JP2013193551A - ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン始動に走行用モータを利用することによりスタータモータの負担を軽減できると共に、スタータモータのピニオンギヤとリングギヤとの噛合時に生じる摩耗を軽減できるハイブリッド車両のエンジン始動制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン始動条件が成立したときに(S2がYes)、まずクラッチ4を接続して走行用モータ6によりエンジン2のクランキングを開始する(S12,14)。エンジン2のクランク角が所定クランク角N°CAだけ変化し(S16がYes)、スタータモータ44のピニオンを無理なく始動可能となり、且つクランキングに大きな駆動トルクを要しなくなると、クラッチ4を切断して走行用モータ6を停止させ、スタータモータ44により引き続きエンジン2をクラキングして始動を完了させる(S18〜26)。
【選択図】図3

Description

本発明はハイブリッド車両のエンジン始動制御装置に係り、詳しくはエンジン始動に走行用モータを利用することによりスタータモータの負担を軽減するようにしたハイブリッド車両のエンジン始動制御装置に関する。
周知のようにエンジン始動時のクランキングは、フライホイールのリングギヤにスタータモータのピニオンギヤを噛合させて回転駆動することで行われている。スタータモータはエンジン始動の度に作動し、特に信号待ちなどでの一時停車時にエンジンを自動停止及び自動始動するアイドルストップスタート機能を備えた車両では、エンジン始動の頻度が格段に高くなる。このためエンジン始動に伴うスタータモータの負担を極力低減するために、エンジン始動時にハイブリッド車両の走行用モータを利用するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の技術では、まずスタータモータによりエンジンのクランキングを開始し、エンジン回転速度が20rpmを超えると走行用モータを作動させてクランキングをアシストし、これによりスタータモータの負担軽減を図っている。
特開2002−048036号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術はスタータモータの負担軽減に対して十分な効果を達成しているとは言い難かった。
本発明者は、エンジン始動時のクランキングに要する駆動トルクを測定する試験を実施した。その結果、図2に示すように、クランキングに大きな駆動トルクを要するのはクランキング開始直後のごく短時間に限られ、それ以降にはそれほど大きな駆動トルクを要しないことが判明した。特許文献1の技術ではエンジン回転速度が20rpmを超えたときに走行用モータのアシストを開始しているが、この時点では既に大きな駆動トルクが必要な期間を過ぎている。このため走行用モータによるアシストは、エンジンをクランキングする際のスタータモータの負担軽減にほとんど貢献していないことになる。
また、このようなスタータモータ本体の負担以外にも、クランキングの際にはピニオンギヤとリングギヤとを噛合させるためギヤ摩耗への対策が要望されている。即ち、クランキングに先行してスタータモータのピニオンギヤはリングギヤと噛合するが、噛合前の両ギヤの位相は必ずしも一致していないため、軸方向にスライドしたピニオンギヤがリングギヤに対して歯を摺接させながら半ば強引に噛合することになる。このようなギヤ噛合が摩耗を進行させる主な要因であるが、特許文献1の技術でも同様の過程を経てギヤ噛合させるため、不具合の解決には何ら貢献しなかった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、エンジン始動に走行用モータを利用することによりスタータモータの負担を軽減できると共に、スタータモータのピニオンギヤとリングギヤとの噛合時に生じる摩耗を軽減でき、もってスタータモータ本体及び各ギヤの耐久信頼性を向上することができるハイブリッド車両のエンジン始動制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、エンジン及び走行用モータの駆動トルクを任意に駆動輪側に伝達して走行可能であると共に、走行用モータの駆動トルクをエンジン側にも伝達可能に構成されたハイブリッド車両の制御装置において、エンジンをクランキングするためのスタータモータと、エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段と、予め設定されたエンジン始動条件の成立時に、走行用モータの駆動トルクをエンジンに伝達してエンジンのクランキングを開始し、クランク角検出手段によりエンジンの所定クランク角の変位が検出された場合に、スタータモータを起動してエンジンのクランキングを継続することにより始動を完了させるエンジン始動制御手段とを備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1において、ハイブリッド車両が、エンジンと前記走行用モータとの間に走行用クラッチを介装し、走行用クラッチを接続することにより走行用モータの駆動トルクをエンジン側に伝達するように構成され、エンジン始動制御手段が、エンジン始動条件の成立時に、走行用クラッチを接続状態に制御して該クラッチを介して走行用モータの駆動トルクをエンジン側に伝達し、所定クランク角の変位の検出時には、クラッチを接続状態から切断状態に制御して前記スタータモータを起動するものである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、エンジン始動制御手段が、所定クランク角の変位の検出時に、スタータモータを起動すると共に走行用モータの駆動トルクを0に制御するものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3において、走行用モータに電力を供給するバッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出手段を備え、エンジン始動制御手段が、エンジン始動条件の成立時においてバッテリ充電量検出手段により検出されたバッテリの充電量が予め設定された所定充電量未満の場合、走行用モータを用いることなくスタータモータにより前記エンジンをクランキングして始動するものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至4において、エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段を備え、エンジン始動制御手段が、エンジン始動条件の成立時においてエンジン温度検出手段により検出されたエンジンの温度が予め設定された所定温度未満の場合、走行用モータを用いることなくスタータモータによりエンジンをクランキングして始動するものである。
以上説明したように請求項1の発明のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、エンジン始動条件の成立時に走行用モータによりエンジンをクランキングし始め、これにより所定クランク角の変位が検出されると、スタータモータを起動してクランキングを継続することによりエンジンの始動を完了するようにした。
所定クランク角の変位が検出された時点では、エンジンのリングギヤが回転し始めており、且つ、クランキング開始直後の大きな駆動トルクを要する期間を過ぎている。このため、スタータモータのピニオンギヤをリングギヤに無理なく噛合させることができ、噛合時に発生するギヤ摩耗を大幅に軽減してギヤの耐久信頼性を向上することができる。また、スタータモータが大きな駆動トルクを要することなくエンジンのクランキングを継続でき、スタータモータの負担を軽減して耐久信頼性を向上することができる。
請求項2の発明のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、請求項1に加えて、エンジンと走行用モータとの間に走行用クラッチを介装してハイブリッド車両を構成し、エンジン始動条件の成立時に、走行用クラッチを接続して走行用モータの駆動トルクをエンジン側に伝達し、所定クランク角の変位の検出時には、クラッチを切断してスタータモータを起動するようにした。
従って、このようなエンジンと走行用モータとの間に走行用クラッチを介装してハイブリッド車両においても、本発明のエンジン始動制御を適用することができる。そして、クラッチを切断してスタータモータを起動するため、走行用モータの質量負荷がスタータモータに作用しなくなる。このためスタータモータに要求される駆動トルクがより軽減され、その耐久信頼性を一層向上することができる。
請求項3の発明のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、請求項1または2に加えて、所定クランク角の変位の検出時に、スタータモータを起動すると共に走行用モータの駆動トルクを0に制御するようにした。従って、不要な走行用モータの消費電力を節減することができる。
請求項4の発明のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、請求項1乃至3に加えて、エンジン始動条件の成立時においてバッテリの充電量が所定充電量未満の場合にスタータモータによりエンジンをクランキングするようにした。従って、このときバッテリの充電量は低いが、走行用モータを使用しないことからバッテリの消耗を抑制して充電量を確保することができる。
請求項5の発明のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置によれば、請求項1乃至4に加えて、エンジン始動条件の成立時においてエンジン温度が所定温度未満の場合にスタータモータによりエンジンをクランキングするようにした。従って、エンジン温度が低いとオイル粘度の増加によりクランキング時のエンジンフリクションが増大するが、走行用モータを使用しないことからバッテリの消耗を抑制して充電量を確保することができる。
