JP2013160599A - ゴム材料の組成分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジエン系ゴムを主体とする組成物中にエチレン・プロピレンゴムが40質量%以下の割合で混在するような場合でもエチレン・プロピレンゴムを良好に検出することができ、ゴム材料の組成分析を行なうことができる分析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】任意の第1分解温度で一段目の熱分解を行なった後、更に上記第1分解温度よりも高い第2分解温度で二段目の熱分解を行なって、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析し、上記第2分解温度で分解されるゴム成分を検出することを特徴とするゴム材料の組成分析方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱分解GC−MS法により2種以上のゴム成分を含むゴム材料の組成を分析するゴム材料の組成分析方法に関し、更に詳述すれば、従来は検出が困難であったジエン系ゴムを主体とするゴム組成物中に混在するエチレン・プロピレンゴムを良好に検出することができるゴム材料の組成分析方法に関する。
ゴム材料は、タイヤ、ゴムクローラ、コンベアベルト、空気バネ、防振ゴム、免震ゴム、海洋商品、建築資材など様々な分野の製品で使用されており、産業において欠かすことのできないものである。
また、これらゴム製品に限られるものではないが、製品のメンテナンスや検査は、製品の耐久性向上や品質向上に欠かすことのできないことであり、特に劣化したゴム製品の組成分析は、劣化原因の究明、材料や製造工程の改良、改善のために非常に重要である。
特に、ゴム材料については、混練工程や成形工程において意図しない異種ゴムが混入する虞もあり、異種ゴムの存在がゴム材料の性能や特性を低下させる原因となる場合もある。その場合、混入した異種ゴムを特定することは、工程管理、維持のために必要不可欠である。
従来、ゴム材料の組成分析を行なう方法として、熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)法が知られている。この熱分解GC−MS法によりゴム材料の組成を分析する場合、多くのジエン系ゴムを分解可能な500〜650℃の温度で熱分解を行ない、これをGC−MSにより分析して含有ゴムを検出することが行われる。例えば、後述する実験例のように、温度590℃で熱分解を行いGC−MS分析を行なうことにより、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムのほとんどを良好に検出することができる。
しかしながら、これらジエン系ゴムと共に、EPMやEPDMなどのエチレン・プロピレンゴム(EP)が混在している場合、このEPを検出することが難しく、特に含有量40質量%以下のEPをこの方法により検出することは困難である。即ち、この熱分解GC−MS法では、例えば590℃での熱分解を行なって各ポリマー特有の熱分解生成物を検出することによりゴム種の定性・定量を行なう場合、ジエン系ゴムがほとんどモノマーやダイマーとなりGC−MSにおけるピーク強度が高く定性・定量し易いのに対し、EPは熱分解がアトランダムに起こるため分解生成物が多く、その生成量も相対的に少なくなるため、EP含有量が40質量%以下では検出することが困難である。
しかしながら、このようにジエン系ゴム中に混入したEPゴムはゴム製品の性能に影響する可能性もあり、EPゴムの検出は、劣化原因の究明、材料や製造工程の改良、改善、特に製造時の工程管理、維持のために非常に重要である。なお、本発明に関連する先行技術としては、以下の文献を挙げることができる。
特開昭61−000758号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ジエン系ゴムを主体とする組成物中にエチレン・プロピレンゴムが40質量%以下の割合で混在するような場合でもエチレン・プロピレンゴムを良好に検出することができ、確実にゴム材料の定性分析を行なうことができる分析方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、ジエン系ゴムとエチレン・プロピレンゴムとの熱分解温度の差を利用し、異なる熱分解温度により二段階に熱分解してGC−MS法を実施することにより、ジエン系ゴム中に混在するエチレン・プロピレンゴムを良好に検出し得ることを見出した。例えば、後述する実施例のように、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムを分解可能な380〜420℃の温度で熱分解を行い、必要に応じてこれをガスクロマトグラフ質量分析により分析して、これらジエン系ゴムの検出を行い、次いでエチレン・プロピレンゴムを良好に熱分解し得る620℃以上の温度で熱分解を行なって、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析することにより、ジエン系ゴムによる検出ピークの影響を可及的に防止して、エチレン・プロピレンゴム由来のピークを良好に検出することができ、エチレン・プロピレンゴムの含有割合が40質量%以下であってもこれを検出することが可能であることを見出し、本発明を完成したものである。
