JP2013151080A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録媒体によらずに記録画像の高光沢性および高写像性を実現可能な、顔料インクを用いるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法。
【解決手段】カラーインクおよび処理液を吐出する記録ヘッドを、記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させることによって、記録媒体に対するカラーインクによる画像の形成と処理液による画像の被覆とを行うインクジェット記録装置であって、所定領域に対して、記録ヘッドの複数回の走査において記録ヘッドからカラーインクおよび処理液を吐出させるための吐出データを生成する生成手段と、生成された吐出データに基づいて記録ヘッドからのカラーインクおよび処理液の吐出を制御する制御手段と、を備え、生成手段は、所定領域の画像形成に用いるカラーインクを吐出してから処理液を吐出するまでの時間を、記録媒体の種類に応じて決定するインクジェット記録装置。
【選択図】図6

Description

本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対し走査しながら画像を記録するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
染料インクと比べて耐光性および耐水性に優れた顔料インクを用いて記録を行うインクジェット記録装置が知られている。顔料インクが記録媒体上に付与されると、顔料インクの色材は、記録媒体の表面に残留して凹凸を形成する。この凹凸は、色材の種類や記録されたインクの量によって変化し、記録画像の光沢度の違いとなって現れて、記録画像の光沢ムラとして認識されてしまう。この光沢ムラは、特に、良好な光沢度が所望される銀塩写真調の記録画像を作成する上で、問題となる。
これに対し、顔料インクによる記録物を樹脂が含まれたクリアインクで被覆することで光沢ムラを軽減可能とする種々の技術が提案されている。例えば特許文献1は、画像を記録した記録媒体上にクリアインクを溢れる量まで塗布することによりクリアインクの水平液面を形成させ、次いで加熱してクリアインク中のポリマー微粒子を成膜させることにより、高光沢度を提供する方法を提案している。
特開2004−314350号公報
特許文献1の提案では、記録物の表面でクリアインクを溢れさせることで平滑性を実現し、その後にクリアインク層を定着させるために加熱を行う。しかしながら、記録物の表面へクリアインクを溢れるほど付与することはランニングコスト上望ましくない。また、溢れるクリアインクを定着させるための加熱用の定着器を記録装置本体に設置した場合には本体コストが上がる。このように、特許文献1の提案の実用化には課題がある。
そこで、画像が記録された記録媒体上にクリアインクを溢れることのない付与量でかつ表面が平滑になるように付与することで、ランニングコストを下げると同時にクリアインクの定着器の設置を不要として本体コストの上昇を抑える試みを行った。ところが、溢れることのない量でクリアインクを付与した場合、顔料インクおよびクリアインクの付与条件がそれぞれ同一であったとしても、表面の平滑性は記録媒体によって大きく異なることがわかった。これは、記録媒体の種類によってその表面に付与した顔料インクの定着状態が異なるものであるところ、その上にクリアインクを比較的少量しか付与しないため、表面の平滑性が顔料インクの定着状態の影響を受けやすいからであると考えられる。したがって、ある種の記録媒体では光沢度を上げることのできる顔料インクおよびクリアインクの付与条件を用いても、別の記録媒体では十分に光沢度を上げることができない場合があるという課題がある。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものである。よってその目的とするところは、比較的簡易な構成で、記録媒体の種類によらずに高光沢でかつ光沢ムラがない記録画像を実現させることのできる、顔料インクを用いて記録を行うインクジェット記録装置および記録方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明のインクジェット記録装置は、カラーインクおよび処理液を吐出する記録ヘッドを、記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させることによって、記録媒体に対するカラーインクによる画像の形成と処理液による画像の被覆とを行うインクジェット記録装置であって、所定領域に対して、記録ヘッドの複数回の走査において記録ヘッドからカラーインクおよび処理液を吐出させるための吐出データを生成する生成手段と、生成された吐出データに基づいて記録ヘッドからのカラーインクおよび処理液の吐出を制御する制御手段と、を備え、生成手段は、所定領域の画像形成に用いるカラーインクを吐出してから処理液を吐出するまでの時間を、記録媒体の種類に応じて決定することを特徴とする。
本発明によれば、顔料インクの上をクリアインクで被覆する際に、記録媒体の特性によって、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの間隔を調節する。記録媒体に応じて顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を変えることで、様々な記録媒体において最適な光沢度および写像性が実現できる。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概観構成を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る記録ヘッドを具体的に説明するための模式図である。 本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の例を示すブロック図である。 図3における記録制御部による制御を説明するための図である。 一般的なマスクパターンの例を示した図である。 本発明の実施形態において特徴的なクリアインクの平滑性の例を示した図である。 本発明の実施形態において特徴的なマスクパターンの例を示した図である。 ブリストー法によって求めた、異なる記録媒体に付与したブラックインク上でのクリアインクの浸透速度を示した表である。 本発明の実施形態に係る効果を説明するための表である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
(全体的構成)
本実施形態に用いられるインクジェット記録装置について、その概略を説明する。
