JP2013169558A - レーザ加工方法およびレーザ加工装置 - Google Patents

レーザ加工方法およびレーザ加工装置 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコンカーバイド基板の表面にデブリをほとんど発生させることなく損傷を形成することができるレーザ加工方法を提供すること。
【解決手段】波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を、照射スポットの中心間距離が1.7μm未満となるように照射して、シリコンカーバイド基板の表面に損傷を形成する。パルスレーザ光のパルス幅は、100ナノ秒以上が好ましい。パルスレーザ光の集光点の位置は、シリコンカーバイド基板の表面から上方100μm〜表面から内部100μmの範囲内となるように調整される。
【選択図】図8

Description

本発明は、シリコンカーバイド基板の表面に損傷を形成するレーザ加工方法およびレーザ加工装置に関する。
シリコンカーバイド(炭化ケイ素;以下「SiC」と略記する)は、シリコン(以下「Si」と略記する)に比べて耐電圧性および耐熱性に優れている。SiCは、Siに比べてデバイスの電力損失を約1/10に低減することができるため、パワーエレクトロニクスを支える半導体デバイス向けの材料として注目されている。しかしながら、SiCはSiに比べて非常に硬いため、従来から用いられているダイヤモンドブレードなどではSiC基板を効率的に切断することはできなかった。
一方、近年、ガラス基板や半導体基板などを切断する新たな技術として、レーザ加工方法が提案されている。レーザ加工方法では、レーザ光を基板の表面または内部に照射することで、基板の表面または内部に分割の起点となる損傷を形成する。この後、損傷を形成した基板に機械的応力を加えることで、損傷を起点として基板を分割することができる。
このようなレーザ加工方法では、レーザ光を照射した際にデブリ(加工屑)が発生することがある。デブリが基板に付着してしまうと、製品の信頼性および歩留まりが低下してしまう。このため、デブリの付着を抑制する様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
たとえば、特許文献1に記載の発明は、レーザ加工を行う前にSi基板の表面に保護膜を形成することで、デブリがSi基板に付着することを防いでいる。この発明では、レーザ加工後に保護膜を除去することが必要である。また、特許文献2に記載の発明は、基板に付着する前にデブリを吸引除去することで、デブリが基板に付着することを防いでいる。この発明では、レーザ加工装置に専用のノズルを設ける必要がある。また、特許文献3に記載の発明は、基板の内部に損傷を形成することで、デブリの発生を防いでいる。この発明では、基板を分割するためには、レーザ光を複数回走査して基板内に生じた亀裂を進展させる必要がある。
特開2010−5629号公報 特開2005−88068号公報 特開2011−200926号公報
上述の通り、SiC基板は、Si基板などに比べて非常に硬いため、従来から用いられているダイヤモンドブレードなどでは高精度かつ効率的に切断することはできなかった。そこで、本発明者らは、従来の一般的なレーザ加工方法によりSiC基板を分割することを試みた。しかしながら、従来のレーザ加工方法では、大量のデブリがSiC基板に付着してしまい、高品質な加工を行うことができなかった。また、デブリの付着を抑制する方法としては、上記特許文献1〜3に記載の方法などがあるが、いずれの方法も新たな工程または設備が必要であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、レーザ光を照射するのみで、デブリの発生を抑制しつつSiC基板の表面に損傷を高精度かつ高速に形成することができるレーザ加工方法およびレーザ加工装置を提供することを目的とする。
本発明者は、レーザ加工の分野の技術常識に反し、波長500nm以上のレーザ光を使用することで上記課題を解決できることを見出した。さらに詳しくは、本発明者は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を、照射スポットの中心間距離が0μmを超え、かつ1.7μm未満となるようにSiC基板に照射することで上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のレーザ加工方法に関する。
[1]シリコンカーバイド基板にパルスレーザ光をレンズを通して照射して、前記シリコンカーバイド基板の表面に損傷を形成するステップを含むレーザ加工方法であって:前記パルスレーザ光の波長は、500nm以上であり;前記パルスレーザ光のパルスエネルギーは、70μJ以下であり;前記パルスレーザ光の繰り返し周波数は、80kHz以上であり;前記シリコンカーバイド基板の表面における前記パルスレーザ光の照射スポットの中心間距離は、0μmを超え、かつ1.7μm未満である、レーザ加工方法。
[2]前記パルスレーザ光は、前記シリコンカーバイド基板の分割予定ラインに沿って照射され;前記損傷は、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板の表面に形成される、[1]に記載のレーザ加工方法。
[3]前記パルスレーザ光のパルス幅は、100ナノ秒以上である、[1]または[2]に記載のレーザ加工方法。
