図1は、CD83が、CD83を発現している細胞の表面でのホモタイプ結合に関与したことを示す。(a)安定的に形質移入されたCHO-hCD83細胞の表面上に発現されたCD83をフローサイトメトリーによって定量化した。(b)MUTZ-3由来成熟DC上に発現されたCD83の発現をフローサイトメトリーによって定量化した。(c及びd)CD83.fcはCHO-hCD83及び成熟DCに結合した。
図2は、CD83がCD83.fcの結合に必要であったことを示す。(a)CD83.fcはCHO-hCD83細胞に結合したが、結合は抗CD83抗体によって阻止され、フローサイトメトリーによって定量化した。(b)18Sに対して正規化した全RNAのtaqman解析によって示される、MUTZ-3成熟DCにおけるCD83に特異的なsiRNA(siCD83)の効果。(c)CD83は、非標的化(siNTC)siRNAで処理された成熟DCの表面に発現されたが、siCD83で処理された成熟DCには発現されなかった。(d)CD83.fcはmDCに結合したが、結合はsiCD83処理によって抑止された。(e)CD83のノックダウンは成熟DCにおいてMHCIIの表面発現を低下させた。(f)CD83のノックダウンはは成熟DCにおいてCD86の表面発現を変更しなかった。
図3は10Xでの顕微鏡画像を提供し、CD83発現が懸濁培養物において細胞凝集となったことを示す。(a)コントロールCHO細胞は凝集しなかった。(b)CD83を発現する細胞は懸濁培養物中においてクラスタを形成した。(c)CD83.fcタンパク質でのCHO-hCD83細胞の前処理は凝集を阻止した。(d)Igコントロールタンパク質でのCHO-hCD83細胞の前処理は凝集を阻止しなかった。
図4はCD83.fc又はHB15e抗体での成熟DCにおけるCD83処理が、表面活性化マーカーCD83及びHLA-DRの発現を減少させたことを示す。
ELISAデータはCD83処理されたヒト単球由来DCにおける変化したサイトカイン放出を示した。(a及びc)炎症促進性サイトカインIL12-p40及びMCP-1は、CD83.fc又はHB15e抗体処理により減少した。(b)抗炎症性サイトカインIL-1raはCD83処理DCにおいて有意に増加した。(d)IL-8はCD83処理又はコントロール処理DC間で違いを見せなかった。*は値が有意に異なることを示す;* p<0.01、** p<0.001。グラフは少なくとも4の異なるドナーを表す。
ELISAデータはCD83処理されたMUTZ-3由来DCにおける変化したサイトカイン放出を示した。(a及びc)炎症促進性サイトカインIL12-p40及びMCP-1は、CD83.fc又はHB15e抗体処理により減少した。(b)抗炎症性サイトカインIL-1raはCD83処理DCにおいて有意に増加した。(d)IL-8はCD83処理又はコントロール処理DC間で違いを見せなかった。各ウェルからの上澄部を三重に実行した。
図7は、CD83.fc又はHB15e抗体でのDCにおけるCD83処理が創傷治癒に関与する遺伝子のアップレギュレーションとなったことを示し、gapdhに対して正規化したvcan、spock2、及びfbn2のTaqman qPCR解析により提供された。平均相対発現(2^DCT)+SEM。
図8は、CD83ホモタイプ相互作用がトランスで生じ、DCにおける抗炎症性反応を媒介することを示す。(a及びb)サイトカイン産生のELISA測定は、CD83を過剰発現するCHO細胞のmDCとの共培養が、炎症促進性サイトカインIL12-p40及びMCP-1の放出を阻害したことを示した。(c)CD83ノックアウト(CD83KO)及び野生型(WT)同腹子から生成された成熟マウス骨髄由来DC(BMDC)(灰色バー)は、24時間のLPS刺激後、類似レベルのIL-12p40を生成した。(d)WT成熟BMDCと共に培養した未熟BMDCは、CD83欠失成熟BMDCと共に培養したものより有意に少ないIL-12p40を生成した。p=0.0372。
図9はCD83ホモタイプ相互作用がDCにおける抗炎症性反応を媒介したことを示す。(a)CD83のsiRNAノックダウンはCD83.fc又はHB15e抗体に対する反応を抑止し、MCP-1のELISAによって示された。(b)完全長CD83及び細胞質内切断型CD83に関するCD83レンチウィルス発現の図。(c)MCP-1産生のELISAは、細胞質内切断型CD83の発現がCD83.fcタンパク質の阻害作用を阻止したことを示した。
図10は、抗体架橋結合が、DCにおけるCD83細胞質内ドメインを介した抗炎症性反応の作動に十分であったことを示す。(a)CD83キメラレンチウィルス発現コンストラクトの図であり、CD83膜貫通部に融合されたCD79aの細胞外ドメイン及び完全長又は切断型細胞質内ドメインを描く。(b)IL12-p40産生のELISAは、切断型キメラが抗CD79a抗体に対するDC反応を阻害したことを示した。
図11は、CD83がC末端に抗炎症性反応を媒介するクラスIII PDZリガンドモチーフを有することを示す。(a)CD83細胞質内ドメインの最後の15アミノ酸のアミノ酸配列比較図は、保存されたクラスIII PDZリガンドモチーフを示した。(b)C末端PDZリガンドモチーフV205A変異体のCD83レンチウィルス発現コンストラクトの図。(c)MCP-1産生のELISAは、V205A PDZリガンドモチーフ変異体の発現がCD83.fcタンパク質の阻害作用を阻止したことを示した。
図12は、CD83ホモタイプ相互作用の免疫抑制作用が、p38 MAPK及びmTORシグナル伝達経路によって媒介されたことを示す。(a−c)は、HB15e抗体処理がmTOR、p38及びCREBのリン酸化の有意な低下となったことを示した。(d)HB15e抗体処理は、TNF経路によって活性化されるSTAT3のリン酸化を阻害しなかった。(e)ウェスタンブロット解析は、HB15e抗体処理によるp38リン酸化の低下を確認した。(f)STAT3のリン酸化にHB15e抗体処理による有意な差異は見られなかった。全p38及びSTAT3をローディングコントロールとして使用した。
図13は、結腸におけるCD83過剰発現が、固有層におけるDC上の表面活性化マーカーのダウンレギュレーションとなったことを示す。(a)CD83遺伝子導入マウスを作成するために使用した遺伝子導入コンストラクトの図。(b)免疫組織化学染色は、結腸上皮における導入遺伝子の発現を示した。(c及びe)CD83遺伝子導入マウスの結腸及び脾臓から単離されたDC上の表面マーカーの発現をFACSによって定量化し、平均蛍光強度(MFI)として測定した。(d及びf)CD83遺伝子導入マウスの結腸又は脾臓いずれにおいても、T細胞表面活性化マーカーにおける有意な差は見られなかった。(g)Taqman qPCR解析は、CD83遺伝子導入マウスから単離されたDCにおける創傷治癒遺伝子発現の増加を示した。
図14は、CD83遺伝子導入マウスから単離されたDCサブセットを分析するためのFACSゲートストラテジーを示し、これはCD83導入遺伝子がDCサブセット産生に何の効果も持たなかったことを示した。(a及びb)MHCII+及びCD11c hi発現によるDCのゲーティング。(c)T細胞のゲーティング。(d及びe)結腸及び脾臓から単離されたDCサブセットのフローサイトメトリー解析。
CD83過剰発現は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎からマウスを保護した。(a)は、DSSで処理された場合の、野生型マウスと比較したCD83遺伝子導入マウスにおけるより少ない体重減少を示す。(b)DSS誘導大腸炎を有するマウスの結腸切片のヘマトキシリン及びエオシン染色。(c)野生型及びCD83遺伝子導入マウスの組織学スコア。(d)野生型同腹子と比較した、DSSで処理されたCD83遺伝子導入マウスにおける血清サイトカインレベルのELISA。(e)野生型同腹子と比較した、DSSで処置したCD83Tgマウスからの結腸固有層中におけるIL-12p40遺伝子発現のqPCR。
図16はDCにおけるCD83のノックアウトが大腸炎を悪化させたことを示す。(a)CD83コンディショナルノックアウトストラテジーの図。(b)脾臓におけるTCRb+リンパ球に関してゲーティングしたFACSプロット。脾臓に、CD83fl/flCD11c-Creマウスは48.6%のCD4陽性T細胞を有し、CD83wt/wtCD11c-Creマウスは48.1%のCD4陽性T細胞を有した。(c)CD83wt/wtCD11c-Cre(黒線)及びCD83fl/flCD11c-Cre(灰色線)マウスの脾臓DCにおけるCD83の相対発現を表すヒストグラム。(d)CD83fl/flCD11c-Cre及びCD83wt/wtCD11c-CreマウスにおけるDSS大腸炎生存率。コンディショナルノックアウト動物は有意に低下した生存率を有した(ログランク検定、p=0.0186)。(e)8日目の体重は、CD83wt/wtCD11c-Cre同腹子と比較してCD83fl/flCD11c-Creマウスにおいて有意に低かった。(f)動物の肛門周囲の明らかな血(frank blood)の発生。CD83fl/flCD11c-Creの100%が7日目までに明らかな潜血(overt occult blood)を有した。CD83wt/wtCD11c-Cre同腹子において明らかな血は観察されなかった。
図17は抗ヒトCD83抗体がCD83を発現する細胞に結合したを示す。フローサイトメトリーによる定量化は、抗CD83抗体(a)35G10、(b)40A11、(c)54AD1、(d)59G10、(e)75A1、及び(f)7C7がヒトCD83を発現するCHO細胞(黒線)に特異的に結合するが、マウスCD83を発現する細胞(破線)には結合しないことを示す。(g)抗CD83抗体60B10はヒトCD83を発現するCHO細胞に結合し、またマウスCD83を発現するCHO細胞との交差反応も見せた。親CHO細胞株(中実灰色ヒストグラム)には結合は見られなかった。
図18は抗マウスCD83抗体がマウスCD83を発現するCHO細胞に結合したことを示す。フローサイトメトリーによる定量化は、抗CD83抗体(a)42C6及び(b)39A2は、マウスCD83を発現するCHO細胞に特異的に結合したが(破線)、親CHO細胞株には結合しなかった(中実灰色ヒストグラム)ことを示す。
図19は抗CD83抗体が炎症促進性サイトカインの産生を有意に低減したことを示す。(a)ELISA解析は、アイソタイプコントロール抗体(ISO)の使用と比較して、抗CD83抗体60B10、35G10、40A11又は7C7がmDCからのMCP-1の産生を有意に低減したことを示した;*は値がアイソタイプコントロール処置と有意に異なることを示す。それぞれp=0.0303、p=0.0309、p=0.0369、p=0.0247。54D1、59G10、又は75A1抗体を与えられた細胞に有意な差異は見られなかった。(b)マウス骨髄由来DC(BMDC)におけるIL-12p40発現の定量的PCR解析は、抗CD83抗体39A2又は42C6が、アイソタイプコントロール抗体の使用と比較して、LPS誘導性CD83発現を有意に低減したことを示す。IL-12p40発現をβアクチンに正規化した。各シンボルは独立マウスからの細胞を表す。*,p=0.0372;†,p=0.0438。
図20は抗CD83抗体がDSS誘導大腸炎からマウスを保護したことを示す。抗CD83抗体を与えられたマウスは、抗gDコントロール抗体又はDSSのみを与えられたマウスと比較して、有意に低減された組織学的スコアを有した:39A2、平均=5.3、**はp=0.0011を示す;42C6、平均=5.5、†はp=0.0015を示す;60B10、平均=5.4、*はp=0.0059を示す。
(発明の詳細な説明)
I.一般的技術
本願明細書中に記載又は引用される技術及び手順は、一般に十分に理解されるものであり、当業者によって従来の方法論を用いて一般的に利用されるものである。その例として、以下の文献に記載される方法論が広く利用されている。Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel,等 eds., (2003)); the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987)); Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis等, eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan等, eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995); and Cancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita等, eds., J.B. Lippincott Company, 1993)。
II.定義
「自己免疫性」なる用語は、抗体又はリンパ球等の免疫系要素が、分子、細胞、又はそれらを生産する臓器の組織を攻撃又は害するプロセスを意味する。「自己免疫性疾患」は、組織損傷等の損傷、又は病変形成が、少なくとも部分的には、自己免疫性プロセスの結果である疾患を意味する。例として、「自己免疫疾患」は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー疾患(Wegener's disease)、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群及び糸球体腎炎を含む。幾つかの実施態様では、自己免疫性疾患は、骨髄系細胞活性化(樹状細胞及びマクロファージ)を伴い、例えば多発性硬化症及び炎症性腸疾患等である。
「炎症性腸疾患」又は「IBD」は、腸に炎症を起こす疾患の群を意味し、一般に、腹部疝痛及び疼痛、下痢、体重減少及び腸内出血を含む症状により明らかになる。IBDは潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、及び不確定大腸炎を含む。
「潰瘍性大腸炎」又は「UC」は、血性下痢によって特徴づけられる、大腸及び直腸の慢性、突発性、炎症性疾患である。潰瘍性大腸炎は、結腸粘膜における慢性炎症によって特徴づけられ、部位に従って分類できる:「直腸炎」は直腸のみを含み;「直腸S状結腸炎」直腸及びS状結腸に作用し;「左側結腸炎」は大腸の左側全体を包含し;また「全大腸炎」は結腸全体を炎症させる。
「限局性腸炎」とも称される「クローン病」は、慢性自己免疫疾患であり、胃腸管の何れかの部分に影響するが、最も一般的には回腸(小腸及び大腸が交わる領域)に生じる。潰瘍性大腸炎と比較して、クローン病は、腸壁の全層にわたって広がり、腸間膜並びに所属リンパ節に関わる慢性炎症によって特徴づけられる。小腸又は結腸が含まれるかどうかの関わらず、基本病理過程は同じである。
潰瘍性大腸炎及びクローン病は、90%以上のケースにおいて、臨床的に、内視鏡的に、病理学的に、また血清学的に互いに区別されることができ;残りは不確定IBDと考えられる(Harrison's Principles of Internal medicine, 12th edition, p. 1271 (1991))。
「不確定大腸炎」は炎症性腸疾患状態を意味し、潰瘍性大腸炎及びクローン病の特徴と重複する。組織学が構築上変化を有する急性及び慢性炎症が結腸に限定されることを示すが、個体がクローン病又は潰瘍性大腸炎を有するかどうか明瞭に示さない場合に、診断が与えられる。
ここで使用される場合、「治療」なる用語は、臨床病理学の経過の間、治療されている個体又は細胞の自然の経過を変更するよう設計されている臨床的介入を意味する。治療の望ましい効果は、疾患進行率の低下、疾患状態の寛解又は緩和、及び緩解又は予後改善を含む。例えば、自己免疫疾患(炎症性腸疾患等)に伴う一又は複数の症状が軽減又は除去された場合に、個体は成功裏に「治療」されている。
ここで使用される場合、「防止」なる用語は、個体における疾患の発生又は再発に対する予防を与えることを含む。個体は、自己免疫疾患に懸かり易い、感受性である、又は自己免疫疾患を展開する危険性にあり得るが、まだ該疾患と診断されていない。
ここで使用される場合、自己免疫疾患を展開する危険性にある個体とは、ここに記載の治療方法の前に、検出可能な疾患又は疾患の症状を有し得、又は表示検出可能な疾患又は疾患の症状を有し得る。「危険性がある」とは、個体が、当技術分野で知られる、自己免疫疾患の発生と相関する測定可能なパラメーターである一又は複数のリスクファクターを有することを意味する。一又は複数のこれらのリスクファクターを有する個体は、一又は複数のこれらのリスクファクターを持たない個体と比べ、疾患を発生するより高い確率を有する。
「有効量」とは少なくとも、所望される治療的又は予防的結果を得るための、必要な用量及び期間での、有効な量を意味する。有効量は、一以上の投与で提供されることができる。
「治療上有効な量」は少なくとも、特定の疾患(例えば、自己免疫疾患)の測定可能な改善をもたらすのに必要な最小の濃度である。ここでの治療上有効な量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、及び個体において所望する反応を誘発する抗CD83アゴニスト抗体の能力等の要因によって様々でありうる。治療上有効な量はまた、治療上有益な効果が、抗CD83アゴニスト抗体の何れかの毒性又は有害な効果を上回る量である。「予防的に有効な量」とは、所望の予防結果を達成するための、必要な容量及び期間での、有効な量を意味する。必ずしもではないが典型的には、予防的用量は疾患の初期段階時又は前に被験体において使用されるため、予防上有効な量は、治療上有効な量より少なくなりうる。
「慢性」投与とは、急性投与とは対照的に、初期治療効果(活性)を長期間維持するための持続的な医薬の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く継続的に成されるのではなく、本質的に周期的である治療を意味する。
ここで使用される場合、別の化合物又は組成物との「併用」投与は、同時投与及び/又は異なる時間での投与を含む。併用投与はまた、共製剤又は別個製剤としての投与を包含し、異なる投与頻度又は間隔、及び同じ投与経路又は異なる投与経路を使用することを含む。
治療又は防止の目的のための「個体」とは、哺乳類として分類される何れかの動物を意味し、ヒト、飼育及び家畜動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ等を含む。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。
ここで使用される場合、「サイトカイン」なる用語は一般にタンパク質であって、細胞間媒介物質として別の細胞に作用する、又は該タンパク質を生産する細胞に作用するオートクリン作用を持つ一細胞集団によって放出されるタンパク質を意味する。かかるサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン;インターロイキン(「ILs」)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17A-F、IL-18からIL-29(IL-23等)、IL-31、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2を含む;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β、TGF-b1-3;及び白血病抑制因子(「LIF」)、毛様体神経栄養因子(「CNTF」)、CNTF-様サイトカイン(「CLC」)、カルジオトロフィン(「CT」)、及びKitリガンド(「KL」)を含む他のポリペプチド因子を含む。
ここで使用される場合、「CD83」なる用語は、天然配列CD83及び天然に生じるCD83の変異体を包含する。CD83は、哺乳類(ヒトを含む)組織タイプ又は別の供給源から等の様々な供給源から単離され得、又は組換え及び/又は合成方法によって調製されうる。
ここで使用される場合、「抗CD83アゴニスト抗体」なる用語は、細胞表面に発現されるCD83に結合し、細胞表面に発現されるCD83に結合した後CD83のシグナル伝達を活性化する抗体を意味する。
「免疫グロブリン」(Ig)なる用語は、ここでの「抗体」と互換可能に使用される。ここでの「抗体」なる用語は、広義で使用され、具体的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を呈する限り抗体断片を含む。
基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同一な軽(L)鎖及び2つの同一な重(H)鎖から成るヘテロ四量体糖タンパク質である。VH及びVLの対形成は、単抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性に関しては、例えばBasic and Clinical Immunology, 8th Ed., Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6を参照のこと。
何れかの脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプに割り当てられることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列により、免疫グロブリンは異なるクラス又はアイソタイプに割り当てられることができる。5つのクラスの免疫グロブリンがあり:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、それぞれアルファ(「α」)、デルタ(「δ」)、イプシロン(「ε」)、ガンマ(「γ」)及びμ(「μ」)と命名される重鎖を持つ。γ及びαクラスは、CH配列及び機能における比較的小さい差に基づいて、サブクラス(アイソタイプ)に更に分けられ、例えばヒトは以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2。サブユニット構造及び免疫グロブリンの異なるクラスの三次元構造はよく知られ、例えばAbbas等, Cellular and Molecular Immunology, 4th ed. (W.B. Saunders Co., 2000)に概説される。
「天然抗体」は通常、2つの同一な軽(L)鎖及び2つの同一な重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に結合され、一方、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中でのジスルフィド結合の数は様々である。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的間隔の鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)を有し、多くの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間で界面を形成すると考えられている。
「単離された」抗体は、その産生環境(例えば天然又は組換え)から同定され、分けられ及び/又は回収されたものである。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その産生環境からの他の全ての混入物要素との関連がない。組換え形質移入細胞から生じるもの等、産生環境からの混入物要素は、抗体についての研究、診断又は治療使用を典型的には干渉しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)ローリ法で測定した場合95重量%を越える、幾つかの実施態様では99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換えT細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチド又は抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称されうる。これらのドメインは一般に、(同じクラスの他の抗体と比べて)抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を有する。
「可変」なる用語は、可変ドメインの特定セグメントが抗体間で配列について大規模に異なる事実を意味する。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を決定する。しかしながら、可変性は可変ドメインの全スパンにわたって均一に分布するのではない。代わりに、軽鎖及び重鎖可変ドメイン双方にある、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中される。可変ドメインのより高く保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、βシート構造を連結する(幾つかの場合にはその一部を形成する)ループを形成する3つのHVRによって連結される、主としてβシート構造をとる4つのFR領域を有する。各鎖のHVRはFR領域により近接して保持され、他の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, MD (1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接関与はしないが、抗体依存性細胞傷害性等、様々なエフェクター機能を示す。
ここで使用される場合、「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を意味し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能な変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は高く特異的であり、一つの抗原部位に対している。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作成され得、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein., Nature, 256:495-97 (1975); Hongo等, Hybridoma, 14 (3):253-260 (1995), Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2d ed. 1988); Hammerling等, in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991); Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992); Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee等, J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 101(34):12467-472 (2004); and Lee等, J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)を参照、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全てを有する動物において、ヒト又はヒト様抗体を生産する技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741; Jakobovits等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:2551 (1993); Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggemann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5,545,807;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号; Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg等, Nature 368:856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-813 (1994); Fishwild等, Nature Biotechnol. 14:845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnol. 14:826 (1996); and Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照)を含む。
