JP2013201924A - 馬伝染性貧血ウイルス検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】標的遺伝子の変異が多い馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)を漏れなく高感度で検出することができる手段を提供すること。
【解決手段】馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)ゲノムのLTRからtat遺伝子に至る保存性の高い5’領域に基づいて設計したオリゴヌクレオチドから構成されるEIAV 検出用のプライマーセット、当該プライマーセットを含むキット、ならびに当該プライマーセットを用いてEIAVを検出する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)検出用プライマーセット、および当該プライマーセットを用いる馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)を高感度で検出する方法に関する。
馬伝染性貧血ウイルス(Equine Infectious Anemia Virus:EIAV)は、高熱と貧血を特徴とする致死的伝染病である馬伝染性貧血を惹起するレトロウイルスで、家畜伝染病予防法の定める法定伝染病の病原体として、馬の最も重要な病原ウイルスである。臨床症状により、高熱が数日〜10日間持続し、約80%が死亡する急性型、発熱の繰り返しにより死亡する亜急性型、繰り返される発熱が徐々に軽度となり健康馬と見分けがつかなくなる慢性型に分類される。一度ウイルスが感染した馬からはウイルスが排除されることはなく、感染源となることから、感染動物は殺処分あるいは終生隔離される。
EIAV感染動物の検出法として寒天ゲル内沈降反応法(AGID)やELISA法による血清学的診断法があるが、これらの方法では、感染動物でEIAV特異抗体が上昇するまでは検出できないという欠点を持っており、また、感度の低さや曖昧な結果が問題となる。EIAVの遺伝子を標的としたPCRによる検出法の報告例も複数存在するが(非特許文献1〜4)、標的遺伝子の変異が多いEIAVを漏れなく検出するには至っていない。
Nagarajan MM et al., J Virol Methods 2001, 94:97-109 OIE: Equine infectious anaemia, In Manual of diagnostic tests and vaccines for terrestrial animals, volume 2. six edition; 2008: 866 - 870 Quinlivan M et al., Virus Res 2007, 160:611-618 Zheng YH et al., Virus Res 2000, 68:93-98
従って、標的遺伝子の変異が多い馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)を漏れなく高感度で検出することができる手段を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)ゲノムの保存性の高い5’領域に2組のプライマーセットを設計し、当該プライマーセットのいずれかを用いてPCR、またはその両方を用いてネステッドPCRを行ったところ、EIAVを高感度で検出することに成功し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下の発明を包含する。
[1] 以下の(a)または(b)の馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)検出用プライマーセット。
(a) 配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるプライマーセット
(b) 配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるプライマーセット
[2] 検体より抽出したDNAを鋳型とし、[1]に記載の(a)または(b)のプライマーセットのいずれかまたは両方を用いてPCR増幅を行い、得られた増幅産物を検出する工程を含む、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)の検出方法。
[3] 検体より抽出したDNAを鋳型とし、[1]に記載の(a)のプライマーセットを用いて第1のPCR増幅を行い、次に、第1のPCR増幅で得られた増幅産物を鋳型として (b)のプライマーセットを用いて第2のPCR増幅を行い、得られた増幅産物を検出する工程を含む、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)の検出方法。
[4] [1]に記載の(a)のプライマーセットおよび(b)のプライマーセットを含む、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)検出用キット。
