JP2013144945A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高負荷運転用及び低負荷運転用の吸気カムを備える内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことがきると共に、必要に応じて高い応答性で内燃機関の出力トルクを増加させるようにすることができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の負荷の要求増加度合いが低い場合には、低負荷運転用の吸気カム13Lから高負荷運転用の吸気カム13Hへの切替えを、各吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開閉駆動時における燃焼室3の実効圧縮比が互いに同じになる特定状態の位相角で行い、内燃機関1の負荷の要求増加度合いが高い場合には、低負荷運転用の吸気カム13Lから高負荷運転用の吸気カム13Hへの切替えを、上記特定状態の位相角と異なる位相角で行なう。
【選択図】図15
【解決手段】内燃機関1の負荷の要求増加度合いが低い場合には、低負荷運転用の吸気カム13Lから高負荷運転用の吸気カム13Hへの切替えを、各吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開閉駆動時における燃焼室3の実効圧縮比が互いに同じになる特定状態の位相角で行い、内燃機関1の負荷の要求増加度合いが高い場合には、低負荷運転用の吸気カム13Lから高負荷運転用の吸気カム13Hへの切替えを、上記特定状態の位相角と異なる位相角で行なう。
【選択図】図15
Description
本発明は、吸気バルブの開弁期間やリフト量を変更可能とした内燃機関の制御装置に関する。
例えば特許文献1に見られる如く、吸気バルブを開閉駆動するために用いる吸気カムとして、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量を規定するプロフィールが互いに異なる複数の吸気カムを備えると共に、クランク軸(内燃機関の出力軸)の位相角に対する吸気カムの位相角を所定の角度範囲内で変化させることができるようにしたものが従来より知られている。
この種の内燃機関では、吸気バルブを実際に開閉駆動するために用いる吸気カムを、VTEC(登録商標)等と言われるバルブリフト可変機構によって選択的に切り替えることで、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量を可変的に変更する。
さらに、VTC等と言われるバルブ位相可変機構によって、クランク軸(内燃機関の出力軸)の位相角に対する吸気カムの位相角を連続的に変化させることで、各吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の位相角(開弁開始の位相角と開弁終了の位相角との組)を変化させる。
例えば、特許文献1のものでは、3つの吸気カムを備え、内燃機関の負荷に応じて、これらの吸気カムの切り替えと、各吸気カムの位相角の変更とを行なうようにしている。この場合、内燃機関の負荷が高いほど、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量が大きくなるように、吸気カムの切り替えが行なわれる。また、各吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、内燃機関の負荷が増加するに伴い、吸気バルブの開弁開始の位相角が、上死点(TDC)の位相角よりも進角側の位相角から上死点の位相角に近づいていくように、各吸気カムの位相角の変更が行なわれる。
特許文献1に見られるものでは、吸気バルブを開閉駆動する吸気カムの切り替え時に、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量の小さい低負荷側の吸気カムの位相角は、それにより規定される吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点(TDC)の位相角にほぼ一致するような位相角に制御されると共に、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量の大きい高負荷側の吸気カムの位相角は、それにより規定される吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点(TDC)の位相角よりも大きく進角するような位相角に制御される。
この場合、吸気カムの切り替え時に伴う内燃機関の出力の段差を少なくすることは可能であるものの、吸気カムの切り替えを行なう負荷の近辺で、高負荷側の吸気カムにより吸気バルブを開閉駆動する状況では、排気行程で吸気バルブが比較的大きな開度で開弁することとなるため、該排気行程の次の吸気行程で燃焼室に空気と共に充填される排ガスの量が急変しやすい。ひいては、失火等が生じて、内燃機関の出力性能が低下する恐れがある。
そこで、本願出願人は、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量の大きい高負荷側の吸気カムと、吸気バルブの開弁期間の角度幅及びリフト量の小さい低負荷側の吸気カムとを備えたシステムで、次のように、各吸気カムの位相角の変化と吸気カムの切替えとを行なうようにしたシステムを先に特願2011−32408にて提案した。
このシステムでは、低負荷側の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも進角側の位相角から下死点側の位相角に向って遅角していくように該吸気カムの位相角を変化させると共に、高負荷側の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも遅角側の位相角から下死点側の位相角に向って進角していくように該吸気カムの位相角を変化させる。
そして、このシステムでは、低負荷側の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と、高負荷側の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点と下死点との間の位相角となる共に、燃焼室の実効圧縮比が互いにほぼ同じになる状態に両吸気カムの位相角を制御した状態で、両吸気カムの一方から他方への切替えを行なうようにしている。
このようなシステムによれば、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制しつつ、吸気カムの切替えを行なうことができる。
ところで、上記のように高負荷側の吸気カムと低負荷側の吸気カムとを備えるシステムを含めて、内燃機関の運転システムにおいては、内燃機関の負荷の変動が、比較的緩やかに行なわれる状況では、内燃機関の出力トルクの滑らかに変化することが望まれる一方、内燃機関の負荷の要求増加度合いが比較的高い場合には、高い応答性で、該内燃機関の出力トルクを増加させることが望まれる。例えば、内燃機関を動力源として搭載した車両のアクセルペダルが大きく踏み込まれたような場合には、それに応答して速やかに内燃機関の出力トルクを増加させることが望まれる。
また、さらに、内燃機関を動力源とする車両の走行中にアクセルペダルをオフにした場合の如き所定の条件下で、内燃機関の燃焼室への燃料供給を遮断して、該燃焼室に充填する空気量を減少させるような運転を一時的に行うような場合には、その運転中に、該内燃機関でのエネルギー消耗が生じるのを抑制し、該内燃機関の燃焼運転の再開後に、該内燃機関の運転状態を元の運転状態に復帰させるようにすることができることが望まれる。
本願発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高負荷運転用の吸気カムと低負荷運転用の吸気カムとを備える内燃機関において、該内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことがきると共に、必要に応じて高い応答性で内燃機関の出力トルクを増加させるようにすることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
また、本願発明は、高負荷運転用の吸気カムと低負荷運転用の吸気カムとを備える内燃機関において、該内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことがきると共に、内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断する状況でのエネルギー損失を低減することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本発明の内燃機関の制御装置の第1の態様は、上記の目的を達成するために、吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも小さい角度幅になり、且つ、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第1遅角側開弁開始位相角に一致し、且つ、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第2遅角側開弁開始位相角に一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の負荷の要求増加度合いの高低を判断する負荷増加要求判断手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第1遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第1進角側開弁開始位相角と該第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第2遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第2進角側開弁開始位相角と該第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御し、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御することを特徴とする(第1発明)。
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも小さい角度幅になり、且つ、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第1遅角側開弁開始位相角に一致し、且つ、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第2遅角側開弁開始位相角に一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の負荷の要求増加度合いの高低を判断する負荷増加要求判断手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第1遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第1進角側開弁開始位相角と該第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第2遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第2進角側開弁開始位相角と該第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御し、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御することを特徴とする(第1発明)。
なお、本発明において、第1の吸気カム又は第2の吸気カムの位相角、あるいは、吸気バルブの開弁開始もしくは開弁終了の位相角というのは、内燃機関のクランク軸(出力軸)の位相角(回転角度位置)に対する位相角、すなわち、クランク軸のある回転角度位置(例えばピストンの上死点又は下死点に相当する回転角度位置)を基準として表現される相対的な角度を意味する。そして、吸気バルブの開弁期間の角度幅というのは、開弁開始の位相角と開弁終了の位相角との差を意味する。
また、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比というのは、吸気バルブの開弁終了時における内燃機関の燃焼室の全体の容積(気筒毎の容積)の、上死点での該燃焼室の全体の容積に対する比率を意味する。
また、内燃機関の負荷(燃焼運転中の負荷)が増加又は減少するということは、それぞれ、内燃機関の要求される出力トルク(目標トルク)が増加又は減少するということと同等である。
これらのことは、第1発明に限らず、後述する他の発明についても同様である。
上記第1発明によれば、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとしての第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を、前記第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、上死点と下死点との間の角度幅(180deg)よりも小さいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも進角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時に、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の燃焼運転を実現できる。
そして、前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を第2進角側開弁開始位相角から第2遅角側開弁開始位相角に向って遅角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を遅角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って進角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
また、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとしての第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を前記第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変位させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも大きいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも遅角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時にも、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の運転を実現できる。
そして、前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を第1遅角側開弁開始位相角から第1進角側開弁開始位相角に向って進角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を進角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って遅角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
さらに、第1発明においては、前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合、すなわち、内燃機関の出力トルクを大きなトルクにしたり、あるいは、該出力トルクを大きく増加させることが要求されていない場合(内燃機関の出力トルクを比較的緩やかに増加させることが要求されている場合)には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御する。この制御によって、実駆動用吸気カムが第2の吸気カムから第1の吸気カムに切替えられる。
この場合、前記特定状態での第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角は、前記第2進角側開弁開始位相角と前記第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も遅角側の位相角(すなわち、第2遅角側開弁開始位相角)である。また、前記特定状態での第1の吸気カムによる吸気カムの開弁期間は、前記第1進角側開弁開始位相角と前記第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も遅角側の位相角(すなわち、第1遅角側開弁開始位相角)である。
そして、該特定状態では、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致する。
このため、内燃機関の負荷の増加中に、前記特定状態で、各吸気カムの位相角の急激な変化を生じることなく、実駆動用吸気カムの切り替えを迅速に行なうことができると共に、この切り替えの前後で、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が不連続的に変化するようなことを防止できることとなる。ひいては、内燃機関の出力トルクの変動が抑制される。
さらに、実駆動用吸気カムの切り替え時における吸気バルブの開弁開始の位相角、すなわち、前記第1遅角側開弁開始位相角又は第2遅角側開弁開始位相角は、上死点と下死点との間の位相角であるので、実駆動用吸気カムの切り替えの前後で、吸気バルブの開弁期間で燃焼室に空気と共に充填される排ガス(EGR装置により還流する排ガス)の量が急変するようなことが回避される。ひいては、失火の発生が防止される。
また、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合、すなわち、内燃機関の出力トルクを大きなトルクにしたり、あるいは、該出力トルクを大きく増加させることが要求されている場合には、前記吸気カム切替制御手段は、内燃機関の負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御する。この制御によって、実駆動用吸気カムが第2の吸気カムから第1の吸気カムに切替えられる。
ここで、第1の吸気カムの位相角が、前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角である状態では、該第1の吸気カムにより吸気バルブを開閉駆動した場合の前記実効圧縮比は、前記特定状態での実効圧縮比よりも大きい。
また、第2の吸気カムの位相角が、前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角である状態では、該第2の吸気カムにより吸気バルブを開閉駆動した場合の前記実効圧縮比は、前記特定状態での実効圧縮比よりも小さい。
従って、前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角で実駆動用吸気カムを第2の吸気カムから第1の吸気カムに切替えることで、前記実効圧縮比が瞬時に増大することとなる。このため、内燃機関の燃焼室に充填される空気量、ひいては、内燃機関の出力トルクを、当該切替えによって、瞬時的に増加させることができることとなる。
これにより、前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、内燃機関の出力トルクを高い応答性で迅速に増大させることができることとなる。
従って、第1発明によれば、前記負荷の要求増加度合いが低い状況では、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことができ、前記負荷の要求増加度合いが高い状況では、高い応答性で内燃機関の出力トルクを増加させるようにすることができる。
よって、第1発明によれば、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうようにすることと、必要に応じて高い応答性で内燃機関の出力トルクを増加させるようにすることとを実現できる。
なお、第1発明において、第1遅角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角とは、互いに異なる位相角でよいことはもちろんであるが、互いに同じ位相角であってもよい。同様に、第1進角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角とは、互いに異なる位相角、互いに同じ位相角のいずれであってもよい。
上記第1発明においては、前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合に、前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうときの前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角の目標値として前記特定状態に対応する位相角よりも進角側に設定されたカム切替位相角と、前記カム位相制御手段により制御される前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角とを比較し、該第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が前記カム切替位相角よりも進角側の位相角である場合には、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角がそれぞれ前記カム切替位相角に制御されてから前記実駆動用吸気カムの切替えを行い、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が、それぞれ前記カム切替位相角に一致するか、又は、該カム切替位相角よりも遅角側の位相角である場合には、前記実駆動用吸気カムの切替えを直ちに行なうことが好ましい(第2発明)。
この第2発明によれば、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合において、第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が前記カム切替位相角よりも進角側の位相角である場合には、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角がそれぞれ前記カム切替位相角に制御されてから前記実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。このため、前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の所望の位相角で、実駆動用吸気カムを第2の吸気カムから第1の吸気カムに切替えることができる。ひいては、その切替時における内燃機関の出力トルクの増加の度合いを所望の度合いに設定できる。
また、第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が、それぞれ前記カム切替位相角に一致するか、又は、該カム切替位相角よりも遅角側の位相角である場合には、前記実駆動用吸気カムの切替えが直ちに行なわれる。これにより、前記実効圧縮比を遅滞なく素早く増加させ、内燃機関の出力トルクを高い応答性で増加させることができる。
この第2発明では、前記吸気カム切替制御手段は、前記カム切替位相角を、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いがより高いほど、より進角側の位相角になるように可変的に設定する手段を含むことが好ましい(第3発明)。
この第3発明によれば、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合において、負荷の要求増加度合いがより高いほど、実駆動用吸気カムの切替えを早期に行なうことができると共に、その切替えによる内燃機関の出力トルクを大きく増加させることができる。
従って、前記負荷の要求増加度合いに適した形態で、内燃機関の出力トルクを素早く増加させることができる。
また、上記第1〜第3発明では、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御するスロットル弁制御手段を備えており、該スロットル弁制御手段は、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合及び低い場合のいずれの場合においても、少なくとも前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御することが好ましい(第4発明)。
この第4発明によれば、少なくとも内燃機関の高負荷運転領域を含む幅広い負荷領域で、前記スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御されるので、内燃機関の吸気通路での空気の圧力損失を低減し、ひいては、所謂ポンピングロスを低減できる。従って、内燃機関のエネルギー効率を高め、該内燃機関の燃料消費を低減できる。
この第4発明において、前記内燃機関が、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関である場合には、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中は、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とが構成されていることが好ましい(第5発明)。
ここで、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるということは、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更又は切替えによって前記実効圧縮比を変更し得る範囲内では、内燃機関の燃焼室に充填する空気量の減少を、スロットル開度を減少させずに、実効圧縮比の減少のみによって行なうか、又は、実効圧縮比の減少とスロットル弁の開度の減少とのうちの実効圧縮比の減少実効圧縮比の減少による空気量の減少度合い(単位時間当たりの減少量)が、スロットル弁の減少による空気量の減少度合いよりもできるだけ多くなるように、実効圧縮比の減少とスロットル弁の開度の減少とを行なうことを意味する。
