JP2013180508A - インプリント用のモールドおよび微細構造の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インプリント用のモールド11を、基材12の主面13上に、凹凸構造を有する複数の領域III,II,I,II′,III′が特定方向に沿って隣接するように位置するものとし、複数の領域III,II,I,II′,III′毎の転写材料の剥離に要する応力が、特定方向の両端に位置する領域III,III′から特定領域Iに向けて増大傾向となるように設定する。
【選択図】 図2
Description
上述の荷重速度の発生を抑制するためには、剥離力を低減することが好ましく、例えば、モールドの凹凸構造面にフッ素成分等を含む離型層を形成しておく方法(特許文献1)が提案されている。また、ダミーパターンを設けることによって剥離力の急激な増大を抑制する方法(特許文献2)も提案されている。さらに、剥離力を計測し、目標の剥離力となるように制御する装置(特許文献3)が提案されている。
また、ダミーパターンを形成する方法は、本来必要とされないパターンまでが転写されてしまうために、その後の工程で、当該剥離用のパターンが悪影響を及ぼし得ることがある。
さらに、荷重速度の変化はmsec単位の非常に短い時間内でも起こりうるため、上記のような剥離力を計測し、目標の剥離力となるように制御する装置では、荷重速度の変化を検知しても、これをフィードバックして瞬時に応答することは難しく、また、瞬時の応答を可能とした場合、装置コストが大幅に増大すると考えられる。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、転写材料との剥離を安定して行えるインプリント用のモールドと、このモールドを使用した微細構造の形成方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、複数の前記領域の各領域における面積Aに対する当該領域の実測表面積Sの比S/Aが、前記特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて増大傾向にあるような構成とした。
本発明の他の態様として、各領域における前記特定方向の領域長Bに対する実測長Lの比L/Bが、前記特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて同一もしくは増大傾向にあるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記主面は正N角形(Nは5以上の整数)であり、前記特定方向は主面の対向する一方の端辺から他方の端辺に向かう方向、あるいは、主面の対向する一の角部から他方の端辺に向かう方向、あるいは、主面の対向する一の角部から他方の角部に向かう方向であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記主面は円形であり、前記特定方向は任意に設定されるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記主面は楕円形であり、前記特定方向は主面の楕円形の長軸方向であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記主面は開口部を有する環状であり、前記特定方向は主面の外縁部から前記開口部側の内縁部に向かう方向であるような構成とした。
また、本発明は、円筒状の基材の周面に凹凸構造を有するモールドであって、該凹凸構造に転写材料を充填し硬化させた後に該転写材料をモールドから剥離して、前記凹凸構造を前記転写材料に転写するためのインプリント用のモールドにおいて、円筒状の基材の周面には、該周面の円周方向と垂直な一の基線部位から円周方向に沿って、凹凸構造を有する複数の領域が隣接するように位置し、領域毎の転写材料の剥離に要する応力が、前記基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け増大傾向となるように、複数の前記領域が位置するような構成とした。
本発明の他の態様として、複数の前記領域の各領域における面積Aに対する当該領域の実測表面積Sの比S/Aが、前記基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け増大傾向にあるような構成とした。
本発明の他の態様として、各領域における円周方向の領域長Bに対する実測長Lの比L/Bが、前記基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け同一もしくは増大傾向にあるような構成とした。
[インプリント用のモールド]
