JP2013155361A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】通常走行時の低転がり抵抗性と乗り心地などの特性を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性などの性能を向上させることが可能な空気入りタイヤの提供を目的とする。
【解決手段】一対のビードコアと、ビードフィラーを含むビード部と、該ビード部からトレッドに連なるサイドウォール部とを有し、該サイドウォール部を補強するサイド補強層とを有する空気入りタイヤであって、該ビードフィラー及び該サイド補強層の少なくともいずれか一方が、ゴム成分として、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含み、更に、一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むゴム組成物からなる空気入りタイヤとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、低発熱性及び耐熱性に優れるゴム組成物、及び、このゴム組成物を空気入りタイヤのサイド補強層及びビードフィラーの少なくとも一方に用いた空気入りタイヤに関する。
従来、パンク等によりタイヤの内部圧力(以下、内圧という)が低下した状態であっても走行可能な空気入りタイヤ(以下、ランフラットタイヤという)が提案されている。ランフラットタイヤでは、タイヤの内部圧力が低下した状態であっても走行可能なように、サイドウォール部の剛性が高められている。サイドウォール部には、ゴム組成物単独又はゴム組成物と繊維等の複合体から形成されたサイド補強層が配設されている(例えば、特許文献1参照)。
内圧が低下した状態で走行するランフラット走行時には、ランフラットタイヤのサイドウォール部及びビードフィラーは、通常走行時に比べて大きく変形する。この変形のため、ランフラット走行時には発熱しやすく、場合によっては、サイド補強層やビードフィラーの耐用温度を超えることがあった。
これに対して、特定の変性共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及び耐熱架橋剤等を含有するゴム組成物をサイド補強層及びビードフィラーに用いることが提案されている(特許文献2参照)。また、特定の共役ジエン系重合体とフェノール系樹脂を含有するゴム組成物をサイド補強層及びビードフィラーに用いることが提案されている(特許文献3参照)。
特許文献2,3に開示された技術は、サイド補強層やビードフィラーに用いるゴム組成物を高弾性化することにより、ランフラット走行時におけるサイドウォール部及びビードフィラーの変形量を抑え、発熱を抑える手法である。
しかし、サイドウォール部及びビードフィラーを高弾性化すると、通常走行時の転がり抵抗が高くなり、通常走行時における低燃費性が犠牲になる。
一方、サイド補強層及びビードフィラーの厚みを増大させる手法(すなわち、ゴムの体積を増大させる手法)によっても、変形量を抑え、発熱を抑制することができる。しかし、この手法の場合も、通常走行時の乗り心地の悪化、タイヤ重量増による制動性能の低下、および騒音レベルの増大などが懸念されている。
このように、ランフラットタイヤでは、通常走行時の低転がり抵抗性と乗り心地などのタイヤ特性を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を向上させることが課題となっていた。
特開平11−310019号公報 WO02/02356パンフレット 特開2004−74960号公報
本発明は、通常走行時の低転がり抵抗性と乗り心地などのタイヤ特性を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を向上させることが可能な空気入りタイヤの提供を目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の共役ジエン系重合体に特定の化合物を含むゴム組成物が、本発明の課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、一対のビードコアと、ビードフィラーを含むビード部と、該ビード部からトレッドに連なるサイドウォール部とを有し、該サイドウォール部を補強するサイド補強層とを有する空気入りタイヤであって、該ビードフィラー及び該サイド補強層の少なくともいずれか一方がゴム成分として共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含み、更に、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むゴム組成物からなる空気入りタイヤに関する。
Figure 2013155361
(式中、R11,R12,R13,及びR14は、それぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
Figure 2013155361
(式中、mは3〜10を表し、Maはリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトの1当量を表す。また、該化合物は結晶水を含有していてもよい。)
Figure 2013155361
(式中、Arは、アリーレン基であり、Q1及びQ2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
本発明によれば、本発明は、通常走行時の低転がり抵抗性と乗り心地などのタイヤ特性を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を向上させることが可能な空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ径方向及びトレッド幅方向の断面図である。 製造例に従って製造された共重合体Aの13C−NMRスペクトルチャートを示す図である。 製造例に従って製造された共重合体AのDSC曲線を示す図である。
以下、本発明について、詳細に説明する。
[空気入りタイヤ]
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、一対のビードコアと、ビードフィラーを含むビード部と、該ビード部からトレッドに連なるサイドウォール部とを有し、該サイドウォール部を補強するサイド補強層とを有する空気入りタイヤであって、該ビードフィラー及び該サイド補強層の少なくともいずれか一方が、ゴム成分として共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含み、更に、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むゴム組成物からなる空気入りタイヤである。
Figure 2013155361
(式中、R11,R12,R13,及びR14は、それぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
Figure 2013155361
(式中、mは3〜10を表し、Maはリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトの1当量を表す。また、該化合物は結晶水を含有していてもよい。)
Figure 2013155361
(式中、Arは、アリーレン基であり、Q1及びQ2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
<空気入りタイヤの構造>
以下、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの構造について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態として示す空気入りタイヤのトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面図である。なお、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。
空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11,12と、ビードフィラー13,14と、カーカスプライを含むカーカス15を有する。ビードフィラー13,14は、ビードコア11,12からタイヤ径方向外側に延在する。カーカス15は、ビードコア11,12において、ビードフィラー13,14のトレッド幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向及びトレッド幅方向の断面において、馬蹄形のタイヤケース形状を形成する。カーカス15のタイヤ径方向外側には、複数のベルト層からなるベルト部16が配設されている。ベルト部16のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層17が配設されている。
ベルト補強層17のタイヤ径方向外側には、タイヤトレッド用ゴムによってトレッド部21が配設されている。カーカス15のトレッド幅方向外側には、サイドウォール用ゴムによってサイドウォール部22が形成されている。
空気入りタイヤ1は、サイドウォール部22におけるカーカス15よりもタイヤ内側に、サイド補強層31を有する。また、空気入りタイヤ1は、タイヤの最内層として、空気を遮断するインナーライナー32を有する。
サイド補強層31は、トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面形状が三日月状であり、トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、トレッド部21からサイドウォール部22に向かうに連れて厚くなり、サイドウォール部22からビードコア11,12が配されるビード部に向かうに連れて薄くなる。
サイド補強層31の厚みは、1〜40mmであることが好ましく、2〜35mmであることがより好ましい。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ビードフィラー13,14及びサイド補強層31を構成するゴム組成物の少なくともいずれか一方が、ゴム成分として共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含み、更に、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むことにより、サイド補強層31の厚みを1〜40mmに設定することができる。
