JP2013168435A - ロッド型ファイバレーザ増幅器およびロッド型ファイバレーザ発振器 - Google Patents

ロッド型ファイバレーザ増幅器およびロッド型ファイバレーザ発振器 Download PDF

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Hirotsugu Morita
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進 今野
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Abstract

【課題】 高出力動作が可能で、信頼性に優れたロッド型ファイバレーザ増幅器を得る。
【解決手段】 コア内部に誘導放出効果を活性化させる活性媒質がドープされたロッド型ファイバレーザ媒質100と、第1および第2のブロック201、202を有し、第1および第2のブロック201、202それぞれの1つの面を密接させて構成されるとともに、第1および第2のブロック201、202の少なくとも一方には、第1および第2のブロック201、202が密接される面に、コアの中心軸に沿ってロッド型ファイバレーザ媒質100を収納する溝207が設けられ、溝207とロッド型ファイバレーザ媒質100との間に弾性体213が充填されることによりロッド型ファイバレーザ媒質100を保持する媒質ホルダ200と、第1および第2のブロック201、202の少なくとも一方を冷却する冷却手段とを備える。
【選択図】 図5

Description

この発明は、ロッド型ファイバレーザ媒質を保持、冷却するための媒質ホルダを備えたロッド型ファイバレーザ増幅器およびロッド型ファイバレーザ発振器に関するものである。
屈曲性のある光ファイバをレーザ媒質として使用する一般的なファイバレーザでは、コア径と、コアとクラッドとの屈折率差で決まる許容開口数により集光性が選択される。集光性はコア径と許容屈折率との積で決まり、この値が小さくなるほど集光性は高くなる。集光性が理論限界となる所謂シングルモードレーザの場合、コア径は最大でも20μm程度が限界となる。この場合、許容開口数は0.06であり、コアとクラッドとの屈折率差は約0.001と極めて小さい。理論的には更に許容開口数を小さくすることで、シングルモードを維持しながらコア径を拡大することも可能であるが、0.001レベル以下で屈折率差を精確に制御することは困難である。このため、ファイバ材料自体の屈折率差によってシングルモードを選択する構成では、コア径は最大でも20μm程度が上限となる。
また、光ファイバ中を安定して伝播させることが可能な光強度は、誘起される非線形効果によって制限される。即ち、ファイバレーザによって発生することが可能なレーザ出力の上限は、光ファイバの材料とコア径によって制限される。このため、特に尖頭出力の高いパルスレーザ光の発生は通常のファイバレーザでは困難であった。コア径に起因するこれらの課題に対する解決策として、フォトニック結晶ファイバが提案されている。フォトニック結晶ファイバは、コアの周囲に規則的に空孔を設けることによって、クラッド部の等価屈折率を制御する光ファイバであり、空孔の大きさ、配列によりクラッド部の等価的な屈折率を任意に設計することができる。フォトニック結晶ファイバの発明によって、コアとクラッド間の屈折率差を精密に制御することが可能になり、コア径50μmを越えるシングルモードファイバが実現されている。
一方、フォトニック結晶ファイバは屈曲の状態によってクラッド部の等価屈折率が容易に変化するため、一定の形状を維持することが望ましい。このため、外径を1mm以上とすることによって意図的に屈曲性を低下させたロッド型ファイバレーザ媒質が提案されている。
従来の屈曲性のある光ファイバをレーザ媒質として使用した一般的なファイバレーザでは、ヒートシンクを兼ねた媒質ホルダに溝を設け、この溝の中へレーザ媒質である光ファイバを設置し冷却する構成が示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。一方、屈曲性に乏しいロッド型ファイバレーザ媒質を使用したロッド型ファイバレーザについては、ロッド型ファイバレーザ媒質の両端を機械的に支持するのみで、冷却機構等が一切設けられていない構成が文献に開示されている(例えば非特許文献1参照)。また、他の文献にはロッド型ファイバレーザ媒質を流水で直接水冷するとの記載があるが、構成については一切開示されていない(例えば非特許文献2参照)。
