以下、本発明を実施するための実施例につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る排熱回収ボイラの構成を簡略に示す図である。図1に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Aは、ガスタービンから排出される燃焼排ガス11が保有する熱を利用して蒸気タービン駆動用の蒸気を発生させるものである。排熱回収ボイラ10Aは、ケーシング12と、高圧過熱器13と、高圧蒸発器14と、高圧節炭器15と、低圧蒸発器16と、低圧節炭器17と、ガス採取装置60Aとを有する。高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17は、ケーシング12内に燃焼排ガス11のガス流れ方向に沿って前流側から後流側に向かってこの順に配置されている。なお、ケーシング12は鉄骨構造の外郭部19に支持されている。
ケーシング12はガスタービン(不図示)からの燃焼排ガス11が導入されるガス入口部21と、煙突に続く出口ダンパ22とを有する。ケーシング12中に形成される燃焼排ガス11の流路は、上下方向に延びており、下方側から上方側に向けて燃焼排ガス11が流れるように形成されている。出口ダンパ22は煙突と連結しており、出口ダンパ22から排出される燃焼排ガス11は煙突から大気に放出される。
高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17は、ケーシング12内に収納されている。高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17は、複数の伝熱管からなる伝熱管群を有している。また、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17は、ケーシング12内に各々の長手方向が水平となるように配置されている。高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17は燃焼排ガス11の排ガス流路と交差するように設けられ、下方から上方に向けて流れる燃焼排ガス11に晒されるように配置されている。
ケーシング12の外周にはヘッダーハウジング23が設けられている。高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々のヘッダー24はヘッダーハウジング23内に収納されている。
なお、本実施例においては、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17は、各々の内部に伝熱管群を有しているが、図1に示すように、概略表示のため、各々箱型で表示し、各々の内部に含まれる複数の伝熱管を集約して表示している。また、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17とヘッダー24とは、各々の複数の伝熱管が寄せ集められて連結されるが、図1に示すように、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17とヘッダー24との連結を簡略に表示するため、1つの線で表示している。
外郭部19には、高圧ドラム25、低圧ドラム26が設けられ、高圧ドラム25、低圧ドラム26は各々外郭部19に支持されている。
低圧節炭器17と低圧蒸発器16とから排出される給水は、各々のヘッダー24から連絡管27Aを介して低圧ドラム26に送給される。また、低圧ドラム26から低圧蒸発器16と蒸気タービンとに供給される給水は連絡管27Bを介して排出される。
高圧節炭器15と高圧蒸発器14とから排出される給水は、各々のヘッダー24から連絡管28Aを介して高圧ドラム25に送給される。また、高圧ドラム25から高圧蒸発器14、高圧過熱器13に供給される給水は連絡管28Bを介して排出される。
腐食センサ18は、ケーシング12内の中でも燃焼排ガス11の流れ方向の最も後流側に設けられており、本実施例においては、腐食センサ18は、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17のうち、燃焼排ガス11のガス流れ方向の最も後流側に設けられている低圧節炭器17の上方側の表面近傍に設けられている。また、腐食センサ18は、ケーシング12内の略中央部分に設けられている。
なお、本実施例において、表面近傍とは、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の伝熱管の表面から伝熱管の表面温度と略同じ温度となる領域をいい、これらの表面でもよい。
腐食センサ18は、「大気腐食モニタ」(Atmospheric Corrosion Monitor)あるいはACM型腐食センサと称されている。腐食センサ18は、二つの異種金属(基板と導電部)を互いに絶縁部で絶縁した状態とし、両者の端部を環境へ露出すると、その環境に応じて両金属間を水膜が連結するので腐食電流が流れる。この電流は卑な金属の腐食速度に対応するので、腐食センサとして用いられている。本実施例では、燃焼排ガス11のガス温度が酸露点以下となることで、燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4が腐食センサに付着して凝縮することにより、両金属間が短絡してガルバニック対の腐食電流が流れる。なお、酸露点とは、燃焼排ガスに接する固体表面上に液滴の硫酸が出現する温度をいう。
腐食センサ18の構成の一例を図2、3に示す。図2、3に示すように、腐食センサ18は、基板(第1の導電部)31と、その上に所定間隔を持って設けられる絶縁部32と、絶縁部32の上部に設けられる導電部(第2の導電部)33とを有する。
基板31を形成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ステンレス鋼、炭素鋼板(Fe)などを用いることができるが、本実施例では、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備の腐食状態を検知する観点から、基板31を形成する材料には、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備と同一の材料を用いることが好ましく、具体的には炭素鋼板(Fe)が挙げられる。基板31をこの腐食センサ18の第1の導電部とする。
絶縁部32および導電部33は、基板31上に所定間隔を持って並列に複数設けられ、直線状に形成される。導電部33は、腐食センサ18の第2の導電部とする。また、導電部33を形成する材料としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、グラファイトなどの炭素材料などが挙げられるが、作業性、耐腐食性、費用の観点から、Agを用いることが好ましい。