<ゴム組成物>
ビードフィラー13,14及びサイド補強層31の少なくともいずれか一方を構成するゴム組成物について説明する。
ゴム組成物に含まれる成分としては、ビニル結合量の高いブタジエンゴムなどのジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンターポリマー等を単独又は組み合わせて用いることができる。
また、ゴム組成物には、ゴム成分としては、上記したものほかに、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を用いることができる。また、ゴム組成物は、更に、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を有する。
Figure 2013155361
(式中、R11,R12,R13,及びR14は、それぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
Figure 2013155361
(式中、mは3〜10を表し、Maはリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトの1当量を表す。また、該化合物は結晶水を含有していてもよい。)
Figure 2013155361
(式中、Arは、アリーレン基であり、Q1及びQ2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
ゴム組成物は、上述の構成に加えて、さらに、変性共役ジエン系重合体を適宜組み合わせて用いることもできる。変性共役ジエン系重合体は、ポリマーの分子中、末端の少なくとも一箇所にスズ、窒素、ケイ素、硫黄、酸素原子を有しているポリマーを指す。
変性共役ジエン系重合体としては、特開2009−214700号公報に開示された変性共役ジエン系重合体を用いることができ、一例として、四塩化スズ、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、アルコキシシリル基などが挙げられる。
ポリマー分子中、末端の少なくとも一箇所にスズ、窒素、ケイ素、酸素原子が存在すると充填材との相互作用が高まり、ポリマー中への充填材の分散性が改良される。低ロス化を実現でき、転がり抵抗を低減することができる。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体と、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むゴム組成物は、ビードフィラー13,14及びサイド補強層31の少なくともいずれか一方に用いることができる。また、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体と、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むゴム組成物は、ビードフィラー13,14及びサイド補強層31の両方に用いられてもよい。
ビードフィラー13,14及びサイド補強層31の少なくともいずれか一方に共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を用いることにより、ビードフィラー13,14及びサイド補強層31の発熱性を低減するとともに弾性率を向上することができる。このため、ランフラット走行時における耐久性を向上することができる。
また、弾性率が向上することにより、ビードフィラー13,14及びサイド補強層31などのゴム部材にかかる耐荷重が上がるため、同じ耐荷重を確保するためのゴム部材の使用量を減らすことができる。これにより、空気入りタイヤの総重量を低減することができ、転がり抵抗を低減することができる。
さらに、ビードフィラー13,14及びサイド補強層31の少なくともいずれか一方に上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を用いることにより、高温時の撓みの増加を抑制することができる。このため、ランフラット走行時における耐久性と向上することができる。
<共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体>
次に、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の詳細について説明する。
本発明において使用する共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の共役ジエン化合物由来部分(共役ジエン部分)のシス−1,4−結合量は、25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。さらに、共役ジエン化合物由来部分(共役ジエン部分)のシス−1,4−結合量は、好ましくは、92%超であり、さらに好ましくは95%以上である。共役ジエン化合物部分(共役ジエン化合物由来部分)のシス−1,4結合量が25%以上であれば、低いガラス転移点(Tg)を保持することができ、これにより、耐熱老化性等の物性が改良される。
共役ジエン化合物由来部分(共役ジエン部分)のシス−1,4−結合含量を92%超とすることにより、耐亀裂成長性、耐侯性、耐熱性を向上させることが可能となる。また、共役ジエン化合物由来部分(共役ジエン部分)のシス−1,4−結合含量を95%以上とすると、耐亀裂成長性、耐侯性、耐熱性を一層高めることができる。
シス−1,4結合量は、共役ジエン化合物由来部分中の量であって、共重合体全体に対する割合ではない。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体における共役ジエン化合物の割合は、30mol%〜98mol%であることが好ましく、50mol%〜98mol%であることがより好ましく、60mol%〜98mol%であることがさらに好ましく、70mol%〜96mol%であることが特に好ましい。
共役ジエン化合物の割合が30mol%以上であれば、加工性が十分に確保できるので好ましく、98mol%を超えると非共役オレフィンの割合が多くなり、耐候性が向上して好ましい。
非共役オレフィンとしては、非環状オレフィンであることが好ましい。また、非共役オレフィンの炭素数は、2〜10のα−オレフィンであることが好ましい。α−オレフィンは、オレフィンのα位に二重結合を有するため、共役ジエン化合物との共重合を効率よく行うことができる。従って、非共役オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィンが好適に挙げられ、これらの中でも、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好ましく、エチレンが更に好ましい。これら非共役オレフィンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、オレフィンは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。
共役ジエン化合物は、炭素数が4〜12であることが好ましい。この共役ジエン化合物として、具体的には、1,3−ブタジエン、イプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましい。また、これら共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した共役ジエン化合物の具体例のいずれを用いても、同様のメカニズムで本発明の共重合体を調製することができる。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、低分子量化の問題が起こることも無く、その重量平均分子量(Mw)は特に限定されるものでもない。高分子構造材料への適用の観点から、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、10,000〜10,000,000が好ましく、10,000〜1,000,000がより好ましく、50,000〜600,000が更に好ましい。Mwが10,000,000を超えると成形加工性が悪化するおそれがある。
本発明に係る共重合体は、共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量が5%以下であることが好ましい。更に好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下である。
共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量が5%以下であると、本発明に係る共重合体の耐侯性や耐オゾン性をさらに向上させることができる。さらには、共役ジエン化合物部分の1,2付加体(3,4付加体を含む)含量が2.5%以下であると、本発明の共重合体は、耐オゾン性や耐疲労性をさらに向上させることができる。
共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量は、共役ジエン化合物由来部分中の量であって、共重合体全体に対する割合ではない。
なお、前記共役ジエン化合物部分の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量(共役ジエン化合物由来部分の共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量)は、共役ジエン化合物がブタジエンの場合、1,2−ビニル結合量と同じ意味である。
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、10以下が好ましく、6以下が更に好ましい。分子量分布が10を超えると物性が均質でなくなるためである。
ここで、平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。あるいは、テーパー共重合体であってもよい。テーパー共重合体とは、ランダム共重合体とブロック共重合体とが混在してなる共重合体であり、共役ジエン化合物の単量体単位からなるブロック部分及び非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分のうち少なくとも一方のブロック部分(ブロック構造ともいう)と、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの単量体単位が不規則に配列してなるランダム部分(ランダム構造ともいう)とから構成される共重合体である。
