JP2013176975A - 樹脂成形品とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂成形品のパーツ接合箇所をレーザー光により溶着するに当たり、未溶着部の残存回避と溶着の実効性の向上とを図る。
【解決手段】樹脂ライナー10を構成するエンド側ライナーパーツ10eとバルブ側ライナーパーツ10vの両ライナーパーツは、パーツ端部のテーパ状接合面15e、15vで接合し、レーザー光の照射側に樹脂ライナー10の外郭線10sを超えて隆起したストッパー突部14e、14vを備える。両ライナーパーツの接合に当たり、エンド側ライナーパーツ10eのストッパー突部14eをバルブ側ライナーパーツ10vの嵌合凹所16vに嵌合させる。その上で、ストッパー突部14eの凸部先端とストッパー突部14vにおける嵌合凹所16vの凹部底についても、これらを樹脂ライナー10の外郭線10sを超える位置とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、第1樹脂成形パーツと第2樹脂成形パーツとを接合した樹脂成形品とその製造方法に関する。
近年、軽量化や低コスト化等の観点より、自動車部品等、各種分野の部品を樹脂化して樹脂成形品とすることが頻繁に行われている。樹脂成形品とするに当たっては、完成品形状のまま型成型する手法と、予め複数パーツに分割しておいて各パーツを接合し、その接合箇所をレーザー光にて溶着する手法がある。後者のレーザー溶着手法は、中空形状品の生産効率向上やコスト低下に有益であることから、例えば、内燃機関における吸排気系の基幹部品であるインテークマニホールドの製造に広く普及している(例えば、特許文献1)。また、レーザー溶着手法は、燃料電池用の水素ガスを高圧で貯留する高圧ガスタンクの樹脂ライナーの製造にも適用されている。
特開2001−105500号公報
上記の特許文献では、接合し合うパーツの接合箇所に、凹状嵌合部と凸状嵌合部とを設けてこの両者を嵌合させ、その上で、レーザー溶着を図ることから、パーツ同士の接合強度を高めている。
ところで、インテークマニホールドのみならず、高圧ガスタンクの樹脂ライナーでは、分割パーツの接合箇所においても、高いガスリーク回避性が求められる。このため、パーツ同士の接合面の密着を確保した上で、その接合面にレーザー光を照射することが必要となる。
凹状嵌合部に凸状嵌合部を嵌合させた場合、凹状嵌合部の凹部壁面と凸状嵌合部の凸部壁面とは、嵌合によりその密着性を確保できるものの、凸状嵌合部の凸部先端と凹状嵌合部の凹部底との間には、隙間が残りやすい。そして、凸部先端と凹部底との間に隙間が残ったままだと、その隙間は、レーザー光の照射による樹脂の溶融が進まず未溶着となって、そのまま残存し得る。この未溶着の隙間部位は、レーザー溶着された溶着部位に挟まれることから、繰り返しの温度変化や圧力変化を受けることで、樹脂成形品の損傷部となり得る。このため、凸状嵌合部と凹状嵌合部とを、その凸部先端と凹部底との間に隙間が生じないように、精緻に加工する必要があった。そして、精緻に加工したとしても、レーザー光の照射に伴う熱の影響を受けて、レーザー溶着の際に凸部先端と凹部底との間に隙間が生じることも懸念される。こうしたことから、樹脂成形品のパーツ接合箇所をレーザー光により溶着するに当たり、未溶着部の残存回避と溶着の実効性の向上とを図ることが要請されるに到った。この他、樹脂成形品のレーザー溶着による接合箇所の簡便なガスシール性の確保や、コスト低下も要請されている。
上記した課題の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態として実施することができる。
(1)本発明の一形態によれば、樹脂成形品が提供される。この樹脂成形品は、照射を受けたレーザー光により溶融する性状の第1の樹脂による第1樹脂成形パーツとレーザー光を透過させる性状の第2の樹脂による第2樹脂成形パーツとを、該第2樹脂成形パーツをレーザー光の照射側にしてそれぞれのパーツ端部のテーパ状接合面で接合し、該テーパ状接合面において前記第1、第2の樹脂成形パーツをレーザー光の照射により溶着させた樹脂成形品であって、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとは、前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起した隆起部を前記パーツ端部に備え、前記第2樹脂成形パーツは、前記隆起部を前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凸状嵌合部とした上で、該凸状嵌合部の凸部先端が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凸状嵌合部を備え、前記第1樹脂成形パーツは、前記隆起部に前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凹状嵌合部を備え、該凹状嵌合部を前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部の嵌合が可能な凹形状とした上で、前記凹状嵌合部の凹部底が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凹状嵌合部を備える。
上記形態の樹脂成形品では、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとを前記パーツ端部に隆起部を備えたものとし、この隆起部を前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起したものとする。この第1、第2の樹脂成形パーツの接合は、両パーツをパーツ端部のテーパ状接合面で接合すると共に、前記第1樹脂成形パーツがその前記隆起部に備える凹状嵌合部に、前記第2樹脂成形パーツが有する前記隆起部である凸状嵌合部を嵌合させる。凹状嵌合部と凸状嵌合部は、共に、前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含むことから、上記のテーパ状接合面同士の密着性、および、凹状嵌合部の凹部壁面と凸状嵌合部の凸部壁面との密着性は確保される。このため、第2樹脂成形パーツの側からのレーザー光の照射に伴う溶着の実効性は、高まる。
その上で、上記形態の樹脂成形品では、凸状嵌合部の凸部先端を前記樹脂成形品外郭を超える位置とすると共に、この凸状嵌合部が嵌合する凹状嵌合部の凹部底についても、これを前記樹脂成形品外郭を超える位置とする。仮に凸状嵌合部の凸部先端と凹状嵌合部の凹部底との間に未溶着の隙間部位が残存しても、この未溶着の隙間部位は、樹脂成形品外郭を超える位置であることから、樹脂成形品がその製品として占める部位には含まれない。このため、上記形態の樹脂成形品によれば、凸部先端と凹部底とが残らないように隆起部ごと樹脂成形品外郭に沿って除去できるので、パーツ接合箇所において、未溶着な部位を残存させないようにできる。この場合、隆起部の除去後には、既述したように密着性が確保されて高い実効性で溶着されたテーパ状接合面がパーツ端部に残ることから、パーツ接合箇所でのガスリークも高い実効性で回避できる。
(2)上記した形態の樹脂成形品において、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとは、それぞれの樹脂成形品パーツ外面と前記隆起部の外面とを、前記隆起部の外面の傾斜より緩い傾斜の斜面で繋ぐようにできる。こうすれば、凸部先端と凹部底とが残らないように隆起部ごと樹脂成形品外郭に沿って除去した際の隆起部除去範囲の両端において、傾斜の緩い斜面の一部が樹脂成形品パーツ外面に繋がって残ることになり、エッジの発生を抑制できる。
(3)上記したいずれかの形態の樹脂成形品において、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとが接合した前記パーツ端部に、前記樹脂成形品外郭に沿った切削加工痕跡を有するものとできる。こうすれば、切削加工痕跡により、凸部先端と凹部底とが残らないように隆起部ごと樹脂成形品外郭に沿って除去したことが判明する。
