JP2013206634A - マイクロ波放射アンテナ、マイクロ波プラズマ源およびプラズマ処理装置 - Google Patents

マイクロ波放射アンテナ、マイクロ波プラズマ源およびプラズマ処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロ波放射アンテナからマイクロ波および処理ガスを供給して、その表面に均一性の高い表面波プラズマを形成することができるマイクロ波放射アンテナを提供すること。
【解決手段】マイクロ波伝送路を伝送されたマイクロ波をチャンバ内に放射し、表面波プラズマを生成するためのマイクロ波放射アンテナ45であって、導体からなるアンテナ本体121と、アンテナ本体121に設けられた、マイクロ波を放射する複数のスロット122と、アンテナ本体121に設けられた、処理ガスをチャンバ内に吐出する複数のガス吐出孔125とを有し、マイクロ波により表面に金属表面波が形成されて、この金属表面波により表面波プラズマが生成され、アンテナ本体121の金属表面の少なくとも一部が表面波プラズマから直流的に絶縁されるように誘電体層126が設けられている。
【選択図】図4

Description

本発明は、マイクロ波放射アンテナ、マイクロ波プラズマ源およびプラズマ処理装置に関する。
プラズマ処理は、半導体デバイスの製造に不可欠な技術であるが、近時、LSIの高集積化、高速化の要請からLSIを構成する半導体素子のデザインルールが益々微細化され、また、半導体ウエハが大型化されており、それにともなって、プラズマ処理装置においてもこのような微細化および大型化に対応するものが求められている。
ところが、従来から多用されてきた平行平板型や誘導結合型のプラズマ処理装置では、生成されるプラズマの電子温度が高いため微細素子にプラズマダメージを生じてしまい、また、プラズマ密度の高い領域が限定されるため、大型の半導体ウエハを均一かつ高速にプラズマ処理することは困難である。
そこで、高密度で低電子温度の表面波プラズマを均一に形成することができるRLSA(Radial Line Slot Antenna)マイクロ波プラズマ処理装置が注目されている(例えば特許文献1)。
RLSAマイクロ波プラズマ処理装置は、表面波プラズマを発生させるためのマイクロ波を放射するマイクロ波放射アンテナとしてチャンバの上部に所定のパターンで複数のスロットが形成された平面スロットアンテナであるラジアルラインスロットアンテナ(Radial Line Slot Antenna)を設け、マイクロ波発生源から導かれたマイクロ波を、アンテナのスロットから放射させるとともに、その下に設けられた誘電体からなるマイクロ波透過板を介して真空に保持されたチャンバ内に放射し、このマイクロ波電界によりチャンバ内で表面波プラズマを生成し、これにより半導体ウエハ等の被処理体を処理するものである。
また、マイクロ波を複数に分配し、上記のようなマイクロ波放射アンテナである平面スロットアンテナを有するマイクロ波放射部を複数設け、平面スロットアンテナから放射されたマイクロ波をチャンバ内に導きチャンバ内でマイクロ波を空間合成してプラズマを生成するプラズマ処理装置も提案されている(特許文献2)。
特開2000−294550号公報 国際公開第2008/013112号パンフレット
ところで、特許文献1、2に記載された処理装置では、マイクロ波はチャンバの天壁から導入されるのに対し、処理ガスはチャンバの側壁またはチャンバ内に設けられたシャワープレートから供給されている。しかしながら、これらの場合にはガスの流れを制御することが難しい。また、シャワープレートはプラズマ耐性のある石英で形成せざるを得ないが、マイクロ波は石英を透過するため、シャワープレートのガス孔でガスがプラズマ化してマイクロ波パワーが損失したり異常放電が生じたりするという問題点がある。
このような不都合を防止するために、金属(導体)製のマイクロ波放射アンテナをガス孔を有するシャワー構造として、マイクロ波とガスを同じ部分から導入することが考えられる。この場合には、ガスは金属製のマイクロ波放射アンテナから放射されるため、ガスはシャワープレートが介在することによるマイクロ波の影響を受けずに吐出され、平面スロットアンテナの表面に金属表面波プラズマを形成することができる。
しかしながら、このようにマイクロ波を放射する面が金属の場合には、プラズマがスロット周辺に集中して発光し、径方向の均一性が乱れてしまうことが判明した。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、マイクロ波放射アンテナからマイクロ波および処理ガスを供給して、その表面に均一性の高い表面波プラズマを形成することができるマイクロ波放射アンテナ、マイクロ波プラズマ源およびプラズマ処理装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、チャンバ内に表面波プラズマを形成してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置において、マイクロ波生成機構で生成され、マイクロ波伝送路を伝送されたマイクロ波をチャンバ内に放射するマイクロ波放射アンテナであって、導体からなるアンテナ本体と、前記アンテナ本体に設けられた、マイクロ波を放射する複数のスロットと、前記アンテナ本体に設けられた、処理ガスを前記チャンバ内に吐出する複数のガス吐出孔とを有し、前記マイクロ波により表面に金属表面波が形成されて、この金属表面波により表面波プラズマが生成され、前記アンテナ本体の金属表面の少なくとも一部が前記表面波プラズマから直流的に絶縁されるように構成されていることを特徴とするマイクロ波放射アンテナを提供する。
上記第1の観点において、前記アンテナ本体の表面の少なくとも一部を、金属表面波を維持可能な厚さの誘電体層で覆うことにより絶縁することができる。この場合に、前記誘電体層の厚さは、真空中のマイクロ波の波長をλとしたときに、λ/7以下であることが好ましい。
前記誘電体層は、膜形成技術により形成された膜であってもよいし、また、誘電体薄板で形成されていてもよい。誘電体薄板を用いる場合には、誘電体薄板は、前記アンテナ本体との対向面の一部に、前記スロットおよび前記ガス吐出孔を除いたパターンを有する金属膜を有するものであることが好ましい。この場合に、前記複数のスロットは、前記アンテナ本体の表面において、円周状に配置されており、前記金属膜は、前記誘電体薄板の中心から前記スロットの外径に対応する位置の範囲に設けられていることが好ましい。また、前記アンテナ本体は、前記チャンバから直流的に絶縁してもよい。