本発明のプライマーセットおよびそれを用いる方法によれば、標的遺伝子の変異が多い馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)を、従来の血清診断よりも極めて高感度でかつ迅速に検出することができる。また、臨床兆候をまだ示していない馬のEIAVをも検出でき、EIAVのより正確な診断のために、従来の血清診断の補助手段としても有用である。
プライマー設計に用いた馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)のゲノム領域の配列のアラインメントおよびプライマー設計部位を示す。 EIAV遺伝子(pMD-A246)の10倍段階希釈液(10〜10−1DNAコピー)を鋳型として用い、本発明のEIAV検出用プライマーセットの検出感度を調べた結果を示す。図2Aは、アウタープライマーセットによるPCR増幅産物の電気泳動図、図2Bは、インナープライマーセットによるPCR増幅産物の電気泳動図、図2Cは、アウタープライマーセットを用いた1st PCRの後、インナープライマーセットを用いた2nd PCRを行った増幅産物の電気泳動図をそれぞれ示す(P: 陽性コントロール(10コピー/μlのpMD-A246)、N: 陰性コントロール(滅菌蒸留水)、M:DNAサイズマーカー)。 図3は、野生馬の臨床検体(A, 5, 25, 29, 35, 47, 53, 56, 65, 67, 69, 75, 77, A4)を用いてネステッド PCRを行った増幅産物の電気泳動図を示す(P: 陽性コントロール(10コピー/μlのpMD-A246)、N: 陰性コントロール(滅菌蒸留水)、M: DNAサイズマーカー、AGID:寒天ゲル内沈降、WB:ウェスタンブロッティング、+:陽性、-:陰性、i:疑陽性、ND:未実施)。 図4は、Miyazaki-AウイルスのゲノムDNAのEIAVltr-2F/EIAVltr-2RプライマーセットによるPCRで増幅される領域の塩基配列と、公表された他のEIAV 株の対応する領域の塩基配列のアラインメントを示す。
本発明のプライマーセットは、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)ゲノムのLTR(long terminal repeat)からtat(trans-activator)遺伝子に至る保存性の高い5’領域に基づいて設計したEIAV検出用の2組のプライマーセットである。
本発明のプライマーを設計するためには、先ず、EIAVゲノムの塩基配列を入手する。塩基配列情報は、GenBankなどの遺伝子データベースまたは論文より入手してもよく、また、直接的に塩基配列を解析して入手してもよい。上記の保存性の高い領域の塩基配列は、入手した複数の塩基配列を整列(アラインメント)し、比較することにより特定することができる。塩基配列のアラインメントには、市販のアラインメントソフト(例えば、DNAstarシステム(Madison、WI))や、インターネット上で公開されているアラインメントソフト(例えば、CLUSTALW、URL: http://www.ddbj.nig.ac.jp/)を利用することができる。
次に、特定した塩基配列に基づき、プライマーを設計する。プライマーの設計は、オリゴヌクレオチドの長さ、GC含量、Tm値、オリゴヌクレオチド間の相補性、オリゴヌクレオチド内の二次構造などを考慮して行うが、例えば、「PCR法最前線−基礎技術から応用まで」(蛋白質・核酸・酵素 臨時増刊号 1996年 共立出版株式会社)や、「バイオ実験イラストレイテッド3 本当にふえるPCR:細胞工学別紙 目で見る実験ノートシリーズ」(中山広樹著 株式会社秀潤社)、「PCRテクノロジー−DNA増幅の原理と応用−」(Henry A Erlich編、加藤邦之進 監修、宝酒造株式会社)等を参考にすればよい。
本発明の2組のプライマーセットは、ネステッドPCRを行なうために設計されたものであり、具体的に採用した設計基準は以下のとおりである。
(i) EIAVゲノムの5’領域のPCR増幅産物を電気泳動した場合にそれらの泳動距離の差が明確になる程度に、PCR増幅産物の大きさが異なること。
(ii) 増幅される領域の塩基数が、190〜250bp程度であること。
(iii) プライマー長は鋳型DNAとの間の特異的なアニーリングが可能とするために、15〜25bpの範囲であること。
(iv)アニーリング温度はTm(melting temperature)に依存するので、特異性の高いPCR増幅産物を得るため、Tm値が55〜65℃で互いに近似したプライマーを選定すること。
(v)プライマーの3’末端の塩基配列と鋳型DNA配列との相同性が高いこと。
(vi) プライマーはダイマーや立体構造を形成しないように、両プライマー間の相補的配列を避けること。
(vii) 鋳型DNAとの安定な結合を確保するため、GC含量を50〜60%にし、プライマー内においてGC-richあるいはAT-richが偏在しないようにする。
また、プライマー設計用の市販のソフトウェア、例えばOligo 6.31 program (Molecular Biology Insights, Inc., CO)、OligoTM[National Bioscience Inc.(米国)製]、GENETYX[ソフトウェア開発(株)(日本)製]等を用いることもできる。
