JP2013195579A - 積層体およびその製造方法、透明基材、表示装置、入力装置ならびに電子機器 - Google Patents

積層体およびその製造方法、透明基材、表示装置、入力装置ならびに電子機器 Download PDF

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公孝 西村
Toru Abiko
透 安孫子
Shigehisa Ogawara
重久 大河原
Masanori Ogawa
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Abstract

【課題】反射防止機能の低下を防ぐことができる積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層とを備える。剥離層は、ケイ素を含んでいる。
【選択図】図1

Description

本技術は、積層体およびその製造方法、透明基材、表示装置、入力装置ならびに電子機器に関する。詳しくは、反射防止機能を有する積層体に関する。
従来より、ガラス、プラスチックなどの透光性基板を用いた光学素子においては、光の表面反射を抑えるための表面処理が行われているものがある。この種の表面処理として、光学素子表面に微細かつ緻密な凹凸(モスアイ;蛾の目)を形成するものがある(例えば非特許文献1参照)。
一般に、光学素子表面に周期的な凹凸形状を設けた場合、ここを光が透過するときには回折が発生し、透過光の直進成分が大幅に減少する。しかし、凹凸形状のピッチが透過する光の波長よりも短い場合には回折は発生せず、凹凸形状のピッチや深さなどに対応する単一波長の光に対して有効な反射防止効果を得ることができる。このような凹凸形状を形成するモスアイ構造体としては、釣鐘形状や楕円錐台形状などの種々の形状を有するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
「光技術コンタクト」 Vol.43, No.11 (2005), 630-637参照
国際公開第2008/023816号パンフレット
しかしながら、モスアイ構造体を用いた光学素子では、表面硬度の向上が困難であるため、モスアイ構造体が破壊されてしまうことがある。また、防汚性の向上も困難であるため、指紋に含まれる油分などの汚れがモスアイ構造体間の凹部に入り込み、凹部が埋まってしまうことがある。このようにモスアイ構造体が破壊されたり、モスアイ構造体間の凹部が埋まってしまったりすると、モスアイ構造体の反射防止機能が低下してしまう。
したがって、本技術の目的は、反射防止機能の低下を防ぐことができる積層体およびその製造方法、透明基材、表示装置、入力装置ならびに電子機器を提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の技術は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
を備え、
剥離層は、ケイ素を含んでいる積層体である。
第2の技術は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子を、複数の粘着層を介して重ね合わせて積層体を形成し、
積層体に対して加熱処理を施し、光学素子に含まれるケイ素を構造体の表面に滲出させること
を含む積層体の製造方法である。
第3の技術は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子に対して加熱処理を施し、光学素子に含まれるケイ素を構造体の表面に滲出し、
複数の光学素子を複数の粘着層を介して重ね合わせて積層体を形成する
ことを含む積層体の製造方法である。
第4の技術は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と
を備え、
複数の構造体の表面にケイ素が滲出している積層体である。
第5の技術は、
透明基材と、
透明基材の表面に設けられた積層体と
を備え、
積層体は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
を備え、
剥離層は、ケイ素を含んでいる反射防止機能付き透明基材である。
第6の技術は、
表示部と
表示部の表示面に設けられた積層体と
を備え、
積層体は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
を備え、
剥離層は、ケイ素を含んでいる表示装置である。
第7の技術は、
入力部と、
入力部の入力面に設けられた積層体と
を備え、
積層体は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
を備え、
剥離層は、ケイ素を含んでいる入力装置である。
第8の技術は、
表示部と、
表示部の表示面に設けられた積層体と
を備え、
積層体は、
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
を備え、
剥離層は、ケイ素を含んでいる電子機器である。
本技術では、積層体は、反射防止機能を有する複数の光学素子と、複数の光学素子の間に設けられた複数の貼合層とを備えているので、積層体の反射防止機能が低下したら、最表面の光学素子を剥離して、新たな光学素子の表面を露出させることができる。したがって、反射防止機能の低下を防ぐことができる。
また、複数の構造体の表面にケイ素を含む剥離層を備えているので、貼合層と光学素子とを剥離した際に、光学素子の構造体間に粘着層の一部が残ったり、光学素子の構造体が破壊されたりすることを抑制できる。したがって、粘着層を剥離した際の光学素子の反射防止機能の低下を抑制することができる。
以上説明したように、本技術によれば、反射防止機能の低下を防ぐことができる。
図1は、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の構成の一例を示す断面図である。 図2Aは、光学素子の表面形状の一例を示す斜視図である。図2Bは、光学素子の表面に形成された複数の構造体の配列の一例を示す平面図である。 図3Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図3Cは、図3BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。 図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。 図5A〜図5Cは、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。 図6A〜図6Cは、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。 図7A〜図7Cは、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。 図8Aは、本技術の第1の実施形態に係る光学素子積層体の第1の変形例を示す平面図である。図8Bは、本技術の第1の実施形態に係る光学素子積層体の第2の変形例を示す平面図である。 図9Aは、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の第3の変形例を示す外観図である。図9Bは、図9Aに示したA−A線に沿った断面図である。 図10は、表示装置の一例を示す外観図である。 図11Aは、携帯電話の一例を示す外観図である。図11Bは、タブレット型コンピュータの一例を示す外観図である。 図12は、自動車のインストゥルメントパネルの一例を示す外観図である。 図13は、飛行機のインストゥルメントパネルの一例を示す外観図である。 図14は、飛行機の窓材の一例を示す外観図である。 図15は、ヘルメットの一例を示す外観図である。 図16は、額縁の一例を示す外観図である。 図17は、実施例5〜7のモスアイフィルム積層体の評価結果を示すグラフである。
本発明の実施形態について以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(光学積層体の例)
1−1.概要
1−2.光学積層体の構成
1−3.原盤の構成
1−4.露光装置の構成
1−5.光学積層体の製造方法
1−6.変形例
2.第2の実施形態(光学積層体を備える電子機器の例)
3.第3の実施形態(光学積層体を備える計測機器の例)
4.第4の実施形態(光学積層体を備える透明基材の例)
<1.第1の実施形態>
[1−1.概要]
本発明者らは上述の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、反射防止機能を有する複数の光学素子が光学用透明粘着剤(Optical Clear Adhesive:OCA)を介して積層された積層体を想到するに至った。この積層体では、構造体の機能が低下したら、汚れを拭き取るのではなく、最表面に設けられた光学素子を剥離することで、反射防止機能の低下を防ぐことができる。