基板31および導電部33は、各々、端子35a、35bから電流記録装置(データロガー)36に連結される。基板31の表面の露出部が腐食センサ18のアノード(陽極)となり、導電部33が腐食センサ18のカソード(陰極)となる。
腐食センサ18の製造方法は特に限定されるものではなく、従来より用いられている方法により製造される。例えば、所定の大きさ(縦:64mm、横:64mm、厚さ:0.8mm)の基板31を準備し、その上に絶縁ペースト(厚さ30μm〜35μm)を塗布し、硬化させ、絶縁部32を形成する。その後、導電ペースト(厚さ30μm〜40μm、フィラー:Ag)を、基板31との絶緑が保たれるように、絶縁部32のパターン上に積層印刷し、硬化させて導電部33を形成する。これにより、腐食センサ18が作製される。
金属の腐食性に影響を与える因子としては、温度、湿度、腐食性ガス(SOx)などが挙げられるが、燃焼排ガス11は、ガスタービンで燃料を燃焼した際に生じたものであり、燃料中に含まれる硫黄(S)が燃焼時に空気中の酸素(O2)と化合し、燃焼排ガス11中に一酸化硫黄(SO)、亜硫酸ガス(SO2)、無水硫酸(SO3)などが含まれる。これらが燃焼排ガス11中に含まれる水分(H2O)と反応してH2SO4を生成する。
燃焼排ガス11が、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17で熱交換され、ガス温度が低下したり、プラントの運転停止によりケーシング12内の温度が低下して、腐食センサ18の表面温度が酸露点以下となると、図4に示すように、燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4が基板31上に付着して凝縮し、凝縮成分34を生成する。この凝縮成分34により、導電部33と基板31とが短絡し、これに起因するFe−Agのガルバニック対の腐食電流が流れ、この腐食電流がデータロガー36で計測される。また、このガルバニック対の腐食電流は、鋼材料や亜鉛材料の腐食量に対して相関があることから、腐食速度を定量評価できる。よって、腐食センサ18は、H2SO4により電気化学的に発生する鋼の腐食電流を直接計測することができる。
本実施例においては、腐食センサ18の基板31は、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備と同一の材料で作製されている。そのため、腐食センサ18で腐食電流が流れた際には、腐食センサ18の腐食電流を検知し、腐食センサ18の出力電流値を解析することにより、ケーシング12の内面やその内部に設けられている高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17の伝熱管などが燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食を、直接かつ定量的に評価することができる。また、腐食センサ18への酸の付着量が増大すると、腐食電流の値も大きくなるため、その腐食度合いも検知することができる。
腐食センサ18は、低圧節炭器17の燃焼排ガス11のガス流れ方向の前流側、後流側のいずれに設けてもよいが、本実施例のように、腐食センサ18は、低圧節炭器17の燃焼排ガス11のガス流れ方向の後流側に設けることが好ましい。燃焼排ガス11は、低圧節炭器17を通過する際に低圧節炭器17と熱交換することで、燃焼排ガス11の温度は低下するため、燃焼排ガス11の温度は酸露点の温度よりも低くなり、H2SO4が液化しやすくなる。また、腐食センサ18を低圧節炭器17よりも燃焼排ガス11のガス流れ方向の前流側に設けると、腐食センサ18は、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16で熱交換された燃焼排ガス11による影響を大きく受けるため、低圧節炭器17の表面の燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食の影響を正確に測定することは困難である。そのため、腐食センサ18は、低圧節炭器17の燃焼排ガス11のガス流れ方向の後流側に設けることで、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16を通過した燃焼排ガス11による影響を抑制しつつ、低圧節炭器17の燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食の影響をより正確に測定することができる。
データロガー36で計測された腐食電流の値は、制御装置37に伝達される。制御装置37はプラント状態監視装置38に、例えば、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度が酸露点温度以上となるように指示を伝達する。
プラント状態監視装置38は、例えば、ケーシング12内への燃焼排ガス11の供給量を調整し、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度が酸露点温度以上となるようにする。これにより、低圧節炭器17に給水を送給してもケーシング12内の温度を出口ダンパ22まで酸露点温度以上として安定して運転することができる。
また、制御装置37はプラント状態監視装置38に、ケーシング12内の温度の他、ケーシング12内へのパージガスの導入の有無についても指示するようにしてもよい。プラント状態監視装置38は、制御装置37からの指示に基づいて、ケーシング12内へのパージガスの導入の有無と、その導入量を調整する。H2SO4が存在する雰囲気の状態で冷やすと、余熱でH2SO4が伝熱管等の金属壁面に付着して腐食する虞がある。そこで、ケーシング12内にパージガスを供給し、ケーシング12内に残留するガスをパージして排出する。これにより、パージガスを不必要に流すことなく、ケーシング12内の余熱でH2SO4が壁面や低圧節炭器17などの伝熱管に付着して腐食が生じるのを抑制することができる。
パージガスとしては、特に限定されるものではなく、例えば、酸素(O2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)などが用いられる。
また、本実施例においては、腐食センサ18は、低圧節炭器17の上方側の表面近傍に設けているが、本実施例は、これに限定されるものではなく、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15および低圧蒸発器16のいずれかがケーシング12内で燃焼排ガス11の流れ方向の最も後流側に設けられている場合には、その上方側の表面近傍に腐食センサ18を設けるようにする。
また、本実施例においては、腐食センサ18はケーシング12内の略中央部分に設けているが、本実施例は、これに限定されるものではなく、低圧節炭器17の長手方向の両端などに設けるようにしてもよい。