「ネイキッド抗体」なる用語は、細胞障害性部分又は放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
「完全長抗体」、「インタクト抗体」又は「全抗体」なる用語は交換可能に用いられ、抗体断片とは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指す。特に全抗体には、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えばヒトの天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であってもよい。場合によって、インタクトな抗体は一又は複数のエフェクター機能を有してもよい。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)を参照);抗体断片から形成された単鎖抗体分子及び多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')2断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')2抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Borrebaeck 1995, 以下を参照のこと。
本発明の抗体の「機能的断片」は、一般に、FcR結合能を保持する抗体のFc領域又は抗体の抗原結合領域ないし可変領域を含む、インタクト抗体の一部を含む。抗体断片の例には、線形抗体、単鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多特異性抗体が含まれる。
「ダイアボディ」なる用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対形成が得られるように、VH及びVL間に短いリンカー(約5−10残基)を用いてsFv断片(先行段落を参照)を組み立てることによって調製される小抗体断片を意味し、これによって二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が得られる。二重特異性ダイアボディは、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体であり、2つの抗体のVH及びVLドメインは、異なるポリペプチド鎖に存在する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161; Hollinger等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:6444-48 (1993)により詳細に記載されている。
ここでのモノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における該当配列と同一又は相同であり、鎖(一又は複数)の残りは、別の種由来する又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における該当配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限りかかる抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号; Morrison等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 81:6851-55 (1984))。ここで興味のキメラ抗体は、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含み、抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを興味の抗原で免疫化することによって生産された抗体に由来する。ここで使用される場合、「ヒト化抗体」は「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの場合では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、結合親和性等の抗体能力をさらに洗練するために成されてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての超可変ループが非ヒト免疫グロブリン配列のものに該当し、全てあるいは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、実質的に全ての少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを有するであろうが、FR領域は、抗原親和性、異性化、免疫原性等の抗体能力を改善する一又は複数のそれぞれのFR残基置換を含んでもよい。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は典型的には、H鎖で多くても6、L鎖で多くても3である。ヒト化抗体は場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を有し、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである。更なる詳細については、例えば、Jones等, Nature 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994); 及び米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照のこと。
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体の配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここに開示されるヒト抗体を生産する技術の何れかを使用して生産されたものである。ヒト抗体のこの定義は得に、非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、当技術分野で知られる様々な技術を使用して生産されることが可能であり、ファージディスプレイライブリを含む。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製のために入手可能なものはCole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載の方法もある。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5:368-74 (2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原チャレンジに反応してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内因性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製されることが可能である(例えば、XENOMOUSETM技術に関しては米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関しては、例えばLi等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)を参照のこと。
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つの高頻度可変領域を含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つの高頻度可変領域のうちで最も高い多様性を示す、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例としてXu等 (2000) Immunity 13:37-45;Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ)のJohnson and Wu (2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。例としてHamers-Casterman等, Nature 363:446-448 (1993)及びSheriff等, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)参照のこと。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)であるHVRは配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(上掲のKabat等)。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットCDRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々からの残基を以下に示す。
HVRは、次のような「拡大HVR」を含んでもよく、即ち、VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(好ましい実施態様)(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら拡大HVRの各々を規定するために、Kabat等, 上掲に従って番号を付した。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義するようにHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「カバットにおける可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットにおけるアミノ酸位置番号付け」なるフレーズ及びその変形は、Kabatら 上掲における抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについて使用される番号付けシステムを意味する。この番号付けシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、FR又はHVRの可変ドメインを短くする、又はそこに挿入される、対応のより少ない又は付加的なアミノ酸を含有可能である。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(カバットに従い残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、カバットに従い残基82a、82b、及び82c等)を含む。残基のカバット番号付けは、「標準的な」カバットナンバー配列を有する抗体配列の相同な領域で配列させることにより、付与された抗体について決定できる。
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメインにおける残基を指す時に使用される(およそ軽鎖の残基1−107及び重鎖の残基1−113)(例えば、Kabat等, Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基を指す時に使用される。(例えば上掲のKabat等において報告されたEUインデックス)。「カバットにおけるEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えばEU番号付けに関しては米国仮出願第60/640,323、図を参照のこと)。
ここで使用される場合、「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られるVL又はVHフレームワークのアミノ酸配列を含んでなるフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から得られる」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得、又は既存のアミノ酸変化を含みうる。幾つかの実施態様では、既存のアミノ酸変化の数は10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下又は2以下である。既存のアミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましいそれらの変化は位置71H、73H及び78Hの内、3つ、2つ又は1つのみで生じ;例えばそれらの位置でのアミノ酸残基は71A、73T及び/又は78Aであり得る。一実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選別は、可変ドメイン配列のサブグループから行う。一般に、配列のサブグループは、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載のサブグループである。例は、VLについては、サブグループが上掲のKabat等のサブグループカッパI、カッパII、カッパIII又はカッパIVでありうることを含む。更に、VHについては、サブグループは、上掲のKabat等のサブグループI、サブグループII、又はサブグループIIIでありうる。
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、上掲のKabat等の可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列から得られたコンセンサス配列を有する。
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、上掲のKabat等の可変軽鎖カッパサブグループIのアミノ酸配列から得られたコンセンサス配列を有する。
特定の位置、例えばFc領域等での「アミノ酸修飾」は、特定残基の置換又は欠失、又は特定残基に近接する少なくとも一つのアミノ酸残基の挿入を意味する。特定残基に「近接した」挿入とは、それの一又は二残基内での挿入を意味する。挿入は、特定残基のN末端又はC末端でありうる。ここでの好ましいアミノ酸修飾は置換である。
「親和性成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、その一又は複数のHVRにおいて一又は複数の改変を持つものである。一実施態様では、親和成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和成熟抗体は、当該分野において知られているある手順を用いて生産されてよい。例えば、Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和成熟について記載している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘導は、例としてBarbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
ここで使用される場合、「に特異的に結合する」又は「に特異的である」なる用語は、標的及び抗体間の結合等、測定可能で再現可能な相互作用を意味し、生体分子を含む分子の不均一集団の存在において標的の存在を決定する。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するより、より大きい親和性、アビディティで、より早く、及び/又はより長い時間この標的に結合する抗体である。一実施態様では、無関係の標的への抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)による測定で、標的に対する抗体の結合の約10%未満である。ある実施態様では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある実施態様では、抗体は、異なる種のタンパク質の間で保存されているタンパク質のエピトープに特異的に結合する。別の実施態様では、特異的結合は、必ずしもではないが、独占結合を含む。
「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。本発明の抗体における使用に関して適切な天然配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。
「天然配列のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を包含する。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A-及びA-アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、これらの自然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは一又は複数のアミノ酸置換により、天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を包含するものである。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域又は親のポリペプチドのFC領域におよそ1からおよそ10のアミノ酸置換、好ましくはおよそ1からおよそ5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と、少なくともおよそ80%の同一性を有するか、最も好ましくは少なくともおよそ90%の配列同一性を、より好ましくは少なくともおよそ95%の配列又はそれ以上の同一性を有するものであろう。
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の強度総計を意味する。特に示さない限り、ここで使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を表す、固有の結合親和性を表す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(「Kd」、下を参照)により表すことができる。親和性は、ここに開示されたものを含む、当該技術で公知の一般的方法により測定することができる。低-親和性抗体は、一般的に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向にあるが、高-親和性抗体は、一般的により素早く抗原に結合し、長時間、結合を持続している傾向にある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術で公知であり、そのいずれかを本発明の目的に使用することができる。結合親和性を測定するための、特定の例証及び例示的実施態様を以下に記載する。
一実施態様において、この発明において、「Kd」又は「Kd値」は、以下のアッセイに記載するように、関心ある抗体のFabバージョンと、その抗原とを用いて実施される、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。抗原に対する、Fabの溶液-結合親和性は、標識されていない抗原の滴定シリーズの存在下、最小濃度の(125I)-標識された抗原を用いてFabを平衡化させ、ついで抗Fab抗体コーティングプレート、結合抗体を捕捉することにより測定される(例えば、Chenら, J. Mol. Biol., 293:865-881(1999)を参照)。アッセイについての条件を確立するために、マイクロタイタープレート(DYNEX Technologies, Inc., Chantilly, VA)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)に5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs, Cochranville, PA)が入ったもので、一晩コーティングし、続いて、室温(約23℃)で2〜5時間、PBSに2%(w/v)のウシ血清アルブミンが入ったものでブロックする。非吸着プレート(Nunc #269620, Nalge Nunc International , Rochester, NY)において、100pM又は26pMの[125I]-抗原を、関心あるFabの連続希釈液と混合する(例えば、抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致、Prestaら, Cancer Res., 57:4593-4599(1997))。ついで、関心あるFabを一晩インキュベートするが;インキュベートは、確実に平行に達するように、長時間(例えば、約65時間)続けることができる。その後、混合物を、室温でインキュベート(例えば1時間)するために捕捉プレートに移す。ついで、溶液を除去し、PBSに0.1%のトゥイーン-20TM界面活性剤が入ったもので、8回洗浄する。プレートを乾燥させた時に、150μl/ウェルの発光体(scintillant)(MICROSCINT-20TM; Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNTTMガンマカウンター(Packard)で10分計測する。最大架橋20%未満が付与される各Fabの濃度を、競合結合アッセイを使用して選択する。
他の実施態様に従い、Kdは、〜10反応単位(RU)で、固定化抗原CM5チップを用い、25℃にて、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000機器(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用する、表面プラズモン共鳴法により測定される。簡単には、カルボキシメチル化されたデキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)は、供給者の使用説明書に従い、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原は、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて、カップリングタンパク質の反応単位(RU)が約10になるように、5μl/分の流速で注射する前に、5μg/ml(〜0.2μM)に希釈される。抗原を注射した後、1Mのエタノールアミンを注射し、未反応基をブロックする。動力学測定のために、2倍に連続希釈されたFab(0.78nM〜500nM)を、約25μl/分の流速で、25℃にて、PBSに0.05%のトゥイーン20TM界面活性剤が入ったもの(PBST)に注射する。会合速度(kon)と解離速度(koff)を、会合と解離のセンサーグラムを同時に適合することにより、単一の1対1Langmuir結合モデル(BIAcore(登録商標)Evaluation Software version 3.2)を使用して算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/konの比率として算出する。例えば、Chenら,J. Mol. Biol., 293:865-881(1999)を参照。オン速度(on-rate)が、上述した表面プラズモン共鳴アッセイにより、106M−1s−1を超過しているならば、オン速度は、分光計、例えばストップフローが具備された分光光度計(Aviv Instruments)、又は8000シリーズのSLM-AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic, Madison, WI)で攪拌キュベットを具備するもので測定される場合、増加濃度の抗原下、PBSに20nMの抗抗原抗体(Fab形)が入ったものを25℃で、蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmの帯域通過)における増加又は減少を測定する蛍光クエンチング技術を使用して測定可能である。
この発明の「オン速度」、「解離の速度」、「解離速度」又は「kon」は、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000システム(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用し、上述にて記載したように測定することができる。
ここの抗体をコードする「単離された」核酸分子は、それが産生された環境において通常伴う少なくとも一つの混入核酸分子から同定され分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、産生環境に伴う全ての要素と無関連である。ここのポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、自然において見い出される形態又は設定以外の形態である。従って単離された核酸分子は、細胞に天然に存在しているここに記載のポリペプチド及び抗体をコードする核酸と区別される。
ここで使用される「ベクター」という用語は、それが結合している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合されうる円形の二本鎖DNAを意味する。他の型のベクターはファージベクターである。他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへ結合させうる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製する。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を指令し得る。このようなベクターはここでは「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合が多い。
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後になされる修飾(一又は複数)、例えば標識との結合を含みうる。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体担体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有する有機キャップ基部分又はアミンで置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み得、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
