JP2013208931A - ステアリングホイールの制振構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ステアリングホイールにおいて、互いに直交する2方向であって、大きく異なる2つの周波数の振動を抑制する。
【解決手段】制振構造は、エアバッグ装置が内装され、かつ前後方向に延びるステアリングシャフトを中心として回転操作されるステアリングホイールに適用される。制振構造では、インフレータを弾性支持部101により弾性支持することで、インフレータをダイナミックダンパのダンパマスとして機能させ、かつ弾性支持部101をダイナミックダンパのばねとして機能させる。弾性支持部101は、自身の中心軸線L2が前後方向に延びる筒状をなしている。弾性支持部101について中心軸線L2に直交する断面での外縁102及び内縁107は、同中心軸線L2に沿う方向に一様に、長円103,108又は円をなしている。弾性支持部101は、外縁102及び内縁107が円同士とは異なる組合わせの断面を有するように形成されている。
【選択図】図9

Description

本発明は、車両等の乗物の操舵装置に用いられ、かつエアバッグ装置を備えたステアリングホイールの振動を抑制(制振)する制振構造に関するものである。
車両の高速走行中や車載エンジンのアイドリング中に、ステアリングシャフトを通じてステアリングホイールに振動が伝わると、運転者の快適な運転が損なわれるおそれがある。そこで、このステアリングホイールの振動を抑制(制振)する技術が従来から開発・提案されている。その1つに、錘と、この錘をステアリングホイールの芯金等に支持する弾性部材とからなるダイナミックダンパを用いる技術がある。この技術によると、ステアリングホイールからダイナミックダンパに対し、そのダイナミックダンパ固有の共振周波数と同一又は近い周波数の振動が伝わると、ダイナミックダンパが共振してステアリングホイールの振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイールの振動が抑制(制振)される。
一方、ステアリングホイールには、車両の衝突時等における運転者の保護を図るべく、エアバッグ装置が内装されている。エアバッグ装置は、エアバッグと、エアバッグにガスを供給するインフレータとを備えており、車両衝突時等には、インフレータから供給されるガスによりエアバッグを膨張させる。このエアバッグは、衝突の衝撃により前傾しようとする運転者を受け止めて、その前傾を拘束し、衝撃から運転者を保護する。
ここで、上記エアバッグ装置が、ステアリングホイールの内部スペースの多くを占有することから、近時のステアリングホイールでは、上述したダイナミックダンパを内装することが難しくなっている。そこで、インフレータをゴム等からなる弾性支持部を介して支持部材に弾性支持することで、同インフレータをダイナミックダンパのダンパマスとして機能させ、弾性支持部をダイナミックダンパのばねとして機能させる構成が提案されている。
上記弾性支持部として、仮に、前後方向に延びる円筒状又は円錐筒状をなすものが用いられると、弾性支持部の中心軸線に直交する断面での外縁及び内縁がともに円をなす。外縁及び内縁の間隔、すなわち弾性支持部の厚みは、弾性支持部の中心軸線に直交する方向(径方向)のいずれについても同一となる。これに伴い、ダイナミックダンパの共振周波数もまた、弾性支持部の径方向のいずれの方向についても同一となる。
従って、ステアリングホイールについて、特定の方向(例えば、上下方向)の振動のうち、特定の周波数での振動を減衰したい場合等、制振したい振動の方向及び周波数が一種類であれば、ダイナミックダンパの共振周波数が上記振動周波数に合致するように、弾性支持部の形状(径、高さ等)をチューニングすることは比較的容易である。
しかし、ステアリングホイールの互いに直交する2方向(例えば上下方向及び左右方向)について、互いに異なる周波数の振動を抑制したい場合には、ダイナミックダンパが、狙いとする制振のいずれの方向についても、狙いとする制振の周波数で振動するように、弾性支持部をチューニングすることは困難である。これは、上述したように弾性支持部が、外縁及び内縁がともに円をなす断面を有していて、上記2方向についての共振周波数が同一となるからである。
そこで、特許文献1では、インフレータ及び支持部材間に介在される弾性支持部として、円筒状又は円錐筒状をなすダンパ本体と、インフレータ及び支持部材の少なくとも一方に接触又は接近した状態で、ダンパ本体の外周面の周方向についての一部から外方へ突出するリブとを備えるものが用いられている。
特開2011−195048号公報
上記特許文献1に記載された技術によれば、リブが、インフレータ及び支持部材のうちリブに接触又は接近しているものと干渉することで弾性支持部の剛性を高める。そのため、リブがダンパ本体の外周面から突出する方向についての弾性支持部の剛性は、それ以外の方向についての弾性支持部の剛性よりも高くなる。ダイナミックダンパは、リブが突出する方向には、それ以外の方向に対するよりも高い共振周波数で振動する。従って、ダンパ本体の外周面から、狙いとする制振の周波数が高い振動の方向へリブを突出させることで、上記2方向について、互いに異なる周波数の振動を抑制することが可能となる。
ところが、特許文献1に記載された技術では、リブにより剛性を高める効果は限定的であり、2方向の振動について抑制できる周波数を異ならせるにも限度がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステアリングホイールにおいて、互いに直交する2方向であって、大きく異なる2つの周波数の振動を抑制することのできるステアリングホイールの制振構造を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エアバッグと、前記エアバッグにガスを供給するインフレータとを有するエアバッグ装置が内装され、かつ前後方向に延びるステアリングシャフトを中心として回転操作されるステアリングホイールに適用され、前記インフレータを弾性支持部により弾性支持することで、前記インフレータをダイナミックダンパのダンパマスとして機能させ、かつ前記弾性支持部をダイナミックダンパのばねとして機能させるようにしたステアリングホイールの制振構造であって、前記弾性支持部は、自身の中心軸線が前後方向に延びる筒状をなし、前記弾性支持部について前記中心軸線に直交する断面での外縁及び内縁は、同中心軸線に沿う方向に一様に、一対の円弧部を一対の直線部で繋いでなる長円又は円をなしており、前記弾性支持部は、前記外縁及び前記内縁が円同士とは異なる組合わせの断面を有するように形成されていることを要旨とする。
