JP2013145700A - 有機el素子及びこれを用いた表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】素子内を導波する導波光、もしくは、反射金属電極表面における表面プラズモンを抑制することで発光効率が向上した有機EL素子を提供する。
【解決手段】反射金属層2と光取り出し側とは逆の第1電極4との間に、有機化合物層10よりも屈折率の低い低屈折率層3を配置し、発光層6の発光位置から反射金属層2の反射面までの光学距離を所定の範囲になるように調整する。
【選択図】図1
【解決手段】反射金属層2と光取り出し側とは逆の第1電極4との間に、有機化合物層10よりも屈折率の低い低屈折率層3を配置し、発光層6の発光位置から反射金属層2の反射面までの光学距離を所定の範囲になるように調整する。
【選択図】図1
Description
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子、さらに、係る有機EL素子を用いてなる表示装置に関する。
近年、数ボルト程度の低駆動電圧で自己発光する有機EL素子が注目を集めている。有機EL素子は、面発光特性、軽量、視認性といった優れた特徴を活かし薄型ディスプレイや照明器具、ヘッドマウントディスプレー、また電子写真方式プリンタのプリントヘッド用光源など発光装置としての実用化が進みつつある。
特に有機EL素子を用いた表示装置の低消費電力化の要求は高まりつつあり、発光効率のさらなる改善が期待されており、発光効率を飛躍的に改善させるデバイス構造の一つに、マイクロキャビティ方式がある。発光分子は、光の「強めあう干渉」が起きる空間に向かって光を強く放射する性質があるため、光学干渉を使って励起子の放射速度を増加させたり、放射パターンを制御することが可能となる。マイクロキャビティ方式では、発光分子からみて光取り出し方向に「強めあう干渉」が生じるようにデバイスパラメータ(膜厚や屈折率)を設計することにより、発光効率を改善する方式である。
一般的な有機EL素子は発光効率の向上のために、光取り出し側とは逆側に、電極の機能を兼ねた金属からなる反射膜(反射金属電極)を有する。そして該反射金属電極の反射面と発光層の発光位置との光学距離Lを、
L=(2m−(φ/180))×(λ/4)
を満たすように設定することで、取り出したい波長λの光は正面方向の強度が強まる。ここで、φは反射金属電極における反射時の位相シフト[°]であり、干渉次数mは0または正の整数である。マイクロキャビティ方式は、マイクロレンズのような凹凸の構造物の必要がなく、低コストで発光効率の増大が期待できる。
L=(2m−(φ/180))×(λ/4)
を満たすように設定することで、取り出したい波長λの光は正面方向の強度が強まる。ここで、φは反射金属電極における反射時の位相シフト[°]であり、干渉次数mは0または正の整数である。マイクロキャビティ方式は、マイクロレンズのような凹凸の構造物の必要がなく、低コストで発光効率の増大が期待できる。
有機EL素子の発光は空気よりも屈折率の高い有機化合物膜からなる発光層内で起こるため、屈折率差から生じる全反射により実際に空気中に取り出される光は20%前後である。空気中に取り出されない光は、有機EL素子内を導波する導波光、もしくは、反射金属電極表面における表面プラズモン(SP)、に結合することが知られている。SPに結合した励起エネルギーは、最終的にはジュール熱に転化されるため損失となる。有機EL素子における発光効率の向上には、放射パターンの制御とともに、導波光もしくはSPへの結合を抑制する必要がある。
これまで、SPへの結合を抑制する方法は、特許文献1で開示されている反射電極と発光層間の距離を増大させる方法が提案されてきた。しかしながら、干渉次数を上げると光学干渉効果の及ぶ波長が狭帯域になるため好ましくない。また非特許文献1で示されているように発光分子の遷移ダイポールモーメントを水平配向させる手法は、導波光とSPへの結合を抑制することができるが、有機発光材料の設計に制約が出るため現実的ではない。
尚、マイクロキャビティは、光取り出し側の反射率の大小により弱キャビティと強キャビティに分類される。通常、弱キャビティにおいてはガラス/透明酸化物半導体といった透過率の高い電極構造が用いられ、キャビティの干渉効果は主に反射電極と発光層間で生じる干渉条件で決まる。一方、強キャビティにおいては、光取り出し側の電極として反射率の高い半透過性の金属薄膜電極が用いられ、弱キャビティに比べより大きな干渉効果を利用することが可能となり、飛躍的に発光効率が改善され得る。上述の導波光やSPの抑制法は、いずれも金属と誘電体界面が1つしかない弱キャビティ構成で検討されている。つまり、強キャビティにおける導波光や表面プラズモン抑制案は、未だ提案されていない。こうした有機EL素子内での光の挙動は、光学シミュレーションで計算可能であり、非特許文献2に詳しい。
Jorg Frischeisen et.al.,Organic Electronics 12,809−817(2011).
