JP2013184218A - プレス成形品の製造方法およびプレス成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度と伸びのバランスを高レベルで達成できるプレス成形品を得る上で有用な方法、および上記特性を発揮するようなプレス成形品を提供する。
【解決手段】本発明方法は、所定の化学成分組成を有し、鋼板中に含まれるTi含有析出物のうち、円相当直径は30nm以下のものの平均円相当直径が3nm以上であると共に、鋼中の析出Ti量と全Ti量とが下記(1)式の関係を満足する熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上、950℃以下の温度に加熱した後、プレス成形を開始し、成形中および成形終了後は金型内で20℃/秒以上の平均冷却速度を確保しつつベイナイト変態開始温度Bsより100℃低い温度以下、マルテンサイト変態開始温度Ms以上の温度まで冷却した後、その温度から200℃以下までを10℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する。
析出Ti量(質量%)−3.4[N]≧0.5×[全Ti量(質量%)−3.4[N]] …(1)
((1)式中、[N]は鋼中のNの含有量(質量%)を示す)
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車の構造部品を製造する際に用いられるプレス成形品、およびこのようなプレス成形品の製造方法に関し、特に予め加熱された鋼板(ブランク)を所定の形状に成形加工する際に、形状付与と同時に熱処理を施して所定の強度を得るプレス成形法に適用して製造されるプレス成形品、およびそのようなプレス成形品を製造するための有用な方法に関するものである。
地球環境問題に端を発する自動車の燃費向上対策の一つとして、車体の軽量化が進められており、自動車に使用される鋼板をできるだけ高強度化することが必要となる。その一方で、鋼板を高強度化すると、プレス成形時の形状精度が低下することになる。
こうしたことから、鋼板を所定の温度(例えば、オーステナイト相となる温度)に加熱して強度を下げた後、鋼板に比べて低温(例えば室温)の金型で成形することによって、形状の付与と同時に、両者の温度差を利用した急冷熱処理(焼入れ)を行って、成形後の強度を確保する熱間プレス成形法が部品製造に採用されている。尚、このような熱間プレス成形法は、ホットプレス法の他、ホットフォーミング法、ホットスタンピング法、ホットスタンプ法、ダイクエンチ法等、様々な名称で呼ばれている。
図1は、上記のような熱間プレス成形を実施するための金型構成を示す概略説明図であり、図中1はパンチ、2はダイ、3はブランクホルダー、4は鋼板(ブランク)、BHFはしわ押え力、rpはパンチ肩半径、rdはダイ肩半径、CLはパンチ/ダイ間クリアランスを夫々示している。また、これらの部品のうち、パンチ1とダイ2には冷却媒体(例えば水)を通過させることができる通路1a,2aが夫々の内部に形成されており、この通路に冷却媒体を通過させることによってこれらの部材が冷却されるように構成されている。
こうした金型を用いて熱間プレス成形(例えば、熱間深絞り加工)するに際しては、鋼板(ブランク)4を、Ac3変態点以上の単相域温度に加熱して軟化させた状態で成形を開始する。即ち、高温状態にある鋼板4をダイ2とブランクホルダー3間に挟んだ状態で、パンチ1によってダイ2の穴内に鋼板4を押し込み、鋼板4の外径を縮めつつパンチ1の外形に対応した形状に成形する。また、成形と並行してパンチおよびダイを冷却することによって、鋼板4から金型(パンチ1およびダイ2)への抜熱を行なうと共に、成形下死点(パンチ先端が最深部に位置した時点:図1に示した状態)で更に保持冷却することによって素材の焼入れを実施する。こうした成形法を実施することによって、寸法精度の良い1500MPa級の成形品を得ることができ、しかも冷間で同じ強度クラスの部品を成形する場合に比較して、成形荷重が低減できることからプレス機の容量が小さくて済むことになる。
現在広く使用されている熱間プレス用鋼板としては、22MnB5鋼を素材とするものが知られている。この鋼板は、引張強度が1500MPaで伸びが6〜8%程度であり、耐衝撃部材(衝突時に極力変形させず、破断しない部材)に適用されている。しかしながら、エネルギー吸収部材のように変形を要する部品には、伸び(延性)が低いために適用が困難である。
良好な伸びを発揮する熱間プレス用鋼板として、例えば特許文献1〜4のような技術も提案されている。これらの技術では、鋼板中の炭素含有量を様々な範囲に設定することによって、夫々の鋼板の基本的な強度クラスを調整すると共に、変形能の高いフェライトを導入し、フェライトおよびマルテンサイトの平均粒径を小さくすることによって、伸びの向上を図っている。これらの技術は、伸びの向上には有効であるものの、鋼板の強度に応じた伸び向上の観点からすれば、依然として不十分である。例えば、引張強さTSが1270MPa以上のもので伸びELが最大で12.7%程度であり、更なる改善が求められている。
特開2010−6292号公報 特開2010−6293号公報 特開2010−6294号公報 特開2010−6295号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高強度と伸びのバランスを高レベルで達成できるプレス成形品を得る上で有用な方法、および上記特性を発揮するようなプレス成形品を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の熱間プレス成形品の製造方法とは、