従って、本発明は、下記請求項1〜6に記載のゴム材料の分析方法を提供する。
請求項1:
熱分解GC−MS法により2種以上のゴム成分を含むゴム材料の組成を分析するゴム材料の組成分析方法であって、
任意の第1分解温度で一段目の熱分解を行なった後、更に上記第1分解温度よりも高い第2分解温度で二段目の熱分解を行なって、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析し、上記第2分解温度で分解されるゴム成分を検出することを特徴とするゴム材料の組成分析方法。
請求項2:
上記第1分解温度で一段目の熱分解を行い、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析して、上記第1分解温度で分解されるゴム成分を検出する一段目の分析を行い、次いで上記二段目の熱分解及び分析を行って、上記第2分解温度で分解されるゴム成分を検出する二段目の分析を行なう請求項1記載のゴム材料の組成分析方法。
請求項3:
上記第1分解温度と第2分解温度との差が200℃以上である請求項1又は2記載のゴム材料の組成分析方法。
請求項4:
上記第1分解温度が380〜420℃であり、上記第2分解温度が620℃以上である請求項3記載の組成分析方法。
請求項5:
分析対象のゴム材料がエチレン・プロピレンゴムを含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム材料の組成分析方法。
請求項6:
分析対象のゴム材料が、ジエン系ゴムを主体とするゴム組成物中にエチレン・プロピレンゴムが混在するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム材料の組成分析方法。
本発明のゴム材料の分析方法は、2種以上のゴム成分を含むゴム材料の組成を熱分解GC−MS法により良好に分析することができるものであり、特に従来は検出が困難であったジエン系ゴムを主体とするゴム組成物中に混在するエチレン・プロピレンゴムを熱分解GC−MS法により良好に検出することができるものである。
熱分解GC−MS分析を説明する模式図である。 実験例1で行なった熱分解GC−MS分析の結果を示すトータルイオンクロマトグラムである。 実験例2で行なった熱分解GC−MS分析の結果を示すトータルイオンクロマトグラムである。 実施例1及び比較例1の結果を示すトータルイオンクロマトグラムである。 実施例2及び比較例2の結果を示すトータルイオンクロマトグラムである。 実施例3及び比較例3の結果を示すトータルイオンクロマトグラムである。 実施例4及び比較例4の結果を示すトータルイオンクロマトグラムである。
本発明は、熱分解GC−MS法により2種以上のゴム成分を含むゴム材料の組成を分析するゴム材料の組成分析方法であり、その際に異なる熱分解温度で二段階に熱分解を行い、ガスクロマトグラフにより分解生成物を分離し、マススペクトル分析により定性・定量を行なうものである。
熱分解GC−MS法によるゴム材料の分析は、図1に記載のように、ゴム材料を熱分解部で所定温度で熱分解し、ガスクロマトグラフィー(GC)部で分解生成物を分離し、これをマススペクトル部で電子ビームによりイオン化し検出器で検出してトータルイオンクロマトグラム、マススペクトルを得、得られたトータルイオンクロマトグラムやマススペクトルのピークを分析して定性・定量を行なうことにより、ゴム材料の組成を分析するものである。
本発明の分析方法では、上記熱分解を二段階に分けて行い、一段目の第1分解温度でゴム材料を熱分解し、必要に応じてこれを上記ガスクロマトグラフ質量分析により分析し、次いでより高い第2分解温度で二段目の熱分解を行なって、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析し、目的成分の検出を行うものである。
この場合、熱処理の各段階における熱処理温度は、検査対象のゴム材料や目的とする検出物質に応じて適宜設定され、目的検出物を分解可能な温度を段階毎に温度が高くなるように設定する。この場合、一段目の熱分解により分解生成する物質と二段目の熱分解により分解生成する物質とをできるだけ明確に分けるため、一段目の熱分解温度(第1分解温度)と二段目の熱分解温度(第2分解温度)との差が200℃以上であることが好ましい。例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムにEPMやEPDMなどのエチレン・プロピレンゴムが混在するゴム材料を分析する場合、第1分解温度は350〜450℃、特に380〜420℃とすることが好ましく、第2分解温度は620℃以上、特に650〜700℃とすることが好ましい。