上記第5発明によれば、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、スロットル弁の開度を減少させること(吸気通路の開口面積を狭くすること)を極力抑制することができる。このため、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、所謂、ポンピングロスによるエネルギー消費が抑制され、当該運転中に内燃機関の駆動対象(例えば車両)の運動エネルギーが、該ポンピングロスによって減少するのを抑制することができる。その結果、内燃機関の出力エネルギーの利用効率が高まり、該内燃機関の燃料消費を抑制することができる。
また、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が減少され、ひいては、該燃焼室から排気される空気量が減少されることで、内燃機関の排気通路に設けられる排ガス浄化用の触媒装置の温度低下が抑制される。ひいては、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、該触媒装置の排ガス浄化能力が低下するのを防止することができる。
上記第5発明では、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理とスロットル弁制御手段の制御処理とは、例えば次のように構成される。
すなわち、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替正制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第2の吸気カムの位相角を維持するように構成され、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されている(第6発明)。
この第6発明によれば、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後の初期においては、前記スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御された状態で、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更や該実駆動用吸気カムの切替えによって、実効圧縮比が連続的に減少させることで、内燃機関の燃焼室に充填する空気量が減少される。
この場合、より具体的には、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始直前の実駆動用吸気カムが第1の吸気カム(高負荷運転用の吸気カム)であった場合には、該実駆動用吸気カムである第1の吸気カムの位相角が、前記カム位相制御手段の制御処理によって前記特定状態に対応する位相角まで遅角方向に変化される。
さらに、該第1の吸気カムの位相角が、前記特定状態に対応する位相角に到達すると、吸気カム切替制御手段の制御処理によって、実駆動用吸気カムが第1の吸気カムから第2の吸気カムに切替えられる。そして、該実駆動用吸気カムである第2の吸気カムの位相角が、前記カム位相制御手段の制御処理によって進角方向に変化され、最終的に、前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達する。
また、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始直前の実駆動用吸気カムが第2の吸気カム(低負荷運転用の吸気カム)であった場合には、該実駆動用吸気カムである第2の吸気カムの位相角が、前記カム位相制御手段の制御処理によって進角方向に変化され、最終的に、前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達する。
上記の如く、実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えが行なわれ、これにより、実効圧縮比が連続的に減少される。
そして、このように実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる期間では、前記スロットル弁制御手段の制御処理によって、スロットル弁の開度は、最大開度寄りの開度又は最大開度に制御される。なお、この場合、スロットル弁の開度は、一定の開度でよいことはもちろんであるが、徐々に変化するように制御されてもよい。
このように、実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えによって、前記実効圧縮比を減少させることができる間は、スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御された状態で、前記実効圧縮比を減少させることで、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させる。これにより、ポンピングロスの発生を抑制しつつ、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させることができる。
また、本発明の内燃機関の制御装置の第2の態様は、前記の目的を達成するために、吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも小さい角度幅になり、且つ、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第1遅角側開弁開始位相角に一致し、且つ、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第2遅角側開弁開始位相角に一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブリフト可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブ位相可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御する機能を有するスロットル弁制御手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、前記内燃機関の燃焼運転中に、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第1遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第1進角側開弁開始位相角と該第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第2遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第2進角側開弁開始位相角と該第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行い、
前記スロットル弁制御手段は、少なくとも前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御し、
さらに、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されていることを特徴とする(第7発明)。
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも小さい角度幅になり、且つ、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第1遅角側開弁開始位相角に一致し、且つ、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第2遅角側開弁開始位相角に一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブリフト可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブ位相可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御する機能を有するスロットル弁制御手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、前記内燃機関の燃焼運転中に、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第1遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第1進角側開弁開始位相角と該第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第2遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第2進角側開弁開始位相角と該第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行い、
前記スロットル弁制御手段は、少なくとも前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御し、
さらに、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されていることを特徴とする(第7発明)。
上記第7発明によれば、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとしての第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を、前記第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、上死点と下死点との間の角度幅(180deg)よりも小さいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも進角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時に、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の燃焼運転を実現できる。
そして、前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を第2進角側開弁開始位相角から第2遅角側開弁開始位相角に向って遅角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を遅角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って進角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
また、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとしての第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を前記第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変位させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも大きいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも遅角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時にも、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の運転を実現できる。
そして、前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を第1遅角側開弁開始位相角から第1進角側開弁開始位相角に向って進角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を進角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って遅角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
さらに、第7発明においては、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行なう。
この場合、前記特定状態での第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角は、前記第2進角側開弁開始位相角と前記第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も遅角側の位相角(すなわち、第2遅角側開弁開始位相角)である。また、前記特定状態での第1の吸気カムによる吸気カムの開弁期間は、前記第1進角側開弁開始位相角と前記第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も遅角側の位相角(すなわち、第1遅角側開弁開始位相角)である。
そして、該特定状態では、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致する。
このため、内燃機関の負荷の増加中、又は負荷の減少中に、前記特定状態で、各吸気カムの位相角の急激な変化を生じることなく、実駆動用吸気カムの切り替えを迅速に行なうことができると共に、この切り替えの前後で、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が不連続的に変化するようなことを防止できることとなる。ひいては、内燃機関の出力トルクの変動が抑制される。
さらに、実駆動用吸気カムの切り替え時における吸気バルブの開弁開始の位相角、すなわち、前記第1遅角側開弁開始位相角又は第2遅角側開弁開始位相角は、上死点と下死点との間の位相角であるので、実駆動用吸気カムの切り替えの前後で、吸気バルブの開弁期間で燃焼室に空気と共に充填される排ガス(EGR装置により還流する排ガス)の量が急変するようなことが回避される。ひいては、失火の発生が防止される。
さらに、第7発明では、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されている。
ここで、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるということの技術的な意味は、前記第5発明と同様である。
従って、第7発明によれば、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、スロットル弁の開度を減少させること(吸気通路の開口面積を狭くすること)を極力抑制することができる。このため、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、所謂、ポンピングロスによるエネルギー消費が抑制され、当該運転中に内燃機関の駆動対象(例えば車両)の運動エネルギーが、該ポンピングロスのよって減少するのを抑制することができる。その結果、内燃機関の出力エネルギーの利用効率が高まり、該内燃機関の燃料消費を抑制することができる。
また、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が減少され、ひいては、該燃焼室から排気される空気量が減少されることで、内燃機関の排気通路に設けられる排ガス浄化用の触媒装置の温度低下が抑制される。ひいては、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、該触媒装置の排ガス浄化能力が低下するのを防止することができる。
以上のように、第7発明によれば、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことと、内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断する状況でのエネルギー損失を低減することとを実現できる。
なお、第7発明において、第1遅角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角とは、互いに異なる位相角でよいことはもちろんであるが、互いに同じ位相角であってもよい。同様に、第1進角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角とは、互いに異なる位相角、互いに同じ位相角のいずれであってもよい。
かかる第7発明では、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理とスロットル弁制御手段の制御処理とは、例えば前記第6発明と同様に構成される。
すなわち、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第2の吸気カムの位相角を維持するように構成され、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されている(第8発明)。
この第8発明によれば、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後の実駆動用吸気カムの位相角の変化の制御と該実駆動用吸気カムの切替えの制御とは、前記第6発明と全く同様に行われる。従って、実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えによって、前記実効圧縮比を減少させることができる間は、スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御された状態で、前記実効圧縮比を減少させることで、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させる。これにより、ポンピングロスの発生を抑制しつつ、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させることができる。
次に、本発明の内燃機関の制御装置の第3の態様は、前記の目的を達成するために、吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも大きい角度幅になり、且つ、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点の位相角よりも進角側の所定の進角側開弁開始位相角で互いに一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の負荷の要求増加度合いの高低を判断する負荷増加要求判断手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御し、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御することを特徴とする(第9発明)。
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも大きい角度幅になり、且つ、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点の位相角よりも進角側の所定の進角側開弁開始位相角で互いに一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の負荷の要求増加度合いの高低を判断する負荷増加要求判断手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御し、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御することを特徴とする(第9発明)。
この第9発明によれば、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとしての第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を、前記進角側開弁開始位相角と前記第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、上死点と下死点との間の角度幅(180deg)よりも大きいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも遅角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時に、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の運転を実現できる。
そして、前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を第1遅角側開弁開始位相角から進角側開弁開始位相角に向って進角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を進角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って遅角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
また、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとしての第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を前記進角側開弁開始制限位相角と前記第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変位させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも小さいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも進角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時にも、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の運転を実現できる。
そして、前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を進角側開弁開始位相角から第2遅角側開弁開始位相角に向って遅角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を遅角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って進角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
さらに、第9発明においては、前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合、すなわち、内燃機関の出力トルクを大きなトルクにしたり、あるいは、該出力トルクを大きく増加させることが要求されていない場合(内燃機関の出力トルクを比較的緩やかに増加させることが要求されている場合)には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御する。この制御によって、実駆動用吸気カムが第1の吸気カムから第2の吸気カムに切替えられる。
この場合、前記特定状態での第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角は、前記進角側開弁開始位相角と前記第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も進角側の位相角(すなわち、進角側開弁開始位相角)である。また、前記特定状態での第2の吸気カムによる吸気カムの開弁期間は、前記進角側開弁開始位相角と前記2遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も進角側の位相角(すなわち、進角側開弁開始位相角)である。
そして、該特定状態では、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致する。
このため、内燃機関の負荷の増加中に、前記特定状態で、各吸気カムの位相角の急激な変化を生じることなく、実駆動用吸気カムの切り替えを迅速に行なうことができると共に、この切り替えの前後で、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が不連続的に変化するようなことを防止できることとなる。ひいては、内燃機関の出力トルクの変動が抑制される。
さらに、実駆動用吸気カムの切り替え時における吸気バルブの開弁開始の位相角、すなわち、前記進角側開弁開始位相角は、実駆動用吸気カムの切り替えの前後で変化しないので、該切り替えの前後で、吸気バルブの開弁期間に燃焼室に空気と共に充填される排ガス(EGR装置により還流する排ガスあるいは吸気行程の直前の排気行程で燃焼室から排出される排ガス)の量が急変するようなことが回避される。ひいては、失火の発生が防止される。
また、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合、すなわち、内燃機関の出力トルクを大きなトルクにしたり、あるいは、該出力トルクを大きく増加させることが要求されている場合には、前記吸気カム切替制御手段は、内燃機関の負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御する。この制御によって、実駆動用吸気カムが第1の吸気カムから第2の吸気カムに切替えられる。
ここで、第1の吸気カムの位相角が、前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の位相角である状態では、該第1の吸気カムにより吸気バルブを開閉駆動した場合の前記実効圧縮比は、前記特定状態での実効圧縮比よりも小さい。
また、第2の吸気カムの位相角が、前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の位相角である状態では、該第2の吸気カムにより吸気バルブを開閉駆動した場合の前記実効圧縮比は、前記特定状態での実効圧縮比よりも大きい。
従って、前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角で実駆動用吸気カムを第1の吸気カムから第2の吸気カムに切替えることで、前記実効圧縮比が瞬時に増大することとなる。このため、内燃機関の燃焼室に充填される空気量、ひいては、内燃機関の出力トルクを、当該切替えによって、瞬時的に増加させることができることとなる。
これにより、前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、内燃機関の出力トルクを高い応答性で迅速に増大させることができることとなる。
従って、第9発明によれば、前記負荷の要求増加度合いが低い状況では、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことができ、前記負荷の要求増加度合いが高い状況では、高い応答性で内燃機関の出力トルクを増加させるようにすることができる。