C :0.15〜0.5%(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、
Si:0.2〜3%、
Mn:0.5〜3%、
P :0.05%以下(0%を含まない)、
S :0.05%以下(0%を含まない)、
Al:0.01〜1%、
B :0.0002〜0.01%、
Ti:3.4[N]+0.01%以上、3.4[N]+0.1%以下[但し、[N]はNの含有量(質量%)を示す]、および
N:0.001〜0.01%、
を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
鋼板中に含まれるTi含有析出物のうち、円相当直径が30nm以下のものの平均円相当直径で3nm以上であると共に、鋼中の析出Ti量と全Ti量とが下記(1)式の関係を満足する熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上、950℃以下の温度に加熱した後、プレス成形を開始し、成形中および成形終了後は金型内で20℃/秒以上の平均冷却速度を確保しつつベイナイト変態開始温度Bsより100℃低い温度以下、マルテンサイト変態開始温度Ms以上の温度まで冷却した後、その温度から200℃以下までを10℃以下の平均冷却速度で冷却することを特徴とする。尚、「円相当直径」とは、Ti含有析出物(例えばTiC)の大きさ(面積)に着目したときに、同一面積の円に換算したときの直径(「平均円相当直径」はその平均値)である。
析出Ti量(質量%)−3.4[N]≧0.5×[全Ti量(質量%)−3.4[N]] …(1)
((1)式中、[N]は鋼中のNの含有量(質量%)を示す)
本発明の製造方法で用いる熱間プレス用鋼板は、必要に応じて更に他の元素として、(a)V,NbおよびZrよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1%以下(0%を含まない)、(b)Cu,Ni,CrおよびMoよりなる群から選択される1種以上を合計で1%以下(0%を含まない)、(c)Mg,CaおよびREMよりなる群から選択される1種以上を合計で0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有用であり、含有される元素の種類に応じて、プレス成形品の特性が更に改善される。
この製造方法によって得られたプレス成形品では、金属組織が、ベイニティックフェライト:60〜97面積%、マルテンサイト:37面積%以下、残留オーステナイト:3〜20面積%、残部組織:5面積%以下であり、且つ前記残留オーステナイト中の炭素量が0.60%以上であるものとなり、成形品内で高強度と伸びのバランスを高レベルで均一な特性として達成できるものとなる。
本発明によれば、化学成分組成を厳密に規定すると共に、Ti含有析出物の大きさを制御し、またTiNを形成しないTiについてはその析出率を制御した鋼板を用いているため、これを所定の条件で熱間プレスすることで、成形品の強度−伸びバランスを高レベルにできる。
熱間プレス成形を実施するための金型構成を示す概略説明図である。
本発明者らは、鋼板を所定の温度に加熱した後、熱間プレス成形してプレス成形品を製造するに際して、プレス成形後において高強度を確保しつつ良好な延性(伸び)をも示すようなプレス成形品を実現すべく、様々な角度から検討した。
その結果、熱間プレス用鋼板の化学成分組成を厳密に規定すると共に、Ti含有析出物の大きさおよび析出Ti量の制御を図ったものとすると、該鋼板を所定条件で熱間プレス成形することで、成形後に所定量の残留オーステナイトを確保して、内在する延性(残存延性)を高くしたプレス成形品が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明で用いる熱間プレス用鋼板では、化学成分組成を厳密に規定する必要があるが、各化学成分の範囲限定理由は下記の通りである。
[C:0.15〜0.5%]
Cは、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させることによって、冷却過程で生成されるベイニティックフェライトを微細にし、且つベイニティックフェライト中の転位密度を上昇させることによって強度を向上させる上で重要な元素である。また、ベイニティックフェライトのラス間に形成される微細な残留オーステナイト中の炭素量を上昇、残留オーステナイト量を増加させることで、高強度と伸びのバランスを高レベルで確保できる。C含有量が0.15%未満では、ベイナイト変態開始温度Bsが上昇し、ベイニティックフェライトが粗大・低転位密度となり、熱間プレス成形品の強度が確保できない。またC含有量が過剰になって0.5%を超えると、強度が高くなり過ぎ、良好な延性が得られない。C含有量の好ましい下限は0.18%以上(より好ましくは0.20%以上)であり、好ましい上限は0.45%以下(より好ましくは0.40%以下)である。
[Si:0.2〜3%]