燃焼排ガス11はガス入口部21から流入し、ケーシング12内を上方向に流れる。このガス入口部21から流入する燃焼排ガス11のガス温度は600℃程度である。ガス入口部21から流入した燃焼排ガス11は、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17、腐食センサ18をこの順に通過して出口ダンパ22から排出される。この出口ダンパ22から排出される燃焼排ガス11のガス温度は110℃程度である。
高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17の各々の伝熱管チューブには、燃焼排ガス11と熱交換するための給水が送給される。給水は、例えば排熱回収ボイラ10Aから排出された蒸気が蒸気タービンの駆動源として用いられた後に復水器で生成された復水などが用いられる。
給水は、低圧節炭器17に送り込まれて燃焼排ガス11と熱交換することで加熱され、給水は更に低圧蒸発器16内で燃焼排ガス11と熱交換することで加熱されて低圧ドラム26に送り込まれて気液分離される。低圧ドラム26で気液分離された蒸気は、低圧蒸気となり蒸気タービンに供給される。
また、給水はポンプにて加圧された後、高圧節炭器15に送給され、加熱された後、高圧蒸発器14内で加熱されて高圧ドラム25に送給されて気液分離される。高圧ドラム25で気液分離された蒸気は、高圧過熱器13で過熱された後、高圧蒸気として蒸気タービンに供給される。本実施例に係る排熱回収ボイラ10Aから排出される低圧蒸気および高圧蒸気は、蒸気タービンへ供給され、復水器で復水とされた後、本実施例に係る排熱回収ボイラ10A内に給水として送り込まれ、本実施例に係る排熱回収ボイラ10A内を循環する。
このように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Aによれば、ケーシング12内の低圧節炭器17より後流側に腐食センサ18を設け、腐食センサ18の腐食電流を検知することで、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管を有する設備が燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食を検知することができると共に、その腐食度合いも検知することができる。これにより、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる炉内設備の腐食状況を検知し、その状況に応じ適切な対応を行うことができる。
また、本実施例においては、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Aは、ケーシング12内に腐食センサ18を1つ設けるようにしているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、図5に示すように、腐食センサ18を低圧節炭器17の長手方向に複数設けるようにしてもよい。これにより、ケーシング12内の燃焼排ガス11の流れ方向に対して垂直する方向における燃焼排ガス11中のH2SO4に起因して生じる炉内設備の腐食状況を同時に検知することができるため、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4の分布にムラがある場合でも安定してケーシング12内の節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管を有する設備の腐食を測定することができる。
また、本実施例においては、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Aは、低圧、高圧の2系統を備える構成であるが、本実施例はこれに限定されるものではなく、低圧、中圧、高圧の3系統を備える構成であってもよい。
また、本実施例においては、本実施例に係る排熱回収ボイラ10A内の構成は、燃焼排ガス11の流れ方向に沿って前流側から高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17の順に配置されているが、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Aはこれに限定されるものではなく、例えば、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16、低圧節炭器17の配置や配管等を適宜他の構成に変更することができる。
本発明による実施例2に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る排熱回収ボイラの構成は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラの構成と同様であるため、実施例1に係る排熱回収ボイラと同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図6は、本実施例に係る排熱回収ボイラの構成を簡略に示す図である。図6に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Bは、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍に腐食センサ18を設けたものである。また、各々の腐食センサ18は、ケーシング12内の略中央部分に設けられている。また、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍に温度計39を設けている。
各腐食センサ18により、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の表面近傍の腐食電流を検出し、温度計39により、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度を測定している。
ガス入口部21から流入する燃焼排ガス11のガス温度は600℃程度であり、出口ダンパ22から排出される燃焼排ガス11のガス温度は110℃程度であるため、燃焼排ガス11のガス温度はガス入口部21から出口ダンパ22に向かって徐々に低くなる。しかし、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の内部に設けられる伝熱管内を流れる給水の温度は異なるため、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度は、これらの位置関係や燃焼排ガス11のガス温度のみにより決まるものではない。高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管内を流れる給水の温度が極端に低い場合には、燃焼排ガス11のガス温度が例えば200℃以上であっても、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度が150℃以下の場合には酸露点以下となる。そのため、燃焼排ガス11にH2SO4が含まれている場合、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面にH2SO4が付着する虞がある。
