実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る電源管理装置および電源管理方法について、図1〜図4を用いて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係る電源管理装置およびその周辺の構成を示した構成図である。図1に示す構成は、すべて車両内に設けられている。図1において、1は第1の蓄電器で、2は第2の蓄電器である。第1および第2の蓄電器1,2は、それぞれに接続された電気機器によって電力の充放電が可能である。第1の蓄電器1は、高電圧系の蓄電器であり、第2の蓄電器2は低電圧系の蓄電器である。第1の蓄電器1は、後述する発電機3によって充電されて電力が蓄えられ、後述する電力変換器4を通して電力変換し、低電圧系の第2の蓄電器2と後述する車両の補機類5に電力を供給する。
車両は、エンジン(図示せず)を原動力として走行し、エンジンはエンジン制御装置14によって出力を制御される。エンジン制御装置14は、ドライバーの加速要求として操作されるアクセルペダルの開度を検出するためのアクセル開度検出手段15と、エンジンの回転数を検出するためのエンジン回転数検出手段11と、スロットル開度を検出するためのスロットル開度検出手段12とからの信号を入力することができ、また、それらの情報と各システムからの要求トルクをもとに必要なエンジン出力を計算し、インジェクタ13に対し燃料噴射を指令する。
図1において、3は発電機であり、第1の蓄電器1に接続され、エンジンからトルクを付与されて発電し、第1の蓄電器1を充電する。また、発電機3は、界磁巻線3cと、電機子巻線3bと、界磁巻線3cに流れる電流を制御する界磁電流制御回路3dと、電機子巻線3bで発生する交流電力を直流に変換するための整流回路3aを備える。界磁電流制御回路3dは、界磁巻線3cの両端に印加する電圧を半導体素子のスイッチングによるPWM波形によって変化させることで、界磁巻線3cに流れる電流を制御することができる。整流効率を高めるため、整流回路3aには一般的に用いられるダイオードと並列に、ON/OFF可能な半導体素子を備えており、発生する交流電力の位相に応じてこの半導体素子をON/OFFして整流している。また、発電機3は、内部に温度センサとしてサーミスタ3eを備え、発電機3の温度を計測することができる。
図1において、5は車両の補機類であり、ヘッドライトやエアコン、オーディオ、エンジンやパワーウィンドウなどのコントロールユニットを含む車両の電気機器を表す。4は電力変換器であり、発電機3で発電されて第1の蓄電器1に蓄えられた電力を、第1の蓄電器1よりも低い電圧に電力変換し、第2の蓄電器2や車両の補機類5に供給する。6は第1のスイッチであり、発電機3と第1の蓄電器1とを含む高電圧回路(第1の回路)と第2の蓄電器2と車両の補機類5を含む低電圧回路(第2の回路)との間に接続され、通常時は当該高電圧回路と低電圧回路の間を非導通としており、後述する電源管理部7が所定の条件を満たしたと判定して、切替指令を出力したときに、当該切替指令を受信して、当該高電圧回路と低電圧回路の間を非導通状態から導通状態に切替えるスイッチである。7は電源管理部であり、発電機3に対して、発電を指示する指令および発電禁止の指令を出力するとともに、発電時のトルクを指令する。また、電源管理部7は、第1のスイッチ6の動作を、通常時は非導通状態とするとともに、電力変換器4の故障を検出した場合、非導通状態から導通状態に切替えるように切替指令を出力する。また、電源管理部7は、内部に、第1の蓄電器1の端子間電圧を検出するための第1の蓄電器の端子間電圧検出手段7aと第2の蓄電器2の端子間電圧を検出するための第2の蓄電器の端子間電圧検出手段7bとを備え、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧を計測することができる。さらに、電源管理部7は、電力変換器4と第2の蓄電器2との間に接続された電力変換器出力電流検出手段10からの検出信号が入力され、それにより、電力変換器4の出力電流を計測することができる。電源管理部7は、電力変換器4の出力電流の値の変化に基づいて、電力変換器4の故障を検出する。なお、電源管理部7とエンジン制御装置14とは通信機能を備えており、それぞれが制御に使用している情報を共有することができる。
なお、この発明の実施の形態1に係る電源管理装置は、電源管理部7と第1のスイッチ6とから構成されている。また、この発明の実施の形態1に係る電源管理システムは、第1の蓄電器1、第2の蓄電器2、電力変換器4、発電機3、第1のスイッチ6、電源管理部7から構成されている。なお、電力変換器出力電流検出手段10も、電源管理装置の構成要素としてもよい。さらに、この発明は、当該電源管理装置または電源管理システムで実施される電源管理方法でもある。
以下、この発明の実施の形態1に係る発電機3の動作について図2を用いて説明する。
この発明の実施の形態1に係る発電機3の動作状態は、通常発電動作、通常発電を禁止する発電禁止動作(但し、後記の低効率発電動作と電機子巻線通電動作を行っていない場合)、発電禁止動作中に実行される低効率発電動作と電機子巻線通電動作、の4種類となっている。このうち、通常発電動作と発電禁止動作(但し、後記の低効率発電動作と電機子巻線通電動作を行っていない場合)は通常動作モードに発電機3が設定されているときに行われ、低効率発電動作と電機子巻線通電動作は、電圧低下動作モードに発電機3が設定されているときに行われる。一般的な発電機は、電機子巻線と鎖交する磁束を変化させることで起電力を生じさせる。巻線数が同一であるとすると、鎖交する磁束が大きければ大きいほど、磁束の変化が早ければ早いほど、起電力は大きくなる。鎖交磁束は磁性体を使ったものと、界磁巻線に通電することで磁束を発生させるものがあるが、この発明の実施の形態1に係る発電機3は、界磁巻線3cに流れる電流を制御することで、磁束の大きさを調整している。すなわち、界磁電流が小さい場合は、発電機3の出力は小さく、発電機3の端子間電圧も低くなり、一方、界磁電流が大きい場合は、発電機3の出力も大きく、発電機3の端子間電圧も高くなる。また、界磁巻線3cはプーリやベルトを介してエンジンの動力軸に接続されており、磁束の変化する速度はエンジン回転数に比例している。
図2は、界磁電流とエンジン回転数とを変化させた場合の、発電機3の端子間電圧を表したグラフである。図2のグラフにおいて、横軸はエンジン回転数、縦軸は発電機3の端子間電圧である。また、If1,If2,If3は3種類の界磁電流である。界磁電流If1,If2,If3は、互いに異なる値となっており、If3>If2>If1の関係となっている。また、図2において、VBは第1の蓄電器1の端子間電圧であり、発電機3の端子間電圧が、第1の蓄電器1の端子間電圧VB以上の領域を、「通常発電動作領域」とし、発電機3の端子間電圧が、第1の蓄電器1の端子間電圧VB未満の領域を「低効率発電動作領域」と呼ぶこととする。「低効率発電動作領域」においては、発電機3の端子間電圧が所定の条件を満たすとともにエンジン回転数が所定の条件を満たすように界磁電流を制御することにより、発電機3の発電効率が、予め設定した所定の値以下の低効率となるように調整しながら、発電が行なわれる。
図2に示されるように、界磁電流がIf3であった場合は、界磁電流がIf1やIf2であった場合に比べて、発電機3の端子間電圧を高くすることができる。通常、電流は高い電位から低い電位に流れるため、第1の蓄電器1が充電状態であるためには、発電機3の端子間電圧を第1の蓄電器1の端子間電圧VBよりも高くしなければならない。界磁電流は、第1の蓄電器1の端子間電圧VBと目標電圧とに基づいたPID制御によって求められ、第1の蓄電器1の端子間電圧VBが目標電圧となるように制御される。以降、第1の蓄電器1の端子間電圧が目標電圧となるように界磁電流を制御する動作のことを「通常動作モード」における「通常発電動作」と呼ぶこととする。通常発電動作では、第1の蓄電器1から電機子巻線3bへ向かっての通電は行わず、整流回路3aの半導体素子は全てOFFとする。電機子巻線3bで発生した電力は、整流回路3aのダイオードを通って第1の蓄電器1へ出力され、第1の蓄電器1が充電される。発電機3が通常発電動作であるときは、回転エネルギを電気エネルギへ変換する動作となっており、通常発電時に発生するトルクは出力電力に応じた大きさとなっている。また、「通常動作モード」における「発電禁止動作」は、通常発電を禁止する動作と定義する。但し、通常発電が禁止された状態であっても、電圧低下動作モード(低効率発電動作と電機子巻線通電動作)のときは「発電禁止動作」に含まれない。