よって、第9発明によれば、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうようにすることと、必要に応じて高い応答性で内燃機関の出力トルクを増加させるようにすることとを実現できる。
なお、第9発明において、第1遅角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角とは、互いに異なる位相角でよいことはもちろんであるが、互いに同じ位相角であってもよい。
上記第9発明においては、前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合に、前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうときの前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角の目標値として前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側に設定されたカム切替位相角と、前記カム位相制御手段により制御される前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角とを比較し、該第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が前記カム切替位相角よりも遅角側の位相角である場合には、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角がそれぞれ前記カム切替位相角に制御されてから前記実駆動用吸気カムの切替えを行い、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が、それぞれ前記カム切替位相角に一致するか、又は、該カム切替位相角よりも進角側の位相角である場合には、前記実駆動用吸気カムの切替えを直ちに行なうことが好ましい(第10発明)。
この第10発明によれば、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合において、第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が前記カム切替位相角よりも遅角側の位相角である場合には、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角がそれぞれ前記カム切替位相角に制御されてから前記実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。このため、前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の所望の位相角で、実駆動用吸気カムを第1の吸気カムから第2の吸気カムに切替えることができる。ひいては、その切替時における内燃機関の出力トルクの増加の度合いを所望の度合いに設定できる。
また、第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が、それぞれ前記カム切替位相角に一致するか、又は、該カム切替位相角よりも進角側の位相角である場合には、前記実駆動用吸気カムの切替えが直ちに行なわれる。これにより、前記実効圧縮比を遅滞なく素早く増加させ、内燃機関の出力トルクを高い応答性で増加させることができる。
この第10発明では、前記吸気カム切替制御手段は、前記カム切替位相角を、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いがより高いほど、より遅角側の位相角になるように可変的に設定する手段を含むことが好ましい(第11発明)。
この第11発明によれば、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合において、負荷の要求増加度合いがより高いほど、実駆動用吸気カムの切替えを早期に行なうことができると共に、その切替えによる内燃機関の出力トルクを大きく増加させることができる。
従って、前記負荷の要求増加度合いに適した形態で、内燃機関の出力トルクを素早く増加させることができる。
また、上記第9〜第11発明では、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御するスロットル弁制御手段を備えており、
該スロットル弁制御手段は、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合及び低い場合のいずれの場合においても、少なくとも前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御することが好ましい(第12発明)。
該スロットル弁制御手段は、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合及び低い場合のいずれの場合においても、少なくとも前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御することが好ましい(第12発明)。
この第12発明によれば、少なくとも内燃機関の高負荷運転領域を含む幅広い負荷領域で、前記スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御されるので、内燃機関の吸気通路での空気の圧力損失を低減し、ひいては、所謂ポンピングロスを低減できる。従って、内燃機関のエネルギー効率を高め、該内燃機関の燃料消費を低減できる。
この第12発明において、前記内燃機関が、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関である場合には、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中は、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とが構成されていることが好ましい(第13発明)。
ここで、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるということの技術的な意味は、前記第5発明と同様である。
従って、第13発明によれば、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、スロットル弁の開度を減少させること(吸気通路の開口面積を狭くすること)を極力抑制することができる。このため、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、所謂、ポンピングロスによるエネルギー消費が抑制され、当該運転中に内燃機関の駆動対象(例えば車両)の運動エネルギーが、該ポンピングロスのよって減少するのを抑制することができる。その結果、内燃機関の出力エネルギーの利用効率が高まり、該内燃機関の燃料消費を抑制することができる。
また、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が減少され、ひいては、該燃焼室から排気される空気量が減少されることで、内燃機関の排気通路に設けられる排ガス浄化用の触媒装置の温度低下が抑制される。ひいては、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、該触媒装置の排ガス浄化能力が低下するのを防止することができる。
上記第13発明では、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理とスロットル弁制御手段の制御処理とは、例えば次のように構成される。
すなわち、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第1の吸気カムの位相角を維持するように構成され、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されている(第14発明)。
この第14発明によれば、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後の初期においては、前記スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御された状態で、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更や該実駆動用吸気カムの切替えによって、実効圧縮比が連続的に減少させることで、内燃機関の燃焼室に充填する空気量が減少される。
この場合、より具体的には、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始直前の実駆動用吸気カムが第2の吸気カム(高負荷運転用の吸気カム)であった場合には、該実駆動用吸気カムである第2の吸気カムの位相角が、前記カム位相制御手段の制御処理によって前記特定状態に対応する位相角まで進角方向に変化される。
さらに、該第2の吸気カムの位相角が、前記特定状態に対応する位相角に到達すると、吸気カム切替制御手段の制御処理によって、実駆動用吸気カムが第2の吸気カムから第1の吸気カムに切替えられる。そして、該実駆動用吸気カムである第1の吸気カムの位相角が、前記カム位相制御手段の制御処理によって進角方向に変化され、最終的に、前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達する。
また、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始直前の実駆動用吸気カムが第1の吸気カム(低負荷運転用の吸気カム)であった場合には、該実駆動用吸気カムである第1の吸気カムの位相角が、前記カム位相制御手段の制御処理によって遅角方向に変化され、最終的に、前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達する。
上記の如く、実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えが行なわれ、これにより、実効圧縮比が連続的に減少される。
そして、このように実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる期間では、前記スロットル弁制御手段の制御処理によって、スロットル弁の開度は、最大開度寄りの開度又は最大開度に制御される。なお、この場合、スロットル弁の開度は、一定の開度でよいことはもちろんであるが、徐々に変化するように制御されてもよい。
このように、実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えによって、前記実効圧縮比を減少させることができる間は、スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御された状態で、前記実効圧縮比を減少させることで、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させる。これにより、ポンピングロスの発生を抑制しつつ、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させることができる。
また、本発明の内燃機関の制御装置の第4の態様は、前記の目的を達成するために、吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも大きい角度幅になり、且つ、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点の位相角よりも進角側の所定の進角側開弁開始位相角で互いに一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブリフト可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブ位相可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御する機能を有するスロットル弁制御手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記内燃機関の運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行い、
前記スロットル弁制御手段は、少なくとも前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御し、
さらに、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されていることを特徴とする(第15発明)。
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも大きい角度幅になり、且つ、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点の位相角よりも進角側の所定の進角側開弁開始位相角で互いに一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブリフト可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブ位相可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御する機能を有するスロットル弁制御手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記内燃機関の運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行い、
前記スロットル弁制御手段は、少なくとも前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御し、
さらに、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されていることを特徴とする(第15発明)。
上記第15発明によれば、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとしての第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を、前記進角側開弁開始位相角と前記第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、上死点と下死点との間の角度幅(180deg)よりも大きいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも遅角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時に、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の運転を実現できる。
そして、前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を第1遅角側開弁開始位相角から進角側開弁開始位相角に向って進角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を進角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って遅角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
また、内燃機関の燃焼運転中において、内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとしての第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を前記進角側開弁開始制限位相角と前記第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変位させていくように前記バルブ位相可変機構が制御される。
この場合、前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁期間の角度幅は、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも小さいので、該吸気バルブの開弁終了の位相角が、下死点よりも進角側の位相角となるような状態を実現できる。このため、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時にも、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関の運転を実現できる。
そして、前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角を適切に設定しておくことによって、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角を進角側開弁開始位相角から第2遅角側開弁開始位相角に向って遅角方向に変化させていく(ひいては、吸気バルブの開弁期間の全体を遅角方向に変化させていく)ことに伴い、該吸気バルブの開弁終了の位相角を下死点の位相角に向って進角側から近づけていくようにしつつ、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比を増加させていくことができる。ひいては、内燃機関の燃焼運転中に、該内燃機関の負荷の増加に伴い、吸気バルブの開弁期間で内燃機関の燃焼室に充填される空気量を増加させていくようにすることができる。
さらに、第15発明においては、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行なう。
この場合、前記特定状態での第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角は、前記進角側開弁開始位相角と前記第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も進角側の位相角(すなわち、進角側開弁開始位相角)である。また、前記特定状態での第2の吸気カムによる吸気カムの開弁期間は、前記進角側開弁開始位相角と前記2遅角側開弁開始位相角との間の範囲で最も進角側の位相角(すなわち、進角側開弁開始位相角)である。
そして、該特定状態では、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致する。
このため、内燃機関の負荷の増加中又は減少中に、前記特定状態で、各吸気カムの位相角の急激な変化を生じることなく、実駆動用吸気カムの切り替えを迅速に行なうことができると共に、この切り替えの前後で、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が不連続的に変化するようなことを防止できることとなる。ひいては、内燃機関の出力トルクの変動が抑制される。
さらに、実駆動用吸気カムの切り替え時における吸気バルブの開弁開始の位相角、すなわち、前記進角側開弁開始位相角は、実駆動用吸気カムの切り替えの前後で変化しないので、該切り替えの前後で、吸気バルブの開弁期間に燃焼室に空気と共に充填される排ガス(EGR装置により還流する排ガスあるいは吸気行程の直前の排気行程で燃焼室から排出される排ガス)の量が急変するようなことが回避される。ひいては、失火の発生が防止される。
さらに、第15発明では、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されている。
ここで、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるということの技術的な意味は、前記第5発明と同様である。
従って、第15発明によれば、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、スロットル弁の開度を減少させること(吸気通路の開口面積を狭くすること)を極力抑制することができる。このため、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、所謂、ポンピングロスによるエネルギー消費が抑制され、当該運転中に内燃機関の駆動対象(例えば車両)の運動エネルギーが、該ポンピングロスによって減少するのを抑制することができる。その結果、内燃機関の出力エネルギーの利用効率が高まり、該内燃機関の燃料消費を抑制することができる。
また、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、内燃機関の燃焼室に充填される空気量が減少され、ひいては、該燃焼室から排気される空気量が減少されることで、内燃機関の排気通路に設けられる排ガス浄化用の触媒装置の温度低下が抑制される。ひいては、燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中に、該触媒装置の排ガス浄化能力が低下するのを防止することができる。
以上のように、第15発明によれば、内燃機関の出力の変動や失火の発生を抑制するように内燃機関の燃焼運転を行なうことと、内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断する状況でのエネルギー損失を低減することとを実現できる。
なお、第15発明において、第1遅角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角とは、互いに異なる位相角でよいことはもちろんであるが、互いに同じ位相角であってもよい。
かかる第15発明では、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理とスロットル弁制御手段の制御処理とは、例えば前記第14発明と同様に構成される。
すなわち、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第1の吸気カムの位相角を維持するように構成され、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されている(第16発明)。
この第16発明によれば、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後の実駆動用吸気カムの位相角の変化の制御と該実駆動用吸気カムの切替えの制御とは、前記第14発明と全く同様に行われる。従って、実駆動用吸気カムの位相角の変化や、実駆動用吸気カムの切替えによって、前記実効圧縮比を減少させることができる間は、スロットル弁の開度が最大開度寄りの開度又は最大開度に制御された状態で、前記実効圧縮比を減少させることで、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させる。これにより、ポンピングロスの発生を抑制しつつ、内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させることができる。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を以下に説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態のシステムは、車両に走行用の動力源として搭載された内燃機関1と、この内燃機関1の運転制御を行う電子制御装置50とを備えている。
本発明の第1実施形態を以下に説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態のシステムは、車両に走行用の動力源として搭載された内燃機関1と、この内燃機関1の運転制御を行う電子制御装置50とを備えている。
内燃機関1は、本実施形態では、例えば4気筒の内燃機関である。但し、内燃機関1の気筒数は、4個である必要はない。例えば内燃機関1は、単気筒もしくは6気筒の内燃機関であってもよい。
この内燃機関1の吸気系は、各気筒2の燃焼室3で燃焼させる燃料と混合する空気(新気)を、全気筒2に対して共通の吸気通路4と各気筒2の燃焼室3の吸気ポートに連通するインテークマニホールド5とを順に経由して各気筒2の燃焼室3に供給するように構成されている。
この場合、吸気通路4には、これに外部から流入する空気中(大気中)の不要物を除去するエアクリーナ6と、空気の流量を調整するためのスロットル弁7とが上流側から順に介装されている。スロットル弁7は、電動式のスロットル弁であり、その開度が図示しない電動モータを介して制御される。
そして、各気筒2の燃焼室3の吸気ポートを開閉するための吸気バルブ8と、該吸気バルブ8を開閉駆動する吸気バルブ駆動機構9とが内燃機関1に付設されている。
本実施形態では、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を可変的に制御可能なアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転を実現するするために、吸気バルブ駆動機構9は、吸気バルブ8の開弁期間の位相角を変化させるための公知のバルブ位相可変機構10(所謂、VTCと言われる機構)と、吸気バルブ8のリフト量(最大開度)と開弁期間の角度幅とを変化させるための公知のバルブリフト可変機構11(所謂、VTEC(登録商標)と言われる機構)とを有する構成とされている。
なお、吸気バルブ8の開弁期間の角度幅というのは、吸気バルブ8の開弁開始から開弁終了までの開弁期間を、内燃機関1の出力軸であるクランク軸12の回転角度幅で表したもの、すなわち、吸気バルブ8の開弁開始時のクランク軸12の位相角(回転角度位置)と吸気バルブ8の開弁終了時のクランク軸12の位相角との間の角度差である。また、吸気バルブ8の開弁期間の位相角というのは、該開弁期間の全体がクランク軸12のどの位相角の範囲に存在するかを代表的に示す位相角を意味し、例えば吸気バルブ8の開弁開始の位相角(開弁開始時のクランク軸12の位相角)又は吸気バルブ8の開弁終了の位相角(開弁終了時のクランク軸12の位相角)により表される。
詳細な構成の図示は省略するが、上記吸気バルブ駆動機構9の概略的な構成は次の通りである。すなわち、図2を参照して、吸気バルブ駆動機構9は、上記バルブ位相可変機構10及びバルブリフト可変機構11を備えると共に、各気筒2毎に、2つの吸気カム13L,13Hを備えており、これらの吸気カム13L,13Hは、吸気側カムシャフト14と一体に回転するようにして該吸気側カムシャフト14に軸支されている。
上記吸気カム13L,13Hのプロフィール(形状パターン)は、吸気バルブ8のリフト量と開弁期間の角度幅との組が互いに異なるものとなるように設定されている。