そこで、本実施例によれば、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍に腐食センサ18を設けているため、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17内の伝熱管などが燃焼排ガス11に含まれるH2SO4などのガス成分に起因して生じる腐食を検知することができると共に、各領域での腐食度合いも検知することができる。これにより、プラントの起動時や運転停止後も継続的に高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の腐食度合いを検知することができるため、各々の腐食状況に応じ適切な対応を行うことができる。
また、本実施例においては、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍に腐食センサ18を設けているが、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Bはこれに限定されるものではなく、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17いずれか1つ以上の後流側の表面近傍に腐食センサ18を設けるようにしてもよい。
本発明による実施例3に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る排熱回収ボイラの構成は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラの構成と同様であるため、実施例1に係る排熱回収ボイラと同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図7は、本実施例に係る排熱回収ボイラの構成を示す概略図である。図7に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Cは、挿入管41と、ヘッダ42と、駆動装置43とを有する。挿入管41はケーシング12の側壁上部に設けられたガスシール部44から挿入され、挿出自在に設けられている。ヘッダ42は、挿入管41の先端部分に設けられ、腐食センサ18を挿入管41に固定するものである。駆動装置43は、ケーシング12の外部に設けられ、挿入管41をケーシング12内で挿入管41の挿入方向に移動可能とさせるためのものである。
駆動装置43は、挿入管41を進退自在に支持する軸受45と、挿入管41と平行なるように支持されたネジ軸46と、該ネジ軸46を回転させるモータ47と、挿入管41の外周に固着されネジ軸46に螺合しているボールネジ48とからなる。モータ47が駆動してネジ軸46が回転することで、その回転方向に従い挿入管41が進退動する。
駆動装置43により、ヘッダ42は挿入管41が進退動することによってケーシング12内を高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の長手方向に沿って往復動する。
高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の長手方向に沿って腐食センサ18を移動させながら腐食センサ18の低温腐食を検知することで、腐食センサ18の移動方向の腐食度合いを検知することができる。プラントが通常運転している際には、ケーシング12内の温度分布のばらつき等は少ないが、プラントの運転停止時や起動時などでH2SO4や水分が多い雰囲気となる状況になると、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17などの伝熱管にH2SO4が付着して低温腐食を生じ易くなる。
本実施例によれば、腐食センサ18を高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の長手方向に移動させることができるため、腐食センサ18の腐食電流の傾きの変化から低圧節炭器17などに用いられる伝熱管などの長手方向における腐食度合いを検知することができる。これにより、プラントの起動時や運転停止後でも継続的に高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の腐食度合いを検知することができるため、各々の腐食状況に応じ適切な対応を行うことができるため、伝熱管等の腐食が進行するのを抑制し、低圧節炭器17等に用いられる伝熱管等の延命化を図ることができる。
また、本実施例においては、駆動装置43は図7に示すような構成のものを用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、挿入管41をケーシング12内で進退動可能にできる装置であればよい。
本発明による実施例4に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る排熱回収ボイラの構成は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラの構成と同様であるため、実施例1に係る排熱回収ボイラと同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図8は、本実施例に係る排熱回収ボイラに用いられる腐食センサを備えた多面体支持部の構成の一例を簡略に示す図であり、図9は、図8のA−A方向から見た図である。図8、9に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラは、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17に用いられる伝熱管51の一部の外周に、多面体支持部52を有する。本実施例においては、多面体支持部52は4面体形状とし、その4つの面53−1〜53−4に腐食センサ18を設けている。多面体支持部52の4つの面53−1〜53−4に腐食センサ18を設け、多面体支持部52の各面における腐食センサ18が燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食電流を検知することで、伝熱管51の周方向における腐食と、その腐食度合いを検知することができる。
これにより、プラントの起動時や運転停止後でも継続的に高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管51などの腐食を更に精度高く検知することができるため、各々の腐食状況に応じ適切な対応を行うことができるため、伝熱管51等の腐食が進行するのを抑制し、低圧節炭器17等に用いられる伝熱管51等の延命化を図ることができる。
本実施例においては、多面体支持部52は、4面体形状としているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、4面以外に複数の面を有するものでもよい。