また、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとが交互に配列する交互共重合体(非共役オレフィンをAと、共役ジエン化合物をBとした場合の、−ABABABAB−の分子鎖構造)であってもよい。
ブロック共重合体の構造は、(A−B)x、A−(B−A)x及びB−(A−B)x(ここで、Aは、非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分であり、Bは、共役ジエン化合物の単量体単位からなるブロック部分であり、xは1以上の整数である)のいずれかである。なお、(A−B)又は(B−A)の構造を複数備えるブロック共重合体をマルチブロック共重合体と称する。
テーパー共重合体の構造は、共役ジエン化合物成分と非共役オレフィン成分との組成が連続的又は不連続的に分布があることを示す。ここで、非共役オレフィン成分の連鎖構造としては、長鎖(高分子量)の非共役オレフィンブロック成分を多く含まず、短鎖(低分子量)の非共役オレフィンブロック成分を多く含むことが好ましい。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体がブロック共重合体である場合は、非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分が静的結晶性を示すため、破断強度等の機械的性質に優れる。
従って、本発明では、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体及びテーパー共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体がランダム共重合体である場合、非共役オレフィンの単量体単位の配列が不規則であるため、共重合体が相分離を起こすことがなく、ブロック部分に由来する結晶化温度が観測されない。すなわち、耐熱性などの性質を有する非共役オレフィンを共重合体の主鎖中に導入することが可能になるため、耐熱性が向上する。交互共重合体である場合は、柔軟性と接着性の両立が可能となる。
本発明においては、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体をゴム成分に含める。ゴム成分100質量部中における共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の配合量は、5〜95質量部であることが好ましく、5〜90質量部であることがより好ましく、10〜80質量部であることがさらに好ましく、10〜60質量部であることが特に好ましい。
≪共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法≫
次に、本発明に係る共重合体の製造方法を詳細に説明する。但し、以下に詳述する製造方法は、あくまで例示に過ぎない。本発明に係る共重合体は、重合触媒または重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとを重合させることができる。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法においては、後述する重合触媒、または第一、第二、第三重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、重合を行うことができる。本発明において使用される重合触媒または重合触媒組成物については、後述する。
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またそれらの混合物等が挙げられる。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法は、例えば、(1)単量体として共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンを含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。また、(2)においては、助触媒によって活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することも含まれる。なお、重合触媒組成物に含まれるメタロセン錯体の使用量は、共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンの合計に対して、0.0001〜0.01倍モルの範囲が好ましい。
また、本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
本発明に係る製造方法において、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンを十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限されず、例えば1秒〜10日の範囲が好ましいが、重合される単量体の種類、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
本発明に係る製造方法において、上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンとの重合の際、該非共役オレフィンの圧力は、0.1MPa〜10MPaであることが好ましい。該非共役オレフィンの圧力が0.1MPa以上であれば、反応混合物中に非共役オレフィンを効率的に導入することができる。また、非共役オレフィンの圧力を高くし過ぎても、非共役オレフィンを効率的に導入する効果が頭打ちとなるため、非共役オレフィンの圧力を10MPa以下とするのが好ましい。
前記共重合体の製造方法において、上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンとの重合の際、重合開始時における該共役ジエン化合物の濃度(mol/l)と該非共役オレフィンの濃度(mol/l)とは、下記式の関係を満たすことが好ましい。非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度の値を1以上とすることで、反応混合物中に非共役オレフィンを効率的に導入することができる。
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度 ≧ 1.0
更に好ましくは、下記式の関係を満たすことが好ましい。
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度 ≧ 1.3
さらに好ましくは、下記式の関係を満たすことが好ましい。
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度 ≧ 1.7
本発明に係る製造方法によれば、上記重合触媒または重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、単量体である共役ジエン化合物と非共役オレフィンを共重合させることができる。
・第一重合触媒組成物
次に、本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法において用いられる第一重合触媒組成物について説明する。
第一重合触媒組成物としては、下記一般式(I):
Figure 2013155361
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
Figure 2013155361
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
Figure 2013155361
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物(以下、第一重合触媒組成物ともいう)が挙げられる。
第一重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物である。特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。
なお、重合反応系において、第一重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は0.1〜0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpRは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XX又はC911-XXで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられる。また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましい。メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(I)及び式(II)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’は、C55-XXで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’として、具体的には、以下のものが例示される。
Figure 2013155361
(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
一般式(III)において、上記インデニル環を基本骨格とするCpR’は、一般式(I)のCpRと同様に定義される。好ましい例も同様である。
一般式(III)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C139-XX又はC1317-XXで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられる。また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