一方、界磁電流がIf1の状態や、界磁電流がIf2の状態で且つエンジン回転数が所定のNALT未満である領域では、発電機3の端子間電圧が第1の蓄電器1の端子間電圧VBよりも低くなるため、第1の蓄電器1は放電状態となる。発電する目的で界磁巻線3cに流した界磁電流は結果的に第1の蓄電器1より電力を得て発電機3内部で消費することとなる。以降、このような状態を「低効率発電動作」とする。低効率発電動作は、エンジン回転数が高い領域では界磁電流が小さい場合であっても、発電機3の端子間電圧が上昇するため、通常発電動作となる。ゆえに、低効率発電動作時の界磁電流を最大とするためには、発電機3の端子間電圧による制限とエンジン回転数に基づいた制限を満たす値となるように界磁電流を制御する必要がある。低効率発電動作では、第1の蓄電器1から電機子巻線3bへ向かっての通電は行わず、整流回路3aの半導体素子は全てOFFとする。低効率発電動作中に入力された電気エネルギのほとんどは界磁巻線3cにおいて磁束の発生に用いられ、一部は熱として消費される。電機子巻線3bに電流は流れておらず、界磁巻線3cに発生する磁束と直交する磁束は存在しないことと、発電動作とならないことから、低効率発電動作時に発生するトルクはゼロかごく僅かなものとなっている。
次に、「電機子巻線通電動作」を以下のように定義する。電機子巻線通電動作は、発電機3の界磁巻線3cを非導通状態とし、発電機3の電機子巻線3bのみに通電させて、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる動作である。このとき、界磁巻線3cには通電しないため、界磁電流は流れない。以下、説明を分かりやすくするために、整流回路3aを構成する上アームの半導体素子をTr1,Tr2,Tr3とし、下アームの半導体素子をTr4,Tr5,Tr6として説明する。整流回路3aの半導体素子Tr1〜Tr6を上下短絡しないようにON状態とOFF状態を切替える。具体的には、上アームと下アームの対応する半導体素子の両方を同時にON状態としないことで、上下短絡とならないようにする。図1のように電機子巻線3bが三相であった場合、3つの電機子巻線が接続された中性点とは逆の巻線端3つのうち2つをプラス側へ、残りの1つをマイナス側へ接続するように、該当箇所の半導体素子をONする。例えば、Tr1:ON、Tr2:ON、Tr3:OFF、Tr4:OFF、Tr5:OFF、Tr6:ONとする。このように半導体の導通・非導通を切替えることで、電機子巻線3bに通電することができる。なお、上記半導体素子の通電・非通電の組み合わせは一例であり、上下短絡とならないように電機子巻線3bに通電できれば良く、上記の組み合わせに限ったものではない。
電機子巻線通電動作中は界磁電流を流さないため、発電動作とならない。また、電機子巻線3bには充電動作とは逆の方向に電流が流れるため、発電機3は外部の電力を消費する状態となる。電機子巻線通電動作中に入力された電気エネルギのほとんどは磁束の発生に用いられ、一部は熱として消費される。界磁巻線3cに電流は流れておらず、電機子巻線3bに発生する磁束と直交する磁束は存在しないことと、発電動作とならないことから、電機子巻線通電動作時に発生するトルクはゼロかごく僅かなものとなっている。
以上のように、この発明の実施の形態1においては、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる方法として、発電機3が電圧低下動作モードに設定されているときに実行される低効率発電動作と電機子巻線通電動作との2種類の動作を定義している。それぞれの動作は先に述べたが、これらはそれぞれ以下のような特徴を持つ。
電機子巻線通電動作には、以下のような特徴がある。
・第1の蓄電器1に蓄えられた電力を発電機3で大きな電流を流しながら消費するため、第1の蓄電器1の端子間電圧を短時間で大きく低下させることができる。
・電機子巻線3bでの単純な電力消費となるため、低下することのできる電圧に限度はない。
・電機子巻線3bへの通電状態を切替えるのみであるため、電圧の低下度合いや流れる電流量を調節することはできない。
・発電機3はエンジンと動力的に接続されているが、電機子巻線3bによる電力消費と捉えることができ、回転数によって動作を制限されない。
・動作中は大きな電流が流れ、発電機3内部の温度が上昇するため、所定温度以上の領域では使用することができない。
低効率発電動作には、以下のような特徴がある。
・一般に界磁巻線3cは大きな磁束を作り出すために巻数が多くなるように設計されており、電機子巻線3bに比べて大きな抵抗を持つため流れる電流が小さくなり、第1の蓄電器1の端子間電圧を短時間に大きく低下させることはできない。
・界磁巻線3cでの電力消費となるため、低下することのできる電圧に限度はない。
・発電機3の本来の機能として、界磁巻線3cに流れる電流量を制御することができるため、低効率発電動作中であっても、電圧の低下度合いや流れる電流量を調整することができる。
・エンジンと動力的に接続されており、高回転領域では発電動作となってしまうため、エンジン回転数によっては低効率発電動作とすることができない。
・動作中は発電機内部の温度が上昇するため、所定温度以上の領域では使用することができない。
・流れる界磁電流を多くするだけで通常発電動作とすることができるため、通常発電動作への移行が容易である。
このように、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる方法にはそれぞれ特徴があるため、車両やエンジンおよび電力系統の状態応じた方法を選択することが望ましい。つまり、電位差が大きく、エンジン回転数が高い領域では、電機子巻線通電動作を選択し、電位差が小さく、エンジン回転数が低い領域では、低効率発電動作を選択すると、それぞれの特徴を活かした、適切な動作とすることできる。
図3は、この発明の実施の形態1に係る電源管理装置およびその周辺の動作を示すタイムチャートである。グラフの横軸は時間軸であり、縦軸は、上段からそれぞれ、電源管理部7で生成されるアイドリングストップ許可/禁止信号、第1のスイッチ6の導通/非導通を切替える第1のスイッチ信号(切替信号)、インジェクタ13からの燃料噴射有無を表す燃料噴射信号、車両の走行速度を示す車両速度、エンジン回転数検出手段11で検出されたエンジン回転数、第1の蓄電器1の端子間電圧、第2の蓄電器2の端子間電圧、発電機3の界磁巻線3cに流れる電流(発電機界磁電流)、発電機3の電機子巻線3bに流れる電流(発電機電機子電流)、発電機3の電流(発電機電流)、発電機3の発電にかかるトルク(発電トルク)、エンジンの出力トルク(エンジン出力トルク)、電力変換器4の出力電流(電力変換器電流)、電源管理部7の発電機3への発電/発電禁止を示す動作指令(発電機発電指令)、発電機3の電圧低下動作モードのON/OFFを表す。なお、発電機3の電圧低下動作モードには、図3に示すように、上述した電機子巻線通電動作と低効率発電動作の2種類の動作が含まれる。また、発電機3の電圧低下動作モードがOFFの場合は、通常動作モードに設定されている。また、発電機3の電機子電流は、発電時に正の値を示すものとし、電機子巻線3bで電力を消費する場合に負の値を示すものとする。また、同様に、発電機3の電流は、発電時に正の値を示すものとし、発電機3で電力を消費する場合に負の値を示すものとする。図3の例では、説明の簡略化のため、緩やかな減速時に電力変換器4の故障が発生したものとし、その後アイドリングが継続されたときの動作を説明する。ただし、このタイムチャートは、この発明の動作原理を説明するために用いるもので、この発明の範疇はこの動作範囲に限定されるものではない。また、発電機の電流およびトルク特性は一例であり、図3に記載したタイムチャートの特性に限定されるものではない。