しかしながら、このような構成を有する積層体について本発明者らがさらに検討を重ねた結果、光学素子間に介在される粘着剤の粘着強度により、下記のような問題が発生することを見出すに至った。すなわち、粘着剤の粘着強度が強すぎる場合、粘着剤が構造体表面に残り、反射防止機能の低下が起こる。また、粘着強度によっては、光学素子の構造体が破壊されてしまうこともある。一方、粘着剤の粘着強度が弱すぎる場合、粘着剤と光学素子との界面が十分に埋まらず両者の間に空隙が形成されてしまうため、反射防止機能の低下が起こる。本発明者らはこのような問題の発生を防ぐべくさらに検討を重ねた結果、複数の構造体の表面にケイ素を含む剥離層を設ける構成を見出すに至った。
[1−2.光学積層体の構成]
図1は、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の構成の一例を示す断面図である。光学積層体10は、反射防止機能を表面に有する積層体であり、図1に示すように、複数の光学素子1と、複数の粘着層2と、剥離層3とを備える。光学積層体10は、貼合層4を介して被着体100に貼り合わされる。被着体100としては、透明基材、電子機器および計測機器などが挙がられる。光学素子1は、反射防止機能を有する微細な凹凸構造(以下「モスアイ構造」と適宜称する。)を表面に有し、このモスアイ構造の表面に剥離層3が設けられている。粘着層2は、複数の光学素子1の間に設けられている。なお、図1では、光学積層体10の最表面に設けられた光学素子1の表面にも、剥離層3が設けられた構成を例として示しているが、この剥離層3は省略可能である。但し、後述するように光学積層体10の最表面に貼合層を介して保護層を設ける場合には、最表面に設けられた光学素子1の表面にも剥離層3を設けることが好ましい。
(光学素子)
光学素子1は、例えば、反射防止機能を有するモスアイフィルムである。光学素子1は、対向する表面(第1面)および裏面(第2面)を有している。光学素子1の表面が反射防止機能を有している。ここで、表面(第1面)とは、モスアイ構造が設けられた側の表面を意味し、裏面(第2面)とは、表面とは反対側となる面、すなわち被着体100に対向する側の面を意味する。
光学素子1の表面は、可視光の波長以下のピッチで構造体12が設けられた凹凸面である。このような凹凸面を光学素子1の表面に設けることで、波長依存性が少なく、視認性の優れた光学調整機能を被着体100の表面に付与することができる。したがって、視認性に優れた被着体100を実現することができる。ここで、光学調整機能とは、透過特性および/または反射特性の光学調整機能を示す。光学素子1は、例えば、可視光に対して透明性を有しており、その屈折率nは、好ましくは1.40以上2.00以下、より好ましくは1.43以上2.00以下の範囲内であることが好ましい。
図2Aは、光学素子の表面形状の一例を示す斜視図である。光学素子1は、例えば、表面および裏面を有する基体11と、基体11の表面に設けられた複数の構造体12とを備える。複数の構造体12は、基体11の表面において複数の列をなすように配置されている。基体11の表面側の凹凸面は、このように配列された複数の構造体12により形成されている。構造体12は、例えば、基体11の表面に対して凸状または凹状を有している。なお、図2Aでは、構造体12が、基体11の表面に対して凸状を有する例が示されている。構造体12と基体11とは、例えば、別成形または一体成形されている。
構造体12と基体11とが別成形されている場合には、図1に示すように、必要に応じて構造体12と基体11との間に基底層13をさらに備えるようにしてもよい。基底層13は、構造体12の底面側に構造体12と一体成形される光学層である。基底層13は、透明性を有し、構造体12と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化することにより形成される。
構造体12の屈折率は、粘着層2および基体11の屈折率と同様またはほぼ同様であることが好ましい。内部反射を抑制し、コントラストを向上することができるからである。
(基体)
基体11は、例えば、透明性を有する透明基体である。基体11の材料としては、例えば、透明性を有するプラスチック材料、ガラスなどを主成分とするものが挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマーなどが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する。また、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂またはメタアクリル系樹脂を意味する。
基体11としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体11の表面に対してコロナ放電処理、UV照射処理などを行うようにしてもよい。
基体11がプラスチックフィルムである場合には、基体11は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基体11の厚さは、光学積層体10の用途に応じて適宜選択することが好ましく、例えば10μm以上500μm以下程度である。
基体11の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、フィルムにはシートが含まれるものと定義する。
(構造体)
図2Bは、基体11の表面に設けられた複数の構造体の配列の一例を示す平面図である。図2Bに示すように、複数の構造体12は、基体11の表面に2次元配列されている。構造体12は、反射の低減または透過の向上を目的とする光の波長帯域以下の短い平均配置ピッチで周期的に2次元配列されていることが好ましい。
複数の構造体12はそれぞれ、基体11の表面において複数列のトラックT1,T2,T3,・・・(以下総称して「トラックT」ともいう。)をなすような配置形態を有する。本技術において、トラックとは、複数の構造体12が列をなして連なった部分のことをいう。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックTをウォブル(蛇行)させるようにしてもよい。このようにトラックTをウォブルさせることで、外観上のムラの発生を抑制できる。
トラックTをウォブルさせる場合には、基体11上における各トラックTのウォブルは、同期していることが好ましい。すなわち、ウォブルは、シンクロナイズドウォブルであることが好ましい。このようにウォブルを同期させることで、六方格子または準六方格子の単位格子形状を保持し、充填率を高く保つことができる。ウォブルしたトラックTの波形としては、例えば、サイン波、三角波などを挙げることができる。ウォブルしたトラックTの波形は、周期的な波形に限定されるものではなく、非周期的な波形としてもよい。ウォブルしたトラックTのウォブル振幅は、例えば±10nm程度に選択される。
構造体12は、例えば、隣接する2つのトラックT間において、半ピッチずれた位置に配置されている。具体的には、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された構造体12の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体12が配置されている。その結果、図2Bに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体12の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように構造体12が配置されている。
ここで、六方格子とは、正六角形状の格子のことをいう。準六方格子とは、正六角形状の格子とは異なり、歪んだ正六角形状の格子のことをいう。例えば、構造体12が直線上に配置されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた六方格子のことをいう。構造体12が円弧状に配置されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を円弧状に歪ませた六方格子、または正六角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、円弧状に歪ませた六方格子のことをいう。構造体12が蛇行して配列されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を構造体12の蛇行配列により歪ませた六方格子、または正六角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体12の蛇行配列により歪ませた六方格子のことをいう。