一般式(I)、式(II)及び式(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR32]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(I)におけるRa〜Rf)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、Ra〜Rfのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。Ra〜Rfのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィンが導入され易くなる。同様の観点から、Ra〜Rcのうち少なくとも一つが水素原子であり、Rd〜Rfのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX’3]を含む。シリル配位子[−SiX’3]に含まれるX’は、下記で説明される一般式(III)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
一般式(III)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
一般式(III)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオ−n−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオ−sec−ブトキシ基、チオ−tert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
一般式(III)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ
−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
一般式(III)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
一般式(III)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
一般式(III)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
一般式(III)において、[B]-で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
また、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
上記一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(I)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
Figure 2013155361
(式中、X’’はハライドを示す。)
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
Figure 2013155361
(式中、X’’はハライドを示す。)
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
Figure 2013155361
ここで、一般式(IV)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物において、[A]+は、カチオンを示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す。
[A]+で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
上記反応に用いる一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。なお、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(IV)で表される化合物と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(I)又は式(II)で表されるメタロセン錯体と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
上記第一重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記第一重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRR’R”(式中、R及びR’はそれぞれ独立してC1〜C10の炭化水素基又は水素原子であり、R”はC1〜C10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して2〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
更に、第一重合触媒組成物においては、一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス−1,4結合量や得られる共重合体の分子量を増大できる。
・第二重合触媒組成物
次に、本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法において用いられる第二重合触媒組成物について説明する。
第二重合触媒組成物としては、
(A)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であって、希土類元素と炭素との結合を有さない該希土類元素化合物又は反応物と、
(B)成分:非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物(B−1)、アルミノキサン(B−2)、並びにルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種のハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種とを含む重合触媒組成物(以下、第二重合触媒組成物ともいう)を好適に挙げることができる。
第二重合触媒組成物が、イオン性化合物(B−1)及びハロゲン化合物(B−3)の少なくとも一種を含む場合、第二重合触媒組成物は、更に、
(C)成分:下記一般式(X):
YR1 a2 b3 c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物を含む。
前記共重合体の製造方法に用いる第二重合触媒組成物は、上記(A)成分及び(B)成分を含むことを要し、ここで、該重合触媒組成物が、上記イオン性化合物(B−1)及び上記ハロゲン化合物(B−3)の少なくとも一種を含む場合には、更に、
YR1 a2 b3 c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物を含むことを要する。
上記イオン性化合物(B−1)及び上記ハロゲン化合物(B−3)は、(A)成分へ供給するための炭素原子が存在しないため、該(A)成分への炭素供給源として、上記(C)成分が必要となる。なお、上記重合触媒組成物が上記アルミノキサン(B−2)を含む場合であっても、該重合触媒組成物は、上記(C)成分を含むことができる。また、上記第二重合触媒組成物は、通常の希土類元素化合物系の重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。
第二重合触媒組成物に用いる(A)成分は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であり、ここで、希土類元素化合物及び該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、希土類元素と炭素との結合を有さない。該希土類元素化合物及び反応物が希土類元素−炭素結合を有さない場合、化合物が安定であり、取り扱いやすい。ここで、希土類元素化合物とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素又はスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(A)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記希土類元素化合物は、希土類金属が2価もしくは3価の塩又は錯体化合物であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子及び有機化合物残基から選択される1種又は2種以上の配位子を含有する希土類元素化合物であることが更に好ましい。更に、上記希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、下記一般式(XI)又は(XII):
1111 2・L11w ・・・ (XI)
1111 3・L11w ・・・ (XII)
(式中、M11は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基、アルデヒド残基、ケトン残基、カルボン酸残基、チオカルボン酸残基又はリン化合物残基を示し、L11は、ルイス塩基を示し、wは、0〜3を示す)で表されることができる。