[4]前記パルスレーザ光の波長は、10μm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のレーザ加工方法。
[5]前記パルスレーザ光の集光点は、前記シリコンカーバイド基板の表面から上方100μm〜表面から内部100μmの範囲内に位置する、[1]〜[4]のいずれかに記載のレーザ加工方法。
[6]前記レンズの焦点深度をb(μm)とし、前記損傷の深さをd(μm)としたときに、0.7≦d/b≦1.6である、[1]〜[5]のいずれかに記載のレーザ加工方法。
また、本発明は、以下のレーザ加工装置に関する。
[7]波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と、前記パルスレーザ光をシリコンカーバイド基板に照射する光学系と、前記光学系および前記シリコンカーバイド基板の少なくとも一方を移動させて、前記光学系と前記シリコンカーバイド基板とを相対的に移動させる駆動部と、を有し、前記シリコンカーバイド基板の表面における前記パルスレーザ光の照射スポットの中心間距離は、0μmを超え、かつ1.7μm未満である、レーザ加工装置。
[8]前記パルスレーザ光のパルス幅は、100ナノ秒以上である、[7]に記載のレーザ加工装置。
[9]前記パルスレーザ光の波長は、10μm以下である、[7]に記載のレーザ加工装置。
本発明のレーザ加工方法およびレーザ加工装置によれば、デブリの発生を抑制しつつ、SiC基板の表面に損傷を高精度かつ高速に形成することができる。たとえば、本発明のレーザ加工方法およびレーザ加工装置を利用すれば、SiC基板を高精度かつ高速に分割することができる。
図1A〜Dは、本発明のレーザ加工方法を用いたSiC基板の分割工程の一例を示す模式図である。 ショットピッチを説明するための模式図である。 シミュレーションの初期条件を説明するための模式図である。 図4A〜Fは、シミュレーション結果を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。 図6A〜Cは、レーザ加工した後のSiC基板の加工部周辺の例を示す写真である。 図7A〜Fは、パルスレーザ光を照射した後のSiC基板の加工部周辺の写真である。 図8A,Bは、パルスレーザ光を照射した後のSiC基板の加工部周辺の写真である。 図9A〜Eは、パルスレーザ光を照射した後のSiC基板の加工部周辺の写真である。 図10A〜Dは、パルスレーザ光を照射した後のSiC基板の加工部周辺の写真である。 図11A〜Gは、焦点深度が15μmのレンズを用いてレーザ加工したSiC基板の割断面の写真である。 図12A〜Gは、焦点深度が26μmのレンズを用いてレーザ加工したSiC基板の割断面の写真である。
1.本発明のレーザ加工方法
本発明のレーザ加工方法は、加工対象のシリコンカーバイド(SiC)基板にパルスレーザ光を照射して、SiC基板の表面に損傷(例えば、溝)を形成するステップを含む。後述するように、本発明のレーザ加工方法は、1)波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を照射すること、および2)SiC基板の表面におけるパルスレーザ光の照射スポットの中心間距離(以下「ショットピッチ」という;図2参照)が1.7μm未満であることを特徴とする。
図1は、本発明のレーザ加工方法を用いてSiC基板を分割する例を示す模式図である。図1Aに示されるように、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光100をSiC基板110に照射しながら、パルスレーザ光100とSiC基板110との相対的な位置を変える。このとき、パルスレーザ光100の集光点は、SiC基板110の外部、表面または内部に位置し、かつ照射スポットのショットピッチが1.7μm未満となるように、SiC基板110の分割予定ライン120に沿って移動する。このように所定のパルスレーザ光100を走査することで、図1Bに示されるように、分割予定ライン120に沿って損傷130を形成することができる(スクライブ工程)。この後、図1Cおよび図1Dに示されるように、損傷130を形成されたSiC基板110に折曲力および引張力を加えることにより、SiC基板110を分割予定ライン120に沿って容易に割断することができる(ブレーク工程およびエキスパンド工程)。
以下、本発明のレーザ加工方法におけるパルスレーザ光の照射条件について詳細に説明する。
[波長]
本発明のレーザ加工方法は、SiC基板に照射するレーザ光の波長が500nm以上であることを一つの特徴とする。
本発明のレーザ加工方法では、多光子吸収や不純物による吸収、格子欠陥による吸収などにより損傷を形成する。したがって、所望の加工を実現するためには、1光子1吸収が生じることを回避しなければならない。SiCのバンドギャップ(Eg)は約3eVであり、これを波長に換算すると413nmである。よって、1光子1吸収が生じることを回避するためには、413nmを越える波長のレーザ光を照射すればよい。吸収裾や不純物準位などを考慮すると、1光子1吸収が生じることを確実に回避するためには、500nm以上の波長のレーザ光を照射することが好ましい。
波長500nm以上のレーザ光をSiC基板に照射することで、電子遷移による吸収を回避することができ、加工時に発生するデブリの量を顕著に低減することができる(実施例2参照)。一方、波長500nm未満のレーザ光をSiC基板に照射すると、大量のデブリが発生するおそれがある。なお、波長10μm以上のレーザ光をSiC基板に照射すると、振動遷移による吸収が生じてしまい、所望の加工を行うことができなくなるおそれがある。したがって、SiC基板に照射するレーザ光の波長は、10μm以下であることが好ましい。