上記基準に基づいて設計した本発明の2組のEIAV検出用プライマーセットを以下に示す。
プライマーセット1(アウタープライマーセット)
EIAVltr-1F :5’- GACAGTTGGGCACTCAGATT -3’(配列番号1)
EIAVltr-1R:5’- CAGGAACACCTCCAGAAGAC -3(配列番号2)
プライマーセット2(インナープライマーセット)
EIAVltr-2F:5’- ATTCTGCGGTCTGAGTCCCT -3’ (配列番号3)
EIAVltr-2R:5’- TAAGTTCTCCTCTGCTGTCC -3’ (配列番号4)
配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるプライマーセット1を用いてPCRを行うことにより得られるPCR増幅産物の大きさは241〜246bであり、配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるプライマーセット2を用いてPCRを行うことにより得られるPCR増幅産物の大きさは198〜203bpである。
また、本発明のプライマーセットを構成する配列番号1〜4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、EIAVを高感度に検出するという機能を奏する程度に当該配列番号により特定される配列を有しているオリゴヌクレオチドであればよく、配列番号1〜4の塩基配列の改変配列を有するオリゴヌクレオチドが一切含まれないことを意味するものではない。よって、配列番号1〜4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する範囲で、その塩基配列に改変を加えたオリゴヌクレオチドであってもよい。
そのような改変オリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜4の塩基配列に対して85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、EIAV検出用プライマーとして機能しうるオリゴヌクレオチドが挙げられる。改変には、欠失、置換、挿入、又は付加が含まれ、改変させる塩基の数は、3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個である。また、塩基の付加は、3'側でも5'側でもよい。
オリゴヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)でもリボ核酸(RNA)でもよい。リボ核酸の場合はチミジン残基(T)をウリジン残基(U)と読み替えればよい。また合成の際に、任意の位置のTをUに変えて合成を行い、ウリジン残基を含むDNAであってもよい。同様に任意のUをTに変えたチミジン残基を含むRNAであってもよい。また、オリゴヌクレオチド中に修飾ヌクレオチドがあってもよい。
上記のプライマーセットの各オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA/RNA自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製Model 394など)を利用して合成することが可能である。
本発明によればまた、上記のプライマーセットのいずれかまたは両方を用いるEIAVの検出方法が提供される。
本発明のEIAVの検出方法は、検体より抽出したDNAを鋳型とし、上記のプライマーセットのいずれかまたは両方のプライマーセットを用いてPCR増幅を行う工程と、PCRにより得られた増幅産物を検出する工程を含む。
本発明の好ましい態様は、微量のEIAVを検出することができる上で、上記のプライマーセットの両方を用いるネステッド(nasted)PCRである。ネステッドPCR法とは、一回目のPCR(1st PCR)産物を鋳型として、もう一度PCR(2nd PCR)を行うが、その際に両側のネステッドプライマーを1回目のPCR産物の内部で設計する方法である。本発明のプライマーセットを用いてネステッドPCRを行う場合、検体より抽出したDNAを鋳型として上記プライマーセット1で1st PCRを行い、その増幅産物を鋳型とし、上記プライマーセット2で2nd PCRを行う。
増幅反応に際しては反応時に放射性物質などの標識の結合したヌクレオチドを取り込ませる方法や、増幅産物を電気泳動により分画して特異的なバンドを検出することにより、EIAVを容易に検出することができる。また、標識オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いればPCR増幅産物を直接検出することも可能である。
検体としては、EIAVに感染していると疑われる馬から得られた全血、末梢血単球、などの生体試料があげられる。また、感染実験などに用いられた細胞やその培養液、あるいは生体由来の検体や培養細胞などから分離したウイルスを含む検体なども試料となる。これらの試料は分離、抽出、濃縮、精製などの前処理を行ってもよい。