図1は、インクジェット方式の記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を用いて記録を行うインクジェット記録装置1の外観斜視図である。記録ヘッド(不図示)を搭載するキャリッジ11には、記録ヘッドに駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられており、駆動信号は記録制御部よりフレキシブルケーブル12を介して伝達される。キャリッジ11は、主走査方向Xに延在して装置本体に設置されたガイドシャフト13に沿って往復移動可能に案内支持されている。また、キャリッジ11は、主走査モータ14によりタイミングベルト15等の駆動機構を介して往復移動するとともに、キャリッジ11の位置を光学的に読み取るエンコーダセンサ16を用いてその位置および移動が制御される。キャリッジ11が移動する領域の端部には、記録ヘッドのメンテナンス処理を実行するための回復手段17が備えられている。回復手段17には、吸引および放置時に記録ヘッドの吐出口面を保護するためのキャップ171、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするためのワイパーブレード172が備えられている。記録用紙やプラスチック薄板等の記録媒体は、給紙トレイ18から1枚ずつ分離給紙され、給紙ローラ(不図示)によって副走査方向Yに送られる。キャリッジ11に搭載して用いる記録ヘッド(不図示)は、例えば、熱エネルギーを利用してインクを吐出する記録ヘッドであって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。すなわち記録ヘッドは、上記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用して、吐出口よりインクを吐出して記録を行うものである。もちろん、圧電素子によってインクを吐出する等、その他の方式であってもよい。本実施形態で用いられるインクは、インクジェット方式で吐出されるものである。
図2は、本実施形態で使用される記録ヘッド21の吐出口側の面を示す模式図である。本実施形態の記録ヘッド21は、全4種類(4色)のカラーインク(顔料インク)と1種類のクリアインクとを吐出する記録ヘッドであり、インク種類毎に1280個の吐出口が1200dpi(1インチ当たり1200個)の密度で1列に並ぶノズル列を有している。各ノズル列における吐出口は、記録ヘッド21がキャリッジ11に搭載された際に、記録ヘッド21の主走査方向Xと交差(ここでは直交)する副走査方向Yに並ぶ。またこのとき、シアンインクを吐出するノズル列21C、マゼンタインクを吐出するノズル列21M、イエローインクを吐出するノズル列21Yおよびブラックインクを吐出するノズル列21Kは、記録ヘッド21の主走査方向Xにこの順に並列して配置されている。記録ヘッド21は、さらに、同様に構成されたクリアインクを吐出するノズル列21Clを有している。
吐出口から吐出されるインクの吐出量は約4.5plとする。ただし、ブラックインクは高濃度を実現するために吐出量を他に比べて若干多く設定してあってもよい。本実施形態の記録装置は、このような記録ヘッドを主走査方向Xに走査しながら吐出させることにより、主走査方向Xに2400dpi(dot/inch)、副走査方向Yに1200dpiの記録密度でドットを記録することが可能となっている。また、全4種類(4色)のカラーインク(顔料インク)と1種類のクリアインクとを吐出する記録ヘッド21は、各種類で独立に構成されていてもよいし、一体的に構成されていてもよい。また、クリアインクのノズル列が、顔料インク用のノズル列よりも副走査方向Yにおいて後方にずらされた位置関係で構成されていてもよい。
この記録ヘッド21を用いて、通常は、キャリッジ11を主走査方向Xに移動させながら記録ヘッド21からインクを吐出する記録動作と、記録媒体を副走査方向(搬送方向)Yに所定量搬送する搬送動作とを繰り返して記録を行う。
(画像処理システムの構成例)
次に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。図3は、図1に示したインクジェット記録装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。まず、スキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器301やハードディスク等の各種記憶媒体に保存されている多値画像データは、画像入力部302へと入力される。画像入力部302は、記録装置外部に接続されたホストコンピュータであり、記録装置の画像出力部303に対して記録すべき画像情報を転送する。画像入力部302には、画像データを転送する際に必要なCPU306や、記憶素子(ROM307)が配置されている。ホストコンピュータの形態としては、情報処理装置としてのコンピュータや、イメージリーダなどの形態とすることができる。受信バッファ304は、画像入力部302から受信したデータを一時的に格納するための領域であり、受信したデータを記録制御部305からの読み込みが行われるまで蓄積しておく。記録制御部305の内部には、CPU306を始め、制御プログラムなどを記憶した記憶素子(ROM307)や、各種画像処理を実施する際のワークエリアとなるRAM308が配置されている。記録制御部305は、受信バッファ304から読み込んだ多値の入力画像データを、後述する画像処理を施して2値画像データへと変換する。また、記録制御部305は、モータ制御部309を通じて、記録ヘッド21を主走査方向Xに駆動させるためのキャリッジモータ310や、記録媒体を副走査方向Yに搬送するための搬送モータ311の制御を行う。記録制御部305において変換された2値画像データを基に、吐出制御部312では、記録ヘッド21の動作を制御し、インクを付与することで画像形成を行う。
(特徴的構成)
本実施形態では、記録媒体上へクリアインクを付与する場合に、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を記録媒体によって変更することで、様々な記録媒体に対し効率的に光沢ムラを軽減しつつ光沢度・写像性を向上可能とする。
本明細において「光沢度」とは、JIS K 5600−4−7に定められた方法に準じて測定されるグロスの値を意味するものであり、『入射角+0±0.9°』の反射角での光の強さのことを意味する。
