JP2013139346A - 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子 - Google Patents

光学ガラス、プリフォーム及び光学素子 Download PDF

Info

Publication number
JP2013139346A
JP2013139346A JP2011289952A JP2011289952A JP2013139346A JP 2013139346 A JP2013139346 A JP 2013139346A JP 2011289952 A JP2011289952 A JP 2011289952A JP 2011289952 A JP2011289952 A JP 2011289952A JP 2013139346 A JP2013139346 A JP 2013139346A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
component
glass
optical glass
optical
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2011289952A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroyasu Ono
博尉 大野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ohara Inc
Original Assignee
Ohara Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ohara Inc filed Critical Ohara Inc
Priority to JP2011289952A priority Critical patent/JP2013139346A/ja
Publication of JP2013139346A publication Critical patent/JP2013139346A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Glass Compositions (AREA)

Abstract

【課題】高屈折率及び高分散でありながらも、溶融ガラスを成形する際の離型性が高く、成形不良を低減しながらも成形型の長寿命化を図ることが可能な光学ガラスと、これを用いた光学素子及びプリフォームを提供する。
【解決手段】光学ガラスは、酸化物換算組成でP成分、Nb成分及びBi成分を含有し、Bi成分の含有量が質量%で5.0〜70.0%であり、溶融ガラスと貴金属との接触角が100°以上である。プリフォーム及び光学素子は、この光学ガラスからなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学ガラス、プリフォーム及び光学素子に関する。
近年、光学系を使用する機器のデジタル化や高精細化が急速に進んでおり、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影機器をはじめ、各種光学機器に用いられるレンズ等の光学素子に対する高精度化、軽量、及び小型化の要求は、ますます強まっている。
特に、研削や研磨法で非球面レンズを作製することは高コスト、低能率であるために、非球面レンズの製造方法としては、ゴブ或いはガラスブロックを切断・研磨したプリフォーム材を加熱軟化させ、これを高精度な面を持つ成形型で加圧成形させることによって、研削・研磨工程を省略し、低コスト・大量生産が実現している。
光学素子を作製する光学ガラスの中でも特に、光学素子の軽量化及び小型化を図ることに有益な、1.85以上の高い屈折率(n)と25以下の低いアッベ数(ν)を有するガラスの需要が非常に高まっている。このような高屈折率高分散ガラスとして、例えば特許文献1〜5に代表されるようなガラスが知られている。
特開2003−165743号公報 特開2005−206433号公報 特開2006−131480号公報 特開2008−303112号公報 特開2009−096649号公報
こうした光学素子の製造方法としては、ガラスを再加熱して成形(リヒートプレス成形)して得られたガラス成形品を研削研磨する方法や、ゴブ又はガラスブロックを切断し研磨したプリフォーム材、若しくは公知の浮上成形等により成形されたプリフォーム材を再加熱して、高精度な成形面を持つ成形型で加圧成形する方法(精密プレス成形)が用いられている。また、プリフォーム材を経ることなく、溶融ガラスを直接プレスして光学素子を製造する方法(ダイレクトプレス成形)も用いられている。
しかしながら、特許文献1〜5で開示されたガラスは、一度冷却したガラスを再加熱したときに、成形型と融着を起こすことが多く、これらのガラスをプレス成形する成形型の寿命は必ずしも高いものではなかった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高屈折率及び高分散でありながらも、溶融ガラスを成形する際の離型性が高く、成形不良を低減しながらも成形型の長寿命化を図ることが可能な光学ガラスと、これを用いた光学素子及びプリフォームを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、P成分をガラス形成成分として用い、Nb成分を含有し、且つBi成分を所定以上含有することで、溶融ガラスと貴金属との接触角が一層高められ、且つガラスの分散が大きくなることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 酸化物換算組成でP成分、Nb成分及びBi成分を含有し、Bi成分の含有量が質量%で5.0〜70.0%であり、溶融ガラスと貴金属との接触角が100°以上である光学ガラス。
(2) 質量%で、P成分を10.0〜50.0%、及びNb成分を5.0%以上60.0%以下含有する(1)記載の光学ガラス。
(3) 質量%で、P成分とNb成分の合計量が75.0%以下である(1)又は(2)記載の光学ガラス。
(4) 質量%で、Bi成分の含有量に対するNb成分の含有量の比率が2.50以下である(1)から(3)のいずれか記載の光学ガラス。
(5) 質量%で、
WO成分 0〜30.0%
TiO成分 0〜30.0%
である(1)から(4)のいずれか記載の光学ガラス。
(6) 質量%で、TiO成分の含有量に対するWO成分の含有量の比率が2.40以下である(1)から(5)のいずれか記載の光学ガラス。
(7) 質量%で、WO成分及びBi成分の合計量が10.0〜70.0%である(1)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
(8) 質量%で、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量が40.0〜80.0%である(1)から(7)のいずれか記載の光学ガラス。
(9) 質量%で、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、WO成分の含有量の比率が0.30以下である(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