S.Nowy et.al.,Journal of Applied Physics 104,123109(2008).
本発明は、有機EL素子内を導波する導波光、もしくは、反射金属電極表面における表面プラズモン(SP)、を抑制することで発光効率が向上した有機EL素子、及び該有機EL素子を用いた表示装置を提供することを課題とする。
本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に少なくとも発光層を有する有機化合物層とを備え、前記第2電極側から発光を取り出す有機EL素子であって、
前記第1電極の外側に反射金属層が配置され、
前記発光層の発光位置から前記反射金属層の反射面までの光学距離をL[nm]、発光光の発光スペクトルの最大ピーク波長をλ[nm]、前記金属反射層における位相シフトをφ[°]とすると、前記光学距離Lが下記式(I)を満たしており、
式(I)
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8)
前記第1電極と前記反射金属層との間に、前記有機化合物層よりも屈折率の低い低屈折率層を有することを特徴とする。
前記第1電極の外側に反射金属層が配置され、
前記発光層の発光位置から前記反射金属層の反射面までの光学距離をL[nm]、発光光の発光スペクトルの最大ピーク波長をλ[nm]、前記金属反射層における位相シフトをφ[°]とすると、前記光学距離Lが下記式(I)を満たしており、
式(I)
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8)
前記第1電極と前記反射金属層との間に、前記有機化合物層よりも屈折率の低い低屈折率層を有することを特徴とする。
本発明によれば、反射率の高い金属膜を用いながらも、SP損失を抑制できるため、発光効率が向上した有機EL素子を提供することができる。よって、有機EL素子を用いて構成される表示装置において、その特性を向上させることができる。
本発明は、反射性金属表面で発生するSP損失が金属種だけでなく、反射性金属と接する部材の屈折率によっても変化することに着目した発明である。即ち、本発明の有機EL素子は、第1電極と、第2電極と、該第1電極と第2電極との間に少なくとも発光層を有する有機化合物層とを備え、前記第2電極側から発光を取り出す有機EL素子であり、前記第1電極の外側には反射金属層が配置されている。そして本発明の有機EL素子は、光学距離Lが下記式(I)を満たしており、前記第1電極と前記反射金属層との間に、前記有機化合物層よりも屈折率の低い低屈折率層を有することを特徴とする。尚、Lは発光層の発光位置から反射金属層の反射面までの光学距離[nm]、λは発光光の発光スペクトルの最大ピーク波長[nm]、φは金属反射層における位相シフト[°]である。
式(I)
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8)
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8)
以下、本発明の有機EL素子について、実施形態を挙げて説明する。図1は、本発明の有機EL素子の一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図1の実施形態は、支持基板1上に反射性金属層2、低屈折率層3、第1電極4が配置されている。第1電極4とは発光層6を挟んで反対側に光透過性の第2電極8が配置され、第2電極8から光を取り出すトップエミッション型の素子である。ここで、反射性金属層2とは取り出したい発光波長での反射率が80%以上の金属膜である。また、第1電極4は光取り出しとは逆側の電極であり、取り出したい発光波長での透過率が80%以上の電極である。さらに、第2電極8は取り出したい発光波長での透過率が40%以上の電極である。これら一対の電極間に発光層6を含むいくつかの有機化合物からなる機能層を有し、発光効率、駆動寿命、光学干渉といった観点から多くの積層構成が工夫されている。尚、第1電極4と第2電極8に挟まれた有機化合物からなる積層体を通常、有機化合物層10と言う。