本発明の第2の観点では、プラズマ処理装置のチャンバ内にマイクロ波を放射して表面波プラズマを形成するマイクロ波プラズマ源であって、マイクロ波を生成して出力するマイクロ波出力部と、前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を伝送し前記チャンバ内に放射するためのマイクロ波供給部とを具備し、前記マイクロ波供給部は、上記第1の観点のマイクロ波放射アンテナを備えることを特徴とするマイクロ波プラズマ源を提供する。
上記第2の観点において、前記マイクロ波供給部は、前記マイクロ波放射アンテナを複数有するものとすることができる。
本発明の第3の観点では、被処理基板を収容するチャンバと、処理ガスを供給するガス供給機構と、上記第2の観点のマイクロ波プラズマ源とを具備し、前記マイクロ波プラズマ源から前記チャンバ内に供給されたマイクロ波により前記マイクロ波放射アンテナの表面に形成される金属表面波により、前記ガス供給機構から供給されたガスによる表面波プラズマを生成し、前記チャンバ内の被処理基板に対してプラズマにより処理を施すことを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
本発明によれば、アンテナ本体の金属表面の少なくとも一部が表面波プラズマから直流的に絶縁されるように構成したので、絶縁された部分のシースを厚くすることができ、金属表面波が遮断されることがなく、表面波プラズマが十分に広がり、表面に均一性の高い表面波プラズマを生成することができる。
本発明の一実施形態に係るマイクロ波放射アンテナを有するマイクロ波プラズマ源を備えたプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。 図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源の構成を示す構成図である。 マイクロ波プラズマ源におけるマイクロ波供給部を模式的に示す平面図である。 図1のプラズマ処理装置に用いられる、マイクロ波放射アンテナを含むマイクロ波放射部を示す縦断面図である。 マイクロ波放射部の給電機構を示す図4のAA′線による横断面図である。 チューナにおけるスラグと滑り部材を示す図4のBB′線による横断面図である。 マイクロ波放射アンテナの内部を示す図4のCC′線による横断面図である。 マイクロ波放射アンテナのスロットの形状および配置の一例を示す平面図である。 マイクロ波放射アンテナの表面が金属(導体)の場合のスロット部分とスロット以外の部分とでのシース厚さの違いを示す図である。 マイクロ波放射アンテナの表面に誘電体層を設けた場合のスロット部分とスロット以外の部分とでのシース厚を示す図である。 マイクロ波放射アンテナのアンテナ本体に誘電体層を形成しない場合と形成した場合における表面波プラズマの状態を示す図である。 マイクロ波放射アンテナのアンテナ本体に誘電体層を形成しない場合と形成した場合における電子密度分布を示す図である。 図12の径方向の距離が0の位置の電子密度で規格化した電子密度の分布を示す図である。 誘電体層として誘電体薄板を用いた場合に、アンテナ本体と誘電体薄板との隙間で異常放電が生じるメカニズムを説明するための図である。 電磁界シミュレーションにより求めたアンテナ本体と誘電体薄板との隙間における電界部分布を示す図である。 誘電体薄板のアンテナ本体との対向面の全面に金属膜をコーティングした場合の電磁界シミュレーションにより求めたアンテナ本体と誘電体薄板との隙間における電界部分布を示す図である。 誘電体薄板に形成した金属膜を、誘電体薄板のスロットの内側領域にした場合の状態を模式的に示す図である。 図17の状態で金属膜を形成した誘電体薄板を用いた場合の電磁界シミュレーションにより求めたアンテナ本体と誘電体薄板との隙間における電界部分布を示す図である。 誘電体薄板に形成した金属膜を、誘電体薄板のスロットの内側領域でかつ最外周をスロットの外径に合わせた状態を模式的に示す図である。 図19の状態で金属膜を形成した誘電体薄板を用いた場合の電磁界シミュレーションにより求めたアンテナ本体と誘電体薄板との隙間における電界部分布を示す図である。 誘電体薄板を設けた場合の好ましいマイクロ波放射アンテナの例を示す断面図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<プラズマ処理装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波放射アンテナを有するマイクロ波プラズマ源を備えたプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図であり、図2は図1のプラズマ処理装置に用いられるマイクロ波プラズマ源の構成を示す構成図、図3はマイクロ波プラズマ源におけるマイクロ波供給部を模式的に示す平面図、図4はマイクロ波プラズマ源におけるマイクロ波放射アンテナを含むマイクロ波放射部を示す断面図、図5はマイクロ波放射部の給電機構を示す図4のAA′線による横断面図、図6はマイクロ波放射部のチューナにおけるスラグと滑り部材を示す図4のBB′線による横断面図、図7はマイクロ波放射部のマイクロ波照射アンテナを示す図4のCC′線による横断面図である。
である。
プラズマ処理装置100は、ウエハに対してプラズマ処理として例えばエッチング処理を施すプラズマエッチング装置として構成されており、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の接地されたチャンバ1と、チャンバ1内にマイクロ波プラズマを形成するためのマイクロ波プラズマ源2とを有している。チャンバ1の上部には開口部1aが形成されており、マイクロ波プラズマ源2はこの開口部1aからチャンバ1の内部に臨むように設けられている。
チャンバ1内には被処理体である半導体ウエハW(以下ウエハWと記述する)を水平に支持するためのサセプタ11が、チャンバ1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持された状態で設けられている。サセプタ11および支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウムや、AlNなどのセラミックス等が例示される。