図3に示すように、時刻t=T301より以前においては、電力変換器4の出力電流(電力変換器電流)の値から分かるように、電力変換器4は正常に動作しており、故障は発生していない。また、車両速度に示されるように、車両は緩やかに減速しており、エンジン回転数も徐々に所定のアイドリング回転数に近づいている。但し、減速時に燃料噴射を停止する制御範囲からは外れており、燃料噴射信号に示されるように、インジェクタ13により燃料が噴射されている。発電機3は、電源管理部7の動作指令(発電機発電指令)に従って発電状態であり、第1の蓄電器1の端子間電圧が一定となるように制御されている。第1の蓄電器1の電力は、電力変換器4を介して第2の蓄電器2および車両の補機類5に対して供給されているが、第1の蓄電器1および第2の蓄電器2は十分に充電された状態であり、第2の蓄電器2の端子間電圧も一定値を保っている。発電機3の電流(発電機電流)は、電力変換器4に接続された車両の補機類5を駆動させることの電力分のみ流れている。エンジンの出力トルク(エンジン出力トルク)は、エンジンそのものを回転させるために必要なトルクと発電に必要なトルク分を発生している。電力変換器4は上述したように正常動作しており、車両の補機類5の駆動に必要な電流を低電圧回路に出力している。
時刻t=T301の近傍において、なんらかの原因により、電力変換器4の故障が発生する。電力変換器4の出力電流は低下し、やがてゼロとなる。高電圧回路からの電力供給がなくなるため、第2の蓄電器2から車両の補機類5に対して電力供給が行われるようになり、図3の第2の蓄電器の端子間電圧に示されるように、第2の蓄電器2の端子間電圧は徐々に低下していく。第2の蓄電器2の端子間電圧が補機類5の駆動限界電圧以下となった場合、車両の補機類5は駆動できなくなるため、車両が走行できなくなる虞があり、第2の蓄電器2および車両の補機類5に対して可及的速やかに電力供給が再開されることが望まれる。電源管理部7は、電力変換器出力電流検出手段10の出力値に基づいて、電力変換器4の電流が低下したことを検知し、電力変換器4の故障を検出する。電源管理部7は、電力変換器4の故障を検出した場合、エンジン制御装置14に対しアイドリングストップを禁止すると共に、発電機3に対して、発電禁止動作を指令する。これにより、発電機3の発電電流および発電トルクは低下し、ゼロとなる。第1の蓄電器1に蓄えられた電力は消費および蓄電されない状態となるため、第1の蓄電器1の端子間電圧は一定値を保つ。電源管理部7は故障を検出した後、所定時間(時刻T301から時刻T302の間)、この動作を保持する。これは、発電機3の電流が急に遮断されるため、行き場を失った電流によって発生した電圧変動を安定させたり、界磁巻線3cに流れる電流がゼロ付近で安定させたりするものであり、誤動作の抑制が目的である。
電源管理部7は、第1のスイッチ6を非導通状態から導通状態へ切替える判定値として、第2の蓄電器2の端子間電圧を基準とする第1の所定電圧範囲を設定し、当該第1の所定電圧範囲の上限値および下限値として、第1の所定閾値電圧T1HとT1Lを演算している。第1の所定閾値電圧T1Hは、第2の蓄電器2の端子間電圧より、予め設定した所定値D1だけ大きく、一方、第1の所定閾値電圧T1Lは、第2の蓄電器2の端子間電圧より、所定値D2だけ小さい。従って、第1の所定閾値電圧T1HとT1Lとの差は(D1+D2)であり、この第2の蓄電器2の端子間電圧を基準とする(D1+D2)の範囲が、上記第1の所定電圧範囲となる。D1とD2の値は同じであっても異なっていてもよい。電源管理部7は、第1の蓄電器1の端子間電圧の値と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が、当該所定範囲内になったときに、第1のスイッチ6を非導通状態から導通状態へ切替える。なお、第1の所定閾値電圧T1HおよびT1Lの値は、第1のスイッチ6を投入した際、第1の蓄電器1と第2の蓄電器2との電位差によって発生する電流によって故障が発生しない限界の電位差を、第2の蓄電器2の端子間電圧を基準に演算している。第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1Hよりも高い場合、電源管理部7は第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる処理を開始する。また、第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1Lよりも低い場合、電源管理部7は第1の蓄電器1の端子間電圧を上昇させる処理を開始する。第1の蓄電器1の端子間電圧が、第1の所定閾値電圧T1Lよりも高く、第1の所定閾値電圧T1Hよりも低い場合、すなわち、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が第1の所定電圧範囲内の場合は、第1のスイッチ6に故障を発生させるほどの大きな電流は流れないため、第1の蓄電器1の端子間電圧を調整することなく、第1のスイッチ6を投入することができる。
時刻t=T302においては、第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1Hよりも高いため、電源管理部7は、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる処理を開始する。具体的には、発電機3の動作を電圧低下動作モードへ変更する。次に、電圧低下動作モードを低効率発電動作と電機子巻線通電動作のどちらに切替えるか判定する。現在のエンジン回転数は、所定エンジン回転数N1以上で、低効率発電動作に不適であるため、発電機3に対し電機子巻線通電動作を指令する。その後、電機子巻線3bへの通電が開始され、第1の蓄電器1の電力が電機子巻線3bで消費されるようになり、第1の蓄電器1の端子間電圧が低下していく。この間、発電機3の界磁電流制御回路3dには界磁巻線3cへの通電をしないように指令しており、発電トルクは発生しないことから、発電に必要なエンジン出力トルクも増加しない。ここで、所定エンジン回転数N1は、現在のエンジン回転数において、発電機3を低効率領域で運転可能、且つ、発電機3における電力消費量が所定値以上となるエンジン回転数とする。
時刻t=T303において、電源管理部7は第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1Hよりも高く、エンジン回転数が所定エンジン回転数N1未満であると判定する。電源管理部7は発電機3に対して、電機子巻線通電動作から低効率発電動作へ指令変更する。低効率発電動作では、界磁電流を徐々に上昇させていき、発電機3の内部で電力を消費させる。これにより、第1の蓄電器1の端子間電圧が低下していき、第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が小さくなるとともに、発電機3での消費電流が小さくなる。
時刻t=T304において、電源管理部7は第1の蓄電器1の端子間電圧が低下し、第1の所定閾値電圧T1H以下となり、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧の電位差が第1の所定電圧範囲内となったと判定する。電源管理部7は第1のスイッチ6を非導通状態から導通状態へ切替えるように指令し、第1のスイッチ6が導通状態となる。これにより、第1の蓄電器1から第2の蓄電器2に電流が流れ、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧は等しくなる。発電機3の電流は、第1の蓄電器1と第2の蓄電器2の端子間電圧を維持するために必要な電流と車両の補機類5に供給する電流を出力する。発電機3の発電トルクは、発電機3の発電量に応じたトルクとなる。エンジン出力トルクは、発電機3の発電トルクとエンジンの回転を維持するために必要なトルクの合算値となる。発電機3の動作指令は、第1のスイッチ6が投入された後で低効率発電動作から通常発電動作に切替えられ、車両の補機類5および第2の蓄電器2に対して電力を供給する。
