JP2013180373A - レンズ保持具及びレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レンズ保持具からレンズの脱離を簡素に行いつつも、脱離の際にレンズに与える影響を抑制することが可能なレンズ保持具及びレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具であって、前記保持部材は形状記憶性を有し、所定の条件だと前記レンズの光学面に合わせた形状を維持する一方、別の所定の条件だと前記レンズに対する保持力を弱める形状へと自己変形する。
【選択図】図1

Description

本発明は、レンズ保持具及びレンズの製造方法に関する。
近年、光学レンズ(以降、単に「レンズ」とも言う。)として、ガラスレンズの代わりに樹脂素材を用いたプラスチックレンズが多用されている。その理由としては、プラスチックレンズがガラスレンズに比べて軽量であり、割れにくく且つ加工成形がし易いことなどの利点があることに起因している。このプラスチックレンズは光学分野で幅広く採用されているが、上記の利点があることから、眼鏡用レンズとして特に使用されている。
従来、眼鏡用のプラスチックレンズを構成する樹脂素材に対する加工においては、切削・研削方法として球面加工、トーリック面加工、および自由曲面加工を行うためのカーブジェネレーティング加工(以下、CG加工と言う。)が行われている。この加工が行われる工程は、粗削り工程とも呼ばれる。
このCG加工は、被加工物である樹脂素材に対して所望の形状が創成できるような位置にダイヤモンド工具を相対配置し、工具および樹脂素材の両者を相対運動させながら球面、トーリック、および自由曲面形状を創成する方法である。
このCG加工された樹脂素材に対し、ポリウレタン研磨パッドや不織布研磨パッド、そして遊離砥粒を用いて機械研磨を行い、プラスチックレンズに対して研磨加工(例えば粗研磨や仕上げ研磨)を施し、光学面を整える。そして最終的に、プラスチックレンズに対して所望の光学面を形成し、完成品のレンズを形成する。
レンズの切削工程や研磨工程において、レンズはレンズ保持具に保持されて加工装置に取り付けられる。レンズ保持具は、従来だと、ヤトイと低融点合金(以下、アロイともいう)とで構成されている。この構成に関する技術が本出願人により開示されている(特許文献1参照)。
図8に、特許文献1に開示されているレンズ保持具を示す。このレンズ保持具は、ヤトイ2とアロイ8とからなり、例えば、一般に市販されているLOH社製のレイアウトブロッカーと呼ばれるレンズ用ブロック装置によってレンズ5の取り付けを行っている。レンズ5をレンズ保持具に取り付けるには、予めレンズ5の被加工面とは反対側の面(加工済み面で、例えば凸面)に傷防止用の保護フィルム9を貼着しておく。次に、レイアウトブロッカーの取付部10にヤトイ2とブロッキングリング7を固定し、ブロッキングリング7の上に、保護フィルム9が貼着された凸面を下にしてレンズ5を載置する。これにより、ブロッキングリング7は上面側内周縁によってレンズ5の凸面の外周部を支持する。そして、レンズ5、ヤトイ2、ブロッキングリング7および取付部10によって囲まれた空間内に溶融したアロイ8を流し込んで固化させることにより、レンズ5をヤトイ2に固定する。ブロッキングリング7をアロイ8から分離した後、レンズ5はヤトイ2とともに加工装置に装着され、被加工面の切削または研磨加工が行われる。
なお、特許文献1と同様に、ブロッキングリングに加え、ヤトイとアロイを用いた技術が、本出願人により開示されている(特許文献2及び3参照)。特許文献2には、ヤトイを複数の基部にて構成することにより、種々の加工装置に取り付け可能とした技術が公開されている。また、特許文献3には、種々の加工装置にヤトイが取り付け可能になるようなアダプタに関する技術が公開されている。
一方、ヤトイとアロイを用いた技術以外にも、アロイの代わりに溶融した熱可塑性樹脂を用いる技術が公開されている(特許文献4参照)。具体的に言うと、以下の通りである。まず、プラスチックレンズと枠型との空隙に対し、溶融した熱可塑性樹脂を注入する。または、溶融した熱可塑性樹脂に対し、レンズを接触させる。そして、この熱可塑性樹脂を固化することにより、熱可塑性樹脂からなるブロック材を形成する。そして、プラスチックレンズとブロック材とを一体としたまま、切削工程を行う。
特許第4084081号公報 特開2010−284729号公報 特開2010−284761号公報 特開平11−198014号公報
ところで、レンズに対する加工終了後、最終製品としてのレンズを出荷して装用者に渡す際には、当然ながら、アロイやブロック材等のレンズ保持具からレンズを取り外す必要がある。以降、レンズ保持具からレンズを脱離することを「デブロッキング」とも言う。一方、レンズ保持具にレンズを固定することを「ブロッキング」とも言う。
このデブロッキングの公知の方法としては、特許文献4に記載されている方法であるがブロック材に対する加熱や薬剤によるブロック材の溶解という方法、レンズ保持具とレンズとの間に接着シートを設ける方法、真空チャックを行う方法、レンズ保持具とレンズとを機械的にデブロッキングする方法等が知られている。
しかしながら、上記の方法には、各々、考慮しなければならない点がある。
例えば、ブロック材に対する加熱や薬剤によるブロック材の溶解という方法は、最終製品となるレンズに変形や変質等、何らかの望ましくない影響を与えるおそれもある。特に、当該レンズがプラスチックレンズの場合、その影響が顕著になるおそれがある。つまり、熱可塑性樹脂からなるブロック材が加熱されることによりプラスチックレンズをデブロッキングしやすくなるとしても、同じく樹脂を含有するプラスチックレンズも変形や変質してしまうおそれがある。プラスチックレンズが変形や変質しないようにする場合、ブロック材の融点やガラス転移温度とプラスチックレンズの融点やガラス転移温度との関係に配慮しなければならない。そうなると自ずと、使用可能なプラスチックレンズやブロック材の素材が限定されてしまう。更に、デブロッキングにおいて精密な温度制御が必要となり、ひいてはレンズ製造工程全体に要する時間が長くなってしまい、生産効率低下につながるおそれもある。
更に、特許文献4においては、段落0033に記載のように、熱可塑性樹脂を加熱や溶解することから、デブロッキングした後のブロック材は使い捨てられるものと考えられる。つまり、レンズを製造する場合、その都度、熱可塑性樹脂の使い捨てを行わなければならない。そうなるとレンズ以外にも、熱可塑性樹脂のための原料を別途、用意しなければならない。そうなると、廃棄物の増加にもつながる。その結果、費用が嵩むことは当然として、リサイクルが推奨される昨今の状況にもかかわらず、環境に対する配慮が乏しくなってしまう。
なお、特許文献1〜3においては、アロイを用いているため、アロイを溶融することによりリサイクル可能である。しかしながら、アロイを溶融するためには、例え低融点金属を使用しているとしても、相応の高温状態が必要となる。そうなると、レンズの変形や変質を憂慮しなければならない。そのため、特許文献4のブロック材と同様、使用可能なプラスチックレンズやアロイの素材が限定されてしまう。
また、レンズ保持具とレンズとの間に接着シートを設ける方法については、そもそも接着シートを使い捨てしなければならず、廃棄物の増加につながる。その結果、費用が嵩むことは当然として、リサイクルが推奨される昨今の状況にもかかわらず、環境に対する配慮が乏しくなってしまう。
それに加え、接着シートを用いてブロッキングを行った場合、デブロッキングを行う際にはレンズごと加熱して接着シートからレンズを脱離させることになる。そうなると、上述のレンズの変形や変質を憂慮しなければならない。
真空チャックを行う方法については、そもそも特許文献1〜4のようにレンズの光学面の形状に倣わせるようなレンズ保持具を作製することができない。つまり、特許文献1〜4のようにアロイやブロック材を形成した後、真空チャック構造をレンズ保持具に設ける必要がある。この作業は容易ではないことが想定される。その上、上述のように多種のレンズ各々に対する多数のレンズ保持具に対して真空チャック構造を設けることは現実的ではない。
最後に、レンズ保持具とレンズとを機械的にデブロッキングする方法については、デブロッキングの際にレンズに予期しない傷を与えてしまうおそれがある。
なお、少なくとも特許文献1〜3には、デブロッキングについての技術的内容は開示されていない。また、特許文献4にはブロック材(熱可塑性樹脂)の加熱や溶解によるデブロッキングが記載されているが、上述の通り、憂慮すべき点が多数ある。