また、本実施例においては、多面体支持部52は、伝熱管51に1つしか設けていないが、本実施例はこれに限定されるものではなく、多面体支持部52は1つの伝熱管51に複数設けてもよい。
本発明による実施例5に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る排熱回収ボイラの構成は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラの構成と同様であるため、実施例1に係る排熱回収ボイラと同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図10は、本実施例に係る排熱回収ボイラの構成を示す概略図である。図10に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Eは、ケーシング12と、高圧過熱器13と、高圧蒸発器14と、高圧節炭器15と、低圧蒸発器16と、低圧節炭器17と、ガス採取装置61Aとを有する。
ガス採取装置61Aは、ガス採取管62A、62Bと、ガス収容容器63と、腐食センサ18とを有する。ガス採取管62A、62Bはガス収容容器63と連結されており、腐食センサ18はガス収容容器63内に設けられている。また、ガス採取管62A、62Bの先端部分には、温度計64A、64Bが設けられ、ガス収容容器63内には温度計64Cが設けられている。また、ガス採取管62A、62Bには、調節弁V11、V12が設けられており、ガス採取管62A、62Bから採取する燃焼排ガス11のガス量は、調節弁V11、V12の開度により調整される。
ガス採取管62A、62Bは、ケーシング12内の中でも燃焼排ガス11の流れ方向の最も後流側に設けられており、本実施例においては、ガス採取管62A、62Bは、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17のうち、燃焼排ガス11のガス流れ方向の最も後流側に設けられている低圧節炭器17の上方側の表面近傍に設けられている。また、ガス採取管62Aは、低圧節炭器17の長手方向の端部近傍に設けられ、ガス採取管62Bは、低圧節炭器17の長手方向の略中央部分に設けられている。
ガス採取管62Aから燃焼排ガス11を採取してガス収容容器63内に送給する。この時、調節弁V11を開放して調節弁V12を閉鎖する。ガス採取管62Aから採取した燃焼排ガス11は、ガス採取管62Aを通過してガス収容容器63内に送給され、腐食センサ18と接触する。その後、ガス収容容器63内に送給された燃焼排ガス11は、ポンプ65により抜き出され、調節弁V13を開放することで、放出される。
また、ガス採取管62Bから燃焼排ガス11を採取してガス収容容器63内に送給する時は、調節弁V12を開放して調節弁V11を閉鎖する。これにより、ガス採取管62Bから採取した燃焼排ガス11は、ガス採取管62Bを通過してガス収容容器63内に送給され、腐食センサ18と接触する。
本実施例では、ガス採取管62Aから採取した燃焼排ガス11をガス収容容器63内からポンプ65により連続的に放出するようにしているが、これに限定されるものではなく、ガス採取管62Aから採取した燃焼排ガス11をガス収容容器63内に所定時間留め、ガス収容容器63内を燃焼排ガス11の雰囲気とし、燃焼排ガス11を腐食センサ18と接触させるようにしてもよい。所定時間、燃焼排ガス11を腐食センサ18と接触させた後、ガス収容容器63内の燃焼排ガス11をポンプ65により放出する。
また、ガス収容容器63の周囲には、加熱器を設けておくことが好ましい。加熱器としては、例えばヒーター等が挙げられる。温度計64Cによりガス収容容器63内の温度を測定し、ガス採取管62A、62Bの先端部分に設けている温度計64A、64Bで測定された温度に基づいてガス収容容器63内の温度をガス採取管62A、62Bから燃焼排ガス11を採取した雰囲気と略同じ温度となるように加熱器でガス収容容器63を加熱する。これにより、ガス採取管62A、62Bから燃焼排ガス11を採取した雰囲気と略同じ条件で腐食センサ18が燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して腐食が生じているか否かを検知することができる。
また、制御装置37は、温度計64A、64Bで測定されたケーシング12内の温度と温度計64Cで測定されたガス収容容器63内の温度との温度差を検知し、電圧を制御して加熱器によりガス収容容器63内の加熱温度を調整するようにしてもよい。
ガス採取管62Aから燃焼排ガス11を抜き出した位置における腐食センサ18の腐食の有無を検知した後、調節弁V11、V12を閉鎖して、ガス収容容器63内の腐食センサ18を交換する。その後、調節弁V11を閉鎖したまま調節弁V12を開放する。これにより、ガス採取管62Bから燃焼排ガス11を抜き出して、ガス収容容器63内でガス採取管62Bから抜き出した燃焼排ガス11を腐食センサ18と接触させ、ガス採取管62Bから燃焼排ガス11を抜き出した位置での腐食センサ18の腐食の有無を検知する。ガス収容容器63内に送給された燃焼排ガス11は、ポンプ65により抜き出され、調節弁V13を開放することで、放出される。
ガス採取管62A、62Bから採取した燃焼排ガス11による腐食センサ18の腐食電流とその値を検知することで、低圧節炭器17の長手方向における燃焼排ガス11による腐食度合いを検知することができる。また、腐食センサ18はケーシング12の外部に設けているため、腐食センサ18の交換を容易に短時間で行うことができ、プラントの起動時や運転時、運転停止後のいかなる場合でも安全に行うことができる。
ガス採取管62A、62Bは、低圧節炭器17の燃焼排ガス11のガス流れ方向の前流側、後流側のいずれに設けてもよいが、本実施例のように、ガス採取管62A、62Bは、低圧節炭器17の燃焼排ガス11のガス流れ方向の後流側に設けることが好ましい。上述のように、燃焼排ガス11は、低圧節炭器17を通過する際に低圧節炭器17と熱交換することで、燃焼排ガス11の温度は低下するため、燃焼排ガス11の温度は酸露点の温度よりも低くなり、H2SO4が液化しやすくなる。また、ガス採取管62A、62Bを低圧節炭器17よりも燃焼排ガス11のガス流れ方向の前流側に設けると、ガス採取管62A、62Bは、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16で熱交換された燃焼排ガス11を採取するため、低圧節炭器17の燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食の影響を正確に測定することは困難である。そのため、ガス採取管62A、62Bは、低圧節炭器17の燃焼排ガス11のガス流れ方向の後流側に設けることで、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16を通過した燃焼排ガス11による影響を抑制しつつ、低圧節炭器17の燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食の影響をより正確に測定することができる。