構造体12が準六方格子パターンを形成するように配置されている場合には、図2Bに示すように、同一トラック(例えばT1)内における構造体12の配置ピッチP1(例えばa1〜a2間距離)は、隣接する2つのトラック(例えばT1およびT2)間における構造体12の配置ピッチ、すなわちトラックの延在方向に対して±θ方向における構造体12の配置ピッチP2(例えばa1〜a7、a2〜a7間距離)よりも長くなっていることが好ましい。このように構造体12を配置することで、構造体12の充填密度の更なる向上を図れるようになる。
構造体12の具体的な形状としては、例えば、錐体状、柱状、針状、半球体状、半楕円体状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状または凹状の曲面を有する錐体形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。頂部に凸状の曲面を有する錐体形状としては、例えば、放物面状などの2次曲面状が挙げられる。また、錐体状の錐面を凹状または凸状に湾曲させるようにしてもよい。後述するロール原盤露光装置(図4参照)を用いてロール原盤を作製する場合には、構造体12の形状として、頂部に凸状の曲面を有する楕円錐形状、または頂部が平坦な楕円錐台形状を採用し、それらの底面を形成する楕円形の長軸方向をトラックTの延在方向と一致させることが好ましい。ここで、楕円、球体、楕円体などの形状には、数学的に定義される完全な楕円、球体、楕円体などの形状のみならず、多少の歪みが付与された楕円、球体、楕円体などの形状も含まれる。
光学調整機能の向上の観点からすると、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状が好ましい。また、光学調整機能の向上の観点からすると、中央部の傾きが底部および頂部より急峻な錐形形状、または、頂部が平坦な錐体形状であることが好ましい。構造体12が楕円錐形状または楕円錐台形状を有する場合、その底面の長軸方向が、トラックの延在方向と平行となることが好ましい。
構造体12は、その底部の周縁部に、頂部から下部の方向に向かってなだらかに高さが低下する曲面部15を有することが好ましい。光学積層体10の製造工程において光学素子1を原盤などから容易に剥離することが可能になるからである。なお、曲面部15は、構造体12の周縁部の一部にのみ設けてもよいが、上記剥離特性の向上の観点からすると、構造体12の周縁部の全部に設けることが好ましい。
構造体12の周囲の一部または全部に突出部14を設けることが好ましい。このようにすると、構造体12の充填率が低い場合でも、反射率を低く抑えることができるからである。突出部14は、成形の容易さの観点からすると、隣り合う構造体12の間に設けることが好ましい。また、構造体12の周囲の一部または全部の表面を荒らし、微細の凹凸を形成するようにしてもよい。具体的には例えば、隣り合う構造体12の間の表面を荒らし、微細な凹凸を形成するようにしてもよい。また、構造体12の表面、例えば頂部に微小な穴を形成するようにしてもよい。
なお、図1、図2Aおよび図2Bでは、各構造体12がそれぞれ同一の大きさ、形状および高さを有しているが、構造体12の構成はこれに限定されるものではなく、基体表面に2種以上の大きさ、形状および高さを有する構造体12が形成されていてもよい。
トラックの延在方向における構造体12の高さH1は、列方向における構造体12の高さH2よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体12の高さH1、H2がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。H1≧H2の関係を満たすように構造体12を配列すると、トラックの延在方向の配置ピッチP1を長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体12の充填率が低下するためである。このように充填率が低下すると、光学調整機能の低下を招くことになる。
なお、構造体12のアスペクト比は全て同一である場合に限らず、各構造体12が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。高さ分布を有する構造体12を設けることで、光学調整機能の波長依存性を低減することができる。したがって、優れた光学調整機能を有する光学積層体10を実現することができる。
ここで、高さ分布とは、2種以上の高さを有する構造体12が基体11の表面に設けられていることを意味する。例えば、基準となる高さを有する構造体12と、この構造体12とは異なる高さを有する構造体12とが基体11の表面に設けられるようにしてもよい。この場合、基準とは異なる高さを有する構造体12は、例えば基体11の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられる。その周期性の方向としては、例えば、トラックの延在方向、列方向などが挙げられる。
基体11の表面に設けられた構造体12のアスペクト比(高さまたは深さH/配置ピッチP)は、好ましくは0.66以上1.96以下、より好ましくは0.76以上1.96以下である。アスペクト比が0.66以上であると、低反射特性を向上できる。一方、アスペクト比が1.96以下であると、離型性などを向上できる。
構造体12の配置ピッチPは、光学調整機能を目的とする光の波長帯域以下であることが好ましい。光学調整機能を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm〜360nmの波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm〜830nmの波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm〜1mmの波長帯域をいう。具体的には、構造体12の配置ピッチPは、好ましくは200nm以上250nm以下の範囲内である。
構造体12の高さHは、好ましくは180nm以上300nm以下、より好ましくは190nm以上300nm以下、さらに好ましくは190nm以上230nm以下の範囲内である。構造体12の高さHが180nm以上であると、低反射特性を向上できる。一方、構造体12の高さHが300nm以下であると、離型性などを向上できる。
なお、構造体12が異方性を有する形状(例えば楕円錐形状や楕円錐台形状など)である場合には、アスペクト比は、以下の式(1)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(1)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(2)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(2)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=60°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
また、構造体12が楕円錐形状や楕円錐台形状などである場合には、構造体12の高さHは、構造体12のトラック間方向(Y方向)の高さとする。構造体12のトラック延在方向(X方向)の高さは、トラック間方向(Y方向)の高さよりも小さく、また、構造体12のトラック延在方向以外の部分における高さはトラック間方向の高さとほぼ同一であるため、構造体12の高さをトラック間方向の高さで代表する。但し、構造体12が凹部である場合、上記式(1)における構造体12の高さHは、構造体12の深さHとする。
同一トラック内における構造体12の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体12の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体12の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。
基体11の表面における構造体12の充填率は、100%を上限として、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、反射防止特性を向上することができる。充填率を向上させるためには、隣接する構造体12の下部同士を接合する、または、構造体12の底面の楕円率を調整などして構造体12に歪みを付与することが好ましい。
ここで、構造体12の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、光学素子1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図1B参照)。また、その単位格子Ucの中央に位置する構造体12の底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(3)より充填率を求める。