検体からDNAの抽出は、核酸抽出法として当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、フェノール/クロロホルム法、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)法、アルカリSDS法等などにより行うことができる。また、試薬メーカーより販売されている各種DNA抽出キットを用いても良い。
次に、DNAを鋳型として、前記EIAV検出用プライマーセットを用いてPCR増幅を行う。PCR増幅は前記のプライマーセットを用いる以外は特に制限はなく、常法に従って行えばよい。具体的には、鋳型DNAの変性、プライマーへの鋳型へのアニーリング、および耐熱性酵素(TaqポリメラーゼやThermus themophilis由来のTth DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼ)を用いたプライマーの伸長反応を含むサイクルを繰り返すことにより、EIAVゲノムのLTRからtat遺伝子に至る領域の遺伝子配列を含む断片を増幅させる。PCR反応液の組成、PCR反応条件(温度サイクル、サイクルの回数等)は、前記のプライマーセットを用いたPCRにおいて高感度でPCR増幅産物が得られるような条件を予備実験等により当業者であれば適切に選択および設定することができる。プライマーのTmに基づいて適当なPCR反応条件を選択する方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、最初に94℃で5分間の変性反応、次に94℃で30秒間(変性)、52℃〜58℃で30秒間(アニーリング)、72℃で40秒間(伸長)を1サイクルとして35サイクル、最後に72℃で10分間の伸長反応により実施することができる。但し、ここに示した条件は一例に過ぎず、用いる酵素、反応温度、反応時間、サイクル数などは適宜変更することも可能である。このようなPCRの一連の操作は、市販のPCRキットやPCR装置を利用して、その操作説明書に従って行うことができる。PCR装置は、例えば、Takara Ex Taq(TAKARA社製)、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)、GeneAmp PCR System 9600(Applied Biosystems社製)などが使用できる。
また、PCR増幅産物の検出を容易にするために、標識物質をつけたオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行うことができる。標識物質としては、当該技術分野においてよく知られる蛍光物質、放射性物質、化学発光物質、酵素基質、ビオチン・アビジン系標識等を用いることができる。標識方法は末端標識でも、配列の途中への標識でもよい。また、ヌクレオチドの糖、リン酸基、塩基部分のいずれへの標識であってもよい。
PCR増幅産物の検出は、アガロースゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動などの慣用の電気泳動、DNAハイブリダイゼーションやリアルタイムPCR等の方法を用いて行う。例えば、アガロースゲル電気泳動では、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出し、その大きさに基づいてEIAVを判定する。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いて当該PCRを行い、増幅産物を検出することもできる。また、DNAハイブリダイゼーションでは、マイクロアレイなどの固定化担体にPCR増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応等によりPCR増幅産物を確認する。検出用の固定化担体は、検出すべきEIAV遺伝子の配列とハイブリダイズしうる配列を有するDNA断片が固定化されている支持体である。支持体としては、例えば、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、ガラス、シリコンチップなどを用いることができる。
上記プライマーセットはEIAV検出をより簡便に行うために、キット化することもできる。本発明のキットは、上記の2組のプライマーセットを含むものであればよい。本発明のキットには、必要に応じて、DNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、反応の陽性コントロールとなるPCR増幅領域を含むDNA溶液、染色剤や電気泳動用ゲル等の検出用試薬、説明書などを含んでいてもよい。なお、キット中の試薬は溶液でも凍結乾燥物でもよい。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1)プライマーの設計
下記に示すEIAVの11種の全ゲノム配列をGenBankからダウンロードし、Laser Gene sequence analysis package (DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いてアラインメントを行い、ウイルス株間で保存性の高い領域を検索した。
