JP2013209018A - 船舶のハイブリッド運航システムおよびハイブリッド運航船 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】船舶のハイブリッド運航システム100は、主機関1と、プロペラ2と、と、発電手段兼補助駆動手段3で発電された電力を蓄える蓄電手段4、5と、主機関1の運転状態と運航計画に基づいてエネルギー収支計画を立案する立案手段6と、エネルギー収支計画に基づいて発電手段兼補助駆動手段3から蓄電手段4、5への充電および蓄電手段4、5から発電手段兼補助駆動手段3への放電を制御する蓄電制御手段7を備えている。
【選択図】図1
Description
船舶の運航時におけるエネルギー効率の向上は、省エネルギー(以下、適宜「省エネ」)という。)運航、ひいてはGHG(温室効果ガス)排出量削減に大きく貢献することから、従来、多くの取り組みが行われてきた(例えば、特許文献1〜6)。
このように、同文献には、舶用電気推進装置として、原動機における出力の制御と、キャパシタにおける蓄電の制御とを気象海象予測値および運航実績値に基づいて総合的に行うことにより船舶を最適状態で運航すべく、気象海象予測電子データ受信器および運航データベースからの情報に基づいて原動機の制御およびキャパシタの制御を行う最適運航制御システムが記載されている。
特許文献5に記載の発明は、定時運航船の運航管理の自動化を目的とするものであり、特に船舶の運航効率の向上に資するものではない。
特許文献6に記載の発明は、船舶を最適状態で運航して定時入港を行うよう制御するものである。しかし、同文献は、定時入港を行う定期船を主体としたものであるため運航データベースも運航実績値に基づくものであり、また、船舶が入港した後に必要となる例えば荷役に必要なエネルギーも何ら考慮されてない。
このように、従来、1航海全体のエネルギー需給バランスを考慮した上で、エネルギー効率の最適化を図ることは行われていない。特に、不定期船を想定した1航海全体のエネルギー効率の最適化を図ることは全く行われていない。
そこで、本発明は、船が目的地に到達した後の例えば荷役の際のエネルギー需給をも含んだ1航海全体のエネルギー需給バランスを最適化することにより、不定期船でも省エネ効果を実現できる船舶のハイブリッド運航システムおよびハイブリッド運航船を提供することを目的としている。
蓄電制御手段が1航海の全体の運航計画を考慮して立案されたエネルギー収支計画に基づいて蓄電手段の充電および放電を行うことにより、1航海の全体としてのエネルギー効率を最適化することができる。ここで「運航計画」とは、港内操船および出港した後の通常航海のみでなく、船舶が目的地に到着した停泊後におけるエネルギー消費をもふまえた計画をいう。例えば、資源やセメント等を運搬するいわゆる不定期船では、船が目的地に到達した後の荷揚げに要するエネルギーをも踏まえたうえ、立案手段により運航計画が立案される。
上記の構成により、立案手段が海象と気象に基づいて主機関に及ぶ外力を精度良く推定するこができる。
主機関を所定の出力範囲で運転することにより、エネルギー効率の良好なものとすることができる。
上記の構成により、出力検出手段が検出した主機関の運転状態の検出結果を用いて、蓄電制御手段が充電および放電を制御することができる。
上記の構成により、主機関によるエネルギー効率の悪い領域における運転を防止することができる。
上記の構成により、主機関の港内における運転によって生じる排気ガスや騒音などの問題を解消することができる。
上記の構成により、停泊後に機関を運転し、発電機によって荷役に要する電気を発生させる必要がなくせるかその総量を減らすことができ、比較的容量の小さな発電機の搭載で済むことから船体重量と機関スペースを節約することができる。
上記の構成により、推進手段が主機関および補助推進手段により駆動力を水に伝える手段を兼ねることができる。
上記の構成により、発電手段および駆動モータを共通にすることができる。
上記の構成により性質の異なる蓄電手段を併用することができる。また、2系統の蓄電手段を設けることとすれば、充電と放電とを切り分けて行うことができる。
上記の構成により、発生した電力の大きさや時間に応じた適切な蓄電手段に電力を蓄え、必要な電力の大きさや時間に応じた適切な蓄電手段から電力を供給することができる。
上記の構成により、船舶において用いられる電力の負荷に応じて、電力の用途に応じた適切な蓄電手段から電力を供給することができる。さらに、例えば補助推進手段に電力を供給すれば、主機関の負荷変動を抑制することができ、機関効率の向上を図ることができる。