有機化合物層10は、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7からなる。正孔輸送層5には正孔注入層や電子ブロック層といった機能層も含まれる。また電子輸送層7には電子注入層や正孔ブロック層といった機能層も含まれる。本発明は有機化合物層10の積層数や各層に含まれる材料には限定されない。例えば、発光層6を構成する発光材料は蛍光材料もしくは燐光材料のいずれでもよく、ホスト材料の中にドーピングされた形態でもよく、さらには、発光材料の他に少なくとも一種類以上の化合物が素子性能向上のために含まれていてもよい。
また、支持基板1としては、各種のガラス基板、poly−Siやa−Si(アモルファスシリコン)等で半導体を形成したTFT(薄膜トランジスタ)等の駆動回路(不図示)を形成したガラス基板が用いられる。また、シリコンウエハー上に駆動回路を形成したガラス基板、シリコンウエハー上に駆動回路を設けたもの等も挙げることができる。
反射金属層2は有機EL素子の高効率化のために、高反射性の金属が好適であり、具体的にはAlやAg等の金属が挙げられる。反射金属層2の上部には、有機EL素子内を導波する導波光の抑制、もしくは、反射金属層2の表面におけるSP損失抑制のために有機化合物層10よりも屈折率の低い低屈折率層3が配置される。低屈折率層3は有機物、無機物、どちらでもよい。
第1電極4は支持基板1上に形成されたTFT等の駆動回路と導通がとられており、ITOやIZOなどの透明電極が好適である。有機EL素子に相当する発光領域上においては、第1電極4と反射金属層2とは、その間には低屈折率層3が介在しているため互いに接してはいないが、発光領域外においては第1電極4と反射金属層2は接していてもよい。
光取り出し側の第2電極8にはAg、Mg、Al等の金属薄膜やITOやIZOなどの透明膜を用いる。さらに、第2電極8上には光学調整層9が配置されている。光学調整9の役割は第2電極8の保護であり、例えば屈折率1.5以上の一般的に知られている有機物、無機物が挙げられる。第2電極8に金属薄膜を用いた場合は反射率が上昇するため、微小光学共振器(マイクロキャビティ)としての特性が発現してくる。従って、有機化合物層10のうち、発光層6と反射金属層2との間の膜厚を調整することで、発光層6内部の光放射分布を制御することができる。表示装置としては、特に正面方向の輝度が高くなるように有機化合物層10の各層の膜厚を設定することで、光学干渉により発光色も制御され、より高効率に正面方向に光が放射されるようになる。より具体的には、発光層6の発光位置から反射性金属層2の界面(反射面)までの光学距離Lについて、下記式(1)を満たすことで、取り出したい波長λの光は正面方向の強度が強まる。
式(1) L=(2m−(φ/180))×(λ/4)
ここで、φは反射性金属層2における反射時の位相シフト[°]であり、mは正の整数である。位相シフトφの値は金属種によって異なるが、概ね−100°乃至−160°程度である。また、光学距離Lは、発光層6から反射性金属層2の反射面との間における各層の屈折率n×厚さd[nm]の総和である。尚、位相シフト[°]は一般的な光学多層薄膜の計算により求めることができる(例えば小檜山光信著,「光学薄膜の基礎理論」,(日本),第2版,オプトロニクス社,2003年7月23日,p.83−113参照)。
ここで、φは反射性金属層2における反射時の位相シフト[°]であり、mは正の整数である。位相シフトφの値は金属種によって異なるが、概ね−100°乃至−160°程度である。また、光学距離Lは、発光層6から反射性金属層2の反射面との間における各層の屈折率n×厚さd[nm]の総和である。尚、位相シフト[°]は一般的な光学多層薄膜の計算により求めることができる(例えば小檜山光信著,「光学薄膜の基礎理論」,(日本),第2版,オプトロニクス社,2003年7月23日,p.83−113参照)。
本発明においては広波長帯域において干渉効果を発現させるために、上記式中のm=0が望ましい。よって、上記式は下記式(2)を満たすことが好ましい。
式(2) L=(−φ/180)×(λ/4)
但し、実際の有機EL素子では、正面の取り出し効率とトレードオフの関係にある視野角特性等も考慮すると、必ずしも上記膜厚と厳密に一致させる必要はない。具体的には、Lが式(2)を満たす値から±λ/8以内の誤差があってもよい。よって、本発明の有機EL素子において、下記式(I)を満たすことが好ましい。