(4)上記した形態の樹脂成形品において、中空形状の樹脂ライナーを前記樹脂成形品とでき、この場合には、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとを、ライナーの軸方向に分割され、その分割箇所を接合箇所として接合することで前記中空形状をなす第1、第2のライナーパーツとする。この樹脂成形品としての中空形状の樹脂ライナーは、ライナーパーツの接合箇所において、未溶着な部位を残存させないようにできることから、ライナーとしての、延いては当該ライナーを繊維強化樹脂層で被覆した高圧ガスタンクとしての耐久性の向上をもたらすことができる。
(5)本発明の他の形態によれば、樹脂成形品の製造方法が提供される。この樹脂成形品の製造方法は、第1樹脂成形パーツと第2樹脂成形パーツとをレーザー光の照射により溶着させた樹脂成形品の製造方法であって、前記第1樹脂成形パーツを照射を受けたレーザー光により溶融する性状の第1の樹脂による樹脂成形品として準備すると共に、前記第2樹脂成形パーツをレーザー光を透過させる性状の第2の樹脂による樹脂成形品として準備する第1工程と、該準備した前記第1、第2の樹脂成形パーツを、パーツ端部のテーパ状接合面で接合し、その接合状態を維持したまま前記テーパ状接合面に前記第2樹脂成形パーツの側からレーザー光を照射する第2工程とを備える。そして、前記第1工程では、前記第2樹脂成形パーツを、前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起した隆起部を前記パーツ端部に有し、該隆起部を前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凸状嵌合部とした上で、該凸状嵌合部の凸部先端が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凸状嵌合部を備える前記樹脂成形品とし、前記第1樹脂成形パーツを、前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起した隆起部を前記パーツ端部に有し、該隆起部に前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凹状嵌合部を備え、該凹状嵌合部を前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部の嵌合が可能な凹形状とした上で、前記凹状嵌合部の凹部底が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凹状嵌合部を備える前記樹脂成形品とする。前記第2工程では、前記第1、第2の樹脂成形パーツを前記テーパ状接合面で接合するに当たり、前記第1樹脂成形パーツの前記凹状嵌合部に前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部を嵌合させる。
上記形態の樹脂成形品の製造方法では、接合溶着の対象となる第1、第2の樹脂成形パーツを樹脂成形品として準備するに当たり、前記パーツ端部に隆起部を備えたものとし、この隆起部を前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起したものとする。その上で、前記第2樹脂成形パーツの隆起部を前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凸状嵌合部とし、該凸状嵌合部の凸部先端が前記樹脂成形品外郭を超える位置とする。前記第1樹脂成形パーツについては、これを、隆起部に前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凹状嵌合部を備え、該凹状嵌合部を前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部の嵌合が可能な凹形状とした上で、前記凹状嵌合部の凹部底が前記樹脂成形品外郭を超える位置とする。
これら第1、第2の樹脂成形パーツは、両樹脂成形パーツを準備する第1工程に続く第2工程において、前記テーパ状接合面で接合し、前記第1樹脂成形パーツの前記凹状嵌合部に前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部を嵌合させる。凹状嵌合部と凸状嵌合部は、共に、前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含むことから、上記のテーパ状接合面同士の密着性、および、凹状嵌合部の凹部壁面と凸状嵌合部の凸部壁面との密着性は確保される。そして、この接合状態を維持したまま前記テーパ状接合面に前記第2樹脂成形パーツの側からレーザー光の照射を受ける。照射されたレーザー光は、まず第2樹脂成形パーツに達する。第2樹脂成形パーツは、レーザー光を透過させる性状の樹脂成形品であることから、レーザー光は、第2樹脂成形パーツを透過して、当該パーツに接合済みの第1樹脂成形パーツに達する。第1樹脂成形パーツは、照射を受けたレーザー光により溶融する性状の樹脂成形品であることから、テーパ状接合面において溶融し、その熱によって、第2樹脂成形パーツも溶融する。このため、第1、第2の樹脂成形パーツは、そのテーパ状接合面においてレーザー溶着する。
レーザー光の照射が凹状嵌合部と凸状嵌合部の嵌合箇所にも及べば、第1、第2の樹脂成形パーツは、凹状嵌合部の凹部壁面と凸状嵌合部の凸部壁面の接合箇所でもレーザー溶着する。ところが、仮に、凸状嵌合部の凸部先端と凹状嵌合部の凹部底との間に未溶着の隙間部位が残存しても、この未溶着の隙間部位は、樹脂成形品外郭を超える位置であることから、樹脂成形品がその製品として占める部位には含まれない。この結果、上記形態の樹脂成形品の製造方法によれば、凸部先端と凹部底とが残らないように隆起部ごと樹脂成形品外郭に沿って除去可能な樹脂成形品を容易に提供できる。そして、提供した樹脂成形品において、凸部先端と凹部底とが残らないように隆起部ごと樹脂成形品外郭に沿って除去することで、パーツ接合箇所に未溶着な部位を残存させない樹脂成形品となり、この樹脂成形品では、パーツ接合箇所でのガスリークを高い実効性で回避可能となる。
(6)上記形態の樹脂成形品の製造方法において、前記第2工程では、前記レーザー光の照射位置を、前記テーパ状接合面に連続した前記凸状嵌合部と反対側の前記テーパ状接合面の端部側から、前記テーパ状接合面に沿って前記凸状嵌合部に移動させつつ、レーザー光を照射するようにできる。こうすれば、次の利点がある。
第1、第2の樹脂成形パーツは、テーパ状接合面において、レーザー光の照射に先立つ第1工程で密着済みであるものの、第1樹脂成形パーツのテーパ状接合面の端部側は、レーザー溶着前にあっては、拘束を受けないいわゆるフリーの状態にある。このため、仮に上記のテーパ状接合面の端部側以外の箇所で最初のレーザー溶着がなされると、その際のレーザー溶着の際に生じる熱により、テーパ状接合面で接合済みの樹脂成形パーツに熱変形が起き、第1樹脂成形パーツのテーパ状接合面の端部側で隙間が生じ得る。しかしながら、上記の形態では、第2樹脂成形パーツの側からのレーザー光の照射を、まず、第1樹脂成形パーツのテーパ状接合面の端部側で行うので、最初に、このテーパ状接合面の端部側で、第1、第2の樹脂成形パーツをレーザー溶着する。この結果、第1樹脂成形パーツのテーパ状接合面の端部側では、隙間が生じ難くなってレーザー溶着の実効性が高まるので、パーツ接合箇所でのガスリークをより確実に回避可能となる。
(7)上記のいずれかの形態の樹脂成形品の製造方法において、前記第2工程に続いて、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとの前記パーツ端部に前記樹脂成形品外郭に沿った切削加工を実行し、前記凸状嵌合部の前記凸部先端と前記凹状嵌合部の前記凹部底とが残らないように、前記隆起部ごと切削するようにできる。こうすれば、パーツ接合箇所に未溶着な部位を残存させない樹脂成形品を容易に製造することができる。
(8)上記形態の樹脂成形品の製造方法において、前記切削加工を、前記パーツ端部が前記樹脂成形品外郭の側に撓んだ状態で実行するようにできる。こうすれば、隆起部を切削除去する際、隆起部に繋がる第1、第2の樹脂成形品パーツの撓み部位も切削除去されて、パーツ端部の撓みの解消により陥没する。この陥没の程度は、パーツ端部の撓み相当であり僅かなものとなる。この結果、隆起部の切削除去範囲は、その両端においてなめらかに第1、第2の樹脂成形パーツの外面に繋がり、その繋ぎ部におけるエッジの発生を抑制できる。