特開2000−183429号公報(第3頁、第1図) 特開2006−114769号公報(第7頁、第3図) J. Limpert, N. Deguil-Robin, I. Manek-Hoenninger, and F. Salin, "High-power rod-type photonic crystal fiber laser", OPTICS EXPRESS, 米国, 21 February 2005, Vol.13, No.4, pp.1055-1058. O. Schmidt, J. Rothhardt, F. Roeser, S. Linke, T. Schreiber, K. Rademaker, J. Limpert, S. Ermeneux, P. Yvernault, F. Salin, and A. Tuennermann, "Millijoule pulse energy Q-switched short-length fiber laser", OPTICS LETTERS, 米国, 1 June 2007, Vol.32, No.11, pp.1551-1553
このように屈曲性のある一般的なファイバレーザ媒質に関しては、従来から研究開発が活発に行われており、ファイバレーザ媒質を保持し、冷却する方法についても、数多くの構成が開示されている。一方、ロッド型ファイバレーザ媒質については、保持方法、冷却方法に関する開示例は少ない。例えば非特許文献1に示されるよう両端を機械的に支持する構成においては、ロッド型ファイバレーザ媒質を効果的に冷却することができず、安定な高出力動作が困難である。また、ロッド型ファイバレーザ媒質の母材には、脆性材料であるシリカガラスが使用されていることから、機械的外力の印加により容易に切損へ至るという課題があった。
一方、ロッド型ファイバレーザ媒質に対する冷却性能を向上させるため、非特許文献2には、流水を使用し直接水冷すると記載されている。しかしながら、ロッド型ファイバレーザ媒質を直接水冷することにより、高出力動作は可能になるものの、流水にともなうロッド型ファイバレーザ媒質の振動は不可避であり、出力の安定性が低下するという課題がある。また、ロッド型ファイバレーザ媒質の直接水冷を実現するためには、シール材その他複数の部材が必要となるため、これらを使用したロッド型ファイバレーザ増幅器、もしくはロッド型ファイバレーザ発振器のコストが増加するという課題が不可避となる。更に、ロッド型ファイバレーザ媒質を直接水冷した場合、冷却水が接する部材の腐食等により漏水が発生するという問題があり、これらを使用したロッド型ファイバレーザ増幅器、もしくはロッド型ファイバレーザ発振器の信頼性を低下させるという課題も推量される。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ロッド型ファイバレーザ媒質を保持し、効果的に冷却することによって、高出力動作が可能で、ロバスト性が高く、信頼性にも優れたロッド型ファイバレーザ増幅器を提供することを目的としている。
この発明に係るロッド型ファイバレーザ増幅器は、コア内部に誘導放出効果を活性化させる活性媒質がドープされたロッド型ファイバレーザ媒質と、第1および第2のブロックを有し、前記第1および第2のブロックそれぞれの1つの面を密接させて構成されるとともに、前記第1および第2のブロックの少なくとも一方には、前記第1および第2のブロックが密接される面に、前記コアの中心軸に沿って前記ロッド型ファイバレーザ媒質を収納する溝が設けられ、前記溝と前記ロッド型ファイバレーザ媒質との間に弾性体が充填されることにより前記ロッド型ファイバレーザ媒質を保持する媒質ホルダと、前記第1および第2のブロックの少なくとも一方を冷却する冷却手段とを備えたものである。
この発明によれば、ロッド型ファイバレーザ媒質を簡単な構成の媒質ホルダによって保持して、冷却手段を用いて効果的に冷却することにより、高出力で安定なレーザ光の増幅が可能になる。また、機械的外力に対し堅固な構成となり、ロッド型ファイバレーザ増幅器の信頼性を向上させることができる。