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8)
但し、実際の有機EL素子では、正面の取り出し効率とトレードオフの関係にある視野角特性等も考慮すると、必ずしも上記膜厚と厳密に一致させる必要はない。具体的には、Lが式(2)を満たす値から±λ/8以内の誤差があってもよい。よって、本発明の有機EL素子において、下記式(I)を満たすことが好ましい。
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8)
尚、本発明の有機EL素子を複数用いたフルカラー表示の表示装置を構成する場合に、有機EL素子の発光色を赤、緑、青とした場合、青色のλは460nm、緑色のλは520nm、赤色のλは620nm程度が目安となる。上記式(I)より、それぞれ好ましい光学距離が算出可能である。
以下、発光効率と反射金属層2の金属種及び反射金属層2と接した低屈折率層3の屈折率との関係について解析した結果を説明する。以下のシミュレーションでは、特に記述がない限り、第1電極4はアノードとして膜厚10nmのIZO、第2電極8はカソードとして膜厚26nmのAg薄膜を用いた強キャビティ素子構成で検討を行っている。さらに、光学調整層9には膜厚70nmで屈折率1.8程度の一般的な有機化合物を用いた。シミュレーションは非特許文献2と同様の手法で実施した。
〔青色素子の発光効率に対する低屈折率層3の屈折率依存性〕
図2は本実施形態における青色発光の有機EL素子(以下、青色素子と称する。)について、反射金属層2は厚膜のAl、低屈折率層3の膜厚を15nmに固定して、低屈折率層3の屈折率を変化させた場合の発光効率[cd/A]変化である。発光効率には視感度の影響が入るため、正孔輸送層5の膜厚を式(I)を満足する範囲で変化させた時の素子特性を、横軸を色度のCIEy、縦軸を発光効率として表示した。その結果、全ての色度CIEyにおいて、低屈折率層3の屈折率が低い程、発光効率が高まることが分かる。
図2は本実施形態における青色発光の有機EL素子(以下、青色素子と称する。)について、反射金属層2は厚膜のAl、低屈折率層3の膜厚を15nmに固定して、低屈折率層3の屈折率を変化させた場合の発光効率[cd/A]変化である。発光効率には視感度の影響が入るため、正孔輸送層5の膜厚を式(I)を満足する範囲で変化させた時の素子特性を、横軸を色度のCIEy、縦軸を発光効率として表示した。その結果、全ての色度CIEyにおいて、低屈折率層3の屈折率が低い程、発光効率が高まることが分かる。
図3には、sRGBにおける青色の色度座標CIEy=0.06を示す各素子構成について、励起エネルギーの分配先の割合を示している。各モードの定義を説明する。
OC(Copuling)は光として実際に空気中に取り出される成分であり、一般的に光取り出し効率と言われる。光の進行方向を法線方向からの傾き角をθとした時に、0<θ<θc(θc:全反射臨界角)の範囲の光について、空気中に取り出される光である。ABSは吸収損失(Absorption Loss)であり、θ<θcの条件を満たすが、デバイス内で吸収される成分である。WGは導波モード(Wave Guide)であり、進行方向がθc<θ<90°である素子内を導波する成分である。SPは前記したように表面プラズモンであり、金属にエネルギー移動を起こし、表面プラズモン励起によりジュール熱に転化される成分である。
図3から分かる通り、低屈折率層3の屈折率を小さくすると、導波モード(WG)が減少し、光取り出し効率(OC)が増大している。つまり、反射金属層2と第1電極4との間に屈折率が低い層が挿入されることで、有機EL素子内を導波する導波光の抑制、もしくは、反射金属層2の表面におけるSP損失抑制により、発光効率、及び、光取り出し効率が向上することが分かる。尚、発光効率は大まかには正面方向へのフォトン数に比例し、光取り出し効率は空気中に取り出されるフォトン数に比例するため、発光効率の向上率と光取り出し効率の向上率は必ずしも一致しない。
従来の有機EL素子においては、反射金属層2は電極を兼ねていることが多く、反射金属層の表面にはITO、IZOといった屈折率2.0前後の透明電極、もしくは、屈折率が1.7乃至1.8程度の正孔注入層、正孔輸送層が配置される。本実施形態は反射金属層と電極とを分離することで、反射金属層表面に従来よりも低い屈折率を有する低屈折率層を配置することが可能となり、発光効率を向上させることができる。