上記のように、可変ピッチプロペラと蓄電制御手段とが共働するように、すなわち相互に関連するようにこれらを制御すれば、主機関による推進手段の駆動と蓄電制御手段よる充電放電とを関連させて制御することができる。
また立案手段は、さらに海象と気象を考慮してエネルギー収支計画を精度よく立案可能である。
主機関をエネルギー効率の良好な所定の出力範囲で運転することとすれば、省エネルギー効果をさらに向上させることが可能となる。主機関が所定の出力範囲内で運転され余力のあるときに蓄電手段に余剰電力を蓄え、所定の出力範囲外で蓄電手段から放電を行って補助駆動手段で駆動することにより、主機関をエネルギー効率の良好な所定の出力範囲内に戻したり、良好な所定の出力範囲の近傍で運転することが可能となる。
主機関の出力の検出結果を蓄電制御手段による制御に用いる構成、所定の出力範囲以下において主機関の運転を停止する構成とすること、および、主機関の運転停止を港近傍で行う構成とすることは、主機関の一層効率的な運転、および港内における排気ガスや騒音の問題の解決等にも有効である。
停泊後に機関を運転する必要がないように、停泊後の荷役に必要な電力を残すよう補助推進手段への放電を制御すれば、省エネルギー効果の向上および港での機関の運転による問題の解消にも有効である。
推進手段が主機関および補助推進手段の駆動力を伝える手段を兼ねる構成、および発電手段および駆動モータを共通のものとする構成によれば、ハイブリッド運航システムの構成を簡略化することが可能である。
性質の異なる蓄電手段を併用する構成によれば、適切な蓄電手段を用いて充電および放電を行うことが可能となる。例えば、蓄電手段として蓄電池とキャパシタとを併用すれば、電力の大きさや時間当たりの電力に応じて適切な蓄電手段を用いることができる。また、電力負荷変化に応じて放電を制御することにより、用途に応じた適切な蓄電手段から電力を供給して、省エネルギー効果をさらに向上させることが可能となる。
可変ピッチプロペラと蓄電制御手段とが共働するよう制御すれば、主機関による推進手段の駆動と蓄電制御とを調整して、省エネルギー効果をさらに向上させることが可能となる。さらに補助推進手段と蓄電制御手段とが共働するよう制御すれば主機関の負荷変動を抑制することができ機関効率の向上を図ることができ、省エネルギー効果の一層の向上につながる。
本発明のハイブリッド運航船は、本発明の船舶のハイブリッドシステムを搭載しているから、上述した船舶のハイブリッドシステムと同様の効果を奏することが可能である。
このように、本発明は、1航海全体のエネルギー需給バランスを考慮することで、1航海全体において消費されるエネルギー全体としての最適化を図り、大きな省エネルギー効果を実現するものである。
図2は最適な航路を決定する方法を説明する説明図である。同図に示すように、船舶による荷物運搬の運航計画を立てる際、運航スケジュールを確保し、遅延により生じる責任を回避することが重視される。すなわち、荷主からの「遅れない」要請に応えることが目的とされる。このため、気象海象の不確実性を踏まえた上で、航海速力を一定として最短航路を選択することが、従来の運航の実態であった。この結果、余裕を持って目的地に到達して船舶が沖待ちをするという事態が生じる。
そこで、気象・海象予測情報を踏まえた上で、最適航海計画(最適航路、最適船速)を立てることにより、定時運航におけるスケジュールの確保や、燃料消費量の削減を図ることも行われる。
しかし、従来、出発地から目的地までの航海において、その場で局所的なエネルギー効率の最適化が図られていたに過ぎない。
荷積みは、一般に陸上の設備を用いて行われる。このため、荷積みのために主機関から大きな出力を得る必要はない。これに対して、荷揚げは、一般に船舶側の設備を用いて行われる。図3に示したセメントを運ぶ不定期船の例では、荷揚げにおいて最初の段階で非常に大きな出力を得る必要がある。
例えば、図3に破線で示したように、低い出力を維持すると同時に荷揚げに要するエネルギーを蓄えておき、荷揚げの際に蓄えたエネルギーを用いるというエネルギー収支計画を立案し、このエネルギー収支計画に基づいて電力の需給を制御する。このようにすれば、1航海全体のエネルギー需給バランスを最適化し、省エネルギー化を実現することができる。
この1航海全体のエネルギー需給バランスの最適化による省エネルギー化は、図3に示したように、目的地における荷役(荷揚げ)のために、通常航海に用いられる所定の出力範囲以上の大出力を発生させる必要がある場合に特に有効である。