Siは、金型焼入れの冷却中にベイニティックフェライトのラス間に形成された残留オーステナイトが分解してセメンタイトが形成されるのを抑制することで、残留オーステナイトを形成させる効果を発揮する。こうした効果を発揮させるためには、Si含有量は0.2%以上とする必要がある。またSi含有量が過剰になって3%を超えると、フェライトが形成されやすくなり、加熱時にオーステナイト単相化が難しくなり、熱間プレス用鋼板においてベイニティックフェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外(残部)の組織分率が5面積%を超えることになる。Si含有量の好ましい下限は0.5%以上(より好ましくは1.0%以上)であり、好ましい上限は2.5%以下(より好ましくは2.0%以下)である。
[Mn:0.5〜3%]
Mnは、焼入れ性を高め、金型焼入れの冷却中にフェライトやパーライト等の軟質な組織の形成を抑制するのに有効な元素である。また、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させることによって、冷却過程で生成されるベイニティックフェライトを微細にし、且つベイニティックフェライト中の転位密度を上昇させることで、強度を向上させる上で重要な元素である。更に、オーステナイトを安定化させる元素であり、残留オーステナイト量の増加に寄与する元素である。これらの効果を発揮させるためには、Mnは0.5%以上含有させる必要がある。特性だけを考慮した場合は、Mn含有量は多い方が好ましいが、合金添加のコストが上昇することから、3%以下とした。Mn含有量の好ましい下限は0.7%以上(より好ましくは1.0%以上)であり、好ましい上限は2.5%以下(より好ましくは2.0%以下)である。
[P:0.05%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが延性を劣化させるので、Pは極力低減することが好ましい。しかしながら、極端な低減は製鋼コストの増大を招き、0%とすることは製造上困難であるので、0.05%以下(0%を含まない)とした。P含有量の好ましい上限は0.045%以下(より好ましくは0.040%以下)である。
[S:0.05%以下(0%を含まない)]
SもPと同様に鋼中に不可避的に含まれる元素であり、延性を劣化させるので、Sは極力低減することが好ましい。しかしながら、極端な低減は製鋼コストの増大を招き、0%とすることは製造上困難であるので、0.05%以下(0%を含まない)とした。S含有量の好ましい上限は0.045%以下(より好ましくは0.040%以下)である。
[Al:0.01〜1%]
Alは、脱酸元素として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定し、延性の向上に有用である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Al含有量は0.01%以上とする必要がある。しかしながら、Al含有量が過剰になって1%を超えると、Al23が過剰に生成し、延性を劣化させる。尚、Al含有量の好ましい下限は0.02%以上(より好ましくは0.03%以上)であり、好ましい上限は0.8%以下(より好ましくは0.6%以下)である。
[B:0.0002〜0.01%]
Bは、フェライト変態やパーライト変態を抑制する作用を有するため、(Ac1変態点〜Ac3変態点)の二相域温度に加熱後の冷却中に、フェライト、パーライトの形成を防止し、残留オーステナイトの確保に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、Bは0.0002%以上含有させる必要があるが、0.01%を超えて過剰に含有させても効果が飽和する。B含有量の好ましい下限は0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)であり、好ましい上限は0.008%以下(更に好ましくは0.005%以下)である。
[Ti:3.4[N]+0.01%以上、3.4[N]+0.1%以下:[N]はNの含有量(質量%)]
Tiは、Nを固定し、Bを固溶状態で維持させることで焼入れ性の改善効果を発現させる。こうした効果を発揮させるためには、TiとNの化学量論比[Nの含有量の3.4倍]よりも0.01%以上多く含有させることが重要である。但し、Ti含有量が過剰になって3.4[N]+0.1%よりも多くなると、形成されるTi含有析出物(例えばTiN)は微細分散し、オーステナイト領域に加熱後の冷却中にラス状に形成されるベイニティックフェライトの長手方向への成長を阻害し、アスペクト比が小さなラス組織になる。逆に、析出物を十分に大きくすれば、アスペクト比の大きなベイニティックフェライト組織になり、残留オーステナイト中の炭素量が同等でも安定な残留オーステナイトが得られ、特性(伸び)が向上することになる。Ti含有量のより好ましい下限は3.4[N]+0.02%以上(更に好ましくは3.4[N]+0.05%以上)であり、より好ましい上限は3.4[N]+0.09%以下(更に好ましくは3.4[N]+0.08%以下)である。
[N:0.001〜0.01%]
Nは、BをBNとして固定することで、焼入れ性改善効果を低下させるため、できるだけ低減することが好ましいが、実プロセスの中で低減するには限界があるため、0.001%を下限とした。また、N含有量が過剰になると、歪み時効により延性が劣化したり、BNとして析出し、固溶Bによる焼入れ性改善効果を低下させるため、上限を0.01%とした。N含有量の好ましい上限は0.008%以下(より好ましくは0.006%以下)である。