上記希土類元素化合物の希土類元素に結合する基(配位子)として、具体的には、水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオ−n−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオ−sec−ブトキシ基、チオ−tert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基;ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基;トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等のシリル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。更には、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−ナフトアルデヒド等のアルデヒドの残基;2’−ヒドロキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシブチロフェノン、2’−ヒドロキシプロピオフェノン等のヒドロキシフェノンの残基;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニルアセトン、イソブチルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン等のジケトンの残基;イソ吉草酸、カプリル酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、エチルヘキサン酸、ビバール酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名、C10モノカルボン酸の異性体の混合物から構成される合成酸]、フェニル酢酸、安息香酸、2−ナフトエ酸、マレイン酸、コハク酸等のカルボン酸の残基;ヘキサンチオ酸、2,2−ジメチルブタンチオ酸、デカンチオ酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸の残基、リン酸ジブチル、リン酸ジペンチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジフェニル、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(ブチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)等のリン酸エステルの残基;2−エチルヘキシルホスホン酸モノブチル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、フェニルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ホスホン酸モノ−1−メチルヘプチル、ホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル等のホスホン酸エステルの残基、ジブチルホスフィン酸、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジラウリルホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、2−エチルヘキシルホスフィン酸、1−メチルヘプチルホスフィン酸、オレイルホスフィン酸、ラウリルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、p−ノニルフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸の残基を挙げることもできる。なお、これらの配位子は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記第二重合触媒組成物に用いる(A)成分において、上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記希土類元素化合物が複数のルイス塩基と反応する場合(式(XI)及び(XII)においては、wが2又は3である場合)、ルイス塩基L11は、同一であっても異なっていてもよい。
上記第二重合触媒組成物に用いる(B)成分は、イオン性化合物(B−1)、アルミノキサン(B−2)及びハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。なお、上記第二重合触媒組成物における(B)成分の合計の含有量は、(A)成分に対して0.1〜50倍モルであることが好ましい。
上記(B−1)で表されるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなり、上記(A)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。ここで、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。従って、イオン性化合物としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、これらのイオン性化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるイオン性化合物の含有量は、(A)成分に対して0.1〜10倍モルであることが好ましく、約1倍モルであることが更に好ましい。
上記(B−2)で表されるアルミノキサンは、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られる化合物であり、例えば、一般式:(−Al(R’)O−)で示される繰り返し単位を有する鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサン(式中、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部の炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されてもよく、繰り返し単位の重合度は、5以上が好ましく、10以上が更に好ましい)を挙げることができる。ここで、R’として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。また、アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム及びその混合物等が挙げられ、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。例えば、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンを好適に用いることができる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、(A)成分を構成する希土類元素Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度となるようにすることが好ましい。
上記(B−3)で表されるハロゲン化合物は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種からなり、例えば、上記(A)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるハロゲン化合物の合計の含有量は、(A)成分に対して1〜5倍モルであることが好ましい。
上記ルイス酸としては、B(C653等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C653等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表中の第III,IV,V,VI又はVIII族に属する元素を含有するハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくはアルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、塩素又は臭素が好ましい。上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化錫、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
上記第二重合触媒組成物に用いる(C)成分は、下記一般式(X):
YR1 a2 b3 c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物であり、下記一般式(Xa):
AlR123 ・・・ (Xa)
[式中、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよい]で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。式(X)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(C)成分としての有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第二重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、(A)成分に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
・重合触媒
次に、本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法において用いられる重合触媒について説明する。
重合触媒としては、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの重合用であり、下記式(A):
aMXbQYb ・・・ (A)
(式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である)で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
上記メタロセン系複合触媒の好適例においては、下記式(XV):
Figure 2013155361
(式中、M1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra及びRbは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該Ra及びRbは、M1及びAlにμ配位しており、Rc及びRdは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示す)で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
上記メタロセン系重合触媒を用いることで、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を製造することができる。また、上記メタロセン系複合触媒、例えば予めアルミニウム触媒と複合させてなる触媒を用いることで、共重合体合成時に使用されるアルキルアルミニウムの量を低減したり、無くしたりすることが可能となる。なお、従来の触媒系を用いると、共重合体合成時に大量のアルキルアルミニウムを用いる必要がある。例えば、従来の触媒系では、金属触媒に対して10当量以上のアルキルアルミニウムを用いる必要があるところ、上記メタロセン系複合触媒であれば、5当量程度のアルキルアルミニウムを加えることで、優れた触媒作用が発揮される。