本発明のインプリント用のモールドは、複数種の凹凸構造を有するモールドであり、インプリント時の転写材料とモールドとの剥離方向を特定方向として予め設定し、この特定方向における剥離応力の急峻な変化を抑えるように、凹凸構造を有する複数の領域が配置されたものである。尚、複数の領域が有する凹凸構造の形状や寸法、凹凸構造の種類は、適宜設定、選択することができ、後述するように、領域毎の転写材料の剥離に要する応力、すなわち密着力を比較したときに、領域毎の転写材料の剥離に要する応力が特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて増大傾向となるように、各領域が位置すればよい。特に、このような密着力に相違が現れる条件と、その配列方法としては、各領域における面積Aに対する当該領域の実測表面積Sの比S/Aが、特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて増大傾向にあること、あるいは、基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け増大傾向にあることが満足される条件が挙げられる。よって、これらの条件に従うのならば、特に制限はない。
図1は、本発明のインプリント用のモールドの一実施形態を説明するためのモールドの側面図であり、図2は、図1に示されるインプリント用のモールドの基材主面の平面図である。図1および図2において、インプリント用のモールド11は基材12を有し、この基材12の方形の主面13には、転写すべき凹凸構造を有する凹凸構造領域13Aと、このような凹凸構造を有していない非凹凸構造領域13Bが設定されている。尚、図1では、主面13の凹凸構造領域13Aに均一な微細凹凸が記載されているが、これは凹凸構造を便宜的に示したものである。また、非凹凸構造領域13Bが存在せず、主面13の全域が凹凸構造領域13Aであってもよい。
主面13の凹凸構造領域13Aには、方形の主面13の対向する一方の端辺13aから他方の端辺13bに向かう特定方向(図2に示される矢印D方向)に沿って、凹凸構造を有する複数の領域III,II,I,II′,III′が隣接するように位置している。そして、本発明では、領域III,II,I,II′,III′の各領域における転写材料の剥離に要する応力、すなわち密着力を求めたときに、密着力が特定方向Dの両端に位置する領域III,III′から特定領域としての領域Iに向けて増大傾向にある。尚、複数の領域が有する凹凸構造の形状や寸法、凹凸構造の種類は、適宜設定、選択することができ特に制限はない。
上記の例では、主面13の凹凸構造領域13Aには、方形の主面13の対向する一方の端辺13aから他方の端辺13bに向かう特定方向(図2に示される矢印D方向)に沿って、凹凸構造を有する複数の領域III,II,I,II′,III′が隣接するように位置している。そして、本発明では、領域III,II,I,II′,III′の各領域における面積Aに対する当該領域の実測表面積Sの比S/Aを求めたときに、比S/Aが特定方向Dの両端に位置する領域III,III′から特定領域としての領域Iに向けて増大傾向にある。尚、複数の領域が有する凹凸構造の形状や寸法、凹凸構造の種類は、適宜設定、選択することができ特に制限はない。このときに実測表面積Sを求める方法として、SEMおよびAFMなどを用いて形状観察した数値から求める方法や、スキャトロメトリ等が利用できる。
AFMは、計測対象物の表面を探針(カンチレバー)で実質的になぞることにより形状情報を得る観察方法の代表例であり、接触式の段差計などもこれに属する。この計測方法の特徴は、探針(カンチレバー)が正確に表面をなぞることが出来れば、正確な深さ情報を得ることが可能な点である。よって凹凸構造パターンの深さ情報を重視したい場合には有効な方法である。むろん、この計測方法をSEMなどの他の方法と組み合わせてもよく、これはSEMも同様である。
この例では、領域IIIから領域II、さらに特定領域である領域Iに向かって比S/Aが徐々に大きくなり、また、領域III′から領域II′、さらに特定領域である領域Iに向かって比S/Aが徐々に大きくなることである。そして、例えば、領域IIIと領域IIにおける比S/Aが同一、あるいは、領域III′と領域II′における比S/Aが同一である場合も含むものである。また、領域Iの両側に位置する領域IIと領域II′における比S/Aは、同一、異なるもの、いずれであってもよく、さらに、その外側に位置する領域IIIと領域III′における比S/Aも、同一、異なるもの、いずれであってもよい。以下の本発明において同様である。
このような比L/Bが大きいほど、当該領域において、特定方向Dにおけるモールドの凹凸構造が複雑、微細となり、モールドと転写材料との剥離に要する応力が大きくなる。
(1)
比S/A:III→II→I順に増大、III′→II′→I順に増大
比L/B:III→II→I順に増大、III′→II′→I順に増大