また、図示はしていないが、サセプタ11には、ウエハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウエハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路、およびウエハWを搬送するために昇降する昇降ピン等が設けられている。さらに、サセプタ11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が電気的に接続されている。この高周波バイアス電源14からサセプタ11に高周波電力が供給されることにより、ウエハW側にプラズマ中のイオンが引き込まれる。なお、高周波バイアス電源14はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
チャンバ1の底部には排気管15が接続されており、この排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。そしてこの排気装置16を作動させることによりチャンバ1内が排気され、チャンバ1内を所定の真空度まで高速に減圧することが可能となっている。また、チャンバ1の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口17と、この搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
マイクロ波プラズマ源2は、チャンバ1の上部に設けられた支持リング29により支持された天板85上に設けられている。支持リング29と天板85との間は気密にシールされている。
マイクロ波プラズマ源2は、複数経路に分配してマイクロ波を出力するマイクロ波出力部30と、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送しチャンバ1内に放射するためのマイクロ波供給部40とを有している。また、マイクロ波プラズマ源2は、プラズマを生成するためのプラズマ生成ガスや、成膜処理やエッチング処理を行うための処理ガスを供給するガス供給源110を有している。
プラズマ生成ガスとしては、Arガス等の希ガスを好適に用いることができる。また、処理ガスとしては、成膜処理やエッチング処理等、処理の内容に応じて種々のものを採用することができる。
図2に示すように、マイクロ波出力部30は、マイクロ波電源31と、マイクロ波発振器32と、発振されたマイクロ波を増幅するアンプ33と、増幅されたマイクロ波を複数に分配する分配器34とを有している。
マイクロ波発振器32は、所定周波数(例えば、915MHz)のマイクロ波を例えばPLL発振させる。分配器34では、マイクロ波の損失ができるだけ起こらないように、入力側と出力側のインピーダンス整合を取りながらアンプ33で増幅されたマイクロ波を分配する。なお、マイクロ波の周波数としては、915MHzの他に、700MHzから3GHzを用いることができる。
マイクロ波供給部40は、分配器34にて分配されたマイクロ波をチャンバ1内へ導く複数のアンテナモジュール41を有している。各アンテナモジュール41は、分配されたマイクロ波を主に増幅するアンプ部42と、マイクロ波放射部43とを有している。また、マイクロ波放射部43は、インピーダンスを整合させるためのチューナ60と、増幅されたマイクロ波をチャンバ1内に放射するアンテナ45とを有している。そして、各アンテナモジュール41におけるマイクロ波放射部43のアンテナ45からチャンバ1内へマイクロ波が放射されるようになっている。図3に示すように、マイクロ波供給部40は、アンテナモジュール41を7個有しており、各アンテナモジュール41のマイクロ波放射部43が、円周状に6個およびその中心に1個、円形をなす天板85に配置されている。
アンテナ45は、後述するように、プラズマ生成ガスや処理ガスを吐出するシャワー構造となっており、ガス供給源110から延びるガス配管111がアンテナ45に接続されている。そして、アンテナ45からチャンバ1内に導入されたプラズマ生成ガスは、アンテナ45から放射されたマイクロ波によりプラズマ化され、このプラズマにより、同じくアンテナ45からチャンバ1内に導入された処理ガスが励起され、処理ガスのプラズマが生成される。
アンプ部42は、位相器46と、可変ゲインアンプ47と、ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48と、アイソレータ49とを有している。
位相器46は、マイクロ波の位相を変化させることができるように構成されており、これを調整することにより放射特性を変調させることができる。例えば、各アンテナモジュール毎に位相を調整することにより指向性を制御してプラズマ分布を変化させることができる。また、隣り合うアンテナモジュールにおいて90°ずつ位相をずらすようにして円偏波を得ることができる。また、位相器46は、アンプ内の部品間の遅延特性を調整し、チューナ内での空間合成を目的として使用することができる。ただし、このような放射特性の変調やアンプ内の部品間の遅延特性の調整が不要な場合には位相器46は設ける必要はない。
可変ゲインアンプ47は、メインアンプ48へ入力するマイクロ波の電力レベルを調整し、個々のアンテナモジュールのばらつきを調整またはプラズマ強度調整のためのアンプである。可変ゲインアンプ47を各アンテナモジュール毎に変化させることによって、発生するプラズマに分布を生じさせることもできる。
ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48は、例えば、入力整合回路と、半導体増幅素子と、出力整合回路と、高Q共振回路とを有する構成とすることができる。
アイソレータ49は、アンテナ45で反射してメインアンプ48に向かう反射マイクロ波を分離するものであり、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、アンテナ45で反射したマイクロ波をダミーロードへ導き、ダミーロードはサーキュレータによって導かれた反射マイクロ波を熱に変換する。
次に、図4〜7を参照して、マイクロ波放射部43について詳細に説明する。