従来のレンズ保持具においては、レンズの光学面やヤゲンの形状、玉型形状、コバ厚等を設計通りに加工すべく、レンズとレンズ保持具との間が強固にブロッキングされることが要請されていた。その一方、強固にブロッキングされているからこそ、デブロッキングの難易度が上昇している。しかしながら、レンズ保持具(保持部材)にデブロッキングを促進させるような課題自体が、未だ着目されていない。
本発明の目的は、レンズ保持具からレンズの脱離を簡素に行いつつも、脱離の際にレンズに与える影響を抑制することが可能なレンズ保持具及びレンズの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について検討した。その際、本発明者らは、光学面の形状に倣ったレンズ保持具を形成する関係上、アロイ又はブロック材(熱可塑性樹脂)を用いたレンズ保持具について再検討した。そして、上記の考慮しなければならない点のうち、レンズの変形や変質の影響について本発明者らは着目した。そして、レンズの変形や変質をもたらさない程度のマイルドな条件でデブロッキングできないかについて検討を加えた。また、それと同時に、ブロック材や接着シートを用いた場合、デブロッキングの際にそれらを使い捨てなければならないという点についても本発明者らは着目した。
以上の着目及び検討の結果、従来のレンズ保持具の性質、即ちデブロッキングの際にレンズ保持具を構成する部分の形状が崩れるという性質とは正反対の性質を有する保持部材をレンズ保持具に使用するという知見を得た。具体的に言うと、保持部材に形状記憶性を付与しておき、デブロッキングの際に、保持部材が、記憶された形状へと復帰しようと自己変形することにより、レンズに対する保持力を弱め、レンズのデブロッキングを容易化するという知見を得た。
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具であって、
前記保持部材は形状記憶性を有し、所定の条件だと前記レンズの光学面に合わせた形状を維持する一方、別の所定の条件だと前記レンズに対する保持力を弱める形状へと自己変形することを特徴とするレンズ保持具である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記保持部材は形状記憶性を有する樹脂組成物であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の態様であって、
前記レンズの光学面が凸の場合だと、前記保持部材において前記レンズの光学面の形状に対応する部分のうちの少なくとも一部の形状が凸又は平坦であり、前記レンズの光学面が凹の場合だと、前記保持部材において前記レンズの光学面の形状に対応する部分のうちの少なくとも一部の形状が凹又は平坦であることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、
レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具であって、
前記保持部材は形状記憶性を有し、
前記レンズ保持具の形状を前記レンズの光学面の形状に合わせて変形させる際においては、前記保持部材は、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、
前記レンズを前記レンズ保持具により保持する間においては、前記保持部材は前記塑性を失い、前記レンズの光学面に合わせた形状を維持し、
前記レンズを前記レンズ保持具から脱離する際においては、前記保持部材は、前記レンズに対する保持力を弱める形状へと自己変形することを特徴とするレンズ保持具である。
本発明の第5の態様は、
レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具を用いたレンズの製造方法であって、
形状記憶性を有する前記保持部材を、前記レンズに対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、前記レンズ保持具に保持された前記レンズを当該レンズ保持具から脱離する脱離工程を有することを特徴とするレンズの製造方法である。
本発明によれば、レンズ保持具からレンズの脱離を簡素に行いつつも、脱離の際にレンズに与える影響を抑制することが可能なレンズ保持具及びレンズの製造方法を提供することができる。
本実施形態におけるレンズ保持具にレンズを固定する様子を示す断面図である。 本実施形態におけるレンズ保持具の断面概略図であり、(a)はプリズムを有さないレンズに対して保持を行っているレンズ付きレンズ保持具の断面概略図であり、(b)は所定のプリズム量(水平からの傾斜角θに相当するプリズム量)を有するレンズに対して保持を行っているレンズ付きレンズ保持具の断面概略図である。 本実施形態における保持部材に対して形状記憶させておいた所定の形状を、レンズに良く用いられるプリズム量を数種類に分類して予め記憶させておいた所定の形状を有する保持部材の断面概略図であり、(a)小プリズム量、(b)中プリズム量、(c)大プリズム量を反映させた保持部材を示す。 本実施形態におけるレンズの保持方法を工程順に示す断面概略図である。 本実施形態におけるレンズの脱離方法を工程順に示す断面概略図である。 別の実施形態におけるレンズの保持方法を工程順に示す断面概略図である。 別の実施形態におけるレンズ保持具の変形例を示す断面概略図であり、(a)は、の凸の部分の形状に保持部材を合わせたレンズ保持具を示し、(b)は、ヤトイと保持部材とが一体成型されたレンズ保持具を示し、レンズ(c)は、レンズの外縁部を覆うようにレンズに装着されたレンズ保持具を示す。 従来のレンズ保持具にレンズを固定する様子を示す断面図である。
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態について説明する。順序としては、以下の順序で説明を行う。
1.レンズ保持具
A)レンズ保持具の全体構成
B)保持部材
C)接合部材
D)その他
2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)
A)接合部材の素材(UV硬化樹脂)の塗布工程
B)塑性発現工程(加温工程)
C)保持部材変形工程
D)接合工程(UV照射工程)
E)保持工程
F)デブロッキング(脱離工程)
G)保持部材の形状復元工程
3.レンズの製造方法
A)レンズの選定
B)ブロッキング
C)CG加工
D)研磨
E)デブロッキング
F)その他(カラー染色・検査・超音波洗浄・ハードコート加工・マルチコート加工等)
4.実施の形態による効果
なお、本実施形態においては、光学レンズのうち、眼鏡用のプラスチックレンズを一例として挙げて、説明を行う。以降、この眼鏡用のプラスチックレンズについても、説明の便宜上、単に「レンズ」とも言う。
また、[実施の形態2]においては、先に保持部材をレンズの光学面に合わせて変形させておき、その後、接合部材の素材を塗布する場合について述べる。
そして、[実施の形態3]においては、保持部材の具体的な化合物の組成について述べる。
最後に、[実施の形態4]においては、その他の変形例について述べる。
<1.レンズ保持具>
A)レンズ保持具の全体構成
図1に、本実施形態におけるレンズ保持具1にレンズ5を固定する様子を示す断面概略図を示す。なお、図1にて図示しない部材も存在するが、それらについては、上述の図8と同様、適宜レンズ保持具1に設置しても構わない。図示しない部材については、図8に記載の符号を引用して説明する。
まず、本実施形態のレンズ保持具1は、レンズ5を保持するのに供する保持部材3と、この保持部材3とレンズ5との間に設けられる接合部材4とを有している。
本実施形態におけるレンズ保持具1は、保持部材3と接合部材4とヤトイ2とを含み、例えば、一般に市販されているLOH社製のレイアウトブロッカーと呼ばれるレンズ用ブロック装置によってレンズ5の取り付けを行っている。レンズ5をレンズ保持具1に取り付けるには、予めレンズ5の被加工面とは反対側の面(加工済み面で、例えば凸面)に傷防止用の保護フィルム9を貼着しておく。次に、レイアウトブロッカーの取付部にヤトイ2と保持部材3とを止めねじ6にて固定する。保持部材3の上には接合部材4を設置し、後述の接合方法にて、保護フィルム(図示せず)が貼着されたレンズ5の凸面と保持部材3とを接合しておく。このレンズ5付きレンズ保持具1において、レンズ保持具1は上面側内周縁によってレンズ5の凸面の外周部を支持している。そして、レンズ保持具1はレンズ5とともに加工装置に装着され、被加工面の切削または研磨加工が行われる。
レンズ保持具1の各部材の詳細については後述するが、概要を言うと、保持部材3上に接合部材の素材4aが塗布され、この接合部材の素材4aの上から、レンズ5を押し当てる。その押し当てにより保持部材3を変形させつつ、接合部材の素材4aを硬化させ、接合部材4が形成される。こうして、保持部材3と接合部材4とを有し、レンズ5を保持するレンズ保持具1が形成されている。