この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ増幅器におけるロッド型ファイバレーザ媒質の構成を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ増幅器における媒質ホルダの構成を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ増幅器における媒質ホルダの構成を示す分解図である。 この発明の実施の形態1による媒質ホルダの断面図である。 この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ媒質を使用したロッド型ファイバレーザ増幅器の構成図である。 この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ媒質を使用したロッド型ファイバレーザ発振器の構成図である。 この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ発振器の出力特性を示すグラフである。 この発明の実施の形態2によるロッド型ファイバレーザ増幅器における媒質ホルダの断面図である。 この発明の実施の形態3によるロッド型ファイバレーザ増幅器の構成を示す斜視図である。
この発明に係るロッド型ファイバレーザ増幅器およびロッド型ファイバレーザ発振器について、以下に図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であって、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるロッド型ファイバレーザ増幅器におけるロッド型ファイバレーザ媒質の構成を示す斜視図である。ロッド型ファイバレーザ媒質100は、光ファイバの中心をなすコアに活性媒質として希土類元素であるイッテルビウム(Yb)がドープされた活性ファイバ101と、活性ファイバ101の両端に接合されたエンドキャップ102a、102bから構成される。本実施の形態における活性ファイバ101には、一例として、コア直径100μm、クラッド直径285μmのフォトニック結晶ファイバを使用している。活性ファイバ101の母材にはシリカガラスを使用しており、例えば、長さは800mm、外直径は1.7mmのものを用いる。
なお、図示してはいないが、コアの周囲に規則的に配した空孔によるフォトニック結晶効果により、コアの許容開口値は0.02に設定されている。またエンドキャップ102a、102bには、例えば外直径8mm、長さ8mmの石英ブロックを使用しており、それぞれ活性ファイバ101の両端に溶着されている。また、エンドキャップ102a、102bの活性ファイバ101と対向する端面には、励起光の波長である975nmと、発振波長である1030nmの両方に対し低反射となる反射防止コーティングが施されている。
図2は、本実施の形態によるロッド型ファイバレーザ増幅器における媒質ホルダ200の構成を示す斜視図である。また、図3は、媒質ホルダ200の構成を示す分解図である。なお、図2および図3において、図1と同一符号を付したものは図1で示した構成と同一部分又は相当する部分を示している。
図2および図3に示すように、ロッド型ファイバレーザ媒質100は、第1のブロック201に設けられた溝207内に設置され、第1のブロック201の側面に、上部より第2のブロック202の側面を密接させることで媒質ホルダ200内へ収容される。また、第1のブロック201、第2のブロック202にはそれぞれ、長手方向に冷却媒体として冷却水を通水するための貫通穴209、210が設けられる。
貫通穴209の両端部は第1のブロック201の両端で蓋203a、203bにより施栓される。同様に、貫通穴210の両端部は第2のブロック202の両端で蓋204a、204bにより施栓される。なお、図示してはいないが、蓋203a、203b、204a、204bにはOリング溝が設けられている。貫通穴209の両端部は蓋203a、203bに設置されたOリングによってシールされ、貫通穴210の両端部は204a、204bに設置されたOリングによってシールされる。また、第1のブロック201、第2のブロック202の側面にはそれぞれ、貫通穴209、210に連通する給排水路211aと211b、212aと212bが設けられている。
配管用の継手が固定された給排水ブロック205a、205b、206a、206bを給排水路211a、211b、212a、212b各々へ取り付けることにより、第1のブロック201、および第2のブロック202へ冷却水を給排水する。また、図示してはいないが、給排水ブロック205a、205b、206a、206bにもOリング溝が設けられており、給排水ブロック205a、205b、206a、206bに設置したOリングによって、冷却水はシールされる。
また、本実施の形態において、第1のブロック201、第2のブロック202、蓋203a、203b、204a、204b、給排水ブロック205a、205b、206a、206b何れの部材にもアルマイト処理が施されたアルミニウムを使用している。これにより、これらの部材の耐食性を向上している。