図4に示すように、マイクロ波放射部43は、マイクロ波を伝送する同軸構造の導波路(マイクロ波伝送路)44と、マイクロ波伝送路44を伝送されたマイクロ波をチャンバ1内に放射するアンテナ45とを有している。そして、アンテナ45からチャンバ1内に放射されたマイクロ波がチャンバ1内の空間で合成され、チャンバ1内で表面波プラズマが形成されるようになっている。
マイクロ波伝送路44は、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた棒状の内側導体53が同軸状に配置されて構成されており、マイクロ波伝送路44の先端にアンテナ45が設けられている。マイクロ波伝送路44においては、内側導体53に給電され、外側導体52が接地されている。外側導体52および内側導体53の上端には反射板58が設けられている。
マイクロ波伝送路44の基端側にはマイクロ波(電磁波)を給電する給電機構54が設けられている。給電機構54は、マイクロ波伝送路44(外側導体52)の側面に設けられたマイクロ波電力を導入するためのマイクロ波電力導入ポート55を有している。マイクロ波電力導入ポート55には、アンプ部42から増幅されたマイクロ波を供給するための給電線として、内側導体56aおよび外側導体56bからなる同軸線路56が接続されている。そして、同軸線路56の内側導体56aの先端には、外側導体52の内部に向けて水平に伸びる給電アンテナ90が接続されている。
給電アンテナ90は、例えば、アルミニウム等の金属板を削り出し加工した後、テフロン(登録商標)等の誘電体部材の型にはめて形成される。反射板58から給電アンテナ90までの間には、反射波の実効波長を短くするためのテフロン(登録商標)等の誘電体からなる遅波材59が設けられている。なお、2.45GHz等の周波数の高いマイクロ波を用いた場合には、遅波材59は設けなくてもよい。このとき、給電アンテナ90から反射板58までの距離を最適化し、給電アンテナ90から放射される電磁波を反射板58で反射させることで、最大の電磁波を同軸構造のマイクロ波伝送路44内に伝送させる。
給電アンテナ90は、図4のAA′断面図である図5に示すように、マイクロ波電力導入ポート55において同軸線路56の内側導体56aに接続され、電磁波が供給される第1の極92および供給された電磁波を放射する第2の極93を有するアンテナ本体91と、アンテナ本体91の両側から、内側導体53の外側に沿って延び、リング状をなす反射部94とを有し、アンテナ本体91に入射された電磁波と反射部94で反射された電磁波とで定在波を形成するように構成されている。アンテナ本体91の第2の極93は内側導体53に接触している。
給電アンテナ90がマイクロ波(電磁波)を放射することにより、外側導体52と内側導体53との間の空間にマイクロ波電力が給電される。そして、給電機構54に供給されたマイクロ波電力がアンテナ45に向かって伝播する。
また、マイクロ波伝送路44にはチューナ60が設けられている。チューナ60は、チャンバ1内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させるものであり、外側導体52と内側導体53との間のマイクロ波伝送路44を上下に移動する2つのスラグ61a,61bと、反射板58の外側(上側)に設けられたスラグ駆動部70とを有している。
これらスラグのうち、スラグ61aはスラグ駆動部70側に設けられ、スラグ61bはアンテナ45側に設けられている。また、内側導体53の内部空間には、その長手方向に沿って例えば台形ネジが形成された螺棒からなるスラグ移動用の2本のスラグ移動軸64a,64bが設けられている。
図4のBB′断面図である図6に示すように、スラグ61aは、誘電体からなる円環状をなし、その内側に滑り性を有する樹脂からなる滑り部材63が嵌め込まれている。滑り部材63にはスラグ移動軸64aが螺合するねじ穴65aとスラグ移動軸64bが挿通される通し穴65bが設けられている。一方、スラグ61bは、スラグ61aと同様、ねじ穴65aと通し穴65bとを有しているが、スラグ61aとは逆に、ねじ穴65aはスラグ移動軸64bに螺合され、通し穴65bにはスラグ移動軸64aが挿通されるようになっている。これによりスラグ移動軸64aを回転させることによりスラグ61aが昇降移動し、スラグ移動軸64bを回転させることによりスラグ61bが昇降移動する。すなわち、スラグ移動軸64a,64bと滑り部材63とからなるねじ機構によりスラグ61a,61bが昇降移動される。
内側導体53には長手方向に沿って等間隔に3つのスリット53aが形成されている。一方、滑り部材63は、これらスリット53aに対応するように3つの突出部63aが等間隔に設けられている。そして、これら突出部63aがスラグ61a,61bの内周に当接した状態で滑り部材63がスラグ61a,61bの内部に嵌め込まれる。滑り部材63の外周面は、内側導体53の内周面と遊びなく接触するようになっており、スラグ移動軸64a,64bが回転されることにより、滑り部材63が内側導体53を滑って昇降するようになっている。すなわち内側導体53の内周面がスラグ61a,61bの滑りガイドとして機能する。
滑り部材63を構成する樹脂材料としては、良好な滑り性を有し、加工が比較的容易な樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を好適なものとして挙げることができる。
上記スラグ移動軸64a,64bは、反射板58を貫通してスラグ駆動部70に延びている。スラグ移動軸64a,64bと反射板58との間にはベアリング(図示せず)が設けられている。また、内側導体53の下端には、導体からなる底板67が設けられている。スラグ移動軸64a,64bの下端は、駆動時の振動を吸収するために、通常は開放端となっており、これらスラグ移動軸64a,64bの下端から2〜5mm程度離隔して底板67が設けられている。なお、この底板67を軸受け部としてスラグ移動軸64a,64bの下端をこの軸受け部にて軸支させてもよい。