これらの吸気カム13L,13Hのプロフィールは、図3に実線a,dで示す如く、吸気カム13Hによる吸気バルブ8のリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、吸気カム13Lよる吸気バルブ8のリフト量及び開弁期間の角度幅よりも大きくなるように設定されている(以降、吸気カム13Hを大リフト吸気カム13H、吸気カム13Lを小リフト吸気カム13Lということがある)。なお、図3の横軸のクランク角度は、クランク軸12の位相角を意味する。
この場合、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅は、小リフト吸気カム13Lよる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅よりも、各気筒2のピストン15の上死点の位相角と下死点の位相角との間の角度差(=180deg)により近い角度幅に設定されている。より詳しくは、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅は、例えば、上死点の位相角と下死点の位相角との間の角度差(=180deg)よりも若干大きい角度幅(例えば190deg程度)に設定されている。
また、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅は、上死点の位相角と下死点の位相角との間の角度差(=180deg)よりも小さく、例えば、100deg程度に設定されている。
そして、吸気バルブ駆動機構9は、吸気バルブ8をロッカアーム16を介して実際に開閉駆動する吸気カム(以降、実駆動用吸気カムという)を、油圧式のバルブリフト可変機構11によって、小リフト吸気カム13Lと、大リフト吸気カム13Hとのいずれか一方に選択的に切替えるように構成されている。この場合、小リフト吸気カム13Lは、内燃機関1の低負荷運転用の吸気カムとして用いられ、大リフト吸気カム13Hは、内燃機関1の高負荷運転用の吸気カムとして用いられる。
上記バルブリフト可変機構11は、公知の構造のものであり、例えば特開2005−180306号公報の図2に示されるものと同様の構成のものが採用される。但し、バルブリフト可変機構11は、実駆動用吸気カムを、小リフト吸気カム13Lと大リフト吸気カム13Hとのいずれか一方に選択的に切替えることができる機構であれば他の構成のものを採用してもよい。また、バルブリフト可変機構11は、油圧式のものに限らず、電動式のものであってもよい。
また、吸気カム13L,13Hを軸支する吸気側カムシャフト14は、内燃機関1のクランク軸12に連動して回転する(クランク軸12の2回転毎に1回転する)ように該クランク軸12にタイミングベルト(図示省略)を介して接続された油室形成部材に(図示省略)に軸支されており、その回転方向での該油室形成部材に対する吸気側カムシャフト14の位相角(角度位置)を所定の角度範囲内で変化させることが可能となっている。
これにより、クランク軸12の位相角に対する吸気側カムシャフト14の位相角、ひいては小リフト吸気カム13Lと大リフト吸気カム13Hの位相角を所定の角度範囲内で連続的に変化させることが可能となっている。
そして、吸気バルブ駆動機構9は、クランク軸12の位相角に対する吸気側カムシャフト14の位相角(ひいてはクランク軸12の位相角に対する小リフト吸気カム13L及び大リフト吸気カム13Hの位相角)を、油圧式のバルブ位相可変機構10によって変化させるように構成されている。この構成によって、図3に示す如く、小リフト吸気カム13L及び大リフト吸気カム13Hのそれぞれによる吸気バルブ8の開弁期間の位相角を所定の範囲で連続的に変化させることができるようになっている。
上記バルブ位相可変機構10は、公知の構造のものであり、例えば、特開2005−180306号公報の図3に示されるものと同様の構成のものが採用される。但し、バルブ位相可変機構10は、クランク軸12の位相角に対する小リフト吸気カム13L及び大リフト吸気カム13Hの位相角を所定の範囲で連続的に変化させることができる機構であれば他の構成のものを採用してもよい。また、バルブ位相可変機構10は、油圧式のものに限らず、電動式のものであってもよい。
ここで、吸気カム13L,13Hのプロフィールと、吸気カム13L,13Hの位相角の変化及び吸気カム13L,13Hの切り替えとによって実現される吸気バルブ8の開弁形態についてさらに詳細に説明する。
本実施形態では、吸気カム13L,13Hは、吸気側カムシャフト14と一体に回転するので、吸気カム13L,13Hの相互の位相関係、ひいては、それぞれの吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の相互の位相関係は一定に保たれる。
なお、本実施形態の例では、吸気カム13L,13Hの相互の位相関係は、図3に示す如く、それぞれの吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角が互いに同じ位相角となるように設定されているが、吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角がある程度、異なっていてもよい。
そして、本実施形態では、吸気カム13L,13Hの位相角の変化(ひいては、各吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の位相角の変化)は、図3の実線a,dで示す状態と、図3の破線b,cで示す状態との間の範囲で行なわれるようになっている。
図3の実線a,dで示す状態は、吸気カム13L,13Hの位相角が最も進角側に制御された状態である。この状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角は、本実施形態では、上死点の位相角との差の大きさが十分に微小なものとなる所定の位相角A1(上死点の位相角に一致もしくはほぼ一致する位相角)に設定されている。この位相角A1は、例えば上死点の位相角から10deg程度、進角側の角度である。
そして、吸気カム13L,13Hのそれぞれによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅と、図3の実線a,dで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角A1とが前記した如く設定されているので、小リフト吸気カム13Lに関する図3の実線aの状態では、吸気バルブ8の開弁終了の位相角A3は、下死点の位相角よりも進角側の位相角(本実施形態では、下死点の位相角から90deg程度、進角側の位相角)に設定されることとなる。
また、大リフト吸気カム13Hに関する図3の実線dの状態では、吸気バルブ8の開弁終了の位相角は、下死点の位相角との差の大きさが十分に微小なものとなる位相角A5(下死点の位相角に一致もしくはほぼ一致する位相角)に設定されることとなる。その位相角A5は、本実施形態の例では、下死点と同じ位相角である。
また、図3の破線b,cで示す状態は、吸気カム13L,13Hの位相角が最も遅角側に制御された状態である。この状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角は、吸気カム13L,13Hにいずれについても、上死点の位相角よりも遅角側で、且つ、下死点の位相角よりも進角側の所定の位相角A2に設定される。
この位相角A2は、本実施形態では、図3の実線a,dで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角A1から例えば60deg程度だけ遅角させた位相角(従って、上死点から50deg程度だけ遅角した位相角)に設定されている。
このため、大リフト吸気カム13Hに関する図3の破線cで示す状態では、吸気バルブ8の開弁終了の位相角A6は、下死点の位相角よりも遅角側の位相角とされ、小リフト吸気カム13Lに関する図3の破線bで示す状態では、吸気バルブ8の開弁終了の位相角A4は、下死点よりも進角側の位相角とされている。
本実施形態では、以上の如く、吸気カム13L,13Hのプロフィールや、吸気バルブ8の開弁開始の位相角A1,A2、開弁終了の位相角A3,A4,A5,A6が設定されている。このため、吸気バルブ8を開閉駆動する実駆動用吸気カム13L又は13Hをバルブリフト可変機構11により切り替え、あるいは、吸気カム13L,13Hの位相角をバルブ位相可変機構10によって変化させる(ひいては吸気バルブ8の開弁形態のパターンを上記の如く変化させる)ことによって、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を可変的に設定することが可能となっている。
該実効圧縮比は、より詳しくは、各気筒2の吸気バルブ8の開弁終了時における燃焼室3(空気充填室)の全体の容積V_IVCの、ピストン15の上死点での燃焼室3(空気充填室)の全体の容積V_TDCに対する比率(=V_IVC/V_TDC)である。
例えば、小リフト吸気カム13Lにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合に、小リフト吸気カム13Lの位相角を、図3の実線aの状態での位相角(最も進角側の位相角)から破線bの状態での位相角(最も遅角側の位相角)に向って連続的に変化させることによって、図4に示す如く、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を連続的に増加させることができる。
より詳しくは、本実施形態では、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開閉駆動時には、小リフト吸気カム13Lの位相角を進角側から遅角側に変化させるに伴い、吸気バルブ8の開弁終了の位相角が、下死点の位相角よりも進角側の位相角から、該下死点の位相角に近づいていくようになっている。このため、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開閉駆動時に、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転が実現される。同時に、小リフト吸気カム13Lの位相角を進角側から遅角側に変化させることに伴い、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していくこととなる。
なお、図4中の括弧付きの参照符号は、後述する第2実施形態に関する参照符号である。
また、大リフト吸気カム13Hにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合に、大リフト吸気カム13Hの位相角を、図3の破線cの状態での位相角(最も遅角側の位相角)から実線dの状態での位相角(最も進角側の位相角)に向って連続的に変化させることによって、図4に示す如く、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を連続的に増加させることができる。
より詳しくは、本実施形態では、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開閉駆動時には、大リフト吸気カム13Hの位相角を遅角側から進角側に変化させるに伴い、吸気バルブ8の開弁終了の位相角が、下死点の位相角よりも遅角側の位相角から、該下死点の位相角に近づいていくようになっている。このため、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開閉駆動時にも、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転が実現される。同時に、大リフト吸気カム13Hの位相角を遅角側から進角側に変化させることに伴い、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していくこととなる。
なお、本実施形態では、図3の実線dの状態では、吸気バルブ8の開弁開始及び開弁終了が、それぞれ上死点、下死点とほぼ同じ位相角で行なわれることとなることから、実効圧縮比が膨張比とほぼ同一となるオットーサイクルでの内燃機関1の運転が実現されることとなる。
補足すると、吸気バルブ8の開弁期間で各気筒2の燃焼室3に充填される空気量(より詳しくは、スロットル弁7の開度や大気温度等、吸気バルブ8の動作条件以外の条件を一定とした場合の空気量)は、上記実効圧縮比にほぼ比例し、該実効圧縮比が大きくなるほど、上記空気量も増加する。
従って、実駆動用吸気カム(小リフト吸気カム13L又は大リフト吸気カム13H)の位相角を変化させることによる各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比の増加又は減少に伴い、該燃焼室3に充填される空気量も増加又は減少させることができることとなる。
また、本実施形態では、吸気カム13L,13Hのそれぞれの位相角を最も遅角側の位相角に制御した状態、すなわち、吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁期間が図3の破線b,cで示す開弁期間となる状態では、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合と、大リフト吸気カム13Hを使用した場合とのいずれの場合であっても、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が、互いに同一もしくはほぼ同一となるように、吸気カム13L,13Hのプロフィールが設定されている。
このため、吸気カム13L,13Hの位相角を、図3の破線b,cの状態に対応する最も遅角側の位相角に制御した状態で、実駆動用吸気カムを吸気カム13L,13Hの一方から他方に切替えるようにすることで、実駆動用吸気カムの切り替え時に、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比や該燃焼室3に充填される空気量を一定もしくはほぼ一定に保つことができるようになっている。
図1の説明に戻って、内燃機関1の排気系は、各気筒2の燃焼室3で生成される排ガスを、各気筒2の燃焼室3の排気ポートに連通するエギゾーストマニホールド17と、全気筒2に対して共通の排気通路18とを順に経由して排気するように構成されている。この場合、排気通路18には、排ガス浄化用の触媒装置19が介装されている。
そして、各気筒2の燃焼室3の排気ポートを開閉するための排気バルブ20と、該排気バルブ20を開閉駆動する排気バルブ駆動機構21とが内燃機関1に付設されている。
この排気バルブ駆動機構21は、内燃機関1のクランク軸12に連動して回転する(クランク軸12の2回転毎に1回転する)排気側カムシャフト22に、これと一体に回転自在に軸支された排気カム23を各気筒2毎に備えており、この排気カム23により、ロッカアーム24を介して排気バルブ20を開閉駆動する。
この場合、排気カム23のプロフィール(形状パターン)は、それにより規定される排気バルブ20の開弁期間及びリフト量が、例えば図5に示すようなパターンとなるように設定されている。このパターンでは、排気バルブ20の開弁期間の角度幅が、各気筒2のピストン15の下死点の位相角と上死点の位相角との間の角度差(180deg)よりも若干大きい角度幅に設定される。そして、排気バルブ20の開弁開始の位相角と開弁終了の位相角とは、それぞれ下死点の位相角よりも若干進角側の位相角、上死点の位相角よりも若干遅角側の位相角に設定される。
上記の如く構成された内燃機関1の吸気系及び排気系には、さらにEGR装置25が付設されている。
EGR装置25は、排ガスの一部を吸気側に還流させ、その還流させた排ガスを各気筒2の燃焼室3に空気(燃料と混合する新気)と共に供給する装置であり、排気通路18の上流端部(エギゾーストマニホールド17との接続箇所近辺)から分流されてインテークマニホールド5に合流されたEGR通路27(還流される排ガスの通路)を備えている。
このEGR通路27には、吸気側に還流させる排ガスを冷却する排ガス冷却手段としてのEGRクーラ28と、該排ガスの流量を制御するための電動式又は電磁式の流量制御弁29(以下、EGR弁29という)とが介装され、EGR弁29の開度を制御することで、EGR率(燃焼室3に供給する空気と排ガスとの総量に対する排ガス量の割合い)を制御することが可能となっている。
また、内燃機関1には、各気筒2の燃焼室3で燃焼させる燃料を供給する燃料供給装置の構成要素として各気筒2毎に設けられた燃料噴射弁33が付設されている。この燃料噴射弁33には、図示しない燃料タンクからポンプ等により昇圧された燃料(例えばガソリン)が供給されるようになっている。
燃料噴射弁33は、本実施形態では、ポート噴射型のものであり、図2に示す如くインテークマニホールド5に取り付けられている。そして、燃料噴射弁33は、その開弁時間を制御することで、燃料噴射量(燃焼室3への燃料供給量)を制御することが可能となっている。なお、燃料噴射弁33は直噴型のものであってもよい。
また、内燃機関1には、各気筒2の燃焼室3で圧縮される混合気に点火する点火装置の構成要素として各気筒2毎に設けられた点火プラグ40が付設されている。
点火プラグ40は、図2に示すように各気筒2の燃焼室3の頂部に装着され、所要のタイミングで図示しないディストリビュータから高電圧が供給されて火花放電を発生する。
以上が本実施形態のシステム(内燃機関1及びこれに付帯するシステム)の機構的な構成である。
電子制御装置50は、CPU、RAM、ROM等を含む電子回路ユニットであり、前記スロットル弁7、吸気バルブ駆動機構9のバルブ位相可変機構10及びバルブリフト可変機構11、EGR装置25のEGR弁29、燃料噴射弁33、点火プラグ40の動作を制御する。
これらの制御を担う電子制御装置50には、各種のセンサの検出信号が入力される。本実施形態のシステムでは、以下に示すようなセンサが備えられており、これらのセンサの検出信号が電子制御装置50に入力される。
電子制御装置50は、CPU、RAM、ROM等を含む電子回路ユニットであり、前記スロットル弁7、吸気バルブ駆動機構9のバルブ位相可変機構10及びバルブリフト可変機構11、EGR装置25のEGR弁29、燃料噴射弁33、点火プラグ40の動作を制御する。
これらの制御を担う電子制御装置50には、各種のセンサの検出信号が入力される。本実施形態のシステムでは、以下に示すようなセンサが備えられており、これらのセンサの検出信号が電子制御装置50に入力される。
すなわち、本実施形態のシステムでは、内燃機関1のクランク軸12の回転数NE(回転速度)を検出するための信号(詳しくは、クランク軸12の所定の回転角度毎に発生するパルス信号)を出力する回転数センサ51が内燃機関1に付設されている。
また、吸気通路4を流れる空気の流量Qを検出する空気流量センサ52と、スロットル弁7に流入する空気の圧力P2を検出する圧力センサ53とが吸気通路4に設けられている。
さらに、本実施形態のシステムには、図示を省略する車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下、アクセル操作量APという)を検出するアクセルセンサ54が備えられている。
なお、図示は省略するが、上記以外にも、車両の車速を検出するセンサや、スロットル弁の開度を検出するセンサ、吸気バルブ駆動機構9の動作状態(実駆動用吸気カムの位相角と実駆動用吸気カムの種別)を検出するためのセンサ等も備えられている。
次に、本実施形態のシステムの作動を説明する。前記電子制御装置50は、内燃機関1の運転を制御するために、図の6フローチャートに示す制御処理を実行する。
まず、STEP1において、電子制御装置50は、車両及び内燃機関1の状態に関する検出データを取得する。例えば、車両の車速、アクセル操作量AP、内燃機関1の回転数NE、吸気通路4を流れる空気の流量Q、スロットル弁7に流入する空気の圧力P2等の検出データが取得される。
次いで、STEP2において、電子制御装置50は、内燃機関1の負荷の要求増加度合いを表すものとして、車両の要求加速の高低を判断する。この判断は、アクセル操作量AP(検出値)の大きさとその時間的変化率(単位時間当たりの変化量)とに基づいて行なわれる。
具体的には、例えば、アクセル操作量APの大きさが所定値以上の大きな操作量である場合、あるいは、アクセル操作量APの時間的変化率が、APの増加方向で所定値以上の大きさである場合に、車両の要求加速が高い(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが高い)と判断される。そして、これら以外の場合には、車両の要求加速が低い(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが高い)と判断される。
なお、STEP2の判断を、車両の変速機のシフト位置や、トルクコンバータの滑り状態等を考慮して行なうようにしてもよい。
STEP2において車両の要求加速が低いと判断される状況は、内燃機関1の出力トルクを大きなトルクに素早く増加させることが要求されていない状況(内燃機関1の出力トルクをほぼ一定に保持するか、又は減少させようとする場合を含む)である。
そして、この場合には、電子制御装置50は、STEP3において、以下に説明するカム切替位相角θVTCswとして既定の所定値θsw0を設定する。
ここで、本実施形態の吸気バルブ駆動機構9では、バルブ位相可変機構10による大リフト吸気カム13H及び小リフト吸気カム13Lの位相角の変化は、両吸気カム13H,13L間の位相を一定に保持した状態で行なわれるので、両吸気カム13H,13Lの一方の位相角を決めれば、他方の位相角も一義的に決まる。
そこで、本実施形態の説明では、大リフト吸気カム13H及び小リフト吸気カム13Lのそれぞれの位相角(又は実駆動用吸気カムの位相角)を、共通の位相角によって代表的に表すものとし、その共通の位相角をθVTCと表記する。この場合、θVTCは、図3の実線a,dの状態に対応する位相角と、図3の破線b,cの状態に対応する位相角との間で可変となる。
上記カム切替位相角θVTCswは、実駆動用吸気カムを大リフト吸気カム13H及び小リフト吸気カム13Lの一方から他方に切替える時の両リフト吸気カム13H,13Lの共通の位相角θVTCの値を意味する。
そして、STEP3において、カム切替位相角θVTCswとして設定される位相角θsw0は、θVTCの可変範囲のうち、図3の破線b,cの状態に対応する最も遅角側の位相角θVTCの値、すなわち、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hである場合と小リフト吸気カム13Lである場合とで、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が互いに同一となるような位相角である。以降、この位相角θsw0をカム切替標準位相角という。
また、STEP2において車両の要求加速が高いと判断される状況は、内燃機関1の出力トルクを大きなトルクに素早く増加させることが要求される状況である。この場合には、電子制御装置50は、STEP4において、カム切替位相角θVTCswを可変的に設定する処理を実行する。
この処理は、図7のフローチャートに示す如く実行される。すなわち、電子制御装置50は、まず、STEP4−1において、アクセル操作量APの最新値(現在値)を読み込む。
さらに、電子制御装置50は、STEP4−2において、アクセル操作量APの現在の時間的増加率ΔAPを、アクセル操作量APの最新値と、直前の1つ以上の過去値とを用いて算出する。例えば、アクセル操作量APの最新値と電子制御装置50の前回の演算処理周期での値(前回値)との偏差、又は該偏差を電子制御装置50の演算処理周期の時間で除算してなる値が、ΔAPとして算出される。
なお、アクセル操作量APの最新値と、所定時間前までの2つ以上の過去値とから、該所定時間の期間でのアクセル操作量APの平均的な増加率を、ΔAPとして算出するようにしてもよい。
次いで、STEP4−3において、電子制御装置50は、アクセル操作量APの最新値と、時間的変化率ΔAPとに応じて、カム切替位相角θVTCswの基本値を決定する。
この場合、カム切替位相角θVTCswの基本値は、アクセル操作量APの最新値と、時間的変化率ΔAPとから、図8に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて決定される。このマップでは、基本的には、アクセル操作量APが大きいほど、また、ΔAPが大きいほど、カム切替位相角θVTCの基本値が、前記カム切替標準位相角θsw0よりも進角側の位相角となるように決定される。
なお、実駆動用吸気カムの切替え時における内燃機関1の出力トルクの変動が過大になり過ぎないようにするために、カム切替位相角θVTCswの基本値は、既定の所定値θsw1を進角側の限界値とされ、この所定値θsw1から遅角側の範囲内で決定される。
次いで、STEP4−4において、電子制御装置50は、吸気カム13H,13Lの現在の実際の位相角θVTC(検出値)が、STEP4−3で決定したカム切替位相角θVTCswの基本値よりも遅角側の位相角であるか否かを判断する。
そして、この判断結果が否定的である場合には、次に、STEP4−6において、電子制御装置50は、上記の如く決定したカム切替位相角θVTCswの基本値をそのままθVTCswの値として決定する。
また、STEP4−4の判断結果が肯定的である場合には、次に、STEP4−5において、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの切替えを直ちに行なうようにするために、吸気カム13H,13Lの現在の実際の位相角θVTC(検出値)を、カム切替位相角θVTCswとして決定する。
図6の説明に戻って、以上の如くSTEP3又はSTEP4の処理によって、カム切替位相角θVTCswを決定した後、電子制御装置50は、次に、STEP5において、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転を行うべき状況であるか否かを判断する。
ここで、燃料カット運転モードは、車両の走行中に、アクセルペダルの操作がオフにされた状況(内燃機関1の出力トルクの発生の要求が解除された状況)で、燃料消費を削減するために、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3への燃料供給を遮断すると共に、これと併せて、内燃機関1の排気通路18に設けられている排ガス浄化用の触媒装置19が冷やされるのを防止するために、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に充填する空気量を減少させる運転モードである。
そして、STEP5の判断は、例えば次のように行なわれる。すなわち、本実施形態では、電子制御装置50は、現在の車速(検出値)が所定値以上で、且つ、内燃機関1の現在の回転数NE(検出値)が所定値以上で、且つ、現在のアクセル操作量AP(検出値)が所定値以下(≒0)である場合に、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転を行うべき状況であると判断する。