以上述べた、媒質ホルダ200を構成する第1のブロック201における貫通穴209、また、第2のブロック202における貫通穴210、蓋203a、203b、204a、204b、給排水ブロック205a、205b、206a、206bは、ロッド型ファイバレーザ媒質100あるいは後述する、ロッド型ファイバレーザ媒質100を用いたロッド型ファイバレーザ増幅器、ロッド型ファイバレーザ発振器の冷却手段を構成する。
なお、冷却手段としては図2および図3で示した構成に限るものではない。第1のブロック201における貫通穴209、第2のブロックの貫通穴210の両方あるいは一方に給排水を行う構成であればロッド型ファイバレーザ媒質100(あるいはロッド型ファイバレーザ媒質100を用いたロッド型ファイバレーザ増幅器、ロッド型ファイバレーザ発振器)の冷却を行うことができる。
図4は、本実施の形態によるロッド型ファイバレーザ増幅器で使用される媒質ホルダ200の断面図である。図4において、図1乃至図3と同一符号を付したものは図1乃至図3で示した構成と同一部分又は相当する部分を示している。
本実施の形態においては、ロッド型ファイバレーザ媒質100を設置するため、第1のブロック201に、一例として幅2mmのU字型の溝207が設けられており、溝207と活性ファイバ101との間で形成される空隙には、弾性体として熱伝導タイプのシリコンゴム213が充填されている。
図5は、本実施の形態において、図1乃至図4で示したロッド型ファイバレーザ媒質100を使用したロッド型ファイバレーザ増幅器の構成を示す図である。図5において図1乃至図4と同一符号を付したものは図1乃至図4で示した構成と同一部分又は相当する部分を示している。
図5に示すロッド型ファイバレーザ増幅器では、励起光源として中心波長975nmのファイバ結合型半導体レーザ301を使用している。ファイバ結合型半導体レーザ301より出射した励起光302(図5の破線部)は、励起光用コリメートレンズ303で一旦平行化された後、2波長ミラー304を透過し、集光レンズ305によって集光され、エンドキャップ102bよりロッド型ファイバレーザ媒質100内へ入射する。
ロッド型ファイバレーザ媒質100内へ入射した励起光302は、活性ファイバ101のクラッド中を伝播しながら活性ファイバ101のコアにドープされた活性媒質であるイッテルビウムを励起する。被増幅光である波長1030nmの入射光306は、2波長ミラー304により進行方向を折り曲げられ、励起光302と同じく集光レンズ305によって集光され、エンドキャップ102bよりロッド型ファイバレーザ媒質100内へ入射し、活性ファイバ101のコアへ結合される。活性ファイバ101のコア内を伝播する波長1030nmの入射光306は、励起されたイッテルビウムの誘導放出作用により増幅され、エンドキャップ102aより外部へ出射する。ロッド型ファイバレーザ媒質100を出射した増幅光307は、増幅光用コリメートレンズ308によって平行化され、所望する場所にまで伝播される。
ここで、図5において、2波長ミラー304がロッド型ファイバレーザ媒質100における活性ファイバ101のコアの中心軸方向に対する傾斜角θ(以下、2波長ミラー304の傾斜角とよぶ。)は、入射光306の入射角度(上述のコアの中心軸方向に対する角度)とともに、適宜設定することができる。すなわち、入射光306が2波長ミラー304によって反射された光が上述の中心軸方向と一致するように、2波長ミラー304の傾斜角および入射光306の入射角度を設定すればよい。
なお、図示はしていないが、図2乃至図4で示したように、給排水ブロック206a、206bには冷却水を給排水するための配管が接続され冷却手段を構成している。例えば水温20度の純水312a、312bを、給排水ブロック206a側より給水し、給排水ブロック206b側より排水することによりロッド型ファイバレーザ媒質100を冷却する。
図6は、本実施の形態において図1乃至図4で示したロッド型ファイバレーザ媒質100を使用したロッド型ファイバレーザ発振器を示す構成図である。図6において、図1乃至図6と同一の符号を付したものは図1乃至図6で示した構成と同一部分又は相当する部分を示している。
本実施の形態によるロッド型ファイバレーザ媒質100をロッド型ファイバレーザ発振器として使用する場合には、波長1030nmの発振波長に対し高反射となる全反射鏡309と、波長1030nmの発振波長に対し5%の反射率を有する部分反射鏡310を、ロッド型ファイバレーザ媒質100の前後に配し、光共振器を構成する。