上記の構成を有する制振構造によれば、インフレータがダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、弾性支持部がダイナミックダンパのばねとして機能する。
ここで、請求項1に記載の発明では、筒状の弾性支持部として、外縁及び内縁が円同士とは異なる組合わせの断面を有するように形成されている。このことから、断面における外縁及び内縁の少なくとも一方は、一対の円弧部を一対の直線部で繋いでなる長円をなしていることとなる。そのため、長円の直線部に沿う方向についての弾性支持部の剛性と、同直線部に直交する方向についての弾性支持部の剛性とが異なる。これに伴い、弾性支持部では、長円の直線部に沿う方向の共振周波数と、直線部に直交する方向の共振周波数とが異なる。しかも、上記断面における内縁及び外縁の各形状は、中心軸線に沿う方向に一様である。そのため、弾性支持部では、上記両方向の剛性の差が大きくなり、両共振周波数の差が大きくなる。
従って、ステアリングホイールからダイナミックダンパに対し、弾性支持部における長円の直線部に沿う方向であって、同方向の共振周波数と同一又は近い周波数の振動が加わると、ダイナミックダンパが共振してステアリングホイールの振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイールの上記方向(直線部に沿う方向)の振動が減衰(制振)される。
また、ステアリングホイールからダイナミックダンパに対し、弾性支持部における長円の直線部に直交する方向であって、同方向の共振周波数と同一又は近い周波数の振動が加わると、ダイナミックダンパが共振してステアリングホイールの振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイールの上記方向(直線部に直交する方向)の振動が減衰(制振)される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記外縁及び前記内縁はともに長円をなしており、前記弾性支持部は、両長円の間隔が均一な断面を有するように形成されていることを要旨とする。
上記の構成によれば、断面の外縁及び内縁がともに長円をなしていることから、弾性支持部について直線部に沿う方向の寸法が直線部に直交する方向の寸法よりも大きくなる。従って、直線部に沿う方向と直交する方向とで両長円の間隔に差がないものの、直線部に沿う方向についての弾性支持部の剛性と、同直線部に直交する方向についての弾性支持部の剛性とが大きく異なる。これに伴い弾性支持部では、長円の直線部に沿う方向の共振周波数と、直線部に直交する方向の共振周波数とが大きく異なる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記外縁及び前記内縁はともに長円をなしており、前記弾性支持部は、前記外縁の円弧部及び前記内縁の円弧部間の間隔と、前記外縁の直線部及び前記内縁の直線部間の間隔とが異なる断面を有するように形成されていることを要旨とする。
上記の構成によれば、断面の外縁及び内縁がともに長円をなしていることから、弾性支持部について直線部に沿う方向の寸法が直線部に直交する方向の寸法よりも大きくなる。しかも、外縁と内縁とで、円弧部間の間隔と、直線部間の間隔とが異なる。従って、弾性支持部の断面における両長円の間隔が均一であって、直線部に沿う方向と直交する方向とで両長円の間隔に差がないものに比べ、直線部に沿う方向についての弾性支持部の剛性と、同直線部に直交する方向についての弾性支持部の剛性との差が大きくなる。これに伴い弾性支持部では、長円の直線部に沿う方向の共振周波数と、直線部に直交する方向の共振周波数との差が大きくなる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記外縁は円をなし、前記内縁は長円をなしており、前記弾性支持部は、前記長円の円弧部及び前記円間の間隔と、前記長円の直線部及び前記円間の間隔とが異なる断面を有するように形成されていることを要旨とする。
上記の構成によれば、断面の外縁が円をなしているが、内縁が長円をなしているため、長円の直線部に沿う方向についての弾性支持部の剛性と、同直線部に直交する方向についての弾性支持部の剛性とが異なる。これに伴い、弾性支持部では、長円の直線部に沿う方向の共振周波数と、直線部に直交する方向の共振周波数とが異なる。しかも、長円の円弧部と直線部とで、円との間隔が異なる。そのため、弾性支持部における上記両方向の剛性の差がさらに大きくなり、両共振周波数の差が一層大きくなる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記外縁は長円をなし、前記内縁は円をなしており、前記弾性支持部は、前記長円の円弧部及び前記円間の間隔と、前記長円の直線部及び前記円間の間隔とが異なる断面を有するように形成されていることを要旨とする。
上記の構成によれば、断面の内縁が円をなしているが、外縁が長円をなしているため、長円の直線部に沿う方向についての弾性支持部の剛性と、同直線部に直交する方向についての弾性支持部の剛性とが異なる。これに伴い、弾性支持部では、長円の直線部に沿う方向の共振周波数と、直線部に直交する方向の共振周波数とが異なる。しかも、長円の円弧部と直線部とで、円との間隔が異なる。そのため、弾性支持部における上記両方向の剛性の差がさらに大きくなり、両共振周波数の差が一層大きくなる。
本発明のステアリングホイールの制振構造によれば、弾性支持部の断面形状を工夫したため、ステアリングホイールにおいて、互いに直交する2方向であって、大きく異なる2つの周波数の振動を抑制することができる。
本発明を具体化した一実施形態におけるステアリングホイールの側面図。 一実施形態におけるステアリングホイールの正面図。 一実施形態において、エアバッグ装置が内装されたステアリングホイールの一部を示す背面図。 図3の4−4線に沿ったステアリングホイールの断面構造を示す部分断面図。 図4のS部を拡大して示す断面図。 図4のT部を拡大して示す断面図。 図3の7−7線に沿ったステアリングホイールの断面構造を示す部分断面図。 図3の8−8線に沿ったステアリングホイールの断面構造を示す部分断面図。 図5の9−9線に沿った弾性支持部の断面構造を示す断面図。 (A)〜(C)は図9に対応する図であり、弾性支持部の変更例を示す断面図。