STEP5の判断結果が否定的である場合(以降、内燃機関1の通常運転の場合ということがある)には、電子制御装置50は、STEP6〜9の処理を実行することで、吸気バルブ駆動機構9、スロットル弁7、及びEGR装置25に関する動作目標を決定する。
具体的には、電子制御装置50は、STEP6において、内燃機関1の目標トルクを決定する。この目標トルクは、あらかじめ定められたマップ等に基づいて、アクセル操作量AP(検出値)に応じて決定される。この場合、目標トルクは、アクセル操作量APが大きいほど、大きくなるように決定される。
次いで、STEP7において、電子制御装置50は、上記目標トルクの出力トルクを内燃機関1に発生させるための必要な目標空気量(詳しくは吸気通路4の空気の流量Qの目標値)を決定する。
この目標空気量は、上記目標トルクと、内燃機関1の回転数NE(検出値)とから、あらかじめ定められたマップ等に基づいて決定される。この場合、目標空気量は、目標トルクが大きいほど、大きくなり、また、回転数NEが高いほど、大きくなるように決定される。
次いで、STEP8において、電子制御装置50は、目標空気量を実現するための内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比の目標値である目標実効圧縮比と、スロットル弁7の開度の目標値である目標スロットル開度とを決定する共に、該目標空気量に対応するEGR装置25のEGR率の目標値である目標EGR率とを決定する。
具体的には、電子制御装置50は、STEP7で決定した目標空気量と、前記圧力センサ53の出力により認識される圧力P2(スロットル弁7に流入する空気の圧力)の検出値と、内燃機関1の回転数NEの検出値とから図9に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、目標実効圧縮比を決定する。この場合、図9に示すマップの基本的な傾向は、目標空気量が大きいほど、目標実効圧縮比が増加し、また、圧力P2が大きいほど、目標実効圧縮比が減少するように設定されている。
また、電子制御装置50は、目標空気量と、圧力P2の検出値と、回転数NEの検出値とから図10に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、目標スロットル開度を設定する。この場合、図10に示すマップの基本的な傾向は、目標空気量が大きいほど、目標スロットル開度が増加し、また、圧力P2が大きいほど、目標スロットル開度が減少し、また、回転数NEが高いほど、目標スロットル開度が増加するように設定されている。
また、電子制御装置50は、目標空気量と、圧力P2の検出値と、回転数NEの検出値とから図11に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、目標EGR率を決定する。この場合、図11に示すマップの基本的な傾向は、目標空気量が大きいほど、目標EGR率が減少し、また、圧力P2が大きいほど、目標EGR率が増加するように設定されている。
なお、前記目標空気量は、内燃機関1の目標トルクが高いほど、大きくなるように設定されるので、図9のマップを用いて決定される目標実効圧縮比は、結果的に、該目標トルクが大きいほど(換言すれば、内燃機関1の負荷が高いほど)、大きくなるような特性で決定されることなる。
また、図10のマップを用いて決定される目標スロットル開度は、結果的に、内燃機関1の目標トルクが大きいほど(内燃機関1の負荷が高いほど)、大きくなるような特性で決定されることなる。
また、図11のマップを用いて決定される目標EGR率は、結果的に、内燃機関1の目標トルクが大きいほど(内燃機関1の負荷が高いほど)、小さくなるような特性で決定されることなる。
図6の説明に戻って、次に、電子制御装置50はSTEP9において、吸気カム13H,13Lの動作目標を決定する処理を実行する。該動作目標は、具体的には、実駆動用吸気カムの種別(大リフト吸気カム13H及び小リフト吸気カム13Lのいずれか)の目標と、実駆動用吸気カムの位相角(吸気カム13H,13Lの位相角θVTC)の目標値とから構成される。
このSTEP9の処理は、具体的には図12のフローチャートに示す如く実行される。すなわち、電子制御装置50は、まず、STEP9−1において、吸気カム13H,13Lの現在の動作状態を取得する。具体的には、電子制御装置50は、現在の実駆動用吸気カムの種別が、吸気カム13H,13Lのいずれであるかを示す検出データと、実駆動用吸気カムの現在の位相角θVTCを示す検出データとをそれぞれ図示しないセンサから取得する。
次いで、STEP9−2において、電子制御装置50は、目標実効圧縮比(STEP8で決定した目標実効圧縮比)に応じて、実駆動用吸気カムの種別の目標と、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの基本目標値とを決定する。
このSTEP9−2の処理は、図13(a),(b)に示す如くあらかじめ設定されたマップを用いて次のように行なわれる。図13(a)のマップは、実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lである場合の、目標実効圧縮比と実駆動用吸気カムの位相角θVTC(基本目標値)との関係を規定するマップ、図13(b)のマップは、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hである場合の、目標実効圧縮比と実駆動用吸気カムの位相角θVTC(基本目標値)との関係を規定するマップである。
電子制御装置50は、現在の実駆動用吸気カムが、小リフト吸気カム13Lであり、且つ、目標実効圧縮比が、図13(a)に示す所定値Ba以下の圧縮比である場合には、実駆動用吸気カムの種別の目標を、小リフト吸気カム13Lに維持する。なお、所定値Baは、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合の上限の実効圧縮比である。
そして、電子制御装置50は、図13(a)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=小リフト吸気カム13L)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。この場合、位相角θVTCの基本目標値は、目標実効圧縮比が大きいほど、遅角側の位相角となるように決定される。なお、図13(a)に示す最進角は、図3の実線aの状態に対応する最も進角側の位相角、最遅角は、図3の破線bの状態に対応する最も遅角側の位相角(=前記カム切替標準位相角θsw0)である。このことは、図13(b)に示す最進角、最遅角についても同様である。
また、現在の実駆動用吸気カムが、小リフト吸気カム13Lであり、且つ、目標実効圧縮比が、図13(a)に示す所定値Baよりも大きい圧縮比である場合には、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの種別の新たな目標を、小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hに切替える。
そして、電子制御装置50は、図13(b)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=大リフト吸気カム13H)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。この場合、位相角θVTCの基本目標値は、目標実効圧縮比が大きいほど、進角側の位相角となるように決定される。
また、現在の実駆動用吸気カムが、大リフト吸気カム13Hであり、且つ、目標実効圧縮比が、図13(b)に示す所定値Bb以上の圧縮比である場合には、実駆動用吸気カムの種別の目標を、大リフト吸気カム13Hに維持する。なお、所定値Bbは、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hを使用した場合の下限の実効圧縮比である。
そして、電子制御装置50は、図13(b)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=大リフト吸気カム13H)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。
また、現在の実駆動用吸気カムが、大リフト吸気カム13Hであり、且つ、目標実効圧縮比が、図13(b)に示す所定値Bbよりも小さい圧縮比である場合には、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの種別の新たな目標を、大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lに切替える。
そして、電子制御装置50は、図13(a)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=小リフト吸気カム13L)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。
補足すると、本実施形態では、図13(a),(b)における目標実効圧縮比に関する前記所定値Ba,Bbは、Ba>Bbとなるように設定されている。このため目標実効圧縮比の変化に対する実駆動用吸気カムの切り替えは、ヒステリシス特性で行なわれるようになっており、目標実効圧縮比がBa,Bbの近辺で頻繁に増減しても、実駆動用吸気カムが頻繁に切替わることがないようにされている。ただし、上記所定値Ba,Bbは同じ値であってもよい。
次に、電子制御装置50は、STEP9−3において、現在の実駆動用吸気カムの種別が、STEP9−2で決定した目標の種別と一致するか否かを判断する。
この判断結果が肯定的である場合には、電子制御装置50は、STEP9−4、9−5の処理を実行する。STEP9−4では、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの目標値として、STEP9−2で決定した基本目標値を設定する。
そして、STEP9−5では、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの種別を現在の種別に維持するために、実駆動用吸気カムの切替えの可否を表すカム切替許可フラグをOFF(“0”)にする。
また、STEP9−3の判断結果が否定的である場合には、電子制御装置50は、STEP9−6において、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの目標値として、前記STEP4で決定したカム切替位相角θVTCswを設定する。
さらに、電子制御装置50は、STEP9−7において、現在の実駆動用吸気カムの位相角θVTCが、目標値(=θVTCsw)に一致するか否かを判断する。そして、この判断結果が肯定的である場合には、電子制御装置50は、STEP9−8において、実駆動用吸気カムの切替えを行なうために、カム切替許可フラグをON(“1”)にする。
また、STEP9−7の判断結果が否定的である場合には、両吸気カム13H,13Lの位相角がカム切替位相角θVTCswに変化するまで実駆動用吸気カムの種別を現在の種別に維持するために、前記STEP9−5において、カム切替許可フラグをOFF(“0”)にする。
補足すると、現在の実駆動用吸気カムの位相角θVTCが、前記カム切替位相角θVTCswの基本値と同じか、もしくは該基本値よりも進角側の位相角である場合には、上記STEP9−6において設定されるθVTCの目標値は、カム切替位相角θVTCswの基本値に一致する。
一方、現在の実駆動用吸気カムの位相角θVTCが、前記カム切替位相角θVTCswの基本値よりも遅角側の位相角である場合には、前記STEP4−5においてカム切替位相角θVTCswとして現在のθVTCの値(検出値)が設定されるので、上記STEP9−6において設定されるθVTCの目標値は、現在のθVTCの値(検出値)に一致する。従って、この場合には、直ちに、STEP9−7の判断結果は肯定的となって、カム切替許可フラグがONにされることとなる。
以上が、STEP9の処理の詳細である。
なお、本実施形態では、前記STEP4の処理の中で、STEP4−4〜4−6の処理を行うようにしたが、STEP4では、カム切替位相角θVTCswの基本値をそのままθVTCswの値として決定するようにして、STEP9の処理の中で、STEP4−4〜4−6の処理と同様の処理を行うようにしてもよい。
この場合には、例えば、STEP9−6の処理の次に、現在の実駆動用吸気カムの位相角θVTCの値が、θVTCの目標値(=θVTCswの基本値)よりも遅角側の位相角であるか否かを判断し、その判断結果が否定的である場合に、STEP9−7からの処理を実行する。また、当該判断結果が肯定的である場合には、θVTCの目標値を、現在のθVTCの値(検出値)に設定し直した後に、STEP9−8の処理を実行する。このようにすれば、現在の実駆動用吸気カムの位相角θVTCが、前記カム切替位相角θVTCswの基本値よりも遅角側の位相角である場合に、上記と同様に、直ちにカム切替許可フラグをONにするようにすることができる。
内燃機関1の通常運転の場合(STEP5の判断結果が否定的となる場合)には、以上のようにして、STEP6〜9の処理によって、吸気カム13H,13Lの動作目標(実駆動用吸気カムの種別の目標、及び実駆動用吸気カムの位相角θVTCの目標値)と、目標スロットル開度と、目標EGR率とが決定される。
そして、電子制御装置50は、これらの目標に従って、実駆動用吸気カムの位相角θVTC及び切替えを制御すると共に、スロットル弁7の開度と、EGR装置25のEGR率とを制御する。
この場合、実駆動用吸気カムの実際の位相角θVTCを目標値に収束させるようにバルブ位相可変機構10が制御される。さらに、この場合、カム切替許可フラグがONになっている場合には、実駆動用吸気カムを、小リフト吸気カム13L及び大リフト吸気カム13Hの一方から他方に切替えるようにバルブリフト可変機構11が制御される。
また、スロットル弁7の実際の開度を目標スロットル開度に収束させるように、該スロットル弁7を駆動する図示しないアクチュエータ(電動モータ)が制御される。
また、EGR装置25の実際のEGR率が目標EGR率に収束するように、前記EGR弁29の開度が制御される。
なお、電子制御装置50は、内燃機関1の燃料噴射弁33及び点火プラグ40の制御も併せて行う。この場合、燃料噴射弁33の燃料噴射量と、点火プラグ40による点火時期とは、吸気通路4の実際の空気流量Qの検出値や、内燃機関1の回転数NEの検出値等から所定のマップ等により決定した目標値に制御される。
一方、前記STEP5の判断結果が肯定的である場合、すなわち、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転を行うべき状況である場合には、電子制御装置50は、STEP10において、燃料カット運転モード用の制御処理を実行することで、吸気バルブ駆動機構9、スロットル弁7、及びEGR装置25に関する動作目標を決定する。
STEP10の処理は、具体的には、図14のフローチャートに示す如く実行される。すなわち、電子制御装置50は、STEP10−1において、燃料カット運転モード用の目標空気量(吸気通路4の空気の流量Qの目標値)を決定する。
燃料カット運転モードにおける目標空気量は、本実施形態では例えば図16(d)に示す如く、燃料カット運転モードの開始直前の値から、時間の経過に伴い、徐々に減少していくように決定される。なお、図16(d)に示す例では、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転中(時刻t11から時刻t15までの期間の運転中)に、目標空気量を、所定の下限値まで一定の時間的変化率で直線状に減少させるようにしているが、該目標空気両を曲線状に減少させるようにしてもよい。
次いで、STEP10−2において、電子制御装置50は、目標空気量を実現するための内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比の目標値である目標実効圧縮比と、スロットル弁7の開度の目標値である目標スロットル開度とを決定する共に、該目標空気量に対応するEGR装置25のEGR率の目標値である目標EGR率とを決定する。この処理は、前記STEP8の処理と同じである。
次いで、STEP10−3において、電子制御装置50は、吸気カム13H,13Lの動作目標を決定する処理を実行する。この処理は、前記STEP9の処理(図12のフローチャートに示す処理)と同じである。
以上が、STEP10の処理の詳細である。なお、燃料カット運転モードでは、図12のSTEP9−6で使用される前記カム切替位相角θVTCswの値は、前記STEP3の処理で設定される値、すなわち、前記カム切替標準位相角θsw0(図3の破線b,cの状態に対応する位相角)である。
燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転を行なう場合(STEP5の判断結果が肯定的となる場合)には、以上のようにして、吸気カム13H,13Lの動作目標(実駆動用吸気カムの種別の目標、及び実駆動用吸気カムの位相角θVTCの目標値)と、目標スロットル開度と、目標EGR率とが決定される。
そして、電子制御装置50は、これらの目標に従って、実駆動用吸気カムの位相角θVTC及び切替えを制御すると共に、スロットル弁7の開度と、EGR装置25のEGR率とを制御する。これらの制御は、前記通常運転の場合と同様である。
なお、燃料カット運転モードの運転中は、電子制御装置50は、内燃機関1の燃料噴射弁33による燃料噴射を停止して、図16(b)のグラフで示す如く、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3への燃料供給を遮断する。また、燃料カット運転モードの運転中は、電子制御装置50は、点火プラグ40の点火作動も停止させる。
以上が本実施形態における電子制御装置50が実行する処理の詳細である。
補足すると、本実施形態では、前記大リフト吸気カム13H、小リフト吸気カム13Lがそれぞれ、前記第1〜第8発明における第1の吸気カム、第2の吸気カムに相当する。
また、電子制御装置50は、第1〜第8発明における吸気カム切替制御手段、カム位相制御手段、負荷増加要求判断手段、スロットル弁制御手段としての機能を含んでいる。この場合、吸気カム切替制御手段及びカム位相制御手段としての機能は、図6のフローチャートのSTEP9の処理又は図14のフローチャートのSTEP10−3の処理によって、吸気カム13L,13Hの動作目標を設定し、それに応じて、実駆動用吸気カムの切替えをバルブリフト可変機構11を介して制御する機能と、該実駆動用吸気カムの位相角θVTCを、バルブ位相可変機構10を介して制御する機能とによって実現される。
さらに、図3に示す位相角A1が、第1〜第8発明における第1進角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角に相当し、図3に示す位相角A2が、第1〜第8発明における第1遅角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角に相当する。
また、図3の破線b,cの状態に、吸気カム13L,13Hの位相角を制御した状態が、第1〜第8発明における特定状態に相当する。
また、図6のSTEP2の処理によって、第1〜第6発明における負荷増加要求判断手段が実現される。
また、図6のSTEP8の処理によって、目標スロットル開度を決定する機能と、この目標スロットル開度に応じてスロットル弁7の開度を制御する機能とによって、第4〜第8発明におけるスロットル弁制御手段が実現される。
以上説明した本実施形態によれば、内燃機関1の通常運転の場合には、吸気バルブ8の動作状態(開弁期間の位相角及びリフト量)は、内燃機関1の負荷(目標トルク)に応じて次のように変化する。
まず、車両の要求加速が低い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが低い場合)、例えばアクセル操作量APの比較的緩やかな増加によって、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加していく場合に関して説明する。
この場合には、内燃機関1の負荷が比較的低い状態では、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lが使用される。そして、実駆動用吸気カム(小リフト吸気カム13L)の位相角θVTCが、内燃機関1の負荷の増加に伴い、進角側から遅角側に連続的に変化する。
このため、吸気バルブ8の動作状態は、図3の実線a側の状態から、破線bの状態に向って連続的に変化していく(図3の矢印Y1を参照)。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していく。
そして、小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCが最も遅角側の位相角(=カム切替標準位相角θsw0)まで遅角して、吸気バルブ8の動作状態が図3の破線bの状態まで到達すると、実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hに切替えられる。この時、大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCも最も遅角側の位相角まで遅角しているので、吸気バルブ8の動作状態は、図3の破線bの状態から、破線cの状態に切替わり、リフト量が増加されると共に、開弁期間の角度幅が増加される(図3の矢印Y2を参照)。
この場合、θVTCが最も遅角側の位相角まで遅角した状態では、前記した如く、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合と、大リフト吸気カム13Hを使用した場合とのいずれの場合であっても、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比、ひいては、該燃焼室3に充填される空気量が、互いに同一もしくはほぼ同一となる。
このため、実駆動用吸気カムを切替えても、その切り替えの前後で、各気筒2の燃焼室3に充填される空気量は、ほぼ一定に保たれる。さらに、その切り替えの前後で、吸気カム13L,13Hの位相角の急激な変化が生じることもない。その結果、実駆動用吸気カムの切り替えによって、内燃機関1の出力トルクの不連続的な変動(ステップ状の変動)が発生することはなく、また、その切り替えを迅速に行なうことができる。
また、実駆動用吸気カムの切替えの直前における吸気バルブ8の開弁開始の位相角と切替えの直後における吸気バルブ8の開弁開始の位相角とは、いずれも上死点と下死点との間の位相角であるので、該切替えの前後において、吸気バルブ8の開弁期間で各気筒2の燃焼室3に空気と共に充填される排ガス(EGR装置25により還流された排ガス)の量が急変するようなことが無い。
そして、本実施形態では、内燃機関1の負荷の増加(目標トルクの増加)によって、実駆動用吸気カムを大リフト吸気カム13Hに切替えた後は、この大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが、内燃機関1の負荷(目標トルク)の増加に伴い、遅角側から進角側に連続的に変化する。このため、吸気バルブ8の動作状態は、図3の破線cの状態から、実線dの状態に向って連続的に変化していく(図3の矢印Y3を参照)。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比がさらに増加していく。
以上のようにして、本実施形態では、内燃機関1の通常運転の場合に、車両の要求加速が低い状況では、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加しいくとき、上記の如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。
例えば図15(a)に実線のグラフで示す如く、アクセル操作量AP(ひいては、目標トルク)が比較的緩やかに増加される状況では、図15(d),(e)に実線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。この場合、実駆動用吸気カムの切替え時(時刻t3)における両吸気カム13H,13Lの位相角θVTCは、図3の破線b,cの状態に対応する位相角(=カム切替標準位相角θsw0)である。
このため、吸気バルブ8の開弁期間で各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比や該燃焼室3に充填される実際の空気量が、ステップ状に変化したりすることなく滑らかに増加していく。例えば、図15(b)に実線のグラフで示す如く、当該実際の空気量が滑らかに増加していく。
また、各気筒2の燃焼室3に充填される排ガスの量が実駆動用吸気カムの切替えの前後でステップ状に急変するようなことも防止される。
この結果、内燃機関1の失火が発生したりすることなく、内燃機関1の出力トルクを滑らかに増加させていくことができる。
また、前記した図10のマップにより決定される目標スロットル開度に応じて制御されるスロットル開度は、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lが使用される低負荷領域で、全開に近い開度に制御される。例えば、図15(c)に実線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムとしての小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCが遅角側に変化し始める時刻t2以前の早期に、スロットル開度が全開に近い開度まで増加される。
そして、実駆動用吸気カムの切替えやその位相角の変化による実効圧縮比の増減によって、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の充填空気量が増減される状況では、スロットル弁7の開度は、全開もしくはそれに近い開度に保持される。
このため、内燃機関1の幅広い負荷領域において、スロットル弁7の開度を小さくすることに起因して発生するポンピングロスを低減することができる。ひいては、内燃機関1の燃料消費を抑制することができる。
なお、内燃機関1の通常運転の場合において、アクセル操作量APが徐々に減少されていき、内燃機関1の負荷が高負荷側から低負荷側に減少していく場合には、吸気バルブ8の動作状態の変化は、内燃機関1の負荷の増加の場合と逆になる。すなわち、内燃機関1の負荷の減少に伴い、実効圧縮比が減少していくように、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化と該実駆動用吸気カムの切替えとが行なわれる。この場合には、実駆動用吸気カムの切替え(大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lへの切替え)は、両吸気カム13L,13Hの位相角θVTCが、前記カム切替標準位相角θsw0(図3の破線b,cの状態に対応する位相角)に達した時に行なわれる。