ファイバ結合型半導体レーザ301によってロッド型ファイバレーザ媒質100を励起すると、ロッド型ファイバレーザ媒質100のコア内において自然放出光が発生し、自然放出光の一部はコアに沿って伝搬する。コア内を伝搬する自然放出光は、誘導放出による増幅作用を受け、徐々に強度を増しながら全反射鏡309と部分反射鏡310の間を往復し、レーザ発振へと至る。部分反射鏡310へ到達した共振器内部光のうち95%はレーザ光311として共振器外へ出射し、所望する場所にまで伝搬される。
また、図6において、2波長ミラー304に対する上述の2波長ミラーの傾斜角(図5におけるθ)についても、図5と同様に、全波長ミラー309の設置角度とともに適宜設定することができる。すなわち、ロッド型ファイバレーザ媒質100から出射された自然放出光が2波長ミラー304で反射されて進行方向を変えられるが、この反射光の進行方向に対して、全波長ミラー309の反射面が直交するように、2波長ミラー304の傾斜角θおよび全反射ミラー309の設置角度を定めればよい。このように構成することにより、ロッド型ファイバレーザ発振器を設置する場所に応じて全波長ミラー309を設置する位置および角度を選択することができ、ロッド型ファイバレーザ発振器の設計を柔軟にかつ容易にすることができる。
なお、図6に図示していないが、給排水ブロック206a、206bには冷却水を給排水するための配管が接続されて、冷却手段が構成される。例えば、水温20度の純水312a、312bを、給排水ブロック206a側より給水し、給排水ブロック206b側より排水し、ロッド型ファイバレーザ媒質100を冷却する。
また、部分反射鏡310の発振波長(1030nm)に対する反射率を5%の場合で説明したが、これに限るものではなく、励起光の波長、強度等、被増幅光の波長(発振波長)、強度等、によって部分反射鏡の反射率を適宜選択することができる。
図7は、図6において示したロッド型ファイバレーザ発振器の出力特性を示すグラフである。図7に示すグラフ中、横軸はファイバ結合型半導体レーザ301の出力である励起パワー、縦軸はロッド型ファイバレーザ発振器のレーザ出力を表している。また、実線は冷却水通水時の出力特性、破線は冷却水非通水時の出力特性を示している。冷却水通水時、非通水時の出力特性を比較すると、非通水時の出力特性において、特に励起パワーが60Wを越える領域でレーザ出力の低下が顕著となっている。
本実施の形態では、ロッド型ファイバレーザ媒質100のコア内にドープした活性媒質としてイッテルビウムを使用している。このため、レーザ発振は擬2準位系のシステムとなる。冷却水非通水時には、励起パワーが60Wを越える領域において、ロッド型ファイバレーザ媒質100自体の温度が著しく上昇し、下準位密度増加にともなう再吸収損失の発生により、レーザ出力が顕著に低下する。更に冷却水非通水の条件においては、出力安定性も低下することが実験により確認されている。
本実施の形態によれば、第1のブロック201と第2のブロック202から媒質ホルダ200を構成し、また第1のブロック201の長手方向(活性ファイバ101のコアの中心軸方向)に沿って溝207を形成するとともに、溝207内へロッド型ファイバレーザ媒質100を収納し第1のブロック201と第2のブロック202を密接させてロッド型ファイバレーザ媒質100を収容したので、ロッド型ファイバレーザ媒質100を堅固に固定することが可能になる。また、機械応力等外乱が加わった場合であっても、ロッド型ファイバレーザ媒質100の折損を効果的に防止し、ロッド型ファイバレーザ増幅器、およびロッド型ファイバレーザ発振器の信頼性を向上させることができるという格別な効果を奏する。
また、本実施の形態においては媒質ホルダ200を構成する第1のブロック201、および第2のブロック202に、冷却水(冷却媒体)を通水する冷却水路を設けるとともに、第1のブロック201へ設けた溝207内へ、熱伝導タイプのシリコンゴム213を充填したので、ロッド型ファイバレーザ媒質100を上下方向より均一かつ効果的に冷却し、レーザ光の発生効率、およびレーザ出力の安定性を向上させることができるという、従来にない顕著な効果を奏するものである。また、弾性体としてシリコンゴム213を用いることにより、溝207内への弾性体の充填が容易になることに加え、安価にロッド型ファイバレーザ増幅器又はロッド型ファイバレーザ発信器を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、ロッド型ファイバレーザ媒質100として、活性ファイバ101の両端にエンドキャップ102a、102bが接合された構成を示したが、ロッド型ファイバレーザ媒質の構成はこれに限るものではない。例えば、寄生発振を防止するため、活性ファイバ101の両端を斜めにカットした構成であっても、同様な効果が得られることは言うまでもない。