なお、本実施形態におけるレンズ保持具1は、ヤトイ2に対して着脱可能な構成を有している。このヤトイ2としては公知のものを用いても構わない。
B)保持部材
本実施形態のレンズ保持具1においては、保持部材3に一つの大きな特徴がある。本実施形態の保持部材3は、所定の条件だと上記レンズ5の光学面に合わせた形状を維持する一方、別の所定の条件だと上記レンズ5に対する保持力を弱める形状へと自己変形するという性質を有している。つまり、レンズ5をレンズ保持具1から脱離する際においては、上記保持部材3は、上記レンズ5に対する保持力を弱める形状へと自己変形する。
この保持部材3として好適なのは、形状記憶性を有する物質である。この物質としては金属(合金)や樹脂等、形状性記憶性を有する公知の物質が挙げられるが、その中でも、形状記憶性を有する樹脂組成物が好ましい。コスト面もさることながら、眼鏡用のプラスチックレンズを加工する場合、切削刃や研磨器具の干渉を気にすることなく、レンズ保持具1ごとプラスチックレンズを加工可能となるためである。
また、透光性については、後述の<2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)>で説明するが、本実施形態における保持部材3は、UV(以降、「紫外光」を指す。)透過機能を有しているのが好ましい。上記の構成は、デブロッキングというよりも主にブロッキングの際に効果を奏することになる。具体的に言うと、以下の通りである。
レンズ5が眼鏡用のプラスチックレンズである場合、レンズ5にUV遮蔽機能が付与されている場合が多い。そういう場合に、レンズ保持具1とレンズ5との間に設けた接合部材の素材4a(UV硬化樹脂)を硬化させようとすると、眼鏡用のプラスチックレンズ側からUV照射しても、UV硬化樹脂までUVが届かず、レンズ保持具1とレンズ5とを接合できない。そのため、眼鏡用のプラスチックレンズ側からではなく、保持部材3側からUV照射する必要がある。そのときのために、本実施形態における保持部材3は、UV透過機能を有しているのが好ましい。
また、保持部材3が形状記憶性を有する樹脂組成物ならば、当該記憶させた形状は、レンズ5の光学面が凸の場合だと、保持部材3においてレンズ5の光学面の形状に対応する部分のうちの少なくとも一部の形状が凸又は平坦であるのが好ましい。逆に、レンズ5の光学面が凹の場合だと、保持部材3においてレンズ5の光学面の形状に対応する部分のうちの少なくとも一部の形状が凹又は平坦であるのが好ましい。なぜならば、後述のF)デブロッキングにおいて、保持部材3が記憶された形状へと復元すべく自己変形する際に、保持部材3はレンズ5の光学面と同様の形状(レンズが凸に対して保持部材も凸)を有することになる。そうなると、レンズ5に対する保持力を弱めることが、保持部材3の(例えば加温による)自己変形にて可能となり、デブロッキングの容易化を促すためである。なおこの際、レンズの光学面が凸の場合だと所定の形状は凸又は平坦であり、レンズ5の光学面が凹の場合だと所定の形状は凹又は平坦であっても良い。こうすることにより、F)デブロッキングの際に、保持部材3が自己変形することによりレンズ5を押し出す方向にレンズ5の光学面全体に力が作用することになり、より好ましい。一方、レンズ保持具1がレンズ5の凸面を保持している場合、保持部材3の形状は凹となっている。そのため、レンズ5に対する保持力を弱めるという観点では、レンズ5の光学面の中でも比較的使用頻度の少ない周縁部に該当する保持部材3の部分(保持部材3の周縁部)に凸の形状を単数又は複数部分にて記憶させておきつつ、保持部材3全体としてはレンズ5の凸面をスムーズに合わせるべく凹の形状を記憶させておいても良い。その際、保持部材3の一部に記憶される凸の形状は、連続した凸(例えば保持部材3の外周に沿った連続凸状)でも良いし、単体の凸(例えば保持部材3の外周近傍に記憶された単数又は複数の突起状)でも良い。
まとめると、F)デブロッキングの前ではレンズ5の光学面に合わせた形状となっている保持部材3がF)デブロッキングにおいて自己変形する際、レンズの光学面を押し出すことによりレンズ5の脱離を促す形状へと自己変形させることができれば良い。
なお、本実施形態の保持部材3がレンズ5の光学面に合わせた形状を維持する「所定の条件」としては、公知の形状記憶性を有する物質がレンズ5を保持する際に変形しない状態(例えば塑性を失っている状態)を実現する条件であれば良い。また、自己変形することになる「別の所定の条件」については、レンズ5に対する保持力を弱める程度の形状へと形状記憶性を発揮できる条件であれば良い。本実施形態のように形状記憶性を有する樹脂組成物を保持部材3に用いるならば、所定の条件の一つとして、温度に関する条件であることが挙げられる。もちろんそれ以外であっても良く、光や振動等、何らかのエネルギーを与えるようなものでも良い。上記の「所定の条件」及び「別の所定の条件」が、所定の範囲を有する条件である場合、それらの範囲は一部重複していても良い。例えば、レンズ5の光学面に合わせた形状を維持及び自己変形各々が可能な条件が温度範囲で規定可能である場合、その温度範囲において一部重複していても構わない。
C)接合部材
本実施形態の接合部材4は、上記の保持部材3とレンズ5との間を接合するものであれば良い。ただ、接合の容易性を考えると、接合部材の素材4aは、保持部材3上に塗布可能な物質であるのが好ましい。また、レンズ5に与える影響を考慮すると、接合部材の素材4aとしては、温度以外のエネルギー(例えば光)により硬化する物質が好ましい。また、接合部材4に対しても形状記憶性を有する物質を用いても構わない。
なお、本明細書においては、保持部材3とレンズ5とを接合後(例えば硬化後)の状態のものを「接合部材4」と言う。一方、保持部材3とレンズ5との接合前(例えば硬化前)の状態のものを「接合部材の素材4a」と言う。
なお、この接合部材の素材4aとして好適なのは、UV硬化樹脂である。UV硬化樹脂ならば、硬化させるのに比較的簡素な手法で硬化させることができる。しかも、レンズ5に変形や変質等の影響を与えるおそれが少ない。また、接合部材4が硬化後のUV硬化樹脂ならば、保持部材3と同様、眼鏡用のプラスチックレンズを加工する場合、上述の通り、切削刃や研磨器具の干渉を気にすることなく、レンズ保持具1ごとプラスチックレンズを加工可能となる。
D)その他
本実施形態においては、保持部材3及び接合部材4以外にも、レンズ保持具1を構成するものを設けても構わない。例えば、ヤトイ2が挙げられる。また、接合部材4とレンズ5との間に、別途保護フィルムを設けても構わない。ヤトイ2や保護フィルム以外であっても、適宜、本実施形態のレンズ保持具1に設けても構わない。
なお、レンズ保持具1において特記が無い部材については、公知の技術を用いても構わない。
以上の構成を有することにより、本実施形態におけるレンズ保持具1は、デブロッキングの際に、保持部材が、記憶された形状へと復帰しようと自己変形することにより、レンズに対する保持力を弱め、レンズのデブロッキングを容易化することが可能となる。また、本実施形態の保持部材3はブロッキングの際に塑性を有するようなものを使用している。そのため、ヤトイ2の形状に合わせる際にも塑性を発揮させるようにすれば、むしろ、どのような形状を有する公知のヤトイ2であっても、形状へと本実施形態のレンズ保持具1は着脱可能に形成できる。これは、公知の一般に市販されているレンズ用ブロック装置(例えばSATISLOH社製)やレンズ加工装置がどのような種類であっても、レンズ保持具1が着脱可能であることも意味している。
なお、本実施形態の保持部材3は、F)デブロッキングの際に効果を発揮する態様に加え、以下の好ましい態様が存在する。即ち、所定の条件だと、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、上記レンズ5の光学面の形状に合わせて変形自在となるものを保持部材3として使用する。つまり、上記レンズ保持具1の形状を上記レンズ5の光学面の形状に合わせて変形させる際においては、上記保持部材3は、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有する。この構成を有することにより、本実施形態におけるレンズ保持具1は、ブロッキングの際にも特別な効果を発揮する。以下、その効果について詳述する。