本明細書において「写像性」とは、平滑度を表す値であり、後述する計算式(式1)によって光沢度(グロスの値)とヘイズの値とを基に導き出される。本明細書において「ヘイズ」とは、ISO DIS 13803に定められた方法に準じて測定されるヘイズの値を意味するもので、『入射角+1.8±0.9°』の反射角での光の強さのことを意味する。ヘイズの値は拡散反射光が強いほど大きい値となる。「写像性」の値が大きいほど「写像性が高い」といい、平滑な表面であることを意味する。一方、写像性の値が小さいほど「写像性が低い」といい、粗い表面であることを意味する。銀塩写真調の記録画像を得る観点からは、写像性が高い方が好ましい。
「写像性」=「(グロスの値)−(ヘイズの値)」÷「(グロスの値)+(ヘイズの値)」
・・・ (式1)
本明細書においてグロスの値およびヘイズの値の測定には、BYK−Gardner社製のマイクロ−ヘイズ プラスを使用したが、グロスの値およびヘイズの値を測定できるものであれば、測定器はこれに限定されるものではない。
次に、本実施形態における特徴的な処理を実行可能な制御部について、図4を用いて説明する。ここでいう「特徴的な処理」とは、クリアインクを付与する場合に、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を記録媒体によって変更することで、様々な記録媒体に対し効率的に光沢ムラを軽減し光沢度・写像性を向上させることをいう。なお、本明細書において、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔のことを「クリアインクのウエイト時間」または単に「ウエイト時間」とも表現することとする。
図4は、図3に示した記録制御部305による制御を説明するための図である。記録制御部305は、上記特徴的な処理を実行可能な制御部を構成する。この記録制御部305において、インクの付与量や付与順が決定される。
各色8bitで構成される入力画像データは、色変換処理401に入力され、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、およびブラック(K)の濃度信号に変換される。具体的には、3次元の色変換ルックアップテーブル(3D−LUT)402を参照しつつ、画素毎に、入力画像データを、記録装置が利用可能な複数のインク色の多階調データ(CMYKデータ)に変換する。
色変換ルックアップテーブルの次元数は、色変換処理401に入力する入力画像データの成分の数を意味している。ただし、この色変換ルックアップテーブル402には、特定かつ離散的なRGB信号に対する濃度信号しか保持されておらず、各色256段階で表現されるRGBの全ての組み合わせに、そのまま対応可能なわけではない。本実施形態において、保持されていない領域のRGB信号に対しては、保持している複数のデータを用いて、補間処理で求めることとする。ここで行われる補間処理方法は公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。色変換処理401により取得される多階調データ(CMYKデータ)の値は、入力値である入力画像データと同様に8bitで表現され、256段階の階調値を有する濃度データとして出力される。色変換処理401において色変換が施されたCMYKデータは、次に、出力γ補正403による変換処理が行われる。出力γ補正403では、最終的に記録媒体で表現される光学濃度が、入力される濃度信号に対し線形性を保つように、インク色毎に補正をかける。出力γ補正403からの出力信号であるC’M’Y’K’データは、入力画像データと同様に8bitの濃度データとなっている。この8bitの濃度データは、2値化処理404によって、記録ヘッド21が記録可能なドットの記録位置を定めた1bitの2値画像データへと変換される。このような2値化処理404には、一般的な多値誤差拡散処理を採用することが出来る。この2値画像データを元に、後述するマスクパターン処理405において使用するマスクパターンを選択し、走査毎の1bitの出力画像データを作成する。
以上説明した色変換処理401、出力γ補正403および2値化処理404における最適な変換方法は、記録媒体の種類や記録する画像の種類等によって異なる。特に、色変換処理401で用いられる3次元の色変換ルックアップテーブル(3D−LUT)402は、記録媒体の種類毎に用意されているのが一般となっている。
次に、図5においてマスクパターン処理405について具体的に説明する。マスクパターンは記録制御部305内のROM307に格納されている。各色のドット記録位置を定めた2値画像データを、マスクパターンを用いて各記録走査に割り当てて、記録走査毎の各色で記録されるドットのデータ(吐出データ)を生成する。図5は、4パスのマルチパス記録を実行する際に利用するマスクパターンの1つの例を示した図である。ここでは、説明を簡単にするため1色分のノズル列51とそれに対応するマスクパターン52a〜52dを示している。ノズル列内のノズルの複数の吐出口は4つの領域に区分され、それぞれの領域に含まれる吐出口は、各領域に対応するマスクパターン52a〜52dに従ってドットを記録する。個々のマスクパターン52a〜52dは、ドットの記録・非記録部分を定めた複数の画素領域によって構成されており、図中、黒く示した領域がドットの記録を許容する画素を、白く示した領域がドットの記録を許容しない画素をそれぞれ示している。本明細書において、全画素のうちドットの記録を許容する画素の数の割合を、「記録許容率」といい、百分率で示すものとする。
このマスクパターン52a〜52dは、25%ずつの均等な記録許容率となっており、また、互いに補完の関係を保っている。各記録走査でこれらマスクパターンと2値化処理404後の2値画像データとの論理積をとることによって、実際に各記録走査で記録するドットが決定される。つまり、2値画像データにおいて記録される画素データがあり、かつマスクパターンにおいて記録を許容された場合にのみ、ドットを記録するのである。ここでは説明を簡単にするため4画素×3画素の領域を有するマスクパターンを示しているが、実際のマスクパターンは主走査方向にも副走査方向にもさらに大きな領域を有している場合もある。
以上に説明したように、マスクパターンを用いることで、記録パス毎での記録を許容された画素が決定される。記録許容率を0%とすることで、記録を行わないパスを設定することが可能となる。