また、本実施の形態においては、ロッド型ファイバレーザ媒質100の活性媒質としてイッテルビウム(Yb)をドープした構成を示したが、活性媒質の種類はこれに限るものではなく、所望する波長に応じて希土類元素であるネオジム(Nd)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)等から適切な活性媒質を選定することができる。
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2によるロッド型ファイバレーザ増幅器で使用される媒質ホルダ200の断面図である。図8において、実施の形態1と同一又は相当するものは実施の形態1における図1乃至図6と同一の符号を付している。
本実施の形態においては、媒質ホルダ200を構成する第1のブロック201と第2のブロック202は銅材で形成されており、実施の形態1とは異なり、冷却水路は設けられていない。本実施の形態においては、媒質ホルダ200を構成する第1のブロック201および第2のブロック202は、冷却手段として、内部に冷却水路215a、215bが設けられたヒートシンク214上に、熱伝導シート216を介して固定される。このため、ロッド型ファイバレーザ媒質100で発生する熱は、ヒートシンク214へ効果的に放熱される。
また、本実施の形態において、第2のブロック202側にも、第1のブロック201と密接する面に溝208が設けられており、対称形に形成された第1のブロック201と第2ブロック202を密接させることにより、断面形状が円形の貫通孔が形成される。ロッド型ファイバレーザ媒質100は、第1のブロック201および第2のブロック202にそれぞれ設けられた溝207、208で形成された貫通孔の内部に収容される。なお、実施の形態1と同様、第1のブロック201および第2のブロック202に設けられた溝207および208の内部には、弾性体として熱伝導タイプのシリコンゴム213が充填されている。
本実施の形態においても、実施の形態1と同様な効果が得られるばかりでなく、媒質ホルダ200を構成する第1のブロック201、第2のブロック202には、冷却水を通水するための冷却水路を設ける必要がない。そのため、媒質ホルダ200を簡易かつ低コストに製作することが可能になる。さらに媒質ホルダ200には冷却水路がないため漏水が発生する可能性を低減し、これらを使用するロッド型ファイバレーザ増幅器、もしくはロッド型ファイバレーザ発振器の信頼性を向上させることができる、という格別な効果を奏するものである。
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3によるロッド型ファイバレーザ増幅器で使用している媒質ホルダ200を示す斜視図である。図9において、実施の形態1又は2と同一又は相当するものは図1乃至図6および図8と同一の符号を付している。
本実施の形態においては、実施の形態1において図1にて示したものと同様のロッド型ファイバレーザ媒質100を使用している。図9には図示していないが、第1のブロック201にロッド型ファイバレーザ媒質100を収納するため設けられた溝207の形状、ならびに溝207内に充填する熱伝導性のシリコンゴム(弾性体)213についても、実施の形態1と同様である。また本実施の形態においても、実施の形態2と同じく、媒質ホルダ200を構成する第1のブロック201、および第2のブロック202には冷却水を通水するための冷却水路は設けられておらず、第1のブロック201、および第2の冷却ブロック202には、各々放熱フィン217a、217b、および218a、218bが設けられている。このため、ロッド型ファイバレーザ媒質100で発生した熱は、各々放熱フィン217aと217b、および218aと218bから効果的に放熱される。
本実施の形態においても、実施の形態1または2と同様な効果が得られるばかりでなく、冷却水およびヒートシンクが不要になるため、ロッド型ファイバレーザ増幅器をさらに簡易かつ信頼性高く構成することが可能になる、という格別な効果を奏するものである。
また、本実施の形態で示した構成により、安定でロバスト性に優れたロッド型ファイバレーザ発振器を実現することができる。