本発明で用いる熱間プレス用鋼板における基本的な化学成分は、上記の通りであり、残部は鉄、およびP,S以外の不可避不純物(例えば、O,H等)である。また本発明の熱間プレス用鋼板には、必要によって更に、(a)V,NbおよびZrよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1%以下(0%を含まない)、(b)Cu,Ni,CrおよびMoよりなる群から選択される1種以上を合計で1%以下(0%を含まない)、(c)Mg,CaおよびREM(希土類元素)よりなる群から選択される1種以上を合計で0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有用であり、含有される元素の種類に応じて、熱間プレス用鋼板の特性が更に改善される。これらの元素を含有するときの好ましい範囲およびその範囲限定理由は下記の通りである。
[V,NbおよびZrよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1%以下(0%を含まない)]
V,NbおよびZrは、微細な炭化物を形成し、ピン止め効果により組織を微細にする効果がある。こうした効果を発揮させるためには、合計で0.001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、粗大な炭化物が形成され、破壊の起点になることで逆に延性を劣化させる。こうしたことから、これらの元素は合計で0.1%以下とすることが好ましい。これらの元素の含有量のより好ましい下限は合計で0.005%以上(更に好ましくは0.008%以上)であり、より好ましい上限は合計で0.08%以下(更に好ましくは0.06%以下)である。
[Cu,Ni,CrおよびMoよりなる群から選択される1種以上:合計で1%以下(0%を含まない)]
Cu,Ni,CrおよびMoは、フェライト変態およびパーライト変態を抑制するため、加熱後の冷却中に、フェライト、パーライトの形成を防止し、残留オーステナイトの確保に有効に作用する。こうした効果を発揮させるためには、合計で0.01%以上含有させることが好ましい。特性だけを考慮すると含有量は多いほうが好ましいが、合金添加のコストが上昇することから、合計で1%以下とすることが好ましい。また、オーステナイトの強度を大幅に高める作用を有するため、熱間圧延の負荷が大きくなり、鋼板の製造が困難になるため、製造性の観点からも1%以下とすることが好ましい。これらの元素含有量のより好ましい下限は合計で0.05%以上(更に好ましくは0.06%以上)であり、より好ましい上限は合計で0.5%以下(更に好ましくは0.3%以下)である。
[Mg,CaおよびREMよりなる群から選択される1種以上を合計で0.01%以下(0%を含まない)]
これらの元素は、介在物を微細化するため、延性向上に有効に作用する。こうした効果を発揮させるためには、合計で0.0001%以上含有させることが好ましい。特性だけを考慮すると含有量は多いほうが好ましいが、効果が飽和することから、合計で0.01%以下とすることが好ましい。これらの元素含有量のより好ましい下限は合計で0.0002%以上(更に好ましくは0.0005%以上)であり、より好ましい上限は合計で0.005%以下(更に好ましくは0.003%以下)である。
本発明で用いる熱間プレス用鋼板では、(A)鋼板中に含まれるTi含有析出物のうち、円相当直径が30nmのものの平均円相当直径が3nm以上であること、(B)析出Ti量(質量%)−3.4[N]≧0.5×[全Ti量(質量%)−3.4[N]]の関係[前記(1)式の関係]を満足することも重要な要件である。
Ti含有析出物や(1)式の制御は、成形品での伸びの向上を図るためのものであって、本来、成形品において必要な制御であるが、熱間プレス成形前後でこれらの値の変化は小さく、よって成形前(熱間プレス用鋼板)の段階で既に制御しておく必要がある。成形前の鋼板中でNに対して過剰なTiが熱間プレス前の鋼板中において、微細に分散、若しくは大半が固溶状態で存在すると、熱間プレスの加熱時において微細なまま多量に存在することになる。そうすると、加熱後に、金型内での急冷中に起こるベイナイト変態において、ベイニティックフェライトラスの長手方向への成長が阻害され、幅方向への成長が促進されてアスペクト比が小さくなる。その結果、ベイニティックフェライトラスから周囲の残留オーステナイトへの炭素吐き出しが遅れ、残留オーステナイト中の炭素量が低減し、残留オーステナイトの安定性が低下するため、伸びの向上効果が十分に得られなくなる。
こうした観点から、Ti含有析出物を粗大に分散させておく必要があり、そのためには鋼板中に含まれるTi含有析出物が平均円相当直径で3nm以上とする必要がある[上記(A)の要件]。尚、ここで対象とするTi含有析出物の円相当直径を30nm以下と規定しているのは、溶製段階で粗大に形成されて、その後、組織変化や特性に影響を及ぼさないTiNを除いたTi含有析出物を制御する必要があるためである。Ti含有析出物の大きさ(平均円相当直径)は、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。尚、本発明で対象とするTi含有析出物とは、TiCおよびTiNの他、TiVC、TiNbC、TiVCN、TiNbCN等のTiを含有する析出物をも含む趣旨である。