図4Aおよび図4Bはこの発明の実施の形態1に係る電源管理部7の動作を表したフローチャートである。
まず、ステップS401において、電力変換器4の故障が発生したか否かを判定する。具体的には、第1の蓄電器1の端子間電圧検出手段7aで検出された電圧が電力変換器4の駆動下限電圧以上であり、電力変換器4が駆動可能な状態であるにもかかわらず、電力変換器出力電流検出手段10によって計測された電力変換器4の出力電流が通常駆動時の最低電流以下のときに、故障と判定して、ステップS402に進み、一方、故障と判定されない場合はそのまま処理を終了する。
ステップS402において、発電機3に対して発電禁止動作を指令し、ステップS403に進む。
ステップS403において、アイドリングストップの禁止をエンジン制御装置14に対して指令してステップS404に進む。
ステップS404において、故障を検出した時点からの経過時間を計測し、所定時間が経過したら、ステップS405に進む。これにより、当該所定時間の間、それ以前の動作が保持される。
ステップS405において、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との差が、予め設定された第1の所定電圧範囲内であるか否かを判定する。すなわち、第1の蓄電器1の端子間電圧が、第1の所定閾値電圧T1H以下であり、かつ、第1の所定閾値電圧T1L以上であれば、ステップS421に進み、一方、第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が第1の所定電圧範囲外である場合は、ステップS406に進む。
ステップS406において、第1の蓄電器1の端子間電圧検出手段7aで検出された第1の蓄電器1の端子間電圧が、第2の蓄電器2の端子間電圧検出手段7bで検出された第2の端子間電圧以下であるか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧以下である場合には、ステップS419に進み、一方、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧よりも高い場合には、ステップS407に進む。
ステップS407において、電源管理部7は、発電機3の動作モードを、通常動作モードから電圧低下動作モードへ切替えて、ステップS408に進む。
ステップS408において、エンジン回転数が所定エンジン回転数N1以上であるか否かを判定する。所定エンジン回転数N1以上である場合はステップS409に進み、所定エンジン回転数N1未満である場合は、ステップS413に進む。
ステップS409において、電源管理部7は発電機3の動作を電機子巻線通電動作に設定して、ステップS410に進む。
ステップS410において、サーミスタ3eで計測された発電機3の温度が、予め設定された第2の所定温度よりも高いか否かを判定する。第2の所定温度は、電機子巻線3bに通電した状態で発電機3が故障しない最大の温度を実験によって求めた値を設定する。第2の所定温度以下の場合はステップS411に進み、第2の所定温度よりも高い場合はステップS412に進む。
ステップS411において、電源管理部7は電機子巻線3bへの通電を行う。電機子巻線3bに通電した後、ステップS405に戻って処理を続ける。
ステップS412において、サーミスタ3eで計測された発電機3の温度が高いため、電機子巻線3bへの通電を禁止するべく、整流回路3aの半導体素子を全てOFFし、ステップS405に戻って処理を続ける。
ステップS413において、電源管理部7は発電機3の動作を低効率発電動作に設定して、ステップS414に進む。
ステップS414において、発電機3の温度が第1の所定温度よりも高いか否かを判定する。第1の所定温度は、界磁巻線3bに通電した状態で発電機3が故障しない最大の温度を実験によって求めた値を設定する。第1の所定温度以下の場合はステップS415に進み、第1の所定温度よりも高い場合はステップS417に進む。
ステップS415において、電源管理部7は低効率発電動作となるように界磁巻線3cに流す電流を制限する界磁電流制限値を演算して、ステップS416に進む。界磁電流制限値は、エンジン回転数と発電機3の端子間電圧を引数としたルックアップテーブルによって求める。テーブルの設定例を図2に示した。界磁電流にはそれぞれ、If3>If2>If1の関係がある。この設定例では、エンジン回転数が低く、発電機3の端子間電圧が高い領域では流せる界磁電流を大きくするように制限値も大きくなり、エンジン回転数が高く、発電機3の端子間電圧が低い領域では流せる界磁電流を小さくするように制限値が小さくなる。
ステップS416において、界磁電流指令値を演算してステップS418に進む。界磁電流指令値の演算は、以下の式を用いて算出される。
界磁電流指令値=MIN(界磁電流指令値(前回値)+界磁電流増加量,界磁電流制限値)
ただし、MIN(A,B)は、AとBの最小値を返す関数を表す。また、界磁電流指令値の初期値は、0[A]とする。
ステップS417において、界磁電流指令値を0[A]に設定してステップS418に進む。
ステップS418において、ステップS416の処理で電源管理部7で演算された界磁電流指令値を、あるいは、ステップS418の処理で電源管理部7で設定した界磁電流指令値(0[A])を、界磁電流制御回路3dに対して出力する。界磁電流制御回路3dは、指令された界磁電流となるように制御して、ステップS405に戻り、処理を継続する。
ステップS419において、電源管理部7は発電機3に対し通常発電動作を指令してステップS420に進む。
ステップS420において、第1の蓄電器1の端子間電圧が、第1の所定電圧範囲内であるか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1H以下であり、かつ、第1の所定閾値電圧T1L以上である第1の所定電圧範囲内である場合はステップS421に進み、第1の所定電圧範囲外である場合は、ステップS419に進む。
ステップS421において、電源管理部7は第1のスイッチ6に対して非導通状態から導通状態へ切替えるように指令し、処理を終了する。
以上のように、この発明の実施の形態1に係る電源管理装置は、第1の蓄電器1と、第2の蓄電器2と、第1の蓄電器1の電力を変換して第2の蓄電器2や車両の補機類5に供給する電力変換器4と、第1の蓄電器1に接続され外部のトルクによって発電して第1の蓄電器1を充電する発電機3と、第1の蓄電器1を含む回路と第2の蓄電器2を含む回路の間に接続され電力変換器4の故障時は双方の回路間を非導通状態から導通状態にする第1のスイッチ6を備え、第1のスイッチ6を非導通状態から導通状態へ切替える前に、第1の蓄電器1と第2の蓄電器2の端子間電圧の差が第1の所定電圧範囲以内となるように、発電機3を発電動作モードとは別の、発電機3内部で電力を消費させる電圧低下動作モードとして動作させる構成とした。このように、この発明の実施の形態1に係る電源管理装置は、電力変換器4の故障が発生した場合には、高電圧回路と低電圧回路との間に設けられた第1のスイッチ6を導通状態に切替えるように構成されているので、電力変換器4の故障が発生した場合でも、発電機3で発電された電力を車両の補機類5に供給することができるようになるため、車両の補機類5を停止させることがなく、安定的に走行を継続することができる。また、第1のスイッチ6を設けるだけであるため、二系統化する場合に比べ安価で小型に構成することができる。さらには、高電圧回路と低電圧回路との電位差が第1の所定電圧以内となった後に第1のスイッチ6を導通状態に切替えるため、第1のスイッチ6に大電流が流れて第1のスイッチ6を焼損させてしまうようなこともなく、また、低電圧回路の電圧を上昇させることなく、車両の補機類5の耐電圧を超えて焼損に至ることを防止することができる。
また、電圧低下動作モードを、第1の蓄電器1の端子間電圧が所定閾値電圧TH1よりも高い場合で、且つ、エンジン回転数が所定エンジン回転数N1より小さい場合に、発電機3を効率の低い領域で発電させて第1の蓄電器の電圧を低下させる低効率発電動作とした。これにより、特別な機器を追加することなく、プログラムのわずかな変更で第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させることができる上、電圧を低下させる際の電流の大きさを制御することができるため、第1の蓄電器1の端子間電圧を速やかに目標電圧へ収束させることができる。