(9)上記形態の樹脂成形品の製造方法において、前記切削加工を受ける加工範囲を超える領域において、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとを、それぞれの樹脂成形品パーツ外面にストッパーを押し当てて保持し、該ストッパーの間において、前記パーツ端部を前記樹脂成形品外郭の側に撓ませるようにできる。こうすれば、ストッパーによる撓みを制限できるので、パーツ端部の撓み状況の再現性が高まる。この結果、隆起部の切削除去範囲での切削形状の均一化を図った上で、エッジの発生を抑制できる。また、仮に第1、第2の樹脂成形パーツが中空形状であって直径に差があっても、パーツ端部の撓み状況の再現性の向上により、切削形状の均一化とエッジの発生抑制が可能となる。
(10)上記のいずれかの形態の樹脂成形品の製造方法において、前記樹脂成形品としての中空形状の樹脂ライナーの製造方法とでき、この場合には、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとを、ライナーの軸方向に分割され、その分割箇所を接合箇所として接合することで前記中空形状をなす第1、第2のライナーパーツとする。こうすれば、ライナーパーツの接合箇所において、未溶着な部位を残存させないようにできる樹脂ライナーを容易に製造できる。
この形態では、得られた樹脂ライナーを用いて高圧ガスタンクといった流体貯留容器を製造することができる。つまり、得られた樹脂ライナーの外周に、熱硬化性樹脂を含浸した繊維を巻回して、外郭としての繊維強化樹脂層を形成する。次いで、繊維強化樹脂層を形成済みの樹脂ライナーをライナーの軸回りに回転させつつ熱処理に処して、繊維強化樹脂層を熱硬化させる。こうした工程を経ることで、高圧ガスタンクといった流体貯留容器を容易に製造できる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、樹脂ライナーの外表に繊維束を巻回してライナーに繊維層を形成した高圧ガスタンクや、高圧ガスタンクの製造方法等の形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としての樹脂ライナーの製造方法によって製造される樹脂ライナー10を有する高圧水素タンク100の概略構成を示す断面図である。 バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eの概略構成を断面視して示しつつその接合の様子を併せて示す説明図である。 バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eの接合箇所と結合の様子を拡大して断面視する説明図である。 高圧水素タンク100の製造工程を示すフローチャートである。 樹脂ライナー10の製造工程の前半部分を示すフローチャートである。 樹脂ライナー10の製造工程の後半部分を示すフローチャートである。 ステップS110におけるレーザー光照射の様子を示す説明図である。 リブ切削の様子をその切削刃DSと共に示す説明図である。 バルブ側およびエンド側のライナーパーツの接合箇所における傾斜部の他の実施形態を示す説明図である。 バルブ側およびエンド側のライナーパーツが有する接合部12vと接合部12eの他の実施形態を示す説明図である。 切削刃Dsによるリブ切削についての他の実施形態を示す説明図である。 バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eに起き得る外径差の様子を示す説明図である。 リブ切削についてのまた別の実施形態を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態としての樹脂ライナーの製造方法によって製造される樹脂ライナー10を有する高圧水素タンク100の概略構成を示す断面図である。図1では、高圧水素タンク100の中心軸に平行で中心軸を通る切断面で切断された断面図を示している。高圧水素タンク100の中心軸は、略円筒状を成す高圧水素タンク本体の円の中心を通る軸と一致する。本実施形態において、高圧水素タンク100は、圧縮水素が充填されるためのものである。例えば、高圧水素タンク100は、圧縮水素が充填された状態で、燃料電池に水素を供給するために、燃料電池車に搭載される。
高圧水素タンク100は、樹脂ライナー10と、外殻20と、バルブ側口金30と、エンド側口金40と、バルブ50と、を備える。樹脂ライナー10は、内部に水素が充填される空間を備える中空形状とされ、水素が外部に漏れないように内部空間を密閉するガスバリア性を有する。樹脂ライナー10は、ライナーの軸方向に分割されたバルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとを備える。この両ライナーパーツは、共に樹脂成形品であって、その分割箇所を接合箇所として接合されて中空形状をなす。ライナーパーツの接合およびその溶着については後述する。
外殻20は、樹脂ライナー10の外周を覆うように形成された繊維強化樹脂層であって、繊維強化プラスチックとしてのCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)である。この外殻20は、樹脂ライナー10の外周に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂含有のカーボン繊維やガラス繊維をFW法にて繰り返し巻回し、樹脂の熱硬化を経て形成され、樹脂ライナー10を補強する。
バルブ側口金30は、略円筒状を成し、樹脂ライナー10と外殻20との間に嵌入されて、固定されている。バルブ側口金30の略円柱状の開口が、高圧水素タンク100の開口として機能する。本実施形態において、バルブ側口金30は、ステンレスから成るが、アルミニウム等他の金属から成るものであってもよいし、樹脂製でもよい。バルブ50は、円柱状の部分に、雄ねじが形成されており、バルブ側口金30の内側面に形成されている雌ねじに螺合されることにより、バルブ50によって、バルブ側口金30の開口が閉じられる。エンド側口金40は、アルミニウムから成り、一部分が外部に露出した状態で組みつけられ、タンク内部の熱を、外部に導く働きをするものである。
図2はバルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eの概略構成を断面視して示しつつその接合の様子を併せて示す説明図、図3はバルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eの接合箇所と結合の様子を拡大して断面視する説明図である。図2も、図1と同様に、高圧水素タンク100の中心軸に平行で中心軸を通る切断面で切断された断面図を示している。バルブ側ライナーパーツ10vと、エンド側ライナーパーツ10eとは、樹脂ライナー10を長手方向に垂直に2分割したような形状を成す。
バルブ側ライナーパーツ10vは、円筒の一端が縮径した略釣鐘形状を成す。バルブ側ライナーパーツ10vは、その縮径した一端に、バルブ側口金30を圧入可能な口金圧入部11vを備え、他端側の開口部周縁であるパーツ端部に、エンド側ライナーパーツ10eの後述の接合部12eと接合される接合部12vを有する。
エンド側ライナーパーツ10eも、バルブ側ライナーパーツ10vと同様に、円筒の一端が縮径した略釣鐘形状を成す。エンド側ライナーパーツ10eは、その縮径した一端に、エンド側口金40を圧入可能な口金圧入部11eを備え、他端側の開口部周縁であるパーツ端部に、バルブ側ライナーパーツ10vの接合部12vと接合される接合部12eを有する。ここで、両接合部について詳述する。
図3に示すように、接合部12eは、エンド側ライナーパーツ10eの周壁から拡径側に傾斜して延びる傾斜部13eを備え、その先端を、凸状のストッパー突部14eとする。また、接合部12eは、傾斜部13eのタンク中心軸側の面をテーパ状接合面15eとし、ストッパー突部14eは、テーパ状接合面15eに連続した面を凸状外面として含む。
本実施形態では、エンド側ライナーパーツ10eの周壁を延長した延長線、或いは、当該周壁より僅かに拡径側で周壁と平行に延びる平行線を、樹脂ライナー10としての外郭線10sとする。エンド側ライナーパーツ10eの周壁から拡径する側は、後述するレーザー光の照射側となる。よって、エンド側ライナーパーツ10eは、レーザー光の照射側に樹脂ライナー10の外郭線10sを超えて傾斜部13eを隆起させ、当該傾斜部をパーツ端部に備えることになる。また、エンド側ライナーパーツ10eは、ストッパー突部14eの凸部先端が樹脂ライナー10の外郭線10sを超える位置となるようにして、ストッパー突部14eを備える。