以下、本発明を、車両の操舵装置の一部を構成し、かつエアバッグ装置が内装されたステアリングホイールの制振構造に具体化した一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
図1に示すように、車両の運転席よりも前方には、回転軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)11が、運転席側(後側、図1の左側)ほど高くなるように傾斜した状態で配設されている。ステアリングシャフト11の後端部には、ステアリングホイール12が一体回転可能に取付けられている。
なお、本実施形態では、ステアリングホイール12の各部について説明する際には、ステアリングシャフト11の回転軸線L1を基準とする。この回転軸線L1に沿う方向をステアリングホイール12の「前後方向」といい、回転軸線L1に直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール12の起立する方向を「上下方向」というものとする。従って、ステアリングホイール12の前後方向及び上下方向は、車両の前後方向(水平方向)及び上下方向(鉛直方向)に対し傾いていることとなる。
また、回転操作されるステアリングホイール12の位置を特定するために、本実施形態では、車両が直進しているときのステアリングホイール12の状態、すなわち中立状態を基準に、「上」、「下」、「左」、「右」を規定するものとする。従って、ステアリングホイール12の左右方向は、車両の幅方向(車幅方向)と同一となる。
図1及び図2に示すように、ステアリングホイール12は、リム部(ハンドル部、リング部と呼ばれることもある)13、パッドカバー20、ロアカバー14及びスポーク部16を備えている。パッドカバー20及びロアカバー14によってパッド部が構成されている。
リム部13は、上記ステアリングシャフト11を中心とした略円環状をなしている。パッドカバー20は、リム部13の中央部分に配置されている。ロアカバー14は、同中央部分においてパッドカバー20の前側に配置されている。スポーク部16は、リム部13及びパッドカバー20間に設けられている。
ステアリングホイール12の上記構成部材(リム部13、スポーク部16)の各内部、及びパッドカバー20とロアカバー14とによって囲まれた空間には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金等によって形成された芯金15(図8参照)が配設されている。芯金15は、ステアリングホイール12の骨格部分をなすものである。
パッドカバー20とロアカバー14とによって囲まれた空間には、図3及び図4に示すように、上記芯金15に加え、エアバッグ装置17が配設されている。エアバッグ装置17は、車両の前面衝突(前突)等により、車両に対し前方から衝撃が加わった場合に、インフレータ(ガス発生器)80からガスをエアバッグ60に供給し、そのエアバッグ60を運転者の前方で膨張させて、運転者に伝わる衝撃を緩和するための装置である。このエアバッグ装置17は、ステアリングホイール12の振動を抑制(制振)するための制振構造を有している。
エアバッグ装置17は、上述したパッドカバー20、インフレータ80及びエアバッグ60を備えるほか、バックホルダ40、カップリテーナ70、支持プレート90及びガスプレート115を備えている。これらの部材のうちバックホルダ40はエアバッグ装置17の骨格部分をなし、他の構成部材は、このバックホルダ40に取付けられている。なお、パッドカバー20はステアリングホイール12(パッド部)の構成部材の1つであるが、ここではエアバッグ装置17の構成部材も兼ねている。次に、エアバッグ装置17のこれらの構成部材について説明する。
<バックホルダ40>
バックホルダ40は、金属板をプレス加工することにより形成されている。バックホルダ40は、中央部に円形の挿入孔41を有するとともに、正面視で略矩形の外形形状を有している(図3参照)。バックホルダ40において、挿入孔41の周りの複数箇所(6箇所)には、長方形状をなす係止孔44が形成されている。
図3及び図8に示すように、上記バックホルダ40において、挿入孔41の周りの複数箇所(3箇所)には、取付孔48を有する取付部49が、それぞれステアリングシャフト11の径方向についての外方へ突出するように形成されている。取付部49毎の取付孔48には、車両に設けられたホーン装置(図示略)を作動させるためのホーンスイッチ機構HSが取付けられている。各ホーンスイッチ機構HSは、ステアリングホイール12の芯金15に支持されている。この支持により、エアバッグ装置17は、芯金15に対しフローティング状態となり、各ホーンスイッチ機構HSを変形させることにより前後方向へ移動(変位)可能である。
バックホルダ40において、挿入孔41の周りの複数箇所(4箇所)には、ボルト挿通孔51が等角度(90度)毎にあけられている(図6参照)。
<パッドカバー20>
図4、図7及び図8に示すように、パッドカバー20は、蓋部22と、その蓋部22から前方へ突出する環状の収容壁部23とを有している。パッドカバー20は、合成樹脂によって形成されており、バックホルダ40の後側に配置されている。これらの蓋部22及び収容壁部23は、バックホルダ40との間に収容空間24を形成している。
蓋部22には、その前側から溝を設けることにより、同蓋部22の他の箇所よりも厚みの小さな線状の破断予定部(以下「テアライン」という)26が形成されている(図2参照)。テアライン26は、厚みの小さいことから、蓋部22の他の箇所よりも強度が低くなっており、エアバッグ60が展開膨張したときに、このテアライン26において蓋部22が破断される。パッドカバー20には、テアライン26に沿って破断した蓋部22が開く(回動する)際の支点となるヒンジ部27,28が設定されている。なお、図4では、これらのヒンジ部27,28が点(・)によって示されている。
