JP2013204359A - 防護用に好適なネット - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量および柔軟で、耐候性に優れ、防風用、防塵用、防雪用、防砂用、防鳥用、または防護柵に好適なネットを提供すること。
【解決手段】
合成繊維から成るメッシュ状の織編物であって、100〜500g/mの樹脂で被覆されており、引張強度が20kN/m以上かつ引張剛性が1000kN/m以下であることを特徴とするネット。

【選択図】なし

Description

本発明は、防風、防塵、防雪、防砂、防鳥、防獣等を目的とし、屋外に設置される電柱やフェンスおよび建築物の開口部に取り付けられるネットに関するものである。
従来から、防風、防塵、防雪、防砂、防鳥、防獣等を目的とし、屋外に設置される電柱やフェンスおよび建築物の開口部に設置されるネットとして、合成繊維の織編物やさらに合成繊維を樹脂加工したネットが広く使用されている。こうした合成繊維ネットは、繊維繊度や織編物組織の設計により、自由に充実率や開口部の大きさを設計することができる上に、金属性の有孔板やフェンスと比べ、軽量で、施工性がよく、安価であるため、その活用範囲が拡大している(特許文献1、2)。しかし、合成繊維やその被覆樹脂は有機物であるため、紫外線や風雪、酸性雨等により劣化し、使用中に破れてしまうなど、耐候性に課題があった。
耐候性を改善する技術として、繊維や被覆樹脂に紫外線吸収剤を添加する方法(特許文献3)が提案されているが、紫外線吸収剤も有機物であり、紫外線により分解していくため、長期使用に耐えられるものは、これまでなかった。
特開平11−107106号公報 特開2010−216095号公報 特開平9−137335号公報
本発明の目的は、かかる問題を解消し、軽量および柔軟で、耐候性に優れたネットを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。すなわち、
(1)合成繊維から成るメッシュ状の織編物であって、100〜500g/mの樹脂で被覆されており、引張強度が10kN/m以上かつ引張剛性が1000kN/m以下であることを特徴とするネット、
(2)前記被覆樹脂が前期織編物の表面だけに塗布されており、含浸されていないことを特徴とする(1)に記載のネット、
(3)前記樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のネット、
(4)前記樹脂が無機充填剤を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のネット、
(5)前記樹脂がカーボンブラックを4%以上含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のネット、
(6)前記合成繊維から成るメッシュ状の織編物がからみ織物または経緯挿入ラッセル編物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のネット、
(7)前記合成繊維の強度が3.0cN/dtex以上かつ引張破断伸度が10%以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のネット、
(8)前記合成繊維がナイロン繊維またはポリエステル繊維であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のネット、
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のネットを使用した防風、防塵、防雪、防砂、防鳥、防護用の柵。
本発明によれば、防風、防塵、防雪、防砂、防鳥、防護等を目的とし、屋外に設置される電柱やフェンスおよび建築物の開口部に設置するのに好適な、軽量および柔軟で、耐候性に優れるネットが得られる。
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明のネットは、合成繊維から成るメッシュ状の織編物が、100〜500g/mの樹脂で被覆されていることを特徴とする。樹脂の被覆量が100g/m未満であると十分な厚みの被覆が形成できないため、太陽光に含まれる紫外線が被覆樹脂を透過する量が多くなり、繊維が劣化してしまう。また、500g/m2を超える場合は、耐候性に関しては問題ないが、ネットが重くなるだけでなく、被覆樹脂が厚くなることで、ネットの剛性が高く、硬くなることから、ネットの伸びが拘束され外力に対して脆くなってしまう。