低屈折率層3の材料としては有機化合物、無機化合物、どちらでもよく、一般的に知られている低屈折率材料を用いることができる。有機化合物の例としては屈折率1.3乃至1.4程度のフッ素系樹脂材料がよく知られている。また、無機物の例として多孔質シリカがあり、屈折率1.2以下のものも知られている。
尚、低屈折率層3の屈折率にもよるが、本発明における青色波長帯域の反射金属層2の反射時の位相シフトφ=−150°程度である。従って、式(I)に青色のλ=460nmを適用すると、発光層6の発光位置から反射性金属層2の反射面までの光学距離Lは38nm<L<153nmとなる。図2の計算結果において、縦軸を発光層6の発光位置から反射性金属層2の反射面までの光学距離Lで示したのが図4である。例えば低屈折率層3の屈折率が1.2の場合、sRGBにおける青色の色度座標CIEy=0.06を示すには光学距離L=68nmであり、NTSCにおける青色の色度座標CIEy=0.08を示すには光学距離L=73nm程度である。青色の狙い色度座標の設定は設計事項であるが、光学距離Lは式(I)を満たす範囲が好ましい。
〔緑色素子の発光効率に対する低屈折率層3の屈折率依存性〕
本実施形態においては、緑色発光の有機EL素子(以下、緑色素子と称する。)に関して低屈折率層3の効果を示す。概略断面図は前記実施形態と同様であるため図2を参照して説明する。本実施形態において、反射金属層2は厚膜のAg、低屈折率層3の膜厚を30nmに固定して、低屈折率層3の屈折率を変化させた場合の発光効率[cd/A]変化を図5に示す。発光効率には視感度の影響が入るため、正孔輸送層5の膜厚を式(I)を満足する範囲で変化させた時の素子特性を、横軸を色度のCIEx、縦軸を発光効率として表示した。その結果、全ての色度CIExにおいて、低屈折率層3の屈折率が低い程、発光効率が高まることが分かる。尚、NTSCによる緑色の色度座標CIExは0.21であり、sRGBではCIExは0.30である。
本実施形態においては、緑色発光の有機EL素子(以下、緑色素子と称する。)に関して低屈折率層3の効果を示す。概略断面図は前記実施形態と同様であるため図2を参照して説明する。本実施形態において、反射金属層2は厚膜のAg、低屈折率層3の膜厚を30nmに固定して、低屈折率層3の屈折率を変化させた場合の発光効率[cd/A]変化を図5に示す。発光効率には視感度の影響が入るため、正孔輸送層5の膜厚を式(I)を満足する範囲で変化させた時の素子特性を、横軸を色度のCIEx、縦軸を発光効率として表示した。その結果、全ての色度CIExにおいて、低屈折率層3の屈折率が低い程、発光効率が高まることが分かる。尚、NTSCによる緑色の色度座標CIExは0.21であり、sRGBではCIExは0.30である。
図6には、より色純度の深いNTSCにおける色度座標CIEx=0.21を示す各素子構成について、励起エネルギーの分配先の割合を示している。各モードの定義は図3で説明した通りである。本実施形態は、図6から分かる通り、低屈折率層3の屈折率を1.8から1.4と小さくする、導波モード(WG)が減少し、光取り出し効率(OC)が増大している。さらに、屈折率を1.2にすると表面プラズモン損失(SP)が減少し、光取り出し効率(OC)が増大する。つまり、反射金属層2と第1電極4との間に屈折率が低い層が挿入されることで、有機EL素子内を導波する導波光の抑制、もしくは、反射金属層2の表面におけるSP損失抑制により、発光効率、及び、光取り出し効率が向上することが分かる。
尚、低屈折率層3の屈折率にもよるが、本実施形態における緑色波長帯域の反射金属層2の反射時の位相シフトφ=−130°程度である。従って、式(I)に緑色のλ=520nmを適用すると、発光層6の発光位置から反射性金属層2の反射面までの光学距離Lは29nm<L<159nmとなる。図5の計算結果において、縦軸を発光層6の発光位置から反射性金属層2の反射面までの光学距離Lで示したのが図7である。例えば低屈折率層3の屈折率が1.2の場合、NTSCにおける緑色の色度座標CIEx=0.21を示すには光学距離L=93nmであり、sRGBにおける緑色の色度座標CIEx=0.30を示すには光学距離L=106nm程度である。緑色の狙い色度座標の設定は設計事項であるが、光学距離Lは式(I)を満たす範囲が好ましい。
