け、EPDの少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、受電期間TRの間にキャパシターC1に蓄電する。
また、起動用の小容量のキャパシターC2を設けることで、早期にシステムの電源がオンになる。これにより、処理部120は、ホストI/F110を介して、ホストである相手側機器(送電装置、端末装置)から、表示情報などのデータを受信する。
そして処理部120は、受電後の表示書き換え期間TCにおいて、EPDの表示書き換え処理を行う。即ち、ホストI/F110を介して受信され、画像メモリー142に書き込まれた表示情報と、波形情報メモリー140に記憶されるウェーブフォーム情報に基づいて、図17(C)のF2に示すようなウェーブフォームで、EPDの表示書き換え処理を行う。
このようにすることで、表示書き換え期間が長いEPDであっても、短い受電期間TRで受電した電荷に基づいて、表示情報の書き換えを実行できるようになる。従って、例えばタッチ&ゴーの操作が要求される非接触のICカードに対して、無電源状態で表示情報を保持できるEPDの表示部150を組み込むことが可能になり、これまでに無いタイプのICカードを実現することが可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電荷蓄積部、第2の電荷蓄積部、無接点電力伝送等)と共に記載された用語(蓄電用キャパシター、起動用キャパシター、電磁誘導等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態では、電磁誘導を例にとって説明したが、本発明ではこれに限らず他の無接点電力伝送方式も適用可能である。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また回路装置、電子機器の構成・動作や、電荷蓄積の制限・停止手法、電荷の蓄積手法、電源供給手法、通信処理手法等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。