(2)
比S/A:III→II→I順に増大、III′→II′→I順に増大
比L/B:同一(III=II=I=II′=III′)
(3)
比S/A:III→II→I順に増大、III′→II′=I順に増大傾向
比L/B:III=II=Iで同一、III′→II′→I順に増大
(4)
比S/A:III=II→I順に増大傾向、III′→II′→I順に増大
比L/B:III→II→I順に増大、III′→II′→I順に増大
上述の実施形態では、主面13の凹凸構造領域13Aに特定方向に沿って設定する領域数が5個となっているが、上記のように、特定方向に沿って剥離力が小→大→小と変化することが可能なためには、特定領域とその両側に位置する領域の少なくとも3個が存在すればよい。しかし、領域の境界での剥離力の変化量、すなわち荷重速度の増大を抑えることを考慮すると、剥離力が小→大へ急峻に変化するよりも、剥離力が小→中へ、中→大へと変化するように、特定方向における領域の数は多い方が好ましいことになる。したがって、本発明では、複数種の凹凸構造の制約(要求される最小面積、剥離方向等)、および、凹凸構造領域13Aの形状、面積、インプリント装置の剥離制御機能等を考慮し、許容される範囲内で適宜組み合わせることにより、領域の数は多くすることができる。例えば、使用可能な凹凸構造が3種の凹凸構造R1、R2、R3であり、上記の比S/Aの大きい順に凹凸構造R1、凹凸構造R2、凹凸構造R3である場合、1つの例として、特定方向の領域を上記の例のように5個の領域III,II,I,II′,III′に設定し、領域IIIと領域III′に凹凸構造R3を配し、領域IIと領域II′に凹凸構造R2を配し、領域I(特定領域)に凹凸構造R1を配することができる。また、他の例として、特定方向の領域を9個の領域V,IV,III,II,I,II′,III′,IV′,V′に設定し、領域Vと領域V′に凹凸構造R3を配し、領域IVと領域IV′には凹凸構造R2と凹凸構造R3を配し、領域IIIと領域III′に凹凸構造R2を配し、領域IIと領域II′には凹凸構造R1と凹凸構造R3を配し、領域Iに凹凸構造R1を配することができる。この後者の例では、前者の例に比べて、領域の境界での剥離力の変化量を低く抑えることが可能である。尚、後者の例では、凹凸構造R2と凹凸構造R3が組み合わされる領域IVと領域IV′、凹凸構造R1と凹凸構造R3が組み合わされる領域IIと領域II′では、当該領域における剥離に要する応力が均一となるように2種の凹凸領域を配置することが好ましい。
(1′)
比S/A:IV→III→II→I順に増大、III′→II′→I順に増大
L/B:IV→III→II→I順に増大、III′→II′→I順に増大
図5は、本発明のインプリント用のモールドの他の実施形態を示す図2相当の平面図である。図5において、インプリント用のモールド21は基材22の方形の主面23に、転写すべき凹凸構造を有する凹凸構造領域23Aと、このような凹凸構造を有していない非凹凸構造領域23Bが設定されている。尚、非凹凸構造領域23Bが存在せず、方形の主面23の全域が凹凸構造領域23Aであってもよい。
主面23の凹凸構造領域23Aには、方形の主面23の一の角部23aから対向する他方の角部23bに向かう特定方向(図5に示される矢印D方向)に沿って、凹凸構造を有する複数の領域IV,III,II,I,II′,III′,IV′が碁盤格子状に隣接するように位置している。図5では、角部23a近傍に領域IVが位置し、次いで、特定方向Dに沿って2個の領域III、3個の領域II、4個の領域Iが配置され、さらに、3個の領域II′、2個の領域III′が配置され、角部23b近傍に領域IV′が位置している。そして、本発明では、領域IV,III,II,I,II′,III′,IV′の各領域における比S/Aが、特定方向Dの両端に位置する領域IV,IV′から特定領域としての領域Iに向けて増大傾向にあり、好ましくは、各領域における比L/Bが、特定方向Dの両端に位置する領域IV,IV′から特定領域としての領域Iに向けて同一もしくは増大傾向にある。
尚、この例における比S/A、および、比L/Bは、上述の実施形態1における比S/A、および、比L/Bと同様である。また、この比S/Aの要件を満たす範囲で、好ましくは、比S/Aと比L/Bの要件を満たす範囲で種々の領域設定が可能である。
図6は、本発明のインプリント用のモールドの他の実施形態を示す図2相当の平面図である。図6において、インプリント用のモールド31は、基材32の円形の主面33に転写すべき凹凸構造を有する凹凸構造領域33Aと、このような凹凸構造を有していない非凹凸構造領域33Bが設定されている。尚、非凹凸構造領域33Bが存在せず、円形の主面33の全域が凹凸構造領域33Aであってもよい。