ここで使用される「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
「パッケージ挿入物」は、指示、使用法、用量、投与、禁忌、包装された製品と組合せられる他の治療用製品、及び/又はこのような治療用製品の使用に関する注意についての情報を含む、治療用製品又は薬物の市販パッケージに常套的に含まれる指示を意味するために使用される。
「薬学的に許容可能な酸」は、それらが製剤化される濃度及び方法において無毒性である無機及び有機酸を含む。例えば、適切な無機酸には、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルファニル酸、リン酸、炭酸などが含まれる。適切な有機酸には、直鎖及び分岐鎖アルキル、芳香族、環状、環状脂肪族、アリール脂肪族、複素環式、飽和、不飽和、モノ-、ジ-、及びトリ-カルボン酸で、例えば、蟻酸、酢酸、2-ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、アントラニル酸、プロパン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-オキソプロパン酸、プロパンジオイン酸(propandioic)、シクロペンタンプロピオン酸、シクロペンタンプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、ブタン酸、ブタンジオイン酸(butandioic)、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、アスコルビン酸、ケイ皮酸、ラウリル硫酸、ステアリン酸、ムコン酸、マンデル酸、コハク酸、エンボン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、グライコン酸、グルコン酸、ピルビン酸、グリオキサール酸、シュウ酸、メシリン酸(mesylic)、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、パルモイン酸(palmoic)、パルメイン酸(palmeic)、チオシアン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルフホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-コロベンゼンスルホン酸(chorobenzenesulfonic)、ナフタレン-2-スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルバイシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボキシル酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-3-(ヒドロキシ-2-エン-1-カルボキシル酸)、ヒドロキシナフトイン酸(hydroxynapthoic)を含む。
「薬学的に許容可能な塩基」には、それらが製剤化される濃度及び方法において無毒性である無機及び有機塩基を含む。例えば、適切な塩基には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジンなどの無機塩基形成金属、及び第一級、第二級、第三級アミン、置換アミン、環状アミンを含む有機無毒性塩基、及び塩基性イオン交換レジン、[例えば、N(R’)4 +(ここでR’は別個にH又はC1−4アルキル基、例えばアンモニウム、トリス)]、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミンレジン及び類似物から形成されるものが含まれる。特に、好ましい有機無毒性塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
本発明に使用可能な、さらなる薬学的に許容可能な酸及び塩基には、アミノ酸、例えば、ヒスチジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギンに由来するものが含まれる。
「薬学的に許容可能な」バッファー及び塩には、前記された酸及び塩基の塩を付加された酸及び塩基に由来するものが含まれる。具体的なバッファー及び又は塩には、ヒスチジン、コハク酸及び酢酸が含まれる。
「薬学的に許容可能な糖」は、目的のタンパク質と組合わせた場合、保存においてタンパク質の化学的及び/又は物理的不安定性を顕著に阻止又は軽減する分子である。製剤が凍結乾燥され、そして元に戻すことが意図される場合、「薬学的に許容可能な糖」はリオプロテクタント(lyoprotectant)としても知られる。例示的な糖及びそれらに対応する糖アルコールは;グルタミン酸一ナトリウム又はヒスチジンなどのアミノ酸;ベタインなどのメチルアミン;硫酸マグネシウムなどの溶媒変性塩;三価又はそれより大きな分子量の糖アルコール、例えば、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;ピューロニクス(登録商標);及びそれらの組合わせが含まれる。更なる例示的リオプロテクタントには、グリセリン及びゼラチン、及び糖、メリビオース、メレチトース、ラフィノース、マンノトリオース及びスタキオースが含まれる。還元糖の例には、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロース及びラクツロースが含まれる。非還元糖の例には、糖アルコール及び他の直鎖ポリアルコールから選択されたポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが含まれる。好ましい糖アルコールは、モノグリコシド、特にラクトース、マルトース、ラクツロース及びマルツロースなどのジサッカライドの還元によって得られる化合物である。グリコシド側鎖はグルコシド又はガラクトシドのいずれかであり得る。糖アルコールの更なる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール及びイソ-マルツロースである。好ましい薬学的に受容される糖には非還元糖トレハロース又はスクロースである。薬学的に許容される糖は、タンパク質が保存の間(例えば、再構成及び保存の後)その物理学的及び化学的安定性と完全性を本質的に保つような「保護量」(例えば、凍結乾燥前)で製剤に添加する。
ここでの目的における「希釈液」は、薬学的に許容な(ヒトへの投与に関し安全で無毒性)もので、凍結乾燥後に再構成される製剤などの、液性製剤の調製に有用である。典型的な希釈液には、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸バッファー生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液又はデキストロース溶液が含まれる。これに代わる実施態様において、希釈液は塩及び/又はバッファーの水溶液を含み得る。
「保存剤」は、バクテリアの作用を減少させるために、ここにおける製剤に添加され得る化合物である。保存剤の添加は、例えば、複数回使用(複数回投与)製剤の生産を促進する。潜在的保存剤の例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。保存剤の他のタイプには、フェノールなどの芳香族アルコール、ブチル及びベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが含まれる。ここで最も好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。
「薬学的製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性を許容する形態であり、その製剤が投与されるであろう被検体に許容できない程に毒性である更なる成分を含まない調製物を意味する。そのような製剤は無菌である。
「滅菌」製剤は無菌的であるか又はあらゆる生きている微生物及びその胞子を含まない。
「約」なる用語は、ここで使用される場合、本技術分野における技術者に容易に理解されるそれぞれの値に対する通常のエラー範囲を意味する。ここでの値又はパラメータについての「約」という記載は、その値又はパラメータ自体に関する変動を含む(また記述する)。
本明細書及び添付の請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」には、明らかな別の記載がない限り複数形も含まれる。例えば、「抗体(an antibody)」への言及は一から多数の抗体への言及であり(モル量等)、当業者に知られているその均等なもの等を含む。
ここに記載の発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様「を含んでなる」、「から成る」、及び「から本質的に成る」を含む。
III.本発明の組成物及び方法
本発明は、個体における自己免疫疾患(炎症性腸疾患等)を治療又は防止する方法を提供し、個体に有効量のここに記載の抗CD83アゴニスト抗体を投与することを含んでなる。幾つかの実施態様では、有効量の抗CD83アゴニスト抗体が、個体における潰瘍性大腸炎を治療又は防止するために個体に投与される。幾つかの実施態様では、有効量の抗CD83アゴニスト抗体が、個体におけるクローン病を治療又は防止するために個体に投与される。幾つかの実施態様では、有効量の抗CD83アゴニスト抗体が、個体における不確定大腸炎を治療又は防止するために個体に投与される。
ここに記載の全ての方法に関して、抗CD83アゴニスト抗体への言及は、一又は複数のこれらの薬剤を含んでなる組成物も含む。このような組成物は、適切な賦形剤を更に含有し得、例えば、バッファー、酸、塩基、糖、希釈剤、保護材等を含む薬学的に許容可能な賦形剤(担体)であり、当技術分野でよく知られており、ここに記載されている。本発明の方法は、単独で又は一般的な他の治療方法と併用して使用されてもよい。
A.抗CD83アゴニスト抗体
本発明の方法は抗CD83アゴニスト抗体を使用し、この用語は、細胞表面に発現されるCD83に結合し、細胞表面上に発現されるCD83(例えば、成熟樹状細胞の細胞表面上に発現されるCD83)に結合した後、CD83によって媒介されるシグナル伝達を活性化する抗CD83抗体を意味する。ここに記載の抗CD83アゴニスト抗体は、一又は複数の以下の特徴を有しうる:(a)成熟樹状細胞におけるMAPKシグナル伝達の活性化の阻害(例えば成熟樹状細胞におけるp38及びCREBタンパク質のリン酸化の減少を導く);(b)成熟樹状細胞におけるmTORシグナル伝達の活性化を阻害する(例えば、成熟樹状細胞におけるmTORタンパク質のリン酸化の減少を導く);(c)成熟樹状細胞からの一又は複数の炎症促進性サイトカイン(MCP-1、IL-12p40等)の放出を阻害する;(d)成熟樹状細胞からの一又は複数の抗炎症性サイトカイン(IL-1ra)の放出を誘導する;(e)成熟樹状細胞活性化マーカー(CD83、HLA-DR等)の細胞表面発現の減少を誘導する;(f)成熟樹状細胞において一又は複数の創傷治癒遺伝子(vcan、spock2、及びfbn2等)の発現をアップレギュレートする;及び(g)自己免疫疾患(IBD等)を治療及び/又は防止する。抗CD83アゴニスト抗体の活性はインビトロ及び/又はインビボで測定されうる。
抗CD83抗体は、当技術分野で知られる方法を使用して生成され、ここに記載される一又は複数のアゴニスト活性についてスクリーニングされうる。例えば、実施例9に記載される方法を参照のこと。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、ヒトCD83の細胞外領域に特異的に結合する。幾つかの実施態様では、ヒトCD83は、
から成熟アミノ酸配列を有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、
のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに特異的に結合する。
幾つかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は単離された抗体である。幾つかの実施態様では、抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、又は(Fab’)2等の抗体断片である。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、(a)配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl;(b)配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;(c)配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3;(d)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll;(e)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(f)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、(a)配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl;(b)配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;(c)配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3;(d)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll;(e)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(f)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を含んでなる6つのHVRを有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、(a)配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl;(b)配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び(c)配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3つのVH HVR配列を有する。一実施態様では、抗体は、配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を有する。別の実施態様では、抗体は、配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3及び配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を有する。更なる実施態様では、抗体は、配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3、配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3、及び配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2を有する。更なる実施態様では、抗体は、配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl;配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;及び配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3を有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、(a)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll;(b)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3つのVL HVR配列を有する。一実施態様では、抗体は、(a)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll;(b)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(c)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、(a)(i)配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl、(ii)配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2、及び(iii)配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3つのVH HVR配列を含んでなるVHドメイン;及び(b)(i)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll;(ii)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(iii)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は全3つのVL HVR配列を含んでなるVLドメインを有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体は、(a)配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl;(b)配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2;(c)配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3;(d)配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll;(e)配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2;及び(f)配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3を有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体はヒト化である。一実施態様では、抗CD83抗体は、上記実施態様の何れかにおけるHVRを有し、更に、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク等のアクセプターヒトフレームワークを有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体において、配列番号:30のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体が提供される。ある実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有するVH配列は基準配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を有するが、この配列を含んでなる抗CD83抗体はCD83に結合する能力を保持する。ある実施態様では、全部で1から10のアミノ酸が、配列番号:30において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、置換、挿入、及び/又は欠失は、HVRの外の領域(すなわちFR)において生じる。場合によっては、抗CD83抗体は、配列番号:30におけるVH配列を有し、該配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施態様では、VHは、配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Hl、)配列番号:32のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H2、及び配列番号:33のアミノ酸配列を含んでなるHVR-H3から選択される1、2又は3つのHVRを有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体において、配列番号:36のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体が提供される。ある実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有するVL配列は基準配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を有するが、この配列を含んでなる抗CD83抗体はCD83に結合する能力を保持する。ある実施態様では、全部で1から10のアミノ酸が、配列番号:36において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、置換、挿入、及び/又は欠失は、HVRの外の領域(すなわちFR)において生じる。場合によっては、抗CD83抗体は、配列番号:36におけるVL配列を有し、該配列の翻訳後修飾を含む。特定の実施態様では、VLは、配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなるHVR-Ll、配列番号:38のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L2、及び配列番号:39のアミノ酸配列を含んでなるHVR-L3から選択される1、2又は3つのHVRを有する。
幾つかの実施態様では、抗CD83抗体において、上記実施態様の何れかにおけるVH、及び上記実施態様の何れかにおけるVLを有する抗体が提供される。一実施態様では、それぞれ配列番号:30及び配列番号:36におけるVH及びVLを有し、これらの配列の翻訳後修飾を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号:29に示す重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:35に示す軽鎖アミノ酸配列を有し、これらの配列の翻訳後修飾を含む。
一実施態様では、ここに提供されるものは、ここに記載の抗体の何れか一つと競合的にヒトCD83に結合する抗CD83抗体である。ある実施態様では、競合結合は、ELISAアッセイを使用して決定されうる。例えば、ある実施態様では、配列番号:30のVH配列及び配列番号:36のVL配列を含んでなる抗CD83抗体と競合してヒトCD83に結合する抗体が提供される。ある実施態様では、配列番号:29に示す重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:35に示す軽鎖アミノ酸配列を含んでなる抗CD83抗体と競合してヒトCD83に結合する抗体が提供される。
抗体は、標的抗原CD83に対してナノモル又はピコモル親和性を有しうる。ある実施態様では、抗体のKdは、約0.05から約100nMである。例えば、抗体のKdは、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、又は約50pMの何れかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、又は約40pMの何れかである。
B.抗CD83アゴニスト抗体の組換え調製
本発明はまた組換え技術を使用する抗CD83アゴニスト抗体の生産方法を提供する。例えば、ポリペプチドは、かかる抗体又はその断片をコードする単離された核酸、かかる核酸を含んでなるベクター及び宿主細胞を使用して調製されることができる。セクションBに記載される方法は一般に抗体の生産に対して言及するが、これらの方法は、ここに記載される任意のポリペプチドを生産するために使用されてもよい。
抗体又はその断片の組換え生産のために、所望の抗体又は抗体断片をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは通常の手法を用いて、直ぐに単離され(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用することによって)、配列決定される。多くのクローニング及び/又は発現ベクターが市販されている。ベクター成分には、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、多くの制限エンドヌクレアーゼに対する認識配列を有する多重クローニング部位、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
(1)シグナル配列成分
抗体又はその断片は直接的にだけではなく、融合タンパク質として組換え生産されてもよく、抗体は、異種ポリペプチド、好ましくはシグナル配列又は成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドと融合される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然哺乳類シグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対して、真核細胞(すなわち哺乳類)シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンII遺伝子からのリーダー配列から成る郡から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母での分泌に対して、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスウィルスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、読み枠において、抗体又はその断片をコードするDNAに結合される。
(2)複製起点成分
発現及びクローニングベクターは共に、一又は複数の選択された宿主細胞において、ベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(「VSV」)又はウシパピローマウイルス(「BPV」))は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる)。