また、熱間プレス用鋼板においては、TiのうちNを析出固定するのに使用される以外のTiの大半を析出状態で存在させる必要がある。そのためには、TiN以外の析出物として存在するTi量(即ち析出Ti量−3.4[N])は、全TiのうちTiNを形成するTiを差し引いた残りの0.5倍以上(即ち、0.5×[全Ti量(質量%)−3.4[N]]以上)とする必要がある[上記(B)の要件]。析出Ti量(質量%)−3.4[N]は、好ましくは0.6×[全Ti量(質量%)−3.4[N]]以上であり、より好ましくは0.7×[全Ti量(質量%)−3.4[N]]以上である。
上記のような鋼板(熱間プレス用鋼板)を製造するには、上記のような化学成分組成を有する鋼材を溶製した鋳片を、加熱温度:1100℃以上(好ましくは1150℃以上)、1300℃以下(好ましくは1250℃以下)とし、仕上げ圧延温度を850℃以上(好ましくは900℃以上)、1000℃以下(好ましくは950℃以下)として熱間圧延を行い、その後700〜650℃の温度範囲(中間空冷温度)で10秒以上滞在させたのち、中間空冷温度以下、600℃以上(好ましくは650℃以上)で巻取るようにすれば良い。この方法は、高温でフェライト変態させることで、フェライト変態中に形成されるTiC等のTi含有析出物を粗大にするものである。また、巻取り温度を高温化することによって、形成されたTiC等のTi含有析出物を成長させて粗大化するものである。
鋼板(熱間プレス用鋼板)を製造するための他の方法としては、上記のような化学成分組成を有する鋼材を溶製した鋳片を、加熱温度:1100℃以上(好ましくは1150℃以上)、1300℃以下(好ましくは1250℃以下)とし、仕上げ圧延温度を750℃以上(好ましくは770℃以上)、850℃以下(好ましくは830℃以下)として熱間圧延を行い、その後750〜700℃の温度範囲(中間空冷温度)で10秒以上滞在させたのち、中間空冷温度以下、200℃以上(好ましくは250℃以上)で巻取るようにすれば良い。この方法は、オーステナイト中に熱間圧延により導入された転位が残存する温度域にて圧延を終了し、その直後に徐冷することにより転位上にTiC等のTi含有析出物を粗大に形成させるものである。
熱間プレス用鋼板の製造方法は、上記した各方法に限らず、例えば熱間圧延後、微細に析出物が存在する鋼板を逆変態点以下の温度域で析出物を粗大化させる方法等も採用できる。
上記のような化学成分組成およびTi析出状態を有する熱間プレス用鋼板を、そのまま熱間プレスの製造に供しても良いし、酸洗後に圧下率:10〜80%(好ましくは20〜70%)で冷間圧延を施してから熱間プレスの製造に供してもよい。また、熱間プレス用鋼板またはその冷間圧延材を、Ti含有析出物が全量固溶しない温度範囲(例えば1000℃以下)において熱処理を施しても良い。また、本発明の熱間プレス用鋼板には、その表面(素地鋼板表面)に、Al,Zn,Mg,Siのうちの1種以上を含むメッキを施しても良い。
上記のような熱間プレス用鋼板を用い、Ac3変態点以上、950℃以下の温度に加熱した後、プレス成形を開始し、成形中および成形終了後は金型内で20℃/秒以上の平均冷却速度を確保しつつベイナイト変態開始温度Bsより100℃低い温度以下、マルテンサイト変態開始温度Ms以上の温度まで冷却した後、その温度から200℃以下までを10℃/秒以下の平均冷却速度で冷却することによって、単一特性を有するプレス成形品で、所定の強度且つ高延性のものとして最適な組織(ベイニティックフェライトを主体とする組織)に作り込むことができる。この成形法における各要件を規定した理由は、下記の通りである。
鋼板の加熱温度がAc3変態点よりも低いと、加熱時に十分なオーステナイトが得られず、最終組織(成形品の組織)で所定量の残量オーステナイトを確保できない。また、鋼板の加熱温度が950℃を超えると、加熱時にオーステナイトの粒径が大きくなり、マルテンサイト変態開始温度Msおよびマルテンサイト終了温度Mfが上昇し、焼入れ時に残留オーステナイトが確保できず、良好な成形性が達成されない。加熱温度は好ましくは、Ac3変態点+20℃以上(より好ましくはAc3変態点+30℃以上)であり、930℃以下である。
上記加熱工程で形成されたオーステナイトを、フェライト若しくはパーライト等の組織の生成を阻止しつつ、所望の組織(ベイニティックフェライトを主体とする組織)とするためには、成形中および成形終了後の平均冷却速度および冷却終了温度を適切に制御する必要がある。こうした観点から、成形中および成形終了後の平均冷却速度は20℃/秒以上とし、冷却終了温度(急冷終了温度)はベイナイト変態開始温度Bsよりも100℃低い温度以下、マルテンサイト変態開始温度Ms以上とする必要がある。成形中の平均冷却速度は、好ましくは30℃/秒以上(より好ましくは40℃/秒以上)である。急冷終了温度をベイナイト変態開始温度Bsよりも100℃低い温度以下とすることによって、フェライト若しくはパーライト等の組織の生成を阻止しつつ、加熱時に存在したオーステナイトをベイナイトに変態させ、ベイニティックフェライト量を確保しつつ、ベイニティックフェライトのラスの間に微細なオーステナイトを残留させて所定量の残留オーステナイトを確保する。
上記急冷終了温度が、ベイナイト変態開始温度Bsより100℃低い温度よりも高くなったり、平均冷却速度が20℃/秒未満では、フェライトやパーライト等の組織が形成されて、所定量の残留オーステナイトが確保できず、成形品における伸び(延性)が劣化する。また、マルテンサイト変態開始温度Msよりも低い温度まで急冷すると、マルテンサイトの生成量が増加し、成形品における伸び(延性)が劣化する。