収容壁部23の複数箇所(6箇所)には係止部31が設けられている。各係止部31は、いずれも矩形板状をなす本体部34と、本体部34の前部においてステアリングシャフト11の径方向についての外方へ突出する爪部35とによって構成されている。各係止部31では、爪部35がバックホルダ40の前側で各係止孔44よりも、ステアリングシャフト11の径方向についての外方に位置している。この爪部35と係止孔44との位置関係により、パッドカバー20はバックホルダ40に係止され、後方への移動を規制されている。
各係止部31の最大厚み(爪部35が最も多く突出している箇所での厚み)は、各係止孔44の幅よりも若干狭く設定されている。これは、各係止部31を各係止孔44に挿通させるために必要な条件である。
なお、各係止部31の構成は、係止孔44に挿入されて係止されるものであることを条件に、適宜変更可能である。
<エアバッグ60>
エアバッグ60は、ガスにより膨張する袋体であり、強度が高く、かつ可撓性を有する織布等の布によって形成されている。エアバッグ60は、膨張したときに、ステアリングホイール12と運転者との間の領域を占有する大きさを有している。
エアバッグ60は、袋の開口61を自身の前端部に有している。エアバッグ60において開口61の周りで円環状をなす部分(以下「周辺部62」という)は、同エアバッグ60の他の箇所よりも強度を高められている。この周辺部62において開口61の周りの複数箇所(4箇所)には、ボルト挿通孔63が等角度(90度)毎にあけられている(図6参照)。この周辺部62は、バックホルダ40の後側に配置されている。
エアバッグ60の上記周辺部62を除く多くの部分は、図示しないが、折り畳まれることによりコンパクトな形態にされて、上記収容空間24に配置されている。
<カップリテーナ70>
カップリテーナ70は、金属板をプレス加工することにより形成されている。カップリテーナ70は、バッグ取付部71、複数のアーチ部72及びカバー部73を備えている。カップリテーナ70は、上記開口61を通じてエアバッグ60の内部に挿入されている。
バッグ取付部71は、カップリテーナ70の主要部をなす箇所であり、環状をなしている。バッグ取付部71の大部分は略平板状をなしており、エアバッグ60の周辺部62の後側に配置されている。バッグ取付部71において、周方向についての複数箇所(4箇所)には、ボルト76が等角度(90度)毎に挿通されて固定されている。
図6及び図7に示すように、各ボルト76は、バッグ取付部71から前方へ延びており、エアバッグ60及びバックホルダ40の各ボルト挿通孔63,51に挿通されている。エアバッグ60のボルト挿通孔63へのボルト76の挿通により、同エアバッグ60がボルト76を通じてカップリテーナ70に係止されている。また、バックホルダ40のボルト挿通孔51へのボルト76の挿通により、カップリテーナ70がバックホルダ40に係止されている。上記のようにボルト76が各ボルト挿通孔63,51に挿通された状態では、エアバッグ60の周辺部62は、バックホルダ40とカップリテーナ70のバッグ取付部71との間で挟み込まれている。
複数のアーチ部72は、バッグ取付部71の内縁部において、周方向についての複数箇所から、それぞれ互いに離間した状態で後方へ延びている。カバー部73は、上記バッグ取付部71から後方へ離間した箇所に位置しており、ここに、各アーチ部72の後端部が繋がっている。カバー部73には、複数のガス放出口73Aが形成されている。
<インフレータ80>
図4、図7及び図8に示すように、インフレータ80の主要部は、ステアリングシャフト11の回転軸線L1を中心とする略円柱状の本体部81によって構成されている。本体部81は、バックホルダ40の挿入孔41、エアバッグ60の開口61、及びカップリテーナ70においてバッグ取付部71によって囲まれた空間のいずれよりも若干小径に形成されている。本体部81の後部は、挿入孔41、開口61等に挿入されている。
本体部81には、エアバッグ60を膨張させるためのガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。本体部81の外周面には、複数のガス噴出孔82が周方向に略等角度毎に設けられている。
上記本体部81の外周面上であって、各ガス噴出孔82よりも前側、かつバックホルダ40の挿入孔41よりも前側となる箇所には、その本体部81の外周面の全周にわたってフランジ83が形成されている。図5に示すように、フランジ83において、本体部81の周りの複数箇所(4箇所)には、同フランジ83の他の箇所よりも径方向外方へ多く延出する取付片83Aが形成されており、ここに締結用挿通孔(リベット挿通孔)84があけられている。
また、図3及び図7に示すように、インフレータ80の前部にはコネクタ85が組付けられており、インフレータ80への作動信号の入力配線となるハーネス87が、コネクタ85に接続されている。
なお、インフレータ80としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプが用いられてもよい。また、インフレータ80の本体部81は、円筒状以外の筒状をなすものであってもよい。
<支持プレート90>
支持プレート90は、インフレータ80をバックホルダ40に弾性支持するためのものである。図3及び図4に示すように、支持プレート90の中央部には、インフレータ80のコネクタ85に接続されたハーネス87を同支持プレート90よりも前方へ引き出すための連通孔91が設けられている。
支持プレート90の骨格部分は、金属板をプレス加工することによって形成された、支持基部92及びカバー部93によって構成されている。支持基部92は、ステアリングシャフト11の径方向についての外側部分を含む同支持プレート90の大部分を構成するものであり、環状をなしている。カバー部93は円弧状をなし、上記径方向について支持基部92の内側に位置しており、インフレータ80の前側外周部を離間状態で覆っている。
図6に示すように、支持基部92の大部分は、バックホルダ40の前側に配置されている。支持基部92において、連通孔91の周りの複数箇所(4箇所)には、ボルト挿通孔94が等角度(90度)毎にあけられている。支持基部92の後側であって各ボルト挿通孔94と同一軸線上にはカラー(円筒状のスペーサ)95が配置されている。各カラー95は、支持プレート90の一部を構成するものとして用いられ、後述する弾性部97によって支持基部92とともに被覆されることで、同支持基部92に対し一体となっている。