(3)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選択マーカーとしても知られる選択遺伝子も含みうる。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート或いはテトラサイクリンのような抗生物質或いは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えば桿菌のD-アラニンラセマーゼをコードしている遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの別の例は、抗体又は抗体断片をコードする核酸を取り込むことのできる細胞の識別を可能にするものであり、例えばジヒドロ葉酸還元酵素(「DHFR」)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチン脱炭酸酵素等である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた使用の例示的な宿主細胞株は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)株化細胞(例えば、ATCC CRL-9096)である。
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの別の例は、抗体又は抗体断片をコードする核酸を取り込むことのできる細胞の識別を可能にするものであり、例えばジヒドロ葉酸還元酵素(「DHFR」)、グルタミン合成酵素(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチン脱炭酸酵素等である。
あるいは、GS(グルタミン合成酵素)遺伝子で形質転換された細胞は、形質転換体を、GSの阻害剤であるL-メチオニンスルホキシミン(Msx)を含有する培養培地において培養することによって同定される。これらの条件下で、GS遺伝子は他の何れかの同時形質転換された核酸と共に増幅される。GS選択/増幅システムは、上記のDHFR選択/増幅システムと併用して使用されうる。
あるいは、抗CD83アゴニスト抗体又はその断片コードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(「APH」)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質等の適切な選択マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で増殖する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、ついでトリプトファンの不存在下における増殖による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠陥酵母株(ATCC20622あるいは38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
さらに、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え子ウシのキモシンの大量生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株からの、組換えによる成熟したヒト血清アルブミンを分泌する安定した複数コピー発現ベクターも開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
(4)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され、抗CD83アゴニスト抗体又はその断片をコードする核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファンプロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含むが、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗体及び抗体断片をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに挿入されてもよい。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
酵母における誘発的プロモーターは、増殖条件によって転写が制御される付加的効果を有する。例示的な誘発的プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域を含む。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許73657に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体又はその断片をコードする核酸の転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターによって、熱ショック遺伝子プロモーターによって、このようなプロモーターが所望の宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞中でのヒトβインターフェロンcDNAの発現の方法に関して、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
(5)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による、抗体又はその断片をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、当業者は、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体又は抗体断片コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターの5'位に位置している。
(6)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体又はその断片をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
(7)宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中の抗CD83アゴニスト抗体又はその断片をコードするDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞を含む。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開された DD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
完全長抗体、抗体断片、及び抗体融合タンパク質は、治療用抗体が細胞毒(例えば、毒素)にコンジュゲートされる場合等、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合に特に、細菌において生産されることができる。完全長抗体は、循環においてより長い半減期を有する。大腸菌での生産がより速くより対費用効果が高い。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えばU.S.5,648,237(Carter et. al.)、U.S.5,789,199(Joly等)、及びU.S.5,840,523(Simmons等)(発現及び分泌を最適化するための転写開始領域(TIR)及びシグナル配列を記載する)を参照のこと。発現後、抗体又は抗体断片は溶解性画分における大腸菌細胞ペーストから単離され、例えばアイソタイプによってタンパク質A又はGカラムを通して精製されることができる。最終精製は、例えばCHO細胞において発現された抗体又は抗体断片を精製するために使用した同じ手順によって実行されることができる。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体又は抗体断片をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用できる、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。治療用タンパク質の生産に関する酵母及び糸状菌の使用の概説については、例えばGerngross, Nat. Biotech. 22: 1409-1414 (2004)を参照のこと。
グリコシル化経路が「ヒト化」された特定の菌類及び酵母株が選択されてもよく、部分的なもしくは完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の生産となる。例えば、Li等, Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) (describing humanization of the glycosylation pathway in Pichia pastoris); and Gerngross等, supraを参照のこと。
グリコシル化抗体又は抗体断片の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリ(ガ)が同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリNPVのBm-5株が公に利用できる。そのようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A,ATCC CRL1442); ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2,HB8065);マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。他の有用な哺乳類宿主細胞株は、DHFR−CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));及びNS0及びSp2/0等の骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に適した特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えばYazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 255-268を参照のこと。
宿主細胞は、抗体又は抗体断片生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
(8)宿主細胞の培養
ここでの抗CD83アゴニスト抗体又は抗体断片を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;WIPO公開番号WO90/03430;同第WO87/00195;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
(9)抗体精製
組換え技術を用いる場合、抗CD83アゴニスト抗体又は抗体断片は細胞内、細胞膜周辺腔に生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌された抗体の単離方法を記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍する。細胞細片は遠心分離で除去できる。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
このような細胞から調製した抗体又は抗体断片組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体又は抗体断片の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒト3重鎖抗体又は抗体断片に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体又は抗体断片がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、SEPHAROSETM、又はアニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム)、並びにクロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される抗体又は抗体断片に応じて利用可能である。
一又は複数の予備的精製工程に続いて、目的の抗体又は抗体断片及び混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
一般に、研究、試験、及び臨床使用における使用に対し抗体を調整するための様々な方法論が当技術分野で確立されており、上述の方法論と一致し、及び/又は特定の興味の抗体について当技術分野の技術者によって適切であると判断される。
C.抗体調整
本発明において有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及びF(ab’)2)、キメラ抗体、二重特異性抗体、多価抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、抗体部分を含んでなる融合タンパク質、ヒト化抗体、及び必要な特異性を有する抗原認識部位を有する免疫グロブリン分子の何れかの他の修飾構造を含み、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、及び共有結合的に修飾された抗体を含む。抗体は、マウス、ラット、ヒト、又は何れか他の起源であってもよい(キメラ又はヒト化抗体を含む)。
(1)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原(例えば精製された又は組換えCD83)を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRにより抱合させることが有用である。用いられるアジュバントの例には、完全フロイントアジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリルLipid A、合成トレハロースジコリノミコレート)が含まれる。免疫の方法は、過度の実験をすることなく当業者によって選択することができる。
動物を、例えば、100μg(ウサギの場合)又は5μg(マウスの場合)のタンパク質又はコンジュゲートを完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
(2)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体集団から得られるが、つまり、該集団を含む個々の抗体は、少量存在する起こりうる自然発生的突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。従って、「モノクローナル」という形容詞は、別個の抗体の混合物ではないとの抗体の特徴を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適切な宿主動物、ハムスター等が、免疫化に使用されるタンパク質(例えば、精製された又は組換えCD83)に特異的に結合するだろう抗体を産生する又は産生できるリンパ球を誘発するように上記のように免疫化される。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化されうる。次いで、リンパ球はポリエチレングリコール等の適切な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合されてハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。
免疫化剤は、典型的には抗原タンパク質(例えば、精製又は組換えCD83)又はそれらの融合変異型を含む。一般には、ヒト起源の細胞が望まれる場合において末梢血リンパ球(「PBL」)が用いられるか、又は非ヒト哺乳動物ソースが望まれる場合において脾臓又はリンパ節細胞が用いられるかのいずれかである。次に、リンパ球を、ハイブリドーマ細胞を調製するためにポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合する。Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press (1986), pp.59-103。
通常、不死化細胞はトランスフォームされた哺乳動物細胞であり、実用的にはげっ歯類、ウシ又はヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスミエローマ細胞株が用いられる。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親のミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親のミエローマ細胞が酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失する場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT-欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有することになろう(HAT培地)。
好ましい不死化ミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現をサポートし、HAT培地のような培地に対して感受性の細胞である。これらの中でも、好ましいミエローマ株化細胞は、マウスミエローマ株、例えば、(Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAより入手し得る)MOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、並びに、(American Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAより入手し得る)SP-2細胞及びその誘導体(例えばX63-Ag8-653)である。ヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原(例えばCD83)に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
ハイブリドーマ細胞を培養している培地を、所望の抗原(例えばCD83)に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、モノクローナル抗体の結合親和性及び特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定できる。このような技術及びアッセイは当業者に周知である。結合親和性は、例えば、Munsonら., Anal. Biochem., 107:220(1980)のスキャッチャード分析によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されると、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, 上掲)。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が含まれる。また、このハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍として、インビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロースクロマトグラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー、及び上述の他の方法等の従来の免疫グロブリン精製法によって、培地、腹水、又は血清から上手く分離することができる。
また、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号などに開示される及び前述に記載のような組み換えDNA法により作製されてもよい。モノクローナル抗体をコードするDNAは、定法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に分離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。一度単離されれば、該DNAを発現ベクター中に挿入し、次に、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は他にイムノグロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opin. Immunol., 5:256-262 (1993) and Pluckthun, Immunol. Rev. 130:151-188 (1992)が含まれる。
ある実施態様では、抗体は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーから分離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーからのマウス及びヒト抗体の分離について記述している。次の刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(ナノモル(nM)範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術は、所望の特異性のモノクローナル抗体(例えば、CD83に結合するもの)の単離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
また、抗体又はその断片をコードするDNAは、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又はイムノグロブリンコード配列に非イムノグロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって修飾することができる。典型的には、かかる非イムノグロブリンポリペプチドは抗体の定常領域の代わりに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインが置換されて、抗原に対する特異性を有するある抗原結合部位、及び異なる抗原に対する特異性を有する他の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作り出す。
ここに示すモノクローナル抗体(例えば、抗CD83抗体又はその断片)は一価性であり、その調整方法は当業者に周知である。例えば、免疫グロブリンの軽鎖及び修飾重鎖の組み換え発現を伴う方法がある。一般的に重鎖はFc領域の任意の場所で切断して重鎖の交差組み換え(クロスリンク)を予防する。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基に置き換えたり、交差組み換えを防ぐために欠損させてもよい。また、一価抗体の調製に好適なインビトロの方法がある。当業者によくある技術を用いて抗体の断片、特にFab断片を産生することができる。
また、キメラ又はハイブリッド抗体はクロスリンク剤を伴う方法を含む合成タンパク質化学における既知の方法を用いてインビトロにおいても調製される。例えば、免疫毒素はジスルフィド置換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成させることにより構築される。当該目的にとって適切な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが含まれる。
(3)ヒト化抗体
本発明の抗体(抗CD83アゴニスト抗体等)又は抗体断片には、さらにヒト化又はヒト抗体が含まれる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖あるいはその断片(例えばFab、Fab'-SH、Fv、scFv、F(ab')2又は抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒトイムノグロブリン由来の最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、また典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、この場合、CDR領域の全て若しくは実質的に全てが、非ヒトイムノグロブリンのものに相当し、FR領域の全て若しくは実質的に全てが、ヒトイムノグロブリンコンセンサス配列である。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトのイムノグロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)。
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の1つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と称され、典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は基本的には、Winter及び共同研究者、Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)の方法に従うか、又は齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することにより実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受容される。Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987)。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる。Carter等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992); Presta等, J. Immunol. 151:2623 (1993)。
さらに、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持したまま、抗体をヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法に従って、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析過程によりヒト化抗体を調製する。三次元イムノグロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補イムノグロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を観察することで、候補イムノグロブリン配列の機能における残基の想定され得る役割の分析、すなわち候補イムノグロブリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原(一又は複数)(例えばCD83)に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
ヒト化抗体の様々な形態が考えられる。例えば、ヒト化抗体は、抗体断片、例えばFab、場合によっては免疫コンジュゲートを作成するために1又は複数の細胞障害剤でコンジュゲートされたものであってもよい。あるいは、ヒト化抗体又は、親和性成熟抗体は、完全な抗体、例えば完全なIgG1抗体であってもよい。
(4)ヒト抗体