上記メタロセン系複合触媒において、上記式(A)中の金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
上記式(A)において、Rは、それぞれ独立して無置換インデニル又は置換インデニルであり、該Rは上記金属Mに配位している。なお、置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基等が挙げられる。
上記式(A)において、Qは、周期律表第13族元素を示し、具体的には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。
上記式(A)において、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
上記式(A)において、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
上記式(XV)において、金属M1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属M1としては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
上記式(XV)において、CpRは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XX又はC911-XXで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(XV)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(XV)において、RA及びRBは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該RA及びRは、M1及Alにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
上記式(XV)において、RC及びRDは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子である。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
なお、上記メタロセン系複合触媒は、例えば、溶媒中で、下記式(XVI):
Figure 2013155361
(式中、M2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、RE〜RJは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体を、AlRKLMで表される有機アルミニウム化合物と反応させることで得られる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンやヘキサンを用いればよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の構造は、1H−NMRやX線構造解析により決定することが好ましい。
上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体において、CpRは、無置換インデニル又は置換インデニルであり、上記式(XV)中のCpRと同義である。また、上記式(XVI)において、金属M2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、上記式(XV)中の金属M1と同義である。
上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR32]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(RE〜RJ基)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、RE〜RJのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。RE〜RJのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になる。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
一方、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物は、AlRKLMで表され、ここで、RK及びRLは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は水素原子で、RMは炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、但し、RMは上記RK又はRLと同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これら有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物の量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
・第三重合触媒組成物
次に、本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法において用いられる第三重合触媒組成物について説明する。
第三重合触媒組成物は、上記メタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含むことを特徴とし、更に、通常のメタロセン系触媒を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。なお、上記メタロセン系複合触媒とホウ素アニオンとを合わせて2成分触媒ともいう。第三重合触媒組成物によれば、上記メタロセン系複合触媒と同様に、更にホウ素アニオンを含有するため、各単量体成分の共重合体中での含有量を任意に制御することが可能となる。
第三重合触媒組成物において、2成分触媒を構成するホウ素アニオンとして、具体的には、4価のホウ素アニオンが挙げられる。例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
なお、上記ホウ素アニオンは、カチオンと組み合わされたイオン性化合物として使用することができる。上記カチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。従って、上記イオン性化合物としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。なお、ホウ素アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物は、上記メタロセン系複合触媒に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。
なお、上記第三重合触媒組成物においては、上記メタロセン系複合触媒と上記ホウ素アニオンとを用いる必要があるが、上記式(XVI)で表されるメタロセン触媒と有機アルミニウム化合物を反応させる反応系に、ホウ素アニオンが存在していると、上記式(XV)のメタロセン系複合触媒を合成することができない。従って、上記第三重合触媒組成物の調製には、該メタロセン系複合触媒を予め合成し、該メタロセン系複合触媒を単離精製してからホウ素アニオンと組み合わせる必要がある。
上記第三重合触媒組成物に用いることができる助触媒としては、例えば、上述のAlRKLMで表される有機アルミニウム化合物の他、アルミノキサン等が好適に挙げられる。上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、これらアルミノキサンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
・共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の含有量
引張強度を高め、タイヤの耐久性を高める観点から、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、ゴム成分100質量に対して0.5〜75質量部含まれることが好ましい。
<一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物>
次に、一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の詳細について説明する。ゴム組成物は、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を有する。一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物を組み合わせて用いてもよい。
≪一般式(1)で表される化合物≫
ゴム組成物に含まれる一般式(1)の化合物は、加硫促進剤として機能する。
Figure 2013155361
一般式(1)において、R11,R12,R13,及びR14は、それぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。
炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基としては、2-エチルヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、ドデシル基等が挙げられ、一方、炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。R11〜R14の炭素数が2以下ではゴム成分中への分散が悪くなり、耐熱性が悪化し、炭素数が13以上では、加硫速度が非常に遅れる。
一般式(1)の化合物の具体例としては、1,6-ビス(N,N'-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサン、1,6-ビス(N,N'-ジ(2-エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)-ヘキサン等が挙げられる。