スラグ駆動部70は筐体71を有し、スラグ移動軸64aおよび64bは筐体71内に延びており、スラグ移動軸64aおよび64bの上端には、それぞれ歯車72aおよび72bが取り付けられている。また、スラグ駆動部70には、スラグ移動軸64aを回転させるモータ73aと、スラグ移動軸64bを回転させるモータ73bが設けられている。モータ73aの軸には歯車74aが取り付けられ、モータ73bの軸には歯車74bが取り付けられており、歯車74aが歯車72aに噛合し、歯車74bが歯車72bに噛合するようになっている。したがって、モータ73aにより歯車74aおよび72aを介してスラグ移動軸64aが回転され、モータ73bにより歯車74bおよび72bを介してスラグ移動軸64bが回転される。なお、モータ73a,73bは例えばステッピングモータである。
なお、スラグ移動軸64bはスラグ移動軸64aよりも長く、より上方に達しており、したがって、歯車72aおよび72bの位置が上下にオフセットしており、モータ73aおよび73bも上下にオフセットしているので、モータおよび歯車等の動力伝達機構のスペースが小さく、筐体71が外側導体52と同じ径となっている。
モータ73aおよび73bの上には、これらの出力軸に直結するように、それぞれスラグ61aおよび61bの位置を検出するためのインクリメント型のエンコーダ75aおよび75bが設けられている。
スラグ61aおよび61bの位置は、スラグコントローラ68により制御される。具体的には、図示しないインピーダンス検出器により検出された入力端のインピーダンス値と、エンコーダ75aおよび75bにより検知されたスラグ61aおよび61bの位置情報に基づいて、スラグコントローラ68がモータ73aおよび73bに制御信号を送り、スラグ61aおよび61bの位置を制御することにより、インピーダンスを調整するようになっている。スラグコントローラ68は、終端が例えば50Ωになるようにインピーダンス整合を実行させる。2つのスラグのうち一方のみを動かすと、スミスチャートの原点を通る軌跡を描き、両方同時に動かすと位相のみが回転する。
マイクロ波放射アンテナであるアンテナ45は、平面状をなしスロットを有する平面スロットアンテナとして構成される。アンテナ45の上面には遅波材82が設けられている。遅波材82の中心には導体からなる円柱部材82aが貫通しており、この円柱部材82aが底板67とアンテナ45とを接続している。したがって、内側導体53が底板67および円柱部材82aを介してアンテナ45に接続されている。なお、外側導体52の下端はアンテナ45まで延びており、遅波材82の周囲は外側導体52で覆われている。
遅波材82は、真空よりも大きい誘電率を有しており、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により構成されており、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてアンテナを小さくする機能を有している。遅波材82は、その厚さによりマイクロ波の位相を調整することができ、アンテナ45の表面(マイクロ波放射面)が定在波の「はら」になるようにその厚さを調整する。これにより、反射が最小で、マイクロ波の放射エネルギーが最大となるようにすることができる。
アンテナ45は、図4に示すように、円板状をなすアンテナ本体121と、アンテナ本体121に形成された、マイクロ波伝送路44を伝送されてきたマイクロ波をチャンバ1内に放射するための複数のスロット122と、アンテナ本体121の内部に形成されたガス拡散空間123と、ガス拡散空間123にプラズマ生成ガスや処理ガスを導入するガス導入口124と、ガス拡散空間123からチャンバ1に臨むように延びる複数のガス吐出孔125と、アンテナ本体121のマイクロ波放射面に形成された誘電体層126とを有する。遅波材82とアンテナ本体121との間にはOリング(図示せず)が介在されている。
アンテナ本体121は導電体で形成されている。アンテナ本体121を構成する導電体としてはアルミニウムや銅のような電気伝導率の高い金属が好ましい。アンテナ本体121は、上部壁121aと、側壁121bと、底壁121cとを有している。
上記ガス導入口124は、上部壁121aのスロット122の外周側に設けられており、ガス供給源110から延びるガス配管111が接続され、ガス供給源110からガス配管111を供給されてきたAr等のプラズマ生成ガスや、Cのような炭化フッ素ガス等の処理ガスが、ガス導入口124を介してガス拡散空間123に導入される。ガス吐出孔125は、底壁121cに形成され、ガス拡散空間123に導入されたガスをチャンバ1内に吐出するようになっている。
スロット122は、上部壁121aからガス拡散空間123を貫通して形成された上部122Aと、底壁121cを貫通して形成された下部122Bとを有している。スロット122の上部122Aにおけるガス拡散空間123に対応する部分には、図4のCC′断面図である図7に示すように、ガス拡散空間123とを仕切る仕切り部127が形成されている。これにより、スロット122を通過するマイクロ波とガス拡散空間123を流れるガスとが分離され、アンテナ45の内部でプラズマが生成されることが回避される。
上部122Aと下部122Bとの間には、後述する段差が形成されている。スロット122内には誘電体が充填されていてもよい。スロット122に誘電体を充填することにより、マイクロ波の実効波長が短くなり、スロット全体の厚さ(アンテナ本体121の厚さ)を薄くすることができる。
スロット122の放射特性を決定するマイクロ波放射面でのスロット122の形状は、例えば、図8に示すようになっている。具体的には、4個のスロット122が全体形状が円周状になるように均等に形成されている。これらスロット122は全て同じ形状であり、円周に沿って細長い形状に形成されている。これらスロット122は、アンテナ本体121のマイクロ波放射面の中心Oに対して対称に配置されている。
スロット122の円周方向の長さは(λg/2)−δであり、スロット122の中心位置にマイクロ波電界強度のピークがくるように設計されている。ただし、λgはマイクロ波の実効波長であり、δは円周方向(角度方向)に電界強度の均一性が高くなるように微調整する微調整成分(0を含む)である。λgは、
λg=λ/ε 1/2
と表すことができる。ただし、εsはスロットの誘電率であり、λは真空中のマイクロ波の波長である。なお、スロット122の長さは約λg/2に限らず、λg/2の整数倍から微調整成分(0を含む)を引いたものであればよい。