また、図8は低屈折率層3の屈折率は1.4に固定したまま膜厚dが10nm、20nm、30nmの時に正孔輸送層5の膜厚を式(I)を満足する範囲で変化させた時の素子特性を、横軸を色度のCIEx、縦軸を発光効率として表示したものである。図8から分かる通り、低屈折率層3の膜厚は厚いほど効率向上の効果が高いことが分かる。但し、図5において、低屈折率層3の屈折率が1.8の場合が従来の有機EL素子同等の効率であることを考えると、低屈折率層3の膜厚は最低10nmあれば本発明の効果が発現すると考えられる。
以上の結果を考慮して、本発明においては、反射金属層2と第1電極4との間に低屈折率層3を配置することを特徴とする。従来の有機EL素子においては、反射金属層2は電極を兼ねていることが多く、反射金属層の表面にはITO、IZOといった屈折率2.0前後の透明電極、もしくは、屈折率が1.7乃至1.8程度の正孔注入層、正孔輸送層が配置される。本発明は反射金属層と電極を分離することで、反射金属層2の表面に従来よりも低い屈折率を有する低屈折率層を配置することが可能となり、発光効率を向上させることができる。低屈折率層3の屈折率は有機化合物層10の各層よりも低ければよく、1.7未満の材料が好ましく用いられる。また、低屈折率層3の膜厚は薄すぎると本発明の効果は発現しないため、10nm以上が好ましい。但し、発光層6の発光位置から反射性金属層2の反射面までの光学距離Lは式(I)でほぼ規定されることから、発光層6と反射性金属層2の間に配置される低屈折率層3の膜厚は、第1電極4の膜厚が0だとして、最大でも光学距離Lを低屈折率層3の屈折率で除算した値となる。
本発明の有機EL素子は、上記したように、有機EL素子内を導波する導波光の抑制、もしくは、反射金属層2の表面におけるSP損失の抑制により、発光効率を高めることができる。よって、有機EL素子を用いた各種の装置に適用することによって、より高い特性が得られる。具体的には、本発明の有機EL素子と、係る有機EL素子の発光を制御する制御回路とを備えた発光装置、さらには、該発光装置と、該発光装置によって潜像が形成される感光体と、該感光体を帯電する帯電手段とを備えた画像形成装置が提供される。また、撮像装置などにも適用できる。さらに、異なる色を発する複数の有機EL素子と、前記有機EL素子の発光を制御する制御回路と、を有する表示装置において、本発明の有機EL素子を用いることができる。尚、かかる表示装置において、低屈折率層が異なる色を発する複数の有機EL素子で共通の膜厚で形成されてもよいし、発光色によって異なってもよい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。以下の実施例では、既述のシミュレーション結果で高い発光効率が得られた、低屈折率層の効果を緑色素子で確認した。本発明による有機EL素子の概略断面図である図1を参照して説明する。
先ず、駆動回路(不図示)を備えるガラス基板1上に、銀合金(AgPd)を100nmの膜厚でスパッタリング法にて成膜し、その後フォトリソ法によりパターニングを行い、発光画素毎に駆動回路との導通が取られている反射金属層2とした。次に、低屈折率層3として520nmにおける屈折率が1.2である市販の塗布型多孔質シリカ膜を30nmの膜厚で塗布・焼成することで形成した。さらに、発光領域外を被覆している多孔質シリカ膜をフッ酸により除去した。
アノード4としてIZOを10nmの膜厚でスパッタリング法にて成膜し、発光領域外における反射金属層2との導通を維持したまま、各画素に対応するようフォトリソ法によるパターニングを行った。さらに、発光領域を規定する絶縁材料(不図示)としてポリイミド樹脂を塗布・焼成後、フォトリソ法により開口部を設けた。
このアノード4の上に順次、真空蒸着法で一般的に知られている有機化合物層を成膜した。成膜順に列記すると、正孔輸送層を12nm、緑色の発光を示す発光層を20nm、正孔ブロック層を10nm、電子輸送層を20nm、成膜した。次にカソード8として、AgとCsからなるAg合金を6nm成膜後、Agを20nm真空蒸着法により成膜した。カソード8の電子輸送層と接する側はAgとCsからなるAg合金とすることで電子輸送層への電子注入を容易となるようにした。カソード8の上部には光学調整層9として、一般的に知られている光透過性の有機化合物であるAlq3を、真空蒸着法により70nmの膜厚で成膜した。