(10) 質量%で、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、TiO成分の含有量の比率が0.40以下である(1)から(9)のいずれか記載の光学ガラス。
(11) 質量%で、P成分の含有量に対する、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量の比率が5.00以下である(1)から(10)のいずれか記載の光学ガラス。
(12) 質量%で、
LiO成分 0〜20.0%
NaO成分 0〜20.0%
O成分 0〜20.0%
CsO成分 0〜10.0%
である(1)から(11)のいずれか記載の光学ガラス。
(13) 質量%で、RnO成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の合計量が25.0%以下である(1)から(12)のいずれか記載の光学ガラス。
(14) 質量%で、
MgO成分 0〜15.0%
CaO成分 0〜15.0%
SrO成分 0〜15.0%
BaO成分 0〜15.0%
ZnO成分 0〜15.0%
である(1)から(13)のいずれか記載の光学ガラス。
(15) 質量%で、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の合計量が20.0%以下である(1から14のいずれか記載の光学ガラス。
(16) 質量%で、
SiO成分 0〜30.0%
成分 0〜30.0%
GeO成分 0〜10.0%
成分 0〜10.0%
La成分 0〜10.0%
Gd成分 0〜10.0%
Yb成分 0〜10.0%
TeO成分 0〜30.0%
Ta成分 0〜15.0%
Al成分 0〜10.0%
Ga成分 0〜10.0%
ZrO成分 0〜15.0%
Sb成分 0〜3.0%
をさらに含有する(1)から(15)のいずれか記載の光学ガラス。
(17) 1.85以上の屈折率(nd)を有し、25以下のアッベ数(νd)を有する(1)から(16)のいずれか記載の光学ガラス。
(18) 分光透過率が5%を示す波長(λ)が450nm以下である(1)から(17)のいずれか記載の光学ガラス。
(19) 塩基性度が10以下である(1)から(18)のいずれか記載の光学ガラス。
(20) (1)から(19)のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
(21) (20)記載のプリフォームを研磨してなる光学素子。
(22) (20)記載のプリフォームを精密プレス成形してなる光学素子。
(23) (1)から(19)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
本発明によれば、高屈折率及び高分散でありながらも、溶融ガラスを成形する際の離型性が高く、成形不良を低減しながらも成形型の長寿命化を図ることが可能な光学ガラスと、これを用いた光学素子及びプリフォームを提供できる。
本発明の光学ガラスは、酸化物換算組成でP成分、Nb成分及びBi成分を含有し、Bi成分の含有量が質量%で5.0〜70.0%であり、溶融ガラスと貴金属との接触角が100°以上である。P成分をガラス形成成分として用いることで、溶融ガラスと貴金属との接触角が高められる。また、Nb成分を含有し、且つBi成分を所定以上含有することで、溶融ガラスと貴金属との接触角がより一層高められ、且つ分散が大きくなる(アッベ数が低くなる)。このため、高屈折率及び高分散でありながらも、溶融ガラスを成形する際の離型性を高めることで、成形不良を低減しながらも成形型の長寿命化を図ることが可能な光学ガラスと、これを用いた光学素子及びプリフォームを提供できる。
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有量は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解されて酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
<必須成分、任意成分について>
成分は、ガラス形成成分であり、ガラスに高分散性を与えるのに有効な成分である。特に、P成分を10.0%以上含有することで、溶融ガラスと貴金属との接触角を高め、且つガラスの可視光透過率を高めることができる。従って、P成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは12.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは17.0%を下限とする。
一方で、P成分の含有量を50.0%以下にすることで、屈折率の低下が抑えられる。従って、P成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは30.0%を上限とする。
成分は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いてガラス内に含有できる。
Nb成分は、ガラスの屈折率及び分散を高めるため、本発明の光学ガラスに含めるべき成分である。特に、Nb成分を5.0%以上含有することで、ガラスの屈折率及び分散を高め、且つ化学的耐久性及び耐失透性を改善するのに有効である。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは5.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは10.0%を下限とする。
一方で、Nb成分の含有量が多すぎると、ガラスの耐失透性が悪化し、且つ溶融ガラスと貴金属との接触角が低くなるため、ガラスの精密プレス成形性が悪化する。従って、液相温度を下げて耐失透性を高めるため、Nb成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは50.0%、さらに好ましくは40.0%を上限とする。
Nb成分は、原料としてNb等を用いてガラス内に含有できる。
Bi成分は、ガラスの屈折率及び分散を高め、且つガラス転移点の低いガラスを得るのに有効な成分であるため、本発明の光学ガラスに5.0%以上含めるべき成分である。また、Bi成分を5.0%以上含有することで、ガラスの屈折率及び分散を高め、且つガラス転移点を低くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するBi成分の含有量は、好ましくは5.0%を下限とし、より好ましくは10.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは25.0%超とする。
一方で、Bi成分の含有量を70.0%以下にすることで、ガラスの可視光透過率の低下や失透を抑えられる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは70.0%、より好ましくは60.0%、さらに好ましくは55.0%を上限とする。
Bi成分は、原料としてBi等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスにおけるP成分とNb成分の合計量は、75.0%以下が好ましい。これにより、ガラス転移点が低くなり、且つプレス成形時にガラスや成形型表面へのクモリの発生が低減されるため、よりプレス成形を行い易い光学ガラスを得られる。従って、合計量(P+Nb)は、好ましくは75.0%、より好ましくは65.0%、さらに好ましくは60.0%、さらに好ましくは56.0%、さらに好ましくは53.0%を上限とする。