実施形態のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド電気自動車を示す全体構成図である。 エンジン始動時のクランキングに要する駆動トルクを測定した試験結果を示す図である。 エンジンECUが実行するエンジン始動制御ルーチンを示すフローチャートである。 モータ使用条件を決定するための制御マップを示す図である。
以下、本発明を具体化したハイブリッド車両のエンジン始動制御装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のエンジン始動制御装置が適用されたハイブリッド電気自動車を示す全体構成図である。エンジン始動制御装置の説明に先立って、まず同図に基づき車両全体の構成について述べる。
ハイブリッド電気自動車1はいわゆるパラレル型ハイブリッド車両であり、本実施形態ではトラックとして構成されている。なお、以下の説明では、ハイブリッド電気自動車1を車両と称する場合もある。
ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2の出力軸には走行用クラッチ4の入力軸が連結されており、走行用クラッチ4の出力軸には例えば永久磁石式同期電動機のように発電も可能な走行用モータ6の回転軸を介して自動変速機8の入力軸が連結されている。自動変速機8は一般的な手動変速機をベースとして走行用クラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を自動化したものであり、本実施形態では、前進6速後退1速の変速段を有し、発進段としては第2速が設定されている。当然ながら、エンジン2や変速機8の形式はこれに限定されるものではなく任意に変更可能であり、例えばガソリンエンジンに具体化したり、通常の手動変速機に具体化したりしてもよい。
また、変速機8の出力軸はプロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に接続されている。従って、走行用クラッチ4の切断時には走行用モータ6のみが変速機8を介して駆動輪16側と連結され、走行用クラッチ4の接続時にはエンジン2及び走行用モータ6が共に変速機8を介して駆動輪16側と連結される。
走行用モータ6は、走行用バッテリ18に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることによりモータとして作動し、その駆動トルクが変速機8により適宜変速された後に駆動輪16に伝達されることにより車両1を走行させる。また、アクセルオフにより車両1が減速する惰行運転時には、走行用モータ6が発電機として作動して交流電力を発電すると共に、回生トルクを発生させて駆動輪16に制動力を作用させながら車両1を減速させる。そして、発電された交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後にバッテリ18に充電され、これにより車両1の減速エネルギが電気エネルギとして回収されて、その後に走行用モータ6による走行に有効利用される。
一方、エンジン2の駆動力は、走行用クラッチ4が接続されているときに走行用モータ6の回転軸を経由して変速機8に伝達され、適宜変速された後に駆動輪16に伝達される。従って、エンジン2の駆動力が駆動輪16に伝達されているとき、走行用モータ6がモータとして作動しない場合には、エンジン2の駆動力のみが変速機8を介して駆動輪16に伝達され、走行用モータ6がモータとして作動する場合には、エンジン2及び走行用モータ6の駆動力が共に変速機8を介して駆動輪16に伝達されることになる。
また、バッテリ18の充電量(SOC:State Of Charge)が低下してバッテリ18の充電が必要になると、車両1の走行中であっても走行用モータ6が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて走行用モータ6を作動することにより発電が行われ、発電された交流電力をインバータ20によって直流電力に変換した後にバッテリ18に充電するようにしている。
車両ECU22は、車両1やエンジン2の運転状態、及びエンジンECU24、インバータECU26並びにバッテリECU28からの情報などに応じて、図示しないアクチュエータを駆動制御して走行用クラッチ4の断接制御及び変速機8の変速制御を行うと共に、これらの制御状態や車両1の走行状態に合わせてエンジン2や走行用モータ6を適切に運転するための統合制御を行う。
そして車両ECU22には、このような制御のために、アクセルペダル30の操作量θaccを検出するアクセルセンサ32、車両1の速度Vを検出する車速センサ34、エンジン2の出力軸の回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ35(クランク角検出手段)、走行用モータ6の回転速度Ng(変速機8の入力回転速度)を検出する電動機回転速度センサ36、ブレーキペダル39の踏込操作を検出するブレーキセンサ40、及びエンジン冷却水温Twを検出する水温センサ42(エンジン温度検出手段)などのセンサ類が接続されている。