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100 ・・・(3)
単位格子面積:S(unit)=P1×2Tp
単位格子内に存在する構造体12の底面の面積:S(hex.)=2S
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体12の充填率とする。
構造体12が重なっているときや、構造体12の間に突出部14などの副構造体があるときの充填率は、構造体12の高さに対して5%の高さに対応する部分を閾値として面積比を判定する方法で充填率を求めることができる。
構造体12が、その下部同士を重ね合うようにして繋がっていることが好ましい。具体的には、隣接関係にある構造体12の一部または全部の下部同士が重なり合っていることが好ましく、トラック方向、θ方向、またはそれら両方向において重なり合っていることが好ましい。このように構造体12の下部同士を重なり合わせることで、構造体12の充填率を向上することができる。構造体12同士は、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で重なり合っていることが好ましい。これにより、優れた光学調整機能を得ることができるからである。
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の範囲内である。このような範囲にすることで、構造体12の充填率を向上し、光学調整機能を向上できるからである。比率((2r/P1)×100)が大きくなり、構造体12の重なりが大きくなりすぎると光学調整機能が低減する傾向にある。したがって、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で構造体12同士が接合されるように、比率((2r/P1)×100)の上限値を設定することが好ましい。ここで、配置ピッチP1は、構造体12のトラック延在方向(X方向)の配置ピッチであり、径2rは、構造体12の底面のトラック延在方向(X方向)の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
構造体12が準六方格子パターンを形成する場合には、構造体12の底面の楕円率eは、100%<e<150%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体12の充填率を向上し、優れた光学調整機能を得ることができるからである。
(剥離層)
剥離層3は、光学素子1の表面(凹凸面)全体またはその一部に設けられ、光学素子1の剥離性向上の観点からすると、光学素子1の表面全体に設けられていることが好ましい。剥離層3の厚さは均一に限らず分布を有していてもよい。剥離層3は、ケイ素を含んでいる。ケイ素は、例えば、ケイ素元素単体またはケイ素化合物として剥離層3に含まれている。ケイ素化合物としては、例えば、シリコーンなどを用いることができる。ここで、剥離層3における層とは、ケイ素またはケイ素化合物が、モスアイ構造が設けられた表面全体に均一またはほぼ均一に形成されている状態のみならず、モスアイ構造が設けられた表面全体に分散した状態(島状も含む)も包含するものである。剥離層3は、例えば、光学素子1の表面(凹凸面)にケイ素またはケイ素化合物を滲出(ブリードアウト)することにより得られる。このようにして剥離層3を形成する場合には、光学素子1、より具体的には光学素子1の構造体12が、例えば紫外線硬化樹脂およびケイ素たはケイ素化合物を含んでいる。
(粘着層)
粘着層2、4は、例えば、光学用透明粘着剤(Optical Clear Adhesive:OCA)を主成分としている。光学用透明粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤などを用いることができるが、透明性の観点からすると、アクリル系粘着剤が好ましい。光学素子1のモスアイ構造は、粘着層2により埋められていることが好ましい。内部反射を抑制し、コントラストを向上することができるからである。
[1−3.原盤の構成]
図3Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図3Cは、図3BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。ロール原盤31は、上述した構成を有する光学素子1を作製するための原盤、より具体的には、上述した基体表面に複数の構造体12を成形するための原盤である。ロール原盤31は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面が基体表面に複数の構造体12を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体32が2次元配列されている。構造体32は、例えば、成形面に対して凹状または凸状を有している。なお、図3Cでは、構造体32が成形面に対して凹状を有する例が示されている。ロール原盤31の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
ロール原盤31の成形面に配置された複数の構造体32と、上述の基体11の表面に配置された複数の構造体12とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤31の構造体32の形状、配列、配置ピッチなどは、基体11の構造体12と同様である。
[1−4.露光装置の構成]
図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
レーザー光源41は、記録媒体としてのロール原盤31の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光34を発振するものである。レーザー光源41から出射されたレーザー光34は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)42へ入射する。電気光学素子42を透過したレーザー光34は、ミラー43で反射され、変調光学系45に導かれる。
ミラー43は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー43を透過した偏光成分はフォトダイオード44で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子42を制御してレーザー光34の位相変調を行う。
変調光学系45において、レーザー光34は、集光レンズ46により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)47に集光される。レーザー光34は、音響光学素子47により強度変調され発散した後、レンズ48によって平行ビーム化される。変調光学系45から出射されたレーザー光34は、ミラー51によって反射され、移動光学テーブル52上に水平かつ平行に導かれる。
移動光学テーブル52は、ビームエキスパンダ53、および対物レンズ54を備えている。移動光学テーブル52に導かれたレーザー光34は、ビームエキスパンダ53により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ54を介して、ロール原盤31上のレジスト層へ照射される。ロール原盤31は、スピンドルモータ55に接続されたターンテーブル56の上に載置されている。そして、ロール原盤31を回転させるとともに、レーザー光34をロール原盤31の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光34を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光34の移動は、移動光学テーブル52の矢印R方向への移動によって行われる。
露光装置は、図2Bおよび図3Bに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構57を備えている。制御機構57は、フォマッター49とドライバ50とを備える。フォマッター49は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光34の照射タイミングを制御する。ドライバ50は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子47を制御する。
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と回転コントロラーを同期させて信号を発生し、音響光学素子47により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。