また、サーミスタ3eで計測された発電機3の温度が第1の所定温度以上の場合、低効率発電動作を停止するようにした。これにより、発電機3を効率の低い領域で発電させた場合でも、発電機3の温度上昇による故障を未然に防止することができる。
また、電圧低下動作モードを、第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1Hよりも高い場合に、発電機3の界磁巻線3cを非通電状態とし、発電機3の電機子巻線3bにのみ通電させて第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる電機子巻線通電動作とした。これにより、特別な機器を追加することなく、プログラムのわずかな変更で第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させることができる上、低効率発電動作とすることができないエンジン状態であっても、第1の蓄電器1の端子間電圧を速やかに低下させることができる。
また、発電機3の温度が第2の所定温度以上の場合、電機子巻線通電動作を停止するようにした。これにより、発電機3の電機子巻線3bに通電させて、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させるようにした場合であっても、発電機3の温度上昇による故障を未然に防止することができる。
また、電圧低下動作モードは、第1の蓄電器1の端子間電圧が所定閾値電圧TH1よりも高い場合に、発電機3を効率の低い領域で発電させて、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる低効率領域での発電である低効率発電動作と、発電機3の界磁巻線3cを非通電状態とし、発電機3の電機子巻線3bにのみ通電させて、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる電機子巻線通電動作とを切替えるようにした。これにより、エンジンの運転状態に応じて最適な電圧低下動作モードを選択できるようになるため、第1の蓄電器1の端子間電圧を速やかに低下させることができる。
また、電圧低下動作モードは、所定エンジン回転数N1によって、低効率発電動作と電機子巻線通電動作を切替えるようにした。これにより、エンジンの回転数に応じて最適な電圧低下動作モードに切替えることができるため、故障発生時において、第1の蓄電器1の端子間電圧をより確実に低下・収束させることができる。
また、電力変換器4の故障を検出した後、第1のスイッチ6を非導通状態から導通状態へ切替えるまでの間に発電機3が発生するトルクの変化が所定以下となるように制御する構成とした。これにより、故障時のトルク変動を抑制することができるため、ドライバーへの違和感を抑制することができる。
なお、上記の実施の形態1の説明においては、電圧低下動作モードで行う動作として、電機子巻線通電動作と低効率発電動作の2種類が含まれると説明したが、その場合に限らず、いずれか一方だけが含まれる構成としてもよい。その場合には、エンジンの回転数に関係なく、電源管理部7において、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が第1の所定電圧範囲外で、かつ、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧よりも高いという所定の条件が成立したと判断した場合に、電圧低下動作モードに含まれているいずれか一方の動作(すなわち、電機子巻線通電動作、あるいは、低効率発電動作)を行うようにすればよい。
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2に係る電源管理装置について図面を用いて説明する。なお、各図において、実施の形態1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
図5は、この発明の実施の形態2に係る電源管理装置およびその周辺の構成を示した構成図である。上記の図1に示した実施の形態1と異なる点は、本実施の形態2を示した図5においては、第3の蓄電器9と、第3の蓄電器9の端子電圧検出手段7cと、第2のスイッチ8とが、追加されている点である。第3の蓄電器9の端子電圧検出手段7cは、電源管理部7の内部に設置され、第3の蓄電器9の端子間電圧を計測する。また、第3の蓄電器9は、第1の蓄電器1に並列に接続されている。第3の蓄電器9は、故障時のバックアップとして用いられるもので、故障が検出されたときに、第1の蓄電器1に接続される。第2のスイッチ8は、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9との間に接続され、通常時は、それらの間を非導通状態としておき、電源管理部7において所定の条件が成立した場合、電源管理部7から切替指令(第2の切替指令)が出力され、それによって、第2のスイッチ8がON投入され、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9とが導通状態となる。
なお、上記の実施の形態1では、発電機3の動作モードとして、通常動作モードと電圧低下動作モードの2つのモードがあることを説明したが、本実施の形態2においては、これらの2つのモードに加えて、さらに、予備蓄電器充電モードがある。
「予備蓄電器充電モード」とは、第2のスイッチ8を導通状態に切り替えて、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9とを導通させ、予備蓄電器として設けられた第3の蓄電器9への充電動作(「予備蓄電器充電動作」)を行うモードである。本実施の形態2においては、電源管理部7は、実施の形態で説明した第1の所定電圧範囲よりも広い範囲に設定される第2の所定電圧範囲を判定値として用い、電力変換器4の故障を検出したときに、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との差が第2の所定電圧範囲外で、且つ、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧より高い場合に、第2のスイッチ8に対して、第2の切替指令を出力することにより、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9とを導通状態として第3の蓄電器9への充電を行う(予備蓄電器充電動作)。電源管理部7は、当該予備蓄電器充電動作を行うことにより第1の蓄電器1の端子間電圧と第3の蓄電器9の端子間電圧とが等しくなったことを検知したときに、実施の形態1で説明した電圧低下動作モードに切り替える。このように、本実施の形態2においては、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の端子間電圧との電位差が大きい場合に、第1の蓄電器1に蓄えられた電力を第3の蓄電器9へ移動させて、第1の蓄電器1の端子間電圧をある程度低下させた後に、電圧低下動作モードの電機子巻線通電動作か低効率発電動作を行う点が実施の形態1と異なる。その他の処理およびその他の構成は、実施の形態1と同じである。
なお、この発明の実施の形態2に係る電源管理装置は、電源管理部7、第1のスイッチ6、第3の蓄電器9、第2のスイッチ8から構成されている。また、この発明の実施の形態1に係る電源管理システムは、第1の蓄電器1、第2の蓄電器2、第3の蓄電器9、電力変換器4、発電機3、第1のスイッチ6、第2のスイッチ8、電源管理部7から構成されている。なお、電力変換器出力電流検出手段10も、電源管理装置の構成要素としてもよい。さらに、この発明は、当該電源管理装置または電源管理システムで実施される電源管理方法でもある。