また、本実施例においては、ガス採取管62A、62Bは、低圧節炭器17の上方側の表面近傍に設けているが、本実施例は、これに限定されるものではなく、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15および低圧蒸発器16のいずれかがケーシング12内で燃焼排ガス11の流れ方向の最も後流側に設けられている場合には、その上方側の表面近傍にガス採取管62A、62Bを設けるようにする。
また、本実施例においては、ガス採取管62Aを低圧節炭器17の長手方向の端部に設け、ガス採取管62Bをケーシング12内の略中央部分に設けているが、本実施例は、これに限定されるものではなく、ガス採取管62A、62Bは低圧節炭器17の長手方向の任意の位置に設けてもよい。
このように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Eは、ケーシング12内の燃焼排ガス11をガス採取管62A、62Bを介してケーシング12の外部に設けたガス収容容器63に採取し、ガス収容容器63内に設けた腐食センサ18を用いて腐食電流を検知している。そのため、プラントの起動時や運転時、運転停止後でも継続的にケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備の燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食を検知することができると共に、その腐食度合いも検知することができる。これにより、ケーシング12やその内部に設けられている設備の腐食状況に応じ適切な対応を行うことができるため、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因してケーシング12やその内部に設けられている設備の腐食の進行を抑制し、延命化を図ることができる。
また、腐食センサ18はケーシング12の外部に設けているため、腐食センサ18が劣化等して交換が必要な場合、プラントの起動時や運転時、運転停止後のいかなる場合でも安全に容易に交換することができる。
また、本実施例においては、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Eは、ケーシング12内にガス採取管62A、62Bを設けるようにしているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、ケーシング12の大きさ、節炭器、蒸発器、過熱器の長手方向の大きさ等に応じて、ガス採取管を複数設けるようにしてもよい。これにより、ケーシング12内の節炭器、蒸発器、過熱器の長手方向における燃焼排ガス11中のH2SO4に起因して生じる節炭器、蒸発器、過熱器などの腐食状況を更に精度良く検知することができるため、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4の分布にムラがある場合でも安定してケーシング12内の節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管を有する設備の腐食を検知することができる。
本発明による実施例6に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る排熱回収ボイラの構成は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラの構成と同様であるため、実施例1に係る排熱回収ボイラと同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図11は、本実施例に係る排熱回収ボイラの構成を示す概略図である。図11に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Fは、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍にガス採取管62A−1〜62A−5、62B−1〜62B−5を設けたものである。また、ガス採取管62A−1〜62A−5は、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の長手方向の端部近傍に設けられ、ガス採取管62B−1〜62B−5は、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の長手方向の略中央部分に設けられている。
また、ガス採取管62A−1〜62A−5、62B−1〜62B−5の先端部分には、温度計64A−1〜64A−5、64B−1〜64B−5が設けられ、ガス収容容器63−1〜63−5内には温度計64C−1〜63C−5が設けられている。
各々の腐食センサ18により腐食電流を検出し、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々のH2SO4による腐食を検知する。また、温度計64A−1〜64A−5、64B−1〜64B−5により、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面近傍の温度を測定している。
また、ガス採取管62A−1〜62A−5、62B−1〜62B−5には、調節弁V11−1〜V11−5、V12−1〜V12−5が設けられており、ガス採取管62A−1〜62A−5、62B−1〜62B−5から抜き出す燃焼排ガス11のガス量は、調節弁V11−1〜V11−5、V12−1〜V12−5により調整される。
調節弁V11−1〜V11−5を開放して調節弁V12−1〜V12−5を閉鎖し、ガス採取管62A−1〜62A−5から燃焼排ガス11を抜き出してガス収容容器63内に送給する。ガス採取管62A−1〜62A−5から抜き出した燃焼排ガス11は、ガス収容容器63−1〜63−5内に送給され、腐食センサ18と接触する。その後、ガス収容容器63−1〜63−5内の燃焼排ガス11は、ポンプ65−1〜65−5により抜き出され、調節弁V13−1〜V13−5を開放することで、放出される。
ガス採取管62A−1〜62A−5から燃焼排ガス11を抜き出した位置における腐食センサ18の腐食の有無を検知した後、調節弁V11−1〜V11−5、V12−1〜V12−5を閉鎖して、ガス収容容器63−1〜63−5内の腐食センサ18を交換する。その後、調節弁V11−1〜V11−5を閉鎖したまま調節弁V12−1〜V12−5を開放する。ガス採取管62B−1〜62B−5から抜き出した燃焼排ガス11は、ガス収容容器63−1〜63−5内に送給され、腐食センサ18と接触する。その後、ガス収容容器63−1〜63−5内の燃焼排ガス11は、ポンプ65−1〜65−5により抜き出され、調節弁V13−1〜V13−5を開放することで、放出される。