また、このように一段目の熱分解を行なった後に二段目の熱分解を行なって分析を行なうが、一段目の熱処理の処理時間は、一段目の熱分解により所定の成分が十分に分解除去され、一段目の熱処理により除去されるべき成分が、二段目の熱分解後に行なわれるGC−MS分析時に目的成分の検出を妨害することが無いように、検査対象のゴム材料及び上記第1分解温度に応じて適宜設定される。例えば、上記のようにジエン系ゴムにエチレン・プロピレンゴムが混在したゴム材料に対して上記第1分解温度350〜450℃で一段目の熱処理を行なう場合、一段目の熱処理によりジエン系ゴムに由来する成分を効果的に分解除去して二段目の熱処理後の分析によって確実にエチレン・プロピレンゴムを検出するため、一段目の熱処理時間を15〜25分、特に20分程度とすることが好ましい。
この熱分解は、市販の熱分解装置を用いて行なうことができる。この場合、加熱温度を随時変更することができ、生じた熱分解生成物を順次GC部に送ることができるものであれば、一段目の熱分解と二段目以降の熱分解を連続して行なうことができる。また、一段目の熱分解を行なった後に二段目の熱処理を行ってGC−MS分析により目的成分の検出を行うが、一段目の熱分解を行なった後に、必要に応じてその分解生成物につきGC−MS分析を行なって、一段目の熱分解により生じる分解生成物の分析を行い、次いで、上記二段目の熱処理及び分析を行なうこともできる。
上記GC−MS分析は、市販のGC−MS分析装置を用いることができる。クロマトグラフの固定相は、特に制限されるものではなく、分析対象のゴム材料及び検出する目的成分に応じて適宜選定される。例えば、ジエン系ゴムにエチレン・プロピレンゴムが混在したゴム材料についてエチレン・プロピレンゴムを検出する場合には、5%フェニル−ポリジメチルシロキサン等の微極性の固定相や100%ポリジメチルシロキサン等の無極性の固定相などを用いることができる。また、クロマトグラフを行なう場合のキャリアガスとしては、GC−MSではヘリウムガスを、GC(FID)ではヘリウムガス、水素ガス、窒素ガスなどの不活性ガスが用いられる。
この熱分解GC−MS法により、トータルイオンクロマトグラム、マススペクトルが得られ、更にデータ処理によってマスクロマトグラムを得ることができ、これらのデータから常法に従って、ゴム材料の組成を分析することができる。例えば、ジエン系ゴムにエチレン・プロピレンゴムが混在したゴム材料についてエチレン・プロピレンゴムを検出する場合には、後述の実施例のように、得られたトータルイオンクロマトグラムからエチレン・プロピレンゴムに由来するピークを検出することにより、エチレン・プロピレンゴムの存在を確認することができる。更に、必要に応じて、エチレン・プロピレンゴムの分解生成物として比較的強度の強いブテン、ペンテン、ヘプテンなどのマススペクトルの有無からエチレン・プロピレンゴムの存在を確認することもできる。
なお、本発明は、上記のように、ジエン系ゴムに混在するエチレン・プロピレンゴムを検出する場合に好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、2種以上のゴムを含む種々の組み合わせからなるゴム材料の分析に使用し得るものである。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
[実験例1]
まず、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)の各ジエン系ゴム、及びエチレン・プロピレンゴム(EP)につき、従来法に従って590℃の熱分解温度で熱分解GC−MS法により分析を行い、それぞれ単独のゴムにつきトータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図2に示す。なお、分析に供した試料の量は0.1mgであり、また用いた各ジエン系ゴム及びエチレン・プロピレンゴムの詳細、及び分析条件は下記の通りである。
〔試料〕
天然ゴム(NR):RSS#4
スチレン・ブタジエンゴム(SBR):スチレン含量23.5%のSBR
ニトリルゴム(NBR):アクリロニトリル含量35%のNBR
ブチルゴム(IIR):塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)
エチレン・プロピレンゴム(EP):エチレンノルボルネン(ENB)系EPDM
〔分析条件〕
(熱分解)
熱分解装置:フロンティア・ラボ社製「ダブルショットパイロライザー PY−2020iD」
熱分解条件:炉温度590℃、インターフェース温度320℃
(GC−MS)
GC−MS分析装置:Agilent社製「GC6890」/Agilent社製「MS5973」
分離カラム:フロンティア・ラボ社製「UM+−5 UA5−30M−0.25F(5%フェニル−ジメチルポリシロキサン)」