あるいは、ヒト抗体を産生することができる。例えば、内在性のイムノグロブリン産生がない状態で、ヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合欠損が内因性抗体産生を完全に阻害することが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子列の移入は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例としてJakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993);Bruggermann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号及びWO97/17852を参照。
あるいは、ファージディスプレイ技術を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。McCaffertyら, Nature 348:552-553(1990);Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227:381(1991)。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13またはfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンし、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として表出する。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
また、Cole等及びBoerner等の技術もヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985)及びBoerner等, J. Immunol. 147(1):86-95 (1991))。同様に、トランスジェニック動物、例えば、内在性のイムノグロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されているマウスなどに、ヒトイムノグロブリン遺伝子座を導入することによりヒト抗体を作製することができる。免疫すると、遺伝子再構成、構築及び抗体レパートリーを含め、あらゆる観点においてヒトで観察されるものと近似したヒト抗体の産生が観察される。本アプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;5,545,806号、5,569,825号,、5,625,126号、5,633,425号、5,661,016号及び以下の特定の刊行物中に記載されている:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368:856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994)、Fishwild等, Nature Biotechnology 14:845-51 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern, Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。
最後に、ヒト抗体は活性化B細胞によりインビトロで産生してもよい(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照)。
(5)抗体断片
ある状況では、全抗体を用いるよりもむしろ抗体断片を用いる方が有利なことがある。より小さいサイズの断片は急速にクリアランスを受け、固形腫瘍にアクセスしやすい。
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産ることが可能であり、例えば上で検討したCD83に対する抗体をコードする核酸をする。Fab、Fv及びscFv抗体断片はすべて大腸菌内で発現され分泌されるため、これら断片を大量に産生することが容易である。抗体断片は上記した抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。インビボ半減期が延長したFab及びF(ab’)2抗体断片の産生は米国特許第5,869,046号に記載されている。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってよい。
(6)二重特異性及び多特異性抗体
二重特異性(BsAb)は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体であり、同じ又は異なるタンパク質(例えば、CD83)に対するものを含む。かかる抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')2 二重特異性抗体)から得ることができる。
二重特異性抗体を作製する方法は当該技術分野において知られている。完全長二重特異性抗体の従来の生産は、二つのイムノグロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいているが、この場合二つの鎖は異なる特異性を持っている。Millstein等, Nature, 305:537-539 (1983)。イムノグロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうち一つだけが正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる目的の分子の精製はかなり煩雑で、収率は低い。同様の方法がWO93/08829及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時ト形質移入する。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生するさらなる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
WO96/27011又は米国特許第5,731,168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science,229:81 (1985) は無傷な抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。生産された二重特異性抗体は酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
Fab’断片を直接大腸菌から回収して、これは化学的に結合させて二重特異性抗体を形成してもよい。Shalaby等,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞、及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
組換え細胞培養から直接的に二価抗体断片を作成し単離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二価ヘテロヘテロ二量体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。Hollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性/二価抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性/二価抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。例示的な二重特異性抗体は任意の分子(例えば、CD83)上の2つの異なるエピトープ上に結合する。
(7)多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早くインターナリゼーション(及び/又は異化)されうる。本発明の抗CD83抗体又は抗体断片は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。好ましい二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここで、好ましい多価抗体は3ないし8、好ましくは4の抗原結合部位を有する。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2又はそれ以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の一つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。同様に、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有する。ここで多価抗体は、例えば約2〜約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有する。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
(8)ヘテロコンジュゲート抗体
また、ヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲に入る。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。例えば、ヘテロコンジュゲートの一方の抗体はアビジンに結合し、他方はビオチンに結合可能である。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせることが提案され、米国特許第4,676,980号、またHIV感染の治療のために使用されている。国際公開第WO91/00360号;同第WO92/200373号;欧州特許第0308936号。該抗体は、クロスリンク剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されたものが含まれる。ヘテロコンジュゲート抗体は簡便なクロスリンク法を用いて作製してもよい。好適なクロスリンク剤は当業者に周知であり、クロスリンク技術の番号と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
(9)エフェクター機能の操作
エフェクター機能を変更及び/又は抗体の血清半減期を増加するように本発明の抗体を改変することが所望されうる。例えば、定常領域のFc受容体結合部位が、特定のFc受容体、FcgRI、FcgRII、及び/又はFcgRIIIに対する結合親和性を除去又は低減するように改変又は変異されうる。幾つかの実施態様では、エフェクター機能は、抗体のFc領域(例えば、IgGのCH2において)のN-グリコシル化を除去することによって損なわれる。幾つかの実施態様では、エフェクター機能は、ヒトIgGの233−236、297、及び/又は327−331等の領域を修飾することによって損なわれ、PCTWO99/58572及びArmour等, Molecular Immunology 40: 585-593 (2003); Reddy等, J. Immunology 164:1925-1933 (2000)に記載される。
抗体の血清半減期を増大させるために、例えば米国特許第5739277号に記載のように、抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープを導入してもよい。ここで使用される場合の「サルベージレセプター結合エピトープ」なる用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる原因であるIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを意味する。
(10)他のアミノ酸配列修飾
ここで記載の抗体のアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、抗体又は抗体断片の結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。抗体又は抗体断片のアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化を抗体又は抗体断片をコードする核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴(つまり、CD83と結合又は物理的相互作用する能力)を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化など、抗体の翻訳後過程を変更しうる。
突然変異のための好ましい位置にあるアンタゴニストの残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells in Science, 244:1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアニリン)に置換され、アミノ酸と標的抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-(「N」)及び/又はカルボキシル-(「C」)末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つ抗体又は細胞傷害ポリペプチドに融合した抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を向上させる酵素又はポリペプチドの抗体のN-又はC-末端への融合物を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基により置換された抗体分子に、少なくとも一のアミノ酸残基で有する。置換突然変異について最も関心ある部位は高頻度可変領域を含むが、FR交互変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表Aに示す。これらの置換が生物活性の変化をもたらす場合、表Aに「例示的な置換」と名前を付けた又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
アンタゴニストの生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr、
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
抗体の適切な配置の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特にここでの抗体は抗体断片、例としてFv断片である)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の超可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体(類)は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和成熟を含む。簡潔に言えば、幾つかの超可変領域部位(例えば6-7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として、一価種類にディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に大きく寄与する超可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原CD83の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
抗体のアミノ酸変異の他の型は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、抗体に見い出される一又は複数の炭水化物部分の欠失、及び/又は抗体に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸である、は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O-結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N-結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡易に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
抗IgE抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された抗体又は抗体断片の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
(10)他の抗体修飾
本発明の抗体又は抗体断片は、当技術分野で知られ容易に入手可能である更なる非タンパク質性部分を持つよう更に修飾されることができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリパーの非制限的な例は、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1、3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレンポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びその混合を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中のその安定性により製造において利点を有しうる。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐又は非分岐でありうる。抗体に結合されるポリマーの数は様々であり得、一以上のポリマーが結合される場合は、それらは同じもしくは異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは考察に基づいて決定されることが可能であり、限定するものではないが、改良される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が決められた条件下の治療で使用されるかどうか等を含む。このような技術及び多の適切な製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Alfonso Gennaro, Ed., Philadelphia College of Pharmacy and Science (2000)に開示されている。
D.薬学的組成物及び製剤
ここに記載される抗CD83アゴニスト抗体の治療用組成物及び製剤は、任意の製薬上許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と、所望の精製度を有する活性成分とを混合することにより、調製されすることができる(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., (Gennaro, A.R., ed., Lippincott Williams & Wilkins, Publishers, Philadelphia, PA 2000)。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、緩衝液、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、異性重亜硫酸ナトリウムを含む抗酸化剤;防腐剤、等張剤(isotonicifier)、安定剤、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);EDTA等のキレート剤及び/又は非イオン性界面活性剤等を含む。
緩衝液(バッファ)は、特にpHに依存して安定する場合に、治療的有効性が最適になる範囲にpHを調節するために用いる。緩衝液は約50mMから250mMの濃度範囲であるのが好ましい。本発明の使用のために好適な緩衝剤には、有機及び無機酸の両方とそれらの塩が含まれる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。更に、緩衝液はトリスのようなヒスチジン及びトリメチルアミンからなり得る。
防腐剤(保存剤)は細菌の成長を遅らせるために一般的に0.2%−1.0%(w/v)の範囲で添加される。本発明の使用に好適な保存剤には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化合物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチル及びベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが含まれる。
時に「安定剤」としても知られる緊張剤は、液体成分の緊張性を調節又は維持するためにある。タンパク質や抗体のような大きな、荷電した生体分子と共に用いる場合、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用して分子内及び分子間相互作用を潜在的に減少させるのでたびたび「安定剤」と呼称される。緊張剤は重量にして0.1%〜25%の間、より好ましくは1%〜5%の間で、他の成分との相対的な量を考慮して任意の量で加える。好ましい緊張剤には、多価糖質アルコール類、好ましくは三水素又はより高い糖質アルコール類、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。
更なる賦形剤には、以下のうちの一以上の役割をする薬剤が含まれる:(1)充填剤、(2)溶解亢進剤、(3)安定剤及び(4)変性や容器壁への付着を防止する作用剤。安定剤は活性なタンパク質又は抗体の重量当たり0.1〜10000分の1の範囲で加えることができる。このような賦形剤には:多価糖質アルコール類(上記を列挙した);アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、その他;有機糖質または糖質アルコール類、例えば蔗糖、ラクトース、ラクチトール(lactitol)、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイノシトース(myoinisitose)、ミオイノシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール);硫黄を含んでいる還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、ナトリウムチオグリコール酸塩、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びナトリウムチオ硫酸塩;低分子量のタンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、ブドウ糖);二糖類(例えばラクトース、マルトース、蔗糖);三糖類(例えばラフィノース);及び多糖類(例えばデキストリンまたはデキストラン)が含まれる。
非イオン性界面活性剤又は洗浄剤(「湿潤剤」としても知られている)は、攪拌誘導性凝集から治療的タンパク質を保護するだけでなく治療的薬剤を溶解するのを促進し、それによって製剤が曝され、活性な治療的タンパク質又は抗体の変性の原因となることなく表面ストレスを剥奪する。非イオン性界面活性剤は約0.05mg/ml〜約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲内で加える。
好適な非イオン性界面活性剤には、ポリソルベート(20,40,60,65,80,等)、ポリオキサマー(184,188,等)、ピューロニック(Pluronic)(登録商標)、ポリオルズ(polyols)、トリトン(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(トゥイーン(登録商標)-20、トゥイーン(登録商標)-80、等)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化されたヒマシ油10、50及び60、グリセロールモノステアレート、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが含まれる。使用可能な陰イオン洗剤には、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート及びジオクチルナトリウムスルホン酸塩が含まれる。陽イオン洗剤には、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが含まれる。
抗CD83アゴニスト抗体を含んでなる薬学的製剤をインビボ投与に用いるために、滅菌しなければいけない。滅菌濾過膜に濾過することによって製剤を無菌的に精製してもよい。ここでいう医薬組成物は一般的に、滅菌したアクセスポートを有する容器、例えば、静脈溶液バッグ又は皮下注射針によって穴を開けることができる栓を有するバイアルに納めてある。
投与方法は公知で適応できる方法に従う、例として、単回又は複数回のボーラス投与、又は好適な方法での長時間をかけての輸液、例えば、皮下、静脈内、腹膜内、筋肉内、動脈内、病巣内、関節内による注入又は輸液、局所投与、吸入、又は持続的除放あるいは伸展的除放方法による。
また、ここでいう抗CD83アゴニスト抗体組成物及び製剤は、治療する特定の症状に必要な一以上の活性な化合物、好ましくはお互い悪影響を示さない相補的活性を有する化合物を含んでよい。あるいは又は加えて、化合物は細胞障害性剤、サイトカイン又は成長阻害性剤を含んでよい。そのような分子は意図する目的に有効な量で適切に組み合わせる。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術はRemington's Pharmaceutical Sciences 20th Edition(上掲)に開示されている。
ここで開示したタンパク質及び抗体の安定性は、非毒性の「水溶性多価金属塩」の使用により亢進されるであろう。例として、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Sn2+、Sn4+、Al2+、及びAl3+が含まれる。上記多価金属陽イオンと共に水溶性塩を形成する例示的な陰イオンには、無機酸及び/又は有機酸によって形成されるものが含まれる。このような水溶性塩は水(20℃)において、少なくとも20mg/ml、或いは100mg/ml、或いは200mg/mlまで可溶性である。
「水溶性多価金属塩」を形成するのに使用可能な好適な無機酸には、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸及びリン酸が含まれる。使用可能な好適な有機酸には、脂肪族カルボン酸及び芳香族の酸が含まれる。この定義の範囲内の脂肪族の酸は、飽和又は不飽和C2−9カルボン酸(例えば、脂肪族モノ-、ジ-及びトリ-カルボン酸)と定義してよい。例として、この定義の範囲内の例示的モノカルボン酸には、飽和C2−9モノカルボン酢酸(monocarboxylic acids acetic)、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリルペラルゴン酸及びカプリオニック(capryonic)酸、及び不飽和C2−9モノカルボン酸アクリル(monocarboxylic acids acrylic)、プロピオン酸、メタクリル酸、クロトン酸及びイソクロトン酸が含まれる。例示的ジカルボン酸には、飽和C2−9ジカルボン酸マロン(dicarboxylic acids malonic)、コハク酸、グルタル酸、脂肪酸及びピメリン酸が含まれ、一方、不飽和C2−9ジカルボン酸にはマレイン酸、フマル酸、シトラコニック(citraconic)酸及びメサコン酸が含まれる。例示的トリカルボン酸には、不飽和C2−9トリカルボン酸トリカルバリル酸及び1,2,3-ブタネトリカルボキシル酸が含まれる。更にまた、この定義のカルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸を形成するように一又は二の水酸基を持つ。例示的ヒドロキシカルボン酸には、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸が含まれる。この定義の範囲内の芳香族の酸は、安息香酸性及びサリチル酸酸を含む。