ガス入口部21から流入する燃焼排ガス11のガス温度は600℃程度であり、出口ダンパ22から排出される燃焼排ガス11のガス温度は110℃程度であるため、燃焼排ガス11のガス温度はガス入口部21から出口ダンパ22に向かって徐々に低くなる。しかし、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の内部に設けられる伝熱管内を流れる給水の温度は異なるため、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度は、これらの位置関係や燃焼排ガス11のガス温度のみにより決まるものではない。高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管内を流れる給水の温度が極端に低い場合には、燃焼排ガス11のガス温度が例えば200℃以上であっても、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面温度が150℃以下の場合には酸露点以下となる。そのため、燃焼排ガス11にH2SO4が含まれている場合、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の伝熱管の表面にH2SO4が付着する虞がある。
そこで、本実施例によれば、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍から燃焼排ガス11をガス採取管62A−1〜62A−5又はガス採取管62B−1〜62B−5を介してケーシング12の外部に設けたガス収容容器63−1〜63−5に採取し、ガス収容容器63−1〜63−5内に設けた腐食センサ18で腐食電流を検知することで、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管を有する設備の各領域での腐食の有無と、その腐食度合いを検知することができる。
これにより、プラントの起動時や運転時、運転停止後のいかなる場合でも高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の腐食状況に応じ適切な対応を行うことができる。この結果、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因してケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備の腐食状況を検知し、その状況に応じ適切な対応を行うことができる。
また、各腐食センサ18は、ケーシング12の外部に設けているため、腐食センサ18のいずれか1つが劣化等した場合でも、プラントの起動時や運転時、運転停止後のいかなる場合でも劣化して交換が必要な腐食センサ18のみを安全、かつ容易に交換することができる。
また、本実施例においては、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17の各々の後流側の表面近傍にガス採取管62A−1〜62A−5、62B−1〜62B−5を設けているが、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Fはこれに限定されるものではなく、高圧過熱器13、高圧蒸発器14、高圧節炭器15、低圧蒸発器16および低圧節炭器17のいずれか1つ以上の後流側の表面近傍にガス採取管を設けるようにしてもよい。
本発明による実施例7に係る排熱回収ボイラについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る排熱回収ボイラの構成は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラの構成と同様であるため、実施例1に係る排熱回収ボイラと同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図12は、本実施例に係る排熱回収ボイラの構成を示す概略図である。図12に示すように、本実施例に係る排熱回収ボイラ10Gは、図10に示す本発明の実施例5に係る排熱回収ボイラ10Eにおいて、ガス採取装置61Bは、ガス収容容器63内に試験体67を有するものである。試験体67は、ケーシング12やその内部に設けられている節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備と同一の材料を用いて形成されている。
そのため、試験体67の腐食量を測定することで、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管を有する設備の燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して生じる腐食と、その腐食量とを同時に検知することができる。これにより、プラントの起動時や運転時、運転停止後でも、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備の各々の腐食状況等に応じて、継続的により適切な対応を行うことができる。この結果、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因してケーシング12やその内部に設けられている設備の腐食の進行を抑制し、これらの延命化を図ることができる。
また、本実施例においては、試験体67は、ガス収容容器63内に1つしか設けていないが、本実施例はこれに限定されるものではなく、複数の異なる材料からなる試験体67設けるようにしてもよい。ケーシング12や節炭器、蒸発器、過熱器などに用いられる伝熱管の他に複数の設備が含まれ、各々の設備の材料が異なる場合には、各々の設備に対応した材料からなる試験体67をガス収容容器63内に設けることで、各々の設備の腐食量を検知することができる。
本発明による実施例8に係る複合発電設備について、図面を参照して説明する。本実施例に係る複合発電設備は、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラを適用したガスタービンコンバインドサイクル(Gas Turbine Combined Cycle:GTCC)発電システムである。ガスタービンコンバインドサイクル発電システムに用いられる排熱回収ボイラは、上述の図1に示す本発明による実施例1に係る排熱回収ボイラを用いるため、排熱回収ボイラ10Aの説明は省略する。
図13は、本実施例に係るガスタービンコンバインドサイクル発電システムを示す概略図である。図13に示すように、本実施例に係るガスタービンコンバインドサイクル発電システム70Aは、ガスタービン71と、排熱回収ボイラ10Aと、蒸気タービン72と、コンデンサ(復水器)73と、給水循環ライン(給水手段)74とを有する。