これらの検出情報に基づき車両ECU22は、車両1の走行に必要な要求トルクを演算し、この要求トルクをエンジン2側と走行用モータ6側とに配分する。また、これと並行して要求トルク、車両1の走行状態、エンジン2及び走行用モータ6の運転状態、或いはバッテリ18のSOCなどに基づき走行モード(エンジン走行、モータ走行、エンジン・モータ走行)を選択し、選択した走行モードを実行すべくエンジンECU24及びインバータECU26に指令を出力すると共に、適宜変速機8の変速制御を実行する。
エンジンECU24は、車両ECU22によって設定された走行モード及びエンジントルクを達成するように、噴射量制御や噴射時期制御を実行してエンジン2を運転させる。
また、インバータECU26は、車両ECU22によって設定された走行モード及び走行用モータ6のトルクを達成するように、インバータ20を駆動制御して走行用モータ6を力行制御によりモータ作動させたり、回生制御によりジェネレータ作動させたりする。
また、バッテリECU28は、バッテリ18の温度、バッテリ18の電圧、インバータ20とバッテリ18との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ18のSOCを求め、そのSOCを検出結果と共に車両ECU22に出力する(バッテリ充電量検出手段)。
一方、車両ECU22は、エンジン走行中或いはエンジン・モータ走行中において、信号待ちなどで所定の自動停止条件が成立したときにエンジン2を自動停止させ、その後に所定の自動始動条件が成立したときにエンジン2を自動始動するアイドルストップスタート制御を実行する。
エンジン2の自動停止条件及び自動始動条件は種々の文献に開示されているため、概略のみを説明する。例えばエンジン停止条件としては、アクセル操作の中止(θacc=0)、車両停止(V=0km/h)、シフトレバーがNレンジ、及びブレーキ操作中(ブレーキセンサ40がON)であることの各条件が設定されている。これらの全ての条件が満たされたときに車両ECU22は自動停止条件が成立したと見なし、エンジンECU24にエンジン停止の指令を出力し、その指令に基づきエンジンECU24がエンジン2の燃料供給を中止して自動停止させる。
また、自動始動条件としてはブレーキ操作の中止が設定されている。この条件が満たされたときに車両ECU22は自動始動条件が成立したと見なし、エンジン2を始動するための始動制御を実行する。エンジン2を始動するためにエンジン2にはスタータモータ44が備えられ、スタータモータ44はエンジンECU24により駆動制御されてエンジン2をクランキング可能となっている。なお、以上の自動停止条件及び自動始動条件は一例であり、これに限るものではなく任意に変更可能である。
エンジン2の停止及び始動は運転者の手動操作(オフ操作及びスタート操作)によっても可能であり、図示はしないが、この手動操作のためのスイッチが運転席に備えられている。本発明における「エンジン始動条件の成立」とは、これらのアイドルストップ制御による自動停止条件、及び運転者によりスタート操作の何れかが成立した場合を指す。
以下に詳述するが、本実施形態のエンジン始動制御ではスタータモータ44に加えて走行用モータ6も併用している。特許文献1の技術でもエンジン始動に走行用モータを利用しているものの、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、スタータモータの負担軽減にほとんど貢献せず、また、ピニオンギヤとリングギヤとの摩耗抑制にも効果がないという問題があった。
本発明者は、エンジン始動時のクランキングに要する駆動トルクを測定する試験を実施した。図2に試験結果を示すが、駆動トルクはクランキングの開始直後のごく短時間に急増し、その直後に急減して以降は低い値を維持することが判った。このような特性は、停止中のクランク軸を回転させ始めるにはエンジン2の各部のフリクションに打ち勝つ大きな駆動トルクが必要であり、一旦各部が動き始めれば、その後の回転上昇にはそれほどの駆動トルクを要しないためと推測される。従って、クランキングの開始直後に限って走行用モータ6の駆動トルクを利用するだけで、スタータモータ44の負担を大幅に軽減可能となる。
また、ピニオンギヤとリングギヤとの摩耗は、必ずしも位相が一致していないリングギヤとピニオンギヤとを互いの歯を摺接させながら半ば強引に噛合させることが主な要因である。従って、僅かでもリングギヤを回転させた状態でスタータモータ44のピニオンギヤを噛合させれば、自ずと双方のギヤの位相が一致することからギヤ噛合時の摩耗を大幅に軽減可能となる。
以上の観点の下に、本実施形態のエンジン始動制御では、エンジン始動時のクランキング開始直後には走行用モータ6を用い、その後にスタータモータ44に切り換える手順を採っている。以下、このようなエンジン始動制御について説明する。
図3は車両ECU22により実行されるエンジン始動制御ルーチンを示すフローチャートであり、車両ECU22は当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行している。
説明の便宜上、エンジン2はアイドルストップスタート制御のエンジン2の自動停止条件、或いは駐車などに際した運転者のオフ操作により停止状態に保持されており、走行用クラッチ4は切断され、変速機8はニュートラルに切り換えられているものとする。