[パルスエネルギー]
本発明のレーザ加工方法は、SiC基板に照射するパルスレーザ光のパルスエネルギーが70μJ以下であることも一つの特徴とする。パルスエネルギーを70μJ以下とすることで、加工時に発生するデブリの量を顕著に低減することができる(実施例3参照)。一方、パルスエネルギーが70μJ超のパルスレーザ光を照射すると、大量のデブリが発生するおそれがある。
ここで、パルスエネルギーが70μJ以下のパルスレーザ光を照射することでデブリの発生量が低減する理由について、推察されるメカニズムを説明する。表1は、SiCおよびSiの物性を示す表である。
表1に示されるように、SiCとSiとでは、比熱はほぼ同じである。したがって、同じ条件でパルスレーザ光を照射すれば、集光点付近において同じように温度が上昇し、同じように熱応力が加わることになる。一方、SiCの破壊靭性値はSiの破壊靭性値よりも顕著に大きいため、加工に要するエネルギーは、SiよりもSiCの方が大きい。したがって、Siを加工した場合よりもSiCを加工した場合の方が、加工時の集光点付近において温度がより上昇し、熱応力がより大きくなる。
ところが、SiCのヤング率は、Siのヤング率よりも顕著に大きい。すなわち、SiCは、Siに比べて膨張による熱応力に対して撓みにくい。したがって、SiCは、Siのように撓むことにより熱応力を逃がすことができない。そして、SiCに過剰なエネルギーが供給されると、周辺領域に過分な応力が加わり、破砕されてしまうと考えられる。よって、パルスエネルギーが高い(70μJ超)パルスレーザ光でSiCを加工すると、SiCは容易に破砕されてしまい、大量のデブリが発生してしまうことになる。
したがって、デブリの発生量を低減させる観点からは、パルスエネルギーが70μJ以下のパルスレーザ光をSiC基板に照射することが好ましい。また、同様の理由により、パルスレーザ光のパルス幅は、100ナノ秒以上であることが好ましい。パルス幅を長くすることで、パルスレーザ光の尖頭出力を小さくすることができ、結果としてSiCの破砕を抑制することができる。
[照射スポットの空間的および時間的間隔]
本発明のレーザ加工方法は、SiC基板に照射するパルスレーザ光の繰り返し周波数が80kHz以上であること、およびSiC基板表面におけるパルスレーザ光のショットピッチ(図2参照)が0μmを超え、かつ1.7μm未満であることも一つの特徴とする。繰り返し周波数およびショットピッチを上記範囲内となるように調整することで、加工時に発生するデブリの量を顕著に低減することができる(実施例1および実施例4参照)。一方、繰り返し周波数およびショットピッチが上記範囲外となると、大量のデブリが発生するおそれがある。
前述の通り、SiC基板にパルスレーザ光を照射すると、冷熱サイクルに伴う熱応力が繰り返し発生する。このとき、急激に発生した熱応力に耐え切れないSiCが破砕し、デブリが発生してしまう。本発明者は、このようなSiCの破砕を抑制する手段を検討したところ、パルスレーザ光照射の時間間隔および照射スポットのショットピッチを短くして、急激な温度変化を抑制することでSiCの破砕を抑制できると考えた。
前述の通り、パルスレーザ光のパルスエネルギーを小さくすることで、熱応力発生の速度を遅くすることができる。その結果、熱応力によるSiCの破砕が抑制されると考えられる。また、パルスレーザ光の繰り返し周波数を大きくするとともに、照射スポットのショットピッチを短くすることで、パルス間にSiCが急激に冷却されることを防ぐことができる。その結果、加熱および冷却のサイクルによるSiCの破砕が抑制されると考えられる。
本発明者は、パルスレーザ光を照射したときのSiC基板の温度変化を、熱伝導方程式に基づきシミュレーションした。図3は、シミュレーションの条件を示す模式図(SiC基板の断面図)である。図3に示されるように、厚さ150μmのSiC基板にパルスレーザ光を照射して、光軸状の各点が2730℃(SiCの融点)に達したと仮定する。図に示されるように、SiC基板の周囲には、23℃の空気が対流しているものとする。また、SiC基板の熱伝導率は、100Wm−1−1または350Wm−1−1であるものとする。この状態を時刻t=0(μ秒)として、光軸状の4点(T1、T2、T3およびT4)について温度変化をシミュレーションした。
図4A〜Cは、熱伝導率を100Wm−1−1とした場合の各点の温度変化のシミュレーション結果を示すグラフである。図4Aは、パルスレーザ光照射後0〜1マイクロ秒の間の温度変化を示すグラフであり、図4Bは、パルスレーザ光照射後0〜10マイクロ秒の間の温度変化を示すグラフであり、図4Cは、パルスレーザ光照射後0〜1ミリ秒の間の温度変化を示すグラフである。図4D〜Fは、熱伝導率を350Wm−1−1とした場合の各点の温度変化のシミュレーション結果を示すグラフである。図4Dは、パルスレーザ光照射後0〜1マイクロ秒の間の温度変化を示すグラフであり、図4Eは、パルスレーザ光照射後0〜10マイクロ秒の間の温度変化を示すグラフであり、図4Fは、パルスレーザ光照射後0〜1ミリ秒の間の温度変化を示すグラフである。各グラフにおいて、「■」はT1の温度を示し、「●」はT2の温度を示し、「▲」はT3の温度を示し、「▼」はT4の温度を示す(各プロットはほとんど同じ位置に重なっている)。