Wyoming (AF033820), USA; Liaoning (AF327877), China; V26 (AB008197), Japan; DLV18-8 (HM141923), China; DV35-20 (HM141911), China; EIAVuk (AF016316), USA; DV117 (HM141912), China; FDDV-10 (GU385360), China; V70 (AB008196), Japan; Vaccine Strain (AF327878), China; WSU5 (AF247394), USA
検索の結果、高度に保存されている領域であることが特定された、LTRからtat遺伝子までの5’EIAV ゲノム配列(図1)に基づいてOligo 6.31 program (Molecular Biology Insights, Inc., CO)を用いて特異的プライマーを設計した。
設計した2組のプライマーセットを下記に示す。
アウタープライマーセット(期待される増幅産物の大きさ:241〜246 bp)
EIAVltr-1F :5’- GACAGTTGGGCACTCAGATT -3’(配列番号1)
EIAVltr-1R:5’- CAGGAACACCTCCAGAAGAC -3(配列番号2)
インナープライマーセット(期待される増幅産物の大きさ:198〜203 bp)
EIAVltr-2F:5’- ATTCTGCGGTCTGAGTCCCT -3’ (配列番号3)
EIAVltr-2R:5’- TAAGTTCTCCTCTGCTGTCC -3’ (配列番号4)
(実施例2)プライマーセットの検出限界の決定
(1)陽性コントロール
検体としてAGID およびウェスタンブロットの両方でEIAV抗体陽性と判定された馬(野生馬Miyazaki-A)の末梢血を用いた。馬の末梢血100μlからDNeasy blood and tissue kit(QIAGEN社)を用いてDNAを抽出し、200μlのDNA抽出液を得た。得られたDNA抽出液5μlを鋳型とし、実施例1で確立したアウタープライマーセット(EIAVltr-1F and EIAVltr-1R)を用いてPCR(Takara Ex Taq;TAKARA社)を1 tubeあたり50μlの反応液で実施した(最初に94℃で5分の熱変性反応、次いで94℃で45秒の熱変性反応、56℃(Oligo 6.31 programの推奨温度)で45秒のアニーリング、72℃で60秒の伸長反応を1サイクルとして計35サイクル行い、最後に72℃で10分の伸長反応)。得られた増幅産物をpMD20-Tベクター(Takara, Shiga, Japan)にクローニングした。クローン化したインサートの配列をBigdye Terminator v3.1 cycle sequencing kit (Applied Biosystems, CA) およびABI Prism 3130 genetic analyzer (Applied Biosystems, CA)の組み合わせを用いて決定したところ、EIAVと極めて高度なホモロジーを有することを確認した。この組換えベクターをpMD-A246と命名し、ネステッドPCRの増幅条件を最適化するための陽性コントロールとして用いた。
(2)検出感度の決定
検出感度を決定するために、(1)で作成したプラスミドにクローニングしたEIAV遺伝子(pMD-A246)のコピー数(10コピー/μl)を基準に、実施例1で設計したプライマーセットを用いた検出方法の検出限界を、アウタープライマーセットを用いたPCRのみを実施した場合、インナープライマーセットを用いたPCRのみを実施した場合、そしてアウタープライマーセットを用いた1st PCRの後、インナープライマーセットを用いた2nd PCRを実施した場合で比較した。
ネステッドPCR(アウタープライマーセットを用いた1st PCRの後、インナープライマーセットを用いた2nd PCRを行う)は下記の手順で行った。また、アウタープライマーセットを用いたPCR、インナープライマーセットを用いたPCRは、それそれ下記の1st PCR、2ndPCRの手順に従って行なった。
まず、条件検討の結果、至適アニーリング温度を決定した(アウタープライマーセットについては55℃、インナープライマーセットについては58℃)。
DNAサンプル5μlを鋳型として、以下の反応条件と反応液組成にてインナープライマーセットを用いて1st PCRを行った。
(1st PCR 反応条件)
初期変性:94℃、5分
1st PCR:以下の3温度を35サイクル
94℃、30秒
52℃、30秒
72℃、40秒
最終伸長反応:72℃、10分
(1st PCR反応液組成)
DNAサンプル 5 μl
アウタープライマー (10mM) 1.25μl X 2
PCR緩衝液(TaKaRa 10XEx Taq Buffer, 20mM Mg2+ plus) 5μl
dNTP mixture (各2.5 mM) 4 μl
DNAポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq: 5U/μl) 0.25 μl
滅菌水 33.25μl
次に、1st PCR の増幅産物の2.5μlを鋳型として、以下の反応条件と反応液組成にてインナープライマーセットを用いて2nd PCRを行った。
(2nd 反応条件)
初期変性反応:94℃、3分