図6は、この発明の実施の形態2に係る電源管理装置およびその周辺の動作を示すタイムチャートである。図6において、横軸は、図3と同様に、時間軸である。図6と図3との違いは、図6においては、縦軸に、第2のスイッチ8の導通/非導通を切替える第2のスイッチ信号(第2の切替指令)と、第3の蓄電器9の端子間電圧とが、追加されている点である。他は図3と同じである。
時刻t=T601より以前においては、図6の電力変換器4の電流の値から分かるように、電力変換器4は正常に動作しており、故障は発生していない。また、図6の車両速度に示されるように、車両は緩やかに減速しており、エンジン回転数も徐々に所定のアイドリング回転数に近づいている。但し、減速時に燃料噴射を停止する制御範囲から外れているため、燃料噴射信号に示されるように、インジェクタ13より燃料が噴射されている。発電機3は、発電機発電指令に従って、通常発電状態であり、第1の蓄電器1の端子間電圧が一定となるように制御されている。第1の蓄電器1の電力は、電力変換器4を介して第2の蓄電器2および車両の補機類5に対して供給されているが、第1の蓄電器1および第2の蓄電器2は十分に充電された状態であり、端子電圧はそれぞれ一定値を保っている。発電機3の電流は、電力変換器4に接続された車両の補機類5を駆動させることの電力分のみ流れている。エンジンの出力トルクは、エンジンそのものを回転させるために必要なトルクと発電に必要なトルク分を発生している。電力変換器4は正常動作しており、車両の補機類5の駆動に必要な電流を低電圧回路に出力している。
時刻t=T601の近傍において、なんらかの原因により、電力変換器4の故障が発生する。電力変換器4の出力電流は低下し、やがてゼロとなる。これにより、高電圧回路からの電力供給がなくなるため、第2の蓄電器2から車両の補機類5に対して電力供給が行われるようになり、第2の蓄電器2の端子間電圧は徐々に低下していく。第2の蓄電器2の端子間電圧が車両の補機類5の駆動限界電圧以下となった場合、車両の補機類5は駆動できなくなるため、車両が走行できなくなる虞があり、第2の蓄電器2および車両の補機類5に対して可及的速やかに電力供給が再開されることが望まれる。電源管理部7は、電力変換器4の故障を検出した場合、エンジン制御装置14に対しアイドリングストップを禁止する指令を出力すると共に、発電機3に対して発電禁止動作を指令する。これにより、発電機3の発電電流および発電トルクは低下し、ゼロとなる。第1の蓄電器1に蓄えられた電力は消費および蓄電されない状態となるため、端子間電圧は一定値を保つ。電源管理部7は故障を検出した後、所定時間(時刻T601から時刻T602の間)、動作を保持する。これは、発電機3の電流が急に遮断されるため、行き場を失った電流によって発生した電圧変動を安定させたり、界磁巻線3cに流れる電流がゼロ付近で安定させたりするものであり、誤動作の抑制が目的である。
電源管理部7は、第2のスイッチ8を非道通から導通へ切替える判定値として、第2の所定閾値電圧T2を演算している。第2の所定閾値電圧T2は、第2のスイッチ8を非道通状態から導通状態へ切替えて、第1の蓄電器1の端子間電圧が安定したときの電圧を現在の電圧から逆算して求めるもので、第2のスイッチ8を投入した後の第1の蓄電器1の端子間電圧が、第2の蓄電器2の端子間電圧よりも高くなるか否かを判定する値となっている。仮に、第1の蓄電器1の端子間電圧が安定したときの電圧が、第2の蓄電器2の端子間電圧に比べて極端に低い値となった場合、第1の蓄電器1の端子間電圧を第2の蓄電器2の端子間電電圧まで発電動作によって上昇させる必要があり、第2のスイッチ8を導通状態とすることなく電圧低下動作モードを実行して、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる場合に比べて時間がかかる可能性がある。第2の所定閾値電圧T2による判定はこの間の時間的なロスを防ぐ狙いがある。
以下、第2の所定閾値電圧T2の算出方法について説明する。最初に、第2のスイッチ8を非道通状態から導通状態へ切替えたときに想定される電圧降下Vdを演算する。Vdは、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の容量と、それらの端子間電圧によって求める。簡単のために第1の蓄電器1と第3の蓄電器9がともにキャパシタであるものとし、導線での電力損失は無視するものとして説明する。第1の蓄電器1に蓄えられている電荷量Q1および第3の蓄電器9に蓄えられている電荷量Q3は、次式により求められる。
第1の蓄電器1に蓄えられている電荷量Q1
= 第1の蓄電器1の容量C1 × 第1の蓄電器1の端子間電圧V1
第3の蓄電器9に蓄えられている電荷量Q3
= 第3の蓄電器9の容量C3 × 第3の蓄電器9の端子間電圧V3
従って、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9を並列接続したときの電圧V13は、以下の式で表すことができる。
V13 = (Q1+Q3)/(C1+C3)
= ((C1×V1)+(C3×V3))/(C1+C3)
故に、Vdは、次式となる。
Vd = 第1の蓄電器1の端子間電圧V1 − V13
以上により、第2の所定閾値電圧T2は、以下の式を用いて算出される。
T2 = 第2の蓄電器2の端子間電圧V2 + Vd
このように、T2は定義される。本実施の形態においては、第1の蓄電器1の端子間電圧がT2より高い場合、すなわち、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が0からVdまでの範囲(以下、第2の所定電圧範囲とする)外で、且つ、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧よりも高い場合に、第2のスイッチ8を非導通状態から導通状態に切り替える。なお、図6にも示されるように、第2の所定電圧範囲は、第1の所定電圧範囲より、広い範囲となっている(Vd>D1)。
時刻t=T602において、電源管理部7は、第1の蓄電器1の端子間電圧が、第2の所定閾値電圧T2以上であることを検出し、第3の蓄電器9を第1の蓄電器1と導通状態とするため、第2のスイッチ8を非導通状態から導通状態に切替える。第2のスイッチ8を導通状態としたことで、第1の蓄電器1に蓄えられた電力が第3の蓄電器9に流れていくため、第1の蓄電器1の端子間電圧は低下するとともに第3の蓄電器9の電圧が上昇していき、所定時間の後に(具体的には、時刻T602から時刻T603までの時間が経過した後に)、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の電圧は等しくなり、以後、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の間に電位差は発生しない。第2のスイッチ8により、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9が導通状態となってから電位差がなくなるまでの間、発電機3は発電禁止動作であるため、発電トルクは生じない。
時刻t=T603において、電源管理部7は、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の電圧が等しくなったことを検出する。このとき、第1の蓄電器1の端子間電圧は第1の所定閾値電圧T1Hよりも高いため、電源管理部7は第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる処理を開始する。すなわち、発電機3の動作を電圧低下動作モードへ変更する。次に、電圧低下動作モードを低効率発電動作と電機子巻線通電動作のどちらに切替えるか判定する。現在のエンジン回転数は、所定エンジン回転数N1以上であるため、発電機3に対し電機子巻線通電動作を指令する。その後、電機子巻線3bへの通電が開始され、第1の蓄電器1および第3の蓄電器9の電力が電機子巻線3bで消費されるようになり、それらの端子間電圧が共に低下していく。この間、発電機3の界磁電流制御回路3dには界磁巻線3cへの通電をしないように指令しており、発電トルクは発生しないことから、発電に必要なエンジンの出力トルクも増加しない。ここで、所定エンジン回転数N1は、現在のエンジン回転数において、発電機3を低効率領域で運転可能かつ、発電機3における電力消費量が所定値以上となるエンジン回転数とする。