そして、カップリテーナ70から延びて、エアバッグ60及びバックホルダ40の各ボルト挿通孔63,51に挿通された上記ボルト76が、カラー95と、支持基部92のボルト挿通孔94とに挿通されている。支持基部92から前方へ露出する各ボルト76にナット96が締付けられている。これらの締付けにより、カップリテーナ70及び支持基部92がバックホルダ40に締結されている。また、エアバッグ60における開口61の周辺部62が、カップリテーナ70及びバックホルダ40によって挟み込まれている。
支持基部92及びカバー部93の多くの部分は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材料からなる弾性部97によって被覆されている。弾性部97の一部は、ステアリングシャフト11の径方向について、支持基部92の内側部から後方へ突出する弾性突部100となっている。弾性突部100は、インフレータ80の本体部81を非接触状態で取り囲んでいる。また、弾性突部100は、インフレータ80のフランジ83から前方へ離間している。図8に示すように、支持プレート90には、上記弾性部97の一部として、シール部98が設けられている。シール部98は、支持基部92から後方へ突出して、バックホルダ40に弾性変形した状態で接触している。この接触により、シール部98はバックホルダ40及び支持プレート90間をシールしている。
図4及び図5に示すように、支持プレート90には、上記インフレータ80を弾性支持するための構造が設けられている。詳しくは、支持基部92において、連通孔91の周りの複数箇所(4箇所)には、孔99が等角度(90度)毎にあけられている。支持基部92には、上記各孔99の内壁面から後方へ延びる筒状の弾性支持部101が設けられている。各弾性支持部101は、その前端部において、上記弾性部97に繋がっている。
これらの弾性支持部101は、上述したインフレータ80とともにダイナミックダンパを構成するものである。ステアリングホイール12からダイナミックダンパに対し、そのダイナミックダンパ固有の共振周波数と同じ周波数の振動が伝わると、ダイナミックダンパが共振してステアリングホイール12の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ダイナミックダンパはステアリングホイール12の振動を減衰(制振)する。
ここで、ステアリングホイール12について、ダイナミックダンパによって制振したい振動の方向が互いに直交する2方向、例えば上下及び左右の2つあり、それぞれの振動の周波数が異なるものとする。ここでは、ステアリングホイール12の左右方向の振動について制振したい周波数が、上下方向の振動について制振したい周波数よりも高い場合を想定して説明を進めることとする。
この要望に応えるべく、本実施形態では、各弾性支持部101の形状について工夫がなされている。
各弾性支持部101は、自身の中心軸線L2が前後方向に延びる筒状をなしている。図9は、各弾性支持部101について中心軸線L2に直交する断面を示している。この断面での外縁102は、中心軸線L2に沿う方向に一様に、長円103をなしている。長円103は、互いに対向するように離間した状態で配置されて互いに反対方向へ膨らむ左右一対の円弧部104と、互いに平行な状態で左右方向に延びて、両円弧部104の端同士を繋ぐ上下一対の直線部105とによって構成されている。また、上記断面での内縁107は、中心軸線L2に沿う方向に一様に、長円108をなしている。長円108は、互いに対向するように離間した状態で配置されて互いに反対方向へ膨らむ左右一対の円弧部109と、互いに平行な状態で左右方向に延びて両円弧部109の端同士を繋ぐ上下一対の直線部110とによって構成されている。
ここで、長円103,108の直線部105,110に沿う方向についての外縁102と内縁107との間隔をD1とし、同直線部105,110に直交する方向についての外縁102と内縁107との間隔をD2とする。間隔D1は、直線部105,110に沿う方向についての両側で同一であり、間隔D2は、直線部105,110に直交する方向についての両側で同一である。また、間隔D1と間隔D2とは異なっている。
本実施形態では、外縁102の円弧部104と内縁107の円弧部109との間隔がD1となり、外縁102の直線部105と内縁107の直線部110との間隔がD2となる。そして、間隔D1が間隔D2よりも小さく設定されている。
各弾性支持部101の断面が上記の条件を満たしたうえで、その断面の大きさ、上記間隔D1,D2、中心軸線L2に沿う方向の長さ(高さ)等がチューニングされることで、ダイナミックダンパの上下方向についての共振周波数が、ステアリングホイール12の上下方向の振動について、狙いとする制振の周波数に合致又は近づけられている。また、ダイナミックダンパの左右方向についての共振周波数が、ステアリングホイール12の左右方向の振動について、狙いとする制振の周波数(前述した上下方向の制振の周波数よりも高い値)に合致又は近づけられている。
なお、各弾性支持部101は弾性部97とは別部品によって構成されてもよい。この場合、各弾性支持部101は、例えば、加硫接着により支持基部92に固定されてもよい。また、各弾性支持部101の前端部の外周面に、周方向に延びる溝部が設けられ、この溝部において各弾性支持部101が支持基部92の孔99に嵌入されることにより、各弾性支持部101が支持基部92に係止されてもよい。この場合には、孔99は、支持基部92に対する各弾性支持部101の位置ずれを規制する。
筒状をなす各弾性支持部101は、その外形形状(外面)については金型を用いた成形により形成され、内形形状(内面)については柱状のピンを用いた成形により形成されている。各弾性支持部101のピンからの離型をしやすくする等のために、各弾性支持部101は孔99から後方へ離れるほど、断面の大きさが小さくなるように、中心軸線L2に対して僅かに傾斜させられている。
図5に示すように、各弾性支持部101の後端面には、金属製のリベット112が加硫接着等によって固定されている。リベット112の後部は、後端が開放された筒状をなしており、フランジ83の取付片83A毎の締結用挿通孔(リベット挿通孔)84に挿通されている。この挿通されたリベット112を通じ、フランジ83が弾性支持部101に係止されている。