なお、この合計量(P+Nb)は、溶融ガラスと貴金属との接触角をより高める観点で、好ましくは15.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%、さらに好ましくは30.0%を下限としてもよい。
本発明の光学ガラスにおける、Nb成分の含有量に対するP成分の含有量の比率(質量比)は、3.00未満が好ましい。これにより、ガラスの屈折率及び分散を高めることができる。従って、質量比(P/Nb)は、好ましくは3.00未満、より好ましくは2.00未満、さらに好ましくは1.00未満とする。
なお、この質量比(P/Nb)は、ガラスの可視光透過率を高める観点で、好ましくは0.17、より好ましくは0.20、さらに好ましくは0.25を下限としてもよい。
本発明の光学ガラスにおける、Bi成分の含有量に対するNb成分の含有量の比率(質量比)は、2.50以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率及び分散を高めることができる。従って、質量比(Nb/Bi)は、好ましくは2.50、より好ましくは2.00、さらに好ましくは1.30、さらに好ましくは0.85を上限とする。
なお、この質量比(Nb/Bi)は、ガラスの可視光透過率を高める観点で、好ましくは0.10、より好ましくは0.20、さらに好ましくは0.25を下限としてもよい。
WO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率及び分散を高められる任意成分である。
WO成分の含有量を30.0%以下にすることで、ガラス転移点を低くし、溶融ガラスと貴金属との接触角を高め、且つガラスの可視光透過率を高めることができる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは14.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。
WO成分は、原料としてWO等を用いてガラス内に含有できる。
TiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率及び分散を高められ、ガラスの液相温度を低くでき、且つガラスの化学的耐久性を高められる任意成分である。そのため、TiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
一方で、TiO成分の含有量を30.0%以下にすることで、TiO成分の過剰な含有によるガラスの失透を抑制し、ガラスの可視光透過率を高め、且つ溶融ガラスと貴金属との接触角を高めることができる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。
TiO成分は、原料としてTiO等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスにおける、TiO成分の含有量に対するWO成分の含有量の比率(質量比)は、2.40以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率及び分散を高め、且つガラスの可視光透過率を高めることができる。従って、質量比(WO/TiO)は、好ましくは2.40、より好ましくは2.00、さらに好ましくは1.50を上限とし、さらに好ましくは1.00未満、さらに好ましくは0.80未満とする。
本発明の光学ガラスにおける、WO成分とBi成分の合計量は、10.0〜70.0%が好ましい。
この合計量を10.0%以上にすることで、よりガラス転移点の低い光学ガラスを得ることができる。従って、合計量(WO+Bi)は、好ましくは10.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%を下限とする。
一方で、この合計量を70.0%以下にすることで、ガラスの可視光透過率の低下を抑えられる。従って、合計量(WO+Bi)は、好ましくは70.0%、より好ましくは65.0%、さらに好ましくは60.0%、さらに好ましくは55.0%を上限とする。
本発明の光学ガラスにおける、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量は、40.0〜80.0%が好ましい。
この合計量を40.0%以上にすることで、ガラスの屈折率及び分散を高めることができる。従って、質量和(Nb+Bi+WO+TiO)は、好ましくは40.0%、より好ましくは50.0%、さらに好ましくは55.0%、さらに好ましくは58.0%を下限とする。
一方で、この合計量を80.0%以下にすることで、ガラスの液相温度の上昇を抑えることができる。従って、質量和(Nb+Bi+WO+TiO)は、好ましくは80.0%、より好ましくは78.0%、さらに好ましくは75.0%を上限とする。
本発明の光学ガラスにおける、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、WO成分の含有量の比率(質量比)は、0.30以下が好ましい。これにより、ガラスの塩基性度を低くでき、且つガラスの可視光透過率の低下を抑えられる。従って、質量比(WO/(Nb+Bi+WO+TiO))は、好ましくは0.30、より好ましくは0.20、さらに好ましくは0.09を上限とする。
本発明の光学ガラスにおける、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、TiO成分の含有量の比率(質量比)は、0.40以下が好ましい。これにより、ガラス転移点が低くなり、且つプレス成形時にガラスや成形型表面へのクモリの発生が低減されるため、よりプレス成形を行い易い光学ガラスを得られる。従って、質量比(TiO/(Nb+Bi+WO+TiO))は、好ましくは0.40、より好ましくは0.30、さらに好ましくは0.20、さらに好ましくは0.11を上限とする。
なお、この質量比(TiO/(Nb+Bi+WO+TiO))は、ガラスの屈折率及び分散をより高める観点で、好ましくは0.01、より好ましくは0.02を下限としてもよい。
本発明の光学ガラスにおける、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、WO成分及びTiO成分の合計量の比率(質量比)は、0.45以下が好ましい。これにより、溶融ガラスと貴金属との接触角を高めることができる。従って、質量比((WO+TiO)/(Nb+Bi+WO+TiO))は、好ましくは0.45、より好ましくは0.35、さらに好ましくは0.25、さらに好ましくは0.145、さらに好ましくは0.13、さらに好ましくは0.12を上限とする。
なお、この質量比((WO+TiO)/(Nb+Bi+WO+TiO))は、ガラスの屈折率及び分散をより高める観点で、好ましくは0.01、より好ましくは0.02を下限としてもよい。
本発明の光学ガラスにおける、P成分の含有量に対する、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量の比率は、5.00以下が好ましい。これにより、溶融ガラスと貴金属との接触角を高めることができる。従って、質量比((Nb+Bi+WO+TiO)/P)は、好ましくは5.00、より好ましくは4.50、さらに好ましくは4.00、さらに好ましくは3.60を上限とする。