即ち、本発明のネット屋外に設置されるため、常に変化する風荷重を受けるため、強度だけでなく、柔軟性も必要である。
また、本発明の引張強度が20kN/m以上かつ引張剛性が1000kN/m以下であることを特徴とする。さらに望ましくは引張剛性が300kN/m以上1000kN/m以下である。引張強度が10kN/m以上であることにより、フェンスなどに設置するときに十分な張力をかけてもネットが破れず、弛みなく展張することができる。しかし、本発明のネットは強度が高いだけでは不十分であり、引張剛性が1000kN/m以下であることが必要である。何故ならば、本発明のネットは、長期的に屋外に設置されるため、十分な安全性を確保するためには、稀に日本に上陸する大型台風(風速40m/s以上)に対しても十分な耐久性がなければならないと考えられる。しかし、同じ風速の風を受けた場合でもネットの引張剛性が高い場合、ネットに発生する張力が大きくなる(社団法人 日本膜構造協会発行の膜構造建築物構造設計の手引き・計算事例集より)ため、引張剛性が1000kN/m以下とする必要がある。しかしながら、引張剛性が300kN/m未満である場合は、ネットが弛んでしまうことがあるため、好ましくない。
さらに本発明のネットは被覆樹脂が織編物の表面だけに塗布されており、含浸されていないことが好ましい。樹脂が織編物の内部まで含浸してしまうと繊維の動きを拘束してしまうため、引張伸度が小さくなり、その結果、引張剛性が高くなり、好ましくない。また、樹脂が含浸した織編物は硬くなるため、脆くなり、被覆樹脂にクラックが入り易くなる。
なお、本発明のネットに使用する樹脂はアクリル樹脂であることが好ましい。被覆樹脂については、用途や製造工程によりウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂などを選択することも可能であるが、アクリル樹脂は耐候性が高く、好ましい。
さらに好ましくは水分散型のアクリル樹脂エマルジョンを繊維織編物にナイフコーターやロールコーターを使用したコーティング法やディップ法を用いて、コーティングしたものが好ましい。水分散型のアクリル樹脂エマルジョンは、他の溶剤分散型のアクリル樹脂やその他のエマルジョンに比べ、固形分濃度を60%以上高くすることができる上に、増粘剤で粘度も高くすることができるため、織編物への樹脂含浸を抑えことができる。その結果、ネットの柔軟性を損なうことなく、繊維表面により厚い被覆を形成することが可能となり、耐久性を高める事ができる。
また、本発明の樹脂には、無機充填剤は添加されていることが好ましい。さらに好ましくは、樹脂の質量比率で10%以上、更に好ましくは20%以上添加することが好ましい。無機充填剤は、水分散型エマルジョンを織編物にコーティングして、水分を乾燥挿せる際、ブリスタ防止剤として添加することが一般的であるが、30%以上添加することにより、エマルジョンの動的粘度が低下しないため、織編物への樹脂の含浸を抑えることができる。また、無機粒子は樹脂よりも硬いため、被覆樹脂の圧縮弾性率を高めることができ、ネットの耐久性が高くなる。本発明の樹脂に添加する無機充填剤は、特に限定されるものではないが、炭酸カルシウムが粒子径が大きく、効果がある上に安価であるため、最も好ましい。その他にも、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、珪藻土、マイカ、カオリン、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ケイ酸カルシウム、アタパルジャイト、シラスバルーン、パーライト等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
また、本発明の樹脂に上記無機充填剤とは別にカーボンブラックを4質量%以上添加することが好ましい。さらに好ましくは7質量%以上である。しかし、水分散エマルジョンの場合10質量%を越えると分散性が悪くなる可能性があるため、注意が必要である。一般的にネットを黒色に着色することが目的であるならば、カーボンブラックを1質量%程度、多くても2質量%程度添加することが一般的である。しかし、カーボンブラックを4%以上添加することにより被覆樹脂の耐紫外線耐久性が飛躍的に向上するだけでなく、内部の繊維の劣化を抑えることができる。これはカーボンブラックが紫外線を吸収するためである。更にカーボンブラックは紫外線に対して安定であり、公知技術(特許文献3)にあるような紫外線吸収剤のように紫外線で分解することはないため、半永久的に紫外線を遮蔽することができる。