スロット122のうち隣接するもの同士の継ぎ目部分は、一方のスロット122の端部と他方のスロット122の端部とが径方向に所定間隔をおいて内外で重なるように構成されている。これにより、周方向にスロットが存在しない部分がないようにされ周方向の放射特性が均一になるように設計されている。スロット122は、円周方向に沿って中央部122aと左側端部122bと右側端部122cの3つの部分に分かれており、左側端部122bおよび右側端部122cが略扇形(円弧状)をなし、これらがそれぞれ外周側および内周側に配置され、中央部122aは、これらを繋ぐ直線状となっている。そして、左側端部122bと隣接するスロットの右側端部とが、左側端部122bが上になるように配置され、右側端部122cと隣接するスロットの左側端部とが、右側端部122cが下になるように配置される。中央部122aと左側端部122bと右側端部122cとは、略均等の長さを有している。すなわち、中央部122aが(λg/6)−δ、その両側の左側端部122bおよび右側端部122cがそれぞれ(λg/6)−δおよび(λg/6)−δの長さとなる。ただし、δ,δ、δは円周方向(角度方向)に電界強度の均一性が高くなるように微調整する微調整成分(0を含む)である。隣接するスロットがオーバーラップする部分の長さは等しいほうが好ましいので、δ=δであることが好ましい。
スロット122は、その内周が、アンテナ本体121のマイクロ波放射面の中心から(λg/4)±δ′の位置になるように形成される。ただし、δ′は径方向の電界強度分布を均一にするために微調整する微調整成分(0を含む)である。なお、中心からスロット内周までの長さは約λg/4に限らず、λg/4の整数倍に微調整成分(0を含む)を加えたものであればよい。
このようなアンテナ45は、電界強度が低いスロットの端部を重ねて配置することにより、その部分の電界強度を高くすることができ、結果的に、周方向(角度方向)の電界強度分布を均一にすることができる。
なお、スロットの数は4個に限らず、例えば5個以上であっても同様の効果を得ることができる。また、スロット形状は図8のものに限らず、例えば複数の円弧状のスロットが円周上に均等に形成されたもの等他のものであってもよい。
スロット122の上部122Aでは、左側端部122bと右側端部122cのオーバーラップ部分の間隔が下部122Bでの間隔より広くなっており、そのため、上部122Aと下部122Bとの間に段差が形成されている。このように上部122Aにおいて左側端部122bと右側端部122cのオーバーラップ部分の間隔を広くすることにより、ガス拡散空間123におけるガスのコンダクタンスを大きくしてガス流速の均一性を高めることができる。
誘電体層126は、石英等の誘電体からなり、アンテナ45の表面をプラズマに対して浮遊電位にするために設けられる。すなわち、誘電体層126により、アンテナ本体121の金属(導体)表面とプラズマとを直流的に絶縁する。また、異常放電を防止する観点から、アンテナ45の全体を接地せずに浮遊電位としてもよい。例えば、外側導体52とアンテナ45との間、および天板85とアンテナ45との間を絶縁することにより、アンテナ45を接地されている外側導体52およびチャンバ1と絶縁して全体を浮遊電位とすることができる。
誘電体層126は、アンテナ45の表面に金属表面波が形成されるように、λ/7以下の厚さとなるようにする(λは真空中のマイクロ波の波長)。誘電体層126は、溶射等の膜形成技術により形成された膜であってもよいし、板状であってもよい。
アンテナ45には、直流電圧を印加するようにすることもできる。これにより、マイクロ波電力を印加した場合に、アンテナ45の表面に形成される金属表面波を伝播するシースの厚さを制御することができる。これにより、プラズマの電子密度分布、イオン密度分布、ラジカル密度分布を最適化することができる。
本実施形態において、メインアンプ48と、チューナ60と、アンテナ45とは近接配置している。そして、チューナ60とアンテナ45とは1/2波長内に存在する集中定数回路を構成しており、かつアンテナ45、遅波材82は合成抵抗が50Ωに設定されているので、チューナ60はプラズマ負荷に対して直接チューニングしていることになり、効率良くプラズマへエネルギーを伝達することができる。
プラズマ処理装置100における各構成部は、マイクロプロセッサを備えた制御部140により制御されるようになっている。制御部140はプラズマ処理装置100のプロセスシーケンスおよび制御パラメータであるプロセスレシピを記憶した記憶部や、入力手段およびディスプレイ等を備えており、選択されたプロセスレシピに従ってプラズマ処理装置を制御するようになっている。
<プラズマ処理装置の動作>
次に、以上のように構成されるプラズマ処理装置100における動作について説明する。
まず、ウエハWをチャンバ1内に搬入し、サセプタ11上に載置する。そして、ガス供給源110からガス配管111を介してプラズマ生成ガス、例えばArガスをアンテナ45のガス拡散空間123に導入し、ガス吐出孔125から吐出しつつ、マイクロ波プラズマ源2のマイクロ波出力部30から、マイクロ波供給部40の各アンテナモジュール41のアンプ部42およびマイクロ波放射部43を伝送されてきたマイクロ波をアンテナ45のスロット122からチャンバ1内に放射して、アンテナ45の表面に金属表面波を形成し、表面波プラズマを生成する。また、同じくガス供給源110からガス配管111を介してガス拡散空間123に導入された処理ガスがガス吐出孔125からチャンバ1内に吐出し、表面波プラズマにより励起されてプラズマ化し、この処理ガスのプラズマによりウエハWにプラズマ処理、例えばエッチング処理が施される。
上記表面波プラズマを生成するに際し、マイクロ波プラズマ源2では、マイクロ波出力部30のマイクロ波発振器32から発振されたマイクロ波電力はアンプ33で増幅された後、分配器34により複数に分配され、分配されたマイクロ波電力はマイクロ波供給部40へ導かれる。マイクロ波供給部40においては、このように複数に分配されたマイクロ波電力が、ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48で個別に増幅され、マイクロ波放射部43のマイクロ波伝送路44に給電され、マイクロ波伝送路44を伝送され、遅波材82を透過し、アンテナ45のスロット122を介して放射される。そして、アンテナ45表面に形成されるシース中に金属表面波が形成され、この表面波によりチャンバ1内の空間に表面波プラズマを生成する。