接合部12vは、バルブ側ライナーパーツ10vの周壁が先端側ほど縮径するように傾斜した傾斜部13vを備え、その傾斜面をテーパ状接合面15vとする。このテーパ状接合面15vと、接合部12eにおける傾斜部13eのテーパ状接合面15eとは、ライナー軸に対して同じ傾斜で形成されている。接合部12vは、傾斜部13vの基部に、バルブ側ライナーパーツ10vの周壁から拡径側に傾斜して延びるストッパー突部14vを備える。樹脂ライナー10としての外郭線10sは既述した通りであり、バルブ側ライナーパーツ10vの周壁からの拡径側とレーザー光の照射側との関係も上記の通りであることから、バルブ側ライナーパーツ10vは、レーザー光の照射側に樹脂ライナー10の外郭線10sを超えてストッパー突部14vを隆起させ、当該突部をパーツ端部に備えることになる。
接合部12vは、傾斜部13vとその基部から延びたストッパー突部14vとで、接合部12eのストッパー突部14eが嵌合する嵌合凹所16vを形成し、この嵌合凹所16vは、テーパ状接合面15vに連続した面を凹状外面として含む。また、バルブ側ライナーパーツ10vは、嵌合凹所16vの凹部底が樹脂ライナー10の外郭線10sを超える位置となるようにして、嵌合凹所16vを備える。そして、バルブ側ライナーパーツ10vは、この嵌合凹所16vに接合部12eのストッパー突部14eが嵌合することで、エンド側ライナーパーツ10eをライナー軸方向に受け止め、両ライナーパーツのライナー軸方向の動きを規制する。既述したように、傾斜部13vのテーパ状接合面15vと傾斜部13eのテーパ状接合面15eとはライナー軸に対して同じ傾斜とされているので、嵌合凹所16vへのストッパー突部14eの嵌合を経て、接合部12vのテーパ状接合面15vと接合部12eのテーパ状接合面15eとは、その傾斜面範囲に亘って密着して接合し、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eの接合面、および後述のレーザー溶着面となる。
本実施形態では、嵌合凹所16vが向かい合う凹所壁面でなす開口角16vaと、ストッパー突部14eが凸部壁面でなす凸角度14eaとを、同寸の呼び角度θとしつつ、開口角16vaについては、+側の交差(+α)とした。一方、凸角度14eaについては、−側の交差(−α)とした。
上記した接合部12vと接合部12eの形状から判るように、エンド側ライナーパーツ10eは、その有する傾斜部13eの形成範囲において、樹脂ライナー10としてのライナー軸から離れた側からバルブ側ライナーパーツ10vに重なる。そして、エンド側ライナーパーツ10eは、自身の傾斜部13eのテーパ状接合面15eを、バルブ側ライナーパーツ10vの傾斜部13vにおけるテーパ状接合面15vに接合させることになる。バルブ側ライナーパーツ10vから見ると、このバルブ側ライナーパーツ10vは、テーパ状接合面15vを、その接合面端部17vの側から嵌合凹所16vに掛けてテーパ状接合面15eに接合させることになる。そして、この接合した傾斜面に亘って後述するようにレーザー溶着することにより、樹脂ライナー10が完成する。
エンド側ライナーパーツ10eは、レーザー光透過性を有するレーザー光透過性樹脂部品であり、バルブ側ライナーパーツ10vは、レーザー光吸収性を有するレーザー光吸収性樹脂部品である。本実施形態において、バルブ側ライナーパーツ10vおよびエンド側ライナーパーツ10eは、共にナイロン6(PA6)から成る。バルブ側ライナーパーツ10vは、ナイロン6に、黒色の顔料(着色料)を混入することにより、レーザー光透過性を低減させて、レーザー光吸収性を発揮し、照射を受けたレーザー光により溶融する性状となる。
エンド側ライナーパーツ10eについては、レーザー光に対して所定以上の透過率を有するものであれば特に限定されないので、上記のナイロン6(PA6)の他、ナイロン66(PA66)等のポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ABS、アクリル(PMME)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等にて、樹脂成形すればよい。なお、必要に応じて、ガラス繊維、カーボン繊維等の補強用の短繊維や着色材を添加したものを用いてもよい。
バルブ側ライナーパーツ10vについては、レーザー光を吸収して溶融するレーザー光吸収性樹脂部品であれば特に限定されない。例えば、ナイロン6(PA6)ので、上記のナイロン6(PA6)の他、ナイロン66(PA66)等のポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)やスチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ABS、アクリル(PMME)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等に、カーボンブラックや、染料、顔料等の所定の着色材を混入して、レーザー光透過性を低減すればよい。なお、必要に応じて、ガラス繊維やカーボン繊維等の補強用の短繊維を添加したものを用いてもよい。
この場合、上記のレーザー光透過性樹脂と上記のレーザー光吸収性樹脂との組合せについては、互いに相溶性のあるもの同士の組合せとされる。かかる組合せとしては、ナイロン6同士やナイロン66同士等、同種の樹脂同士の組合せの他、ナイロン6とナイロン66との組合せ、PETとPCとの組合せやPCとPBTとの組合せ等を挙げることができる。
次に、上記した高圧水素タンク100と樹脂ライナー10の製造手法について説明する。図4は高圧水素タンク100の製造工程を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、樹脂ライナー10を製造する(ステップS100)。樹脂ライナー10の製造工程については、後に詳述する。
得られた樹脂ライナー10の外周に、フィラメントワインディング法(以下、FW法)によって、外殻20を形成する。具体的には、ステップS100によって完成された樹脂ライナー10を、マンドレルとして用い、エポキシ樹脂を含浸させたカーボン繊維ECFを、樹脂ライナー10の周囲に、巻き付ける(ステップS202)。その後、エポキシ樹脂を含浸させたカーボン繊維ECFを、樹脂ライナー10の周囲に巻き付けたものを、加熱炉にて加熱して、エポキシ樹脂を硬化させる(ステップS204)。エポキシ樹脂が硬化すると、CFRPから成る外殻20が形成され、高圧水素タンク100が完成する。なお、外殻20を形成する場合に、加熱炉に代わりに、高周波誘導加熱を誘起する誘導加熱コイルを用いて誘導加熱手法を用いることができる。この高周波誘導加熱では、速やかな熱硬化性樹脂の昇温を図ることができる。
次に樹脂ライナー10の製造手法について説明する。図5は樹脂ライナー10の製造工程の前半部分を示すフローチャート、図6は樹脂ライナー10の製造工程の後半部分を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとを樹脂成形すると共に、各ライナーパーツに口金を組み付ける(ステップS102)。具体的には、バルブ側ライナーパーツ10vにはバルブ側口金30を、エンド側ライナーパーツ10eにはエンド側口金40をそれぞれ組み付ける。これら口金をバルブ側ライナーパーツ10vおよびエンド側ライナーパーツ10eの口金圧入部11e、14vに圧入することで、口金の組み付けが完了する。図5では、エンド側ライナーパーツ10eにエンド側口金40を組み付ける図を省略している。なお、上記の樹脂成形の際には、型成型に伴う歪みの抑制のため、樹脂成形後にその成形品ごとにアニール処理がなされる。
このステップS102でのライナーパーツ成形では、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとで、用いる樹脂を上記のレーザー光透過性樹脂とレーザー光吸収性樹脂にした上で、各ライナーパーツの接合部12vおよび接合部12eを、図3で説明したような形状とする。エンド側ライナーパーツ10eは、レーザー光透過性を有するナイロン6(PA6)を用いて樹脂成形され、バルブ側ライナーパーツ10vにあっては、黒色顔料の混入済みナイロン6を用いて樹脂成形する。こうすることで、バルブ側ライナーパーツ10vでは、レーザー光透過性が低減してレーザー光吸収性を発揮し、照射を受けたレーザー光により溶融する。