また、屋外に設置される繊維ネットとしては、従来から織物ではからみ織やすだれ織、編物ではかえるまた編地などの結節編地やラッセル編やダブルラッセル編など無結節編地が使用されている。本発明の合成繊維から成るメッシュ状の織編物は、からみ織または経緯挿入ダブルラッセル編物であることが好ましい。からみ織りは、繊維の繊度や密度を特徴とすることにより開口部の大きさや充実率を自由に設計でき、生産性高い。また経緯挿入ラッセル網は、経糸と緯糸が直線状に配列できることから繊維の強度利用率が高く、正確に均等な大きさの四角形の開口部を形成することが出来ることから、均一で耐久性の高いネットを得ることができる。
本発明に用いる合成繊維は、強度が3.0cN/dtex以上かつ引張破断伸度が10%以上であることが好ましい。高強度であることが好ましいが、引張伸度が10%未満のアラミド繊維や高密度ポリエチレ、ンガラス繊維や炭素繊維、PBO繊維といった高弾性繊維は好ましくない。これら高機能繊維と呼ばれる高強度、高弾性繊維は、高強度であることから繊維の使用量を少なくすることができ、軽量なネットにすることが出来るが、ネットの引張破断伸度が小さくなることから、ネット引張剛性が高くなり、前記の通り、耐久性に問題が出る可能性が高い。また、樹脂加工で繊維を拘束してしまうと僅かな応力集中で部分的に高い荷重がかかり、ネットが破断してしまう。可能性が高くなるため、好ましくない。
即ち、本発明の合成繊維は強度と伸度のバランスのよいナイロン繊維またはポリエステル繊維であることが好ましい。中でも、湿潤強度が高く、水の影響を受け難く、紫外線に対しても比較的良好なポリエステル繊維が好ましい。
本発明のネットを使用することで耐久性に優れた防風、防塵、防雪、防砂、防鳥、防護用に好適な柵を得ることが出来る。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例における糸特性および織物特性は次の方法により求めたものである。
[特性の測定方法]
以下の測定方法の内、特に断りのないものは、試料の調整、及び測定は、JIS L 0150の標準状態(20±2℃、相対湿度65±4%)で行った。
(1)密度
密度
JIS−L−1096.8.6.1(A法)準じて、幅50mm間にあるネットの網糸(繊維の束)の本数をタテ方向、およびヨコ方向について、それぞれ任意の箇所を各5箇所ずつ数え、その平均値を少数点1桁に丸めた数値を単位長さ間(50mm)の密度とした。
(2)引張強度
JIS L 1908.6.5に準じて、ネットの意の場所からタテ、ヨコそれぞれ5箇所から試験片を採取しそれぞれの方向ごとに幅50mm×長さ300mmの試験片を採取し、定速引張試験を用いて、引張長200mm、引張速度20mm/分の条件で引張試験を行い、その測定値を1m幅当りの強度に換算した値を平均値を小数点1桁に丸めて求めた。なお、ここで幅50mmの試験片に含まれる網糸は、上記(1)で求めた密度を整数に丸めた本数とする。
(3)質量
JIS−L−1096.8.3.2に準じて、ネットの任意の場所から200mm×200mmの試験片を2枚採取し、質量を測定し、1m当りの質量に換算して求め、その平均値を小数点1桁に丸める。
(4)耐候性試験
JIS−A−1415.6.3(WS−A型暴露試験方法)の条件で、サンシャインカーボンアークランプを用いて、促進暴露試験を行い、照射1000時間後および2000時間後の外観観察および引張強度保持率を求めた。
なお、促進暴露試験前後の引張試験は、上記(2)引張強度の方法で行い、引張強度保持率は、以下の方法で求めた。
引張強度保持率(%)=促進暴露試験後の強度(kN/m)÷促進暴露試験前の強度(kN/m)×100 。
(5)繰り返し荷重を受けた場合の耐久性
国土交通省告示第六百六十四号に基づく膜材の試験方法に準じ、JIS−P−8115の条件でMIT式試験機を用いて、ネットの網糸1本を1000回屈曲させた前後の引張強度を測定し、引張強度保持率を得た。引張強度試験は、試験片がネットの網糸一本である以外は、上記(2)引張試験と同じ条件で行った。
(6)引張剛性
以下の式で求め数値を近似値として用いる。
引張剛性(kN/m)=引張強度(kN/m)÷引張破断伸度(%) 。
[実施例1]
引張強度7cN/dtex、破断伸度12%のポリエステル繊維を用いて、経糸は総繊度6700detxの合撚糸を密度18本/50mm、緯糸に10000dtexの合撚糸を密度8本/50mmのからみ織物を製織した。このからみ織物に、固形分でアクリル樹脂(アクリル酸エステル共重合体)40部、炭酸カルシウム20部、カーボンブラックを4部、水40部に分散させたエマルジョンを乾燥後の樹脂付着量が250g/mになるようにロールコーターでコーティングし、170度で2分間乾燥させて、ネットを得た。