前述したように、記録媒体上で溢れることのない量のクリアインクを用いて記録画像表面を平滑にし、光沢度・写像性を向上させる試みを行った。すると、顔料インクおよびクリアインクの種類および付与条件がそれぞれ同一であったとしても、記録媒体によって、クリアインク付与後の表面の平滑性は大きく異なることがわかった。これは、記録媒体の種類によってその表面に付与した顔料インクの定着状態が異なることに起因するものと考えられる。顔料インクの定着状態は、顔料インクが記録媒体へ付与されてから時間経過とともに変化する。顔料インクの定着が進むほど、後から付与したクリアインクの顔料インク層内への浸透は妨げられると考えられる。記録媒体によって顔料インクの定着具合が異なるために、顔料インクの上から付与したクリアインクの、記録画像内への浸透具合が異なる。記録媒体上で溢れることのない量のクリアインクを用いる場合は、比較的少量のクリアインクしか付与されないこととなるため、表面の平滑性は、クリアインクを付与する際の記録媒体に対する顔料インクの定着状態の影響を受けやすいと考えられる。ここで、表面の平滑性は光沢度および写像性に影響を与え、一般に、平滑性が高いほど光沢度および写像性が高い。
この現象を、図6に示した(a)から(d)のモデルを用いて説明する。図6の(a)から(d)は、顔料インクの定着具合が異なる2種類の記録媒体61、62に、顔料インク63およびクリアインク64を付与したものを真横から見た断面図を示している。なお、前述の「溢れることのない量」とは、インクを付与した後に数秒間程度放置し、その後記録媒体を傾けてもインクが垂れることのない量のことを意味し、具体的には記録デューティー(duty)で300%以下程度のことをいう。ここで、「記録デューティー」とはインクドットの記録率を表しており、1200×1200dpiの格子に4.5plのドットを1個記録したときの記録デューティーを100%と定義している。
図6の(a)および(b)は、顔料インクの定着が相対的に遅い記録媒体の場合を示している。図6の(a)は、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔が相対的に短い例であり、図6の(b)は、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔が相対的に長い例である。図6の(a)では、顔料インクがしっかりと定着していない状態であったため、顔料インクを被覆するように付与したクリアインクは顔料インクの中へ浸透してしまい、顔料インクの上に残って平滑面を形成することができない。クリアインクによる平滑面が形成されないので、光沢度・写像性の十分な向上は得られない。一方、図6の(b)では、顔料インクの定着が比較的進行した状態であったため、顔料インクを被覆するように付与したクリアインクは、顔料インクの中へ浸透する量が少なく、顔料インクの上に残って平滑面を形成することができる。クリアインクによる平滑面が形成されるので、光沢度・写像性の十分な向上が得られる。したがって、顔料インクの定着が相対的に遅い記録媒体の場合は、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を長くすることで、光沢度・写像性の向上が実現できる。
次に、図6の(c)および(d)は、顔料インクの定着が相対的に速い記録媒体の場合を示している。図6の(c)は、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔が相対的に短い例であり、図6の(d)は、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔が相対的に長い例である。図6の(c)では、クリアインクを付与するまでの時間間隔が相対的に短いが、顔料インクの定着が相対的に早く、クリアインクを付与する際には、図6の(b)の場合と同様に、顔料インクの定着が比較的進行している。したがって、図6の(c)では、顔料インクを被覆するように付与したクリアインクは、顔料インクの中へ浸透する量が少なく、顔料インクの上に残って平滑面を形成することができる。クリアインクによる平滑面が形成されるので、光沢度・写像性の十分な向上が得られる。一方、図6の(d)では、顔料インクの定着が相対的に早く、クリアインクを付与するまでの時間間隔が相対的に長い。そのため、顔料インクを被覆するように付与したクリアインクは、付与されると定着した顔料インクの上で目止められて凝集し、本来の付与目的に反して凹凸の激しい表面を形成してしまう。クリアインクによる平滑面が形成されないので、光沢度・写像性の十分な向上は得られない。
以上、図6の(a)から(d)のモデルを用いて示したように、光沢度・写像性の十分な向上を得るための、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの最適な時間間隔は、記録媒体によって異なる。したがって、本実施形態では、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を記録媒体によって変えることを特徴的な処理とする。この本実施形態における特徴的な処理について以下に詳細に説明する。
図7は、本実施形態における特徴的なインクの付与方法を実現可能なマスクパターンを例示した説明図である。本実施形態では、記録媒体の種類によって顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を変更することで、効率的に光沢度・写像性を向上させることを目的としている。図中左側に示すパターンは、顔料インクに用いられるマスクパターン71を示したものであり、全16パスの走査のうち、前半8パスの走査における記録許容率の合計が100%となる。図中、中央および右側に示すパターン72および73はいずれもクリアインクに用いられるマスクパターンであり、それぞれ、全16パスの走査のうちの後半8パスの走査における記録許容率の合計が100%となっている。前半8パスの走査により顔料インクによる記録を行い、クリアインクを付与する走査を割り振る後半8パスの走査のうち何パス目を空白にするかで、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を調整することができる。マスクパターン72を使用した場合は2パス分の走査の時間間隔を、マスクパターン73を使用した場合は4パス分の走査の時間間隔を空けることができる。また、さらに長い時間間隔が必要な場合は、顔料インクによる記録を終了した後、クリアインクを付与する際に、記録媒体を記録時とは逆向きに搬送するバックフィードや一旦排紙してその後再度給紙する2度通しを行うなどして時間間隔を長く空けることができる。
なお、図7では記録パス毎での記録許容率は同じであるが、つなぎ部分に生じ得るスジ状の濃度のばらつきの観点から、各記録パスにおいて走査領域の中央部ほど記録許容率が大きくなるように、記録許容率に傾斜をつけるのが一般的である。また、本実施形態ではクリアインクの付与量は一定にしているが、顔料インクの付与量に応じて変えてもよい。また、クリアインクのノズル列が、副走査方向で顔料インク用のノズル列よりも後方にずらされた位置関係で構成されていても、本実施形態は適用可能である。その場合、顔料インクを全ノズルの吐出口から吐出したとしても、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を調整することが可能となる。