2nd PCR:以下の3温度を35サイクル
94℃、30秒
58℃、30秒
72℃、40秒
最終伸長反応:72℃、10分
(2nd 反応液組成)
DNAサンプル 2.5μl
インナープライマー (10mM) 1.25μl X 2
PCR緩衝液(TaKaRa 10XEx Taq Buffer, 20mM Mg2+ plus) 5 μl
dNTP mixture (各2.5 mM) 4 μl
DNAポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq: 5U/μl) 0.25 μl
滅菌水 35.75μl
PCR増幅産物の確認は、1×GelRed(Biotium, Hayward, CA)を含有する1.5%アガロースゲル電気泳動により行い、目的のバンドが確認されたものを陽性とした。分子量マーカーも同時に電気泳動し、相対泳動度の比較により、検出された増幅産物の大きさを解析した。
結果を図2に示す。EIAVの検出限界は、アウタープライマーセットを用いたPCRのみを実施した場合は10コピー、インナープライマーセットを用いたPCRのみを実施した場合は10コピー、そしてアウタープライマーを用いた1st PCRの後、インナープライマーを用いた2nd PCRを実施した場合は101コピーであることが示された。
(実施例3)プライマーセットの性能評価試験
臨床検体に応用可能かどうかを試験するため、EIAV抗体陽性馬12頭(A, 5, 25, 29, 35, 47, 53, 56, 65, 67, 69, 75)および陰性馬2頭(77, A4)の末梢血を用いて実施例2に従ってネステッドPCRを実施した。
結果を図3に示す。図3に示すように、EIAV抗体陽性であった12検体はすべて陽性であり、EIAV抗体陰性であった2検体は陰性であった。このことから、本発明の検出方法は実際の現場でEIAVを検出する系として応用可能であると考えられた。
また、各PCR増幅産物の配列をLaser Gene sequence analysis package (DNASTAR, Inc., Madison, WI)およびGENETYX Ver. 7.0.9 (Genetyx Corp., Japan)を用いて解析した結果、12検体の全検体がMiyazaki-Aウイルスのプロトタイプと97〜100%配列同一性を有していることから、Miyazaki-Aウイルスと非常に関連したEIAV 株に感染していることが示唆された。
さらに、Miyazaki-AウイルスのゲノムDNAのEIAV EIAVltr-2F/EIAVltr-2RプライマーセットによるPCRで増幅される領域の塩基配列と、公表された他の数種のEIAV 株の対応する領域の塩基配列のアラインメントから、当該増幅領域は、アジアおよび北アメリカEIAV 株でも広く保存されていることが証明された(図4)。
本発明は馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)の診断薬やキットの製造分野に利用できる。

Claims (4)

  1. 以下の(a)または(b)の馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)検出用プライマーセット。
    (a) 配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるプライマーセット
    (b) 配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるプライマーセット
  2. 検体より抽出したDNAを鋳型とし、請求項1に記載の(a)または(b)のプライマーセットのいずれかまたは両方を用いてPCR増幅を行い、得られた増幅産物を検出する工程を含む、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)の検出方法。
  3. 検体より抽出したDNAを鋳型とし、請求項1に記載の(a)のプライマーセットを用いて第1のPCR増幅を行い、次に、第1のPCR増幅で得られた増幅産物を鋳型として (b)のプライマーセットを用いて第2のPCR増幅を行い、得られた増幅産物を検出する工程を含む、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)の検出方法。
  4. 請求項1に記載の(a)のプライマーセットおよび(b)のプライマーセットを含む、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)検出用キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN108546783A (zh) * 2018-05-02 2018-09-18 梁洪捐 一种马传染性贫血病毒病的检测试剂盒及其检测方法
CN112746133A (zh) * 2021-02-02 2021-05-04 中国农业科学院哈尔滨兽医研究所(中国动物卫生与流行病学中心哈尔滨分中心) 马传染性贫血病毒荧光pcr检测试剂盒及其应用

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