時刻t=T604において、電源管理部7は、第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定閾値電圧T1Hよりも高く、エンジン回転数が所定エンジン回転数N1未満であると判定する。これにより、電源管理部7は、発電機3に対して、電機子巻線通電動作から低効率発電動作へ指令変更する。こうして、発電機3の界磁電流を徐々に上昇させていき、発電機3の内部で電力を消費させる。これにより、第1の蓄電器1の端子間電圧が低下していき、第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が小さくなるとともに、発電機3での消費電流が小さくなる。
時刻t=T605において、電源管理部7は第1の蓄電器1の端子間電圧が低下し、第1の所定閾値電圧T1H以下となり、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧の電位差が第1の所定電圧範囲内となったと判定する。これにより、電源管理部7は、第1のスイッチ6を非導通状態から導通状態へ切替えるように指令し、第1のスイッチ6が導通状態となる。そのため、第1の蓄電器1から第2の蓄電器2に電流が流れ、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧は等しくなる。発電機3の電流は、第1の蓄電器1と第2の蓄電器2の端子間電圧を維持するために必要な電流と車両の補機類5に供給する電流を出力する。発電機3の発電トルクは、発電機3の発電量に応じたトルクとなる。エンジンの出力トルクは、発電機3の発電トルクとエンジンの回転を維持するために必要なトルクの合算値となる。発電機3の動作指令は、第1のスイッチ6が投入された後で低効率発電動作から通常発電動作に切替えられ、車両の補機類5および第2の蓄電器2に対して電力を供給する。
図7Aおよび図7Bは、この発明の実施の形態2に係る電源管理部7の動作を表したフローチャートである。
ステップS701において、電力変換器4の故障が発生したか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が電力変換器4の駆動下限電圧以上であり、電力変換器4が駆動可能な状態であるにもかかわらず、電力変換器出力電流検出手段10によって計測された電力変換器4の出力電流が通常駆動時の最低電流以下のときに、故障と判定して、ステップS702に進み、一方、故障と判定されない場合は処理を終了する。
ステップS702において、発電機3に対して発電禁止動作を指令し、ステップS703に進む。
ステップS703において、アイドリングストップの禁止をエンジン制御装置14に対して指令してステップS704に進む。
ステップS704において、故障を検出した後の所定時間動作を保持しステップS705に進む。
ステップS705において、第1の蓄電器1の端子間電圧が、第2の蓄電器2の端子間電圧より低いか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が、第2の蓄電器2の端子間電圧以下である場合には、ステップS721に進み、一方、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧よりも高い場合には、ステップS706に進む。
ステップS706において、第1の蓄電器1の端子間電圧が、第2の所定閾値電圧T2以上であるか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の所定閾値電圧T2以上である場合には、ステップS707に進み、一方、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の所定閾値電圧T2未満である場合には、ステップS709に進む。
ステップS707において、電源管理部7は、第2のスイッチ8を非導通状態から導通状態へ切替えてステップS708に進む。
ステップS708において、第1の蓄電器1の端子間電圧検出手段7aで検出された電圧と第3の蓄電器9の端子間電圧検出手段7cで検出された電圧とが等しいか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧と第3の蓄電器9の端子間電圧が等しい場合、ステップS709に進み、一方、第1の蓄電器1の端子間電圧と第3の蓄電器9の端子間電圧が等しくない場合は、ステップS708に留まり、等しくなるまで判定を繰り返す。
ステップS709において、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が、第1の所定電圧範囲内であるか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定電圧範囲内、すなわち、第1の所定閾値電圧T1H以下であり、かつ、第1の所定閾値電圧T1L以上である場合は、ステップS720に進み、一方、第1の所定電圧範囲外である場合は、ステップS710に進む。
ステップS710において、電源管理部7は、発電機3の動作モードを電圧低下動作モードへ切替えて、ステップS711に進む。
ステップS711において、エンジン回転数が所定エンジン回転数N1以上であるか否かを判定する。所定エンジン回転数N1以上である場合はステップS712に進み、一方、所定エンジン回転数N1未満である場合は、ステップS715に進む。
ステップS712において、サーミスタ3eで計測された発電機3の温度が、第2の所定温度よりも高いか否かを判定する。第2の所定温度は、電機子巻線3bに通電した状態で発電機3が故障しない最大の温度を実験によって求めた値を設定する。判定の結果、第2の所定温度以下の場合は、ステップS713に進み、一方、第2の所定温度よりも高い場合は、ステップS714に進む。
ステップS713において、電源管理部7は、電機子巻線3bへの通電を行う。電機子巻線3bに通電した後、ステップS709に戻って処理を続ける。
ステップS714において、サーミスタ3eで計測された発電機3の温度が高いため、電機子巻線3bへの通電を禁止するべく、半導体素子を全てOFFし、ステップS709に戻って処理を続ける。
ステップS715において、発電機3の温度が第1の所定温度よりも高いか否かを判定する。第1の所定温度は、界磁巻線3bに通電した状態で発電機3が故障しない最大の温度を実験によって求めた値を設定する。第1の所定温度以下の場合は、ステップS716に進み、一方、第1の所定温度よりも高い場合はステップS718に進む。
ステップS716において、電源管理部7は、低効率発電動作となるように界磁巻線3cに流す電流を制限する界磁電流制限値を演算して、ステップS717に進む。界磁電流制限値は、エンジン回転数と発電機3の端子間電圧を引数としたルックアップテーブルによって求める。テーブルの設定例を図2に示した。界磁電流には、それぞれ、If3>If2>If1の関係がある。この設定例では、エンジン回転数が低く、発電機3の端子間電圧が高い領域では流せる界磁電流を大きくするように制限値も大きくなり、エンジン回転数が高く、発電機3の端子間電圧が低い領域では流せる界磁電流を小さくするように制限値が小さくなる。
ステップS717において、界磁電流指令値を演算してステップS719に進む。界磁電流指令値の演算は、以下の式を用いて算出される。
界磁電流指令値
= MIN(界磁電流指令値(前回値)+界磁電流増加量,界磁電流制限値)
ただし、MIN(A,B)は、AとBの最小値を返す関数を表す。また、界磁電流指令値の初期値は、0[A]とする。
ステップS718において、界磁電流指令値を0[A]に設定してステップS719に進む。
ステップS719において、ステップS717で電源管理部7により演算された界磁電流指令値、あるいは、ステップS718で設定された0[A]を、界磁電流制御回路3dに対して指令する。界磁電流制御回路3dは、指令された界磁電流となるように制御して、ステップS709に戻り、処理を継続する。
ステップS720において、電源管理部7は、発電機3に対し通常発電動作を指令してステップS723に進む。