なお、この質量比((Nb+Bi+WO+TiO)/P)は、ガラスの屈折率及び分散をより高める観点で、好ましくは1.00、より好ましくは1.50、さらに好ましくは2.00を下限としてもよい。
LiO成分、NaO成分、KO成分及びCsO成分は、0%超含有する場合に、ガラス転移点を低くでき、且つガラスの液相温度を低くできる任意成分である。特にNaO成分の含有量は、好ましくは0.1%、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは3.0%を下限としてもよい。
一方で、これら成分の各々の含有量を20.0%以下(CsO成分については10.0%以下)にすることで、溶融ガラスと貴金属との接触角の低下を抑え、ガラスの屈折率の低下を抑えることができる。従って、LiO成分、NaO成分及びKO成分の各々の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。また、CsO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
LiO成分、NaO成分、KO成分及びCsO成分は、原料としてLiCO、LiNO、LiF、NaCO、NaNO、NaF、NaSiF、KCO、KNO、KF、KHF、KSiF、CsCO、CsNO等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスにおけるRnO成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の合計量は、25.0%以下が好ましい。これにより、RnO成分の過剰な含有による、溶融ガラスと貴金属との接触角の低下や、ガラスの屈折率の低下や、液相温度の上昇を抑えることができる。従って、RnO成分の合計量は、好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは7.0%を上限とする。
一方で、RnO成分の少なくともいずれかを含有することで、ガラス転移点を下げ、且つガラスの液相温度を低くすることができる。従って、RnO成分の合計量は、好ましくは0%より多くし、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.2%を下限とする。
MgO成分、CaO成分、SrO成分及びZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの液相温度を低くできる任意成分である。特にZnO成分の含有量は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.3%、さらに好ましくは0.5%を下限としてもよい。
一方で、これら成分の各々の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの屈折率及び分散の低下や、液相温度の上昇を抑えることができる。従って、MgO成分、CaO成分、SrO成分及びZnO成分の各々の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
MgO成分、CaO成分、SrO成分及びZnO成分は、原料としてMgCO、MgF、CaCO、CaF、Sr(NO、SrF、ZnO、ZnF等を用いてガラス内に含有できる。
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、ガラスの液相温度を下げられる任意成分である。
一方で、BaO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの分散の低下や、液相温度の上昇を抑えることができる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
BaO成分は、原料としてBaCO、Ba(NO、BaF等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスにおける、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の合計量は、20.0%が好ましい。これにより、RO成分の過剰な含有による、ガラスの分散の低下や、液相温度の上昇を抑えることができる。従って、RO成分の合計量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
一方で、RO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの液相温度を低くできる。従って、RO成分の合計量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.5%を下限としてもよい。
SiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの着色を低減でき、ガラスの可視光透過率を高められ、且つガラスの液相温度を低くできる任意成分である。
一方で、SiO成分の含有量を30.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。
SiO成分は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF等を用いてガラス内に含有できる。
成分は、0%超含有する場合に、ガラスの液相温度を低くできる任意成分である。
一方で、B成分の含有量を30.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。従って、B成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.2%を下限としてもよい。
成分は、原料としてHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いてガラス内に含有できる。
GeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、ガラスの液相温度を下げられる任意成分である。
一方で、GeO成分の含有量を10.0%以下にすることで、高価なGeO成分の使用が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
GeO成分は、原料としてGeO等を用いてガラス内に含有できる。
成分、La成分、Gd成分及びYb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つガラスの化学的耐久性を向上できる任意成分である。
一方で、これら成分の各々の含有量を10.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑え、且つこれら成分の過剰な含有によるガラスの液相温度の上昇を抑えることができる。従って、Y成分、La成分、Gd成分、Yb成分及びLu成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