本発明のカプセル化ポリペプチドを安定化を亢進するために使用可能な一般的に用いられる水溶性多価金属塩には、例として:(1)ハロゲン化物(例えば塩化亜鉛、塩化カルシウム)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩及びチオシアン酸塩の無機酸性金属塩類;(2)脂肪族カルボン酸金属塩(例えば酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、カルシウムプロピオン酸、亜鉛グリコール酸塩、カルシウム乳酸塩、亜鉛乳酸塩及び亜鉛酒石酸塩);及び(3)ベンゾアートの芳香族のカルボン酸金属塩(例えば亜鉛ベンゾアート)及びサリチル酸塩が含まれる。
抗CD83アゴニスト抗体の薬学的製剤は、抗CD83アゴニスト抗体を直ちに放出するように(「即放性」製剤)、長期間にわたって抗体を徐々に放出するように(「持続放出性」、「制御放出性」又は「徐放性」製剤)、又は別の放出プロファイルと共にデザインされてもよい。薬学的製剤を調整するために使用される更なる材料は、製剤の治療形態に依存して様々でありえる(例えば、そのシステムが即放性又は持続放出性、制御放出性、又は徐放性かどうか)。あるバリエーションでは、持続放出性製剤は、ドラッグデリバリー後にプライミング投与量を速く送達するために即放性要素、並びに持続放出性要素を更に含んでも良い。このように持続放出性製剤は、システムへの薬物の急速な「バースト」、並びに長い段階的な放出を提供するために、即放性製剤と組み合わせることが可能である。例えば、コアの持続放出性製剤は、薬物を取り込んでいる高可溶性層でコートされうる。あるいは、持続放出性製剤及び即放性製剤は、錠剤において交互の層として、又はカプセルにおいて別個の顆粒タイプとして含まれうる。異なるタイプの製剤の他の組合せが、所望の治療血漿プロファイルを得るために使用されることができる。
例示的な持続放出性投与製剤(上掲のRemington's Pharmaceutical Sciences 20th Editionで検討される)は、広範なドラッグデリバリーシステムを含むことができ、以下のものを利用するものを含む:(a)薬物がポリマー膜に被包されており、薬物を溶解するために水が膜を通して拡散することが可能であり、次いでこれが装置から拡散するリザーバー系;(b)薬物がポリマーマトリックス中に懸濁されており、マトリックスが溶解又は分解すると徐々に外に拡散するマトリックス系(勾配又は一体化);(c)マイクロカプセル化及びコーティング化されており、直径1マイクロメーター(「μm」;10−6m)程の小さい薬物粒子(又は薬物及びポリマーの粒子)がポリマー膜にコーティングされているものであって、異なる放出特徴を有するポリマー(pH依存性又は非pH依存性ポリマー、異なる水溶解度を有する化合物等)でコーティングされた粒子が単カプセルにおいて共に送達される実施態様を含む顆粒系;(d)(i)浸透物質及び薬物が半透膜にカプセル化されており、浸透勾配が水を装置内に引き込み、増加した圧力が薬物を膜の孔を介して装置から送りだす、浸透圧的に制御された装置(例えば、OROS(登録商標), Alza Corp., Mountain View, CA);(ii)薬物がポリマー内に分散及び/又はポリマーが薬物の粒子上にコートされており、ポリマーは水との接触で膨張し(ある実施態様では、膨張はpH依存性、pH非依存性、又は他の物理的又は化学的特徴に依存する)、装置からの薬物の拡散を可能にするハイドロゲル膨張系;(iii)薬物は水との接触で溶解する要素を有する膜にカプセル化されており(ある実施態様では、膨張はpH依存性、pH非依存性、又は他の物理的又は化学的特徴に依存する)、膜に孔を産生し、それを通して薬物が拡散する微小孔性膜系;及び(iv)薬物及び付加可溶性要素がワックス内に分散されており、水が可溶性要素を溶解する時、システムからの薬物の分散が可能になるものを含むワックスマトリックス系を含む溶媒活性化系;及び(e)(i)薬物がポリマーマトリックス中に分散されており、分解がランダム様にポリマー構造中くまなく発生し、薬物放出を可能にするバルク分解;及び(ii)薬物がポリマーマトリックス中に分散されており、ポリマーの表面が浸食すると薬物が送達される表面浸食を含むポリマー分解系。
E.治療の方法
本発明は、個体において自己免疫疾患(炎症性腸疾患(IBD)等)を治療又は防止する方法を提供し、個体に有効量のここに記載の抗CD83アゴニスト抗体を投与することを含んでなる。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー疾患(Wegener's disease)、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群及び糸球体腎炎から成る群から選択される。幾つかの実施態様では、個体は、病因において骨髄系細胞活性化(樹状細胞及びマクロファージ)を伴う自己免疫疾患を発生する危険性を有する。幾つかの実施態様では、個体はIBDを有する、又はIBDを発生する危険性にある。
IBDは、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、又は不確定大腸炎でありうる。幾つかの実施態様では、IBDを有する個体は、IBDの一又は複数の徴候、症状、又は他の指標を経験している又は経験した、又はIBDであると診断されたものである。IBDを有する個体は、ステロイド抵抗性及び/又はステロイド依存性IBD、ステロイド抵抗性及び/又はステロイド依存性UC又はステロイド抵抗性及び/又はステロイド依存性クローン病を有しうる。「ステロイド抵抗性」IBDは、IBDを伴う被験体にステロイドが投与されても、進行又は悪化するIBDである。「ステロイド依存性」IBDを伴う個体は、ステロイド使用に依存性であり、臨床症状の急性増悪無くステロイド投与を減らす又は中止することができない。
抗CD83抗体の投与は、臨床応答及び/又は疾患寛解となりうる。ここで使用される場合、「臨床応答」とは、疾患の症状の改善を意味する。「疾患寛解」とは、疾患の症状のエビデンスが実質的に無いことを示す。臨床応答又は疾患寛解は、特定のタイムフレーム内で達成され得、例えば、アンタゴニストでの治療の開始から、又はアンタゴニストの初回投与から約8週間で又は以内でありうる。また臨床応答は、期間の間持続され得、24週間以上、又は48週間以上などである。幾つかの実施態様では、IBDに伴う体重減少は、抗CD83アゴニスト抗体を用いた治療により低減及び/又は除かれうる。幾つかの実施態様では、ここに記載の抗CD83アゴニスト抗体を用いた治療は、IBDを有する個体における胃腸組織の粘膜損傷を防止、及び/又は上皮修復を支援する。
IBDに伴う症状は、腹痛、嘔吐、下痢、血便(便中の鮮紅色の血液)、及び体重減少を含む。更なる試験がIBDの診断に実行されうる。例えば、全血球計算、電解質パネル、肝機能検査(LFT)、便潜血検査、X線(バリウム注腸及び上部消化管撮影を含む)、S状結腸鏡検査、大腸内視鏡検査、及び上部消化管内視鏡検査が使用されうる。当技術分野で知られる様々なスコアシステムが、疾患の重症度を定量的に評価するために使用されうる。
疾患の防止又は治療に対し、活性剤(すなわち抗CD83アゴニスト抗体)の適切な用量は、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度及び経過、薬剤が予防又は治療目的のために投与されるかどうか、患者の臨床歴及び薬剤に対する反応、及び主治医の裁量に依存するだろう。特定の投与計画、すなわち用量、時間、及び反復は、特定の個体及び医師によって評価される個々の病歴に依存するだろう。典型的には、臨床医は、所望の結果に達する用量まで抗CD83アゴニスト抗体を投与するだろう。
本発明の方法は、個体における自己免疫疾患(IBD等)の症状の治療、寛解又は緩和、又は自己免疫疾患に苦しむ個体の予後の改善に有用である。抗CD83アゴニスト抗体を用いた治療後、疾患を患っている個体の生活の質が改善され得、また症状が軽減又は除去され得る。また本発明の方法は、疾患を展開させる危険性にある個体における自己免疫疾患(IBD等)の展開の遅延又は防止に有用である。ここに記載の何れかの抗CD83アゴニスト抗体が個体に投与されうる。
F.併用療法
本発明の方法は、併用又は付加治療工程として、又は治療用製剤の付加要素として、自己免疫疾患(IBD等)に対する既知の治療方法と組み合わせてもよい。あるいは、異なる抗CD83アゴニスト抗体が組み合わせて投与されうる。選択される併用療法のタイプは、疾患の臨床症状に依存するだろう。
例えば、IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病、又は不確定大腸炎等)は、抗CD83アゴニスト抗体をIBDに対する第二医薬と併用して投与することを含んでなる併用療法によって治療されることが可能である。このような第二医薬のタイプは様々な要因に依存し、IBDのタイプ、IBDの重症度、被験体の状態及び年齢、用いられる第一医薬の用量等を含む。幾つかの実施態様では、第二医薬は、一又は複数のアミノサリチル酸、コルチコステロイド、及び免疫抑制剤を含む。幾つかの実施態様では、アミノサリチル酸は、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミン、バルサラジド、及びアサコールの内の一つである。幾つかの実施態様では、複数のアミノサリチル酸が共投与され、例えばスルファサラジン及びオルサラジンの組合せである。幾つかの実施態様では、コルチコステロイドは、ブデソニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、6-メルカプトプリン(6-MP)、アザチオプリン、メトトレキサート、又はシクロスポリンである。幾つかの実施態様では、第二医薬は、シプロフロキサシン及び/又はメトロニダゾール等の抗生物質;又はインフリキシマブ(Remicade(登録商標))等の抗体ベース薬剤である。
全てのこれらの第二医薬は互いに組み合わせて又はそれ自体で、第一医薬と共に使用され得、「第二医薬」なる表現は、ここで使用される場合、それぞれ、第一医薬の他の唯一の医薬であることを意味しない。従って、第二医薬は、一つの医薬である必要はなく、一以上のこのような薬剤から成る、又はを含みうる。
ここに説明した第二医薬は一般に、上記で使用したのと同じ薬用量及び投与経路で、又は上記で使用した薬用量の約1から99%で使用される。このような第二医薬が使用される場合は、特に第一医薬による初回投与の後の連続的投与においては治療による副作用を除く又は低減するために、好ましくは第一医薬が存在しない場合より少ない量で使用される。
ここでの併用投与は、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両(又は全)活性薬剤がそれらの生物学的活性を同時に呈する時間がある連続投与(任意の順)を含む。
G.薬剤用量
本発明の医薬品組成物の用量及び所望の薬物濃度は、想定する特定の使用によって変化する。適当な用量の測定または投与のルートは、当分野の技術の範囲内でよい。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定のための確実な手引きとなる。有効量の異種間スケーリングは、Mordenti, J. 及び Chappell, W. 「The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics」, In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi 等, 編集, Pergamon Press, New York 1989, pp.42-46.に記載の原理に従って行うことができる。
ここに記載のポリペプチド又は抗体のインビボ投与では、通常の用量は、1日あたり、個体の体重の約10ng/kgから約100mg/kgまで変化し得、又はそれ以上であってもよく、好ましくは約1mg/kg/日から10mg/kg/日であり、投与の経路による。数日間又はそれ以上にわたる反復投与は、治療される疾患又は障害の重症度に異存して、治療は症状の所望の抑制が得られるまで持続される。
例示的な投与計画は、約2mg/kgの抗CD83アゴニスト抗体の初回投与量、その後隔週で約1mg/kgの週間維持投与量を投与することを含む。他の投与計画が有用であり得、医師が希望する薬物動態減衰のパターンに依存する。例えば、個体に週に1から21回投与することをここで検討する。ある実施態様では、約3μg/kgから約2mg/kg(約3μg/kg、約10μg/kg、約30μg/kg、約100μg/kg、約300μg/kg、約1mg/kg、及び約2/mg/kg等)の範囲の投与が使用されうる。ある実施態様では、投与頻度は、日に3回、日に2回、日に1回、隔日、週に1回、2週に1回、4週に1回、5週に1回、6週に1回、7週に1回、8週に1回、9週に1回、10週に1回、又は付きに1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、又はそれより長い間隔である。治療の経過は、一般的な技術及びアッセイによって容易にモニタされる。投与計画は、投与される抗CD83アゴニスト抗体を含め、使用される用量とは独立して経時に様々であってよい。
特定の抗CD83アゴニスト抗体の用量は、一又は複数の抗CD83アゴニスト抗体の投与が与えられた個体において経験的に決定されうる。個体は、漸増用量の抗CD83アゴニスト抗体が与えられる。抗CD83アゴニスト抗体の効果を評価するために、自己免疫疾患(IBD等)の臨床的症状がモニタされうる。
本発明の方法による抗CD83アゴニスト抗体の投与は、持続的又は間欠的であり得、例えばレシピエントの生理的状態、投与の目的が治療的であるか又は予防的であるか、及び技術を持つ実践者に知られている他の要因に依存する。抗CD83アゴニスト抗体の投与は、予め選択された期間にわたり基本的に連続的であってもよく、又は例えば自己免疫疾患(潰瘍性大腸炎、及びクローン病等)の発生の間又は後に、一連の間隔投与であってもよい。
特定の用量及び運搬の方法に関する手引きは、文献に示される;例として、米国特許第4,657,760号;5,206,344;又は5,225,212を参照。異なる製剤が異なる処置及び異なる疾患のために効果的であること、及び特定の器官または組織を治療することを目的とする投与は他の器官または組織への投与と異なる方法で運搬する必要があることは本発明の範囲内である。さらに、用量は、一つ以上の別々の投与によって、又は持続性点滴によって投与することができる。数日以上にわたる繰り返し投与の処置は、症状に応じて、疾患症状が希望通りに抑制されるまで継続する。しかしながら、他の投与計画は有効でありうる。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
H.製剤の投与
限定はしないが、再構成される製剤を含む本発明の製剤(例えば、抗CD83アゴニスト抗体の製剤)は、抗CD83アゴニスト抗体による治療を必要としている個体、好ましくはヒト、に対して、ボーラス又はある期間にわたる連続的注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、腱鞘内、口内、局部的又は吸入経路による既知の方法に従い投与される。
好ましい実施態様では、製剤は皮下(すなわち、皮膚の下)投与によって個体に投与される。かかる目的のため、製剤はシリンジを用いて注射される。しかし、製剤の投与のための他の装置、例えば、注射装置(例えば、Inject-easeTM及びGenjectTM装置);インジェクターペン(GenPenTMなど);自動インジェクター装置、針なし装置(例えば、MediJectorTM及びBioJectorTM);及び皮下パッチ送達システムなどが利用可能である。
抗CD83アゴニスト抗体の適当な投与量(「有効量」)は、例えば、治療される状態、状態の重篤性及び経過、抗CD83アゴニスト抗体が予防的又は治療的目的で投与されかどうか、治療歴、抗CD83アゴニスト抗体に対する患者の臨床歴及び反応性、使用される抗CD83アゴニスト抗体のタイプ、及び主治医の判断に依存するであろう。抗CD83アゴニスト抗体は、一時期に又は一連の治療にわたり適切に投与され、その後の診断による任意の時期に患者に投与される。抗CD83アゴニスト抗体は、単一の治療として、又は自己免疫疾患(例えばIBD)の治療において有用な他の薬剤又は療法と併せて投与してもよい。
抗CD83アゴニスト抗体の場合、例えば、一回又は複数回に分けての投与のいずれであっても、個体への投与に関する初回の推奨される投与量は、約0.1mg/kg−約20mg/kgである。しかし、他の投与計画が有効な場合もある。本治療の進捗は、従来の技術によって容易にモニターすることができる。
抗CD83アゴニスト抗体製剤の使用には、自己免疫疾患(IBD等)の治療又は予防が含まれる。治療される疾患の重症度に依存して、有効量(例えば、約1mg/kgから約15mg/kg)の抗CD83アゴニスト抗体が個体に投与される。
I.製造品及びキット
別の態様では、製造品又はキットが提供され、抗CD83アゴニスト抗体製剤を含み、好ましくは本発明の使用におけるそれの使用に対する指示を提供する。従って、ある実施態様では、製造品又はキットは、個体においてIBD(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)等の自己免疫疾患を治療又は防ぐための方法における、抗CD83アゴニスト抗体の使用に対する指示を含み、個体に有効量の抗CD83アゴニスト抗体を投与することを含んでなる。ある実施態様では、個体はヒトである。
製造品又はキットは容器を更に含んでいてもよい。適切な容器は、例えばボトル、バイアル(例えば二重チャンババイアル))、シリンジ(単又は二重チャンバシリンジ)及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチック等様々な材料から形成されうる。容器は製剤を保持する。製造品又はキットはラベル又はパッケージ挿入物を更に含んでもよく、容器上にあるか又は付随し、製剤の再構成及び/又は使用のための指示を示しうる。ラベル又はパッケージ挿入物は、個体における自己免疫疾患(IDB等)の治療又は防止に対し、皮下又は他の方法の投与に対して、製剤が有用又は対照とすることを更に示しうる。製剤を収容する容器は、使い捨てバイアル又は、再構成製剤の反復投与(例えば2−6投与)を可能にする複数使用バイアルであってもよ。製造品又はキットは、適切な希釈剤(例えばBWFI)を含んでなる第二容器を更に有してもよい。希釈剤及び凍結乾燥製剤の混合の際、再構成製剤における最終タンパク質、ポリペプチド、又は小分子濃度は、一般に、少なくとも50mg/mlであろう。製造品又はキットは、商業的、治療的、及び使用者観点から望ましい他の材料を更に含み得、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用に対する説明を有するパッケージ挿入物を含む。
ここでの製造品又はキットは、場合によっては、第二医薬を含んでなる容器を更に有し、ここで抗CD83アゴニスト抗体は第一医薬であり、そして、この製造品は、有効量における第二医薬を用いて被験体を治療するための、パッケージ挿入物の指示を更に含む。第二医薬は、上に記載のものの何れかであり得、抗CD83抗体がIBD治療のために使用される場合、例示的な第二医薬は、アミノサリチル酸、経口ステロイド剤、6-メルカプトプリン(6-MP)、及びアザチオプリンである。
別の実施態様では、ここで提供されるものは、自動注入器における投与に対するここに記載の製剤を含んでなる製造品又はキットである。自動注入器は、作動の際に、患者又は投与者の更なる必要な行動無しでその内容物を送達するだろう。それらは、送達速度が一定でなければならなく、また送達時間が数分より長い場合に、治療製剤のセルフメディケーションに特に適している。
本発明は、以下の実施例の参照により、より十分に理解されるだろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を制限するとして解釈されるべきではない。開示にわたる全ての引用を、出典明記により本明細書に援用する。
実施例
CD83は、成熟樹状細胞(DC)の表面に主に見られる、Igスーパーファミリーの良く保存されたタイプ1膜タンパク質である。可溶性CD83は免疫抑制活性を有するが、DC上でのCD83の機能及びその推定リガンドは未知のままである。我々は、DCに抗炎症性作用を誘発するCD83ホモタイプ相互作用を同定した。DC成熟間の可溶性CD83又は抗CD83抗体での処理は、表面活性化マーカーの発現及びIL-12p40等の炎症促進性サイトカインの分泌の低下となった。表面CD83発現のノックダウン、又は細胞質領域のトランケーションは、CD83治療への反応を抑止し、CD83ホモタイプ相互作用が炎症の阻害を媒介することを示した。MAPK及びmTORシグナル伝達はこの抑止の下流で機能し、CD83処置は、表面活性化マーカー発現及びIL-12p40産生に必要であるmTOR及びp38αのリン酸化を阻害する。CD83免疫抑制は、寛容及び免疫間のバランスの維持の中心であり、粘膜表面でCD83を過剰発現するマウスは大腸炎により抵抗性であり、体重維持及び低下血清サイトカインレベルにつながる。このように、CD83ホモタイプ相互作用は、DC免疫反応を調整し、不適切な炎症を防ぎ寛容を促進する。
実施例1.CD83は細胞表面でのホモタイプ結合に関与する
細胞表面上に発現されるCD83に可溶性CD83が結合するか決定するために、アミノ酸配列
TPEVKVACSEDVDLPCTAPWDPQVPYTVSWVKLLEGGEERMETPQEDHLRGQHYHQKGQNGSFDAPNERPYSLKIRNTTSCNSGTYRCTLQDPDGQRNLSGKVILRVTGCPAQRKEETFKKYGRAQVTDKAAHYTLCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:3)
を含んでなるCD83.fcを生成し、CHO細胞(CHO-hCD83)上に安定的に発現されるヒトCD83、又はMUTZ-3由来成熟樹状細胞(mDC)上で発現される内因性CD83の何れかに結合するその能力を評価した。安定CHO-hCD83細胞株の産生のための発現ベクターを生成するために、N末端HISタグヒトCD83(hCD83)をコードするDNA断片を、位置XbaI及びXhoIで、ネオマイシン耐性プラスミド、pRKneo(Crowley等, Proc Natl Acad Sci USA., 90(11):5021-5025, 1993)にクローニングしてhCD83.pRKneoを生成した。CHO細胞をFugene(Roche)を使用してhCD83.pRKneoで形質移入し、上位10%のCD83陽性細胞をFACSで選別し、次いでG418(400ug/ml;GIBCO)を用いて選択し、安定CHO-hCD83細胞株を生成した。MUTZ-3細胞から未熟DC(iDC)を得るため、細胞を、150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4を含有するMEMa+glutamax/20%加熱不活性化FBSにおいて培養した。DCを、25ng/mlのrhIL-1b、100ng/mlのrhIL-6、50ng/mlのrhTNFa及び1mg/mlのPGE-2を含有するサイトカインカクテルを用いて、CD83の表面発現に対して成熟させた。
CHO-hCD83細胞及びMUTZ-3由来mDC上のCD83発現を、CD83に対する蛍光色素コンジュゲート抗体を用いて細胞を染色し、FACSDivaソフトウェア(Becton Dickinson)を使用してLSR IIフローサイトメトリーでフローサイトメトリーによって細胞を分析することによって確認した。非特異的染色のレベルを決定するために、標識されたアイソタイプ適合抗体を使用した。FlowJo v.8.4.5を使用した、データ解析及び全結合を示すヒストグラムの構築は、CD83が、安定的に形質移入されたCHO-hCD83細胞(黒線)の表面で発現され、コントロールCHO細胞(破線)では発現されないことを示した(図1A)。CD83は、MUTZ-3由来mDC(黒線)で発現されたが、iDC(灰色線)では非常に低いレベルであった(図1B)。中実ヒストグラムはアイソタイプコントロールを表す。細胞表面CD83発現の確認の後、CHO細胞及びCHO-hCD83細胞を4%のPFAにおいて5分間固定し、次いで冷却1XPBSで洗浄した。細胞をPBS/2%BSA/2mM EDTAを含有するFACSバッファーに再懸濁し、1μgのPE-標識CD83.Fc又は標識IgG.Fcコントロールタンパク質で、氷上で暗所において30分間インキュベートした。細胞をFACSバッファーで洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。iDC及びmDCについては、固定化及びフローサイトメトリーの前に、細胞を10μg/mlのPE-標識CD83.Fc又は標識IgG.Fcコントロールタンパク質で標識した。データ解析は、CD83.fcはCHO-hCD83(黒線)に結合するが、コントロールCHO細胞(破線)には結合しないことを示した(図1C)。更に、CD83.fcは成熟DC(黒線)に結合したが、未熟DC(灰色線)には結合しなかった(図1D)。これらの結果は、可溶性CD83.fcが、細胞表面にCD83を発現する細胞に特異的に結合することを示す。