図4A、図4B、図4Dおよび図4Eのグラフに示されるように、パルスレーザ光照射後10マイクロ秒までは、光軸状の各点において温度が維持されている。これは、繰り返し周波数が100kHzの場合は、パルス間で温度がほとんど低下しないことを意味する。一方、図4Cおよび図4Fのグラフに示されるように、パルスレーザ光照射後1ミリ秒の時点では、光軸状の各点において温度が約5℃低下している。これは、繰り返し周波数が1kHzの場合は、パルス間で温度が約5℃低下することを意味する。
前述の通り、デブリの発生量を低減する観点からは、冷熱サイクルを与えるのではなく、溶融状態を維持して加工することが好ましい。上記のシミュレーション結果から、パルスレーザ光の繰り返し周波数を100kHz付近以上とすることで、デブリの発生量を低減できることが示唆される。本発明者による実験によれば、パルスレーザ光の繰り返し周波数を80kHz以上とすることで、デブリの発生量を顕著に低減させられることがわかっている(実施例4参照)。したがって、パルスレーザ光の繰り返し周波数は、80kHz以上であることが好ましい。同様の理由により、パルスレーザ光のショットピッチは、0μmを超え、かつ1.7μm未満であることが好ましい。
[その他]
本発明のレーザ加工方法において、レーザ光源として用いるレーザの種類は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光のレーザ光を出射することができれば特に限定されない。そのようなレーザの例には、HoレーザやErレーザ、各種半導体レーザなどが含まれる。
レーザ光の集光点の位置は、特に限定されず、SiC基板の外部、表面または内部のいずれであってもよい。加工効率および損傷の幅の観点からは、レーザ光の集光点の位置は、SiC基板の表面から上方100μm〜表面から内部100μmの範囲内に位置することが好ましく、SiC基板の表面から上方20μm〜表面から内部80μmの範囲内に位置することがより好ましい。ここで「レーザ光の集光点の位置」とは、SiC基板の屈折率が空気と同じであると仮定した場合の集光点の位置(レンズオフセット)を意味する。
本発明のレーザ加工方法によりSiC基板に損傷を形成した後に、損傷を起点としてSiC基板を分割した場合、条件によっては割断面の凹凸の高さが大きくなることがある。このように割断面の凹凸の高さが大きくなることは、加工精度の観点から好ましくない。本発明者は、集光レンズの焦点深度(レイリー長)をb(μm)とし、SiC基板に形成される損傷の深さをd(μm)としたときに、0.7≦d/b≦1.6を満たすように加工条件を調整すると、割断面の平滑性が向上することを見出した(実施例5参照)。したがって、割断面の平滑性が要求される場合は、上記条件を満たすように各種条件を調整することが好ましい。「d/b」が0.7未満の場合、損傷が浅く、適切に分割することができないため、割断面の平滑性が低下するおそれがある。一方、「d/b」が1.6超の場合も、理由は不明であるが、割断面の平滑性が低下する傾向がある(実施例5参照)。
本発明のレーザ加工方法を実施する手段は、特に限定されない。たとえば、本発明のレーザ加工方法は、次に説明する本発明のレーザ加工装置を用いて実施されうる。
2.本発明のレーザ加工装置
本発明のレーザ加工装置は、加工対象のSiC基板にパルスレーザ光を照射して、SiC基板の表面に損傷を形成する装置である。本発明のレーザ加工装置は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を、照射スポットのショットピッチが0μmを超え、かつ1.7μm未満となるようにSiC基板に照射することを特徴とする。
本発明のレーザ加工装置は、少なくとも、SiC基板に照射するレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光をSiC基板に照射する光学系と、光学系(レーザ光)とSiC基板とを相対的に移動させる駆動部とを有する。以下、各構成要素について説明する。
レーザ光源は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を出射する。前述の通り、レーザ光源として用いるレーザの種類は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を出射することができれば特に限定されない。そのようなレーザの例には、HoレーザやErレーザ、各種半導体レーザなどが含まれる。
光学系は、所望の位置に集光点が位置するように、レーザ光源から出射されたレーザ光をSiC基板に照射する。通常、光学系は、レーザ光のビーム径を最適化するテレスコープ光学系や、レーザ光を所望の位置に集光させる集光レンズなどを含む。
駆動部は、パルスレーザ光がSiC基板の分割予定ラインに沿って照射されるように、光学系(レーザ光)とSiC基板とを相対的に移動させる。また、駆動部は、パルスレーザ光のショットピッチが0μmを超え、かつ1.7μm未満となるように、光学系(レーザ光)とSiC基板とを相対的に移動させる。駆動部は、SiC基板を載置するステージを移動させてもよいし、光学系を移動させてもよいし、ステージおよび光学系の両方を移動させてもよい。
その他、後述する実施の形態で説明するように、本発明のレーザ加工装置は、加工対象のSiC基板を載置するステージや、所望の位置に集光点を位置させるための自動照準システムなどを有していてもよい。