成分、La成分、Gd成分及びYb成分は、原料としてY、YF、La、La(NO・XHO(Xは任意の整数)、Gd、GdF、Yb等を用いてガラス内に含有できる。
TeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
一方で、TeO成分の含有量を30.0%以下にすることで、ガラスの可視光透過率を高めることができる。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
TeO成分は、原料としてTeO等を用いてガラス内に含有できる。
Ta成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
一方で、Ta成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を低くすることができる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Ta成分は、原料としてTa等を用いてガラス内に含有できる。
Al成分及びGa成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を高められ、且つガラス溶融時の粘度を高められる任意成分である。
一方で、Al成分及びGa成分の含有量を各々10.0%以下にすることで、ガラスの液相温度の上昇を抑えることができる。従って、Al成分及びGa成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
Al成分及びGa成分は、原料としてAl、Al(OH)、AlF、Ga、Ga(OH)等を用いてガラス内に含有できる。
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの可視光透過率を高め、且つガラスの液相温度を低くできる任意成分である。
一方で、ZrO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ZrO成分の過剰な含有による屈折率の低下や、液相温度の上昇を抑えられる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
ZrO成分は、原料としてZrO、ZrF等を用いてガラス内に含有できる。
Sb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの可視光透過率を高め、且つガラスを溶融する際に脱泡できる任意成分である。
一方で、Sb成分の含有量を3.0%以下にすることで、Sb成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くなることで、成形型に付着する不純物が低減されるため、ガラス成形体の表面への凹凸や曇りの形成を低減でき、成形型の長寿命化を図れる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは3.0%、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。
Sb成分は、原料としてSb、Sb、NaSb・5HO等を用いてガラス内に含有できる。
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加できる。
また、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
さらに、PbO等の鉛化合物、及び、Th、Cd、Tl、Os、Be、Seの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、光学ガラスに環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、この光学ガラスを製造し、加工し、及び廃棄できる。
本発明のガラス組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため直接的にモル%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分のモル%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。
成分 12.0〜60.0mol%、
Nb成分 3.0〜40.0mol%及び
Bi成分 2.0〜30.0mol%
並びに
WO成分 0〜20.0mol%、
TiO成分 0〜60.0mol%、
LiO成分 0〜55.0mol%、
NaO成分 0〜50.0mol%、
O成分 0〜35.0mol%、
CsO成分 0〜10.0mol%、
MgO成分 0〜45.0mol%、
CaO成分 0〜40.0mol%、
SrO成分 0〜25.0mol%、
BaO成分 0〜15.0mol%、
ZnO成分 0〜25.0mol%、
SiO成分 0〜60.0mol%、
成分 0〜60.0mol%、
GeO成分 0〜10.0mol%、
成分 0〜10.0mol%、
La成分 0〜7.0mol%、
Gd成分 0〜7.0mol%、
Yb成分 0〜7.0mol%、
TeO成分 0〜30.0mol%、
Ta成分 0〜7.0mol%、
Al成分 0〜20.0mol%、
Ga成分 0〜7.0mol%、
ZrO成分 0〜30.0mol%又は
Sb成分 0〜1.5mol%
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1000〜1250℃の温度範囲で2〜10時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
[物性]
本発明の光学ガラスは、溶融により形成される溶融ガラスと貴金属との接触角が100°以上である。これにより、貴金属からなる離型膜の形成された成形型で光学ガラスをプレス成形する際に、離型膜と光学ガラスとの接触角が高められるため、離型膜と光学ガラスとの融着を低減し、成形型や離型膜の長寿命化を図ることができる。特に、本発明の光学ガラスの貴金属との接触角は、好ましくは100°、より好ましくは102°、さらに好ましくは105°を下限とする。
このように、本発明の光学ガラスにおいて貴金属との接触角が大きくなる一因として、ガラスの塩基性度が高いことが挙げられる。すなわち、本発明の光学ガラスの塩基性度は、貴金属との接触角が高い光学ガラスを得易くできる観点で、好ましくは10.0、より好ましくは9.5、さらに好ましくは9.0を上限としてもよい。
なお、本発明の光学ガラスの塩基性度は、例えば特開2004−292306号公報に開示された計算方法に基づいて求められる。また、本発明における貴金属としては、W、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Re及びTaのうち少なくとも一種以上の金属又はこれらの合金を好ましく用いることができる。
なお、本明細書でいう「接触角」とは、貴金属系の膜が成膜されたプレートとガラスの接触角の大きさを意味する。接触角は、以下の濡れ性試験によって求めることができる。
<濡れ性試験>
粉砕及び篩分けした400〜700μmの粒径のガラス粉を、5×5mm程度の貴金属系の膜が成膜されたプレートに載せて試料を作製し、この試料を窒素雰囲気中で屈伏点(At)以上の温度で熱処理する。加熱によって試料が液滴状になった後で試料を急冷し、固化した試料とプレートとの接触角θを測定する。