一般式(1)の化合物は、加硫促進剤として機能すると共に加硫剤としても機能し得る。そのため、ゴム組成物が、ビニル結合量の高いブタジエンゴムとスチレンブタジエンゴムの少なくともいずれか一方と、一般式(1)の化合物とを含む場合には、生成されるゴム組成物は、高いドライグリップ性と高い耐熱疲労性とを有する。
一般式(1)の化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。一般式(1)の化合物の配合量が0.5質量部未満では、後述する一般式(2)の有機チオスルフェート化合物と併用する場合、有機チオスルフェート化合物を活性化させる効果が十分に得られず、10質量部を超えると、ゴム組成物の破壊特性が低下する。
≪一般式(2)で表される化合物≫
ゴム成分に含まれる一般式(2)の有機チオスルフェート化合物は、加硫剤として機能する。
Figure 2013155361
一般式(2)において、mは3〜10を表し、Maはリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトの1当量を表す。また、該化合物は結晶水を含有していてもよい。
一般式(2)において、mで示されるメチレン鎖の数は、3〜10であることを要する。2以下では、耐熱疲労性を向上させる効果が充分に得られず、11以上では分子量が増えるわりに耐熱疲労性の向上効果が小さい。分子内環化反応を抑制する観点から、該メチレン鎖の数は、3〜6で有ることが好ましい。また、Maとしては、入手の容易性と効果を勘案すると、カリウム、ナトリウム等を用いることが好ましい。
一般式(2)の化合物の具体例としては、ナトリウム塩一水和物、ナトリウム塩二水和物等が挙げられる。経済的理由から、チオ硫酸ナトリウムからの誘導体、例えば1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム2水和物を用いることが最も好ましい。
一般式(2)の化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対し1.0〜10質量部であるのが好ましく、2.0〜6.0質量部であるのが更に好ましい。一般式(2)の化合物の配合量が1.0質量部未満では、耐熱疲労性を充分に向上させることができず、10質量部を超えると、破断時伸びが低下し、耐リブ欠け性が著しく低下する。一般式(2)の化合物は、硫黄と共に用いることができる。
≪一般式(3)で表される化合物≫
一般式(3)で表される化合物は、熱老化防止剤として機能する。
Figure 2013155361
一般式において、Arは、アリーレン基を示す。アリーレン基としては、環上に置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリーレン基が好ましい。上記置換基としては、加硫に影響を及ぼすことがなく、かつ170℃以上の高温で安定な基であればよく特に制限されず、例えば低級のアルキル基やアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などを挙げることができる。該アリーレン基としては、フェニレン基及びナフチレン基などが挙げられ、特にフェニレン基が好適である。
1及びQ2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基を示す。アルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が挙げられる。製造の容易さなどの点から、Q1及びQ2は同一であるのが好ましい。
一般式(3)で表される化合物の例としては、1,2−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;1,4−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;2,3−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン;2,4−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン;2,5−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン、2,6−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン、及びこれらに対応するビス(シトラコンイミドエチル)化合物などを挙げることができる。これらの中で、効果の点から、特に1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンが好適である。
一般式(3)で表される化合物の配合量は、ゴム組成物の耐熱性を向上させる効果を発揮する観点から、ゴム成分100質量部に対し1.0〜10質量部であるのが好ましく、2.0〜6.0質量部であるのが更に好ましい。一般式(3)で表される化合物は、他の熱老化防止剤を適宜併用することができる。
<その他の成分>
≪補強性充填材≫
ビードフィラー13,14又はサイド補強層31を形成するゴム組成物には、必要に応じて補強性充填材を配合することができる。補強性充填材としては、カーボンブラック、無機充填材、などを挙げることができ、カーボンブラック及び無機充填材から選択される少なくとも一種が好ましい。
無機充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、無機充填材を用いる時は適宜シランカップリング剤を使用してもよい。
補強性充填材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含むゴム成分100質量部に対し、5質量部〜200質量部が好ましい。補強性充填材の少なくともいずれかの含有量が、5質量部未満であると、補強性充填材を入れる効果があまりみられないことがあり、200質量部を超えると前記ゴム成分に補強性充填材が混ざり込まなくなる傾向があり、ゴム組成物としての性能を低下させることがある。
≪架橋剤≫
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤硫黄などが挙げられるが、中でも、タイヤ用ゴム組成物としては硫黄系架橋剤がより好ましい。
架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、架橋がほとんど進行しなかったり、20質量部を超えると一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があったり、加硫物の物性が損なわれたりすることがある。
≪その他の添加剤≫
その他の添加剤としては、必要に応じて、汎用の加硫促進剤、補強剤、軟化剤、充填材、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
[空気入りタイヤの製造方法]
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の、通常、タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望の空気入りタイヤを製造する。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
[ゴム組成物の加硫後のゴム物性]
<100%伸張時弾性率(M100)の測定方法>
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートについて、JIS K 6251に基づき、100%伸張時弾性率を測定した。
比較例1のゴム組成物を用いて製造した空気入りタイヤの値を100として指数表示した。
<Σtanδ(28〜150℃)の測定方法>
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、上島製作所社製スペクトロメーターを用い、チャック間距離10mm、初期歪200μm、動的歪1%、周波数52Hz、測定開始温度25〜200℃の測定条件にて正接損失tanδを測定し、温度とtanδとの関係をグラフ化し、斜線部分の面積を求め、その値をΣtanδ(28〜150℃)とした。
[空気入りタイヤの評価]
<ランフラット耐久性>
常圧でリム組みした各供試タイヤに、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/h、室内温度38℃の条件でドラム走行テストを行なった。各供試タイヤの故障発生までの走行距離を測定し、比較例5のゴム組成物を用いて製造した空気入りタイヤの走行距離を100として、以下の式により、指数表示した。指数が大きい程、ランフラット耐久性が良好である。
ランフラット耐久性(指数)
=(供試タイヤの走行距離/比較例5のタイヤの走行距離)×100
<乗り心地性>
各供試タイヤを乗用車に装着し、専門のドライバー2名により乗り心地性のフィーリングテストを行い、1−10の評点をつけその平均値を求めた。その値が大きいほど乗り心地性は良好である。
[エチレン−ブタジエン共重合体(EBR)の分析方法]
エチレン−ブタジエン共重合体(EBR)の分析方法及び樹脂組成物の評価方法を以下に示す。
・共重合体のミクロ構造(1,2−ビニル結合量、シス−1,4結合量)
共重合体中のブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)を、1H−NMRスペクトル(100℃、d−テトラクロロエタン標準:6ppm)による1,2−ビニル結合成分(5.0−5.1ppm)と全体のブタジエン結合成分(5−5.6ppm)の積分比より求めた。また、共重合体中のブタジエン部分のミクロ構造(シス−1,4結合量)を、13C−NMRスペクトル(100℃、d−テトラクロロエタン標準:73.8ppm)によるシス−1,4結合成分(26.5−27.5ppm)と全体のブタジエン結合成分(26.5−27.5ppm+31.5−32.5ppm)の積分比より求めた。
・共重合体のエチレン含有率
共重合体中のエチレン部分の含有率(mol%)を 13C−NMRスペクトル(100℃、d−テトラクロロエタン標準:73.8ppm)による全体のエチレン結合成分(28.5−30.0ppm)と全体のブタジエン結合成分(26.5−27.5ppm+31.5−32.5ppm)の積分比より求めた。