本実施形態では、マイクロ波もガスも天板85に設けられたアンテナ45からチャンバ1内に導入されるので、ガスの流れの制御性を良好にすることができ、またマイクロ波の放射方向とガスの流れ方向が重なり、ガスを効率的にプラズマ化することができる。
また、アンテナ45は金属(導体)製であるから、マイクロ波は透過せず、ガスがガス拡散室123およびガス吐出孔125を通過する際にガスがプラズマ化して生じるパワー損失や異常放電等の不都合は生じない。さらに、従来、アンテナ45の先端側に設けられていた比較的厚い誘電体部材(マイクロ波透過窓)にシャワー構造を形成しようとすると、異常放電等の問題に加えて、加工が難しいという問題点もあるが、本実施形態のように金属製のアンテナ45には比較的容易にガス吐出孔125を形成することができる。
しかしながら、このように金属製のマイクロ波放射アンテナの表面に表面波プラズマを形成した場合には、プラズマがスロット122周辺に集中して発光(発生)し、径方向の均一性が乱れてしまうことが判明した。
この原因を検討した結果、スロット部分とスロット以外の部分とでシース厚さが異なることが原因であることが判明した。すなわち、図9に示すように、スロット部分は誘電体であり、浮遊電位となるため、プラズマとの電位差は大きくなり(図9(a))、シースの厚さはプラズマ状態に応じた厚さ(自己バイアス電圧Vdcの1/2乗に比例)となるのに対し、スロット部分以外の部分は金属であり、接地されているため、プラズマとの電位差が小さくなり、シースが薄くなる(図9(b))。このようにシースが薄くなった領域では、マイクロ波の反射および減衰が生じ、表面波は遮断される。このためその部分では表面波プラズマが十分に生成されず発光が弱くなる。すなわち、スロット部分以外の部分に表面波プラズマが十分に広がらない。
そこで、本実施形態では、マイクロ波放射アンテナであるアンテナ45の表面に誘電体層126を設け、スロット部分以外の部分もプラズマに対して浮遊電位となるようにする。すなわち、誘電体層126により、アンテナ本体121の金属(導体)表面とプラズマとを直流的に絶縁することにより、スロット部分のみならず、スロット部分以外も浮遊電位とする。これにより、アンテナ45の表面のスロット部分以外の部分のシースが図10(b)に示すように厚くなり、図10(a)に示すスロット部分のシース厚と同程度になるため、金属表面波が遮断されずに、表面波プラズマが十分に生成されるようになる。このため、スロット部分以外の部分にも表面波プラズマが十分に広がり、径方向に均一な表面波プラズマを生成することができる。また、誘電体層126は薄くてよいことから、ガス吐出孔やスロットの加工は容易である。
なお、誘電体層126は、必ずしもアンテナ本体121の全面に形成する必要はなく、少なくとも一部に形成すればよい。
実際に、誘電体層126を形成しない場合と、形成した場合とでプラズマ生成実験を行った。ここでは、誘電体層126は膜として形成し、プラズマ生成ガスとしてArガスを用い、圧力:0.5Torr、マイクロ波パワー:400W、および圧力:1Torr、マイクロ波パワー:100W,125Wの条件でプラズマを生成した。
その結果を図11〜図13に示す。図11はプラズマの発光状態を示すものであり、誘電体層126を形成しない場合には、(a)に示すように、表面波プラズマが十分に広がっていないのに対し、誘電体層126を形成した場合には、(b)に示すように、表面波プラズマが十分に広がっていることがわかる。また、図12は横軸に径方向の距離をとり、縦軸に電子密度をとって、電子密度分布を示す図であり、図13は図12の径方向の距離が0の位置の電子密度で規格化した電子密度の分布を示すものである。これらの図から、誘電体層126を設けることにより、表面波プラズマが広がり、より均一な電子密度分布が得られることがわかる。
ところで、金属に石英等の誘電体を溶射等により膜形成することは必ずしも容易ではない。これに対し、誘電体層126として、誘電体薄板を用いることは比較的容易である。したがって、誘電体層126として誘電体薄板を用いることが製造上好ましい。
しかし、誘電体層126として誘電体薄板を用いる場合には、アンテナ本体121と誘電体薄板との間にわずかな隙間(0.3〜0.5mm程度)が不可避的に生じ、その隙間で異常放電が生じることが判明した。異常放電が生じるとプラズマへの電力伝達効率が著しく低下するため好ましくない。
このような異常放電の原因を解明するために、誘電体薄板設置時の電磁界シミュレーション解析を行った。その結果、誘電体層126としてこのような誘電体薄板を用いると、マイクロ波電力を供給した場合に、図14に示すように、アンテナ本体121と誘電体薄板126との隙間130にTE10波が伝播し、図15に示すように、特に複数のスロット122の内側領域で電界が強くなり、異常放電が生じやすくなる。
このようなTE10波を減衰させるためには、誘電体薄板のアンテナ本体121との対向面に金属膜をコーティングすることが考えられる。
ただし、誘電体薄板のスロット122およびガス吐出孔125を除いた全面にこのような金属膜をコーティングした場合、電磁界シミュレーション解析によれば、図16に示すように、アンテナ本体121と誘電体薄板126との隙間の電界がむしろ高くなってしまう。これは、全面に金属膜をコーティングすると、マイクロ波の反射の影響が大きくなるためと考えられる。
そこで、誘電体層126として誘電体薄板を用いる場合には、誘電体薄板126のアンテナ本体121との対向面の一部に金属膜をコーティングする。
次に、金属膜をコーティングする際のパターンについて検討した。
図17に示すように、誘電体薄板126の中央部(スロット122の内側領域)に金属膜をコーティングした場合について、電磁界シミュレーション解析を行った結果、図18に示すように、アンテナ本体121と誘電体薄板126との隙間の電界が低くなることが確認された。ただし、図17の場合には、スロット122のマイクロ波放射部分である下部122Bの外径よりも大きい上部122Aの外径付近の位置まで金属膜が存在しているため、スロット部の電界が高くなり、スロット部での異常放電が懸念される。
そこで、次に、図19に示すように、金属膜コーティングのパターンをスロット122のマイクロ波放射部分である下部122Bの外径に合わせて最適化した場合について、電磁界シミュレーション解析を行った結果、図20に示すように、スロット部の電界が緩和され、異常放電の可能性が低くなる。