なお、図9には図示していないが、空冷用のファンを設け、放熱フィン217a、217b、218a、218bを強制空冷すれば、更に冷却効果が高まることは言うまでもない。
なお、以上の実施の形態1乃至3においては、媒質ホルダ200に設けたロッド型ファイバレーザ媒質100を収容するための溝207内に熱伝導タイプのシリコンゴムを充填する構成について示したが、溝207内に充填する材料はこれに限るものではない。ロッド型ファイバレーザ媒質100において、励起にともない発生する熱膨張、熱収縮の範囲内において弾性を維持できる材料でさえあれば、溝内に充填可能である。また、充填する材料は熱伝導率の高い材料であることが望ましい。例えば、充填材として低温ハンダを使用して弾性体を構成すれば、ロッド型ファイバレーザ媒質100の冷却性を著しく向上させることが可能になり、より高出力のレーザ増幅、ならびにレーザ光の発生を安定に行うことが可能になる。
100 ロッド型ファイバレーザ媒質、200 媒質ホルダ、201 第1のブロック、202 第2のブロック、205a、205b、206a、206b 給排水ブロック、207、208 溝、209、210 貫通穴、211a、211b、212a 212b 給排水路、213 シリコンゴム(弾性体)、214 ヒートシンク、215a、215b 冷却水路、217、218 放熱フィン、301 ファイバ結合型半導体レーザ、304 2波長ミラー、308 部分反射ミラー、309 全反射ミラー。

Claims (6)

  1. コア内部に誘導放出効果を活性化させる活性媒質がドープされたロッド型ファイバレーザ媒質と、
    第1および第2のブロックを有し、前記第1および第2のブロックそれぞれの1つの面を密接させて構成されるとともに、前記第1および第2のブロックの少なくとも一方には、前記第1および第2のブロックが密接される面に、前記コアの中心軸に沿って前記ロッド型ファイバレーザ媒質を収納する溝が設けられ、前記溝と前記ロッド型ファイバレーザ媒質との間に弾性体が充填されることにより前記ロッド型ファイバレーザ媒質を保持する媒質ホルダと、
    前記第1および第2のブロックの少なくとも一方を冷却する冷却手段と
    を備えたロッド型ファイバレーザ増幅器。
  2. 冷却手段は、第1および第2のブロックの少なくとも一方の内部に、冷却媒体を流す流路を設けて構成されたことを特徴とする請求項1記載のロッド型ファイバレーザ増幅器。
  3. 冷却手段は、第1および第2のブロックの少なくとも一方に、放熱フィンを設けて構成されたことを特徴とする請求項1記載のロッド型ファイバレーザ増幅器。
  4. 媒質ホルダにおける溝とロッド型ファイバレーザ媒質との間に充填される弾性体は、シリコンゴムからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のロッド型ファイバレーザ増幅器。
  5. 媒質ホルダにおける溝とロッド型ファイバレーザ媒質との間に充填される弾性体は、低温ハンダからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のロッド型ファイバレーザ増幅器。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のロッド型ファイバレーザ増幅器を備え、
    励起光源であるファイバ結合型半導体レーザと、
    前記ファイバ結合型半導体レーザから出射される励起光を透過するとともに所定の発振波長の光を反射し、前記励起光の進行方向に対して所定の傾斜角をなして設けられた2波長ミラーと、
    前記励起光が前記2波長ミラーを介して前記ロッド型ファイバレーザ増幅器におけるロッド型ファイバレーザ媒質の2つの端面のうちの1つである第1の端面から入射され、前記ロッド型ファイバレーザ媒質が励起されて発生する自然放出光が、前記ロッド型ファイバレーザ媒質の第2の端面から出射された後に前記所定の発振波長の光を部分反射する部分反射ミラーと、
    前記部分反射ミラーによって反射された前記自然放出光が、前記ロッド型ファイバレーザ媒質を伝播した後に前記第1の端面から出射され、さらに前記2波長ミラーによって進行方向を変更された後に、変更された後の進行方向と反射面が直交する方向に設けられて前記所定の発振波長の光を全反射する全反射ミラーとをさらに備え、
    前記自然放出光を前記全反射ミラーと前記部分反射ミラーとの間で往復させることにより、前記所定の発振波長の光を発振させることを特徴とするロッド型ファイバレーザ発振器。
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