ガスタービン71は、大気中から空気76を吸込んで圧縮機77にて圧縮し、高圧の空気を燃焼器78に送給する。一方、燃料となる副生ガス79が燃焼器78へ供給され、圧縮機77から供給された高圧の空気によって燃料が燃焼し、高温・高圧のガスとなる。高温・高圧のガスは、タービン80を回転させてガスタービン71を駆動する。また、さらに蒸気タービン72が排熱回収ボイラ10Aで発生する蒸気(低圧蒸気81、高圧蒸気82)により駆動して、圧縮機77を駆動させると共に、発電機83を駆動して電気出力を発生させ、発電を行う。
本実施例で用いられる副生ガス79は、高炉からの副生ガス(Blast Furnace Gas:BFG)、転炉からの副生ガス(Linz-Donawitz converter:LDG)、コークス炉からの副生ガス(Coke Oven Gas:COG)などを単独若しくは混合したガスであり、S分を含有する。
そして、ガスタービン71で燃焼して発生した燃焼排ガス11は、排熱回収ボイラ10Aに送給される。
排熱回収ボイラ10Aから排出される低圧蒸気81、高圧蒸気82は、蒸気タービン72へ供給される。蒸気タービン72は、排熱回収ボイラ10Aで発生した低圧蒸気81、高圧蒸気82により駆動する。蒸気タービン72の駆動源として用いられた低圧蒸気81、高圧蒸気82は、給水循環ライン74に排出され、復水器73に送給される。復水器73は、蒸気タービン72の駆動源として用いられた低圧蒸気81、高圧蒸気82を復水にする。復水器73から排出される復水はポンプ85により給水循環ライン74を介して排熱回収ボイラ10A内に給水86として送給される。
排熱回収ボイラ10A内に送給された給水86は、低圧節炭器17に送り込まれて燃焼排ガス11と熱交換することで加熱され、低圧蒸発器16内で加熱されて低圧ドラム26に送り込まれて気液分離される。低圧ドラム26で気液分離された低圧蒸気81は、低圧ドラム26から排出され、蒸気タービン72の低圧蒸気タービン88に供給され、低圧蒸気タービン88を回転させる。
また、給水86はポンプ88にて加圧された後、高圧節炭器15に送り込まれて加熱された後、高圧蒸発器14内で加熱されて高圧ドラム25に送り込まれて気液分離される。高圧ドラム25で気液分離された高圧蒸気82は、高圧ドラム25から排出され、高圧過熱器13で過熱された後、蒸気タービン72の高圧蒸気タービン89に供給され、高圧蒸気タービン89を回転させる。
ガスタービン71のタービン80を回転させ、ガスタービン71を駆動させると共に、低圧蒸気81、高圧蒸気82を用いて蒸気タービン72の低圧蒸気タービン88、高圧蒸気タービン89を回転させ、蒸気タービン72を駆動させて、発電機83を駆動して発電を行う。
また、排熱回収ボイラ10Aでは、上述の通り、ケーシング12内に設けた腐食センサ18を用いて腐食電流を検知し、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器など伝熱管が燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して腐食が生じているか否かを検知している。
また、低圧蒸気81、高圧蒸気82は、各々蒸気タービン72へ供給された後、コンデンサ73に供給され、復水となり、排熱回収ボイラ10Aに給水86として循環される。排熱回収ボイラ10Aで生成された低圧蒸気81、高圧蒸気82は蒸気タービン72に供給され、蒸気タービン72を駆動させ、発電機83を駆動して発電を行う。
このように、本実施例に係るガスタービンコンバインドサイクル発電システム70Aによれば、排熱回収ボイラ10A内に設けた腐食センサ18を用い、その腐食電流を検知することで、ケーシング12やその内部に設けられる過熱器、蒸発器、節炭器の伝熱管などが燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して腐食が生じているか否かを検知すると共に、その腐食度合いも検知している。このため、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる炉内設備の腐食状況に応じて適切な対応を行うことができるので、安定してシステムを運転することが可能となり、信頼性の高い複合発電設備を提供することができる。
また、給水86を排熱回収ボイラ10Aに直接送給しているため、排熱回収ボイラ10A内に給水86が供給される入口側における給水86の温度を下げることができ、排熱回収ボイラ10Aにおける熱回収率は向上し、高い発電効率を得ることができる。
また、本実施例においては、図1に示す実施例1に係る排熱回収ボイラ10Aを用いたが、本実施例はこれに限定されるものではなく、実施例2〜7に係る排熱回収ボイラ10B〜10Gを用いてもよい。
図14は、本実施例に係るガスタービンコンバインドサイクル発電システムの他の構成を示す概略図である。図1に示す実施例1に係る排熱回収ボイラ10Aに代えて、図14に示すように、本実施例に係るガスタービンコンバインドサイクル発電システム70Bは、実施例5に係る排熱回収ボイラ10Eを含むようにしてもよい。
排熱回収ボイラ10Eでは、上述の通り、ケーシング12内から燃焼排ガス11を抜き出してケーシング12の外部に設けた腐食センサ18を用いて腐食電流を検知し、ケーシング12やその内部に設けられている、節炭器、蒸発器、過熱器などの伝熱管などの設備が燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して腐食が生じているか否かを検知する。
本実施例に係るガスタービンコンバインドサイクル発電システム70Bによれば、排熱回収ボイラ10Eのケーシング12内から外部に抜き出した燃焼排ガス11を腐食センサ18に接触させ、その腐食電流を検知することで、ケーシング12やその内部に設けられる過熱器、蒸発器、節炭器などの伝熱管が燃焼排ガス11中に含まれるH2SO4に起因して腐食が生じているか否かを検知すると共に、その腐食度合いも検知している。このため、プラントの起動時や運転時、運転停止後などいかなる場合においても、燃焼排ガス11に含まれるH2SO4に起因して生じる炉内設備の腐食状況に応じて適切な対応を行うことができるので、安定してシステムを運転することが可能となり、信頼性の高い複合発電設備を提供することができる。
また、給水86を排熱回収ボイラ10Aに直接送給しているため、排熱回収ボイラ10E内に給水86が供給される入口側における給水86の温度を下げることができ、排熱回収ボイラ10Aにおける熱回収率は向上し、高い発電効率を得ることができる。
また、本実施例においては、蒸気タービン72は低圧、高圧の2系統を備えたものとしているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、低圧、中圧、高圧の3系統としてもよい。
また、本実施例においては、複合発電設備を一軸型のガスタービンコンバインドサイクル発電システムに適用した場合について説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、一軸型以外にガスタービンと蒸気タービンとを別軸に接続する多軸型のガスタービンコンバインドサイクル発電システムとしても同様に適用することができる。