口金の組み付けに続き、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとをそれぞれの接合部12vおよび接合部12eで接合して組み付ける(ステップS104)。この組み付けにより、図3に示すように、エンド側ライナーパーツ10eのストッパー突部14eは、バルブ側ライナーパーツ10vにおける接合部12vの嵌合凹所16vに嵌合され、バルブ側ライナーパーツ10vはエンド側ライナーパーツ10eをライナー軸方向に受け止めて、両ライナーパーツのライナー軸方向の動きを規制する。その上で、エンド側ライナーパーツ10eは、傾斜部13eを、その形成範囲において、ライナー軸から離れた側からバルブ側ライナーパーツ10vに重ねて、傾斜部13eのテーパ状接合面15eをバルブ側ライナーパーツ10vの傾斜部13vにおけるテーパ状接合面15vに接合させることになる。この際、バルブ側ライナーパーツ10vの接合面端部17vは、傾斜部13eのテーパ状接合面15eに接合し、エンド側ライナーパーツ10eのストッパー突部14eは、その凸部先端を含めて樹脂ライナー10の外郭線10sを超える位置となる。バルブ側ライナーパーツ10vのストッパー突部14vにあっても、その嵌合凹所16vの凹部底を含めて樹脂ライナー10の外郭線10sを超える位置となる。以下、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとを組み付けたものを、ライナーアッシー10bと称する。
こうしてライナーアッシー10bが得られると、上記した接合部12vおよび接合部12eにおける両ライナーパーツの接合状態を維持するよう、ライナー軸の両側からライナーアッシー10bを押圧し、これを保持する(ステップS106)。この場合、エンド側ライナーパーツ10eは、ステップS104にてバルブ側ライナーパーツ10vの嵌合凹所16vにて既にライナー軸方向に留め置かれている。よって、ステップS106でのライナー軸方向の押圧は、その押圧力で両ライナーパーツの接合状態を維持するものの、バルブ側ライナーパーツ10vやエンド側ライナーパーツ10eのライナー外壁に変形が起きるような大きな押圧力を必要とせず、接合状態の維持ができるに足りる小さな押圧力を及ぼすだけでよい。例えば、ライナー軸の両端にスプリングを配設した図示しない簡易な治具を用い、スプリングの反発力にてライナーアッシー10bをその両側から保持すれば足りる。
次に、上記したように接合状態を維持したまま、図6に示すように、ライナーアッシー10bにレーザー光をエンド側ライナーパーツ10eの側から照射して、バルブ側ライナーパーツ10vの接合部12vとエンド側ライナーパーツ10eの接合部12eのレーザー溶着を行う(ステップS110)。図7はステップS110におけるレーザー光照射の様子を示す説明図である。このレーザー溶着に当たっては、ライナーアッシー10bを回転させつつ、レーザー光発振装置300からレーザー光を照射する。レーザー光の種類としては、レーザー光を透過させる透過性樹脂の吸収スペクトルや板厚(透過長)等との関係で、透過性樹脂内での透過率が所定値以上となるような波長を有するものが適宜選定される。例えば、YAG:Nd3+レーザー(レーザー光の波長:1060nm)、半導体レーザー(レーザー光の波長:500〜1000nm)の他、ガラス−ネオジウムレーザー、ルビーレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、クリプトンレーザー、アルゴンレーザー、水素レーザー、窒素レーザー等を用いることができる。なお、レーザーの出力、照射密度や加工速度(移動速度)等の照射条件は、樹脂の種類等に応じて適宜設定可能である。
レーザー光照射の際、ライナーアッシー10bを所定の回転数だけ回転させる度に(例えば、1回転)、レーザー光の照射位置を変更する。具体的には、図7に示すように、テーパ状接合面15vとテーパ状接合面15eの接合範囲の最内周側のスタートポイントLs、即ちテーパ状接合面15eに接合している接合面端部17vの先端周辺を最初のレーザー光照射位置とする。そして、レーザー光照射位置を、ライナーアッシー10bの回転の都度にテーパ状接合面15vとテーパ状接合面15eの接合範囲の最外周側のエンドポイントLeまで移動する。つまり、ライナーアッシー10bを回転させつつ、レーザー光照射位置がテーパ状接合面15vに沿って移動するようレーザー光を走査させて照射する。この場合、図7に点線で示す外郭線10sを超えるよう、ライナーアッシー10bの外側に突出した部分(以下、「リブ」ともいう。)は後述の工程にて切削されるので、この外郭線10sよりもライナーアッシー10bの内部側の部分がレーザー溶着されればよい。よって、エンドポイントLeは、図における外郭線10sよりやや外側に設定される。この場合、エンドポイントLeを、外郭線10sより外側で嵌合凹所16vの凹所壁面に掛かる位置まで、よりライナー軸から離すこともできる。
ステップS110においてレーザー光発振装置300から照射されたレーザー光は、ライナー軸から離れた側からバルブ側ライナーパーツ10vに重なったエンド側ライナーパーツ10eに達する。このエンド側ライナーパーツ10eは、レーザー光を透過させるので、レーザー光は、エンド側ライナーパーツ10eを透過して、当該パーツに接合済みのバルブ側ライナーパーツ10vに達する。バルブ側ライナーパーツ10vは、レーザー光が照射されたテーパ状接合面15vにおいて溶融し、その熱によって、エンド側ライナーパーツ10eにあってもテーパ状接合面15eにおいて溶融する。このため、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとは、その接合箇所のテーパ状接合面15v、15eの形成範囲においてレーザー溶着し、バルブ側とエンド側のライナーパーツが一体となって固定された中空形状のライナーアッシー10bを得ることができる。
こうしてステップS110のレーザー溶着が終了すると、リブを切削する(ステップS112)。図8はリブ切削の様子をその切削刃DSと共に示す説明図である。このステップS112では、ライナーアッシー10bを図6に示すようにリブ切削装置にセットして回転させ、装置付属の切削刃Dsによりリブを切削する。その切削位置は、図8に示した外郭線10sであり、こうしたリブ切削により、図1に示すように、表面に、ほぼ凸凹のない、樹脂ライナー10が完成する。つまり、外郭線10sを超えて位置していた傾斜部13eのストッパー突部14eや接合部12vのストッパー突部14vは、ストッパー突部14eの凸部先端とストッパー突部14vの嵌合凹所16vの凹部底を含めて切削刃Dsにより切削除去される。
以上説明したように、本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、ライナーの軸方向に分割されたエンド側ライナーパーツ10eとバルブ側ライナーパーツ10vから樹脂ライナー10を製造するに当たり、バルブ側ライナーパーツ10vにあっては、これを、照射を受けたレーザー光により溶融する樹脂成形品とし、エンド側ライナーパーツ10eにあっては、これを、レーザー光を透過させる樹脂成形品とした。また、両ライナーパーツが接合されるパーツ端部においては、両ライナーパーツをテーパ状接合面15eとテーパ状接合面15vとを密着させて接合させる。その上で、テーパ状接合面15eに連続した面を外面として含むエンド側ライナーパーツ10eのストッパー突部14eを、テーパ状接合面15vに連続した面を外面として含むバルブ側ライナーパーツ10vの嵌合凹所16vに嵌合させた(ステップS104〜106)。こうした嵌合凹所16vへのストッパー突部14eの嵌合により、テーパ状接合面15eとテーパ状接合面15vとの密着性、および、嵌合凹所16vの凹部壁面とストッパー突部14eの凸部壁面との密着性を確保できる。
本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、上記のように接合させたエンド側ライナーパーツ10eとバルブ側ライナーパーツ10vの接合状態を維持したまま、テーパ状接合面15eとテーパ状接合面15vにエンド側ライナーパーツ10eの側からレーザー光を照射する(ステップS110)。このレーザー光照射は、既述したように、ライナーアッシー10bを回転させつつ、レーザー光をテーパ状接合面15vに沿って接合面端部17vのスタートポイントLsからエンドポイントLeに掛けて走査させて行う。このため、テーパ状接合面15eとテーパ状接合面15vとの密着性の確保と相まって、接合面端部17vのスタートポイントLsからエンドポイントLeに掛けてのテーパ状接合面15eとテーパ状接合面15vの接合範囲の全域に亘って(図7参照)、確実にレーザー溶着でき、このレーザー溶着範囲において、ガスリークを高い実効性で回避できる。