従来だと、特許文献4に記載のように熱可塑性樹脂からなるブロック材とプラスチックレンズとの間の熱膨張率の違いによる、固化した熱可塑性樹脂とプラスチックレンズとの間の隙間の発生のおそれがあったが、本実施形態の保持部材3ならば、保持部材3の素材を溶融されるまでもなく、塑性が発現する程度の温度に加温すれば良い。そのため、上記隙間の発生をそもそも防ぐことができ、ブロッキングを良好に行うことが可能となる。また、保持部材3の素材が溶融するほどの高温状態とする必要もなくなるため、プラスチックレンズそのものが変性してしまうことを防ぐことも可能となる。
しかも、本実施形態の保持部材3には、ブロッキング前の段階から、自力にて所定の形状を維持しており、ブロッキング時には塑性を備えさせ、レンズ5の光学面形状に合わせてこの部材を所定の形状から変形させる一方、レンズ加工時等、レンズ5の保持が必要な時には当該塑性が失われることによってレンズ5が保持された状態となるようにするという性質を有したものを使用している。そうして、従来にあるアロイや熱可塑性樹脂そしてプリズムリングの役割を一手に担わせている。
つまり、プリズムリングという観点から見れば、所定の条件下で保持部材3を、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有する状態にした上で、レンズ5を(接合部材の素材4aを挟んで)保持部材3に押し当てるという簡素な作業を最低限行えば良くなる。こうすることにより、多焦点レンズ5の形状を反映させつつ所定のプリズムを有するようなプリズムリング7の形状を、その都度、計算で決定する必要がなくなる。つまり、従来におけるプリズムリング7を不要とすることが可能となる。しかも上述の通り、多焦点レンズ5の形状は、個々の処方に応じて決定されるため、1つ1つが極めて複雑な形状を有しているにもかかわらず、上記のような簡素な作業により、所定のプリズム量を反映させつつも光学面の形状を正確に反映した保持部材3が得られる。
また、アロイや熱可塑性樹脂という観点から見れば、本実施形態の保持部材3は、所定の条件下ならば、塑性を有しつつも、自力にて所定の形状を維持している。そのため、アロイ又はブロック材の溶融素材を注入する工程が不要となる。そうなると、注入工程の際に欠陥はそもそも発生することはなくなり、設計通りの保持具を形成することができる。ひいては、レンズ5の加工においても設計通りの加工を行うことが可能となる。
上記の構成を有することにより、従来にあるアロイや熱可塑性樹脂そしてプリズムリングの役割を、本実施形態の保持部材3が一手に担うことが可能となる。そして、ブロッキング時には塑性を備えさせ、レンズ5の光学面形状に合わせてこの部材を所定の形状から変形させることにより、レンズ5の光学面の形状の転写が比較的容易に行うことが可能となる。そして、レンズ加工時等、レンズ5の保持が必要な時には当該塑性を失わせることにより、レンズ5を保持可能な状態とすることが可能となる。しかも、プリズムリングを用いる必要なく、この保持を行うことが可能となる。
また、本実施形態のレンズ保持具1ならば、例えば、予め形状記憶させた「所定の形状」がレンズ5の光学面に倣っていた場合や、後述の変形例のように先に保持部材3にレンズ5の光学面を転写させておき、その後でUV硬化樹脂を塗布する場合のように、保持部材3が既にレンズ5の光学面を反映した形状となっている保持部材3を使用することが可能となるため、接合部材の素材4aのプールを設ける必要が無い。そうなると、保持部材3にレンズ5を押し当てて両者の形状を合わせたとしても、余分な接合部材の素材4aを発生させることがなくなる。その結果、適切な接合力を確保することが可能となるうえ、UV硬化樹脂は安価なものではないため、接合に用いられる素材を可能な限り少なくすることが可能となる。
更に、本実施形態によれば、デブロッキングした後のレンズ保持具1をリサイクル(再利用)することも可能となる。そうなるとレンズ5以外の、レンズ保持具1のための原料を別途、用意する必要が無くなる。そうなると、廃棄物の減少にもつながる。その結果、費用を削減できる上、リサイクルが推奨される昨今の状況に則し、環境に対する配慮を十分に行うことができる。
以上の通り、本実施形態によれば、レンズ保持具1の素材の使用量を抑制しつつ、レンズ5の光学面に応じた形状を簡素且つ迅速に形成可能なレンズ保持具1及びレンズ5の製造方法を提供することが可能となる。
なお、保持部材3に記憶させておく形状の例について上述したが、保持部材3全体として記憶させておく形状は、上記レンズ5の光学面の少なくとも一部に倣った形状であっても構わない。後述の<2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)>のC)保持部材変形工程において、レンズ保持具1にレンズ5の光学面の形状を転写させるべく、保持部材3に塑性を具備させて、レンズ5を(接合部材の素材4aを挟んで)保持部材3に押し当てる際に、「所定の形状」がレンズ5の光学面に倣った形状ならば、塑性を有する保持部材3をわずかに変形させるだけで済む。つまり、わずかな押し当てにより、使う人の個々のレンズ5のプリズム量を反映した形状の保持部材3を形成できる。
通常ならば、プリズム量を光学面に計算上で反映させると、膨大な計算が必要になる。しかしながら、「所定の形状」がレンズ5の光学面の少なくとも一部に倣った形状の場合、押し当てという簡素な作業のみでプリズムリングの役割をも担う保持部材3を形成することが可能となる。
なお、ここで言う「倣った形状」というのは、レンズ5の光学面の形状と同一又は類似の形状のことを言う。この「類似の形状」とは、レンズ5を(接合部材の素材4aを挟んで)保持部材3に押し当てる際の保持部材3の変形量を少なくするような形状のことを言う。
また、「レンズ5の光学面の少なくとも一部に倣った形状」の「少なくとも一部」が示すように、レンズ5の光学面の全体に倣って、保持部材3に記憶された「所定の形状」を設定しなくとも構わない。結局のところ、本実施形態の保持部材3は、レンズ5の保持の際に、少なくともレンズ5のプリズム量を反映し、レンズ5の光学面の一部に合った形状となれば良い。その一例を挙げると、略リング状の保持部材3が挙げられる。略リング状の保持部材3ならば、予めレンズ5の光学面の一部(レンズ5の外周近傍部分)の形状に類似の形状を、記憶された「所定の形状」としておく。その上で、予め保持部材3のリングの上に接合部材の素材4aを塗布しておき、光学面の一部(レンズ5の外周近傍部分)のプリズム量及び形状が反映されるようにレンズ5を保持部材3に押し当て、保持部材3を変形する。そうすることにより、保持部材3のリングの上の部分がプリズム量及び光学面の形状を反映させたものとなる。その際、所定の形状が、光学面の一部に倣った形状であるため、接合部材4の厚さを小さくでき、接合部材の素材4aのロスを少なくすることができる。その結果、最終的にレンズ保持具1とレンズ5とを適切に保持することが可能になる。もちろん、円盤状の保持部材3を用い、光学面の全面に倣った形状を「所定の形状」としても構わないし、接合力の観点から考えるとその方が好ましい場合もある。
上記の構成を基にレンズ保持具1を形成する際、レンズ5に良く用いられるプリズム量を数種類に分類(例えば小プリズム量(図3(a))、中プリズム量(図3(b))、大プリズム量(図3(c))と分類)し、この複数の分類が有するプリズム量を反映した保持部材3の表面形状を「所定の形状」として、保持部材3に初めから記憶させておいても良い。
また、同様に、レンズ5に良く用いられるカーブ値を数種類に分類(例えば小曲率、中曲率、大曲率と分類)し、この複数の分類について各々それらの曲率に近い曲面形状を「所定の形状」として保持部材3に初めから記憶させておいても良い。
上記の構成を採用することにより、どのレンズ5を保持する際にも、保持部材3の変形量を少とすることができる。そうなると、レンズ5の押し当て工程の簡素化にもつながり、レンズ製造工程全体に要する時間を短くすることができる。
また別の具体例を挙げると、レンズ5が押し当てられる保持部材3の部分の「所定の形状」は球面レンズ5が有する形状(例えば所定の球状+トーリック面形状)にしておくことも挙げられる。こうすることにより、基本的な球面レンズ形状に対し、使う人の個々のレンズ5において球面レンズ形状から外れた成分(例えば非球面形状)のみをレンズ保持具1に反映させるような変形を保持部材3に加えることが可能となる。
上記の構成により、デブロッキングに関する諸問題を解決するのみならず、ブロッキングの際の諸問題をも解決することが可能となる。
以下、デブロッキング(レンズの脱離方法)のメカニズムを中心として、レンズの脱離方法について詳述する。
<2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)>
本実施形態におけるレンズ5の保持方法の概要を先に言うと、本実施形態は、形状記憶性を有する保持部材3を、レンズ5に対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、レンズ保持具1に保持されたレンズ5を当該レンズ保持具1から脱離する脱離工程を有する。