ベイナイト変態開始温度Bsより100℃低い温度以下、マルテンサイト変態開始温度Ms以上の温度になった段階で急速冷却を停止し、その後10℃/秒以下の平均冷却速度で200℃以下までの冷却を行なう。こうした冷却工程を付加することによって、ベイニティックフェライト中の炭素が未変態オーステナイトに濃化し、残留オーステナイト量を増加させると共に、残留オーステナイト中の炭素量を高くすることができる。
上記のような2段階の冷却を行なった後は、冷却速度の制御は基本的に不要になるが、例えば1℃/秒以上、100℃/秒以下の平均冷却速度で室温まで冷却してもよい。尚、成形中および成形終了後の平均冷却速度の制御は、(a)成形金型の温度を制御する(前記図1に示した冷却媒体)、(b)金型の熱伝導率を制御する等の手段によって達成できる。
この製造方法によって得られたプレス成形品では、金属組織が、ベイニティックフェライト:60〜97面積%、マルテンサイト:37面積%以下、残留オーステナイト:3〜20面積%、残部組織:5面積%以下で、残留オーステナイト中の炭素量が0.60%以上のものとなり、成形品内で高強度と伸びのバランスを高レベルで均一な特性として達成できるものとなる。こうしたプレス成形品における各要件(基本組織および残留オーステナイト中の炭素量)の範囲設定理由は次の通りである。
プレス成形品の主要組織を、高強度且つ延性に富むベイニティックフェライトにすることで、プレス成形品の高強度と高延性を両立させることができる。こうした観点から、ベイニティックフェライトの面積分率は、60面積%以上とする必要がある。しかしながら、この分率が97面積%を超えると、残留オーステナイトの分率が不足し、延性(残存延性)が低下する。ベイニティックフェライト分率の好ましい下限は65面積%以上(より好ましくは70面積%以上)であり、好ましい上限は95面積%以下(より好ましくは90面積%以下)である。
高強度のマルテンサイトを一部含ませることによって、プレス成形品の高強度化が図れるが、その量が多くなると延性(残存延性)が低下する。こうした観点から、マルテンサイトの面積分率は、37面積%以下とする必要がある。マルテンサイト分率の好ましい下限は5面積%以上(より好ましくは10面積%以上)であり、好ましい上限は30面積%以下(より好ましくは25面積%以下)である。
残留オーステナイトは、塑性変形中にマルテンサイトに変態することで、加工硬化率を上昇させ(変態誘起塑性)、成形品の延性を向上させる効果がある。こうした効果を発揮させるためには、残留オーステナイト分率を3面積%以上とする必要がある。延性に対しては、残留オーステナイト分率が多ければ多いほど良好になる。自動車用鋼板に用いられる組成では、確保できる残留オーステナイトは限られており、20面積%程度が上限となる。残留オーステナイトの好ましい下限は5面積%以上(より好ましくは7面積%以上)である。
上記組織の他は、フェライト、パーライト等を残部組織として含み得るが、これらの組織は強度に対する寄与や、延性に対する寄与が他の組織に比べて低く、基本的に含有しないことが好ましい(0面積%でも良い)。但し、5面積%までなら許容できる。残部組織は、より好ましくは4面積%以下であり、更に好ましくは3面積%以下である。
残留オーステナイト中の炭素量は、引張試験等の変形時に残留オーステナイトがマルテンサイトに加工誘起変態するタイミングに影響し、炭素量が多いほど高歪域で加工誘起変態することで変態誘起塑性(TRIP)効果を大きくする。本発明のプロセスの場合、冷却中に、形成されたベイニティックフェライトから周囲のオーステナイトに炭素が吐き出される。その際に、鋼中に分散しているTi炭化物若しくは炭窒化物が、粗大に分散していると、ベイニティックフェライトの長手方向への成長が阻害されずに進行するため、幅が狭く長いアスペクト比の大きなベイニティックフェライトとなる。その結果、ベイニティックフェライトから幅方向に炭素が吐き出されやすくなり、残留オーステナイト中の炭素量が増加し、延性が向上する。こうした観点から、本発明のプレス成形品では、鋼中の残留オーステナイト中の炭素量は0.60%以上と規定した。尚、残留オーステナイト中の炭素量は0.70%程度まで濃化させることはできるが、1.0%程度が限界である。
本発明の方法によれば、プレス成形条件(加熱温度や冷却速度)を適切に調整することによって、成形品の強度や伸び等の特性を制御することができ、しかも高延性(残存延性)のプレス成形品が得られるので、これまでの熱間プレス成形品では適用しにくかった部位(例えば、エネルギー吸収部材)にも適用が可能となり、熱間プレス成形品の適用範囲を拡げる上で極めて有用である。
以下、本発明の効果を実施例によって更に具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定するものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
下記表1に示した化学成分組成を有する鋼材(鋼No.1〜31)を真空溶製し、実験用スラブとした後、熱間圧延を行って鋼板とし、その後に冷却して巻取りを模擬した処理を施した(板厚:3.0mm)。巻取り模擬処理方法は、巻取り温度まで冷却後、巻取り温度に加熱した炉に試料を入れ、30分保持した後炉冷した。このときの鋼板製造条件を下記表2に示す。尚、表1中のAc3変態点、Ms点およびBs点は、下記の(2)式〜(4)式を用いて求めたものである(例えば、「レスリー鉄鋼材料学」丸善,(1985)参照)。また、表2の備考欄に示した処理(1)、(2)は、下記に示す各処理(圧延、冷却、合金化)を行ったものである。
Ac3変態点(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]+700×[P]+400×[Al]+400×[Ti]+104×[V]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni] …(2)
Ms点(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al] …(3)
Bs点(℃)=830−270×[C]−90×[Mn]−37×[Ni]−70×[Cr]−83×[Mo] …(4)
但し、[C],[Si],[Mn],[P],[Al],[Ti],[V],[Cr],[Mo],[Cu]および[Ni]は、夫々C,Si,Mn,P,Al,Ti,V,Cr,Mo,CuおよびNiの含有量(質量%)を示す。また、上記(2)式〜(4)式の各項に示された元素が含まれない場合は、その項がないものとして計算する。
処理(1):熱間圧延鋼板を冷間圧延後(板厚:1.6mm)、熱処理シミュレータで連続焼鈍を模擬し、800℃に加熱した後90秒保持し、20℃/秒の平均冷却速度で500℃まで冷却し、300秒保持した。
処理(2):熱間圧延鋼板を冷間圧延後(板厚:1.6mm)、熱処理シミュレータで連続溶融亜鉛めっきラインを模擬するため860℃に加熱した後、30℃/秒の平均冷却速度で400℃まで冷却し、保持後、めっき浴への浸漬−合金化処理を模擬するために更に500℃×10秒保持後、20℃/秒の平均冷却速度で室温まで冷却した。
Figure 2013184218
Figure 2013184218
得られた鋼板につき、Tiの析出状態の分析(析出Ti量(質量%)−3.4[N]、Ti含有析出物の平均円相当直径)を下記要領で行った。その結果を、0.5×[全Ti量(質量%)−3.4[N]]の計算値[0.5×(全Ti量−3.4[N])と表示]と共に下記表3に示す。
[鋼板のTiの析出状態の分析]
抽出レプリカサンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)にてTi含有析出物の透過型電子顕微鏡像(倍率:10万倍)を撮影した。このとき、エネルギー分散型X線分光器(EDX)により析出物の組成分析をすることによって、Ti含有析出物(円相当直径が30nm以下のもの)を特定した。少なくとも100個以上のTi含有析出物の面積を画像解析により測定し、そこから円相当直径を求め、その平均値を析出物サイズ(Ti含有析出物の平均円相当直径)とした。また、析出Ti量(質量%)−3.4[N](析出物として存在するTi量)は、メッシュ径:0.1μmのメッシュを用いて抽出残渣分析を行い(抽出処理の際に、析出物が凝集して微細な析出物も測定できる)、析出Ti量(質量%)−3.4[N](表3では、析出Ti量−3.4[N]と表示)を求めた。尚、Ti含有析出物がVやNbを一部含有している場合は、これらの含有量についても測定した。
Figure 2013184218
上記各鋼板(1.6mm×150mm×200mm)について(上記処理(1)、(2)以外のものについては熱間圧延によって厚さを1.6mmに調整)、加熱炉で所定の温度に加熱した後、ハット形状の金型(前記図1)でプレス成形および冷却処理を実施し、成形品とした。プレス成形条件(プレス成形時の加熱温度、平均冷却速度、急速冷却終了温度、急速冷却終了後冷却速度)を下記表4に示す。
Figure 2013184218
得られた成形品につき、引張強度(TS)、伸び(全伸びEL)、金属組織の観察(各組織の分率)、および残留オーステナイト中の炭素量を下記の方法で測定した。
[引張強度(TS)、および伸び(全伸びEL)の測定]
JIS5号試験片を用いて引張試験を行い、引張強度(TS)、伸び(EL)を測定した。このとき、引張試験の歪速度:10mm/秒とした。本発明では、引張強度(TS)が1000MPa以上で伸び(EL)が15%以上、または引張強度(TS)が1200MPa以上で伸び(EL)が14%以上のいずれかを満足し、強度−伸びバランス(TS×EL)が16000(MPa・%)以上のときに合格と評価した。
[金属組織の観察(各組織の分率)]
(1)成形品中の、ベイニティックフェライト、マルテンサイト、フェライトの組織については、鋼板をナイタールで腐食し、SEM(倍率:1000倍または2000倍)観察により、ベイニティックフェライト、マルテンサイト、フェライトを区別し、夫々の分率(面積率)を求めた。
(2)成形品中の残留オーステナイト分率および残留オーステナイト中の炭素量は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法によって測定した(例えば、ISJJ Int.Vol.33.(1933),No.7,P.776)。
金属組織の観察結果(各組織の分率、残留オーステナイト中の炭素量)を、下記表5に示す。また、成形品の機械的特性(引張強度TS、伸びELおよびTS×EL)を下記表6に示す。
Figure 2013184218
Figure 2013184218
これらの結果から、次のように考察できる。鋼No.1、2、4、5、8〜10、15、16、18〜20、22〜31のものは、本発明で規定する要件を満足する実施例であり、強度−延性バランスが良好なプレス成形品が得られていることが分かる。