したがって、図21に示すように、誘電体薄板126のアンテナ本体121との対向面の一部、好ましくは、中心からスロット122の外径に至る範囲に金属膜131をコーティングする。これにより、アンテナ本体121と誘電体薄板126との隙間130の異常放電を抑制することができる。
このとき、金属膜131の形成方法は、膜形成技術であれば特に限定されないが、溶射を用いることが好ましい。また、金属膜131の厚さは、5〜150μmであることが好ましい。
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の思想の範囲内において種々変形可能である。例えば、マイクロ波出力部30やマイクロ波供給部40の構成等は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、アンテナから放射されるマイクロ波の指向性制御を行ったり円偏波にしたりする必要がない場合には、位相器は不要である。また、マイクロ波放射部43において、遅波材82は必須ではない。
また、上記実施形態では複数のマイクロ波放射部を設け、それにともなってマイクロ波放射アンテナを複数設けた例について示したが、マイクロ波放射部およびマイクロ波放射アンテナは一個であってもよい。
さらに、上記実施形態においては、プラズマ処理装置としてエッチング処理装置を例示したが、これに限らず、成膜処理、酸化処理および窒化処理を含む酸窒化膜処理、アッシング処理等の他のプラズマ処理にも用いることができる。さらに、被処理基板は半導体ウエハWに限定されず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
1;チャンバ
2;マイクロ波プラズマ源
11;サセプタ
12;支持部材
15;排気管
16;排気装置
17;搬入出口
30;マイクロ波出力部
31;マイクロ波電源
32;マイクロ波発振器
40;マイクロ波供給部
41;アンテナモジュール
42;アンプ部
43;マイクロ波放射部
44;導波路
45;マイクロ波放射アンテナ
52;外側導体
53;内側導体
54;給電機構
55;マイクロ波電力導入ポート
60;チューナ
82;遅波材
85;天板
100;プラズマ処理装置
110;ガス供給源
111;ガス配管
121;アンテナ本体
122;スロット
123;ガス拡散空間
125;ガス吐出孔
126;誘電体層(誘電体薄板)
130;隙間
131;金属膜
140;制御部
W;半導体ウエハ

Claims (11)

  1. チャンバ内に表面波プラズマを形成してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置において、マイクロ波生成機構で生成され、マイクロ波伝送路を伝送されたマイクロ波をチャンバ内に放射するマイクロ波放射アンテナであって、
    導体からなるアンテナ本体と、
    前記アンテナ本体に設けられた、マイクロ波を放射する複数のスロットと、
    前記アンテナ本体に設けられた、処理ガスを前記チャンバ内に吐出する複数のガス吐出孔と
    を有し、
    前記マイクロ波により表面に金属表面波が形成されて、この金属表面波により表面波プラズマが生成され、
    前記アンテナ本体の金属表面の少なくとも一部が前記表面波プラズマから直流的に絶縁されるように構成されていることを特徴とするマイクロ波放射アンテナ。
  2. 前記アンテナ本体の表面の少なくとも一部が、金属表面波を維持可能な厚さの誘電体層で覆うことにより絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  3. 前記誘電体層の厚さは、真空中のマイクロ波の波長をλとしたときに、λ/7以下であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  4. 前記誘電体層は、膜形成技術により形成された膜であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  5. 前記誘電体層は、誘電体薄板で形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  6. 前記誘電体薄板は、前記アンテナ本体との対向面の一部に、前記スロットおよび前記ガス吐出孔を除いたパターンを有する金属膜を有することを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  7. 前記複数のスロットは、前記アンテナ本体の表面において、円周状に配置されており、前記金属膜は、前記誘電体薄板の中心から前記スロットの外径に対応する位置の範囲に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  8. 前記アンテナ本体は、前記チャンバから直流的に絶縁されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のマイクロ波放射アンテナ。
  9. プラズマ処理装置のチャンバ内にマイクロ波を放射して表面波プラズマを形成するマイクロ波プラズマ源であって、
    マイクロ波を生成して出力するマイクロ波出力部と、前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を伝送し前記チャンバ内に放射するためのマイクロ波供給部とを具備し、
    前記マイクロ波供給部は、請求項1から請求項8のいずれかのマイクロ波放射アンテナを備えることを特徴とするマイクロ波プラズマ源。
  10. 前記マイクロ波供給部は、前記マイクロ波放射アンテナを複数有することを特徴とする請求項9に記載のマイクロ波プラズマ源。
  11. 被処理基板を収容するチャンバと、
    処理ガスを供給するガス供給機構と、
    請求項9または請求項10に記載のマイクロ波プラズマ源と
    を具備し、
    前記マイクロ波プラズマ源から前記チャンバ内に供給されたマイクロ波により前記マイクロ波放射アンテナの表面に形成される金属表面波により、前記ガス供給機構から供給されたガスによる表面波プラズマを生成し、前記チャンバ内の被処理基板に対してプラズマにより処理を施すことを特徴とするプラズマ処理装置。
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