次に、内燃機関1の通常運転の場合において、車両の要求加速が高い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合い高い場合)、例えばアクセル操作量APの比較的急激な増加によって、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加していく場合に関して説明する。
この場合には、内燃機関1の負荷が比較的低い状態では、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lが使用される。そして、実駆動用吸気カム(小リフト吸気カム13L)の位相角θVTCが、内燃機関1の負荷の増加に伴い、進角側から遅角側に連続的に変化する。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していく。
そして、小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCが、前記STEP4で決定されるカム切替位相角θVTCswまで遅角すると、実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hに切替えられる。
なお、車両の要求加速が高いものとなる直前において、実駆動用吸気カムとしての小リフト吸気カム13Lの位相角が、カム切替位相角θVTCswよりも遅角側の位相角になっていた場合には、カム切替位相角θVTCswは、小リフト吸気カム13Lの現在の実際の位相角θVTCに一致するものとされるので、実駆動用吸気カムは、車両の要求加速が高いものとなった時に、直ちに小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hに切替えられる。
そして、実駆動用吸気カムの上記の切替え後は、内燃機関1の負荷の増加に伴い、実駆動用吸気カムとしての大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが進角方向に変化する。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比がさらに増加していく。
以上のようにして、本実施形態では、内燃機関1の通常運転の場合に、車両の要求加速が高い状況では、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加しいくとき、上記の如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。
例えば図15(a)に破線のグラフで示す如く、アクセル操作量AP(ひいては、目標トルク)が急激に増加される状況では、図15(d),(e)に破線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。この場合、実駆動用吸気カムの切替え時(時刻t1)における両吸気カム13H,13Lの位相角θVTCは、図3の破線b,cの状態に対応する位相角(=カム切替標準位相角θsw0)よりも進角側の位相角である。従って、その位相角では、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合よりも、大リフト吸気カム13Hを使用した場合の方が、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が大きいものとなる。
このため、実駆動用吸気カムの上記の切替えによって、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比は、瞬時に急増し、ひいては、該燃焼室3に充填される空気量も瞬時に増加する。例えば、図15(b)に破線のグラフで示す如く、該空気量が、実駆動用吸気カムの切替え時(時刻t1)で瞬時に急増する。
これにより、加速要求が高い場合には、内燃機関1の出力トルクを素早く大きなトルクに増加させることができ、ひいては、車両の応答性の良い加速を実現できることとなる。
なお、この場合、実駆動用吸気カムの切替え時に、内燃機関1の出力トルクがステップ状に急増することに伴う、車両の挙動の変化が生じるものの、車両の運転者が車両の素早い加速を要求している状況であるので、該車両の挙動の変化を運転者が不快に感じることはないと共に、該運転者は、該車両の挙動の変化によって、車両の素早い加速を体感することができる。
また、加速要求が高い場合においても、例えば、図15(c)に破線のグラフで示す如く、スロットル開度は、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lが使用される低負荷領域で、早期に、全開に近い開度(又は全開の開度)に制御される。
このため、内燃機関1の幅広い負荷領域において、スロットル弁7の開度を小さくすることに起因して発生するポンピングロスを低減することができる。ひいては、内燃機関1の燃料消費を抑制することができる。
次に、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転時の作動に関して説明する。
車両の走行中に、アクセルペダルの操作が解除され、アクセル操作量APが“0”もしくは微小な操作量まで低下すると燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転が行われる。例えば、図16(a)に実線のグラフで示す如くアクセル操作量APが、時刻t11で急減されると、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転が開始される。
この燃料カット運転モードでは、図16(b)に実線のグラフで示す如く、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3への燃料供給が遮断される。そして、この場合、内燃機関1は出力トルクを発生しなくなるので、車両の車速が、図16(c)に実線のグラフで示す如く減少していく。
また、この場合、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転中に、排気通路18に設けられている触媒装置19の温度が低下し過ぎる(ひいては触媒装置19の排ガス浄化能力が低下する)のを防止するために、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に供給する目標空気量が、図16(c)に実線のグラフで示す如く徐々に減少される。
このとき、目標空気量に応じて図9のマップに基づき決定される目標実効圧縮比も、目標空気量の減少に伴い減少してしくように決定される。このため、実駆動用吸気カムの位相角θVTCと、実駆動用吸気カムの切替え(大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lへの切替え)は、例えば、図16(e),(f)に実線のグラフで示す如く行なわれる。
図示の例は、燃料カット運転モードの開始直前の実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hである場合(燃料カット運転モードの開始直前に内燃機関1の高負荷運転が行われている場合)の例である。
この場合、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転が開始すると、実駆動用吸気カムとしての大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが遅角方向に変化される。そして、該位相角θVTCが、図3の破線b,cの状態に対応するカム切替標準位相角θsw0まで達すると、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lに切替えられる。その後、実駆動要吸気カムとしての小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCは、最も進角側の位相角まで進角方向に変化される。これにより、実効圧縮比が連続的に減少されていくこととなる。それに応じて、実際の空気量も減少していくこととなる。
なお、燃料カット運転モードの開始直前の実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lである場合には、燃焼カット運転モードでの内燃機関1の運転が開始すると、実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lに維持されたまま、該実駆動用吸気カムの位相角θVTCが進角方向に変化される。
一方、燃料カット運転モードにおいて、前記した図10のマップによって、通常運転の場合と同様に決定される目標スロットル開度に応じて制御されるスロットル開度は、図16(g)に実線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化や、実駆動用吸気カムの切替えによって、実効圧縮比の減少が行なわれる状態では、全開からわずかに減少した開度に制御される。そして、実駆動用吸気カムの位相角θVTCが最も進角側の位相角まで到達すると、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に充填する空気量を減少させるために、スロットル開度が減少されるようになる。
従って、燃料カット運転モードにおいては、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に充填する空気量を減少させるために、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化や、実駆動用吸気カムの切替えによる実効圧縮比の減少が、スロットル開度の減少よりも優先的に行なわれる。そして、実効圧縮比を減少させる状況では、スロットル開度は、全開もしくはそれに近い状態に保持される。
このため、燃料カット運転モードにおいて、図16(h)に実線のグラフで示す如く、スロットル開度を小さくすることに起因するポンピングロスをできるだけ発生させないようにすることができる。ひいては、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転中に内燃機関1の駆動対象としての車両の運動エネルギーがポンピングロスによって消耗されてしまうのを極力抑制することができる。
その結果、燃料カット運転モードが終了すると、車両の車速を元の車速に復帰させるように必要なエネルギー量を少なくして、内燃機関1の燃焼消費を低減することができる。
ここで、燃料カット運転モードにおいて、仮に実駆動用吸気カムの位相角を一定にして(ひいては実効圧縮比を一定にして)、スロットル開度を図16(g)の二点鎖線のグラフで示す如く減少させるようにした場合には、ポンピングロスは、図16(h)の二点鎖線のグラフで示す如く、スロットル開度の減少に伴い増加していく。
これに比して、本実施形態によれば、燃料カット運転モードでのスロットル開度が極力、全開に近い開度に保持されるので、上記の如くポンピングロスの発生を少なくすることができる。
なお、本実施形態では、両吸気カム13L,13Hの位相角が前記カム切替標準位相角である場合における大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角と、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブの開弁開始の位相角とを同一の位相角(図3のA2)としたが、それらの位相角が若干異なる位相角であってもよい。
また、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角の最も進角側の位相角と、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角の最も進角側の位相角とが互いに異なる位相角に設定されていてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図17〜図22を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態と吸気バルブ駆動機構9に関する一部の構成及び制御処理だけが相違するものであるので、その相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成及び制御処理については説明を省略する。
次に、本発明の第2実施形態を図17〜図22を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態と吸気バルブ駆動機構9に関する一部の構成及び制御処理だけが相違するものであるので、その相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成及び制御処理については説明を省略する。
本実施形態における吸気バルブ駆動機構9においては、小リフト吸気カム13Lと大リフト吸気カム13Hのプロフィールが、第1実施形態のものと相違しており、これ以外の構成は第1実施形態のものと同じである。
具体的には図17を参照して、本実施形態では、大リフト吸気カム13Hのプロフィールは、図17の実線fで示す如く、吸気バルブ8の開弁期間の角度幅が、各気筒2のピストン15の上死点の位相角と下死点の位相角との間の角度差(=180deg)よりも大きく、例えば、260deg程度になるように設定されている。
また、小リフト吸気カム13Lのプロフィールは、図17の実線gで示す如く、該小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅が、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅よりも、上死点の位相角と下死点の位相角との間の角度差(=180deg)により近い角度幅になるように設定されている。より詳しくは、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅は、例えば、上死点の位相角と下死点の位相角との間の角度差(=180deg)よりも若干大きい角度幅(例えば200deg程度)に設定されている。
なお、本実施形態における小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の最大リフト量は、第1実施形態における大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の最大リフト量と同程度とされている。従って、本実施形態における大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の最大リフト量は、第1実施形態における大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の最大リフト量よりもさらに大きいリフト量とされている。
そして、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、吸気バルブ駆動機構9のバルブリフト可変機構11によって、吸気バルブ8の実際の開閉駆動を行なう実駆動用吸気カムを、小リフト吸気カム13Lと大リフト吸気カム13Hとのいずれか一方に選択的に切替えることができるようになっていると共に、バルブ位相可変機構10によって、クランク軸12の位相角に対する吸気カム13L,13Hの位相角(ひいては吸気バルブ8の開弁期間の位相角)を所定の範囲で連続的に変化させることができるようになっている。
なお、本実施形態における吸気カム13L,13Hは、第1実施形態と同様に、それらの位相角が一体に変化するようになっている。このため、本実施形態の説明においても、吸気カム13L,13Hの位相角(あるいは実駆動用吸気カムの位相角)を、第1実施形態と同様に、共通の位相角θVTCとして表記する。
ここで、本実施形態において、吸気カム13L,13Hのプロフィールと、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCの変化及び吸気カム13L,13Hの切替えとによって実現される吸気バルブ8の開弁形態についてさらに詳細に説明する。
本実施形態においては、吸気カム13L,13Hは、第1実施形態と同様に、吸気側カムシャフト14と一体に回転するので、吸気カム13L,13Hの相互の位相関係、ひいては、それぞれの吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の相互の位相関係は一定に保たれる。
この場合、第1実施形態と同様に、吸気カム13L,13Hの相互の位相関係は、それぞれの吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角が互いに同じ位相角となるように設定されている(図17の実線f,gを参照)。
なお、本実施形態における吸気カム13L,13Hの相互の位相関係は上記の如く一定に保たれるので、以降の本実施形態の説明においては、吸気カム13L,13Hの位相角、あるいは実駆動用吸気カムの位相角を、第1実施形態と同様に、共通の位相角θVTCとして表記する。
そして、本実施形態では、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCの変化(ひいては、各吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁期間の位相角の変化)は、大リフト吸気カム13Hにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合には、図17の実線fで示す状態に対応する位相角と、図17の破線eで示す状態に対応する位相角との間の範囲で行なわれるようになっている。
また、小リフト吸気カム13Lにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合には、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCの変化は、図17の実線gで示す状態に対応する位相角と、図17の破線hで示す状態に対応する位相角との間の範囲で行なわれるようになっている。
図17の実線fで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角(大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角)と、実線gで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角(小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角)とは互いに一致しており、これらの状態は、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCを最も進角側の位相角に制御した状態である。
この状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角は、吸気カム13L,13Hのいずれについても、上死点よりも進角側の所定の位相角A11に設定されている。この位相角A11は、上死点の位相角から例えば40deg程度、進角側の角度に設定されている。
そして、吸気カム13L,13Hのそれぞれによる吸気バルブ8の開弁期間の角度幅と、図17の実線f,gで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角A11とが前記した如く設定されているので、大リフト吸気カム13Hに関する図17の実線fで示す状態では、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁終了の位相角A16は、下死点の位相角よりも遅角側の位相角(本実施形態では、下死点の位相角から40deg程度、遅角側の位相角)となる。また、小リフト吸気カム13Lに関する図17の実線gで示す状態では、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開弁終了の位相角A14は、下死点の位相角よりも進角側の位相角(本実施形態では、下死点の位相角から20deg程度、進角側の位相角)となる。
補足すると、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCを最も進角側の位相角に制御した状態での大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角と、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開弁開始の位相角とは厳密に一致している必要はなく、若干のずれがあってもよい。
また、図17の破線eで示す状態は、大リフト吸気カム13Hにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合において、該大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCを最も遅角側の位相角に制御した状態である。この状態では、大リフト吸気カム13Hにより開閉駆動される吸気バルブ8の開弁開始の位相角A13は、前記位相角A11よりも遅角側の位相角で、上死点の位相角と下死点の位相角との間の所定の位相角に設定されている。
この位相角A13は、本実施形態では、図17の実線fで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角A11から例えば60deg程度だけ遅角させた位相角に設定されている。
なお、この状態では、大リフト吸気カム13Hに開閉駆動される吸気バルブ8の開弁終了の位相角A17は、実線fの状態での開弁終了の位相角A16よりもさらに遅角した位相角となる。
また、図17の破線hで示す状態は、小リフト吸気カム13Lにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合において、該小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCを最も遅角側の位相角に制御した状態である。この状態では、小リフト吸気カム13Lにより開閉駆動される吸気バルブ8の開弁開始の位相角A12は、前記位相角A11よりも遅角側の所定の位相角に設定されている。
この位相角A12は、本実施形態では、図17の実線gで示す状態での吸気バルブ8の開弁開始の位相角A11から例えば30deg程度だけ遅角させた位相角に設定されている。このため、小リフト吸気カム13Lに関する図17の破線hで示す状態では、吸気バルブ8の開弁終了の位相角A15は、下死点の位相角との差の大きさが十分に微小なものとなる位相角(下死点の位相角に一致もしくはほぼ一致する位相角)に設定されている。
本実施形態では、以上の如く、吸気カム13L,13Hのプロフィールや、吸気バルブ8の開弁開始の位相角A11,A12,A13、開弁終了の位相角A14,A15,A16,A17が設定されている。このため、吸気バルブ8を開閉駆動する実駆動用吸気カム13L又は13Hをバルブリフト可変機構11により切替え、あるいは、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCをバルブ位相可変機構10によって変化させる(ひいては吸気バルブ8の開弁形態のパターンを上記の如く変化させる)ことによって、第1実施形態の場合と同様に、図4に示す如く、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を可変的に設定することが可能となっている。
例えば、大リフト吸気カム13Hにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合に、図17の破線eの状態での位相角(最も遅角側の位相角)から実線fの状態での位相角(最も進角側の位相角)に向って連続的に変化させることによって、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を連続的に増加させることができる。
より詳しくは、本実施形態では、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開閉駆動時には、大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCを遅角側から進角側に変化させるに伴い、吸気バルブ8の開弁終了の位相角が、下死点の位相角よりも遅角側の範囲で該下死点の位相角に近づいていくようになっている。このため、大リフト吸気カム13Hによる吸気バルブ8の開閉駆動時に、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転が実現される。同時に、大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCを遅角側から進角側に変化させることに伴い、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していくこととなる。
また、小リフト吸気カム13Lにより吸気バルブ8を開閉駆動する場合に、小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCを、図17の実線gの状態での位相角(最も進角側の位相角)から破線hの状態での位相角に向って連続的に変化させることによって、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比を連続的に増加させることができる。
より詳しくは、本実施形態では、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開閉駆動時には、小リフト吸気カム13Lの位相角を進角側から遅角側に変化させるに伴い、吸気バルブ8の開弁終了の位相角が、下死点の位相角よりも進角側の位相角から、該下死点の位相角に近づいていくようになっている。このため、小リフト吸気カム13Lによる吸気バルブ8の開閉駆動時にも、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転が実現される。同時に、小リフト吸気カム13Lの位相角を進角側から遅角側に変化させることに伴い、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していくこととなる。
なお、図17の破線hの状態では、吸気バルブ8の開弁開始及び開弁終了が、それぞれ上死点、下死点とほぼ同じ位相角で行なわれることとなることから、実効圧縮比が膨張比とほぼ同一となるオットーサイクルでの内燃機関1の運転が実現されることとなる。