尚、この例における比S/A、および、比L/Bは、上述の実施形態1における比S/A、および、比L/Bと同様である。また、上記の比S/Aの要件を満たす範囲で、好ましくは、比S/Aと比L/Bの要件を満たす範囲で種々の領域設定が可能である。
図7は、本発明のインプリント用のモールドの他の実施形態を示す図2相当の平面図である。図7において、インプリント用のモールド41は、基材42の楕円形の主面43に転写すべき凹凸構造を有する凹凸構造領域43Aと、このような凹凸構造を有していない非凹凸構造領域43Bが設定されている。尚、非凹凸構造領域43Bが存在せず、円形の主面43の全域が凹凸構造領域43Aであってもよい。
尚、この例における比S/A、および、比L/Bは、上述の実施形態1における比S/A、および、比L/Bと同様である。また、上記の比S/Aの要件を満たす範囲で、好ましくは、比S/Aと比L/Bの要件を満たす範囲で種々の領域設定が可能である。
図8は、本発明のインプリント用のモールドの他の実施形態を示す図2相当の平面図である。図8において、インプリント用のモールド51は、中央部に開口部52aを有する環状の基材52を有し、この基材52の環状の主面53に転写すべき凹凸構造を有する凹凸構造領域53Aと、このような凹凸構造を有していない非凹凸構造領域53Bが設定されている。尚、非凹凸構造領域53Bが存在せず、円形の主面53の全域が凹凸構造領域53Aであってもよい。
尚、この例における比S/A、および、比L/Bは、上述の実施形態1における比S/A、および、比L/Bと同様である。また、上記の比S/Aの要件を満たす範囲で、好ましくは、比S/Aと比L/Bの要件を満たす範囲で種々の領域設定が可能である。
このような本発明のインプリント用のモールド11,21,31,41,51の材質は適宜選択することができ、転写材料が光硬化性である場合には、これらを硬化させるための照射光が透過可能な材料を用いて形成してもよく、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラス類の他、サファイアや窒化ガリウム、更にはポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、ポリプロピレン等の樹脂、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。また、使用する転写材料が光硬化性ではない場合や、転写材料側から転写材料を硬化させるための光を照射可能である場合には、モールドは光透過性の材料でなくてもよく、上記の材料以外に、例えば、シリコンやニッケル、チタン、アルミニウム等の金属およびこれらの合金、酸化物、窒化物、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。また、モールドは、主面に離型剤層を備えていてもよい。
図9は、本発明のインプリント用のモールドの他の実施形態を示す斜視図であり、図10は図9に示されるモールドの回転軸に垂直な断面図である。図9および図10において、インプリント用のモールド61は、円筒部64と、この円筒部64の外周面に配設されたパターン部65とからなる円筒状の基材62を有し、基材62の周面63(パターン部65)に転写すべき凹凸構造を有する凹凸構造領域63Aと、このような凹凸構造を有していない非凹凸構造領域63Bが設定されている。尚、非凹凸構造領域63Bが存在せず、周面63の全域が凹凸構造領域63Aであってもよい。
比S/A:IV→III→II→I順に増大、IV′→III′→II′→I順に増大
比L/B:IV→III→II→I順に増大、IV′→III′→II′→I順に増大
(ロ)
比S/A:IV→III→II→I順に増大、IV′→III′→II′→I順に増大
比L/B:同一(IV=III=II=I=II′=III′=IV′)
(ハ)
比S/A:IV→III→II→I順に増大、IV′→III′→II′→I順に増大
比L/B:IV=III=II=Iで同一、IV′→III′→II′→I順に増大
(ニ)
比S/A:IV→III→II→I順に増大、IV′→III′=II′→I順に増大傾向
比L/B:IV→III=II→I順に増大傾向、IV′→III′→II′→I順に増大
比L/Bは、設定した領域IV,III,II,I,II′,III′,IV′の各々について、円周方向における領域長Bが決まる。上記の例では、領域長Bは6mmとなる。尚、領域IV,III,II,I,II′,III′,IV′における領域長Bは、同一、異なるもの、いずれであってもよい。更に、各領域について実測長Lを測定することにより、比L/Bが算出される。
本発明の微細構造の形成方法は、上述の本発明のインプリント用のモールドを使用し、インプリント方法により基体上に微細構造を備えた転写材料を形成するものである。