CD83.fc結合に細胞表面CD83が必要か確認するために、CHO-hCD83細胞を1mg/mlの抗CD83抗体(HB15e; Santa Cruz Biotechnology)でインキュベートし、これがCD83.fc結合を阻止するか決定した。データ解析は、CD83.fcはCHO-hCD83細胞(黒線)に結合するが、結合は、アイソタイプコントロール(灰色線)ではなくHB15e(破線)によってブロックされることを示した(図2A)。CD83.fc結合のためのCD83発現の必要性を、CD83を発現していないMUTZ-3由来DCにおいて更に検定した。MUTZ-3 iDCを、150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4を含有するMEMa+glutamax/20%加熱不活性化FBSにおける培養の4日後、CD83を標的にするAccell siRNA(Cat. No. E-012680; Dharmacon)又は非標的化コントロール(Cat. No. D-001910; Dharmacon)で形質移入した。MUTZ-3 iDCを、10uMのsiRNAを含有し、3%加熱不活性化FBS、150ng/mlのGM-CSF及び50ng/mlのIL-4で補充されたAccell delivery media(Cat. No. B-005000; Dharmacon)において、5%CO2で37°Cで72時間インキュベートした。7日目、上述したようにmDCを産生するために成熟刺激でDCを処理した。siRNA媒介によるCD83 RNA及びタンパク質発現ノックダウンの効果を、それぞれtaqman qPCR並びにウエスタンブロット(全細胞溶解物)によって評価した。18Sに正規化した、非標的化コントロール(siNTC)siRNA又はCD83特異的siRNA(siCD83)で処理したMUTZ-3 mDCからの全RNAの分析は、CD83 siRNAで形質移入されたDCが、CD83 RNAレベルの有意なダウンレギュレーションを呈することを実証した(図2B)。MUTZ-3 mDCにおけるCD83のノックダウンを、CD83に対する蛍光色素コンジュゲート抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリーによって細胞を解析することによって確認した。データ解析及び全結合を示すヒストグラムの構築は、CD83は、siNTCで処理されたmDCの表面に発現されるが(黒線)、siCD83で処理されたiDC(灰色線)又は成熟DC(破線)では発現されないことを示した(図2C)。中実ヒストグラムはアイソタイプコントロールを示す。CD83発現のノックダウンの確認の後、iDC、siNTC mDC、及びsiCD83 mDCを、上述のようにPE-標識CD83.Fc又は標識IgG.Fcコントロールタンパク質でインキュベートし、フローサイトメトリーに課した。データ解析は、CD83.fcはsiNTC mDCに結合するが、iDC又はsiCD83 mDCに結合しないことを実証し、成熟DCに対するCD83.fc結合がCD83発現を必要とすることを示した(図2D)。CD83のノックダウンはまた、MHCIIの低下した発現をもたらしたが、CD86等の他の活性マーカーには何の変化もなかった(図2E及びF)。
CD83がホモタイプ結合を通した細胞対細胞接着を媒介するか決定するために、hCD83を発現するCHO細胞において細胞凝集を検定した。CHO細胞及びCHO-hCD83細胞を2mMのEDTAでフラスコから脱離させ、洗浄し、2%FBS/10mMEDTAを含有するがCa2+又はMg2+を欠くHBSSに再懸濁させた。その後、細胞を106/mlで再懸濁させ、70mmフィルターを通過させて、低接着10cm培養皿にプレーティングするための単個細胞浮遊液を得た。軌道プラットフォームシェーカーにおける37℃で90分間のインキュベーションの後、細胞を4%のPFAで固定して細胞凝集を評価した。細胞の顕微鏡イメージングは、CD83発現を欠くコントロールCHO細胞は凝集せず、hCD83を発現するCHO-hCD83細胞は懸濁培養中でクラスターを形成したことを示した(図3A及びB)。1mgのCD83.fcタンパク質でのCHO-hCD83細胞の前処理は凝集を阻止したが、Igコントロールでの処理は阻止しなかった(図3C及びD)。これらの結果は、CD83の表面発現が細胞対細胞接着に十分であり、この相互作用はホモタイプ結合に対する競合のため可溶性CD83の添加により阻止できることを示す。
実施例2.DCの可溶性CD83処理は、DC成熟及び炎症促進性サイトカイン放出の阻害により抗炎症性表現型となる。
可溶性CD83処理によりDCに誘導される免疫反応を特徴付けるために、mDC表面活性化マーカーへのCD83処理の効果を評価した。MUTZ-3細胞からiDCを得るために、細胞を150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4を含有するMEMa+glutamax/20%加熱不活性化FBSにおいて6日間培養した。iDCを、25ng/mlのrhIL-1b、100ng/mlのrhIL-6、50ng/mlのrhTNFa及び1mg/mlのPGE-2を含有する成熟刺激サイトカインカクテルで処理した。10mg/mlのCD83.fc、1mg/mlのHB15e、又はコントロールIgG.fcでのmDCの処理を成熟刺激と同時に行った。MUTZ-3由来mDCにおける細胞表面活性化マーカー、CD83及びHLA-DR(MHCII)の発現を、CD83又はMHCIIに対する蛍光色素コンジュゲート抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリーによって細胞を分析することによって検査した。非特異的染色のレベルを決定するために、標識アイソタイプ適合抗体を使用した。データ解析及び全結合を示すヒストグラム構築は、CD83及びMHCIIはMUTZ-3由来mDCで発現されたが(黒線)、iDC(中実線ヒストグラム)では低レベルであることを示した(図4)。中実非線ヒストグラムはアイソタイプコントロールを表す。CD83及びMHCII双方の発現は、CD83.fc(灰色線)又はHB15e(破線)処置で低減され、CD83処理がmDCにおける表面活性化マーカーの発現を低減することを示す。
DCはサイトカインの生成を介し免疫反応を調節することが知られているため、可溶性CD83処理のDCへの効果を、処理されたヒト単球由来DC(MDDC)からのサイトカイン分泌の検出によって評価した。MDDCを複数ドナーの全血から単離し、成熟させるためにCD83.Fc又はHBI5eの有無においてサイトカインを用いて刺激した。単離及び処理のために、ヒト全血をPBSで希釈し、Ficoll Paque(GE healthcare)上に重層し30分間1500rpmで回転させた。白血球層を取り除き、PBSで洗浄した。単球をHuman monocyte isolation kit 11(Miltenyi)を用いて単離し、125ng/mlのrhIL-4及び50ng/mlのrhGM-CSF(R&D systems)を含有するRPM/10%FBS/1Xpen/strepにおいて6日間培養した。未熟DCを得るために、培地を一日おきに変えた。10μg/mlCD83.Fc又は1μg/ml抗CD83抗体(HBI5e;Santa Cruz)を用いた全処理は成熟刺激と同時に行った。細胞培養上澄部をDCの成熟後48時間で集め、分泌されたサイトカインを、標準の製造者の指示に従って、MCP-1、IL12-p40及びIL-8(Invitrogen)、並びにIL-1ra(Cell Sciences)についてキットを使用してELISAによって解析した。DCによって分泌されたサイトカインの解析は、成熟刺激を共に用いたCD83.Fcでの処理が、DCサイトカインの分泌を変化させ、IL-1受容体に結合し下流の炎症性シグナル伝達をブロックするインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)を増加し(図5B)、炎症促進性サイトカイン単球走化性タンパク質-1(MCP-1)及びインターロイキン-12(lL-12p40)のサブユニットβの産生を低下させた(図5A及びC)。CD83.Fc又はHBI5eを用いた処理は、炎症性サイトカインIL-8の産生に何の効果も持たなかった(図5D)。
可溶性CD83処理によりDCに誘発された免疫反応を更に特徴付けるために、mDCによる炎症促進性サイトカイン分泌へのCD83処置の効果を評価した。MUTZ-3細胞から未熟DCを得るために、細胞を150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4を含有するMEMa+glutamax/20%加熱不活性化FBSにおいて6日間培養した。DCを、25ng/mlのrhIL-1β、100ng/mlのrhIL-6、50ng/mlのrhTNFa及び1mg/mlのPGE-2を含有するサイトカインカクテルを用い、CD83の表面発現について成熟させた。10mg/mlのCD83.fc、1mg/mlのHB15e、又はコントロールIgG.fcでのmDCの処理を成熟刺激と同時に行った。細胞培養上澄部をDCの成熟後48時間で集め、分泌されたサイトカインを、標準の製造者の指示に従って、MCP-1、IL12-p40及びIL-8キット(Invitrogen)、並びにIL-1ra(Cell Sciences)を使用してELISAによって解析した。DCによって分泌されたサイトカインの解析は、炎症促進性サイトカインMCP-1(図6A)及びIL-12p40(図6C)が、CD83.Fc又はHBI5e処理によりmDCにおいて低下されたことを示した。対照的に、抗炎症性サイトカインIL-1raは、CD83処理mDCにおいて有意に増加された(図6B)。放出IL-8のレベルは、CD83処理又はコントロール処理mDC間に差異を示さなかった(図6D)。各ウェルからの上澄部を3重で実施し、*は値が有意に異なることを示す、*p<0.0l、**p<0.001。各ドットは個々のウェルの平均を表す。グラフは少なくとも3回の独立実験の代表である。
CD83.fc又はHB15eで処理されたDCの抗炎症性表現型、発現を更に特徴付けるため、処理後、マイクロアレイ分析をDCから単離されたRNAについて実施した。マイクロアレイの統計的解析をR project(http://r-project.org)及びBioconductor project (http://bioconductor.org)からのソフトウェアを使用して行った。バックグラウンド減算マイクロアレイデータを、アレイ内でLOESS正規化、アレイ間で分位数正規化した。次いで、正規化データをlog2変換し、プローブをBioconductorの「genefilter」パッケージを使用してフィルター処理した(例えば、Entrez遺伝子にマッピングされるプローブのみ保持される)。50%最小可変プローブを除去する非特異的フィルターを次に使用した(Bourgon等, Proc Natl Acad Sci USA., 107(21):9546-51, 2010)。異なって発現される遺伝子を同定するために、limmaパッケージを使用して(Smyth., Stat Appl Genet Mol Biol., 3:Article 3, 2004)、減衰t検定を算出した。線形モデルを、未熟及び成熟DC間、並びにCD83連結サンプル(CD83fc-及びHB15e-処理成熟DC)及びコントロールサンプル(IgG-及び非処理成熟DC)間の異なる発現に対して試験した。false discovery rate(FDR)をBenjamini-Hochberg法を使用して算出した。0.01未満のFDRを有する場合、遺伝子は異なって発現されると考えた。5つの異なるドナーからの全遺伝子発現解析は、CD83.fc又はHB15e処理が抗炎症性表現型となることを示した。全体的にみて、CD83.fc又はHB15e処理におけるDCサイトカイン放出及び遺伝子発現の測定は、可溶性CD83処理が炎症促進性サイトカインの分泌を阻害し、また抗炎症性応答を誘導することを実証する。
実施例3.可溶性CD83処理は、創傷治癒に関与する遺伝子のアップレギュレーションとなる。
CD83.fc又はHB15eで処理されたDCに誘導される遺伝子発現における変更を更に特徴づけるため、処理後、DCから単離されたRNAにマイクロアレイ分析を実施した。マイクロアレイに関する統計解析をR project(http://r-project.org)及びBioconductor project(http://bioconductor.org)からのソフトウェアを使用して行った。バックグラウンド減算マイクロアレイデータを、アレイ内でLOESS正規化、アレイ間で分位数正規化した。次いで、正規化データをlog2変換し、プローブをBioconductorの「genefilter」パッケージを使用してフィルター処理した(例えば、Entrez遺伝子にマッピングされるプローブのみ保持される)。次に、50%最小可変プローブを除去する非特異的フィルターを使用した(Bourgon等, Proc Natl Acad Sci USA., 107(21):9546-51, 2010)。異なって発現される遺伝子を同定するために、limmaパッケージを使用して(Smyth., Stat Appl Genet Mol Biol., 3:Article 3, 2004)、減衰t検定を算出した。線形モデルを、未熟及び成熟DC間、並びにCD83連結サンプル(CD83fc-及びHB15e-処理成熟DC)及びコントロールサンプル(IgG-及び非処理成熟DC)間の異なる発現に対して試験した。false discovery rate(FDR)をBenjamini-Hochberg法を使用して算出した。0.01未満のFDRを有する場合、遺伝子は異なって発現されると考えた。5つの異なるドナーからのDCの分析は、CD83.fc及びHB15e処理細胞が分離し、未処理mDC並びにiDCから独立してクラスタとなることを示し、処理が創傷治癒に関与する遺伝子のアップレギュレーションとなることを示した。マイクロアレイデータを、CD83.fc又はHB15eで処理したmDCからの単離された全RNAのtaqman qPCR分析によって確認した(図7)。gapdhに対する正規化後、遺伝子発現解析は、創傷治癒に関与する遺伝子vcan、spock2、及びfbn2がアップレギュレートされたことを示した。示した平均相対発現は2^DCT+標準誤差(SEM)である。これらのインビトロ結果は、可溶性CD83処理が、炎症性疾患により引き起こされる組織損傷の治癒のための、正常な細胞増殖及び遊走を促進しうることを示す。
実施例4.CD83ホモタイプ相互作用は抗炎症性反応を媒介する。
抗炎症性反応を調節するCD83相互作用を更に特徴付けるために、DCを、hCD83を過剰発現するCHO細胞と共培養した時に、抗炎症性反応についてモニタした。MUTZ-3細胞からiDCを得るために、細胞を150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4を含有するMEMa+glutamax/20%加熱不活性化FBSにおいて6日間培養した。生成されたiDCを、コントロールCHO細胞株又はヒトCD83を安定に発現するCHO細胞と共培養した。その後、混合細胞の培養物を未処理か、もしくは25ng/mlのrhIL-1b、100ng/mlのrhIL-6、50ng/mlのrhTNFa及び1mg/mlのPGE-2を含有するサイトカインカクテルで処理してmDCを生成した。細胞培養上澄み液をDCの成熟48時間後収集し、分泌されたサイトカインIL12-p40及びMCP-1を標準の製造者指示に従ってELISA(Invitrogen)によって分析した。分泌されたIL12-p40及びMCP-1レベルの分析は、炎症促進性サイトカインの放出が、CD83発現を欠くCHO細胞と比較して、hCD83を発現するCHO細胞と共培養されたmDCにおいて有意に低減されることを示した(図8A及びB)。このデータは、CD83がトランスホモタイプ相互作用に関与して抗炎症性反応を媒介することが可能であることを実証する。このデータは、CD83が、抗炎症性反応を媒介するためにトランスホモタイプ相互作用に関与することが可能なことを示す。これらの結果は、複数ドナーの全血から単離されたヒト単球由来DC(MDDC)を使用して確認した。刺激後、CHO-hCD83細胞と共に培養したDCは、CD83発現を欠くCHO細胞と共に培養したものより有意に少ないIL12-p40を産生した。
未熟BMDCの、野生型又はCD83欠乏動物からの成熟BMDCとの共培養物を、IL12-p40産生について調査し評価した。CD83ノックアウトマウス(CD83−/−)を、Fujimoto, Y. et al., Cell 108,755-767,2002(出典明記により本明細所中に引用する)において使用されるものと類似の相同組換えストラテジーを使用して作成し、これは免疫グロブリンドメインの半分及びCD83の膜貫通及び細胞質内ドメインを欠如した。CD4 T細胞を欠乏するが他は豊富であるCD83−/−マウスを期待メンデル比で作成し、それらの野生型同腹子と共に繁殖させた。LPSでの刺激により、CD83−/−マウスから生成されたBMDCは、表面成熟マーカーCD86をアップレギュレートし、野生型同腹子から産生されるのと類似なレベルでサイトカインを産生することができた(図8C)。MHCIIのアップレギュレーションもまたLPSによる刺激の際に見られたが、しかしながらCD83−/−マウスからのBMDCは、野生型マウスから生成されるものより少ないMHCIIを発現した。次に、新鮮な未熟BMDCを、LPS刺激と共に、野生型又はCD83−/−動物からの成熟細胞と共培養した。24時間後、培養上澄部を集め、ELISAによって、IL12-p40産生について評価した。高レベルのCD83を発現する成熟DCと共培養した未熟DCは、CD83欠損成熟DCと培養したものより、有意に少ないIL12-p40を産生した(図8D)。
細胞表面CD83との相互作用を必要とするCD83処理により媒介される抗炎症性反応を検証するために、CD83を発現していないDCにおいて処理を検定した。MUTZ-3 iDCを、150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4を含有するMEMa+glutamax/20%加熱不活性化FBSにおける培養の4日後、CD83を標的にするAccell siRNA(Cat. No. E-012680; Dharmacon)又は非標的化コントロール(Cat. No. D-001910; Dharmacon)で形質移入した。MUTZ-3 iDCを、10uMのsiRNAを含有し、3%加熱不活性化FBS、150ng/mlのGM-CSF及び50ng/mlのIL-4で補充されたAccell delivery media(Cat. No. B-005000; Dharmacon)において、5%CO2で37°Cで72時間インキュベートした。7日目、iDCを、25ng/mlのrhIL-1b、100ng/mlのrhIL-6、50ng/mlのrhTNFa及び1mg/mlのPGE-2を含有するサイトカインカクテルで処理してmDCを生成した。10mg/mlのCD83.fc、1mg/mlのHB15e、又はコントロールIgG.fcでのmDCの処理を成熟刺激と同時に行った。細胞培養上澄部をDCの成熟後48時間で集め、分泌されたサイトカインを、標準の製造者の指示に従って、MCP-1キット(Invitrogen)を使用してELISAによって解析した。DCによって放出されたMCP-1の解析は、CD83のsiRNAノックダウン(siCD83)がCD83.fc及びHB15e抗体への反応を抑止したことを示した(図9)。従って、このデータは、CD83処理による抗炎症性反応を媒介するために細胞表面にCD83が必要であることを示す。これらの結果は分泌されたIL-12p40の検出によって確認された。mDCによって放出されたIL-12p40の解析は、CD83のsiRNAノックダウン(siCD83)がCD83.fc及びHB15e抗体への反応を抑止したことを示した。
CD83処理中の抗炎症性反応がホモタイプ結合、及び細胞表面CD83を介した下流シグナル伝達を必要とするか決定するために、細胞質内切断型CD83コンストラクトを発現するDCにおいて処理を評価した。CD83レンチウイルス発現コンストラクトはpGCMV.IRES.eGFP(pGIPZ誘導体; Openbiosystems)から得られ、完全長hCD83遺伝子(CD83FL)又は細胞質領域(Δ172−205)切断hCD83遺伝子のセグメントをPCR増幅し、これらの断片をXhoI/EcoRIクローニング部位に挿入することによって作成した(図9B)。DCの感染のためのレンチウィルスを生成するために、293T細胞をゼラチン化された10cmの培養皿に1X107で播種し、80−90%の培養密度に達するまで〜20時間増殖させた。培地を5mlのDMEM、10%FBS、2mMのL-グルタミンで補充し、37℃で6時間、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を使用して、1:2.3:0.2のモル比で5μg発現プラスミド、デルタ8.9及びVSVGを含有するDNAミックスで細胞を形質移入した。形質移入培地を6mlの通常の増殖培地で補充し、細胞を更に40時間37℃でインキュベートした。上澄部を回収し、0.45μmのtube top filter(Corning)を通して濾過することによって精製し、製造者の指示に従ってLenti-X-concentrator(Clonetech)を使用して濃縮した。MUTZ-3細胞を、MEMa+Glutamax/20%加熱不活性化FBS/15%HTB-9馴化培地を含有する維持培地における24ウェル培養プレートに0.5x106/mlで播種した。ポリブレン及び濃縮レンチウィルス上澄み部をそれぞれ4mg/mlの最終濃度及び10のMOIで細胞に加えた。細胞を、室温で30分間Allegra X-12R卓上遠心分離機において1800rpmでスピンさせ、次いで37℃で一晩インキュベートした。レンチウィルスを含有する培地を除去し、新鮮な維持培地と交換した。2−3日の培養後、上位10%のGFP陽性細胞を選別し、150ng/mlのrhGM-CSF及び50ng/mlのrhIL-4で補充されたMEMa+Glutamax/20%加熱不活性化FBSにおいて6日間培養し、iDCとして使用した。細胞を48時間、成熟刺激、並びにCD83.Fc、HB15e又はアイソタイプコントロールで処理した。その後、上澄み部を収集し、MCP-1放出をELISAによって解析した。分泌されたMCP-1の解析は、完全長CD83のレンチウィルス過剰発現は、CD83.fc又はHB15eへのmDC反応を阻害しなかったが、細胞質切断型CD83の発現はCD83処理の抗炎症性作用を阻止したことを示した(図9C)。これらの結果を分泌されたIL-12p40の検出によって確認した。分泌されたIL-12p40の解析は、完全長CD83のレンチウィルス過剰発現は、CD83.fc又はHB15eへのmDC反応を阻害しなかったが、細胞質切断型CD83の発現はCD83処理の抗炎症性作用を阻止したことを示した。
架橋結合のみがCD83細胞質ドメインを介した抗炎症性反応の作動に十分か決定するために、CD83膜貫通部に融合されたCD79aの細胞外領域及び完全長又は切断型細胞質ドメインを有する、CD83キメラレンチウィルス発現コンストラクトを生成した(図10A)。iDCを上記のように指示レンチウィルスコンストラクトで感染させ、その後、成熟刺激及び1μgのCD79a抗体(Santa Cruz)又はアイソタイプコントロールで48時間処理した。上澄み部を収集し、IL12-p40放出をELISAによって分析した。分泌IL12-p40の分析は、完全長CD83キメラのレンチウィルス過剰発現は、抗CD79a抗体に対するmDC反応を阻害しなかったが、細胞質内切断型CD83キメラの発現は抗CD79aでの処理の抗炎症性作用を阻止したことを示した(図10B)。全体として、これらの結果は、CD83ホモタイプ相互作用がCD83処理により抗炎症性作用を媒介するという新規な発見を示す。
実施例5.CD83ホモタイプ相互作用はMAPK及びmTORシグナル伝達経路の抑制を通して炎症を阻害する。
CD83ホモタイプ相互作用がDCに抗炎症性効果を誘発するという新規な発見により、CD83細胞質内ドメインによって調整される下流シグナル伝達経路を調査した。CD83細胞質内ドメインの最後の15アミノ酸の配列比較は、C末端クラスIII PDZリガンドモチーフがCD83において保存されていることを示す(図10A)。このモチーフがCD83処理中の抗炎症性反応を媒介するか決定するために、CD83レンチウイルス発現コンストラクトを生成し、これはクラスIII PDZリガンドモチーフを消失するために位置205でバリンからアラニンへの変異(V205A)を有する完全長CD83を有した(図11B)。iDCを上述のように指示レンチウィルスで感染させた。細胞を、48時間、成熟刺激、並びにCD83.Fc、HB15e又はアイソタイプコントロールで処理した。その後、上澄部を収集し、IL12-p40放出をELISAによって分析した。分泌IL12-p40の分析は、完全長CD83のレンチウィルス過剰発現はCD83.fc又はHB15eに対するmDC反応を阻害しなかったが、しかし、CD83 V205A変異体の発現がCD83処理の抗炎症性効果を阻止したことを実証した(図11C)。これらの結果は、CD83細胞質内ドメイン上のクラスIII PDZリガンドモチーフが、抗炎症性反応を媒介するタンパク質と相互作用することを示唆する。
CD83ホモタイプ相互作用の免疫抑制作用が更なるシグナル伝達経路によって媒介されるか決定するために、CD83.fc又はHB15eで5分間処理されたmDCからの細胞溶解物にホスホキナーゼアッセイをを実施した。ヒトホスホキナーゼアッセイ(R&D systems)を、製造者の指示に従って実施した。簡単には、MUTZ-3 DCを冷却PBSで洗浄し、Lysis Buffer6において可溶化させ、4℃で30分間揺動させた。溶解物を14,000Xgで5分間遠心分離し、Bradford(Bio-Rad)による全タンパク質の分析のために上澄部を新しい管に移した。二重にスポッティングされた46の抗体を有するアレイ膜を1時間室温でブロックし、次いで希釈細胞溶解物で一晩4℃でインキュベートした。膜を洗浄し、次いで検出抗体を用い2時間室温でインキュベートした。洗浄後、膜をStreptavidin-HRPにおいて30分間室温でインキュベートし、ECL Plus試薬(Amersham)での検出の前に再び洗浄した。膜をFUJI FILM Image Reader LAS-3000に露出し、平均強度をMulti Gauge v3.1(FUJI FILM)によって分析した。HB15e処理はmTOR、p=0.046(図12A)、p38、p=0.008(図12B)並びにCREB、p=0.0104(図12C)のリン酸化において有意な低下となった。対照的に、HB15e抗体処理は、成熟刺激の要素であるTNFaのTNF受容体結合によって活性化されるSTAT3のリン酸化を阻害しなかった(図12D)。CD83.Fc又はαCD83(HB15e)で処理したヒト単球由来DC(MDDC)からの全細胞溶解物のウェスタンブロット解析は、リン酸化p38MAPK(図12E)の低下を確証したが、STAT3リン酸化に有意な効果を示さなかった(図12F)。これらの新規な発見は、CD83ホモタイプ相互作用の抗炎症性作用がp38 MAPK並びにmTORタンパク質シグナル伝達によって媒介されたことを示す。
実施例6.CD83過剰発現は結腸固有層DCにおける表面活性化マーカーの発現の低下となる。
CD83ホモタイプ相互作用がインビトロにおいてDCに抗炎症性効果を誘発するという新規な発見は、それがインビボにおいて類似な効果を誘発し得ることを示唆する。インビボにおけるCD83媒介免疫抑制の効果を調査するために、粘膜表面にCD83を過剰発現する遺伝子導入マウスラインを作成した。FABP.CD83ターゲティングベクターを作成するために、SpeI/SacII部位を使用してFABP.sup.LacZベクターにクローニングするために、Picomax PCRシステムを使用して結腸組織からの完全長マウスCD83(mCD83)を増幅させた(図13A)。PCRに使用したプライマーは、CD83SPE順方向プライマー:5’-GATCAAACTAGTCCACCATGTCGCAAGGCCTCCAGCTCCT-3’及びCD83SACII-逆方向プライマー:5’-CATCATCCGCGGTCATACCGTITCTGTCTTAGGAAG-3’であった。マイクロインジェクション後、72匹のファウンダーマウスを、結腸における高発現及び腎臓における低発現についてスクリーニングした。1匹のマウスがこれらの基準を満たし、FVBマウスへの戻し交配によって遺伝子導入ラインを作成するために使用した(Jackson Labs)。マウスは特定病原体除去バリアー設備に収容した。全ての手順はGenentech Animal Care and Use Committeeによって承認された。