図4及び図7に示すように、支持プレート90の支持基部92の外縁部であって、上記係止部31及び係止孔44に対応する複数箇所には、後方又は前方へ向けて延びる押付片113が曲げ形成されている。これらの押付片113は、ステアリングシャフト11の径方向についての内側から各係止部31に当接し、同係止部31を係止孔44の内壁面に押付けている。なお、各押付片113は、ステアリングシャフト11の径方向についての外側から各係止部31に当接するものであってもよい。
上記支持プレート90は、上記以外にも次の機能も有する。
(i)インフレータ80が前方へ過剰に移動した場合に受け止める機能。
(ii)ハーネス87の長さ方向についての中間部分がインフレータ80に接触するのを規制して、同ハーネス87との接触によりインフレータ80の振動が阻害されるのを抑制する機能。
<ガスプレート115>
図5及び図6に示すように、ガスプレート115は、金属板をプレス加工することにより形成されている。ガスプレート115は、取付基部116及び受圧部117を備えている。
取付基部116は略円環状をなしていて、インフレータ80のフランジ83の後側かつ各ガス噴出孔82の前側に配置されている。取付基部116の周方向についての複数箇所(4箇所)には、締結用挿通孔118が等角度(90度)毎にあけられており、ここに上記リベット112の後部が挿通されている。
リベット112の後部は、図5において二点鎖線で示すように、ガスプレート115から後方へ露出している。リベット112の露出部分が、図5において実線で示すように押し潰されて拡径させられる(かしめられる)ことで、リベット112がフランジ83に固定されるとともに、リベット112の拡径部分とフランジ83との間でガスプレート115の取付基部116が挟み込まれている。このように、インフレータ80は、ガスプレート115と一緒に、リベット112によって複数の弾性支持部101に締結されている。インフレータ80は、これらの弾性支持部101により支持プレート90、ひいてはバックホルダ40に弾性支持されている。
支持プレート90の上記孔99は、リベット112を押し潰す際に、リベット112を前方から受け止めるための治具(図示略)の挿通孔として使用される。
なお、ガスプレート115は、フランジ83の弾性支持部101との締結部分とは異なる箇所においてフランジ83に固定されてもよい。
ガスプレート115の受圧部117は、ステアリングシャフト11の径方向については、インフレータ80の各ガス噴出孔82と、エアバッグ60の周辺部62との間に位置している。受圧部117は、各ガス噴出孔82から本体部81の径方向外方へ噴出されたガスGの向きを後方へ変え、かつ同ガスGの圧力を受けて前方へ向かう力Fを発生させるためのものである。受圧部117は、ガスプレート115の一部が上記取付基部116の内縁部で屈曲させられることにより形成されている。受圧部117は、後側ほどインフレータ80の本体部81から遠ざかるように略一定の角度で傾斜していて、テーパ状となっている。
なお、受圧部117は、インフレータ80におけるフランジ83の一部として形成されてもよい。また、受圧部117はインフレータ80に直接取付けられてもよい。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のステアリングホイール12では、運転者がパッドカバー20を前方へ押圧することにより、バックホルダ40がエアバッグ装置17の他の構成部品を伴って前方へ変位する。この変位により、ホーンスイッチ機構HSが閉成して、ホーン装置が作動(鳴動)する。
また、車両に対し、前面衝突(前突)等による前方からの衝撃が加わらないときには、インフレータ80の各ガス噴出孔82からガスGが噴出されず、エアバッグ60が折り畳まれた状態に維持される。
上記エアバッグ60の非膨張時であって、車両の高速走行中や車載エンジンのアイドリング中に、ステアリングシャフト11を通じ、ステアリングホイール12に対し、上下方向や左右方向の振動が伝わる場合がある。この振動は、エアバッグ装置17では、バックホルダ40、各弾性支持部101等を介してインフレータ80に伝わる。この際、図5及び図6に示すように、インフレータ80のフランジ83は、支持プレート90の弾性突部100から後方へ離れていて、両者83,100間の隙間が、インフレータ80の振動を許容する。
上記振動に応じて、エアバッグ装置17では、インフレータ80がダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、支持プレート90の各弾性支持部101がダイナミックダンパのばねとして機能する。
ここで、図9に示すように筒状の各弾性支持部101は、外縁102が長円103からなり、かつ内縁107が長円108からなる断面を有している。長円103は、一対の円弧部104及び一対の直線部105からなり、長円108は、一対の円弧部109及び一対の直線部110からなる。各弾性支持部101では、直線部105,110に沿う方向(左右方向)の寸法が、直交する方向(上下方向)の寸法よりも大きくなる。これらのことから、直線部105,110に沿う方向(左右方向)についての弾性支持部101の剛性は、同直線部105,110に直交する方向(上下方向)についての弾性支持部101の剛性よりも高くなる。これに伴い、各弾性支持部101では、直線部105,110に沿う方向の共振周波数が、直交する方向の共振周波数よりも高くなる。しかも、上記断面における内縁107及び外縁102の各形状は、中心軸線L2に沿う方向に一様である。そのため、各弾性支持部101における両方向の剛性の差が大きくなり、両共振周波数の差が大きくなる。
特に、本実施形態では、外縁102と内縁107とで、円弧部104,109間の間隔D1と、直線部105,110間の間隔D2とが異なる(D1<D2)。従って、両長円103,108の間隔D1,D2が均一であって、直線部105,110に沿う方向と直交する方向とで間隔D1,D2に差がないものに比べ、直線部105,110に沿う方向(左右方向)についての弾性支持部101の剛性が、直交する方向(上下方向)についての弾性支持部101の剛性に比べ一層高くなる。弾性支持部101では、長円103,108の直線部105,110に沿う方向(左右方向)の共振周波数が、直交する方向(上下方向)の共振周波数よりも一層高くなる。