・共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8121GPC/HT、カラム:東ソー製GMHHR−H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は140℃である。
・共重合体のブロックポリエチレン融解温度(DSCピーク温度)
JIS K7121−1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を行い、DSC曲線を描き、ブロックポリエチレン融解温度(DSCピーク温度)を測定した。なお、測定は、単体ポリマーや触媒残渣等の不純物の影響を避けるため、共重合体を大量のテトラヒドロフランに48h浸漬し、テトラヒドロフランに溶解する成分を全て取り除いた後、乾燥したゴム成分をサンプルとして使用した。
・共重合体の同定
文献(「高分子学会予稿集Vol.42, No.4, Page1347」)のオゾン分解−GPC法を応用して、連鎖分布の解析を行った。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは[GPC:東ソー製HLC−8121GPC/HT、カラム:昭和電工製GPC HT−803×2本、検出器:示差屈折率計(RI)、単分散ポリスチレンを基準、測定温度は140℃]を用いて測定した。
[エチレン−ブタジエン共重合体(EBR)の製造例]
十分に乾燥した400ml耐圧ガラス反応器に、トルエン溶液160mlを添加した後、エチレンを0.8MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhC962GdN(SiHMe22]28.5μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]34.2μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.43mmolを仕込み、トルエン8mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で28.2μmolとなる量をモノマー溶液へ添加し、室温で5分間重合を行った。その後、エチレンの導入圧力を0.2MPa/minの速度で低下させながら、1,3−ブタジエン15.23g(0.28mol)を含むトルエン溶液100mlを添加した後、さらに90分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し、共重合体A(ブロック共重合体)を得た。得られた共重合体Aの収量は12.50gであった。
得られた共重合体Aについて、ミクロ構造、エチレン含有率、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、ブロックポリエチレン融解温度(DSCピーク温度)及び連鎖構造を上記の方法で測定・評価した。共重合体Aの13C−NMRスペクトルチャートを図2に、DSC曲線を図3に示す。
共重合体A中のブタジエン部分のミクロ構造として、シス−1,4−結合量は98%、1,2−ビニル結合量は1.2%であった。
重量平均分子量Mwは350,000であり、分子量分布Mw/Mnは、2.2であった。
エチレン含有率は7mol%であった。
ブロックポリエチレン融解温度(DSCピーク温度)は、121℃であり、連鎖構造はブロックであった。
[実施例,比較例]
製造例1で得られた共重合体A、天然ゴム(NR)、老化防止剤、加硫促進剤などの各種配合剤を、表1に示す配合内容に従って、バンバリーミキサーにより混練し、実施例1〜3のゴム組成物と、比較例1〜7のゴム組成物を調製した。
また、実施例1〜3のゴム組成物及び比較例1〜7のゴム組成物を、それぞれサイド補強層とビードフィラーに用いて、常法により、各供試タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車ラジアルタイヤ)を製造した。
製造した空気入りタイヤに、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013155361
表1に示した成分は、下記のとおりである。
*1.天然ゴム:TSR20
*2.未変性ポリブタジエン:JSR社製BR01
*3.カーボンブラック:FEF(N550)、旭カーボン社製「旭#60」
*4.プロセスオイル:アロマティックオイル、富士興産社製「アロマックス#3」
*5.老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
*6.加硫促進剤DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーDZ」
*7.加硫促進剤TOT:テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラーTOT−N」
*8.1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物、(株)フレキシス社製
*9.1,6−ビス(N,N’−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)ヘキサン
*10.1,3−ビスシトラコンイミドメチルベンゼン、(株)フレキシス社製「Perkalink 900−PST」
実施例1〜3と比較例1〜5から、ゴム成分としてエチレン−ブタジエン共重合体を含むとともに、加硫促進剤a〜cのいずれか、すなわち、一般式(1)〜(3)で表される化合物のいずれかを含むゴム組成物をビードフィラー及びサイド補強層に用いて製造された空気入りタイヤは、通常走行時の低転がり抵抗性と乗り心地などのタイヤ特性を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性が飛躍的に高められることが判った。
比較例6,7のように、エチレン−ブタジエン共重合体と加硫促進剤a〜cのいずれかを併用しない場合には、100%伸張時弾性率では良好な値が得られても、ランフラット走行時の耐久性を満足しないことが判った。
1…空気入りタイヤ、 11,12…ビードコア、 13,14…ビードフィラー、 15…カーカス、 16…ベルト部、 17…ベルト補強層、 21…トレッド部、 22…サイドウォール部、 31…サイド補強層、 32…インナーライナー

Claims (12)

  1. 一対のビードコアと、ビードフィラーを含むビード部と、該ビード部からトレッドに連なるサイドウォール部とを有し、該サイドウォール部を補強するサイド補強層とを有する空気入りタイヤであって、
    該ビードフィラー及び該サイド補強層の少なくともいずれか一方がゴム成分として共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含み、更に、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種を含むゴム組成物からなる空気入りタイヤ。
    Figure 2013155361
    (式中、R11,R12,R13,及びR14は、それぞれ独立に炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
    Figure 2013155361
    (式中、mは3〜10を表し、Maはリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトの1当量を表す。また、該化合物は結晶水を含有していてもよい。)
    Figure 2013155361
    (式中、Arは、アリーレン基であり、Q1及びQ2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)
  2. 前記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の少なくとも1種又は一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物を組み合わせた配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜10質量部含まれる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記共重合体がゴム成分100質量に対して0.5〜75質量部含まれる請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記共重合体において、共役ジエンの割合が30mol%〜98mol%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記共重合体は、共役ジエン化合物部分のシス−1,4結合量が50%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、10,000〜10,000,000である請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、10以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記非共役オレフィンは、非環状オレフィンである請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記非共役オレフィンの炭素数は、2〜10である請求項1又は8に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記非共役オレフィンは、エチレン、プロピレン及び1−ブテンよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記非共役オレフィンは、エチレンである請求項10に記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記共役ジエン化合物は、1,3−ブタジエン及びイソプレンよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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WO2020075679A1 (ja) * 2018-10-09 2020-04-16 株式会社ブリヂストン ランフラットタイヤ

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