本発明の光学ガラスは、高屈折率及び高分散を有することが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.85、より好ましくは1.88、さらに好ましくは1.90を下限とする。この屈折率の上限は、好ましくは2.30、より好ましくは2.20、さらに好ましくは2.15であってもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは25、より好ましくは23、さらに好ましくは21を上限とする。このアッベ数の下限は、好ましくは10、より好ましくは12、さらに好ましくは15であってもよい。
このような高屈折率を有することで、更に素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。また、このような高分散を有することで、例えば低分散を有する光学素子と組み合わせた場合に、高い結像特性等を図ることができる。
従って、高屈折率高分散の光学ガラスを光学素子に用いることで、高い結像特性等を図りながらも、光学設計の自由度を広げることができる。
本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。特に、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ)は、好ましくは450nm、より好ましくは430nm、さらに好ましくは410nm、さらに好ましくは400nmを上限としてもよい。また、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す最も短い波長(λ70)は、好ましくは550nm、より好ましくは530nm、さらに好ましくは500nm、さらに好ましくは480nmを上限としてもよい。これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍に位置するようになり、より幅広い可視域の波長の光に対するガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスをレンズ等の光学素子の材料に好ましく用いることができる。
本発明の光学ガラスは、700℃以下のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。これにより、ガラスがより低い温度で軟化するため、より低い温度でガラスをプレス成形でき、軟化したガラスの成形型への融着も低減できる。また、成形型やその表面の離型膜の酸化を低減することで、成形型の長寿命化を図ることもできる。従って、本発明の光学ガラスのガラス転移点は、好ましくは700℃、より好ましくは650℃、さらに好ましくは600℃を上限とする。
なお、本発明の光学ガラスのガラス転移点の下限は特に限定されないが、本発明によって得られるガラスのガラス転移点は、概ね100℃以上、具体的には150℃以上、さらに具体的には200℃以上であることが多い。
本発明の光学ガラスは、耐失透性が低いことが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの液相温度は、好ましくは1200℃、より好ましくは1100℃、最も好ましくは1000℃を上限とする。これにより、より低い温度で熔融ガラスを流出しても、作製されたガラスの結晶化が低減されるため、溶融ガラスの成形型等への融着をより一層低減し、成形型の寿命をより長くできる。一方で、この液相温度の下限は特に限定しないが、本発明の光学ガラスの液相温度は、概ね500℃以上、具体的には550℃以上、さらに具体的には600℃以上であることが多い。
なお、本明細書中における「液相温度」は、粉砕したガラス試料を白金板上にのせ、温度傾斜のついた炉内に30分間保持し、取り出して冷却した後、ガラス中の結晶の有無を顕微鏡にて観察し、結晶が認められない一番低い温度とした。
本発明の光学ガラスは、平均線膨張係数(α)が小さいことが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの平均線膨張係数は、好ましくは130×10−7−1、より好ましくは125×10−7−1、最も好ましくは120×10−7−1を上限としてもよい。これにより、光学ガラスを成形型でプレス成形する際に、ガラスの温度変化による膨張や収縮が低減される。そのため、プレス成形時に光学ガラスを割れ難くし、且つ、成形型やその表面の離型膜の損傷を低減できる。
[プリフォーム及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
このようにして作製されるガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である。特に、本発明の光学ガラスから、精密プレス成形等の手段を用いて、レンズやプリズム、ミラー等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、カメラやプロジェクタ等のような光学素子に可視光を透過させる光学機器に用いたときに、高精細で高精度な結像特性等を実現しつつ、これら光学機器における光学系の小型化を図ることができる。
本発明の実施例(No.1〜No.44)及び比較例(No.A)のガラスの組成、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ、λ70)、ガラス転移点(Tg)、液相温度、平均線膨張係数、貴金属との接触角、並びに塩基性度を表1〜表6に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
これら実施例及び比較例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表1〜表6に示した各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1000〜1250℃の温度範囲で2〜10時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下に温度を下げて攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
ここで、実施例及び比較例のガラスの屈折率及びアッベ数は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01−2003に基づいて測定した。なお、本測定に用いたガラスとして、アニール条件は徐冷降下速度を−25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
また、実施例及び比較例のガラスの可視光透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定し、λ(透過率5%時の波長)及びλ70(透過率70%時の波長)を求めた。
また、実施例及び比較例のガラスのガラス転移点は、熱膨張計を用いた測定を行うことで求めた。ここで、測定を行う際のサンプルは、直径5mm、長さ20mmのものを使用し、昇温速度を4℃/minとした。
また、実施例及び比較例のガラスの液相温度は、粉砕したガラス試料を白金板上にのせ、温度傾斜のついた炉内に30分間保持し、取り出して冷却した後、ガラス中の結晶の有無を顕微鏡にて観察し、結晶が認められない一番低い温度とした。