従って、ステアリングホイール12からダイナミックダンパに対し、弾性支持部101における長円103,108の直線部105,110に沿う方向(左右方向)であって、同方向の高い共振周波数と同一又は近い周波数の振動が加わると、各弾性支持部101がその共振周波数で上記方向へ弾性変形する。各弾性支持部101は、インフレータ80及びガスプレート115を伴って上記方向に振動(共振)し、ステアリングホイール12の上記方向の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイール12の左右方向の振動が減衰(制振)される。
また、ステアリングホイール12からダイナミックダンパに対し、弾性支持部101における長円103,108の直線部105,110に直交する方向(上下方向)であって、同方向の低い共振周波数と同一又は近い周波数の振動が加わると、各弾性支持部101がその共振周波数で上記方向へ弾性変形する。各弾性支持部101は、インフレータ80及びガスプレート115を伴って上記方向に振動(共振)し、ステアリングホイール12の上記方向の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイール12の上下方向の振動が減衰(制振)される。
従って、本実施形態では、ステアリングホイール12について、制振したい振動の方向が2つ(上下方向及び左右方向)あり、それぞれの振動の狙いとする制振の周波数が大きく異なるが、いずれの方向の振動についてもダイナミックダンパによって減衰(制振)される。
また、エアバッグ装置17では、インフレータ80の外側にカップリテーナ70が位置する。このカップリテーナ70は、エアバッグ60の動きを規制し、同エアバッグ60のインフレータ80との干渉を抑制する。そのため、インフレータ80の振動がエアバッグ60によって妨げられにくい。
ところで、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者が前傾しようとする。一方、エアバッグ装置17では、前記衝撃に応じインフレータ80が作動させられ、各ガス噴出孔82からガスGが径方向外方へ噴出される。
上記のように噴出されたガスGは、後側ほど本体部81から遠ざかるように傾斜している受圧部117に当たり、流れの向きを、図5及び図6において実線の矢印で示すように、ステアリングシャフト11の径方向についての外方から後方へ変えられる。この向きを変えられたガスGは、エアバッグ60内に供給される。このガスGにより、エアバッグ60が後側(運転者側)へ向けて、折り状態を解消(展開)しながら膨張する。このエアバッグ60により、パッドカバー20の蓋部22に対し、後方へ向かう押圧力が加わる。
また、各ガス噴出孔82からのガスGの圧力は、上記のように傾斜している受圧部117によって受けられ、図5及び図6において白抜きの矢印で示すように、同受圧部117において前方へ向かう力Fが発生される。この力Fにより、ガス噴出孔82からのガスGの噴出開始直後からインフレータ80が各弾性支持部101を弾性変形させながら前方へ移動し、弾性突部100に接触する。この接触により、インフレータ80と支持プレート90との間がシールされた状態となり、連通孔91からのガス漏れが抑制される。
エアバッグ60が収容空間24で膨張するときには、その膨張がパッド部によって制限されるため、時間の経過に伴い同エアバッグ60の内圧が急激に上昇する。ガスGにより前方へ移動させようとする力がインフレータ80に加わるようになる。この力と、受圧部117による上記力Fとによって、インフレータ80は弾性突部100に強く接触する。
上記展開膨張するエアバッグ60により、パッドカバー20の蓋部22に加わる押圧力が増大していくと、同蓋部22がテアライン26において破断される。図4において二点鎖線で示すように、破断された蓋部22の下半部は、ヒンジ部27を支点として下方へ開き(回動し)、上半部は、ヒンジ部28を支点として上方へ開く(回動する)。
上記蓋部22の回動に伴い開口36が生ずる。エアバッグ60は、この開口36を通じて後方へ向けて引き続き展開膨張する。前突の衝撃により前傾しようとする運転者の前方に、展開膨張したエアバッグ60が介在して運転者が受け止められ、その運転者の前傾が拘束されて、衝撃から保護される。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)各弾性支持部101を前後方向に延びる筒状に形成する。各弾性支持部101について中心軸線L2に直交する断面での外縁102及び内縁107を、同中心軸線L2に沿う方向に一様に、長円103,108としている(図9)。
そのため、各弾性支持部101において、長円103,108の直線部105,110に沿う方向についての剛性と、同直線部105,110に直交する方向についての剛性との差を大きくし、両方向の共振周波数の差を大きくすることができる。その結果、ステアリングホイール12において、上記2方向であって、大きく異なる2つの周波数の振動を抑制することが可能となる。
(2)外縁102の円弧部104及び内縁107の円弧部109間の間隔D1と、外縁102の直線部105及び内縁107の直線部110間の間隔D2とを異ならせている(図9)。
そのため、各弾性支持部101の断面における両長円103,108の間隔が均一であって、直線部105,110に沿う方向と直交する方向とで間隔D1,D2に差がないものに比べ、長円103,108の直線部105,110に沿う方向の共振周波数と、同直線部105,110に直交する方向の共振周波数との差を一層大きくすることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<弾性支持部101について>
・支持プレート90の上記実施形態とは異なる箇所に弾性支持部101が設けられてもよい。また、支持プレート90における弾性支持部101の数が変更されてもよい。
・各弾性支持部101は、外縁102及び内縁107が円同士とは異なる組合わせの断面を有するものであることを条件に、上記実施形態とは異なる断面を有するものに変更されてもよい。その一例を図10(A)〜(C)に示す。
図10(A)は、外縁102及び内縁107がともに長円103,108をなし、間隔D1と間隔D2とが同一である変更例を示している。間隔D1は、両円弧部104,109間の間隔であり、間隔D2は、両直線部105,110間の間隔である。