(インクの組成)
本発明のインクジェット記録装置および方法で用いることができるクリアインクおよび顔料インクを構成する各成分の例について説明する。なお、文中に「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、アセチレングリコールエチレンオキサイド(EO)付加物はアセチレノールEH(川研ファインケミカル(株)製)である。
<クリアインク>
(1)樹脂の組成
以下、クリアインクに添加する樹脂の組成について説明する。
本実施形態において用いられるクリアインクは、顔料インク上において平滑面を形成し得るだけの量が残る必要がある。平滑面を形成し得る樹脂としては、110mgKOH/g以上、250mgKOH/g以下の酸価を有するものが好ましい。また、クリアインク中に含まれる樹脂としては疎水性モノマーと親水性モノマーとから共重合されたビニル樹脂が好ましい。ビニル樹脂の主鎖構造としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーいずれのものでも使用可能であるが、より好ましくは、ランダムコポリマーを使用する。本実施形態におけるランダムコポリマーとは、2つ以上の異なるモノマーの共重合体を指し、それぞれのモノマーユニットが均一に分布するポリマー化合物を意味する。なお、親水性とは水に対する親和性が大きく水に単独で溶解するものを示し、疎水性とは水に対して親和性が小さく水に単独で溶解しないものを示す。
本実施形態において、共重合されたビニル樹脂の具体例としては、スチレン−(メタ)アクリルエステル−(メタ)アクリル酸系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂が挙げられる。本明細書中、(メタ)アクリルと表記されているものは、メタクリルおよび/またはアクリルのことを指すものとする。
本実施形態においては、クリアインクに含有させる樹脂として、重量平均分子量14,000、酸価115のスチレンアクリル酸ランダムコポリマーを用いた。また、樹脂2gをTHF200mLとエタノール100mLの混合液中に溶解させ、規定度の測定済みのエタノールKOH溶液を用いて中和滴定(JIS0070に準拠)を行い、酸価を測定した。
なお、本実施形態で用いられるクリアインクは、アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。界面活性剤の種類や含有量は特に限定されないが、インク全量に対して、0.5%以上であることが好ましく、また、10%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以上で5%以下が良い。
(2)インクの作製
以下の成分を混合し、十分攪拌した後、KOHでpHを9.5に調製し、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、クリアインクを調製した。
・樹脂(スチレンアクリル酸ランダムコポリマー) 5部
・グリセリン 7.5部
・1,2−ヘキサンジオール 5部
・BYK333(BYK−Chemie GmbH製) 5部
・イオン交換水 77.5部
<ブラックインク>
(1)分散液の作製
まず、アニオン系高分子P−1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(重合比(重量比)=30/40/30)酸価202、重量平均分子量6,500]を準備した。これを、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して、均質な10%ポリマー水溶液を作製した。
上記ポリマー溶液を600g、カーボンブラックを100gおよびイオン交換水を300g、を混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してブラック分散液とする。得られたブラック分散液は、その顔料濃度が10%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記ブラック分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。そして、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度5%の顔料インクを調製した。
・上記ブラック分散液 50部
・グリセリン 10部
・トリエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物 0.5部
・イオン交換水 29.5部
<シアンインク>
(1)分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量3,000のAB型ブロックポリマーを作り、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作製した。
上記のポリマー溶液を200g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を700g、を混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。そして、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%の顔料インクを調製した。
・上記シアン分散液 20部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物 0.5部
・イオン交換水 59.5部
<マゼンタインク>
(1)分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2,500のAB型ブロックポリマーを作り、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作製した。
上記ポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を800g、を混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。そして、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4%の顔料インクを調製した。
上記マゼンタ分散液 40部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物 0.5部