まず、ステップS2でエンジン始動条件が成立したか否かを判定する。アイドルストップスタート制御の自動始動条件の成立、及び運転者のスタート操作の何れにも該当しないときには、No(否定)の判定を下して一旦ルーチンを終了する。
そして、ステップS2の判定がYes(肯定)になると、ステップS3に移行して燃料噴射の開始指令をエンジンECU24に出力し、その後にステップ4でモータ使用条件を判定する。モータ使用条件とは、エンジン始動時のクランキングのためにスタータモータ44と走行用モータ6とを如何に使用するかを決定するための処理であり、図4に示す制御マップに従って行われる。制御マップ中に設定された3種の領域に応じて、スタータモータ44のみを使用する第1始動モード、スタータモータ44と走行用モータ6とを併用する第2始動モード、及び走行用モータ6のみを使用する第3始動モードが選択される。
図の縦軸は走行用バッテリのSOCであり、車両ECU22からの指令に基づきバッテリECU26の制御により常に30〜70%の制御範囲内に収まるように管理されている。また、図の横軸はエンジン2の冷却水温Twであり、冷却水温Twの上限はエンジン2側のサーモスタットによる水温管理により制限され(図では100℃)、下限は外気温などの環境に依存する。例えばエンジン2が冷態始動されると、冷却水温Twは外気温付近からエンジン2の暖機に伴って次第に上昇して上限に到達し、その後は上限付近の温度に維持される。
ここで、バッテリ18のSOCが低い状況でエンジン始動に走行用モータ6を用いると、バッテリ18の消耗を促進させることになる。また、冷却水温Twが低くなるほど油温低下によりオイル粘度が増加してクランキング時のエンジンフリクションが増大するため、冷却水温Twが低い状況でエンジン始動に走行用モータ6を用いると、やはりバッテリ18の消耗を促進させることになる。よって、その後に車両走行のために走行用モータ6を駆動する際に、早期にバッテリ18のSOCが不足してモータ走行やエンジン・モータ走行を継続できない可能性が生じる。
そこで、本来の車両走行を目的とした走行用モータ6の駆動に支障をきたさない範囲でエンジン始動に走行用モータ6を利用する観点から、図4の制御マップの特性が設定されている。第3始動モードは最もバッテリ18の負担が大であることから、バッテリSOCの制御範囲内でも特にSOCが高い領域(60〜70%)で、且つエンジン冷却水温Twも高い領域(40〜100℃)に設定されている。
また、第2始動モードはバッテリ18の負担がやや少ないことから、SOCの制御範囲内のSOCが中程度の領域(40〜70%)で、且つエンジン冷却水温Twの中程度の領域(20〜100℃)に設定されている。第1始動モードはバッテリ18への負担が全くないことから、第1及び第2始動モードを除く低SOC側及び低水温側の全ての領域に設定されている。
なお、本実施形態では、オイル粘度(エンジンフリクション)と相関する指標としてエンジン冷却水温Twを用いているが、これに限ることはなく、エンジン温度に関する指標であれば代替することができる。例えばエンジン2のオイル粘度は、外気温やエンジン油温に応じて変動することから、外気温或いはエンジン油温を指標として始動モードを選択するようにしてもよい。また、バッテリ18のSOCと冷却水温Twとの何れか一方のみを指標としてモータ使用条件を判定するようにしてもよい。
以上のように設定された制御マップに従って、車両ECU22はステップS4でバッテリECU28により検出されたバッテリ18のSOC、及び水温センサ42により検出されたエンジン冷却水温Twに基づきモータ使用条件を判定する。そして、モータ使用条件として第1始動モードを選択するとステップS6に移行し、スタータモータ44の起動指令をエンジンECU24に出力する。
エンジンECU24によりスタータモータ44が起動されて、クランキングによりエンジン2が回転し始めると、圧縮上死点近傍の所定クランク角で燃料噴射が開始される。続くステップS8ではエンジン回転速度Neが予め設定された完爆回転速度Ne0に達したか否かを判定し、判定がYesになるとステップS10でスタータモータ44の停止指令をエンジンECU24に出力した後にルーチンを終了する。
従って、以上の処理により第1始動モードでは、走行用モータ6を使用することなくスタータモータ44によりエンジン2がクランキングされて始動する。第1始動モードの領域はバッテリ18のSOCが低く且つエンジン2の冷却水温Twが低いため、走行用モータ6を駆動するとバッテリ18の著しい消耗につながるが、このような事態をスタータモータ44の使用により未然に防止することができる。
また車両ECU22は、ステップS4で第2始動モードを選択すると、ステップS12でアクチュエータを駆動して走行用クラッチ4を接続し、ステップS14で走行用モータ6の起動指令をインバータECUに出力する(エンジン始動制御手段)。インバータECU26により走行用モータ6が起動されて、その駆動力が走行用クラッチ4を介してエンジン2のクランク軸に伝達される。なお、このときには変速機8がニュートラルに切り換えられているため、走行用モータ6の駆動力が駆動輪16側に伝達されることはない。