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:320℃
カラム温度:40℃(1分保持)−10℃/分で昇温−300℃(20分保持)
スプリットモード:50:1
MSスキャン範囲:10〜500amu
図2のとおり、590℃での熱分解を行ってGC−MS分析した場合、NR,SBR,NBR,IIRの各ジエン系ゴムでは、モノマーやダイマーの他にスチレン、アクリロニトリルなどの特徴となる分解生成物が検出されるのに対し、EPは熱分解がアトランダムに起きるため熱分解生成物が多く、相対的にその生成量も非常に少ない。このため、ジエン系ゴムと混在するEPを検出することは困難であることが分かる。
[実験例2]
次に、上記ジエン系ゴム及びエチレン・プロピレンゴムにつき、400℃で熱分解(一段目)を行なった後、更に670℃で熱分解(二段目)し、それをGC−MS法により分析して、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図3に示す。なお、分析に供した試料の量は0.2mgである。また、分析には実験例1と同じ機器を用い、下記熱分解条件としたこと以外は実験例1と同一の条件で分析を行なった。
(熱分解条件)
一段目:炉温度400℃、加熱時間20分、インターフェース温度320℃
二段目:炉温度670℃、インターフェース温度320℃
図3のとおり、NR及びIIRは、一段目の熱分解(400℃)によりほとんどが分解するため、EPのクロマトグラムと比べれば明らかなように、二段目の熱分解でEPの検出を阻害する成分は残存しないことが分かる。また、SBRは、一部スチレン、トルエン、ブタジエンが残留するものの、EPと重なるピークは少なく、EPの検出を阻害することはないことが分かる。更に、NBRは他のジエン系ゴムに比べて溶出時間2〜10分の範囲にEPの検出を阻害するピークが見られるが、溶出時間14分以降には、EPの溶出時間14分以降に見られる規則的な分解物の検出を阻害するピークは無く、この14分以降に現れる規則的なピークによりEPを検出し得ることが分かる。ただし、EPの溶出時間14分以降に見られる規則的な分解物のピークは強度が小さいため、これを確実に検出するためには、試料量を0.3〜0.4mg程度に多くすることが好ましい。
[実施例1及び比較例1]
天然ゴム(NR)とエチレン・プロピレンゴム(EP:エチレンノルボルネン系EPDM)とをNR/EP=60/40(質量部)で混合したブレンド物の加硫ゴムにつき、400℃で熱分解(一段目)を行なった後、更に670℃で熱分解(二段目)し、それをGC−MS法により分析して、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図4に示す。また、比較として、同試料につき従来法に従って590℃の熱分解温度で熱分解GC−MS法により分析を行って、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図4に併記する。更に、実験例1で得たNRのクロマトグラム及び実験例2で得たEPのクロマトグラムも参考として図4に併記した。なお、分析に供した試料の量は0.2mgとし、熱分解条件及び分析条件は実験例2と同一の条件とした。
図4のとおり、590℃での一段のみの熱分解では、NR単独とNR/EP混合とを比べれば明らかなように、EP由来のピーク(例えば★印のピーク)を検出することは困難である。一方、400℃の一段目の熱処理後に更に670℃の二段目の熱処理を行なって分析した場合には、EP由来のピークを明確に検出することができ、EPの存在を確実に検出し得ることが分かる。
[実施例2及び比較例2]
スチレン・ブタジエンゴム(スチレン含有量23.5%のSBR)とエチレン・プロピレンゴム(EP:エチレンノルボルネン系EPDM)とをSBR/EP=60/40(質量部)で混合したブレンド物の加硫ゴムにつき、400℃で熱分解(一段目)を行なった後、更に670℃で熱分解(二段目)し、それをGC−MS法により分析して、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図5に示す。また、比較として、同試料につき従来法に従って590℃の熱分解温度で熱分解GC−MS法により分析を行って、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図5に併記する。更に、実験例1で得たSBRのクロマトグラム及び実験例2で得たEPのクロマトグラムも参考として図5に併記した。なお、分析に供した試料の量は0.2mgとし、熱分解条件及び分析条件は実験例2と同一の条件とした。
図5のとおり、590℃での一段のみの熱分解では、SBR単独とSBR/EP混合とを比べれば明らかなように、EP由来のピーク(例えば★印のピーク)を検出することは困難である。一方、400℃の一段目の熱処理後に更に670℃の二段目の熱処理を行なって分析した場合には、EP由来のピークを明確に検出することができ、EPの存在を確実に検出し得ることが分かる。