プロペラ2は、主機関1により駆動される船体12を推進する推進手段であり、本実施形態では、主機関1に加えて、発電手段兼補助駆動手段3により駆動可能な構成となっている。また、プロペラ2として、その羽根のピッチを変化させることができる可変ピッチプロペラを用いてもよい。
また、発電手段兼補助駆動手段3は、主機関1よりも船首側(図1では右側)のプロペラ2の軸に設けられている。すなわち、発電手段兼補助駆動手段3とプロペラ2との間に主機関1が位置している。船舶においては、数年に一度、検査のために、プロペラ2の軸を船体12から抜き出す必要があるが、上述した位置に発電手段兼補助駆動手段3を設けることにより、プロペラ2の軸からの取り外しが容易になる。これにより、船舶検査の際に必要となるプロペラ2の軸抜き出しにも容易に対応することができる
ここで、「所定の出力範囲」とは、主機関1のエネルギー効率が良好となる出力範囲をいう。通常、主機関1「所定の出力範囲」は、その最大出力の40%〜85%程度である。また、「港近傍」とは、主機関を運転することによって港内において排気ガスや騒音などの問題が生じる範囲をいう。具体的には着岸バースから20船長以内の範囲をいう。
立案手段6は、以上のように構成され機能するものであるため、不定期船であっても1航海全体のエネルギー効率の最適化を図ることができる。
本実施形態の蓄電制御手段7は、主機関1の出力が所定の出力範囲内となるときに、プロペラ2の駆動に要する出力を超えたエネルギーを用いて余剰電力を蓄電手段4および/または蓄電手段5に蓄える。また、主機関1の出力が所定の出力範囲外となるときに、蓄電手段4および/または蓄電手段5から、発電手段兼補助駆動手段3に放電を行う。ただし、主機関1の出力が所定の出力範囲内であっても、プロペラ2の駆動に要する出力を超えたエネルギー(余力)がない場合、蓄電を行わない。
蓄電制御手段7は、主機関1の出力が1850KWより大きく(所定の出力範囲内)となるとき(X1、3〜5)、プロペラ2の駆動に要する出力を超えたエネルギーを用いて余剰電力を蓄電手段4および/または蓄電手段5に蓄える。ただし、この場合も、外力の影響により目標とする速度を実現できないときなどには、主機関1の出力を全てプロペラ2の駆動に用い、蓄電を行わない。また、主機関1の出力が1850KW未満となるとき(X2)においては、主機関1の運転を停止し、蓄電手段4および/または蓄電手段5の電力を用いて、発電手段兼補助駆動手段3によりプロペラ2を駆動する。これにより、主機関1をエネルギー効率の良好な範囲で運転しつつ、エネルギー収支計画に基づいて後に必要となるエネルギーを蓄電手段4、蓄電手段5に蓄えることができる。
また、プロペラ2として可変ピッチプロペラを用いる場合、その回転数とピッチ角を検出する手段を用いることができる。この場合、蓄電制御手段7は可変ピッチプロペラの制御と共働して、蓄電手段4、蓄電手段5の充電および放電を制御する。なお、上述したものではなく、軸馬力計等の主機関1の出力を直接計測する出力計を用いることもできる。
蓄電制御手段7は、蓄電手段4、蓄電手段5の充電および放電を制御するために、出力検出手段11の検出結果を用いる。
また、比較的時間間隔の長い電力負荷変化に対しては、発電のための余力があれば、エネルギー供給源として主機関1を用いて発電手段兼補助駆動手段3による発電を行い、発電した電力を保存するための装置として蓄電手段(蓄電池)4を用いる。そして、電力が必要な場合、蓄電手段(蓄電池)4から電力を供給する。
このように、電力負荷変化の大きなものを蓄電手段(キャパシタ)5で、小さなものを蓄電手段4(蓄電池)で対応する。ここで、蓄電手段4としては、例えば、リチウム二次電池があげられる。
そこで、本実施形態の船舶のハイブリッド運航システム100は、立案手段6により立案されたエネルギー収支計画に基づいて、航海中に蓄電手段4、蓄電手段5に蓄えた電力を主として用いて停泊後の荷役を行う。これにより、停泊前の余剰エネルギーを有効に活用することができる。したがって、1航海の全体としてのエネルギー効率を最適化し、省エネルギー化を実現できる。
本発明の第2の実施形態について、図5に基づいて以下に説明する。図5に示すように、本実施形態の船舶のハイブリッド運航システム200は、主機関1により駆動されるプロペラ2とは別のプロペラ22を駆動する補助駆動手段20を備えている。このため、発電手段兼補助駆動手段3が、発電手段23および補助駆動手段20により構成されている。これらの構成において、船舶のハイブリッド運航システム200は、船舶のハイブリッド運航システム100と相違している。機能の同じ部材については、図5において同じ記号を付し、本実施形態では説明を省略する。