続くステップS16では回転速度センサ35からの検出情報に基づき、エンジン2のクランク角が予め設定された所定クランク角N°CAだけ変化したか否かを判定する(エンジン始動制御手段)。所定クランク角N°CAは、リングギヤの回転開始によりスタータモータ44のピニオンギヤを無理なく噛合可能になったこと、及び図2に示すクランキング開始直後の駆動トルクの急増期間を過ぎたことを見極めるための閾値であり、ごく僅かなクランク角、例えば30°CAが設定されている。
車両ECU22はステップS16の判定がYesになると、ステップS18に移行して走行用クラッチ4を切断し、続くステップS20で走行用モータ6の停止指令(駆動トルク=0)をインバータECU26に出力する(エンジン始動制御手段)。走行用クラッチ4の切断により走行用モータ6の駆動力はエンジン2側に伝達されなくなり、インバータECU26により走行用モータ6は停止される。
その後、ステップS22ではスタータモータ44の起動指令をエンジンECU24に出力し、それに応じてエンジンECU24によりスタータモータ44が起動される(エンジン始動制御手段)。続くステップS24でエンジン回転速度Neが完爆回転速度Ne0に達したとしてYesの判定を下すと、ステップS26でスタータモータ44の停止指令をエンジンECU24に出力してルーチンを終了する。
従って、以上の処理により第2始動モードでは、まず走行用モータ6によりエンジン2のクランキングが開始される。クランキングの開始直後は大きな駆動トルクを要するが、車両を走行可能な大出力の走行用モータ6は何ら問題なく要求駆動トルクを出力してクランキングを開始できる。また、第2始動モードの領域はバッテリSOC及びエンジン冷却水温Twがある程度上昇しているため、走行用モータ6を駆動しても支障が生じるほどバッテリ18は消耗しない。そして、クランク角が所定クランク角N°CAだけ変化すると、エンジン2のクランキングは走行用モータ6からスタータモータ44に引き継がれて始動完了に至る。
クランク角が所定クランク角N°CAだけ変化した時点ではリングギヤが回転し始めており、且つ、図2に示すクランキング開始直後の駆動トルクの急増期間を過ぎている。このため、スタータモータ44の起動により軸方向にスライドしたピニオンギヤは自ずとリングギヤに対して位相を一致させて無理なく噛合する。よって、噛合時に発生するピニオンギヤとリングギヤとの摩耗を大幅に軽減でき、ひいてはこれらのギヤの耐久信頼性を向上することができる。
また、クラキングのための駆動トルクの急増期間を過ぎた時点でスタータモータ44の駆動に切り換えられるため、スタータモータ44は大きな駆動トルクを要することなくエンジン2のクランキングを継続でき、ひいてはスタータモータ44の負担を軽減して耐久信頼性を向上することができる。
加えて、スタータモータ44によるエンジン2のクランキングは走行用クラッチ4を切断した状態で開始されるため、走行用モータ6の質量負荷がスタータモータ44に作用しなくなる。このためスタータモータ44に要求される駆動トルクがより軽減され、その耐久信頼性を一層向上できると共に、スタータモータ44の小型化を達成することができる。
さらに、スタータモータ44の起動と共に走行用モータ6を停止させているため、その後の不要な走行用モータ6の消費電力を節減でき、ひいては走行用バッテリ18のSOCを確保することができる。
なお、ステップS20では走行用モータ6を停止させているが、ステップS18で走行用クラッチ4を切断することから、この停止処理は必ずしも実行しなくてもよい。また、本実施形態では、ステップS18の走行用クラッチ4の切断、ステップS20の走行用モータ6の停止及びステップS22のスタータモータ44の起動をほぼ同時に実行するが、これに限ることはない。例えば、スタータモータ44の起動後に走行用モータ6を停止させてもよい。
また車両ECU22は、ステップS4で第3始動モードを選択すると、ステップS28で走行用クラッチ4を接続し、続くステップS30で走行用モータ6の起動指令をインバータECUに出力する。その後、ステップS32でエンジン回転速度Neが完爆回転速度Ne0に達したとしてYesの判定を下すと、ステップS34でスタータモータ44の停止指令をエンジンECU24に出力してルーチンを終了する。
従って、以上の処理により第3始動モードでは、走行用モータ6によりエンジン2がクランキングされて始動する。走行用モータ6のみでエンジン完爆までのクランキングを行うことから、第2始動モードよりも走行用モータ6の駆動時間は長くなる。しかし、第3始動モードの領域では元々バッテリ18が高SOCであると共に、冷却水温Twに応じたエンジン2のフリクションも他の始動モードに比較して低い。このため、走行用モータ6の作動時間が多少長引いたとしても走行用バッテリ18の消耗は最小限にとどめられる。よって、その後のモータ走行やエンジン・モータ走行に支障を生じることはない。