[1−5.光学積層体の製造方法]
図5A〜図7Cは、本技術の第1の実施形態に係る光学積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
(レジスト成膜工程)
まず、図5Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤31を準備する。このロール原盤31は、例えばガラス原盤である。次に、図5Bに示すように、ロール原盤31の表面にレジスト層33を形成する。レジスト層33の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、金属化合物を用いることができる。
(露光工程)
次に、図5Cに示すように、ロール原盤31の表面に形成されたレジスト層33に、レーザー光(露光ビーム)34を照射する。具体的には、図4に示したロール原盤露光装置のターンテーブル56上に載置し、ロール原盤31を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)34をレジスト層33に照射する。このとき、レーザー光34をロール原盤31の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤31の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光34を間欠的に照射することで、レジスト層33を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光34の軌跡に応じた潜像35が、例えば可視光波長と同程度のピッチでレジスト層33の全面にわたって形成される。
潜像35は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像35は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤31を回転させながら、レジスト層33上に現像液を滴下して、レジスト層33を現像処理する。これにより、図6Aに示すように、レジスト層33に複数の開口部が形成される。レジスト層33をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光34で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図6Aに示すように、潜像(露光部)16に応じたパターンがレジスト層33に形成される。開口部のパターンは、例えば六方格子パターンまたは準六方格子パターンなどの所定の格子パターンである。
(エッチング工程)
次に、ロール原盤31の上に形成されたレジスト層33のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤31の表面をエッチング処理する。これにより、図6Bに示すように、例えばトラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状の凹部、すなわち構造体32を得ることができる。エッチングとしては、例えばドライエッチング、ウエットエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体32のパターンを形成することができる。以上により、目的とするロール原盤31が得られる。
(転写工程)
次に、図6Cに示すように、ロール原盤31と、基体11上に塗布された転写材料36とを密着させた後、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源37から転写材料36に照射して転写材料36を硬化させた後、硬化した転写材料36と一体となった基体11を剥離する。これにより、図7Aに示すように、複数の構造体12が基体11の表面に形成された光学素子1が得られる。この際、必要に応じて、構造体12と基体11との間に基底層13をさらに形成するようにしてもよい。
エネルギー線源37としては、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、または高周波などエネルギー線を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
転写材料36は、ケイ素またはその化合物と、エネルギー線硬化性樹脂組成物とを主成分としている。ケイ素化合物としては、シリコーンなどを用いることが好ましい。
エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物が、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいてもよい。
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えばアクリレートおよび開始剤を含んでいる。紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどを含み、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al23などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。基体11の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
基体11の成形方法は特に限定されず、射出成形体でも押し出し成形体でも、キャスト成形体でもよい。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
(積層工程)
まず、図7Bに示すように、複数の構造体12が形成された複数の光学素子1を粘着層2を介して積層することにより、積層体10aを形成する。この際、複数の光学素子1は、モスアイ構造が設けられた側の凹凸面が同一の方向を向くようにして積層される。隣接する光学素子1の間は粘着層2により隙間なく埋められていることが好ましい。内部反射を抑制し、コントラストを向上することができるからである。
(加熱処理工程)
次に、積層体10aに対して加熱処理を施す。これにより、図7Cに示すように、構造体12に含まれるケイ素またはケイ素化合物の内部から表面への滲出(ブリードアウト)が促進され、粘着層2と構造体12との間に剥離層3が形成される。以上により、目的とする光学積層体10が得られる。
加熱処理の温度は、80℃以上、ガラス転移点以下の範囲内であることが好ましい。加熱処理の温度が80℃以上であると、光学素子1の剥離性を向上することができる。一方、加熱処理の温度がガラス転移点以下であると、加熱処理による光学積層体10のダメージを低減できる。但し、上記ガラス転移点は、光学積層体10を構成する部材のガラス転移点のうちで、最も低いものを意味する。
[効果]
第1の実施形態によれば、光学積層体10は、反射防止機能を有する複数の光学素子1が粘着層2を介して積層された積層構造を有している。したがって、光学積層体10の最表面の光学素子1の光学調整機能が低下した場合には、その光学素子1を剥離して、その下に設けられた光学素子1のモスアイ構造を露出させることができる。したがって、光学調整機能の低下を抑制することができる。
[1−6.変形例]
(第1の変形例)
図8Aに示すように、光学素子1の表面に設けられた複数の構造体12が、隣接する3列のトラックT間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなすようにしてもよい。また、同様に、光学素子1の裏面に設けられた複数の構造体12が、隣接する3列のトラックT間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなすようにしてもよい。
ここで、四方格子とは、正四角形状の格子のことをいう。準四方格子とは、正四角形状の格子とは異なり、歪んだ正四角形状の格子のことをいう。例えば、構造体12が直線上に配置されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた四方格子のことをいう。構造体12が円弧状に配置されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を円弧状に歪ませた四方格子、または正四角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、円弧状に歪ませた四方格子のことをいう。構造体12が蛇行して配列されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を構造体12の蛇行配列により歪ませた四方格子、または正四角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体12の蛇行配列により歪ませた四方格子のことをいう。