[実施例2]
実施例1と同じ引張強度7cN/dtex、破断伸度12%のポリエステル繊維を用いて、経には総繊度3340detxの合撚糸を4本並べて、密度6本/50mmの間隔で挿入し、緯に総繊度6100dtexの合撚糸を6本並べて密度4本/50mmの間隔で挿入し、280dtexの編糸を用いて、経緯挿入ラッセル編をえた。この編物に、実施例1と同じ水分散させたエマルジョンを乾燥後の樹脂付着量が470g/mになるようロールコーターでコーティングし、170度で2分間乾燥させて、ネットを得た。
[比較例1]
実施例1と同じからみ織物に固形分でアクリル樹脂(アクリル酸エステル共重合体)40部、炭酸カルシウム20部、カーボンブラックを1部、水40部に分散させ、実施例1よりカーボンブラックの添加量を1/4に減らしたエマルジョンを乾燥後の樹脂付着量が250g/mになるようにロールコーターでコーティングし、170度で2分間乾燥させて、ネットを得た。
[比較例2]
引張強度20.3cN/dtex、破断伸度3.6%のアラミド繊維を用いて、経糸は総繊度5010detxの合撚糸を密度18本/50mm、緯糸に6680dtexの合撚糸を密度8本/50mmのからみ織物を製織した。このからみ織物に、実施例1と同じ水分散エマルジョンを乾燥後の樹脂付着量が250g/mになるようにロールコーターでコーティングし、170度で2分間乾燥させて、ネットを得た。
[比較例3]
経に比較例2と同じ引張強度20.3cN/dtex、破断伸度3.6%のアラミド繊維を総繊度1670detxの合撚糸を5本並べて、密度6本/50mmの間隔で挿入し、緯に引張強度7cN/dtex、破断伸度12%のポリエステル繊を総繊度4480dtexの合撚糸を6本並べて密度4本/50mmの間隔で挿入し、280dtexのポリエステル繊維を編糸に用いて、経緯挿入ラッセル編を得た。この編物に、実施例1と同じからみ織物に固形分でアクリル樹脂(アクリル酸エステル共重合体)40部、炭酸カルシウム20部、カーボンブラックを1部、水40部に分散させ、実施例1よりカーボンブラックの添加量を1/4に減らしたエマルジョンを乾燥後の樹脂付着量が260g/mになるようにロールコーターでコーティングし、170度で2分間乾燥させて、ネットを得た。
Figure 2013204359
本発明によれば、防風、防塵、防雪、防砂、防鳥、防護等を目的とし、屋外に設置される電柱やフェンスおよび建築物の開口部に設置するのに好適なネットが得られる。

Claims (9)

  1. 合成繊維から成るメッシュ状の織編物であって、100〜500g/mの樹脂で被覆されており、引張強度が10kN/m以上かつ引張剛性が1000kN/m以下であることを特徴とするネット。
  2. 前記被覆樹脂が前期織編物の表面だけに塗布されており、含浸されていないことを特徴とする請求項1に記載のネット。
  3. 前記樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のネット。
  4. 前記樹脂が無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のネット。
  5. 前記樹脂がカーボンブラックを4%以上含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のネット。
  6. 前記合成繊維から成るメッシュ状の織編物がからみ織物または経緯挿入ラッセル編物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のネット。
  7. 前記合成繊維の強度が3.0cN/dtex以上かつ引張破断伸度が10%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のネット。
  8. 前記合成繊維がナイロン繊維またはポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のネット。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のネットを使用した防風、防塵、防雪、防砂、防鳥又は防護用途の柵。
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