本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、テーパ状接合面15eとテーパ状接合面15vとの密着性を確保するための嵌合凹所16vとストッパー突部14eに関し、嵌合凹所16vを有するストッパー突部14vとストッパー突部14eとを、嵌合凹所16vの凹部底およびストッパー突部14eの凸部先端を含めて、外郭線10sを超える位置とする(図3、図7〜図8)。このため、仮に、ストッパー突部14eの凸部先端と嵌合凹所16vの凹部底との間に未溶着の隙間部位が残存しても、この未溶着の隙間部位を、樹脂ライナー10の外郭線10sを超える位置であることから、樹脂ライナー10がライナー製品として占める部位に含ませない。そして、本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、このストッパー突部14eの凸部先端と嵌合凹所16vの凹部底とが残らないように、ストッパー突部14eおよびストッパー突部14vの両隆起部ごと外郭線10sに沿って切削除去する(ステップS112)。この結果、本実施形態の樹脂ライナーの製造方法によれば、最終製品としての樹脂ライナー10を、エンド側ライナーパーツ10eとバルブ側ライナーパーツ10vのパーツ接合箇所であるテーパ状接合面15e、15vに未溶着な部位を残存させない樹脂ライナーとできる。そして、この得られた最終製品の樹脂ライナー10によれば、パーツ接合箇所であるテーパ状接合面15e、15vでのガスリークを高い実効性で回避できる。
こうして得られた樹脂ライナー10は、図4に示した工程を経て、繊維強化プラスチックとしてのCFRPである外殻20で補強した高圧水素タンク100となる。そして、この高圧水素タンク100では、その内殻である樹脂ライナー10がパーツ接合部での高いガスリーク回避性を有することから、耐久性が向上する。
また、本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、そのステップS120において、既述したように切削刃Dsによりストッパー突部14eおよびストッパー突部14vを外郭線10sに沿って切削除去して、その切削加工痕跡を樹脂ライナー10の表面に残す。このため、最終製品としての樹脂ライナー10の表面における切削加工痕跡により、ストッパー突部14eの凸部先端と嵌合凹所16vの凹部底とが残らないように上記の両隆起部ごと外郭線10sに沿って切削除去したことの判別を可能とする。
加えて、本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、ステップS110にてレーザー光発振装置300からエンド側ライナーパーツ10eに向けてレーザー光を照射するに当たり、図7に示すように、最初のレーザー光照射位置を、エンド側ライナーパーツ10eのテーパ状接合面15eに接合しているバルブ側ライナーパーツ10vの接合面端部17vの先端周辺とした。このため、まず最初に、この接合面端部17vにおいて、エンド側ライナーパーツ10eのテーパ状接合面15eとバルブ側ライナーパーツ10vのテーパ状接合面15vをレーザー溶着する。その後、レーザー光照射位置を、テーパ状接合面15vとテーパ状接合面15eの接合範囲の最外周側であって外郭線10sを超えるエンドポイントLeまで、テーパ状接合面15vに沿って移動する。
バルブ側ライナーパーツ10vの接合面端部17vは、ステップS104〜106にて、既にテーパ状接合面15eに接合して密着済みであるものの、レーザー溶着前にあっては、拘束を受けないいわゆるフリーの状態にある。このため、仮に接合面端部17vから離れたテーパ状接合面箇所で最初のレーザー溶着がなされると、その際のレーザー溶着の際に生じる熱により、テーパ状接合面15eに接合済みのバルブ側ライナーパーツ10vに熱変形が起きて、フリーな接合面端部17vがテーパ状接合面15eから離れて隙間が生じ得る。しかしながら、本実施形態の樹脂ライナーの製造方法では、既述したように、まず最初に、バルブ側ライナーパーツ10vの接合面端部17vをテーパ状接合面15eにレーザー溶着するので、接合面端部17vとテーパ状接合面15eとの間には、隙間を生じさせないようにできる。この結果、接合面端部17vのレーザー溶着を高い実効性で実行できると共に、接合面端部17vのスタートポイントLsからエンドポイントLeまで接合範囲におけるレーザー溶着についても、その実効性を高めることができる。このことは、エンド側ライナーパーツ10eとバルブ側ライナーパーツ10vの接合箇所でのガスリークをより確実に回避できることを意味する。
また、本実施形態の樹脂ライナー10では、バルブ側ライナーパーツ10vにおける嵌合凹所16vの開口角16vaを、その呼び角度θに対して+交差とし、エンド側ライナーパーツ10eにおけるストッパー突部14eの凸角度14eaを、呼び角度θに対して−交差とした(図3参照)。このため、嵌合凹所16vへのストッパー突部14eの嵌合は確実となり、ストッパー突部14eの凸部壁面のほぼ全域が嵌合凹所16vの凹所壁面に接合する。よって、ストッパー突部14eの外面が連続したテーパ状接合面15eと、嵌合凹所16vの外面が連続したテーパ状接合面15vとの接合についても、確実となり、両接合面の密着も確保され、レーザー溶着にとっても有益となる。
次に、他の実施形態について説明する。図9はバルブ側およびエンド側のライナーパーツの接合箇所における傾斜部の他の実施形態を示す説明図である。この実施形態では、傾斜部13vと傾斜部13eの両傾斜部は、図示するように、ライナー軸側に突出することなく、バルブ側ライナーパーツ10v、エンド側ライナーパーツ10eに連続して形成されている。こうした傾斜部を有する実施形態であっても、そのテーパ状接合面15vとテーパ状接合面15eとの接合範囲をレーザー溶着範囲とできるので、既述した効果を奏することができる。この場合、先に説明した実施形態と同程度のレーザー溶着範囲とするには、傾斜部13vと傾斜部13eの両傾斜部をライナー軸側に突出させることなく、そのテーパ状接合面15vとテーパ状接合面15eの傾斜を緩くすればよい。
図10はバルブ側およびエンド側のライナーパーツが有する接合部12vと接合部12eの他の実施形態を示す説明図である。この実施形態では、バルブ側ライナーパーツ10vは、ストッパー突部14vと嵌合凹所16vとを有する接合部12vをライナーパーツ外面10vsから隆起させるに当たり、ライナーパーツ外面10vsと接合部12vの外面とを、接合部12vの外面の傾斜より緩い傾斜の傾斜斜面18vで繋ぐ。エンド側ライナーパーツ10eにあっては、ストッパー突部14eと傾斜部13eとを有する接合部12eをライナーパーツ外面10esから隆起させるに当たり、ライナーパーツ外面10esと傾斜部13eの外面とを、傾斜部13eの外面の傾斜より緩い傾斜の傾斜斜面18eで繋ぐ。傾斜斜面18vは、ライナーパーツ外面10vsから傾斜して延び、外郭線10sを超えた領域で接合部12vの外面と繋がる。傾斜斜面18eにあっても同様であり、当該傾斜斜面は、ライナーパーツ外面10esから傾斜して延び、外郭線10sを超えた領域で傾斜部13eの外面と繋がる。この実施形態によれば、次の利点がある。
外郭線10sを超えて位置していた接合部12vと接合部12e、延いては傾斜部13eを既述したように切削刃Dsにより切削除去した際の切削除去範囲Crでは、既述したように切削加工痕跡がライナー表面に残る。この切削除去範囲Crの両端においては、傾斜の緩い傾斜斜面18vおよび傾斜斜面18eの一部がライナーパーツ外面10vs、ライナーパーツ外面10esに繋がって残る。そして、切削除去範囲Crの両端の切削ポイントCreでは、傾斜斜面18vと傾斜斜面18eの傾斜が緩い故に、切削加工に伴うエッジが残りがたくなり、エッジの発生を抑制できる。