同一トラック内における構造体12の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体12の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。また、同一トラック内における構造体12の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体12の配置ピッチをP2としたとき、P1/P2が1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体12の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。また、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体12の高さまたは深さは、トラックの延在方向における構造体12の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。
トラックの延在方向に対して斜となる構造体12の配列方向(θ方向)の高さH2は、トラックの延在方向における構造体12の高さH1よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体12の高さH1、H2がH1>H2の関係を満たすことが好ましい。
第1の変形例では、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第2の変形例)
図8Bに示すように、複数の構造体12を光学素子1の表面にランダム(不規則)に2次元配列するようにしてもよい。構造体12の形状、大きさおよびは高さの少なくとも1つをランダムに変化させるようにしてもよい。
上述の構造体12を有する光学素子1を作製するための原盤の作製方法としては、例えば、アルミニウム基材などの金属基材の表面を陽極酸化する方法を用いることができるが、この方法に特に限定されるものではない。
第2の変形例では、複数の構造体12をランダムに2次元配列しているので、外観上のムラの発生を抑制できる。
(第3の変形例)
図7Aに示すように、光学積層体10が全体として帯状の形状を有するようにしてもよい。このような形状とすることで、光学素子1をロール・ツー・ロール工程により容易に作製することができる。また、ロール状などに光学積層体10を巻回して原反とすることで、取り扱いを容易とすることができる。
また、光学積層体10の構成として上述の構成を採用する場合、図7Bに示すように、光学積層体10の最表面に、構造体12を保護する保護層6を粘着層2を介してさらに設けることが好ましい。光学積層体10を巻回して原反とする場合にも、構造体12の破損を抑制し、光学調整機能の低下を抑制することができるからである。
また、図7Bに示すように、光学積層体10の裏面に貼合層4および保護層5をさらに設けることが好ましい。保護層5は貼合層4の表面に設けられ、貼合層4を保護するためのものである。保護層5を貼合層4から剥離することで、光学積層体10を被着体に容易に貼り合わせることができる。
(第4の変形例)
上述の第1の実施形態では、複数の光学素子1を積層して光学積層体10を形成した後に、光学積層体10に対して加熱処理を施す光学積層体10の製造方法について説明したが、光学積層体10の製造方法はこれに限定されるものではない。例えば、複数の光学素子1に対して加熱処理を施した後、積層して光学積層体10を形成するようにしてもよい。以下、この製造方法について具体的に説明する。
まず、上述の第1の実施形態と同様にして、複数の光学素子1を作製する。次に、複数の光学素子1に対して加熱処理を施す。これにより、構造体12に含まれるケイ素またはケイ素化合物の内部から表面への滲出が促進され、光学素子1の表面(すなわち構造体12の表面)に剥離層3が形成される。加熱処理の温度は、80℃以上、ガラス転移点以下の範囲内であることが好ましい。加熱処理の温度が80℃以上であると、光学素子1の剥離性を向上することができる。一方、加熱処理の温度がガラス転移点以下であると、加熱処理による光学素子1のダメージを低減できる。但し、上記ガラス転移点は、光学素子1を構成する部材のガラス転移点のうちで、最も低いものを意味する。次に、複数の光学素子1を粘着層2を介して積層することにより、光学積層体10を形成する。
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態に係る電子機器は、第1の実施形態に係る光学積層体10を表示部または情報入力部に備えている。以下に、本技術の第2の実施形態に係る電子機器の例について説明する。
図10は、表示装置の一例を示す外観図である。表示装置101は、表示パネル(表示部)102と、その表示面Sに設けられた光学積層体10とを備える。光学積層体10が適用される表示装置101は特に限定されるものではないが、例示するならば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)などの各種表示装置が挙げられる。また、表示装置101としては、民生用ディスプレイに限定されるものでなく、医療用ディスプレイや産業用ディスプレイなどにも好適に適用可能である。
図11Aは、携帯電話の一例を示す外観図である。携帯電話111は、いわゆるスマートフォンであり、情報を指やペンなどで入力するための情報入力装置(情報入力部)112と、その情報入力面Sに設けられた光学積層体10とを備える。携帯電話用の情報入力装置112としては、静電容量式タッチパネルが好ましい。なお、光学積層体10が適用される情報入力装置は静電容量式タッチパネルに限定されるものではなく、抵抗膜式タッチパネル、光学式タッチパネルおよび超音波式タッチなどの各種タッチパネルにも光学積層体10は適用可能である。
図11Bは、タブレット型コンピュータの一例を示す外観図である。タブレット型コンピュータ121は、情報入力装置122と、その情報入力面Sに設けられた光学積層体10とを備える。タブレット型コンピュータ用の情報入力装置112としては、静電容量式タッチパネルが好ましい。
<3.第3の実施形態>
第3の実施形態に係る計測機器は、第1の実施形態に係る光学積層体10をカバー材(透明基材)に備えている。以下に、本技術の第3の実施形態に係る計測機器の例について説明する。
図12は、自動車のインストゥルメントパネルの一例を示す外観図である。インストゥルメントパネル131は、スピードメータ、タコメータおよび燃料計などの各種計器133〜135と、その前面に設けられたカバー材132と、カバー材132の表面に設けられた光学積層体10とを備える。なお、光学積層体10の適用例はこれに限定されるものではなく、自動車用のディスプレイにも適用可能である。
図13は、飛行機のインストゥルメントパネルの一例を示す外観図である。インストゥルメントパネル141は、各種計器142〜147を備える。各計器142〜147は、カバー材148と、その表面Sに設けられた光学積層体10とを備える。なお、光学積層体10の適用例はこれに限定されるものではなく、飛行機用のディスプレイにも適用可能である。
<4.第4の実施形態>
第4の実施形態に係る反射防止機能付き透明基材は、第1の実施形態に係る光学積層体10を備えている。以下に、本技術の第4の実施形態に係る反射防止機能付き透明基材の例について説明する。
図14は、飛行機の窓材の一例を示す外観図である。飛行機は、その前面や側面に窓材151を備える。その窓材151の表面Sには光学積層体10が設けられている。なお、光学積層体10を適用する窓材はこの例に限定されるものではなく、列車や自動車などの各種車両の窓材に光学積層体10を適用してもよい。例えば、航空機や二輪車などのキャノピーに適用してもよい。
図15は、ヘルメットの一例を示す外観図である。ヘルメット161は、シールド162と、その表面Sに設けられた光学積層体10とを備える。
図16は、額縁の一例を示す外観図である。額縁は、カバー材172と、その表面Sに設けられた光学積層体10とを備える。カバー材172としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂を用いることができるが、これに限定されるものではない。
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本技術の実施例について以下の順序で説明する。
1.積層体の剥離性の検討
2.積層体の光学特性の検討
3.積層体の加熱温度の検討
<1.積層体の剥離性の検討>
積層フィルムを構成する各モスアイフィルム(サンプル)を以下のようにして作製した。