以下、レンズ5を脱離させる前の段階まで(即ち、A)接合部材の素材(UV硬化樹脂)の塗布工程〜E)保持工程)については、図4を用い、ブロッキングのメカニズムを中心に詳述する。また、本実施形態の特徴のうちの一つであるF)デブロッキング〜G)保持部材の形状復元工程については、図5を用い、デブロッキングのメカニズムを中心に詳述する。また、上記以外の工程についても説明する。なお図4は、本実施形態におけるレンズ5の保持方法を工程順に示す断面概略図である。
なお、特記が無い工程については、公知の技術を用いても構わない。
A)接合部材の素材(UV硬化樹脂)の塗布工程
まず、図4(a)に示すように、保持部材3の上に接合部材の素材4a(以降、「UV硬化樹脂」とも言う。)を塗布する。
この時の保持部材3の形状は、後のC)保持部材変形工程でレンズ5の光学面を反映することができるような形状であれば良い。もちろん、この後の工程をスムーズに行うために、上記の所定の形状を有している(即ち形状記憶させた状態の)方が好ましい。また、塑性については失っていても構わない。むしろ、UV硬化樹脂の塗布の際の保持部材3の無用な変形を避けるため、塑性を失っている方が好ましい場合もある。なお、UV硬化樹脂の塗布方法は、公知のものを使えばよい。
B)塑性発現工程(加温工程)
保持部材3の上にUV硬化樹脂を塗布した後、保持部材3を加温する。その際、後の接合工程に支障がなければ、UV硬化樹脂ごと加温しても構わない。こうすることにより、保持部材3に塑性を発現させる。
C)保持部材変形工程
塑性が発現した保持部材3、及びその上に塗布されたUV硬化樹脂に対し、図4(b)に示すように、レンズ5を押し当てる。そして、レンズ5の形状に合わせて保持部材3を変形させる。その際、UV硬化樹脂は、液状のまま、保持部材3とレンズ5との間に存在している。なお、このレンズ5は、UV遮蔽機能を有していても良い。その場合は、以下の接合工程(UV照射工程)において、保持部材3側からUVを照射することになる。
D)接合工程(UV照射工程)
次に、UV硬化樹脂に対してUVを照射して、保持部材3に設けられたUV硬化樹脂を硬化させ、上記保持部材3と上記レンズ5とを接合する。その際、眼鏡用のプラスチックレンズがUV遮蔽機能を有する場合、上記保持部材3側からUVを照射してUV硬化樹脂を硬化させる。その上で、上記保持部材3と上記レンズ5とを接合する。眼鏡用のプラスチックレンズにはUV遮蔽機能が備わっているのが通常である。仮に眼鏡用のプラスチックレンズ側からUVを照射すると、レンズ5によりUVが遮蔽されてしまい、UV硬化樹脂を硬化させることができなくなってしまう。そのため、図4(c)に示すように、保持部材3側からUVを照射することにより、UV硬化樹脂にUVを届かせ、UV硬化樹脂を硬化させる。
E)保持工程
その後、保持部材3の変形を抑制してレンズ5の保持を確実にすべく、保持部材3の塑性を失わせるべく、保持部材3を冷却する。その際、本実施形態においては、作業を容易にすべく、レンズ5と接合部材4も共に冷却されても構わない。こうすることにより、保持部材3の塑性が失われ、レンズ5の光学面の形状を反映したまま保持部材3の形状が固定される。その上、保持部材3とレンズ5とが接合部材4(UV硬化樹脂)により接合された状態となっている。結局、この状態を維持することにより、レンズ保持具1によるレンズ5の保持工程が行われることになる。
なお、この保持工程の間に、上記のCG加工や研磨等を行うことになる。
F)デブロッキング
一連の加工が終了した後、レンズ保持具1からレンズ5を取り外すことになる。本実施形態における保持部材3は、ブロッキングに関する塑性の発現及び喪失に加え、所定の条件だと上記レンズ5の光学面に合わせた形状を維持する一方、別の所定の条件だと上記レンズ5に対する保持力を弱める形状へと自己変形するという性質を有している。つまり、レンズ5をレンズ保持具1から脱離する際においては、上記保持部材3は、上記レンズ5に対する保持力を弱める形状へと自己変形する。この構成を有することにより、本実施形態におけるレンズ保持具1は、デブロッキングの際にも上述の特別な効果を発揮する。
以下、レンズ5のデブロッキング(脱離方法)について、図5を用い、デブロッキングのメカニズムを中心に詳述する。なお図5は、本実施形態におけるレンズ5の脱離方法を工程順に示す断面概略図である。
まず、概要についてのベルト、上記保持工程後、上記保持部材3を、上記レンズ5に対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、上記レンズ保持具1に保持された上記レンズ5を当該レンズ保持具1から脱離する脱離工程(デブロッキング)が行われる。
つまり、図5(a)のように保持工程が行われている状態から、図5(b)のようにレンズ保持具1における保持部材3が形状記憶性を有することを利用し、レンズ5に対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形(即ち、所定の形状に復元)させる。
G)保持部材の形状復元工程
更に、本実施形態のレンズ保持具1は、ブロッキングの際に特に問題となっていた「リサイクル性」についても解決することが可能となる。以下、リサイクル性の向上に寄与する、保持部材3の形状復元工程の重要性について詳述する。
従来、特許文献4のように、処方に応じたプリズムリングを多数用意する代わりに、各人の処方に応じてレンズ5を製造する場合、その都度、熱可塑性樹脂の使い捨てを行わなければならない。また、特許文献1〜3におけるブロッキングリング(プリズムリング)についても、レンズ5を使う人の個々の処方に合わせてプリズムリングを作製しなければならない。そのため、廃棄物の増加につながり、その結果、費用が嵩むことは当然として、リサイクルが推奨される昨今の状況にもかかわらず、環境に対する配慮が乏しくなっていた。
しかしながら本実施形態における保持部材3には形状記憶性を有する物質(樹脂塑性物)を用いている。そのため、デブロッキング後において、形状記憶性を発揮する所定の条件(例えば温度)の環境下に保持部材3を置くことにより、ブロッキング前の形状に復元する。その前後において、図5(c)に示すように、必要に応じて接合部材4を除去する。具体的手法としては、公知のものでも構わない。例えば接合部材4としてUV硬化樹脂を用いている場合、UV硬化樹脂用の溶解剤を用いても構わない。その後、次のレンズ5について保持工程を行うべく、復元された形状を有する保持部材3に対し、A)接合部材の素材(UV硬化樹脂)の塗布工程を再び行う。そして、別のレンズ5に対し、B)塑性発現工程(加温工程)やC)保持部材変形工程等を行っていく。
なお、本工程であるG)保持部材の形状復元工程は、F)デブロッキングを兼ねて行っても良いし、別の工程として行っても構わない。同様に、本工程であるG)保持部材の形状復元工程は、後述の[実施の形態2]のように保持部材3の変形後に接合部材の素材4aを設置する場合にはB)塑性発現工程(加温工程)を兼ねて行っても良いし、F)デブロッキングを更に兼ねて行っても良い。その場合、デブロッキングの際に保持部材3が自己変形することになる「所定の形状」は、形状記憶性を有する樹脂塑性物において、予め記憶された形状を指すことになる。もちろん、これらの工程を別の工程として行っても構わない。
こうすることにより、特許文献1〜4のように、プリズムリングなりブロック材なりを使い捨てなくとも済む。つまり、本実施形態におけるレンズ保持具1のうち、少なくとも保持部材3は、レンズ5の保持工程を行った後も、全く別のレンズ5に対して、リサイクル(再利用)を行うことが可能となる。先にも述べたように、通常、レンズ5は使う人の個々の処方により、光学面の形状が異なる。それにもかかわらず、上記の実施形態のレンズ保持具1ならば、多種多様なレンズ5に対する汎用性を有し、なおかつリサイクル性も向上させるという効果を奏する。
<3.レンズの製造方法>
以下、本実施形態におけるレンズ5の製造方法について説明する。なお、冒頭でも述べたように、本実施形態においては眼鏡用のプラスチックレンズを用いた場合について説明する。なお、上記の内容と重複する部分については、説明の便宜上、極力省略する。
なお、特記が無い工程については、公知の技術を用いても構わない。
A)レンズの選定
レンズ5としてはどのような形状のレンズ5を用いても構わない。本実施形態においては、レンズ保持具1側にレンズ5の凸の部分が配置される例について述べる。そして、このレンズ5の凸の部分は、既に光学面が形成されたものである一方、それに対向する面は未加工状態のレンズ5(セミフィニッシュレンズ)を用いた例について述べる。