また、実施例及び比較例の光学ガラスの平均線膨張係数は、日本光学硝子工業会規格JOGIS08−2003「光学ガラスの熱膨張の測定方法」に従い、−30〜+70℃における平均線膨張係数を求めた。
また、実施例及び比較例の光学ガラスの貴金属との接触角は、以下の濡れ性試験によって測定した。すなわち、粉砕及び篩分けした400〜700μmの粒径のガラス粉を、5×5mm程度の貴金属(W、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Re及びTaのうち少なくとも一種以上の金属又はこれらの合金)からなる膜が成膜されたプレートに載せて試料を作製し、この試料を窒素雰囲気中で屈伏点(At)から0℃〜200℃高い温度で熱処理した。加熱によって試料が液滴状になった後で試料を室温(25℃)まで急冷し、固化した試料とプレートとの接触角θを測定した。
なお、表1〜表6に記載されている光学ガラスの塩基性度は、例えば特開2004−292306号公報に開示された計算方法に基づいて計算された値である。
Figure 2013139346
Figure 2013139346
Figure 2013139346
Figure 2013139346
Figure 2013139346
Figure 2013139346
本発明の実施例の光学ガラスは、溶融ガラスと貴金属との接触角が100°以上、より具体的には105°以上であった。一方で、比較例のガラスは、貴金属との接触角が102°であった。そのため、本発明の実施例の光学ガラスは、比較例のガラスに比べて貴金属との濡れ性が低いため、プレス成形時における成形型への融着が少ないことが推察される。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、ガラス転移点が600℃以下であり、液相温度が1200℃以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、ガラス転移点や液相温度が低く、より低温で軟化し且つ加熱時に失透し難いため、プレス成形時における成形型への融着をより一層低減できることが推察される。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、平均線膨張係数が130×10−7−1以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、成形型やその表面の離型膜の損傷を低減できることが推察される。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもλ(透過率5%時の波長)が450nm以下、より具体的には400nm以下であり、λ70(透過率70%時の波長)が550nm以下、より具体的には470nm以下であり、所望の範囲内であった。一方で、比較例のガラスは、λ(透過率5%時の波長)が402nm、λ70(透過率70%時の波長)が490nmであった。そのため、本発明の実施例の光学ガラスは、比較例のガラスに比べて可視光透過率が高いことも明らかになった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.85以上、アッベ数(ν)が25以下であり、所望の範囲内であった。
さらに、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、リヒートプレス成形を行った後で研削及び研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。また、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、精密プレス成形用プリフォームを形成し、精密プレス成形用プリフォームをレンズ及びプリズムの形状に精密プレス成形加工した。いずれの場合も、成形型との融着の問題や、加熱軟化後のガラスへの乳白化及び失透等の問題は生じず、安定に様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、高屈折率及び高分散でありながらも、溶融ガラスを成形する際の離型性が高く、成形不良を低減しながらも成形型の長寿命化を図れることが明らかになった。
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。

Claims (23)

  1. 酸化物換算組成でP成分、Nb成分及びBi成分を含有し、Bi成分の含有量が質量%で5.0〜70.0%であり、溶融ガラスと貴金属との接触角が100°以上である光学ガラス。
  2. 質量%で、P成分を10.0〜50.0%、及びNb成分を5.0%以上60.0%以下含有する請求項1記載の光学ガラス。
  3. 質量%で、P成分とNb成分の合計量が75.0%以下である請求項1又は2記載の光学ガラス。
  4. 質量%で、Bi成分の含有量に対するNb成分の含有量の比率が2.50以下である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
  5. 質量%で、
    WO成分 0〜30.0%
    TiO成分 0〜30.0%
    である請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
  6. 質量%で、TiO成分の含有量に対するWO成分の含有量の比率が2.40以下である請求項1から5のいずれか記載の光学ガラス。
  7. 質量%で、WO成分及びBi成分の合計量が10.0〜70.0%である請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
  8. 質量%で、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量が40.0〜80.0%である請求項1から7のいずれか記載の光学ガラス。
  9. 質量%で、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、WO成分の含有量の比率が0.30以下である請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。
  10. 質量%で、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量に対する、TiO成分の含有量の比率が0.40以下である請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス。
  11. 質量%で、P成分の含有量に対する、Nb成分、Bi成分、WO成分及びTiO成分の合計量の比率が5.00以下である請求項1から10のいずれか記載の光学ガラス。
  12. 質量%で、
    LiO成分 0〜20.0%
    NaO成分 0〜20.0%
    O成分 0〜20.0%
    CsO成分 0〜10.0%
    である請求項1から11のいずれか記載の光学ガラス。
  13. 質量%で、RnO成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の合計量が25.0%以下である請求項1から12のいずれか記載の光学ガラス。
  14. 質量%で、
    MgO成分 0〜15.0%