(サンプル1−1)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にシリコーン成分2質量%を含むUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。次に、このモスアイフィルムを80℃の恒温槽にて加熱処理を1時間行い、シリコーンがモスアイ構造表面に滲出したモスアイフィルムを得た。
次に、得られたモスアイフィルムを50mm×160mm×2mmのアクリル板に20N以上の接着強度をもつ粘着剤を用いて、気泡が発生しないようにして貼合した。これにより、サンプル1−1が得られた。
(サンプル1−2)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にシリコーン成分を含まないUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。
次に、得られたモスアイフィルムを50mm×160mm×2mmのアクリル板に20N以上の接着強度をもつ粘着剤を用いて、気泡が発生しないようにして貼合した。これにより、サンプル1−2が得られた。
(サンプル1−3)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にシリコーン成分2質量%を含むUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。
次に、得られたモスアイフィルムを50mm×160mm×2mmのアクリル板に20N以上の接着強度をもつ粘着剤を用いて、気泡が発生しないようにして貼合した。これにより、サンプル1−3が得られた。
(サンプル2−1)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。
次に、得られたモスアイフィルムのモスアイ形状の無い面に粘着剤Aを塗布、乾燥させることにより、モスアイフィルムの裏面に粘着層を形成した。次に、このモスアイフィルムを25mm×150mmの短冊状に切り出した。これにより、サンプル2−1が得られた。
(サンプル2−2)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。
次に、得られたモスアイフィルムのモスアイ形状の無い面に粘着剤Bを塗布、乾燥させることにより、モスアイフィルムの裏面に粘着層を形成した。次に、このモスアイフィルムを25mm×150mmの短冊状に切り出した。これにより、サンプル2−2が得られた。
(サンプル2−3)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。
次に、得られたモスアイフィルムのモスアイ形状の無い面に粘着剤Cを塗布、乾燥させることにより、モスアイフィルムの裏面に粘着層を形成した。次に、このモスアイフィルムを25mm×150mmの短冊状に切り出した。これにより、サンプル2−3が得られた。
上述のようにして得られたサンプル1−1〜1−3とサンプル2−1〜2−3とを以下のようにして組み合わせて積層体を形成した。
(実施例1)
まず、サンプル1−1を机上に載置した。次に、サンプル2−1を、その裏面が粘着層を介してサンプル1−1のモスアイ構造面と対向するようにしてサンプル1−1表面の所定位置に載置した。次に、ゴムローラーを用いて一定の圧力を加えて、両サンプルを貼合した。これにより、目的とするモスアイフィルム積層体が得られた。
(実施例2)
サンプル2−1に代えてサンプル2−2を用いる以外は実施例1と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(実施例3)
サンプル2−1に代えてサンプル2−3を用いる以外は実施例1と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(比較例1)
サンプル1−1に代えてサンプル1−2を用いる以外は実施例1と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(比較例2)
サンプル2−1に代えてサンプル2−2を用いる以外は比較例1と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(比較例3)
サンプル2−1に代えてサンプル2−3を用いる以外は比較例1と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(比較例4)
サンプル1−1に代えてサンプル1−3を用いる以外は実施例1と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(比較例5)
サンプル2−1に代えてサンプル2−2を用いる以外は比較例4と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(比較例6)
サンプル2−1に代えてサンプル2−3を用いる以外は比較例4と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(評価)
上述のようにして得られたモスアイフィルム積層体に対して、「剥離力」、「粘着剤残り」および「微細形状剥がれ」の評価を以下のようにして行った。
(剥離力)
モスアイフィルム積層体をJIS試験方法(JIS K6854-1 接着剤−はく離接着強さ試験方法 第1部:90度剥離)に基づいて、サンプル2−1〜2−3をそれぞれサンプル1−1〜1−3から剥離し、サンプル2−1〜2−3が剥離したときの剥離力を測定した。この際、モスアイフィルム積層体を構成するサンプル1−1〜1−3を上記JIS試験方法における「剛性被着材」とみなし、サンプル2−1〜2−3を上記JIS試験方法における「たわみ性被着材」とみなした。
(粘着剤残りの有無)
上述のようにして「剥離力」を評価したのちのサンプル1−1〜1−3のモスアイ構造面を目視にて観察し、評価エリア(25mm×50mm)において粘着剤の残りを以下の基準で評価した。
◎:粘着剤残りが全く無い。
○:粘着剤残りの面積が0.1%未満
△:粘着剤残りの面積が0.1%以上1%未満
×:粘着剤残りの面積が1%以上
(モスアイ構造破壊の有無)
上述のようにして「剥離力」を評価したのちのサンプル1−1〜1−3のモスアイ構造面を目視にて観察し、評価エリア(25mm×50mm)においてモスアイ構造の状態を以下の基準で評価した。
◎:モスアイ剥がれが全く無い。
○:モスアイ剥がれの面積が0.1%未満
△:モスアイ剥がれの面積が0.1%以上1%未満
×:モスアイ剥がれの面積が1%以上
(結果)
表1は、サンプル1−1〜2−3の構成および作製条件を示す。
Figure 2013195579
なお、粘着剤A〜Cのタイプについて以下に示す。
粘着剤A:弱粘着タイプの粘着剤(剥がすことを想定していない粘着剤)
粘着剤B:微粘着タイプの粘着剤(剥がして使う粘着剤(保護フィルムなどに使用される粘着剤))
粘着剤C:再剥離用途タイプの粘着剤(貼り直しが可能な粘着剤)
表2は、実施例1〜3、比較例1〜6のモスアイフィルム積層体の構成および評価結果を示す。
Figure 2013195579
なお、比較例3のモスアイフィルム積層体では、剛性被着材であるサンプル1−2の破壊により剥離力を測定不可能であった。
(考察)
シリコーンを含むUV硬化樹脂を用いた実施例1〜3、比較例4〜6では、シリコーンを含まないUV硬化樹脂を用いた比較例1〜3に比べて、剥離力を低減できると共に、粘着剤残りおよびモスアイ構造の破壊を抑制できる。
シリコーンを含むUV硬化樹脂を用いたサンプルのうちでも、加熱処理を行った実施例1〜3では、加熱処理を行わなかった比較例4〜6に比べて、剥離力をさらに低減できると共に、粘着剤残りおよびモスアイ構造の破壊をさらに抑制できる傾向がみられる。
<2.積層体の光学特性の検討>
(実施例4)
まず、モスアイ形状をもつ原盤上にシリコーン成分2質量%を含むUV硬化樹脂を数滴垂らし、透明基材としてTACフィルムをかぶせ、原盤全体にローラーにて拡げた。その後、TACフィルム側から紫外線を照射し、樹脂の硬化を行った後、原盤から離型し、モスアイフィルムを得た。次に、このモスアイフィルムを80℃の恒温槽にて1時間加熱を行った。次に、このモスアイフィルムのモスアイ形状の無い面に粘着剤Cを塗布、乾燥させることにより、モスアイフィルムの裏面に粘着層を形成した。
次に、上述のモスアイフィルムを気泡が発生しないようにして5枚積層してそれぞれ貼合した。これにより、モスアイフィルム積層体が得られた。
(比較例7)
実施例4と同様にして、裏面に粘着層を形成したモスアイフィルムを作製し、このフィルムを積層せずにサンプルとして用いた。
(光学特性)
実施例4のモスアイフィルム積層体と、比較例7のモスアイフィルムとの反射スペクトルおよび透過スペクトルを、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−500)を用いて測定した。
(結果)
実施例4のモスアイフィルム積層体と、比較例7のモスアイフィルムとの反射スペクトルおよび透過スペクトルとで、ほとんど違いは認められなかった。