以上の通り、本発明のレーザ加工方法およびレーザ加工装置は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を、照射スポットのショットピッチが0μmを超え、かつ1.7μm未満となるようにSiC基板に照射することで、SiC基板の表面にデブリをほとんど発生させることなく損傷を高精度かつ高速に形成することができる。したがって、本発明のレーザ加工方法およびレーザ加工装置を利用すれば、SiC基板を高精度かつ高速に分割することができる。
なお、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光をSiC以外の物質に照射しても、SiCに照射したときのようにデブリをほとんど発生させることなく損傷を高精度かつ高速に形成することはできない。
一例として、典型的な難加工性材料である石英やサファイアなどに、波長500nm以上のパルスレーザ光を照射した場合について説明する。この場合、これらの透明誘電体材料のバンドギャップは5〜9eVと大きいため、波長500nm以上の光では3光子吸収または4光子吸収が生じてようやく電子のバンド間遷移を誘起できる。パルス幅の長い(ナノ秒〜マイクロ秒)レーザ光で3光子吸収または4光子吸収を誘起しようとすれば、尖頭出力が非常に大きい(GW/cm以上)パルスレーザ光を照射する必要がある。しかしながら、このような強い光を集光照射すると、3光子吸収または4光子吸収が生じる前に他の非線形過程(絶縁破壊)が必ず誘起されてしまうため、多量のデブリが発生するとともに損傷の形状が大きく乱れてしまう。したがって、石英やサファイアなどに波長500nm以上のレーザ光を照射しても、非常に乱れた形状の損傷しか形成することができない。
また、金属加工では、炭酸ガスレーザ(波長10μm)を照射することがあった。しかしながら、この方法でも損傷を高精度かつ高速に形成することはできない。すなわち、この方法は、金属の格子振動を直接励起して行う熱溶融加工であるため、高精度の加工(空間分解能がμmレベル)を行うことはできない。
3.実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
図5は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置(SiC基板のスクライビング装置)の構成を示す模式図である。
図5に示されるように、本発明のレーザ加工装置200は、レーザ光源210、テレスコープ光学系220、集光レンズ230、ステージ240、AFカメラ250、XYステージコントローラ260、Zコントローラ270およびコンピュータ280を有する。
レーザ光源210は、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を出射する。レーザ光源は、例えば、波長500nm〜10μm、パルス幅100ナノ秒以上、繰り返し周波数80kHz〜10MHz、パルスエネルギー1〜70μJのパルスレーザ光を出射する。
テレスコープ光学系220は、好ましい加工形状を得るために、レーザ光源210から出射されたパルスレーザ光のビーム径を最適化する。
集光レンズ230は、テレスコープ光学系220を透過したレーザ光を集光する。たとえば、集光レンズ230は、顕微鏡用の対物レンズである。
ステージ240は、加工対象のSiC基板110が載置される載置台と、この載置台を移動させることができる駆動機構とを有する。駆動機構は、載置台をX軸またはY軸方向に移動させたり、X軸またはY軸を中心として回転させたりすることができる。ステージ240上のSiC基板110は、この駆動機構によって分割予定ラインに沿ってXY軸方向に移動される。
AFカメラ250は、SiC基板110の加工部位の表面プロファイルを取得するためのカメラである。取得されたプロファイルは、コンピュータ280に出力される。
XYステージコントローラ260は、コンピュータ280の指示に基づいて、レーザ光の集光位置がSiC基板110の分割予定ラインに沿うように、ステージ240をXY軸方向に移動させる。
Zコントローラ270は、コンピュータ280の指示に基づいて、レーザ光の集光位置がSiC基板110の表面近傍の所望の位置に合うように、集光レンズ230をZ軸方向に移動させる。
コンピュータ280は、レーザ光源210、AFカメラ250、XYステージコントローラ260およびZコントローラ270に接続されており、これら各部を総合的に制御する。たとえば、コンピュータ280は、AFカメラ250およびXYステージコントローラ260を制御して、SiC基板110の表面プロファイルを取得する。また、コンピュータ280は、XYステージコントローラ260およびZコントローラ270を制御して、SiC基板110の分割予定ラインに沿ってレーザ光を走査する。
次に、上記構成を有するレーザ加工装置200を用いてSiC基板110を分割する手順を説明する。
まず、裏面にダイシングテープ140が貼付されたSiC基板110をステージ240の載置台に載置して、AFカメラ250およびXYステージコントローラ260によりSiC基板110の表面プロファイルを取得する。次いで、レーザ光源210からパルスレーザ光を出射して、レーザ光をSiC基板110に照射する。このとき、予め取得した表面プロファイルに基づき、ステージ240をXY軸方向(水平方向)に移動することで、パルスレーザ光で分割予定ラインを走査する。これにより、SiC基板110の分割予定ラインに沿って損傷を形成することができる。