・イオン交換水 39.5部
<イエローインク>
(1)分散液の作製
まず、アニオン系高分子P−1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(重合比(重量比)=30/40/30)酸価202、重量平均分子量6,500]を準備した。これを、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して、均質な10%ポリマー水溶液を作製した。
上記ポリマー溶液を300g、C.I.ピグメントイエロー74を100gおよびイオン交換水600gを混合し、機械的に所定時間攪拌した後、遠心分離処理によって粗大粒子を含む非分散物を除去してイエロー分散液とした。得られたイエロー分散液は、その顔料濃度が10%であった。
(2)インクの作製
以下の成分を混合し、十分に攪拌して溶解・分散後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過して、顔料濃度4%の顔料インクを調製した。
・上記イエロー分散液 40部
・グリセリン 9部
・エチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物 1部
・イオン交換水 40部
(評価)
上記インク組成物を用いてインクジェット記録を行い、本実施形態による効果を下記のように評価する。まず浸透速度の測定方法について述べ、記録媒体の種類による顔料インク上でのクリアインクの浸透速度の違いについて示す。
浸透速度(吸収特性)の測定方法は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の『紙および板紙の液体吸収性試験方法』に記載されたブリストー法を用いた。
一般的なブリストー法の概要は、次の通りである。一定量のインクを所定の大きさの開口スリットを有する保持容器に注入し、スリットを介して、短冊状に加工し円盤に巻きつけられた記録媒体と接触させ、保持容器の位置を固定したまま円盤を回転させ、記録媒体に転移するインク帯の面積(長さ)を測定する。インク帯の面積から単位面積辺りの転移量(ml/m2)を算出することができ、この転移量(ml/m2)は所定時間に記録媒体に吸収されたインク容量を示す。ここで所定時間は、吸収時間として定義される。吸収時間(ミリ秒)は、スリットと記録媒体との接触時間に相当し、円盤の速度と開口スリットの幅から換算される。転移量V(ml/m2)と吸収時間T(ミリ秒)との関係は次に示す式(2)によって表される。
V=Vr+Ka(T−Tw)1/2 ・・・ 式(2)
ここで、インクは、記録媒体表面に付着した直後には、記録媒体表面の凹凸部(記録媒体の表面粗さ成分となる比較的短い波長の凹凸の部分)において吸収されるのがほとんどであり、記録媒体内部へはほとんど浸透しない。そのような状態の間の時間がコンタクトタイム(Tw)であり、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。インクが付着した後、コンタクトタイムを越えると、該コンタクトタイムを越えた時間、すなわち(T−Tw)の1/2乗に比例した分だけ、記録媒体への吸収量が増加する。Kaは、このインクの記録媒体への吸収量の増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そしてKa値はブリストー法による液体の動的浸透性試験装置(例えば商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製等)等を用いて測定可能である。
本実施形態では、上記に示したブリストー法を元に、記録媒体上に付与された顔料インクに対するクリアインクの吸収特性を評価した。上述したブリストー法では、記録媒体そのままを用いて記録媒体へのインクの転移量を測定するが、本発明では顔料インクが付与された記録媒体を使用し、これに対するクリアインクの転移量を測定した。詳しくは、所定量の顔料インクとして100%デューティーのブラックインクを1パスで付与した記録媒体に対するクリアインクの転移量を測定し、Ka値を求めた。なお、記録媒体としては、2種のキヤノン製光沢紙、すなわち、光沢紙A(商品名「プレミアム光沢紙(薄口)LFP−GPP)および光沢紙B(商品名「プレミアム光沢紙2(薄口)LFM−GPH」)を使用した。
ブリストー法の結果として、ブラックインクが付与された記録媒体に対するクリアインクの転移量に関するKa値を図8の表に示す。この表に示すように、Ka値は、記録媒体として光沢紙Aを用いた場合は2.66(ml・m-2・msec-1/2)であり、光沢紙Bを用いた場合は2.21(ml・m-2・msec-1/2)であった。つまり、ブラックインクが付与された記録媒体に対するクリアインクの転移量に関するKa値は、光沢紙Aに比べて光沢紙Bの方が小さい。すなわち、記録媒体上に付与された顔料インクに対するクリアインクの吸収特性としては、記録媒体上に付与された顔料インクに対するクリアインクの浸透速度は、記録媒体が光沢紙Bである場合に光沢紙Aである場合よりも遅いことがわかる。これは光沢紙B上におけるブラックインクの定着が相対的に速いために、ブラックインク上でのクリアインクの浸透が相対的に遅くなったためであると考えられる。すなわち、顔料インクが付与された記録媒体に対するクリアインクの転移量に関するKa値が小さい記録媒体ほど、顔料インクの定着速度は速いといえる。
次に、上記インク組成物と2種類の光沢紙A、Bを用いてインクジェット記録を行い、本実施形態を用いる効果を評価する。
記録方法は、1つの画像領域単位に対して16回の走査で画像を完成させるようにインク(顔料インクおよびクリアインク)を付与する16パス記録であり、往方向・復方向どちらでも記録を行う双方向記録を行った。クリアインク、顔料インクともに吐出量は4.5pl、記録密度は2400dpiとした。評価画像としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各顔料インクを用いた、R・G・B値(0〜255)をそれぞれ5段階でふりわけた全てのパッチ(125通り)を使用した。クリアインクについては、記録デューティー100%の付与量を計4パスで付与した。所定領域に対して顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔(クリアインクのウエイト時間)として、以下の2種類を設定した。
(クリアインクのウエイト時間)
4パス:
16パス記録において、8パスで顔料インクを付与した後、次いで4パスでクリアインクを付与するまでに、4パス分の時間間隔を空けた。
2度通し:
16パス記録において、8パスで顔料インクを付与した後、次いで4パスでクリアインクを付与するまでに、記録装置から記録媒体を一旦排紙し、同一の記録媒体を同一の記録装置に再度給紙することにより時間間隔を空けた。
4パスと2度通しとのウエイト時間の相対的な長短の関係は以下のとおりである。
短い: 4パス<2度通し :長い
(評価項目および評価方法)
評価1:光沢ムラ
光沢紙AおよびBのそれぞれについて、上述の125通りのパッチを用い、顔料インクおよびクリアインクによる記録が完了した10分後に、光沢ムラを目視で観察し、ウエイト時間が4パスであるときと2度通しであるときとの光沢ムラの違いを評価した。光沢ムラの違いは、光沢ムラの現れ方の相対的な大小関係として示した。
評価2:光沢度
光沢紙AおよびBのそれぞれについて、上述の125通りのパッチを用い、顔料インクおよびクリアインクによる記録が完了した10分後に、前述のようにJIS規格に従う方法で光沢度を測定し、その平均値を求めた。また、光沢紙AおよびBのそれぞれについて、上述の125通りのパッチを用い、クリアインクを付与しない以外は同様の記録物を作製し、顔料インクによる記録が完了した10分後に、上述と同様にして、光沢度を測定し、その平均値を求めた。
評価3:写像性
光沢紙AおよびBのそれぞれについて、上述の125通りのパッチを用い、顔料インクおよびクリアインクによる記録が完了した10分後に、前述のように光沢度およびヘイズの値の測定値に基づく写像性の値を算出し、その平均値を求めた。また、光沢紙AおよびBのそれぞれについて、上述の125通りのパッチを用い、クリアインクを付与しない以外は同様の記録物を作製し、顔料インクによる記録が完了した10分後に、上述と同様にして、写像性を測定し、その平均値を求めた。
図9は、2種類の光沢紙における、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔(クリアインクのウエイト時間)と、光沢ムラ、光沢度、写像性を上記の評価方法によって評価した結果とを示す。
光沢紙Aについては、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔が長い「2度通し」の方が、光沢ムラが少なく、写像性が高くて良好である。また、光沢紙Bでは、光沢紙Aとは反対に、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔が短い「4パス」の方が、光沢ムラが少なく、写像性が高くて良好である。
ここで、前述したブリストー法によると、光沢紙Aは、光沢紙Bよりも、ブラックインクが付与された記録媒体に対するクリアインクの浸透速度が速く、転移量に関するKa値が大きい(図8参照)。また、前述の試験結果によると、光沢紙Aについてはウエイト時間が相対的に長い2度通しの方が、また、光沢紙Bについてはウエイト時間が相対的に短い4パスの方が、光沢度および写像性が共に高く良好である(図9参照)。
そこで、本実施形態では、所定量の顔料インクを付与した記録媒体のKa値の大きさに応じて、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔(ウエイト時間)の長さを決定する。これにより、本実施形態によれば、記録画像の好適な光沢度および写像性を得ることができる。そのために、具体的には、小さいKa値を示す記録媒体を用いる場合にウエイト時間を短く設定し、大きいKa値を示す記録媒体を用いる場合にウエイト時間を長く設定する制御を行う。例えば、Ka値の閾値を設定して、Ka値が閾値より小さい場合に、ウエイト時間を相対的に短くし、Ka値が閾値以上である場合に、ウエイト時間を相対的に長くしてもよい。そのような閾値は、1つに限らず、複数設けてもよい。
本実施形態によれば、以上のようにして、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を記録媒体によって変更することで、様々な記録媒体に対し効率的に光沢ムラを軽減し光沢度・写像性を向上させることができる。
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、クリアインクの付与を4パス記録で行っているが、他のパス数でのマルチパス記録を行ってもよい。例えば記録媒体によって、クリアインクを付与する複数回走査のパス数を変えてもよい。
上述の実施形態では、記録媒体の種類に応じて顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔(クリアインクのウエイト時間)を制御することを特徴としている。そのため、付与順さえ守ればよく、例えば、連続しない複数回のパスによって各インクを付与してもよい。
上述の実施形態では、クリアインクのウエイト時間を変える方法としてマスクを用いた方法を使用したが、ウエイト時間を変えられればどのような方法でも本発明の範疇である。例えば、記録走査毎にウエイト時間を設けることで、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を変えることができる。
前述のとおり、記録ヘッドにおいてクリアインクのノズル列が、顔料インク用のノズル列よりも副走査方向において後方にずらされた位置関係で構成されていても、本実施形態は適用可能である。その場合、全ノズルの吐出口からインクを吐出したとしても、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を調整することが可能となる。すなわち、顔料インクとクリアインクとを異なる走査で吐出する場合だけでなく、同一の走査で吐出しても、クリアインクのウエイト時間を設けることができる。
本発明で適用可能なインクは、顔料インクの上にクリアインク層が残ることを特徴としており、上記組成に限定されるものではない。
本発明に適用可能な顔料インクとして、例えば、自己分散型顔料を含むインクもしくは高分子分散剤により分散した顔料を含むインクがある。
前述の実施形態では、画像形成に用いる顔料インクの他に、光沢度・写像性を向上させるための処理液として無色透明なクリアインクを用いた。しかし、有色でもライトシアンインクやライトマゼンタインクなど、画像形成に用いる顔料インクのうち淡色の顔料インクの一部、または全てに光沢度・写像性などの機能を向上させる材料を追加し、画像形成と光沢度・写像性向上の両方の役割を担わせてもよい。この場合、インクタンクや記録ヘッドなどの1色分の追加部品が要らないので、小型化や低コスト化に大いに貢献できる。もちろん、画像形成に用いる顔料インクのうちの濃色の顔料インクの一部もしくは全てが処理液を兼ねてもよい。