図11は、本発明の微細構造の形成方法の一実施形態を説明するための工程図である。この形成方法の例では、上述の本発明のインプリント用のモールド11を使用しており、押し当て工程、硬化工程、剥離工程を有している。尚、図11では、モールド11の主面13の凹凸構造領域13Aに均一な微細凹凸が記載されているが、これは凹凸構造を便宜的に示したものであり、上述のように、モールド11は各領域III,II,I,II′,III′にそれぞれ最適な凹凸構造を備えている。
まず、基体1の一方の面1aに転写材料3を供給し(図11(A))、モールド11と基体1とを近接させて、モールド11の主面13と基体1との間に転写材料3を介在させる(図11(B))。
使用する基体1は、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコン、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基体、金属基体、サファイア、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基体であってよい。また、基体1は必ずしも平坦である必要はなく、予め構造を有していてもよい。例えば、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等の所望のパターン構造物が形成されたものであってもよい。
次いで、モールド11の主面13と基体1との間に転写材料3が介在する状態で、転写材料3を硬化する。転写材料3の硬化は、転写材料3が光硬化性であり、モールド11がこれらを硬化させるための照射光を透過可能である場合には、モールド11側から光照射することができる。また、基体1が光を透過可能である場合には、基体1側から光照射を行ってもよく、さらに、モールド11側と基体1側の両方から光照射を行ってもよい。また、転写材料3が熱硬化性、あるいは、熱可塑性である場合には、それぞれ転写材料3に対して加熱処理、あるいは、冷却(放冷)処理を施すことができる。
次に、モールド11の特定方向D(図11(C)に示される矢印D方向)に沿って基体1とモールド11との間隙距離を広げるようにして剥離力を作用させることにより、硬化後の転写材料3′とモールド11とを引き剥がす(図11(C))。このような特定方向Dからの引き剥がしは、例えば、モールド11の主面13の一方の端辺13a側に引き剥がし力Fを作用させることより行うことができる。また、このとき、モールド11の主面13の他方の端辺13b側に、モールド11を硬化後の転写材料3′に押付ける力を作用させ、剥離が徐々に端辺13b方向に接近し、この押付ける力が剥離を阻害する前に解除するようにしてもよい。モールド11では、上述のように、基材12の主面13の一方の端辺13aから他方の端辺13bに向かう方向を特定方向Dとし、この特定方向Dに沿って、凹凸構造を有する複数の領域III,II,I,II′,III′が隣接するように配設されている。したがって、このような特定方向Dからの引き剥がしにより、小さい剥離力の領域から剥離が開始され、剥離力が最も大きな領域の剥離に至り、その後、剥離力が小さい領域で剥離が終了し、各領域間での剥離応力の急峻な増減が抑制される。
尚、この例では、基体1は平板状であるが、本発明はこれに限定されず、基体1が円筒状であり、回転しながらモールド11と相対的に移動(上記の特定方向Dへの移動)してもよく、また、基体1がローラーで搬送される連続体であり、モールド11が基体1の搬送速度に合わせてローラー上を移動(上記の特定方向Dへの移動)するものでもよい。このような形態では、転写材料3とモールド11との接触時間は短く、転写材料3が未硬化の状態でモールド11と剥離されるが、本発明のモールド11では、特定方向Dでの剥離における各領域間での剥離応力の急峻な増減が抑制され、未硬化の転写材料3との剥離が確実に行われ、その後、転写材料3を硬化することにより、微細構造が形成される。
図12は、本発明の微細構造の形成方法の他の実施形態を説明するための工程図である。この形成方法の例では、上述の本発明のインプリント用のモールド51を使用しており、押し当て工程、硬化工程、剥離工程を有している。尚、図12では、モールド51の主面53の凹凸構造領域53Aに均一な微細凹凸が記載されているが、これは凹凸構造を便宜的に示したものであり、上述のように、モールド51は各領域III,II,I,II′,III′にそれぞれ最適な凹凸構造を備えている。
まず、基体1の一方の面1aに転写材料3を供給し(図12(A))、モールド51と基体1とを近接させて、モールド51の主面53と基体1との間に転写材料3を介在させる(図12(B))。使用する基体1は、円筒状、あるいは、連続体を除いて、上述の実施形態Aで挙げた基体と同様とすることができる。また、転写材料3も、上述の実施形態Aと同様とすることができる。
次いで、モールド51の主面53と基体1との間に転写材料3が介在する状態で、転写材料3を硬化する。この転写材料3の硬化は、上述の実施形態Aと同様とすることができる。