なお、発電手段23は、発電手段兼補助駆動手段3の発電機能を奏するものである。
2 プロペラ(推進手段、補助推進手段)
22 プロペラ(補助推進手段)
3 発電手段兼補助駆動手段(駆動モータ)
4 蓄電手段(蓄電池)
5 蓄電手段(キャパシタ)
6 立案手段
7 蓄電制御手段
8 気象海象情報取得装置
9 運航計画入力装置
11 出力検出手段
12 船体
20 補助駆動手段
23 発電手段
100、200 船舶のハイブリッド運航システム
Claims (14)
- 主機関と、
前記主機関により駆動される船体を推進する推進手段と、
発電手段と、
前記発電手段で発電された電力を蓄える蓄電手段と、
前記蓄電手段から出力される電力により前記船体を補助的に推進する動力を生じさせる補助推進手段と、
前記主機関の運転状態と運航計画に基づいてエネルギー収支計画を立案する立案手段と、
前記エネルギー収支計画に基づいて前記発電手段から前記蓄電手段への充電および前記蓄電手段から前記補助駆動手段への放電を制御する蓄電制御手段を備えたことを特徴とする船舶のハイブリッド運航システム。 - 前記立案手段は、さらに海象と気象を考慮して前記エネルギー収支計画を立案したことを特徴とする請求項1に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記発電手段は、前記主機関で駆動される構成とし、また前記主機関の運転を所定の出力範囲で行い、
前記蓄電制御手段は、前記主機関の出力が前記所定の出力範囲内となるときに、余剰電力を前記蓄電手段に蓄え、前記主機関の出力が前記所定の出力範囲外となるときに、前記蓄電手段から前記補助推進手段に放電を行う制御をしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の船舶のハイブリッド運航システム。 - 前記主機関の運転状態を検出する出力検出手段をさらに備え、
前記蓄電制御手段は、前記出力検出手段の検出結果に基づいて、充電および放電を制御したことを特徴とする請求項3に記載の船舶のハイブリッド運航システム。 - 前記所定の出力範囲以下においては、前記主機関の運転を停止したことを特徴とする請求項3あるいは4に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記主機関の運転の停止は、港近傍で行ったことを特徴とする請求項5に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記蓄電制御手段は、停泊後の荷役に必要な電力を残すように前記補助推進手段への放電を制御したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記推進手段が、前記主機関に加えて、前記補助推進手段により駆動可能であることを特徴とする請求項3から請求項7のうちの1項に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記発電手段が前記補助推進手段としての駆動モータを兼ねたことを特徴とする請求項8に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記蓄電手段として2種類の蓄電手段あるいは2系統の蓄電手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項9のうちの1項に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記2種類の蓄電手段は、蓄電池とキャパシタであることを特徴とする請求項10に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記蓄電制御手段は、電力負荷変化に応じて前記蓄電池と前記キャパシタの放電を制御したことを特徴とする請求項11に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 前記推進手段として可変ピッチプロペラを用い、前記蓄電制御手段は前記可変ピッチプロペラの制御と共働して充電および放電を制御したことを特徴とする請求項1から請求項12のうちの1項に記載の船舶のハイブリッド運航システム。
- 請求項1から請求項13に記載した船舶のハイブリッド運航システムを搭載したことを特徴とするハイブリッド運航船。
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