図11は切削刃Dsによるリブ切削についての他の実施形態を示す説明図である。この実施形態では、リブ切除装置400の切削刃Dsによる切削に先立って、ライナーアッシー10bをその両端のバルブ側口金30とエンド側口金40の側から荷重を掛けて押圧し、この押圧を維持したまま、ライナーアッシー10bを回転させる。これにより、ライナーアッシー10bは、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとを、その端部の接合部12vと接合部12eとの接合箇所が外郭線10sの側になるように撓ませる。つまり、接合部12vは、こうして撓んだパーツ壁湾曲部位10vwに繋がって、外郭線10sから更に外側においてパーツ壁湾曲部位10vwから突出する。接合部12eも同様であり、パーツ壁湾曲部位10ewに繋がって、外郭線10sから更に外側においてパーツ壁湾曲部位10ewから突出する。ライナーパーツの撓みは、接合部12vがライナー外側に延びて、その嵌合凹所16vで接合部12eのストッパー突部14eを受け止め、両接合部がテーパ状接合面15vとテーパ状接合面15eにて径指して接合していることにより、起きる。こうしてバルブ側・エンド側の両ライナーパーツを撓ませた状態で、切削刃Dsにて、接合部12vと接合部12eとを切削除去する。この際の切削ライン10swは、次のように定めれば良い。パーツ壁湾曲部位10vwと接合部12vとの繋がり箇所およびパーツ壁湾曲部位10ewと接合部12eの繋がり箇所が既述した外郭線10sと一致していれば、切削ライン10swを外郭線10sに設定して、切削刃Dsにて、上記の繋がり箇所を含めて接合部12vと接合部12eを切削除去する。その一方、図示するように、上記の繋がり箇所が外郭線10sを超えていれば、切削ライン10swを、外郭線10sから拡張距離dwだけ外側に設定する。こうすれば、パーツ壁湾曲部位10vwの一部領域と接合部12vおよびパーツ壁湾曲部位10ewの一部領域と接合部12eが切削刃Dsにて切削削除される。この場合の拡張距離dwは、上記の繋がり箇所が外郭線10sを超えた超過距離に応じて設定でき、当該超過距離より小さく設定すればよい。
このようにしてバルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとを撓ませて接合部12vと接合部12eを切削する実施形態では、切削刃Dsにより切削除去した切削除去範囲Crに亘って、既述したように切削加工痕跡をライナー表面に残す。上記の両ライナーパーツが撓んだままであれば、この切削加工痕跡は、直線状である。ところが、切削後のライナーパーツの押圧解除により、撓みが解消されるので、切削除去範囲Crに亘って切削加工痕跡は陥没する。そして、切削切除されたパーツ壁湾曲部位10vwとパーツ壁湾曲部位10ewに該当する部位では、ライナーパーツ外面10vs、ライナーパーツ外面10esから傾斜する。この傾斜程度は、切削加工の際のバルブ側・エンド側の両ライナーパーツの撓みの程度に依存し、ごく僅かである。この結果、切削除去範囲Crの両端の切削ポイントCreでは、ライナーパーツ外面10vsとライナーパーツ外面10esから滑らかに傾斜面が繋がるので、切削ポイントCreにおけるエッジの発生を抑制できる。つまり、切削エッジを有しない樹脂ライナー10を製造できるので、切削エッジに起因した樹脂ライナー10の強度や耐久性といったライナー性能の低下を抑制できる。このことは、FW法にて樹脂ライナー10に外殻20を形成した高圧水素タンク100についても、強度や耐久性の向上を図ることができることを意味する。
次に、切削刃Dsによるリブ切削についてのまた別の実施形態について説明する。図12はバルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eに起き得る外径差の様子を示す説明図、図13はリブ切削についてのまた別の実施形態を示す説明図である。この実施形態では、バルブ側・エンド側の両ライナーパーツを撓ませて接合部12vと接合部12eとを切削除去する点で上記の実施形態と共通するが、以下のようにして、両パーツに生じる外径差をも考慮する。バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eは、設計許容範囲の公差で製造されるので、プラス側公差とマイナス側公差がパーツ外径に現れると、図12に示すように、両ライナーパーツにおいて外径差ksが起き得る。高圧水素タンク100の外郭が増せば、設計上の公差範囲も広がって外径差ksが大きな値となり得る。そうすると、図11で示したようにバルブ側・エンド側の両ライナーパーツを撓ませて切削刃Dsにて切削加工を行う場合、小径の側のライナーパーツ、例えばバルブ側ライナーパーツ10vのパーツ壁湾曲部位10vwにおいて、切削ポイントCreが外径差ksの影響を受けてずれてしまうことが危惧される。こうしたことを背景に、この実施形態では、リブ切除装置400に第1ローラー410と第2ローラー412を並べて設置した。この両ローラーは、従動回転自在に構成されて、ローラー表面をライナー軸から等距離におき、リブ切除装置400の切削刃Dsによる切削除去範囲Crを超える領域に位置する。そして、両ローラーは、バルブ側ライナーパーツ10v或いはエンド側ライナーパーツ10eのライナーパーツ外面に当接して、両ライナーパーツの撓みを制限するストッパーとして機能する。
この実施形態においても、リブ切除装置400の切削刃Dsによる切削に先立って、ライナー軸両端からの荷重によりバルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとを撓ませる。こうした撓みの過程において、エンド側ライナーパーツ10eは、外径差ksの分だけ小径のバルブ側ライナーパーツ10vより先に、第2ローラー412のローラー面に達するまで撓み、当該ローラー面にて保持される。この状態においても、ライナー軸両端からの荷重を継続するので、小径のバルブ側ライナーパーツ10vにあっては、更に撓んで、第1ローラー410のローラー面にライナーパーツ外面10vsを押し当てる。この間、エンド側ライナーパーツ10eは、第2ローラー412により撓みが制限されている。これにより、外径差ksが存在しても、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとは、第1ローラー410と第2ローラー412で規定されるよう、両ロータの間において共に撓むことになり、こうしたバルブ側・エンド側の両ライナーパーツの撓みは、上記の両ローラーにて再現される。
上記の両ローラーによる撓み制限は、次のようにしてもよい。まず、荷重を掛ける前に、それまでライナーパーツ表面から退避していた第1ローラー410と第2ローラー412とを、ライナーパーツ側に前進させる。これにより、大径のエンド側ライナーパーツ10eでは、そのライナーパーツ表面に第2ローラー412が当接するので、第2ローラー412による撓み制限が起き、既述した接合部12vと接合部12eとの接合の状態から、第2ローラー412よりもリブ切除装置400の側が撓み範囲となる。この状態では、小径のバルブ側ライナーパーツ10vでは、そのライナーパーツ表面にまだ第1ローラー410が当接していないので、第1ローラー410による撓み制限を受けない。次に、ライナー軸方向から荷重を掛けると、大径のエンド側ライナーパーツ10eでは、第2ローラー412よりもリブ切除装置400の側で撓みを起こし、小径のバルブ側ライナーパーツ10vでは、その全域で撓んでライナーパーツ表面が第1ローラー410に当接すると、それ以降においては、第1ローラー410よりもリブ切除装置400の側でのみ撓みを起こす。こうなると、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとは、第1ローラー410と第2ローラー412で規定されるよう、両ロータの間において共に撓むことになり、こうしたバルブ側・エンド側の両ライナーパーツの撓みは、上記の両ローラーにて再現される。
上記したようにバルブ側・エンド側の両ライナーパーツが上記の両ローラーにより制限されてローラー間において撓むと、ライナーアッシー10bを回転させる。そして、切削刃Dsにより、既述したように、接合部12vと接合部12eとを、パーツ壁湾曲部位10vwとパーツ壁湾曲部位10ewの一部領域を含めて切削除去する。なお、切削ライン10swについては、先の実施形態と同様に定める。
この実施形態では、バルブ側ライナーパーツ10vとエンド側ライナーパーツ10eとの間に外径差ksがあっても、リブ切除装置400を挟んで位置する第1ローラー410と第2ローラー412とにより、確実に両ライナーパーツの撓みを高い再現性で起こす。その上で、接合部12vと接合部12eとを、パーツ壁湾曲部位10vwとパーツ壁湾曲部位10ewの一部領域を含めて切削除去する。このため、切削後のライナーパーツの押圧解除を経た撓み解消の状態において、切削除去範囲Crに亘って切削加工痕跡を陥没させた上で、その切削形状の均一化を外径差ksがあっても達成できる。しかも、切削ポイントCreでは、外径差ksが現れてもライナーパーツ外面10vsとライナーパーツ外面10esから滑らかに傾斜面を繋げてエッジの発生を抑制できる。よって、この実施形態によっても、切削エッジを有しない樹脂ライナー10の製造やライナー性能の低下の抑制等の効果を奏することができる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