B)ブロッキング
上記の<2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)>で述べた手法にて、レンズ保持具1にレンズ5をブロッキングする。そして、レンズ保持具1にレンズ5を保持する。詳細については上述の通りなので、記載を省略する。
C)CG加工
ブロッキングを行った後、レンズ保持具1ごとレンズ5をカーブジェネレータに取付け、保持されたレンズ5の未加工面を所定の形状に切削する切削工程を行う。その際、上記のSATISLOH社製のレイアウトブロッカーと呼ばれる装置によってレンズ5付きレンズ保持具1を取り付けても良い。また、このレンズ5に対する切削加工は、レンズ保持具1ごと行っても構わない。
このようにしてレンズ5は、3次元NC制御を行うカーブジェネレータに上記レンズ保持具1を介して取付けられ、未加工面を所定の面形状に切削加工される。こうして、セミフィニッシュレンズであるレンズ5に対してCG加工を施し、研磨前のレンズ5を得る。
なお、最近のCG加工においては、高速で高精度のNC(数値)制御のCG加工が可能になっていることから、所定の面形状に切削する切削工程の後の、ラッピング加工に似た砂掛け工程を省略しても良い。もちろん、この砂掛け工程を行った後、以下の研磨を行っても良い。
D)研磨
CG加工後、レンズ5を、レンズ保持具1を介して研磨装置に取付け、切削された面を研磨することにより行う。本工程により、CG加工によりプラスチックレンズの光学面に形成された加工痕の段差等を無くす。なお、本工程を、後述の仕上げ研磨とともに、同一の研磨装置にてまとめて行っても良い。また、上記のCG加工を、CG加工機能を備えた研磨装置にて行っても良い。
上記の粗研磨を行った後、レンズ5が鏡面状態になるまで研磨(即ち仕上げ研磨)を行う。なお、粗研磨と仕上げ研磨とを1工程でまとめて行っても良い。
E)デブロッキング
上記の<2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)>で述べた手法にて、レンズ保持具1にレンズ5をデブロッキングする。つまり、レンズ保持具1からレンズ5を脱離させる。詳細については上述の通りなので、記載を省略する。
F)その他(カラー染色・検査・超音波洗浄・ハードコート加工・マルチコート加工等)
仕上げ研磨終了後、必要に応じて、カラー染色・検査・超音波洗浄・ハードコート加工・マルチコート加工等を、プラスチックレンズに施す。こうして、最終的な、眼鏡用のプラスチックレンズの完成品を製造する。
<4.実施の形態による効果>
本実施形態の効果に関し、再掲する部分もあるが、以下、詳述する。
本実施形態によれば、レンズ保持具1がレンズ5を保持している間はその形状を維持しつつも、デブロッキングの際にレンズ保持具1を自己変形させることによりレンズ保持具1からレンズ5を容易に脱離させることが可能となる。そうなると、ブロック材に対する加熱や薬剤によるブロック材の溶解という方法は、最終製品となるレンズ5に変形や変質等、何らかの望ましくない影響を与えるおそれを抑制することが可能となる。特に、当該レンズ5がプラスチックレンズの場合、影響が顕著になるところ、そのおそれを効果的に抑制できる。また、特許文献4のように、熱可塑性樹脂からなるブロック材が加熱されることによりプラスチックレンズをデブロッキングしやすくなるとしても、同じく樹脂を含有するプラスチックレンズも変形や変質するおそれを抑制することが可能となる。そのため、プラスチックレンズが変形や変質しないようにするために、ブロック材の融点やガラス転移温度とプラスチックレンズの融点やガラス転移温度との関係に配慮する必要がなくなる。そうなると自ずと、使用可能なプラスチックレンズやブロック材の素材を限定する必要がなくなる。更に、デブロッキングにおいて精密な温度制御は不要となり、ひいてはレンズ製造工程全体に要する時間を短縮化することが可能となり、生産効率を向上させることにもつながる。
更に、本実施形態によれば、デブロッキングした後のレンズ保持具1をリサイクル(再利用)することも可能となる。そうなるとレンズ5以外の、レンズ保持具1のための原料を別途、用意する必要が無くなる。そうなると、廃棄物の減少にもつながる。その結果、費用を削減できる上、リサイクルが推奨される昨今の状況に則し、環境に対する配慮を十分に行うことができる。
また、レンズ保持具1とレンズ5との間に接着シートを設ける方法と比べた場合においても、本実施形態の手法を適用することにより、接着シートのように使い捨てする必要がなくなり、廃棄物の減少にもつながる。その結果、費用を削減できる上、リサイクルが推奨される昨今の状況に則し、環境に対する配慮を十分に行うことができる。
それに加え、接着シートを用いてブロッキングを行った場合、デブロッキングを行う際にはレンズ5ごと加熱して接着シートからレンズ5を脱離させずとも良く、上述のレンズ5の変形や変質をもたらさなくとも済む。
また、真空チャックを行う方法や、レンズ保持具1とレンズ5とを機械的にデブロッキングする方法と比べた場合においても、上記の保持部材3を用いるのならば、初期形状の保持部材3において真空チャックが可能な構造を形成しておくことも可能となるし、機械的にデブロッキングするのではなく保持部材1が自己変形することによりデブロッキングが容易化されるため、デブロッキングの際にレンズ5に予期しない傷を与えるおそれを軽減できる。
また、従来のレンズ保持具1においては、レンズ5の光学面やヤゲンの形状、玉型形状、コバ厚等を設計通りに加工すべく、レンズ5とレンズ保持具1との間が強固にブロッキングされている状況にもかかわらず、本実施形態のレンズ保持具1ならばデブロッキングの難易度を低下させることも可能となる。
以上の通り、本実施形態によれば、レンズ保持具1からレンズ5の脱離を簡素に行いつつも、脱離の際にレンズ5に与える影響を抑制することが可能となる。
[実施の形態2]
実施の形態1においては、保持部材3上に接合部材の素材4aを設けた後、レンズ5を押し当てることにより、接合部材の素材4aもろとも保持部材3を変形させた場合について述べた。一方、本実施形態においては、先に保持部材3をレンズ5の光学面に合わせて変形させておき、その後、接合部材の素材4aを塗布する場合について述べる。
具体的に言うと、上記の実施形態におけるB)塑性発現工程(加温工程)及びC)保持部材変形工程を、A)接合部材の素材(UV硬化樹脂)の塗布工程に先んじて行っておく。つまり、図6(a)に示すように、保持部材3に対し、B)塑性発現工程(加温工程)を予め行っておく。そして、図6(b)に示すように、塑性を有する保持部材3(但し、接合部材の素材4aは未設置)に対し、レンズ5の光学面を押し当てる。こうして、保持部材3に光学面の形状を転写する。その後、図6(c)に示すように、レンズ5の光学面に合わせた形状を有する保持部材3に対し、接合部材の素材4aを設置する。具体的に言うと、レンズ5の光学面に合わせた形状を有する保持部材3に対し、UV硬化樹脂を塗布する。こうすることにより、塗布対象となる保持部材3の形状に合わせた量のみ、UV硬化樹脂を塗布すれば良くなる。そうすると、UV硬化樹脂の使用量を減少させることができ、コストダウンに繋がる。それに加え、保持部材3の形状に合わせてUV硬化樹脂を薄く塗布することも可能となるため、最終的に硬化された後の接合部材4自体の厚さを薄くすることが可能となる。そうなると、保持部材3とレンズ5との間の接合力を適切に確保することが可能となる。
その後、図6(d)に示すように、今度は保持部材3に接合部材の素材4aが設けられたものに対し、再びレンズ5を押し当てる。その後、図6(e)に示すように、レンズ保持具1側からUV照射を行い、UV硬化樹脂を硬化させ、接合部材4を形成する。なお、図6(d)の際には、保持部材3は塑性を有していても構わないし、逆に塑性を失っていても構わない。ただ、保持部材3においては既に正確な光学面の形状が反映されていることから、再度のレンズ5の押し当てによる保持部材3の意図しない変形を抑制するためには、保持部材3に接合部材の素材4aが設けられたものに対し、再びレンズ5を押し当てる際には、塑性を失っている状態であるのが好ましい。
[実施の形態3]
本実施形態においては、保持部材3の具体的な化合物の組成及び製造方法について述べる。
上記の実施形態の保持部材3に使用されるのは、一例としては、結晶性ウレタンポリマーである。この結晶性ウレタンポリマーは、秩序を持った分子配列をなして、明瞭な結晶構造が見られる物質である。そして、融点を有する結晶性ポリエステルポリオールと多官能イソシアネートをウレタン結合で合成して得られる。形状記憶性を有する樹脂化合物(以降、単に「形状記憶樹脂」とも言う。)の形状が復元する温度を考慮すると、この結晶性ポリエステルポリオールの融点は20℃以上好ましくは40℃以上であることが望ましい。この結晶性ポリエステルポリオールの融点が20℃以上ならば、室温であっても所定の形状に復元することが可能となる。更に、40℃以上ならば、加工中の温度であったとしても所定の形状に復元することが可能となる。