    CaO成分 0〜15.0%
    SrO成分 0〜15.0%
    BaO成分 0〜15.0%
    ZnO成分 0〜15.0%
    である請求項1から13のいずれか記載の光学ガラス。
  15. 質量%で、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の合計量が20.0%以下である請求項14記載の光学ガラス。
  16. 質量%で、
    SiO成分 0〜30.0%
    成分 0〜30.0%
    GeO成分 0〜10.0%
    成分 0〜10.0%
    La成分 0〜10.0%
    Gd成分 0〜10.0%
    Yb成分 0〜10.0%
    TeO成分 0〜30.0%
    Ta成分 0〜15.0%
    Al成分 0〜10.0%
    Ga成分 0〜10.0%
    ZrO成分 0〜15.0%
    Sb成分 0〜3.0%
    をさらに含有する請求項1から15のいずれか記載の光学ガラス。
  17. 1.85以上の屈折率(nd)を有し、25以下のアッベ数(νd)を有する請求項1から16のいずれか記載の光学ガラス。
  18. 分光透過率が5%を示す波長(λ)が450nm以下である請求項1から17のいずれか記載の光学ガラス。
  19. 塩基性度が10以下である請求項1から18のいずれか記載の光学ガラス。
  20. 請求項1から19のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
  21. 請求項20記載のプリフォームを研磨してなる光学素子。
  22. 請求項20記載のプリフォームを精密プレス成形してなる光学素子。
  23. 請求項1から19のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
JP2011289952A 2011-12-28 2011-12-28 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子 Pending JP2013139346A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011289952A JP2013139346A (ja) 2011-12-28 2011-12-28 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011289952A JP2013139346A (ja) 2011-12-28 2011-12-28 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013139346A true JP2013139346A (ja) 2013-07-18

Family

ID=49037195

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011289952A Pending JP2013139346A (ja) 2011-12-28 2011-12-28 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013139346A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113603360A (zh) * 2021-09-14 2021-11-05 成都光明光电股份有限公司 高折射高色散光学玻璃及光学元件
CN115108718A (zh) * 2021-03-18 2022-09-27 成都光明光电股份有限公司 光学玻璃、玻璃预制件、光学元件和光学仪器

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115108718A (zh) * 2021-03-18 2022-09-27 成都光明光电股份有限公司 光学玻璃、玻璃预制件、光学元件和光学仪器
CN113603360A (zh) * 2021-09-14 2021-11-05 成都光明光电股份有限公司 高折射高色散光学玻璃及光学元件

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6341836B2 (ja) 光学ガラス及び光学素子
JP6037501B2 (ja) 光学ガラス、光学素子、及びガラス成形体の製造方法
JP5823859B2 (ja) 光学ガラス、光学素子及び精密プレス成形用プリフォーム
JP2010260740A (ja) 光学ガラス及び光学素子
JP5698642B2 (ja) 光学ガラス及び光学素子
JP2014034472A (ja) 光学ガラス、光学素子、及びガラス成形体の製造方法
JP2017048108A (ja) 光学ガラス、光学素子及びプリフォーム
JP2012224501A (ja) 光学ガラス、光学素子及びプリフォーム
JP2014210694A (ja) 光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
JP2016074566A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2010260742A (ja) 光学ガラス、光学素子及び精密プレス成形用プリフォーム
JP2015164885A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2014015384A (ja) 光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子
JP6161352B2 (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2013151402A (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP5694647B2 (ja) 光学ガラス、光学素子及び精密プレス成形用プリフォーム
JP2014111521A (ja) 光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子
JP2014091638A (ja) 光学ガラス、光学素子及びプリフォーム
JP2014015383A (ja) 光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子
JP5988427B2 (ja) 光学ガラス、光学素子、及びガラス成形体の製造方法
JP2013139346A (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP5630968B2 (ja) 光学ガラス、光学素子及び精密プレス成形用プリフォーム
JP2016179918A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP6116859B2 (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP5956223B2 (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子