また、本実施形態では、吸気カム13L,13Hのそれぞれの位相角θVTCを最も進角側の位相角に制御した状態、すなわち、吸気カム13L,13Hによる吸気バルブ8の開弁期間が図17の実線f,gで示す開弁期間となる状態では、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合と、大リフト吸気カム13Hを使用した場合とのいずれの場合であっても、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が、互いに同一もしくはほぼ同一となるように、吸気カム13L,13Hのプロフィールが設定されている。
このため、吸気カム13L,13Hの位相角θVTCを、図17の実線f,gの状態に対応する最も進角側の位相角に制御した状態で、実駆動用吸気カムを吸気カム13L,13Hの一方から他方に切替えるようにすることで、実駆動用吸気カムの切り替え時に、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比や、該燃焼室3に充填される空気量をほぼ一定に保つことができるようになっている。
なお、本実施形態では、大リフト吸気カム13Hを使用する場合よりも小リフト吸気カム13Lを使用する場合の方が、実効圧縮比をより高めることができる。このため、大リフト吸気カム13Hは、内燃機関1の低負荷運転用の実駆動用吸気カムとして使用され、小リフト吸気カム13Lは、内燃機関1の高負荷運転用の実駆動用吸気カムとして使用される。
本実施形態におけるシステム構成(内燃機関1及びこれに付帯するシステムの構成)は、以上説明した以外の構成は、第1実施形態と同じである。
次に、本実施形態における電子制御装置50の制御処理について説明する。本実施形態では、電子制御装置50は、内燃機関1の運転を制御するために、第1実施形態の場合と同様に図6のフローチャートに示した制御処理を実行する。
ただし、本実施形態では、高負荷運転用の吸気カムは小リフト吸気カム13Lであり、低負荷運転用の吸気カムは大リフト吸気カム13Hである。そして、実駆動用吸気カムの位相角θVTCと、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の実効圧縮との間の関係が第1実形態と異なる。
このため、図6のSTEP3,4の処理と、STEP9及びSTEP10の一部の処理とが第1実施形態と相違する。そして、これら以外の電子制御装置50の処理は、第1実施形態と同じである。そこで、本実施形態における図6のSTEP3,4の処理と、STEP9及びSTEP10の処理とを、第1実施形態との相違点を中心に、以下に説明する。
本実施形態では、STEP2で車両の要求加速が低い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが低い場合)に、STEP3でカム切替位相角θVTCswとして設定されるカム切替標準位相角θsw0は、図17の実線f,gの状態に対応する位相角である。
なお、吸気カム13H,13Lの位相角θVTCをカム切替標準位相角θsw0に制御した状態では、実駆動用吸気カムとして吸気カム13H,13Lのどちらを使用しても実効圧縮比が同じになることは、第1実施形態と同様である。
また、本実施形態では、STEP2で車両の要求加速が高い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが高い場合)に電子制御装置50が実行するSTEP4の処理は、図18のフローチャートに示す如く実行される。この処理は、第1実施形態における図7のフローチャートと一部の処理が相違するものである。
具体的には、電子制御装置50は、STEP4−1、4−2で第1実施形態と同じ処理を実行した後、STEP4−3において、アクセル操作量APの最新値と、アクセル操作量APの現在の時間的増加率ΔAPとに応じて、カム切替位相角θVTCswの基本値を決定する。
この場合、カム切替位相角θVTCswの基本値は、本実施形態では、アクセル操作量APの最新値と、時間的変化率ΔAPとから、図19に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて決定される。このマップでは、基本的には、アクセル操作量APが大きいほど、また、ΔAPが大きいほど、カム切替位相角θVTCの基本値が、前記カム切替標準位相角θsw0よりも遅角側の位相角となるように決定される。
なお、実駆動用吸気カムの切替え時における内燃機関1の出力トルクの変動が過大になり過ぎないようにするために、カム切替位相角θVTCswの基本値は、既定の所定値θsw2を遅角側の限界値とされ、この所定値θsw2から進角側の範囲内で決定される。
次いで、電子制御装置50は、STEP4−4において、吸気カム13H,13Lの現在の実際の位相角θVTC(検出値)が、STEP4−3で決定したカム切替位相角θVTCswの基本値よりも進角側の位相角であるか否かを判断する。
そして、この判断結果が否定的である場合には、次に、STEP4−6において、電子制御装置50は、上記の如く決定したカム切替位相角θVTCswの基本値をそのままθVTCswの値として決定する。
また、STEP4−4の判断結果が肯定的である場合には、次に、STEP4−5において、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの切替えを直ちに行なうようにするために、吸気カム13H,13Lの現在の実際の位相角θVTC(検出値)を、カム切替位相角θVTCswとして決定する。
以上が本実施形態におけるSTEP4の処理(カム切替位相角θVTCswを可変的に決定する処理)である。
次に、本実施形態におけるSTEP9の処理(吸気カムの動作目標を決定する処理)を説明する。本実施形態では、STEP9の処理は、前記第1実施形態で説明した図12のフローチャートに従って実行される。この場合、本実施形態では、STEP9−1,9−3〜9−8の処理は、第1実施形態と同じであるが、STEP9−2の処理で使用するマップが第1実施形態と相違している。
具体的には、本実施形態におけるSTEP9−2の処理では、電子制御装置50は、図20(a),(b)に示す如くあらかじめ設定されたマップを用いて実駆動用吸気カムの種別の目標と、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの基本目標値とを決定する。図20(a)のマップは、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hである場合の、目標実効圧縮比と実駆動用吸気カムの位相角θVTC(基本目標値)との関係を規定するマップ、図20(b)のマップは、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hである場合の、目標実効圧縮比と実駆動用吸気カムの位相角θVTC(基本目標値)との関係を規定するマップである。
そして、本実施形態におけるSTEP9−2の処理では、電子制御装置50は、現在の実駆動用吸気カムが、大リフト吸気カム13Hであり、且つ、目標実効圧縮比が、図20(a)に示す所定値Bc以下の圧縮比である場合には、実駆動用吸気カムの種別の目標を、大リフト吸気カム13Hに維持する。なお、所定値Bcは、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hを使用した場合の上限の実効圧縮比である。
そして、電子制御装置50は、図20(a)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=大リフト吸気カム13H)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。この場合、位相角θVTCの基本目標値は、目標実効圧縮比が大きいほど、進角側の位相角となるように決定される。なお、図20(a)に示す最進角は、図17の実線fの状態に対応する位相角(=前記カム切替標準位相角θsw0)、図20(a)に示す最遅角は、図17の破線eの状態に対応する位相角である。
また、現在の実駆動用吸気カムが、大リフト吸気カム13Hであり、且つ、目標実効圧縮比が、図20(a)に示す所定値Bcよりも大きい圧縮比である場合には、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの種別の新たな目標を、大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lに切替える。
そして、電子制御装置50は、図20(b)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=小リフト吸気カム13L)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。この場合、位相角θVTCの基本目標値は、目標実効圧縮比が大きいほど、遅角側の位相角となるように決定される。なお、図20(b)に示す最進角は、図17の実線gの状態に対応する位相角(=前記カム切替標準位相角θsw0)、図20(b)に示す最遅角は、図17の破線hの状態に対応する位相角である。
また、現在の実駆動用吸気カムが、小リフト吸気カム13Lであり、且つ、目標実効圧縮比が、図20(b)に示す所定値Bd以上の圧縮比である場合には、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの種別の目標を、小リフト吸気カム13Lに維持する。なお、所定値Bdは、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合の下限の実効圧縮比である。
そして、電子制御装置50は、図20(b)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=小リフト吸気カム13L)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。
また、現在の実駆動用吸気カムが、小リフト吸気カム13Lであり、且つ、目標実効圧縮比が、図20(b)に示す所定値Bdよりも小さい圧縮比である場合には、電子制御装置50は、実駆動用吸気カムの種別の新たな目標を、小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hに切替える。
そして、電子制御装置50は、図20(a)に示すマップに基づいて、目標実効圧縮比に対応する実駆動用吸気カム(=大リフト吸気カム13H)の位相角θVTCの基本目標値を決定する。
補足すると、本実施形態では、図20(a),(b)における目標実効圧縮比に関する前記所定値Bc,Bdは、Bc>Bdとなるように設定されている。このため目標実効圧縮比の変化に対する実駆動用吸気カムの切り替えは、ヒステリシス特性で行なわれるようになっており、目標実効圧縮比がBc,Bcの近辺で頻繁に増減しても、実駆動用吸気カムが頻繁に切替わることがないようにされている。ただし、上記所定値Bc,Bdは同じ値であってもよい。
本実施形態におけるSTEP9の処理は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。なお、この場合において、STEP9−6の処理で、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの目標値として設定されるカム切替位相角θVTCswは、図18のフローチャートの処理によって決定されたものである。
次に、本実施形態におけるSTEP10の処理(燃料カット運転モード用の制御処理)を説明する。本実施形態では、STEP10の処理は、前記第1実施形態で説明した図14のフローチャートに従って実行される。この場合、本実施形態では、STEP10−1,10−2の処理は、第1実施形態と同じである。
一方、本実施形態では、STEP10−3の処理は、本実施形態における前記したSTEP9の処理と同じである。なお、本実施形態における燃料カット運転モードでは、STEP9−6で使用される前記カム切替位相角θVTCswの値は、本実施形態における前記STEP3の処理で設定される値、すなわち、図17の実線f,gの状態に対応する位相角(=カム切替標準位相角θsw0)である。
本実施形態における電子制御装置50の制御処理は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。
補足すると、本実施形態では、前記大リフト吸気カム13H、小リフト吸気カム13Lがそれぞれ、前記第9〜第16発明における第1の吸気カム、第2の吸気カムに相当する。
また、電子制御装置50は、第9〜第16発明における吸気カム切替制御手段、カム位相制御手段、負荷増加要求判断手段、スロットル弁制御手段としての機能を含んでいる。この場合、吸気カム切替制御手段及びカム位相制御手段としての機能は、図6のフローチャートのSTEP9の処理又は図14のフローチャートのSTEP10−3の処理によって、吸気カム13L,13Hの動作目標を設定し、それに応じて、実駆動用吸気カムの切替えをバルブリフト可変機構11を介して制御する機能と、該実駆動用吸気カムの位相角θVTCを、バルブ位相可変機構10を介して制御する機能とによって実現される。
さらに、図17に示す位相角A11が、第9〜第16発明における進角側開弁開始位相角に相当し、図17に示す位相角A13,A12が、それぞれ、第9〜第16発明における第1遅角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角に相当する。
また、図17の実線f,gの状態に、吸気カム13L,13Hの位相角を制御した状態が、第9〜第16発明における特定状態に相当する。
また、図6のSTEP2の処理によって、第9〜第14発明における負荷増加要求判断手段が実現される。
また、図6のSTEP8の処理によって、目標スロットル開度を決定する機能と、この目標スロットル開度に応じてスロットル弁7の開度を制御する機能とによって、第12〜第16発明におけるスロットル弁制御手段が実現される。
以上説明した本実施形態によれば、内燃機関1の通常運転の場合には、吸気バルブ8の動作状態(開弁期間の位相角及びリフト量)は、内燃機関1の負荷(目標トルク)に応じて次のように変化する。
まず、車両の要求加速が低い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが低い場合)、例えばアクセル操作量APの比較的緩やかな増加によって、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加していく場合に関して説明する。
この場合には、内燃機関1の負荷が比較的低い状態では、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hが使用される。そして、実駆動用吸気カム(大リフト吸気カム13H)の位相角θVTCが、内燃機関1の負荷の増加に伴い、遅角側から進角側に連続的に変化する。
このため、吸気バルブ8の動作状態は、図17の破線e側の状態から、実線fの状態に向って連続的に変化していく(図17の矢印Y4を参照)。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していく。
そして、大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが最も進角側の位相角(=カム切替標準位相角θsw0)まで進角して、吸気バルブ8の動作状態が図17の実線fの状態まで到達すると、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lに切替えられる。この時、小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCも最も進角側の位相角まで遅角しているので、吸気バルブ8の動作状態は、図17の実線fの状態から、実線gの状態に切替わり、リフト量が減少されると共に、開弁期間の角度幅が減少される(図17の矢印Y5を参照)。
この場合、θVTCが最も進角側の位相角まで進角した状態では、前記した如く、実駆動用吸気カムとして小リフト吸気カム13Lを使用した場合と、大リフト吸気カム13Hを使用した場合とのいずれの場合であっても、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比、ひいては、該燃焼室3に充填される空気量が、互いに同一もしくはほぼ同一となる。
このため、実駆動用吸気カムを切替えても、その切り替えの前後で、各気筒2の燃焼室3に充填される空気量は、ほぼ一定に保たれる。さらに、その切り替えの前後で、吸気カム13L,13Hの位相角の急激な変化が生じることもない。その結果、実駆動用吸気カムの切り替えによって、内燃機関1の出力トルクの不連続的な変動(ステップ状の変動)が発生することはなく、また、その切り替えを迅速に行なうことができる。
また、実駆動用吸気カムの切替えの直前における吸気バルブ8の開弁開始の位相角と、切替えの直後における吸気バルブ8の開弁開始の位相角とは、上死点よりも進角側で互いにほぼ一致するような位相角(本実施形態では、同じ位相角A11)であるので、該切替えの前後において、吸気バルブ8の開弁期間で各気筒2の燃焼室3に空気と共に充填される排ガス(EGR装置25により還流された排ガスや吸気行程の直前の排気行程で燃焼室3から排出される排ガス)の量が急変するようなことが無い。
そして、本実施形態では、内燃機関1の負荷の増加(目標トルクの増加)によって、実駆動用吸気カムを小リフト吸気カム13Lに切替えた後は、この小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCが、内燃機関1の負荷(目標トルク)の増加に伴い、進角側から遅角側に連続的に変化する。このため、吸気バルブ8の動作状態は、図17の実線gの状態から、破線hの状態に向って連続的に変化していく(図17の矢印Y6を参照)。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比がさらに増加していく。
以上のようにして、本実施形態では、内燃機関1の通常運転の場合に、車両の要求加速が低い状況では、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加していくとき、上記の如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。
例えば図21(a)に実線のグラフで示す如く、アクセル操作量AP(ひいては、目標トルク)が比較的緩やかに増加される状況では、図21(d),(e)に実線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。この場合、実駆動用吸気カムの切替え時(時刻t3)における両吸気カム13H,13Lの位相角θVTCは、図17の実線f,gの状態に対応する位相角(=カム切替標準位相角θsw0)である。
このため、吸気バルブ8の開弁期間で各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比や該燃焼室3に充填される実際の空気量が、ステップ状に変化したりすることなく滑らかに増加していく。例えば、図21(b)に実線のグラフで示す如く、当該実際の空気量が滑らかに増加していく。
また、各気筒2の燃焼室3に充填される排ガスの量が実駆動用吸気カムの切替えの前後でステップ状に急変するようなことも防止される。
この結果、内燃機関1の失火が発生したりすることなく、内燃機関1の出力トルクを滑らかに増加させていくことができる。
また、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、図10のマップにより決定される目標スロットル開度に応じて制御されるスロットル開度は、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hが使用される低負荷領域で、全開に近い開度に制御される。例えば、図21(c)に実線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムとしての大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが進角側に変化し始める時刻t2以前の早期に、スロットル開度が全開に近い開度まで増加される。
そして、実駆動用吸気カムの切替えやその位相角の変化による実効圧縮比の増減によって、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3の充填空気量が増減される状況では、スロットル弁7の開度は、全開もしくはそれに近い開度に保持される。
このため、内燃機関1の幅広い負荷領域において、スロットル弁7の開度を小さくすることに起因して発生するポンピングロスを低減することができる。ひいては、内燃機関1の燃料消費を抑制することができる。
なお、内燃機関1の通常運転の場合において、アクセル操作量APが徐々に減少されていき、内燃機関1の負荷が高負荷側から低負荷側に減少していく場合には、吸気バルブ8の動作状態の変化は、内燃機関1の負荷の増加の場合と逆になる。すなわち、内燃機関1の負荷の減少に伴い、実効圧縮比が減少していくように、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化と該実駆動用吸気カムの切替えとが行なわれる。この場合には、実駆動用吸気カムの切替え(小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hへの切替え)は、両吸気カム13L,13Hの位相角θVTCが、前記カム切替標準位相角θsw0(図17の実線f,gの状態に対応する位相角)に達した時に行なわれる。
次に、内燃機関1の通常運転の場合において、車両の要求加速が高い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合い高い場合)、例えばアクセル操作量APの比較的急激な増加によって、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加していく場合に関して説明する。
この場合には、内燃機関1の負荷が比較的低い状態では、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hが使用される。そして、実駆動用吸気カム(大リフト吸気カム13H)の位相角θVTCが、内燃機関1の負荷の増加に伴い、遅角側から進角側に連続的に変化する。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が増加していく。
そして、大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが、前記STEP4で決定されるカム切替位相角θVTCswまで進角すると、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lに切替えられる。
なお、車両の要求加速が高いものとなる直前において、実駆動用吸気カムとしての大リフト吸気カム13Hの位相角が、カム切替位相角θVTCswよりも進角側の位相角になっていた場合には、カム切替位相角θVTCswは、大リフト吸気カム13Hの現在の実際の位相角θVTCに一致するものとされるので、実駆動用吸気カムは、車両の要求加速が高いものとなった時に、直ちに大リフト吸気カム13Hから小リフト吸気カム13Lに切替えられる。
そして、実駆動用吸気カムの上記の切替え後は、内燃機関1の負荷の増加に伴い、実駆動用吸気カムとしての小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCが遅角方向に変化する。これにより、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比がさらに増加していく。
以上のようにして、本実施形態では、内燃機関1の通常運転の場合に、車両の要求加速が高い状況では、内燃機関1の負荷が低負荷側から高負荷側に増加しいくとき、上記の如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。
例えば図21(a)に破線のグラフで示す如く、アクセル操作量AP(ひいては、目標トルク)が急激に増加される状況では、図21(d),(e)に破線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化及び実駆動用吸気カムの切替えが行なわれる。この場合、実駆動用吸気カムの切替え時(時刻t1)における両吸気カム13H,13Lの位相角θVTCは、図17の実線f,gの状態に対応する位相角(=カム切替標準位相角θsw0)よりも遅角側の位相角である。従って、その位相角では、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hを使用した場合よりも、小リフト吸気カム13Lを使用した場合の方が、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比が大きいものとなる。
このため、実駆動用吸気カムの上記の切替えによって、各気筒2の燃焼室3の実効圧縮比は、瞬時に急増し、ひいては、該燃焼室3に充填される空気量も瞬時に増加する。例えば、図21(b)に破線のグラフで示す如く、該空気量が、実駆動用吸気カムの切替え時(時刻t1)で瞬時に急増する。
これにより、加速要求が高い場合には、内燃機関1の出力トルクを素早く大きなトルクに増加させることができ、ひいては、車両の応答性の良い加速を実現できることとなる。
なお、この場合、実駆動用吸気カムの切替え時に、内燃機関1の出力トルクがステップ状に急増することに伴う、車両の挙動の変化が生じるものの、車両の運転者が車両の素早い加速を要求している状況であるので、該車両の挙動の変化を運転者が不快に感じることはないと共に、該運転者は、該車両の挙動の変化によって、車両の素早い加速を体感することができる。
また、加速要求が高い場合においても、例えば、図21(c)に破線のグラフで示す如く、スロットル開度は、実駆動用吸気カムとして大リフト吸気カム13Hが使用される低負荷領域で、早期に、全開に近い開度(又は全開の開度)に制御される。
このため、内燃機関1の幅広い負荷領域において、スロットル弁7の開度を小さくすることに起因して発生するポンピングロスを低減することができる。ひいては、内燃機関1の燃料消費を抑制することができる。
次に、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転時の作動に関して説明する。
第1実施形態と同様に、車両の走行中に、アクセルペダルの操作が解除され、アクセル操作量APが“0”もしくは微小な操作量まで低下すると燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転が行われる。例えば、図22(a)に実線のグラフで示す如くアクセル操作量APが、時刻t11で急減されると、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転が開始される。