最後に、窒素雰囲気中のグローブボックスにて、乾燥剤を入れた封止ガラス(不図示)とガラス基板1の成膜面とをUV硬化樹脂を用いて封止した。
本実施例と従来例における緑色素子の色度及び効率[cd/A]を表1に示す。従来例は低屈折率層である多孔質シリカ膜を設けていない。また、発光層6の発光位置から反射金属層3の反射面までの光学距離Lを実施例と従来例でそろえるため、従来例は正孔輸送層の膜厚を36nmとした。その結果、ほぼ同一色度において本実施例の発光効率は従来例の約1.3倍となった。図5に示す通り、緑色素子において反射金属層3の表面の屈折率が1.8から1.2にした場合の効率向上率も1.3倍程度であり、シミュレーション結果は実験結果と矛盾しないことも確認された。尚、本実施例で作製した有機EL素子は式(I)を満たしている。
本実施例により、シミュレーションが実験結果と矛盾しないことが確認された。即ち、反射金属層2と第1電極4との間に、屈折率が1.7未満である従来の有機化合物層よりも低い低屈折率層3を配置することで発光効率が向上することが示された。
2:反射金属層、3:低屈折率層、4:第1電極、6:発光層、8:第2電極
Claims (6)
- 第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に少なくとも発光層を有する有機化合物層とを備え、前記第2電極側から発光を取り出す有機EL素子であって、
前記第1電極の外側に反射金属層が配置され、
前記発光層の発光位置から前記反射金属層の反射面までの光学距離をL[nm]、発光光の発光スペクトルの最大ピーク波長をλ[nm]、前記金属反射層における位相シフトをφ[°]とすると、前記光学距離Lが下記式(I)を満たしており、
前記第1電極と前記反射金属層との間に、前記有機化合物層よりも屈折率の低い低屈折率層を有することを特徴とする有機EL素子。
式(I)
(−1−(2φ/180))×(λ/8)<L<(1−(2φ/180))×(λ/8) - 前記低屈折率層の屈折率は、前記有機EL素子が発する光のスペクトルの最大ピーク波長において、1.7未満であることを特徴とする有機EL素子。
- 前記低屈折率層の膜厚は、10nm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL素子。
- 前記第2電極が金属薄膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
- 異なる色を発する複数の有機EL素子と、前記有機EL素子の発光を制御する制御回路と、を有する表示装置であって、前記有機EL素子が、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機EL素子であることを特徴とする表示装置。
- 前記低屈折率層が異なる色を発する複数の有機EL素子で共通の膜厚で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
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---|---|---|---|---|
WO2014084308A1 (ja) * | 2012-11-30 | 2014-06-05 | 昭和電工株式会社 | 有機el素子並びにそれを備えた画像表示装置及び照明装置 |
WO2015016176A1 (ja) * | 2013-07-31 | 2015-02-05 | 昭和電工株式会社 | 有機el素子、画像表示装置及び照明装置 |
CN104851981A (zh) * | 2014-02-18 | 2015-08-19 | 财团法人工业技术研究院 | 蓝光发光元件及发光元件 |
WO2022209588A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 | 表示装置、電子機器、ならびに表示装置の製造方法 |
-
2012
- 2012-01-16 JP JP2012005892A patent/JP2013145700A/ja active Pending
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