次に、モールド51の特定方向D(図12(C)に示される矢印D方向)に沿って基体1とモールド51との間隙距離を広げるようにして剥離力を作用させることにより、硬化後の転写材料3′とモールド51とを引き剥がす(図12(C))。このような特定方向Dからの引き剥がしは、例えば、モールド51の主面53の外縁部53aに均等に引き剥がし力Fを作用させることより行うことができる。また、このとき、モールド51の開口部52a側の内縁部53bに、モールド51を硬化後の転写材料3′に押付ける力を作用させ、剥離が徐々に開口部52a方向に接近し、この押付ける力が剥離を阻害する前に解除するようにしてもよい。モールド51では、上述のように、主面53の外縁部53aから開口部52a側の内縁部53bに向かう方向を特定方向Dとし、この特定方向Dに沿って、凹凸構造を有する複数の領域III,II,I,II′,III′が同心円状に隣接するように配設されている。このような特定方向Dからの引き剥がしにより、小さい剥離力の領域から剥離が開始され、剥離力が最も大きな領域の剥離に至り、その後、剥離力が小さい領域で剥離が終了し、各領域間での剥離応力の急峻な増減が抑制される。
これにより、基体上に微細構造を備えた転写材料が形成され、形成された微細構造は、欠陥の発生が低減されたものであり、また、モールドへの負担も軽減される。
図13は、本発明の微細構造の形成方法の他の実施形態を説明するための工程図である。この形成方法の例では、上述の本発明のインプリント用のモールド61を使用しており、押し当て工程、転写・剥離工程、硬化工程を有している。尚、図13では、モールド61の周面63の凹凸構造領域に均一な微細凹凸が記載されているが、これは凹凸構造を便宜的に示したものであり、上述のように、モールド61は各領域IV,III,II,I,II′,III′,IV′にそれぞれ最適な凹凸構造を備えている。
まず、基体5の一方の面5aに転写材料7を供給し(図13(A))、モールド61と基体1とを近接させて、モールド61の基線部位63aを転写材料7に押付ける(図13(B))。
使用する基体5は、上述の実施形態Aの基体1と同様とすることができ、図示例では基体1は板状であるが、円筒状、連続体等であってもよい。また、転写材料7は、上述の実施形態Aの転写材料3と同様とすることができ、基体5上への転写材料7の供給は、スピンコート法等を用いて塗布膜として供給する。
次に、モールド61を円周方向に1回転させながら、モールド61と接触した状態で転写基材7を硬化させ、硬化後の転写材料7とモールド61とを引き剥がして、転写材料7にモールド61の凹凸構造を転写する(図13(C))。図13(C)は、モールド61が半回転した状態を示している。モールド61では、上述のように、円周方向に沿って、凹凸構造を有する複数の領域IV,III,II,I,II′,III′,IV′が隣接するように配設されている。そして、上記の押し当て工程では、モールド61の基線部位63aが転写材料7に押し当てられているので、この基線部位63aから開始されるモールド61の回転では、押し当て後の剥離力が小さい領域から押し当てが開始され、押し当て後の剥離力が最も大きな領域の剥離に至り、その後、押し当て後の剥離力が小さい領域に至って1回転が終了する。したがって、各領域間での剥離応力の急峻な増減が抑制され、転写材料7へのモールド61の凹凸構造の転写が安定して行われ、また、モールド61への負担も軽減される。上記の転写材料7の硬化は、上述の実施形態Aと同様とすることができる。
これにより、基体上に微細構造を備えた転写材料が形成され、形成された微細構造は欠陥の発生が低減されたものであり、また、モールドへの負担も軽減される。
更に、転写材料7が、硬化を完全に行わない場合であっても、モールド61から転写された凹凸構造をある程度維持できるのであれば、転写材料7とモールド61との剥離を行った後に、更に硬化処理を行ってもよい。この場合には、剥離応力がより低減されるため、モールドへの負担も軽減される。
上述の微細構造の形成方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
12,22,32,42,52,62…基材
13,23,33,43,53…主面
63…周面
1,5…基体
3,7…転写材料
Claims (13)
- 基材の主面に凹凸構造を有するモールドであって、該凹凸構造に転写材料を充填し硬化させた後に該転写材料をモールドから剥離して、前記凹凸構造を前記転写材料に転写するためのインプリント用のモールドにおいて、
基材の主面には、凹凸構造を有する複数の領域が特定方向に沿って隣接するように位置し、