結晶性ポリエステルポリオールとは一種類または二種類以上の脂肪族ポリカルボン酸と、一種類または二種類以上の脂肪族ポリオールの反応生成物である。
上記の脂肪族ポリカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタミ
ン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ウンデカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸などが挙げられる。
上記の脂肪族ジオールとは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1、12−ドデカンジオール、1、14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどが挙げられる。
上記の実施形態において多官能イソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアナネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添MDI、水添XDIなどが挙げられる。
結晶性ポリエステルポリオールのOH基と多官能イソシアネートのNCO基の当量比が、1:1.1以上(即ち多官能イソシアネートのNCO基の比率を1.1以上)とするのが好ましい。また、結晶性ポリエステルポリオールのOH基と多官能イソシアネートのNCO基の当量比を1:2以上(即ち多官能イソシアネートのNCO基の比率を2以上)にしたウレタンプレポリマーを製作しこれを適当な硬化剤によって反応せしめてもよい。
結晶性ウレタンポリマーの合成反応は、結晶性ポリエステルポリオールを所定量反応容器に入れ、均一な温度分布で制御し得る加熱器にて60〜200℃、好ましくは100℃〜150℃に加熱しながら攪拌し、真空中あるいは乾燥窒素を吹き込み、脱水を十分に行う。次に、所定量の多官能イソシアネート化合物を添加し、反応容器内にドライ窒素を吹き込むか、反応容器内を真空にして、水分が入らないようにして攪拌を行う。
攪拌後、室温、好ましくは40〜120℃の温度で反応・硬化させ、保持部材3を所定の形状に成形する。なお、この保持部材3は、硬化させた際の形状(所定の形状)を記憶する。
形状記憶固定治具は相転移温度以上に加温することにより記憶した形状に戻る。この現象は、何度でも繰り返し可能である。
この相転移点とは、この形状記憶樹脂を変形させたりした後、元の形に復元する温度のことである。この形状記憶樹脂はこの形状樹脂は相手転移点以上で変形応力を加えたまま固化、あるいは相転移点以下で変形させてもそのまま形状を維持したままであるが、原料に用いた結晶性ポリエステルポリオールの融点以上即ち相転移点以上の温度になると結晶性ポリエステルの部分が軟化して元の形状に復元すると考えられる。
一般論ではあるが、ゴムや熱可塑性プラスチックは、相転移温度というものを有している。即ち、ある温度以上で柔らかなゴム状弾性を示すが、その温度以下では高分子鎖の動きが凍結固化し、硬いプラスチック状を示す。その温度を相転移点(ガラス転移点)という。一般に常温である力を加えた場合、柔軟でよく変形するが、力を取り去ると元の形状にもどる弾性体をゴムという。一方、常温では力を加えても非常に変形しにくく、無理に変形しようとするが出来ないことはないが、その変形率は一般に小さく、大きく変形使用とすると折れたり割れたりしてしまう硬いものをプラスチックと呼んでいる。プラスチックは変形できた場合でも、元の形状に復元しにくい。
このような現象は、ゴムと呼ばれるものが常温よりもはるかに低い相転移温度を有していること、また、プラスチックと呼ばれているものが常温よりも高い相転移温度を有していることに起因している。
一般に、形状記憶樹脂とは相転移温度以下の温度では樹脂、相転移温度以上の温度ではゴムに変形するような物質である。即ち、形状記憶樹脂の相転移温度は常温よりも高い。原料に用いた結晶性ポリエステルポリオールの融点が多官能イソシアネートと反応させた結晶性ウレタンポリマーを硬化させた樹脂の相転移点になり、この温度で変形させた形状記憶樹脂が元に戻ることを見いだしたことにより、上記の実施形態が想到された。即ち、本実施形態における保持部材3は、硬化した樹脂が相転移点以下だと硬化時の形を保持しようとする仕組みを有している。更に、それを相転移温度以上にあたためた場合、硬化させた原型に、戻ろうとする性質を有している。
上記の実施形態の眼鏡用のプラスチックレンズの製造に使用される保持部材3は、相転移点以上の温度で眼鏡レンズ5に対して自由に変形するので、図2(a)に示すように、プリズムを有さないレンズ5に対して保持を行っているレンズ5付きレンズ保持具1はもちろんのこと、図2(b)のように水平からの傾斜角θ(プリズム量)を設定し、相転移点以下の温度にすればこの傾斜角θが維持される。
[実施の形態4]
以下、上記の形態以外の変形例について述べる。
上記の実施の形態においては、レンズ5の凸の部分の形状に保持部材3を合わせる場合について述べた。その一方、図7(a)に示すように、レンズ5の凹の部分の形状に保持部材3を合わせても、もちろん構わない。
また、上記の実施の形態では、ヤトイ2と保持部材3とが別体の場合について述べた。その一方、図7(b)に示すように、ヤトイ2と保持部材3とが一体となったレンズ保持具1を用いても構わない。その上で、特許文献2のようにヤトイ2を複数の部材に分けて形成しても構わないし、特許文献3のようにヤトイ2(レンズ保持具1)に対してレンズ加工装置に装着可能なようにアダプタを別途設けても構わない。また、図7(c)に示すようにレンズ5の外縁部を覆うようにレンズ保持具1をレンズ5に装着しても良い。こうすることにより、レンズ5の加工の際、レンズ保持具1にレンズ5を適切に保護することができる上、レンズ5の外縁部に加工ツールによる外力が加わり過ぎることを抑制でき、ひいてはレンズ5やレンズ保持具1の破損のおそれを抑制することができる。
上記の実施形態においては、自力にて維持する「所定の形状」が形状記憶された形状である場合について述べた。その一方、一度レンズ5のE)保持工程を行った後、G)保持部材3の形状復元工程を経て、再びC)保持部材変形工程を行う際の保持部材3の形状は、完全に元の形に復元していない状態の形状であっても塑性を有していれば良い。
同様に、F)デブロッキングにおいて保持力を弱める形状は、形状記憶された「所定の形状」へと完全に復元していない形状であっても良い。
また、形状記憶された形状が「所定の形状」である場合、<2.レンズの脱離方法>を1サイクル行った後に2サイクル目を行う際、「所定の形状」が更新されて記憶されていても構わない。つまり、<2.レンズの脱離方法>のサイクルを終了するたびに、記憶されている「所定の形状」が更新され続けても構わない。
また、上記の実施形態においては、形状記憶性を有する物質にて保持部材が構成されているものについて述べた。その一方、レンズ保持具1を使い捨てと割り切るのならば、F)デブロッキングの際に、保持力を弱める形状へと例え一度でも自己変形できさえすればよい。そうすればレンズ保持具からレンズの脱離を簡素に行いつつも、脱離の際にレンズに与える影響を抑制することは少なくとも可能となる。その結果、形状記憶性が失われ、2サイクル目において再度F)デブロッキングが行われた後について言うと、形状記憶性が再び復活しなくとも構わない。もちろん、上述のリサイクル性や廃棄物の発生量の抑制という観点から見ると、保持部材3が備える形状記憶性は複数の上記サイクルに耐えうる物質を用いることが好ましいことは言うまでもない。
上記の実施形態においては接合部材4を設けた場合について述べたが、保持部材3の塑性の発現・喪失にてレンズ5の保持が可能ならば、接合部材4を設けなくとも構わない。また、接合部材4に代わる部材を用いても構わない。
また、上記の実施形態においては「所定の形状」が、予め記憶された形状である場合について主に述べた。詳しく言うと、<2.レンズの脱離方法(デブロッキングのメカニズム)>のB)塑性発現工程(加温工程)において保持部材3が自力にて維持する形状αと、G)保持部材の形状復元工程において復元される保持部材3の形状βが同じ場合について主に述べた。その一方、この形状αと形状βが異なる形状であっても良い。一例を挙げれば、B)塑性発現工程(加温工程)においては形状αだった保持部材3が、C)保持部材変形工程〜F)デブロッキングを経た後に、形状αとは異なる形状βへと自己変形しても構わない。更に、この形状βを有する保持部材3に対して、2サイクル目のレンズの保持を行っても構わない。