この燃料カット運転モードでは、第1実施形態と同様に、図22(b)に実線のグラフで示す如く、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3への燃料供給が遮断される。そして、この場合、内燃機関1は出力トルクを発生しなくなるので、車両の車速が、図22(c)に実線のグラフで示す如く減少していく。
また、この場合、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転中に、排気通路18に設けられている触媒装置19の温度が低下し過ぎる(ひいては触媒装置19の排ガス浄化能力が低下する)のを防止するために、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に供給する目標空気量が、図22(c)に実線のグラフで示す如く徐々に減少される。
このとき、目標空気量に応じて図9のマップに基づき決定される目標実効圧縮比も、目標空気量の減少に伴い減少してしくように決定される。このため、実駆動用吸気カムの位相角θVTCと、実駆動用吸気カムの切替え(小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hへの切替え)は、例えば、図22(e),(f)に実線のグラフで示す如く行なわれる。
図示の例は、燃料カット運転モードの開始直前の実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lである場合(燃料カット運転モードの開始直前に内燃機関1の高負荷運転が行われている場合)の例である。
この場合、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転が開始すると、実駆動用吸気カムとしての小リフト吸気カム13Lの位相角θVTCが進角方向に変化される。そして、該位相角θVTCが、図17の実線f,gの状態に対応するカム切替標準位相角θsw0まで達すると、実駆動用吸気カムが小リフト吸気カム13Lから大リフト吸気カム13Hに切替えられる。その後、実駆動要吸気カムとしての大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCは、最も遅角側の位相角まで遅角方向に変化される。これにより、実効圧縮比が連続的に減少されていくこととなる。それに応じて、実際の空気量も減少していくこととなる。
なお、燃料カット運転モードの開始直前の実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hである場合には、燃焼カット運転モードでの内燃機関1の運転が開始すると、実駆動用吸気カムが大リフト吸気カム13Hに維持されたまま、該実駆動用吸気カムの位相角θVTCが遅角方向に変化される。
さらに、燃料カット運転モードにおいて、前記した図10のマップによって、通常運転の場合と同様に決定される目標スロットル開度に応じて制御されるスロットル開度は、第1実施形態の場合と同様に、図22(g)に実線のグラフで示す如く、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化や、実駆動用吸気カムの切替えによって、実効圧縮比の減少が行なわれる状態では、全開からわずかに減少した開度に制御される。そして、実駆動用吸気カムとしての大リフト吸気カム13Hの位相角θVTCが最も遅角側の位相角まで到達すると、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に充填する空気量を減少させるために、スロットル開度が減少されるようになる。
従って、本実施形態における燃料カット運転モードにおいても、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に充填する空気量を減少させるために、実駆動用吸気カムの位相角θVTCの変化や、実駆動用吸気カムの切替えによる実効圧縮比の減少が、スロットル開度の減少よりも優先的に行なわれる。そして、実効圧縮比を減少させる状況では、スロットル開度は、全開もしくはそれに近い状態に保持される。
このため、燃料カット運転モードにおいて、図22(h)に実線のグラフで示す如く、スロットル開度を小さくすることに起因するポンピングロスをできるだけ発生させないようにすることができる。ひいては、燃料カット運転モードでの内燃機関1の運転中に内燃機関1の駆動対象としての車両の運動エネルギーがポンピングロスによって消耗されてしまうのを極力抑制することができる。
その結果、燃料カット運転モードが終了すると、車両の車速を元の車速に復帰させるように必要なエネルギー量を少なくして、内燃機関1の燃焼消費を低減することができる。
なお、燃料カット運転モードにおいて、仮に実駆動用吸気カムの位相角を一定にして(ひいては実効圧縮比を一定にして)、スロットル開度を図22(g)の二点鎖線のグラフで示す如く減少させるようにした場合には、ポンピングロスは、図22(h)の二点鎖線のグラフで示す如く、スロットル開度の減少に伴い増加していく。
これに比して、本実施形態によれば、燃料カット運転モードでのスロットル開度が極力、全開に近い開度に保持されるので、上記の如くポンピングロスの発生を少なくすることができる。
なお、以上説明した第1及び第2実施形態では、車両の加速要求の高低に応じて(内燃機関1の負荷の要求増加度合いの高低に応じて)、カム切替位相角θVTCswを変更するようにしたが、車両の加速要求の高低によらずに(内燃機関1の負荷の要求増加度合いの高低によらずに)、カム切替位相ア角θVTCを、カム切替標準位相角θsw0に保持するようにしてもよい。
この場合には、第1及び第2実施形態のそれぞれにおいて、図6のSTEP2,4の処理を省略すればよい。これにより、本発明の前記第2の態様及び第4の態様に関する他の実施形態が構築されることとなる。
また、前記第1及び第2実施形態では、車両の加速要求が高い場合(内燃機関1の負荷の要求増加度合いが高い場合)に、車両の加速要求の程度に応じて(アクセル操作量APや、その時間的増加率の大きさに応じて)、カム切替位相角θVTCswの基本値を可変的に設定するようにしたが、該基本値を、あらかじめ定めた一定値としてもよい。
また、前記第1及び第2実施形態では、車両に走行用の動力源として搭載された内燃機関1に関して説明したが、本発明は、車両用の内燃機関に限らず、船舶用の内燃機関等、種々様々の駆動対象を駆動する内燃機関に適用することができる。
1…内燃機関、3…燃焼室、8…吸気バルブ、9…吸気バルブ駆動機構、10…バルブ位相可変機構、11…バルブリフト可変機構、13H…大リフト吸気カム(第1の吸気バルブ)、13L…小リフト吸気バルブ(第2の吸気バルブ)、50…電子制御装置(吸気カム切替制御手段、カム位相制御手段、スロットル弁制御手段、負荷増加要求判断手段)。
Claims (16)
- 吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも小さい角度幅になり、且つ、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第1遅角側開弁開始位相角に一致し、且つ、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第2遅角側開弁開始位相角に一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の負荷の要求増加度合いの高低を判断する負荷増加要求判断手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第1遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第1進角側開弁開始位相角と該第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第2遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第2進角側開弁開始位相角と該第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御し、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも進角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第2の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合に、前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうときの前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角の目標値として前記特定状態に対応する位相角よりも進角側に設定されたカム切替位相角と、前記カム位相制御手段により制御される前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角とを比較し、該第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が前記カム切替位相角よりも進角側の位相角である場合には、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角がそれぞれ前記カム切替位相角に制御されてから前記実駆動用吸気カムの切替えを行い、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が、それぞれ前記カム切替位相角に一致するか、又は、該カム切替位相角よりも遅角側の位相角である場合には、前記実駆動用吸気カムの切替えを直ちに行なうことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項2記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気カム切替制御手段は、前記カム切替位相角を、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いがより高いほど、より進角側の位相角になるように可変的に設定する手段を含むことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御するスロットル弁制御手段を備えており、
該スロットル弁制御手段は、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合及び低い場合のいずれの場合においても、少なくとも前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項4記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中は、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とが構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項5記載の内燃機関の制御装置において、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第2の吸気カムの位相角を維持するように構成され、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも小さい角度幅になり、且つ、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第1遅角側開弁開始位相角に一致し、且つ、第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が上死点よりも遅角側で且つ下死点よりも進角側となる所定の第2遅角側開弁開始位相角に一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブリフト可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブ位相可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御する機能を有するスロットル弁制御手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、前記内燃機関の燃焼運転中に、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第1遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第1進角側開弁開始位相角と該第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記第2遅角側開弁開始位相角よりも進角側の所定の第2進角側開弁開始位相角と該第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記第1遅角側開弁開始位相角及び第1進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第1遅角側開弁開始位相角と第1進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記第2遅角側開弁開始位相角及び第2進角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該第2遅角側開弁開始位相角と第2進角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行い、
前記スロットル弁制御手段は、少なくとも前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御し、
さらに、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項7記載の内燃機関の制御装置において、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第2の吸気カムの位相角を維持するように構成され、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第2進角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも大きい角度幅になり、且つ、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点の位相角よりも進角側の所定の進角側開弁開始位相角で互いに一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の負荷の要求増加度合いの高低を判断する負荷増加要求判断手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが低い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御し、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記負荷の要求増加度合いが高い場合には、該負荷の増加中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側の位相角に制御された状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項9記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気カム切替制御手段は、前記実駆動用吸気カムとして前記第1の吸気カムを使用している状態で、前記負荷増加要求判断手段により判断された前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合に、前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうときの前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角の目標値として前記特定状態に対応する位相角よりも遅角側に設定されたカム切替位相角と、前記カム位相制御手段により制御される前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角とを比較し、該第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が前記カム切替位相角よりも遅角側の位相角である場合には、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角がそれぞれ前記カム切替位相角に制御されてから前記実駆動用吸気カムの切替えを行い、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの実際の位相角が、それぞれ前記カム切替位相角に一致するか、又は、該カム切替位相角よりも進角側の位相角である場合には、前記実駆動用吸気カムの切替えを直ちに行なうことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項10記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気カム切替制御手段は、前記カム切替位相角を、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いがより高いほど、より遅角側の位相角になるように可変的に設定する手段を含むことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項9〜11のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御するスロットル弁制御手段を備えており、
該スロットル弁制御手段は、前記内燃機関の負荷の要求増加度合いが高い場合及び低い場合のいずれの場合においても、少なくとも前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項12記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中は、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とが構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項13記載の内燃機関の制御装置において、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第1の吸気カムの位相角を維持するように構成され、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 吸気バルブを開閉駆動するために選択的に用いられる第1の吸気カム及び第2の吸気カムと、前記吸気バルブを実際に開閉駆動させる吸気カムである実駆動用吸気カムを第1の吸気カム及び第2の吸気カムのいずれか一方に選択的に切替えるバルブリフト可変機構と、クランク軸の位相角に対する第1及び第2の吸気カムの位相角を変化させるバルブ位相可変機構とを有し、第1及び第2の吸気カムのプロフィールが、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合の該吸気バルブのリフト量及び開弁期間の角度幅のそれぞれが、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合よりも大きくなるように設定された吸気バルブ駆動機構が備えられた内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、所定の条件下で、該内燃機関の燃焼室への燃料の供給を遮断した状態で、前記内燃機関の燃焼室に充填する空気量を減少させていく燃料カット運転モードでの運転が行われる内燃機関であり、
前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールは、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が上死点と下死点との間の角度幅よりも大きい角度幅になり、且つ、第2の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅が、第1の吸気カムによる前記吸気バルブの開弁期間の角度幅よりも、前記上死点と下死点との間の角度幅により近い角度幅になるように設定されていると共に、さらに、第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角と第2の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角とが、上死点の位相角よりも進角側の所定の進角側開弁開始位相角で互いに一致するように該第1の吸気カムの位相角と第2の吸気カムの位相角とを制御した状態である特定状態において、第1の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合と、第2の吸気カムにより前記吸気バルブを開閉駆動した場合とで、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が互いに一致するように前記第1及び第2の吸気カムのプロフィールが設定されており、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブリフト可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのうちの第1の吸気カムを内燃機関の低負荷運転用の吸気カム、第2の吸気カムを内燃機関の高負荷運転用の吸気カムとして、前記実駆動用吸気カムを少なくとも該内燃機関の負荷に応じて切替えるように前記バルブリフト可変機構を制御する吸気カム切替制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記バルブ位相可変機構を制御する機能を有し、前記内燃機関の燃焼運転中には、前記第1及び第2の吸気カムのそれぞれによる吸気バルブの開閉駆動時において、前記実駆動用吸気カムの位相角を少なくとも内燃機関の負荷に応じて変化させるように前記バルブ位相可変機構を制御するカム位相制御手段と、
前記内燃機関の燃焼運転中と前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中とで、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を制御する機能を有するスロットル弁制御手段とを備え、
前記カム位相制御手段は、前記内燃機関の燃焼運転中に、第1の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、進角方向に変化していくように前記バルブリフト可変機構の制御を行うと共に、第2の吸気カムによる吸気バルブの開閉駆動時には、該吸気バルブの開弁開始の位相角が、前記進角側開弁開始位相角と、該進角側開弁開始位相角よりも遅角側の所定の第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内で、内燃機関の負荷の増加に伴い、遅角方向に変化していくように前記バルブ位相可変機構の制御を行い、
前記進角側開弁開始位相角及び第1遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第1遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の進角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記進角側開弁開始位相角及び第2遅角側開弁開始位相角は、前記内燃機関の燃焼室の実効圧縮比が、該進角側開弁開始位相角と第2遅角側開弁開始位相角との間の範囲内での該吸気バルブの開弁開始の位相角の遅角方向への変化に伴い、増加していくようにあらかじめ設定され、
前記吸気カム切替制御手段は、少なくとも前記内燃機関の所定の負荷状態での燃焼運転中に、前記第1の吸気カム及び第2の吸気カムの位相角が前記カム位相制御手段によりそれぞれ前記特定状態に対応する位相角に制御されている状態で前記実駆動用吸気カムの切替えを行なうように前記バルブリフト可変機構の制御を行い、
前記スロットル弁制御手段は、少なくとも前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中に、前記スロットル弁の開度を、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、前記第1の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中には、前記スロットル弁の開度を、前記第2の吸気カムを前記実駆動用吸気カムとして使用する前記内燃機関の燃焼運転中での前記スロットル弁の開度以下の開度で前記内燃機関の負荷に応じて制御し、
さらに、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理と、前記スロットル弁制御手段の制御処理とは、前記空気量を減少させるために、前記実効圧縮比を減少させることを、前記スロットル弁の開度を減少させることよりも優先して行わせるように構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項15記載の内燃機関の制御装置において、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理は、前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転の開始後、前記実効圧縮比を、燃料カット運転モードでの前記内燃機関の運転の開始直前の実効圧縮比から連続的に減少させていくように、前記実駆動用吸気カムの位相角の変更と実駆動用吸気カムの切替えとを行い、さらに最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達した後は、該実駆動用吸気カムとしての第1の吸気カムの位相角を維持するように構成され、
前記燃料カット運転モードでの内燃機関の運転中における前記スロットル弁制御手段は、前記カム位相制御手段及び吸気カム切替制御手段の制御処理によって、最終的に、実駆動用吸気カムとして使用される前記第1の吸気カムによる吸気バルブの開弁開始の位相角が前記第1遅角側開弁開始位相角に到達するまでは、その最大開度と最小開度とのうちの最大開度寄りの開度又は最大開度に制御し、さらに当該到達後は、前記スロットル弁の開度を、当該到達前の開度から減少させていくように構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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