上記の実施形態では、樹脂ライナー10をその製造対象品として説明したが、インテークマニホールド等のエンジン吸排気系の樹脂成形品や、プレート状のパーツを接合した樹脂成形品等を製造対象とすることができる。プレート状のパーツ接合の際には、レーザー溶着後の隆起部切削加工には、エンドミルを用いればよい。
10…樹脂ライナー
10b…ライナーアッシー
10s…外郭線
10sw…切削ライン
10e…エンド側ライナーパーツ
10es…ライナーパーツ外面
10ew…パーツ壁湾曲部位
10v…バルブ側ライナーパーツ
10vs…ライナーパーツ外面
10vw…パーツ壁湾曲部位
11e…口金圧入部
11v…口金圧入部
12e…接合部
12v…接合部
13e…傾斜部
13v…傾斜部
14e…ストッパー突部
14v…ストッパー突部
14ea…凸角度
15e…テーパ状接合面
15v…テーパ状接合面
16v…嵌合凹所
16va…開口角
17v…接合面端部
18e…傾斜斜面
18v…傾斜斜面
20…外殻
30…バルブ側口金
40…エンド側口金
50…バルブ
100…高圧水素タンク
300…レーザー光発振装置
400…リブ切除装置
410…第1ローラー
412…第2ローラー
DS…切削刃
Le…エンドポイント
Ls…スタートポイント
Ds…切削刃
ECF…カーボン繊維
Cre…切削ポイント
Cr…切削除去範囲

Claims (10)

  1. 照射を受けたレーザー光により溶融する性状の第1の樹脂による第1樹脂成形パーツとレーザー光を透過させる性状の第2の樹脂による第2樹脂成形パーツとを、該第2樹脂成形パーツをレーザー光の照射側にしてそれぞれのパーツ端部のテーパ状接合面で接合し、該テーパ状接合面において前記第1、第2の樹脂成形パーツをレーザー光の照射により溶着させた樹脂成形品であって、
    前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとは、前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起した隆起部を前記パーツ端部に備え、
    前記第2樹脂成形パーツは、前記隆起部を前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凸状嵌合部とした上で、該凸状嵌合部の凸部先端が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凸状嵌合部を備え、
    前記第1樹脂成形パーツは、前記隆起部に前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凹状嵌合部を備え、該凹状嵌合部を前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部の嵌合が可能な凹形状とした上で、前記凹状嵌合部の凹部底が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凹状嵌合部を備える
    樹脂成形品。
  2. 前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとは、それぞれの樹脂成形品パーツ外面と前記隆起部の外面とを、前記隆起部の外面の傾斜より緩い傾斜の斜面で繋ぐ請求項1に記載の樹脂成形品。
  3. 前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとが接合した前記パーツ端部に、前記樹脂成形品外郭に沿った切削加工痕跡を有する請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品。
  4. 請求項3に記載の樹脂成形品であって、
    前記樹脂成形品は、中空形状の樹脂ライナーとされ、
    前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとは、ライナーの軸方向に分割され、その分割箇所を接合箇所として接合することで前記中空形状をなす第1、第2のライナーパーツとされている樹脂成形品。
  5. 第1樹脂成形パーツと第2樹脂成形パーツとをレーザー光の照射により溶着させた樹脂成形品の製造方法であって、
    前記第1樹脂成形パーツを照射を受けたレーザー光により溶融する性状の第1の樹脂による樹脂成形品として準備すると共に、前記第2樹脂成形パーツをレーザー光を透過させる性状の第2の樹脂による樹脂成形品として準備する第1工程と、
    該準備した前記第1、第2の樹脂成形パーツを、パーツ端部のテーパ状接合面で接合し、その接合状態を維持したまま前記テーパ状接合面に前記第2樹脂成形パーツの側からレーザー光を照射する第2工程とを備え、
    前記第1工程では、
    前記第2樹脂成形パーツを、前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起した隆起部を前記パーツ端部に有し、該隆起部を前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凸状嵌合部とした上で、該凸状嵌合部の凸部先端が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凸状嵌合部を備える前記樹脂成形品とし、
    前記第1樹脂成形パーツを、前記レーザー光の照射側に樹脂成形品外郭を超えて隆起した隆起部を前記パーツ端部に有し、該隆起部に前記テーパ状接合面に連続した面を外面として含む凹状嵌合部を備え、該凹状嵌合部を前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部の嵌合が可能な凹形状とした上で、前記凹状嵌合部の凹部底が前記樹脂成形品外郭を超える位置となるようにして前記凹状嵌合部を備える前記樹脂成形品とし、
    前記第2工程では、
    前記第1、第2の樹脂成形パーツを前記テーパ状接合面で接合するに当たり、前記第1樹脂成形パーツの前記凹状嵌合部に前記第2樹脂成形パーツの前記凸状嵌合部を嵌合させる
    樹脂成形品の製造方法。
  6. 請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    前記第2工程では、
    前記レーザー光の照射位置を、前記テーパ状接合面に連続した前記凸状嵌合部と反対側の前記テーパ状接合面の端部側から、前記テーパ状接合面に沿って前記凸状嵌合部に移動させつつ、レーザー光を照射する樹脂成形品の製造方法。
  7. 請求項5または請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    前記第2工程に続いて、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとの前記パーツ端部に前記樹脂成形品外郭に沿った切削加工を実行し、前記凸状嵌合部の前記凸部先端と前記凹状嵌合部の前記凹部底とが残らないように、前記隆起部ごと切削する樹脂成形品の製造方法。
  8. 前記切削加工を、前記パーツ端部が前記樹脂成形品外郭の側に撓んだ状態で実行する請求項7に記載の樹脂成形品の製造方法。
  9. 前記切削加工を受ける加工範囲を超える領域において、前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとを、それぞれの樹脂成形品パーツ外面にストッパーを押し当てて保持し、該ストッパーの間において、前記パーツ端部を前記樹脂成形品外郭の側に撓ませる請求項8に記載の樹脂成形品の製造方法。
  10. 請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    前記樹脂成形品は、中空形状の樹脂ライナーとされ、
    前記第1樹脂成形パーツと前記第2樹脂成形パーツとは、ライナーの軸方向に分割され、その分割箇所を接合箇所として接合することで前記中空形状をなす第1、第2のライナーパーツとされている樹脂成形品の製造方法。
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