<3.積層体の加熱温度の検討>
(実施例5)
実施例3とすべて同様にしてモスアイフィルム積層体を得た。なお、上述したように、実施例3の加熱処理工程における恒温槽の温度は80℃である。
(実施例6)
モスアイフィルムを60℃の恒温槽にて加熱処理を1時間行う以外のことは実施例5と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(実施例7)
モスアイフィルムを120℃の恒温槽にて加熱処理を1時間行う以外のことは実施例5と同様にして、モスアイフィルム積層体を得た。
(剥離力)
上述のようにして得られた実施例5〜7のモスアイフィルム積層体の剥離力を実施例1〜3、比較例1〜6と同様にして測定した。
(結果)
図18に、剥離力の評価結果を示す。
(考察)
上記評価結果から、加熱温度の範囲は80℃以上が好ましく、温度が高いほど剥離力を低減できることがわかる。
また、モスアイフィルムを積層した後に、加熱処理を行った場合にも、同様の傾向を示すものと考えられる。
以上、本技術の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態および実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
上記複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
を備え、
上記剥離層は、ケイ素を含んでいる積層体。
(2)
上記剥離層は、上記ケイ素をケイ素化合物として含んでいる(1)に記載の積層体。
(3)
上記ケイ素化合物は、シリコーンである(2)に記載の積層体。
(4)
上記構造体と上記粘着層との屈折率がほぼ等しい(1)から(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)
上記光学素子は、紫外線硬化樹脂およびケイ素を含んでいる(1)から(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)
上記構造体は、上記粘着層により埋められている(1)から(5)のいずれかに記載の積層体。
(7)
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子を、複数の粘着層を介して重ね合わせて積層体を形成し、
上記積層体に対して加熱処理を施し、上記光学素子に含まれるケイ素を上記構造体の表面に滲出させること
を含む積層体の製造方法。
(8)
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子に対して加熱処理を施し、上記光学素子に含まれるケイ素を上記構造体の表面に滲出し、
上記複数の光学素子を複数の粘着層を介して重ね合わせて積層体を形成する
ことを含む積層体の製造方法。
(9)
可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と
を備え、
上記複数の構造体の表面にケイ素が滲出している積層体。
(10)
透明基材と、
上記透明基材の表面に設けられた積層体と
を備え、
上記積層体は、(1)から(6)および(9)のいずれかである反射防止機能付き透明基材。
(11)
表示部と
上記表示部の表示面に設けられた積層体と
を備え、
上記積層体は、(1)から(6)および(9)のいずれかである表示装置。
(12)
入力部と、
上記入力部の入力面に設けられた積層体と
を備え、
上記積層体は、(1)から(6)および(9)のいずれかである入力装置。
(13)
表示部と、
上記表示部の表示面に設けられた積層体と
を備え、
上記積層体は、(1)から(6)および(9)のいずれかである電子機器。
1・・・光学素子
2・・・粘着層
3、4・・・剥離層
5、6・・・保護層
11・・・基体
12・・・構造体
10・・・光学積層体
100・・・被着体
101・・・表示装置
102・・・表示パネル
111・・・携帯電話
112、122・・・情報入力装置
121・・・タブレット型コンピュータ
131、141・・・インストゥルメントパネル
132、148、172・・・カバー材
151・・・窓材
161・・・ヘルメット
162・・・シールド
171・・・額縁

Claims (13)

  1. 可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
    上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
    上記複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
    を備え、
    上記剥離層は、ケイ素を含んでいる積層体。
  2. 上記剥離層は、上記ケイ素をケイ素化合物として含んでいる請求項1に記載の積層体。
  3. 上記ケイ素化合物は、シリコーンである請求項2に記載の積層体。
  4. 上記構造体と上記粘着層との屈折率がほぼ等しい請求項1に記載の積層体。
  5. 上記光学素子は、紫外線硬化樹脂およびケイ素を含んでいる請求項1に記載の積層体。
  6. 上記構造体は、上記粘着層により埋められている請求項1に記載の積層体。
  7. 可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子を、複数の粘着層を介して重ね合わせて積層体を形成し、
    上記積層体に対して加熱処理を施し、上記光学素子に含まれるケイ素を上記構造体の表面に滲出させること
    を含む積層体の製造方法。
  8. 可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子に対して加熱処理を施し、上記光学素子に含まれるケイ素を上記構造体の表面に滲出し、
    上記複数の光学素子を複数の粘着層を介して重ね合わせて積層体を形成する
    ことを含む積層体の製造方法。
  9. 可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
    上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と
    を備え、
    上記複数の構造体の表面にケイ素が滲出している積層体。
  10. 透明基材と、
    上記透明基材の表面に設けられた積層体と
    を備え、
    上記積層体は、
    可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
    上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
    上記複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
    を備え、
    上記剥離層は、ケイ素を含んでいる反射防止機能付き透明基材。
  11. 表示部と
    上記表示部の表示面に設けられた積層体と
    を備え、
    上記積層体は、
    可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
    上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
    上記複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
    を備え、
    上記剥離層は、ケイ素を含んでいる表示装置。
  12. 入力部と、
    上記入力部の入力面に設けられた積層体と
    を備え、
    上記積層体は、
    可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
    上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
    上記複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
    を備え、
    上記剥離層は、ケイ素を含んでいる入力装置。
  13. 表示部と、
    上記表示部の表示面に設けられた積層体と
    を備え、
    上記積層体は、
    可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が表面に設けられた、反射防止機能を有する複数の光学素子と、
    上記複数の光学素子の間に設けられた複数の粘着層と、
    上記複数の構造体の表面に設けられた複数の剥離層と
    を備え、
    上記剥離層は、ケイ素を含んでいる電子機器。
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