次いで、図示しないブレーク装置およびエキスパンド装置により、SiC基板110に機械的応力を加えて、損傷を起点としてSiC基板110を分割する(図1Cおよび図1D参照)。以上の手順により、SiC基板110は、微小なチップに分割される。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
実施例1では、パルスレーザ光を照射してSiC基板の表面に損傷を形成した場合における、パルスレーザ光のショットピッチとデブリの発生との関係を調べた実験結果を示す。
加工対象物として、SiC単結晶基板(厚さ150μm)を準備した。パルスレーザ光(波長1064nm、パルス幅190ナノ秒)をSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、4.34μmであった。パルスレーザ光のパルスエネルギーは、14μJである。エネルギー密度に換算すると94.6J/cmであり、ピークパワー密度に換算すると4.98×10W/cmである。ステージの移動速度は、照射スポットのショットピッチ(図2参照)が0.1〜1.7μmとなるように調整した。パルスレーザ光の繰り返し周波数は、235kHz、333kHzまたは500kHzである。
レーザ加工を行った後に、デブリの発生の有無を調べた。図6A〜Cは、レーザ加工した後のSiC基板の加工部周辺の例(デブリの有無の判断基準)を示す写真である。図6Aは、デブリが発生しなかったときのSiC基板の表面の写真であり、図6Bは、帯状デブリが発生したときのSiC基板の表面の写真であり、図6Cは、帯状デブリおよび散乱デブリが発生したときのSiC基板の表面の写真である。
図7は、実際にレーザ加工を行った後のSiC基板の加工部周辺の写真である。図7Aは、ショットピッチ0.1μmで加工したSiC基板の表面の写真であり、図7Bは、ショットピッチ0.5μmで加工したSiC基板の表面の写真であり、図7Cは、ショットピッチ0.8μmで加工したSiC基板の表面の写真であり、図7Dは、ショットピッチ1.2μmで加工したSiC基板の表面の写真であり、図7Eは、ショットピッチ1.5μmで加工したSiC基板の表面の写真であり、図7Fは、ショットピッチ1.7μmで加工したSiC基板の表面の写真である。
図7A〜Eに示されるように、ショットピッチが0.1〜1.5μmとなるようにパルスレーザ光を照射した場合は、形成された損傷の周辺にデブリはほとんど観察されなかった。一方、図7Fに示されるように、ショットピッチが1.7μmとなるようにパルスレーザ光を照射した場合は、形成された損傷の周辺に大量のデブリが帯状に発生した。
表2は、パルスレーザ光のショットピッチとデブリの発生との関係を示す表である。表2に示されるように、波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下、かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光をSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成する場合は、パルスレーザ光のショットピッチを1.7μm未満とすることで、デブリの発生を抑制できることがわかる。
[実施例2]
実施例2では、パルスレーザ光を照射してSiC基板の表面に損傷を形成した場合における、パルスレーザ光の波長とデブリの発生との関係を調べた実験結果を示す。
加工対象物として、SiC単結晶基板(厚さ150μm)を準備した。パルスレーザ光(波長355nmまたは1064nm、繰り返し周波数100kHz)をSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面に合わせた。パルスレーザ光のパルス幅は、25ナノ秒(波長が355nmの場合)または190ナノ秒(波長が1064nmの場合)である。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、6.28μm(波長が355nmの場合)または5.81μm(波長が1064nmの場合)であった。パルスレーザ光のパルスエネルギーは、10μJである。エネルギー密度に換算すると32.3J/cm(波長が355nmの場合)または37.7J/cm(波長が1064nmの場合)であり、ピークパワー密度に換算すると1.70×10W/cm(波長が355nmの場合)または1.98×10W/cm(波長が1064nmの場合)である。ステージの移動速度は、照射スポットのショットピッチが0.1μmとなるように調整した。
図8は、レーザ加工を行った後のSiC基板の加工部周辺の写真である。図8Aは、波長1064nmのパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図8Bは、波長355nmのパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真である。
図8Aに示されるように、波長1064nmのパルスレーザ光を照射した場合は、形成された損傷の周辺にデブリはほとんど観察されなかった。一方、図8Bに示されるように、波長355nmのパルスレーザ光を照射した場合は、形成された損傷の周辺に帯状デブリおよび散乱デブリが発生した。
以上の結果から、パルスエネルギーを70μJ以下とし、繰り返し周波数を80kHz以上とし、ショットピッチを1.7μm未満としても、波長が500nm未満の場合はデブリが発生してしまうことがわかる。
[実施例3]
実施例3では、パルスレーザ光を照射してSiC基板の表面に損傷を形成した場合における、パルスレーザ光のパルスエネルギーとデブリの発生との関係を調べた実験結果を示す。