CD83についての結腸の免疫組織化学染色は、野生型動物におけるCD83の発現は腸管関連リンパ組織に限定されるが、CD83Tgは結腸上皮においてCD83を過剰発現することを示した(図13B)。CD83過剰発現がDCサブセット、T細胞集団及び表面マーカーに影響を有するか決定するために、結腸(colons)を収集し、冷却HBSS/2% FBS/10mM HEPESでフラッシュした。結腸に関連する脂質及び他の組織を除去し、結腸をHBSS/2%FBSで濯いだ。結腸をハサミで長軸方向に切断し、氷上の30−40ml HBSS/2%FBSを有する50-mlのコニカルビーカーに移した。次いで、結腸小片を、10−15mlの予め温められたHBSS/2%FBS/10mMのHEPES/1mMのEDTAと共に無菌バッフルフラスコ(Corning)に移した。フラスコを200rpmで45分間37°Cで振とうさせた。培地を注ぎ出し、結腸を新鮮なHBSS/2%FBS/10mMのHEPESにおいて洗浄し、残留上皮をブレードを使用してこすり落とした。10%FCS、20mMのHEPES、0.5mg/mlコラゲナーゼ/ディスパーゼ、ペニシリン、及びストレプトマイシンを含有するRPMIに結腸を1−2mm小片に切り、次いで200rpmでの振とうで、37℃で45−90分間インキュベートした。上澄部を4−5回ピペットでとり、100μmフィルターを通して濾過し、4°Cで10分間1800rpm回転を行った。細胞を5%FBS、20mMのHEPES、及び0.1mg/mlのDNAseを含有するRPMIで洗浄し、70μmフィルターを通して濾過した。次いで細胞をFACSバッファーで洗浄し、免疫細胞の分析並びにRNA単離及びqPCRのためのDCの選別のために抗体で染色した。
CD83Tgマウスの結腸固有層又は脾臓から単離したDCを、MHCII及びCD11c hi発現についてフローサイトメトリーによって選別した(図13A及びB)。DCサブセットの分析は、結腸(図14D)又は脾臓(図14E)から単離された形質細胞様(CD11b−/B220+)、骨髄(CD11b+)、又はリンパ系(CD11b−/B220−/CD8a+)DCの数又はパーセンテージにおいて有意な差がないことを示し、CD83過剰発現がCD83Tgマウス内のDCサブセットに何ら影響がなかったを示す。DC表面活性化マーカーCD83、CD86、及びMHCII(I-A/E)の分析は、それらが結腸から単離されたDCの表面上で有意に低下されたことを示したが、*p<0.05、**p<0.01(図13C)、脾臓からのものは有意な差を見せなかった(図13E)。各ドットは、3匹の動物からプールされた細胞を表す。更に、CD83Tgマウスの結腸固有層又は脾臓から単離され選別されたT細胞の分析は(図14C)、結腸(図13D)又は脾臓(図13F)何れから単離されても、T細胞活性化の指標であるCD44表面マーカーの発現に有意な差を示さなかった。興味深いことに、CD83Tg DCから単離された全RNAのtaqman qPCR分析は、結腸において創傷治癒遺伝子発現の増加を示したが、野生型マウスの結腸においては不検出であった(ND)(図13G)。データは3つの独立実験のものであり、各グループについてn=6。全体的に見て、これらのインビボでの結果は、DCのCD83.fc又はHB15e処理で観察されたインビトロでの結果によってサポートされる。
実施例7.CD83免疫抑制はDSS誘導大腸炎からマウスを保護する
炎症性腸疾患のマウスモデルにおけるCD83過剰発現の効果を評価するために、大腸炎を、前の実施例において産生し特徴づけたCD83Tgマウスラインにおいて、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いた処理によって誘発させた。8−10週の年齢のCD83Tgマウスが、7日間飲料水において6%DSSが自由に与えられ、7日目に、12日目の実験の中止まで通常の飲料水に切り替えられた。マウスは0日目、及び4日目以降毎日重さを量り、潜血、下痢及び何れか他の異常徴候についてチェックした。体重減少が0日目の初期体重の20%を超えた場合、マウスを安楽死させた。12日目に、マウスを麻酔の下、眼窩採血して150−200μlの血液を採取し、これは〜150μlの血清を産生した。血清サイトカインを、製造者の指示に従ってBio-Plex Pro Mouse 23-Plex アッセイ(Cat. No. M60-009RDPD; Bio-Rad)を使用して評価した。次いで、マウスを安楽死させ、小腸及び大腸を切片化し、組織学分析のためにH&Eで染色した。切片をランダム化し、二重盲検でスコア付けした。6%DSSで処置された野生型マウスは〜20%の体重を減少させたが、CD83Tgマウスは12日目まで〜89%の初期体重を維持した(図15A)。野生型マウスは、CD83Tgマウスと比較して、結腸構造の欠失を特徴とする重度な大腸炎及び炎症性浸潤の増加を有した(図15B)。野生型及びCD83Tgマウスからの結腸切片のH&E染色の組織学スコアは、野生型マウスは8.2の平均組織学スコアであったが、CD83Tgマウスの組織学スコアは有意に低く(**,P=0.0094)、5.3であることを示した(図14B及びC)。更に、炎症促進性サイトカインの血清レベルをELISAによって測定し、野生型同腹子と比較して6%DSSで処置されたCD83Tgマウスにおいて有意に低下したことが分かった(*,P<0.05)(図14D)。これらの結果は、粘膜表面でCD83を過剰発現するマウスが大腸炎に対してより抵抗性があることを示し、体重維持及び低減血清サイトカインレベルに至った。このように、CD83ホモタイプ相互作用は、DC媒介免疫反応を調整し、不適切な炎症を防ぎ、寛容を促進した。
CD83を過剰発現するマウスにおけるDSS大腸炎中に見られる保護が、下層粘膜固有層DCへのCD83の効果によるものだったか決定するために、IL-12p40発現を、DSS大腸炎であるCD83Tg及びWTマウスからの粘膜固有層DCにおいて検定した。7日間のDSS処理後、体重減少がCD83Tg及びWT同胞間で有意に異なった9日目にマウスを安楽死させた。次いで単離された粘膜固有層免疫細胞からDCを選別し、炎症促進性サイトカインの発現をqPCRによって評価した。DSSは、CD83Tg及びWTマウス双方において炎症促進性サイトカインの発現を誘導した。しかしながら、CD83Tgマウスから単離されたDCは、野生型同腹子と比較して、IL-12p40発現が有意に低下し(*, p=0.0315)(図15E)、増加された粘膜CD83レベルはDC炎症反応を調節し大腸炎中に保護することを示す。
実施例8:樹状細胞におけるCD83の欠損は大腸炎を悪化させる
DCにおけるCD83の欠失が大腸炎を悪化させるか決定するために、DCにおいて特異的にCD83を欠くマウスを作成しアッセイした。CD83
fl/flマウスを相同組換えにより作成した。まず、固有制限部位:
を有する合成CD83検出ベクターを使用して、CD83ゲノム断片をBAC(Cat. No. RPCI23.C, Invitrogen)から検出した。精製した検出断片を、検出ゲノム断片にloxPフランクカナマイシン選択カセットを挿入する第一ターゲティングカセット:
で同時形質転換した。次いで精製した標的プラスミドをアラビノース誘導されたエレクトロコンピテントSW106細胞に形質転換し、選択カセットのCre媒介ポップアウトにより単一loxP部位を残した。次いで精製した断片を合成第二ターゲティングカセット:
で同時形質転換し、2つのFrt部位及び1つのloxP部位によりフランクされたPGK-em7-Neo-pA耐性遺伝子を挿入しコンディショナルターゲティングベクターを作成した。この選択カセットはES細胞におけるポジティブ選択のためにコンディショナルターゲティングベクターに残され、その後ES細胞においてFlpをコードするcDNAの一過性形質移入により除去されコンディショナルCD83
fl対立遺伝子を作成した(図16A)。次いでCD83
fl対立遺伝子を保有するES細胞をマウス胚盤胞に注入してキメラマウスを作成し、次いでこれを使用してホモ接合性CD83
fl/flマウスを作成した。CD83ノックアウトマウスを、Fujimoto, Y. et aI., Cell 108, 755-767, 2002(出典明記により本明細書中に援用する)で使用されるものと類似のストラテジーを使用して作成した。CD83
fl/flマウスを、CD11cプロモーターの制御下でCreリコンビナーゼのトランスジェニック発現を有するマウスと繁殖させ、DCにおいて特異的にCD83を欠失するマウスを作成した(CD83
fl/flCD11c-Cre)。CD83
fl/flCD11c-Creマウスはグロス形態学的異常を示さず、全般的CD83ノックアウトマウスと異なり、CD83
wt/wtCD11c-Ce同腹子と比較した場合、脾臓において正常な数のCD4T細胞を有し、これは胸腺上皮細胞におけるCD83発現がこれらのマウスにおいておそらく影響を受けなかったためである。(図16B)。また脾臓及び結腸におけるDCの数は類似していたが、CD83の発現はCD83
fl/flCD11c-CreマウスのほとんどのDCにおいて失われていた(図16C)。DCにおけるCD83発現の欠失は結果としてDSS大腸炎の生存率の低下となった(図16D)。CD83
fl/flCD11c-CreDSS処理マウスは重度な体重減少となり、8日目までに、CD83
wt/wtCD11c-Ce同腹子(84.9%)と比較して有意に少ないそれらの初期体重を維持した(77.7%)(図16E)。更に、DSS処理は、8日目までに、CD83
wt/wtCD11c-Ce同腹子には観察されなかった、CD83
fl/flCD11c-Creマウスの100%における肛門周辺及び便中の明らかな血(overt blood)を生じ(図16F)、人道的理由による安楽死を必要とした。これらの結果は、DSS誘導性大腸炎耐容のためにDC CD83発現が必要であることを示す。
実施例9.アゴニスト抗CD83抗体の生成及び特徴付け
ヒトCD83の細胞外領域内のエピトープに特異的に結合するアゴニスト抗体は、ファージディスプレイライブラリー等の抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって産生され得る。ライブラリーの抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体でありうる。またライブラリーの抗体は、単鎖抗体又は単ドメイン抗体でありうる。あるいは、ヒトCD83の細胞外領域からのペプチドがマウスの免疫化使用されてもよく、抗CD83抗体が下に示すようにCD83アゴニスト活性に対して同定される。
細胞表面CD83のアゴニスト抗CD83抗体による結合:
樹状細胞上の細胞表面CD83に結合する抗体を同定するために、生成された抗体の結合親和性をフローサイトメトリー分析によってスクリーニングした。簡単には、未熟樹状細胞(iDC)をサイトカインカクテルで処理して、DC成熟及びCD83の表面発現を誘導した。固定及びフローサイトメトリーの前に、mDCを、DC成熟刺激と同時に生成された抗体で処理した。mDCの表面に発現されたCD83に特異的に結合する抗体をフローサイトメトリーデータを分析することによって同定した。あるいは、生成された抗CD83抗体を細胞凝集アッセイを使用してスクリーニングした。簡単には、hCD83(CHO-hCD83)を発現するCHO細胞を2mMのEDTAを用いてフラスコから脱離させ、洗浄し、2%FBS/10mMEDTAを含有するがCa2+又はMg2+を欠くHBSS培地に再懸濁させた。その後細胞を、106/mlで再懸濁させ、70mmフィルターを通過させて、低接着10cm培養皿にプレーティングするための単個細胞浮遊液を得た。その後、CHO-hCD83細胞を生成された抗体で処理し、4%のPFAでの固定の前に、37℃で90分間、軌道プラットフォームシェーカーでインキュベートした。CD83ホモタイプ結合の競合によりCHO-hCD83細胞の凝集を阻止する抗体を、細胞の顕微鏡イメージングによって同定した。これらの抗体は、それらのヒトCD83に対する結合及びアゴニスト活性について更に特徴付けられてもよい。
アゴニスト抗CD83抗体処理によるmDCからのサイトカイン放出の変化:
CD83アゴニスト活性を有する抗CD83抗体を同定するために、mDCによる炎症促進性及び抗炎症性サイトカイン分泌へのCD83処理の効果を評価する。簡単には、iDCをサイトカインカクテルで処理し、DC成熟及びCD83の表面発現を誘導する。生成された抗体でのmDCの処理をDC成熟刺激と同時に行う。DCの成熟の48時間後、細胞培養物上澄み液を収集し、炎症促進性サイトカインMCP-1及びIL-12p40並びに抗炎症性サイトカインIL-1raの分泌をELISAによって分析する。炎症促進性サイトカインMCP-1及びIL-12p40の放出を阻害する、及び/又は抗炎症性サイトカインIL-1raの放出を誘導する抗CD83抗体を、アゴニスト活性を有する抗体として同定する。
アゴニスト抗CD83抗体処理によるmDC細胞表面活性化マーカーの低下発現:
mDCの活性化を阻害するアゴニスト抗CD83抗体を同定するために、生成された抗体を、細胞表面活性化マーカーの発現を低減させる能力についてスクリーニングする。簡単には、未熟樹状細胞(iDC)をサイトカインカクテルで処理し、DC成熟を誘導する。mDCを、DC成熟刺激と同時に、生成された抗体で処理する。mDC上の細胞表面活性化マーカー、CD83及びHLA-DR(MHCII)の発現を、CD83又はMHCIIに対する蛍光色素コンジュゲート抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリーによって細胞を分析することによって調査する。mDC上におけるCD83及び/又はHLA-DRの細胞表面発現を低下させる抗CD83抗体を、アゴニスト活性を有する抗体として識別する。
アゴニスト抗CD83抗体処置を用いたMAPK及びmTORシグナル伝達経路の阻害: mDCにおいてMAPK及びmTOR(ラパマイシンの哺乳類標的)シグナル伝達の活性化を阻害するアゴニスト抗CD83抗体を同定するために、生成された抗体を、下流シグナル伝達タンパク質のリン酸化を阻害する能力についてスクリーニングする。簡単には、未熟樹状細胞(iDC)をサイトカインカクテルで処理し、DC成熟を誘導する。mDCを、DC成熟刺激と同時に、生成された抗体で処理する。処理されたmDCからの細胞溶解物をSDS-PAGE、次いでリン酸化部位特異的抗体を用いてウエスタンブロット解析に課す。mDCにおけるp38及びCREBタンパク質の低減されたリン酸化によりMAPKシグナル伝達経路を阻害する、及び/又はmTORタンパク質の低減されたリン酸化によりmTORシグナル伝達経路を阻害する抗CD83抗体を、アゴニスト活性を有する抗体として同定する。
上で概要した抗体スクリーニング方法から同定された候補アゴニスト抗CD83抗体は、動物モデルにおいて自己免疫疾患を治療するために様々な用量で使用され、大腸炎についてはIL-10ノックアウトマウスモデル(Scheinin等, Clin Exp Immunol., 133:38-43, 2003)、多発性硬化症については実験用自己免疫性脳脊髄炎マウスモデル(Miller等, Curr Protoc Immunol., Chapter 15:Unit 15.1, 2007)等で使用される。
実施例10.抗CD83抗体の生成
材料及び方法
培地及び抗体
ClonaCell-HY培地B(Cat# 03802)、培地C(Cat# 03803)、培地D(Cat# 03804)及び培地E(Cat# 03805)をStem Cell Technologiesから得た。電気融合に使用したCytofusion培地C(Cat# LCM-C)をCyto Pulse Sciencesから得た。ヤギ抗ハムスターIgG(H+L)-HRPコンジュゲート抗体(Cat# 127-035-160)をJackson Immuno Research Laboratoriesから得た。TMB one component HRP microwell substrate(Cat# TMBW-1000-01)及びTMB stop reagent(Cat# BSTP-1000-01)をBioFx Laboratoriesから得た。
インビボ免疫化
アルメニアンハムスターを、全18ブーストを3〜4日の間隔で腹腔内注射によって、モノホスホリルリピドA/トレハロースジコリノミコレートアジュバントに再懸濁した組換えマウス及びヒトCD83にて、ハムスターにつき注入につき2μgで免疫化した。最終プレ融合ブーストの3日後、免疫化したハムスター脾臓からのリンパ球を回収した。
ハイブリドーマ生成及び抗体スクリーニング
単離したハムスターの脾臓細胞を、Cyto Pulse CEEF-50 装置(Cyto Pulse Sciences)を使用してPU-l骨髄腫細胞(American Type Culture Collection)で融合した。簡単には、Cytofusion培地Cで2回洗浄した後、単離した脾臓細胞及びPU-l細胞を1:1比で混合し、次いでCytofusion培地C中に1000万細胞/mlで再懸濁した。電気融合を製造者の指示に従って実施した。融合細胞を7%CO2インキュベーターにおいて37℃で一晩、ClonaCell-HY培地Cにおいて培養した。翌日、融合細胞を遠心分離し、次いで10mlのClonaCell-HY培地Cに再懸濁し、その後HAT成分を含有する90mlのメチルセルロースベースのClonaCell-HY培地Dで穏やかに混合した。細胞を100mmペトリ皿(Cat#351029, Becton Dickinson)にプレーティングし、7%CO2インキュベーターにおいて37℃で増殖させた。10日のインキュベーションの後、単一ハイブリドーマクローンをClonePix(Genetix, United Kingdom)によって選び、ウェルにつき200μLのClonaCell-HY培地Eを有する96ウェル細胞培養プレート(#353075, Becton Dickinson)に移した。ハイブリドーマ培養培地をELISAスクリーニングの前に変えた。培地交換の3日後、ハイブリドーマ上澄部を、ELISA陽性クローンの同定のために、ヒトCD83又はマウスCD83に対してELISAによってスクリーニングした。
ハムスターAbs精製
ハイブリドーマ上澄部をプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製し、次いで無菌的に濾過し (0.2μm孔サイズ, Nalge Nunc International, NY, USA)、PBSにおいて4℃で保管した。機能アッセイを使用して更に試験する前に、精製したmAbsをELISAによって確認した。
ELISAアッセイ
ELISAアッセイを標準のプロトコルに従って実施した。ELISA96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner, Gennany)を、0.05Mの炭酸バッファー(pH9.6)中に2μg/mlの濃度で、ウェルにつき100μLのヒト又はマウスCD83でコートし、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを洗浄バッファー(PBS中0.05%Tween 20, Sigma)で3回洗浄した後、プレートを、BSAと共に100μLのELISAアッセイ希釈液でブロックした。100μLの培養上澄部又は希釈精製mAbを加え、1時間室温でインキュベートした。プレートを3回洗浄し、HRPコンジュゲートヤギ抗ハムスターIgG(H+L)で1時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄した後、結合したHRPコンジュゲート抗体を、ウェルにつき100μLのTMB基質(BioFX Laboratories, MD, USA)の添加によって検出し、プレートを5分間インキュベートした。 反応をウェルにつき100μLの停止剤(BioFX, Laboratories, MD, USA)の添加によって停止し、色をA630nmで検出してヒト又はマウスCD83に結合した抗体を同定又は確認した。
FACS結合アッセイ
生成された抗体を、CHO細胞上に安定して発現されるヒトCD83又はマウスCD83に結合するそれらの能力について検定した。安定細胞株の産生のための発現ベクターを生成するために、N末端HISタグヒトCD83(hCD83)又はN末端HISタグマウスCD83(mCD83)をコードするDNA断片を、XbaI及びXhoI部位で、ネオマイシン耐性プラスミドpRKneo (Crowley et ai., Proc Natl Acad Sci USA., 90(11):5021-5025, 1993)にクローニングし、hCD83.pRKneo又はmCD83.pRKneoをそれぞれ産生した。CHO細胞をFugene (Roche)を使用してhCD83.pRKneo又はmCD83.pRKneoで形質移入し、上位10%のCD83陽性細胞をFACSによって選別し、次いでG418(400μg/ml; GIBCO)で選択して、安定CHO-hCD83又はCHO-mCD83細胞株をそれぞれ生成した。CHO-hCD83及びCHO-mCD83細胞を、PBS/2%BSA/2mM EDTAを含有するFACSバッファーに再懸濁し、氷上で30分間、抗ヒトCD83抗体又は抗マウスCD83抗体でインキュベートした。細胞をFACSバッファーで洗浄し、次いで30分間氷上で暗所において蛍光色素コンジュゲート抗ハムスターIgG2次抗体でインキュベートした。細胞をFACSバッファーで洗浄し、FACSDivaソフトウェア(Becton Dickinson)を使用してLSR IIフローサイトメーターでフローサイトメトリーによって解析した。データ解析及び図の構築をFlowJo v.9.4.11を使用して実施した。
サブクローニング
野生型マウスIgG2a定常領域をハムスター可変領域と共に有するキメラ抗体の産生のために、マウス又はヒトCD83に結合可能な抗体を産生したハイブリドーマクローンを少なくとも1回の単一細胞サブクローニングに課した。その後抗体を配列決定した。
結果
FACS結合アッセイのデータ解析は、CD83に結合する能力を有する抗体を産生する9つのハイブリドーマクローンを同定した。抗CD83抗体35G 10、40A11,54D11、59G1O、75AI及び7C7はヒトCD83を発現するCHO細胞に結合したが(黒線)、マウスCD83を発現する細胞(破線)又はCD83発現を欠いた親CHO細胞(中実ヒストグラム)には結合しなかった(図17A-F)。抗CD83抗体60B10はヒトCD83を発現するCHO細胞に結合し、またマウスCD83を発現するCHO細胞との交差反応も見せた(図17G)。抗CD83抗体42C6及び39A2は、マウスCD83を発現するCHO細胞に特異的に結合したが(破線)、ヒトCD83を発現するCHO細胞(黒線)又はCD83発現を欠く親CHO細胞株には結合しなかった(図18A及びB)。
ハイブリドーマクローンから単離した抗体の配列決定から以下の配列を得た(可変領域に下線を引きHVRを太字にする):
39A2 抗マウスCD83重鎖DNA配列
39A2 抗マウスCD83重鎖アミノ酸配列
39A2 抗マウスCD83重鎖可変領域アミノ酸配列
39A2 HVR-Hlアミノ酸配列
39A2 HVR-H2アミノ酸配列
39A2 HVR-H3アミノ酸配列
39A2 抗マウスCD83軽鎖DNA配列
39A2 抗マウスCD83軽鎖アミノ酸配列
39A2 抗マウスCD83軽鎖可変領域アミノ酸配列
39A2 HVR-Llアミノ酸配列
39A2 HVR-L2アミノ酸配列
39A2 HVR-L3アミノ酸配列
42C6 抗マウスCD83重鎖DNA配列
42C6 抗マウスCD83重鎖アミノ酸配列
42C6 抗マウスCD83重鎖可変領域アミノ酸配列
42C6 HVR-Hlアミノ酸配列
42C6 HVR-H2アミノ酸配列
42C6 HVR-H3アミノ酸配列
42C6 抗マウスCD83軽鎖DNA配列
42C6 抗マウスCD83軽鎖アミノ酸配列
42C6 抗マウスCD83軽鎖可変領域アミノ酸配列
42C6 HVR-L1アミノ酸配列
42C6 HVR-L2アミノ酸配列
42C6 HVR-L3アミノ酸配列
60B10 抗ヒトCD83重鎖DNA配列
60B10 抗ヒトCD83重鎖アミノ酸配列
60B10 抗ヒトCD83重鎖可変領域アミノ酸配列
60B10 HVR-Hlアミノ酸配列
60B10 HVR-H2アミノ酸配列
60B10 HVR-H3アミノ酸配列
60B10 抗ヒトCD83軽鎖DNA配列
60B10 抗ヒトCD83軽鎖アミノ酸配列
60B10 抗ヒトCD83軽鎖可変領域アミノ酸配列
60B10 HVR-L1アミノ酸配列
60B10 HVR-L2アミノ酸配列
60B10 HVR-L3アミノ酸配列
実施例11.抗CD83抗体はmDCからの炎症促進性サイトカインの放出を低減する。
樹状細胞(DC)を、抗CD83抗体60B10、35G10、40A11、54D1、59G10、75AI、又は7C7で処理した場合の抗炎症性反応についてモニタした。アッセイでは、単球由来樹状細胞を未熟DC(iDC)のまま残すか、又は25ng/mlのrhIL-1β、100ng/mlのrhIL-6、50ng/mlのrhTNFa及び1mg/mlのPGE-2を含有するサイトカインカクテルで処理して成熟DC(mDC)を生成した。成熟DCを10μg/mlの示した抗CD83抗体で処理し、48時間インキュベートした。インキュベート後、細胞培養上澄部を集め、分泌された炎症促進性サイトカインを標準の製造者の指示に従ってELISA(Invitrogen)によって解析した。分泌サイトカインレベルの解析は、炎症促進性サイトカインMCP-lの放出が、抗CD83抗体60B10、35G10、40A11、又は7C7で処理したmDCにおいて有意に低減されたことを示した(図19)。抗CD83抗体54D1、59G10、又は75AIでの処理は、mDCからのMCP-lの産生を有意には低減しなかった(図19A)。
DCを、抗マウスCD83抗体39A2又は42C6で処理した場合の抗炎症性についてモニタした。アッセイでは、マウス骨髄由来DC(BMDC)を未熟DC(iDC)のまま残すか、又はLPSで成熟させた。成熟DCを39A2、42C6又は可溶性マウスCD83.Fcタンパク質で処理し、その後、炎症促進性サイトカインIL-12p40の発現の決定のためにRNAの単離のために回収した。IL-12p40RNAレベルの定量的PCR解析は、LPS刺激を共に用いた抗マウスCD83抗体39A2又は42C6によるDCの処理は、可溶性マウスCD83.Fcタンパク質で処理したDCにおいて観察された類似のレベルまでIL-12p40発現を有意に低減させた。
実施例12.抗CD83抗体の使用はDSS誘導大腸炎からマウスを保護する
炎症性腸疾患のマウスモデルにおける抗CD83抗体処置の効果を評価するために、大腸炎をデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)での処置によってマウスに誘発させた。8−10週の年齢のFVBマウスに、200μgの抗CD83抗体39A2、42C6、又は60B10、又はコントロール抗gD抗体を、腹腔内注入によって、研究の1日目、3日目、及び5日目に1日に1回に与えた。マウスに、飲料水中に6%のDSSを、研究の0日目に開始して7日間与えた。7日目に、マウスは12日目の実験の中止まで通常の飲料水に変更した。次いでマウスを安楽死させ、小及び大腸の薄片を作り、組織学的分析のためにH&Eで染色した。切片をランダム化し、二重盲検でスコア付けした。DSSのみで処置されたマウスからの結腸切片は、8.4の平均組織学的スコアを有した(図20)。対照的に、抗CD83抗体を与えられたマウスは組織学的スコアを有意に低減させた。39A2、42C6、又は60B10抗体の使用は、それぞれ5.3、5.5、又は5.4の平均組織学的スコアの結果となった。