領域毎の転写材料の剥離に要する応力が、前記特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて増大傾向となるように、複数の前記領域が位置することを特徴とするインプリント用のモールド。 - 複数の前記領域の各領域における面積Aに対する当該領域の実測表面積Sの比S/Aが、前記特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて増大傾向にあることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用のモールド。
- 各領域における前記特定方向の領域長Bに対する実測長Lの比L/Bが、前記特定方向の両端に位置する領域から特定領域に向けて同一もしくは増大傾向にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインプリント用のモールド。
- 前記主面は方形であり、前記特定方向は主面の対向する一方の端辺から他方の端辺に向かう方向、あるいは、主面の対向する一の角部から他方の角部に向かう方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインプリント用のモールド。
- 前記主面は正N角形(Nは5以上の整数)であり、前記特定方向は主面の対向する一方の端辺から他方の端辺に向かう方向、あるいは、主面の対向する一の角部から他方の端辺に向かう方向、あるいは、主面の対向する一の角部から他方の角部に向かう方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインプリント用のモールド。
- 前記主面は円形であり、前記特定方向は任意に設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインプリント用のモールド。
- 前記主面は楕円形であり、前記特定方向は主面の楕円形の長軸方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインプリント用のモールド。
- 前記主面は開口部を有する環状であり、前記特定方向は主面の外縁部から前記開口部側の内縁部に向かう方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインプリント用のモールド。
- 円筒状の基材の周面に凹凸構造を有するモールドであって、該凹凸構造に転写材料を充填し硬化させた後に該転写材料をモールドから剥離して、前記凹凸構造を前記転写材料に転写するためのインプリント用のモールドにおいて、
円筒状の基材の周面には、該周面の円周方向と垂直な一の基線部位から円周方向に沿って、凹凸構造を有する複数の領域が隣接するように位置し、
領域毎の転写材料の剥離に要する応力が、前記基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け増大傾向となるように、複数の前記領域が位置することを特徴とするインプリント用のモールド。 - 複数の前記領域の各領域における面積Aに対する当該領域の実測表面積Sの比S/Aが、前記基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け増大傾向にあることを特徴とする請求項9に記載のインプリント用のモールド。
- 各領域における円周方向の領域長Bに対する実測長Lの比L/Bが、前記基線部位を挟むように隣接する領域からそれぞれ円周方向に沿って特定領域に向け同一もしくは増大傾向にあることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のインプリント用のモールド。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のインプリント用のモールドの主面と基体との間に転写材料を介在させる押し当て工程と、
該転写材料を硬化させる硬化工程と、
硬化後の前記転写材料と前記モールドとを引き剥がす剥離工程と、を有し、
前記剥離工程では、前記モールドの前記特定方向に沿って前記基体と前記モールドとの間隙距離を広げるようにして剥離力を作用させることを特徴とする微細構造の形成方法。 - 基体上に配設された転写材料と、請求項9乃至請求項11に記載の円筒状のインプリント用のモールドとを押し当てる押し当て工程と、
前記モールドを円周方向にn回転(nは1以上の整数)させながら、前記モールドと接触した状態で前記転写基材を硬化させ、硬化後の前記転写材料と前記モールドとを引き剥がして、前記転写材料に前記モールドの凹凸構造を転写する転写・硬化・剥離工程と、を有し、
前記押し当て工程では、前記モールドの基線部位を転写材料に押し当て、前記転写・硬化・剥離工程では、前記モールドの基線部位が転写材料に当接した状態で回転を停止することを特徴とする微細構造の形成方法。
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