加工対象物として、SiC単結晶基板(厚さ350μm)を準備した。パルスレーザ光(波長1064nm、パルス幅190ナノ秒)をSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、4.34μmであった。パルスレーザ光のパルスエネルギーは、14〜80μJで変化させた。エネルギー密度に換算すると94.6〜540J/cmであり、ピークパワー密度に換算すると4.98×10〜2.84×10W/cmである。繰り返し周波数は、200〜500kHzで変化させた。ステージの移動速度は、照射スポットのショットピッチが0.1μmとなるように調整した。
図9は、レーザ加工を行った後のSiC基板の加工部周辺の写真である。図9Aは、パルスエネルギー14μJ(繰り返し周波数500kHz)のパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図9Bは、パルスエネルギー40μJ(繰り返し周波数300kHz)のパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図9Cは、パルスエネルギー70μJ(繰り返し周波数300kHz)のパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図9Dは、パルスエネルギー80μJ(繰り返し周波数200kHz)のパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真である。図9Eは、図9Dの写真の破線の領域の部分拡大写真である。
表3は、パルスレーザ光のパルスエネルギーとデブリの発生との関係を示す表である。表3に示されるように、波長500nm以上かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光をショットピッチを1.7μm未満でSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成する場合は、パルスレーザ光のパルスエネルギーを70μJ以下とすることで、デブリの発生を抑制できることがわかる。
[実施例4]
実施例4では、パルスレーザ光を照射してSiC基板の表面に損傷を形成した場合における、パルスレーザ光の繰り返し周波数とデブリの発生との関係を調べた実験結果を示す。
加工対象物として、SiC単結晶基板(厚さ150μm)を準備した。パルスレーザ光(波長1064nm、パルス幅190ナノ秒)をSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、5.81μmであった。パルスレーザ光のパルスエネルギーは、14μJである。エネルギー密度に換算すると52.7J/cmであり、ピークパワー密度に換算すると2.78×10W/cmである。繰り返し周波数は、50〜500kHzで変化させた。ステージの移動速度は、照射スポットのショットピッチが0.1μmとなるように調整した。
図10は、レーザ加工を行った後のSiC基板の加工部周辺の写真である。図10Aは、繰り返し周波数500kHzのパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図10Bは、繰り返し周波数100kHzのパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図10Cは、繰り返し周波数80kHzのパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真であり、図10Dは、繰り返し周波数50kHzのパルスレーザ光を照射したSiC基板の表面の写真である。
表4は、パルスレーザ光の繰り返し周波数とデブリの発生との関係を示す表である。表4に示されるように、波長500nm以上かつパルスエネルギーを70μJ以下のパルスレーザ光をショットピッチを1.7μm未満でSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成する場合は、パルスレーザ光の繰り返し周波数を80kHz以上とすることで、デブリの発生を抑制できることがわかる。
[実施例5]
実施例5では、パルスレーザ光を照射してSiC基板を分割した場合における、レンズの焦点深度および損傷の深さと、割断面の平滑性との関係を調べた実験結果を示す。
加工対象物として、SiC単結晶基板(厚さ150μm)を準備した。パルスレーザ光(波長1064nm、繰り返し周波数500kHz、パルス幅190ナノ秒)をSiC基板に照射して、SiC基板の表面に損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。パルスレーザ光の集光には、焦点深度が15μmのレンズまたは焦点深度が26μmのレンズを使用した。集光点は、SiC基板の表面に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、4.3μm(焦点深度が15μmのレンズを使用した場合)または5.8μm(焦点深度が26μmのレンズを使用した場合)であった。パルスレーザ光のパルスエネルギーは、6〜20μJで変化させた。ステージの移動速度は、照射スポットのショットピッチが0.05〜0.30μmとなるように調整した。