これに対し、鋼No.3、6、7、11〜14、17、21のものは、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない比較例であり、いずれかの特性が劣化している。即ち、鋼No.3のものは、Si含有量が少ない鋼板を用いたものであり、成形品中の残留オーステナイト分率が確保されず、伸びがでないものとなって、強度−伸びバランス(TS×EL)が低下している。鋼No.6のものは、鋼板製造時の700〜750℃での冷却時間が短く、(1)式の関係を満足しないものとなっており、成形品中の残留オーステナイト中の炭素量が不足し、伸びがでないものとなっている。鋼No.7のものは、鋼板製造時の仕上げ圧延温度が高く、(1)式の関係を満足しないものとなっており、残留オーステナイト中の炭素量が不足し、伸びがでないものとなっている。
鋼No.11のものは、プレス成形時の加熱温度が低く且つ急速冷却終了後の冷却速度が速くなっており、残留オーステナイト中の炭素量が不足し、伸びがでないものとなっている。鋼No.12のものは、プレス成形時の加熱温度が低く且つ急速冷却終了温度が低くなっており、マルテンサイトが過剰に生成し、また残留オーステナイト中の炭素量が不足し、低い伸びELしか得られず、強度−伸びバランス(TS×EL)が低下している。鋼No.13のものは、プレス成形時の急速冷却速度が遅くなっており、ベイニティックフェライトの面積率が確保できず、また残留オーステナイト中の炭素量が不足し、強度が低くなっている。
鋼No.14のものは、プレス成形時の急速冷却終了温度が高くなっており、残留オーステナイト中の炭素量が不足し、低い伸びELしか得られず、強度−伸びバランス(TS×EL)が劣化している。鋼No.17のものは、C含有量が過剰な鋼板を用いたものであり、成形品の強度が高くなって低い伸びELしか得られず、強度−伸びバランス(TS×EL)が劣化している。鋼No.21のものは、Ti含有量が過剰の鋼板を用いたものであり、低い伸びELしか得られず、強度−伸びバランス(TS×EL)が劣化している。
1 パンチ
2 ダイ
3 ブランクホルダー
4 鋼板(ブランク)

Claims (5)

  1. C :0.15〜0.5%(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、
    Si:0.2〜3%、
    Mn:0.5〜3%、
    P :0.05%以下(0%を含まない)、
    S :0.05%以下(0%を含まない)、
    Al:0.01〜1%、
    B :0.0002〜0.01%、
    Ti:3.4[N]+0.01%以上、3.4[N]+0.1%以下[但し、[N]はNの含有量(質量%)を示す]、および
    N:0.001〜0.01%、
    を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
    鋼板中に含まれるTi含有析出物のうち、円相当直径が30nm以下のものの平均円相当直径で3nm以上であると共に、鋼中の析出Ti量と全Ti量とが下記(1)式の関係を満足する熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上、950℃以下の温度に加熱した後、プレス成形を開始し、成形中および成形終了後は金型内で20℃/秒以上の平均冷却速度を確保しつつベイナイト変態開始温度Bsより100℃低い温度以下、マルテンサイト変態開始温度Ms以上の温度まで冷却した後、その温度から200℃以下までを10℃/秒以下の平均冷却速度で冷却することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
    析出Ti量(質量%)−3.4[N]≧0.5×[全Ti量(質量%)−3.4[N]] …(1)
    ((1)式中、[N]は鋼中のNの含有量(質量%)を示す)
  2. 前記熱間プレス用鋼板は、更に他の元素として、V,NbおよびZrよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1%以下(0%を含まない)含有するものである請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
  3. 前記熱間プレス用鋼板は、更に他の元素として、Cu,Ni,CrおよびMoよりなる群から選択される1種以上を合計で1%以下(0%を含まない)含有するものである請求項1または2に記載のプレス成形品の製造方法。
  4. 前記熱間プレス用鋼板は、更に他の元素として、Mg,CaおよびREMよりなる群から選択される1種以上を合計で0.01%以下(0%を含まない)含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のプレス成形品の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の化学成分を有する鋼板のプレス成形品であって、前記プレス鋼は、金属組織が、ベイニティックフェライト:60〜97面積%、マルテンサイト:37面積%以下、残留オーステナイト:3〜20面積%、残部組織:5面積%以下であり、且つ前記残留オーステナイト中の炭素量が0.60%以上であることを特徴とするプレス成形品。
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