[実施例3及び比較例3]
ブチルゴム(Cl−IIR)とエチレン・プロピレンゴム(EP:エチレンノルボルネン系EPDM)とをIIR/EP=75/25(質量部)で混合したブレンド物の加硫ゴムにつき、400℃で熱分解(一段目)を行なった後、更に670℃で熱分解(二段目)し、それをGC−MS法により分析して、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図6に示す。また、比較として、同試料につき従来法に従って590℃の熱分解温度で熱分解GC−MS法により分析を行って、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図6に併記する。更に、実験例1で得たIIRのクロマトグラム及び実験例2で得たEPのクロマトグラムも参考として図6に併記した。なお、分析に供した試料の量は0.2mgとし、熱分解条件及び分析条件は実験例2と同一の条件とした。
図6のとおり、590℃での一段のみの熱分解では、IIR単独とIIR/EP混合とを比べれば明らかなように、EP由来のピークは全く検出することができない。一方、400℃の一段目の熱処理後に更に670℃の二段目の熱処理を行なって分析した場合には、EP由来のピークを明確に検出することができ、EPの存在を確実に検出し得ることが分かる。なお、ここではEP含量25%の検出であるが、その検出強度からみると、含量20%でもEPを十分に検出可能であると判断される。
[実施例4及び比較例4]
ニトリルゴム(アクリロニトリル含有量26%のNBR)とエチレン・プロピレンゴム(EP:エチレンノルボルネン系EPDM)とをNBR/EP=65/35(質量部)で混合したブレンド物の加硫ゴムにつき、400℃で熱分解(一段目)を行なった後、更に670℃で熱分解(二段目)し、それをGC−MS法により分析して、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図7に示す。また、比較として、同試料につき従来法に従って590℃の熱分解温度で熱分解GC−MS法により分析を行って、トータルイオンクロマトグラムを得た。結果を図7に併記する。更に、実験例1で得たNBRのクロマトグラム及び実験例2で得たEPのクロマトグラムも参考として図7に併記した。なお、分析に供した試料の量は0.2mgとし、熱分解条件及び分析条件は実験例2と同一の条件とした。
図7のとおり、NBRは分解生成物であるブタジエン、アクリロニトリル以外の分解生成物が多く、EPと同様に相対的なピーク強度は低いゴムである。このため、590℃での一段のみの熱分解でも、NBR単独とNBR/EP混合とを比べれば明らかなように、35%の含有量であればEP由来のピーク(例えば★印のピーク)を検出することが可能ではあるが、これよりも少ない含有量では検出は困難になると思われる。一方、400℃の一段目の熱処理後に更に670℃の二段目の熱処理を行なって分析した場合には、EP由来のピークを明確に検出することができ、より少ない含有量であってもEPの存在を確実に検出し得ることが分かる。

Claims (6)

  1. 熱分解GC−MS法により2種以上のゴム成分を含むゴム材料の組成を分析するゴム材料の組成分析方法であって、
    任意の第1分解温度で一段目の熱分解を行なった後、更に上記第1分解温度よりも高い第2分解温度で二段目の熱分解を行なって、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析し、上記第2分解温度で分解されるゴム成分を検出することを特徴とするゴム材料の組成分析方法。
  2. 上記第1分解温度で一段目の熱分解を行い、これをガスクロマトグラフ質量分析により分析して、上記第1分解温度で分解されるゴム成分を検出する一段目の分析を行い、次いで上記二段目の熱分解及び分析を行って、上記第2分解温度で分解されるゴム成分を検出する二段目の分析を行なう請求項1記載のゴム材料の組成分析方法。
  3. 上記第1分解温度と第2分解温度との差が200℃以上である請求項1又は2記載のゴム材料の組成分析方法。
  4. 上記第1分解温度が380〜420℃であり、上記第2分解温度が620℃以上である請求項3記載のゴム材料の組成分析方法。
  5. 分析対象のゴム材料がエチレン・プロピレンゴムを含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム材料の組成分析方法。
  6. 分析対象のゴム材料が、ジエン系ゴムを主体とするゴム組成物中にエチレン・プロピレンゴムが混在するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム材料の組成分析方法。
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