ステップS721において、電源管理部7は、発電機3に対し通常発電動作を指令してステップS722に進む。
ステップS722において、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が、第1の所定電圧範囲内であるか否かを判定する。第1の蓄電器1の端子間電圧が第1の所定電圧範囲内、すなわち、第1の所定閾値電圧T1H以下であり、かつ、第1の所定閾値電圧T1L以上である場合は、ステップS723に進み、一方、第1の所定電圧範囲外である場合は、ステップS721に戻り、処理を継続する。
ステップS723において、電源管理部7は、第1のスイッチ6に対して非導通状態から導通状態へ切替えるように指令し、処理を終了する。
この発明の実施の形態2においては、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させる方法として、実施の形態1で述べた、発電機3の電圧低下動作モード中に行われる低効率発電動作と電機子巻線通電動作の2種類の他に、さらに、所定の条件が成立した場合に第2のスイッチ8を導通させることにより第1の蓄電器1と並列に接続された第3の蓄電器9を導通状態とする「予備蓄電器充電モード」で行われる「予備蓄電器充電動作」を追加した、のべ3種類を定義している。それぞれの動作は先に述べたが、予備蓄電器充電モードは、以下のような特徴を持つ。なお、低効率発電動作、および、電機子巻線通電動作の特徴については、実施の形態1ですでに説明したため、ここでは、説明を省略し、実施の形態1を参照することとする。
予備蓄電器充電モードの予備蓄電器動作には、以下のような特徴がある。
・第1の蓄電器1と第3の蓄電器9間の電気抵抗は小さく、第2のスイッチ8を導通状態とすると、第1の蓄電器1から第3の蓄電器9に向かって電力の授受が急速に行われるため、第1の蓄電器1の端子間電圧を短時間で大きく低下させることができる。
・第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の端子間電圧が平衡状態となったタイミングで電圧の低下が止まるため、低下することのできる電圧には限度があり、その電圧は、第1の蓄電器1および第3の蓄電器9の容量とそれぞれの初期電圧によって決まる。
・制御することのできる要素は第2のスイッチ8のみであるため、電圧の低下度合いや流れる電流量を調節することはできない。
・エンジンと動力的に接続されておらず、エンジンとは独立して動作するため、回転数によって動作を制限されない。
・モード中は大きな電流が流れるが、回路内の電気抵抗は小さく、動作中の温度上昇は小さい。
このように、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させるための3種類の方法にはそれぞれ特徴があるため、車両やエンジンおよび電力系統の状態応じた方法を選択することが望ましい。つまり、電位差が大きい場合は予備蓄電器充電モードとし、第3の蓄電器9を備えていないシステムや、第3の蓄電器9を備えたシステムで予備蓄電器充電モード実施後であってもまだ電位差が大きい場合は、電機子巻線通電動作を選択し、電位差が小さく、エンジン回転数が低い領域では低効率発電動作を選択すると、それぞれの特徴を活かした、適切な動作とすることできる。
以上のように、本実施の形態2においても、上記の実施の形態1と同様に、電力変換器4の故障が発生した場合には、高電圧回路と低電圧回路との間に設けられた第1のスイッチ6を導通状態に切替えるように構成されているので、電力変換器4の故障が発生した場合でも、発電機3で発電された電力を車両の補機類5に供給することができるようになるため、車両の補機類5を停止させることがなく、安定的に走行を継続することができる。また、第1のスイッチ6を設けるだけであるため、二系統化する場合に比べ安価で小型に構成することができる。さらには、高電圧回路と低電圧回路との電位差が第1の所定電圧以内となった後に第1のスイッチ6を導通状態に切替えるため、低電圧回路の電圧を上昇させることなく、車両の補機類5の耐電圧を超えて焼損に至ることを防止することができる。
また、本実施の形態2においては、さらに、第1の蓄電器1に並列に接続された第3の蓄電器9を備えるとともに、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の導通状態を切替えることのできる第2のスイッチ8を備え、電源管理部7は、電力変換器4の故障を検出したときに、発電機3に対し、第1の蓄電器1を充電する通常の発電動作から、当該通常の発電動作を禁止する、発電禁止動作に切り替えるように指令し、第1の蓄電器1の端子間電圧が、第1の所定電圧範囲よりも広い第2の所定電圧T2以上高い場合は(すなわち、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との差が、第1の所定電圧範囲よりも広い第2の所定電圧範囲外で、且つ、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧より高い場合は)、第2のスイッチ8を導通状態として、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9とを導通状態として第3の蓄電器9への充電を行った後に、発電機3に対し、発電禁止動作から、発電機内部で電力を消費させる電圧低下動作に切り替えるように指令し、第1の蓄電器1の端子間電圧を第2の蓄電器2の端子間電圧に近づけるように制御する構成とした。これにより、第1の蓄電器1で蓄えられた電力を第3の蓄電器9の充電に用いるため、第1の蓄電器1の端子間電圧を速やかに低下させることができるため、低電圧回路に電力が供給されない時間を最小限とすることができる上、電力を蓄える場所を移動するだけであるので、第1の蓄電器1に蓄えられた電力を有効に利用することができる。また、先に述べた2つの電圧低下動作モードは、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させるために流す電流やエンジン回転数の制約を受けるため、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下させることができなかったり、第1の蓄電器1の端子間電圧の低下が緩やかであったりするが、上記のように構成することで、エンジン回転数によらず、第1の蓄電器1の端子間電圧を速やかに低下させることができる。昨今の市場調査によると、現時点で蓄電器はDC/DCコンバータよりも価格の下落が激しく、DC/DCコンバータを二系統化するよりも安価に構成することができる。加えて、第3の蓄電器9は、故障時のバックアップとしての機能に特化しているため、第1の蓄電器1に比べて小型な容量であっても効果があり、第1の蓄電器1と第3の蓄電器9の容量を適切に選定すれば、DC/DCコンバータの二系統化よりも小型化することができる。
なお、上記の実施の形態2の説明においては、電圧低下動作モードに、電機子巻線通電動作と低効率発電動作の2種類が含まれると説明したが、その場合に限らず、いずれか一方だけが含まれる構成としてもよい。その場合には、エンジンの回転数に関係なく、電源管理部7において、第1の蓄電器1の端子間電圧と第2の蓄電器2の端子間電圧との電位差が第1の所定電圧範囲外で、かつ、第1の蓄電器1の端子間電圧が第2の蓄電器2の端子間電圧よりも高いという所定の条件が成立したと判断した場合に、電圧低下動作モードに含まれているいずれか一方の動作(すなわち、電機子巻線通電動作、あるいは、低効率発電動作)を行うようにすればよい。
なお、上記の実施の形態1および実施の形態2で説明した発電機3は、発電電動機で構成するようにしてもよい。その場合には、電力変換器4が故障した際に、発電機3を構成する発電電動機の駆動機能が使用できない場合であっても、発電電動機の発電機能を用いることで、第1の蓄電器1の端子間電圧を低下することができる。
また、実施の形態1,2について上記の通り説明を実施したが、第1の蓄電器1と第2の蓄電器2の端子間電位差が第1の所定電圧以内であるときに、第1の蓄電器1と第2の蓄電器2を導通状態とするように第1のスイッチ6を投入できればよく、この発明は、上記の構成に限定されるものではない。