また、上記の実施形態は「レンズ保持具」「レンズの脱離方法」「レンズの製造方法」に関するものであるが、もちろん、上記のレンズ保持具1を採用した「レンズの製造装置」にも本発明の思想は適用しうる。それに加え、「レンズ付きレンズ保持具(特にプラスチックレンズに関するもの)」についても本発明の思想を適用しても良い。レンズ提供者は、「レンズ付きレンズ保持具」を市場へと投入することも有効であると考えられる。こうすることにより、眼鏡店等に設置されたレンズ加工装置に「レンズ付きレンズ保持具」を装着するだけで、レンズ5の位置ずれを効果的に抑制しつつ、設計通りのレンズ5を作製することが可能となる。しかも、デブロッキングの際に、上記の実施の形態に記載のように、保持力を弱める形状記憶性を保持部材3が有しているのなら、デブロッキングすらも容易、簡素且つ確実に行うことができる。
なお、本発明の思想は上記の実施形態及び変形例に限られず、適宜、設計上の変更を加えたものや上記に列挙した物質(レンズ保持具1、レンズ5付きレンズ保持具1)以外についても適用可能であることは言うまでもない。特に、レンズ5のように精密な光学面を有するものについての技術に対しては本発明の思想が特に適用可能である。
以下、その他の好ましい形態を付記する。
[付記1](製造装置)
レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具を有するレンズの製造装置であって、
前記保持部材は形状記憶性を有し、所定の条件だと前記レンズの光学面に合わせた形状を維持する一方、別の所定の条件だと前記レンズに対する保持力を弱める形状へと自己変形することを特徴とするレンズの製造装置。
[付記2]
前記保持部材と前記レンズとを接合する接合部材を更に有することを特徴とするレンズ保持具。
[付記3]
前記接合部材は硬化後のUV硬化樹脂であることを特徴とするレンズ保持具。
[付記4]
前記所定の条件は温度に関する条件であることを特徴とするレンズ保持具。
[付記5]
前記レンズはプラスチックレンズであることを特徴とするレンズ保持具。
[付記6]
前記レンズの光学面が凸の場合だと前記所定の形状は凸又は平坦であり、前記レンズの光学面が凹の場合だと前記所定の形状は凹又は平坦であることを特徴とするレンズ保持具。
[付記7](脱離方法)
レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具を用いたレンズの脱離方法であって、
形状記憶性を有する前記保持部材を、前記レンズに対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、前記レンズ保持具に保持された前記レンズを当該レンズ保持具から脱離する脱離工程を有することを特徴とするレンズの脱離方法。
[付記8](ブロッキング)
前記保持部材は、所定の条件だと、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、前記レンズの光学面の形状に合わせて変形自在である一方、別の所定の条件だと前記塑性が失われることを特徴とするレンズ保持具。
[付記9](ブロッキング)
レンズの形状に合わせて保持部材を変形させる保持部材変形工程と、
前記保持部材変形工程後、前記レンズを前記レンズ保持具により保持する保持工程と、
を更に有し、
前記保持部材は、前記保持部材変形工程においては、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、レンズの光学面の形状に合わせて変形自在である一方、前記保持工程においては、前記塑性が失われることを特徴とすることを特徴とするレンズの製造方法。
[付記10](ブロッキング&デブロッキングのレンズの製造方法)
レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具を用いたレンズの製造方法であって、
レンズの形状に合わせて、形状記憶性を有する保持部材を変形させる保持部材変形工程と、
前記保持部材変形工程後、前記レンズを前記レンズ保持具により保持する保持工程と、
前記保持工程後、前記保持部材を、前記レンズに対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、前記レンズ保持具に保持された前記レンズを当該レンズ保持具から脱離する脱離工程と、
を有し、
前記保持部材は、前記保持部材変形工程においては、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、レンズの光学面の形状に合わせて変形自在である一方、前記保持工程においては、前記塑性が失われることを特徴とすることを特徴とするレンズの製造方法。
[付記11](ブロッキング&デブロッキングのプラスチックレンズの製造方法(UV))
プラスチックレンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具を用いたプラスチックレンズの製造方法であって、
UV遮蔽機能を有するプラスチックレンズの形状に合わせて、形状記憶性を有する保持部材を変形させる保持部材変形工程と、
前記保持部材に設けられたUV硬化樹脂を、前記保持部材変形工程後、前記保持部材側からUVを照射して硬化させ、前記保持部材と前記プラスチックレンズとを接合する接合工程と、
前記接合工程後、前記レンズを前記レンズ保持具により保持する保持工程と、
前記保持工程後、前記保持部材を、前記プラスチックレンズに対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、前記レンズ保持具に保持された前記プラスチックレンズを当該レンズ保持具から脱離する脱離工程と、
を有し、
前記保持部材は、前記保持部材変形工程においては、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、プラスチックレンズの光学面の形状に合わせて変形自在である一方、前記保持工程においては、前記塑性が失われることを特徴とすることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
1…レンズ保持具、2…ヤトイ、3…保持部材、4…接合部材、4a…接合部材の素材、5…レンズ、6…止めねじ、7…ブロッキングリング(プリズムリング)、8…アロイ、9…保護フィルム、10…取付部

Claims (5)

  1. レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具であって、
    前記保持部材は形状記憶性を有し、所定の条件だと前記レンズの光学面に合わせた形状を維持する一方、別の所定の条件だと前記レンズに対する保持力を弱める形状へと自己変形することを特徴とするレンズ保持具。
  2. 前記保持部材は形状記憶性を有する樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ保持具。
  3. 前記レンズの光学面が凸の場合だと、前記保持部材において前記レンズの光学面の形状に対応する部分のうちの少なくとも一部の形状が凸又は平坦であり、前記レンズの光学面が凹の場合だと、前記保持部材において前記レンズの光学面の形状に対応する部分のうちの少なくとも一部の形状が凹又は平坦であることを特徴とする請求項2に記載のレンズ保持具。
  4. レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具であって、
    前記保持部材は形状記憶性を有し、
    前記レンズ保持具の形状を前記レンズの光学面の形状に合わせて変形させる際においては、前記保持部材は、自力にて所定の形状を維持しつつも塑性を有し、
    前記レンズを前記レンズ保持具により保持する間においては、前記保持部材は前記塑性を失い、前記レンズの光学面に合わせた形状を維持し、
    前記レンズを前記レンズ保持具から脱離する際においては、前記保持部材は、前記レンズに対する保持力を弱める形状へと自己変形することを特徴とするレンズ保持具。
  5. レンズを保持するのに供する保持部材を備えたレンズ保持具を用いたレンズの製造方法であって、
    形状記憶性を有する前記保持部材を、前記レンズに対する保持力を弱める所定の形状へと自己変形させることにより、前記レンズ保持具に保持された前記レンズを当該レンズ保持具から脱離する脱離工程を有することを特徴とするレンズの製造方法。
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