一方、各始動モード全体から見ると、スタータモータ44の使用は第2始動モードのクランキング開始時及び第3始動モードに限られる。よって、全ての始動モードの領域でスタータモータ44を用いる場合に比較して使用頻度が大幅に少なくなり、この点もスタータモータ44の耐久信頼性に貢献している。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ハイブリッド電気自動車1をトラックとして構成したが、これに代えてバスや乗用車に具体化してもよい。また、ハイブリッド電気自動車1の形式についても任意に変更可能であり、例えばエンジン2と走行用モータ6との間に走行用クラッチ4を設ける代わりに、エンジン2に走行用モータ6を直結して、走行用モータ6と変速機8との間に走行用クラッチ4を設けてもよい。この場合には走行用クラッチ4を切断状態のまま、走行用モータ6によりエンジン2をクランキングすればよい。
また上記実施形態では、アイドルストップスタート機能を備えたハイブリッド車両1に具体化したが、これに限ることはない。例えば、アイドルストップスタート機能を備えないハイブリッド車両に適用し、運転者がエンジン2を始動させるべく手動でスタート操作したときに図3のエンジン始動制御を実行するようにしてもよい。
また上記実施形態では、第1〜3始動モードを適宜切り換えるようにしたが、全ての始動モードを実行する必要は必ずしもない。例えば第1始動モードと第2始動モードとの組合せ、或いは第2始動モードと第3始動モードとの組合せとしてもよいし、第2始動モードのみを実行するようにしてもよい。
2 エンジン
4 走行用クラッチ
6 走行用モータ
16 駆動輪
18 走行用バッテリ
22 車両ECU(エンジン始動制御手段)
24 エンジンECU(エンジン始動制御手段)
26 インバータECU(エンジン始動制御手段)
28 バッテリECU(バッテリ充電状態検出手段)
35 エンジン回転速度センサ(クランク角検出手段)
42 水温センサ(エンジン温度検出手段)
44 スタータモータ

Claims (5)

  1. エンジン及び走行用モータの駆動トルクを任意に駆動輪側に伝達して走行可能であると共に、前記走行用モータの駆動トルクを前記エンジン側にも伝達可能に構成されたハイブリッド車両の制御装置において、
    前記エンジンをクランキングするためのスタータモータと、
    前記エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段と、
    予め設定されたエンジン始動条件の成立時に、前記走行用モータの駆動トルクを前記エンジンに伝達して該エンジンのクランキングを開始し、前記クランク角検出手段により前記エンジンの所定クランク角の変位が検出された場合に、前記スタータモータを起動してエンジンのクランキングを継続することにより始動を完了させるエンジン始動制御手段と
    を備えたことを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  2. 前記ハイブリッド車両は、前記エンジンと前記走行用モータとの間に走行用クラッチを介装し、該走行用クラッチを接続することにより前記走行用モータの駆動トルクを前記エンジン側に伝達するように構成され、
    前記エンジン始動制御手段は、前記エンジン始動条件の成立時に、前記走行用クラッチを接続状態に制御して該クラッチを介して前記走行用モータの駆動トルクを前記エンジン側に伝達し、前記所定クランク角の変位の検出時には、前記クラッチを接続状態から切断状態に制御して前記スタータモータを起動することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  3. 前記エンジン始動制御手段は、前記所定クランク角の変位の検出時に、前記スタータモータを起動すると共に前記走行用モータの駆動トルクを0に制御することを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  4. 前記走行用モータに電力を供給するバッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出手段を備え、
    前記エンジン始動制御手段は、前記エンジン始動条件の成立時において前記バッテリ充電量検出手段により検出されたバッテリの充電量が予め設定された所定充電量未満の場合、前記走行用モータを用いることなく前記スタータモータにより前記エンジンをクランキングして始動することを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
  5. 前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段を備え、
    前記エンジン始動制御手段は、前記エンジン始動条件の成立時において前記エンジン温度検出手段により検出されたエンジンの温度が予め設定された所定温度未満の場合、前記走行用モータを用いることなく前記スタータモータにより前記エンジンをクランキングして始動することを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
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