上述の実施形態では、記録媒体上での顔料インクの定着状態、その上に付与するクリアインクの浸透特性、表面の光沢度・写像性等に着目し、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を記録媒体によって変えることを特徴的な処理とした。記録媒体上での顔料インクの定着状態、クリアインクの浸透特性、表面の光沢度、写像性等は、記録媒体以外にも、顔料インク、クリアインクの種類によっても影響を受け得る。したがって、顔料インクを付与してからクリアインクを付与するまでの時間間隔を、顔料インクおよびクリアインクの種類によって変えることも、本発明の範疇である。
本発明は、紙や布、不織布、OHPフイルム等の記録媒体を用いる記録装置全てに適用が可能であり、具体的な適用装置としては、プリンタ、複写機、ファクシミリなどの事務機や大量生産機等を挙げることができる。
前述の実施形態では、本発明の特徴的な処理を行う記録制御部305がインクジェット記録装置内部に備えられている形態について説明したが、記録制御部305はインクジェット記録装置内部に備えられている必要はない。例えば、インクジェット記録装置と接続されるホストコンピュータ(画像入力部302)のプリンタドライバに上記記録制御部305の機能を持たせるようにしてもよい。この場合、プリンタドライバが、アプリケーションから受け取った多値の入力画像データに基づいて2値画像データを生成し、これを記録装置に供給することになる。このように、ホストコンピュ−タとインクジェット記録装置とを含んで構成されるインクジェット記録システムも本発明の範疇である。この場合、ホストコンピュータは、インクジェット記録装置にデータを供給するデータ供給装置として機能し、また、インクジェット記録装置を制御する制御装置としても機能することになる。
本発明の特徴は、記録制御部305にて実行されるデータ処理にある。従って、本発明の特徴的なデータ処理を行う記録制御部305を備えたデータ生成装置も本発明の範疇である。記録制御部305がインクジェット記録装置に備えられている場合、このインクジェット記録装置が本発明のデータ生成装置として機能し、記録制御部305がホストコンピュ−タに備えられている場合、このホストが本発明のデータ生成装置として機能する。
上述した特徴的なデータ処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムや、そのプログラムをコンピュータにより読み出し可能に格納した記憶媒体も、本発明の範疇である。
61、62 記録媒体
63 顔料インク
64 クリアインク

Claims (9)

  1. カラーインクおよび処理液を吐出する記録ヘッドを、記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させることによって、前記記録媒体に対する前記カラーインクによる画像の形成と前記処理液による前記画像の被覆とを行うインクジェット記録装置であって、
    前記所定領域に対して、前記記録ヘッドの複数回の走査において前記記録ヘッドから前記カラーインクおよび前記処理液を吐出させるための吐出データを生成する生成手段と、
    生成された前記吐出データに基づいて前記記録ヘッドからの前記カラーインクおよび処理液の吐出を制御する制御手段と、を備え、
    前記生成手段は、前記所定領域に対して画像形成に用いる前記カラーインクを吐出してから前記処理液を吐出するまでの時間を、前記記録媒体の種類に応じて決定することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記生成手段は、前記所定領域に対して画像形成に用いる前記カラーインクを吐出してから前記処理液を吐出するまでの時間の長さを、所定量の前記カラーインクを付与した前記記録媒体に対する前記処理液のブリストー法によって測定されるKa値の大きさに応じて決定し、
    前記Ka値の大きさが小さいほど前記時間の長さを短くすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記生成手段は、前記所定領域に対して画像形成に用いる前記カラーインクを吐出してから前記処理液を吐出するまでの時間の長さを、所定量の前記カラーインクを付与した前記記録媒体に対する前記処理液のブリストー法によって測定されるKa値の大きさに応じて決定し、
    前記Ka値の大きさが閾値よりも小さい場合に、前記時間の長さを相対的に短くし、
    前記Ka値の大きさが閾値以上である場合に、前記時間の長さを相対的に長くすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記生成手段は、前記所定領域に対して画像形成に用いる前記カラーインクを吐出してから前記処理液を吐出するまでの時間を、前記処理液を付与した後の画像の写像性が大きくなるように決定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記吐出データは、前記カラーインクの吐出と同一の走査で前記処理液を吐出させるデータであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記吐出データは、前記カラーインクの吐出と異なる走査で前記処理液を吐出させるデータであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記カラーインクは、自己分散型顔料を含むインクまたは高分子分散剤により分散した顔料を含むインクであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記処理液は、無色であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  9. カラーインクおよび処理液を吐出する記録ヘッドを、記録媒体上の所定領域に対して複数回走査させることによって、前記記録媒体に対する前記カラーインクによる画像の形成と前記処理液による前記画像の被覆とを行うインクジェット記録方法であって、
    前記所定領域に対して、前記記録ヘッドの複数回の走査において前記記録ヘッドから前記カラーインクおよび前記処理液を吐出させるための吐出データを生成する生成工程と、
    生成された前記吐出データに基づいて前記記録ヘッドからの前記カラーインクおよび前記処理液の吐出を制御する制御工程と、を備え、
    前記生成工程は、前記所定領域の画像形成に用いる前記カラーインクを吐出してから前記処理液を吐出するまでの時間を、前記記録媒体の種類に応じて決定することを特徴とするインクジェット記録方法。
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