この場合、直線部105,110に沿う方向と直交する方向とで間隔D1,D2に差がない。しかし、直線部105,110に沿う方向の寸法が同直線部105,110に直交する方向の寸法よりも大きいことから、直線部105,110に沿う方向についての弾性支持部101の剛性が、同直線部105,110に直交する方向についての弾性支持部101の剛性よりも高くなる。弾性支持部101では、直線部105,110に沿う方向の共振周波数が、直交する方向の共振周波数よりも高くなる。
図10(B)は、外縁102が円106をなし、内縁107が長円108をなし、間隔D1と間隔D2とが異なる変更例を示している。間隔D1は、長円108の円弧部109と円106との間隔であり、間隔D2は、長円108の直線部110と円106との間隔である。
この場合、断面の外縁102が円106をなしているが、内縁107が長円108をなしているため、長円108の直線部110に沿う方向についての弾性支持部101の剛性と、同直線部110に直交する方向についての弾性支持部101の剛性とが異なる。これに伴い、弾性支持部101では、直線部110に沿う方向の共振周波数と、直交する方向の共振周波数とが異なる。しかも、長円108の円弧部109と直線部110とで、円106との間隔D1,D2が異なる。そのため、弾性支持部101における上記両方向の剛性の差がさらに大きくなり、両共振周波数の差が一層大きくなる。
図10(C)は、外縁102が長円103をなし、内縁107が円111をなし、間隔D1と間隔D2とが異なる変更例を示している。間隔D1は、長円103の円弧部104と円111との間隔であり、間隔D2は長円103の直線部105と円111との間隔である。
この場合、断面の内縁107が円111をなしているが、外縁102が長円103をなしているため、長円103の直線部105に沿う方向についての弾性支持部101の剛性と、同直線部105に直交する方向についての弾性支持部101の剛性とが異なる。これに伴い、弾性支持部101では、長円103の直線部105に沿う方向の共振周波数と、直線部105に直交する方向の共振周波数とが異なる。しかも、長円103の円弧部104と直線部105とで、円111との間隔D1,D2が異なる。そのため、弾性支持部101における両方向の剛性の差がさらに大きくなり、両共振周波数の差が一層大きくなる。
・上記実施形態、及び上記図10(A)〜(C)の変更例に関しては、下記条件のもとでは、各弾性支持部101の製造設備に関し、次の利点がある。
条件:製造される弾性支持部101の対象が、外形形状については同一で、内形形状のみ異なるものに変更されること。
利点:各弾性支持部101の外形形状を賦形する金型についてはそのまま流用し、内形形状を賦形するピンについては、新たな弾性支持部101の内形形状(断面の内縁)に対応したものに変更するだけですむ。
・支持プレート90における各弾性支持部101の姿勢(中心軸線L2の周りでの回転位相)、すなわち、長円103,108における直線部105,110の延びる方向及び直交する方向は、上下方向及び左右方向に限らず、制振したい振動の方向(ただし、互いに直交する2方向)及び周波数に応じて適宜変更可能である。
<その他>
・バックホルダ40、カップリテーナ70、支持プレート90及びガスプレート115の少なくとも1つは、プレス加工以外の形成手段、例えばダイカスト成形等によって形成されてもよい。
・ステアリングホイール12は、所謂フローティングタイプのものに限らず、パッド部が芯金15等に直接的に固定されていて揺動しないもの、所謂リジットタイプのものであってもよい。この場合にも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
・本発明は、車両に限らず、航空機、船舶等の他の乗物におけるエアバッグ装置付きステアリングホイールに適用することもできる。この場合、車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングホイール、17…エアバッグ装置、60…エアバッグ、80…インフレータ、101…弾性支持部、102…外縁、103,108…長円、104,109…円弧部、105,110…直線部、106,111…円、107…内縁、D1,D2…間隔、G…ガス、L2…中心軸線。

Claims (5)

  1. エアバッグと、前記エアバッグにガスを供給するインフレータとを有するエアバッグ装置が内装され、かつ前後方向に延びるステアリングシャフトを中心として回転操作されるステアリングホイールに適用され、前記インフレータを弾性支持部により弾性支持することで、前記インフレータをダイナミックダンパのダンパマスとして機能させ、かつ前記弾性支持部をダイナミックダンパのばねとして機能させるようにしたステアリングホイールの制振構造であって、
    前記弾性支持部は、自身の中心軸線が前後方向に延びる筒状をなし、
    前記弾性支持部について前記中心軸線に直交する断面での外縁及び内縁は、同中心軸線に沿う方向に一様に、一対の円弧部を一対の直線部で繋いでなる長円又は円をなしており、
    前記弾性支持部は、前記外縁及び前記内縁が円同士とは異なる組合わせの断面を有するように形成されていることを特徴とするステアリングホイールの制振構造。
  2. 前記外縁及び前記内縁はともに長円をなしており、
    前記弾性支持部は、両長円の間隔が均一な断面を有するように形成されている請求項1に記載のステアリングホイールの制振構造。
  3. 前記外縁及び前記内縁はともに長円をなしており、
    前記弾性支持部は、前記外縁の円弧部及び前記内縁の円弧部間の間隔と、前記外縁の直線部及び前記内縁の直線部間の間隔とが異なる断面を有するように形成されている請求項1に記載のステアリングホイールの制振構造。
  4. 前記外縁は円をなし、前記内縁は長円をなしており、
    前記弾性支持部は、前記長円の円弧部及び前記円間の間隔と、前記長円の直線部及び前記円間の間隔とが異なる断面を有するように形成されている請求項1に記載のステアリングホイールの制振構造。
  5. 前記外縁は長円をなし、前記内縁は円をなしており、
    前記弾性支持部は、前記長円の円弧部及び前記円間の間隔と、前記長円の直線部及び前記円間の間隔とが異なる断面を有するように形成されている請求項1に記載のステアリングホイールの制振構造。
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