SiC基板の表面に損傷を形成した後、ブレーク工程(図1C参照)およびエキスパンド工程(図1D参照)を行うことでSiC基板を分割予定ラインに沿って分割した。その後、各SiC基板について、レーザ加工により形成された損傷の深さを測定するとともに、割断面の平滑性を評価した。割断面の平滑性は、3D測定レーザ顕微鏡(OLS4000;オリンパス株式会社)を用いて測定した。割断面に形成された凹凸の高さが5μm以下の場合は「○」と評価し、5μm超の場合は「×」と評価した。
図11は、焦点深度が15μmのレンズを用いてレーザ加工したSiC基板の割断面の写真である。図11Aおよび図11Bは、パルスエネルギー10μJ、かつショットピッチ0.30μmで加工したSiC基板の割断面の写真であり(d/b=0.75)、図11Cおよび図11Dは、パルスエネルギー10μJ、かつショットピッチ0.05μmで加工したSiC基板の割断面の写真であり(d/b=0.95)、図11Eおよび図11Fは、パルスエネルギー14μJ、かつショットピッチ0.20μmで加工したSiC基板の割断面の写真であり(d/b=1.09)、図11Gは、パルスエネルギー18μJ、かつショットピッチ0.10μmで加工したSiC基板の割断面の写真である(d/b=1.84)。
図12は、焦点深度が26μmのレンズを用いてレーザ加工したSiC基板の割断面の写真である。図12Aおよび図12Bは、パルスエネルギー10μJ、かつショットピッチ0.10μmで加工したSiC基板の割断面の写真であり(d/b=0.91)、図12Cおよび図12Dは、パルスエネルギー14μJ、かつショットピッチ0.20μmで加工したSiC基板の割断面の写真であり(d/b=1.29)、図12Eおよび図12Fは、パルスエネルギー18μJ、かつショットピッチ0.10μmで加工したSiC基板の割断面の写真であり(d/b=1.60)、図12Gは、パルスエネルギー20μJ、かつショットピッチ0.10μmで加工したSiC基板の割断面の写真である(d/b=1.90)。
表5および表6は、レンズの焦点深度および形成された損傷の深さと、割断面の平滑性との関係を示す表である。表5は、焦点深度が15μmのレンズを用いてレーザ加工したときの結果を示し、表6は、焦点深度が26μmのレンズを用いてレーザ加工したときの結果を示す。表5および表6に示されるように、「損傷の深さd/レンズの焦点深度b」の値を0.7以上かつ1.6以下とすることで、割断面の平滑性を向上させうることがわかる。
本発明のレーザ加工方法およびレーザ加工装置は、これまで加工が困難であったSiC基板に損傷を高精度かつ高速に形成することができる。したがって、本発明のレーザ加工方法およびレーザ加工装置は、SiC基板のスクライビング技術およびダイシング技術として有用である。
100 パルスレーザ光
110 シリコンカーバイド基板
120 分割予定ライン
130 損傷
200 レーザ加工装置
210 レーザ光源
220 テレスコープ光学系
230 集光レンズ
240 ステージ
250 AFカメラ
260 XYステージコントローラ
270 Zコントローラ
280 コンピュータ

Claims (9)

  1. シリコンカーバイド基板にパルスレーザ光をレンズを通して照射して、前記シリコンカーバイド基板の表面に損傷を形成するステップを含むレーザ加工方法であって、
    前記パルスレーザ光の波長は、500nm以上であり、
    前記パルスレーザ光のパルスエネルギーは、70μJ以下であり、
    前記パルスレーザ光の繰り返し周波数は、80kHz以上であり、
    前記シリコンカーバイド基板の表面における前記パルスレーザ光の照射スポットの中心間距離は、0μmを超え、かつ1.7μm未満である、
    レーザ加工方法。
  2. 前記パルスレーザ光は、前記シリコンカーバイド基板の分割予定ラインに沿って照射され、
    前記損傷は、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板の表面に形成される、
    請求項1に記載のレーザ加工方法。
  3. 前記パルスレーザ光のパルス幅は、100ナノ秒以上である、請求項1に記載のレーザ加工方法。
  4. 前記パルスレーザ光の波長は、10μm以下である、請求項1に記載のレーザ加工方法。
  5. 前記パルスレーザ光の集光点は、前記シリコンカーバイド基板の表面から上方100μm〜表面から内部100μmの範囲内に位置する、請求項1に記載のレーザ加工方法。
  6. 前記レンズの焦点深度をb(μm)とし、前記損傷の深さをd(μm)としたときに、0.7≦d/b≦1.6である、請求項1に記載のレーザ加工方法。
  7. 波長500nm以上、パルスエネルギー70μJ以下かつ繰り返し周波数80kHz以上のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と、
    前記パルスレーザ光をシリコンカーバイド基板に照射する光学系と、
    前記光学系および前記シリコンカーバイド基板の少なくとも一方を移動させて、前記光学系と前記シリコンカーバイド基板とを相対的に移動させる駆動部と、を有し、
    前記シリコンカーバイド基板の表面における前記パルスレーザ光の照射スポットの中心間距離は、0μmを超え、かつ1.7μm未満である、
    レーザ加工装置。
  8. 前記パルスレーザ光のパルス幅は、100ナノ秒以上である、請求項7に記載のレーザ加工装置。
  9. 前記パルスレーザ光の波長は、10μm以下である、請求項7に記載のレーザ加工装置。
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